説明

タンタル酸リチウム結晶の製造方法

本発明は、タンタル酸リチウム結晶の製造方法であって、少なくとも、還元性雰囲気下キュリー点以上の温度T1’で熱処理したタンタル酸リチウムまたはニオブ酸リチウム若しくは水素を貯蔵した水素貯蔵金属を含む第一の元材を、単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶と重ね合わせ、還元性雰囲気下キュリー点より低い温度T2’で熱処理することによって、前記単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶の導電率を向上させることを特徴とするタンタル酸リチウム結晶の製造方法である。これによりタンタル酸リチウム結晶に温度変化を与えることで発生する表面電荷を、タンタル酸リチウム結晶の導電率を向上させることで、発生した表面電荷を蓄積させることなく消失させることが可能であるとともに、単一分極構造を維持して有効な圧電性を発揮できるタンタル酸リチウム結晶の製造方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、弾性表面波素子などのウエハ上に金属電極でパターンを形成して電気信号を処理する用途に使用するタンタル酸リチウム結晶の製造方法に関する。
【背景技術】
タンタル酸リチウムは、弾性表面波(SAW)を用いて信号処理を行なうSAWデバイス等、電気的特性を利用する用途に使用される。この用途に適したタンタル酸リチウム結晶は、その結晶構造に起因し、SAWデバイスに必要とされる圧電気応答(圧電性)を示すが、通常の方法で入手できるタンタル酸リチウム結晶は圧電性に加えて焦電気応答(焦電性)を生じる。
タンタル酸リチウム結晶の圧電性は、タンタル酸リチウム結晶をSAWデバイスとして利用する時に不可欠となる特性である。一方、焦電性はタンタル酸リチウム結晶に温度変化を与えることで結晶の外側表面に発生する表面電荷として観察され、結晶を帯電させるものである。この表面電荷は、タンタル酸リチウム結晶をSAWデバイスとして使用するときに、タンタル酸リチウム結晶からなるウエハ上に形成された金属電極間で火花放電を起こし、SAWデバイスの著しい性能の欠陥を引き起こすとされている。このため、タンタル酸リチウム結晶を用いるSAWデバイスの設計では、表面電荷を発生させない工夫、発生した表面電荷を逃がす工夫、あるいは金属電極同士の間隔を広くするなどの工夫等が必要とされ、これらの工夫を取り入れるために、SAWデバイス自体の設計に制約が加わるといった不利益があった。
また、タンタル酸リチウム結晶を用いたSAWデバイスの製造工程では、金属膜の蒸着、レジストの除去といった工程でタンタル酸リチウム結晶に熱を加える工程があり、これらの工程で加熱あるいは降温といった温度変化がタンタル酸リチウム結晶に与えられると、タンタル酸リチウム結晶の焦電性により外側表面に電荷が発生する。前述のように、この表面電荷により、金属電極間に火花放電が生じ、電極パターンの破壊を引き起こすことがあるため、SAWデバイスの製造工程では出来るだけ温度変化を与えないように工夫をしたり、温度変化を緩やかにするといった工夫をしており、これら工夫のために製造工程のスループットが低下したり、あるいはSAWデバイスの性能を保証するマージンが狭くなるといった不利益が生じている。
通常の方法で製造されたタンタル酸リチウム結晶では、焦電性により発生した外側表面の電荷は周囲環境からの遊離電荷により中和され、時間の経過とともに消失するが、この消失時間は数時間以上と長いので、SAWデバイスの製造工程において、生じた表面電荷をこのような自然の中和により消失させることは工業的ではない。
上記背景から、SAWデバイスのような用途に対しては、デバイス特性を発揮するために必要とされる圧電性を維持した上で、結晶外側表面に電荷の発生あるいは蓄積が見られない圧電性結晶の要求が増大しており、このような用途に対して表面電荷の蓄積が見られないタンタル酸リチウム結晶が必要とされている。
この表面電荷の蓄積を防止するため、タンタル酸リチウム結晶の導電率を向上させることが考えられ、導電率を向上させたタンタル酸リチウム結晶の製造方法として、例えば特開平11−92147号公報において、タンタル酸リチウム結晶を500℃以上の還元雰囲気に晒すという方法が開示されている。しかし、このような方法でタンタル酸リチウム結晶を還元処理すると、還元雰囲気での処理温度がタンタル酸リチウムのキュリー点である610℃以上ではSAWデバイス用途で必要とされる単一分極構造が失われ、また、610℃以下の温度では還元処理の速度が極めて遅くなり、結果としてこの方法では工業的にタンタル酸リチウム結晶の導電率の向上はできないことが分かった。
【発明の開示】
本発明は、上記問題の解決方法を提供するものであり、タンタル酸リチウム結晶に温度変化を与えることで発生する表面電荷を、タンタル酸リチウム結晶の導電率を向上させることで、発生した表面電荷を蓄積させることなく消失させることが可能であるとともに、単一分極構造を維持して有効な圧電性を発揮できるタンタル酸リチウム結晶の製造方法を提供するものである。
上記問題を解決するために、本発明は、温度T1で還元処理した物質を、温度T1より低い温度T2でかつ還元雰囲気中でタンタル酸リチウム結晶に接触することを特徴とする、導電率が増加されたタンタル酸リチウム結晶の製造方法を提供する。このようにすれば、還元処理した物質によりタンタル酸リチウムを還元処理することにより比較的低い温度でタンタル酸リチウム結晶の導電率を高くでき、その結果タンタル酸リチウム結晶に温度変化を与えた時に発生する焦電気を抑えることができる。
