タンパク質キナーゼ阻害用ペプチドの細胞透過性複合体
本発明は、少なくとも第1部分及び第2部分を持つ分子を含むタンパク質キナーゼ阻害剤を提供するものであって、該第1部分は当該分子の細胞透過能を持ち、該第2部分は当該細胞内におけるタンパク質キナーゼ阻害効果を持ち、当該第1部分はリンカーまたはスペーサーを介して当該第2部分に結合されることを特徴とするものである。本発明の複合分子は、好ましくは公知のタンパク質キナーゼ阻害剤と比較してより改良された細胞透過性、血清安定性及びキナーゼ選択性を有するペプチド複合体である。また、これらのタンパク質キナーゼ阻害剤を含む医薬品組成物、及びタンパク質キナーゼ−活性と関連する癌及び他の疾患を治療するための、かかる組成物の使用方法も開示するものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、選択的タンパク質キナーゼ阻害剤として細胞透過性増強部分及びペプチドまたはペプチド模倣物を含む細胞透過性のある安定した複合体に関するものであって、かつそれらを含有する医薬品組成物、ならびにかかる複合分子の調製及び使用のためのプロセスに関するものでもある。
【背景技術】
【0002】
タンパク質キナーゼはシグナル伝達経路に関与し、正常条件及び病理学的条件の両条件下で成長因子、ホルモン及び他の細胞調節分子を細胞の成長、生存及び代謝に結び付けるものである。タンパク質キナーゼのスーパーファミリーには、タンパク質キナーゼA及びタンパク質キナーゼC、ならびにごく最近になって発見されたタンパク質キナーゼB(PKB)も含まれる。
PKBは抗アポトーシス性のタンパク質キナーゼであり、その活性はヒト悪性腫瘍において強く上昇する。PKBは当初、ラットT−細胞白血病におけるウィルスの発癌遺伝子v−Aktとして発見されたものであるが、PKB/c−Aktが細胞質であるのに対して、v−Aktは細胞酵素PKB/c−Aktの発癌バージョンであり、略ウィルス群に特異的な抗原gag(コア蛋白遺伝子)が完全長Akt−1にインフレームで融合され、膜接合されていることを特徴とするということは後に確立された。AktのシーケンシングによりPKA(およそ75%)及びPKCアイソザイム(およそ50%)に対する高度の相同性が明らかにされ、その事実のためにPKBと命名されることになった。
【0003】
PKB活性化には、2つのアミノ酸残基:Ser473及びThr308のリン酸化が関与する。該酵素は、PI’−3−キナーゼによって産生される第2メッセンジャーPIP3によって活性化される。PIP3は、PKBのプレクストリン相同(PH)ドメインに対して結合し、該ドメインを膜に漸加し、該膜においてリン酸化されて活性型に変換する。PKB活性化はPI’−3−キナーゼ依存性であるので、IGF−1受容体、EGF受容体、PDGF受容体、pp60c−Src等の特定タンパク質チロシンキナーゼの持続的な活性化は、実に多くの腫瘍において見られる現象であるPKBの持続的な活性化につながる。また、腫瘍抑制因子PTENに対する遺伝子コーディングの欠失は、PTENがこの酵素の負の制御因子であるため、PKB/cAktの持続的な活性化も誘導する。また、PKBは、15%の卵巣癌、12%の膵臓癌及び3%の乳癌において過剰発現し、細胞をアポトーシスから保護する生存シグナルを作り出して化学療法耐性に寄与することが明らかにされている。
【0004】
PKBは、アポトーシス、増殖、分化及び代謝をはじめとする広範かつ多岐の細胞プロセスの極めて重大な制御因子として出現した。現在、正常なPKB/Aktのシグナル伝達の破壊は、いくつかのヒト癌における頻繁な事象として記録されており、該酵素がその進行において重要な役割を演ずるように思われる(Nicholson and Anderson,Cellular Signalling 14,381,2002)。
PKBのこれら分子特性及び腫瘍形成におけるその中心的な役割は、このタンパク質キナーゼが新規抗癌薬剤用の魅力ある標的であり得ることを意味する。理想的には、PKBを阻害する薬物は、細胞周期停止とアポトーシス促進の両方を引き起こさなくてはならない。かかる活性は、結果としてPKBが増幅される腫瘍組織における細胞死の増加を生じ、化学療法薬剤耐性を低下させる。
前立腺癌は、男性において最も高い頻度で診断される癌であり、米国では年間の41,000人の死亡原因となっている(Parker,S.L.,らの1996,CA Cancer J.Clin.,65:5−27)。初期段階では、臓器限局の前立腺癌は、患者が無関係の原因から死亡するまで、多くの場合外科術または放射療法によって管理される。
【0005】
ホルモン不応性前立腺癌(HRPC)は非根治的な癌型であり、米国男性では第二番目の癌による死亡原因となっている.化学療法耐性とPKBの活性化との間の直接的な相関関係はいくつかの前立腺癌細胞株及びヒト腫瘍性組織において示されており、前立腺腫瘍組織におけるPKBレベルの上昇は臨床的にHRPCと関連する(Yongdeらの2003,Int.J.Cancer:107,676−680)。前立腺癌患者におけるPKBレベルのGleasonパターンとPSA(前立腺特有抗原)レベルとの高い相関性は、この型の癌におけるPKBの重要な役割を示すものである。
Hill MM,及びHemmings BA,(Pharmacol Ther.2002,93,243−51,2002)は、卵巣、乳房及び膵臓など他の腫瘍におけるPBKの介入を記述している。
強力なタンパク質キナーゼ阻害剤には通常、基質のペプチド構造あるいはATPの模倣物に基づいた基質の模倣物が含まれる必要がある。
Hidaka H.らの(Biochemistry、32,5036,1984)は、サイクリックヌクレオチド依存型タンパク質キナーゼ(PKA及びPKG)及びタンパク質キナーゼC(PKC)に対して阻害活性を有する別型のイソキノリンスルホンアミドを記述している。イソキノリンスルホニルの付加的誘導体はHidakaによって、欧州特許第109023号、米国特許第4456757号、米国特許第4525589号、及び米国特許第4560755号に開示されている。
国際公開番号WO93/13072では、5−イソキノリンスルホンアミド誘導体が薬剤を阻害するタンパク質キナーゼとして開示されている。国際公開番号WO98/53050では、セリン/トレオニンキナーゼの活性を制御調節するセリン/トレオニンキナーゼのHJループに由来する短いペプチドが開示されている。
【0006】
PKBによる効率的なリン酸化の最小共通配列は、Alessiらによって見出されている(Fed.Eur.Biochem.Soc.,399,333,1996)。これは、基質配列Arg−Pro−Arg−Thr−Ser−Ser−Phe(配列番号:1)を有する最も活性なペプチドを持つ7−merモチーフである。国際公開番号WO97/22360では、PKB活性を測定する基質として有用な7−アミノ酸長を有する特定のPKB基質ペプチドが開示されている。
Obataらの(J.Biol.Chem.,17,36108,2000)では、PKB基質の最適なアミノ酸配列を決定するための、指向性ペプチドライブラリー手法の使用が記載されている。同定されたすべての基質は、配列Arg−Xaa−Arg−Xaa−Saa−Ser/Thrを有する既知のモチーフを含んでいた。
Ricouartらの(J.Med.Chem.1991,34,73−78)には、PKAを阻害するためのイソキノリンスルホンアミド及びペプチド複合体が記載されている。Loogらの(Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters 1999,9,1447−1452)にはPKA及びPKC阻害用のアデノシン及びペプチドを有するキメラが記載されているが、その開示された化合物を用いて得られる阻害は極めて不十分なものである。Schlitzerらの(Bioorganic and Medicinal Chemistry,2000,1991−2006)では、基質のペプチド部を置換することを意図する非ペプチドの長鎖部分に連結する小分子を論じているが、その開示された化合物は不十分な阻害活性を示す。
【0007】
Parangらの(Nature Structural Biology 8,37,2001)には、ATPがタンパク質キナーゼペプチド基質に結合することを特徴とするタンパク質キナーゼA阻害剤のペプチドATP二基質類似体が記載されているが、このアプローチにもやはり、最適以下の薬物動態学特性制限がある。WO01/70770には、インスリン受容体チロシンキナーゼのための二基質阻害剤、及び2炭素スペーサーを介してペプチド基質類似体に結合するATP−γ−Sを含む特定の強力かつ選択的阻害剤が開示されている。
本発明者等及び同僚の一人による国際公開番号WO01/91754は、PKB阻害剤である特定のイソキノリン誘導体に関するものである。
本発明の出願人は、WO03/010281において、ペプチドまたはペプチド模倣物に結合したATP模倣物を含む二基質タンパク質キナーゼ阻害剤を開示する。タンパク質キナーゼのATP結合部位に対して高親和性を有する小分子(具体的にはイソキノリン誘導体)は、PKBの基質を模倣するペプチドまたはペプチド模倣物に結合される。一部のペプチド自体は高度に活性かつ選択的であったが、血清中で安定性がなく、細胞内で活性でないので、治療値は低い。これらのキメラ化合物は増加した活性を実証するが、ATP模倣部分が存在することに起因して、ペプチドに比べると選択性が劣る。その上、キメラ化合物は、細胞内で低活性を示し、血清中では低度から中度の安定性を示す。
Lindgrenらの(TiPS 21,99−1032000)では、細胞透過ペプチドを用いた細胞送達が論評されている。
【0008】
化学療法及び併用療法
腫瘍細胞及び腫瘍の成長に対する闘いは、生物学的研究及び医療研究の大きな課題となっている。かかる研究は、腫瘍性疾患の治療において有用な可能性がある新規細胞毒性薬剤の発見をもたらしている。化学療法において一般的に用いられる細胞毒性薬剤の例には、微小管形成を妨害する抗代謝薬剤、アルキル化剤、白金ベースの薬剤、アントラサイクリン、抗生物質剤、トポイソメラーゼ阻害剤、及び他の薬剤が含まれる。
単に潜在的に有用な化学療法薬を同定することに加えて、癌研究は、これらの薬剤が腫瘍細胞、ならびに他の細胞に対して作用する機構に関する理解を高めている。たとえばコレカルシフェロール(ビタミンD)は、分化に影響し、in vitro及びin vivo両方の細胞のうち、そのいくつかの細胞型の増殖を低下することができる。ビタミンD及び類似体の活性代謝物は、樹立した腫瘍の成長を遅延させ及び腫瘍誘導を防止することによって著しいin vitro及びin vivo抗腫瘍活性を仲介する(Colstonらの1989,Lancet,1,188;Belleliらの1992,Carcinogenesis,13,2293;McElwainらの1995,Mol.Cell.Diff.,3,31−50;Clarkらの1992,J.Cancer Res.Clin.Oncol.,118,190;Zhouらの1989,Blood,74,82−93)。
【0009】
白金ベース薬剤は、化学治療用途において広範に利用される。たとえば、シスプラチンは、共有のクロスDNAまたはストランド内DNA付加体の形成を介して腫瘍細胞を死滅させる(Shermanらの1987,Chem.Rev.,87,1153−81;Chu,J.1994,Biol.Chem.,269,787−90)。かかる白金ベース薬剤を用いた治療はDNA合成の阻害につながる(Howleらの1970,Biochem.Pharmacol.,19,2757−62;Salles et al.1983,Biochem.Biophys.Res.Commun.,112,555−63)。
他の化学療法薬はさまざまな機構で作用する。たとえば微小管形成を妨害する薬剤(たとえばビンクリスチン、ビンブラスチン、パクリタキセル、ドセタキセルなど)は、有糸分裂紡錘体装置の適切な形成を妨害することによって腫瘍細胞に対して作用する(たとえばManfrediらの1984、Pharmacol.Ther.,25,83−125を参照)。すなわち、微小管形成を妨害する薬剤は、細胞サイクルの有糸分裂相中に主に作用する(Schiffらの1980,Proc.Nat.Acad.Sci.U.S.A.,77,1561−65;Fuchsらの1978,Cancer Treat.Rep.,62,1219−22;Lopesらの1993,Cancer Chemother.Pharmacol.,32,235−42)。代謝拮抗物質は、成長細胞における種々の酵素経路に作用する。たとえば、メトトレキセート(MTX)は、ジヒドロ葉酸の低減酵素を阻害する葉酸類似体であるので、DNA合成に必要なチミジル酸とプリンの合成を阻止する。また、他の細胞毒性薬剤を利用することもできる(たとえばドセタキセル(たとえばTAXATERETM)などのタキサン)。
【0010】
今日の癌治療における主要問題のうちの1つは、腫瘍細胞の化学療法薬耐性を高める能力である。種々の細胞毒性薬剤の生物学的機構における相違のため、さまざまな細胞毒性薬剤の組み合わせを含むプロトコルが試みられている(たとえば、Jekunenらの1994,Br.J.Cancer,69,299−306;Yehらの1994,Life Sciences,54,431−35)。併用治療プロトコルは、互換性のある細胞毒性薬剤を用いることによって細胞変性プロトコルの効力を増加することを目的とする。同様に、細胞毒性薬剤の所与の組み合わせから十分な抗腫瘍性活性を実現できる可能性は、有害な副作用を最小化するために個々の細胞毒性薬剤の薬用量を低減する可能性を提示する。その理由の一つには、種々の細胞毒性薬剤が細胞サイクルのさまざまな段階中に作用することが挙げられ、組み合わせプロトコルの成功は、頻繁に薬物適用の順序によって左右されるからである(たとえば、Jekunenらの前出文献;Studzinskiらの1991,Cancer Res.,51,3451)。
米国特許第6,559,139号には、ビタミンDまたはその誘導体を他の公知の化学療法薬剤と共に用いる併用療法が記載されている。米国特許第6,667,337号では、xanthenone酢酸類とパクリタキセルまたはドセタキセルのどちらかの化合物組み合わせを用いて癌治療方法が開示されている。
米国特許第5,985,877では、前立腺癌を治療するためのチロシンキナーゼ阻害剤及び化学的去勢の組み合わせが開示されている。
【0011】
米国特許第5,516,771号、第5,654,427号及び第5,650,407号では、インドロカルバゾール型チロシンキナーゼ阻害剤及び前立腺癌が論考されている。米国特許第5,475,110号、第5,591,855号、及び第5,594,009号、及びWO96/11933では、融合ピロロカルバゾール型チロシンキナーゼ阻害剤及び前立腺癌が論考されている。
しかし、前立腺癌をはじめとする種々の癌において効果のある治療投与計画の必要性が引き続き存在している。本発明は、細胞透過性、選択性及びバイオ劣化耐性などの改良された薬理学的特性を有するペプチド及びペプチド模倣物の複合体を含むタンパク質キナーゼの阻害剤を提供することによって公知の抗増殖薬剤及び抗癌薬剤の限界を克服するものである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、ペプチドまたはペプチド模倣物と細胞透過性エンハンサーとの複合体を含む新規タンパク質キナーゼ阻害剤を提供する。
本発明は、PKBが増幅される腫瘍組織における細胞死の増加と、公知の化学療法薬剤耐性の低下とにつながる細胞周期停止及びアポトーシス促進の両方を引き起こす能力を持つタンパク質キナーゼBの特異的な阻害剤に対する未だ満たされていないニーズを満たすものである。本発明のタンパク質キナーゼ阻害剤を他の治療と組み合わせて用いると、臨床効果を高めること、あるいは有害な副作用発生率を低下させることができるので、従来の化学治療剤の用量を増加することが可能となる。
本発明はさらに、少なくとも第1部分及び第2部分を有する分子を含むタンパク質キナーゼ阻害剤を提供するものであって、該第1部分は当該分子の細胞透過能を持ち、該第2部分は当該細胞内におけるタンパク質キナーゼ阻害効果を持ち、当該第1部分はリンカーまたはスペーサーを介して当該第2部分に結合されることを特徴とする。具体的には、本発明は医療用及び治療用のタンパク質キナーゼ阻害剤である細胞透過性ペプチド及びペプチド模倣物の複合体を提供する。
特定の実施形態によれば、本発明の複合体は細胞透過部分に結合されたペプチド基質の模倣物を含む。
【0013】
別の実施形態によれば、本発明の複合体は選択タンパク質キナーゼ阻害剤B(PKB)であるペプチド及びペプチド模倣物を含む。これらのペプチド及びペプチド模倣物の複合体は、先に記載のPKB阻害剤よりもさらに改良された薬理学的特性を持つ。
従って本発明のペプチド複合体は、細胞透過部分の第1セグメント、及びペプチドコアとしての機能を果たすペプチドまたはペプチド模倣物の第2セグメントを含むものである。該第1セグメントと該第2セグメントとは、共有結合を介して直接的に結合してもよいし、またはスペーサーを介して結合してもよい。
当技術分野で公知の化合物の細胞への透過を能動的または受動的に促進または増強する部分であれば、いかなる部分も本発明に係るペプチドコアとの結合に使用することができる。その非限定的な例としては、脂肪酸、ステロイド及びかさ高い芳香族または脂肪族の化合物などの疎水性部分と、ステロイド、ビタミン類及び糖類、天然及び非天然のアミノ酸及びトランスポーターペプチドなどの細胞膜の受容体または担体を有することができる部分とが挙げられる。
本発明に係る複合分子のタンパク質キナーゼ阻害性ペプチド部分は、タンパク質キナーゼ阻害性ペプチドまたはタンパク質キナーゼ阻害性ペプチド模倣物より選択する。かかる阻害性コアペプチドは、PKB基質またはPKB基質の模倣物を構成する公知または新規のペプチド及びペプチド模倣物をベースとして設計する。本発明に係るペプチドコアは、一般にアミノ酸番号4〜25のアミノ酸の配列からなり、特定の実施形態によれば、本ペプチドコアはアミノ酸番号5〜20のアミノ酸を含むが、別の実施形態によれば、本ペプチドコアはアミノ酸番号6〜15のアミノ酸を含む。
【0014】
本発明の具体的な実施形態によれば、ペプチド部分はPKB基質に由来する。より好適な実施形態によれば、ペプチドコアはPKB基質グリコーゲン合成酵素キナーゼ3(GSK3)に由来する。
別の実施形態によれば、本発明の複合体にはATPの模倣部分をさらに含むこともできる。
該細胞透過部分は、直接的またはスペーサーを介して間接的にペプチド部分のいかなる位置にも結合することができる。具体的な実施形態によれば、該細胞透過部分はペプチド部分のアミノ末端またはカルボキシ末端に結合する。該随意的な結合スペーサーはさまざまな長さであってよく、また、限定するものではないが、アミン結合、アミド結合、カルバマート結合、チオエーテル結合、オキシエーテル結合、スルホンアミド結合などをはじめとする任意の好適なケミストリーを含む高次構造であってもよい。かかるスペーサーの非限定的な例としては、アミノ酸、スルホンアミド誘導体、アミノチオール誘導体及びアミノアルコール誘導体が挙げられる。
また、さらに改良された安定性及び細胞透過特性を持つペプチド模倣化合物を含むペプチドベースのタンパク質キナーゼ阻害剤を提供することも、本発明のもう一つの目的である。かかる化合物配合の非限定的な例としては、選択されたペプチド残基のN−アルキル化、選択されたペプチド残基、非天然アミノ酸の側鎖修飾、ペプチド結合を置換するためのカルバマート、尿素、スルホンアミド及びヒドラジンの使用、及び限定するものではないが、ピペリジン、ピペラジン及びピロリジンを含む非ペプチド部分のペプチドまたは非ペプチド結合を介した組み込みが挙げられる。本発明に係るペプチド模倣物コア内のアミノ酸(AA)間の修飾結合は、アミド結合、尿素結合、カルバマート結合、ヒドラジン結合またはスルホンアミド結合からなる群から選択することができる。現在、より好適な実施形態では、AA間の結合は特に別段の指定がない限り、すべてアミド結合である。
また、本発明はペプチドベースのATPの模倣部分をさらに含む細胞透過性キメラ化合物を提供する。ATPの模倣部分には、限定するものではないが、ダンシル、イソキノリン、キノリン及びナフタレンが含まれており、スペーサーによってペプチドコアに便宜結合させる。好ましくは、ATPの模倣物はイソキノリンまたはその誘導体である。該スペーサーはさまざまな長さのスペーサーであり、また、限定するものではないが、アミン結合、アミド結合、カルバマート結合、チオエーテル結合、オキシエーテル結合、スルホンアミド結合などをはじめとする任意の好適なケミストリーの高次構造を有するスペーサーである。かかるスペーサーの非限定的な例としては、スルホンアミド誘導体、アミノチオール誘導体及びアミノアルコール誘導体が挙げられる。
【0015】
一実施形態によれば、本発明の化合物は下記式(I)に従った配列、その類似体、塩類または機能的誘導体を含む。
式(I):M−X1−Pro−Arg−X4−X5−X6−X7(配列番号:2)
上記式では、
Mは不在であるか、またはD−Lys2−4またはL−Lys2−4から選択されるものであり、
X1は、Arg、Lys、OrnまたはDabであり、
X4は、Nva、Leu、Ile、AbuまたはOrnであり、
X5は、Tyr、Gly、GlyNH2、Ser(Me)、Glu、またはGlu(NH−(CH2)2−NH−SO2−イソキノリン)であり、
X6は、Dap、Abu、GlyNH2、Ser(Me)、Gly、AlaまたはSerであり、及び
X7は、芳香族または脂肪族のかさ高い残基、好ましくはPheまたはHolを表す。
具体的な実施形態によれば、本発明の化合物は下記式(II)に従った配列、その類似体、塩類または機能的誘導体を含む。
式(II):M−Arg−Pro−Arg−X4−X5−X6−X7(配列番号:3)
上記式では、
Mは、D−Lys3またはLys3であり、
X4は、Nva、Leu、Ile、AbuまたはOrnであり、
X5は、Tyr、Gly、GlyNH2、Ser(Me)、Glu、またはGlu(NH−(CH2)2−NH−SO2−イソキノリン)であり、
X6は、Dap、Abu、GlyNH2、Ser(Me)、Gly、AlaまたはSerであり、及び
X7は、芳香族または脂肪族のかさ高い残基、好ましくはPheまたはHolを表す。別の実施形態によれば、本発明のペプチド複合体は、コレステロール、(DLys)2−5、(Lys)2−5、ビタミンE、Arg−Gln−Ile−Lys−Ile−Trp−Phe−Gln−Asn−Arg−Arg−Met−Lys−Trp−Lys−Lys、AhX6−DArg−DArg−DArg−DArg−DGln−Arg−DLys−DLys−DArgであり、(DLys)8−10、及び(DArg)7−9からなる群から選択される細胞透過部分を含む。
【0016】
本発明の具体的な実施形態によれば、タンパク質キナーゼ阻害剤は下記式(III)の配列を含む。
式(III):Y−Z−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−X6−Hol(配列番号:4)
上式では、X6はDapまたはAlaであり、Yは細胞透過部分であり、ZはYをペプチドに結合させるスペーサーまたは結合である。
好ましくは、Yは、コレステロール、(DLys)2−10、(Lys)2−10、ビタミンE、Arg−Gln−Ile−Lys−Ile−Trp−Phe−Gln−Asn−Arg−Arg−Met−Lys−Trp−Lys−Lys(配列番号:92)、AhX6−DArg−DArg−DArg−DArg−DGln−Arg−DLys−DLys−DArg(配列番号:93)、及び(DArg)7−9からなる群より選択されるものであって、Zは不在であるか、またはカルバマート及びGlyより選択されるものである。
さらなる実施形態によれば、タンパク質キナーゼ阻害剤は、下記からなる複合体を含む。
(a)下記からなる群から選択されるペプチドセグメント。
DLys−DLys−DLys−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol(配列番号:5)、
Lys−Lys−Lys−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol(配列番号:6)、
Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol(配列番号:7)、
Arg−Pro−Arg−Orn−Glu−(NH−(CH2)2−NH−SO2−イソキノリン)Ser−Phe(配列番号:8)、
Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Ala−Hol(配列番号:9)。
【0017】
(b)コレステロール、Arg−Gln−Ile−Lys−Ile−Trp−Phe−Gln−Asn−Arg−Arg−Met−Lys−Trp−Lys−Lys、ビタミンE、及び(DArg)9群から選択される細胞透過部分。
現在、本発明に係る最も好ましいタンパク質キナーゼ阻害剤は下記からなる群から選択される。
コレステリル−O−CO−DLys−DLys−DLys−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−NH2(配列番号:10)、
コレステリル−O−CO−Lys−Lys−Lys−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−NH2(配列番号:11)、
コレステリル−O−CO−(DLys)4−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−NH2(配列番号:12)、
コレステリル−O−CO−(DLys)6−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Ser(Me)−Hol−NH2(配列番号:13)、
コレステリル−O−CO−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−(DLys)3−NH2(配列番号:14)、
コレステリル−O−CO−(DLys)3−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Ser(Me)−Hol−NH2(配列番号:15)、
コレステリル−O−CO−(Lys)3−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−OH(配列番号:16)、
コレステリル−O−CO−(CH2)2−CO−(DLys)3−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−NH2(配列番号:17)、
コレステリル−O−CO−Orn−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−NH2(配列番号:18)、
コレステリル−O−CO−(DLys)3−Lys−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−NH2(配列番号:19)、
ビタミンE−CO−(CH2)2−CO−(DLys)3−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−NH2(配列番号:20)、
コレステリル−O−CO−(DLys)2−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−NH2(配列番号:21)、
コレステリル−O−CO−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−NH2(配列番号:22)、
コレステリル−O−CO−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Ala−Hol−NH2(配列番号:23)、
コレステリル−O−CO−Gly−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Ala−Hol−NH2(配列番号:24)、
ビタミンE−スクシナート−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−NH2(配列番号:25)、
H−(DArg)9−Gly−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Ala−Hol−NH2(配列番号:26)、及び
コレステリル−O−CO−Arg−Pro−Arg−Orn−Glu(アミノエチルスルホンアミドイソキノリン)−Ser−Phe−NH2(配列番号:27)。
【0018】
本発明の別態様では、タンパク質キナーゼ阻害剤である新規ペプチド複合体を活性成分として含む医薬品組成物を狙いとし、また、これらの新規タンパク質キナーゼ阻害剤を含む医薬品組成物の調製法及び使用法をもその狙いとする。
本発明の別態様では、疾患及び障害の治療に役立つ薬物製造のためのこれらペプチド複合体を含む医薬品組成物の使用法を狙いとする。本発明は、限定するものではないが、癌、増殖疾患、糖尿病、心血管症状、出血性ショック、肥満症、炎症性疾患、中枢神経系疾患、及び自己免疫性疾患をはじめとするタンパク質キナーゼが関与する障害の治療方法を開示する。本発明の具体的な実施形態によれば、本発明に係る医薬品組成物は、ホルモン不応性前立腺癌、または限定するものではないが、前立腺癌、乳癌、卵巣癌、結腸癌、腎臓癌、黒色腫及び皮膚癌、肺癌、及び肝臓癌を含む、PKBレベルと関連または相関する他の癌型の治療に有用である。
【0019】
またさらなる一実施形態によれば、本発明に係る医薬品組成物は、他の化学治療物質と組み合わせて投与するものである。本発明に係るタンパク質キナーゼ阻害剤と共に投与し得る化学療法薬物には、限定するものではないが、ミトキサントロン、トポイソメラーゼ阻害剤、紡錘体毒ビンカ:ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン(タキソール)、パクリタキセル、ドセタキセルと、アルキル化剤:メクロレタミン、クロランブシル、シクロホスファミド、メルファラン、イホスファミドと、メトトレキセートと、6−メルカプトプリンと、5−フルオロウラシル、シタラビン、ゲムシタビンと、ポドフィロトキシン:エトポシド、イリノテカン、トポテカン、ダカルバジンと、抗生物質:ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ブレオマイシン、マイトマイシンと、ニトロソ尿素:カルムスチン(BCNU)、ロムスチン、エピルビシン、イダルビシン、ダウノルビシンと、無機イオン:シスプラチン、カルボプラチンと、インターフェロン、アスパラギナーゼと、ホルモン:タモキシフェン、ロイプロリド、フルタミド、及びメゲストロールアセテートをはじめとする当技術分野で公知の任意の薬剤が含まれる。
【0020】
本発明はさらに、タンパク質キナーゼ阻害剤であるペプチド複合体の治療有効量の投与を含む、被験者におけるタンパク質キナーゼの活性調節方法を提供する。
本質的に、従来技術におけるタンパク質キナーゼ阻害剤の公知または想定されるすべての使用方法は、本発明の分子を用いて実現することができる。
例示として、本発明で開示した化合物をタンパク質キナーゼBの阻害剤として選択した。本明細書で開示した調製物及び方法を用いると、他種類のタンパク質キナーゼの活性を阻害する化合物を得ることが可能性である。本発明の上記及び他の特徴は、以下の図、説明、実施例及び特許請求の範囲と結び付けてさらに良く理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
種々のPKB阻害剤候補の製造及びスクリーニングにおいては驚いたことに、本発明に係るペプチド及びペプチド模倣物の複合体が、既知のPKB阻害剤よりも改良された薬理学的特性を所有していることが見出された。ATPの模倣物及び基質の模倣物を含む、先に記載のキメラ分子は無細胞アッセイにおけるPKB酵素阻害においてより強力であるが、新規ペプチド複合体はPKAに比べてPKBに対してより選択的であることが判明し、その細胞透過性のためにそれらの構成成分には細胞に透過してアポトーシス及びリン酸化などの細胞内の事象を阻害する能力があるが、キメラ分子は細胞内のPKBを阻害しないことも判明した。よって、本発明のペプチド複合体は治療用薬剤としての使用により好適である。
【0022】
本発明では、それらの薬理学的特性を改善し、PKAよりもPKBに対して選択性を保持する細胞透過性および血清安定性の阻害剤を得るために、選択的阻害剤であるが細胞内では低活性の非依存性基質を模倣するペプチド阻害剤を修飾した。
本発明に係るペプチド複合体のスクリーニングの際、驚いたことに、特定の脂肪親和性部分が他の部分よりも細胞透過性エンハンサーとして好適であることが見出された。たとえばコレステロールを含むペプチド複合体の活性は、ミリストイルまたはラウリルを含む類似化合物の活性と比較して大幅に高かった。
本発明では、in vitro及びin vivoのPKB阻害効果を有するコアペプチド模倣化合物を同定した。最も強力かつ選択的な化合物を最適化して、すべての細胞アッセイにおいて約5倍強力であり、さらに著しく選択的な新規化合物を実現した。新規化合物は、1〜2μMで前立腺癌細胞株における細胞死及びアポトーシスを誘導するが、正常細胞に対しては40μMでも安全である。また、新規化合物は、3μMで癌細胞におけるアポトーシス誘導し、3〜5μMでウエスタンブロット法によるPKB下流基質の阻害を示す。本発明に係る組成物の有用性は、当技術分野で公知の種々の測定を用いて確立することができる。本発明の好適な化合物は、タンパク質キナーゼの活性阻害及び癌細胞内での細胞死とアポトーシスの誘導において、in vitroアッセイパネルで活性であるが、正常細胞内では活性でないことが判明した。加えて、腫瘍成長、腫瘍回帰、及び化学療法薬剤との潜在的な相乗作用効果に対するそれらの影響を評価するため、in vitroで高活性を示す選択された化合物をin vivoで検査する。
【0023】
選択された本発明に係る化合物は、血漿中で6〜24時間安定であり、肝細胞によって緩慢に代謝され、かつ膜透過性であるPKBのペプチドベースの基質を模倣する阻害剤である。これらの化合物は、関連キナーゼよりもPKBに対して10〜200倍選択的であり、このタンパク質キナーゼの強力かつ選択的阻害剤として組織培養中において特徴付けられている。阻害剤は、特にPKBが高度に活性化される前立腺癌細胞、乳癌細胞及び腎臓癌細胞において細胞死を誘導するが、PKB活性化がほとんどない正常細胞においては細胞死を誘導しない。阻害剤は、細胞死誘導濃度と同じ濃度で前立腺癌細胞においてアポトーシスを誘導するが、これらの濃度では、細胞サイクル分析による細胞毒性死は認められない。その上、阻害剤は前立腺癌細胞におけるPKB下流基質のリン酸化を減少する。
【0024】
薬理学的に活性であるタンパク質キナーゼ阻害剤及び薬剤的に許容できる担体または希釈液を含む本発明に係る医薬品組成物は、本発明に係るタンパク質キナーゼ阻害剤の有効量を含む医薬品組成物を用いた該医薬品組成物を必要とする哺乳動物の治療方法と同様に本発明の別の実施形態を提示する。本発明の組成物を用いる治療方法は、癌、増殖疾患、糖尿病、心血管症状、出血性ショック、肥満症、炎症性疾患、中枢神経系疾患、及びかかる組成物を用いた自己免疫性疾患の療法に有用である。
