説明

タンパク質含有の繊維状物質をβ−ケトカルボニル官能性シロキサンポリマーで処理する方法

タンパク質含有の繊維状物質、殊に皮革またはウールまたはウール製品を、R3が水素原子または1〜30個の炭素原子を有する1価の炭化水素基、特に水素原子を表わす一般式(I)の少なくとも1個の3価基Bを含むβ−ケトカルボニル官能性シロキサンポリマーを含有する組成物で処理する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質含有の繊維状物質、殊に皮革またはウールまたはウール製品をβ−ケトカルボニル官能性シロキサンポリマーで処理する方法に関する。
【0002】
天然皮革が化学構造および繊維構造のために環境の影響、例えば汚れおよび湿分に対して敏感であることは、公知である。皮革製品の使用能力を上昇させるために、撥水性の性質は、望ましい。古典的な疎水化剤は、高分子量の、多くの場合に水不溶性の物質、例えばワックス、パラフィンおよび脂肪酸縮合生成物からなり、好ましくは、乳化剤と一緒になって水性で適用可能になる。
【0003】
この製品は、皮革に快い手触りを与えるが、しかし、しばしば不十分で制限された再現可能な疎水化を生じる。
【0004】
この系は、合成剤、この場合には、殊にポリシロキサンおよびその誘導体によって最適化された。ポリシロキサンの強い発生性の性質と共に、同時に手触り特性、磨き強さおよび曲げ柔軟さは、プラスの影響を及ぼされ、効果の持続性は、上昇する。
【0005】
欧州特許出願公開第213480号明細書の場合、非官能性モノシリコーン油は、適当な乳化剤によって水性形にもたらされ、それによって皮革は、疎水化される。
【0006】
しかし、シロキサン分子上に官能基を欠くために、乳化可能性は、強く制限されている。異なる安定性の乳濁液は、使用技術的試験でしばしば再現不可能な結果を示す。更に、"発汗"によって惹起される典型的な、しばしば、べとつくと表現される"シリコーンの手触り"は、望ましくなく、次の加工処理、例えば着色および仕上げ可能性に不利な影響を及ぼす。
【0007】
欧州特許出願公開第0324345号明細書には、皮革および毛皮を自己乳化可能または分散可能なカルボキシ官能性ポリシロキサンで水性乳濁液中で疎水化する方法が記載されている。この場合、官能基は、側位または末位でポリシロキサン骨格に付着されており、およびパラフィン乳濁液またはワックス乳濁液を基礎とする古典的な疎水化剤での使用の際に良好なバリー針入度計による安定性(Bally-Penetrometer-Bestaendigkeit)を示す。
【0008】
しかし、さらに、疎水作用は、高い柔軟性で極端に酷使される衣類および履き物における撥水性の性質、耐久度、可撓性および耐磨耗性に関連して改善が必要とされている。
【0009】
ジケテンおよびその誘導体でのカルビノールポリシロキサンまたはアミノポリシロキサンの変性は、米国特許第6121404号明細書中に記載されている。生成物は、水溶液中でアミノポリシロキサンと共に、エラストマーフィルムの製造のために使用される。
【0010】
タンパク質含有の繊維状物質、殊に皮革またはウールまたはウール製品を処理するための疎水化作用を有する薬剤を見出すという課題が課された。更に、皮革の後鞣しおよび加脂に適しかつよりいっそう困難になった使用技術的要件を満たす皮革処理剤のための添加剤を見出すという課題が課された。
【0011】
本発明の対象は、一般式
【化1】

〔式中、
3は、水素原子または1〜30個の炭素原子を有する1価炭化水素基、特に水素原子を意味する〕で示される少なくとも1個の3価基Bを有するβ−ケトカルボニル官能性シロキサンポリマーを含有する組成物でタンパク質含有の繊維状物質を処理する方法である。
【0012】
式(I)中の基Bの場合には、特に、3個の遊離原子価の中の1つがヘテロ原子に結合している。
【0013】
好ましくは、シロキサンポリマーは、平均的な分子1個当たり少なくとも2個の基B、特に有利に2〜20個の基Bを有する。有機基Bは、有利にSi−C−基を介してシロキサンポリマーのシロキサン部分に結合している。
【0014】
3価基Bがヘテロ原子上で遊離原子価と結合してる場合には、本発明によるシロキサンポリマーは、有利に一般式
