説明

タンパク質キナーゼ調節物質としての縮合キノリン

本発明はその一部において、細胞増殖の阻害、タンパク質キナーゼ活性の調節、およびポリメラーゼ活性の調節を含むがこれらに限定されない特定の生物学的活性を有する式(I)の分子に関連する。本発明の分子は、タンパク質キナーゼCK2活性、Pimキナーゼ活性、および/またはFMS様チロシンキナーゼ(Flt)活性を調節し得る。本発明はその一部において、置換基が特許請求の範囲に定義されるそのような分子(I)を使用するための方法にも関連する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、「NOVEL PROTEIN KINASE MODULATORS」と題する2009年8月26日出願の米国仮出願第61/237,227号および「NOVEL PROTEIN KINASE MODULATORS」と題する2009年12月22日出願の米国仮出願第61/289,317号の恩典を主張するものであり、当該出願の全内容は引用により本明細書の一部とする。
【0002】
発明の分野
本発明はその一部において、細胞増殖の阻害、セリン・スレオニンタンパク質キナーゼ活性の調節、およびチロシンキナーゼ活性の調節等を含むがこれらに限定されない特定の生物学的活性を有する分子に関連する。本発明の分子は、カゼインキナーゼ(CK)活性(例えば、CK2活性)および/またはPIMキナーゼ活性(例えば、PIM−1活性)、および/またはFms様チロシンキナーゼ(Flt)活性(例えば、Flt−3活性)を調節し得る。これらの化合物は、そのキナーゼ阻害剤としての活性のために各種生理学的疾患の治療に有用である。本発明はその一部において、前記分子およびそれらを含む組成物の使用方法にも関連する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
PIMタンパク質キナーゼは、互いに近縁なPIM−1、PIM−2、PIM−3を含み、細胞の生存、増殖、分化などの多様な生物学的プロセスに関与している。PIM−1は腫瘍形成に関連性の高い多数のシグナル伝達経路に関与している[BachmannおよびMoroy,Internat.J.Biochem.Cell Biol.,37,726−730(2005)(非特許文献1)にて検討されている]。これらの多くは、細胞周期の進行およびアポトーシスに関与している。PIM−1は、プロアポトーシス因子BAD(Bcl2関連細胞死プロモーター、アポトーシスイニシエータ)の不活性化を介した抗アポトーシス因子として機能することが判明している。BADの不活性化がBcl−2の活性を増強し、それにより細胞生存を促進できることから、この知見は、細胞死の防止におけるPIM−1の直接の役割を示唆するものである[Ahoら,FEBS Letters,571,43−49(2004)(非特許文献2)]。PIM−1はまた、細胞周期の進行の正調節因子として認識されている。PIM−1はCdc25Aに結合してリン酸化し、これによりホスファターゼ活性の上昇やG1/S期の移行の促進をもたらす[Losmanら,JBC,278,4800−4805(1999)(非特許文献3)にて検討]。加えて、G1/S期進行を阻害するサイクリンキナーゼ阻害剤p21Wafは、PIM−1によって不活性化されていることが判明した[Wangら,Biochim.Biophys.Acta.1593,45−55(2002)(非特許文献4)]。さらにPIM−1は、リン酸化によって、C−TAK1を不活化しCdc25Cを活性化して、それによりG2/M期移行の加速をもたらす[Bachmanら,JBC,279,48319−48(2004)(非特許文献5)]。
【0004】
PIM−1は、造血細胞増殖に必須の役割を果たすものであるとみられる。キナーゼ活性のPIM−1はgpl30媒介STAT3増殖シグナルに必要である[Hiranoら,Oncogene19,2548−2556,(2000)(非特許文献6)]。PIM−1は過剰発現したり、多数の腫瘍や異なる種類の腫瘍細胞株に変異して、ゲノム不安定性をもたらす。Fedorovらは、開発中で第III相にある白血病を治療するための化合物LY333'531は、選択的PIM−1阻害剤であると結論した。O.Fedorovら,PNAS104(51),20523−28(Dec.2007)(非特許文献7)。PIM−1が前立腺癌、口腔癌、バーキットリンパ腫を含むヒトの腫瘍に関与していることを示す証拠が公開されている(GaidanoおよびDalla Faver,1993(非特許文献8))。これらのすべての知見は、各種の腫瘍、造血細胞癌を含むヒトの癌の発現と進行におけるPIM−1の重要な役割を示しており、したがってPIM−1活性の小分子阻害剤は有望な治療上のストラテジーである。
【0005】
さらにPIM−2およびPIM−3は、PIM−1と機能が重複しており、複数のアイソフォームの阻害により付加的な治療上の利点を提供し得る。しかし、PIMの阻害剤は、インビボでそれが他の各種キナーゼを阻害することによる影響はほぼゼロであるのが好ましいこともある。そのような効果は副作用や予期しない結果を引き起こす可能性があるからである。例えば、非特異的なキナーゼ阻害剤が生み出す影響について論じた、O.Fedorovら,PNAS104(51),20523−28(Dec.2007)(非特許文献7)を参照されたい。したがって、いくつかの実施形態において、本発明は、PIM−1、PIM−2、およびPIM−3、またはこれらのいくつかの組み合わせの少なくとも1種類の選択的阻害剤である化合物を提供する。本明細書において記載するように、式Iの化合物は一般的にはCK2ならびに1種または複数種のPimタンパク質に対して活性であるが、特定の他のヒトキナーゼに対しては実質的に少ない活性しか有していない。
【0006】
転写プロファイリング試験においてPIM3遺伝子の転写がNIH 3T3細胞のEWS/ETS誘導悪性転換においてアップレギュレートされることが判明し、このことにより、まず癌におけるPIM−3の役割の意味が示唆された。これらの結果を展開させて、PIM−3が選択的にヒトおよびマウスの肝細胞、膵臓癌に発現し、正常な肝臓または膵臓組織中には発現していないことが分かった。加えて、PIM−3のmRNAおよびタンパク質は、複数のヒト膵臓および肝細胞癌細胞株で構成的に発現されている。
【0007】
PIM−3の過剰発現と腫瘍形成を促進する上での機能的役割との関連は、PIM−3を過剰発現する肝細胞癌細胞株およびヒト膵臓におけるRNAiの研究から得られた。これらの研究において、内生PIM−3タンパク質を除去すると、これらの細胞のアポトーシスが促進された。PIM−3がアポトーシスを抑制する分子メカニズムは、その一部においてプロアポトーシスタンパク質BADのリン酸化の調節を介して実行されている。BADタンパク質をリン酸化するPIM−1およびPIM−2の両方の場合と同様に、siRNAによってPIM−3タンパク質をノックダウンすると、Serll2でBADのリン酸化が低下する。したがって、PIM−1およびPIM−2と同様、PIM−3は、例えば膵臓と肝臓癌などの内胚葉起源の癌におけるアポトーシスの抑制因子として作用する。さらに、膵臓癌における従来の治療法は臨床転帰が良好ではないことから、PIM−3は、この難病をうまく制御するための新しい重要な分子標的となり得る。
【0008】
2008年AACR年次総会(2008 Annual Meeting)で、SuperGenは、急性骨髄性白血病(AML)異種移植モデルで腫瘍の退縮を引き起こす主要なPIMキナーゼ阻害剤であるSGI−1776を同定したことを発表した(Abstract No.4974(非特許文献9))。Steven Warner博士は、「A potent small molecule PIM kinase inhibitor with activity in cell lines from hematological and solid malignancies」と題する口頭発表において、科学者たちがどのようにSuperGenのCLIMB(商標)技術を用いて、小分子のPIMキナーゼ阻害剤の作成を可能にするモデルを構築したかについて詳細に述べた。SGI−1776は、アポトーシスや細胞周期停止を誘導し、それによりインビトロでのmTORの阻害の増強とリン酸化BADレベルの低下とを引き起こす、PIMキナーゼの強力かつ選択的な阻害剤として同定された。最も注目すべき点として、SGI−1776は、MV−4−11(AML)およびMOLM−13(AML)異種移植モデルにおいて有意な腫瘍の退縮を誘導した。このことは、PIMキナーゼの阻害剤を白血病の治療に使用できることを証明している。
【0009】
Fedorovら,PNAS vol.104(51),20523−28(非特許文献7)において、PIM−1キナーゼの選択的阻害剤(Ly5333'531)はAML患者からの白血病細胞において細胞増殖を抑制し細胞死を誘導することが示された。PIM−3が膵臓癌細胞で発現されるが、正常な膵臓細胞では発現されないことが判明した。このことは、PIM−3が膵臓癌の良い標的となることを示している。Liら,Cancer Res.66(13),6741−47(2006)(非特許文献10)を参照。特定の種類の癌の治療に有用であるPIMキナーゼの阻害剤はPCT/US2008/012829(特許文献1)明細書に記載されている。
【0010】
タンパク質キナーゼCK2(以前はカゼインキナーゼIIと呼ばれていた。「CK2」ともいう。)は随処に存在し、高度に保存されたタンパク質セリン/スレオニンキナーゼである。そのホロ酵素は、2つの触媒(αおよび/またはα')サブユニットと2つの調節(β)サブユニットからなる四量体複合体として通常は見出される。CK2は多数の生理学的標的をもち、細胞の生存の維持を含む複雑な一連の細胞の機能に関与している。正常細胞でのCK2のレベルは厳密に制御されており、それは細胞の成長および増殖に重要な役割を果たすと長年考えられてきた。特定の種類の癌の治療に有用なものとしてのCK2阻害剤は、PCT/US2007/077464(特許文献2)、PCT/US2008/074820(特許文献3)、PCT/US2009/35609(特許文献4)の各明細書に記載されている。
【0011】
CK2が広範に分布すること、重要であることの両方が、その配列の進化的解析が示唆するように、CK2が進化の上で古い時代からある酵素であることを示唆している。即ちその寿命の長さは、CK2がこれほど多くの生物学的プロセスにおいて重要である理由と、感染症の病原体(例えばウイルス、原虫)が、宿主のCK2を、その生存および生活環の生化学系の一体的な部分として利用してきた理由とを説明し得る。同じこれらの特性は、CK2の阻害剤が本明細書に記載するように各種医療処置において有用であると考えられる理由ともなる。GuerraおよびIssinger,Curr.Med.Chem.,2008,15:1870−1886(非特許文献11)にまとめられているように、CK2は多くの生物学的プロセスの中心であることから、本明細書に記載の化合物を含むCK2の阻害剤は、さまざまな疾患および障害の治療に有用となるはずである。
【0012】
癌細胞はCK2の上昇を示し、また最近得られた証拠は、CK2がカスパーゼによる分解から調節タンパク質を保護することにより、細胞におけるアポトーシスの強力な抑制機能を発揮することを示唆している。CK2の抗アポトーシス機能は、トランスフォーメーションおよび腫瘍形成に関与するその能力の一部であり得る。特にCK2は、急性および慢性骨髄性白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫に関連があることがわかっている。さらに、CK2活性の上昇は、結腸、直腸、および乳房の固形腫瘍、肺の扁平上皮癌および頭頸部の扁平上皮癌(SCCHN)、並びに肺、結腸、直腸、腎臓、乳房および前立腺の腺癌において観察されている。小分子によるCK2の阻害が膵癌細胞と肝臓癌細胞(HegG2、Hep3、HeLa癌細胞株)のアポトーシスを誘発すること、即ちCK2阻害剤が、TRAILによって誘発されるアポトーシスに向けてRMS(横紋筋肉腫)腫瘍を劇的に感作したことが報告されている。したがって、CK2の阻害剤は、単独で、あるいはTRAILもしくはTRAIL受容体のリガンドと結合して用いると、小児において最も一般的な軟部組織肉腫であるRMSを治療するために有効であろう。さらに、CK2レベルの上昇は、新生物の病原力と高い相関があることが判明しており、したがって本発明のCK2阻害剤を用いた治療で、良性の障害を悪性のものに進行させる傾向、または悪性のものを転移させる傾向を減らすことができるはずである。
【0013】
突然変異が調節制御の消失を引き起こす構造的な変化と結び付けられることの多いシグナル伝達経路や他のキナーゼの場合と異なり、CK2活性化レベルの増加は、通常は、活性化レベルに影響を与える変化によって引き起こされるのでなく、むしろ有効なタンパク質のアップレギュレーションあるいは過剰発現によって引き起こされるとみられる。GuerraおよびIssingerは、活性化レベルはmRNAレベルとあまり相関していないことから、これは凝集による調節が原因である可能性があるとの仮説を提示している。CK2の過剰な活性は、SCCHN腫瘍、肺腫瘍、乳房腫瘍、およびその他を含む多くの癌で確認されている(同上)。
【0014】
大腸癌におけるCK2活性の上昇は、悪性腫瘍と相関することが判明した。CK2の発現と活性の異常が、乳癌細胞におけるNF−κBの核レベルの上昇を促進することが報告されている。CK2活性は急性転化時にAMLとCML患者で著しく増加するが、これはCK2の阻害剤がこれらの条件下に特に有効であることを示している。多発性骨髄腫(MM)細胞の生存は、CK2の活性の高さに依存することが判明しており、CK2の阻害剤はMM細胞に対して細胞毒性であった。同様に、CK2阻害剤は、マウスのp190リンパ腫細胞の増殖を抑制した。Bcr/Ablとの相互作用は、Bcr/Ablの発現細胞の増殖に重要な役割を果たしていることが報告されており、このことはCK2の阻害がBcr/Abl陽性の白血病の治療に有用であることを示している。CK2の阻害剤は、マウスにおける皮膚乳頭腫、前立腺癌、および乳癌の異種移植片の進行を阻害し、前立腺プロモーターを発現するトランスジェニックマウスの生存期間を延ばすことがわかっている(同上)。
【0015】
最近、各種非癌疾患のプロセスにおけるCK2の役割が検討されている。GuerraおよびIssinger,Curr.Med.Chem.,2008,15:1870−1886(非特許文献11)を参照されたい。CK2が、例えばアルツハイマー病、パーキンソン病、まれな神経変性疾患(例えば、グアム・パーキンソン痴呆症、18番染色体欠失症候群、進行性核上性麻痺、クッフス病、またはピック病など)などの中枢神経系の重大な疾患に関与していることを示す証拠が増えてきている。また、タウタンパク質の選択的CK2媒介リン酸化は、アルツハイマー病の進行性の神経変性に関与している可能性が示唆されている。さらに、最近の研究において、CK2は記憶障害と脳虚血において一定の役割を果たしており、後者の効果は、PI3Kの生存経路に対するCK2の調節作用によって媒介されていることが示唆されている。
【0016】
CK2はまた、急性または慢性炎症性疼痛、糸球体腎炎、および自己免疫疾患(例えば多発性硬化症(MS)、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、若年性関節リウマチなどを含む)などの炎症性疾患の調節に関与することが判明してきている。CK2は、セロトニン5−HT3受容体チャネルの機能を正に調節し、ヘムオキシゲナーゼ2を活性化し、神経型一酸化窒素合成酵素の活性を高める。選択的CK2阻害剤は、疼痛試験の前に脊髄組織に投与された場合、マウスの疼痛反応を大幅に低減することが報告された。また選択的CK2阻害剤は、RA患者の滑液由来の分泌型IIAホスホリパーゼA2をリン酸化し、若年性関節炎患者の滑液で見出される炎症性分子であるDEK(核DNA結合タンパク質)の分泌を調節する。したがって、CK2を阻害することで、本明細書中で説明されるように炎症性病態の進行を制御することが期待されており、本明細書に開示された阻害剤は動物モデルでの疼痛を効果的に治療することが分かっている。
【0017】
タンパク質キナーゼCK2はまた、血管系の疾患(例えばアテローム性動脈硬化症、血管内層流せん断応力、および低酸素症など)において一定の役割を果たすことも判明している。CK2はまた、骨格筋と骨組織の疾患(例えば心筋細胞肥大、インスリンシグナル伝達の障害、および骨組織の石灰化など)において一定の役割を果たすことも判明している。ある研究においては、CK2の阻害剤が、培養細胞において成長因子に誘導される血管新生を遅らせるのに有効であった。また、網膜症モデルでは、CK2阻害剤とオクトレオチド(ソマトスタチン類似体)との併用が、血管新生ふさ状分岐を減少させた。したがって本明細書に記載のCK2阻害剤は、ソマトスタチン類似体との併用で網膜症を治療するのに有効である。
【0018】
CK2はまた、GSK、トロポニン、およびミオシン軽鎖をリン酸化することが判明した。したがってCK2は骨格筋と骨組織の生理機能において重要であり、筋肉組織に影響を与える疾患に結びついている。
【0019】
CK2はまた、例えばタイレリア・パルバ(Theileria parva)、トリパノソーマ・クルージ(Trypanosoma cruzi)、ドノバンリーシュマニア(Leishmania donovani)、ヘルペトモナス・ムスカラム・ムスカラム(Herpetomonas muscarum muscarum)、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、トリパノソーマ・ブルセイ(Trypanosoma brucei)、トキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)およびマンソン住血吸虫(Schistosoma mansoni)のような、原生動物の寄生虫の発達と生活環の調節に関与していることが、証拠により示唆されている。多くの研究において、宿主細胞の浸潤に不可欠な原虫の細胞運動の調節におけるCK2の役割が確認されている。CK2の活性化即ちCK2の過剰な活性が、ドノバンリーシュマニア、ヘルペトモナス・ムスカラム・ムスカラム、熱帯熱マラリア原虫、トリパノソーマ・ブルセイ、トキソプラズマ原虫およびマンソン住血吸虫が感染した宿主で発生することが判明している。実際に、CK2の阻害で、トリパノソーマ・クルージの感染が阻止されることが判明した。
【0020】
CK2はまた、ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV−1)、ヒトパピローマウイルス、単純ヘルペスウイルス、および他の種類のウイルス(例えば、ヒトサイトメガロウイルス、C型およびB型肝炎ウイルス、ボルナ病ウイルス、アデノウイルス、コクサッキーウイルス、コロナウイルス、インフルエンザ、および水痘帯状疱疹ウイルス)に関連するウイルスタンパク質と相互作用すること、および/またはそれらをリン酸化することも判明した。CK2は、HIV−1逆転写酵素とプロテアーゼをインビトロおよびインビボでリン酸化および活性化し、HIVのモデルであるサル−ヒト免疫不全ウイルス(SHIV)の病原性を増進する。このようにCK2の阻害剤は、HIV感染症モデルの病原性の影響を低減することができる。CK2はまた単純ヘルペスウイルスや他のさまざまなウイルスにおいて多くのタンパク質をリン酸化するが、いくつかの証拠が、ウイルスはその生活環における必須のタンパク質のリン酸化酵素としてCK2を採用していることを示唆している。したがって、CK2の阻害が、ウイルス自身の生活環において宿主のCK2に依存しているウイルスの感染や感染症の進行を阻止することが期待されている。
【0021】
CK2は、それによって影響を受ける生物学的プロセスが多様な点で特殊であり、同様に他の点でもほとんどのキナーゼとは異なっている。即ち、CK2は構成的に活性であり、ATPまたはGTPを使用することができ、たいていの腫瘍や急速に増殖する組織において増加する。またCK2は、ほとんどのキナーゼから区別され得る構造上の特徴をもつ点でも特殊である。多くのキナーゼ阻害剤は、複数種のキナーゼに影響を与えて、オフターゲット効果即ち個々の対象の間でのばらつきが高くなってしまう可能性が高くなるが、CK2では構造上の特徴のために、その阻害剤をCK2に対して非常に特異的なものとすることができる。このような理由から、CK2は医薬品開発において特に興味深い標的であり、本発明は、過剰なCK2活性、異常なCK2活性、または望ましくないレベルのCK2活性に媒介される、またはそれに関連する各種疾患や障害の治療に有用な、非常に効果的なCK2の阻害剤を提供する。
【0022】
このタンパク質キナーゼは、癌、免疫応答、炎症に関連する生化学的経路で重要な機能を有しており、特定の微生物の病原性発現においても重要なので、その活性の阻害剤は多くの医療上の用途を有する。本発明は、CK2、PIMまたはその両方を阻害する新規な化合物、ならびにそれらの化合物を用いた組成物やそれらの化合物の使用方法を提供する。これらの化合物は、前記タンパク質キナーゼのうちの1種または複数種の阻害剤として、それらの活性から派生すると考えられる治療上の用途を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】PCT/US2008/012829
【特許文献2】PCT/US2007/077464
【特許文献3】PCT/US2008/074820
【特許文献4】PCT/US2009/35609
【非特許文献】
【0024】
【非特許文献1】BachmannおよびMoroy,Internat.J.Biochem.Cell Biol.,37,726−730(2005)
【非特許文献2】Ahoら,FEBS Letters,571,43−49(2004)
【非特許文献3】Losmanら,JBC,278,4800−4805(1999)
【非特許文献4】Wangら,Biochim.Biophys.Acta.1593,45−55(2002)
【非特許文献5】Bachmanら,JBC,279,48319−48(2004)
【非特許文献6】Hiranoら,Oncogene19,2548−2556,(2000)
【非特許文献7】O.Fedorovら,PNAS104(51),20523−28(Dec.2007)
【非特許文献8】GaidanoおよびDalla Faver,1993
【非特許文献9】2008 Annual Meeting,Abstract No.4974
【非特許文献10】Liら,Cancer Res.66(13),6741−47(2006)
【非特許文献11】GuerraおよびIssinger,Curr.Med.Chem.,2008,15:1870−1886
【発明の概要】
【0025】
発明の開示
本発明はその一部において、細胞増殖の阻害、血管新生の阻害、およびタンパク質キナーゼ活性の調節等を含むがこれらに限定されない特定の生物学的活性を有する化合物を提供する。これらの分子は、Pimキナーゼ活性、カゼインキナーゼ2(CK2)活性とともに、いくつかの事例ではFms様チロシンキナーゼ3(Flt)活性も調節することができ、したがって以下に限定しないが、例えばATPからタンパク質またはペプチド基質へのγリン酸転移の阻害、血管新生の阻害、細胞増殖の阻害、細胞アポトーシスの誘発等を含む生物学的機能に影響を及ぼし得る。本発明はその一部において、新規な化合物およびその類似体の調製方法、およびそれらの使用方法も提供する。また、上述の分子を他の薬剤とともに含む組成物や、他の薬剤と組み合わせたそのような分子の使用方法も提供される。
【0026】
本発明はその一側面において、Pim−1、Pim−2、Pim−3、CK2,およびFltから選択される少なくとも1種類のキナーゼを阻害する化合物を提供する。
【0027】
本発明には、式Iの構造を有する化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、および/もしくはプロドラッグであって、