本発明に係る医薬品組成物は、最も好ましくは、ホルモン不応性前立腺癌と、前立腺癌(ZinらのClin.Cancer Res.20017,2475−9)と、乳癌(Perez−Tenorio and Stal,Brit.J.Cancer 200286,540−45,SalhらのInt.J.Cancer 200298,148−54)と、卵巣癌(LiuらのCancer Res.199815,2973−7)と、結腸癌(SembaらのClin.Cancer.Res.20028,1957−63)と、黒色腫及び皮膚癌(Walderman,Wecker and Diechmann,Melanoma Res.200212,45−50)と、肺癌(ZinらのClin.Cancer Res.20017,2475−9)と、肝臓癌(FangらのEur.J.Biochem.2001268,4513−9)の群から選択される悪性腫瘍の防止及び治療に使用することができる。
本発明を用いて治療することができるさらなる特定の型の癌には、急性骨髄性白血病、膀胱癌、乳癌、子宮癌、胆管癌、慢性骨髄性白血病、結腸直腸癌、胃肉腫、グリア細胞腫、白血病、肺癌、リンパ腫、黒色腫、複数の骨髄腫、骨肉腫、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、胃腸癌、または手術不能腫瘍を含めた局在部位の腫瘍、または腫瘍の局所治療が有益な腫瘍、及び固体腫瘍が含まれる。
【0025】
加えて、本発明の医薬品組成物を用いて治療することができる適応症には、タンパク質キナーゼのレベル、特にPKBレベルが高いか、または適応症と関連または相関しているという条件で、望ましくない細胞増殖または無制限な細胞増殖に関与するすべての状態が含まれる。かかる適応症には、再狭窄、良性腫瘍、原発腫瘍及び腫瘍転移などの各種癌、内皮細胞の異常刺激作用(アテローム性動脈硬化)、外科術、異常創傷治癒、異常血管形成に起因する体組織侵襲、組織線維症を生じる疾患、反復動作による障害、血管新生を高度に促進しない組織障害、及び臓器移植に関連する増殖反応が含まれる。
本発明を用いて治療することができる特定の型の再狭窄病変には、冠動脈病変、頸動脈病変、及び大脳病変が含まれる。本発明を用いて治療することができる特定の型の良性腫瘍には、血管腫、聴神経腫、神経線維腫、トラコーマ及び化膿性肉芽腫が含まれる。
【0026】
外科術中の体組織侵襲に起因する細胞増殖の治療は、接合外科術、腸外科術、及びケロイド瘢痕をはじめとする種々の外科手術において行うことができる。線維組織を生じる疾患には肺気腫が含まれる。本発明を用いて治療することができる反復動作による障害には、手根管症候群が含まれる。本発明を用いて治療することができる細胞増殖障害の例としては骨腫瘍が挙げられる。
本発明を用いて治療することができる異常血管形成には、関節リウマチを伴う異常血管形成、乾癖、糖尿病性網膜症、及び未熟児網膜症(水晶体後線維増殖症)、黄斑変性症、角膜移植拒絶反応、neroscular緑内障及びOster Webber症候群などの他の眼血管形成疾患が含まれる。
本発明を用いて治療することができる臓器移植に関連する増殖反応には、臓器拒絶または関連合併症の原因となる可能性がある増殖反応が含まれる。特異的にこれらの増殖反応は、心臓、肺臓、肝臓、腎臓、及び他の体器官または器官系の移植中に起こる可能性がある。
【0027】
本発明に係る医薬品組成物は都合よく、少なくとも1つのタンパク質キナーゼ阻害剤を含む。これらの医薬品組成物は、局所的投与または全身的投与をはじめとする任意の好適な経路で投与することが可能である。好ましい投与方法には、限定するものではないが、静脈内注入の及び筋肉内注入などの非経口的な経路、ならびに経鼻摂取または経口摂取が含まれる。
当業者であれば公知のように、医薬品組成物は単独または治療すべき状態に対する新たな治療薬と併せて投与することが可能である。
現在、本発明に係る抗PKB化合物と、公知の化学療法薬物との両方を同時投与または連続投与すると、抗腫瘍活性が高くなり、併用療法による抗癌効果は各薬剤を単独投与した場合と比べてはるかに大きく、個々の薬剤効果の和を大幅に超えることが見出されている。よって、本特許申請は悪性腫瘍または他の増殖反応の治療に使用される公知のいかなる他薬剤との併用療法に使用することが可能なタンパク質キナーゼ阻害剤を提供するものである。
【0028】
用語と定義
本明細書及び本特許請求の範囲における用語「タンパク質キナーゼ」は、上記のように1つまたは複数のタンパク質リン酸化する働きをする酵素スーパーファミリーのメンバーを意味する。
本明細書及び本特許請求の範囲において使用した用語「阻害剤」は「拮抗薬」を示すために互換的に用いたものであって、これらの用語は特定の酵素活性を低下させる能力、または当該酵素基質の活性または機能と競合する能力を備えている組成物を定義するものである。
本明細書及び本特許請求の範囲において使用した用語「キメラ化合物」または「キメラ分子」は、PKB基質の模倣部に結合したATP模倣部分を示す。
本明細書中で使用した「ペプチド」は、ペプチド結合によって結合されたアミノ酸配列を示す。本発明のペプチド類似体は、4〜25アミノ酸残基、好ましくは5〜20残基、より望ましくは6〜15アミノ酸の配列を含むものであって、各残基がアミノ末端及びカルボキシ末端を持つことを特徴とする。
用語「ペプチド模倣物」は、本発明に係るペプチドが少なくとも1つの非コード化残基または非ペプチド結合を含むように修飾されていることを意味する。かかる修飾には、たとえば1つまたは複数の残基のアルキル化及びより特異的なメチル化、非天然アミノ酸による天然アミノ酸の挿入または置換、アミド結合の他共有結合との置換が含まれる。本発明に係るペプチド模倣物は、便宜、少なくとも1つの結合を含むことができ、該結合は尿素結合、カルバマート結合、スルホンアミド結合、ヒドラジン結合、または任意の他共有結合などを含むアミド置換結合である。適切な「ペプチド模倣物」の設計はコンピュータを使って行うことも可能である。
【0029】
用語「スペーサー」は化学的部分を示し、その目的は細胞透過部分及びペプチドまたはペプチド模倣物を共有的に結合することである。スペーサーを用いて細胞透過部分とペプチドとの間に距離を設けるか、または該スペーサー任意の型の化学結合とすることもできる。リンカーは直接化学結合またはスペーサーを示す。
用語「ペプチド類似体」は、アミド結合の1つまたは複数のアミノ酸置換または1つまたは複数の修飾/置換を除いて、本発明に係るアミノ酸配列を有する分子を示す。
本発明に関しては、用語「核」はペプチドセグメント、またはペプチドまたはペプチド模倣物を含み、便宜、細胞透過性エンハンサーに結合したタンパク質キナーゼ阻害剤の部分を意味する。
【0030】
「透過性」は薬剤または物質の障壁、膜、または皮膚層を介して透過、浸透、または拡散する能力を意味する。「細胞透過性」または「細胞透過」部分は、当技術分野で公知の、膜を介して分子の透過を促進または増強することができる任意の分子を意味する。その非限定的な例としては、脂質、脂肪酸、ステロイド及びかさ高い芳香族または脂肪族の化合物などの疎水性部分と、ステロイド、ビタミン類及び糖類、天然及び非天然のアミノ酸及びトランスポーターペプチドなどの細胞膜の受容体または担体を有することができる部分とが挙げられる。本発明に従って使用することができる脂質部分の例は下記の通りである。リポフェクタミン、Transfectace、Transfectam、Cytofectin、DMRIE、DLRIE、GAP−DLRIE、DOTAP、DOPE、DMEAP、DODMP、DOPC、DDAB、DOSPA、EDLPC、EDMPC、DPH、TMADPH、CTAB、lysyl−PE、DC−Cho、−アラニンコレステロールと、DCGS、DPPES、DCPE、DMAP、DMPE、DOGS、DOHME、DPEPC、プルロニック、Tween、BRIJ、プラスマロゲン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、グリセロール−3−エチルホスファチジルコリン、ジメチルアンモニウムプロパン、トリメチルアンモニウムプロパン、ジエチルアンモニウムプロパン、トリメチルアンモニウムプロパン、ジメチルジオクタデシル臭化アンモニウム、スフィンゴ脂質、スフィンゴミエリン、リソリピド(lysolipid)、糖脂質、スルファチド、スフィンゴ糖脂質、コレステロール、コレステロールエステル、コレステロール塩、オイル、N−スクシニルジオレオイルホスファチジルエタノールアミン、1、2−ジオレオイル−sn−グリセロール、1、3−ジパルミトイル−2−スクシニルグリセロール、1、2−ジパルミトイル−sn−3−スクシニルグリセロール、1−ヘキサデシル−2−パルミトイルグリセロホスファチジルエタノールアミン、パルミトイルホモシステイン、N、N’−ビス(ドデシルアミノカルボニルメチレン)−N、N’−ビス((−N、N、N−トリメチルアンモニウムエチル−アミノカルボニルメチレン)四ヨウ化エチレンジアミンと、N、N”−ビス(ヘキサデシルアミノカルボニルメチレン)−N、N’、N”−トリス((−N、N、N−六ヨウ化トリメチルアンモニウム−エチルアミノカルボニルメチレンジエチレントリアミンと、N、N’−ビス(ドデシルアミノカルボニルメチレン)−N、N”−ビス((−N、N、N−トリメチルアンモニウムエチルアミノカルボニルメチレン)シクロヘキシレン−1、4−四ヨウ化ジアミンと、1、7、7−テトラ−((N、N、N、N−テトラメチルアンモニウムエチルアミノ−カルボニルメチレン)−3−ヘキサデシルアミノカルボニル−メチレン−1、3、7−七ヨウ化トリアザヘプタンと、N、N、N’、N’−テトラ((−N、N、N−トリメチルアンモニウム−エチルアミノカルボニルメチレン)−N’−(1、2−ジオレオイルグリセロ−3−ホスホエタノールアミノカルボニルメチレン)四ヨウ化ジエチレントリアミンと、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン、脂肪酸、リソリピド(lysolipid)、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴ脂質、糖脂質、糖脂質、スルファチド、スフィンゴ糖脂質、ホスファチジン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキドン酸、オレイン酸、重合体を有する脂質、スルホン化サッカロイド(糖類)を有する脂質、コレステロール、トコフェロールヘミサクシネート、エーテル結合された脂肪酸を備えた脂質、エステル結合された脂肪酸を備えた脂質、重合脂質、ジアセチルリン酸(リン酸塩)、ステアリルアミン、カルジオリピン、6〜8の炭素長の脂肪酸を備えたリン脂質、不斉アシル鎖を備えたリン脂質、6−(5−コレステン−3b−イルオキシ)−1−チオ−b−D−ガラクトピラノシド、ジガラクトシルジグリセリド、6−(5−コレステン−3b−イルオキシ)ヘキシル−6−アミノ−6−デオキシ−1−チオ−b−D−ガラクトピラノシド、6−(5−コレステン−3b−イルオキシ)ヘキシル−6−アミノ−6−デオキシル−1−チオ−a−D−マンノピラノシド、12−(((7’−ジエチルアミノ−クマリン−3−イル)カルボニル)メチルアミノ)−オクタデカン酸と、N−[12−(((7’−ジエチルアミノ−クマリン−3−イル)カルボニル)メチルアミノ)オクタデカノイル]−2−アミノパルミチン酸と、コレステリル)4’−トリメチル−アンモニオ)ブタノアートと、N−スクシニルジオレオイル−ホスファチジルエタノールアミンと、1、2−ジオレオイル−sn−グリセロールと、1、2−ジパルミトイル−sn−3−スクシニル−グリセロールと、1、3−ジパルミトイル−2−スクシニルグリセロール、1−ヘキサデシル−2−パルミトイルグリセロ−ホスホエタノールアミン、及びパルミトイルホモシステイン。
【0031】
本明細書及び本特許請求の範囲における用語「治療有効量」は、タンパク質キナーゼ阻害剤または同阻害剤を含む組成物の、本明細書に記載した適応症に対して宿主に投与し、所望の結果を達成するための量を意味するものであって、該適応症には、限定するものではないが癌、糖尿病、心血管症状、出血性ショック、肥満症、炎症性疾患、中枢神経系疾患、及び自己免疫性疾患が含まれる。
本明細書中で使用した「癌」及び「癌性」は、哺乳動物細胞におけるすべての悪性増殖を意味する。
2つの化合物を組み合わせて投与するか、または本発明に係る併用療法を用いる際、用語「組み合わせ」は、本発明に関しては、複数の薬物が同時に、同時または連続的に被験者に与えられることを意味する。この用語は、本発明に関しては、組織的な治療の過程で2つ以上の治療薬を投与して改善された臨床成果を達成することを意味するように定義されている用語「同時投与」と互換可能である。また、かかる同時投与は同一であってもよい。すなわち、同時投与は重複する期間中に発生してもよいものである。
【0032】
チロシンキナーゼ阻害剤と別薬剤との同時投与は、別々の製剤、すなわち、チロシンキナーゼの製剤と別薬剤の製剤の同時発生的な投与によって行い得るものである。別々の製剤の投与は、その投与のタイミングがチロシンキナーゼ阻害剤及び他の薬剤の薬理活性が治療を受ける哺乳動物において同時に起こるような場合、「同時発生的」といえる。
本発明の一部の実施形態では、チロシンキナーゼ阻害剤及び別薬剤の同時投与は、両剤を単一組成物に製剤することによって達成する。
本明細書中では、本発明及び本発明の製造と使用の様式を説明するため、特定の略称を使用する。例として、ATPはアデノシンの3つのリン酸(リン酸塩)を意味し、BSAはウシ血清アルブミンを意味し、BTCはビス−(トリクロロメチル)カルボナートまたはトリホスゲンを意味し、DIEAはジイソプロピル−エチルアミンを意味し、DMFはジメチルホルムアミドを意味し、EDTはエタンジチオールを意味し、EDTAはエチレンジアミンテトラアセテートを意味し、ELISAは酵素結合免疫測定法を意味し、EGFは上皮成長因子を意味し、FACSは蛍光標示式細胞分取器を意味し、FKHRはフォークヘッドを意味し、GSK3はグリコーゲン合成酵素キナーゼ3を意味し、HAは赤血球凝集素を意味し、HBTUは1−ヒドロキシベンズトリアゾリルテトラメチル−ウロニウムを意味し、HEPESは4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸を意味し、HOBTは1−ヒドロキシベンゾトリアゾールを意味し、HRPCはホルモン不応性前立腺癌を意味し、IGFはインスリン成長因子を意味し、MOPSは4−モルホリンプロパンスルホン酸を意味し、MPSは複数の平行合成を意味し、NMPはN−メチルホルムアミドを意味し、MTDは最大耐量を意味し、PBSはリン酸緩衝生理食塩水を意味し、PKAはタンパク質キナーゼAを意味し、PKBはタンパク質キナーゼBを意味し、PKCはタンパク質キナーゼCを意味し、rpmは毎分の回転数を意味し、SARは構造活性相関を意味し、THFはテトラヒドロフランを意味し、TISはトリ−イソプロピル−シランを意味し、TFAはトリフルオロ酢酸を意味する。
【0033】
ケミストリー:
本発明に係る好適なペプチドは、種々のペプチド模倣手法をはじめとする当技術分野で公知の任意の方法を用いて合成することができる。これらの方法には、固相合成法、ならびに液相合成法が含まれる。ペプチド性部分と透過性部分との結合は、固相化学または液相化学のどちらかによって、当技術分野で公知の任意の方法を用いて行うことができる。これらの方法の非限定的な例を本明細書に記載した。本発明の好適な化合物の一部は、液相合成法を用いて好都合に調製することができる。本発明の化合物と同様の化合物を調製するための当技術分野で公知の他の方法を使用することが可能であり、それらの方法も本発明の範囲内に含まれるものとする。
本発明において使用するアミノ酸は、市販されているアミノ酸か、または通常の合成法によって得られるアミノ酸である。特定の残基をペプチドに組み込むために特別な方法が必要とされる場合があり、ペプチド配列の連続合成法、分岐合成法及び収束合成手のいずれの手法も本発明において有用である。コード化された天然アミノ酸及びそれらの誘導体は、IUPAC条約に従った3文字コードによって表示する。特定の表示がないときは、L−異性体を使用した。D−異性体は、残基の略称の前に「D」を付けて表示する。
【0034】
アミノ酸の同類置換は、当業者には周知のように本発明の範囲内に含まれるものとする。アミノ酸の同類置換には、あるアミノ酸を同型の官能基または側鎖、たとえば脂肪族側鎖、芳香族側鎖、正に帯電した側鎖、負に帯電した側鎖を有する別のアミノ酸と置換することが含まれる。これらの置換により、経口バイオアベイラビリティ、中枢神経系への透過、特定の細胞集団へのターゲッティングなどの機能を高めることができる。当業者ならば、ペプチド、ポリペプチド、または単一アミノ酸またはコード化された配列における極めて少量のアミノ酸を改変、添加または削除するタンパク質配列への個々の置換、欠失または付加が、「保存的に修飾された変異」であって、その改変の結果、アミノ酸の化学的に類似したアミノ酸による置換が起こることを認識するであろう。機能的に類似するアミノ酸を提供する同類置換表は当技術分野で公知である。
【0035】
以下の6つの群のそれぞれには、相互に同類置換であるアミノ酸が含まれる。
1)アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T)
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)
3)アスバラギン(N)、グルタミン(Q)
4)アルギニン(R)、リシン(K)
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V)
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)
非コード化アミノ酸の非限定的な例の一覧表では、Abuは2−アミノ酪酸を意味する、AhX6はアミノヘキサン酸を意味し、Ape5はアミノペンタン酸を意味し、ArgOlはアルギニノールを意味し、bAlaはβ−アラニンを意味し、Bpaは4−ベンゾイルフェニルアラニンを意味し、Bipはβ−(4−ビフェニル)−アラニンを意味し、Dabはジアミノ酪酸を意味し、Dapはジアミノプロピオン酸を意味し、Dimはジメトキシフェニルアラニンを意味し、Dprを意味しジアミノプロピオン酸、Holはホモロイシンを意味し、HPheはホモフェニルアラニンを意味し、GABAはγ−アミノ酪酸を意味し、GlyNH2はアミノグリシンを意味し、Nleはノルロイシンを意味し、Nvaはノルバリンを意味し、Ornはオルニチンを意味し、Pheカルボキシはパラカルボキシフェニルアラニンを意味し、PheClはパラクロロフェニルアラニンを意味し、PheFはパラフルオロフェニルアラニンを意味し、PheMeはパラメチルフェニルアラニンを意味し、PheNH2はパラアミノフェニルアラニンを意味し、PheNO2はパラニトロフェニルアラニンを意味し、Phgはフェニルグリシンを意味し、Thiはチエニルアラニンを意味する。
【0036】
薬理
他の考慮事項は別として、本発明の新規活性成分がペプチド、ペプチド類似体またはペプチド模倣物であるということは、製剤がこれらの型の化合物の投与に好適なものでなくてはならないことである。明らかにペプチドは、胃酸または腸内酵素による消化に対する脆弱性のために経口投与にあまり好適ではない。ペプチドの好適な投与経路は、関節内、静脈内、筋肉内、皮下、真皮内、またはクモ膜下腔内である。より好適な経路は、障害部位か疾患部位またはその近傍部への直接注入である。しかし、本発明の化合物の一部は、細胞膜を通過する能力に加えて代謝劣化に対して高度に耐性であることが判明している。これらの特性は、本発明の化合物を経口投与に潜在的に好適なものにしている。
本発明の医薬品組成物は、当技術分野で周知であるようなプロセスで製造することができ、それらの態様としては、従来の混合、溶解、造粒、粉砕、微粉砕、糖衣錠製造、研和、乳化、カプセル化、取り込み、または凍結乾燥プロセス等があげられる。
【0037】
かくして、本発明に従って使用される医薬品組成物は、薬剤的に使用することができる調製物への活性化合物の処理を容易にする賦形剤及び助剤を含む1つまたは複数の生理学的に許容できる担体を用いて従来の方式で製剤することができる。適切な製剤は選択される投与経路によって決まる。
注入用としては、本発明の化合物を水溶液中、好ましくはハンクスの溶液、リンゲルの溶液、または生理食塩水などの生理学的に適合した緩衝液緩衝液中で製剤することができる。経粘膜投与用の場合には、浸透しようとする障壁に適切な浸透剤を製剤において使用する。かかる浸透剤、たとえばポリエチレングリコールは当技術分野で公知である。
糖衣錠核には好適なコーティングを施す。このコーティングのため、便宜、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カーボポールゲル、ポリエチレングリコール、二酸化チタン、漆液及び好適な有機溶媒または混合溶媒を含有することができる濃縮砂糖水を使用してもよい。染料または色素を識別のためまたは活性化合物投与量のさまざまな組み合わせを特徴づけるために錠剤または糖衣錠コーティングを加えることもできる。
【0038】
経口剤として使用できる医薬品製剤には、ゼラチンでできている押しバメ式カプセル、ならびにゼラチン及びグリセロームまたはソルビトールなどの可塑剤でできている密封されたソフトカプセルおよびコーティングも含まれる。差込式カプセルは、ラクトースなどの充填剤、澱粉などの結合剤、タルクなどの潤滑剤またはステアリン酸マグネシウム及び、便宜、安定剤との混合物中の活性成分を含有することができる。ソフトカプセルでは、脂肪性油類、液体パラフィン、または液体ポリエチレングリコールなどの好適な液体中に、活性化合物を溶解または懸濁することができる。加えて、安定剤を加えることもできる。経口投与用のすべての製剤は、選択された投与経路に対して好適な薬用量でなくてはならない。頬側投与の場合には、組成物は、錠剤形態または従来の方式で製剤されたローゼンジ錠形態をとることもできる。
吸入による投与の場合は、本発明に従って使用される変異体を、好都合には、好適な噴霧剤、たとえばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロ−テトラフルオロエタンまたは二酸化炭素を用いて、加圧パックまたは噴霧器からエアゾールスプレー提示の形式で投与する。加圧エアゾールの場合、単位用量は定量投与するための弁部を設けることによって決定することができる。たとえば吸入器用ゼラチンのカプセル及びカートリッジは、ペプチド及びラクトースまたは澱粉などの好適な粉末ベースの混合粉体を含有するように製剤することができる。
【0039】
非経口的な投与用の医薬品組成物には水溶性型で活性成分の水溶液が含まれる。加えて、活性化合物の懸濁液は適切な油状の注入懸濁液として調製してもよい。好適な天然または合成の担体は当技術分野で公知である(PillaiらのCurr.Opin.Chem.Biol.5,447,2001)。また便宜、懸濁液は、高度に濃縮された溶液の調製を可能にするために化合物の溶解度を増大させる好適な試薬または安定剤を保持させることもできる。あるいは、活性成分は使用前に好適な媒体、たとえば滅菌、発熱物質を含まない水を用いて再構成を行うために粉末形態であってもよい。
また、本発明の化合物は、たとえばカカオバターまたは他のグリセリドなどの従来の坐薬の基剤を用いて坐薬または停留浣腸などの直腸用の組成物として製剤することもできる。
本発明に関して使用するのに好適な医薬品組成物には、活性成分が所期の目的を達成するために有効な量で含有されていることを特徴とする組成物が含まれる。より具体的には、治療有効量とは治療を受けている被験者の疾患の症候を防止、軽減または寛解させるうえに効果のある化合物の量を意味する。治療有効量の決定は、当業者の能力範囲で行えるものである。
【0040】
本明細書に記載したペプチドの毒性及び治療効果は、細胞培養または実験動物内において標準製薬方法、たとえば対象化合物のIC50(50%の活性を阻害する濃度)及びLD50(検査動物の50%の死を引き起こす致死量)を定量することによって確定することができる。細胞培養試験および動物実験から得たデータは、ヒトにおける用量範囲の設定に使用することができる。薬用量は、用いられる剤形及び投与経路に応じてさまざまに変わる。適確な製剤、投与経路及び薬用量は、それぞれの医師によって患者の状態に鑑みて選択することができる(たとえばFinglらの1975、「The Pharmacological Basis of Therapeutics」、Ch.1p.1)。
治療しようとする状態の重症度及び応答性にもよるが、投薬は治療過程的で数日から数週間持続するか、または治癒が起こるまで、または疾患状態の改善が達成されるまで持続する持続放出薬剤組成物の単独投与であり得る。組成物の投与量はもとより、治療を受けている被験者、症状の重症度、投与様式、処方医師の判断、及びその他のすべての該当する要因によって左右されるであろう。
【0041】
一実施形態では、本発明はタンパク質キナーゼ阻害剤と細胞毒性薬剤とを細胞に同時投与することによって細胞(たとえばターゲッティングされる細胞)を死滅させる方法を提供する。加えて、本発明の方法では任意期間の前処置を行うこともできるが、具体的な前処置の期間は本発明の方法の用途に応じてさまざまであろう。たとえば、治療用途においては、かかる前処置は最低約1日から最大約5日間以上までの期間、より望ましくは、前処置期間は約2日間から約4日間(たとえば約3日間)であり得る。前処置後、本発明の方法には細胞毒性薬剤の投与が含まれるが、他の実施形態では、糖質コルチコイド(たとえばコルチゾール、デキサメサゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾンなど)、ジフェンヒドラミン、ランチジン(rantidine)、制吐−オンダンセトロン(ondasteron)、またはganistronを付属的に投与することができ、かかる薬剤はタンパク質キナーゼ阻害剤と共に投与することができる。細胞毒性薬剤は、前処置後に単独またはタンパク質キナーゼ阻害剤の継続的な投与と共に投与することができる。特定の実施形態によれば、治療は細胞毒性薬剤が投与される時点で中断するが、その投与は必要に応じて一定期間(たとえば数日間にわたって定期的に)継続することができる。
【0042】
ターゲッティングされる細胞は単生であって他の同類細胞(培養液中の単一細胞またはin vivoの転移性または散在性の腫瘍細胞など)から分離された細胞であり得るか、またはターゲッティングされる細胞が細胞(たとえば腫瘍内)コレクションのメンバーであり得る。好ましくは、本細胞は腫瘍細胞(たとえば、癌性または形質転換細胞などの無制限増殖を示す細胞の型)である。腫瘍細胞は、腫瘍内または他の細胞コレクション内に、均一または他の細胞型(腫瘍細胞または別の細胞型)と共に不均一に、分離(たとえば、単一細胞培養液中またはin vivoの転移性または散在性腫瘍細胞)されているか、または凝集状態で存在している。細胞が腫瘍内にある場合、本発明の一部の実施形態では、タンパク質キナーゼ阻害剤を腫瘍に投与し、引き続いて細胞毒性薬剤を腫瘍に投与することによって腫瘍の成長を遅延させる方法を提供する。個々の細胞への細胞変性効果の効力により、本発明の方法は、長い間に腫瘍腫瘤に追加された細胞数を低減または実質上除去することができる。好ましくは、本発明の方法は腫瘍内の細胞数の低減に効果を及ぼし、最も好ましくは、本方法は結果として腫瘍の部分的または完全な破壊(たとえば、腫瘍内の細胞の一部または実質上すべてを死滅させることによって)に導く。
【0043】
ターゲッティングされる細胞が患者(たとえばヒト)内の腫瘍性疾患に関係する場合、本発明の一部の実施形態は、タンパク質キナーゼ阻害剤を患者に投与し、引き続いて細胞毒性薬剤を患者に投与することによって患者を治療する方法を提供する。このアプローチは、無処置または散在性の癌を有する哺乳類の治療に効果がある。たとえば、細胞が散在性細胞(たとえば転移性腫瘍症)である場合、本発明の方法の細胞変性効果は、患者の全身に腫瘍細胞が蔓延する可能性を低減または実質上除去することができ、それによってかかる細胞が増殖して患者体内に新規腫瘍を形成する可能性を低減または最小化することもできる。その上、腫瘍細胞をはじめとする腫瘍の成長を遅延させることによって本発明の方法は、かかる腫瘍からの細胞が最終的に転移または散在するという可能性を低減する。もとより、本発明の方法により腫瘍サイズの縮小(そして特に腫瘍の排除)が実現されると、本方法は患者体内のかかる腫瘍の病理効果を減弱させる。別の用途は、腫瘍細胞が持続または首尾良く再成長する可能性を低減するために骨髄移植または再構成(たとえば白血病性疾患の治療)を必要とする高用量化学療法である。
多くの場合、細胞毒性薬剤を用いた治療前のタンパク質キナーゼ阻害剤を用いた細胞または腫瘍の前処置は添加物に影響し、多くの場合、細胞死の相乗度にも影響を及ぼす。本明細書に関しては、in vitroで共に投与される2つの化合物の効果(所与の濃度にて)が個々に投与される各化合物の効果の和(同一濃度で)を超える場合、2つの化合物は相乗的に作用するものと考慮される。かかる相乗作用は多くの場合細胞サイクルのG0−G1相における細胞に対して作用することができる細胞毒性薬剤を用いて実現される。
【0044】
本発明に関しては、任意の細胞毒性薬剤を利用することができ、既に述べたように化学療法に好適な多くの細胞毒性薬剤は当技術分野で公知である。かかる薬剤は、たとえば、限定するものではないが、代謝の阻害またはDNA合成、細胞骨格組織との干渉、DNAの不安定化または化学修飾、アポトーシスなどを含む任意の機構によって死を媒介する任意の化合物細胞であり得る。たとえば、細胞毒性薬剤は、代謝拮抗物質(たとえば、5−フルオロウラシル(5−FU)、メトトレキセート(MTX)、フルダラビン、など)、抗微小管剤(たとえばビンクリスチン、ビンブラスチン、タキサン(パクリタキセル及びドセタキセルなど)、など)、アルキル化剤(たとえばシシクロホスファミド(cyclophasphamide)、メルファラン、ビスクロロエチルニトロソ尿素(BCNU)、など)、白金剤(たとえばシスプラチン(別名cDDP)、カルボプラチン、オキサリプラチン、JM−216、CI−973、など)、アントラサイクリン(たとえばドキソルビシン、ダウノルビシン、など)、抗生物質剤(たとえばマイトマイシン−C)、トポイソメラーゼ阻害剤(たとえばエトポシド、カンプトテシン、など)、または他の細胞毒性薬剤(たとえばデキサメサゾン)であり得る。細胞毒性薬剤の選択は、本発明の方法の用途によって決まる。研究の場合には、いかなる潜在的な細胞毒性薬剤も(新規細胞毒性薬剤でさえも)、毒素のビタミンD(または誘導体)を用いて前処置した細胞または腫瘍への影響を研究するために用いることができる。治療目的に使用する場合、好適な細胞毒性薬剤の選択は、多くの場合患者に独特のパラメータによって決まるであろうが、所与の化学治療プロトコルに対する細胞毒素の投与計画の選択は、当業者の能力範囲で行うものとする。
【0045】
in vivoアプリケーションの場合、所与の細胞毒性薬剤の適切な投与量は、薬剤及びその製剤によって決まり、所与の患者に対する薬用量及び製剤を最適化することは、当業者の能力範囲で十分に行えるものである。すなわち、たとえば、かかる薬剤は、製剤の標準方法を用いて、経口、皮下、非経口、粘膜下、静脈内、または他の好適な経路を介する投与用に製剤することができる。たとえばカルボプラチンは、約4〜約15(たとえば約5〜約12)、またはさらに約6〜約10のAUC(「濃度曲線下面積」)を実現するために算出された1日投与量で投与することができる。一般に、AUCは、クレアチニンの糸球体濾過速度に基づいて、カルバート式を用いて計算される(たとえば査定血漿サンプルを分析することによって)(たとえばMartinoらの1999,Anticancer Res.,19(6C),5587−91を参照)。パクリタキセルは、約50mg/m2〜約100mg/m2(たとえば約80mg/m2)の濃度範囲で用いることができる。デキサメサゾンを利用する場合、患者体内では、約1mgと約10mg(たとえば約2mg〜約8mg)間の範囲の投与量で使用することができ、より具体的には、特に患者がヒトである場合、約4mg〜約6mgの投与量で使用することができる。
【0046】
本発明に係るチロシンキナーゼ阻害剤の薬用量は、1日当たり、体重1kgにつき、1μg〜1gである。一実施形態によれば、チロシンキナーゼ阻害剤の薬用量は、1日当たり、体重1kgにつき、0.01mg〜100mgである。チロシンキナーゼ阻害剤の最適な薬用量は、前立腺癌の型及び進行度、患者の全体的な健康状態、チロシンキナーゼ阻害剤の効力、及び投与経路などの要因によってさまざまに変わるであろう。チロシンキナーゼ薬用量の最適化は、当業者の能力範囲で行えるものである。
【0047】
本発明の別の実施形態は、付属的にタンパク質キナーゼ阻害剤及び糖質コルチコイドを患者に投与することによって患者体内の前立腺癌を治療する方法を提供する。本発明のこの態様によれば、任意のタンパク質キナーゼ阻害剤及び糖質コルチコイドを用いることができ、それらの多くの化合物は本明細書中で論考されているが、他の化合物は当技術分野で公知のものである。また、タンパク質キナーゼ阻害剤及び糖質コルチコイドは任意の適切な方法によって患者に投与するが、その方法の一部を本明細書中に示した。かくしてタンパク質キナーゼ阻害剤及び糖質コルチコイドを好適な調製物に製剤することができ、必要に応じて皮下、静脈内、経口などの経路を介して投与することができる。また、たとえば、糖質コルチコイドをタンパク質キナーゼ阻害剤の投与の前または後に、同時的に患者に投与する。有効な投薬計画の1つには、約5μgと約25μg/kg間の量のタンパク質キナーゼ阻害剤を隔日(たとえば月曜日−水曜日−金曜日または火曜日−木曜日−土曜日などの1週間に2〜4日)に投与することであり、また同時に、約1mg/kgと20mg/kg間の量のデキサメサゾンもヒト患者に隔日で投与することが挙げられる。かかる投与計画では、タンパク質キナーゼ阻害剤を投与する隔日と糖質コルチコイドを投与する隔日とは異なっていてもよいが、同日に投与するほうが好ましい。さらにより望ましくは、同時発生的な治療に先立って、糖質コルチコイドを単独で一回投与する。もとより、本治療は所望の最終結果を達成するために所望の期間にわたって継続することができるが、繰り返すことも可能である。かかる結果には、前立腺癌進行の減弱、当該腫瘍の収縮、または望ましくは、すべての症候の緩解が含まれ得るが、いかなる程度の効果でも、本方法の首尾良いアプリケーションであると考慮する。本方法の効力を評価する好都合な方法は、患者体内の前立腺特異的抗原(PSA)濃度変化に注目する方法である。典型的には、かかる反応は、PSA値を約6週間にわたって測定することによって評価する。望ましくは、本方法によりアプリケーション後6週間でPSA値が少なくとも約50%減少し、より望ましくはPSA値が少なくとも約80%減少する。もとより最も望ましい成果は、PSA値がおよそ正常値まで下がることである。
【0048】
一般的合成法:
MPSフォーマットのキメラの一般的合成方法
以下の手順では、正常結合用HBTU/HOBT法を用いた、96ウェルプレート(MPSプレート)内、6μmolペプチド/ウェルのスケール、リンク(Rink)アミド樹脂上ペプチド合成を記述する。
1グラムのリンク(Rink)アミド(濃度0.6mmol/g)をNMP中で穏やかな揺動状態にて一晩膨潤させた。樹脂を96ウェルプレート(1ウェルにつき約10mg)に分注した。
各ウェルに対して、500μlの25%ピペリジン溶液をNMP中に加えることによってFmoc脱保護を行い、650rpmの回転数で15分間混合し、ピペリジン溶液を窒素の圧力によって除去し、別部分のピペリジン溶液を加えて15分間拘束した。Fmoc脱保護後及び結合後の樹脂の洗浄を、600μlのNMPを各ウェルに入れ、2分間混合し、m窒素圧力によってNMPを除去して行う。この洗浄手順を4回繰り返す。
【0049】
