説明

タッチパネル電極付きカラーフィルタ基板の製造方法およびそれによって得られたタッチパネル電極付きカラーフィルタ基板

【課題】枚葉方式の多面付け生産での、残渣発生やムラ等の不良がない安定した品質を維持できる量産性のあるインセル方式のタッチパネル電極付きカラーフィルタ基板の製造方法と、それによって得られるムラないタッチパネル電極付きカラーフィルタ基板を提供する。
【解決手段】一枚の透明基板上に複数の画面を面付けしたインセル方式のタッチパネル電極付きカラーフィルタ基板の製造方法であって、少なくとも、タッチパネル電極層形成工程と、中間層ベタ形成工程と、無機膜層ベタ形成工程と、カラーフィルタ層形成工程と、ドライエッチング耐性膜形成工程と、ドライエッチング工程と、ドライエッチング耐性膜剥離工程と、をこの順で含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネル式液晶ディスプレイ(LCD)等に用いられる、タッチパネル機能を有するカラーフィルタ基板に関し、特に、タッチパネル電極層とカラーフィルタ層を同一のガラス基板の同一面に形成したタッチパネル電極付きカラーフィルタ基板の製造方法と、それによって製造されたタッチパネル電極付きカラーフィルタ基板に関する。
【背景技術】
【0002】
カラー液晶表示装置等に用いられるカラーフィルタは、カラー液晶表示装置等に不可欠な部材で、液晶表示装置の画質を向上させたり、各画素にそれぞれの原色の色彩を与えたりする役割を有している。このカラーフィルタを構成するフィルタセグメントまたはブラックマトリックス(BM)は、ガラス基板などに感光性材料を塗布し、余剰の溶剤を乾燥除去したあと、画素形成のためのフォトマスクを介し、プロキシミティ露光(近接露光)などで超高圧水銀灯を使用して活性エネルギー線を照射し、硬化(ネガ型)またはアルカリ溶解度を高め(ポジ型)、アルカリ溶液などで溶解する部分を除去し、さらにポストベーキングすることにより形成されている。これを例えば赤色(R)、緑色(G)、青色(B)等の各色について繰り返すことにより、カラーフィルタが作製される。
【0003】
アクティブマトリックス方式の液晶表示装置では、一般に、ガラス基板上に各画素ごとにアクティブ素子(薄膜トランジスタ、TFT)を形成したアレイ基板と、ガラス基板上にカラーフィルタ層と一様な透明電極を形成したカラーフィルタ基板とが、間に液晶を挟んで対向して配置されている。そして、アレイ基板の各TFT素子のスイッチング作用によって各画素の液晶のシャッター作用を制御している。
【0004】
近年、カラー液晶表示装置は、液晶カラーテレビや液晶表示装置一体型のノートパソコンとして大きな市場を形成するに至っている。また、携帯電話機や、携帯情報端末、カーナビゲーションシステムを始め、タッチパネルを液晶表示パネルと一体型で構成して、タッチパネルを画像情報の入出力装置として使用する、タッチパネル式液晶ディスプレイが市場に普及してきた。
【0005】
タッチパネルは、その構造及び検出方式の違いにより、抵抗膜式や静電容量型、超音波方式、光学方式等の様々なタイプがある。このうち、静電容量型タッチパネルは、1枚の基板上に透光性導電膜(透光性電極)を有し、指またはペン等が接触(タッチ)することによって形成される静電容量を介して流れる微弱電流量の変化を検出する事によって被接触位置を特定するもので、指示される内容を入力信号として受け取り液晶表示装置を駆動する。可動部分を有しない静電容量型タッチパネルは、光学特性(透過率)が高く、耐久性や動作温度特性が抵抗膜方式タッチパネルと比べて優れている。
【0006】
静電容量型のタッチパネル電極としては、例えば、特許文献1及び特許文献2には、基板上に透明導電性薄膜からなる、X軸方向に等間隔に配置し相互に平行配列する複数のX軸トレース、及び、Y軸方向に等間隔に配置し相互に平行配列する複数のY軸トレースを備え、並びに、X軸トレース及びY軸トレースは、同一平面上において行列式に交差配置されており、個別のX軸トレース上の各センサユニットは相互連結し、個別のY軸トレース上の各センサユニットは連結せず間隔を空けて配列し、導電性の材料よりなるジャンパーを介して電気的に接続している、コンデンサ式タッチパッド(静電容量型タッチパネル電極)が開示されている。
