説明

タンク及び冷却システム

【課題】冷却システムの構成を簡易なものとし、かつタンク内におけるエアの噛み込みを抑制することができるタンク及び当該タンクを備える冷却システムを提供する。
【解決手段】車輌に搭載された発熱物体を冷却する冷却水を収容するタンクであって、前記タンクは、前記タンク内を流れる前記冷却水の冷却水流路を形成する隔壁と、前記隔壁を開閉させ、前記冷却水流路と異なる冷却水バイパス流路を形成するバイパス流路形成手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輌に搭載される発熱物体を冷却する冷却システムに用いられるタンク及び冷却システムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車、電気自動車等の車輌に設けられるモータジェネレータ、インバータ、エアコンプレッサ、エアコンユニット等の補機類は、駆動時に発熱する。発熱する補機(発熱物体)類の温度を適正に保つために、冷却水によって冷却する冷却システムが設けられる。
【0003】
図7は、発熱物体の冷却に使用される一般的な冷却システムの構成を示す模式図である。図7に示すように、冷却システム3は、発熱物体(インバータ38(インバータ本体)、モータジェネレータ40(モータジェネレータ本体))を冷却する冷却水を収容するタンク42と、冷却水を循環させるポンプ44と、冷却水と外気との熱交換を行う熱交換器46と、循環路48a,48b,48c,48d,48eとを備える。循環路48aは、ポンプ44の吐出側(不図示)とモータジェネレータ40の冷却水供給口(不図示)とを接続し、循環路48bは、モータジェネレータ40の冷却水排出口(不図示)と熱交換器46の供給口(不図示)とを接続し、循環路48cは、熱交換器46の排出口(不図示)とタンク42の供給口50とを接続し、循環路48dは、タンク42の排出口52とインバータ38の冷却水供給口(不図示)とを接続し、循環路48eは、インバータ38の冷却水排出口(不図示)とポンプ44の吸引側(不図示)とを接続するものである。
【0004】
冷却システムの具体的な動作については後述するが、タンク42に冷却水を充填した後、ポンプ44を稼動させることにより、冷却水が、循環路48a,48b,48c,48d,48eを通り(冷却水の流れは、図7に示す矢印で表している)、発熱物体(インバータ38、モータジェネレータ40)と熱交換することによって、発熱物体を冷却する。
【0005】
図8は、冷却システムに用いられるタンクの模式断面図である。図8に示すようにタンク42は、タンク42内を流れる冷却水の冷却水流路54を形成する隔壁56と、冷却水を充填する注入口58と、冷却水を供給排出する供給口50及び排出口52と、外壁60とを有する。タンク42内の冷却水の流れは、図8に示すように、タンク42の供給口50からタンク42内に冷却水が供給され、隔壁56により形成された冷却水流路54に沿って流れ、排出口52から排出される(図8に示す矢印A)。
【0006】
車輌の急発進、急停止等の走行状態により、タンク42内の冷却水の液面62が変化する場合や、登坂路、降坂路等の路面状態により、タンク42自体が傾斜する場合には、タンク42内におけるエアの噛み込みが発生し易くなる。そして、エアの噛み込みが発生し、例えば冷却水と共にエアがポンプ44内に流入すると、ポンプ44のエアロックが起こり、冷却システム3の冷却性能が低下する場合がある。
【0007】
図9は、タンクが傾斜状態にある場合のタンクの模式断面図である。図9に示すように、タンク42が傾斜すると、タンク42内の冷却水の液面62と冷却水流路54を流れる冷却水との接触面積が増える。このように、液面62と冷却水流路54を流れる冷却水との接触面積が増えると、エアの噛み込みが発生し易くなる。
【0008】
例えば、特許文献1には、エアの噛み込みを抑制するために、冷却水の流量を制御する制御装置を有する冷却システムが提案されている。
【0009】
エアの噛み込みを抑制するものではないが、例えば、特許文献2には、循環路内のエア抜きを容易にするために、タンクとインバータとを接続するバイパス管路を有する冷却システムが提案されている。