規則結合を、樹脂に対してFmoc保護アミノ酸(150μl、0.2M)溶液をHOBT/NMP中に加え、続いてHBTU溶液をDMF(150μl、0.2M)中に加え、DIEAをNMP(150μl、0.4M)中に加えることによって行う。反応容器のブロックを650rpmの回転数で1時間混合し、次いで窒素の圧力によって除去した。この手順を一回繰り返す。本構築に用いた最後のアミノ酸をN−Boc保護する。構築の終わりに、Pd(PPhe3)4(5%AcOH+02.5%NMMを含有するクロロホルム中0.2M)の500μl溶液を注入して1時間混合することによってアリル脱保護を行う(Glu(OAllyl)またはC−基礎単位)。この手順を一回繰り返す。アリル脱保護後の樹脂の洗浄を、600ulのクロロホルムの各ウェルへの添加、及び5分間の混合によって行う。本溶媒は窒素圧力によって除去する。この洗浄をさらに4回繰り返す。アリル保護リンカーのペプチド樹脂への結合を、アリル保護リンカー(150ul、0.2M、NMP中)を入れ、続いてPyBoP(0.2M、NMP中)及びDIEA(0.4m、NMP中)の添加によって行う。反応容器ブロックを1時間混合し、溶液を窒素の圧力によって除去する。この手順を一回繰り返す。結合後、樹脂を、500μlのNMPを各ウェルに添加することによって洗浄する。リンカーからのアリル除去を、上記に記載した同一手順に従って実行する。アリル脱保護後、イソキノリン誘導体(150μl、0.2M、NMP中)の溶液を追加し、続いてByBoP(150μl、0.2M、NMP中)及びDIEA(150μl、0.4M、NMP中)の添加を行う。反応ブロックを2時間混合する。
この結合後、樹脂の洗浄を、600μlのNMPを各ウェルに添加し、2分間混合することによって行う。本溶媒は窒素圧力によって除去する。この洗浄をさらに4回繰り返す。
【0050】
切断及び包括的脱保護を、樹脂を反応容器ブロックからディープウェルマイクロタイタープレート(切断プレート)に移行することによって行う。このプレートに、92.5%TFA、2.5%H2O、2.5%TIS、2.5%EDTの溶液を350μl追加する。該プレートを1000rpmで1時間混合し、次いでTFA溶液を蒸発させ乾燥する。
Sep−Pak(セップパック)による精製は、900μlの溶液(0.1%TFA、水中)+CH3CN 1:1中で樹脂の残基ペプチドを用いて溶解し、C−18Sep−Pak(セップパック)カートリッジを通すことによって行う。この手順をもう一度繰り返す。プレートを液体窒素中で少なくとも15分間凍結し、ペプチド凍結乾燥する。
【0051】
タンパク質キナーゼ活性阻害のための生物学的スクリーニングアッセイ:
(A)無細胞系(in vitro)におけるタンパク質キナーゼ阻害活性のためのアッセイ:
(A1)PKAのin vitroキナーゼ活性測定法
(1)PKA酵素をPromegaから購入した。PKA活性を7−merペプチド、LRRASLG、として知られているkemptideで測定する。測定を96ウェルプレート内で1ウェルにつき50μlの最終容量で実行する。反応混合物には、種々濃度の阻害剤、50mMのMOPS、10mMのMgAc、0.2mg/mlのBSA、10μMのATP、20μMのKemptide及び1μのCiγ32P ATPが含まれる。反応は、0.1mg/mlのBSA、0.4U/ウェル中に希釈したPKAの触媒サブユニットを15μl添加して開始する。酵素なしの2つの空ウェルをすべての測定に含める。プレートを30℃にて10分間連続的に攪拌する。反応を、12μlの200mMのEDTAを加えることによって停止する。測定混合物の20μl分割量を2cm2のホスホセルロース条片(たとえばWhatman P81)上に点滴し、75mMのリン酸(1サンプルにつき10ml)中に浸漬する。ホスホセルロース条片を6回洗浄する。洗浄を5分間の連続回旋で行う。最後洗浄をアセトン中で行う。条片を空気乾燥した後、シンチレーション分光によって放射を測定する。
【0052】
(2)PKA阻害化合物のスクリーニングを、以下にPKBのために記載したように、96ウェルプレート内でSPAビーズを用いて行ったが、以下の記載と異なる点は、酵素基質を5μMのビオチン標識された−kemptideペプチド(ビオチン−KLRRASLG)としたことである。キナーゼ緩衝液は、50mMのMOPS、pH7、0.2mg/mlのBSA、10mMのマグネシウムアセテートとした。0.1mg/mlのBSA中に希釈したPKA(0.4ユニット)を各ウェルに加えた。
【0053】
(A2)PKBのin vitroキナーゼ活性測定法
(1)PKB活性を、Alessiらの(FEBS Letters 399,333,1996)に記載のように測定したが、異なる点は、ビーズに結合したHA−PKB代わりに、ニッケルカラム上に沈殿後、可溶His−HA−PKBを使用したことである。酵素活性測定を、PKAのためのアッセイに記載のように行う。
(2)PKB阻害用化合物のスクリーニングを、96ウェルプレート内で、先に記載された方法に修正を加えた方法を用いて行った(KumarらのBBA,1526:257−268,2001)。キナーゼ反応を最終容量50μlで実行した。各ウェルには、キナーゼ緩衝液[50mMのTris−HCl pH7.5、10mMのMgCl2、1mMのDTT及び0.1mMのオルトバナジウム酸ナトリウム、0.01%トリトンX−100及び2%ジメチル(Me2SO)]中の2.5μMのビオチン標識された−Crosstideペプチド(ビオチン−KGRPRTSSFA)、His−PKB酵素及び潜在的阻害化合物を含有させた。反応は、10μlの2μM冷ATP及びキナーゼ緩衝液中の0.25μCiの[γ33P]−ATPを加えることによって開始した。gプレートを27℃にて1時間インキュベートした。インキュベーションの終わりに、200μlのPBSを含有する0.1%トリトンX−100、5mMのEDTA、1mMのATP及び0.3mg/mlのSPAビーズ(Amersham Pharmacia Biotech)によって反応を停止した。室温にて15分間のインキュベーション後、Packard GF/B 96ウェルプレートを用いて反応混合物をろ過した。プレートは、2MのNaCl及び1%オルトリン酸で2回洗浄し、続いてエタノール洗浄を行い1時間空気乾燥させた。マイクロプレートPackardトップカウントを用いて放射能を計数した。
【0054】
(A3)PKCのin vitroキナーゼアッセイ
PKCをPromegaから取得し、リン脂質の存在下および不在下で、同一製造者から取得したキットを用いて製造者の指示に従って測定を行った。リン脂質存在下活性からリン脂質不在下活性を減算することによってPKC活性を定量した。アッセイにおけるATP濃度は10μ(ATP=50μMに対するKm)であった。
【0055】
(B)無処置細胞におけるPKB活性阻害のためのアッセイ:
いくつかの癌細胞株を用いて無処置細胞におけるPKB阻害化合物の活性を定量した。ヒト前立腺癌腫細胞株、PC−3及びLNCaP。ヒト急性T細胞白血病細胞株、ジャーカット。ヒト乳癌腫細胞株:MCF−7及びMDA468及び腎アデノ癌腫細胞786−O。LNCaP、MDA468、786−O及びジャーカット細胞株は高い基礎レベルの活性化PKBを発現する。PC−3は中程度の活性化PKBを発現する。MCF−7は、レベルは低いが誘発性の活性化PKBを発現する。対照細胞を、PBL、正常ドナー(血液銀行)から取得した正常末梢血液リンパ球、及び抗腫瘍性の乳房細胞株であるMCF10Fとする。該対照細胞を使用して、タンパク質キナーゼ阻害剤の検査癌細胞及び正常細胞に及ぼす影響を比較検討する。
【0056】
(B1)アポトーシス検出のためのアッセイ:
酵素阻害アッセイにおいて活性であるペプチド複合体を、癌細胞株のアポトーシスの誘導に関して、細胞内で検査した。アポトーシスを、個々の細胞株において少なくとも2つの方法によってアッセイした。細胞を、異なる時点に対する阻害化合物による処置の有無にかかわらず、各方法に対して適切なプレートに播種し、下記方法のうちの1つによって解析した。
【0057】
(a)アネキシンV染色
このアッセイは、細胞膜上のホスファチジル(phosphotidyl)−セリン提示の初期事象を同定する。細胞を、アネキシンV(Bender medsystems)を用いてアポトーシスに対してアッセイした。細胞を6−ウェルプレート(0.3x106/ウェル)に播種し、阻害化合物を用いた治療後24時間、PBSで2回洗浄し、アネキシンV結合性緩衝液(10mMのHepes/NaOH pH7.4、140mMのNaCl及び2.5mMのCaCl2)中で再懸濁した。アネキシンVを1:40で希釈し、0.2nMのヨウ化プロピジウム(PI)と共に個々のサンプルに加えた。1サンプル毎に0.5x106細胞を採取し、FACS法によって解析した。
(b)カスパーゼ活性。
このアッセイはアポトーシスの極めて初期の事象を示す。カスパーゼ(1、8、9、5、7、3、6、4、及び2)活性を、阻害化合物を用いた治療後24時間、CaspaTagカスパーゼ活性キット(Intergene)を用いて、製造者の指示に従ってアッセイした。簡単に、106の懸濁細胞/サンプルを10μlの30X作動希釈液FAM−ペプチド−FMK−フルオレッセインで標識化し、1時間37℃にて5%CO2下でインキュベートした。サンプルを、1X作動希釈液、洗浄緩衝液で3時間洗浄し、細胞ペレットを700μlの同一緩衝液で再縣濁した。2μlの0.2nMヨウ化プロピジウム溶液を加え、カスパーゼ活性をFACS分析によって定量した。
【0058】
(c)DNA断片化測定。
DNA断片化は、アポトーシスカスケードにおける後発事象である。DNA断片化を、阻害化合物を用いた治療後72時間、in situ細胞死検出キット(Roche)を用いて、製造者の指示に従って測定した。簡単に、2x106の接着細胞/サンプルをトリプシン処理し、PBSで2回洗浄し、96ウェルプレート内に置換した。次いで、サンプルを室温にて1時間、PBS内の2%パラホルムアルデヒドを用いて固定し、PBSで洗浄し、氷上で2分間透過処理溶液で再懸濁した。細胞をPBSで2回洗浄し、1時間、37℃にて、標識溶液及びTdT酵素溶液を含有するTUNEL反応混合物を用いて標識化した。サンプルを再度PBSで洗浄し、FACS法によって解析した。
【0059】
(B2)成長阻害アッセイ:
酵素阻害アッセイにおいて活性であることが見出された選択ペプチド複合体を腫瘍細胞株の成長を阻害する能力に関してスクリーニングした。当初、50μMの濃度で阻害化合物のスクリーニングを行った。第1スクリーニングからの活性化合物を、そのIC50を定量するため、種々の濃度(50、25、12.5、6.25、3.125及び1.56μM)にてさらに検査した。成長阻害を、2つの方法:(A)メチレンブルーによる生存能力のある細胞の染色法、(B)3H−チミジンの組み込み法をそれぞれ用いて検査した。両方法の場合、検査化合物を加える前に、96ウェルプレート:LNCaP(1ウェルにつき5000細胞、72時間)、PC3(1ウェルにつき5000細胞、48時間)、ジャーカット(1ウェルにつき2500細胞、24時間)、MDA468(1ウェルにつき5000細胞、24時間)、及び786−O(1ウェルにつき1000細胞、24時間)内で細胞を育てた。本測定は、1〜6日間、3通りで行った。
【0060】
(a)メチレンブルーによる生存能力のある細胞の染色法:
細胞を0.5%グルタルアルデヒド(glutardialdehyde)によって固定し、続いて、1時間、ボラート緩衝液(Sigma社)中で1%メチレンブルーを用いて染色した。次いで、細胞を蒸留水で数回洗浄し、空気乾燥し、37℃にて1時間、0.1MのHClをに加えることによって色を抽出した。°ELISAリーダーにより、600nmにて光学密度を測定することによって色の強度の定量化を行った。
(b)3H−チミジンの組み込み法:
適時に、培養液中、5時間、1uciの3H−チミジン(5Ci/mmoleの在庫、Amersham)を100ulの培地を含有する各ウェルに加えた。インキュベーションの終わりに、細胞を、セルハーベスター(Packard、米国)を用いてPBSで数回洗浄し、数時間空気乾燥し、50μlのシンチレーション液を加えた。マイクロプレートカウンター:Packardトップカウントを用いて放射能を計数した。
Windows(登録商標)3.3、GraphPad Prismバージョン(GraphPad Software,San Diego,USA)の一部位競合モデルにおける非線形回帰を用いて、50パーセント阻害濃度(IC50)値を計算した。
【0061】
(B3)PKB及び下流基質リン酸化の阻害:
PKBの阻害剤として同定されたペプチド複合体を、いくつかのPBK下流基質のリン酸化を阻害する能力に関して細胞内でさらに検査した。基質GSK3は細胞代謝及び細胞サイクルと関連する。フォークヘッド(FKHR)は直接的にアポトーシスと関連する。また、これらのアッセイにおける阻害活性は、陽性化合物が細胞を透過することも示す。
細胞(2x106)を25cm2のフラスコに播種し、正常培地条件にて2日間増殖した。阻害化合物を24時間加え、それらのSer473残基でPKBリン酸化に及ぼす影響、およびPKB、GSK3及びFKHRの特定の基質のリン酸化に及ぼす影響を解析した。治療の終わりに、細胞を溶解緩衝液を用いて溶解した(20mMのTris−HCl、pH7.4、150mMのNaCl、0.5%トリトン−x100、25mMのNaF、2mMのAEBSF、1mMのオルトバナジウム酸ナトリウム、10mMのβ−グリセロリン酸(リン酸塩)、1μg/mlのアプロトニン及び5μg/mlのロイペプチン)。等分量の細胞タンパク質SDS−PAGEによって分解し、PVDF膜にエレクトロブロットした。Cell Signaling Technology社から取得したホスホ−Akt1(Ser473)、ホスホ−GSK3α(Ser21)及びリン光体−FKHR(Thr24)、及びAkt1(Upstate)、GSK3α(Transduction Laboratories)、及びFKHR(Cell Signaling Technology)に対する抗体を用いてウエスタンブロット分析を行った。
MCF−7細胞株を使用する際、阻害化合物の添加後10分間、50ng/mlのIGF−1(Sigma社)を用いて細胞を刺激し、IGF−1のみによって刺激した細胞と比較検討した。阻害化合物の効果を上記詳細のとおり分析した。
【0062】
(C)PKB阻害剤の効力を評価するためのin vivoモデル
急性及び慢性毒性の諸研究によって実験的に決定された化合物の適切な投与量を、腫瘍に対して、その成長のさまざまな段階で注入する。初期段階での注入は、腫瘍成長に対して複合作用を及ぼし、確立した腫瘍への注入は、その退行に影響を及ぼす。加えて、化合物を公知の化学療法薬剤と共に腫瘍に注入するような相乗研究を行い、アポトーシス増加につながるPKB阻害が原因で化学療法に対する感受性を増加した腫瘍から生じる相乗作用効果を評価する。
本化合物を、前立腺癌細胞株に由来する腫瘍異種移植片において、その腫瘍成長に及ぼす影響に関して試験する。
【0063】
(i)PC3細胞
(ii)LNCaP細胞
(iii)MDA468
(iiii)786−O
本研究は、2つの部分:最大耐量(MTD)の決定と、効力実験とに分かれている。
(C1) MTD決定
Balb/Cマウス(雄、生後4〜6週間、Harlan Co.Israel)を用いてMTDを決定した。
急性用MTDの決定:急性用MTDを決定するために、個々の化合物をさまざまな薬用量にてIV注入し、注入後マウスの急性的な臨床的症状の発現を24時間にわたって観察した。
【0064】
加えて、急性用及び慢性用MTDを決定した。第1ステップとして、1kgの体重につき、160、80、40、20及び10mgの薬用量でIP注入を一回づつ行った後、急性用MTDを決定した。慢性用MTDをさらに検査するため、マウスに連続3週間、毎日急性用MTDの50%、25%及び12.5%のIP注入を行った。マウスの全体的な健康状態を、治療期間中及び治療後さらに3週間にわたって毎日監視した。実験終了時点では、全解剖を行った。
【0065】
(C2) PC3腫瘍を有するマウスにおける有効性研究
(a)PC3細胞(5X106)を、雄ヌードマウス(Harlan Co.、Israel)のマトリゲルと臀部に皮下注入した。腫瘍サイズは、キャリパーによって測定し、(式):長さX(幅2)X0.4を用いて決定した。腫瘍を、体積が約50mm3になるまで成長させた後、治療を開始した。化合物の適切な投与量を腫瘍周辺部位(IT注入)に皮下注入した。治療は、週に3回、2週間にわたって隔日毎に与え、腫瘍サイズを2日置きに測定した。
(b)ヒト前立腺のPC−3癌細胞を生後5週間で約20gのBalb/c雄ヌードマウスの皮下に移植した。個々のマウスには、第1日目に2.5x106細胞が提供されるであろう。腹腔内(i.p.)治療は、腫瘍体積が約50mm3到達するときに開始する。i.p.投与は、予備試験において高度に満足できるものであり、血液及び肝臓の安定性、血液を介した腫瘍への分配を実証する。対照群は、1x10−2M滅菌生理食塩水中で媒体(10%DMSOと90%2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン)を用いて処理した。キャリパーによる腫瘍体積の測定値(方程式=長さx幅2x0.4)及び体重は、週3回(月曜日、水曜日及び金曜日)に記録する。マウスの全体的な健康状態は1日に2回監視する。それぞれの媒体による処置群の腫瘍質量が体重の約20%に達する時点、または、治療3週間後に処置群の腫瘍質量が体重の約20%に達しない場合には、マウスを屠殺する。実験終了時点には、個々の群において屠殺したマウスの最初の3匹の腫瘍を回収し、さらなる組織学的な検討のためにパラフィンブロック内に包埋する。残りの腫瘍を回収し、ウエスタンブロット分析用に液体窒素中で凍結する。
【0066】
以下の実施例は、本発明の製造方法及び使用方法を例示する目的で提供されるものであり、本発明を限定するものとして解釈されてはならない。これから本発明をその具体的な実施形態に関して説明するが、当業者であれば多くの修正形態及び変形形態を容易になし得ることは明らかである。従って、かかるすべての修正形態及び変形形態は本発明の特許請求の範囲の真の趣旨及び広義の範囲内に包含されるものとする。
【0067】
実施例1
ペプチド及びペプチド模倣物の複合体の設計及びスクリーニング
3つのペプチド及びペプチド模倣物を核分子として使用し、種々の複合体をベースとする数種類の修正形態を適用した。コアペプチドを、そのタンパク質キナーゼ阻害活性と共に以下の表に提示する。
【0068】
【表1】
【0069】
この実施例においてコアペプチドに対する結合に使用した細胞透過性部分は下記の通りである。
脂肪酸、ステロイド及びかさ高い芳香族または脂肪族の化合物などの疎水性部分。
ステロイド、ビタミン類及び糖類などの細胞膜受容体または担体を有することができる部分。
公知のトランスポーターペプチドまたはアミノ酸。
結果として生じたペプチド複合体をタンパク質キナーゼ活性の阻害に関して種々の無細胞及び細胞に基づくアッセイにおいて検査したが、そのスクリーニングの結果は、一部の修正形態が安定性及び細胞透過性を誘導し、その結果として8〜20μMの細胞活性を関連する細胞株:前立腺癌PC3及びLNCaP、T−細胞白血病ジャーカット、及び乳癌MCF−7において起こすことを示した。加えて、一部の新規複合体は、先に記載のキメラ化合物とは対照的に、PKAよりもPKBに対して10〜20倍選択的でもあった。
【0070】
疎水性部分の複合体ファミリーのうちでは、コレステロールが最善の結果を示したが、テストステロン及びリトコール酸などの他のステロイドは細胞活性をまったく示さなかった。また、脂肪酸複合体の細胞活性は、コレステロールPTR6164の12μMと比べてPTR6180の場合には、極めて低い値25〜50μMを示した。また、PTR6164は、膜受容体、または疎水性検討材料及び膜受容体/トランスポーターの組み合わせを介して透過することもできる。ビオチン及びフルオレッセイン(PTR6158及びPTR6182)などの他の疎水性複合体は、低細胞透過性を示した。
膜受容体またはトランスポーターを目的としたファミリーのうちでは、糖類が極めて低い細胞活性を示した。検査したいくつかのビタミン類は、細胞活性を有していなかったが、15〜20μMの細胞活性を示したビタミンE複合体はその例外である。
ペプチドトランスポーター複合体のうちでは、検査した96のすべての化合物は、in vitroキナーゼアッセイにおいて極めて活性であり、10〜50倍と極めて選択的であったが、細胞内ではほとんどの化合物は不活性であった。選択した6つの活性複合体は細胞内で8〜20μMの活性を示す。
【0071】
実施例2
PTR6154、PTR6184、PTR6180、PTR6244、及びPTR6252の合成
1グラムのリンク(Rink)アミドMBHA樹脂(0.64mmol/g)を焼結ガラス底部を装備する反応容器内のN−メチルピロリドン(NMP)中で膨潤させ、振盪機に載せた。すべてのFmoc保護群を、NMP中の20%ピペリジンとの反応(2回、15分間、各10ml)によって除去し、続いてNMP洗浄(5回、2分間、各15ml)を行った。Fmoc除去はニンヒドリン検査によって監視した。第1アミノ酸を、3当量のFmoc保護アミノ酸+3当量のPyBroP+6当量のDIEA(7mlのNMP中)を用いることによって反応時間1.5時間で樹脂に結合した、他のFmoc保護アミノ酸の結合を、NMP(7ml)中、3当量1.92mmol)のFmocアミノ酸+PyBrop(3当量、1.92mmol)+DIEA(6当量、3.84mmol)を用いて1時間室温にて実行した。反応完了は定性的ニンヒドリン検査(カイザーテスト)によって監視した。個々の結合後、ペプチド樹脂をNMPで洗浄した(5回、15mlのNMPを使用、各2分間)。
【0072】
構築終了時には、ペプチド樹脂をCH2Cl2で洗浄し、低圧力下で乾燥し、次いで、TFA 95%、水2.5%、TIS(トリ−イソプロピル−シラン)2.5%との、アルゴン雰囲気下、0(零)℃にて15分間、及び室温にて1.5時間の反応によって樹脂から切断した。混合物をろ過し、樹脂を小容量のTFAで洗浄した。濾液をロータリエバポレータに配置し、すべて揮発性成分を除去した。油状生成物を取得した。油状生成物をエーテルで倍散し、エーテル液で3回デカントした。白色粉末を取得した。この粗生成物を低圧力下で乾燥した。
【0073】
PTR6154:Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−NH2(配列番号:7)
【0074】
【化1】
【0075】
PTR6184:Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Ala−Hol−NH2(配列番号:9)
【0076】
【化2】
【0077】
PTR6180:ミリスチル−Gly−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−NH2(配列番号:28)
【0078】
【化3】
【0079】
PTR6244:ビタミンEスクシナート−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−NH2(配列番号:25)
【0080】
【化4】
【0081】
PTR6252:(DArg)9−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Ala−Hol−NH2(配列番号:26)
【0082】
【化5】
【0083】
実施例3
PTR6260の合成
500mgのリンク(Rink)アミドMBHA樹脂(0.64mmol/g)を、焼結ガラス底部を装備するリアクター内で1.5時間NMP中で膨潤させ、振盪機に取り付けた。Fmocを、NMP(4ml)中25%ピペリジンを2回15分間用いて樹脂から分離し、続いてNMP(5ml)で各2分間の慎重な洗浄を7回行った。Phe、Ser、Glu、Orn、Arg、Pro、Argの構築を、Fmoc−Phe−OH、Fmoc−Ser(t−Bu)−OH、Fmoc−Glu(OAllyl)−OH、Fmoc−Orn(Boc)−OH、Fmoc−Arg(Pbf)−OH、及びFmoc−Pro−OHのそれぞれを用いて結合サイクルによって達成した。個々の結合サイクルでは、アミノ酸(3当量)をNMP中に溶解し、PyBroP(3当量)及びDIEA(6当量)を用いて活性化した。ポジション4にてFmoc−Arg(Pbf)−OHの結合後、アリル脱保護を、5%AcOH及び2.5%NMMを含有するCH2Cl2溶液中のPd(PPh3)4を用いて行った。遊離酸を、NMP中3当量のPyBoP、6当量のDIEAによって活性化し、3当量のエチレンジアミンスルホンアミドイソキノリンと1時間結合した。結合後、ペプチド樹脂をNMPで洗浄し、次いでFmocを除去し、続いてFmoc−Pro−OHとFmoc−Arg(Pbf)−OHとの結合を行った。コレステロールのN−末端Argへの結合を、ジオキサン:1、コレステロール(5当量)+BTC(1.66当量)+コリジン(15当量)を含有する3−ジクロロプロパン1:2の溶液を15ml加えることによって実行した。結合時間は1.5時間であった。
【0084】
合成の終わりに、アルゴン雰囲気下、0(零)℃にて15分間、次いで室温にて1時間、総容量10mlの反応混液混合物中で70%TFA、7%TIS及び23%CH2Cl2を用いてペプチドを樹脂から切断した。抽出フィルターを介して溶液をポリプロピレンチューブ内にろ過し、CH2Cl2中70%TFAの溶液5mlを用いて樹脂を洗浄した。結合溶液を蒸発させて油状残基を得、該油状残基を冷Et2Oによる処理を行って凝固させる。真空下、一晩にわたる白色固体のEt2O層の遠心分離及びデカンテーション、及び冷Et2Oの追加部分による処理、それに続く遠心分離、デカンテーション及び乾燥を行うことによって以下の構造を有するPTR6260を示した粗材料を得た。
【0085】
PTR 6260:コレステリル−O−CO−Arg−Pro−Arg−Orn−Glu(アミノエチルスルホンアミドイソキノリン)−Ser−Phe−NH2(配列番号:27)
【0086】
【化6】
【0087】
実施例4
コレステロールに結合したペプチドの合成
1グラムのリンク(Rink)アミドMBHA樹脂(0.64mmol/g)を焼結ガラス底部を装備する反応容器内のN−メチルピロリドン(NMP)中で膨潤させ、振盪機に載せた。すべてのFmoc保護群を、NMP中の20%ピペリジンとの反応(2回、15分間、各10ml)によって除去し、続いてNMP洗浄(5回、2分間、各15ml)を行った。Fmoc除去はニンヒドリン検査によって監視した。第1アミノ酸を、3当量のFmoc保護アミノ酸+3当量のPyBroP+6当量のDIEA(7mlのNMP中)を用いることによって反応時間1.5時間で樹脂に結合した、他のFmoc保護アミノ酸の結合を、NMP(7ml)中、3当量1.92mmol)のFmocアミノ酸+PyBrop(3当量、1.92mmol)+DIEA(6当量、3.84mmol)を用いて1時間室温にて実行した。反応完了は定性的ニンヒドリン検査(カイザーテスト)によって監視した。個々の結合後、ペプチド樹脂をNMPで洗浄した(5回、15mlのNMPを使用、各2分間)。コレステロールのN−末端Argへの結合を、ジオキサン:1、コレステロール(5当量)+BTC(1.66当量)+コリジン(15当量)を含有する3−ジクロロプロパン1:2の溶液を15ml加えることによって実行した。結合時間は1.5時間であった。
【0088】
構築終了時では、ペプチド樹脂をCH2Cl2で洗浄し、低圧力下で乾燥し、次いで、TFA 70%、水、TIS(トリ−イソプロピル−シラン)7%、CH2Cl223%との、アルゴン雰囲気下、0(零)℃にて10分間、及び室温にて50分の反応によって樹脂から切断した。混合物をろ過し、CH2Cl2中の小容量の70%TFAで樹脂を洗浄した。濾液をロータリエバポレータに配置し、すべて揮発性成分を除去した。油状生成物を取得した。油状生成物をエーテルで倍散し、エーテル液で3回デカントした。白色粉末を取得した。この粗生成物を低圧力下で乾燥した。
【0089】
PTR6164:コレステリル−O−CO−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−NH2(配列番号:22)
【0090】
【化7】
【0091】
PTR6196:コレステリル−O−CO−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Ala−Hol−NH2(配列番号:23)
【0092】
【化8】
【0093】
PTR6198:コレステリル−O−CO−Gly−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Ala−Hol−NH2(配列番号:24)
【0094】
【化9】
【0095】
実施例5
トランスポーターペプチドに結合したペプチド
表2では、トランスポーターペプチドを含むペプチド複合体のスクリーニングを記述する。細胞内でも活性であったペプチドには斜線を施した。
【0096】
【表2−01】
【表2−02】
【0097】
表3には、選択したトランスポータープレート60025からの最も活性であるペプチドのIC50(μM)値を示す。上記のアッセイB2に従って成長阻害を測定した。上記のアッセイA2、LNCaP細胞におけるPKBのin vitroキナーゼ活性測定法に従って、in vitroのPKB阻害を測定した。
【0098】
【表3】
【0099】
実施例6
ペプチド複合体の活性
選択した最も活性であるペプチド複合体の活性及び選択性を表4に提示する。
【表4】
【0100】
癌細胞における細胞死を引き起こす化合物の能力を判定するこれら化合物の成長阻害曲線を下記の図1〜図3に提示する。
図1には、PTR6164及びPTR6244による治療後のPC3細胞の生存性を描写し、図2には、PTR6180、PTR6198及びPTR6244による治療後のLNCaP細胞の生存性を記述し、図3には、PTR6252、PTR6260及びPTR6244による治療後のLNCaP細胞の責務を示す。
記載の高阻害活性は、本化合物には、効果的な抗癌薬物としての化合物の評価において重要な、腫瘍における細胞死または成長停止を誘導することに効率的であることを示す。
表5では、細胞内で不活性な選択ペプチド複合体を提示する。
【0101】
【表5】
【0102】
実施例7
細胞内におけるペプチド複合体の阻害活性のさらなる評価
下流基質リン酸化アッセイは、PKB経路において阻害剤が作用しているかどうかを評価することを目的とする。いくつかのタンパク質をリン酸化するPKBは、細胞サイクル、細胞代謝及びアポトーシス、及び細胞内の酵素阻害に関与する結果、その基質のリン酸化を低下させる。これらの諸研究では、GSK3(細胞代謝と関連する)及びFKHR(フォークヘッド、アポトーシスと直接的に関連する)のリン酸化を検討した。その結果は、癌細胞の本発明に係る選択ペプチド複合体への暴露によって生じるこれら基質のリン酸化における著しい減少を示す。
PKBは、癌細胞のアポトーシスにおいて中心的な役割を演じる。PKBは、癌細胞によるプログラム細胞死を防止する「生存シグナル」を送信する。よって、該阻害は、アポトーシスを介した細胞死を引き起こす。アポトーシスアッセイは、本PKB阻害剤と接触する癌細胞がプログラム細胞死の結果として死滅することの確定を目的とする。これは、阻害剤の効果は単なる細胞毒性ではなく、PKBの阻害によって誘導されるアポトーシスプロセスであることを意味する。アポトーシスは複雑なプロセスなので、さまざまなステップを標的にする下記の3つのアッセイを使用する。それらおnアッセイは、(1)極めて初期のアポトーシス事象における種々のカスパーゼの活性を測定するカスパーゼ活性アッセイ。(2)より高度な事象において細胞膜上に存在する特定化合物を染色するアネキシンV染色。及び(3)アポトーシスプロセスにおいて後発的に起こるDNA断片化。その結果は、選択した阻害剤が少なくとも2つの異なるアポトーシスアッセイにおいて効果を有することを示す。
図4では、LNCaP細胞におけるAKT(S473)及びGSK3(S9/21)リン酸化の同定を開示する。細胞を30μMのPTR6164、PTR6196または10uMのPTR6072で24時間処理し、ウエスタンブロット分析法によってリン酸化を測定した。
【0103】
表6では、DNA断片化をLNCaP細胞内のアポトーシスのマーカー及びジャーカット細胞内のカスパーゼ活性として示し、LNCaP細胞を30μMのPTR6198、PTR6196、PTR6164またはPTR6244で72時間処理した。ジャーカット細胞を15μMのPTR6198、PTR6196、PTR6164または25μMのPTR6244で24時間処理した。アポトーシスは、材料および方法において詳細したように、LNCaP細胞内のDNA断片化測定及びジャーカットにおけるカスパーゼ活性のFACS分析によって測定した。
【0104】
【表6】
【0105】
実施例8
PKBの細胞透過性および血清安定性の阻害剤としてのPTR6164のさらなる特徴付け
ここで活性なPKB阻害剤として発見したPTR6164は、いくつかの追加アッセイにおいてさらに特徴づけられている。最近明らかになったのは、この化合物が強力で選択的な血清安定性を持つ細胞透過性PKB阻害剤であって、抗癌薬物のさらなる開発に有望な候補であるという事実である。この化合物は、癌細胞内の細胞死、3つの異なるアッセイにおいてアポトーシスを誘導し、減少GSK3及びFKHRのリン酸化を減少する。
図5には、37℃でのマウス血漿中におけるPTR−6164のバイオスタビリティーの結果を示す。0.5mgのPTR6164を50μlのDMSO中に溶解し、水で450倍希釈した。10μlのこの溶液を、さまざまな時間に、各3通りに、90μlのマウス(Balb C)血漿に加え、37℃でインキュベーションした。インキュベーション後、サンプルを一晩凍結した。ペプチド量を、水で5倍に希釈した後の血漿から直接的にHPLC−MSによって決定した。個々のサンプルを以下の仕様を用いて2回注入した。
【0106】
カラム:pep85C18Zobrax 2.1*50mm
溶出剤:MeCN:水(+0.1%TFA)8:2、2.1分のRTでペプチド出現。
検出器:SRM、MS、スプリットレスモード。
実行時間:6分間。
図6には、アネキシンV染色を用いてジャーカット細胞内に誘導したアポトーシスを示す。細胞を12.5μMまたは25μMのPTR6164で12及び24時間処理し、及び時間/用量依存性アポトーシスをアネキシンV染色及びFACS分析によって測定した。
【0107】
実施例9
正常血球と対比した癌細胞内の本PKB阻害剤によって誘導された細胞成長阻害
阻害剤の安全性を評価するするために、誘導された癌(前立腺LNCaP系)細胞死を誘導された正常血球死と比較した。第7図において、PTR6164(A)及びPTR6260(B)を結合するペプチドは7〜11μMで癌細胞の死を引き起こすが、正常細胞に対しては50μMを超えても安全であることが観察されるであろう。逆に、小分子(PTR6074)は、正常細胞に対する場合と比べると癌細胞に対して3倍の毒性を持つ。
【0108】
実施例10
インビトロ研究
鉛化合物PTR6164をはじめとする選択した活性複合体を、使用上の最大耐量(MTD)を決定するために上記のアッセイ(C1)で検査した。PTR6164に対して見出されたMTD値は、極めて安全な値と考慮される130mg/kg以上であった。PTR6164の高安全性によって、極めて大きな治療濃度域が可能になる。複合体をさらに、上記(C2)で記載したように有効性研究においてin vivoで下記の通り検査した。
ペプチドを隔日毎に腫瘍領域に注入した。3注入後、腫瘍サイズ低減の指標傾向を観察した。第2週間で、低減は継続し、高投与量のPTR6164によって処置した群では、5匹の動物のうちの4匹は、第8図に記載のように腫瘍の完全退行を示した。ペプチド投与量は3.3mg/kgではあったが、この化合物のMTDは40倍高く、高い治療指数を指摘する。