式中、
、ZおよびZは、それぞれ独立にS、N、CR、およびOから選択され、ただし、Z、ZおよびZのうちの1つ以下がOであり、Z、ZおよびZを含む環が芳香族であり;
Lは、結合、NR、O、S、CR、CR−NR、CR−O−、およびCR−Sから選択されるリンカーであり;
ここでR、R、R、R、R、およびRは、それぞれ独立にHであるか、C1〜C8アルキル、C2〜C8ヘテロアルキル、C2〜C8アルケニル、C2〜C8ヘテロアルケニル、C2〜C8アルキニル、C2〜C8ヘテロアルキニル、C1〜C8アシル、C2〜C8ヘテロアシル、C6〜C10アリール、C5〜C12ヘテロアリール、C7〜C12アリールアルキル、およびC6〜C12ヘテロアリールアルキル基からなる群より選択される置換されていてもよい構成員であるか、
またはハロ、OR、NR、NROR、NRNR、SR、SOR、SOR、SONR、NRSOR、NRCONR、NRCSNR、NRC(=NR)NR、NRCOOR、NRCOR、CN、COOR、CONR、OOCR、COR、もしくはNOであり、
各Rは、それぞれ独立にHまたはC1〜C8アルキル、C2〜C8ヘテロアルキル、C2〜C8アルケニル、C2〜C8ヘテロアルケニル、C2〜C8アルキニル、C2〜C8ヘテロアルキニル、C1〜C8アシル、C2〜C8ヘテロアシル、C6〜C10アリール、C5〜C10ヘテロアリール、C7〜C12アリールアルキル、もしくはC6〜C12ヘテロアリールアルキルであり、
かつここで同じ原子上または隣接原子上の2つのRは、連結されて、1つまたは複数のN、OまたはSを含んでいてもよい3〜8員環を形成していてもよく;
かつ各R基、および2つのR基を一緒に連結することにより形成される各環は、ハロ、=O、=N−CN、=N−OR'、=NR'、OR'、NR'、SR'、SOR'、SONR'、NR'SOR'、NR'CONR'、NR'CSNR'、NR'C(=NR')NR'、NR'COOR'、NR'COR'、CN、COOR'、CONR'、OOCR'、COR'、およびNOから選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよく、
ここでR'はそれぞれ独立にH、C1〜C6アルキル、C2〜C6ヘテロアルキル、C1〜C6アシル、C2〜C6ヘテロアシル、C6〜C10アリール、C5〜C10ヘテロアリール、C7〜12アリールアルキル、またはC6〜12ヘテロアリールアルキルであり、これらはそれぞれハロ、C1〜C4アルキル、C1〜C4ヘテロアルキル、C1〜C6アシル、C1〜C6ヘテロアシル、ヒドロキシ、アミノ、および=Oから選択される1つまたは複数の基で置換されていてもよく;
かつここで同じ原子上または隣接原子上の2つのR'は、連結されて、N、OおよびSから選択される3つまでのヘテロ原子を含んでいてもよい3〜7員環を形成していてもよく;
かつRおよびRは、同じ原子上または結合された隣接原子上にあるとき、一緒に連結されて、置換されていてもよい3〜8員環のシクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルを形成していてもよく;
Wは、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、またはヘテロシクリルであり、これらはそれぞれ置換されていてもよく;
Xは極性置換基であり;かつ
mは0〜2である、ものが含まれる。
【0028】
式Iのいくつかの態様では、化合物が式I−AまたはI−Bの構造、即ち

を有するか、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、および/もしくはプロドラッグであって、Z、Z、Z、L、W、X、Rおよびmは、式Iに定義されたものである。
【0029】
本発明は他の側面において、これらの化合物を含む組成物、および本明細書中でさらに記載するように各種医学的状態(例えば、癌、免疫疾患、病原性感染症、炎症、疼痛、血管新生関連疾患など)の治療のためのこれらの化合物を使用する方法を提供する。
【0030】
本明細書にはまた、本明細書に記載の式のうちの1つの化合物と、少なくとも1種類の薬学的に許容される担体もしくは賦形剤または2種以上の薬学的に許容される薬学的に許容される担体および/もしくは賦形剤とを含む医薬組成物も記載される。これらの化合物の医薬組成物は、本明細書に記載する治療において有用であり得る。
【0031】
本発明の化合物は、キナーゼと結合し相互作用し、本発明はその一側面において、キナーゼタンパク質と複合体化した本発明の化合物を提供する。
【0032】
特定の実施形態においては、タンパク質はCK2タンパク質であって、例えばSEQ ID NO:1、2、または3のアミノ酸配列か、または実質的に同一であるその変異型を含むCK2タンパク質である。「実質的に同一」とは、特定の配列(SEQ ID NO:1、2、または3)と少なくとも90%の相同性を有する、好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有する配列を意味する。

【0033】
特定の実施形態においては、当該タンパク質は細胞に、または細胞のない系に存在する。いくつかの実施形態における前記タンパク質、前記化合物または前記分子は固相に会合している。特定の実施形態においては、前記化合物と前記タンパク質の相互作用は検出可能な標識によって検出され、いくつかの態様では前記タンパク質は検出可能な標識を含み、特定の態様では前記化合物が検出可能な標識を含む。前記化合物と前記タンパク質の相互作用を、検出可能な標識を用いずに検出することもある。
【0034】
また、Pimタンパク質、CK2タンパク質、またはFltタンパク質の活性を調節するための方法であって、当該タンパク質を含む系に、当該タンパク質の活性を調節するのに有効な量の本明細書に記載の化合物を接触させる段階を含む、方法も提供される。特定の実施形態においては、前記タンパク質の活性が阻害され、いくつかの態様では前記タンパク質はCK2タンパク質であって、例えばSEQ ID NO:1、2、または3のアミノ酸配列か、または実質的に同一であるその変異型を含むCK2タンパク質である。他の実施形態においては、前記タンパク質はPimタンパク質またはFltタンパク質である。特定の実施形態においては、前記系が細胞であり、他の実施形態では前記系は細胞のない系である。特定の態様では、前記タンパク質または前記化合物が固相に会合したものであり得る。
【0035】
また、細胞増殖を阻害するための方法であって、細胞の増殖を阻害するのに有効な量の本明細書に記載の化合物を細胞に接触させる段階を含む、方法も提供される。場合によっては、細胞は、例えば癌細胞株(例えば乳癌、前立腺癌、膵臓癌、肺癌、造血器癌、結腸直腸癌、皮膚癌、卵巣癌の細胞株)などの細胞株である。いくつかの実施形態においては、癌細胞株は、乳癌、前立腺癌、または膵臓癌の細胞株である。場合によっては、前記細胞は組織中のものであり、対象の細胞でもよく、時には腫瘍の細胞でも、対象の腫瘍の細胞でもよい。特定の実施形態においては、前記方法は、細胞アポトーシスを誘発させる段階を含む。細胞は、場合によっては黄斑変性症の対象に由来するものである。
【0036】
また、対象における異常細胞増殖に関連する状態を治療するための方法であって、それを必要とする対象に対して、本明細書に記載の化合物を細胞増殖性の状態の治療に有効な量投与する段階を含む、方法も提供される。特定の実施形態においては、前記細胞増殖性の状態は腫瘍関連癌である。前記癌は、場合によっては、乳癌、前立腺癌、膵臓癌、肺癌、結腸直腸癌、皮膚癌、または卵巣癌である。いくつかの実施形態においては、前記細胞増殖性の状態は非腫瘍性の癌、例えば造血器癌である。いくつかの態様では、前記細胞増殖性の状態は黄斑変性症である。
【0037】
また、対象における疼痛または炎症性疾患を治療するための方法であって、そのような治療を必要とする対象に対して、そのような疾患の治療に有用な治療薬の治療上有効な量を投与する段階と、対象に対して、治療薬の望まれる効果を増強するのに有効な量のCK2、PimまたはFltを阻害する分子を投与する段階を含む、方法も提供される。特定の実施形態においては、CK2、PimまたはFltを阻害する分子は、本明細書に記載の式IまたはIIの化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、および/もしくはプロドラッグである。いくつかの態様では、CK2、PimまたはFltを阻害する分子は、本明細書に記載の化合物の表のうちの1つの特定の化合物か、それらの化合物のうちの1つの薬学的に許容される塩、溶媒和物、および/またはプロドラッグである。いくつかの実施形態において、CK2、Pim、またはFltを阻害する分子によって増強される治療薬の所望の効果は、細胞増殖の減少である。特定の実施形態においては、CK2、Pim、またはFltを阻害する分子によって増強される治療薬の所望の効果は、少なくとも1種類の細胞におけるアポトーシスの増加である。
【0038】
いくつかの実施形態において、治療薬と、CK2、Pim、またはFltを阻害する分子とを、実質的に同時に投与する。場合によっては、治療薬と、CK2、Pim、またはFltを阻害する分子とが、対象によって同時に使用される。特定の態様では、治療薬と、CK2、Pim、またはFltを阻害する分子とを、1個の医薬組成物へと組み合わせる。
【0039】
本発明のこれらおよび他の実施形態を以下の説明において記載する。
【発明を実施するための形態】
【0040】
化合物の実施形態
便宜上、標準的な命名法とは無関係に、式(I)の二環コア部分の基の位置を記述する必要がある場合、環上の各位置は、以下の番号付けスキームを使用して特定する。

【0041】
このスキームでは、1位〜4位が下側の(フェニル)環に、5位(窒素)〜8位が第2の環にある。したがって、例えばフェニル環上の極性置換基Xが、第2環のNに結合したフェニル環炭素に隣接する置換されていない炭素に結合したものである場合、その基は4位と記載され得る。また、便宜上、本明細書全体を通して、この構造におけるフェニル環は環Aと表記し、Nを含む第2の環は「B」を付記して環Bと表記することができる。同様の相対的な番号付けスキームは、A環とB環からなる二環構造を有する他の化合物にも用いられ、この二環式基にZ、ZおよびZを含む追加の環が縮合された場合、本明細書中これをC環と称する。
【0042】
本明細書において用いられる「置換されていてもよい」とは、記載している特定の1つもしくは複数の基が非水素置換基を有していなくてもよく、または1つもしくは複数の基が1つもしくは複数の非水素置換基を有していてもよいことを示す。特に記載がない場合、存在しうるそのような置換基の総数は、記載している基の無置換型に存在するH原子の数と等しい。カルボニル酸素(=O)などの任意の置換基が二重結合によって結合されている場合、基は2つの利用可能な原子価を取り、したがって含まれ得る置換基の総数は利用可能な原子価の数にしたがって減少する。
【0043】
「置換された」とは、特定の基またはラジカルを改変するために用いられるとき、特定の基またはラジカルの1つまたは複数の水素原子が、それぞれ独立に同一のまたは異なる置換基で置換されていることを意味する。
【0044】
特定の基またはラジカルにおける飽和炭素原子を置換するのに有用な置換基としては、以下に限定されないが、−R、ハロ、−O、=O、−OR、−SR、−S、=S、−NR、=NR、=N−OR、トリハロメチル、−CF、−CN、−OCN、−SCN、−NO、−NO、=N、−N、−S(O)、−S(O)NR、−S(O)、−S(O)OR、−OS(O)、−OS(O)、−OS(O)OR、−P(O)(O、−P(O)(OR)(O)、−P(O)(OR)(OR)、−C(O)R、−C(S)R、−C(NR)R、−C(O)O、−C(O)OR、−C(S)OR、−C(O)NR、−C(NR)NR、−OC(O)R、−OC(S)R、−OC(O)O、−OC(O)OR、−OC(S)OR、−NRC(O)R、−NRC(S)R、−NRC(O)O、−NRC(O)OR、−NRC(S)OR、−NRC(O)NR、−NRC(NR)Rおよび−NRC(NR)NRが挙げられ、ここで、Rは、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリールおよびヘテロアリールアリールからなる群から選択され;各Rは、それぞれ独立に水素またはRであり;各Rは、それぞれ独立にRであるか、あるいは、2つのRは、それらが結合する窒素原子とともに、O、N、およびSからなる群から選択される1〜4つの同一または異なる追加のヘテロ原子を含んでいてもよい、4−、5−、6−、または7−員環のシクロヘテロアルキルを形成し得る。具体例として、−NRは、−NH、−NH−アルキル、N−ピロリジニルおよびN−モルホリニルを含むものを意味する。別の具体例として、置換されたアルキルは、−アルキレン−O−アルキル、−アルキレン−ヘテロアリール、−アルキレン−シクロヘテロアルキル、−アルキレン−C(O)OR、−アルキレン−C(O)NR、および−CH−CH−C(O)−CHを含むものを意味する。1つまたは複数の置換基は、それらが結合する原子とともに、シクロアルキルおよびシクロヘテロアルキルを含む環を形成し得る。
【0045】
同様に、特定の基またはラジカルにおける不飽和炭素原子を置換するのに有用な置換基としては、以下に限定されないが、−R、ハロ、−O、−OR、−SR、−S、−NR、トリハロメチル、−CF、−CN、−OCN、−SCN、−NO、−NO、−N、−S(O)、−S(O)、−S(O)OR、−OS(O)、−OS(O)、−OS(O)OR、−P(O)(O、−P(O)(OR)(O)、−P(O)(OR)(OR)、−C(O)R、−C(S)R、−C(NR)R、−C(O)O、−C(O)OR、−C(S)OR、−C(O)NR、−C(NR)NR、−OC(O)R、−OC(S)R、−OC(O)O、−OC(O)OR、−OC(S)OR、−NRC(O)R、−NRC(S)R、−NRC(O)O、−NRC(O)OR、−NRC(S)OR、−NRC(O)NR、−NRC(NR)R、および−NRC(NR)NRが挙げられ、ここで、R、R、Rは、それぞれ上に定義したとおりである。
【0046】
ヘテロアルキル基およびシクロテヘロアルキル基における窒素原子を置換するのに有用な置換基としては、以下に限定されないが、−R、−O、−OR、−SR、−S、−NR、トリハロメチル、−CF、−CN、−NO、−NO、−S(O)、−S(O)、−S(O)OR、−OS(O)、−OS(O)、−OS(O)OR、−P(O)(O、−P(O)(OR)(O)、−P(O)(OR)(OR)、−C(O)R、−C(S)R、−C(NR)R、−C(O)OR、−C(S)OR、−C(O)NR、−C(NR)NR、−OC(O)R、−OC(S)R、−OC(O)OR、−OC(S)OR、−NRC(O)R、−NRC(S)R、−NRC(O)OR、−NRC(S)OR、−NRC(O)NR、−NRC(NR)R、および−NRC(NR)NRが挙げられ、ここで、R、R、Rは、それぞれ上に定義したとおりである。
【0047】
特定の基を置換するために用いられる置換基はさらに、一般的には上に挙げた各種の基から選択される1つまたは複数の同一のまたは異なる基で置換され得る。
【0048】
「1つ(1種類)の(a)」および「1つ(1種類)の(an)」という語は、数量の限定を与えるものではなく、指示されたものが少なくとも1つ存在する意を付与するものである。「1つ(1種類)の」という語は、「1つまたは複数(1種または複数種)の」または「少なくとも1つ(少なくとも1種類)の」と互換である。「または」もしくは「および/または」という語は、2つの言葉または表現が、共にまたは個々に当てはまることを示す機能語として用いられる。「含む」、「有する」、「備える」、および「包含する」という語は、非制限の用語(即ち、「限定することなく含む」意)として解されるべきものである。同一の構成要素または特性に関するあらゆる範囲の両端は包含され、独立に組み合わされ得る。
【0049】
「本発明の化合物」、「これらの化合物」、「その(前記)化合物」、および「本化合物」という用語は、本明細書に記載された構造式、例えば式(I)、式(I−A)、式(I−B)、式(II)、式(II−A)、式(II−B)、式(III)、式(III−A)、式(III−B)、式(IV)、式(IV−A)、式(IV−B)、式(V)、式(V−A)、および式(V−B)に包含される化合物であって、その構造が本明細書中に記載された式に含まれるあらゆる特定の化合物をさす。化合物は、その化学構造および/または化学名のいずれかによって特定され得る。化学構造と化学名が矛盾するときは、化学構造がその化合物を特定する決め手となる。
【0050】
本明細書に記載される化合物は、1つまたは複数のキラル中心および/または二重結合を含み得、したがって二重結合異性体(即ち幾何異性体)、エナンチオマー、またはジアステレオマーなどの立体異性体として存在することがある。本発明には、単離された各立体異性体とともに、ラセミ混合物およびジアステレオマーの混合物を含むさまざまなキラル純度の立体異性体の混合物が含まれる。したがって、本明細書に記載の化学構造は、立体異性的に純粋な形態(例えば、純粋な幾何異性体、純粋なエナンチオマー、純粋なジアステレオマー)、エナンチオマー混合物、および立体異性体混合物を含む、開示された全化合物のあらゆる可能なエナンチオマーおよび立体異性体を包含する。エナンチオマー混合物および立体異性混合物は、当業者に周知の分離技術またはキラル合成技術を用いて、それぞれのエナンチオマー成分または立体異性体成分に分割することができる。本発明には、単離された各立体異性体とともに、ラセミ混合物を含むさまざまなキラル純度の立体異性体の混合物が含まれる。また本発明には、各種ジアステレオマーも包含される。
【0051】
前記化合物はまた、いくつかの互変異性型で存在することができ、本明細書において1種類の互変異性体のみの記述は便宜上であり、示された型の他の互変異性体も包含するものと理解されたい。したがって、本明細書に記載した化学構造は、ここに例示した化合物の可能なすべての互変異性体も包含するものである。本明細書中で使用される「互変異性体」という用語は、非常に容易に相互変換し、平衡状態で共存できる異性体をさす。例えば、ケトンとエノールは1つの化合物の2種の互換異性型である。別の例において、置換1,2,4−トリアゾール誘導体は、以下に示すように少なくとも3種の互変異性型で存在し得る。