【0010】
【特許文献1】特開2005−9338号公報
【特許文献2】特開2004−60598号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、特許文献1の冷却システムでは、タンクにおけるエアの噛み込みを抑制するための制御装置が必要であり、特許文献2の冷却システムでは、循環路内のエア抜きをするためのバイパス管路が必要であるため、冷却システムの部品点数が多くなり、冷却システムの構成を複雑にする場合がある。
【0012】
また、特許文献2の冷却システムでは、そもそもタンク内におけるエアの噛み込みを抑制することができない。
【0013】
本発明は、冷却システムの構成を簡易なものとし、かつタンク内におけるエアの噛み込みを抑制することができるタンク及び当該タンクを備える冷却システムである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、車輌に搭載された発熱物体を冷却する冷却水を収容するタンクであって、前記タンクは、前記タンク内を流れる前記冷却水の冷却水流路を形成する隔壁と、前記隔壁を開閉させ、前記冷却水流路と異なる冷却水バイパス流路を形成するバイパス流路形成手段とを有する。
【0015】
また、前記タンクにおいて、前記タンクが、前記発熱物体を収容する収容体と一体形成されたものであることが好ましい。
【0016】
また、前記タンクにおいて、前記バイパス流路形成手段は、前記タンク内に冷却水が供給される供給口付近に設けられることが好ましい。
【0017】
また、前記タンクにおいて、前記冷却水バイパス流路の流路長さは、前記冷却水流路の流路長さより短いものであることが好ましい。
【0018】
また、本発明は、車輌に搭載された発熱物体を冷却する冷却水を収容するタンクを含む冷却システムであって、前記タンクは、前記タンク内を流れる前記冷却水の冷却水流路を形成する隔壁と、前記隔壁を開閉させ、前記冷却水流路と異なる冷却水バイパス流路を形成するバイパス流路形成手段とを有する。
【0019】
また、前記冷却システムにおいて、前記タンクは、前記発熱物体を収容する収容体と一体形成されたものであることが好ましい。
【0020】
また、前記冷却システムにおいて、前記バイパス流路形成手段は、前記タンク内に冷却水が供給される供給口付近に設けられることが好ましい。
【0021】
また、前記冷却システムにおいて、前記冷却水バイパス流路の流路長さは、前記冷却水流路の流路長さより短いものであることが好ましい。
【0022】
また、前記冷却システムにおいて、前記発熱物体は、インバータであることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、車輌に搭載された発熱物体を冷却する冷却水を収容するタンクが、前記タンク内を流れる前記冷却水の冷却水流路を形成する隔壁と、前記隔壁を開閉させ、前記冷却水流路と異なる冷却水バイパス流路を形成するバイパス流路形成手段とを有することによって、冷却システムの構成を簡易なものとし、かつタンク内におけるエアの噛み込みを抑制することができるタンク及び当該タンクを備える冷却システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の実施の形態について以下説明する。
【0025】
図1は、本発明の実施形態に係る冷却システムの構成の一例を示す模式断面図である。図1に示すように冷却システム1は、発熱物体としてのインバータ10(実質的にはインバータ本体)及びモータジェネレータ12(実質的にはモータジェネレータ本体)を冷却する冷却水を収容するタンク14と、冷却水を循環させるポンプ16と、冷却水と外気との熱交換を行う熱交換器18と、循環路20a,20b,20c,20d,20eとを備える。循環路20aは、ポンプ16の吐出側(不図示)とモータジェネレータ12の冷却水供給口(不図示)とを接続し、循環路20bは、モータジェネレータ12の冷却水排出口(不図示)と熱交換器18の冷却水供給口(不図示)とを接続し、循環路20cは、熱交換器18の排出口(不図示)とタンク14の供給口22とを接続し、循環路20dは、タンク14の排出口24とインバータ10の冷却水供給口(不図示)とを接続し、循環路20eは、インバータ10の冷却水排出口(不図示)とポンプ16の吸引側(不図示)とを接続するものである。