MTDが0.5及び0.25である、2つの濃度66mg/kg及び33mg/kgを検査した。比較的に高い用量を選択したが、その理由は、本発明者等には前もって本化合物の薬物動態学に関する認識がなく、高用量の結果として毒性効果は期待されたものの、最大効果を得ることを望んだからである。
化合物を生理食塩水中10%DMSO/90%シクロデキストリンの溶液中に溶解した。各9匹のマウスからなる6群を検査した。2群には化合物を48時間毎にi.v.注入し、2群には動化合物を毎日i.p.注入した。治療は、移植後7日目に開始し、21日間を継続し、続いて14日間の観察期間をおいた。実験は、表7のように4つの実験群からなる。
【0109】
【表7】
【0110】
結果は、48時間毎に注入を受けた群が腫瘍サイズへの影響を表さないことを示した。しかし、毎日注入を受けた群は、腫瘍成長の著しい阻害を示した。興味深いことには、66mg/kg及び33mg/kgの両投与は同一の効果を示し、効力を失うことなしに濃度をさらに低下できる可能性があることを暗示した。最も重要なことは、実験により、化合物を血流を介して腫瘍に効果的に分配し得ることが証明された。これはペプチドベースの薬物にとって極めて重要な観察である。図9には、2つの異なるi.p.処置群の対照動物及び処置動物における腫瘍サイズのグラフを描写し、図10には、PTR6164の、異種移植片を有するヌードマウスPC3からの染色された腫瘍切片におけるアポトーシス及び有糸分裂への影響を記述する。阻害剤の効果が、腫瘍病原力に関わらず極めて著しいことは明白である。この化合物の予備試験は、6164の一般構造体を持つペプチドベースの化合物を全身的に効率的かつ効果的に投与できることを証明した。
【0111】
実施例11
PTR6164の最適化
最適化プロセスをプロトタイプ化合物PTR6164に対して行い、PTR6164の一般構造体を有する新規化合物を、構造上のペプチド模倣修飾と共に、タンパク質キナーゼ活性阻害向けに合成及びスクリーニングした。配列及び活性結果を表8に提示する。驚いたことに、Lys2−4のPTR6164への添加が、化合物のin vitro活性に寄与することが見出された。具体的には、わずかな量の新規化合物が、すべての細胞アッセイにおいてPTR6164よりも約5倍強力であり、著しくより選択的であることが判明した。
【0112】
【表8−01】
【表8−02】
【表8−03】
【表8−04】
【0113】
活性が癌細胞内で観察されたが正常細胞では観察されないとき(PBLs IC50/LNCaPIC50>5)、及びPKB阻害活性が0.5μM以上であり、PKA阻害活性が少なくとも3倍低いときには化合物を活性であると考慮した(表で斜線背景)。
【0114】
実施例12
PTR6320:コレステリル−O−CO−(DLys)3−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−NH2(配列番号:10)の合成
1グラムのリンク(Rink)アミドMBHA樹脂(0.64mmol/g)を焼結ガラス底部を装備する反応容器内のN−メチルピロリドン(NMP)で3時間膨潤させ、振盪機に載せた。すべてのFmoc保護群をNMP中の25%ピペリジンとの反応(2回、15分間、各10ml)によって除去し、続いてNMP洗浄(5回、2分間、各15ml)を行った。Fmoc除去はニンヒドリン検査によって監視した。第1アミノ酸を、3当量のFmoc保護アミノ酸(Fmoc−Hol−OH)+3当量のPyBroP+6当量のDIEA(7mlのNMP中)を用いることによって反応時間1.5時間で樹脂に結合した、他のFmoc保護アミノ酸[Fmoc−Dap(Boc)−OH、Fmoc−Tyr(tBu)−OH、Fmoc−Nva−OH、Fmoc−Arg(Pbf)−OH及びFmoc−DLys(Boc)−OH]の結合を、3当量(1.92mmol)のFmocアミノ酸+PyBrop(3当量、1.92mmol)+DIEA(6当量、3.84mmol)、NMP中(7ml)室温にて1時間(または別法として、DMF中、3当量のFmoc−AA−OH+3当量のHOBT+3当量のDICを用いて室温にて1時間)を用いて実行した。反応完了は定性的ニンヒドリン検査(カイザーテスト)によって監視した。個々の結合後、ペプチド樹脂をNMPで洗浄した(5回、15mlのNMPを使用、各2分間)。コレステロールのN−末端DLysへの結合を、ジオキサンとコレステロール(5当量)+BTC(1.66当量)+コリジン(15当量)を含有する1、3−ジクロロプロパンとの混合率が1:1の溶液を15ml加えることによって実行した。結合時間は60℃にて1.5時間であった。
【0115】
構築終了時には、ペプチド樹脂をCH2Cl2で洗浄し、低圧力下で乾燥し、次いで7%TIS(トリ−イソプロピル−シラン)、23%CH2Cl2を含有する25mlのTFA溶液を用いて、アルゴン雰囲気下、0(零)℃にて10分間及び、室温にて1時間の反応によって樹脂から切断した。混合物をろ過し、CH2Cl2中の小容量の70%TFAで樹脂を洗浄した。濾液をロータリエバポレータに配置し、すべて揮発性成分を除去した。油状生成物を取得した。油状生成物をエーテルで倍散し、エーテル液で3回デカントした。白色粉末を取得した。この粗生成物を低圧力下で乾燥した(粗ペプチドの65%収率)。
【0116】
実施例13
PTR6320及びPTR6344の付加的特徴付け
一連のin vitroアッセイでは、PTR6320及びPTR6344が前立腺癌細胞株において1−2μMで細胞死及びアポトーシスを誘導するが、正常細胞に対しては40μMでも安全であることが見出された。また、新規化合物は、3μMで癌細胞におけるアポトーシス誘導し、3〜5μMでウエスタンブロット法によるPKB下流基質の阻害を示す。図11には、タンパク質キナーゼA活性と対比したタンパク質キナーゼBの阻害において、PTR6164よりも改良されたPTR6320のin vitro選択性(約20倍)を示す。表9には、正常通常と対比した前立腺癌細胞株における、タンパク質キナーゼ阻害剤によって誘導された細胞死を表す。誘導される細胞死の規模は、図12に記載のように種々の細胞における活性化PKBの値と直接的に相関する。最適化された鉛化合物PTR6320及びPTR6344は、プロトタイプ分子PTR6164と比較して5倍優れた効力とより改良された選択性を示す。表9に記載のように、そのレベルは、本阻害剤によって誘導される細胞死の規模と直接的に相関する。
【0117】
【表9】
【0118】
表10では、ヒト乳房アデノ癌腫細胞株MDA−468及びヒト腎細胞株786−Oにおける、PTR6164及びその最適化された化合物のIC50値を記述する。
【0119】
【表10】
【0120】
図13には、PTR6164、PTR6320及びPTR6344で処理したLNCaP細胞におけるAKT及びFKHRリン酸化のウエスタンブロット分析を記述する。第14図には、PTR6164及びPTR6320で処理した786−O(A)細胞及びMDA468(B)細胞におけるAKT及びFKHRリン酸化のウエスタンブロット分析を記述し、第15図では、カスパーゼ活性によって測定したPTR6164及びPTR6320による前立腺癌細胞(LNCaP)におけるアポトーシスの誘導を示す。
加えて、PTR6320の肝癌腫細胞におけるin vitro代謝をLC−MSによって分析した。結果は、1時間後の初期の薬物代謝及び24時間後の進行した薬物代謝を示す。Hep G2細胞を30uMのPTR6320で6時間インキュベートし、ペプチドを細胞の上澄み及びペレットから抽出した。サンプルを、MS ESI検出器をスプリットレスモードで使用して、溶出剤中のpep 24C18Vydac 1.0*150mmカラム、MeCNと水(+0.1%TFA)の勾配を用いてLC−MSによって解析した。結果は、6時間後、ペプチドのC末端からのdes Tyr−Dap−HolであるPTR6320の1主要代謝物と共に依然としてかなりの量の非分解性ペプチドが存在することを示す。これは、肝細胞におけるPTR6320の緩慢な劣化を示し、効率的な分配のため、ペプチドをシステムに十分な時間保持することができることを暗示する。
未処置動物(33mg/kgのPTR6164を用いたi.p.治療)と対比した処置動物からの腫瘍切片におけるアポトーシス及び有糸分裂の結果を表11に提示する。
個々の群からの3つの腫瘍を検討した結果、PKBの阻害を介してアポトーシスの誘導を暗示する処理腫瘍におけるアポトーシス増加の明らかな傾向を認めた。腫瘍を、長期間的な効果を検討するために一切の処置を施さない14日間の観察期間後に回収した。腫瘍切片での有糸分裂に対するアポトーシスの比率は腫瘍生存性を表現する。生存能力のある組織では有糸分裂プロセスが優性であり、アポトーシスは劣性であるが、瀕死の組織ではこの関係は逆となる。腫瘍成長において退行が見られるときは、処理マウスの腫瘍において見られるように、有糸分裂細胞よりもアポトーシス細胞の数が多い。
【0121】
【表11】
【0122】
実施例14
PTR6320及び他の化学療法薬の組み合わせを用いた治療
使用した化学療法薬は、ミトキサントロンヒドロ塩化物(Novantrone,Wyeth Lederle S.p.A.Catania、Italy)であり、3.8mMの滅菌水の溶液として供給された。ドキソルビシン、エトポシド及びビンブラスチン硫酸塩(Sigma社)を100%DMSOに溶解して10mMの濃度で保存溶液を調製した。ポリソルバート80中、11.6mMのドセタキセル(Taxpter、Aventis)保存溶液。インビトロ研究に使用する直前に、これらの薬剤を培地中で希釈した。
上記のように、6つの濃度の化学治療用薬剤の存在下で、PTR6320の有無にかかわらず、成長阻害アッセイを行った(そのIC50値の上下で)。本薬物の存在下で、細胞を5日間インキュベートし、続いてメチレンブルーによる細胞の固定及び染色を行った。上記のように、各化学療法薬単独の場合及びPTR6320の存在下でのIC50値を算出した。
【0123】
前立腺癌細胞株の細胞死における相乗作用効果を、治療本発明のタンパク質キナーゼ阻害剤といくつかの市販化学療法薬剤との組み合わせを用いて図16A〜図16Eに示す。1.5μMのPTR6320と組み合わせたときには、個々の薬物のIC50において10〜10倍の改善が認められる。その結果を表12に要約した。
【0124】
【表12】
【0125】
本発明を特定の好適な実施形態及び実施例に関して説明したが、当業者ならば、本発明のペプチド及び類似体の活性を最適化するために多くの変形形態及び修正形態行い得ることは理解されるであろう。これらの実施例は、非制限的であり、開示した本発明の原理および以下に記載の特許請求の範囲によって規定する範囲を例示するためのものであることを解釈されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】成長阻害アッセイで測定したPTR6164及びPTR6244による治療後のPC3細胞の生存性。
【図2】成長阻害アッセイで測定したPTR6180、PTR6198及びPTR6244による治療後のLNCaP細胞の生存性。
【図3】成長阻害アッセイで測定したPTR6252、PTR6260及びPTR6244による治療後のLNCaP細胞の生存性。
【図4】PTR6072、PTR6196及びPTR6164で処理したLNCaP細胞におけるAKT(S473)及びGSK3(S9/21)リン酸化のウエスタンブロット分析。
【図5】HPLCで測定した血漿中PTR6164のバイオスタビリティー。
【図6】アネキシンV染色及びFACS分析を用いて測定した、PTR6164によってジャーカット細胞内に誘導されたアポトーシス。
【図7】正常血球内と対比した癌細胞内におけるPKB阻害剤、PTR6164(A)及びPTR6260(B)によって誘導された細胞成長阻害。
【図8】PTR6164のくも膜下腔内(i.t.)投与を用いた、PC3腫瘍異種移植片のマウスにおけるインビボ検査の効力。
【図9】マウス内の前立腺癌異種移植片の成長に対するPTR6164の全身(腹腔内(i.p.))投与の影響。
【図10】ヌードマウス内で成長するPC3腫瘍及び染色された腫瘍切片内におけるアポトーシス及び有糸分裂に対するPTR6164を用いた治療の影響。
【図11】タンパク質キナーゼB活性と対比したタンパク質キナーゼAの阻害におけるPTR6164に比べたPTR6320のin vitro選択性。
【図12】正常細胞と対比した前立腺癌細胞株におけるPTR6320によって誘導された細胞死。
【図13】PTR6164、PTR6320及びPTR6344で処理したLNCaP細胞におけるAKT及びFKHRリン酸化のウエスタンブロット分析。
【図14】PTR6164及びPTR6320で処理した786−O(A)細胞及びMDA468(B)細胞におけるAKT及びFKHRリン酸化のウエスタンブロット分析。
【図15】PTR6164及びPTR6320によって前立腺癌細胞株(LNCaP)において誘導された、カスパーゼ活性による前立腺癌細胞におけるアポトーシスの誘導。
【図16】タンパク質キナーゼ阻害剤と公知の化学療法薬剤との併用治療を用いた治療後の前立腺癌細胞株の細胞死。
【技術分野】
【0001】
本発明は、選択的タンパク質キナーゼ阻害剤として細胞透過性増強部分及びペプチドまたはペプチド模倣物を含む細胞透過性のある安定した複合体に関するものであって、かつそれらを含有する医薬品組成物、ならびにかかる複合分子の調製及び使用のためのプロセスに関するものでもある。
【背景技術】
【0002】
タンパク質キナーゼはシグナル伝達経路に関与し、正常条件及び病理学的条件の両条件下で成長因子、ホルモン及び他の細胞調節分子を細胞の成長、生存及び代謝に結び付けるものである。タンパク質キナーゼのスーパーファミリーには、タンパク質キナーゼA及びタンパク質キナーゼC、ならびにごく最近になって発見されたタンパク質キナーゼB(PKB)も含まれる。
PKBは抗アポトーシス性のタンパク質キナーゼであり、その活性はヒト悪性腫瘍において強く上昇する。PKBは当初、ラットT−細胞白血病におけるウィルスの発癌遺伝子v−Aktとして発見されたものであるが、PKB/c−Aktが細胞質であるのに対して、v−Aktは細胞酵素PKB/c−Aktの発癌バージョンであり、略ウィルス群に特異的な抗原gag(コア蛋白遺伝子)が完全長Akt−1にインフレームで融合され、膜接合されていることを特徴とするということは後に確立された。AktのシーケンシングによりPKA(およそ75%)及びPKCアイソザイム(およそ50%)に対する高度の相同性が明らかにされ、その事実のためにPKBと命名されることになった。
【0003】
PKB活性化には、2つのアミノ酸残基:Ser473及びThr308のリン酸化が関与する。該酵素は、PI’−3−キナーゼによって産生される第2メッセンジャーPIP3によって活性化される。PIP3は、PKBのプレクストリン相同(PH)ドメインに対して結合し、該ドメインを膜に漸加し、該膜においてリン酸化されて活性型に変換する。PKB活性化はPI’−3−キナーゼ依存性であるので、IGF−1受容体、EGF受容体、PDGF受容体、pp60c−Src等の特定タンパク質チロシンキナーゼの持続的な活性化は、実に多くの腫瘍において見られる現象であるPKBの持続的な活性化につながる。また、腫瘍抑制因子PTENに対する遺伝子コーディングの欠失は、PTENがこの酵素の負の制御因子であるため、PKB/cAktの持続的な活性化も誘導する。また、PKBは、15%の卵巣癌、12%の膵臓癌及び3%の乳癌において過剰発現し、細胞をアポトーシスから保護する生存シグナルを作り出して化学療法耐性に寄与することが明らかにされている。
【0004】
PKBは、アポトーシス、増殖、分化及び代謝をはじめとする広範かつ多岐の細胞プロセスの極めて重大な制御因子として出現した。現在、正常なPKB/Aktのシグナル伝達の破壊は、いくつかのヒト癌における頻繁な事象として記録されており、該酵素がその進行において重要な役割を演ずるように思われる(Nicholson and Anderson,Cellular Signalling 14,381,2002)。
PKBのこれら分子特性及び腫瘍形成におけるその中心的な役割は、このタンパク質キナーゼが新規抗癌薬剤用の魅力ある標的であり得ることを意味する。理想的には、PKBを阻害する薬物は、細胞周期停止とアポトーシス促進の両方を引き起こさなくてはならない。かかる活性は、結果としてPKBが増幅される腫瘍組織における細胞死の増加を生じ、化学療法薬剤耐性を低下させる。
前立腺癌は、男性において最も高い頻度で診断される癌であり、米国では年間の41,000人の死亡原因となっている(Parker,S.L.,らの1996,CA Cancer J.Clin.,65:5−27)。初期段階では、臓器限局の前立腺癌は、患者が無関係の原因から死亡するまで、多くの場合外科術または放射療法によって管理される。
【0005】
ホルモン不応性前立腺癌(HRPC)は非根治的な癌型であり、米国男性では第二番目の癌による死亡原因となっている.化学療法耐性とPKBの活性化との間の直接的な相関関係はいくつかの前立腺癌細胞株及びヒト腫瘍性組織において示されており、前立腺腫瘍組織におけるPKBレベルの上昇は臨床的にHRPCと関連する(Yongdeらの2003,Int.J.Cancer:107,676−680)。前立腺癌患者におけるPKBレベルのGleasonパターンとPSA(前立腺特有抗原)レベルとの高い相関性は、この型の癌におけるPKBの重要な役割を示すものである。
Hill MM,及びHemmings BA,(Pharmacol Ther.2002,93,243−51,2002)は、卵巣、乳房及び膵臓など他の腫瘍におけるPBKの介入を記述している。
強力なタンパク質キナーゼ阻害剤には通常、基質のペプチド構造あるいはATPの模倣物に基づいた基質の模倣物が含まれる必要がある。
Hidaka H.らの(Biochemistry、32,5036,1984)は、サイクリックヌクレオチド依存型タンパク質キナーゼ(PKA及びPKG)及びタンパク質キナーゼC(PKC)に対して阻害活性を有する別型のイソキノリンスルホンアミドを記述している。イソキノリンスルホニルの付加的誘導体はHidakaによって、欧州特許第109023号、米国特許第4456757号、米国特許第4525589号、及び米国特許第4560755号に開示されている。
国際公開番号WO93/13072では、5−イソキノリンスルホンアミド誘導体が薬剤を阻害するタンパク質キナーゼとして開示されている。国際公開番号WO98/53050では、セリン/トレオニンキナーゼの活性を制御調節するセリン/トレオニンキナーゼのHJループに由来する短いペプチドが開示されている。
【0006】
PKBによる効率的なリン酸化の最小共通配列は、Alessiらによって見出されている(Fed.Eur.Biochem.Soc.,399,333,1996)。これは、基質配列Arg−Pro−Arg−Thr−Ser−Ser−Phe(配列番号:1)を有する最も活性なペプチドを持つ7−merモチーフである。国際公開番号WO97/22360では、PKB活性を測定する基質として有用な7−アミノ酸長を有する特定のPKB基質ペプチドが開示されている。
Obataらの(J.Biol.Chem.,17,36108,2000)では、PKB基質の最適なアミノ酸配列を決定するための、指向性ペプチドライブラリー手法の使用が記載されている。同定されたすべての基質は、配列Arg−Xaa−Arg−Xaa−Saa−Ser/Thrを有する既知のモチーフを含んでいた。
Ricouartらの(J.Med.Chem.1991,34,73−78)には、PKAを阻害するためのイソキノリンスルホンアミド及びペプチド複合体が記載されている。Loogらの(Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters 1999,9,1447−1452)にはPKA及びPKC阻害用のアデノシン及びペプチドを有するキメラが記載されているが、その開示された化合物を用いて得られる阻害は極めて不十分なものである。Schlitzerらの(Bioorganic and Medicinal Chemistry,2000,1991−2006)では、基質のペプチド部を置換することを意図する非ペプチドの長鎖部分に連結する小分子を論じているが、その開示された化合物は不十分な阻害活性を示す。
【0007】
Parangらの(Nature Structural Biology 8,37,2001)には、ATPがタンパク質キナーゼペプチド基質に結合することを特徴とするタンパク質キナーゼA阻害剤のペプチドATP二基質類似体が記載されているが、このアプローチにもやはり、最適以下の薬物動態学特性制限がある。WO01/70770には、インスリン受容体チロシンキナーゼのための二基質阻害剤、及び2炭素スペーサーを介してペプチド基質類似体に結合するATP−γ−Sを含む特定の強力かつ選択的阻害剤が開示されている。
本発明者等及び同僚の一人による国際公開番号WO01/91754は、PKB阻害剤である特定のイソキノリン誘導体に関するものである。
本発明の出願人は、WO03/010281において、ペプチドまたはペプチド模倣物に結合したATP模倣物を含む二基質タンパク質キナーゼ阻害剤を開示する。タンパク質キナーゼのATP結合部位に対して高親和性を有する小分子(具体的にはイソキノリン誘導体)は、PKBの基質を模倣するペプチドまたはペプチド模倣物に結合される。一部のペプチド自体は高度に活性かつ選択的であったが、血清中で安定性がなく、細胞内で活性でないので、治療値は低い。これらのキメラ化合物は増加した活性を実証するが、ATP模倣部分が存在することに起因して、ペプチドに比べると選択性が劣る。その上、キメラ化合物は、細胞内で低活性を示し、血清中では低度から中度の安定性を示す。
Lindgrenらの(TiPS 21,99−1032000)では、細胞透過ペプチドを用いた細胞送達が論評されている。
【0008】
化学療法及び併用療法
腫瘍細胞及び腫瘍の成長に対する闘いは、生物学的研究及び医療研究の大きな課題となっている。かかる研究は、腫瘍性疾患の治療において有用な可能性がある新規細胞毒性薬剤の発見をもたらしている。化学療法において一般的に用いられる細胞毒性薬剤の例には、微小管形成を妨害する抗代謝薬剤、アルキル化剤、白金ベースの薬剤、アントラサイクリン、抗生物質剤、トポイソメラーゼ阻害剤、及び他の薬剤が含まれる。
単に潜在的に有用な化学療法薬を同定することに加えて、癌研究は、これらの薬剤が腫瘍細胞、ならびに他の細胞に対して作用する機構に関する理解を高めている。たとえばコレカルシフェロール(ビタミンD)は、分化に影響し、in vitro及びin vivo両方の細胞のうち、そのいくつかの細胞型の増殖を低下することができる。ビタミンD及び類似体の活性代謝物は、樹立した腫瘍の成長を遅延させ及び腫瘍誘導を防止することによって著しいin vitro及びin vivo抗腫瘍活性を仲介する(Colstonらの1989,Lancet,1,188;Belleliらの1992,Carcinogenesis,13,2293;McElwainらの1995,Mol.Cell.Diff.,3,31−50;Clarkらの1992,J.Cancer Res.Clin.Oncol.,118,190;Zhouらの1989,Blood,74,82−93)。
【0009】
白金ベース薬剤は、化学治療用途において広範に利用される。たとえば、シスプラチンは、共有のクロスDNAまたはストランド内DNA付加体の形成を介して腫瘍細胞を死滅させる(Shermanらの1987,Chem.Rev.,87,1153−81;Chu,J.1994,Biol.Chem.,269,787−90)。かかる白金ベース薬剤を用いた治療はDNA合成の阻害につながる(Howleらの1970,Biochem.Pharmacol.,19,2757−62;Salles et al.1983,Biochem.Biophys.Res.Commun.,112,555−63)。
他の化学療法薬はさまざまな機構で作用する。たとえば微小管形成を妨害する薬剤(たとえばビンクリスチン、ビンブラスチン、パクリタキセル、ドセタキセルなど)は、有糸分裂紡錘体装置の適切な形成を妨害することによって腫瘍細胞に対して作用する(たとえばManfrediらの1984、Pharmacol.Ther.,25,83−125を参照)。すなわち、微小管形成を妨害する薬剤は、細胞サイクルの有糸分裂相中に主に作用する(Schiffらの1980,Proc.Nat.Acad.Sci.U.S.A.,77,1561−65;Fuchsらの1978,Cancer Treat.Rep.,62,1219−22;Lopesらの1993,Cancer Chemother.Pharmacol.,32,235−42)。代謝拮抗物質は、成長細胞における種々の酵素経路に作用する。たとえば、メトトレキセート(MTX)は、ジヒドロ葉酸の低減酵素を阻害する葉酸類似体であるので、DNA合成に必要なチミジル酸とプリンの合成を阻止する。また、他の細胞毒性薬剤を利用することもできる(たとえばドセタキセル(たとえばTAXATERETM)などのタキサン)。
【0010】
今日の癌治療における主要問題のうちの1つは、腫瘍細胞の化学療法薬耐性を高める能力である。種々の細胞毒性薬剤の生物学的機構における相違のため、さまざまな細胞毒性薬剤の組み合わせを含むプロトコルが試みられている(たとえば、Jekunenらの1994,Br.J.Cancer,69,299−306;Yehらの1994,Life Sciences,54,431−35)。併用治療プロトコルは、互換性のある細胞毒性薬剤を用いることによって細胞変性プロトコルの効力を増加することを目的とする。同様に、細胞毒性薬剤の所与の組み合わせから十分な抗腫瘍性活性を実現できる可能性は、有害な副作用を最小化するために個々の細胞毒性薬剤の薬用量を低減する可能性を提示する。その理由の一つには、種々の細胞毒性薬剤が細胞サイクルのさまざまな段階中に作用することが挙げられ、組み合わせプロトコルの成功は、頻繁に薬物適用の順序によって左右されるからである(たとえば、Jekunenらの前出文献;Studzinskiらの1991,Cancer Res.,51,3451)。
米国特許第6,559,139号には、ビタミンDまたはその誘導体を他の公知の化学療法薬剤と共に用いる併用療法が記載されている。米国特許第6,667,337号では、xanthenone酢酸類とパクリタキセルまたはドセタキセルのどちらかの化合物組み合わせを用いて癌治療方法が開示されている。
米国特許第5,985,877では、前立腺癌を治療するためのチロシンキナーゼ阻害剤及び化学的去勢の組み合わせが開示されている。
【0011】
米国特許第5,516,771号、第5,654,427号及び第5,650,407号では、インドロカルバゾール型チロシンキナーゼ阻害剤及び前立腺癌が論考されている。米国特許第5,475,110号、第5,591,855号、及び第5,594,009号、及びWO96/11933では、融合ピロロカルバゾール型チロシンキナーゼ阻害剤及び前立腺癌が論考されている。
しかし、前立腺癌をはじめとする種々の癌において効果のある治療投与計画の必要性が引き続き存在している。本発明は、細胞透過性、選択性及びバイオ劣化耐性などの改良された薬理学的特性を有するペプチド及びペプチド模倣物の複合体を含むタンパク質キナーゼの阻害剤を提供することによって公知の抗増殖薬剤及び抗癌薬剤の限界を克服するものである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、ペプチドまたはペプチド模倣物と細胞透過性エンハンサーとの複合体を含む新規タンパク質キナーゼ阻害剤を提供する。
本発明は、PKBが増幅される腫瘍組織における細胞死の増加と、公知の化学療法薬剤耐性の低下とにつながる細胞周期停止及びアポトーシス促進の両方を引き起こす能力を持つタンパク質キナーゼBの特異的な阻害剤に対する未だ満たされていないニーズを満たすものである。本発明のタンパク質キナーゼ阻害剤を他の治療と組み合わせて用いると、臨床効果を高めること、あるいは有害な副作用発生率を低下させることができるので、従来の化学治療剤の用量を増加することが可能となる。
本発明はさらに、少なくとも第1部分及び第2部分を有する分子を含むタンパク質キナーゼ阻害剤を提供するものであって、該第1部分は当該分子の細胞透過能を持ち、該第2部分は当該細胞内におけるタンパク質キナーゼ阻害効果を持ち、当該第1部分はリンカーまたはスペーサーを介して当該第2部分に結合されることを特徴とする。具体的には、本発明は医療用及び治療用のタンパク質キナーゼ阻害剤である細胞透過性ペプチド及びペプチド模倣物の複合体を提供する。
特定の実施形態によれば、本発明の複合体は細胞透過部分に結合されたペプチド基質の模倣物を含む。
【0013】
別の実施形態によれば、本発明の複合体は選択タンパク質キナーゼ阻害剤B(PKB)であるペプチド及びペプチド模倣物を含む。これらのペプチド及びペプチド模倣物の複合体は、先に記載のPKB阻害剤よりもさらに改良された薬理学的特性を持つ。
従って本発明のペプチド複合体は、細胞透過部分の第1セグメント、及びペプチドコアとしての機能を果たすペプチドまたはペプチド模倣物の第2セグメントを含むものである。該第1セグメントと該第2セグメントとは、共有結合を介して直接的に結合してもよいし、またはスペーサーを介して結合してもよい。
当技術分野で公知の化合物の細胞への透過を能動的または受動的に促進または増強する部分であれば、いかなる部分も本発明に係るペプチドコアとの結合に使用することができる。その非限定的な例としては、脂肪酸、ステロイド及びかさ高い芳香族または脂肪族の化合物などの疎水性部分と、ステロイド、ビタミン類及び糖類、天然及び非天然のアミノ酸及びトランスポーターペプチドなどの細胞膜の受容体または担体を有することができる部分とが挙げられる。
本発明に係る複合分子のタンパク質キナーゼ阻害性ペプチド部分は、タンパク質キナーゼ阻害性ペプチドまたはタンパク質キナーゼ阻害性ペプチド模倣物より選択する。かかる阻害性コアペプチドは、PKB基質またはPKB基質の模倣物を構成する公知または新規のペプチド及びペプチド模倣物をベースとして設計する。本発明に係るペプチドコアは、一般にアミノ酸番号4〜25のアミノ酸の配列からなり、特定の実施形態によれば、本ペプチドコアはアミノ酸番号5〜20のアミノ酸を含むが、別の実施形態によれば、本ペプチドコアはアミノ酸番号6〜15のアミノ酸を含む。
【0014】
本発明の具体的な実施形態によれば、ペプチド部分はPKB基質に由来する。より好適な実施形態によれば、ペプチドコアはPKB基質グリコーゲン合成酵素キナーゼ3(GSK3)に由来する。
別の実施形態によれば、本発明の複合体にはATPの模倣部分をさらに含むこともできる。
該細胞透過部分は、直接的またはスペーサーを介して間接的にペプチド部分のいかなる位置にも結合することができる。具体的な実施形態によれば、該細胞透過部分はペプチド部分のアミノ末端またはカルボキシ末端に結合する。該随意的な結合スペーサーはさまざまな長さであってよく、また、限定するものではないが、アミン結合、アミド結合、カルバマート結合、チオエーテル結合、オキシエーテル結合、スルホンアミド結合などをはじめとする任意の好適なケミストリーを含む高次構造であってもよい。かかるスペーサーの非限定的な例としては、アミノ酸、スルホンアミド誘導体、アミノチオール誘導体及びアミノアルコール誘導体が挙げられる。
また、さらに改良された安定性及び細胞透過特性を持つペプチド模倣化合物を含むペプチドベースのタンパク質キナーゼ阻害剤を提供することも、本発明のもう一つの目的である。かかる化合物配合の非限定的な例としては、選択されたペプチド残基のN−アルキル化、選択されたペプチド残基、非天然アミノ酸の側鎖修飾、ペプチド結合を置換するためのカルバマート、尿素、スルホンアミド及びヒドラジンの使用、及び限定するものではないが、ピペリジン、ピペラジン及びピロリジンを含む非ペプチド部分のペプチドまたは非ペプチド結合を介した組み込みが挙げられる。本発明に係るペプチド模倣物コア内のアミノ酸(AA)間の修飾結合は、アミド結合、尿素結合、カルバマート結合、ヒドラジン結合またはスルホンアミド結合からなる群から選択することができる。現在、より好適な実施形態では、AA間の結合は特に別段の指定がない限り、すべてアミド結合である。
また、本発明はペプチドベースのATPの模倣部分をさらに含む細胞透過性キメラ化合物を提供する。ATPの模倣部分には、限定するものではないが、ダンシル、イソキノリン、キノリン及びナフタレンが含まれており、スペーサーによってペプチドコアに便宜結合させる。好ましくは、ATPの模倣物はイソキノリンまたはその誘導体である。該スペーサーはさまざまな長さのスペーサーであり、また、限定するものではないが、アミン結合、アミド結合、カルバマート結合、チオエーテル結合、オキシエーテル結合、スルホンアミド結合などをはじめとする任意の好適なケミストリーの高次構造を有するスペーサーである。かかるスペーサーの非限定的な例としては、スルホンアミド誘導体、アミノチオール誘導体及びアミノアルコール誘導体が挙げられる。
【0015】
一実施形態によれば、本発明の化合物は下記式(I)に従った配列、その類似体、塩類または機能的誘導体を含む。
式(I):M−X1−Pro−Arg−X4−X5−X6−X7(配列番号:2)
上記式では、
Mは不在であるか、またはD−Lys2−4またはL−Lys2−4から選択されるものであり、
X1は、Arg、Lys、OrnまたはDabであり、
X4は、Nva、Leu、Ile、AbuまたはOrnであり、
X5は、Tyr、Gly、GlyNH2、Ser(Me)、Glu、またはGlu(NH−(CH2)2−NH−SO2−イソキノリン)であり、
X6は、Dap、Abu、GlyNH2、Ser(Me)、Gly、AlaまたはSerであり、及び
X7は、芳香族または脂肪族のかさ高い残基、好ましくはPheまたはHolを表す。
具体的な実施形態によれば、本発明の化合物は下記式(II)に従った配列、その類似体、塩類または機能的誘導体を含む。
式(II):M−Arg−Pro−Arg−X4−X5−X6−X7(配列番号:3)
上記式では、
Mは、D−Lys3またはLys3であり、
X4は、Nva、Leu、Ile、AbuまたはOrnであり、
X5は、Tyr、Gly、GlyNH2、Ser(Me)、Glu、またはGlu(NH−(CH2)2−NH−SO2−イソキノリン)であり、
X6は、Dap、Abu、GlyNH2、Ser(Me)、Gly、AlaまたはSerであり、及び
X7は、芳香族または脂肪族のかさ高い残基、好ましくはPheまたはHolを表す。別の実施形態によれば、本発明のペプチド複合体は、コレステロール、(DLys)2−5、(Lys)2−5、ビタミンE、Arg−Gln−Ile−Lys−Ile−Trp−Phe−Gln−Asn−Arg−Arg−Met−Lys−Trp−Lys−Lys、AhX6−DArg−DArg−DArg−DArg−DGln−Arg−DLys−DLys−DArgであり、(DLys)8−10、及び(DArg)7−9からなる群から選択される細胞透過部分を含む。
【0016】
本発明の具体的な実施形態によれば、タンパク質キナーゼ阻害剤は下記式(III)の配列を含む。
式(III):Y−Z−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−X6−Hol(配列番号:4)
上式では、X6はDapまたはAlaであり、Yは細胞透過部分であり、ZはYをペプチドに結合させるスペーサーまたは結合である。
好ましくは、Yは、コレステロール、(DLys)2−10、(Lys)2−10、ビタミンE、Arg−Gln−Ile−Lys−Ile−Trp−Phe−Gln−Asn−Arg−Arg−Met−Lys−Trp−Lys−Lys(配列番号:92)、AhX6−DArg−DArg−DArg−DArg−DGln−Arg−DLys−DLys−DArg(配列番号:93)、及び(DArg)7−9からなる群より選択されるものであって、Zは不在であるか、またはカルバマート及びGlyより選択されるものである。