【0052】
本発明の化合物は多くの場合、塩として調製することが可能となるようにイオン性基をもつ。その場合には、当該化合物について言及されるときは常に薬学的に許容される塩も使用できることが当分野で理解されている。これらの塩は、無機または有機酸またはその塩を含む酸付加塩であり得るか、本発明の化合物の酸性の形態である場合には、無機または有機塩基から調製されたものであり得る。当該化合物は、薬学的に許容される酸または塩基の添加物として調製された薬学的に許容される塩として調製もしくは使用されることが多い。適切な薬学的に許容される酸や塩基は当技術分野でよく知られており、例えば酸付加塩を形成するための、塩酸、硫酸、臭化水素酸、酢酸、乳酸、クエン酸、または酒石酸や、塩基性塩を形成するための、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、カフェイン、各種アミンなどが挙げられる。適当な塩の調製方法は当該技術分野において十分に確立されている。いくつかの事例では、化合物が酸性および塩基性官能基の両方を含み得、この場合、2つのイオン性基があるが正味の電荷を持たないものであり得る。薬学的に許容される塩およびそれらの製剤の調製のための標準的な方法は当技術分野でよく知られており、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,A.Gennaro,ed.,20th edition,Lippincott,Williams&Wilkins,Philadelphia,PAなど各種文献に開示されている。
【0053】
本明細書で使用される「溶媒和物」は、溶媒和(溶質の分子やイオンと溶媒分子の組み合わせ)によって、または溶質イオンまたは分子からなる集合体によって形成される化合物、すなわち1つ以上の溶媒分子を含む本発明の化合物を意味する。水が溶媒である場合、対応する溶媒和物は「水和物」である。水和物の例としては、半水化物、一水和物、二水和物、三水和物、六水和物などが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の化合物の薬学的に許容される塩、および/またはプロドラッグはまた、溶媒和物の形態でも存在し得ることは当業者には理解されよう。溶媒和物は通常、本発明の化合物の調製の一部、または本発明の無水化合物による水分の自然吸収を介するかのいずれかである水によって形成される。
【0054】
用語「エステル」とは、分子の−COOH官能基のいずれかが−COOR官能基で置換された、本発明の化合物の任意のエステルを意味し、ここでエステルのR部分は、安定したエステル部分を形成する任意の炭素含有基であって、以下に限定されないが、例えばアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキルおよびそれらの置換誘導体などが挙げられる。本発明の化合物の加水分解可能なエステルは、そのカルボキシル基が加水分解可能なエステル基の形で存在する化合物である。つまり、これらのエステルは薬学的に許容され、生体内で対応するカルボキシル酸に加水分解され得るものである。これらのエステルは、従来より周知のものであり得、例えば、低級アルカノイルオキシアルキルエステル(例えばピバロイルオキシメチルエステルおよび1−ピバロイルオキシエチルエステルなど);低級アルコキシカルボニルアルキルエステル(例えばメトキシカルボニルオキシメチル、1−エトキシカルボニルオキシエチル、および1−イソプロピルカルボニルオキシエチルエステルなど);低級アルコキシメチルエステル(例えばメトキシメチルエステル、ラクトニルエステル、ベンゾフランケトエステル、チオベンゾフランケトエステルなど);および低級アルカノイルアミノメチルエステル(例えばアセチルアミノメチルエステルなど)が挙げられる。ベンジルエステルやシアノメチルエステルなどの他のエステルも用いることができる。これらの他のエステルの例として、(2,2−ジメチル−1−オキシプロピルオキシ)メチルエステル;(1RS)−1−アセトキシエチルエステル、2−[(2−メチルプロピルオキシ)カルボニル]−2−ペンテニルエステル、1−[[(1−メチルエトキシ)カルボニル]−オキシ]エチルエステル;イソプロピルオキシカルボニルオキシエチルエステル、(5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキソール−4−イル)メチルエステル、1−[[(シクロヘキシルオキシ)カルボニル]オキシ]エチルエステル;および3,3−ジメチル−2−オキソブチルエステルなどが挙げられる。本発明の化合物の加水分解性エステルは従来の方法を用いることによって前記化合物のフリーなカルボキシル基のところで形成することができることは、当業者には明白である。代表的なエステルとしては、ピバロイルオキシメチルエステル、イソプロピルオキシカルボニルオキシエチルエステル、および(5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキソール−4−イル)メチルエステルなどが挙げられる。
【0055】
「プロドラッグ」という用語は薬学的に活性な化合物の前駆体をさし、前駆体は、それ自体が目的の薬学的に活性であってもなくてもよいが、投与の際に、代謝によりまたは他の方式で薬学的に活性な化合物即ち目的の薬物に変換されるものである。例えば、プロドラックは、薬学的に活性な化合物のエステル、エーテル、またはアミド型のものであり得る。各種医薬についての種々のプロドラッグが調製され、開示されてきた。例えば、Bundgaard,H.およびMoss,J.,J.Pharm.Sci.78:122−126(1989)などを参照されたい。したがって、当業者であれば、有機合成の一般的に採用される技術を用いるこれらのプロドラッグの調製方法の知識を有する。
【0056】
「保護基」とは、分子マスクにおける反応性官能基に結合したとき、その官能基の反応性を低減または防止する原子群をさす。保護基の例は、例えば、Greenら,"Protective Groups in Organic Chemistry",(Wiley,2nd ed.1991)およびHarrisonら,"Compendium of Synthetic Organic Methods",Vols.1−8(John Wiley and Sons,1971−1996)に記載されている。代表的アミノ保護基としては、例えば、ホルミル、アセチル、トリフルオロアセチル、ベンジル、ベンジルオキシカルボニル(CBZ)、tert-ブトキシカルボニル(Boc)、トリメチルシリル(TMS)、2−トリメチルシリル−エタンスルホニル(SES)、トリチルおよび置換されたトリチル基、アリールオキシカルボニル、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(FMOC)、およびニトロ−ベラトリルオキシカルボニル(NVOC)の各基などが挙げられるが、これらに限定されない。代表的ヒドロキシ保護基としては、例えばヒドロキシ基が、ベンジル、トリチルエーテル、ならびにアルキルエーテル、テトラヒドロピラニルエーテル、トリアルキルシリルエーテル、およびアリルエーテルなどでアルキル化されているもの、またはアシル化されているものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
本明細書中で使用される「薬学的に許容される」とは、過度の毒性、刺激、アレルギー反応などを引き起こすことなくヒトおよび動物の組織に接触させて用いるのに適するものであること、妥当なリスク・ベネフィット比に従っていること、そして健全な医療上の判断の範囲内でその意図された使用を行ったときに有効であることを意味する。
【0058】
「賦形剤」は、化合物を投与する際に用いる希釈剤、アジュバント、媒体、または担体を指す。
【0059】
「有効な量」または「治療上有効な量」とは、患者に投与したときに有益な結果が達成される本発明の化合物の量、あるいは、インビボまたはインビトロで所望の活性を有する化合物の量を意味する。増殖性疾患の場合、「有益な臨床転帰」には、治療を行わなかった場合と比較したときの、病気や障害に関連する症状の程度や重症度の軽減、および/または患者の寿命の延びおよび/または生活の質の向上などが含まれる。例えば癌患者の場合、「有益な臨床転帰」には、治療を行わなかった場合と比較したときの、腫瘍量の減少、腫瘍の成長速度の低下、転移の減少、癌に関連する症状の重症度の低下、および/または患者の寿命の延びが含まれる。対象に投与される化合物の正しい量は、病気や状態の種類や重症度、および患者の特性(例えば、一般健康状態、年齢、性別、体重、ならびに薬物に対する耐性)に応じて決まる。投与すべき量は、増殖性疾患の程度、重症度および種類によっても左右される。当業者は、これらおよび他の要因に応じて適切な用量を決定することができよう。
【0060】
本明細書で使用される「アルキル」、「アルケニル」、および「アルキニル」という用語は、直鎖状、分岐鎖および環状一価ヒドロカルビル基、およびその組み合わせであって、それらが不飽和のときCおよびHのみを含むものをさす。例としては、メチル、エチル、イソブチル、シクロヘキシル、シクロペンチルエチル、2−プロペニル、3−ブチニルなどが挙げられる。このような各基の炭素原子の総数は本明細書中にも随時記載するが、例えば最大10個の炭素原子を含み得る場合、1〜10C、C1〜C10、またはC1〜10と表現され得る。例えばヘテロアルキル基のように、ヘテロ原子(典型的にはN、O、およびS)による炭素原子の置換が許容されている場合、基を記述する番号は、依然として例えばC1〜C6のように表記されるが、これは基における炭素原子の総数に、記述される環または鎖のバックボーンの炭素原子を置換したヘテロ原子の数を加えた和を表すものとなる。
【0061】
一般的に、本発明のアルキル、アルケニル、およびアルキニル置換基は1〜10C(アルキル)または2〜10C(アルケニルまたはアルキニル)を含む。好ましくは、それらの置換基は1〜8C(アルキル)または2〜8C(アルケニルまたはアルキニル)を含む。場合によっては、それらの置換基は1〜4C(アルキル)または2〜4C(アルケニルまたはアルキニル)を含む。単一の基は、複数の種類の多重結合、または複数箇所の多重結合を含み得る。そのような基は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含んでいるときは、用語「アルケニル」の定義の範囲に含められ、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含んでいるときは、用語「アルキニル」の範囲に含められる。
【0062】
アルキル、アルケニル、およびアルキニル基は、多くの場合、そのような置換基が化学的な意味を有する範囲で置換されていてもよい。典型的な置換基としては、以下に限定されないが、ハロ、=O、=N−CN、=N−OR、=NR、OR、NR、SR、SOR、SONR、NRSOR、NRCONR、NRCSNR、NRC(=NR)NR、NRCOOR、NRCOR、CN、C≡CR、COOR、CONR、OOCR、COR、およびNOが挙げられ、ここで、各Rはそれぞれ独立にH、C1〜C8アルキル、C2〜C8ヘテロアルキル、C1〜C8アシル、C2〜C8ヘテロアシル、C2〜C8アルケニル、C2〜C8ヘテロアルケニル、C2〜C8アルキニル、C2〜C8ヘテロアルキニル、C6〜C10アリール、またはC5〜C10ヘテロアリールであり、各Rは、ハロ、=O、=N−CN、=N−OR'、=NR'、OR'、NR'、SR'、SOR'、SONR'、NR'SOR'、NR'CONR'、NR'CSNR'、NR'C(=NR')NR'、NR'COOR'、NR'COR'、CN、C≡CR'、COOR'、CONR'、OOCR'、COR'、およびNOで置換されていてもよく、ここで、R'はそれぞれ独立にH、C1〜C8アルキル、C2〜C8ヘテロアルキル、C1〜C8アシル、C2〜C8ヘテロアシル、C6〜C10アリール、またはC5〜C10ヘテロアリールである。アルキル、アルケニル、およびアルキニル基も、C1〜C8アシル、C2〜C8ヘテロアシル、C6〜C10アリール、またはC5〜C10ヘテロアリールで置換され得、さらにこれらそれぞれが特定の官能基に適切な置換基で置換され得る。2つのRまたはR'が同じ原子上にある場合(例えばNR)、または互いに連結された隣接原子上にある場合(例えば−NR−C(O)R)、2つのRまたはR'基をそれらが連結された原子と一緒に連結することにより5〜8員環を形成することができ、このような5〜8員環は、C1〜C4アルキル、C1〜C4アシル、ハロ、C1〜C4アルコキシなどで置換され得、環員としてN、O、およびSから選択される付加的なヘテロ原子を含み得る。
【0063】
「アセチレン」置換基は、置換されていてもよい2〜10Cアルキニル基であって、式−C≡C−Rで表わされる。ここで、Rは、HまたはC1〜C8アルキル、C2〜C8ヘテロアルキル、C2〜C8アルケニル、C2〜C8ヘテロアルケニル、C2〜C8アルキニル、C2〜C8ヘテロアルキニル、C1〜C8アシル、C2〜C8ヘテロアシル、C6〜C10アリール、C5〜C10ヘテロアリール、C7〜C12アリールアルキル、またはC6〜C12ヘテロアリールアルキルであり、各R基はそれぞれ、ハロ、=O、=N−CN、=N−OR'、=NR'、OR'、NR'、SR'、SOR'、SONR'、NR'SOR'、NR'CONR'、NR'CSNR'、NR'C(=NR')NR'、NR'COOR'、NR'COR'、CN、COOR'、CONR'、OOCR'、COR'、およびNOから選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよく、各R'は、それぞれ独立にH、C1〜C6アルキル、C2〜C6ヘテロアルキル、C1〜C6アシル、C2〜C6ヘテロアシル、C6〜C10アリール、C5〜C10ヘテロアリール、C7〜12アリールアルキル、またはC6〜12ヘテロアリールアルキルで置換されていてもよく、さらにこれらそれぞれがハロ、C1〜C4アルキル、C1〜C4ヘテロアルキル、C1〜C6アシル、C1〜C6ヘテロアシル、ヒドロキシ、アミノ、および=Oから選択される1つまたは複数の基で置換されていてもよく;かつ、2つのR'は連結して、N、O、およびSから選択される3つ以下のヘテロ原子を含んでいてもよい3〜7員環を形成することができる。いくつかの態様では、−C≡C−RのRは、HまたはMeである。2つのRまたはR'が同じ原子上にある場合(例えばNR)、または互いに連結された隣接原子上にある場合(例えば−NR−C(O)R)、2つのRまたはR'基をそれらが連結された原子と一緒に連結することにより5〜8員環を形成することができ、このような5〜8員環は、C1〜C4アルキル、C1〜C4アシル、ハロ、C1〜C4アルコキシなどで置換され得、環員としてN、O、およびSから選択される付加的なヘテロ原子を含み得る。
【0064】
「ヘテロアルキル」、「ヘテロアルケニル」、および「ヘテロアルキニル」などの基は、対応するヒドロカルビル(アルキル、アルケニル、およびアルキニル)基と同様に定義されるが、「ヘテロ」という語は、バックボーン内に1〜3個のO、S、またはNヘテロ原子またはそれらの組み合わせを含む基をさしており、したがって、対応するアルキル、アルケニル、またはアルキニル基の少なくとも1つの炭素原子が、特定のヘテロ原子の1つによって置換されて、ヘテロアルキル基、ヘテロアルケニル基、またはヘテロアルキニル基が形成される。アルキル、アルケニル、およびアルキニル基のヘテロ型の一般的なサイズは、通常は対応するヒドロカルビル基と同程度であって、ヘテロ型上に存在し得る置換基はヒロドカルビル基に関して上述したものと同様である。化学的安定性のために、そのような基は、特に断らない限り2以上連続したヘテロ原子を含んではならない(ただし、ニトロ基やスルホニル基のようにオキソ基がNまたはSの上にある場合を除く)。
【0065】
本明細書中で使用される「アルキル」は、シクロアルキルおよびシクロアルキルアルキル基を含むが、本明細書中では用語「シクロアルキル」は、環炭素原子を介して結合されている炭素環式非芳香族基を表すものとして使用されることがあり、「シクロアルキル」はアルキルリンカーを介して当該分子に結合されている炭素環式非芳香族基を表すために使用されることがある。同様に、「ヘテロシクリル」は、環員として少なくとも1つのヘテロ原子を含み、CまたはNであり得る環原子を介して分子に結合される非芳香族環状基を表すために使用されることがあり、「ヘテロシクリルアルキル」は、リンカーを介して別の分子に結合されるそのような基を表すために使用されることがある。シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクリル、およびヘテロシクリルアルキル基に適したサイズおよび置換基は、アルキル基に関して上述したものと同様である。本明細書において使用されるこれらの用語は、1つの二重結合を含む環、あるいはその環が芳香族でない限り2つの二重結合を含む環も包含する。
【0066】
本明細書において使用される「アシル」は、カルボニル炭素原子の二つの利用可能な原子価の位置の1つで結合されたアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、またはアリールアルキルのいずれかを含む基を包含し、ヘテロアシルは、カルボニル基以外の少なくとも1つの炭素原子がN、O、およびSから選択されるヘテロ原子で置換されている、対応する基をさす。したがって、ヘテロアシルとしては、例えば、−C(=O)OR、および−C(=O)NR、ならびに−C(=O)−ヘテロアリールなどが挙げられる。
【0067】
アシルおよびヘテロアシル基は、それらがカルボニル炭素原子の開殻原子価を介して結合している分子または基に結合される。一般的には、アシルおよびヘテロアシル基は、ホルミル、アセチル、ピバロイル、およびベンゾイルを含むC1〜C8アシル基、およびメトシキアセチル、メトキシカルボニル、および4−ピリジノイルを含むC2〜C8ヘテロアシル基である。アシルまたはヘテロアシル基を含むヒドロカルビル基、アリール基、およびそのような基のヘテロ型は、一般的にアシルまたはヘテロアシル基の対応する成分のそれぞれに適切な置換基であることから本明細書に記載した置換基で置換されていてもよい。
【0068】
「芳香族」部分または「アリール」基は、芳香族性の既知の特性を有する単環式または縮合二環式部分をさす。例としては、フェニルおよびナフチルが挙げられる。同様に、「ヘテロ芳香族」および「ヘテロアリール」は、O、SおよびNから選択される1つまたは複数のヘテロ原子を環員として含む、単環式または縮合二環式の環系をさす。ヘテロ原子を含めた場合、6員環と同様に5員環における芳香族性も維持される。典型的なヘテロ芳香族系としては、単環式C5〜C6芳香族基(例えば、ピリジル、ピリミジル、ピラジニル、チエニル、フラニル、ピロリル、ピラゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、およびイミダゾリル)、ならびにこれらの単環基の1つをフェニル環またはヘテロ芳香族単環基のいずれかと縮合することによってC8〜C10二環基(例えば、インドリル、ベンズイミダゾリル、インダゾリル、ベンゾトリアゾリル、イソキノリル、キノリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾフラニル、ピラゾロピリジル、キナゾリニル、キノキサリニル、シンノリニルなど)を形成した縮合二環式部分が挙げられる。単環式または縮合二環式の環系で、環系全体の電子分布の観点から芳香族性の特徴を持つものは、上記の定義に含まれる。少なくとも、分子の残りの部分に直接結合されている環が芳香族性の特性を持つ環式基も含まれる。一般的には、この環系は5〜12の環員原子を含む。好ましくは、単環式ヘテロアリールは5〜6の環員を含むものであり、二環式ヘテロアリールは8〜10の環員を含むものである。
【0069】
アリールおよびヘテロアリール部分は、C1〜C8アルキル、C2〜C8アルケニル、C2〜C8アルキニル、C5〜C12アリール、C1〜C8アシル、およびこれらのヘテロ型を含む各種置換基で置換されていてもよく、さらにこれらそれぞれの置換基が置換されていてもよい。アリールおよびヘテロアリール部分の他の置換基としては、ハロ、OR、NR、SR、SOR、SONR、NRSOR、NRCONR、NRCSNR、NRC(=NR)NR、NRCOOR、NRCOR、CN、C≡CR、COOR、CONR、OOCR、COR、およびNOが挙げられ、ここで、各Rは、それぞれ独立して、H、C1〜C8アルキル、C2〜C8ヘテロアルキル、C2〜C8アルケニル、C2〜C8ヘテロアルケニル、C2〜C8アルキニル、C2〜C8ヘテロアルキニル、C6〜C10アリール、C5〜C10ヘテロアリール、C7〜C12アリールアルキル、またはC6〜C12ヘテロアリールアルキルであり、各Rはアルキル基に関して上述したように置換されていてもよい。2つのRまたはR'が同じ原子上にある場合(例えばNR)、または互いに連結された隣接原子上にある場合(例えば−NR−C(O)R)、2つのRまたはR'基をそれらが連結された原子と一緒に連結することにより5〜8員環を形成することができ、このような5〜8員環は、C1〜C4アルキル、C1〜C4アシル、ハロ、C1〜C4アルコキシなどで置換され得、環員としてN、O、およびSから選択される付加的なヘテロ原子を含み得る。
【0070】
アリールまたはヘテロアリール基上の置換基は、当然ながら、そのような各種置換基または置換基の各部分の置換に適したものとして上述した基でさらに置換されていてもよい。したがって、例えばアリールアルキル置換基は、アリール部分が本明細書にアリール基の置換基として一般的なものとして記載した置換基で置換されていてもよく、さらにアルキル部分が本明細書にアルキル基の置換基として一般的なものとして記載した置換基で置換されていてもよい。
【0071】
同様に、「アリールアルキル」および「ヘテロアリールアルキル」は、アルキレンのような連結基を介してそれらの結合点に結合されている芳香族およびヘテロ芳香族環系をさし、前記連結基は、置換されたまたは非置換の、飽和または不飽和の、環状または非環状のリンカーを含む。一般的に、リンカーはC1〜C8アルキルまたはそのヘテロ型である。これらのリンカーは、カルボニル基も含んでいてもよく、したがってアシルまたはヘテロアシル部分としての置換基となり得る。アリールアルキルまたはヘテロアリールアルキル基におけるアリールまたはヘテロアリール環は、アリール基に関して上述したものと同じ置換基で置換されていてもよい。好ましくは、アリールアルキル基は、アリール基に関して上述したように定義された基と、置換されていない若しくは1つまたは2つのC1〜C4アルキル基またはヘテロアルキル基で置換されたC1〜C4アルキレンとで置換されていてもよいフェニル環を含み、アルキルまたはヘテロアルキル基は、環化して、シクロプロパン、ジオキソラン、またはオキサシクロペンタンのような環を形成することができる。同様に、ヘテロアリールアルキル基は、好ましくは、アリール基に対して典型的な上述した基と、置換されていない若しくは1つまたは2つのC1〜C4アルキル基またはヘテロアルキル基で置換されたC1〜C4アルキレンとで置換されていてもよいC5〜C6単環式ヘテロアリール基を含むか、或いは、置換されていてもよいフェニル環またはC5〜C6単環式ヘテロアリールと、および置換されていない若しくは1つまたは2つのC1〜C4アルキル基またはヘテロアルキル基で置換されたC1〜C4ヘテロアルキレンとを含み、アルキルまたはヘテロアルキル基は、環化して、シクロプロパン、ジオキソラン、またはオキサシクロペンタンのような環を形成することができる。
【0072】
アリールアルキルまたはヘテロアリールアルキル基は置換されていてもよいと記載したが、置換基は、基のアルキルまたはヘテロアルキル部分か、アリールまたはヘテロアリール部分のいずれかの上にあり得る。アルキルまたはヘテロアルキル部分に存在していてもよい置換基は、通常アルキル基について上記したものと同じであり、アリールまたはヘテロアリール部分に存在していてもよい置換基は、通常アリール基について上記したものと同じである。
【0073】
本明細書で使用される「アリールアルキル」基は、それらが置換されていない場合はヒドロカルビル基であり、環およびアルキレンまたは類似のリンカーにおける炭素原子の総数で記載される。したがって、ベンジル基はC7アリールアルキル基であり、フェニルエチル基はC8アリールアルキル基である。
【0074】
上記のような「ヘテロアリールアルキル」は、連結基によって結合されたアリール基を含む部分であって、アリール部分の少なくとも1個の環の原子か、または連結基の1個の原子がN、O、およびSから選択されるヘテロ原子である点で「アリールアルキル」とは異なるものである。ヘテロアリールアルキル基は、本明細書においては、結合された環とリンカーにおける原子の総数によって記述され、ヘテロアルキルリンカーを介して結合されたアリール基;アルキレンなどのヒドロカルビルリンカーを介して結合されたヘテロアリール基:およびヘテロアルキルリンカーを介して結合されたヘテロアリール基を含む。したがって、例えばC7ヘテロアリールアルキルは、ピリジルメチル、フェノキシ、およびN−ピロリルメトキシを含むことになる。
【0075】
本明細書中で使用される「アルキレン」は、二価のヒドロカルビル基をさす。二価であるため、2つの他の基を一緒に結合することができる。一般的には、これは−(CH−で表され、nは1〜8であり好ましくはnは1〜4であり、特定されている場合、アルキレンは他の基によって置換されていてもよく、他の長さを有し得、かつ開殻価電子は鎖の両端にある必要はない。したがって、−CH(Me)−および−C(Me)−も、シクロプロパン−1,1−ジイルのような環状基と同様に、アルキレンと呼ぶことができる。アルキレン基が置換されている場合、置換基は、本明細書に記載のようにアルキル基上に通常は存在するものを含む。
【0076】
一般的に、1つの置換基に含められたアルキル、アルケニル、アルキニル、アシル、またはアリールまたはアリールアルキル基のいずれか、またはこれらの基のヘテロ型のいずれかは、それ自体が追加の置換基によって置換されていてもよい。これらの置換基の性質は、その置換基について特に記載されていない場合には、その主な置換基自体について記載されたものと同様である。したがって、例えばRのある実施形態がアルキルの場合、このアルキルはRの実施形態として一覧に挙げられている、残りの置換基によって置換されているものでもよい。ただし、Rの実施形態では、置換が化学的に意味をなすものであり、かつ置換がアルキル自体のために提供されたサイズの限界を損なうものではない(例えば、アルキルかアルケニルによって置換されるアルキルが、これらの実施形態での炭素原子数の上限を超えてしまうことがあるが、そのようなアルキルは含まれない)。しかし、アリール、アミノ、アルコキシ、=Oなどによって置換されたアルキルは、本発明の範囲に含まれ、これらの置換基の原子の数は、記述対象のアルキル、アルケニル等の基を記述するための数字には含まれない。置換基の数が特定されない場合は、そのようなアルキル、アルケニル、アルキニル、アシル、またはアリール基のそれぞれが、その利用可能な価数にしたがって一定数の置換基で置換されたものとすることができる。具体的には、例えば、これらの基のいずれかを、その利用可能な価数の一部または全部の分がフッ素原子で置換されたものとし得る。
【0077】
本明細書で使用される「ヘテロ型」とは、アルキル、アリール、またはアシルなどの基の誘導体であって、指定された炭素環基の少なくとも1つの炭素原子がN、O、およびSから選択されるヘテロ原子によって置換されているものをさす。したがって、アルキル、アルケニル、アルキニル、アシル、アリール、およびアリールアルキルのヘテロ型は、それぞれヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロアシル、ヘテロアリール、およびヘテロアリールアルキルである。オキソ基がNまたはSに結合してニトロ基またはスルホニル基を形成する場合を除き、2個以上のN、O、またはS原子が連続して結合されることはないことは理解されよう。
【0078】
本明細書において使用される「ハロ」には、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨードが含まれる。
【0079】
本明細書中で使用される「アミノ」はNHをさすが、ここでアミノが「置換された」または「置換されていてもよい」ものとして記述される場合、この用語には、NR'R''であるものが含まれ、ここで各R'およびR''は、それぞれ独立してHであるか、もしくはアルキル、アルケニル、アルキニル、アシル、アリール、またはアリールアルキルの各基であるか、これらの基の1つのヘテロ型であり、前記アルキル、アルケニル、アルキニル、アシル、アリール、またはアリールアルキルの各基またはこれらの基の1つのヘテロ型は、対応する基に適するものとして本発明に記載されている置換基で置換されていてもよい。この用語にはR'およびR''が一緒に結合されて3〜8員環を形成した形態が含まれ、ここで前記3〜8員環は、飽和したものか、不飽和のものか、または芳香族基であり、環員としてN、O、およびSから独立して選択される1〜3ヘテロ原子を含み、かつ必要に応じて、アルキル基のために適当なものとして説明した置換基で置換されているか、またはNR'R''が芳香族基である場合、ヘテロアリール基の典型的なものと本明細書で説明されているような置換基で置換されていてもよい。
【0080】
本明細書中で使用される「炭素環」という用語は、環中に炭素原子しか含まない環状化合物をさし、「複素環」は、ヘテロ原子を含む環状化合物をさす。炭素環および複素環構造は、単環系、二環系、または多環系の化合物を包含する。本明細書中で使用されるこれらの用語は、1つの二重結合または2つの二重結合を含む環も含み、いくつかの態様では複素環が非芳香族である。
【0081】
本明細書において、「ヘテロ原子」という用語は、窒素、酸素、または硫黄などの炭素または水素以外の原子をさす。
【0082】
複素環の具体例としては、以下に限定されないが、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、2,3−ジヒドロフラン、ピラン、テトラヒドロピラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、1,3−ジヒドロ−イソベンゾフラン、イソオキサゾール、4,5−ジヒドロイソキサゾール、ピペリジン、ピロリジン、ピロリジン−2−オン、ピロール、ピリジン、ピリミジン、オクタヒドロ−ピロロ[3,4b]ピリジン、ピペラジン、ピラジン、モルホリン、チオモルホリン、イミダゾール、イミダゾリジン2,4−ジオン、1,3−ジヒドロベンズイミダゾール−2−オン、インドール、チアゾール、ベンゾチアゾール、チアジアゾール、チオフェン、テトラヒドロチオフェン1,1−ジオキシド、ジアゼピン、トリアゾール、グアニジン、ジアザビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,5−ジアザビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,3,4,4a、9,9a−ヘキサヒドロ−1H−β−カルボリン、オキシラン、オキセタン、テトラヒドロピラン、ジオキサン、ラクトン類、アジリジン、アゼチジン、ピペリジン、およびラクタムなどが挙げられ、ヘテロアリールも包含し得る。ヘテロアリールの他の具体例としては、フラン、ピロール、ピリジン、ピリミジン、イミダゾール、ベンズイミダゾール、およびトリアゾールなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
本明細書において用いられる「無機置換基」という用語は、炭素を含んでいないか、または水素以外の元素に結合した炭素(例えば元素炭素、一酸化炭素、二酸化炭素、カルボネート)を含む置換基をさす。無機置換基の例としては、ニトロ、ハロゲン、アジド、シアノ、スルホニル、スルフィニル、スルホネート、ホスフェートなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0084】
本明細書において用いられる「極性置換基」なる用語は、電気双極子を有し、かつ双極子モーメントを有していてもよい任意の置換基をさす(例えば、不斉極性置換基は双極子モーメントを有し、対称極性置換基は双極子モーメントを持たない)。極性置換基には、水素結合を受容または供与する置換基、および生理的pHレベルの水溶液中で少なくとも部分的に正または負の電荷を有する基が含まれる。特定の態様において、極性置換基は別の化学部分との非共有水素結合において電子を受容または供与し得るものである。
【0085】
特定の実施形態において、極性置換基はカルボキシ、カルボキシの生物学的等価体、または約7から8のpHで主にアニオンとして存在する他の酸由来部分から選択される。他の極性置換基としては、OHまたはNH、エーテル酸素、アミン窒素、酸化硫黄または窒素、カルボニル、ニトリル、および、芳香族または非芳香族のいずれかにかかわらず窒素含有または酸素含有複素環を含む基が挙げられるが、それらに限定されない。いくつかの態様において、Xで表される極性置換基はカルボキシレートまたはカルボキシレートの生物学的等価体である。
【0086】
本明細書において用いられる「カルボキシレートの生物学的等価体」または「カルボキシの生物学的等価体」とは、生理学的pHで実質的な程度まで負に荷電していると予想される部分をさす。特定の実施形態において、カルボキシレートの生物学的等価体は下記からなる群より選択される部分、ならびにその塩およびプロドラッグであり、