【0007】
従来は、タッチパネル式液晶ディスプレイ作製時には、例えば特許文献3に開示されているように、タッチパネル電極とカラーフィルタとを別々の基板に作成し、モジュールにする時に貼り合わせる技術が主流であった。しかしながら、タッチパネルのストライプとカラーフィルタのストライプの微妙なズレによる干渉縞の発生や、タッチパネル表面とカラーフィルタ表面との距離により斜め表示で視差が発生する等表示性能面での問題点があった。そこで、例えば特許文献4、及び特許文献5に開示されているように、タッチパネル電極とカラーフィルタ基板の貼り合わせの工程削減目的と、貼りあわせた時に発生する空隙による光学特性低減防止の為に、タッチパネル電極とカラーフィルタを同一のガラス基板の表裏に形成する技術が検討されている。
【0008】
中でも、例えば特許文献6、及び特許文献7に開示されているように、視認側から見てガラス基板の裏面側の片面に、タッチパネル電極層とカラーフィルタ層とを順に積層することで、タッチパネル電極層が透明基板およびTFT用の透明基板に挟まれた表示セルの内部に設けられた構成となるインセル方式の表示装置用タッチパネル一体型カラーフィルタ基板が開発されている。この方式での基板製造は、ガラス基板の片面側への加工となるため、製造工程中の搬送機構等の機械的な動きが単純であり、また、各パターン間の位置あわせも容易で高精度でのパターン形成が可能となる。また、タッチパネル電極を視認側から見てガラス基板の表面側に作製したオンセル方式に較べて、インセル方式ではガラス基板の薄膜化が可能であり、より薄型化、軽量化に貢献できると期待されている。
【0009】
タッチパネル電極を表示パネル上に配置したオンセル方式の場合、視認側の最表面だけでなく、タッチパネル電極と表示パネルとの界面においても光が反射する可能性がある。この結果、照明光のような環境光(外光)がより多く反射してコントラストが低下してしまうとともに、表示パネルで表示される映像光の透過率が低下してしまう。これに対して、インセル方式の場合、照明等の環境光(外光)や映像光等を反射する界面の数を減じることができる。これにより、映像光の透過率が上昇してエネルギー効率が向上するとともに、環境光の反射を抑制して、表示装置に表示される映像のコントラストを向上させることが期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】登録実用新案第3144563号公報
【特許文献2】登録実用新案第3144241号公報
【特許文献3】特開2007−178758号公報
【特許文献4】特開2008−9750号公報
【特許文献5】特開2010−072584号公報
【特許文献6】特開2010−072581号公報
【特許文献7】特開2010−160745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記したインセル方式のタッチパネル電極付きカラーフィルタ基板は、透明基板上に、タッチパネル電極層、カラーフィルタ層をこの順に積層することにより形成される。この
場合、液晶表示装置(LCD)の駆動などによる電気的ノイズを遮蔽するため、タッチパネル電極層とカラーフィルタ層の間にITO等の透明導電性材料からなるシールド層を形成する構成が一般的に考えられている。カラーフィルタ層のすぐ下にITOが設けられていると、その後のフォトリソグラフィー工程で、樹脂ブラックマトリックスやRGB着色層を形成する際に、ITO上にレジストに含まれる樹脂成分が残渣として開口部内や多面付け製造時のピース間に残こる問題が発生する場合がある。この残渣については、液晶駆動としての問題にはならないが、パネル透過率を低下させる原因となり、また、異物の原因として製品の品位が低下して歩留まりが悪くなる問題がある。
【0012】