さらなる実施形態によれば、タンパク質キナーゼ阻害剤は、下記からなる複合体を含む。
(a)下記からなる群から選択されるペプチドセグメント。
DLys−DLys−DLys−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol(配列番号:5)、
Lys−Lys−Lys−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol(配列番号:6)、
Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol(配列番号:7)、
Arg−Pro−Arg−Orn−Glu−(NH−(CH2)2−NH−SO2−イソキノリン)Ser−Phe(配列番号:8)、
Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Ala−Hol(配列番号:9)。
【0017】
(b)コレステロール、Arg−Gln−Ile−Lys−Ile−Trp−Phe−Gln−Asn−Arg−Arg−Met−Lys−Trp−Lys−Lys、ビタミンE、及び(DArg)9群から選択される細胞透過部分。
現在、本発明に係る最も好ましいタンパク質キナーゼ阻害剤は下記からなる群から選択される。
コレステリル−O−CO−DLys−DLys−DLys−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−NH2(配列番号:10)、
コレステリル−O−CO−Lys−Lys−Lys−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−NH2(配列番号:11)、
コレステリル−O−CO−(DLys)4−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−NH2(配列番号:12)、
コレステリル−O−CO−(DLys)6−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Ser(Me)−Hol−NH2(配列番号:13)、
コレステリル−O−CO−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−(DLys)3−NH2(配列番号:14)、
コレステリル−O−CO−(DLys)3−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Ser(Me)−Hol−NH2(配列番号:15)、
コレステリル−O−CO−(Lys)3−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−OH(配列番号:16)、
コレステリル−O−CO−(CH2)2−CO−(DLys)3−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−NH2(配列番号:17)、
コレステリル−O−CO−Orn−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−NH2(配列番号:18)、
コレステリル−O−CO−(DLys)3−Lys−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−NH2(配列番号:19)、
ビタミンE−CO−(CH2)2−CO−(DLys)3−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−NH2(配列番号:20)、
コレステリル−O−CO−(DLys)2−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−NH2(配列番号:21)、
コレステリル−O−CO−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−NH2(配列番号:22)、
コレステリル−O−CO−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Ala−Hol−NH2(配列番号:23)、
コレステリル−O−CO−Gly−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Ala−Hol−NH2(配列番号:24)、
ビタミンE−スクシナート−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−NH2(配列番号:25)、
H−(DArg)9−Gly−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Ala−Hol−NH2(配列番号:26)、及び
コレステリル−O−CO−Arg−Pro−Arg−Orn−Glu(アミノエチルスルホンアミドイソキノリン)−Ser−Phe−NH2(配列番号:27)。
【0018】
本発明の別態様では、タンパク質キナーゼ阻害剤である新規ペプチド複合体を活性成分として含む医薬品組成物を狙いとし、また、これらの新規タンパク質キナーゼ阻害剤を含む医薬品組成物の調製法及び使用法をもその狙いとする。
本発明の別態様では、疾患及び障害の治療に役立つ薬物製造のためのこれらペプチド複合体を含む医薬品組成物の使用法を狙いとする。本発明は、限定するものではないが、癌、増殖疾患、糖尿病、心血管症状、出血性ショック、肥満症、炎症性疾患、中枢神経系疾患、及び自己免疫性疾患をはじめとするタンパク質キナーゼが関与する障害の治療方法を開示する。本発明の具体的な実施形態によれば、本発明に係る医薬品組成物は、ホルモン不応性前立腺癌、または限定するものではないが、前立腺癌、乳癌、卵巣癌、結腸癌、腎臓癌、黒色腫及び皮膚癌、肺癌、及び肝臓癌を含む、PKBレベルと関連または相関する他の癌型の治療に有用である。
【0019】
またさらなる一実施形態によれば、本発明に係る医薬品組成物は、他の化学治療物質と組み合わせて投与するものである。本発明に係るタンパク質キナーゼ阻害剤と共に投与し得る化学療法薬物には、限定するものではないが、ミトキサントロン、トポイソメラーゼ阻害剤、紡錘体毒ビンカ:ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン(タキソール)、パクリタキセル、ドセタキセルと、アルキル化剤:メクロレタミン、クロランブシル、シクロホスファミド、メルファラン、イホスファミドと、メトトレキセートと、6−メルカプトプリンと、5−フルオロウラシル、シタラビン、ゲムシタビンと、ポドフィロトキシン:エトポシド、イリノテカン、トポテカン、ダカルバジンと、抗生物質:ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ブレオマイシン、マイトマイシンと、ニトロソ尿素:カルムスチン(BCNU)、ロムスチン、エピルビシン、イダルビシン、ダウノルビシンと、無機イオン:シスプラチン、カルボプラチンと、インターフェロン、アスパラギナーゼと、ホルモン:タモキシフェン、ロイプロリド、フルタミド、及びメゲストロールアセテートをはじめとする当技術分野で公知の任意の薬剤が含まれる。
【0020】
本発明はさらに、タンパク質キナーゼ阻害剤であるペプチド複合体の治療有効量の投与を含む、被験者におけるタンパク質キナーゼの活性調節方法を提供する。
本質的に、従来技術におけるタンパク質キナーゼ阻害剤の公知または想定されるすべての使用方法は、本発明の分子を用いて実現することができる。
例示として、本発明で開示した化合物をタンパク質キナーゼBの阻害剤として選択した。本明細書で開示した調製物及び方法を用いると、他種類のタンパク質キナーゼの活性を阻害する化合物を得ることが可能性である。本発明の上記及び他の特徴は、以下の図、説明、実施例及び特許請求の範囲と結び付けてさらに良く理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
種々のPKB阻害剤候補の製造及びスクリーニングにおいては驚いたことに、本発明に係るペプチド及びペプチド模倣物の複合体が、既知のPKB阻害剤よりも改良された薬理学的特性を所有していることが見出された。ATPの模倣物及び基質の模倣物を含む、先に記載のキメラ分子は無細胞アッセイにおけるPKB酵素阻害においてより強力であるが、新規ペプチド複合体はPKAに比べてPKBに対してより選択的であることが判明し、その細胞透過性のためにそれらの構成成分には細胞に透過してアポトーシス及びリン酸化などの細胞内の事象を阻害する能力があるが、キメラ分子は細胞内のPKBを阻害しないことも判明した。よって、本発明のペプチド複合体は治療用薬剤としての使用により好適である。
【0022】
本発明では、それらの薬理学的特性を改善し、PKAよりもPKBに対して選択性を保持する細胞透過性および血清安定性の阻害剤を得るために、選択的阻害剤であるが細胞内では低活性の非依存性基質を模倣するペプチド阻害剤を修飾した。
本発明に係るペプチド複合体のスクリーニングの際、驚いたことに、特定の脂肪親和性部分が他の部分よりも細胞透過性エンハンサーとして好適であることが見出された。たとえばコレステロールを含むペプチド複合体の活性は、ミリストイルまたはラウリルを含む類似化合物の活性と比較して大幅に高かった。
本発明では、in vitro及びin vivoのPKB阻害効果を有するコアペプチド模倣化合物を同定した。最も強力かつ選択的な化合物を最適化して、すべての細胞アッセイにおいて約5倍強力であり、さらに著しく選択的な新規化合物を実現した。新規化合物は、1〜2μMで前立腺癌細胞株における細胞死及びアポトーシスを誘導するが、正常細胞に対しては40μMでも安全である。また、新規化合物は、3μMで癌細胞におけるアポトーシス誘導し、3〜5μMでウエスタンブロット法によるPKB下流基質の阻害を示す。本発明に係る組成物の有用性は、当技術分野で公知の種々の測定を用いて確立することができる。本発明の好適な化合物は、タンパク質キナーゼの活性阻害及び癌細胞内での細胞死とアポトーシスの誘導において、in vitroアッセイパネルで活性であるが、正常細胞内では活性でないことが判明した。加えて、腫瘍成長、腫瘍回帰、及び化学療法薬剤との潜在的な相乗作用効果に対するそれらの影響を評価するため、in vitroで高活性を示す選択された化合物をin vivoで検査する。
【0023】
選択された本発明に係る化合物は、血漿中で6〜24時間安定であり、肝細胞によって緩慢に代謝され、かつ膜透過性であるPKBのペプチドベースの基質を模倣する阻害剤である。これらの化合物は、関連キナーゼよりもPKBに対して10〜200倍選択的であり、このタンパク質キナーゼの強力かつ選択的阻害剤として組織培養中において特徴付けられている。阻害剤は、特にPKBが高度に活性化される前立腺癌細胞、乳癌細胞及び腎臓癌細胞において細胞死を誘導するが、PKB活性化がほとんどない正常細胞においては細胞死を誘導しない。阻害剤は、細胞死誘導濃度と同じ濃度で前立腺癌細胞においてアポトーシスを誘導するが、これらの濃度では、細胞サイクル分析による細胞毒性死は認められない。その上、阻害剤は前立腺癌細胞におけるPKB下流基質のリン酸化を減少する。
【0024】
薬理学的に活性であるタンパク質キナーゼ阻害剤及び薬剤的に許容できる担体または希釈液を含む本発明に係る医薬品組成物は、本発明に係るタンパク質キナーゼ阻害剤の有効量を含む医薬品組成物を用いた該医薬品組成物を必要とする哺乳動物の治療方法と同様に本発明の別の実施形態を提示する。本発明の組成物を用いる治療方法は、癌、増殖疾患、糖尿病、心血管症状、出血性ショック、肥満症、炎症性疾患、中枢神経系疾患、及びかかる組成物を用いた自己免疫性疾患の療法に有用である。
本発明に係る医薬品組成物は、最も好ましくは、ホルモン不応性前立腺癌と、前立腺癌(ZinらのClin.Cancer Res.20017,2475−9)と、乳癌(Perez−Tenorio and Stal,Brit.J.Cancer 200286,540−45,SalhらのInt.J.Cancer 200298,148−54)と、卵巣癌(LiuらのCancer Res.199815,2973−7)と、結腸癌(SembaらのClin.Cancer.Res.20028,1957−63)と、黒色腫及び皮膚癌(Walderman,Wecker and Diechmann,Melanoma Res.200212,45−50)と、肺癌(ZinらのClin.Cancer Res.20017,2475−9)と、肝臓癌(FangらのEur.J.Biochem.2001268,4513−9)の群から選択される悪性腫瘍の防止及び治療に使用することができる。
本発明を用いて治療することができるさらなる特定の型の癌には、急性骨髄性白血病、膀胱癌、乳癌、子宮癌、胆管癌、慢性骨髄性白血病、結腸直腸癌、胃肉腫、グリア細胞腫、白血病、肺癌、リンパ腫、黒色腫、複数の骨髄腫、骨肉腫、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、胃腸癌、または手術不能腫瘍を含めた局在部位の腫瘍、または腫瘍の局所治療が有益な腫瘍、及び固体腫瘍が含まれる。
【0025】
加えて、本発明の医薬品組成物を用いて治療することができる適応症には、タンパク質キナーゼのレベル、特にPKBレベルが高いか、または適応症と関連または相関しているという条件で、望ましくない細胞増殖または無制限な細胞増殖に関与するすべての状態が含まれる。かかる適応症には、再狭窄、良性腫瘍、原発腫瘍及び腫瘍転移などの各種癌、内皮細胞の異常刺激作用(アテローム性動脈硬化)、外科術、異常創傷治癒、異常血管形成に起因する体組織侵襲、組織線維症を生じる疾患、反復動作による障害、血管新生を高度に促進しない組織障害、及び臓器移植に関連する増殖反応が含まれる。
本発明を用いて治療することができる特定の型の再狭窄病変には、冠動脈病変、頸動脈病変、及び大脳病変が含まれる。本発明を用いて治療することができる特定の型の良性腫瘍には、血管腫、聴神経腫、神経線維腫、トラコーマ及び化膿性肉芽腫が含まれる。
【0026】
外科術中の体組織侵襲に起因する細胞増殖の治療は、接合外科術、腸外科術、及びケロイド瘢痕をはじめとする種々の外科手術において行うことができる。線維組織を生じる疾患には肺気腫が含まれる。本発明を用いて治療することができる反復動作による障害には、手根管症候群が含まれる。本発明を用いて治療することができる細胞増殖障害の例としては骨腫瘍が挙げられる。
本発明を用いて治療することができる異常血管形成には、関節リウマチを伴う異常血管形成、乾癖、糖尿病性網膜症、及び未熟児網膜症(水晶体後線維増殖症)、黄斑変性症、角膜移植拒絶反応、neroscular緑内障及びOster Webber症候群などの他の眼血管形成疾患が含まれる。
本発明を用いて治療することができる臓器移植に関連する増殖反応には、臓器拒絶または関連合併症の原因となる可能性がある増殖反応が含まれる。特異的にこれらの増殖反応は、心臓、肺臓、肝臓、腎臓、及び他の体器官または器官系の移植中に起こる可能性がある。
【0027】
本発明に係る医薬品組成物は都合よく、少なくとも1つのタンパク質キナーゼ阻害剤を含む。これらの医薬品組成物は、局所的投与または全身的投与をはじめとする任意の好適な経路で投与することが可能である。好ましい投与方法には、限定するものではないが、静脈内注入の及び筋肉内注入などの非経口的な経路、ならびに経鼻摂取または経口摂取が含まれる。
当業者であれば公知のように、医薬品組成物は単独または治療すべき状態に対する新たな治療薬と併せて投与することが可能である。
現在、本発明に係る抗PKB化合物と、公知の化学療法薬物との両方を同時投与または連続投与すると、抗腫瘍活性が高くなり、併用療法による抗癌効果は各薬剤を単独投与した場合と比べてはるかに大きく、個々の薬剤効果の和を大幅に超えることが見出されている。よって、本特許申請は悪性腫瘍または他の増殖反応の治療に使用される公知のいかなる他薬剤との併用療法に使用することが可能なタンパク質キナーゼ阻害剤を提供するものである。
【0028】
用語と定義
本明細書及び本特許請求の範囲における用語「タンパク質キナーゼ」は、上記のように1つまたは複数のタンパク質リン酸化する働きをする酵素スーパーファミリーのメンバーを意味する。
本明細書及び本特許請求の範囲において使用した用語「阻害剤」は「拮抗薬」を示すために互換的に用いたものであって、これらの用語は特定の酵素活性を低下させる能力、または当該酵素基質の活性または機能と競合する能力を備えている組成物を定義するものである。
本明細書及び本特許請求の範囲において使用した用語「キメラ化合物」または「キメラ分子」は、PKB基質の模倣部に結合したATP模倣部分を示す。
本明細書中で使用した「ペプチド」は、ペプチド結合によって結合されたアミノ酸配列を示す。本発明のペプチド類似体は、4〜25アミノ酸残基、好ましくは5〜20残基、より望ましくは6〜15アミノ酸の配列を含むものであって、各残基がアミノ末端及びカルボキシ末端を持つことを特徴とする。
用語「ペプチド模倣物」は、本発明に係るペプチドが少なくとも1つの非コード化残基または非ペプチド結合を含むように修飾されていることを意味する。かかる修飾には、たとえば1つまたは複数の残基のアルキル化及びより特異的なメチル化、非天然アミノ酸による天然アミノ酸の挿入または置換、アミド結合の他共有結合との置換が含まれる。本発明に係るペプチド模倣物は、便宜、少なくとも1つの結合を含むことができ、該結合は尿素結合、カルバマート結合、スルホンアミド結合、ヒドラジン結合、または任意の他共有結合などを含むアミド置換結合である。適切な「ペプチド模倣物」の設計はコンピュータを使って行うことも可能である。
【0029】
用語「スペーサー」は化学的部分を示し、その目的は細胞透過部分及びペプチドまたはペプチド模倣物を共有的に結合することである。スペーサーを用いて細胞透過部分とペプチドとの間に距離を設けるか、または該スペーサー任意の型の化学結合とすることもできる。リンカーは直接化学結合またはスペーサーを示す。
用語「ペプチド類似体」は、アミド結合の1つまたは複数のアミノ酸置換または1つまたは複数の修飾/置換を除いて、本発明に係るアミノ酸配列を有する分子を示す。
本発明に関しては、用語「核」はペプチドセグメント、またはペプチドまたはペプチド模倣物を含み、便宜、細胞透過性エンハンサーに結合したタンパク質キナーゼ阻害剤の部分を意味する。
【0030】
「透過性」は薬剤または物質の障壁、膜、または皮膚層を介して透過、浸透、または拡散する能力を意味する。「細胞透過性」または「細胞透過」部分は、当技術分野で公知の、膜を介して分子の透過を促進または増強することができる任意の分子を意味する。その非限定的な例としては、脂質、脂肪酸、ステロイド及びかさ高い芳香族または脂肪族の化合物などの疎水性部分と、ステロイド、ビタミン類及び糖類、天然及び非天然のアミノ酸及びトランスポーターペプチドなどの細胞膜の受容体または担体を有することができる部分とが挙げられる。本発明に従って使用することができる脂質部分の例は下記の通りである。リポフェクタミン、Transfectace、Transfectam、Cytofectin、DMRIE、DLRIE、GAP−DLRIE、DOTAP、DOPE、DMEAP、DODMP、DOPC、DDAB、DOSPA、EDLPC、EDMPC、DPH、TMADPH、CTAB、lysyl−PE、DC−Cho、−アラニンコレステロールと、DCGS、DPPES、DCPE、DMAP、DMPE、DOGS、DOHME、DPEPC、プルロニック、Tween、BRIJ、プラスマロゲン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、グリセロール−3−エチルホスファチジルコリン、ジメチルアンモニウムプロパン、トリメチルアンモニウムプロパン、ジエチルアンモニウムプロパン、トリメチルアンモニウムプロパン、ジメチルジオクタデシル臭化アンモニウム、スフィンゴ脂質、スフィンゴミエリン、リソリピド(lysolipid)、糖脂質、スルファチド、スフィンゴ糖脂質、コレステロール、コレステロールエステル、コレステロール塩、オイル、N−スクシニルジオレオイルホスファチジルエタノールアミン、1、2−ジオレオイル−sn−グリセロール、1、3−ジパルミトイル−2−スクシニルグリセロール、1、2−ジパルミトイル−sn−3−スクシニルグリセロール、1−ヘキサデシル−2−パルミトイルグリセロホスファチジルエタノールアミン、パルミトイルホモシステイン、N、N’−ビス(ドデシルアミノカルボニルメチレン)−N、N’−ビス((−N、N、N−トリメチルアンモニウムエチル−アミノカルボニルメチレン)四ヨウ化エチレンジアミンと、N、N”−ビス(ヘキサデシルアミノカルボニルメチレン)−N、N’、N”−トリス((−N、N、N−六ヨウ化トリメチルアンモニウム−エチルアミノカルボニルメチレンジエチレントリアミンと、N、N’−ビス(ドデシルアミノカルボニルメチレン)−N、N”−ビス((−N、N、N−トリメチルアンモニウムエチルアミノカルボニルメチレン)シクロヘキシレン−1、4−四ヨウ化ジアミンと、1、7、7−テトラ−((N、N、N、N−テトラメチルアンモニウムエチルアミノ−カルボニルメチレン)−3−ヘキサデシルアミノカルボニル−メチレン−1、3、7−七ヨウ化トリアザヘプタンと、N、N、N’、N’−テトラ((−N、N、N−トリメチルアンモニウム−エチルアミノカルボニルメチレン)−N’−(1、2−ジオレオイルグリセロ−3−ホスホエタノールアミノカルボニルメチレン)四ヨウ化ジエチレントリアミンと、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン、脂肪酸、リソリピド(lysolipid)、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴ脂質、糖脂質、糖脂質、スルファチド、スフィンゴ糖脂質、ホスファチジン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキドン酸、オレイン酸、重合体を有する脂質、スルホン化サッカロイド(糖類)を有する脂質、コレステロール、トコフェロールヘミサクシネート、エーテル結合された脂肪酸を備えた脂質、エステル結合された脂肪酸を備えた脂質、重合脂質、ジアセチルリン酸(リン酸塩)、ステアリルアミン、カルジオリピン、6〜8の炭素長の脂肪酸を備えたリン脂質、不斉アシル鎖を備えたリン脂質、6−(5−コレステン−3b−イルオキシ)−1−チオ−b−D−ガラクトピラノシド、ジガラクトシルジグリセリド、6−(5−コレステン−3b−イルオキシ)ヘキシル−6−アミノ−6−デオキシ−1−チオ−b−D−ガラクトピラノシド、6−(5−コレステン−3b−イルオキシ)ヘキシル−6−アミノ−6−デオキシル−1−チオ−a−D−マンノピラノシド、12−(((7’−ジエチルアミノ−クマリン−3−イル)カルボニル)メチルアミノ)−オクタデカン酸と、N−[12−(((7’−ジエチルアミノ−クマリン−3−イル)カルボニル)メチルアミノ)オクタデカノイル]−2−アミノパルミチン酸と、コレステリル)4’−トリメチル−アンモニオ)ブタノアートと、N−スクシニルジオレオイル−ホスファチジルエタノールアミンと、1、2−ジオレオイル−sn−グリセロールと、1、2−ジパルミトイル−sn−3−スクシニル−グリセロールと、1、3−ジパルミトイル−2−スクシニルグリセロール、1−ヘキサデシル−2−パルミトイルグリセロ−ホスホエタノールアミン、及びパルミトイルホモシステイン。
【0031】
本明細書及び本特許請求の範囲における用語「治療有効量」は、タンパク質キナーゼ阻害剤または同阻害剤を含む組成物の、本明細書に記載した適応症に対して宿主に投与し、所望の結果を達成するための量を意味するものであって、該適応症には、限定するものではないが癌、糖尿病、心血管症状、出血性ショック、肥満症、炎症性疾患、中枢神経系疾患、及び自己免疫性疾患が含まれる。
本明細書中で使用した「癌」及び「癌性」は、哺乳動物細胞におけるすべての悪性増殖を意味する。
2つの化合物を組み合わせて投与するか、または本発明に係る併用療法を用いる際、用語「組み合わせ」は、本発明に関しては、複数の薬物が同時に、同時または連続的に被験者に与えられることを意味する。この用語は、本発明に関しては、組織的な治療の過程で2つ以上の治療薬を投与して改善された臨床成果を達成することを意味するように定義されている用語「同時投与」と互換可能である。また、かかる同時投与は同一であってもよい。すなわち、同時投与は重複する期間中に発生してもよいものである。
【0032】
チロシンキナーゼ阻害剤と別薬剤との同時投与は、別々の製剤、すなわち、チロシンキナーゼの製剤と別薬剤の製剤の同時発生的な投与によって行い得るものである。別々の製剤の投与は、その投与のタイミングがチロシンキナーゼ阻害剤及び他の薬剤の薬理活性が治療を受ける哺乳動物において同時に起こるような場合、「同時発生的」といえる。
本発明の一部の実施形態では、チロシンキナーゼ阻害剤及び別薬剤の同時投与は、両剤を単一組成物に製剤することによって達成する。
本明細書中では、本発明及び本発明の製造と使用の様式を説明するため、特定の略称を使用する。例として、ATPはアデノシンの3つのリン酸(リン酸塩)を意味し、BSAはウシ血清アルブミンを意味し、BTCはビス−(トリクロロメチル)カルボナートまたはトリホスゲンを意味し、DIEAはジイソプロピル−エチルアミンを意味し、DMFはジメチルホルムアミドを意味し、EDTはエタンジチオールを意味し、EDTAはエチレンジアミンテトラアセテートを意味し、ELISAは酵素結合免疫測定法を意味し、EGFは上皮成長因子を意味し、FACSは蛍光標示式細胞分取器を意味し、FKHRはフォークヘッドを意味し、GSK3はグリコーゲン合成酵素キナーゼ3を意味し、HAは赤血球凝集素を意味し、HBTUは1−ヒドロキシベンズトリアゾリルテトラメチル−ウロニウムを意味し、HEPESは4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸を意味し、HOBTは1−ヒドロキシベンゾトリアゾールを意味し、HRPCはホルモン不応性前立腺癌を意味し、IGFはインスリン成長因子を意味し、MOPSは4−モルホリンプロパンスルホン酸を意味し、MPSは複数の平行合成を意味し、NMPはN−メチルホルムアミドを意味し、MTDは最大耐量を意味し、PBSはリン酸緩衝生理食塩水を意味し、PKAはタンパク質キナーゼAを意味し、PKBはタンパク質キナーゼBを意味し、PKCはタンパク質キナーゼCを意味し、rpmは毎分の回転数を意味し、SARは構造活性相関を意味し、THFはテトラヒドロフランを意味し、TISはトリ−イソプロピル−シランを意味し、TFAはトリフルオロ酢酸を意味する。
【0033】
ケミストリー:
本発明に係る好適なペプチドは、種々のペプチド模倣手法をはじめとする当技術分野で公知の任意の方法を用いて合成することができる。これらの方法には、固相合成法、ならびに液相合成法が含まれる。ペプチド性部分と透過性部分との結合は、固相化学または液相化学のどちらかによって、当技術分野で公知の任意の方法を用いて行うことができる。これらの方法の非限定的な例を本明細書に記載した。本発明の好適な化合物の一部は、液相合成法を用いて好都合に調製することができる。本発明の化合物と同様の化合物を調製するための当技術分野で公知の他の方法を使用することが可能であり、それらの方法も本発明の範囲内に含まれるものとする。
本発明において使用するアミノ酸は、市販されているアミノ酸か、または通常の合成法によって得られるアミノ酸である。特定の残基をペプチドに組み込むために特別な方法が必要とされる場合があり、ペプチド配列の連続合成法、分岐合成法及び収束合成手のいずれの手法も本発明において有用である。コード化された天然アミノ酸及びそれらの誘導体は、IUPAC条約に従った3文字コードによって表示する。特定の表示がないときは、L−異性体を使用した。D−異性体は、残基の略称の前に「D」を付けて表示する。
【0034】
アミノ酸の同類置換は、当業者には周知のように本発明の範囲内に含まれるものとする。アミノ酸の同類置換には、あるアミノ酸を同型の官能基または側鎖、たとえば脂肪族側鎖、芳香族側鎖、正に帯電した側鎖、負に帯電した側鎖を有する別のアミノ酸と置換することが含まれる。これらの置換により、経口バイオアベイラビリティ、中枢神経系への透過、特定の細胞集団へのターゲッティングなどの機能を高めることができる。当業者ならば、ペプチド、ポリペプチド、または単一アミノ酸またはコード化された配列における極めて少量のアミノ酸を改変、添加または削除するタンパク質配列への個々の置換、欠失または付加が、「保存的に修飾された変異」であって、その改変の結果、アミノ酸の化学的に類似したアミノ酸による置換が起こることを認識するであろう。機能的に類似するアミノ酸を提供する同類置換表は当技術分野で公知である。
【0035】
以下の6つの群のそれぞれには、相互に同類置換であるアミノ酸が含まれる。
1)アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T)
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)
3)アスバラギン(N)、グルタミン(Q)
4)アルギニン(R)、リシン(K)
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V)
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)
非コード化アミノ酸の非限定的な例の一覧表では、Abuは2−アミノ酪酸を意味する、AhX6はアミノヘキサン酸を意味し、Ape5はアミノペンタン酸を意味し、ArgOlはアルギニノールを意味し、bAlaはβ−アラニンを意味し、Bpaは4−ベンゾイルフェニルアラニンを意味し、Bipはβ−(4−ビフェニル)−アラニンを意味し、Dabはジアミノ酪酸を意味し、Dapはジアミノプロピオン酸を意味し、Dimはジメトキシフェニルアラニンを意味し、Dprを意味しジアミノプロピオン酸、Holはホモロイシンを意味し、HPheはホモフェニルアラニンを意味し、GABAはγ−アミノ酪酸を意味し、GlyNH2はアミノグリシンを意味し、Nleはノルロイシンを意味し、Nvaはノルバリンを意味し、Ornはオルニチンを意味し、Pheカルボキシはパラカルボキシフェニルアラニンを意味し、PheClはパラクロロフェニルアラニンを意味し、PheFはパラフルオロフェニルアラニンを意味し、PheMeはパラメチルフェニルアラニンを意味し、PheNH2はパラアミノフェニルアラニンを意味し、PheNO2はパラニトロフェニルアラニンを意味し、Phgはフェニルグリシンを意味し、Thiはチエニルアラニンを意味する。
【0036】
薬理
他の考慮事項は別として、本発明の新規活性成分がペプチド、ペプチド類似体またはペプチド模倣物であるということは、製剤がこれらの型の化合物の投与に好適なものでなくてはならないことである。明らかにペプチドは、胃酸または腸内酵素による消化に対する脆弱性のために経口投与にあまり好適ではない。ペプチドの好適な投与経路は、関節内、静脈内、筋肉内、皮下、真皮内、またはクモ膜下腔内である。より好適な経路は、障害部位か疾患部位またはその近傍部への直接注入である。しかし、本発明の化合物の一部は、細胞膜を通過する能力に加えて代謝劣化に対して高度に耐性であることが判明している。これらの特性は、本発明の化合物を経口投与に潜在的に好適なものにしている。
本発明の医薬品組成物は、当技術分野で周知であるようなプロセスで製造することができ、それらの態様としては、従来の混合、溶解、造粒、粉砕、微粉砕、糖衣錠製造、研和、乳化、カプセル化、取り込み、または凍結乾燥プロセス等があげられる。
【0037】
かくして、本発明に従って使用される医薬品組成物は、薬剤的に使用することができる調製物への活性化合物の処理を容易にする賦形剤及び助剤を含む1つまたは複数の生理学的に許容できる担体を用いて従来の方式で製剤することができる。適切な製剤は選択される投与経路によって決まる。
注入用としては、本発明の化合物を水溶液中、好ましくはハンクスの溶液、リンゲルの溶液、または生理食塩水などの生理学的に適合した緩衝液緩衝液中で製剤することができる。経粘膜投与用の場合には、浸透しようとする障壁に適切な浸透剤を製剤において使用する。かかる浸透剤、たとえばポリエチレングリコールは当技術分野で公知である。
糖衣錠核には好適なコーティングを施す。このコーティングのため、便宜、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カーボポールゲル、ポリエチレングリコール、二酸化チタン、漆液及び好適な有機溶媒または混合溶媒を含有することができる濃縮砂糖水を使用してもよい。染料または色素を識別のためまたは活性化合物投与量のさまざまな組み合わせを特徴づけるために錠剤または糖衣錠コーティングを加えることもできる。
【0038】
経口剤として使用できる医薬品製剤には、ゼラチンでできている押しバメ式カプセル、ならびにゼラチン及びグリセロームまたはソルビトールなどの可塑剤でできている密封されたソフトカプセルおよびコーティングも含まれる。差込式カプセルは、ラクトースなどの充填剤、澱粉などの結合剤、タルクなどの潤滑剤またはステアリン酸マグネシウム及び、便宜、安定剤との混合物中の活性成分を含有することができる。ソフトカプセルでは、脂肪性油類、液体パラフィン、または液体ポリエチレングリコールなどの好適な液体中に、活性化合物を溶解または懸濁することができる。加えて、安定剤を加えることもできる。経口投与用のすべての製剤は、選択された投与経路に対して好適な薬用量でなくてはならない。頬側投与の場合には、組成物は、錠剤形態または従来の方式で製剤されたローゼンジ錠形態をとることもできる。
吸入による投与の場合は、本発明に従って使用される変異体を、好都合には、好適な噴霧剤、たとえばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロ−テトラフルオロエタンまたは二酸化炭素を用いて、加圧パックまたは噴霧器からエアゾールスプレー提示の形式で投与する。加圧エアゾールの場合、単位用量は定量投与するための弁部を設けることによって決定することができる。たとえば吸入器用ゼラチンのカプセル及びカートリッジは、ペプチド及びラクトースまたは澱粉などの好適な粉末ベースの混合粉体を含有するように製剤することができる。
【0039】
非経口的な投与用の医薬品組成物には水溶性型で活性成分の水溶液が含まれる。加えて、活性化合物の懸濁液は適切な油状の注入懸濁液として調製してもよい。好適な天然または合成の担体は当技術分野で公知である(PillaiらのCurr.Opin.Chem.Biol.5,447,2001)。また便宜、懸濁液は、高度に濃縮された溶液の調製を可能にするために化合物の溶解度を増大させる好適な試薬または安定剤を保持させることもできる。あるいは、活性成分は使用前に好適な媒体、たとえば滅菌、発熱物質を含まない水を用いて再構成を行うために粉末形態であってもよい。
また、本発明の化合物は、たとえばカカオバターまたは他のグリセリドなどの従来の坐薬の基剤を用いて坐薬または停留浣腸などの直腸用の組成物として製剤することもできる。
本発明に関して使用するのに好適な医薬品組成物には、活性成分が所期の目的を達成するために有効な量で含有されていることを特徴とする組成物が含まれる。より具体的には、治療有効量とは治療を受けている被験者の疾患の症候を防止、軽減または寛解させるうえに効果のある化合物の量を意味する。治療有効量の決定は、当業者の能力範囲で行えるものである。
【0040】