【化2】

〔式中、R3は、上記の意味を有し、
1は、末位に酸素、硫黄および窒素の群れから選択されるヘテロ原子以外に有利に1〜20個の炭素原子を有する炭化水素、特に有利に1〜4個の炭素原子を有する炭化水素基を有していてよい2価の有機基、特に1〜20個の炭素原子を有する2価の有機基を表わし、
4は、水素原子または1〜30個の炭素原子を有する炭化水素基、特に水素原子を表わし、
5、R6およびR7は、それぞれ1〜30個の炭素原子を有する炭化水素基を表わす〕の群から選択される少なくとも1個のSiC結合した基B1を有する。
【0015】
式(II)または(III)の基B1は、R1を介してシロキサンポリマーに結合した、置換されたアセチルアセトンの構造を有する。
【0016】
3価基Bがヘテロ原子上で遊離原子価と結合している場合には、本発明によるシロキサンポリマーは、有利に一般式
−R1−Y−C(=O)−CHR3−C(=O)−CH23 (IV)および
−R1−Y−C(=O)−CR3=C(−OH)−CH23 (V)および
〔式中、R1およびR3は、上記の意味を有し、
Yは、式−(NR8−R1'z−NR2−を表わし、
この場合、R1'は、R1の意味を有し、
2は、水素原子または1〜18個の炭素原子を有する炭化水素基、特に水素原子を表わし、
8は、R2または式
−C(=O)−CHR3−C(=O)−CH23または
−C(=O)−CR3=C(−OH)−CH23
で示される基を表わし、zは、0または1〜10の整数、特に0、1またはである〕の群から選択される少なくとも1個のSiC結合した基B2を有する。
【0017】
式(IV)および(V)の基B2は、基R1を介してシロキサンポリマーに結合している。
【0018】
式(IV)および(V)の基B2は、互変異性体の基である。好ましくは、本発明によるシロキサンポリマーは、式(IV)および(V)の群からの基B2を1分子当たり少なくとも2個含有し、その際、式(IV)の基のみ、式(V)の基のみ、または双方一緒に含有してよい。これらの互変異性体の基は互いに変換可能であるので、該基のそれぞれの含有率は外部条件に応じて変化しうる。従ってその比は、広範囲で変動してよく、かつこの比は約1000:1〜1:1000である。
【0019】
本発明によるシロキサンポリマーのエノール含有率は、この物質の弱酸性特性をもたらし、これは一般式(I)の基の構造パラメータおよび置換基に決定的に依存する。好ましくは、このエノール化可能な基は、5.0を上廻る、特に有利に6.0〜15.0、特に7.0〜14.0のpks値を有する。
【0020】
本発明によるシロキサンポリマーは、好ましくは、1分子当たり5〜5000個のSi原子、有利に50〜1000個のSi原子を含有する。このシロキサンポリマーは、直鎖状、分枝鎖状、デンドリマー状または環状であってよい。式(I)の官能基B少なくとも2個を含有する限り、本発明によるシロキサンポリマーの範囲内には、Si原子の実際の数にも平均の数にも組み込むことができない任意の大きさの網目構造も当てはまる。
【0021】
本発明によるβ−ケトカルボニル官能性シロキサンポリマーは、特に一般式
【化3】

〔式中、
Xは、基Bを含有する有機基を意味し、特にSiC結合した基B1またはB2であり、この場合B、B1およびB2は、上記の意味を有し、
Rは、基1個当たり1〜18個の炭素原子を有する、置換されていてよい1価の炭化水素基を表わし、
9は、水素原子または1〜8個の炭素原子を有するアルキル基、有利に水素原子、またはメチル基またはエチル基を表わし、
aは、0または1であり、
cは、0、1、2または3であり、
dは、0または1であり、但し、a+c+dの総和は、1分子当たり3以下であり、平均で少なくとも1個の基Xが含まれている〕で示される単位からなるオルガノポリシロキサンである。
【0022】
本発明によるβ−ケトカルボニル官能性シロキサンポリマーの好ましい例は、一般式
g3-g−SiO(SiR2O)l(SiRXO)kSiR3-gg (VIIa)および
(R9O)R2Si(SiR2O)n(SiRXO)mSiR2(OR9) (VIIb)
〔式中、A、RおよびR9は、前記した意味を有し、
gは、0または1であり、
kは、0または1〜30の整数であり、かつ