これに対して、本出願人は、特願2011−085437において、カラーフィルタ層形成工程における残渣の発生を回避した構造として、透明基板の片側表面から順にタッチパネル電極層およびカラーフィルタ層が積層され、タッチパネル電極層とカラーフィルタ層との間に、両層を隔てる中間層を有し、さらに、中間層とカラーフィルタ層との間に絶縁性透明膜からなる無機膜層を有するタッチパネル電極層付きカラーフィルタを発明し提案している。
【0013】
また、シールド層を設ける代わりに、低誘電率材料の有機膜を設ける方式については、現行材料で誘電率4.0以下の有機膜材料を用いた場合、15〜20μm程度の膜厚を確保することでタッチパネル電極が支障なく駆動する。有機膜で15〜20μmの中間層を形成する場合、タッチパネル電極の引き出し電極箇所のパターニングにより引き出し電極を露出させる必要がある。また、一枚のガラス基板に多面付けでタッチパネル一体型カラーフィルタを製造する場合、ケミカルエッチングでの各ピースへの断裁対応のために、面付けされたピースとピース間はパターニングによりガラス面を露出させる必要がある。このため、タッチパネル電極上に15〜20μmの中間層が存在した状態では、その上にカラーフィルタ層を形成する際に、例えばスピンコート法でレジストを塗布したときに、中間層の膜厚段差によってレジストの均一な広がりが妨げられる現象が発生し、レジスト膜厚がばらついてムラとなる不良箇所が発生して、カラーフィルタ層の品質を確保できない問題があった。
【0014】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、枚葉方式の多面付け生産での、残渣発生やムラ等の不良がない、安定した品質を維持できる量産性のあるインセル方式のタッチパネル電極付きカラーフィルタ基板の製造方法と、それによって得られるムラないタッチパネル電極付きカラーフィルタ基板を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の請求項1に係る発明は、一枚の透明基板上に複数の画面を面付けしたインセル方式のタッチパネル電極付きカラーフィルタ基板の製造方法であって、少なくとも、
(1)透明基板上に複数の画面のタッチパネル電極層を形成する、タッチパネル電極層形成工程と、
(2)前記タッチパネル電極層が形成された前記透明基板上全面に、中間層をベタ形成する、中間層ベタ形成工程と、
(3)前記中間層上全面に無機膜層をベタ形成する、無機膜層ベタ形成工程と、
(4)前記無機膜層上に着色感光性樹脂組成物を塗布・乾燥し、前記複数の画面に形成された前記タッチパネル電極層に対応する所定のマスクを介して露光し、現像し、焼成するカラーフィルタ層のパターンニング形成を、所望する色数に従って繰り返す、カラーフィルタ層形成工程と、
(5)ドライエッチング耐性を有する感光性レジストを用いて、前記カラーフィルタ層上に前記ドライエッチング耐性膜を前記複数の画面に対応するパターンで形成する、ドライエッチング耐性膜形成工程と、
(6)前記中間層と前記無機膜の、前記ドライエッチング耐性膜に被覆されていない部位
をドライエッチング処理を行って除去する、ドライエッチング工程と、
(7)前記カラーフィルタ層上の前記ドライエッチング耐性膜を剥離する、ドライエッチング耐性膜剥離工程と、
をこの順で含むことを特徴とするタッチパネル電極付きカラーフィルタ基板の製造方法である。
【0016】
また、本発明の請求項2に係る発明は、前記中間層は透明有機材料からなる絶縁層であることを特徴とする請求項1に記載するタッチパネル電極付きカラーフィルタ基板の製造方法である。
【0017】
また、本発明の請求項3に係る発明は、前記ドライエッチング工程において、前記中間層及び前記無機膜を所定の形状にパターニングすることで、タッチパネル電極の配線電極の引き出し部を露出させることを特徴とする請求項1または2に記載するタッチパネル電極付きカラーフィルタ基板の製造方法である。
【0018】