【0026】
インバータ10は、インバータ本体、インバータ本体を収容する収容体、冷却水が流れる冷却水通路、冷却水供給口、冷却水排出口を有する。冷却水通路は、冷却水供給口及び冷却水排出口と連結している。モータジェネレータ12は、モータジェネレータ本体、モータジェネレータ本体を収容する収容体、冷却水が流れる冷却水通路、冷却水供給口、冷却水排出口を有する。モータジェネレータ12も同様に、冷却水通路は、冷却水供給口及び冷却水排出口と連結している。
【0027】
次に、図1に示す冷却システム1の動作について説明する。タンク14の注入口26から冷却水を充填した後、ポンプ16を稼動させる。ポンプ16の稼動により、冷却水は、循環路20aを通り、モータジェネレータ12(具体的には、不図示の冷却水通路)に供給される。モータジェネレータ12に供給された冷却水は、発熱したモータジェネレータ12(実質的にはモータジェネレータ本体)と熱交換して、モータジェネレータ12を冷却し、モータジェネレータ12から排出される。排出された冷却水は、循環路20bを通り、熱交換器18に供給される。供給された冷却水は、熱交換器18により外気と熱交換して冷却され、熱交換器18から排出される。排出された冷却水は、循環路20cを通り、タンク14の供給口22を介してタンク14に供給される。冷却水は、後述するタンク14内の冷却水流路を通り、タンク14の排出口24を介して、循環路20dを通り、インバータ10(具体的には、不図示の冷却水通路)に供給される。インバータ10に供給された冷却水は、発熱したインバータ10(実質的にはインバータ本体)と熱交換して、インバータ10を冷却し、インバータ10から排出される。排出された冷却水は、循環路20eを通り、ポンプの吸引側に送られる。このように冷却水を循環させることにより、発熱物体を冷却することができる。
【0028】
図2は、本実施形態に係るタンクの模式断面図である。図2に示すように、タンク14は、隔壁28と、隔壁28を開閉し、バイパス流路形成手段としての弁30及び制御装置31と、外壁33と、注入口26と、供給口22と、排出口24とを有する。
【0029】
隔壁28は、タンク14内を流れる冷却水の冷却水流路34(図2に示す矢印Aは、冷却水流路34を通る冷却水の流れを示している。)を形成するものである。隔壁28を設けることによって、冷却システム1の通常の動作時において、タンク14の排出口24から冷却水が排水される際に、タンク14内の冷却水の液面32が排出口24側に下がることを抑制することができる。そのため、冷却システム1の通常の動作時でのタンク14におけるエアの噛み込みを抑制することができる。
【0030】
バイパス流路形成手段としての弁30及び制御装置31は、隔壁28を開閉させ冷却水流路34と異なる冷却水バイパス流路を形成することができるものである。
【0031】
タンク14内におけるエアの噛み込みの発生は、車輌の急発進、急停止、急旋回等の走行状態により、タンク14内の冷却水の液面32が変化する場合や、登坂路、降坂路等の路面状態等により、タンク14自体が傾斜する場合に起こり易い。本実施形態では、制御装置31により、冷却水の温度、車輌のアクセル開度、車内姿勢等から車輌の走行状態、路面状態等を検出し、弁30に隔壁28の開閉の信号を送る。そして、制御装置31の信号に基づいて、弁30により隔壁28の開閉を行い、冷却水流路34と異なる冷却水バイパス流路を形成することができる。
【0032】
図3は、本実施形態に係るタンクにおいて、弁が開いた状態の本実施形態に係るタンクの模式断面図である。図3に示すように、バイパス経路手段としての弁30及び制御装置31は、タンク14内におけるエアの噛み込みを抑制するために、隔壁28を開閉させ、冷却水流路34の冷却水の流れ(図2に示す矢印A)と異なる冷却水バイパス流路36(図3に示す矢印B。矢印Bは冷却水バイパス流路36を通る冷却水の流れを示している。)を形成するものである。