式中、
はそれぞれ独立にHまたはC1〜10アルキル、C2〜10アルケニル、C2〜10ヘテロアルキル、C3〜8炭素環、および、追加の置換されていてもよい炭素環または複素環に縮合していてもよいC3〜8複素環からなる群より選択される置換されていてもよいメンバーであるか;またはRは置換されていてもよいC3〜8炭素環もしくはC3〜8複素環で置換されているC1〜10アルキル、C2〜10アルケニル、もしくはC2〜10ヘテロアルキルである。
【0087】
特定の実施形態において、極性置換基は、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボキサミド、テトラゾール、トリアゾール、オキサジアゾール、オキソチアジアゾール、チアゾール、アミノチアゾール、ヒドロキシチアゾール、およびカルボキシメタンスルホンアミドからなる群より選択される。本明細書に記載の化合物のいくつかの実施形態において、存在する少なくとも1つの極性置換基はカルボン酸またはその塩、もしくはエステルもしくは生物学的等価体である。特定の態様において、存在する少なくとも1つの極性置換基はカルボン酸含有置換基またはその塩、エステルもしくは生物学的等価体である。後者の態様において、極性置換基は、例えば、カルボン酸(またはその塩、エステルもしくは生物学的等価体)に連結されているC1〜C10アルキルまたはC1〜C10アルケニルであり得る。
【0088】
本明細書中で使用される「solgroup」即ち「溶解度増強基」は、それがなければ比較的低い溶解度を有する化合物の生理的な溶解度を向上させる能力で選択された分子の断片をさす。水または任意の生体媒質中での任意の特定分子の溶解を促進するあらゆる置換基は、溶解度増強基として機能し得る。溶解度増強基の例としては、0〜14のpH範囲で水中でイオン化されやすい基を含む任意の置換基;塩を形成しやすい任意のイオン性基;または高い双極子モーメントを有し水分子と強い相互作用を形成し得る任意の高い極性の置換基などが挙げられるが、これらに限定されない。可溶化基の例としては、置換アルキルアミン、置換アルキルアルコール、アルキルエーテル、アリールアミン、ピリジン、フェノール、カルボン酸、テトラゾール、スルホンアミド、アミド、スルホニルアミド、スルホン酸、スルフィン酸、ホスフェート、スルホニル尿素などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0089】
この目的に適した基としては、例えば式−A−(CH0−4−Gの基が挙げられ、式中Aは、原子なしか、Oか、NRであり、ここでRはHまたはMeであり;Gは、カルボキシ基、カルボキシ生物学的等価体、ヒドロキシ基、ホスホネート、スルホネート、または式−NRもしくはP(O)(ORの基であって、各Rはそれぞれ独立してH、またはNH、OH、NHMe、NMe、OMe、ハロ、または=O(カルボニル酸素)のいずれかの基の1つ以上(一般的には最大3つまで)で置換することができるC1〜C4アルキルであり;各基における2つのRは、一緒に連結することにより5〜7員環を形成することができ、当該5〜7員環は、環員として付加的なヘテロ原子(N、O、またはS)を含んでいてもよく、かつC1〜C4アルキルで置換されていてもよい。そのC1〜C4アルキル自体も、NH、OH、NHMe、NMe、OMe、ハロ、または=O(カルボニル酸素)のいずれかの基の1つ以上(一般的には最大3つまで)で置換されていてもよい。
【0090】
本発明はその一側面において、本発明は、式Iの構造を有する化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、および/もしくはプロドラッグであって、

式中、
、ZおよびZは、それぞれ独立にS、N、CR、およびOから選択され、ただし、Z、ZおよびZのうちの1つ以下がOであり、Z、ZおよびZを含む環が芳香族であり;
Lは、結合、NR、O、S、CR、CR−NR、CR−O−、およびCR−Sから選択されるリンカーであり;
ここでR、R、R、R、R、およびRは、それぞれ独立にHであるか、C1〜C8アルキル、C2〜C8ヘテロアルキル、C2〜C8アルケニル、C2〜C8ヘテロアルケニル、C2〜C8アルキニル、C2〜C8ヘテロアルキニル、C1〜C8アシル、C2〜C8ヘテロアシル、C6〜C10アリール、C5〜C12ヘテロアリール、C7〜C12アリールアルキル、およびC6〜C12ヘテロアリールアルキル基からなる群より選択される置換されていてもよい構成員であるか、
またはハロ、OR、NR、NROR、NRNR、SR、SOR、SOR、SONR、NRSOR、NRCONR、NRCSNR、NRC(=NR)NR、NRCOOR、NRCOR、CN、COOR、CONR、OOCR、COR、もしくはNOであり、
各Rは、それぞれ独立にHまたはC1〜C8アルキル、C2〜C8ヘテロアルキル、C2〜C8アルケニル、C2〜C8ヘテロアルケニル、C2〜C8アルキニル、C2〜C8ヘテロアルキニル、C1〜C8アシル、C2〜C8ヘテロアシル、C6〜C10アリール、C5〜C10ヘテロアリール、C7〜C12アリールアルキル、もしくはC6〜C12ヘテロアリールアルキルであり、
かつここで同じ原子上または隣接原子上の2つのRは、連結されて、1つまたは複数のN、OまたはSを含んでいてもよい3〜8員環を形成していてもよく;
かつ各R基、および2つのR基を一緒に連結することにより形成される各環は、ハロ、=O、=N−CN、=N−OR'、=NR'、OR'、NR'、SR'、SOR'、SONR'、NR'SOR'、NR'CONR'、NR'CSNR'、NR'C(=NR')NR'、NR'COOR'、NR'COR'、CN、COOR'、CONR'、OOCR'、COR'、およびNOから選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよく、
ここでR'はそれぞれ独立にH、C1〜C6アルキル、C2〜C6ヘテロアルキル、C1〜C6アシル、C2〜C6ヘテロアシル、C6〜C10アリール、C5〜C10ヘテロアリール、C7〜12アリールアルキル、またはC6〜12ヘテロアリールアルキルであり、これらはそれぞれハロ、C1〜C4アルキル、C1〜C4ヘテロアルキル、C1〜C6アシル、C1〜C6ヘテロアシル、ヒドロキシ、アミノ、および=Oから選択される1つまたは複数の基で置換されていてもよく;
かつここで同じ原子上または隣接原子上の2つのR'は、連結されて、N、OおよびSから選択される3つまでのヘテロ原子を含んでいてもよい3〜7員環を形成していてもよく;
かつRおよびRは、同じ原子上または結合された隣接原子上にあるとき、一緒に連結されて、置換されていてもよい3〜8員環のシクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルを形成していてもよく;
Wは、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、またはヘテロシクリルであり、これらはそれぞれ置換されていてもよく;
Xは極性置換基であり;かつ
mは0〜2である、ものを提供する。
【0091】
いくつかの実施形態では、式Iの化合物が式I−AまたはI−Bの構造、即ち

を有するか、その薬学的に許容される塩、溶媒和物、および/またはプロドラッグであって、Z、Z、Z、L、W、X、Rおよびmは、式Iに定義されたものである。
【0092】
式I、I−A、およびI−Bのいくつかの形態では、Z〜Zの1つがSであり、他の2つがCRである。特定の実施形態では、ZがSであり、ZおよびZがCRである。他の実施形態では、ZがSであり、ZおよびZがCRである。さらなる実施形態では、ZがSであり、ZおよびZがCRである。そのような態様のいくつかでは、少なくとも1つのRがHであり、両R基がともにHであることが多い。
【0093】
式I、I−A、およびI−Bの他の実施形態では、Z〜Zの1つがSであり、他の2つのZ基うちの少なくとも1つがNである。その実施形態のいくつかでは、ZがSであり、ZがCRであり、ZがNである。他の実施形態では、ZがSであり、ZがCRであり、ZがNである。さらなる実施形態では、ZがSであり、ZがCRであり、ZがNである。さらに別の実施形態では、ZがSであり、ZがCRであり、ZがNである。さらなる実施形態では、ZがSであり、ZとZがそれぞれNである。
【0094】
他の態様では、ZがOであり、ZがCRであり、ZがNである。
【0095】
いくつかの実施形態では、Z〜Zを含む環が、チオフェン環、チアゾール環、イソチアゾール環、オキサゾール環、またはチアジアゾール環である。場合によっては、Z〜Zを含む環が、

からなる群から選択される。
【0096】
いくつかの実施形態では、本発明は、式II、II−A、またはII−Bの構造を有する化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、および/もしくはプロドラッグであって、

式中、
、L、W、X、R、およびmは式Iに定義されたものである、ものを提供する。
【0097】
別の実施形態では、本発明は、式III、III−A、またはIII−Bの構造を有する化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、および/もしくはプロドラッグであって、

式中、
、L、W、X、R、およびmは式Iに定義されたものである、ものを提供する。
【0098】
さらなる実施形態では、本発明は、式IV、IV−A、またはIV−Bの構造を有する化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、および/もしくはプロドラッグであって、

式中、
、L、W、X、R、およびmは式Iに定義されたものである、ものを提供する。
【0099】
さらに別の実施形態では、本発明は、式V、V−A、またはV−Bの構造を有する化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、および/もしくはプロドラッグであって、

式中、
、L、W、X、R、およびmは式Iに定義されたものである、ものを提供する。
【0100】
式Iの化合物には、式I−AおよびI−Bの化合物が含まれ得、式IIの化合物には、式II−AおよびII−Bの化合物が含まれ得、式IIIの化合物には、式III−AおよびIII−Bの化合物が含まれ得、式IVの化合物には、式IV−AおよびIV−Bの化合物が含まれ得、式Vの化合物には、式V−AおよびV−Bの化合物が含まれ得ることは理解されよう。
【0101】
本明細書に記載した化合物のいくつかの形態では、LがNHまたはNMeである。別の形態では、LはNAc(ここでAcは、C1〜C10アシル基)であり得、即ちLは式N−C(=O)−R(式中RはHまたはC1〜C9の置換されていてもよいアルキル基)の基である。これらは、LがNHの化合物のプロドラッグとして機能し得る。さらに別の形態では、Lは結合であって、これらの態様では、Wは多くの場合アリール、ヘテロアリール、またはヘテロシクリルであり、これらは置換されていてもよい。
【0102】
式I〜Vの化合物では、Lは、結合、NR、O、S、CR、CR−NR、CR−O−、およびCR−Sから選択されるリンカーである。Lが2原子リンカーである場合、Lはいずれかの端部おいて環系に結合できる。即ち炭素原子、もしくはCR−NR、CR−O−、およびCR−Sのヘテロ原子のいずれかが環に結合し、他の原子はLに結合する。いくつかの態様では、Lは、結合か、もしくは−N(R)−、−O−、−S−、−CH−N(R)−、−N(R)−CH−、−O−CH−、−CH−O−、−CH−S−、−S−CH−、−CMeN(R)−、−CMe−O−、−N(R)−CMe、−O−CMe−などを含む1〜2原子のリンカーである。特定の実施形態では、Lは、結合、NH、NMe、および−CH−N(R)−または−N(R)−CH−から選択される(ここでRはHまたはMeである)。
【0103】
上述の化合物のいくつかの形態では、Wは、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいシクロアルキル、および置換されていてもよいヘテロシクリルから選択される。例えば、Wは、置換されていてもよいフェニル、ピリジル、ピリミジニル、もしくはピラジニル基;またはナフチル、インドール;ベンゾフラン、ベンゾピラゾール、ベンゾチアゾール、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、もしくはキノキサリン基であり得る。これらの基に適した置換基としては、ハロ、C1〜C4アルキル、C2〜C4アルケニルまたはアルキニル、CN、OMe、COOMe、COOEt、CONH、CFなどが挙げられるが、これらに限定されず、また、典型的にはアリール基がこれらの基の最大2個で置換される。実施形態によっては、Wはアリールまたはヘテロアリールであるとき、それが1つまたは2つの置換基で置換される。
【0104】
上述の化合物のいくつかの形態では、Wは、置換されていてもよいフェニルであるか、置換されていてもよいピリジルであるか、置換されていてもよいヘテロシクリルであるか、または、置換されていてもよいフェニル、置換されていてもよいヘテロアルキル、置換されていてもよいヘテロアリール、ハロ、ヒドロキシ、および−NR''からなる群から選択される少なくとも1つの構成員で置換されたC1〜C4アルキルであり、
各R''は、それぞれ独立にHまたは置換されていてもよいC1〜C6アルキルであり;
かつ2つのR''は、それらが結合するNとともに一緒に連結されて、置換されていてもよい3〜8員環を形成していてもよく、該3〜8員環は、N、O、およびSから選択される別のヘテロ原子を環員として含んでいてもよく、かつ飽和、不飽和、または芳香族であってもよい。
【0105】
そのような化合物のいくつかでは、Wは、式−(CH−NRの少なくとも1つの基を含み、
ここで、pは1〜4であり、
は、各出現で独立に、Hまたは置換されていてもよいアルキルであり、
かつ2つのRは、それらが結合するNとともに一緒に連結されて、置換されていてもよい3〜8員環を形成していてもよく、該3〜8員環は、N、O、およびSから選択される別のヘテロ原子を環員として含んでいてもよく、かつ飽和、不飽和、または芳香族であってもよい。
【0106】
いくつかの実施形態では、Wは、アリール(例えばフェニル)、複素環(例えば、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、ピペラジン、チオモルホリン)、またはヘテロアリール(例えば、ピロール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、フラン、チオフェン、チアゾール、イソチアゾール、チアジアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、トリアジン、テトラゾールなど)であって、これらはそれぞれ置換されているものであり得る。そのような実施形態のいくつかでは、Wは、フェニル、ピリジニル、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリンなどから選択される。
【0107】
Wは、各種置換基で置換され得る。特定の実施形態では、Wは、式−(CH0−4−NR(各RはHまたはC1〜C4アルキルであって、置換されていてもよく、2つのRは環化して環を形成することができる)の基によって置換されたアリール環である。いくつかの実施形態では、この基は式−(CH0−4−Azで表わされるもので、Azはピロリジン、ピペリジン、モルホリン、ピペラジン、チオモルホリン、ピロールなどのアザ環基である。いくつかの実施形態では、この基は−(CH1−3−Azで表わされるもので、Azが4−モルホリニル、1−ピペラジニル、1−ピロリジニル、または1−ピペリジニルであり;Azが4−モルホリニルである−CH−CH−Azは、Wが置換されたものであるときのWの置換の一例である。
【0108】
他の実施形態においては、Wは、ハロ、ハロアルキル、シアノ、アルキン、またはハロアルコキシ基の少なくとも1つで置換されたものである。適切なアルキン置換基としては、エチニルおよび1−プロピニルがあり、適切なハロ置換基として、F、Cl、およびBrなどが挙げられる。場合によっては、特定の置換基として存在するものとして、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、F、Cl、CN、およびエチニルが挙げられる。いくつかの実施形態では、Wがフェニルまたはピリジルであるとき、W上に置換基が1つ存在し、他の実施形態では、2つの置換基が存在する。
【0109】
特定の実施形態では、Wはオルト置換フェニル(例えば2−クロロフェニルまたは2−フルオロフェニル)である。
【0110】
上述の化合物の実施形態でのいくつかでは、Xは、COOR、C(O)NR−OR、トリアゾール、テトラゾール(好ましくは、テトラゾール環の炭素原子を介してフェニル環と連結している)、CN、イミダゾール、カルボキシレート、カルボキシレートの生物学的等価体、

からなる群から選択され;
ここで、各Rは、それぞれ独立にHであるか、またはアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキルアルキル、およびヘテロアリールアルキルからなる群から選択される置換されていてもよい構成員であり、
かつ同じ原子上または隣接原子上の2つのRは、一緒に連結されて、置換されていてもよい環を形成していてもよく、該環は、N、O、およびSから選択される追加のヘテロ原子を環員として含んでいてもよく;
10は、ハロ、CF、CN、SR、OR、NR、またはRであり、ここで各Rは、それぞれ独立にHまたは置換されていてもよいC1〜C6アルキルであり、かつ同じ原子上または隣接原子上の2つのRは、一緒に連結されて、置換されていてもよい環を形成していてもよく、該環は、N、O、およびSから選択される追加のヘテロ原子を環員として含んでいてもよく;かつ
Aは、NまたはCR10である。
【0111】
式I、II、III、IV、およびVの化合物において、少なくとも1つの極性置換基Xがフェニル環(環A)のいずれかの位置に存在し得る。そして、環は1つ、2つ、3つまたは、4つの極性置換基を含み得る。式I−A、I−B、II−A、II−B、III−A、III−B、IV−A、IV−B、V−A、およびV−Bの化合物において、分子が、構造に示された位置に少なくとも1つの極性置換基Xを有し、そして、環は1つ、2つ、3つまたは、4つの極性置換基を含み得る。特定の実施形態では、1つの極性置換基Xが存在し、各RはHであるか、最大2つのRがH以外の本明細書に記載された置換基であり、例として挙げると、Me、Et、ハロ(特にFまたはCl)、MeO、CF、CONH、またはCNであり得る。極性置換基は、フェニル環のいずれの位置にも存在し得る。いくつかの実施形態では、フェニル環は以下の選択肢から選択され、これら選択肢は、本明細書に記載の式Iの配置に一致するように配置され、かつ極性置換基Xの位置を示す:

ここで、Xは極性置換基であり、各Rは、それぞれ独立して式I〜Vの化合物に関して前に定義したR置換基から選択される。これらの実施形態のいくつかでは、各RがHである。
【0112】
上記した化合物のいくつかの実施形態では、極性置換基Xがフェニル環の4位に位置する。別の実施形態では、極性置換基Xがフェニル環の3位に位置する。特定の実施形態では、極性置換基がカルボン酸またはテトラゾールであって、フェニル環の3位または4位に位置する。
【0113】
これらの化合物のいくつかの実施形態では、フェニル環(即ち環A)が、極性置換基Xに加えて、最大3つの付加的な置換基で置換される。フェニル環に適した置換基は上記した。いくつかの実施形態では、これらの置換基が、ハロ、C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロアルキル、C1〜C4アルコキシ、アミノ、C1〜C4アルキルチオ、およびCNから選択される。いくつかの実施形態では、置換基が1つだけ存在する(即ちmが1)か、極性置換基Xの他に付加的な置換基が存在しない(即ちmが0)。
【0114】
上述の化合物のいくつかの実施形態では、−L−Wが、