また、温度T1を700℃以上とすることが好ましい。このようにすれば、前記物質の還元処理を速やかに行うことができる。
また、温度T1での還元処理を、水素、一酸化炭素、一酸化二窒素のいずれか、あるいはこれらのうち2以上よりなる混合ガス、を含む還元性ガス中で行うことが好ましい。このようにすれば、通常知られている還元性ガスにより、還元処理された物質を得ることができる。特に好ましくは、前記還元性ガスとして水素あるいは一酸化炭素ガスを用いることで還元処理が速やかに実施できる。
あるいは、前記還元性ガスにさらに、He、Ne、Arその他の希ガス、窒素、二酸化炭素のいずれか、あるいはこれらのうち2以上よりなる混合ガス、を添加した雰囲気中で還元処理を行ってもよい。このようにすれば、還元処理の速度や処理時間を制御することができる。
なお、還元性ガス雰囲気としてはできるだけ還元処理の対象となる物質を短時間で処理できるものが好ましい。
また、本発明では、温度T1で還元処理した物質として、結晶、セラミックス、金属、好ましくは水素貯蔵合金を用いることができる。このように、温度T1で還元処理した物質として、温度T2でタンタル酸リチウム結晶を還元処理できるものを用いれば、導電率を向上されたタンタル酸リチウムを製造することができる。
また本発明では、前記結晶または前記セラミックスとして非化学量論組成をもつ複合酸化物からなるものを用いることができる。このようにすれば、温度T1で効果的に還元処理した物質が得られる。これは非化学量論組成物では陽イオンの欠損があり、この欠損が還元処理と深く関係しているからと考えられるからである。
そしてこのように、陽イオンの欠損が少ない化学量論比の組成物よりは、たとえばコングルーエント組成といわれているような化学量論比から外れている組成物を用いれば、陽イオンの欠損が多く、還元性が高いものとできる。
また、前記結晶または前記セラミックスとしてタンタル酸リチウムまたはニオブ酸リチウムを用いることができる。このようにすれば、SAWデバイスの材料として通常用いられるものであり、製品となるタンタル酸リチウム結晶を汚染することもなく、また還元性も十分に有するので好ましい。
また本発明では、温度T1で還元処理した物質と温度T2で接触されるタンタル酸リチウム結晶として単一分極化された結晶を用いることができる。このようにすれば、本発明で得られるタンタル酸リチウム結晶は温度T2での還元処理の後、単一分極化処理を必要としないので好ましい。
なお、通常の単一分極化処理は、タンタル酸リチウム結晶のキュリー点(約610℃)以上の高温でかつ、大気中で電圧を印加して行う。しかし、還元処理等で導電率を向上させたタンタル酸リチウム結晶は、大気中で400℃以上の温度にすることで向上した導電率が失われてしまう。この結果、タンタル酸リチウム結晶に還元処理をして導電率を向上させても、その後キュリー点以上の温度で行なう単一分極化処理をすると導電率が還元処理前の状態に戻ってしまうという問題がある。
このため、本発明では、タンタル酸リチウム結晶と還元処理された物質とを接触させる温度T2を400〜600℃とすることが好ましい。このようにT2をタンタル酸リチウム結晶のキュリー点より低い温度とすれば、単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶が単一分極構造を保つことができ、且つ接触は還元性雰囲気中で行なうため導電率が失われるといった問題は生じない。
また、温度T2で処理した後に温度が250℃以下で大気を導入することが好ましい。このように250℃以下で大気に接するようにすれば、温度T2での処理により向上したタンタル酸リチウム結晶の導電率が大気に晒されることにより低下してしまうおそれがなくなる。
また、前記単一分極化された結晶として、スライス前段階の結晶を用いることができるし、スライス処理が行われたウエハ、あるいはラップ処理が行われたウエハを用いることができる。特にスライスウエハあるいはラップウエハであれば、体積に対する表面積が大きくなり、還元処理された物質との接触面積を大きくできるので、効果的に導電率を向上させることができる。
また本発明では、温度T2での還元処理を、水素、一酸化炭素、一酸化二窒素あるいはこれらの混合ガスからなる還元性のガス中で行うことが好ましい。このようにすれば、通常知られている還元性ガス中で還元処理を行い、導電率が向上されたタンタル酸リチウム結晶を得ることができる。特に好ましくは、前記還元性ガスとして水素あるいは一酸化炭素ガスを用いることで還元処理が速やかに実施できる。
あるいは、温度T2での還元処理を水素、一酸化炭素、一酸化二窒素あるいはこれらの混合ガスからなる還元性ガスにHe、Ne、Arその他の希ガス及び、窒素、二酸化炭素あるいはこれらの混合ガスからなる不活性ガスを添加した雰囲気中で還元処理を行ってもよい。このようにすれば、還元処理の速度や処理時間を制御することができる。
また、本発明は、少なくとも、還元性雰囲気下キュリー点以上の温度T1’で熱処理したタンタル酸リチウムまたはニオブ酸リチウム若しくは水素を貯蔵した水素貯蔵金属を含む第一の元材を、単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶と重ね合わせ、還元性雰囲気下キュリー点より低い温度T2’で熱処理することによって、前記単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶の導電率を向上させることを特徴とするタンタル酸リチウム結晶の製造方法を提供する。