また、本発明の請求項4に係る発明は、前記ドライエッチング工程において、前記中間層及び前記無機膜を所定の形状にパターニングすることで、前記複数の画面間に透明基板のガラス面を露出させることを特徴とする請求項1または2に記載するタッチパネル電極付きカラーフィルタ基板の製造方法である。
【0019】
次に、本発明の請求項5に係る発明は、請求項1〜4いずれか1項に記載するタッチパネル電極付きカラーフィルタ基板の製造方法により製造されたことを特徴とするタッチパネル電極付きカラーフィルタ基板であって、
透明基板の片側表面から順にタッチパネル電極層およびカラーフィルタ層が積層され、タッチパネル電極層とカラーフィルタ層との間に、両層を隔てる透明有機材料からなる中間層を有し、さらに、中間層とカラーフィルタ層との間に絶縁性透明膜からなる無機膜層を有するタッチパネル電極付カラーフィルタ基板である。
【発明の効果】
【0020】
本発明のタッチパネル電極付きカラーフィルタ基板の製造方法によれば、カラーフィルタ層形成工程以前の工程にて、タッチパネル電極層が形成された透明基板上全面に、中間層がベタ形成され、更にその中間層上全面に無機膜層がベタ形成されている。そのため、カラーフィルタ層形成対象基板全体としての平滑性が保たれ、スピンコート等でのカラーレジストの安定した塗布が可能となる。また、無機膜層によって着色感光性樹脂組成物やその現像液が中間層以下を侵すことなく、残渣等のない安定したカラーフィルタ層の形成が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る、タッチパネル電極付きカラーフィルタ基板の断面構造例を説明する模式図である。
【図2】本発明のタッチパネル電極付きカラーフィルタ基板の製造方法の、一実施形態例を部分断面で説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明のタッチパネル電極付きカラーフィルタ基板の製造方法、及びそれによって得られるタッチパネル電極付きカラーフィルタ基板を、一実施形態に基いて以下に詳細に説明する。なお、以下の説明において、視認方向と反対の透明基板の内側を表側として説明する。
【0023】
一般に、タッチパネル式液晶表示装置は、表示パネル、パネル駆動部、タッチ位置検出部等から構成され、表示パネルはアレイ基板と対向基板および液晶層からなる。本発明のタッチパネル電極付きカラーフィルタ基板は、複数の画素部とタッチ位置を感知するための信号ラインとが形成されたタッチパネル電極層とカラーフィルタ層が対向基板の内側の同一面に形成され、アレイ基板との中間に液晶層を挟持する形で用いられる。
【0024】
図1は、本発明のタッチパネル電極付きカラーフィルタ基板の製造方法によって得られたカラーフィルタ基板の一実施形態での構成を部分断面で示した模式図である。図1に示すように、このタッチパネル電極付きカラーフィルタ基板は、透明基板1の片側表面から順にタッチパネル電極層2およびカラーフィルタ層3が積層され、タッチパネル電極層2とカラーフィルタ層3との間に、両層を隔てる中間層4を有し、さらに、中間層とカラーフィルタ層との間に絶縁性透明膜からなる無機膜層5を有している。
【0025】
上記した本発明のタッチパネル電極付きカラーフィルタ基板は、少なくとも以下の工程を経ることで得られる。図2は、本発明の、タッチパネル電極付きカラーフィルタ基板の製造法の一実施形態を部分断面で説明する模式図である。
【0026】
図2(a)に示すように、無アルカリガラス等の透明基板上1に複数の画面に面付けされた状態で静電容量型のタッチパネル電極層2を形成する。ちなみに、400mm×500mm×0.5tmmサイズの強化ガラス基板に、多面付けで、公知の方法にてタッチパネル電極の形成を行った。個別のタッチパネル電極の構造は、平面図示しないが、透明基板1の表面の同一レイヤーに、X軸方向及びこれと直交するY軸方向に間欠的に配列される複数の第1の透光性電極とX軸方向及びY軸方向に配列されると共に各々が第1の透光性電極の行間及び列間に配置される複数の第2の透光性電極とを備え、第1の透光性電極と第2の透光性電極とは透明絶縁膜によって互いに絶縁され、X軸方向に整列する第1の透光性電極の各々は第1の透光性電極上の透明絶縁膜のコンタクトホールを通じてX軸方向及びY軸方向に配列される導電性材料からなる複数のジャンパーによって相互に電気的に接続される。また、第1の透光性電極と第2の透光性電極とのそれぞれのパネル端部には電気信号を検出するための図示しない検出器に接続されている金属電極を備え、これは最終的に配線電極の引き出し部21として露出される。さらに、その上に感光性透明樹脂で形成される保護膜を備える。なお、本発明のタッチパネル電極付きカラーフィルタ基板の製造方法は、タッチパネル電極の個別の構成に制限されるものではない。
