説明

タッチパネル機能付き立体画像表示装置、及びタッチパネル

【課題】タッチパネル付き立体画像表示装置のクロストークの軽減。
【解決手段】立体画像表示装置、及びその視認面側表面上に配置されたタッチパネルを有するタッチパネル機能付き立体画像表示装置であって、前記タッチパネルが、導電性ナノワイヤーを含有する導電層を含み、該導電層の消光比が1.2以下であることを特徴とするタッチパネル機能付き立体画像表示装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネル機能付き立体画像表示装置、及びタッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイ画面に触れることで情報入力が可能な、タッチパネルを搭載した画像表示装置(例えば、携帯情報端末及び携帯電話)が注目されている。タッチパネルを保護板として、液晶表示装置の外部に配置する構成も提案されている(例えば、特許文献1)。また、タッチパネルについても種々の様式が提案され、例えば、抵抗膜方式及び静電容量方式等のタッチパネルが知られている。これらの方式のタッチパネルには、ITO膜等の導電膜が利用されている。近年、導電膜用材料が種々検討され、例えば、金属ナノ材料からなる、高コントラストの導電体についても提案されている(特許文献2)。また、金属ナノワイヤーを利用した導電膜についても提案され、タッチパネル用の導電膜として使用することについても提案されている(例えば、特許文献3及び4)。
【0003】
一方、画像表示装置についても、立体画像を表示可能な3D画像表示装置への注目が高まっている。立体画像表示装置に、タッチパネル機能を付与することにより、画像表示形態の多様化が期待できる。例えば、医療現場における手術用モニターや住宅デザイン用のモニター等の立体画像表示装置にタッチパネル機能を付与することで、よりインタラクティブな画面操作が可能になることが期待される。さらに、導電性ナノワイヤーを利用して形成された導電膜をタッチパネルに利用することにより、安価なタッチパネル機能付き立体画像表示装置の実現が期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3690125号公報
【特許文献2】特表2010−525527号公報
【特許文献3】特開2011−151014号公報
【特許文献4】特開2011−149092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、実際に、従来提案されているタッチパネルを、立体画像表示装置に搭載してみると、左右眼用画像の分離が不完全になり、クロストークが生じてしまうことがわかった。
本発明は、上記問題を解決することを課題とし、具体的には、タッチパネルの搭載が原因で生じる立体画像表示装置のクロストーク量を軽減することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明者が種々検討した結果、クロストークの原因が、タッチパネルの導電層の偏光性にあることがわかった。この知見に基づき、さらに検討を重ね、該導電層の消光比を所定の範囲にすることで、上記課題を解決し得るとの知見を得、本発明を完成するに至った。
【0007】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1] 立体画像表示装置、及びその視認面側表面上に配置されたタッチパネルを有するタッチパネル機能付き立体画像表示装置であって、
前記タッチパネルが、導電性ナノワイヤーを含有する導電層を含み、該導電層の消光比が1.2以下であることを特徴とするタッチパネル機能付き立体画像表示装置。
[2] 前記導電性ナノワイヤーが、金属ナノワイヤーである[1]の装置。
[3] 前記導電性ナノワイヤーが、銀ナノワイヤーである[1]又は[2]の装置。
[4] 前記立体画像表示装置が、空間分割方式の立体画像表示装置である[1]〜[3]のいずれかの装置。
[5] 前記立体画像表示装置が、時分割方式の立体画像表示装置である[1]〜[3]のいずれかの装置。
[6] 導電性ナノワイヤーを含有する導電層を有し、導電層の消光比が1.2以下であるタッチパネル。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、タッチパネルの搭載が原因で生じる立体画像表示装置のクロストーク量を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明のタッチパネル機能付き立体画像表示装置の一例の断面模式図である。
【図2】本発明のタッチパネルの一例の断面模式図である。
【図3】本発明のタッチパネルの他の例の断面模式図(a)、及び導電層の一例の上面模式図(b)である。
【図4】空間分割方式に利用可能なパターンλ/4板の一例の上面模式図である。
【図5】時分割方式に利用可能なλ/4板の一例の上面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、タッチパネル機能付き立体画像表示装置に関する。本発明のタッチパネル機能付き立体画像表示装置は、図1に模式的に示す通り、立体画像表示装置10と、その視認側表面に配置される、タッチパネル12とを有する。立体画像表示装置10に表示される左右眼用偏光画像(例えば、互いに逆向きの円偏光画像又は互いに直交する直線偏光画像)は、タッチパネル12を通過した後に、偏光眼鏡等を装着した観察者の左右眼にそれぞれ入射する。視差のある画像を左右眼にそれぞれ入射させることで、観察者は、立体画像として認識する。
【0011】
左右眼用偏光画像の偏光状態がそれぞれ理想的な状態であれば、左右眼用偏光画像は、観察者の左右眼のそれぞれにしか入射せず、クロストークの問題は生じない。しかし、本発明者が検討したところ、タッチパネルを通過することにより、左右眼用偏光画像が理想的な偏光状態からずれ、これがクロストーク発生の原因になっていることがわかった。この原因についてさらに検討した結果、タッチパネルに含まれる導電層に偏光性があり、これが偏光画像の偏光状態を理想状態から変化させていることがわかった。
【0012】
導電性ナノワイヤーは、安価に導電層を形成できる点で有用であるが、導電性ナノワイヤーを含有する導電層は、特に偏光性が発現しやすい。従って、従来技術では、導電性ナノワイヤー等の安価な材料を用いて、クロストークの発生量が少なく、良好な立体画像表示特性を示す、タッチパネル機能付き立体画像表示装置の提供は困難であった。本発明では、タッチパネルが有する導電層の消光比を1.2以下にすることで、立体画像表示装置のクロストークの発生量を軽減することを可能としている。本発明によれば、導電層の形成に導電性ナノワイヤー等の比較的安価な材料を用いることができるので、良好な立体画像表示特性を示す、安価なタッチパネル機能付き立体画像表示装置を実現できる。
【0013】
導電層の消光比は、クロストーク量の低減の観点では、小さい値であるほど好ましい。理想的には、偏光性が全くない、消光比1.0であり、即ち、本発明においてタッチパネルの導電層の消光比は1.0〜1.2であるのが好ましい。
【0014】
本発明に利用するタッチパネルは、一般的に、タッチセンサー又はタッチパッドと呼ばれるいずれの態様であってもよい。タッチパネルの方式についても特に制限はない。導電層を利用する方式であればいずれも利用することができる。導電層を利用するタッチパネルとしては、表面型静電容量方式、投射型静電容量方式、及び抵抗膜方式のタッチパネルが挙げられる。導電層を2以上有するタッチパネルでは、1以上の導電層が導電性ナノワイヤーを利用して形成された導電層であるのが、低コスト化の観点で好ましく、全ての導電層の消光比が1.2以下であるのが、クロストーク量の軽減の観点で好ましい。効果を損なわない範囲で、導電性ナノワイヤー以外の材料、例えばITO膜等からなる導電層を含んでいてもよい。
【0015】
図2に、抵抗膜方式のタッチパネルの一例の断面模式図を示す。
図2に示す抵抗膜方式のタッチパネルは、表面に導電層13aを有する基板14aと、表面に導電層13bを有する基板14bとを、それぞれの導電層13a及び13bを対面させて、空気層15及びスペーサー(不図示)を介して配置されて構成されている。基板14a側から使用者が指先等でタッチすると、基板14aが押圧されて、押し込まれた導電層13aと、その下部に位置する導電層13bとが接触し、電位が変化する。外部の制御回路16によりこの電位変化が生じた位置を検出する。
【0016】
図3(a)に、投射型静電容量方式のタッチパネルの一例の断面模式図を示す。
図3(a)に示す投射型静電容量方式のタッチパネルは、基板14cの表面に、導電層13cを有し、導電層13cは、図3(b)にその上面模式図を示す通り、互いに直交する、X軸パターンとY軸パターンとからなるパターン電極である。基板14c側から使用者が指先等でタッチすると電圧が変化する。X軸及びY軸パターン電極は、外部の制御回路16と接続され、電圧の変化があった位置は、X軸及びY軸の座標を特定することで、精度よく検出される。なお、X軸パターン及びY軸パターンは、ダイヤモンド形状に限定されるものではない、三角形、四角形、円形等いずれであってもよい。
【0017】
図2中の導電層13a及び13b、及び図3中の導電層13cは、いずれも消光比が1.2以下であるので、画像表示装置から入射した左右眼用偏光画像は、その偏光状態を大きく変動させることなく、タッチパネルを通過し、観察者の左右眼のそれぞれに入射し、観察者は、クロストークの発生量の少ない良好な立体画像を観察することができる。
【0018】
図2及び図3中、基板14a〜14cとしては、特に制限はなく、ガラス板、又は高分子(樹脂及び重合体のいずれも含む意味で用いる)フィルムもしくはシート等を用いることができる。
【0019】
本発明に利用可能なタッチパネルの構成は、図2及び図3に示す例に限定されず、導電層を利用する限り、いずれの方式のタッチパネルも利用可能である。また、タッチパネルの方式に応じて、必要であれば、保護膜、アンチグレア膜、絶縁層等の他の機能層を、配置することができる。