このようにすれば、第一の元材は還元性を有するので、これを単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶と重ね合わせ、還元性雰囲気下キュリー点より低い温度T2’で熱処理することで、キュリー点以上の温度でなくても単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶を効果的に還元処理することができる。従って、タンタル酸リチウム結晶を単一分極化されたままで効率的に導電率を向上させることができる。
また、前記のT2’での熱処理で得られたタンタル酸リチウム結晶を、大気中キュリー点より低い温度T3で熱処理し、該タンタル酸リチウム結晶を、還元性雰囲気下キュリー点以上の温度T1”で熱処理したタンタル酸リチウムまたはニオブ酸リチウム若しくは水素を貯蔵した水素貯蔵金属を含む第二の元材と重ね合わせ、還元性雰囲気下キュリー点より低い温度T2”で熱処理することによって、前記タンタル酸リチウム結晶の導電率を向上させることが好ましい。
このように、前記の方法で還元処理することにより導電率を向上させた単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶を、一旦大気中キュリー点より低い温度T3で熱処理した後に、還元性を有する第二の元材と重ね合わせ、還元性雰囲気下キュリー点より低い温度T2”で熱処理すれば、タンタル酸リチウム結晶の導電率をさらに均一に向上させることが確実にできる。
また、上記のT2’での熱処理で得られたタンタル酸リチウム結晶を、大気中キュリー点より低い温度T3で熱処理し、該タンタル酸リチウム結晶を、還元性雰囲気下キュリー点より低い温度T2’’’で熱処理することによって、前記タンタル酸リチウム結晶の導電率を向上させることが好ましい。
このように、前記の方法で還元処理することにより導電率を向上させた単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶を、一旦大気中キュリー点より低い温度T3で熱処理した後に、第二の元材を用いずに、還元性雰囲気下キュリー点より低い温度T2’’’で熱処理することによっても、タンタル酸リチウム結晶の導電率をさらに向上させることが確実にできる。
このとき、前記キュリー点より低い温度T2’、T2”、T2’’’を400℃以上とすることが好ましい。このようにすれば、効果的にタンタル酸リチウム結晶の導電率を向上させることができる。
また、前記単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶として、スライス処理が行われたウエハ、あるいはラップ処理が行われたウエハを用いることが好ましい。このようにすれば、体積に対する表面積が大きくなり、第一または第二の元材との重ね合わせの面積、あるいは還元性雰囲気に晒される面積を大きくできるので、効果的にタンタル酸リチウム結晶の導電率を均一に向上させることができる。
また、前記第一または第二の元材を、タンタル酸リチウムまたはニオブ酸リチウムからなるセラミックスまたは結晶とすることが好ましい。このように、第一または第二の元材として、タンタル酸リチウムまたはニオブ酸リチウムのセラミックスまたは結晶のいずれも用いることができる。これらのものであれば、タンタル酸リチウム結晶と重ね合わせて熱処理しても汚染、その他の悪影響を及ぼすこともない。
また、前記タンタル酸リチウムまたはニオブ酸リチウムからなるセラミックスまたは結晶として化学量論比から外れている組成物を用いることが好ましい。このようにすれば、第一または第二の元材は陽イオン欠損が多いものとなり、還元性が高くなるので、効果的にタンタル酸リチウム結晶の導電率を均一に向上させることができる。
また、前記第一または第二の元材として、タンタル酸リチウムまたはニオブ酸リチウムからなる結晶のスライス処理が行われたウエハ、あるいはラップ処理が行われたウエハを用いることが好ましい。このようにすれば、体積に対する表面積が大きくなり、還元性雰囲気に晒される面積を大きくできるので、効果的に還元処理された元材とできる。また単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶と重ね合わせ易いので、効果的にタンタル酸リチウム結晶の導電率を向上させることができる。
また、温度T2’、T2”、T2’’’での熱処理の後、前記タンタル酸リチウム結晶を、250℃以下の温度で大気に晒すことが好ましい。このようにすれば、温度T2’、T2”、T2’’’での熱処理により向上した単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶の導電率が、大気に晒されることにより低下してしまうおそれがなくなる。
また、前記温度T1’、T1”、T2’、T2”、T2’’’で行なわれる熱処理における還元性雰囲気を、水素、一酸化炭素、一酸化二窒素の少なくとも1つからなる還元性ガスを含むものとすることが好ましい。このように、上記のいずれの温度で行なわれる熱処理における還元性雰囲気としても、これらの通常知られている還元性ガスを用いることができる。
また、前記還元性ガスに、さらに希ガス、窒素、二酸化炭素の少なくとも1つからなる添加ガスを添加することが好ましい。このようにすれば、還元処理の速度や処理時間を制御することができる。