【0027】
透明基板1は、可視光に対して80%以上の透過率を有するものを用いることができ、好ましくは95%以上の透過率を有するものを用いることができる。一般に液晶表示装置に用いられているものでよく、ガラス等の無機透明基板、またはポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、環状オレフィンコポリマー等の透明樹脂基板が使用可能である。本発明に係るタッチパネル機能は静電容量型であるため、従来のタッチスクリーン方式のように外力による歪みの必要は無く、適用する表示パネルの仕様によって材質及び厚みは適宜選択できるが、工程での耐熱性を考慮するとガラス基板が最適である。一般的には厚さ0.7mmのガラス基板が用いられるが、本発明においては、0.5mm厚の強化ガラスが使用可能である。
【0028】
ジャンパーは、導電性材料から形成され、透明基板1の表面にX軸方向及びY軸方向に行列状に配列されている。ジャンパーの各々は、X軸方向に整列する第1の透光性電極をX軸方向に接続するためのものであり、両端部がX軸方向に隣接する1対の第1の透光性電極の各々と重なり合うような位置及び寸法で、且つ、本発明のタッチパネル電極付きカラーフィルタ基板表示面を垂直方向から見たときにカラーフィルタ層3のブラックマトリックスと重なる所定の位置に形成されることが好ましい。ジャンパーは、例えば、メタル(M
AM、APCその他)やITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウムすず)、PEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)等の導電性高分子で形成することができる。ここで、MAMは、Mo(モリブデン)/Al(アルミニウム)/Moの略称で3層構造の導電材料である。また、APCは銀/パラジウム/銅の合金である。
【0029】
絶縁膜は、透光性の絶縁材料をジャンパー及び透明基板1の表面全体を覆うように積層することにより形成される。第1の透光性電極とジャンパーとが重なり合う部分の絶縁膜には、ジャンパーの表面にまで達するスルーホールが設けられる
次に、ITO等インジウム、スズ、ガリウム、亜鉛などの金属酸化物の複合酸化物の透光性導電材料を用いて、蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング等の真空成膜手法を用いた同一工程で、上記した絶縁膜とジャンパーを有する透明基板の上全面に透明導電膜を形成する。その後、この透明導電膜を公知の手法でパターニングして、所定形状の第1の透光性電極と第2の透光性電極を形成する。
【0030】
X軸方向に整列する第1の透光性電極の各々は、絶縁膜上においてはX軸方向及びY軸方向のいずれにも相互に接続されていないが、スルーホールを介して透明基板上のジャンパーに電気的に接続された状態となる。一方、第2の透光性電極の各々は、X軸方向及びY軸方向に配列されると共に各々が第1の透光性電極の行間及び列間に配置され、ジャンパー部の絶縁膜上において、第2の透光性電極と同時にパターニングされる接続部を介してY軸方向に相互に連結されている。
【0031】