【0020】
本発明に用いる立体画像表示装置の方式についても特に制限はない。空間分割方式であっても、時分割方式であってもよい。時分割方式については、観察者が装着する偏光眼鏡をアクティブシャッターとして機能させてもよいし、また、例えば、立体画像表示装置とタッチパネルとの間にアクティブシャッターを配置し、画像表示装置側にアクティブシャッター機能を持たせてもよい。
【0021】
空間分割方式の立体画像表示装置の一態様は、立体画像表示装置とタッチパネルとの間に、パターン位相差板が配置された態様である。パターン位相差板は、面内遅相軸及び位相差の少なくとも一方が互いに異なる第1及び第2の位相差領域を含む位相差板である。左右眼用画像として互いに逆向きの円偏光画像を利用する態様では、互いの面内遅相軸が直交する第1及び第2の位相差領域が交互に配置された、パターンλ/4板が利用される。図4に、利用可能なパターンλ/4板の一例の上面模式図を示す。図4に示すパターンλ/4板20は、交互に配置された第1及び第2の位相差領域20a及び20bを有し、それぞれの位相差はλ/4になっている。第1及び第2の位相差領域20a及び20bの面内遅相軸a及びbは、立体画像表示装置10の表示面左右方向を0°とした場合に、±45°の方向にあって、互いに直交している。立体画像表示装置12が表示する、0°又は90°の方向に偏光軸を有する直線偏光画像は、パターンλ/4板20を通過することで、互いに逆向きの円偏光画像にそれぞれ変換される。左右眼用円偏光画像は、左右眼用レンズとして互いに逆向きの円偏光板が配置された円偏光眼鏡を装着した観察者の左右眼にそれぞれ入射する。
【0022】
アクティブ眼鏡を用いる時分割方式の立体画像表示装置の一態様は、立体画像表示装置とタッチパネルとの間に、位相差板が配置された態様である。位相差板は、パターン化されている必要はない。図5に、利用可能なλ/4板の一例の上面模式図を示す。図5に示すλ/4板20’は、その面内遅相軸cを、立体画像表示装置10の表示面左右方向を0°とした場合に、+45°又は−45°の方向にして配置される。立体画像表示装置12が時分割で表示する左右の直線偏光画像は、λ/4板20’を通過することで、時分割された左右の円偏光画像に変換される。左右の円偏光画像は、同期して作動するアクティブシャッター円偏光眼鏡を装着した観察者の左右眼にそれぞれ入射する。
【0023】
上記いずれの方式においても、左右眼用偏光画像は、観察者の左右眼にそれぞれ入射する前に、タッチパネルを通過する。本発明では、タッチパネル中に配置される導電膜の消光比が1.2以下であるので、偏光画像はその偏光状態をほとんど変化させることなくタッチパネルを通過し、観察者の左右眼にそれぞれ入射する。その結果、クロストーク量の少ない立体画像として、観察者に認識される。
【0024】
本発明に用いる立体画像表示装置の構成についても特に制限はない。液晶表示装置、有機EL表示装置、及びプラズマ表示装置等、いずれも用いることができる。液晶表示装置は、視認側に直線偏光膜を有するので、該偏光膜と、上記パターンλ/4板又はλ/4板との組み合わせで、円偏光画像を形成できる。勿論、表示面に直線偏光膜が配置されていない画像表示装置を利用する場合は、上記パターン位相差板等と画像表示装置との間に、直線偏光膜を配置してもよい。円偏光画像を利用する態様では、画像表示装置が視認側に有する又は画像表示装置とタッチパネルとの間に配置される直線偏光膜は、その吸収軸をパターンλ/4板又はλ/4板の面内遅相軸と±45°にして配置される。
【0025】
本発明のタッチパネル機能付き立体画像表示装置は、携帯電話、テレビ、モニター、サイネージ用表示装置等、種々の画像表示装置の態様として構成することができる。
【0026】
以下、本発明に係わるタッチパネルに用いられる導電層について詳細に説明する。
本発明では、タッチパネルが、導電性ナノワイヤーを含む導電層を有しているのが、低コストの観点で好ましい。タッチパネルが2つ以上の導電層を有している態様では、少なくとも一つが導電性ナノワイヤーを含む導電層であるのが好ましい。例えば、ITO導電層等、他の材料を含む導電層を有していてもよい。
【0027】
導電性ナノワイヤー:
本明細書では、導電性ナノワイヤーとは、導電性を有し、且つ長軸方向長さが直径(短軸方向長さ)に比べて十分に長い形状を持つものをいう。中実繊維であっても、中空繊維であってもよい。具体的には、平均短軸長さが5nm〜1,000nmであり、且つ平均長軸長さが1μm〜100μmの形状の導電性繊維をいう。
【0028】
前記導電性ナノワイヤーの材料としては、導電性を有していれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、金属及びカーボンの少なくともいずれかであることが好ましく、これらの中でも、金属ナノワイヤー、金属ナノチューブ、及びカーボンナノチューブ、金属で被覆したカーボンナノチューブ、グラフェンの少なくともいずれかであることが好ましい
【0029】
前記金属ナノワイヤーの材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、長周期律表(IUPAC1991)の第4周期、第5周期、及び第6周期からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属が好ましく、第2族〜第14族から選ばれる少なくとも1種の金属がより好ましく、第2族、第8族、第9族、第10族、第11族、第12族、第13族、及び第14族から選ばれる少なくとも1種の金属が更に好ましく、主成分として含むことが特に好ましい。
【0030】
前記金属としては、例えば、銅、銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、錫、コバルト、ロジウム、イリジウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、マンガン、モリブデン、タングステン、ニオブ、タンテル、チタン、ビスマス、アンチモン、鉛、これらの合金などが挙げられる。これらの中でも、導電性に優れる点で、銀、及び銀との合金が特に好ましい。
前記銀との合金で使用する金属としては、白金、オスミウム、パラジウム、イリジウム、錫、ビスマス、ニッケルなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
前記金属ナノワイヤーの形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、円柱状、直方体状、断面が多角形となる柱状など任意の形状をとることができるが、高い透明性が必要とされる用途では、円柱状や断面の多角形の角が丸まっている断面形状であることが好ましい。
ここで、前記金属ナノワイヤーの断面形状は、基材上に金属ナノワイヤー水分散液を塗布し、ミクロトームにより作製した断面切片を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することにより調べることができる。
【0032】
前記金属ナノワイヤーの平均短軸長さ(「平均短軸径」、「平均直径」と称することがある)としては、100nm以下であることが好ましく、5nm〜45nmがより好ましく、10nm〜40nmが更に好ましく、15nm〜35nmが特に好ましい。
前記平均短軸長さが、5nm未満であると、耐酸化性が悪化し、耐久性が悪くなることがあり、100nmを超えると、金属ナノワイヤー起因の散乱が生じ、十分な透明性を得ることができないことがある。
前記金属ナノワイヤーの平均短軸長さは、透過型電子顕微鏡(TEM;日本電子株式会社製、JEM−2000FX)を用い、300個の金属ナノワイヤーを観察し、その平均値から金属ナノワイヤーの平均短軸長さを求めた。なお、前記金属ナノワイヤーの短軸が円形でない場合の短軸長さは、最も長いものを短軸長さとした。
【0033】
前記金属ナノワイヤーの平均長軸長さ(「平均長さ」と称することがある)としては、5μm以上であることが好ましく、5μm〜40μmがより好ましく、5μm〜30μmが更に好ましい。
前記平均長軸長さが、5μm未満であると、密なネットワークを形成することが難しく、十分な導電性を得ることができないことがあり、40μmを超えると、金属ナノワイヤーが長すぎて製造時に絡まり、製造過程で凝集物が生じてしまうことがある。
前記金属ナノワイヤーの平均長軸長さは、例えば透過型電子顕微鏡(TEM;日本電子株式会社製、JEM−2000FX)を用い、300個の金属ナノワイヤーを観察し、その平均値から金属ナノワイヤーの平均長軸長さを求めた。なお、前記金属ナノワイヤーが曲がっている場合、それを弧とする円を考慮し、その半径、及び曲率から算出される値を長軸長さとした。
【0034】
前記金属ナノワイヤーの製造方法としては、特に制限はなく、いかなる方法で製造してもよいが、以下のようにハロゲン化合物と分散添加剤とを溶解した溶媒中で加熱しながら金属イオンを還元することによって製造することが好ましい。
また、金属ナノワイヤーの製造方法としては、特開2009−215594号公報、特開2009−242880号公報、特開2009−299162号公報、特開2010−84173号公報、特開2010−86714号公報などに記載の方法を用いることができる。
【0035】
前記金属ナノチューブの材料としては、特に制限はなく、いかなる金属であってもよく、例えば、前記した金属ナノワイヤーの材料などを使用することができる。
【0036】
前記金属ナノチューブの形状としては、単層であってもよく、多層であってもよいが、導電性及び熱伝導性に優れる点で単層が好ましい。
【0037】
前記金属ナノチューブの厚み(外径と内径との差)としては、3nm〜80nmが好ましく、3nm〜30nmがより好ましい。
前記厚みが、3nm未満であると、耐酸化性が悪化し、耐久性が悪くなることがあり、80nmを超えると、金属ナノチューブ起因の散乱が生じることがある。
前記金属ナノチューブの平均長軸長さは、5μm以上であることが好ましく、5μm〜40μmがより好ましく、5μm〜30μmが更に好ましい。
【0038】