以上説明したように、本発明に従えば、結晶の導電率が向上していることより、温度変化で生じる焦電性による表面電荷の蓄積が実質的にみられないタンタル酸リチウム結晶、特に単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶を製造できる。従って、圧電性を維持した上で結晶外表面に電荷の蓄積が見られない、SAWデバイス製造上極めて有利なタンタル酸リチウム結晶を製造できる。さらに、本発明の方法は、上記したタンタル酸リチウム結晶を極めて短時間の処理で効率的に製造することができ、工業的に有利な製造方法となっている。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明について詳述する。
前述のように、従来導電率を向上させたタンタル酸リチウム結晶の製造方法として、タンタル酸リチウム結晶を500℃以上の還元雰囲気に晒すという方法が開示されていた。
しかし、このような方法でタンタル酸リチウム結晶を還元処理すると、還元雰囲気下での処理温度がタンタル酸リチウムのキュリー点である610℃以上ではSAWデバイス用途で必要とされる単一分極構造が失われ、また、610℃以下の温度では還元処理の速度が極めて遅くなり、工業的ではなかったといった問題があった。
本発明者らは、還元性雰囲気下キュリー点以上の温度で効率的に還元処理したタンタル酸リチウムまたはニオブ酸リチウム若しくは水素を貯蔵した水素貯蔵金属を含んだ、還元性を有する第一の元材を、単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶と重ね合わせ、還元性雰囲気下で熱処理することにより、第一の元材がタンタル酸リチウム結晶を界面を介して還元するので、キュリー点より低い温度であっても効果的に還元処理ができ、導電率を向上させることができるとともに単一分極構造を維持できることを見出した。この場合、この還元処理により、単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶は還元反応に対して活性化されるものと考えられる。
さらに本発明者らは、上記の還元反応に対して活性化されたタンタル酸リチウム結晶を、大気中キュリー点より低い温度で熱処理すると、導電率は一旦低下する(抵抗率が上がる)がそれでも活性化された状態が維持されたままであるので、還元性を有する第二の元材をこれと重ね合わせるかまたは単独で、還元性雰囲気下キュリー点より低い温度で熱処理することにより、さらに導電率を向上させることができる(抵抗率をより一層低下できる)ことを見出し、本発明を完成させた。
以下、本発明の実施形態について具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明で用いる温度T1で還元処理する物質、あるいは第一または第二の元材(以下、元材等と記載することがある)の例として、タンタル酸リチウムからなるセラミックスがあげられるが、このものは炭酸リチウムと五酸化タンタルとを秤量し、混合し、電気炉で1000℃以上に加熱することで得られる。なお、ニオブ酸リチウムからなるセラミックスについては五酸化タンタルの代わりに五酸化ニオブを使うことで得られるのでこれを用いてもよい。
このようにして得られたセラミックスをステンレススチールの容器または石英の容器中に入れ、封止された炉内に置き、還元性のガスを毎分約1.5リットルの速度で封止炉に流通させ、炉温を室温から温度T1、あるいはキュリー点以上である温度T1’またはT1”、例えば700℃〜1200℃まで昇温し、1〜50時間保持後、炉を毎分約6.7℃の速度で降温し、容器を炉から取り出すことで、元材等が得られる。還元性雰囲気としては、通常知られている還元性ガスである水素(H)、一酸化炭素(CO)、一酸化二窒素の少なくとも1つからなる還元性ガスを含むものとすることできる。また、この還元性ガスに、さらにHe、Ne、Arその他の希ガス、窒素(N)、二酸化炭素(CO)の少なくとも1つからなる添加ガスを混合すれば、還元処理の速度や処理時間を制御できるので好ましい。なお、ここで説明した還元性雰囲気は、以下で示すいずれの還元性雰囲気としても用いることができる。
また、上記セラミックスとして、タンタル酸リチウムあるいはその他の非化学量論組成を持つ複合酸化物からなるものを用いれば、それらは陽イオン欠損があるので還元性が高く好ましい。化学量論比から外れている組成物として、例えばタンタル酸リチウムの場合であればリチウムとタンタルの組成比が50:50から外れているものを用いれば、陽イオン欠損が多いので好ましい。
また、本発明で用いる元材等の例としてタンタル酸リチウム結晶があげられるが、このものは上記した還元処理前のタンタル酸リチウムからなるセラミックスを貴金属製のルツボに入れ、加熱、溶融後に種結晶を用いて回転引上げ(いわゆるチョクラルスキー法)にてタンタル酸リチウム結晶を育成することができる。またニオブ酸リチウム結晶についても同様の方法で育成することができる。このようにして得られたタンタル酸リチウム結晶を還元処理する方法は上記のセラミックスの場合と同様であるが、熱処理後の降温の際に、250℃以下で炉内に大気を導入し、30℃以下となったところで炉から取り出すことが好ましい。250℃より高い温度で大気を導入すると、タンタル酸リチウム結晶が酸化されてしまうおそれがあるので好ましくない。また上記結晶としても、セラミックスの場合と同様に非化学量論組成を持ち、化学量論比から外れている組成物を用いることが好ましい。