【0033】
登坂路の路面状態により、タンク14が傾斜する場合を一例として、本実施形態に係るタンクの動作について説明する。
【0034】
図4(イ)は、タンクが水平状態にある場合のタンクの動作を説明するための図であり、図4(ロ)は、タンクが傾斜状態にある場合のタンクの動作を説明するための図である。図4(イ),(ロ)に示す矢印Aは、冷却水流路34を通る冷却水の流れを示し、矢印Bは、冷却水バイパス流路36を通る冷却水の流れを示している。図4(イ)に示すように、タンク14が水平である場合には、制御装置31から弁30に信号を送らず(又は閉の信号を送る)、弁30は閉じた状態となる。そのため、タンク14の供給口22からタンク14内に供給される冷却水は、隔壁28により形成された冷却水流路34に沿って流れる(図4(イ)に示す矢印A)。このようにタンク14が水平である場合には、タンク14内の冷却水の液面32とタンク14内を流れる冷却水の接触する面積は少ないため、エアの噛み込みは、ほとんど起こらない。
【0035】
しかし、登坂路のように車輌が傾斜状態となって、タンク14が傾斜する場合には、図4(ロ)に示すように、タンク14内の冷却水の液面32と冷却水流路34に沿って流れる冷却水との接触する面積が増え、エアの噛み込みが発生し易くなる。本実施形態では、図4(ロ)に示すように、タンク14が傾斜した場合には、制御装置31により路面状態を検出し、弁30に隔壁28の開閉の信号が送られる。信号を受けた弁30により、隔壁28を開き、冷却水バイパス流路36が形成される。
【0036】
これにより、タンク14の供給口22からタンク14内に供給される冷却水は、冷却水バイパス流路36を通る(図4(ロ)に示す矢印B)。そのため、冷却水流路34を通る冷却水の流量が減るか、又は冷却水流路34を通る冷却水の流速が遅くなるため、エアの噛み込みを抑制することができる。
【0037】
上記でも説明したように、本実施形態は、登坂路の場合に限られたものでない。車輌の急発進、急停止、急旋回等の走行状態により、タンク14内の冷却水の液面が変化する場合でも、制御装置31により、冷却水の温度、車輌のアクセル開度等から走行状態を検出し、弁30に信号を送ることによって、隔壁28を開けて冷却水バイパス流路36を形成し、タンク14内におけるエアの噛み込みを抑制することができる。車輌の傾斜状態の検出は、制御装置31にピッキングセンサ等を備えることにより検出することができ、冷却水の温度は、温度センサ等を備えることにより検出することができ、車輌のアクセル開度は、アクセルセンサ等を備えることにより検出することができる。
【0038】
本実施形態のバイパス流路形成手段は、上記説明した弁30及び制御装置31に限定されるものではなく、タンク14内の冷却水の液面32の変化等により隔壁28を開閉させ、冷却水流路34と異なる冷却水バイパス流路36を形成することができるものであればよい。例えば、急発進、登坂路等の場合には、モータジェネレータ12等の発熱量が増加するため、モータジェネレータ12等を冷却する冷却水の温度も上昇する。そのため、冷却水が所定の温度に達すると変形するような形状記憶合金をバイパス流路形成手段として隔壁28の一部に設けることにより、隔壁28を開閉させ冷却水バイパス流路36を形成するものでもよい。また、登坂路等のようにタンク14が傾斜するような場合には、タンク14の傾斜に伴って、自重により隔壁28を開閉させる弁をバイパス流路形成手段として用いてもよい。
【0039】
図5は、本発明の他の実施形態に係る冷却システムの構成の一例を示す模式図である。図5に示すように冷却システム2は、発熱物体としてのインバータ及びモータジェネレータ12を冷却する冷却水を収容するタンク15と、冷却水を循環させるポンプ16と、冷却水と外気との熱交換を行う熱交換器18と、循環路20a,20b,20c,20eとを備える。図5に示す冷却システム2において、図1に示す冷却システム1と同様の構成については同一の符号を付している。
【0040】