前記金属ナノチューブの製造方法としては、特に制限はなく、いかなる方法で製造してもよく、例えば、米国出願公開2005/0056118号明細書等に記載の公知の方法などを用いることができる。
【0039】
前記カーボンナノチューブ(CNT)は、グラファイト状炭素原子面(グラフェンシート)が、単層あるいは多層の同軸管状になった物質である。単層のカーボンナノチューブはシングルウォールナノチューブ(SWNT)、多層のカーボンナノチューブはマルチウォールナノチューブ(MWNT)と呼ばれ、特に、2層のカーボンナノチューブはダブルウォールナノチューブ(DWNT)とも呼ばれる。本発明の導電性ナノワイヤーにおいて、前記カーボンナノチューブは、単層であってもよく、多層であってもよいが、導電性及び熱伝導性に優れる点で単層が好ましい。
【0040】
前記カーボンナノチューブの製造方法としては、特に制限はなく、いかなる方法で製造してもよく、例えば、二酸化炭素の接触水素還元、アーク放電法、レーザー蒸発法、熱CVD法、プラズマCVD法、気相成長法、一酸化炭素を高温高圧化で鉄触媒と共に反応させて気相で成長させるHiPco法等の公知の手段を用いることができる。
また、これらの方法で得られたカーボンナノチューブは、洗浄、遠心分離、ろ過、酸化、クロマトグラフ等の方法により、副生成物や触媒金属等の残留物を除去することが、高純度化されたカーボンナノチューブを得ることができる点で好ましい。
【0041】
前記導電性繊維のアスペクト比としては、10以上であることが好ましい。前記アスペクト比とは、一般的には繊維状の物質の長辺と短辺との比(平均長軸長さ/平均短軸長さの比)を意味する。
前記アスペクト比の測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、電子顕微鏡等により測定する方法などが挙げられる。
前記導電性繊維のアスペクト比を電子顕微鏡で測定する場合、前記導電性繊維のアスペクト比が10以上であるか否かは、電子顕微鏡の1視野で確認できればよい。また、前記導電性繊維の平均長軸長さと平均短軸長さとを各々別に測定することによって、前記導電性繊維全体のアスペクト比を見積もることができる。
なお、前記導電性繊維がチューブ状の場合には、前記アスペクト比を算出するための直径としては、該チューブの外径を用いる。
【0042】
前記導電性ナノワイヤーのアスペクト比としては、10以上であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50〜1,000,000が好ましく、100〜1,000,000がより好ましい。
前記アスペクト比が、10未満であると、前記導電性ナノワイヤーによるネットワーク形成がなされず導電性が十分取れないことがあり、1,000,000を超えると、導電性繊維形成時やその後の取り扱いにおいて、成膜前に導電性繊維が絡まり凝集するため、安定な液が得られないことがある。
【0043】
前記アスペクト比が10以上の導電性ナノワイヤーの比率としては、全導電層用塗布液中に体積比で、5%以上が好ましく、10%以上がより好ましく、15%以上が特に好ましい。これらの導電性ナノワイヤーの割合を、以下、「導電性ナノワイヤーの比率」と呼ぶことがある。
前記導電性ナノワイヤーの比率が、5%未満であると、導電性に寄与する導電性物質が減少し導電性が低下してしまうことがあり、同時に密なネットワークを形成できないために電圧集中が生じ、耐久性が低下してしまうことがある。また、導電性ナノワイヤー以外の形状の粒子は、導電性に大きく寄与しない上に吸収を持つため好ましくない。特に金属の場合で、球形などのプラズモン吸収が強い場合には透明度が悪化してしまうことがある。
【0044】
ここで、前記導電性ナノワイヤーの比率は、例えば、導電性ナノワイヤーが銀ナノワイヤーである場合には、銀ナノワイヤー水分散液をろ過して、銀ナノワイヤーと、それ以外の粒子とを分離し、ICP発光分析装置を用いてろ紙に残っている銀の量と、ろ紙を透過した銀の量とを各々測定することで、導電性ナノワイヤーの比率を求めることができる。ろ紙に残っている導電性ナノワイヤーをTEMで観察し、300個の導電性ナノワイヤーの平均短軸長さを観察し、その分布を調べることにより、平均短軸長さが200nm以下であり、かつ平均長軸長さが1μm以上である導電性ナノワイヤーであることを確認する。なお、ろ紙は、TEM像で平均短軸長さが200nm以下であり、かつ平均長軸長さが1μm以上である導電性ナノワイヤー以外の粒子の最長軸を計測し、その最長軸の2倍以上であり、かつ導電性ナノワイヤーの長軸の最短長以下の長さのものを用いることが好ましい。
【0045】
ここで、前記導電性ナノワイヤーの平均短軸長さ及び平均長軸長さは、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)や光学顕微鏡を用い、TEM像や光学顕微鏡像を観察することにより求めることができ、本発明においては、導電性ナノワイヤーの平均短軸長さ及び平均長軸長さは、透過型電子顕微鏡(TEM)により300個の導電性ナノワイヤーを観察し、その平均値から求めたものである。
【0046】
また、前記導電層は、パターン導電層であってもよく、当該態様では、導電層形成用組成物は、感光性組成物であるのが好ましい。感光性組成物は、ネガ型であってもポジ型であってもよい。以下、導電層の形成に利用可能な、感光性組成物の例について説明するが、以下の例に限定されるものではない。
【0047】
前記導電層の形成には、前記導電性ナノワイヤーとともに、バインダー及び感光性化合物を少なくとも含有する感光性組成物を用いることができる。
バインダー:
前記バインダーとしては、線状有機高分子重合体であって、分子(好ましくは、アクリル系共重合体、スチレン系共重合体を主鎖とする分子)中に少なくとも1つのアルカリ可溶性を促進する基(例えばカルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基など)を有するアルカリ可溶性樹脂の中から適宜選択することができる。
これらの中でも、有機溶剤に可溶で弱アルカリ水溶液により現像可能なものが好ましく、また、酸解離性基を有し、酸の作用により酸解離性基が解離した時にアルカリ可溶となるものが特に好ましい。
ここで、前記酸解離性基とは、酸の存在下で解離することが可能な官能基を表す。
【0048】
前記バインダーの製造には、例えば公知のラジカル重合法による方法を適用することができる。前記ラジカル重合法でアルカリ可溶性樹脂を製造する際の温度、圧力、ラジカル開始剤の種類及びその量、溶媒の種類等々の重合条件は、当業者において容易に設定可能であり、実験的に条件を定めることができる。
【0049】
前記線状有機高分子重合体としては、側鎖にカルボン酸を有するポリマー(酸性基を有する感光性樹脂)が好ましい。
前記側鎖にカルボン酸を有するポリマーとしては、例えば特開昭59−44615号、特公昭54−34327号、特公昭58−12577号、特公昭54−25957号、特開昭59−53836号、特開昭59−71048号の各公報に記載されているような、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等、並びに側鎖にカルボン酸を有する酸性セルロース誘導体、水酸基を有するポリマーに酸無水物を付加させたもの等であり、更に側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する高分子重合体も好ましいものとして挙げられる。
【0050】
これらの中でも、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸共重合体、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/他のモノマーからなる多元共重合体が特に好ましい。
更に、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する高分子重合体や(メタ)アクリル酸/グリシジル(メタ)アクリレート/他のモノマーからなる多元共重合体も有用なものとして挙げられる。該ポリマーは任意の量で混合して用いることができる。
【0051】
前記以外にも、特開平7−140654号公報に記載の、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート/ポリメチルメタクリレートマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/メチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクレート/メタクリル酸共重合体、などが挙げられる。
【0052】
前記アルカリ可溶性樹脂における具体的な構成単位としては、(メタ)アクリル酸と、該(メタ)アクリル酸と共重合可能な他の単量体とが好適である。
【0053】
前記(メタ)アクリル酸と共重合可能な他の単量体としては、例えばアルキル(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレート、ビニル化合物などが挙げられる。これらは、アルキル基及びアリール基の水素原子は、置換基で置換されていてもよい。
前記アルキル(メタ)アクリレート又はアリール(メタ)アクリレートとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0054】
前記ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、グリシジルメタクリレート、アクリロニトリル、ビニルアセテート、N−ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ポリスチレンマクロモノマー、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー、CH2=CR12、CH2=C(R1)(COOR3)〔ただし、R1は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表し、R2は炭素数6〜10の芳香族炭化水素環を表し、R3は炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数6〜12のアラルキル基を表す。〕、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0055】