本明細書に記載したペプチドの毒性及び治療効果は、細胞培養または実験動物内において標準製薬方法、たとえば対象化合物のIC50(50%の活性を阻害する濃度)及びLD50(検査動物の50%の死を引き起こす致死量)を定量することによって確定することができる。細胞培養試験および動物実験から得たデータは、ヒトにおける用量範囲の設定に使用することができる。薬用量は、用いられる剤形及び投与経路に応じてさまざまに変わる。適確な製剤、投与経路及び薬用量は、それぞれの医師によって患者の状態に鑑みて選択することができる(たとえばFinglらの1975、「The Pharmacological Basis of Therapeutics」、Ch.1p.1)。
治療しようとする状態の重症度及び応答性にもよるが、投薬は治療過程的で数日から数週間持続するか、または治癒が起こるまで、または疾患状態の改善が達成されるまで持続する持続放出薬剤組成物の単独投与であり得る。組成物の投与量はもとより、治療を受けている被験者、症状の重症度、投与様式、処方医師の判断、及びその他のすべての該当する要因によって左右されるであろう。
【0041】
一実施形態では、本発明はタンパク質キナーゼ阻害剤と細胞毒性薬剤とを細胞に同時投与することによって細胞(たとえばターゲッティングされる細胞)を死滅させる方法を提供する。加えて、本発明の方法では任意期間の前処置を行うこともできるが、具体的な前処置の期間は本発明の方法の用途に応じてさまざまであろう。たとえば、治療用途においては、かかる前処置は最低約1日から最大約5日間以上までの期間、より望ましくは、前処置期間は約2日間から約4日間(たとえば約3日間)であり得る。前処置後、本発明の方法には細胞毒性薬剤の投与が含まれるが、他の実施形態では、糖質コルチコイド(たとえばコルチゾール、デキサメサゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾンなど)、ジフェンヒドラミン、ランチジン(rantidine)、制吐−オンダンセトロン(ondasteron)、またはganistronを付属的に投与することができ、かかる薬剤はタンパク質キナーゼ阻害剤と共に投与することができる。細胞毒性薬剤は、前処置後に単独またはタンパク質キナーゼ阻害剤の継続的な投与と共に投与することができる。特定の実施形態によれば、治療は細胞毒性薬剤が投与される時点で中断するが、その投与は必要に応じて一定期間(たとえば数日間にわたって定期的に)継続することができる。
【0042】
ターゲッティングされる細胞は単生であって他の同類細胞(培養液中の単一細胞またはin vivoの転移性または散在性の腫瘍細胞など)から分離された細胞であり得るか、またはターゲッティングされる細胞が細胞(たとえば腫瘍内)コレクションのメンバーであり得る。好ましくは、本細胞は腫瘍細胞(たとえば、癌性または形質転換細胞などの無制限増殖を示す細胞の型)である。腫瘍細胞は、腫瘍内または他の細胞コレクション内に、均一または他の細胞型(腫瘍細胞または別の細胞型)と共に不均一に、分離(たとえば、単一細胞培養液中またはin vivoの転移性または散在性腫瘍細胞)されているか、または凝集状態で存在している。細胞が腫瘍内にある場合、本発明の一部の実施形態では、タンパク質キナーゼ阻害剤を腫瘍に投与し、引き続いて細胞毒性薬剤を腫瘍に投与することによって腫瘍の成長を遅延させる方法を提供する。個々の細胞への細胞変性効果の効力により、本発明の方法は、長い間に腫瘍腫瘤に追加された細胞数を低減または実質上除去することができる。好ましくは、本発明の方法は腫瘍内の細胞数の低減に効果を及ぼし、最も好ましくは、本方法は結果として腫瘍の部分的または完全な破壊(たとえば、腫瘍内の細胞の一部または実質上すべてを死滅させることによって)に導く。
【0043】
ターゲッティングされる細胞が患者(たとえばヒト)内の腫瘍性疾患に関係する場合、本発明の一部の実施形態は、タンパク質キナーゼ阻害剤を患者に投与し、引き続いて細胞毒性薬剤を患者に投与することによって患者を治療する方法を提供する。このアプローチは、無処置または散在性の癌を有する哺乳類の治療に効果がある。たとえば、細胞が散在性細胞(たとえば転移性腫瘍症)である場合、本発明の方法の細胞変性効果は、患者の全身に腫瘍細胞が蔓延する可能性を低減または実質上除去することができ、それによってかかる細胞が増殖して患者体内に新規腫瘍を形成する可能性を低減または最小化することもできる。その上、腫瘍細胞をはじめとする腫瘍の成長を遅延させることによって本発明の方法は、かかる腫瘍からの細胞が最終的に転移または散在するという可能性を低減する。もとより、本発明の方法により腫瘍サイズの縮小(そして特に腫瘍の排除)が実現されると、本方法は患者体内のかかる腫瘍の病理効果を減弱させる。別の用途は、腫瘍細胞が持続または首尾良く再成長する可能性を低減するために骨髄移植または再構成(たとえば白血病性疾患の治療)を必要とする高用量化学療法である。
多くの場合、細胞毒性薬剤を用いた治療前のタンパク質キナーゼ阻害剤を用いた細胞または腫瘍の前処置は添加物に影響し、多くの場合、細胞死の相乗度にも影響を及ぼす。本明細書に関しては、in vitroで共に投与される2つの化合物の効果(所与の濃度にて)が個々に投与される各化合物の効果の和(同一濃度で)を超える場合、2つの化合物は相乗的に作用するものと考慮される。かかる相乗作用は多くの場合細胞サイクルのG0−G1相における細胞に対して作用することができる細胞毒性薬剤を用いて実現される。
【0044】
本発明に関しては、任意の細胞毒性薬剤を利用することができ、既に述べたように化学療法に好適な多くの細胞毒性薬剤は当技術分野で公知である。かかる薬剤は、たとえば、限定するものではないが、代謝の阻害またはDNA合成、細胞骨格組織との干渉、DNAの不安定化または化学修飾、アポトーシスなどを含む任意の機構によって死を媒介する任意の化合物細胞であり得る。たとえば、細胞毒性薬剤は、代謝拮抗物質(たとえば、5−フルオロウラシル(5−FU)、メトトレキセート(MTX)、フルダラビン、など)、抗微小管剤(たとえばビンクリスチン、ビンブラスチン、タキサン(パクリタキセル及びドセタキセルなど)、など)、アルキル化剤(たとえばシシクロホスファミド(cyclophasphamide)、メルファラン、ビスクロロエチルニトロソ尿素(BCNU)、など)、白金剤(たとえばシスプラチン(別名cDDP)、カルボプラチン、オキサリプラチン、JM−216、CI−973、など)、アントラサイクリン(たとえばドキソルビシン、ダウノルビシン、など)、抗生物質剤(たとえばマイトマイシン−C)、トポイソメラーゼ阻害剤(たとえばエトポシド、カンプトテシン、など)、または他の細胞毒性薬剤(たとえばデキサメサゾン)であり得る。細胞毒性薬剤の選択は、本発明の方法の用途によって決まる。研究の場合には、いかなる潜在的な細胞毒性薬剤も(新規細胞毒性薬剤でさえも)、毒素のビタミンD(または誘導体)を用いて前処置した細胞または腫瘍への影響を研究するために用いることができる。治療目的に使用する場合、好適な細胞毒性薬剤の選択は、多くの場合患者に独特のパラメータによって決まるであろうが、所与の化学治療プロトコルに対する細胞毒素の投与計画の選択は、当業者の能力範囲で行うものとする。
【0045】
in vivoアプリケーションの場合、所与の細胞毒性薬剤の適切な投与量は、薬剤及びその製剤によって決まり、所与の患者に対する薬用量及び製剤を最適化することは、当業者の能力範囲で十分に行えるものである。すなわち、たとえば、かかる薬剤は、製剤の標準方法を用いて、経口、皮下、非経口、粘膜下、静脈内、または他の好適な経路を介する投与用に製剤することができる。たとえばカルボプラチンは、約4〜約15(たとえば約5〜約12)、またはさらに約6〜約10のAUC(「濃度曲線下面積」)を実現するために算出された1日投与量で投与することができる。一般に、AUCは、クレアチニンの糸球体濾過速度に基づいて、カルバート式を用いて計算される(たとえば査定血漿サンプルを分析することによって)(たとえばMartinoらの1999,Anticancer Res.,19(6C),5587−91を参照)。パクリタキセルは、約50mg/m2〜約100mg/m2(たとえば約80mg/m2)の濃度範囲で用いることができる。デキサメサゾンを利用する場合、患者体内では、約1mgと約10mg(たとえば約2mg〜約8mg)間の範囲の投与量で使用することができ、より具体的には、特に患者がヒトである場合、約4mg〜約6mgの投与量で使用することができる。
【0046】
本発明に係るチロシンキナーゼ阻害剤の薬用量は、1日当たり、体重1kgにつき、1μg〜1gである。一実施形態によれば、チロシンキナーゼ阻害剤の薬用量は、1日当たり、体重1kgにつき、0.01mg〜100mgである。チロシンキナーゼ阻害剤の最適な薬用量は、前立腺癌の型及び進行度、患者の全体的な健康状態、チロシンキナーゼ阻害剤の効力、及び投与経路などの要因によってさまざまに変わるであろう。チロシンキナーゼ薬用量の最適化は、当業者の能力範囲で行えるものである。
【0047】
本発明の別の実施形態は、付属的にタンパク質キナーゼ阻害剤及び糖質コルチコイドを患者に投与することによって患者体内の前立腺癌を治療する方法を提供する。本発明のこの態様によれば、任意のタンパク質キナーゼ阻害剤及び糖質コルチコイドを用いることができ、それらの多くの化合物は本明細書中で論考されているが、他の化合物は当技術分野で公知のものである。また、タンパク質キナーゼ阻害剤及び糖質コルチコイドは任意の適切な方法によって患者に投与するが、その方法の一部を本明細書中に示した。かくしてタンパク質キナーゼ阻害剤及び糖質コルチコイドを好適な調製物に製剤することができ、必要に応じて皮下、静脈内、経口などの経路を介して投与することができる。また、たとえば、糖質コルチコイドをタンパク質キナーゼ阻害剤の投与の前または後に、同時的に患者に投与する。有効な投薬計画の1つには、約5μgと約25μg/kg間の量のタンパク質キナーゼ阻害剤を隔日(たとえば月曜日−水曜日−金曜日または火曜日−木曜日−土曜日などの1週間に2〜4日)に投与することであり、また同時に、約1mg/kgと20mg/kg間の量のデキサメサゾンもヒト患者に隔日で投与することが挙げられる。かかる投与計画では、タンパク質キナーゼ阻害剤を投与する隔日と糖質コルチコイドを投与する隔日とは異なっていてもよいが、同日に投与するほうが好ましい。さらにより望ましくは、同時発生的な治療に先立って、糖質コルチコイドを単独で一回投与する。もとより、本治療は所望の最終結果を達成するために所望の期間にわたって継続することができるが、繰り返すことも可能である。かかる結果には、前立腺癌進行の減弱、当該腫瘍の収縮、または望ましくは、すべての症候の緩解が含まれ得るが、いかなる程度の効果でも、本方法の首尾良いアプリケーションであると考慮する。本方法の効力を評価する好都合な方法は、患者体内の前立腺特異的抗原(PSA)濃度変化に注目する方法である。典型的には、かかる反応は、PSA値を約6週間にわたって測定することによって評価する。望ましくは、本方法によりアプリケーション後6週間でPSA値が少なくとも約50%減少し、より望ましくはPSA値が少なくとも約80%減少する。もとより最も望ましい成果は、PSA値がおよそ正常値まで下がることである。
【0048】
一般的合成法:
MPSフォーマットのキメラの一般的合成方法
以下の手順では、正常結合用HBTU/HOBT法を用いた、96ウェルプレート(MPSプレート)内、6μmolペプチド/ウェルのスケール、リンク(Rink)アミド樹脂上ペプチド合成を記述する。
1グラムのリンク(Rink)アミド(濃度0.6mmol/g)をNMP中で穏やかな揺動状態にて一晩膨潤させた。樹脂を96ウェルプレート(1ウェルにつき約10mg)に分注した。
各ウェルに対して、500μlの25%ピペリジン溶液をNMP中に加えることによってFmoc脱保護を行い、650rpmの回転数で15分間混合し、ピペリジン溶液を窒素の圧力によって除去し、別部分のピペリジン溶液を加えて15分間拘束した。Fmoc脱保護後及び結合後の樹脂の洗浄を、600μlのNMPを各ウェルに入れ、2分間混合し、m窒素圧力によってNMPを除去して行う。この洗浄手順を4回繰り返す。
【0049】
規則結合を、樹脂に対してFmoc保護アミノ酸(150μl、0.2M)溶液をHOBT/NMP中に加え、続いてHBTU溶液をDMF(150μl、0.2M)中に加え、DIEAをNMP(150μl、0.4M)中に加えることによって行う。反応容器のブロックを650rpmの回転数で1時間混合し、次いで窒素の圧力によって除去した。この手順を一回繰り返す。本構築に用いた最後のアミノ酸をN−Boc保護する。構築の終わりに、Pd(PPhe3)4(5%AcOH+02.5%NMMを含有するクロロホルム中0.2M)の500μl溶液を注入して1時間混合することによってアリル脱保護を行う(Glu(OAllyl)またはC−基礎単位)。この手順を一回繰り返す。アリル脱保護後の樹脂の洗浄を、600ulのクロロホルムの各ウェルへの添加、及び5分間の混合によって行う。本溶媒は窒素圧力によって除去する。この洗浄をさらに4回繰り返す。アリル保護リンカーのペプチド樹脂への結合を、アリル保護リンカー(150ul、0.2M、NMP中)を入れ、続いてPyBoP(0.2M、NMP中)及びDIEA(0.4m、NMP中)の添加によって行う。反応容器ブロックを1時間混合し、溶液を窒素の圧力によって除去する。この手順を一回繰り返す。結合後、樹脂を、500μlのNMPを各ウェルに添加することによって洗浄する。リンカーからのアリル除去を、上記に記載した同一手順に従って実行する。アリル脱保護後、イソキノリン誘導体(150μl、0.2M、NMP中)の溶液を追加し、続いてByBoP(150μl、0.2M、NMP中)及びDIEA(150μl、0.4M、NMP中)の添加を行う。反応ブロックを2時間混合する。
この結合後、樹脂の洗浄を、600μlのNMPを各ウェルに添加し、2分間混合することによって行う。本溶媒は窒素圧力によって除去する。この洗浄をさらに4回繰り返す。
【0050】
切断及び包括的脱保護を、樹脂を反応容器ブロックからディープウェルマイクロタイタープレート(切断プレート)に移行することによって行う。このプレートに、92.5%TFA、2.5%H2O、2.5%TIS、2.5%EDTの溶液を350μl追加する。該プレートを1000rpmで1時間混合し、次いでTFA溶液を蒸発させ乾燥する。
Sep−Pak(セップパック)による精製は、900μlの溶液(0.1%TFA、水中)+CH3CN 1:1中で樹脂の残基ペプチドを用いて溶解し、C−18Sep−Pak(セップパック)カートリッジを通すことによって行う。この手順をもう一度繰り返す。プレートを液体窒素中で少なくとも15分間凍結し、ペプチド凍結乾燥する。
【0051】
タンパク質キナーゼ活性阻害のための生物学的スクリーニングアッセイ:
(A)無細胞系(in vitro)におけるタンパク質キナーゼ阻害活性のためのアッセイ:
(A1)PKAのin vitroキナーゼ活性測定法
(1)PKA酵素をPromegaから購入した。PKA活性を7−merペプチド、LRRASLG、として知られているkemptideで測定する。測定を96ウェルプレート内で1ウェルにつき50μlの最終容量で実行する。反応混合物には、種々濃度の阻害剤、50mMのMOPS、10mMのMgAc、0.2mg/mlのBSA、10μMのATP、20μMのKemptide及び1μのCiγ32P ATPが含まれる。反応は、0.1mg/mlのBSA、0.4U/ウェル中に希釈したPKAの触媒サブユニットを15μl添加して開始する。酵素なしの2つの空ウェルをすべての測定に含める。プレートを30℃にて10分間連続的に攪拌する。反応を、12μlの200mMのEDTAを加えることによって停止する。測定混合物の20μl分割量を2cm2のホスホセルロース条片(たとえばWhatman P81)上に点滴し、75mMのリン酸(1サンプルにつき10ml)中に浸漬する。ホスホセルロース条片を6回洗浄する。洗浄を5分間の連続回旋で行う。最後洗浄をアセトン中で行う。条片を空気乾燥した後、シンチレーション分光によって放射を測定する。
【0052】
(2)PKA阻害化合物のスクリーニングを、以下にPKBのために記載したように、96ウェルプレート内でSPAビーズを用いて行ったが、以下の記載と異なる点は、酵素基質を5μMのビオチン標識された−kemptideペプチド(ビオチン−KLRRASLG)としたことである。キナーゼ緩衝液は、50mMのMOPS、pH7、0.2mg/mlのBSA、10mMのマグネシウムアセテートとした。0.1mg/mlのBSA中に希釈したPKA(0.4ユニット)を各ウェルに加えた。
【0053】
(A2)PKBのin vitroキナーゼ活性測定法
(1)PKB活性を、Alessiらの(FEBS Letters 399,333,1996)に記載のように測定したが、異なる点は、ビーズに結合したHA−PKB代わりに、ニッケルカラム上に沈殿後、可溶His−HA−PKBを使用したことである。酵素活性測定を、PKAのためのアッセイに記載のように行う。
(2)PKB阻害用化合物のスクリーニングを、96ウェルプレート内で、先に記載された方法に修正を加えた方法を用いて行った(KumarらのBBA,1526:257−268,2001)。キナーゼ反応を最終容量50μlで実行した。各ウェルには、キナーゼ緩衝液[50mMのTris−HCl pH7.5、10mMのMgCl2、1mMのDTT及び0.1mMのオルトバナジウム酸ナトリウム、0.01%トリトンX−100及び2%ジメチル(Me2SO)]中の2.5μMのビオチン標識された−Crosstideペプチド(ビオチン−KGRPRTSSFA)、His−PKB酵素及び潜在的阻害化合物を含有させた。反応は、10μlの2μM冷ATP及びキナーゼ緩衝液中の0.25μCiの[γ33P]−ATPを加えることによって開始した。gプレートを27℃にて1時間インキュベートした。インキュベーションの終わりに、200μlのPBSを含有する0.1%トリトンX−100、5mMのEDTA、1mMのATP及び0.3mg/mlのSPAビーズ(Amersham Pharmacia Biotech)によって反応を停止した。室温にて15分間のインキュベーション後、Packard GF/B 96ウェルプレートを用いて反応混合物をろ過した。プレートは、2MのNaCl及び1%オルトリン酸で2回洗浄し、続いてエタノール洗浄を行い1時間空気乾燥させた。マイクロプレートPackardトップカウントを用いて放射能を計数した。
【0054】
(A3)PKCのin vitroキナーゼアッセイ
PKCをPromegaから取得し、リン脂質の存在下および不在下で、同一製造者から取得したキットを用いて製造者の指示に従って測定を行った。リン脂質存在下活性からリン脂質不在下活性を減算することによってPKC活性を定量した。アッセイにおけるATP濃度は10μ(ATP=50μMに対するKm)であった。
【0055】
(B)無処置細胞におけるPKB活性阻害のためのアッセイ:
いくつかの癌細胞株を用いて無処置細胞におけるPKB阻害化合物の活性を定量した。ヒト前立腺癌腫細胞株、PC−3及びLNCaP。ヒト急性T細胞白血病細胞株、ジャーカット。ヒト乳癌腫細胞株:MCF−7及びMDA468及び腎アデノ癌腫細胞786−O。LNCaP、MDA468、786−O及びジャーカット細胞株は高い基礎レベルの活性化PKBを発現する。PC−3は中程度の活性化PKBを発現する。MCF−7は、レベルは低いが誘発性の活性化PKBを発現する。対照細胞を、PBL、正常ドナー(血液銀行)から取得した正常末梢血液リンパ球、及び抗腫瘍性の乳房細胞株であるMCF10Fとする。該対照細胞を使用して、タンパク質キナーゼ阻害剤の検査癌細胞及び正常細胞に及ぼす影響を比較検討する。
【0056】
(B1)アポトーシス検出のためのアッセイ:
酵素阻害アッセイにおいて活性であるペプチド複合体を、癌細胞株のアポトーシスの誘導に関して、細胞内で検査した。アポトーシスを、個々の細胞株において少なくとも2つの方法によってアッセイした。細胞を、異なる時点に対する阻害化合物による処置の有無にかかわらず、各方法に対して適切なプレートに播種し、下記方法のうちの1つによって解析した。
【0057】
(a)アネキシンV染色
このアッセイは、細胞膜上のホスファチジル(phosphotidyl)−セリン提示の初期事象を同定する。細胞を、アネキシンV(Bender medsystems)を用いてアポトーシスに対してアッセイした。細胞を6−ウェルプレート(0.3x106/ウェル)に播種し、阻害化合物を用いた治療後24時間、PBSで2回洗浄し、アネキシンV結合性緩衝液(10mMのHepes/NaOH pH7.4、140mMのNaCl及び2.5mMのCaCl2)中で再懸濁した。アネキシンVを1:40で希釈し、0.2nMのヨウ化プロピジウム(PI)と共に個々のサンプルに加えた。1サンプル毎に0.5x106細胞を採取し、FACS法によって解析した。
(b)カスパーゼ活性。
このアッセイはアポトーシスの極めて初期の事象を示す。カスパーゼ(1、8、9、5、7、3、6、4、及び2)活性を、阻害化合物を用いた治療後24時間、CaspaTagカスパーゼ活性キット(Intergene)を用いて、製造者の指示に従ってアッセイした。簡単に、106の懸濁細胞/サンプルを10μlの30X作動希釈液FAM−ペプチド−FMK−フルオレッセインで標識化し、1時間37℃にて5%CO2下でインキュベートした。サンプルを、1X作動希釈液、洗浄緩衝液で3時間洗浄し、細胞ペレットを700μlの同一緩衝液で再縣濁した。2μlの0.2nMヨウ化プロピジウム溶液を加え、カスパーゼ活性をFACS分析によって定量した。
【0058】
(c)DNA断片化測定。
DNA断片化は、アポトーシスカスケードにおける後発事象である。DNA断片化を、阻害化合物を用いた治療後72時間、in situ細胞死検出キット(Roche)を用いて、製造者の指示に従って測定した。簡単に、2x106の接着細胞/サンプルをトリプシン処理し、PBSで2回洗浄し、96ウェルプレート内に置換した。次いで、サンプルを室温にて1時間、PBS内の2%パラホルムアルデヒドを用いて固定し、PBSで洗浄し、氷上で2分間透過処理溶液で再懸濁した。細胞をPBSで2回洗浄し、1時間、37℃にて、標識溶液及びTdT酵素溶液を含有するTUNEL反応混合物を用いて標識化した。サンプルを再度PBSで洗浄し、FACS法によって解析した。
【0059】
(B2)成長阻害アッセイ:
酵素阻害アッセイにおいて活性であることが見出された選択ペプチド複合体を腫瘍細胞株の成長を阻害する能力に関してスクリーニングした。当初、50μMの濃度で阻害化合物のスクリーニングを行った。第1スクリーニングからの活性化合物を、そのIC50を定量するため、種々の濃度(50、25、12.5、6.25、3.125及び1.56μM)にてさらに検査した。成長阻害を、2つの方法:(A)メチレンブルーによる生存能力のある細胞の染色法、(B)3H−チミジンの組み込み法をそれぞれ用いて検査した。両方法の場合、検査化合物を加える前に、96ウェルプレート:LNCaP(1ウェルにつき5000細胞、72時間)、PC3(1ウェルにつき5000細胞、48時間)、ジャーカット(1ウェルにつき2500細胞、24時間)、MDA468(1ウェルにつき5000細胞、24時間)、及び786−O(1ウェルにつき1000細胞、24時間)内で細胞を育てた。本測定は、1〜6日間、3通りで行った。
【0060】
(a)メチレンブルーによる生存能力のある細胞の染色法:
細胞を0.5%グルタルアルデヒド(glutardialdehyde)によって固定し、続いて、1時間、ボラート緩衝液(Sigma社)中で1%メチレンブルーを用いて染色した。次いで、細胞を蒸留水で数回洗浄し、空気乾燥し、37℃にて1時間、0.1MのHClをに加えることによって色を抽出した。°ELISAリーダーにより、600nmにて光学密度を測定することによって色の強度の定量化を行った。
(b)3H−チミジンの組み込み法:
適時に、培養液中、5時間、1uciの3H−チミジン(5Ci/mmoleの在庫、Amersham)を100ulの培地を含有する各ウェルに加えた。インキュベーションの終わりに、細胞を、セルハーベスター(Packard、米国)を用いてPBSで数回洗浄し、数時間空気乾燥し、50μlのシンチレーション液を加えた。マイクロプレートカウンター:Packardトップカウントを用いて放射能を計数した。
Windows(登録商標)3.3、GraphPad Prismバージョン(GraphPad Software,San Diego,USA)の一部位競合モデルにおける非線形回帰を用いて、50パーセント阻害濃度(IC50)値を計算した。
【0061】
(B3)PKB及び下流基質リン酸化の阻害:
PKBの阻害剤として同定されたペプチド複合体を、いくつかのPBK下流基質のリン酸化を阻害する能力に関して細胞内でさらに検査した。基質GSK3は細胞代謝及び細胞サイクルと関連する。フォークヘッド(FKHR)は直接的にアポトーシスと関連する。また、これらのアッセイにおける阻害活性は、陽性化合物が細胞を透過することも示す。
細胞(2x106)を25cm2のフラスコに播種し、正常培地条件にて2日間増殖した。阻害化合物を24時間加え、それらのSer473残基でPKBリン酸化に及ぼす影響、およびPKB、GSK3及びFKHRの特定の基質のリン酸化に及ぼす影響を解析した。治療の終わりに、細胞を溶解緩衝液を用いて溶解した(20mMのTris−HCl、pH7.4、150mMのNaCl、0.5%トリトン−x100、25mMのNaF、2mMのAEBSF、1mMのオルトバナジウム酸ナトリウム、10mMのβ−グリセロリン酸(リン酸塩)、1μg/mlのアプロトニン及び5μg/mlのロイペプチン)。等分量の細胞タンパク質SDS−PAGEによって分解し、PVDF膜にエレクトロブロットした。Cell Signaling Technology社から取得したホスホ−Akt1(Ser473)、ホスホ−GSK3α(Ser21)及びリン光体−FKHR(Thr24)、及びAkt1(Upstate)、GSK3α(Transduction Laboratories)、及びFKHR(Cell Signaling Technology)に対する抗体を用いてウエスタンブロット分析を行った。
MCF−7細胞株を使用する際、阻害化合物の添加後10分間、50ng/mlのIGF−1(Sigma社)を用いて細胞を刺激し、IGF−1のみによって刺激した細胞と比較検討した。阻害化合物の効果を上記詳細のとおり分析した。
【0062】
(C)PKB阻害剤の効力を評価するためのin vivoモデル
急性及び慢性毒性の諸研究によって実験的に決定された化合物の適切な投与量を、腫瘍に対して、その成長のさまざまな段階で注入する。初期段階での注入は、腫瘍成長に対して複合作用を及ぼし、確立した腫瘍への注入は、その退行に影響を及ぼす。加えて、化合物を公知の化学療法薬剤と共に腫瘍に注入するような相乗研究を行い、アポトーシス増加につながるPKB阻害が原因で化学療法に対する感受性を増加した腫瘍から生じる相乗作用効果を評価する。
本化合物を、前立腺癌細胞株に由来する腫瘍異種移植片において、その腫瘍成長に及ぼす影響に関して試験する。
【0063】
(i)PC3細胞
(ii)LNCaP細胞
(iii)MDA468
(iiii)786−O
本研究は、2つの部分:最大耐量(MTD)の決定と、効力実験とに分かれている。
(C1) MTD決定
Balb/Cマウス(雄、生後4〜6週間、Harlan Co.Israel)を用いてMTDを決定した。
急性用MTDの決定:急性用MTDを決定するために、個々の化合物をさまざまな薬用量にてIV注入し、注入後マウスの急性的な臨床的症状の発現を24時間にわたって観察した。
【0064】
加えて、急性用及び慢性用MTDを決定した。第1ステップとして、1kgの体重につき、160、80、40、20及び10mgの薬用量でIP注入を一回づつ行った後、急性用MTDを決定した。慢性用MTDをさらに検査するため、マウスに連続3週間、毎日急性用MTDの50%、25%及び12.5%のIP注入を行った。マウスの全体的な健康状態を、治療期間中及び治療後さらに3週間にわたって毎日監視した。実験終了時点では、全解剖を行った。
【0065】
(C2) PC3腫瘍を有するマウスにおける有効性研究
(a)PC3細胞(5X106)を、雄ヌードマウス(Harlan Co.、Israel)のマトリゲルと臀部に皮下注入した。腫瘍サイズは、キャリパーによって測定し、(式):長さX(幅2)X0.4を用いて決定した。腫瘍を、体積が約50mm3になるまで成長させた後、治療を開始した。化合物の適切な投与量を腫瘍周辺部位(IT注入)に皮下注入した。治療は、週に3回、2週間にわたって隔日毎に与え、腫瘍サイズを2日置きに測定した。
(b)ヒト前立腺のPC−3癌細胞を生後5週間で約20gのBalb/c雄ヌードマウスの皮下に移植した。個々のマウスには、第1日目に2.5x106細胞が提供されるであろう。腹腔内(i.p.)治療は、腫瘍体積が約50mm3到達するときに開始する。i.p.投与は、予備試験において高度に満足できるものであり、血液及び肝臓の安定性、血液を介した腫瘍への分配を実証する。対照群は、1x10−2M滅菌生理食塩水中で媒体(10%DMSOと90%2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン)を用いて処理した。キャリパーによる腫瘍体積の測定値(方程式=長さx幅2x0.4)及び体重は、週3回(月曜日、水曜日及び金曜日)に記録する。マウスの全体的な健康状態は1日に2回監視する。それぞれの媒体による処置群の腫瘍質量が体重の約20%に達する時点、または、治療3週間後に処置群の腫瘍質量が体重の約20%に達しない場合には、マウスを屠殺する。実験終了時点には、個々の群において屠殺したマウスの最初の3匹の腫瘍を回収し、さらなる組織学的な検討のためにパラフィンブロック内に包埋する。残りの腫瘍を回収し、ウエスタンブロット分析用に液体窒素中で凍結する。
【0066】
以下の実施例は、本発明の製造方法及び使用方法を例示する目的で提供されるものであり、本発明を限定するものとして解釈されてはならない。これから本発明をその具体的な実施形態に関して説明するが、当業者であれば多くの修正形態及び変形形態を容易になし得ることは明らかである。従って、かかるすべての修正形態及び変形形態は本発明の特許請求の範囲の真の趣旨及び広義の範囲内に包含されるものとする。
【0067】
実施例1
ペプチド及びペプチド模倣物の複合体の設計及びスクリーニング
3つのペプチド及びペプチド模倣物を核分子として使用し、種々の複合体をベースとする数種類の修正形態を適用した。コアペプチドを、そのタンパク質キナーゼ阻害活性と共に以下の表に提示する。
【0068】
【表1】
【0069】
この実施例においてコアペプチドに対する結合に使用した細胞透過性部分は下記の通りである。
脂肪酸、ステロイド及びかさ高い芳香族または脂肪族の化合物などの疎水性部分。
ステロイド、ビタミン類及び糖類などの細胞膜受容体または担体を有することができる部分。
公知のトランスポーターペプチドまたはアミノ酸。
結果として生じたペプチド複合体をタンパク質キナーゼ活性の阻害に関して種々の無細胞及び細胞に基づくアッセイにおいて検査したが、そのスクリーニングの結果は、一部の修正形態が安定性及び細胞透過性を誘導し、その結果として8〜20μMの細胞活性を関連する細胞株:前立腺癌PC3及びLNCaP、T−細胞白血病ジャーカット、及び乳癌MCF−7において起こすことを示した。加えて、一部の新規複合体は、先に記載のキメラ化合物とは対照的に、PKAよりもPKBに対して10〜20倍選択的でもあった。
【0070】
疎水性部分の複合体ファミリーのうちでは、コレステロールが最善の結果を示したが、テストステロン及びリトコール酸などの他のステロイドは細胞活性をまったく示さなかった。また、脂肪酸複合体の細胞活性は、コレステロールPTR6164の12μMと比べてPTR6180の場合には、極めて低い値25〜50μMを示した。また、PTR6164は、膜受容体、または疎水性検討材料及び膜受容体/トランスポーターの組み合わせを介して透過することもできる。ビオチン及びフルオレッセイン(PTR6158及びPTR6182)などの他の疎水性複合体は、低細胞透過性を示した。
膜受容体またはトランスポーターを目的としたファミリーのうちでは、糖類が極めて低い細胞活性を示した。検査したいくつかのビタミン類は、細胞活性を有していなかったが、15〜20μMの細胞活性を示したビタミンE複合体はその例外である。
ペプチドトランスポーター複合体のうちでは、検査した96のすべての化合物は、in vitroキナーゼアッセイにおいて極めて活性であり、10〜50倍と極めて選択的であったが、細胞内ではほとんどの化合物は不活性であった。選択した6つの活性複合体は細胞内で8〜20μMの活性を示す。
【0071】
実施例2
PTR6154、PTR6184、PTR6180、PTR6244、及びPTR6252の合成
1グラムのリンク(Rink)アミドMBHA樹脂(0.64mmol/g)を焼結ガラス底部を装備する反応容器内のN−メチルピロリドン(NMP)中で膨潤させ、振盪機に載せた。すべてのFmoc保護群を、NMP中の20%ピペリジンとの反応(2回、15分間、各10ml)によって除去し、続いてNMP洗浄(5回、2分間、各15ml)を行った。Fmoc除去はニンヒドリン検査によって監視した。第1アミノ酸を、3当量のFmoc保護アミノ酸+3当量のPyBroP+6当量のDIEA(7mlのNMP中)を用いることによって反応時間1.5時間で樹脂に結合した、他のFmoc保護アミノ酸の結合を、NMP(7ml)中、3当量1.92mmol)のFmocアミノ酸+PyBrop(3当量、1.92mmol)+DIEA(6当量、3.84mmol)を用いて1時間室温にて実行した。反応完了は定性的ニンヒドリン検査(カイザーテスト)によって監視した。個々の結合後、ペプチド樹脂をNMPで洗浄した(5回、15mlのNMPを使用、各2分間)。
【0072】
構築終了時には、ペプチド樹脂をCH2Cl2で洗浄し、低圧力下で乾燥し、次いで、TFA 95%、水2.5%、TIS(トリ−イソプロピル−シラン)2.5%との、アルゴン雰囲気下、0(零)℃にて15分間、及び室温にて1.5時間の反応によって樹脂から切断した。混合物をろ過し、樹脂を小容量のTFAで洗浄した。濾液をロータリエバポレータに配置し、すべて揮発性成分を除去した。油状生成物を取得した。油状生成物をエーテルで倍散し、エーテル液で3回デカントした。白色粉末を取得した。この粗生成物を低圧力下で乾燥した。
【0073】
PTR6154:Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−NH2(配列番号:7)
【0074】
【化1】
【0075】
PTR6184:Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Ala−Hol−NH2(配列番号:9)
【0076】
【化2】
【0077】
PTR6180:ミリスチル−Gly−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−NH2(配列番号:28)
【0078】
【化3】
【0079】
PTR6244:ビタミンEスクシナート−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−NH2(配列番号:25)
【0080】
【化4】
【0081】
PTR6252:(DArg)9−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Ala−Hol−NH2(配列番号:26)
【0082】
【化5】
【0083】
実施例3
PTR6260の合成