から選択され、
ここで、
各Rは、それぞれ独立してH、Cl、またはFであり;
各Rは、それぞれ独立してMe、F、またはClであり;
各Rは、それぞれ独立してH、ハロ、C1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシ、およびC1〜C4ハロアルキルから選択され、
かつ同じ原子上または結合された隣接原子上の2つのR基は、一緒に連結されて3〜8員環を形成していてもよく;
各Aは、NまたはCRであり;
かつ各Solgroupは、溶解度増強基である。
【0115】
化合物の有用性
本発明は別の側面において、細胞増殖を阻害するための方法であって、細胞の増殖を阻害するのに有効な量の式I〜式Vの構造を有する化合物を細胞に接触させる段階を含む、方法を提供する。特定の実施形態では、これらの細胞は癌細胞株である。特定の実施形態では、前記癌細胞株は、乳癌、前立腺癌、膵臓癌、肺癌、造血器癌、結腸直腸癌、皮膚癌、卵巣癌細胞株である。多くの場合、細胞は対象の腫瘍内の細胞であり、前記化合物は腫瘍の成長速度の低下、腫瘍のサイズの縮小、または腫瘍の悪性度の低下、または腫瘍の転移の減少をもたらす。いくつかの実施形態では、前記化合物はアポトーシスを誘導する。
【0116】
特定の実施形態では、前記方法は、式I〜式Vの構造を有する化合物を細胞、特に腫瘍細胞に接触させて、アポトーシスを誘導する段階を含む。
【0117】
特定の実施形態では、前記細胞が黄斑変性症の対象の眼由来の細胞であり、前記処置方法は、対象における黄斑変性症の重症度または症状を軽減し、さらなる進行を遅くする。
【0118】
本発明は別の側面において、異常細胞増殖に関連する状態を治療するための方法であって、治療を必要とする対象に対して、細胞増殖性の状態を治療するのに有効な量の式I〜式Vの構造を有する化合物を投与する段階を含む、方法を提供する。特定の実施形態では、前記細胞増殖性の状態は、腫瘍関連癌である。前記化合物が有効な特定の癌には、乳癌、前立腺癌、膵臓癌、肺癌、造血器癌、結腸直腸癌、皮膚癌、および卵巣癌、結腸直腸癌、肝臓癌、リンパ節癌、結腸癌、前立腺癌、脳の癌、頭頸部癌、皮膚癌、血液の癌、および心臓の癌などが含まれる。
【0119】
別の実施形態では、前記細胞増殖性の状態は非腫瘍性の癌である。例としては、リンパ腫や白血病などの造血器癌が挙げられる。
【0120】
他の実施形態では、前記細胞増殖性の状態は黄斑変性症である。
【0121】
本発明は別の側面において、対象における疼痛または炎症を治療するための方法であって、それを必要とする対象に対して、疼痛または炎症を治療するのに有効な量の式I〜式Vの構造を有する化合物を投与する段階を含む、方法を提供する。
【0122】
本発明は別の側面において、対象における血管新生を阻害するための方法であって、それを必要とする対象に対して、血管新生を阻害するのに有効な量の式I〜式Vの構造を有する化合物を投与する段階を含む、方法を提供する。
【0123】
本明細書において、「治療する」および「治療」とは、疾患または病気の症状を改善、緩和、軽減、および除去することをさす。本明細書に記載の候補分子または化合物は、製剤または医薬で治療上有効な量でもよく、この治療上有効な量は、例えば特定の細胞(例えば、癌細胞)のアポトーシスや特定の細胞の増殖減少などの生物学的効果につながり得る量か、または疾患または病気の症状の改善、緩和、軽減、および除去につながり得る量である。前記用語はまた、細胞増殖率を低下または停止(例えば、腫瘍の増殖の減速または停止)させること、または増殖する癌細胞の数を低減(例えば、腫瘍の一部またはすべてを除去)させることを意味し得る。
【0124】
これらの用語はまた、微生物に感染した系(すなわち、細胞、組織、または被験者)における微生物の力価を減少させること、微生物の増殖の速度を低下させること、微生物感染に関連した症状の数または症状の影響を低減させること、および/または系からの微生物の検出可能な量を除去することに適用される。微生物の例としては、ウイルス、細菌、および真菌が挙げられるが、これらに限定されない。したがって、本発明は、原生動物寄生虫症(免疫不全患者における脳炎、パラノイア、統合失調症などの神経疾患の原因となる寄生原虫による感染症、ならびにシャーガス病などを含む)のような原虫疾患を治療するための方法を提供する。本発明はまた、さまざまなウイルス性疾患(ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV−1)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、単純ヘルペスウイルス(HSV)、エプスタイン・バー・ウイルス(EBV)、ヒトサイトメガロウイルス、C型およびB型肝炎ウイルス、インフルエンザウイルス、ボルナ病ウイルス、アデノウイルス、コクサッキーウイルス、コロナウイルス、および水痘帯状疱疹ウイルスなどによる疾患を含む)を治療するための方法を提供する。
【0125】
これらの疾患を治療する方法は、本明細書に記載する式の1つの阻害剤化合物の有効量を、治療を必要とする被験者に対して投与する段階を含む。
【0126】
本明細書中で使用される「アポトーシス」なる用語は、細胞に内在する自己破壊即ち自殺プログラムをさす。細胞は、トリガ刺激に応答して、細胞収縮、細胞膜のブレブ形成、および染色体の凝縮と断片化を含むイベントのカスケードを経る。これらのイベントは、細胞が膜結合粒子(アポトーシス小体)のクラスタに変換することで完了し、アポトーシス小体のクラスタはその後マクロファージに飲み込まれる。
【0127】
本発明はその一部において、本明細書に記載する本発明の範囲内の化合物の少なくとも1種類を含む医薬組成物、ならびに本明細書に記載する化合物の使用方法を提供する。例えば、本発明はその一部において、CK2、Pim、またはFltタンパク質と相互作用する候補分子を特定するための方法であって、CK2、Pim、またはFltタンパク質と、本明細書に記載した分子とを含む組成物を候補の分子に接触させる段階と、当該タンパク質と相互作用する本明細書に記載の分子の量が、調節されたか否かを判定する段階とを含み、それによって前記タンパク質と相互作用する本明細書に記載する分子の量を調節する候補分子が前記タンパク質と相互作用する候補分子として特定される、方法を提供する。
【0128】
タンパク質キナーゼ活性を調節するための方法も提供される。タンパク質キナーゼは、ペプチドまたはタンパク質の基質において、アデノシン三リン酸から、セリンまたはスレオニンのアミノ酸への(セリン/スレオニンタンパク質キナーゼ)、チロシンのアミン酸への(チロシンタンパク質キナーゼ)、チロシン、セリン、またはスレオニンへの(二重特異性タンパク質キナーゼ)、またはヒスチジンのアミノ酸への(ヒスチジンタンパク質キナーゼ)、γリン酸の転移を触媒する。したがって、本発明には、タンパク質キナーゼを調節(例えば阻害)するのに有効な量の本明細書に記載の化合物と、タンパク質キナーゼタンパク質を含む系とを接触させる段階を含む方法が含まれる。いくつかの実施形態においては、タンパク質キナーゼの活性は、当該タンパク質の触媒活性(例えば、アデノシン三リン酸からペプチドまたはタンパク質基質へのγリン酸の転移を触媒する)である。特定の実施形態においては、タンパク質キナーゼと相互作用する候補分子を特定するための方法であって、タンパク質キナーゼと本明細書に記載の化合物とを含む組成物を、前記化合物と前記タンパク質キナーゼが相互作用する条件下で、候補分子と接触させる段階と、前記タンパク質キナーゼと相互作用する化合物の量が、前記候補分子がない場合の前記化合物と前記タンパク質キナーゼとの対照の相互作用と比較して調節されたか否かを判定する段階とを含み、それによって、前記タンパク質キナーゼと相互作用する前記化合物の量を前記対照の相互作用と比較して調節する候補分子が、前記タンパク質キナーゼと相互作用する候補分子として特定される、方法が提供される。このような実施形態の系は、無細胞系または細胞を含む(例えば、インビトロで)系であり得る。いくつかの実施形態において、タンパク質キナーゼ、化合物、候補分子は、固相に会合している。特定の実施形態では、前記化合物と前記タンパク質キナーゼの相互作用は検出可能な標識によって検出され、いくつかの実施形態では前記タンパク質キナーゼは検出可能な標識を含み、特定の実施形態では前記化合物が検出可能な標識を含む。前記化合物と前記タンパク質キナーゼの相互作用を、検出可能な標識を用いずに検出することもある。
【0129】
タンパク質キナーゼと本明細書に記載する化合物と含む本発明の組成物も提供される。いくつかの実施形態では、前記組成物中のタンパク質キナーゼは、セリン−スレオニンタンパク質キナーゼ、またはチロシンタンパク質キナーゼである。特定の実施形態においては、前記タンパク質キナーゼは、化合物結合活性を有するタンパク質キナーゼの断片である。いくつかの実施形態では、前記組成物中のタンパク質キナーゼは、CK2、Pimサブファミリータンパク質キナーゼ(例えば、PIM1、PIM2、PIM3)、またはFltサブファミリータンパク質キナーゼ(例えば、FLT1、FLT3、FLT4)のサブユニット(例えば、触媒活性サブユニット、SH2ドメイン、SH3ドメインなど)であるか、またはそのサブユニットを含む。特定の実施形態では、前記組成物は無細胞であり、場合によっては、前記タンパク質キナーゼは組換えタンパク質である。
【0130】
前記タンパク質キナーゼは、任意の源(例えば哺乳類、サル、ヒト)に由来するものであり得る。本明細書に記載する化合物によって阻害され得る、または阻害される可能性があるセリン−スレオニンタンパク質キナーゼの例としては、ヒトのCK2、CK2α2、Pimサブファミリーキナーゼ(例えば、PIM1、PIM2、PIM3)、CDK1/サイクリンB、c−RAF、Mer、MELK、HIPK3、HIPK2、およびZIPKなどが挙げられるが、これらに限定されない。場合によっては、セリン−スレオニンタンパク質キナーゼは、ヒトCK2で一覧にあるものに対応する位置におけるアミノ酸、即ち45位のロイシン、163位のメチオニン、および174位のイソロイシンの1つまたは複数を含むサブファミリーのメンバーである。そのようなタンパク質キナーゼの例としては、ヒトのCK2、STK10、HIPK2、HIPK3、DAPK3、DYK2、PIM−1などが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に記載する化合物によって阻害され得る、または阻害される可能性があるチロシンタンパク質キナーゼの例としては、ヒトのFltサブファミリーのメンバー(例えば、FLT1、FLT2、FLT3、FLT3(D835Y)、FLT4)が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に記載する化合物によって阻害され得る、または阻害される可能性がある二重特異性タンパク質キナーゼの例としてDYRK2があるが、これに限定されない。タンパク質キナーゼのヌクレオチドならびにアミノ酸の配列と試薬類は、公表されている(例えば、ウェブサイトURLのncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/ならびにInvitrogen.com)。例えば、各種ヌクレオチド配列は、以下の登録番号を用いてアクセスできる。即ちPIM1について、NM_002648.2およびNP_002639.1;PIM2について、NM_006875.2およびNP_006866.2;PIM3について、XM_938171.2およびXP_943264.2;FLT3について、NM_004119.2およびNP_004110.2;FLT4について、NM_002020.3およびNP_002011.2;およびFTL1についてNM_002019.3およびNP_002010.2を用いてアクセスできる。
【0131】
本発明はその一部において、異常細胞増殖に関連する状態を治療するための方法を提供する。例えば、対象における細胞増殖性の状態を治療する方法であって、それを必要とする対象に対して、細胞増殖性の状態を治療するのに有効な量の本明細書に記載の化合物を投与する段階を含む、方法が提供される。対象は、研究動物(例えば、げっ歯類、イヌ、ネコ、サル)であって、異種移植腫瘍(例えばヒト腫瘍)など腫瘍を必要に応じて含むものか、またはヒトであり得る。場合によっては、細胞増殖性の状態は、腫瘍性または非腫瘍性の癌であって、結腸直腸癌、乳癌、肺癌、肝臓癌、膵臓癌、リンパ節癌、結腸癌、前立腺癌、脳の癌、頭頸部癌、皮膚癌、肝臓癌、腎臓癌、血液の癌、および心臓の癌(例えば、白血病、リンパ腫、癌腫)などが含まれるが、これらに限定されない。
【0132】
疼痛または炎症に関連する状態を治療するための方法も提供される。例えば、対象における疼痛を治療する方法であって、それを必要とする対象に対して、疼痛を治療するのに有効な量の本明細書に記載する化合物を投与する段階を含む、方法が提供される。また、対象における炎症を治療する方法であって、それを必要とする対象に対して、炎症を治療するのに有効な量の本明細書に記載する化合物を投与する段階を含む、方法も提供される。対象は、研究動物(例えば、げっ歯類、イヌ、ネコ、サル)またはヒトであり得る。炎症や疼痛に関連する状態としては、胃酸の逆流、胸焼け、にきび、アレルギーおよび過敏症、アルツハイマー病、喘息、アテローム性動脈硬化症、気管支炎、心臓炎、セリアック病、慢性疼痛、クローン病、肝硬変、大腸炎、痴呆、皮膚炎、糖尿病、ドライアイ、浮腫、肺気腫、皮膚炎、線維筋痛症、胃腸炎、歯肉炎、心臓病、肝炎、高血圧、インスリン抵抗性、間質性膀胱炎、関節痛/関節炎/関節リウマチ、メタボリックシンドローム(X症候群)、筋炎、腎炎、肥満、骨減少症、糸球体腎炎(GN)、若年性嚢胞性腎疾患、および1型ネフロン癆(NPHP)、骨粗しょう症、パーキンソン病、グアム・パーキンソン認知症、核上性麻痺、クッフス病、ピック病、ならびに、記憶障害、脳虚血、および統合失調症、歯周病、多発動脈炎、多発性軟骨炎、乾癬、強皮症、副鼻腔炎、シェーグレン症候群、けいれん性結腸、全身性カンジダ症、腱炎、尿路感染症、膣炎、炎症性癌(例えば、炎症性乳癌)などが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に記載する化合物の疼痛や炎症に対する効果の決定方法は周知である。例えば、研究動物のホルマリン刺激疼痛行動を、本明細書に記載する化合物の投与後にモニタリングして、疼痛の治療を評価することができる(例えば、Liら,Pain 115(1−2):182−90(2005))。また、炎症性分子(例えば、IL−8、GRO−α、MCP−1、TNFαおよびiNOS)の変調を、本明細書に記載の化合物の投与後にモニタリングして、例えば炎症の治療を評価することができる(例えば、Parharら.,Int J Colorectal Dis.22(6):601−9(2006))。したがって、本明細書に記載の化合物が炎症または疼痛を低減させるか否かを判定するための方法であって、系を、疼痛シグナルまたは炎症シグナルの活性を調節(例えば阻害)するのに有効な量の本明細書に記載した化合物と接触させる段階を含む、方法も提供される。また、炎症または疼痛を低減させる化合物を特定するための方法であって、系と、本明細書に記載した式のうちの1つの化合物とを接触させる段階と、疼痛シグナルまたは炎症シグナルを検出する段階とを含み、それによって対照の分子と比較して疼痛シグナルを調節する化合物が、疼痛の炎症を低減させる化合物として特定される、方法が提供される。疼痛シグナルの例としてはホルマリン刺激の疼痛行動があるが、これに限定されず、炎症シグナルの例としては炎症性分子のレベルがあるが、これに限定されない。したがって、本発明はその一部として、被験者における血管新生を調節するための方法、対象における血管新生の異常に関連する状態、増殖性糖尿病性網膜症を治療するための方法にも関連する。
【0133】
CK2はまた、アテローム性動脈硬化症の病因に一定の役割を果たすことが判明しており、層流によるせん断応力を維持することにより、アテローム発生を防止できる可能性がある。CK2は、血管新生において重要な役割を果たしており、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)の低酸素誘導性活性化を媒介することが分かっている。CK2はまた、骨格筋と骨組織に関連する疾患(例えば、心筋細胞肥大、心不全、インスリンシグナル伝達の障害およびインスリン抵抗性、低リン酸血症、および不十分な骨基質石灰化など)にも関与している。
【0134】
したがって、本発明はその一側面において、これらの状態を治療するための方法であって、そのような治療を必要とする対象に対して、有効な量のCK2阻害剤(例えば本明細書に記載する式の1つの化合物など)を投与する段階を含む、方法を提供する。
【0135】
また、血管新生状態を治療するための方法であって、それを必要とする対象に対して、血管新生状態を治療するのに有効な量の本明細書に記載する化合物を投与する段階を含む、方法も提供される。血管新生状態としては、固形腫瘍癌や静脈瘤疾患などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0136】
また、対象における免疫応答の異常に関連する状態を治療するための方法であって、それを必要とする対象に対して、状態を治療するのに有効な量の本明細書に記載する化合物を投与する段階を含む、方法が提供される。免疫応答の異常によって特徴付けられる状態としては、臓器移植の拒絶反応、喘息、自己免疫疾患(例えば、関節リウマチ、多発性硬化症、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、強皮症、多発性筋炎、混合性結合組織病(MCTD)、クローン病、および潰瘍性大腸炎を含む)などが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、mTOR経路のメンバーまたは関連経路のメンバー(例えばmTOR、PI3キナーゼ、AKT)の生物学的活性を変化させる(例えば阻害する)分子と組み合わせて、本明細書に記載する化合物を投与することによって、免疫応答を調節し得る。特定の実施形態では、mTOR経路のメンバーまたは関連経路のメンバーの生物学的活性を変化させる分子がラパマイシンである。特定の実施形態では、mTOR経路のメンバーまたは関連経路のメンバーの生物学的活性を変化させる分子(例えばラパマイシン)と組み合わせて、本明細書に記載する化合物を含む組成物が提供される。
【0137】
本発明のいくつかの実施形態においては、前記化合物は、本明細書に記載する化合物一覧の1つに記載の式I〜式Vの化合物であるか、もしくはこれらの化合物のうちの1つの薬学的に許容される塩、溶媒和物、および/またはプロドラッグである。
【0138】
組成物および投与経路
本発明は別の側面において、医薬組成物(即ち製剤)を提供する。医薬組成物は、少なくとも1種類の薬学的に許容される賦形剤または担体と混合した、本明細書に記載する式I〜式Vのいずれかの化合物を含み得る。多くの場合、前記組成物は、少なくとも2種類の薬学的に許容される賦形剤または担体を含む。
【0139】
上述の化合物の任意かつ適切な製剤を、投与のために調製することができる。経口、非経口、静脈内、筋肉内、経皮、局所および皮下の各経路(これらに限定されない)を含む、任意かつ適切な投与経路を使用し得る。処置される対象、投与方式、および必要な処置の種類(例えば、防止、予防、治療)に応じて、化合物をこれらのパラメータに一致する方式で製剤化する。各投与経路に適した製剤の調製は当技術分野で周知である。そのような製剤方法および技術の概要については、Remington's Pharmaceutical Sciences,latest edition,Mack Publishing Co.,Easton,PAに記載されており、その内容は引用により本明細書の一部とする。各物質または2つの物質の組み合わせの製剤は通常は希釈剤を含むものであり、場合によっては、アジュバント、緩衝剤、または防腐剤などを含む。投与される物質は、リポソーム組成物として、またはマイクロエマルションとして投与することもできる。
【0140】
注射のために、製剤は、溶液または懸濁液として、あるいは注射前に溶液または懸濁液とするのに適した固体として、またはエマルションとして従来の剤形に製することができる。適当な賦形剤としては、例えば、水、生理食塩水、ブドウ糖、グリセロールなどが挙げられる。このような組成物はまた、ある程度の量の無毒な補助物質(例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤など)を含み得るが、そのようなものとして例えば酢酸ナトリウムおよびソルビタンモノラウレートなどが挙げられる。
【0141】
薬物のための各種徐放性システムも考案されており、本発明の化合物に用いることができる。例えば米国特許第5,624,677号明細書を参照されたい。この特許の方法は、引用により本明細書の一部とする。
【0142】
全身投与はまた、坐剤、経皮パッチ、経粘膜送達および鼻腔内投与の使用など、比較的非侵襲的な方法も含み得る。経口投与も本発明の化合物に適している。適切な剤形としては、当分野において理解されるように、シロップ剤、カプセル剤、錠剤などが挙げられる。
【0143】
動物またはヒト対象への投与のために、上記化合物の適切な用量は、多くの場合、0.01〜15mg/kgであり、場合によっては0.1〜10mg/kgである。用量レベルは、状態の性質、薬効、対象の状態、医師の判断、投与の頻度と方式によるが、このようなパラメータの最適化は当業者の通常の知識の範囲内である。
【0144】
治療法の併用
本発明は、癌および炎症などの状態を治療するための方法であって、そのような治療を必要とする対象に対して、治療上有効な量の、特定のDNAセグメントに結合する治療薬を投与する段階と、同じ対象に対して、前記治療薬の活性を増強するのに有効な量のPARP調節物質またはCK2調節物質を投与する段階とを含む、方法を提供する。PARP調節物質またはCK2調節物質は、PARPタンパク質またはCK2タンパク質の生物学的活性を阻害または増強する薬剤であり、以下総称として「調節物質」と呼ぶ。治療薬および調節物質は、それぞれ別の医薬組成物として一緒に投与するか、混合して単一の医薬組成物として投与し得る。治療薬および調節物質はまた、調節物質が治療薬の効果を増強するタイミングで投与される限り、異なるタイミングおよび異なる頻度で別々に投与することもできる。調節物質は経口、静脈内、筋肉内、経鼻などの任意かつ既知の投与経路によって投与し得るが、治療薬も、任意かつ従来の投与経路により投与することができる。多くの実施形態では、調節物質および治療薬の少なくとも1つ、および選択に応じて両方を経口投与し得る。
【0145】
いくつかの実施形態においては、調節物質および治療薬を、それぞれ別々の投薬で、または混合して一回の投薬で、同時に投与する。2つの物質の投与の頻度が一致するように調節することができる場合は、好ましくは調節物質および治療薬を混合して1つの医薬組成物とし、例えば処置を受ける患者が、単回経口投与または単回注射を受けるようにし得る。
【0146】
投与されるこれらの物質のそれぞれの量は、投与経路、被験者の状態、対象に対する他の処置、およびその他のパラメータの状態に応じて変わってくる。本発明の治療薬はもちろん、複数の所望の効果をあげられ得るものであり;治療薬と組み合わせて使用される調節物質の量は、これらの所望の効果の1つまたは複数を増加させる量でなければならない。調節物質は、治療薬の所望の効果を増強する効果のある量で投与されるべきである。本明細書中で使用される「治療薬の所望の効果を増強する効果のある」量とは、治療薬単独での所望の効果の少なくとも1種類が、少なくとも約25%増加する場合の量である。治療薬のある所望の効果が、少なくとも50%増大、または少なくとも100%増大(すなわち、治療薬の効果の活性を倍増)する量であるのが好ましい。いくつかの実施形態では、治療薬のある所望の効果を少なくとも200%増大させる量である。
【0147】
治療薬の所望の効果を増大させる調節物質の量は、細胞増殖アッセイなどのインビトロの方法を用いて決定し得る。本発明の治療薬は、癌などの過剰増殖性疾患に対抗するのに有用であり、したがって細胞の増殖を低減させることができる。したがって、例えば、調節物質の適切な量は、細胞増殖アッセイで決定される治療薬の抗増殖効果を少なくとも25%高めるのに必要な量であり得る。
【0148】
本発明で使用される調節物質は、併用される治療薬によってもたらされる少なくとも1種類の所望の効果を増強し、したがって本発明の組み合わせは、付加効果のみならず相乗効果を提供するものである。調節物質自体が同じ種類の状態を治療するのに有用である場合もあり、したがって、当該アッセイで同一の効果を直接もたらすこともある。その場合、「所望の効果を増強する有効量」とは、2種類の物質が別々に投与された場合に期待される単純な相加効果によるものでなく、治療薬の効果が調節物質によって増強されたことに起因する調節物質と治療薬の活性の相乗効果による増強でなければならない。多くの場合、調節物質は、治療対象の対象またはインビトロアッセイにおいて明白な効果が期待されない量(濃度)で使用することができ、したがって併用することによって達成される増大効果は、相乗効果に直接起因するものである。
【0149】
本発明の化合物は、単独でまたは別の治療薬と組み合わせて使用できる。本発明は、癌、炎症、および免疫疾患などの状態を治療するための方法であって、そのような治療を必要とする対象に対して前記疾患を治療するのに有用な治療薬を治療上有効な量投与する段階と、同じ対象に対して治療上有効な量の本発明の調節物質を投与する段階とを含む、方法を提供する。治療薬および調節物質は、別々の医薬組成物として、または単一の医薬組成物に混合されたものとしてのいずれかで、一緒に投与し得る。また、治療薬および調節物質は、異なる時間におよび異なる頻度で、別々に投与し得る。調節物質は、静脈内、筋肉内、経鼻、経口投与など任意の既知の投与経路によって投与することができ、治療薬もまた、従来通りの投与経路で投与し得る。多くの実施形態においては、調節物質および治療薬の少なくとも一方、選択に応じて両方を経口投与し得る。
【0150】
特定の実施形態においては、上記の「調節物質」は、特定の四重鎖構造を形成できるDNAの領域に結合することによって作用し得る治療薬と併用することができる。このような実施形態において、治療薬はそれ自体抗癌活性を有するが、調節物質と併用するとその活性が増強される。この相乗効果により、治療薬を低用量で投与しながら、少なくとも1種類の所望の効果を同等以上のレベルで達成することが可能となる。
【0151】
動物またはヒト対象への投与のために、本明細書に記載する式I、II、III、IVまたはVの化合物のような調節物質の適切な用量は、一般的には約0.01〜15mg/kg、および約0.1〜10mg/kgである。用量レベルは、状態の性質、薬効、対象の状態、医師の判断、投与の頻度と方式によるが、このようなパラメータの最適化は当業者の通常の知識の範囲内である。
【0152】
調節物質は、独立して癌を治療する活性を有し得る。上記の併用療法の場合、治療薬と組み合わせて用いるときは、調節物質の投与量は、多くの場合、同じ状態すなわち同じ対象の治療のために調節物質を単独で使用する場合の1/2〜1/10より少なくなる。治療薬と併用する場合の調節物質の適切な量の決定は、当該技術分野で公知の方法によって容易に決定できる。
【0153】
本発明の化合物および組成物は、抗癌剤または他の薬剤(典型的には癌の治療中の患者に投与される苦痛一時緩和剤など)と組み合わせて使用できる。このような「抗癌剤」としては、例えば、古典的な化学療法剤とともに、分子標的治療薬、生物学的療法剤、放射線治療薬などが挙げられる。
【0154】
本発明の化合物または組成物を抗癌剤または別の治療薬と併用する場合、本発明は、例えば同時治療、時間差(staggered)治療、または交互治療を提供する。したがって、本発明の化合物を、抗癌剤または付加的な治療薬と同時に、同一の医薬組成物によって投与してもよく;本発明の化合物を、他の薬剤と同時に、別々の医薬組成物によって投与してもよく:さらに、例えば数秒、数分、数時間、数日、または数週間の間隔をおいて、本発明の化合物を他の薬剤の前に投与するか、もしくは他の薬剤を本発明の化合物の前に投与してもよい。
【0155】
時間差治療の例では、本発明の化合物による治療コースの投与を行った後、別の治療薬の治療コースを実施するか、その逆の順での治療を利用することができ、また各薬剤成分について2セット以上の連続治療を行うこともできる。本発明の特定の実施例では、例えば一方の薬剤成分(本発明の化合物または他の治療薬)が哺乳動物に投与されるとき、他方の薬剤成分またはその誘導体物質が哺乳動物の血中に残っている。例えば、他の薬剤またはその誘導体物質が血中に残っている間に式(I)〜(V)の化合物を投与してもよいし、あるいは式(I)〜(V)の化合物またはその誘導体物質が血中に残っている間に他の薬剤を投与してもよい。他の例では、第1の薬剤成分またはその誘導体の全てまたはその大部分が、哺乳動物の血中からなくなった後に、第2の薬剤成分を投与する。
【0156】
本発明の化合物および付加的な治療薬は、同種の剤形で投与する(例えば両方を静脈注射用の溶液で投与する)ことができ、または両者を異なる剤形で投与する(例えば、一方を局所投与し、他方を経口投与する)こともできる。当業者は、関連する癌と薬剤の特徴とに基づいて、いずれの薬剤の組み合わせが有用であるかを判断することができるであろう。
【0157】
本発明の化合物と組み合わせた治療に有用なその他の治療薬としては、次の種類の薬剤および阻害剤が挙げられる。
【0158】
本発明の化合物と組み合わせて有用な抗癌剤としては、当業者に周知の薬剤クラスのいずれかから選択される薬剤であって、以下に限定されないが、抗微小管剤(例えば、ジテルペノイドおよびビンカアルカロイドなど);白金配位錯体;アルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード、オキサザホスホリン、アルキルスルホネート、ニトロソウレア、およびトリアゼンなど);抗生物質(例えば、アントラサイクリン、アクチノマイシン、およびブレオマイシンなど);トポイソメラーゼII阻害剤(例えば、エピポドフィロトキシンなど);代謝拮抗剤(例えば、プリンおよびピリミジン類似体ならびに葉酸代謝拮抗化合物など);トポイソメラーゼI阻害剤(例えば、カンプトテシンなど);ホルモンおよびホルモン類似体;シグナル伝達経路阻害剤;非受容体型チロシンキナーゼ血管形成阻害剤;免疫療法剤;アポトーシス促進剤;細胞周期シグナル伝達阻害剤;および他の薬剤などが挙げられる。