前記バインダーの重量平均分子量は、アルカリ溶解速度、膜物性等の点から、1,000〜500,000が好ましく、3,000〜300,000がより好ましく、5,000〜200,000が更に好ましい。
ここで、前記重量平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー法により測定し、標準ポリスチレン検量線を用いて求めることができる。
【0056】
前記バインダーの含有量は、前記導電層に用いられる全成分(但し溶媒は除く)に対し25質量%〜80質量%であることが好ましく、30質量%〜75質量%がより好ましく、40質量%〜70質量%が更に好ましい。前記含有量の範囲にあると、現像性と導電性ナノワイヤーの導電性の両立が図れる。
【0057】
感光性化合物:
前記感光性化合物とは、露光により画像を形成する機能を導電層に付与するか、又はそのきっかけを与える化合物を意味する。具体的には、(1)露光による酸を発生する化合物(光酸発生剤)、(2)感光性のキノンジアジド化合物、(3)光ラジカル発生剤等を挙げることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、感度調整のために、増感剤などを併用して用いることもできる。
【0058】
(1)光酸発生剤
前記(1)光酸発生剤としては、光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、あるいはマイクロレジスト等に使用されている活性光線又は放射線の照射により酸を発生する公知の化合物及びそれらの混合物を適宜に選択して使用することができる。
【0059】
前記(1)光酸発生剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、イミドスルホネート、オキシムスルホネート、ジアゾジスルホン、ジスルホン、o−ニトロベンジルスルホネートなどが挙げられる。これらの中でも、スルホン酸を発生する化合物であるイミドスルホネート、オキシムスルホネート、o−ニトロベンジルスルホネートが特に好ましい。
【0060】
また、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する基、あるいは化合物を樹脂の主鎖又は側鎖に導入した化合物、例えば、米国特許第3,849,137号明細書、独国特許第3914407号明細書、特開昭63−26653号、特開昭55−164824号、特開昭62−69263号、特開昭63−146038号、特開昭63−163452号、特開昭62−153853号、特開昭63−146029号の各公報等に記載の化合物を用いることができる。
更に、米国特許第3,779,778号、欧州特許第126,712号等の各明細書に記載の光により酸を発生する化合物も使用することができる。
【0061】
(2)キノンジアジド化合物
前記(2)キノンジアジド化合物としては、例えば、1,2−キノンジアジドスルホニルクロリド類、ヒドロキシ化合物、アミノ化合物などを脱塩酸剤の存在下で縮合反応させることで得られる。
【0062】
前記1,2−キノンジアジドスルホニルクロリド類としては、例えば、ベンゾキノン−1,2−ジアジド−4−スルホニルクロリド、ナフトキノン−1,2−ジアジド−5−スルホニルクロリド、ナフトキノン−1,2−ジアジド−4−スルホニルクロリドなどが挙げられる。これらの中でも、感度の点ではナフトキノン−1,2−ジアジド−4−スルホニルクロリドが特に好ましい。
【0063】
前記ヒドロキシ化合物としては、例えば、ヒドロキノン、レゾルシノール、ピロガロール、ビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,2’,3’−ペンタヒドロキシベンゾフェノン,2,3,4,3’,4’,5’−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)プロパン、4b,5,9b,10−テトラヒドロ−1,3,6,8−テトラヒドロキシ−5,10−ジメチルインデノ[2,1−a]インデン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、4,4’-[1-[4-[1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]フェニル]−エチリデン]ビスフェノール、などが挙げられる。
【0064】
前記アミノ化合物としては、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、o−アミノフェノール、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、3,3’−ジアミノ4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ3,3’−ジヒドロキシビフェニル、ビス(3−アミノ4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−アミノ3−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3−アミノ4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノ3−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−アミノ4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−アミノ3−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、などが挙げられる。
【0065】
前記1,2−キノンジアジドスルホニルクロリド、ヒドロキシ化合物、アミノ化合物などを、1,2−キノンジアジドスルホニルクロリド1モルに対して、ヒドロキシ基とアミノ基の合計が0.5〜1当量になるように配合されることが好ましい。脱塩酸剤とo−キノンジアジドスルホニルクロリドの好ましい割合は、1/1〜1/0.9の範囲である。好ましい反応温度は0℃〜40℃、好ましい反応時間は1〜24時間である。
【0066】
反応溶媒としては、例えばジオキサン、1,3−ジオキソラン、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトンなどが挙げられる。
前記脱塩酸剤としては、例えば炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジンなどが挙げられる。
【0067】
前記(1)光酸発生剤、及び前記(2)キノンジアジド化合物の配合量は、露光部と未露光部の溶解速度差と、感度の許容幅の点から、前記バインダーの総量100質量部に対して、1質量部〜100質量部であることが好ましく、3質量部〜80質量部がより好ましい。
なお、前記(1)光酸発生剤と、前記(2)キノンジアジド化合物とを併用してもよい。
【0068】
前記(1)光酸発生剤の中でもスルホン酸を発生する化合物が好ましく、下記のようなオキシムスルホネート化合物が高感度である観点から特に好ましい。
【化1】

【0069】
前記(2)キノンジアジド化合物として、1,2−ナフトキノンジアジド基を有する化合物を用いると高感度で現像性が良好である。
前記(2)キノンジアジド化合物の中で下記の化合物でDが独立して水素原子又は1,2−ナフトキノンジアジド基であるものが高感度である観点から好ましい。
【化2】

【0070】
(3)光ラジカル発生剤
前記光ラジカル発生剤は、光を直接吸収し、又は光増感されて分解反応若しくは水素引き抜き反応を起こし、重合活性ラジカルを発生する機能を有する。前記光ラジカル発生剤は波長300nm〜500nmの領域に吸収を有するものであることが好ましい。
【0071】
前記光ラジカル発生剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。前記光ラジカル発生剤の含有量は、前記導電層用塗布液全固形量に対して、0.1質量%〜50質量%であることが好ましく、0.5質量%〜30質量%がより好ましく、1質量%〜20質量%が更に好ましい。前記数値範囲において、良好な感度とパターン形成性が得られる。
【0072】
前記光ラジカル発生剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば特開2008−268884号公報に記載の化合物群が挙げられる。これらの中でも、トリアジン系化合物、アセトフェノン系化合物、アシルホスフィン(オキシド)系化合物、オキシム系化合物、イミダゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物が露光感度の観点から特に好ましい。
【0073】