また、本発明で用いる元材等の例としてタンタル酸リチウム結晶からなるスライスウエハまたはラップウエハがあげられるが、このものは、上記したたとえば直径100mmのタンタル酸リチウム結晶を、たとえばワイヤソーを用いてスライスすることで直径100mm、厚さ0.5mmのスライス処理が行なわれたウエハが得られ、さらにこのウエハをラップ機で処理することで直径100mm、厚さ0.4mmのラップ処理が行なわれたウエハが得られる。また、このラップウエハの片面または両面を研磨し、ポリッシュウエハとしてもよい。このようにして得られたウエハを還元処理する方法は上記の結晶の場合と同様である。なお、このウエハの結晶方位は要求される特性に応じて選択することができ、例えば、表面法線に対してy方向に36°回転して配向されたものとできる。
この還元処理により元材等であるタンタル酸リチウム結晶またはウエハの色が処理前の白色から黒色に変色し、光吸収能を持つようになる。しかし、温度T1、T1’、T1”はいずれもタンタル酸リチウム結晶のキュリー点以上の温度であるため、この処理で得られるタンタル酸リチウム結晶またはウエハはSAWデバイス用としては不適な多分域構造をもつものである。
なお、本発明では、元材等として、上記の他に、その他の還元処理した結晶、セラミックス、あるいはパラジウム等の水素を吸蔵させた金属、好ましくはLaNi、FeTi、MgNi等を基本成分として、これにニオブ(Nb)やマンガン(Mn)等を配合した水素貯蔵合金を用いることもできる。
次に、本発明で最終的に導電率を向上させるタンタル酸リチウム結晶またはウエハは、上記の元材等とするタンタル酸リチウム結晶またはウエハと同様にチョクラルスキー法による結晶の育成、また育成した結晶のスライス処理およびラップ処理により準備することができる。これらを単一分極化するには、タンタル酸リチウム結晶に貴金属電極を設置し、タンタル酸リチウムのキュリー点以上の温度、たとえば650℃にて電圧を印加することで単一分極化処理ができる。また、この単一分極化処理がなされた結晶をスライス処理またはラップ処理することで単一分極化したスライスウエハまたはラップウエハが得られる。また、このラップウエハの片面または両面を研磨し、ポリッシュウエハとしてもよい。
次に、前記のように単一分極化処理が行なわれたタンタル酸リチウム結晶と、温度T1で還元処理した物質あるいは第一の元材とを接触するように重ね合わせ交互に積層等し、炉中に配置し、例えば還元性のガスを毎分約1.5リットルの速度で流し、炉の温度を室温から毎分約6.7℃の速度で昇温させ、T1より低い温度T2、あるいはキュリー点より低い温度である温度T2’、例えば400℃〜600℃に1〜50時間保持後、炉を毎分約6.7℃の速度で降温し、250℃以下で炉内に大気を導入し、30℃以下となったところで結晶を炉から取り出す。
このようにして、本発明による単一分極化構造をもち、かつ、導電率を向上させたタンタル酸リチウム結晶を得ることができる。さらに本発明では、導電率をさらに向上させたタンタル酸リチウム結晶を確実に得るために、上記の方法に追加して以下の二つの方法のいずれかを行なうことができる。
第一の方法は以下に説明するものである。まず、前記の単一分極化構造をもち、かつ、導電率を向上させたタンタル酸リチウム結晶を大気を導入した炉中に設置し、炉の温度を室温から毎分約6.7℃の速度で昇温させ、大気中キュリー点より低い温度T3、例えば400℃〜600℃で1〜50時間保持後、炉を毎分約6.7℃の速度で降温し、30℃以下となったところで結晶を炉から取り出す。このような熱処理を行なうと、タンタル酸リチウム結晶は白色となり、導電率は一旦低下し、抵抗率が上がるが、結晶中の還元反応に対して活性化された状態は維持されたままであり、かつ単一分極構造も保たれる。
次に、上記のように大気中で熱処理した白色のタンタル酸リチウム結晶と、前記のように温度T1”で熱処理して得た第二の元材、例えば黒く変色したタンタル酸リチウム結晶のウエハとを接触するように重ね合わせ、交互に積層等し、炉中に配置し、還元性のガスを毎分約1.5リットルの速度で流し、炉の温度を室温から毎分約6.7℃の速度で昇温させ、キュリー点より低い温度T2”、好ましくは400℃〜600℃で1〜50時間保持後、炉を毎分約6.7℃の速度で降温し、250℃以下で炉内に大気を導入し、30℃以下となったところで結晶を炉から取り出す。このような熱処理により、導電率をさらに均一に向上された、単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶が確実に得られる。特に、1回の還元処理で得られた黒色のタンタル酸リチウム結晶は色むらが発生し易いが、上記のように2回の還元を施すことで、導電率のばらつきと対応する色むらのない均一な黒色タンタル酸リチウム結晶を確実に得ることができる。
一方、第二の方法は以下に説明するものである。上記の大気中で熱処理した白色のタンタル酸リチウム結晶は、還元反応に対して活性化された状態は維持されたままである。従って第二の元材を用いず、単独で炉中に設置し、還元性のガスを毎分約1.5リットルの速度で流し、炉の温度を室温から毎分約6.7℃の速度で昇温させ、キュリー点より低い温度T2’’’、好ましくは400℃〜600℃に1〜50時間保持後、炉を毎分約6.7℃の速度で降温し、250℃以下で炉内に大気を導入し、30℃以下となったところで結晶を炉から取り出すという熱処理を行なってもよい。このような熱処理によっても、導電率をさらに均一に向上された、かつ導電率のばらつきと対応する色むらのない単一分極化された黒色タンタル酸リチウム結晶が確実に得られる。