【0159】
抗微小管剤すなわち抗有糸分裂剤は、M期すなわち細胞周期の有糸分裂期の腫瘍細胞の微小管に対して阻害活性を有する周期特異的な薬剤である。抗微小管剤の例としては、ジテルペノイドおよびビンカアルカロイドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0160】
天然物に由来するジテルベノイドは、細胞周期のG2/M期で作用すると考えられている周期特異的な抗癌剤である。ジテルペノイドは、微小管のp−チューブリンサブユニットを、このタンパク質と結合することにより安定化させると考えられる。次に、タンパク質の分解が阻害されて、有糸分裂が停止し、細胞死をまねくとみられる。
【0161】
ジテルペノイドの例としては、パクリタキセル、ドセタキセル、ラロタキセル、オルタタキセル、およびテセタキセルなどのタキサンが挙げられるが、これらに限定されない。パクリタキセルはタイヘイヨウイチイ(Taxus brevifolia)の樹から単離された天然ジテルペンの製品であり、注射剤タキソール(TAXOL)(登録商標)として市販されている。ドセタキセルは、ヨーロッパイチイの針葉から抽出した天然の前駆体、10−デアセチル−バッカチンIIIを使用して調製した、パクリタキセルq.v.の半合成誘導体である。ドセタキセルは、タキソテール(TAXOTERE)(登録商標)のような注射液剤として市販されている。
【0162】
ビンカアルカロイドはツルニチニチソウに由来する周期特異的な抗腫瘍剤である。ビンカアルカロイドは、チューブリンに特異的に結合することにより、細胞周期のM期(分裂期)に作用すると考えられている。したがって、結合されたチューブリン分子は微小管に重合することができなくなる。有糸分裂は中期で停止し、続いて細胞死に至ると考えられている。ビンカアルカロイドの例としては、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、およびビノレルビンなどが挙げられるが、これらに限定されない。ビンブラスチン即ち、ビンカロイコブラスチン硫酸塩は、注射液剤のベルバン(VELBAN)(登録商標)として市販されている。ビンクリスチン即ち、ビンカロイコブラスチ22−オキソ−硫酸塩、注射液剤のオンコビン(ONCOVIN)(登録商標)として市販されている。ビノレルビンは、酒石酸ビノレルビン(ナベルビン(NAVELBINE)(登録商標))の注射液剤として市販されており、半合成ビンカアルカロイド誘導体である。
【0163】
白金配位錯体はDNAと相互作用する非周期特異的抗癌剤である。白金錯体は、腫瘍細胞に入り込み、水和を受け、DNAと鎖内および鎖間架橋を形成して、腫瘍にとって有害な生物学的効果を引き起こすと考えられている。白金ベースの配位錯体としては、シスプラチン、カルボプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、サトラプラチン、および(SP−4−3)−(シス)−アミンエジクロロ−[2−メチルピリジン]白金(II)などが挙げられるが、これらに限定されない。シスプラチン、シス−ジアンミンジクロロ白金は、注射液剤のプラチノール(PLATINOL)(登録商標)として市販されている。カルボプラチン即ち、ジアミン[1,1−シクロブタン−ジカルボン酸(2−)−0,0']白金は、注射液剤としてパラプラチン(PARAPLATIN)(登録商標)として市販されている。
【0164】
アルキル化剤は、一般的に非周期特異的な薬剤であり、通常は強力な求電子剤である。一般的に、アルキル化剤は、リン酸基、アミノ基、スルフヒドリル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、イミダゾール基のようなDNA分子の求核部位を介してDNAをアルキル化することにより、共有結合を形成する。このようなアルキル化は核酸の機能を壊して、細胞死に至らしめる。アルキル化剤の例としては、アルキルスルホネート(例えばブスルファンなど);エチレンイミンおよびメチルメラミン誘導体(例えばアルトレタミンおよびチオテパなど);ナイトロジェンマスタード(例えばクロラムブシル、シクロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メルファラン、およびウラムスチンなど);ニトロソウレア(例えばカルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシンなど);トリアゼンおよびイミダゾテトラジン(例えば、ダカルバジン、プロカルバジン、テモゾラミド、およびテモゾロミドなど)などが挙げられるが、これらに限定されない。シクロホスファミド、即ち2−[ビス(2−クロロエチル)−アミノ]テトラヒドロ−2H−1,3,2−オキサザホスホリン2−オキシド水和物は、シトキサン(CYTOXAN)(登録商標)の注射液剤または錠剤として市販されている。メルファラン、即ち4−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]−L−フェニルアラニンは、アルケラン(ALKERAN)(登録商標)などの注射液剤または錠剤として市販されている。クロラムブシル、4−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ベンゼンブタン酸は、リューケラン(LEUKERAN)(登録商標)錠として市販されている。ブスルファン、即ち1,4−ブタンジオールジメタンスルホナートは、マイレラン(MYLERAN)(登録商標)錠として市販されている。カルムスチン、即ち1,3−[ビス(2−クロロエチル)−1−ニトロソウレアは、BiCNU(登録商標)などの凍結乾燥材料の単回使用バイアルとして市販されている。5−(3,3−ジメチル−1−トリアゼノ)−イミダゾール−4−カルボキサミドは、DTIC−Dome(登録商標)などの材料の単回使用バイアルとして市販されている。
【0165】
抗腫瘍抗生物質は、DNAと結合するか、インターカレートすると考えられている非周期特異的薬剤である。これは、安定したDNA複合体や鎖の切断をもたらし、それにより核酸の通常の機能を壊して、細胞死に至らしめ得る。抗腫瘍抗生物質の例としては、アントラサイクリン(例えば、リポソームダウノルビシンを含むダウノルビシン、リポソームドキソルビシンを含むドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、およびバルルビシンなど);ストレプトマイセス属関連の薬剤(例えば、ブレオマイシン、アクチノマイシン、ミトラマイシン、マイトマイシン、ポルフィロマイシンなど);およびミトキサントロンなどが挙げられるが、これらに限定されない。ダクチノマイシンは、アクチノマイシンDとしても知られ、コスメゲン(COSMEGEN)(登録商標)などの注射剤として市販されている。ダウノルビシン、即ち(8S−シス)−8−アセチル−10−[(3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−a−L−リキソヘキソピラノシル)オキシ]−7,8,9,10−テトラヒドロ−6,8,11−トリヒドロキシ−1−メトキシ−5,12−ナフタセンジオン塩酸塩は、リポソーム注射剤のDAUNOXOME(登録商標)として、または注射剤のCERUBIDINE(登録商標)として市販されている。ドキソルビシン、即ち(8S,10S)−10−[(3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−α−L−リキソヘキソピラノシル)オキシ]−8−グリコロイル,7,8,9,10−テトラヒドロ−6,8,11−トリヒドロキシ−1−メトキシ−5,12−ナフタセンジオン塩酸塩は、ルベックス(RUBEX)(登録商標)またはアドリアマイシン(ADRIAMYCIN)RDF(登録商標)などの注射剤として市販されている。ブレオマイシン、即ちストレプトマイセス・バーチシラス(Streptomyces verticillus)の菌株からから単離された細胞毒性ペプチド系抗生物質の混合物は、BLENOXANE(登録商標)として市販されている。
【0166】
トポイソメラーゼII阻害剤としては、例えばマンドレイク植物に由来する周期特異的な抗腫瘍剤であるエピポドフィロトキシンが挙げられるが、これに限定されない。エピポドフィロトキシンは、通常、トポイソメラーゼIIとDNAとの三元複合体を形成してDNA鎖切断を引き起こすことによって、細胞周期のS期およびG2期の細胞に影響を与える。鎖の切断が蓄積され、細胞死がもたらされる。エピポドフィロトキシンの例としては、エトポシド、テニポシド、およびアムサクリンなどが挙げられるが、これらに限定されない。エトポシド、即ち4'−デメチル−エピポドフィロトキシン9[4,6−0−(R)−エチリデン−β−D−グルコピラノシド]は、VePESID(登録商標)などの注射液剤またはカプセルとして市販されており、一般的にVP−16として知られている。テニポシド、4'−デメチル−エピポドフィロトキシン9[4,6−0−(R)−テニリデン−β−D−グルコピラノシド]は、VUMON(登録商標)などの注射液剤として市販されており、一般的にVM−26として知られている。
【0167】
代謝拮抗抗腫瘍剤は、通常、DNA合成の阻害により、またはプリンまたはピリミジン塩基合成を阻害してDNA合成を制限することにより、細胞周期のS期(DNA合成)に作用する周期特異的な抗腫瘍剤である。その結果、S期が進行せず細胞死に至る。代謝拮抗剤としては、プリン類似体(例えばフルダラビン、クラドリビン、クロロデオキシアデノシン、クロファラビン、メルカプトプリン、ペントスタチン、エリスロヒドロキシノニルアデニン、リン酸フルダラビン、およびチオグアニンなど);ピリミジン類似体(例えばフルオロウラシル、ゲムシタビン、カペシタビン、シタラビン、アザシチジン、エダトレキセート、フロクスウリジン、およびトロキサシタビンなど);および葉酸代謝拮抗薬(例えばメトトレキサート、ペメトレキセド、ラルチトレキセド、およびトリメトレキサートなど)が挙げられる。シタラビン、即ち4−アミノ−1−p−D−アラビノフラノシル−2(1H)−ピリミジノンは、CYTOSAR−U(登録商標)として市販されており、一般的にAra−Cとして知られている。メルカプトプリン、即ち1,7−ジヒドロ−6H−プリン−6−チオン一水和物は、プリネトール(PURINETHOL)(登録商標)として市販されている。チオグアニン、即ち2−アミノ−1,7−ジヒドロ−6H−プリン−6−チオンは、TABLOID(登録商標)として市販されている。ゲムシタビン、即ち2'−デオキシ−2',2'−ジフロロシチジン一塩酸塩(p―異性体)は、ゲムザール(GEMZAR)(登録商標)として市販されている。
【0168】
トポイソメラーゼI阻害剤はカンプトテシンおよびカンプトテシン誘導体を含む。トポイソメラーゼI阻害剤の例としては、カンプトテシン、トポテカン、イリノテカン、ルビテカン、ベロテカン、および各種光学異性体(即ち、米国特許第6,063,923号明細書;同第5,342,947号明細書;同第5,559,235号明細書;同第5,491,237号明細書ならびに1997年11月24日を出願日とする係属中の米国特許出願第08/977,217号に記載された、7−(4−メチルピペラジノ−メチレン)−10,11−エチレンジオキシ−カンプトテシンの(R)、(S)または(R、S))などが挙げられるが、これらに限定されない。塩酸イリノテカン、即ち(4S)−4,11−ジエチル−4−ヒドロキシ−9−[(4−ピペリジノピペリジノ)−カルボニルオキシ]−1H−ピラノ[3',4',6,7]インドリジノ[1,2−b]キノリン−3,14(4H、12H)−ジオン塩酸塩は、注射剤のCAMPT0SAR(登録商標)として市販されている。イリノテカンは、トポイソメラーゼI−DNA複合体に、その活性代謝物8N−38とともに結合するカンプトテシンの誘導体である。塩酸トポテカン、即ち(S)−10−[(ジメチルアミノ)メチル]−4−エチル−4,9−ジヒドロキシ−1H−ピラノ[3' ,4' ,6,7]インドリジノ[1,2−b]キノリン−3,14−(4H、12H)−ジオン一塩酸塩は、注射剤のHYCAMTIN(登録商標)として市販されている。
【0169】
ホルモンおよびホルモン類似体は、そのホルモン(群)と癌の増殖および/または増殖停止との間に一定の関係をもつ、癌を治療するための有用な化合物である。癌の治療に有用なホルモンおよびホルモン類似体の例としては、アンドロゲン(例えば、フルオキシメステロンおよびテストラクトンなど);抗アンドロゲン剤(例えば、ビカルタミド、シプロテロン、フルタミド、およびニルタミドなど);アロマターゼ阻害剤(例えば、アミノグルテチミド、アナストロゾール、エキセメスタン、フォルメスタン、ボロゾール、およびレトロゾールなど);コルチコステロイド(例えば、デキサメタゾン、プレドニゾン、およびプレドニゾロンなど);エストロゲン(例えば、ジエチルスチルベストロールなど);抗エストロゲン剤(例えば、フルベストラント、ラロキシフェン、タモキシフェン、トレミフェン、ドロロキシフェン、およびイドキシフェン、ならびに、例えば米国特許第5,681,835号明細書、同第5,877,219号明細書、および同第6,207,716号明細書に記載されているような選択的エストロゲン受容体調節物質(SERMS)など);5α−還元酵素(例えば、フィナステリド、デュタステリドなど);黄体形成ホルモン(LH)および/または卵胞刺激ホルモン(FSH)の放出を刺激するゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)およびその類似体、例えばLHRHアゴニストおよびアンタゴニスト(例えば、ブセレリン、ゴセレリン、ロイプロリド、およびトリプトレリンなど):プロゲスチン(例えば、酢酸メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロールなど);および甲状腺ホルモン(レボチロキシンおよびリオチロニンなど)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0170】
シグナル伝達経路阻害剤は、細胞増殖や分化など細胞内の変化を惹起する化学プロセスを遮断即ち阻害する阻害剤である。本発明で有用なシグナル伝達阻害剤としては、例えば、受容体チロシンキナーゼ、非受容体チロシンキナーゼ、SH2/SH3ドメイン遮断薬、セリン/トレオニンキナーゼ、ホスファチジルイノシトール−3キナーゼ、ミオ−イノシトールシグナリング、およびRas癌遺伝子の各阻害剤が挙げられる。
【0171】
いくつかのタンパク質チロシンキナーゼは、細胞増殖の調節に関与する各種タンパク質における特定のチロシン残基のリン酸化を触媒する。このようなタンパク質チロシンキナーゼは受容体または非受容体キナーゼとして広く分類することができる。受容体チロシンキナーゼは、細胞外リガンド結合ドメイン、膜貫通ドメイン、およびチロシンキナーゼドメインを有する膜貫通タンパク質である。受容体チロシンキナーゼは、細胞増殖の調節に関与しており、成長因子受容体と呼ぶこともある。
【0172】
過剰発現や変異などによって、これらのキナーゼの多くが不適切に、つまり制御されない形で活性化されると、無秩序な細胞増殖が生じることが分かっている。つまり、このようなキナーゼの異常な活性は悪性組織の増殖に結びついている。したがって、このようなキナーゼの阻害剤は癌の治療方法を提供し得る。
【0173】
成長因子受容体としては、例えば、上皮成長因子受容体(EGFr)、血小板由来増殖因子受容体(PDGFr)、erbB2、ErbB4、血管内皮増殖因子受容体(VEGFr)、免疫グロブリン様および上皮成長因子相同ドメインを有するチロシンキナーゼ(TIE−2)、インスリン成長因子−I(IGFI)受容体、マクロファージコロニー刺激因子(cfms)、BTK、ckit、cmet、線維芽細胞増殖因子(FGF)受容体、Trk受容体(TrkA、TrkB、およびTrkC)、エフリン(eph)受容体、およびRETプロトオンコジーンなどが挙げられる。
【0174】
成長受容体の阻害剤のいくつかが開発中であり、それにはリガンドアンタゴニスト、抗体、チロシンキナーゼ阻害剤、およびアンチセンスオリゴヌクレオチドが含まれている。成長因子受容体および成長因子受容体機能を阻害する薬剤は、例えばKath,John C.,Exp.Opin.Ther.Patents(2000)10(6):803−818;Shawverら,Drug Discov.Today(1997),2(2):50−63;およびLofts,F.J.ら,"Growth factor receptors as targets",New Molecular Targets for Cancer Chemotherapy,ed.Workman,PaulおよびKerr,David,CRC press 1994,Londonに記載されている。受容体チロシンキナーゼ阻害剤の具体例としては、スニチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、およびイマチニブなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0175】
成長因子受容体キナーゼではないチロシンキナーゼは、非受容体型チロシンキナーゼと呼ばれる。本発明において有用な非受容体型チロシンキナーゼは、抗癌剤の標的であるか潜在的な標的であり、cSrc、Lck、Fyn、Yes、Jak、cAbl、FAK(焦点接着キナーゼ)、ブルトン型チロシンキナーゼ、およびBcr−Ablなどが挙げられる。そのような非受容体型キナーゼ、および非受容体型チロシンキナーゼの機能を阻害する薬剤は、Sinh,S.およびCorey,S.J.,J.Hematotherapy&Stem Cell Res.(1999)8(5):465−80;およびBolen,J.B.,Brugge,J.S.,Annual Review of Immunology.(1997)15:371−404に記載されている。
【0176】
SH2/SH3ドメイン遮断薬は、PI3−K p85サブユニット、Srcファミリーキナーゼ、アダプター分子(Shc、Crk、Nck、Grb2)、およびRas−GAPなどのアダプタータンパク質、または各種酵素におけるSH2またはSH3ドメインの結合を切断する薬剤である。抗癌剤の標的としてのSH2/SH3ドメインについては、Smithgall,T.E.,J.Pharmacol.Toxicol.Methods.(1995),34(3):125−32に記載されている。セリン/スレオニンキナーゼの阻害剤はMAPキナーゼカスケード遮断薬を含み、MAPキナーゼカスケード遮断薬としては、Rafキナーゼ(rafk);マイトジェンまたは細胞外シグナル調節キナーゼ(MEK);細胞外シグナル制御キナーゼ(ERK);およびPKC(α、β、γ、ε、μ、λ、ι、ζ)、IkBキナーゼファミリー(IKKa、IKKb)、PKBファミリーキナーゼ、AKTキナーゼファミリーのメンバー、およびTGFβ受容体キナーゼの遮断薬を含むタンパク質キナーゼCファミリー遮断薬が含まれる。そのようなセリン/スレオニンキナーゼおよびその阻害剤については、Yamamoto,T.,Taya,S.,Kaibuchi,K.,J.Biochemistry.(1999)126(5):799−803;Brodt,P,Samani,A,およびNavab,R,Biochem.Pharmacol.(2000)60:1101−1107;Massague,J.,Weis−Garcia,F.,Cancer Surv.(1996)27:41−64;Philip,P.A,およびHarris,AL,Cancer Treat.Res.(1995)78:3−27;Lackey,K.らBioorg.Med.Chem.Letters,(2000)10(3):223−226;米国特許第6,268,391号明細書;およびMartinez−Lacaci,I.ら,Int.J.Cancer(2000),88(1):44−52に記載されている。PI3−キナーゼ、ATM、DNA−PK、およびKuの遮断薬を含むホスファチジルイノシトール−3キナーゼファミリーメンバーの阻害剤は、本発明においても有用である。このようなキナーゼは、Abraham,RT.Current Opin.Immunol.(1996),8(3):412−8;Canman,C.E.,Lim,D.S.,Oncogene(1998)17(25):3301−8;Jackson,S.P.,Int.J.Biochem.Cell Biol.(1997)29(7):935−8;およびZhong,H.ら,Cancer Res.(2000)60(6):1541−5に記載されている。本発明において有用なものとして、ホスホリパーゼC遮断薬やミオイノシトール類似体などのミオイノシトールシグナル伝達阻害剤も挙げられる。このようなシグナル阻害剤は、Powis,G.,およびKozikowski A,(1994)NEW MOLECULAR TARGETS FOR CANCER CHEMOTHERAPY,ed.,Paul WorkmanおよびDavid Kerr,CRC Press 1994,Londonに記載されている。
【0177】
シグナル伝達経路阻害剤の別のグループは、Ras癌遺伝子の阻害剤である。そのような阻害剤としては、ファルネシルトランスフェラーゼ、ゲラニルゲラニルトランスフェラーゼ、およびCAAXプロテアーゼの阻害剤、ならびにアンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、免疫療法剤が挙げられる。そのような阻害剤は、野生型変異rasを含む細胞においてrasの活性化を遮断し、それによって抗増殖剤として作用することがわかっている。Ras癌遺伝子の阻害については、Scharovsky,O.G.,Rozados,V.R,Gervasoni,SI,Matar,P.,J.Biomed.Sci.(2000)7(4):292−8;Ashby,M.N.,Curr.Opin.Lipidol.(1998)9(2):99−102;およびOliff,A.,Biochim.Biophys.Acta,(1999)1423(3):C19−30に記載されている。
【0178】
上述したように、受容体キナーゼのリガンド結合に対する抗体アンタゴニストはまた、シグナル伝達阻害剤として働くことができる。シグナル伝達経路阻害剤のこのグループとして、受容体チロシンキナーゼの細胞外リガンド結合ドメインに対するヒト化抗体の使用が挙げられる。例えば、ImcloneC225EGFR特異的抗体(Green,M.C.ら,Cancer Treat.Rev.,(2000)26(4):269−286参照);ハーセプチン(Herceptin)(登録商標)erbB2抗体(Stern,DF,Breast Cancer Res.(2000)2(3):176−183参照);および2CB VEGFR2特異的抗体(Brekken,R.A.ら,Cancer Res.(2000)60(18):5117−24参照。)などがある。
【0179】
非受容体型キナーゼの血管新生阻害剤もまた、本発明での利用することができる。血管新生に関連するVEGFRおよびTIE2の阻害剤は、シグナル伝達阻害剤に関連して上記した(両方の受容体が受容体チロシンキナーゼ)。erbB2/EGFRの阻害剤が、血管新生を阻害し、主にVEGFの発現を阻害することが分かっていることから、一般的に血管新生はerbB2/EGFRシグナル伝達に結びついている。このため、血管新生阻害剤とerbB2/EGFR阻害剤を組み合わせることは理にかなっている。したがって、非受容体型チロシンキナーゼ阻害剤は、本発明のEGFR/erbB2阻害剤と組み合わせて使用することができる。例えば、VEGFR(受容体チロシンキナーゼ)を認識しないが、そのリガンドには結合する抗VEGF抗体;血管新生を阻害するインテグリンの小分子(αVβ3)の阻害剤;エンドスタチンおよびアンジオスタチン(非RTK)は、ここに開示されたerbファミリー阻害剤と組み合わせて用いると有用であるとみられる。(Bruns,CJら,Cancer Res.(2000),60(11):2926−2935;Schreiber AB,Winkler ME,およびDerynck R.,Science(1986)232(4755):1250−53;Yen L.ら,Oncogene(2000)19(31):3460−9を参照。)
【0180】
免疫療法で使用されている薬剤も、式(I)〜(V)の化合物との組み合わせで有用であり得る。erbB2またはEGFRに対する免疫応答を誘発する免疫学的ストラテジーが多く存在する。これらのストラテジーは、腫瘍ワクチンの分野では一般的である。小分子阻害剤を用いたerbB2/EGFRシグナル伝達経路の同時阻害によって、免疫学的方法の有効性が大幅に高められることがある。erbB2/EGFRに対する免疫学的/腫瘍ワクチンアプローチについての説明は、Reilly RTら,Cancer Res.(2000)60(13):3569−76;およびChen Yら,Cancer Res.(1998)58(9):1965−71に記載されている。
【0181】
アポトーシス療法で使用される薬剤(例えば、bcl−2のアンチセンスオリゴヌクレオチド)も、本発明と併用することができる。タンパク質のBcl−2ファミリーのメンバーは、アポトーシスをブロックする。したがって、Bcl−2のアップレギュレーションは、化学療法抵抗性に結びついたものである。研究の結果、上皮成長因子(EGF)はBcl−2ファミリーの抗アポトーシス性をもつメンバーを刺激することがわかった。したがって、腫瘍におけるbcl−2の発現をダウンレギュレートするべく設計されたストラテジーは、臨床上有益であることが分かっており、すなわちGenta社のG3139 bcl−2アンチセンスオリゴヌクレオチドが現在第II/III相臨床試験にはいっている。bcl−2についてのアンチセンスオリゴヌクレオチドのストラテジーを用いる、このようなアポトーシス促進ストラテジーは、Waters JSら,J.Clin.Oncol.(2000)18(9):1812−23;およびKitada Sら Antisense Res.Dev.(1994)4(2):71−9に記載されている。
【0182】
細胞周期のシグナル伝達阻害剤は細胞周期の制御に関与する分子を阻害する。サイクリン依存性キナーゼ(CDK)と呼ばれるタンパク質キナーゼのファミリーと、サイクリンと呼ばれるタンパク質のファミリーとの相互作用が、真核生物の細胞周期を通してその進行を制御する。異なる種類のサイクリン/CDK複合体の同時活性化および不活性化は、細胞周期を通じて正常な進行のために必要である。いくつかの種類の細胞周期シグナル伝達の阻害剤が開発中である。例えば、CDK2、CDK4、およびCDK6を含むサイクリン依存性キナーゼおよびそれらの阻害剤が、Rosania GRおよびChang Y−T.,Exp.Opin.Ther.Patents(2000)10(2):215−30などに記載されている。
【0183】
他の分子標的薬としては、免疫抑制マクロライド系抗生物質、ラパマイシンなどのFKBP結合剤;遺伝子治療薬、アンチセンス治療薬、およびレチノイドやレキシノイドなどの遺伝子発現調節物質(例えば、アダパレン、ベキサロテン、トランスレチノイン酸、9−シスレチノイン酸、N−(4−ヒドロキシフェニル)レチナミド);表現型指向(phenotype−directed)治療薬(例えば、アレムツズマブ、ベバシズマブ、セツキシマブ、イブリツモマブチウキセタン、リツキシマブ、およびトラスツズマブなどのモノクローナル抗体);免疫毒素(ゲムツズマブオゾガマイシン、131−トシツモマブなどの放射性免疫複合体):および癌ワクチンなどが挙げられる。
【0184】
その他の薬剤として、アルトレタミン、三酸化ヒ素、硝酸ガリウム、ヒドロキシウレア、レバミゾール、ミトタン、オクトレオチド、プロカルバジン、スラミン、サリドマイド、メトキサレンおよびポルフィマーナトリウムなどの光線力学療法薬化合物、およびボルテゾミブなどのプロテアソーム阻害剤などが挙げられる。
【0185】
生物学的療法剤としては、インターフェロン−u2aおよびインターフェロン−u2bなどのインターフェロンや、アルデスロイキン、デニロイキン・ディフチトクス、およびオプレルベキンなどのインターロイキンが挙げられる。
【0186】
癌細胞に対して作用することを意図したこれらの抗癌剤に加えて、保護剤または補助剤の使用を含む併用療法もまた想定される。そのような保護剤または補助剤には、細胞保護剤(例えばアミホスチン、デクスラゾキサン、およびメスナなど)、ホスホネート(例えばパルミドロネートおよびゾレドロン酸など)、および刺激因子(エポエチン、ダルベポエチン、フィルグラスチム、PEG−フィルグラスチム、およびサルグラモスチム)が含まれる。
【0187】
したがって、本発明はその一側面において、本発明の化合物を、上記の追加の治療薬および阻害剤などのいずれかとの併用療法で用いて本明細書に記載の状態を治療する方法を提供する。その方法は、それを必要とする対象に対して、式I、式II、式III、式IV、または式Vの化合物と、上記の治療薬および阻害剤のなかから選択される付加的な薬剤とを投与する段階を含み、式I、式II、式III、式IV、または式Vの化合物と付加的な薬剤とを組み合わせた量は細胞増殖性の状態を治療するのに有効な量とする。本発明はさらに、前述の薬剤および阻害剤から選択される少なくとも1種類の付加的な治療薬と混合された、本明細書に記載の式I、式II、式III、式IV、または式Vの化合物の少なくとも1種の化合物を含む医薬組成物を提供する。選択に応じて、これらの医薬組成物はさらに、少なくとも1種類の薬学的に許容される賦形剤を含む。
【実施例】
【0188】
本発明の化合物は、当業者の通常の能力ならびに以下に記載する手順および実施例の方法に基づき、入用可能な方法および試薬を用いて調製することができる。
【0189】
以下の実施例は、例示による説明として提供されるものであり、本発明を限定するものではない。
【0190】
実施例1
合成の方法
方法1