前記トリアジン系化合物としては、例えば2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−エトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)一s−トリアジン、2−(4−エトキシカルボニルナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(モノクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(ジクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−n−プロピル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(α,α,β−トリクロロエチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3,4−エポキシフェニル)−4、6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−〔1−(p−メトキシフェニル)−2,4−ブタジエニル〕−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−スチリル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−i−プロピルオキシスチリル)−4、6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−フェニルチオ−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ベンジルチオ−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−(o−ブロモ−p−N,N−(ジエトキシカルボニルアミノ)−フェニル)−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(ジブロモメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−メトキシ−4,6−ビス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0074】
前記ベンゾフェノン系化合物としては、例えばベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、2−メチルベンゾフェノン、3−メチルベンゾフェノン、N,N−ジエチルアミノベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4−ブロモベンゾフェノン、2−カルボキシベンゾフェノン、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0075】
前記アセトフェノン系化合物としては、例えば2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、α−ヒドロキシ−2−メチルフェニルプロパノン、1−ヒドロキシ−1−メチルエチル(p−イソプロピルフェニル)ケトン、1−ヒドロキシ−1−(p−ドデシルフェニル)ケトン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、1,1,1−トリクロロメチル−(p−ブチルフェニル)ケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1などが挙げられる。市販品の具体例としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のイルガキュア369、イルガキュア379、イルガキュア907などが好適である。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0076】
前記イミダゾール系化合物としては、例えば、特公平6−29285号公報、米国特許第3,479,185号、米国特許第4,311,783号、米国特許第4,622,286号等の各明細書に記載の種々の化合物、具体的には、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ブロモフェニル))4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(m−メトキシフェニル)ビイジダゾール、2,2’−ビス(o,o’−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−メチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、などが挙げられる。
【0077】
前記オキシム系化合物としては、例えばJ.C.S.Perkin II(1979)1653−1660)、J.C.S.Perkin II(1979)156−162、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995)202−232、特開2000−66385号公報記載の化合物、特開2000−80068号公報、特表2004−534797号公報記載の化合物等が挙げられる。具体例としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のイルガキュアOXE−01、OXE−02等が好適である。
【0078】
前記アシルホスフィン(オキシド)化合物としては、例えばチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のイルガキュア819、ダロキュア4265、ダロキュアTPOなどが挙げられる。
【0079】
これらの中でも、露光感度と透明性の観点から、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、N,N−ジエチルアミノベンゾフェノン、1,2−オクタンジオン−1−[4−(フェニルチオ)−2−(o−ベンゾイルオキシム)]が特に好ましい。
【0080】
前記導電層用組成物は、露光感度向上のために、光ラジカル発生剤と連鎖移動剤を併用してもよい。
前記連鎖移動剤としては、例えば、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステルなどのN,N−ジアルキルアミノ安息香酸アルキルエステル、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、N−フェニルメルカプトベンゾイミダゾール、1,3,5−トリス(3−メルカブトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオンなどの複素環を有するメルカプト化合物、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタンなどの脂肪族多官能メルカプト化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記連鎖移動剤の含有量は、前記導電層用組成物の全固形分に対し、0.01質量%〜15質量%が好ましく、0.1質量%〜10質量%がより好ましく、0.5質量%〜5質量%が更に好ましい。
【0081】
−その他の成分−
前記その他の成分としては、例えば架橋剤、分散剤、溶媒、界面活性剤、酸化防止剤、硫化防止剤、金属腐食防止剤、粘度調整剤、防腐剤等の各種の添加剤などが挙げられる。
【0082】
−−架橋剤−−
前記架橋剤は、フリーラジカル又は酸及び熱により化学結合を形成し、導電層を硬化させる化合物であり、例えばメチロール基、アルコキシメチル基、アシロキシメチル基から選ばれる少なくとも1つの基で置換されたメラミン系化合物、グアナミン系化合物、グリコールウリル系化合物、ウレア系化合物、フェノール系化合物もしくはフェノールのエーテル化合物、エポキシ系化合物、オキセタン系化合物、チオエポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、又はアジド系化合物;メタクリロイル基又はアクリロイル基などを含むエチレン性不飽和基を有する化合物、などが挙げられる。これらの中でも、膜物性、耐熱性、溶剤耐性の点でエポキシ系化合物、オキセタン系化合物、エチレン性不飽和基を有する化合物が特に好ましい。
【0083】
前記エチレン性不飽和基を有する化合物(以下、「重合性化合物」と称することもある)は、少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であり、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1つ、好ましくは2つ以上有する化合物から選ばれる。これらは、例えば、モノマー、プレポリマー、即ち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物、並びにそれらの共重合体などの化学的形態をもつ。
【0084】
前記重合性化合物としては、例えばポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の単官能アクリレートや単官能メタクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールペンタ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)シアヌレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンやグリセリン、ビスフェノール等の多官能アルコールに、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加反応した後で(メタ)アクリレート化したもの、特公昭48−41708号、特公昭50−6034号、特開昭51−37193号等の各公報に記載されているウレタンアクリレート類;特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号等の各公報に記載されているポリエステルアクリレート類;エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応生成物であるエポキシアクリレート類等の多官能アクリレートやメタクリレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールペンタ(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0085】
前記エポキシ系化合物又はオキセタン系化合物としては、エポキシ基又はオキセタニル基を含む化合物であり、一般にエポキシ樹脂、オキセタン樹脂と呼ばれる化合物である。
【0086】