500mgのリンク(Rink)アミドMBHA樹脂(0.64mmol/g)を、焼結ガラス底部を装備するリアクター内で1.5時間NMP中で膨潤させ、振盪機に取り付けた。Fmocを、NMP(4ml)中25%ピペリジンを2回15分間用いて樹脂から分離し、続いてNMP(5ml)で各2分間の慎重な洗浄を7回行った。Phe、Ser、Glu、Orn、Arg、Pro、Argの構築を、Fmoc−Phe−OH、Fmoc−Ser(t−Bu)−OH、Fmoc−Glu(OAllyl)−OH、Fmoc−Orn(Boc)−OH、Fmoc−Arg(Pbf)−OH、及びFmoc−Pro−OHのそれぞれを用いて結合サイクルによって達成した。個々の結合サイクルでは、アミノ酸(3当量)をNMP中に溶解し、PyBroP(3当量)及びDIEA(6当量)を用いて活性化した。ポジション4にてFmoc−Arg(Pbf)−OHの結合後、アリル脱保護を、5%AcOH及び2.5%NMMを含有するCH2Cl2溶液中のPd(PPh3)4を用いて行った。遊離酸を、NMP中3当量のPyBoP、6当量のDIEAによって活性化し、3当量のエチレンジアミンスルホンアミドイソキノリンと1時間結合した。結合後、ペプチド樹脂をNMPで洗浄し、次いでFmocを除去し、続いてFmoc−Pro−OHとFmoc−Arg(Pbf)−OHとの結合を行った。コレステロールのN−末端Argへの結合を、ジオキサン:1、コレステロール(5当量)+BTC(1.66当量)+コリジン(15当量)を含有する3−ジクロロプロパン1:2の溶液を15ml加えることによって実行した。結合時間は1.5時間であった。
【0084】
合成の終わりに、アルゴン雰囲気下、0(零)℃にて15分間、次いで室温にて1時間、総容量10mlの反応混液混合物中で70%TFA、7%TIS及び23%CH2Cl2を用いてペプチドを樹脂から切断した。抽出フィルターを介して溶液をポリプロピレンチューブ内にろ過し、CH2Cl2中70%TFAの溶液5mlを用いて樹脂を洗浄した。結合溶液を蒸発させて油状残基を得、該油状残基を冷Et2Oによる処理を行って凝固させる。真空下、一晩にわたる白色固体のEt2O層の遠心分離及びデカンテーション、及び冷Et2Oの追加部分による処理、それに続く遠心分離、デカンテーション及び乾燥を行うことによって以下の構造を有するPTR6260を示した粗材料を得た。
【0085】
PTR 6260:コレステリル−O−CO−Arg−Pro−Arg−Orn−Glu(アミノエチルスルホンアミドイソキノリン)−Ser−Phe−NH2(配列番号:27)
【0086】
【化6】
【0087】
実施例4
コレステロールに結合したペプチドの合成
1グラムのリンク(Rink)アミドMBHA樹脂(0.64mmol/g)を焼結ガラス底部を装備する反応容器内のN−メチルピロリドン(NMP)中で膨潤させ、振盪機に載せた。すべてのFmoc保護群を、NMP中の20%ピペリジンとの反応(2回、15分間、各10ml)によって除去し、続いてNMP洗浄(5回、2分間、各15ml)を行った。Fmoc除去はニンヒドリン検査によって監視した。第1アミノ酸を、3当量のFmoc保護アミノ酸+3当量のPyBroP+6当量のDIEA(7mlのNMP中)を用いることによって反応時間1.5時間で樹脂に結合した、他のFmoc保護アミノ酸の結合を、NMP(7ml)中、3当量1.92mmol)のFmocアミノ酸+PyBrop(3当量、1.92mmol)+DIEA(6当量、3.84mmol)を用いて1時間室温にて実行した。反応完了は定性的ニンヒドリン検査(カイザーテスト)によって監視した。個々の結合後、ペプチド樹脂をNMPで洗浄した(5回、15mlのNMPを使用、各2分間)。コレステロールのN−末端Argへの結合を、ジオキサン:1、コレステロール(5当量)+BTC(1.66当量)+コリジン(15当量)を含有する3−ジクロロプロパン1:2の溶液を15ml加えることによって実行した。結合時間は1.5時間であった。
【0088】
構築終了時では、ペプチド樹脂をCH2Cl2で洗浄し、低圧力下で乾燥し、次いで、TFA 70%、水、TIS(トリ−イソプロピル−シラン)7%、CH2Cl223%との、アルゴン雰囲気下、0(零)℃にて10分間、及び室温にて50分の反応によって樹脂から切断した。混合物をろ過し、CH2Cl2中の小容量の70%TFAで樹脂を洗浄した。濾液をロータリエバポレータに配置し、すべて揮発性成分を除去した。油状生成物を取得した。油状生成物をエーテルで倍散し、エーテル液で3回デカントした。白色粉末を取得した。この粗生成物を低圧力下で乾燥した。
【0089】
PTR6164:コレステリル−O−CO−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−NH2(配列番号:22)
【0090】
【化7】
【0091】
PTR6196:コレステリル−O−CO−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Ala−Hol−NH2(配列番号:23)
【0092】
【化8】
【0093】
PTR6198:コレステリル−O−CO−Gly−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Ala−Hol−NH2(配列番号:24)
【0094】
【化9】
【0095】
実施例5
トランスポーターペプチドに結合したペプチド
表2では、トランスポーターペプチドを含むペプチド複合体のスクリーニングを記述する。細胞内でも活性であったペプチドには斜線を施した。
【0096】
【表2−01】
【表2−02】
【0097】
表3には、選択したトランスポータープレート60025からの最も活性であるペプチドのIC50(μM)値を示す。上記のアッセイB2に従って成長阻害を測定した。上記のアッセイA2、LNCaP細胞におけるPKBのin vitroキナーゼ活性測定法に従って、in vitroのPKB阻害を測定した。
【0098】
【表3】
【0099】
実施例6
ペプチド複合体の活性
選択した最も活性であるペプチド複合体の活性及び選択性を表4に提示する。
【表4】
【0100】
癌細胞における細胞死を引き起こす化合物の能力を判定するこれら化合物の成長阻害曲線を下記の図1〜図3に提示する。
図1には、PTR6164及びPTR6244による治療後のPC3細胞の生存性を描写し、図2には、PTR6180、PTR6198及びPTR6244による治療後のLNCaP細胞の生存性を記述し、図3には、PTR6252、PTR6260及びPTR6244による治療後のLNCaP細胞の責務を示す。
記載の高阻害活性は、本化合物には、効果的な抗癌薬物としての化合物の評価において重要な、腫瘍における細胞死または成長停止を誘導することに効率的であることを示す。
表5では、細胞内で不活性な選択ペプチド複合体を提示する。
【0101】
【表5】
【0102】
実施例7
細胞内におけるペプチド複合体の阻害活性のさらなる評価
下流基質リン酸化アッセイは、PKB経路において阻害剤が作用しているかどうかを評価することを目的とする。いくつかのタンパク質をリン酸化するPKBは、細胞サイクル、細胞代謝及びアポトーシス、及び細胞内の酵素阻害に関与する結果、その基質のリン酸化を低下させる。これらの諸研究では、GSK3(細胞代謝と関連する)及びFKHR(フォークヘッド、アポトーシスと直接的に関連する)のリン酸化を検討した。その結果は、癌細胞の本発明に係る選択ペプチド複合体への暴露によって生じるこれら基質のリン酸化における著しい減少を示す。
PKBは、癌細胞のアポトーシスにおいて中心的な役割を演じる。PKBは、癌細胞によるプログラム細胞死を防止する「生存シグナル」を送信する。よって、該阻害は、アポトーシスを介した細胞死を引き起こす。アポトーシスアッセイは、本PKB阻害剤と接触する癌細胞がプログラム細胞死の結果として死滅することの確定を目的とする。これは、阻害剤の効果は単なる細胞毒性ではなく、PKBの阻害によって誘導されるアポトーシスプロセスであることを意味する。アポトーシスは複雑なプロセスなので、さまざまなステップを標的にする下記の3つのアッセイを使用する。それらおnアッセイは、(1)極めて初期のアポトーシス事象における種々のカスパーゼの活性を測定するカスパーゼ活性アッセイ。(2)より高度な事象において細胞膜上に存在する特定化合物を染色するアネキシンV染色。及び(3)アポトーシスプロセスにおいて後発的に起こるDNA断片化。その結果は、選択した阻害剤が少なくとも2つの異なるアポトーシスアッセイにおいて効果を有することを示す。
図4では、LNCaP細胞におけるAKT(S473)及びGSK3(S9/21)リン酸化の同定を開示する。細胞を30μMのPTR6164、PTR6196または10uMのPTR6072で24時間処理し、ウエスタンブロット分析法によってリン酸化を測定した。
【0103】
表6では、DNA断片化をLNCaP細胞内のアポトーシスのマーカー及びジャーカット細胞内のカスパーゼ活性として示し、LNCaP細胞を30μMのPTR6198、PTR6196、PTR6164またはPTR6244で72時間処理した。ジャーカット細胞を15μMのPTR6198、PTR6196、PTR6164または25μMのPTR6244で24時間処理した。アポトーシスは、材料および方法において詳細したように、LNCaP細胞内のDNA断片化測定及びジャーカットにおけるカスパーゼ活性のFACS分析によって測定した。
【0104】
【表6】
【0105】
実施例8
PKBの細胞透過性および血清安定性の阻害剤としてのPTR6164のさらなる特徴付け
ここで活性なPKB阻害剤として発見したPTR6164は、いくつかの追加アッセイにおいてさらに特徴づけられている。最近明らかになったのは、この化合物が強力で選択的な血清安定性を持つ細胞透過性PKB阻害剤であって、抗癌薬物のさらなる開発に有望な候補であるという事実である。この化合物は、癌細胞内の細胞死、3つの異なるアッセイにおいてアポトーシスを誘導し、減少GSK3及びFKHRのリン酸化を減少する。
図5には、37℃でのマウス血漿中におけるPTR−6164のバイオスタビリティーの結果を示す。0.5mgのPTR6164を50μlのDMSO中に溶解し、水で450倍希釈した。10μlのこの溶液を、さまざまな時間に、各3通りに、90μlのマウス(Balb C)血漿に加え、37℃でインキュベーションした。インキュベーション後、サンプルを一晩凍結した。ペプチド量を、水で5倍に希釈した後の血漿から直接的にHPLC−MSによって決定した。個々のサンプルを以下の仕様を用いて2回注入した。
【0106】
カラム:pep85C18Zobrax 2.1*50mm
溶出剤:MeCN:水(+0.1%TFA)8:2、2.1分のRTでペプチド出現。
検出器:SRM、MS、スプリットレスモード。
実行時間:6分間。
図6には、アネキシンV染色を用いてジャーカット細胞内に誘導したアポトーシスを示す。細胞を12.5μMまたは25μMのPTR6164で12及び24時間処理し、及び時間/用量依存性アポトーシスをアネキシンV染色及びFACS分析によって測定した。
【0107】
実施例9
正常血球と対比した癌細胞内の本PKB阻害剤によって誘導された細胞成長阻害
阻害剤の安全性を評価するするために、誘導された癌(前立腺LNCaP系)細胞死を誘導された正常血球死と比較した。第7図において、PTR6164(A)及びPTR6260(B)を結合するペプチドは7〜11μMで癌細胞の死を引き起こすが、正常細胞に対しては50μMを超えても安全であることが観察されるであろう。逆に、小分子(PTR6074)は、正常細胞に対する場合と比べると癌細胞に対して3倍の毒性を持つ。
【0108】
実施例10
インビトロ研究
鉛化合物PTR6164をはじめとする選択した活性複合体を、使用上の最大耐量(MTD)を決定するために上記のアッセイ(C1)で検査した。PTR6164に対して見出されたMTD値は、極めて安全な値と考慮される130mg/kg以上であった。PTR6164の高安全性によって、極めて大きな治療濃度域が可能になる。複合体をさらに、上記(C2)で記載したように有効性研究においてin vivoで下記の通り検査した。
ペプチドを隔日毎に腫瘍領域に注入した。3注入後、腫瘍サイズ低減の指標傾向を観察した。第2週間で、低減は継続し、高投与量のPTR6164によって処置した群では、5匹の動物のうちの4匹は、第8図に記載のように腫瘍の完全退行を示した。ペプチド投与量は3.3mg/kgではあったが、この化合物のMTDは40倍高く、高い治療指数を指摘する。
MTDが0.5及び0.25である、2つの濃度66mg/kg及び33mg/kgを検査した。比較的に高い用量を選択したが、その理由は、本発明者等には前もって本化合物の薬物動態学に関する認識がなく、高用量の結果として毒性効果は期待されたものの、最大効果を得ることを望んだからである。
化合物を生理食塩水中10%DMSO/90%シクロデキストリンの溶液中に溶解した。各9匹のマウスからなる6群を検査した。2群には化合物を48時間毎にi.v.注入し、2群には動化合物を毎日i.p.注入した。治療は、移植後7日目に開始し、21日間を継続し、続いて14日間の観察期間をおいた。実験は、表7のように4つの実験群からなる。
【0109】
【表7】
【0110】
結果は、48時間毎に注入を受けた群が腫瘍サイズへの影響を表さないことを示した。しかし、毎日注入を受けた群は、腫瘍成長の著しい阻害を示した。興味深いことには、66mg/kg及び33mg/kgの両投与は同一の効果を示し、効力を失うことなしに濃度をさらに低下できる可能性があることを暗示した。最も重要なことは、実験により、化合物を血流を介して腫瘍に効果的に分配し得ることが証明された。これはペプチドベースの薬物にとって極めて重要な観察である。図9には、2つの異なるi.p.処置群の対照動物及び処置動物における腫瘍サイズのグラフを描写し、図10には、PTR6164の、異種移植片を有するヌードマウスPC3からの染色された腫瘍切片におけるアポトーシス及び有糸分裂への影響を記述する。阻害剤の効果が、腫瘍病原力に関わらず極めて著しいことは明白である。この化合物の予備試験は、6164の一般構造体を持つペプチドベースの化合物を全身的に効率的かつ効果的に投与できることを証明した。
【0111】
実施例11
PTR6164の最適化
最適化プロセスをプロトタイプ化合物PTR6164に対して行い、PTR6164の一般構造体を有する新規化合物を、構造上のペプチド模倣修飾と共に、タンパク質キナーゼ活性阻害向けに合成及びスクリーニングした。配列及び活性結果を表8に提示する。驚いたことに、Lys2−4のPTR6164への添加が、化合物のin vitro活性に寄与することが見出された。具体的には、わずかな量の新規化合物が、すべての細胞アッセイにおいてPTR6164よりも約5倍強力であり、著しくより選択的であることが判明した。
【0112】
【表8−01】
【表8−02】
【表8−03】
【表8−04】
【0113】
活性が癌細胞内で観察されたが正常細胞では観察されないとき(PBLs IC50/LNCaPIC50>5)、及びPKB阻害活性が0.5μM以上であり、PKA阻害活性が少なくとも3倍低いときには化合物を活性であると考慮した(表で斜線背景)。
【0114】
実施例12
PTR6320:コレステリル−O−CO−(DLys)3−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−NH2(配列番号:10)の合成
1グラムのリンク(Rink)アミドMBHA樹脂(0.64mmol/g)を焼結ガラス底部を装備する反応容器内のN−メチルピロリドン(NMP)で3時間膨潤させ、振盪機に載せた。すべてのFmoc保護群をNMP中の25%ピペリジンとの反応(2回、15分間、各10ml)によって除去し、続いてNMP洗浄(5回、2分間、各15ml)を行った。Fmoc除去はニンヒドリン検査によって監視した。第1アミノ酸を、3当量のFmoc保護アミノ酸(Fmoc−Hol−OH)+3当量のPyBroP+6当量のDIEA(7mlのNMP中)を用いることによって反応時間1.5時間で樹脂に結合した、他のFmoc保護アミノ酸[Fmoc−Dap(Boc)−OH、Fmoc−Tyr(tBu)−OH、Fmoc−Nva−OH、Fmoc−Arg(Pbf)−OH及びFmoc−DLys(Boc)−OH]の結合を、3当量(1.92mmol)のFmocアミノ酸+PyBrop(3当量、1.92mmol)+DIEA(6当量、3.84mmol)、NMP中(7ml)室温にて1時間(または別法として、DMF中、3当量のFmoc−AA−OH+3当量のHOBT+3当量のDICを用いて室温にて1時間)を用いて実行した。反応完了は定性的ニンヒドリン検査(カイザーテスト)によって監視した。個々の結合後、ペプチド樹脂をNMPで洗浄した(5回、15mlのNMPを使用、各2分間)。コレステロールのN−末端DLysへの結合を、ジオキサンとコレステロール(5当量)+BTC(1.66当量)+コリジン(15当量)を含有する1、3−ジクロロプロパンとの混合率が1:1の溶液を15ml加えることによって実行した。結合時間は60℃にて1.5時間であった。
【0115】
構築終了時には、ペプチド樹脂をCH2Cl2で洗浄し、低圧力下で乾燥し、次いで7%TIS(トリ−イソプロピル−シラン)、23%CH2Cl2を含有する25mlのTFA溶液を用いて、アルゴン雰囲気下、0(零)℃にて10分間及び、室温にて1時間の反応によって樹脂から切断した。混合物をろ過し、CH2Cl2中の小容量の70%TFAで樹脂を洗浄した。濾液をロータリエバポレータに配置し、すべて揮発性成分を除去した。油状生成物を取得した。油状生成物をエーテルで倍散し、エーテル液で3回デカントした。白色粉末を取得した。この粗生成物を低圧力下で乾燥した(粗ペプチドの65%収率)。
【0116】
実施例13
PTR6320及びPTR6344の付加的特徴付け
一連のin vitroアッセイでは、PTR6320及びPTR6344が前立腺癌細胞株において1−2μMで細胞死及びアポトーシスを誘導するが、正常細胞に対しては40μMでも安全であることが見出された。また、新規化合物は、3μMで癌細胞におけるアポトーシス誘導し、3〜5μMでウエスタンブロット法によるPKB下流基質の阻害を示す。図11には、タンパク質キナーゼA活性と対比したタンパク質キナーゼBの阻害において、PTR6164よりも改良されたPTR6320のin vitro選択性(約20倍)を示す。表9には、正常通常と対比した前立腺癌細胞株における、タンパク質キナーゼ阻害剤によって誘導された細胞死を表す。誘導される細胞死の規模は、図12に記載のように種々の細胞における活性化PKBの値と直接的に相関する。最適化された鉛化合物PTR6320及びPTR6344は、プロトタイプ分子PTR6164と比較して5倍優れた効力とより改良された選択性を示す。表9に記載のように、そのレベルは、本阻害剤によって誘導される細胞死の規模と直接的に相関する。
【0117】
【表9】
【0118】
表10では、ヒト乳房アデノ癌腫細胞株MDA−468及びヒト腎細胞株786−Oにおける、PTR6164及びその最適化された化合物のIC50値を記述する。
【0119】
【表10】
【0120】
図13には、PTR6164、PTR6320及びPTR6344で処理したLNCaP細胞におけるAKT及びFKHRリン酸化のウエスタンブロット分析を記述する。第14図には、PTR6164及びPTR6320で処理した786−O(A)細胞及びMDA468(B)細胞におけるAKT及びFKHRリン酸化のウエスタンブロット分析を記述し、第15図では、カスパーゼ活性によって測定したPTR6164及びPTR6320による前立腺癌細胞(LNCaP)におけるアポトーシスの誘導を示す。
加えて、PTR6320の肝癌腫細胞におけるin vitro代謝をLC−MSによって分析した。結果は、1時間後の初期の薬物代謝及び24時間後の進行した薬物代謝を示す。Hep G2細胞を30uMのPTR6320で6時間インキュベートし、ペプチドを細胞の上澄み及びペレットから抽出した。サンプルを、MS ESI検出器をスプリットレスモードで使用して、溶出剤中のpep 24C18Vydac 1.0*150mmカラム、MeCNと水(+0.1%TFA)の勾配を用いてLC−MSによって解析した。結果は、6時間後、ペプチドのC末端からのdes Tyr−Dap−HolであるPTR6320の1主要代謝物と共に依然としてかなりの量の非分解性ペプチドが存在することを示す。これは、肝細胞におけるPTR6320の緩慢な劣化を示し、効率的な分配のため、ペプチドをシステムに十分な時間保持することができることを暗示する。
未処置動物(33mg/kgのPTR6164を用いたi.p.治療)と対比した処置動物からの腫瘍切片におけるアポトーシス及び有糸分裂の結果を表11に提示する。
個々の群からの3つの腫瘍を検討した結果、PKBの阻害を介してアポトーシスの誘導を暗示する処理腫瘍におけるアポトーシス増加の明らかな傾向を認めた。腫瘍を、長期間的な効果を検討するために一切の処置を施さない14日間の観察期間後に回収した。腫瘍切片での有糸分裂に対するアポトーシスの比率は腫瘍生存性を表現する。生存能力のある組織では有糸分裂プロセスが優性であり、アポトーシスは劣性であるが、瀕死の組織ではこの関係は逆となる。腫瘍成長において退行が見られるときは、処理マウスの腫瘍において見られるように、有糸分裂細胞よりもアポトーシス細胞の数が多い。
【0121】
【表11】
【0122】
実施例14
PTR6320及び他の化学療法薬の組み合わせを用いた治療
使用した化学療法薬は、ミトキサントロンヒドロ塩化物(Novantrone,Wyeth Lederle S.p.A.Catania、Italy)であり、3.8mMの滅菌水の溶液として供給された。ドキソルビシン、エトポシド及びビンブラスチン硫酸塩(Sigma社)を100%DMSOに溶解して10mMの濃度で保存溶液を調製した。ポリソルバート80中、11.6mMのドセタキセル(Taxpter、Aventis)保存溶液。インビトロ研究に使用する直前に、これらの薬剤を培地中で希釈した。
上記のように、6つの濃度の化学治療用薬剤の存在下で、PTR6320の有無にかかわらず、成長阻害アッセイを行った(そのIC50値の上下で)。本薬物の存在下で、細胞を5日間インキュベートし、続いてメチレンブルーによる細胞の固定及び染色を行った。上記のように、各化学療法薬単独の場合及びPTR6320の存在下でのIC50値を算出した。
【0123】
前立腺癌細胞株の細胞死における相乗作用効果を、治療本発明のタンパク質キナーゼ阻害剤といくつかの市販化学療法薬剤との組み合わせを用いて図16A〜図16Eに示す。1.5μMのPTR6320と組み合わせたときには、個々の薬物のIC50において10〜10倍の改善が認められる。その結果を表12に要約した。
【0124】
【表12】
【0125】
本発明を特定の好適な実施形態及び実施例に関して説明したが、当業者ならば、本発明のペプチド及び類似体の活性を最適化するために多くの変形形態及び修正形態行い得ることは理解されるであろう。これらの実施例は、非制限的であり、開示した本発明の原理および以下に記載の特許請求の範囲によって規定する範囲を例示するためのものであることを解釈されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】成長阻害アッセイで測定したPTR6164及びPTR6244による治療後のPC3細胞の生存性。
【図2】成長阻害アッセイで測定したPTR6180、PTR6198及びPTR6244による治療後のLNCaP細胞の生存性。
【図3】成長阻害アッセイで測定したPTR6252、PTR6260及びPTR6244による治療後のLNCaP細胞の生存性。
【図4】PTR6072、PTR6196及びPTR6164で処理したLNCaP細胞におけるAKT(S473)及びGSK3(S9/21)リン酸化のウエスタンブロット分析。
【図5】HPLCで測定した血漿中PTR6164のバイオスタビリティー。
【図6】アネキシンV染色及びFACS分析を用いて測定した、PTR6164によってジャーカット細胞内に誘導されたアポトーシス。
【図7】正常血球内と対比した癌細胞内におけるPKB阻害剤、PTR6164(A)及びPTR6260(B)によって誘導された細胞成長阻害。
【図8】PTR6164のくも膜下腔内(i.t.)投与を用いた、PC3腫瘍異種移植片のマウスにおけるインビボ検査の効力。
【図9】マウス内の前立腺癌異種移植片の成長に対するPTR6164の全身(腹腔内(i.p.))投与の影響。
【図10】ヌードマウス内で成長するPC3腫瘍及び染色された腫瘍切片内におけるアポトーシス及び有糸分裂に対するPTR6164を用いた治療の影響。
【図11】タンパク質キナーゼB活性と対比したタンパク質キナーゼAの阻害におけるPTR6164に比べたPTR6320のin vitro選択性。
【図12】正常細胞と対比した前立腺癌細胞株におけるPTR6320によって誘導された細胞死。
【図13】PTR6164、PTR6320及びPTR6344で処理したLNCaP細胞におけるAKT及びFKHRリン酸化のウエスタンブロット分析。
【図14】PTR6164及びPTR6320で処理した786−O(A)細胞及びMDA468(B)細胞におけるAKT及びFKHRリン酸化のウエスタンブロット分析。
【図15】PTR6164及びPTR6320によって前立腺癌細胞株(LNCaP)において誘導された、カスパーゼ活性による前立腺癌細胞におけるアポトーシスの誘導。
【図16】タンパク質キナーゼ阻害剤と公知の化学療法薬剤との併用治療を用いた治療後の前立腺癌細胞株の細胞死。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1部分及び第2部分を有する分子を含むタンパク質キナーゼ阻害剤であって、該第1部分は当該分子の細胞透過能を持ち、該第2部分は当該細胞内におけるタンパク質キナーゼ阻害効果を持ち、当該第1部分は直接結合またはスペーサーを介して当該第2部分に結合されているタンパク質キナーゼ阻害剤。
【請求項2】
タンパク質キナーゼBに対して選択性がある請求項1に記載のタンパク質キナーゼ阻害剤。
【請求項3】
第2部分がPKB基質またはPKB基質の模倣物を含むペプチドまたはペプチド模倣物である請求項2のタンパク質キナーゼ阻害剤。
【請求項4】
PKB基質がグリコーゲン合成酵素キナーゼ3(GSK3)である請求項3のタンパク質キナーゼ阻害剤。
【請求項5】
第2部分が5−20アミノ酸のペプチドである請求項1に記載のタンパク質キナーゼ阻害剤。
【請求項6】
第2部分が6−15アミノ酸のペプチドである請求項1に記載のタンパク質キナーゼ阻害剤。
【請求項7】
第2部分がペプチド模倣物である請求項1に記載のタンパク質キナーゼ阻害剤。
【請求項8】
第1部分と第2セグメントとが共有結合を介して直接的に結合された請求項1のタンパク質キナーゼ阻害剤の複合体。
【請求項9】
当該共有結合がアミド結合である請求項8のタンパク質キナーゼ阻害剤複合体。
【請求項10】
第1部分と第2部分とがスペーサーを介して結合された請求項1に記載のタンパク質キナーゼ阻害剤。
【請求項11】
スペーサーが少なくとも1つのアミノ酸残基を含む請求項9のタンパク質キナーゼ阻害剤。
【請求項12】
第1部分が、タンパク質キナーゼ阻害性ペプチド部分のアミノ末端に結合する請求項1〜11のいずれかに記載のタンパク質キナーゼ阻害剤。
【請求項13】
第1部分が、タンパク質キナーゼ阻害性ペプチド部分のカルボキシ末端に結合する請求項1〜11のいずれかに記載のタンパク質キナーゼ阻害剤。
【請求項14】
ATPの模倣部分をさらに含む請求項1に記載のタンパク質キナーゼ阻害剤。
【請求項15】
ATPの模倣部分がイソキノリン誘導体である請求項14のタンパク質キナーゼ阻害剤。
【請求項16】
第2部分が下記式(I)(配列番号:2)のペプチド、その類似体、塩類または機能的誘導体を含む請求項1に記載のタンパク質キナーゼ阻害剤。
式(I):M−X1−Pro−Arg−X4−X3−X5−X7
上記式では、
Mは不在であるか、またはD−Lys2−4またはL−Lys2−4から選択されるものであり、
X1は、Arg、Lys、OrnまたはDabであり、
X4は、Nva、Leu、Ile、AbuまたはOrnであり、
X5は、Tyr、Gly、GlyNH2、Ser(Me)、Glu、またはGlu(NH−(CH2)2−NH−SO2−イソキノリン)であり、
X6は、Dap、Abu、GlyNH2、Ser(Me)、Gly、AlaまたはSerであり、及び
X7は芳香族または脂肪族のかさ高い残基である。
【請求項17】
下記式(II)(配列番号:3)のペプチド、その類似体、塩類または機能的誘導体を含む請求項16に記載のタンパク質キナーゼ阻害剤。
式(II):M−Arg−Pro−Arg−X4−X5−X6−X7
上記式では、
Mは、D−Lys3またはLys3であり、
X4は、Nva、Leu、Ile、AbuまたはOrnであり、
X5は、Tyr、Gly、GlyNH2、Ser(Me)、Glu、またはGlu(NH−(CH2)2−NH−−SO2−イソキノリン)であり、
X6は、Dap、Abu、GlyNH2、Ser(Me)、Gly、AlaまたはSerであり、及び
X7は芳香族または脂肪族のかさ高い残基である。
【請求項18】
X7がPheまたはHolである請求項16または17のタンパク質キナーゼ阻害剤。
【請求項19】
下記からなる群から選択されるペプチドを含む請求項16または17のタンパク質キナーゼ阻害剤。
DLys−DLys−DLys−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol(配列番号:5)、
Lys−Lys−Lys−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol(配列番号:6)、
Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol(配列番号:7)、
Arg−Pro−Arg−Orn−Glu−(NH−(CH2)2−NH−SO2−イソキノリン)Ser−Phe(配列番号:8)および、
Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Ala−Hol(配列番号:9)。
【請求項20】
細胞透過部分が、コレステロール、(DLys)2−10、(Lys)2−10、ビタミンE、Arg−Gln−Ile−Lys−Ile−Trp−Phe−Gln−Asn−Arg−Arg−Met−Lys−Trp−Lys−Lys、AhX6−DArg−DArg−DArg−DArg−DGln−Arg−DLys−DLys−DArg、及び(DArg)7−9からなる群より選択される請求項16〜19のいずれか一項に記載のタンパク質キナーゼ阻害剤であって、Zは不在であるか、またはカルバマート及びGlyより選択されるタンパク質キナーゼ阻害剤。
【請求項21】
下記式(III)(配列番号:4)のペプチド複合体を含む請求項1に記載のタンパク質キナーゼ阻害剤。
式(III):Y−Z−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−X6−Hol
上記式では、X6がDapまたはAlaであり、
Yは、細胞透過部分であり、及び
Zは、Yをペプチドに結合させるスペーサーまたは結合である。
【請求項22】
Yが、コレステロール、(DLys)2−10、(Lys)2−10、ビタミンE、Arg−Gln−Ile−Lys−Ile−Trp−Phe−Gln−Asn−Arg−Arg−Met−Lys−Trp−Lys−Lys、AhX6−DArg−DArg−DArg−DArg−DGin−Arg−DLys−DLys−DArg、及び(DArg)7−9からなる群より選択される請求項21のタンパク質キナーゼ阻害剤であって、Zは不在であるか、またはカルバマート及びGlyより選択されるタンパク質キナーゼ阻害剤。
【請求項23】
下記からなる群から選択される請求項1に記載のタンパク質キナーゼ阻害剤。
コレステリル−O−CO−DLys−DLys−DLys−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−NH2(配列番号:10)、
コレステリル−O−CO−Lys−Lys−Lys−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−NH2(配列番号:11)、
コレステリル−O−CO−(DLys)4−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−NH2(配列番号:12)、
コレステリル−O−CO−(DLys)6−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Ser(Me)−Hol−NH2(配列番号:13)、
コレステリル−O−CO−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−(DLys)3−NH2(配列番号:14)、
コレステリル−O−CO−(DLys)3−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Ser(Me)−Hol−NH2(配列番号:15)、
コレステリル−O−CO−(Lys)3−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−OH(配列番号:16)、
コレステリル−O−CO−(CH2)2−CO−(DLys)3−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−NH2(配列番号:17)、
コレステリル−O−CO−Orn−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−NH2(配列番号:18)、
コレステリル−O−CO−(DLys)3−Lys−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−NH2(配列番号:19)、
ビタミンE−CO−(CH2)2−CO−(DLys)3−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−NH2(配列番号:20)、
コレステリル−O−CO−(DLys)2−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−NH2(配列番号:21)、
コレステリル−O−CO−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−NH2(配列番号:22)、
コレステリル−O−CO−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Ala−Hol−NH2(配列番号:23)、
コレステリル−O−CO−Gly−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Ala−Hol−NH2(配列番号:24)、
ビタミンE−スクシナート−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−NH2(配列番号:25)、
H−(DArg)9−Gly−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Ala−Hol−NH2(配列番号:26)、及び
コレステリル−O−CO−Arg−Pro−Arg−Orn−Glu(アミノエチルスルホンアミドイソキノリン)−Ser−Phe−NH2(配列番号:27)。
【請求項24】
活性成分としてのタンパク質キナーゼ阻害剤複合体を含む医薬品組成物であって、当該阻害剤複合体が、少なくとも第1部分及び第2部分を有しており、該第1部分は当該分子の細胞透過能を持ち、該第2部分は当該細胞内におけるタンパク質キナーゼ阻害効果を持ち、当該第1部分はリンカーを介して当該第2部分に結合されている分子を含む医薬品組成物。