2−アミノ−3−ブロモ安息香酸(1.00g)をメタノール(10ml)および濃硫酸(1ml)と混合した。混合物を31時間還流下で攪拌した。溶媒を蒸発させ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を注意深く加えた。固体をCHCl(3×)で抽出した。合わせた抽出物をNaSOで乾燥させ、溶媒を減圧下で除去し、メチル2−アミノ−3−ブロモベンゾエートを半結晶性固体(976mg、91%収率)として得た。LCMS(ES):>85%純粋、m/z230[M+1]
【0191】

別法として、メチル2−アミノ−3−ブロモベンゾエートを、米国特許第6,399,603号明細書36頁に記載の手順を用いて7−ブロモインドリン−2,3−ジオンから2段階で調製した。
【0192】
方法2

メチル2−アミノ−3−ブロモベンゾエート(1.0当量、10.0g、43.46mmol)を、ジピナコール−ジボロン(1.4当量、15.42g、60.85mmol)と酢酸カリウム(3.0当量、12.79g、130.4mmol)を無水トルエン中で混合した(220ml)。反応物を、10分間その溶液を通して窒素バブリングで脱気した。触媒PdCl(dppf)、CHCl(0.05当量、1.77g、2.17mmol)を添加した。反応物を約5時間、100℃の油浴で窒素雰囲気下で攪拌した。反応物をLCMSとTLCによりモニタリングした。TLC(ヘキサン中の20%AcOEt、SiO)には、2つのスポットがあらわれた。低いスポット(Rf=0.30)は未知の自然の副産物であった。予想される材料は、より高いスポット(Rf=0.5)を構成した。反応物を、冷却し、EtOAc(300ml)で希釈し、セライトパッドで濾過した。パッドは、さらにEtOAc(200ml)で洗浄した。混合物を水(800ml)で希釈し、NaHCO(400ml)を飽和させた。有機相と水相を分離した。水相をEtOAc(2x500ml)で洗浄した。合わせた有機層を食塩水(1L)で洗浄した。有機相をNaSOで乾燥させて濾過し、減圧下で濃縮した。得られた濃褐色/黒色のオイルを、ヘキサン中EtOAcの勾配(1.5から2.5%)を用いて、シリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。得られた無色のオイルを減圧下で固化させ、黄色がかった半結晶性固体としてメチル2−アミノ−3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)安息香酸を得た(5.44g、45%収率)。LCMS(ES):>95%純粋、m/z278[M+1]、246[M+1−MeOH]M.p.=49〜51℃。
【0193】
方法3

2−ブロモ−3−チオフェンカルボン酸(1.0当量、12.56g、60.66mmol)をCHCl中(200ml)に懸濁した。塩化オキサリル(1.1当量、5.9ml、67.16mmol)および5滴のDMFを追加して、ガスの形成を誘導した。混合物を室温で一晩攪拌し、揮発分を減圧下で除去した。得られた固体を無水メタノール(150ml)に懸濁し、混合物が沸騰するまで加熱した。溶媒を蒸発させすることにより、メチル2−ブロモチオフェン−3−カルボキシレート(13.16g、98%収率)を未精製の褐色油状物として得た。LCMS(ES):99%純粋、m/z不検出;H NMR (CDCl, 400 MHz) δ 3.88 (s, 3H),7.23 (d, J = 5.6, 1H), 7.56 (d, J = 5.6, 1H) ppm。
【0194】
方法4

メチル4−ブロモチオフェン−3−カルボキシレートを、方法3に記載されたものと同様の手順を用いて調製した。メチル4−ブロモチオフェン−3−カルボキシレートをフラッシュクロマトグラフィー(SiO、CHCl)で精製した後、白色固体(収率63%)として単離した。LCMS(ES)m/z220[M]、222[M+2].M.p.=46〜47℃。
【0195】
方法5

メチル2−ブロモチオフェン−3−カルボキシレート(1.1当量、459mg、2.08mmol)およびメチル2−アミノ−3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ベンゾエート(1.0当量、502mg、1.81mmol)を、CsCO(3.0当量、1.77g、5.43mmol)およびPdCl(dppf)CHCl(0.05当量、66mg、0.090mmol)と、ジオキサン(5ml)と水(250μl)の混合物中で混合した。混合物を、5〜10分間窒素バブリングすることにより脱気した。反応物を、3時間100℃の油浴中で撹拌した。冷却後、水を加えて得られた固体を濾過した。メタノール中で固体を粉砕し濾過することにより、メチル4−オキソ−4,5−ジヒドロチエノ[3,2−c]キノリン−6−カルボキシレートを、灰色の固体(132mg、収率28%)として得た。LCMS(ES):>95%純粋、m/z260[M+1]
【0196】
方法6
以下のラクタム剤を、メチル2−アミノ−3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ベンゾエートと適切な2−ブロモエステルとを反応させることにより、方法5と同様の手順を用いて調製した。

【0197】
方法7

4−オキソ−4,5−ジヒドロチエノ[3,2−c]キノリン−6−カルボキシレート(1.0当量、132mg、0.51mmol)を、POCl(4.0当量、186μl、2.03mmol)およびNEt(1.05当量、75μl、0.54mmol)と無水アセトニトリル(0.7ml)中で2.5時間100℃で反応させた。反応物を窒素雰囲気下で室温まで冷却した。別のフラスコを、無水メタノール(5ml)、NEt(1ml)、およびアセトニトリル(5ml)で満たした。混合物を氷水浴で冷却した。10℃以下の内部温度を維持しながら、反応混合物を後者の溶液中に滴下して移した。氷水浴を除去し、混合物を室温に温めた。揮発分を減圧下で除去し、水を加えた。得られた固体を濾過し乾燥させて、メチル4−クロロチエノ[3,2−c]キノリン−6−カルボキシレート(117mg、収率83%)を灰色固体として得た。LCMS(ES):>95%純粋、m/z278[M+1]
【0198】
方法8
次の化合物を、方法6で説明したものと同様のケミストリと適切なラクタム剤を用いて調製した。

【0199】
方法9

メチル4−クロロチエノ[3,2−c]キノリン−6−カルボキシレート(1.0当量、114mg、0.410mmol)および2−クロロアニリン(2.4当量、106μl、1.01mmol)を、無水NMP(0.8ml)中で混合した。混合物を、10分間140℃で電子レンジで加熱した。LCMSモニタリングは、反応媒体中での、予測されるエステル(M+1=369)および酸(M+1=370)の1:1混合物、並びに15%出発物質の存在を示した。2−クロロアニリン(50μl)の追加容量を加え、混合物を10分間電子レンジで加熱した。LCMSモニタリングは、反応媒体中での、予測されるエステル(M+1=369)と酸(M+1=355)の1:9混合物の存在を示した。
【0200】
6N NaOH水溶液(0.2ml)を添加し、混合物を45分間60℃で撹拌した。水とHClを加えてpH=3に到達させた。得られた沈殿物を濾過して乾燥させた。メタノール中で粉砕し濾過することにより、4−(2−クロロフェニルアミノ)チエノ[3,2−c]キノリン−6−カルボン酸を、灰色の固体(95mg、収率65%)として得た。LCMS(ES):>90%純粋、m/z355[M+1]
【0201】
方法10

4−(2−クロロフェニルアミノ)チエノ[3,2−c]キノリン−6−カルボン酸(1.0当量、39mg、0.11mmol)、塩化アンモニウム(4.0当量、24mg、0.449mmol)、HOBt.HO(2.0当量、30mg、0.222mmol)、DIEA(4.0当量、77μl、0.442mmol)、およびEDCI(2.0当量、42mg、0.219mmol)を1時間70℃でNMP(0.5ml)と反応させた。水を添加し、得られた固体を濾過して乾燥させた。AcOEt/ヘキサンの混合物中で粉砕した後、得られた固体を濾過し乾燥させて、4−(2−クロロフェニルアミノ)チエノ[3,2−c]キノリン−6−カルボキサミドを、灰色の固体(25mg、収率64%)として得た。LCMS(ES):>95%純粋、m/zの354[M+1]
【0202】
方法11

4−(2−クロロフェニルアミノ)チエノ[3,2−c]キノリン−6−カルボキサミド(17mg)を、N,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(1ml)中で1時間80℃で加熱した。揮発分を減圧下で除去した。酢酸(0.5 ml)とヒドラジン水和物(0.1ml)を添加し、得られた混合物を2.5時間80℃で攪拌した。水を添加し、得られた固体を濾過した。分取TLC(SiO、CHCl中の3%MeOH)で精製し、N−(2−クロロフェニル)−6−(4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)チエノ[3,2−c]キノリン−4−アミンを、灰色がかった白色のフワフワした感触の固体(10mg)として得た。LCMS(ES):>95%純粋、m/z378[M+1]
【0203】
以下の化合物を、方法8、9、10、および11の方法に類似したケミストリを用いて調製した。






【0204】
方法12

メチル4−オキソ−4,5−ジヒドロチエノ[3,2−c]キノリン−6−カルボキシレート(1.0当量、1.34g、5.17mmol)を、エタノール(15ml)と6N NaOH(3ml)の混合液中で80℃で5時間撹拌した。水とHClを添加し、得られた沈殿物を濾過して乾燥させ、4−オキソ−4,5−ジヒドロチエノ[3,2−c]キノリン−6−カルボン酸を、固体(1.17グラム、92%)として得た。LCMS(ES):>95%純粋、m/z246[M+1]。固体(1.0当量、1.17g、4.77mmol)を、無水NMP(15ml)中のHOBt.HO(2.0当量、1.28g、9.47mmol)、NHCl(8.0当量、2.05g、38.25mmol)、DIEA(4.0当量、3.32ml、19.05mmol)、およびEDCI(2.0当量、1.83g、9.54mmol)とともにフラスコ中で混合し、混合物を5時間80℃で攪拌した。水を加え、固体を濾過して乾燥させて、4−オキソ−4,5−ジヒドロチエノ[3,2−c]キノリン−6−カルボキサミド(1.13g、97%)を褐色の固体として得た。LCMS(ES):>95%純粋、m/z245[M+1]。この材料(1.0当量、1.13g、4.61mmol)をDMF−DMA(20ml)に懸濁し、4.5時間80℃で攪拌した。揮発性物質を蒸発させ、残渣を酢酸(20ml)に溶解した。ヒドラジン水和物(2ml)を加えて、下方沈降を誘導した。濃厚懸濁液を2時間80℃で攪拌した。水を添加し、固体を濾過し、水で洗浄して乾燥させて、6−(4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)チエノ[3,2−c]キノリン−4(5H)−オンを固体(1.10g、89%)として得た。LCMS(ES):>95%純粋、m/z269[M+1]
【0205】
方法13

6−(4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)チエノ[3,2−c]キノリン−4(5H)−オン(1.0当量、1.10g、4.10mmol)を、無水アセトニトリル(10ml)に懸濁した。トリエチルアミン(1.05当量、600μl、4.30mmol)およびオキシ塩化リン(4.0 当量、1.50ml、16.38mmol)を添加し、混合物を4時間100℃の油浴で攪拌した。冷却した反応混合物をトリエチルアミン(15ml)、メタノール(10mL)およびアセトニトリル(20ml)の混合物に滴下した。反応停止溶液の内部温度が5℃未満に維持されるように、添加速度を制御した。反応停止が終了した時点で、揮発性物質を蒸発させ、水を添加した。得られた沈殿物を濾過し、乾燥させて、未精製の4−クロロ−6−(4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)チエノ[3,2−c]キノリンを、固体(1.03g、88%)として得た。LCMS(ES):>80%純粋、m/z287[M+1]
【0206】
方法14

未精製4−クロロ−6−(4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)チエノ[3,2−c]キノリン(20mg)を、2−フルオロアニリン(100μl)およびNMP(0.5 ml)とともにマイクロウェーブ反応用容器で混合した。混合物を15分間120℃でマイクロ波で加熱した。水を添加し、得られた固体を濾過した。未精製材料を、シリカゲル(CHCl中の3%MeOH)上での分取TLCによって精製し、N−(2−フルオロフェニル)−6−(4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)チエノ[3,2−c]キノリン−4−アミンを灰色がかった白色の固体(8mg)として得た。LCMS(ES):>95%純粋、m/z362[M+1]
【0207】
方法15
次の表中の分子を、方法9〜11、13、および14に記載のケミストリを用いて、適当なアミン試薬を用いて調製した。すべての化合物をシリカゲル上の分取TLCまたは分取HPLCで精製し、LCMSによって特徴付けを行った。
















【0208】
方法16

メチル4−クロロチエノ[3,2−c]キノリン−6−カルボキシレート(23mg)を、バイアル中のNMP(0.4ml)において、3−アミノフェニルアセチレン(0.1ml)と1時間80℃で反応させた。水を添加した後、固体を濾過し、シリカゲル(CHCl中の1%MeOH)で分取TLCによって精製し、メチル4−(3−エチニルフェニルアミノ)チエノ[3,2−c]キノリン−6−カルボキシレート(12mg)を得た。LCMS(ES):>95%純粋、m/z359[M+1]。この物質(10mg)を、ヒドラジン水和物(0.2ml)およびメタノール(0.2ml)の存在下で5時間60℃でバイアルにおいて攪拌した。水を添加し、残渣をろ過して乾燥させた。固体を一晩120℃でオルトギ酸トリエチル(4ml)と反応させた。揮発性物質を減圧下で除去し、シリカゲル上の分取TLCによって残渣を精製した。N−(3−エチニルフェニル)−6−(1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)チエノ[3,2−c]キノリン−4−アミンを固体(6mg)として単離した。LCMS(ES):>95%純粋、m/z369[M+1]
【0209】
方法17
エチル5−ヨード−3−メチルイソチアゾール−4−カルボキシレートは、過去の文献(Bioorg.Med.Chem.Lett.,2003,13,1821−1824)に記載されている次のケミストリを用いて、市販のエチル5−アミノ−3−メチルイソチアゾール−4−カルボキシレートから調製することができる。

【0210】
メチル4−ブロモ−3−メチルイソチアゾール−5−カルボキシレートは、過去の文献(J.Chem.Soc.,1963,2032−2039)に記載されているケミストリを用いて市販の3−メチルイソチアゾール−5−カルボン酸から二段階で調製することができる。

【0211】
アミノ基によって2位で置換された、以下のエチル5−ブロモ−チアゾール−4−カルボキシレートは、特許出願WO2005/26149に記載する同様のケミストリを用いて市販の2,5−ジブロモチアゾールから調製することができる。

【0212】
以下のメチル4−ブロモ−5−ニトロチオフェン−3−カルボキシレートは、過去の文献(J.Heterocycl.Chemistry,vol36,3,1999,761−766)に記載されているケミストリを用いて市販の材料から2段階で調製することができる。