前記エポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型、クレゾールノボラック型、ビフェニル型、脂環式エポキシ化合物、などが挙げられる。
前記ビスフェノールA型としては、例えばエポトートYD−115、YD−118T、YD−127、YD−128、YD−134、YD−8125、YD−7011R、ZX−1059、YDF−8170、YDF−170(以上、東都化成株式会社製)、デナコールEX−1101、EX−1102、EX−1103(以上、ナガセ化成株式会社製)、プラクセルGL−61、GL−62、G101、G102(以上、ダイセル化学株式会社製)、又はこれらの類似のビスフェノールF型、ビスフェノールS型などが挙げられる。また、Ebecryl 3700、3701、600(以上、ダイセルユーシービー社製)などのエポキシアクリレートも使用可能である。
【0087】
前記クレゾールノボラック型としては、例えばエポトートYDPN−638、YDPN−701、YDPN−702、YDPN−703、YDPN−704(以上、東都化成株式会社製)、デナコールEM−125(以上、ナガセ化成株式会社製)などが挙げられる。
前記ビフェニル型としては、例えば3,5,3’,5’−テトラメチル−4,4’ジグリシジルビフェニルなどが挙げられる。
【0088】
前記脂環式エポキシ化合物としては、セロキサイド2021、2081、2083、2085、エポリードGT−301、GT−302、GT−401、GT−403、EHPE−3150(以上、ダイセル化学株式会社製)、サントートST−3000、ST−4000、ST−5080、ST−5100(以上、東都化成株式会社製)などが挙げられる。
その他としてアミン型エポキシ樹脂であるエポトートYH−434、YH−434L、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の骨格中にダイマー酸を変性したグリシジルエステル等も使用できる。
【0089】
これらのエポキシ樹脂の中でも、ノボラック型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物が好ましく、エポキシ当量が180〜250のものが特に好ましい。このような素材としてはエピクロンN−660、N−670、N−680、N−690、YDCN−704L(以上、DIC社製)、EHPE3150(ダイセル化学株式会社製)などが挙げられる。
【0090】
前記オキセタン樹脂としては、例えばアロンオキセタンOXT−101、OXT−121、OXT−211、OXT−221、OXT−212、OXT−610、OX−SQ、PNOX(以上、東亞合成株式会社製)などが挙げられる。
また、前記オキセタン樹脂は、1種単独で又はエポキシ樹脂と混合して使用することができる。特にエポキシ樹脂との併用で用いた場合には反応性が高く、膜物性を向上させる観点から好ましい。
【0091】
前記架橋剤の含有量は、前記バインダー総量100質量部に対して、1質量部〜250質量部が好ましく、3質量部〜200質量部がより好ましい。
【0092】
−−分散剤−−
前記分散剤は、前記導電性繊維の凝集を防ぎ、分散させるために用いる。前記分散剤としては、前記導電性繊維を分散させることができれば特に制限はなく、目的に応じて適否選択することができ、例えば、市販の低分子顔料分散剤、高分子顔料分散剤を利用でき、特に高分子分散剤で導電性繊維に吸着する性質を持つものが好ましく用いられ、例えばポリビニルピロリドン、BYKシリーズ(ビックケミー社製)、ソルスパースシリーズ(日本ルーブリゾール社製など)、アジスパーシリーズ(味の素株式会社製)などが挙げられる。
前記分散剤の含有量としては、前記バインダー100質量部に対し、0.1質量部〜50質量部が好ましく、0.5質量部〜40質量部がより好ましく、1質量部〜30質量部が特に好ましい。
前記含有量が、0.1質量部未満であると、分散液中で導電性繊維が凝集してしまうことがあり、50質量部を超えると、塗布工程において安定な液膜が形成できず、塗布ムラが発生することがある。
【0093】
−−溶媒−−
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、乳酸エチル、3−メトキシブタノール、水、1−メトキシ−2−プロパノール、イソプロピルアセテート、乳酸メチル、N−メチルピロリドン(NMP)、γ−ブチロラクトン(GBL)、プロピレンカーボネート、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0094】
−−金属腐食防止剤−−
前記金属腐食防止剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えばチオール類、アゾール類などが好適である。
前記アゾール類としては、例えばベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、メルカプトベンゾチアゾール、メルカプトベンゾトリアゾール、メルカプトベンゾテトラゾール、(2−ベンゾチアゾリルチオ)酢酸、3−(2−ベンゾチアゾリルチオ)プロピオン酸などが挙げられる。
前記チオール類としては、アルカンチオール類、フッ化アルカンチオール類が挙げられ、例えばドデカンチオール、テトラデカンチオール、ヘキサデカンチオール、オクタデカンチオール、フルオロデカンチオール及びこれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、並びにアミン塩から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。該金属腐食防止剤を含有することで、一段と優れた防錆効果を発揮することができる。前記金属腐食防止剤は導電層用塗布液に溶解した中に、適した溶媒で溶解した状態、又は粉末で添加するか、後述する導電層用塗布液による導電膜を作製後に、これを金属腐食防止剤浴に浸すことで付与することができる。
【0095】
導電層の形成方法:
導電層の形成方法の一例は、以下の通りであるが、下記の例に限定されるものではない。
まず、導電層用塗布液を調製する。該塗布液は、少なくとも導電性ナノワイヤーを含み、好ましくはバインダー及び感光性化合物、さらには必要に応じてその他の成分を混合して、常法により調製することができる。
【0096】
次に、前記導電層用塗布液を、ガラス板やフィルム等の基板表面に塗布する。塗布する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えばスプレーコート法、エアブラシ法、カーテンスプレー法、ディップコート法、ローラーコート法、スピンコート法、インクジェット法、押出し法などが挙げられる。
【0097】
次に、基板上に、前記導電層用塗布液を塗布し、塗布層を形成した後、露光し、硬化させる。
前記露光としては、特に制限はなく、用途などに応じて適宜選択することができるが、紫外線照射装置、紫外線照射ランプなどが好ましい。
【0098】
前記露光後(硬化後)の導電層をアルカリ溶液で処理する工程を実施してもよい。
前記アルカリ溶液に含まれるアルカリとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムハイドロオキサイド、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。
【0099】
前記アルカリ溶液には、必要に応じて、メタノール、エタノール、又は界面活性剤を添加してもよい。前記界面活性剤としては、例えばアニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、及びノニオン系界面活性剤から選択して使用することができる。これらの中でも、ノニオン系のポリオキシエチレンアルキルエーテルを添加すると、解像度が高くなるので特に好ましい。
【0100】
前記アルカリ処理としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばディップ現像、パドル現像、シャワー現像のいずれも用いることができる。
前記アルカリ処理を行うことにより、前記三次元曲面構造体の導電層の導電性を上げることができる。
前記アルカリ溶液の浸漬時間は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10秒間〜5分間であることが好ましい。
【0101】
また、導電層をパターニングする工程を含んでいてもよい。
前記パターニング工程は、基板表面に、前記導電層用途布液を塗布し、導電層を形成した後、パターン露光し、現像する工程である。
なお、パターニングを行う場合には、前記現像が前記アルカリ処理工程を兼ねることになる。
【0102】
また、導電層は、転写材料を利用して、転写により、目的とする基板上に形成してもよい。
【0103】
上記した通り、導電性ナノワイヤーは、安価な導電膜の提供という観点では有利であるが、一方で、これを含む導電層には偏光性が発現しやすいという特徴があり、偏光画像の偏光状態に影響する場合がある。本発明では、導電層の消光比を1.2以下とすることで、クロストークの発生量を軽減している。上記方法により形成された導電層の消光比は、一般的には、1.5以上になるので、導電層の偏光性を軽減し、消光比を上記範囲とするための処理を行うことが好ましい。導電層の偏光性の軽減は、導電層を形成する際に実施されるいずれかの工程の条件を調整することにより達成されても、又は導電層を形成した後、任意の処理を実施することで達成されてもよい。
【0104】
例えば、導電層を形成するために実施される塗布工程において、導電性ナノワイヤーの配向性が促進されると、偏光性のある導電層が形成される傾向がある。ナノワイヤーの配向のランダム性が維持される塗布方法としては、スプレー塗布法、インクジェット塗布法等が挙げられ、これらの方法を採用することで、偏光性が低く、消光比が前記範囲の導電層を形成することができる。また、ナノワイヤーの配向性を促進する塗布方法(例えばスロットルダイ法等の塗布方法)を採用する場合であっても、一方向に沿って塗布した後、当該方向と異なる方向(例えば直交する方向)に沿って塗布することで、ナノワイヤーの配向性を緩和することができる。