本発明で得られた導電率の向上した単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶の導電率は次のように求められる。導電率は体積抵抗率の逆数であるが、体積抵抗率は例えばHewlett Packard社製、4329A High Resistance Meter4及び16008A Resistivity Cellを用いて抵抗値を測定し、その値から次式により得ることができる。
ρ=(πd/4t)・R
ρ:体積抵抗率(Ω・cm)
π:円周率
d:中心電極直径(cm)
t:タンタル酸リチウム結晶またはウエハの厚さ(cm)
R:抵抗値(Ω)
測定の際には、例えばウエハに500ボルトの電圧を印加し、安定した値を得るために電圧を印加してから1分後の抵抗値を測定する。
また、本発明の効果はウエハの表面電位を測定することによっても確認することができる。表面電位は温度差により表面に蓄積された焦電性による電荷量であり、これは静電気と同様に定量的な測定として表面電位測定として知られている。導電率を向上させたタンタル酸リチウムウエハをホットプレート上で30℃から70℃まで1分で昇温し、例えばIon Systems社製、SFM775を使用することにより、その間に変化する表面電位の差を測定することで表面電位が得られる。
以下、本発明の実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本実施例及び比較例で用いるタンタル酸リチウム(LT)ウエハの作製を次の通り行った。表面法線に対してy方向に36°回転して配向された直径100mm、長さ50mmのタンタル酸リチウム結晶を、チョクラルスキー法および常用の二次加工法を使用することにより得た(以後、LT結晶と記す)。このLT結晶に白金電極を設置し、650℃で電圧を印加し、単一分極化処理を行なった。次に、このLT結晶にスライス処理、ラップ処理を行い、厚さ0.4mmの両面ラップウエハを得た(以後、このウエハをLTラップウエハと記す)。このLTラップウエハの片面を研磨し、厚さ0.35mmのウエハを得た(以後、このウエハをLTポリッシュウエハと記す)。このウエハは、無色で半透明であった。
【実施例1〜18】
このようにして得たLTラップウエハを、表1に示される還元性のガスが毎分約1.5リットルの速度で流通する封止された炉中に置いた。この炉は、水平方向の直径200mmのアルミナ処理管を備えた3つの帯域を有する管状炉から成り立っていた。ウエハを前記処理管の中心に置かれたアルミナ担体によって支持した。アルミナ処理管は、炉から延在しており、したがってこのアルミナ処理管の端部は、晒されかつ冷却されたままである。アルミナ処理管のOリングシールは、封止された炉空隙を提供した。ウエハを処理管中に入れ、次にこの処理管を端部キャップで封止した。ガス流を流し始め、炉の加熱を開始した。炉の温度を室温から毎分約6.7℃の速度で表1に示される温度T1まで昇温した。そして温度T1にて1時間保持後、炉を毎分約6.7℃の速度で降温した。250℃以下で炉内に大気を導入し、30℃以下となったところでウエハを炉から取り出した(以後、T1処理LTウエハと記す)。次に単一分極化処理されたLTラップウエハとT1処理LTウエハを接触するように交互に積層し、水素ガスが毎分約1.5リットルの速度で流通する封止された炉中に置いた。この炉は、温度T1還元処理と同一のものである。炉の温度を室温から毎分約6.7℃の速度で昇温した。表1に示される温度T2に1時間保持後、炉を毎分約6.7℃の速度で降温した。250℃以下で炉内に大気を導入し、30℃以下となったところでウエハを炉から取り出した(以後、T2処理LTウエハと記す)。
このT2処理LTウエハの導電率を次のように求めた。導電率は体積抵抗率の逆数であるが、体積抵抗率を、まずHewlett Packard社製、4329A High Resistance Meter4及び16008A Resistivity Cellを用いて抵抗値を測定し、その抵抗値から次式により得た。
ρ=(πd/4t)・R
ρ: 体積抵抗率(Ω・cm)
π: 円周率
d: 中心電極直径(cm)
t: T2処理LTウエハ厚さ(cm)
R: 抵抗値(Ω)
測定の際には500ボルトの電圧を印加し、安定した値を得るために電圧を印加してから1分後の抵抗値を測定した。
表面電位は次のように測定した。まずT2処理LTウエハをホットプレート上で30℃から70℃まで1分で昇温し、Ion Systems社製、SFM775を使用することにより、その間に変化する表面電位の差を測定値とした。このようにして求めた導電率、表面電位を表1に示す。なお、以下のすべての表において、導電率の、例えば「9.3E−14」というような記載は、「9.3x10−14」を意味するものである。その結果、実施例1〜18のいずれの場合も導電率が高く、表面電位が低い値となった。なお、導電率をより高くし、表面電位をより低くするために、T1を700℃以上とするのが好ましかった。また、いずれの例でも、T2はキュリー点以下の温度であるので、T2処理LTウエハの単一分極構造を保つことができた。
【実施例19〜28】