上記したタッチパネル電極層2の最表面には、感光性樹脂で形成される保護膜を備えることが好ましい。この保護膜の形成に用いて好適な感光性樹脂は、可視光領域の400〜700nmの全波長領域において透過率が好ましくは80%以上、より好ましくは95%以上である透明樹脂である。この透明樹脂には、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、および感光性樹脂が含まれる。透明樹脂には、必要に応じて、その前駆体である、放射線照射により硬化して透明樹脂を生成するモノマーもしくはオリゴマーを単独で、または2種以上混合して用いることができる。
【0032】
タッチパネル電極層2の表面に、上記した感光性樹脂で形成される保護膜を形成する方法としては、まず透明樹脂組成物を必要に応じて有機溶剤を含有するワニスとして塗布し、その後溶剤を乾燥する。塗布する手段はスピンコート、スリットアンドスピンコートなどが通常用いられるが、タッチパネル電極が形成された透明基板上に均一な膜厚で塗布可能な方法ならばこれらに限定されるものではない。感光性組成物を塗布し透明樹脂層を形成した基板に露光を行う。光源には通常の高圧水銀灯などを用いればよい。また、必要に応じて、ポストベークを行ってもよい。
【0033】
次に、図2(b)に示すように、その上にカラーフィルタ層3を積層する上記タッチパネル電極層2の表面には、タッチパネル電極層2とカラーフィルタ層3との両層を隔てる中間層4をベタで設ける。中間層4は例えば、タッチパネル電極層2側から順に透明有機材料からなる絶縁層及びITOで代表される透明導電材料からなるシールド層の積層体とすることも可能であるが、前述したように、シールド層を設ける代わりに、低誘電率材料の有機膜を設ける方式について、誘電率4.0以下の有機膜材料を用いた場合、15〜20μm程度の膜厚を確保することでタッチパネル電極が支障なく駆動することがわかっている。そこで、本発明においては、中間層4を、透明有機材料からなる厚さ15〜20μmの絶縁層を適用することが可能であり好ましい。そこで、誘電率4.0以下のアクリル系透明材料を使用して。タッチパネル電極層2が形成された前記透明基板1上全面に、誘電率4.0以下のアクリル系透明材料を厚さ15〜20μm程度ベタ形成して中間層4とした。なお、前記した保護膜を、タッチパネル電極とカラーフィルタ層との両層を隔てる中間層の一部の絶縁層として適用することも可能である。
【0034】
次に、図2(c)に示すように、中間層4上全面に、中間層4の上層でありカラ−フィルタ層3の下層となる位置に、絶縁性透明膜からなる無機膜層5を形成する。無機膜層5としては、カラーフィルタ層を形成するためのカラーレジストの現像液でエッチングされない保護膜として、窒化珪素(SiN)が好ましく使用できる。窒化珪素の焼結体をターゲットとしたスパッタリング法や、シリコンをターゲットとした反応性スパッタリング法、あるいは、CVD(Chemical Vapor Deposition)方式を用いた窒化珪素(SiN)が好ましく使用できる。無機膜層5としては、窒化珪素以外にもSiO等が使用でき、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、溶液法等で適用可能である。無機膜層5の厚さは、用いられる無機化合物の種類・構成により最適条件が異なるが、300〜800nmの範囲が好ましく、その値は適宜選択される。より好ましくは、400〜600nmの範囲である。
【0035】
次に、図2(d)に示すように、その下層にタッチパネル電極層2が形成された複数の画面にパターン形成された多面付け透明基板1上の無機膜層5上に、公知のフォトリソ法を用いて、カラーフィルタ層3を形成する。無機膜層5上全面に着色感光性樹脂組成物を塗布・乾燥し、複数の画面に面付け形成されたタッチパネル電極層2に対応する所定のマスクを介して露光し、現像し、焼成するカラーフィルタ層3のパターンニング形成を行った。この工程をBM31、R32、G33、B34等所望する色数に従って繰り返すことで着色層を形成した。その後、この基板に公知の方法にて共通電極としてのITO等の透明導電膜35の形成を行い、更に、必要に応じて、図示しないフォトスペーサ(PS)をBM31の上に、透明導電膜35を介して形成する。
【0036】