【0213】
以下のメチル4−ヨード−2,5−ジメチルチオフェン−3−カルボキシレートは、過去の文献(Justus Liebigs Annalen der Chemie,536(1938),128−131)に記載されるケミストリを用いて、市販の3,4−ジヨード−2,5−ジメチルチオフェンから2段階で調製することができる。

【0214】
以下のメチル2−アミノ−5−フルオロ−3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ベンゾエートは、過去の特許出願US2006/183769明細書に記載のケミストリを用いて、メチル2−アミノ−5−フルオロ−3−ヨードベンゾエートから調製することができる。

【0215】
方法18
以下の分子は、方法5に類似したケミストリを用いて、メチル2−アミノ−3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ベンゾエートを、市販の2−ハロゲノエステルまたは方法17で調製した2−ハロゲノエステルと反応させることによって調製することができる。

【0216】
類似のケミストリは、以下に例示するように低級フェニル環上で置換された類似体を調製するために置換ボロン酸エステルおよび酸に適用することができる。

【0217】
以下の中間体は、方法6に記載したのと同様のケミストリを用いて調製することができる。

【0218】
それらの中間体は、メチル4−クロロチエノ[3,2−c]キノリン−6−カルボキシレートで以下に例示するように各種化合物をつくるために使用できる。

【0219】
下記のケミストリは、フェニル環上の極性基を変更するために使用できる。

【0220】
以下に記載するケミストリは、チオフェン環上で官能化された類似体を調製するのに使用できる。

【0221】
同じケミストリは、以下に例示するように他の骨格にも適用することができる。

【0222】
5員環の異なる位置で置換した類似体は、以下に例示するケミストリを用いて調製することができる。

【0223】
N−アルキル類似体は、例えば以下に例示するようなケミストリを用いて調製することができる。

【0224】
本発明の特定の実施態様の例には、以下の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、および/もしくはプロドラッグが含まれる。




【0225】
実施例2
酵素の阻害および細胞増殖の阻害
本発明の各種化合物を、酵素の阻害および細胞増殖の阻害についてのバイオアッセイにて試験した。これらの試験した化合物は、次の酵素または細胞、即ちCK2、PIM1、PIM2、MDA MB453、SUM−149PT、BxPC3、K−562、およびMV−4−11のうちの1種または複数種を阻害する望ましい生物学的活性を示した。例えば、試験化合物のすべては、前述の酵素または細胞の1つまたは複数に対して、50μM未満のIC50を示し、試験化合物のいくつかは、前述の酵素または細胞の1つまたは複数に対して30μM未満のIC50を示し;試験化合物のいくつかは、前述の酵素または細胞の1つまたは複数に対して20μM未満のIC50を示し;試験化合物のいくつかは、前述の酵素または細胞の1つまたは複数に対して10μM未満のIC50を示し;試験化合物のいくつかは、前述の酵素または細胞の1つまたは複数に対して5μM未満のIC50を示し;試験化合物のいくつかは、前述の酵素または細胞の1つまたは複数に対して2.5μM未満のIC50を示し;試験化合物のいくつかは、前述の酵素または細胞の1つまたは複数に対して1μM未満のIC50を示し;試験化合物のいくつかは、前述の酵素または細胞の1つまたは複数に対して0.5μM未満のIC50を示し;試験化合物のいくつかは、前述の酵素または細胞の1つまたは複数に対して0.1μM未満のIC50を示した。
【0226】
各種化合物の生物学的活性は以下の表にまとめられており、化合物A1〜H5は、本明細書において上記した実施例および特定の化合物(すなわち種)である。






















【0227】
各種キナーゼ基質のリン酸化に対する細胞性阻害
下記の表にまとめられているように、いくつかの特定の化合物について、各種キナーゼ基質のリン酸化を従来の手法を用いて測定した。本発明の化合物は、特にAKT S129およびP21 T145などの特定の基質に対する細胞アッセイにおいて強力な阻害剤であることが示されている。これらは癌関連であることもあり、本発明の化合物による治療に対する癌の感受性を予測するために容易に評価できる。したがって、これらの基質レベルの上昇か、もしくは基質に対するキナーゼ活性の上昇を示す癌は、本発明の化合物による治療で特に影響を受けやすいと予測される。
【0228】
AKT−S129のリン酸化は、以下のように測定される。
【0229】
BXPC3細胞は、10cmディッシュあたり2×10個の細胞密度で接種する。翌日、細胞を0.3および3μMの試験薬で二重に処理する。被験薬で4時間処理した後、培地中の細胞をかきとりにより収集する。細胞は4℃で5分間、1500rpmで遠心し、培地を吸引し、細胞を1mlの氷冷培養液で1回洗浄する。細胞を、1×RIPAバッファー(10×RIPAバッファー Cell Signalling#9806)に、10%グリセロール、1mMのPMSF、1mMのDTT、および1μg/mlのミクロシスチンLRを加えたものに溶解する。溶解液を氷上で3分間超音波処理し、10分間20000×gで遠心し、ブラッドフォード法を用いてタンパク質を定量する。50μgのタンパク質を、ウェスタンブロット解析のためにゲル上に負荷し、FL−ニトロセルロース(LiCOR)に移す。メンブランを、ブロッキングバッファー(LiCOR)と、1×PBSの1:1混合物を用いて、少なくとも室温で一時間、または4℃で一晩かけてブロックする。メンブランを4℃で一晩、一次抗体(AKT total Cell Signaling#2938または2967、AKT−S129 Abgent AP7141f、およびb−アクチン Sigma Aldrich A5441)と共にインキュベートする。ウェスタンブロット解析は、直接近赤外蛍光検出を用いるOdyssey(LiCOR)検出器を使用して行った。次の表中の化合物1A〜1Fは、本明細書において上記した実施例および特定の化合物(すなわち種)である。

【0230】
前述の特許、特許出願、刊行物、および文書の引用は、前述したもののいずれかが関連する先行技術であると認めるものではなく、また、これらの出版物または文書の内容または日付に関していかなる容認となるものでもない。
【0231】
本発明の基本的側面から逸脱することなく、前述の内容を改変することができる。本発明を1つまたは複数の特定の実施形態に関して実質的な詳細にわたり記載してきたが、当業者であれば、本出願において具体的に開示する実施形態に対して変更を加えてもよく、なおかつこれらの改変および改善は本発明の範囲および精神の範囲内であることを理解するであろう。本明細書において例示的に記載した本発明は、本明細書において具体的に開示していない任意の要素無しで実施し得る。したがって、例えば、本明細書におけるそれぞれの場合に、「含む」、「基本的に〜からなる」、および「〜からなる」なる用語はいずれも、他の2つの用語のいずれかと置き換えてもよい。したがって、本明細書で用いてきた用語および表現は、説明のために用いるもので、限定のためのものではなく、ここに開示し記載する特徴の均等物またはその一部を除外せず、様々な改変が本発明の範囲内で可能であることが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの構造を有する化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、および/もしくはプロドラッグ:

式中、
、ZおよびZは、それぞれ独立にS、N、CR、およびOから選択され、ただし、Z、ZおよびZのうちの1つ以下がOであり、かつZ、ZおよびZを含む環が芳香族であり;
Lは、結合、NR、O、S、CR、CR−NR、CR−O−、およびCR−Sから選択されるリンカーであり;
ここで各R、R、R、R、R、およびRは、それぞれ独立にHであるか、C1〜C8アルキル、C2〜C8ヘテロアルキル、C2〜C8アルケニル、C2〜C8ヘテロアルケニル、C2〜C8アルキニル、C2〜C8ヘテロアルキニル、C1〜C8アシル、C2〜C8ヘテロアシル、C6〜C10アリール、C5〜C12ヘテロアリール、C7〜C12アリールアルキル、およびC6〜C12ヘテロアリールアルキル基からなる群より選択される置換されていてもよい構成員であるか、
またはハロ、OR、NR、NROR、NRNR、SR、SOR、SOR、SONR、NRSOR、NRCONR、NRCSNR、NRC(=NR)NR、NRCOOR、NRCOR、CN、COOR、CONR、OOCR、COR、もしくはNOであり、
ここで各Rは、それぞれ独立にH、またはC1〜C8アルキル、C2〜C8ヘテロアルキル、C2〜C8アルケニル、C2〜C8ヘテロアルケニル、C2〜C8アルキニル、C2〜C8ヘテロアルキニル、C1〜C8アシル、C2〜C8ヘテロアシル、C6〜C10アリール、C5〜C10ヘテロアリール、C7〜C12アリールアルキル、もしくはC6〜C12ヘテロアリールアルキルであり、
かつここで同じ原子上または隣接原子上の2つのRは、連結されて、1つまたは複数のN、OまたはSを含んでいてもよい3〜8員環を形成していてもよく;
かつ各R基、および2つのR基を一緒に連結することにより形成される各環は、ハロ、=O、=N−CN、=N−OR'、=NR'、OR'、NR'、SR'、SOR'、SONR'、NR'SOR'、NR'CONR'、NR'CSNR'、NR'C(=NR')NR'、NR'COOR'、NR'COR'、CN、COOR'、CONR'、OOCR'、COR'、およびNOから選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよく、
ここで各R'は、それぞれ独立にH、C1〜C6アルキル、C2〜C6ヘテロアルキル、C1〜C6アシル、C2〜C6ヘテロアシル、C6〜C10アリール、C5〜C10ヘテロアリール、C7〜12アリールアルキル、またはC6〜12ヘテロアリールアルキルであり、これらはそれぞれハロ、C1〜C4アルキル、C1〜C4ヘテロアルキル、C1〜C6アシル、C1〜C6ヘテロアシル、ヒドロキシ、アミノ、および=Oから選択される1つまたは複数の基で置換されていてもよく;
かつここで同じ原子上または隣接原子上の2つのR'は、連結されて、N、OおよびSから選択される3つまでのヘテロ原子を含んでいてもよい3〜7員環を形成していてもよく;
かつRおよびRは、同じ原子上または結合された隣接原子上にあるとき、一緒に連結されて、置換されていてもよい3〜8員環のシクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルを形成していてもよく;
Wは、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、またはヘテロシクリルであり、これらはそれぞれ置換されていてもよく;
Xは極性置換基であり;かつ
mは0〜2である。
【請求項2】
Lが、NHまたはNMeである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Wが、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいシクロアルキル、および置換されていてもよいヘテロシクリルから選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
〜Zを含む前記環が、チオフェン環またはチアゾール環を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
がSであり、ZがCRであり、かつZがCRである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
がCRであり、ZがSであり、かつZがCRである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
がCRであり、ZがCRであり、かつZがSである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
がSであり、ZがCRであり、かつZがNである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
Wが、置換されていてもよいフェニルであるか、置換されていてもよいヘテロシクリルであるか、または、置換されていてもよいフェニル、置換されていてもよいヘテロアルキル、置換されていてもよいヘテロアリール、ハロ、ヒドロキシ、および−NR''からなる群から選択される少なくとも1つの構成員で置換されたC1〜C4アルキルであり、
ここで各R''は、それぞれ独立にHまたは置換されていてもよいC1〜C6アルキルであり;
かつ2つのR''は、それらが結合するNとともに一緒に連結されて、置換されていてもよい3〜8員環を形成していてもよく、該3〜8員環は、N、O、およびSから選択される別のヘテロ原子を環員として含んでいてもよく、かつ飽和、不飽和、または芳香族であってもよい、請求項4に記載の化合物。
【請求項10】
Wが、式−(CH−NRの少なくとも1つの基を含み、
ここでpは1〜4であり、
は、各出現で独立に、Hまたは置換されていてもよいアルキルであり;
かつ2つのRは、それらが結合するNとともに一緒に連結されて、置換されていてもよい3〜8員環を形成していてもよく、該3〜8員環は、N、O、およびSから選択される別のヘテロ原子を環員として含んでいてもよく、かつ飽和、不飽和、または芳香族であってもよい、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
Xが、COOR、C(O)NR−OR、トリアゾール、テトラゾール、CN、イミダゾール、カルボキシレート、カルボキシレートの生物学的等価体、

からなる群から選択され;
ここで各Rは、それぞれ独立にHであるか、またはアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキルアルキル、およびヘテロアリールアルキルからなる群から選択される置換されていてもよい構成員であり、
かつ同じ原子上または隣接原子上の2つのRは、一緒に連結されて、置換されていてもよい環を形成していてもよく、該環はまた、N、O、およびSから選択される追加のヘテロ原子を環員として含んでいてもよく;
10は、ハロ、CF、CN、SR、OR、NR、またはRであり、ここで各Rは、それぞれ独立にHまたは置換されていてもよいC1〜C6アルキルであり、かつ同じ原子上または隣接原子上の2つのRは、一緒に連結されて、置換されていてもよい環を形成していてもよく、該環はまた、N、O、およびSから選択される追加のヘテロ原子を環員として含んでいてもよく;かつ
Aは、NまたはCR10である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
前記極性置換基Xが、フェニル環上の3位に位置する、請求項1または11に記載の化合物。
【請求項13】
前記極性置換基Xが、フェニル環上の4位に位置する、請求項1または11に記載の化合物。
【請求項14】
−L−Wが、



から選択され、
ここで、
各Rは、それぞれ独立してH、Cl、またはFであり;
各Rは、それぞれ独立してMe、F、またはClであり;
各Rは、それぞれ独立してH、ハロ、C1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシ、およびC1〜C4ハロアルキルから選択され、
かつ同じ原子上または結合された隣接原子上の2つのR基は、一緒に連結されて3〜8員環を形成していてもよく;
各Aは、NまたはCRであり;かつ
各Solgroupは、溶解度増強基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項15】
〜Zを含む前記環が、

からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項16】
Lが、NHまたはNMeであり、かつ
Wが、置換されていてもよいフェニルであるか、置換されていてもよいヘテロシクリルであるか、または、置換されていてもよいフェニル、置換されていてもよいヘテロアルキル、置換されていてもよいヘテロアリール、ハロ、ヒドロキシ、および−NR''からなる群から選択される少なくとも1つの構成員で置換されたC1〜C4アルキルであり、
ここで各R''は、それぞれ独立にHまたは置換されていてもよいC1〜C6アルキルであり;
かつ2つのR''は、それらが結合するNとともに一緒に連結されて、置換されていてもよい3〜8員環を形成していてもよく、該3〜8員環は、N、O、およびSから選択される別のヘテロ原子を環員として含んでいてもよく、かつ飽和、不飽和、または芳香族であってもよい、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
Xが、フェニル環上の3位に位置する、請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
Xが、フェニル環上の4位に位置する、請求項16に記載の化合物。
【請求項19】
Xが、COOR、C(O)NR−OR、トリアゾール、テトラゾール、CN、イミダゾール、カルボキシレート、カルボキシレートの生物学的等価体、

からなる群から選択され;
ここで各Rは、それぞれ独立にHであるか、またはアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキルアルキル、およびヘテロアリールアルキルからなる群から選択される置換されていてもよい構成員であり、
かつ同じ原子上または隣接原子上の2つのRは、一緒に連結されて、置換されていてもよい環を形成していてもよく、該環はまた、N、O、およびSから選択される追加のヘテロ原子を環員として含んでいてもよく;
10は、ハロ、CF、CN、SR、OR、NR、またはRであり、ここで各Rは、それぞれ独立にHまたは置換されていてもよいC1〜C6アルキルであり、かつ同じ原子上または隣接原子上の2つのRは、一緒に連結されて、置換されていてもよい環を形成していてもよく、該環はまた、N、O、およびSから選択される追加のヘテロ原子を環員として含んでいてもよく;かつ
Aは、NまたはCR10である、請求項15〜18のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項20】
式II、式III、式IV、または式V

の構造を有する請求項1記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、および/もしくはプロドラッグ。
【請求項21】
Wが、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいヘテロシクリル、および置換されていてもよいシクロアルキルから選択される、請求項20に記載の化合物。
【請求項22】
Lが、NHまたはNMeであり、かつ
Wが、置換されていてもよいフェニルであるか、置換されていてもよいヘテロシクリルであるか、または、置換されていてもよいフェニル、置換されていてもよいヘテロアルキル、置換されていてもよいヘテロアリール、ハロ、および−NR''からなる群から選択される少なくとも1つの構成員で置換されたC1〜C4アルキルであり、
ここで各R''は、それぞれ独立にHまたは置換されていてもよいC1〜C6アルキルであり;
かつ2つのR''は、それらが結合するNとともに一緒に連結されて、置換されていてもよい3〜8員環を形成していてもよく、該3〜8員環は、N、O、およびSから選択される別のヘテロ原子を環員として含んでいてもよく、かつ飽和、不飽和、または芳香族であってもよい、請求項20に記載の化合物。
【請求項23】
Wが、式−(CH−NR'の少なくとも1つの基を含み、
ここでpは1〜4であり、
R'は、各出現で独立に、Hまたは置換されていてもよいアルキルであり;
かつ2つのR'は、それらが結合するNとともに一緒に連結されて、置換されていてもよい3〜8員環を形成していてもよく、該3〜8員環は、N、O、およびSから選択される別のヘテロ原子を環員として含んでいてもよく、かつ飽和、不飽和、または芳香族であってもよい、請求項22に記載の化合物。
【請求項24】
Xが、COOR、C(O)NR−OR、トリアゾール、テトラゾール、CN、イミダゾール、カルボキシレート、カルボキシレートの生物学的等価体、

からなる群から選択され;
ここで各Rは、それぞれ独立にHであるか、またはアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキルアルキル、およびヘテロアリールアルキルからなる群から選択される置換されていてもよい構成員であり、
かつ同じ原子上または隣接原子上の2つのRは、一緒に連結されて、置換されていてもよい環を形成していてもよく、該環はまた、N、O、およびSから選択される追加のヘテロ原子を環員として含んでいてもよく;
10は、ハロ、CF、CN、SR、OR、NR、またはRであり、ここで各Rは、それぞれ独立にHまたは置換されていてもよいC1〜C6アルキルであり、かつ同じ原子上または隣接原子上の2つのRは、一緒に連結されて、置換されていてもよい環を形成していてもよく、該環はまた、N、O、およびSから選択される追加のヘテロ原子を環員として含んでいてもよく;かつ
Aは、NまたはCR10である、請求項20に記載の化合物。
【請求項25】
前記極性置換基Xが、フェニル環上の3位に位置する、請求項20〜24のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項26】
前記極性置換基Xが、フェニル環上の4位に位置する、請求項20〜24のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項27】
−L−Wが、



から選択され、
ここで、
各Rは、それぞれ独立してH、Cl、またはFであり;
各Rは、それぞれ独立してMe、F、またはClであり;
各Rは、それぞれ独立してH、ハロ、C1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシ、およびC1〜C4ハロアルキルから選択され、
かつ同じ原子上または結合された隣接原子上の2つのR基は、一緒に連結されて3〜8員環を形成していてもよく;
各Aは、NまたはCRであり;かつ
各Solgroupは、溶解度増強基である、請求項20〜24のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項28】
以下からなる群から選択される構造式を有する化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、および/もしくはプロドラッグ:





【請求項29】
本明細書に記載のいずれかの種である化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、および/もしくはプロドラッグ。
【請求項30】
請求項1に記載の化合物と、薬学的に許容される賦形剤とを含む、医薬組成物。
【請求項31】
請求項20に記載の化合物と、薬学的に許容される賦形剤とを含む、医薬組成物。
【請求項32】
細胞増殖を阻害するための方法であって、
細胞の増殖を阻害するのに有効な量の式I、式II、式III、式IV、または式Vの構造を有する化合物を、細胞に接触させる段階を含む、方法。
【請求項33】
前記細胞が癌細胞株である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記癌細胞株が、乳癌、前立腺癌、膵臓癌、肺癌、造血器癌、結腸直腸癌、皮膚癌、卵巣癌細胞株である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記細胞が、対象の腫瘍内の細胞である、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
式I、式II、式III、式IV、または式Vの構造を有する化合物を細胞に接触させる段階が、細胞のアポトーシスを誘導する、請求項32に記載の方法。
【請求項37】
前記細胞が、黄斑変性症を有する対象の眼由来の細胞である、請求項32に記載の方法。
【請求項38】
前記細胞が、黄斑変性症を有する対象における細胞である、請求項32に記載の方法。
【請求項39】
異常細胞増殖に関連する状態を治療するための方法であって、
それを必要とする対象に対して、細胞増殖性の状態を治療するのに有効な量の式I、式II、式III、式IV、または式Vの構造を有する化合物を投与する段階を含む、方法。
【請求項40】
前記細胞増殖性の状態が、腫瘍関連癌である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記癌が、結腸直腸癌、乳癌、肺癌、肝臓癌、膵臓癌、リンパ節癌、結腸癌、前立腺癌、脳の癌、頭頸部癌、皮膚癌、肝臓癌、腎臓癌、血液の癌、および心臓の癌である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記細胞増殖性の状態が、非腫瘍性の癌である、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
前記非腫瘍性の癌が、造血器癌である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記細胞増殖性の状態が、黄斑変性症である、請求項39に記載の方法。
【請求項45】
対象における疼痛または炎症を治療するための方法であって、
それを必要とする対象に対して、疼痛または炎症を治療するのに有効な量の式I、式II、式III、式IV、または式Vの化合物を投与する段階を含む、方法。
【請求項46】
対象における血管新生を阻害するための方法であって、
それを必要とする対象に対して、血管新生を阻害するのに有効な量の式I、式II、式III、式IV、または式Vの化合物を投与する段階を含む、方法。
【請求項47】
対象における感染症を治療するための方法であって、
それを必要とする対象に対して、感染症を治療するのに有効な量の式I、式II、式III、式IV、または式Vの化合物を投与する段階を含む、方法。
【請求項48】
前記感染症が、タイレリア・パルバ(Theileria parva)、トリパノソーマ・クルージ(Trypanosoma cruzi)、ドノバンリーシュマニア(Leishmania donovani)、ヘルペトモナス・ムスカラム・ムスカラム(Herpetomonas muscarum muscarum)、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、トリパノソーマ・ブルセイ(Trypanosoma brucei)、トキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)、およびマンソン住血吸虫(Schistosoma mansoni)、ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV−1)、ヒトパピローマウイルス、単純ヘルペスウイルス、ヒトサイトメガロウイルス、C型およびB型肝炎ウイルス、ボルナ病ウイルス、アデノウイルス、コクサッキーウイルス、コロナウイルス、インフルエンザ、および水痘帯状疱疹ウイルスから選択される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
式I、式II、式III、式IV、または式Vの化合物と、少なくとも1種類の追加の治療薬とを含む、組成物。
【請求項50】
異常細胞増殖に関連する状態を治療するための方法であって、
そのような状態の治療を必要とする対象に対して、式I、式II、式III、式IV、または式Vの構造を有する化合物と、少なくとも1種類の追加の治療薬とを投与する段階を含む、方法。
【請求項51】
細胞におけるカゼインキナーゼ2活性、Pimキナーゼ活性、またはFms様チロシンキナーゼ3活性を調節するための方法であって、
式I、式II、式III、式IV、または式Vの構造を有する化合物を細胞に接触させる段階を含む、方法。

【公表番号】特表2013−503178(P2013−503178A)
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−526972(P2012−526972)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/046760
【国際公開番号】WO2011/025859
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(505377119)サイリーン ファーマシューティカルズ インコーポレーティッド (17)
【Fターム(参考)】