lは、0または1〜1000の整数であり、
mは、1〜30の整数であり、かつ
nは、0または1〜1000の整数であり、但し、1分子当たり平均で少なくとも1つの基Xが含まれている]で示されるオルガノポリシロキサンである。
【0023】
基Rの例は、アルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、1−n−ブチル基、2−n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、ヘキシル基、例えばn−ヘキシル基、ヘプチル基、例えばn−ヘプチル基、オクチル基、例えばn−オクチル基およびイソオクチル基、例えば2,2,4−トリメチルペンチル基、ノニル基、例えばn−ノニル基、デシル基、例えばn−デシル基、ドデシル基、例えばn−ドデシル基、およびオクタデシル基、例えばn−オクタデシル基;シクロアルキル基、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基およびメチルシクロヘキシル基;アルケニル基、例えばビニル基、5−ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、1−プロペニル基、アリル基、3−ブテニル基および4−ペンテニル基;アルキニル基、例えばエチニル基、プロパルギル基および1−プロピニル基;アリール基、例えばフェニル基、ナフチル基、アントリル基およびフェナントリル基;アルカリール基、例えばo−、m−、p−トリル基、キシリル基およびエチルフェニル基;およびアラルキル基、例えばベンジル基、α−フェニルエチル基およびβ−フェニルエチル基である。
【0024】
基R1の例は、−CH2CH2−、−CH(CH3)−、−CH2CH2CH2−、−CH2C(CH3)H−、−CH2CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH(CH3)−および−CH2CH2C(CH32CH2−であり、その際に−CH2CH2CH2−基が好ましい。
【0025】
好ましくは、基R1'は、式−CH2CH2−および−CH2CH2CH2−の基である。
【0026】
基R3の例は、アルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、1−n−ブチル基、2−n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、ヘキシル基、例えばn−ヘキシル基、ヘプチル基、例えばn−ヘプチル基、オクチル基、例えばn−オクチル基およびイソオクチル基、例えば2,2,4−トリメチルペンチル基、ノニル基、例えばn−ノニル基、デシル基、例えばn−デシル基、ドデシル基、例えばn−ドデシル基、およびオクタデシル基、例えばn−オクタデシル基、シクロアルキル基、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基およびメチルシクロヘキシル基、アリール基、例えばフェニル基、ナフチル基、アントリル基およびフェナントリル基、アルカリール基、例えばo−、m−、p−トリル基、キシリル基およびエチルフェニル基、およびアラルキル基、例えばベンジル基、α−フェニルエチル基およびβ−フェニルエチル基である。
【0027】
炭化水素基R3の例は、炭化水素基R2についても当てはまる。
【0028】
炭化水素基R3の例は、炭化水素基R4、R5、R6およびR7についても当てはまる。
【0029】
アルキル基R9の例は、アルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、1−n−ブチル基、2−n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、ヘキシル基、例えばn−ヘキシル基、ヘプチル基、例えばn−ヘプチル基、オクチル基、例えばn−オクチル基およびイソオクチル基、例えば2,2,4−トリメチルペンチル基である。
【0030】
式(II)または(III)の基B1は、β−ジケトン基であり、該基は、末端がジケトンからなる(式(II))かまたは双方のカルボニル基の間のC原子でR1を介してシロキサンポリマーに結合する(式(III))かの何れかである。