まず、無機膜層5の上に、画素部に対応する開口領域を画定するブラックマトリックス(BM)31を形成する。この場合、前記したタッチパネル電極のジャンパーが、基板表示面を垂直方向から見たときに、このブラックマトリックスと重なる所定の位置となるようにブラックマトリックスのピッチ及び形状を設計する。本発明においては、このジャンパーとブラックマトリックスの位置の条件を満たす範囲であれば、第1の透光性電極3と第2の透光性電極4のそれぞれのピッチは、例えば、赤色画素(R)32、緑色画素(G)33、青色画素(B)34で構成される単位画素毎にも、あるいは、所定個数の単位画素毎にも形成することができ、その形状も矩形以外の各種形状を選択することが可能である。
【0037】
ブラックマトリックス31は、黒色樹脂を用いて形成され、液晶表示装置のコントラストアップのために各画素間に形成する細い遮光パターンである。ブラックマトリックスを形成する方法としては、黒色感光性樹脂を用いフォトリソグラフィー法によってマトリックス状に形成する方法がある。黒色の色材としては、カーボンブラックや複数の有機顔料を用いることができる。
【0038】
次に、開口領域に赤色画素(R)32、緑色画素(G)33、青色画素(B)34等複数色の着色画素を形成する。着色画素を形成する方法としては顔料分散法が主流となっている。顔料分散法は、有機顔料などの色材を分散した着色感光性樹脂の塗布層を公知のフォトリソグラフィー法によってパターニングすることにより、カラーフィルタを複数の着色層(赤色、緑色、青色など)の画素に形成する方法である。複数の着色層の入色順を限定するものでないが、アライメントの都合からブラックマトリクスのパターン形成後に着色層の塗布、露光、現像等により着色画素(赤色画素、緑色画素、青色画素など)を順次形成することが望ましい。ブラックマトリックス及び着色画素の形成に用いる黒色感光性樹脂及び着色感光性樹脂は、例えば、樹脂バインダに顔料を、分散剤を用いて分散させ、この分散液にモノマー、開始剤、増感剤、溶剤などを添加して調製される。なお、この工程において、下地の形状にもとづく塗布ムラや、面付け間の開口面でのレジスト残渣の発生
等の不良現象は発生していない。
【0039】
カラーフィルタ層の上部には更にITO等の透明導電膜35からなる共通電極を設ける。なお、適用する液晶の駆動タイプによっては共通電極を必要としない場合がある。以上のようにして、タッチパネル電極層2とカラーフィルタ層3が積層一体化される。次に、図4(e)に示すように、ドライエッチング耐性を有する感光性レジストを用いて、公知のフォトリソ法を用いて、カラーフィルタ層上にドライエッチング耐性膜6を、複数の画面面付けに対応した所定のパターン形状にてパターン成膜する。
【0040】
その後、図2(f)に示すように、公知の活性ガスのプラズマを用いたプラズマエッチング等の方式を用いてドライエッチング処理を行い、ドライエッチング耐性膜6に被覆されていない部位の無機膜層5およびその下地の中間層4をエッチング処理を行って除去する。この時、タッチパネル電極層2の配線電極の引き出し部21を露出させる。また、複数の画面面付け間に透明基板1のガラス面を露出させる。
【0041】
次いで、図2(g)に示すように、カラーフィルタ層3上のドライエッチング耐性膜6を剥離する。以上の工程を経ることで、一枚のガラス基板に複数の画面が面付けされたタッチパネル電極付カラーフィルタ基板が得られる。最後に、この多面付け基板をケミカルエッチング法等で各画面ピースへと断裁して、前述した図1に示すように、本発明のタッチパネル電極付カラーフィルタ基板が得られる。すなわち、透明基板1の片側表面から順にタッチパネル電極層2およびカラーフィルタ層3が積層され、タッチパネル電極層2とカラーフィルタ層3との間に、両層を隔てる透明有機材料からなる中間層4を有し、さらに、中間層4とカラーフィルタ層3との間に絶縁性透明膜からなる無機膜層5を有するタッチパネル電極付カラーフィルタ基板である。
【0042】