【0105】
また、導電層を形成した後、層中の導電性ナノワイヤーの配向性を軽減するための処理を行ってもよい。一方向に沿って塗布されて形成された導電層中の導電性ナノワイヤーは、当該方向に沿って配向する傾向がある。従って、塗布の方向とは異なる方向(例えば直交する方向)に沿って、延伸処理(例えば1%以上5%未満の延伸率の延伸処理)等を行うと、配向性が軽減されるので好ましい。なお、延伸処理を実施する場合は、高分子フィルム等の可撓性のある基板上に導電層を形成した後、基板に支持された状態の導電層を基板とともに延伸処理するのが好ましい。
【0106】
前記導電層の表面抵抗は、0.1Ω/□〜5,000Ω/□であることが好ましく、0.1Ω/□〜500Ω/□であることがより好ましい。
前記表面抵抗は、例えば表面抵抗計(三菱化学株式会社製、Loresta−GP MCP−T600)により、測定することができる。
【0107】
また、前記導電層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば0.02μm〜2μmであることが好ましく、0.05μm〜1μmであることがより好ましい。
【0108】
基板:
本発明にかかわるタッチパネルは、前記導電層を支持する基板を有していてもよい。基板の光透過率は、65%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。
前記光透過率は、例えば分光光度計(V670、日本分光社製)により測定することができる。
【0109】
基板の材料については特に制限はない。例えば、ガラス板、高分子(樹脂及び重合体のいずれも含む意味で用いる)フィルム、シート及び成形体、並びに金属板から選択することができる。
使用可能なガラス板の例には、白板ガラス、青板ガラス、グリーンガラス、シリカコート、青板ガラスが含まれる。
使用可能な高分子フィルム等の例には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエステル、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド、ポリイミド、FRP(繊維強化プラスチック)等を主成分として含むフィルム等が含まれる。
使用可能な金属板の例には、アルミニウム板、銅板、ニッケル板、ステンレス板等が含まれる。
【0110】
前記基板の表面は、前記導電層との密着性を向上させるための表面処理が実施されていてもよい。表面処理は、物理的又は化学的方法によって実施される。前記物理的方法としては、サンドブラスト法などにより基材表面を荒らしてアンカー効果を付与する方法が挙げられる。前記化学的方法としては、プラズマ処理やコロナ処理などにより基材表面を活性化する方法、シランカップリング剤処理により導電層と化学的に密着性を上げる方法、プライマー層等の下塗り層を設ける方法などが挙げられる。前記下塗り層は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、紫外線吸収能や酸化防止能などを付与してもよい。これらの中でも、簡便性と処理均一性の点でプラズマ処理が特に好ましい。
【0111】
前記基板の厚みについても特に制限はない。平均厚みは、0.01mm〜10mmであることが好ましく、0.02mm〜1mmであることがより好ましい。但し、この範囲に限定されるものでない。
【0112】
本発明は、導電性ナノワイヤーを含有する導電層を有し、導電層の消光比が1.2以下であるタッチパネルにも関する。本発明のタッチパネルは、携帯電話、テレビ、モニター、サイネージ用のタッチパネルとして利用することができる。本発明のタッチパネルを、立体画像表示装置と組み合わせた態様は、クロストークの軽減効果に優れる。但し、本発明のタッチパネルは、通常の2D画像表示装置と組み合わせて用いられてもよい。この態様では、塗布ムラ等に起因した消光比の面内分布によって、画面に明るさの表示ムラが現れることを防ぐ効果がある。
【0113】
本発明のタッチパネル及びその導電層の詳細については、上記した、本発明の立体画像表示装置が有するタッチパネル及びその導電層の詳細と同様であり、好ましい態様についても同様である。
【実施例】
【0114】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0115】
1.導電層形成用組成物の調製
(1)バインダー(A−1)の合成例
共重合体を構成するモノマー成分としてメタクリル酸(MAA)7.79g、ベンジルメタクリレート(BzMA)37.21gを使用し、ラジカル重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.5gを使用し、これらを溶剤プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)55.00g中において重合反応させることにより、下記式で表されるバインダー(A−1)のPGMEA溶液(固形分濃度:45質量%)を得た。なお、重合温度は、温度60℃〜100℃に調整した。
【0116】
バインダー(A−1)の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ法(GPC)を用いて測定した結果、ポリスチレン換算による重量平均分子量(Mw)が30,000、分子量分布(Mw/Mn)が2.21であった。
【0117】
【化3】

【0118】
(2)銀ナノワイヤー水分散液の調製
予め、下記の添加液A、G、及びHを調製した。
〔添加液A〕
硝酸銀粉末0.51gを純水50mLに溶解した。その後、1Nのアンモニア水を透明になるまで添加した。そして、全量が100mLになるように純水を添加した。
〔添加液G〕
グルコース粉末0.5gを140mLの純水で溶解して、添加液Gを調製した。
〔添加液H〕
HTAB(ヘキサデシル−トリメチルアンモニウムブロミド)粉末0.5gを27.5mLの純水で溶解して、添加液Hを調製した。
【0119】
次に、以下のようにして、銀ナノワイヤー水分散液を調製した。
純水410mLを三口フラスコ内に入れ、20℃にて攪拌しながら、添加液H 82.5mL、及び添加液G 206mLをロートにて添加した(一段目)。この液に、添加液A 206mLを流量2.0mL/min、攪拌回転数800rpmで添加した(二段目)。その10分間後、添加液Hを82.5mL添加した(三段目)。その後、3℃/分で内温75℃まで昇温した。その後、攪拌回転数を200rpmに落とし、5時間加熱した。
得られた水分散液を冷却した後、限外濾過モジュールSIP1013(旭化成株式会社製、分画分子量6,000)、マグネットポンプ、及びステンレスカップをシリコーン製チューブで接続し、限外濾過装置とした。
得られた水分散液(水溶液)をステンレスカップに入れ、ポンプを稼動させて限外濾過を行った。モジュールからの濾液が50mLになった時点で、ステンレスカップに950mLの蒸留水を加え、洗浄を行った。前記の洗浄を伝導度が50μS/cm以下になるまで繰り返した後、濃縮を行い、銀ナノワイヤー水分散液を得た。
【0120】
(3)銀ナノワイヤーのMFG分散液(Ag−1)の調製
上記で調製した銀ナノワイヤーの水分散液へ、ポリビニルピロリドン(K−30、和光純薬工業株式会社製)及び1−メトキシ−2−プロパノール(MFG)を添加し、遠心分離の後、デカンテーションにて上澄みの水を除去し、さらにMFGを添加し、再分散を行い、その操作を3回繰り返し、銀ナノワイヤーのMFG分散液(Ag−1)を得た。最終的に得られた銀ナノワイヤーのMFG分散液(Ag−1)中の銀含有量が1質量%になるように、最後に添加したMFGの添加量を調整した。
【0121】
(4)ネガ型導電層用組成物の調製
上記で製造したバインダー(A−1)0.241質量部、増感剤として「KAYARAD DPHA」(日本化薬株式会社製)0.252質量部、重合開始剤として「IRGACURE379」(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)0.0252質量部、架橋剤として「EHPE−3150」(ダイセル化学株式会社製)0.0237質量部、「メガファックF781F」(DIC株式会社製)0.0003質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)0.9611質量部、及び1−メトキシ−2−プロパノール(MFG)44.3質量部、及び前記銀ナノワイヤーのMFG分散液(Ag−1)54.1質量部を混合し、攪拌して、ネガ型導電層用組成物を調製した。
【0122】
2.導電性塗布膜の形成
(1)導電性塗布膜1
得られたネガ型導電層用組成物を、塗布銀量0.05g/m2の条件で、スロットルダイを有するコーターを用いて、ガラス上に直接押し出して塗布し、乾燥させて、平均厚み0.1μmの導電性塗布膜1を形成した。
【0123】
(2)導電性塗布膜2
得られたネガ型導電層用組成物を、塗布銀量0.025g/m2の条件で、スロットルダイを有するコーターを用いて、ガラス上に直接押し出して塗布し、乾燥させて、平均厚み0.5μmの一層目の導電層を形成した。次にガラス基板の向きを90度回転させ、一層目の導電層を塗布した時と直交する方向から、ネガ型導電層用組成物を、塗布銀量0.025g/m2の条件で、スロットルダイを有するコーターを用いて、ガラス上に直接押し出して塗布し、乾燥させて、平均厚み0.5μmの二層目の導電層を形成した。以上により、総膜厚0.1μmの導電性塗布膜2を形成した。
【0124】
(3)導電性塗布膜3
クッション層の形成:
平均厚み30μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを基材として準備し、その表面上に、下記組成のクッション層用塗布液を塗布し、乾燥させて、平均厚み10μmのクッション層を形成した。
−クッション層用塗布液の組成−
・メチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(共重合組成比(モル比)=55/30/10/5、重量平均分子量=10万、ガラス転移温度(Tg)=70℃) 6.0質量部
・スチレン/アクリル酸共重合体(共重合組成比(モル比)=65/35、重量平均分子量=1万、ガラス転移温度(Tg)=100℃) 14.0質量部
・BPE−500(新中村化学株式会社製) 9.0質量部
・メガファックF−780−F(大日本インキ化学工業株式会社製) 0.5質量部
・メタノール 10.0質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 5.0質量部
・メチルエチルケトン 55.5質量部
【0125】
導電性塗布膜3の形成:
得られたネガ型導電層用組成物を、塗布銀量0.05g/m2の条件で、PETフィルム上に形成した前記クッション層上にスロットルダイ法で塗布し、乾燥させて、平均厚み0.1μmの導電性塗布膜3を形成した。当該導電性塗布膜3を有する積層体を、転写材料No.1として用いた。
ここで、上記導電性塗布膜3中、銀ナノワイヤー以外の成分の含有量Aと、銀ナノワイヤーの含有量Bとの質量比(A/B)はいずれも0.6であった。
【0126】
次に、この転写材料No.1を、引張り試験機(エー・アンド・デイ社製、テンシロンRTC1325型)で5%の延伸率で、塗布方向と直交する方向へPETフィルムごと延伸した。
延伸処理した上記転写材料No.1のPETフィルム表面上から、被転写体(厚み0.7mmのガラス基板)表面上に、導電性塗布膜3及びクッション層を転写した。
【0127】
(4)導電性塗布膜4
上記転写材料No.1を、導電性塗布膜3の形成時とは異なる延伸倍率で延伸した。具体的には、上記転写材料No.1を、引張り試験機(エー・アンド・デイ社製、テンシロンRTC1325型)で2%の延伸率で、塗布方向と直交する方向へ支持体ごと延伸した。
延伸処理した上記転写材料No.1のPETフィルム表面上から、被転写体(厚み0.7mmのガラス基板)表面上に、導電性塗布膜4及びクッション層を転写した。
【0128】
(5)導電性塗布膜5
スプレー装置(商品名:STS−200、YDメカトロニクス社製)を用いて、吐出液流量(4mL/分間)、ノズル移動速度(100mm/秒間)、ノズル−ワーク距離(70mm)、N2キャリアガス流量(3L/分間)の条件にて、ガラス基板上に前記ネガ型導電層用組成物をスプレー塗布し、厚み0.1μmの導電性塗布膜5を形成した。
なお、スプレー塗布する際のノズル外部の雰囲気は、温度25℃、常圧であった。
【0129】
(5)導電性塗布膜の平均厚みの測定
ミクロトーム切削で材料の断面を切り出した後、SEM観察することにより、あるいはエポキシ樹脂で包埋した後ミクロトームで作製した切片をTEM観察することにより測定することができる。これら基材及び各塗布膜の平均厚みは、10箇所測定の平均値である。
【0130】
3.パターン導電層の形成
以下の方法により、ラインアンドスペース(以下、L/Sという)=100μm/100μmのストライプ状パターンの導電層をそれぞれ形成した。
【0131】
上記で形成した各塗膜に対して、マスク上から、高圧水銀灯i線(365nm)を100mJ/cm2(照度20mW/cm2)の条件で露光した。純水5,000gに、炭酸水素ナトリウム5gと炭酸ナトリウム2.5gとを溶解した現像液を用いて、露光後の各塗布膜に対して、30秒間シャワー現像を行った。シャワー圧は0.04MPa、ストライプパターンが出現するまでの時間は15秒間であった。次に、純水のシャワーでリンスした。
この様にして、ガラス基板上に、上記導電性塗布膜1〜5をそれぞれ上記方法でパターン処理することによって形成されたパターン導電層を有する導電性基板を、それぞれ作製した。
【0132】
4.導電層の評価
(1)消光比
上記で作製した各パターン導電層の消光比を、以下の方法で測定した。
日本分光社製VAP−7070を用いて偏光度Pを測定し、以下の換算式を用いて消光比Dを算出した。
D=(1+P)/(1−P)
結果を下記表に示す。
【0133】
(2)表面抵抗
上記で作製した各パターン導電層の表面抵抗値を、二重リングプローブ法(ダイアインスツルメンツ社製、ハイレスタUP MCP−HT450)で測定した。結果を下記表に示す。
【0134】
【表1】

【0135】
4.タッチパネルの作製
上記で作製した各導電性基板を用いて、「最新タッチパネル技術」(2009年7月6日発行、株式会社テクノタイムズ)、三谷雄二監修;「タッチパネルの技術と開発」(シーエムシー出版、2004年12月発行)、「FPD International 2009 Forum T−11講演テキストブック」、「Cypress Semiconductor Corporation アプリケーションノートAN2292」等に記載の方法により、投射型静電容量方式のタッチパネルを作製した。
【0136】
作製した各タッチパネルは、光透過率が高く、また素手、手袋を嵌めた手、及び指示具のうち少なくとも一つで表面の任意の位置をタッチすると、その位置を精度よく検出できることを確認した。
【0137】
5.タッチパネル機能付き空間分割方式立体画像表示装置の作製と評価
(1)タッチパネル機能付き空間分割方式の立体画像表示装置の作製
市販の空間分割方式(パッシブメガネ方式)立体画像表示装置(日本ビクター株式会社製GD−463D10)の鑑賞者側表面に、作製したタッチパネルのそれぞれを配置し、タッチパネル機能付き立体画像表示装置をそれぞれ作製した。
【0138】
(2)タッチパネル機能付き空間分割方式の立体画像表示装置のクロストーク評価
作製した各立体画像表示装置の画面に対し、全ライン白表示とした「表示0」と、奇数ラインを黒表示、偶数ラインを白表示とした「表示1」と、奇数ラインを白表示、偶数ラインを黒表示とした「表示2」の3パターンの表示を行い、正面からパッシブメガネ方式用円偏光眼鏡の左右を透過した透過光の強度をトプコンテクノハウス社製の輝度計BM5Aを用いて測定した。このとき、各場所でのクロストーク量は下記式(1)および(2)を計算して求めたクロストーク(右眼)とクロストーク(左眼)の平均値として求めることができる。
式(1):
クロストーク(右眼)=(表示2での右眼鏡透過光)/(表示0での右眼鏡透過光)×100%

式(2):
クロストーク(左眼)=(表示1での左眼鏡透過光)/(表示0での左眼鏡透過光)×100%
【0139】
各立体画像表示装置について、上記式から左右眼のクロストーク量を算出し、さらにその平均値を、各装置のクロストーク量として算出した。結果を下記表に示す。
【0140】
【表2】

【0141】
6.タッチパネル機能付き時分割方式立体画像表示装置の作製と評価
(1)タッチパネル機能付き時分割方式の立体画像表示装置の作製
市販の空間分割方式(アクティブメガネ方式)立体画像表示装置(シャープ株式会社製LC−46LV3)の鑑賞者側に、λ/4フィルムをその光学軸が画面の水平方向に対して45°となるように貼合した。更にその上に作製したタッチパネルのそれぞれを配置し、タッチパネル機能付き立体画像表示装置をそれぞれ作製した。
【0142】
(2)タッチパネル機能付き時分割方式の立体画像表示装置のクロストーク評価
立体画像表示装置の左右用の画面に対し、左右両画面白表示とした「表示a」と、左用画像を黒表示、右目用画像を白表示とした「表示b」と、左目用画像を白表示、右目用画像を黒表示とした「表示c」の3パターンの表示を行い、正面からアクティブシャッター眼鏡の左右を透過した透過光の強度をトプコンテクノハウス社製の輝度計BM5Aを用いて測定した。このとき、各場所でのクロストーク量は下記式(3)および(4)を計算して求めたクロストーク(右眼)とクロストーク(左眼)の平均値として求めることができる。
式(3):
クロストーク(右眼)=(表示cでの右眼鏡透過光)/(表示aでの右眼鏡透過光)×100%

式(4):
クロストーク(左眼)=(表示bでの左眼鏡透過光)/(表示aでの左眼鏡透過光)×100%
【0143】
各立体画像表示装置について、上記式から左右眼のクロストーク量を算出し、さらにその平均値を、各装置のクロストーク量として算出した。結果を下記表に示す。
【0144】
【表3】

【符号の説明】
【0145】
10 立体画像表示装置
12 タッチパネル
13a、13b、13c 導電層
14a、14b、14c 基板
15 空気層
16 制御回路
20 パターンλ/4板
20’ λ/4板
a,b,c 面内遅相軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体画像表示装置、及びその視認面側表面上に配置されたタッチパネルを有するタッチパネル機能付き立体画像表示装置であって、
前記タッチパネルが、導電性ナノワイヤーを含有する導電層を含み、該導電層の消光比が1.2以下であることを特徴とするタッチパネル機能付き立体画像表示装置。
【請求項2】
前記導電性ナノワイヤーが、金属ナノワイヤーである請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記導電性ナノワイヤーが、銀ナノワイヤーである請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記立体画像表示装置が、空間分割方式の立体画像表示装置である請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記立体画像表示装置が、時分割方式の立体画像表示装置である請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
導電性ナノワイヤーを含有する導電層を有し、導電層の消光比が1.2以下であるタッチパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−73449(P2013−73449A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212485(P2011−212485)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】