【0031】
式(II)の基B1を有するβ−ケトカルボニル官能性シロキサンポリマーの製造方法は、有機化学分野から公知である。好ましくは、このシロキサンポリマーは、Si結合した酸クロリドを含有する有機珪素化合物を用いてのアセトアセテートのアシル化により得られる。例えば、Si結合したウンデカン酸クロリド(R1は、−C1020−である)を含有するシロキサンポリマーをエチルアセトアセテート(CH3−C(=O)−CH2−C(=O)−O−CH2CH3)と反応させ、その後に熱的にCO2とエタノールを分離する場合には、R1がーC1020−であり、R3がHであり、R4がHであり、かつR3が−CH3である式(II)の基B1を含有するシロキサンポリマーが得られる。
【0032】
式(III)の基B1を含有するβ−ケトカルボニル官能性シロキサンポリマーの製造方法は、ドイツ連邦共和国特許出願公開第1193504号明細書Aおよびドイツ連邦共和国特許出願公開第1795563号明細書A中に記載されている。この場合、好ましいのは、アリルアセチルアセトンのヒドロシリル化であり、その際、R1が−C36−であり、R3がHであり、R6とR7が−CH3である式(III)の基B1を含有するシロキサンポリマーが生じる。更に、好ましい方法は、Si結合したハロゲン基、例えば−CH2Cl、−CH2Br、−C36Clまたは−C36Iを有するシロキサンポリマーによるアセチルアセトンのアルキル化である。
【0033】
式(IV)および(V)の基B2を含有するシロキサンポリマーの製造方法は、米国特許第6121404号明細書A中に記載されている。
【0034】
特に、このシロキサンポリマーは、一般式
【化4】

〔式中、R3は、前記の意味を有する、有利に水素原子である〕で示されるジケテン(1)を、1分子当たり一般式
−R1−(NR2−R1')−NR22− (VIII)
〔式中、R1、R1'、R2およびzは、前記の意味を有する〕で示される少なくとも1個のSi結合した基Aを含有する有機珪素化合物(2)と反応させることにより製造され、但し、式(VIII)の基Aは、少なくとも1個の第1アミノ基および場合によっては少なくとも1個の第2のアミノ基、特に少なくとも1個の第1アミノ基を有する。
【0035】
好ましくは、この反応は、第1アミノ基または第2アミノ基とβ−ケトカルボニル化合物との反応を減速させるかまたは阻止する有機化合物(3)の存在下で行なわれ、反応される。
【0036】
有機化合物(3)としては、好ましくは、アミンと、多少とも固体の付加物を生じるかかる化合物が使用される。化合物(3)の例は、アルデヒドおよびケトンである。好ましい例は、アセトン、ブタノン、メチルイソブチルケトンおよびシクロヘキサノンである。
【0037】
好ましい製造方法において、第1段階で、有機珪素化合物(2)は、有機化合物(3)と反応され、その際に化合物(3)は、式(VIII)の基A中のアミノ基上の保護基を形成し、引続き第2段階で、保護されたアミノ基を有する第1段階で得られた有機珪素化合物(2)((2)と(3)からの反応生成物)は、ジケテン(1)と反応される。ジケテンとの反応の際に、保護基は、再び、式(VIII)の基A中のアミノ基から脱離される。
【0038】
式(VIII)の基Aは、式−CH2−NR2−Hのα−アミノ基であってもよい。この場合、製造の際に有機化合物(3)を共用することは、好ましくない。
【0039】
基Aの例は、−CH2−NH2
−CH(CH3)−NH2
−C(CH32−NH2
−CH2CH2−NH2
−CH2CH2CH2−NH2
−CH2CH2CH2CH2−NH2
−CH2CH2CH(CH3)−NH2
−CH2CH2CH2−NH−CH2CH2−NH2
−CH2CH2CH2−N(CH3)−CH2CH2−NH2
−CH2CH2CH2[−NH−CH2CH22−NH2
−CH2CH2C(CH3)CH2−NH2であり、
この場合CH2CH2CH2−NH2および−CH2CH2CH2−NH−CH2CH2−NH2は、好ましい。
【0040】
従って、基B2の好ましい例は、
−CH2CH2CH2−NH(−Z)、
−CH2CH2CH2−NH1-x(−Z)x−CH2CH2−NH(−Z)であり、
この場合Zは、式