LTラップウエハを、水素ガスが毎分約1.5リットルの速度で流通する封止された炉中に置いた。表2に示される温度T1で1時間保持してT1処理LTウエハを得た。そして単一分極化したLTラップウエハとT1処理LTウエハを接触するように交互に積層し、表2に示される還元性のガスが毎分約1.5リットルの速度で流通する封止された炉中に置いた。表2に示す温度T2に1時間保持後、炉を毎分約6.7℃の速度で降温した。250℃以下で炉内に大気を導入し、30℃以下となったところでウエハを炉から取り出し、T2処理LTウエハを得た。前記と同様の方法で測定した導電率、表面電位を表2に示す。その結果、実施例19〜28のいずれの場合も導電率が高く、表面電位が低い値となった。なお、導電率をより高くし、表面電位をより低くするために、T2を400℃以上とするのが好ましかった。また、いずれの例でも、T2はキュリー点以下の温度であるので、T2処理LTウエハの単一分極構造を保つことができた。
(比較例1〜4)
還元処理を全く施していないLTラップウエハの導電率、表面電位を表3に示す。導電率が低く、表面電位が高い値となった。
また、LTラップウエハを、水素ガスが毎分約1.5リットルの速度で流通する封止された炉中に置いた。キュリー温度以下の600℃の温度に表3に示す時間だけ保持後、炉を毎分約6.7℃の速度で降温した。30℃以下で炉内に大気を導入し、ウエハを炉から取り出し、還元処理LTウエハを得た。前記と同様の方法で測定した導電率、表面電位を表3に示す。いずれの熱処理時間であっても導電率、表面電位とも還元処理をしていないLTウエハと同程度の値であった。また、目視でのウエハの色の変化は見られなかった。
【実施例29〜31】
LTラップウエハを、水素ガスが毎分約1.5リットルの速度で流通する封止された炉中に置いた。1000℃に10時間保持してT1処理LTウエハを得た。そしてLTウエハとT1処理LTウエハを接触するように交互に積層し、水素ガスが毎分約1.5リットルの速度で流通する封止された炉中に置いた。550℃に6時間保持後、炉を毎分約6.7℃の速度で降温した。250℃以下で炉内に大気を導入し、30℃以下となったところでウエハを炉から取り出し、T2処理LTウエハを3枚得た。次にT2処理LTウエハのうち2枚を大気を導入した炉内に置き、550℃に6時間保持してT3処理LTウエハを得た。そしてT3処理LTウエハのうち1枚と前記のものとは別のT1処理LTウエハを接触するように交互に積層し、水素ガスが毎分約1.5リットルの速度で流通する封止された炉中に置いた。550℃に6時間保持後、炉を毎分約6.7℃の速度で降温した。250℃以下で炉内に大気を導入し、30℃以下となったところでウエハを炉から取り出し、T2”処理LTウエハを得た。そしてT3処理LTウエハのうち別の1枚を、水素ガスが毎分約1.5リットルの速度で流通する封止された炉中に置いた。550℃に6時間保持後、炉を毎分約6.7℃の速度で降温した。250℃以下で炉内に大気を導入し、30℃以下となったところでウエハを炉から取り出し、T2’’’処理LTウエハを得た。前記と同様の方法で測定したT2処理LTウエハ、T2”処理LTウエハ及びT2’’’処理LTウエハの導電率、表面電位を表4に示す。その結果、実施例29の場合よりも実施例30及び実施例31の場合のほうが導電率が高く、表面電位が低い値となった。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。





【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度T1で還元処理した物質を、温度T1より低い温度T2でかつ還元雰囲気中でタンタル酸リチウム結晶に接触することを特徴とする、導電率が増加されたタンタル酸リチウム結晶の製造方法。
【請求項2】
温度T1を700℃以上とすることを特徴とする請求項1に記載のタンタル酸リチウム結晶の製造方法。
【請求項3】
温度T1での還元処理を、水素、一酸化炭素、一酸化二窒素のいずれか、あるいはこれらのうち2以上よりなる混合ガス、を含む還元性ガス中で行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のタンタル酸リチウム結晶の製造方法。
【請求項4】
前記還元性ガスにさらに、He、Ne、Arその他の希ガス、窒素、二酸化炭素のいずれか、あるいはこれらのうち2以上よりなる混合ガス、を添加した雰囲気中で還元処理を行うことを特徴とする請求項3に記載のタンタル酸リチウム結晶の製造方法。
【請求項5】
温度T1で還元処理した物質として、結晶、セラミックス、金属のいずれかを用いることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のタンタル酸リチウム結晶の製造方法。
【請求項6】
前記結晶または前記セラミックスとして非化学量論組成をもつ複合酸化物からなるものを用いることを特徴とする請求項5に記載のタンタル酸リチウム結晶の製造方法。
【請求項7】
前記結晶または前記セラミックスとしてタンタル酸リチウムまたはニオブ酸リチウムを用いることを特徴とする請求項5または請求項6に記載のタンタル酸リチウム結晶の製造方法。
【請求項8】
前記金属として水素貯蔵合金を用いることを特徴とする請求項5に記載のタンタル酸リチウム結晶の製造方法。
【請求項9】
温度T1で還元処理した物質と温度T2で接触されるタンタル酸リチウム結晶として単一分極化された結晶を用いることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のタンタル酸リチウム結晶の製造方法。