【請求項25】
当該タンパク質キナーゼ阻害剤がタンパク質キナーゼBに対して選択性がある請求項24の医薬品組成物。
【請求項26】
当該タンパク質キナーゼ阻害剤の第2部分がPKB基質またはPKB基質の模倣物を含むペプチドまたはペプチド模倣物である請求項25の医薬品組成物。
【請求項27】
PKB基質がGSK3である請求項26の医薬品組成物。
【請求項28】
当該タンパク質キナーゼ阻害剤の第2部分が、5−20アミノ酸のペプチドである請求項24の医薬品組成物。
【請求項29】
当該タンパク質キナーゼ阻害剤の第2部分が、6−15アミノ酸のペプチドである請求項24の医薬品組成物。
【請求項30】
当該タンパク質キナーゼ阻害剤の第2部分がペプチド模倣物を含む請求項24の医薬品組成物。
【請求項31】
当該タンパク質キナーゼ阻害剤の第1部分及び第2部が共有結合を介して直接的に結合されている請求項24の医薬品組成物。
【請求項32】
共有結合がアミド結合である請求項31の医薬品組成物。
【請求項33】
当該タンパク質キナーゼ阻害剤の第1部分及び第2部がスペーサーを介して結合されている請求項24の医薬品組成物。
【請求項34】
スペーサーが少なくとも1つのアミノ酸残基を含む請求項33の医薬品組成物。
【請求項35】
当該タンパク質キナーゼ阻害剤の第1部分が、タンパク質キナーゼ阻害性ペプチド部分のアミノ末端に結合している請求項24〜34のいずれか一項に記載の医薬品組成物。
【請求項36】
当該タンパク質キナーゼ阻害剤の第1部分が、タンパク質キナーゼ阻害性ペプチド部分のカルボキシ末端に結合している請求項24〜34のいずれか一項に記載の医薬品組成物。
【請求項37】
ATPの模倣部分をさらに含む請求項24に記載の医薬品組成物。
【請求項38】
ATPの模倣部分がイソキノリン誘導体である請求項37の医薬品組成物。
【請求項39】
タンパク質キナーゼ阻害剤が下記の式(I)(配列番号:2)のペプチド、その類似体、塩類または機能的誘導体を含む請求項24の医薬品組成物。
式(I):M−X1−Pro−Arg−X4−X5−X6−X7
上記式では、
Mは不在であるか、またはD−Lys2−4またはL−Lys2−4から選択されるものであり、
X1は、Arg、Lys、OrnまたはDabであり、
X4は、Nva、Leu、Ile、AbuまたはOrnであり、
X5は、Tyr、Gly、GlyNH2、Ser(Me)、Glu、またはGlu(NH−(CH2)2−NH−SO2−イソキノリン)であり、
X6は、Dap、Abu、GlyNH2、Ser(Me)、Gly、AlaまたはSerであり、及び
X7は芳香族または脂肪族のかさ高い残基である。
【請求項40】
タンパク質キナーゼ阻害剤が下記式(II)(配列番号:3)のペプチド、その類似体、塩類または機能的誘導体を含む請求項39の医薬品組成物。
式(II):M−Arg−Pro−Arg−X4−X5−X6−X7
上記式では、
Mは、D−Lys3またはLys3であり、
X4は、Nva、Leu、Ile、AbuまたはOrnであり、
X5は、Tyr、Gly、GlyNH2、Ser(Me)、Glu、またはGlu(NH−(CH2)2−NH−SO2−イソキノリン)であり、
X6は、Dap、Abu、GlyNH2、Ser(Me)、Gly、AlaまたはSerであり、及び
X7は芳香族または脂肪族のかさ高い残基である。
【請求項41】
X7がPheまたはHolである請求項39または40の医薬品組成物。
タンパク質キナーゼ阻害剤が下記からなる群から選択されるペプチドを含む請求項39または40の医薬品組成物。
DLys−DLys−DLys−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol(配列番号:5)、
Lys−Lys−Lys−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol(配列番号:6)、
Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol(配列番号:7)、
Arg−Pro−Arg−Orn−Glu−(NH−(CH2)2−NH−SO2−イソキノリン)Ser−Phe(配列番号:8)と、
Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Ala−Hol(配列番号:9)。
【請求項42】
当該タンパク質キナーゼ阻害剤の細胞透過部分がコレステロール、(DLys)2−10、(Lys)2−10、ビタミンE、Arg−Gln−Ile−Lys−Ile−Trp−Phe−Gln−Asn−Arg−Arg−Met−Lys−Trp−Lys−Lys、AhX6−DArg−DArg−DArg−DArg−DGln−Arg−DLys−DLys−DArg、及び(DArg)7−9からなる群より選択される請求項41に記載の医薬品組成物であって、Zは不在であるか、またはカルバマート及びGlyより選択される医薬品組成物。
【請求項43】
下記式(III)(配列番号:4)のタンパク質キナーゼ阻害剤を含む請求項24の医薬品組成物。
式(III):Y−Z−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−X6−Hol
上記式(III)では、
X6はDapまたはAlaであり、
Yは、細胞透過部分であり、及び
Zは、Yをペプチドに結合させるスペーサーまたは結合である。
【請求項44】
Yが、コレステロール、(DLys)2−10、(Lys)2−10、ビタミンE、Arg−Gln−Ile−Lys−Ile−Trp−Phe−Gln−Asn−Arg−Arg−Met−Lys−Trp−Lys−Lys、AhX6−DArg−DArg−DArg−DArg−DGin−Arg−DLys−DLys−DArg、及び(DArg)7−9からなる群より選択される請求項43の医薬品組成物であって、Zは不在であるか、またはカルバマート及びGlyより選択されるものである医薬品組成物。
【請求項45】
当該タンパク質キナーゼ阻害剤が下記からなる群より選択される請求項24の医薬品組成物。
コレステリル−O−CO−DLys−DLys−DLys−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−NH2(配列番号:10)、
コレステリル−O−CO−Lys−Lys−Lys−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−NH2(配列番号:11)、
コレステリル−O−CO−(DLys)4−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−NH2(配列番号:12)、
コレステリル−O−CO−(DLys)6−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Ser(Me)−Hol−NH2(配列番号:13)、
コレステリル−O−CO−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−(DLys)3−NH2(配列番号:14)、
コレステリル−O−CO−(DLys)3−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Ser(Me)−Hol−NH2(配列番号:15)、
コレステリル−O−CO−(Lys)3−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−OH(配列番号:16)、
コレステリル−O−CO−(CH2)2−CO−(DLys)3−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−NH2(配列番号:17)、
コレステリル−O−CO−Orn−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−NH2(配列番号:18)、
コレステリル−O−CO−(DLys)3−Lys−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−NH2(配列番号:19)、
ビタミンE−CO−(CH2)2−CO−(DLys)3−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−NH2(配列番号:20)、
コレステリル−O−CO−(DLys)2−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−NH2(配列番号:21)、
コレステリル−O−CO−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−NH2(配列番号:22)、
コレステリル−O−CO−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Ala−Hol−NH2(配列番号:23)、
コレステリル−O−CO−Gly−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Ala−Hol−NH2(配列番号:24)、
ビタミンE−スクシナート−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−NH2(配列番号:25)、
H−(DArg)9−Gly−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Ala−Hol−NH2(配列番号:26)、及び
コレステリル−O−CO−Arg−Pro−Arg−Orn−Glu(アミノエチルスルホンアミドイソキノリン)−Ser−Phe−NH2(配列番号:27)。
【請求項46】
請求項1〜23のいずれかの一項に係る化合物の有効量を含む医薬品組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む疾患の治療方法。
【請求項47】
疾患が、癌、異常増殖疾患、糖尿病、心血管症状、出血性ショック、肥満症、炎症性疾患、中枢神経系疾患、及び自己免疫性疾患からなる群より選択される請求項46に係る方法。
【請求項48】
疾患が癌である請求項47に係る方法。
【請求項49】
疾患が:前立腺癌、乳癌、卵巣癌、結腸癌、腎臓癌、黒色腫及び皮膚癌、肺癌、及び肝臓癌からなる群より選択される請求項48に係る方法。
【請求項50】
癌が前立腺癌である請求項49に係る方法。
【請求項51】
疾患が異常増殖細胞に関係する請求項47に係る方法。
【請求項52】
疾患が再狭窄、良性腫瘍、アテローム性動脈硬化、外科術、異常創傷治癒、異常血管形成に起因する体組織侵襲、組織線維症を起こす疾患、反復動作による障害、高度に血管新生化を起こしていない組織障害、臓器移植に関連する増殖反応より選択される請求項51の方法。
【請求項53】
請求項1〜23のいずれかの化合物の治療有効量を哺乳動物に投与すること、及び少なくとも1つの細胞毒性薬剤の治療有効量を同時投与することを含む、腫瘍進行阻害を必要としている哺乳動物における腫瘍進行阻害するのための方法。
【請求項54】
タンパク質キナーゼ−活性と関連する疾患治療用の薬物を調製するための、請求項1〜23のいずれかの一項に係る化合物の使用法。
【請求項55】
疾患が、癌、異常増殖疾患、糖尿病、心血管症状、出血性ショック、肥満症、炎症性疾患、中枢神経系疾患、及び自己免疫性疾患からなる群より選択される請求項54に係る使用法。
【請求項56】
疾患が癌である請求項55に係る使用法。
【請求項57】
疾患が:前立腺癌、乳癌、卵巣癌、結腸癌、腎臓癌、黒色腫及び皮膚癌、肺癌、及び肝臓癌からなる群より選択される請求項56に係る使用法。
【請求項58】
癌が前立腺癌である請求項57に係る使用法。
【請求項59】
疾患が異常増殖細胞に関係する請求項55に係る使用法。
【請求項60】
疾患が再狭窄、良性腫瘍、アテローム性動脈硬化、外科術、異常創傷治癒、異常血管形成に起因する体組織侵襲、組織線維症を起こす疾患、反復動作による障害、高度に血管新生化を起こしていない組織障害、臓器移植に関連する増殖反応より選択される請求項59に係る使用法。
【請求項1】
少なくとも第1部分及び第2部分を有する分子を含むタンパク質キナーゼ阻害剤であって、該第1部分は当該分子の細胞透過能を持ち、該第2部分は当該細胞内におけるタンパク質キナーゼ阻害効果を持ち、当該第1部分は直接結合またはスペーサーを介して当該第2部分に結合されているタンパク質キナーゼ阻害剤。
【請求項2】
タンパク質キナーゼBに対して選択性がある請求項1に記載のタンパク質キナーゼ阻害剤。
【請求項3】
第2部分がPKB基質またはPKB基質の模倣物を含むペプチドまたはペプチド模倣物である請求項2のタンパク質キナーゼ阻害剤。
【請求項4】
PKB基質がグリコーゲン合成酵素キナーゼ3(GSK3)である請求項3のタンパク質キナーゼ阻害剤。
【請求項5】
第2部分が5−20アミノ酸のペプチドである請求項1に記載のタンパク質キナーゼ阻害剤。
【請求項6】
第2部分が6−15アミノ酸のペプチドである請求項1に記載のタンパク質キナーゼ阻害剤。
【請求項7】
第2部分がペプチド模倣物である請求項1に記載のタンパク質キナーゼ阻害剤。
【請求項8】
第1部分と第2セグメントとが共有結合を介して直接的に結合された請求項1のタンパク質キナーゼ阻害剤の複合体。
【請求項9】
当該共有結合がアミド結合である請求項8のタンパク質キナーゼ阻害剤複合体。
【請求項10】
第1部分と第2部分とがスペーサーを介して結合された請求項1に記載のタンパク質キナーゼ阻害剤。
【請求項11】
スペーサーが少なくとも1つのアミノ酸残基を含む請求項9のタンパク質キナーゼ阻害剤。
【請求項12】
第1部分が、タンパク質キナーゼ阻害性ペプチド部分のアミノ末端に結合する請求項1〜11のいずれかに記載のタンパク質キナーゼ阻害剤。
【請求項13】
第1部分が、タンパク質キナーゼ阻害性ペプチド部分のカルボキシ末端に結合する請求項1〜11のいずれかに記載のタンパク質キナーゼ阻害剤。
【請求項14】
ATPの模倣部分をさらに含む請求項1に記載のタンパク質キナーゼ阻害剤。
【請求項15】
ATPの模倣部分がイソキノリン誘導体である請求項14のタンパク質キナーゼ阻害剤。
【請求項16】
第2部分が下記式(I)(配列番号:2)のペプチド、その類似体、塩類または機能的誘導体を含む請求項1に記載のタンパク質キナーゼ阻害剤。
式(I):M−X1−Pro−Arg−X4−X3−X5−X7
上記式では、
Mは不在であるか、またはD−Lys2−4またはL−Lys2−4から選択されるものであり、
X1は、Arg、Lys、OrnまたはDabであり、
X4は、Nva、Leu、Ile、AbuまたはOrnであり、
X5は、Tyr、Gly、GlyNH2、Ser(Me)、Glu、またはGlu(NH−(CH2)2−NH−SO2−イソキノリン)であり、
X6は、Dap、Abu、GlyNH2、Ser(Me)、Gly、AlaまたはSerであり、及び
X7は芳香族または脂肪族のかさ高い残基である。
【請求項17】
下記式(II)(配列番号:3)のペプチド、その類似体、塩類または機能的誘導体を含む請求項16に記載のタンパク質キナーゼ阻害剤。
式(II):M−Arg−Pro−Arg−X4−X5−X6−X7
上記式では、
Mは、D−Lys3またはLys3であり、
X4は、Nva、Leu、Ile、AbuまたはOrnであり、
X5は、Tyr、Gly、GlyNH2、Ser(Me)、Glu、またはGlu(NH−(CH2)2−NH−−SO2−イソキノリン)であり、
X6は、Dap、Abu、GlyNH2、Ser(Me)、Gly、AlaまたはSerであり、及び
X7は芳香族または脂肪族のかさ高い残基である。
【請求項18】
X7がPheまたはHolである請求項16または17のタンパク質キナーゼ阻害剤。
【請求項19】
下記からなる群から選択されるペプチドを含む請求項16または17のタンパク質キナーゼ阻害剤。
DLys−DLys−DLys−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol(配列番号:5)、
Lys−Lys−Lys−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol(配列番号:6)、
Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol(配列番号:7)、
Arg−Pro−Arg−Orn−Glu−(NH−(CH2)2−NH−SO2−イソキノリン)Ser−Phe(配列番号:8)および、
Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Ala−Hol(配列番号:9)。
【請求項20】
細胞透過部分が、コレステロール、(DLys)2−10、(Lys)2−10、ビタミンE、Arg−Gln−Ile−Lys−Ile−Trp−Phe−Gln−Asn−Arg−Arg−Met−Lys−Trp−Lys−Lys、AhX6−DArg−DArg−DArg−DArg−DGln−Arg−DLys−DLys−DArg、及び(DArg)7−9からなる群より選択される請求項16〜19のいずれか一項に記載のタンパク質キナーゼ阻害剤であって、Zは不在であるか、またはカルバマート及びGlyより選択されるタンパク質キナーゼ阻害剤。
【請求項21】
下記式(III)(配列番号:4)のペプチド複合体を含む請求項1に記載のタンパク質キナーゼ阻害剤。
式(III):Y−Z−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−X6−Hol
上記式では、X6がDapまたはAlaであり、
Yは、細胞透過部分であり、及び
Zは、Yをペプチドに結合させるスペーサーまたは結合である。
【請求項22】
Yが、コレステロール、(DLys)2−10、(Lys)2−10、ビタミンE、Arg−Gln−Ile−Lys−Ile−Trp−Phe−Gln−Asn−Arg−Arg−Met−Lys−Trp−Lys−Lys、AhX6−DArg−DArg−DArg−DArg−DGin−Arg−DLys−DLys−DArg、及び(DArg)7−9からなる群より選択される請求項21のタンパク質キナーゼ阻害剤であって、Zは不在であるか、またはカルバマート及びGlyより選択されるタンパク質キナーゼ阻害剤。
【請求項23】
下記からなる群から選択される請求項1に記載のタンパク質キナーゼ阻害剤。
コレステリル−O−CO−DLys−DLys−DLys−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−NH2(配列番号:10)、
コレステリル−O−CO−Lys−Lys−Lys−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−NH2(配列番号:11)、
コレステリル−O−CO−(DLys)4−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−NH2(配列番号:12)、
コレステリル−O−CO−(DLys)6−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Ser(Me)−Hol−NH2(配列番号:13)、
コレステリル−O−CO−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−(DLys)3−NH2(配列番号:14)、
コレステリル−O−CO−(DLys)3−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Ser(Me)−Hol−NH2(配列番号:15)、
コレステリル−O−CO−(Lys)3−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−OH(配列番号:16)、
コレステリル−O−CO−(CH2)2−CO−(DLys)3−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−NH2(配列番号:17)、
コレステリル−O−CO−Orn−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−NH2(配列番号:18)、
コレステリル−O−CO−(DLys)3−Lys−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−NH2(配列番号:19)、
ビタミンE−CO−(CH2)2−CO−(DLys)3−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−NH2(配列番号:20)、
コレステリル−O−CO−(DLys)2−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−NH2(配列番号:21)、
コレステリル−O−CO−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−NH2(配列番号:22)、
コレステリル−O−CO−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Ala−Hol−NH2(配列番号:23)、
コレステリル−O−CO−Gly−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Ala−Hol−NH2(配列番号:24)、
ビタミンE−スクシナート−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−NH2(配列番号:25)、
H−(DArg)9−Gly−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Ala−Hol−NH2(配列番号:26)、及び
コレステリル−O−CO−Arg−Pro−Arg−Orn−Glu(アミノエチルスルホンアミドイソキノリン)−Ser−Phe−NH2(配列番号:27)。
【請求項24】
活性成分としてのタンパク質キナーゼ阻害剤複合体を含む医薬品組成物であって、当該阻害剤複合体が、少なくとも第1部分及び第2部分を有しており、該第1部分は当該分子の細胞透過能を持ち、該第2部分は当該細胞内におけるタンパク質キナーゼ阻害効果を持ち、当該第1部分はリンカーを介して当該第2部分に結合されている分子を含む医薬品組成物。
【請求項25】
当該タンパク質キナーゼ阻害剤がタンパク質キナーゼBに対して選択性がある請求項24の医薬品組成物。
【請求項26】
当該タンパク質キナーゼ阻害剤の第2部分がPKB基質またはPKB基質の模倣物を含むペプチドまたはペプチド模倣物である請求項25の医薬品組成物。
【請求項27】
PKB基質がGSK3である請求項26の医薬品組成物。
【請求項28】
当該タンパク質キナーゼ阻害剤の第2部分が、5−20アミノ酸のペプチドである請求項24の医薬品組成物。
【請求項29】
当該タンパク質キナーゼ阻害剤の第2部分が、6−15アミノ酸のペプチドである請求項24の医薬品組成物。
【請求項30】
当該タンパク質キナーゼ阻害剤の第2部分がペプチド模倣物を含む請求項24の医薬品組成物。
【請求項31】
当該タンパク質キナーゼ阻害剤の第1部分及び第2部が共有結合を介して直接的に結合されている請求項24の医薬品組成物。
【請求項32】
共有結合がアミド結合である請求項31の医薬品組成物。
【請求項33】
当該タンパク質キナーゼ阻害剤の第1部分及び第2部がスペーサーを介して結合されている請求項24の医薬品組成物。
【請求項34】
スペーサーが少なくとも1つのアミノ酸残基を含む請求項33の医薬品組成物。
【請求項35】
当該タンパク質キナーゼ阻害剤の第1部分が、タンパク質キナーゼ阻害性ペプチド部分のアミノ末端に結合している請求項24〜34のいずれか一項に記載の医薬品組成物。
【請求項36】
当該タンパク質キナーゼ阻害剤の第1部分が、タンパク質キナーゼ阻害性ペプチド部分のカルボキシ末端に結合している請求項24〜34のいずれか一項に記載の医薬品組成物。
【請求項37】
ATPの模倣部分をさらに含む請求項24に記載の医薬品組成物。
【請求項38】
ATPの模倣部分がイソキノリン誘導体である請求項37の医薬品組成物。
【請求項39】
タンパク質キナーゼ阻害剤が下記の式(I)(配列番号:2)のペプチド、その類似体、塩類または機能的誘導体を含む請求項24の医薬品組成物。
式(I):M−X1−Pro−Arg−X4−X5−X6−X7
上記式では、
Mは不在であるか、またはD−Lys2−4またはL−Lys2−4から選択されるものであり、
X1は、Arg、Lys、OrnまたはDabであり、
X4は、Nva、Leu、Ile、AbuまたはOrnであり、
X5は、Tyr、Gly、GlyNH2、Ser(Me)、Glu、またはGlu(NH−(CH2)2−NH−SO2−イソキノリン)であり、
X6は、Dap、Abu、GlyNH2、Ser(Me)、Gly、AlaまたはSerであり、及び
X7は芳香族または脂肪族のかさ高い残基である。
【請求項40】
タンパク質キナーゼ阻害剤が下記式(II)(配列番号:3)のペプチド、その類似体、塩類または機能的誘導体を含む請求項39の医薬品組成物。
式(II):M−Arg−Pro−Arg−X4−X5−X6−X7
上記式では、
Mは、D−Lys3またはLys3であり、
X4は、Nva、Leu、Ile、AbuまたはOrnであり、
X5は、Tyr、Gly、GlyNH2、Ser(Me)、Glu、またはGlu(NH−(CH2)2−NH−SO2−イソキノリン)であり、
X6は、Dap、Abu、GlyNH2、Ser(Me)、Gly、AlaまたはSerであり、及び
X7は芳香族または脂肪族のかさ高い残基である。
【請求項41】
X7がPheまたはHolである請求項39または40の医薬品組成物。
タンパク質キナーゼ阻害剤が下記からなる群から選択されるペプチドを含む請求項39または40の医薬品組成物。
DLys−DLys−DLys−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol(配列番号:5)、
Lys−Lys−Lys−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol(配列番号:6)、
Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol(配列番号:7)、
Arg−Pro−Arg−Orn−Glu−(NH−(CH2)2−NH−SO2−イソキノリン)Ser−Phe(配列番号:8)と、
Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Ala−Hol(配列番号:9)。
【請求項42】
当該タンパク質キナーゼ阻害剤の細胞透過部分がコレステロール、(DLys)2−10、(Lys)2−10、ビタミンE、Arg−Gln−Ile−Lys−Ile−Trp−Phe−Gln−Asn−Arg−Arg−Met−Lys−Trp−Lys−Lys、AhX6−DArg−DArg−DArg−DArg−DGln−Arg−DLys−DLys−DArg、及び(DArg)7−9からなる群より選択される請求項41に記載の医薬品組成物であって、Zは不在であるか、またはカルバマート及びGlyより選択される医薬品組成物。
【請求項43】
下記式(III)(配列番号:4)のタンパク質キナーゼ阻害剤を含む請求項24の医薬品組成物。
式(III):Y−Z−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−X6−Hol
上記式(III)では、
X6はDapまたはAlaであり、
Yは、細胞透過部分であり、及び
Zは、Yをペプチドに結合させるスペーサーまたは結合である。
【請求項44】
Yが、コレステロール、(DLys)2−10、(Lys)2−10、ビタミンE、Arg−Gln−Ile−Lys−Ile−Trp−Phe−Gln−Asn−Arg−Arg−Met−Lys−Trp−Lys−Lys、AhX6−DArg−DArg−DArg−DArg−DGin−Arg−DLys−DLys−DArg、及び(DArg)7−9からなる群より選択される請求項43の医薬品組成物であって、Zは不在であるか、またはカルバマート及びGlyより選択されるものである医薬品組成物。
【請求項45】
当該タンパク質キナーゼ阻害剤が下記からなる群より選択される請求項24の医薬品組成物。
コレステリル−O−CO−DLys−DLys−DLys−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−NH2(配列番号:10)、
コレステリル−O−CO−Lys−Lys−Lys−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−NH2(配列番号:11)、
コレステリル−O−CO−(DLys)4−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−NH2(配列番号:12)、
コレステリル−O−CO−(DLys)6−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Ser(Me)−Hol−NH2(配列番号:13)、
コレステリル−O−CO−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−(DLys)3−NH2(配列番号:14)、
コレステリル−O−CO−(DLys)3−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Ser(Me)−Hol−NH2(配列番号:15)、
コレステリル−O−CO−(Lys)3−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−OH(配列番号:16)、
コレステリル−O−CO−(CH2)2−CO−(DLys)3−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−NH2(配列番号:17)、
コレステリル−O−CO−Orn−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−NH2(配列番号:18)、
コレステリル−O−CO−(DLys)3−Lys−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−NH2(配列番号:19)、
ビタミンE−CO−(CH2)2−CO−(DLys)3−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−NH2(配列番号:20)、
コレステリル−O−CO−(DLys)2−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−NH2(配列番号:21)、
コレステリル−O−CO−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−NH2(配列番号:22)、
コレステリル−O−CO−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Ala−Hol−NH2(配列番号:23)、
コレステリル−O−CO−Gly−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Ala−Hol−NH2(配列番号:24)、
ビタミンE−スクシナート−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Dap−Hol−NH2(配列番号:25)、
H−(DArg)9−Gly−Arg−Pro−Arg−Nva−Tyr−Ala−Hol−NH2(配列番号:26)、及び
コレステリル−O−CO−Arg−Pro−Arg−Orn−Glu(アミノエチルスルホンアミドイソキノリン)−Ser−Phe−NH2(配列番号:27)。
【請求項46】
請求項1〜23のいずれかの一項に係る化合物の有効量を含む医薬品組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む疾患の治療方法。
【請求項47】
疾患が、癌、異常増殖疾患、糖尿病、心血管症状、出血性ショック、肥満症、炎症性疾患、中枢神経系疾患、及び自己免疫性疾患からなる群より選択される請求項46に係る方法。
【請求項48】
疾患が癌である請求項47に係る方法。
【請求項49】
疾患が:前立腺癌、乳癌、卵巣癌、結腸癌、腎臓癌、黒色腫及び皮膚癌、肺癌、及び肝臓癌からなる群より選択される請求項48に係る方法。
【請求項50】
癌が前立腺癌である請求項49に係る方法。
【請求項51】
疾患が異常増殖細胞に関係する請求項47に係る方法。
【請求項52】
疾患が再狭窄、良性腫瘍、アテローム性動脈硬化、外科術、異常創傷治癒、異常血管形成に起因する体組織侵襲、組織線維症を起こす疾患、反復動作による障害、高度に血管新生化を起こしていない組織障害、臓器移植に関連する増殖反応より選択される請求項51の方法。
【請求項53】
請求項1〜23のいずれかの化合物の治療有効量を哺乳動物に投与すること、及び少なくとも1つの細胞毒性薬剤の治療有効量を同時投与することを含む、腫瘍進行阻害を必要としている哺乳動物における腫瘍進行阻害するのための方法。
【請求項54】
タンパク質キナーゼ−活性と関連する疾患治療用の薬物を調製するための、請求項1〜23のいずれかの一項に係る化合物の使用法。
【請求項55】
疾患が、癌、異常増殖疾患、糖尿病、心血管症状、出血性ショック、肥満症、炎症性疾患、中枢神経系疾患、及び自己免疫性疾患からなる群より選択される請求項54に係る使用法。
【請求項56】
疾患が癌である請求項55に係る使用法。
【請求項57】
疾患が:前立腺癌、乳癌、卵巣癌、結腸癌、腎臓癌、黒色腫及び皮膚癌、肺癌、及び肝臓癌からなる群より選択される請求項56に係る使用法。
【請求項58】
癌が前立腺癌である請求項57に係る使用法。
【請求項59】
疾患が異常増殖細胞に関係する請求項55に係る使用法。
【請求項60】
疾患が再狭窄、良性腫瘍、アテローム性動脈硬化、外科術、異常創傷治癒、異常血管形成に起因する体組織侵襲、組織線維症を起こす疾患、反復動作による障害、高度に血管新生化を起こしていない組織障害、臓器移植に関連する増殖反応より選択される請求項59に係る使用法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図16D】
【図16E】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図16D】
【図16E】
【公表番号】特表2007−527858(P2007−527858A)
【公表日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516797(P2006−516797)
【出願日】平成16年6月13日(2004.6.13)
【国際出願番号】PCT/IL2004/000505
【国際公開番号】WO2004/110337
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(501196518)デベロゲン イスラエル リミテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月13日(2004.6.13)
【国際出願番号】PCT/IL2004/000505
【国際公開番号】WO2004/110337
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(501196518)デベロゲン イスラエル リミテッド (1)
【Fターム(参考)】
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