以上説明したように、本発明の製造方法では、カラーフィルタ層形成工程以前の工程にて、タッチパネル電極層が形成された透明基板上全面に、中間層がベタ形成され、更にその中間層上全面に無機膜層が形成されている。そのため、カラーフィルタ層形成対象基板全体としての平滑性が保たれ、スピンコート等でのカラーレジストの安定した塗布が可能となる。また、無機膜層によって着色感光性樹脂組成物やその現像液が中間層以下を侵すことなく、残渣等のない安定したカラーフィルタ層の形成が可能となった。
【符号の説明】
【0043】
1・・透明基板 2・・タッチパネル電極 21・・配線電極の引き出し部
3・・カラーフィルタ層 31・・ブラックマトリックス(BM)
32・・赤色画素(R) 33・・緑画素(G) 34・・青画素(B)
35・・透明導電膜
4・・中間層 5・・無機膜層 6・・ドライエッチング耐性膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一枚の透明基板上に複数の画面を面付けしたインセル方式のタッチパネル電極付きカラーフィルタ基板の製造方法であって、少なくとも、
(1)透明基板上に複数の画面のタッチパネル電極層を形成する、タッチパネル電極層形成工程と、
(2)前記タッチパネル電極層が形成された前記透明基板上全面に、中間層をベタ形成する、中間層ベタ形成工程と、
(3)前記中間層上全面に無機膜層をベタ形成する、無機膜層ベタ形成工程と、
(4)前記無機膜層上に着色感光性樹脂組成物を塗布・乾燥し、前記複数の画面に形成された前記タッチパネル電極層に対応する所定のマスクを介して露光し、現像し、焼成するカラーフィルタ層のパターンニング形成を、所望する色数に従って繰り返す、カラーフィルタ層形成工程と、
(5)ドライエッチング耐性を有する感光性レジストを用いて、前記カラーフィルタ層上に前記ドライエッチング耐性膜を前記複数の画面に対応するパターンで形成する、ドライエッチング耐性膜形成工程と、
(6)前記中間層と前記無機膜の、前記ドライエッチング耐性膜に被覆されていない部位をドライエッチング処理を行って除去する、ドライエッチング工程と、
(7)前記カラーフィルタ層上の前記ドライエッチング耐性膜を剥離する、ドライエッチング耐性膜剥離工程と、
をこの順で含むことを特徴とするタッチパネル電極付きカラーフィルタ基板の製造方法。
【請求項2】
前記中間層は透明有機材料からなる絶縁層であることを特徴とする請求項1に記載するタッチパネル電極付きカラーフィルタ基板の製造方法。
【請求項3】
前記ドライエッチング工程において、前記中間層及び前記無機膜を所定の形状にパターニングすることで、タッチパネル電極の配線電極の引き出し部を露出させることを特徴とする請求項1または2に記載するタッチパネル電極付きカラーフィルタ基板の製造方法。
【請求項4】
前記ドライエッチング工程において、前記中間層及び前記無機膜を所定の形状にパターニングすることで、前記複数の画面間に透明基板のガラス面を露出させることを特徴とする請求項1または2に記載するタッチパネル電極付きカラーフィルタ基板の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか1項に記載するタッチパネル電極付きカラーフィルタ基板の製造方法により製造されたことを特徴とするタッチパネル電極付きカラーフィルタ基板であって、
透明基板の片側表面から順にタッチパネル電極層およびカラーフィルタ層が積層され、タッチパネル電極層とカラーフィルタ層との間に、両層を隔てる透明有機材料からなる中間層を有し、さらに、中間層とカラーフィルタ層との間に絶縁性透明膜からなる無機膜層を有するタッチパネル電極付カラーフィルタ基板。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−15703(P2013−15703A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148948(P2011−148948)
【出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】