【請求項10】
前記単一分極化された結晶として、スライス前段階の結晶を用いることを特徴とする請求項9に記載のタンタル酸リチウム結晶の製造方法。
【請求項11】
前記単一分極化された結晶として、スライス処理が行われたウエハ、あるいはラップ処理が行われたウエハを用いることを特徴とする請求項9に記載のタンタル酸リチウム結晶の製造方法。
【請求項12】
温度T2を400℃〜600℃とすることを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載のタンタル酸リチウム結晶の製造方法。
【請求項13】
温度T2で処理した後に温度が250℃以下で大気を導入することを特徴とする請求項12に記載のタンタル酸リチウム結晶の製造方法。
【請求項14】
温度T2での還元処理を水素、一酸化炭素、一酸化二窒素あるいはこれらの混合ガスからなる還元性ガス中で行うことを特徴とする請求項1乃至請求項13のいずれか1項に記載のタンタル酸リチウム結晶の製造方法。
【請求項15】
前記還元性ガスにさらにHe、Ne、Arその他の希ガス及び、窒素、二酸化炭素あるいはこれらの混合ガスからなる不活性ガスを添加した雰囲気中で還元処理を行うことを特徴とする請求項14に記載のタンタル酸リチウム結晶の製造方法。
【請求項16】
タンタル酸リチウム結晶の製造方法であって、少なくとも、還元性雰囲気下キュリー点以上の温度T1’で熱処理したタンタル酸リチウムまたはニオブ酸リチウム若しくは水素を貯蔵した水素貯蔵金属を含む第一の元材を、単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶と重ね合わせ、還元性雰囲気下キュリー点より低い温度T2’で熱処理することによって、前記単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶の導電率を向上させることを特徴とするタンタル酸リチウム結晶の製造方法。
【請求項17】
請求項16の方法で得られたタンタル酸リチウム結晶を、大気中キュリー点より低い温度T3で熱処理し、該タンタル酸リチウム結晶を、還元性雰囲気下キュリー点以上の温度T1”で熱処理したタンタル酸リチウムまたはニオブ酸リチウム若しくは水素を貯蔵した水素貯蔵金属を含む第二の元材と重ね合わせ、還元性雰囲気下キュリー点より低い温度T2”で熱処理することによって、前記タンタル酸リチウム結晶の導電率を向上させることを特徴とするタンタル酸リチウム結晶の製造方法。
【請求項18】
請求項16の方法で得られたタンタル酸リチウム結晶を、大気中キュリー点より低い温度T3で熱処理し、該タンタル酸リチウム結晶を、還元性雰囲気下キュリー点より低い温度T2’’’で熱処理することによって、前記タンタル酸リチウム結晶の導電率を向上させることを特徴とするタンタル酸リチウム結晶の製造方法。
【請求項19】
前記キュリー点より低い温度T2’、T2”、T2’’’を400℃以上とすることを特徴とする請求項16乃至請求項18のいずれか1項に記載のタンタル酸リチウム結晶の製造方法。
【請求項20】
前記単一分極化されたタンタル酸リチウム結晶として、スライス処理が行われたウエハ、あるいはラップ処理が行われたウエハを用いることを特徴とする請求項16乃至請求項20のいずれか1項に記載のタンタル酸リチウム結晶の製造方法。
【請求項21】
前記第一または第二の元材を、タンタル酸リチウムまたはニオブ酸リチウムからなるセラミックスまたは結晶とすることを特徴とする請求項16乃至請求項20のいずれか1項に記載のタンタル酸リチウム結晶の製造方法。
【請求項22】
前記タンタル酸リチウムまたはニオブ酸リチウムからなるセラミックスまたは結晶として化学量論比から外れている組成物を用いることを特徴とする請求項21に記載のタンタル酸リチウム結晶の製造方法。
【請求項23】
前記第一または第二の元材として、タンタル酸リチウムまたはニオブ酸リチウムからなる結晶のスライス処理が行われたウエハ、あるいはラップ処理が行われたウエハを用いることを特徴とする請求項21または請求項22に記載のタンタル酸リチウム結晶の製造方法。
【請求項24】
温度T2’、T2”、T2’’’での熱処理の後、前記タンタル酸リチウム結晶を、250℃以下の温度で大気に晒すことを特徴とする請求項16乃至請求項23のいずれか1項に記載のタンタル酸リチウム結晶の製造方法。
【請求項25】
前記温度T1’、T1”、T2’、T2”、T2’’’で行なわれる熱処理における還元性雰囲気を、水素、一酸化炭素、一酸化二窒素の少なくとも1つからなる還元性ガスを含むものとすることを特徴とする請求項16乃至請求項24のいずれか1項に記載のタンタル酸リチウム結晶の製造方法。
【請求項26】
前記還元性ガスに、さらに希ガス、窒素、二酸化炭素の少なくとも1つからなる添加ガスを添加することを特徴とする請求項25に記載のタンタル酸リチウム結晶の製造方法。

【国際公開番号】WO2004/079061
【国際公開日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【発行日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−503138(P2005−503138)
【国際出願番号】PCT/JP2004/002853
【国際出願日】平成16年3月5日(2004.3.5)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】