図6は、本実施形態に係るタンク15の構成の一例を示す模式断面図である。図6に示すように、タンク15は、隔壁28と、隔壁28を開閉し、バイパス流路形成手段としての弁30及び制御種装置31と、外壁33aと、収容体33bと、注入口26と、供給口22と、排出口24とを有する。本実施形態に係るタンク15は、外壁33aとインバータ本体を収容する収容体33bとを一体形成したものであり、収容体33bにも同様に、隔壁28により冷却水流路34が形成されている。収容体33b内には、インバータ本体が配置される。
【0041】
冷却システムを車輌等に搭載するためのスペースには限界があり、冷却システムが大型化すると、タンクへの冷却水注入をスムーズに行うことができない場合がある。上記構成にすることによって、図1に示すようなタンク14とインバータ10とを接続する循環路20dを必要とせず、冷却システムを簡易な構成とすることができる。すなわち、冷却システムの循環路がなくなり、タンクへの冷却水量が減ることで注入をスムーズに行うことができる(冷却水と空気がタンク内にあるため、空気が抜けないと冷却水を注入することができない)。
【0042】
本実施形態のタンク内の冷却水の流れについて説明する。図6に示すように、タンク15の供給口22からタンク15内に供給される冷却水は、隔壁28により形成された冷却水流路34に沿って流れる(図6に示す矢印A)。本実施形態の冷却水流路34は、インバータ本体の冷却も兼ねている。そして、冷却水流路34を通った冷却水は、排出口24から排出される。
【0043】
本実施形態における、バイパス流路形成手段としての弁30及び制御種装置31は、上記説明した通りである。また、バイパス流路形成手段は、弁30及び制御種装置31に限られず、上記説明した形状記憶合金、自重により隔壁を開閉させる弁等であってもよい。
【0044】
本実施形態のタンク(例えば図2に示すタンク14又は図6にタンク15)に用いられるバイパス流路形成手段は、隔壁28を開閉し、冷却水流路34と異なる冷却水バイパス流路36を形成することができる箇所に設けられるものであれば特に制限されるものではないが、タンク(タンク14又は15)の供給口22付近に設けられるものであることが好ましい。これにより、タンクの冷却水流路34を通過する冷却水の流速、流量を抑えて、エアの噛み込みをより抑えることができる。
【0045】
冷却水バイパス流路(例えば図3に示す冷却水バイパス流路36)は、冷却水流路34に流れる冷却水の流量を減らすか、又は冷却水流路34に流れる冷却水の流速を遅くするためのものであれば、バイパス流路形成手段を複数設けることによって、複数形成されてもよい。また、冷却水バイパス流路36の流路長さは、冷却水流路34を通過する冷却水の流速、流量を抑えることができる点で、冷却水流路34の流路長さより短いものであることが好ましい。
【0046】
電気自動車等の車輌において、モータジェネレータ12は、必要に応じて発電機又は回転電機として機能するものである。本実施形態の冷却システムでは、循環路にモータジェネレータを必ずしも設ける必要はない。
【0047】
インバータ10は、例えば、モータジェネレータ12が発電機として機能するとき、スイッチングにより充電圧および発電量を調整し、モータジェネレータ12が回転電機として機能するときは、車輌搭載の電源からモータジェネレータ12に電力を供給することができるものである。本実施形態の冷却システムにおいて、冷却する発熱物体は、インバータ10(実質的にはインバータ本体)であることが好ましい。
【0048】
以上のように、本実施形態の冷却システムでは、車輌に搭載された発熱物体を冷却する冷却水を収容するタンクに、タンク内を流れる冷却水の冷却水流路を形成する隔壁と、その隔壁を開閉させ、冷却水流路と異なる冷却水バイパス流路を形成するバイパス流路形成手段とを備えることにより、冷却システムの構成を簡易なものとし、かつタンク内におけるエアの噛み込みを抑制することができる。また、タンクと発熱物体を収容する収容体と一体形成することにより、冷却システムの構成をより簡易なものとすることができる。これらにより、冷却システムを小型化できるため、タンクへの冷却水注入をスムーズに行うことができ、また、冷却システムの冷却性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施形態に係る冷却システムの構成の一例を示す模式断面図である。