−C(=O)−CHR3−C(=O)−CH23または
−C(=O)−CR3=C(−OH)−CH23で示される基であり、
3は、前記の意味を有し、有利に水素原子であり、xは、0または1である。
【0041】
本発明による方法により処理されるタンパク質含有の繊維状物質の例は、皮革またはウールまたはウール製品であり、この場合には、皮革が好ましい。
【0042】
この処理は、皮革の後鞣し中または後鞣し後に行なうことができる。
【0043】
本発明によるβ−ケトカルボニル官能性シロキサンポリマーは、特に有機溶剤中の溶液として使用される。
【0044】
従って、好ましくは、本発明によるβ−ケトカルボニル官能性シロキサンポリマーおよび有機溶剤を含有する組成物が使用される。
【0045】
有機溶剤の例は、イソプロパノール、トルエン、テトラヒドロフラン、テストベンジンおよびベンジン画分である。
【0046】
本発明によるβ−ケトカルボニル官能性シロキサンコポリマーは、溶液中に特に5〜50質量%、有利に10〜30質量%の量で含有されている。
【0047】
更に、タンパク質含有の繊維状物質を処理するための本発明による方法の場合、本発明によるβ−ケトカルボニル官能性シロキサンポリマーは、特に水性乳濁液または水性分散液の形で使用される。
【0048】
従って、好ましくは、本発明によるβ−ケトカルボニル官能性シロキサンポリマー、乳化剤および水を含有する組成物が使用される。
【0049】
本発明によるβ−ケトカルボニル官能性シロキサンポリマーは、水性乳濁液中に、特に5〜60質量%、有利に10〜50質量%の量で含有されている。
【0050】
適当な乳化剤または分散剤は、原理的に本発明によるβ−ケトカルボニル官能性ポリシロキサンを水中で安定化することができる、特殊な非イオン性およびアニオン性の全ての表面活性剤である。好ましい特に好ましいのは、アニオン性の乳化剤、例えばオレイルまたは獣脂を基礎とするエトキシル化燐酸エステル、N−オレイルサルコシド、N−ステアリルサルコシドまたはN−ラウリルサルコシドならびに適当なスルホスクシネート誘導体である。
【0051】
乳化剤は、水性乳濁液中に、特に2〜20質量%、有利に4〜10質量%の量で含有されている。
【0052】
特に溶液または水性乳濁液の形の本発明による組成物でのタンパク質含有の繊維状物質、殊に皮革の処理は、特に4〜7、有利に5〜7のpH値で行なわれる。
【0053】
pH値は、特に苛性ソーダー液を用いて調節される。
【0054】
特に溶液または水性乳濁液の形の本発明による組成物は、特に10〜70℃、有利に20〜50℃の温度でタンパク質含有の繊維状物質上、殊に皮革上に作用させることができる。
【0055】
この場合、作用時間は、特に20〜150分間、有利に20〜90分間である。
【0056】
本発明による方法は、特に周囲大気の圧力、即ち約1020hPaで実施される。しかし、本発明による方法は、高めた圧力または低めた圧力で実施することもできる。
【0057】
本発明による方法は、処理剤を皮革の表面上で薄膜として作用させ、ならびに皮革中に侵入して"皮革繊維"を包囲する能力を与え、この場合呼吸活性の性質は、そのまま維持される。
【0058】
本発明によるβ−ケトカルボニル官能性ポリシロキサンを使用することにより、卓越した持続的な疎水化作用は、同時に手触りの品質の改善と共に達成される。
【0059】
これは、ポリシロキサンの特殊な化学構造によって可能になる。疎水性の性質および手触りを与える性質は、不断のポリシロキサン骨格によって惹起される。有機単位は、水性調製物および溶剤含有調製物に対する乳化特性および溶解特性にプラスの影響を及ぼす。
【0060】
末位のカルボニル基は、皮革中に存在する金属イオンをキレート化し、ならびに安定化した水素架橋結合を形成させる能力を有する。それによって高められた固着は、皮革骨格に対してポリシロキサンのよりいっそう強い持続性を可能にする。
【0061】
この場合、疎水化剤は、一般に容器中で引伸し法で適用され、したがってこの目的のために水性形に変換されなければならない。このために、乳濁液/分散液を安定化し、かつ疎水化の深部作用を付加的に強化する乳化剤および/または分散剤が使用される。
【0062】