【図2】本実施形態に係るタンクの模式断面図である。
【図3】本実施形態に係るタンクにおいて、弁が開いた状態の本実施形態に係るタンクの模式断面図である。
【図4】(イ)は、タンクが水平状態にある場合のタンクの動作を説明するための図であり、(ロ)は、タンクが傾斜状態にある場合のタンクの動作を説明するための図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係る冷却システムの構成の一例を示す模式図である。
【図6】本実施形態に係るタンク15の構成の一例を示す模式断面図である。
【図7】発熱物体の冷却に使用される一般的な冷却システムの構成を示す模式図である。
【図8】冷却システムに用いられるタンクの模式断面図である。
【図9】タンクが傾斜状態にある場合のタンクの模式断面図である。
【符号の説明】
【0050】
1,2,3 冷却システム、10,38 インバータ、12,40 モータジェネレータ、14,15,42 タンク、16,44 ポンプ、18,46 熱交換器、20a,20b,20c,20d,20e,48a,48b,48c,48d,48e 循環路、22,50 供給口、24,52 排出口、26,58 注入口、28,56 隔壁、30 弁、31 制御装置、33,33a,60 外壁、32,62 液面、33b 収容体、34,54 冷却水流路、36 冷却水バイパス流路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輌に搭載された発熱物体を冷却する冷却水を収容するタンクであって、
前記タンクは、前記タンク内を流れる前記冷却水の冷却水流路を形成する隔壁と、前記隔壁を開閉させ、前記冷却水流路と異なる冷却水バイパス流路を形成するバイパス流路形成手段とを有することを特徴とするタンク。
【請求項2】
請求項1記載のタンクであって、前記タンクは、前記発熱物体を収容する収容体と一体形成されたものであることを特徴とするタンク。
【請求項3】
請求項1又は2記載のタンクであって、前記バイパス流路形成手段は、前記タンク内に冷却水が供給される供給口付近に設けられることを特徴とするタンク。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のタンクであって、前記冷却水バイパス流路の流路長さは、前記冷却水流路の流路長さより短いものであることを特徴とするタンク。
【請求項5】
車輌に搭載された発熱物体を冷却する冷却水を収容するタンクを含む冷却システムであって、
前記タンクは、前記タンク内を流れる前記冷却水の冷却水流路を形成する隔壁と、前記隔壁を開閉させ、前記冷却水流路と異なる冷却水バイパス流路を形成するバイパス流路形成手段とを有することを特徴とする冷却システム。
【請求項6】
請求項5記載の冷却システムであって、前記タンクは、前記発熱物体を収容する収容体と一体形成されたものであることを特徴とする冷却システム。
【請求項7】
請求項5又は6記載の冷却システムであって、前記バイパス流路形成手段は、前記タンク内に冷却水が供給される供給口付近に設けられることを特徴とする冷却システム。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか1項に記載の冷却システムであって、前記冷却水バイパス流路の流路長さは、前記冷却水流路の流路長さより短いものであることを特徴とする冷却システム。
【請求項9】
請求項5〜8のいずれか1項に記載の冷却システムであって、前記発熱物体は、インバータであることを特徴とする冷却システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−265505(P2008−265505A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−110736(P2007−110736)
【出願日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】