本発明による方法で使用される組成物は、付加的に天然由来または合成のワックス、グリコールおよびグリコールエーテルを基礎とする溶解助剤、および他の添加剤、例えば天然由来または合成の後鞣し剤を含有することができる。
【0063】
殊に皮革に疎水化作用を最適化するために、原子価2〜4の多価金属塩、殊に硫酸クロム、硫酸アルミニウムまたは硫酸ジルコニウムでの皮革の事後の処理を行なうことができる。
【実施例】
【0064】
β−ケトカルボニル官能性シロキサンポリマーの製造
例1:
3−(アミノエチルアミノ)−プロピル−メチルシロキシ単位およびジメチルシロキシ単位およびメトキシ末端基からなり、ならびに980mm2/sの粘度で0.293mEq/gのアミン含量を有する市販のアミノシロキサン136.5gをアセトン4.7gと一緒に25℃で4時間撹拌する。その後、ジケテン3.7gの添加を行ない、それに対して軽度の温度上昇が始まる。更に、2時間後に、アセトンを70℃で真空中で除去する。4900mm2/s(25℃)の粘度を有する澄明な黄色の油が得られる。1H−NMR−スペクトル中で完全なアミン転化が識別可能である。このβ−ケトアミドシロキサンは、3.0のケト/エノール比を有する。第1アミノ基ならびに第2アミノ基をアセトアシル化した。
【0065】
実施例2:
3−(アミノエチルアミノ)−プロピル−メチルシロキシ単位およびジメチルシロキシ単位およびメトキシ末端基からなり、ならびに980mm2/sの粘度で0.293mEq/gのアミン含量を有する市販のアミノシロキサン136.5gをアセトン3.6gと一緒に25℃で4時間撹拌する。
【0066】
その後、ジケテン3.7gの添加を行い、それに対して軽度の温度増加が始まる。更に、2時間後に、アセトンを70℃で真空中で除去する。13000mm2/s(25℃)の粘度を有する澄明な黄色の油が得られる。1H−NMR−スペクトル中で完全なアミン転化が識別可能である。このβ−ケトアミドシロキサンは、3.0のケト/エノール比を有する。第1アミノ基ならびに第2アミノ基をアセトアシル化した。
【0067】
実施例3:
67mm2/sの粘度(25℃)を有するα,ω−ジヒドロキシポリジメチルシロキサン1350gをシクロヘキシルアミノメチル−メチルジエトキシシラン74gと混合する。この混合物を80℃に昇温し、2時間および真空に引いた後、一定の粘度が達成されるまで攪拌する。脱離されたエタノールを連続的に除去し、こうして2940mm2/s(25℃)を有するアミノポリシロキサンを得る。無色の澄明な油は、0.204mEq/gのアミン価を有し、それによって、ポリマー4902g当たり平均で1個の第2アミノ基を含有する。アミノポリシロキサンを26℃でジケテン25gと混合する。撹拌下に内部温度は、15分間で12℃だけ上昇する。なお、2時間、外部加熱なしに後攪拌することができ、3220mm2/s(25℃)の粘度を有する殆んど無色のシロキサンポリマーが実際に定量的な収量で得られる。
【0068】
例4:
22℃でアミノプロピル末端基および0.78mEq/gのアミン含量を有するジメチルポリシロキサン1605gをアセトン24.4gと混合する。約4時間後、ジケテン全部で17.7gを均一にかつ十分撹拌しながら、約1分間計量供給する。軽度の発熱反応の際に、アミン油の粘度は明らかに上昇する。外部加熱なしに、さらになお2時間、後反応させ、添加したアセトンを真空中で70℃で除去する。1080mm2/s(25℃)の粘度を有する澄明な黄色の油が得られる。1H−NMR−スペクトルは、形成されたβ−ケトアミドシロキサンの5.0のケト/エノール比を示し;アミン転化は完全である(>99%)。
【0069】
皮革の疎水化:
実施例5および比較試験:
疎水化作用の測定を5×5cmの大きさの皮革断片上への適用によって実施した。このために、例示的にクロム鞣しされた皮革断片を室温で約2時間、イソプロパノールおよびテストベンジン中の本発明によるβ−ケトカルボニル官能性シロキサンポリマーの5%の溶液中に浸漬する。
【0070】
比較として、それぞれイソプロパノールおよびテストベンジン中の25℃で350mPa’sの粘度を有するジメチルポリシロキサン(非官能性シロキサン)の5%の溶液を使用する。引続き、この試料を50℃で乾燥し、計量し(=質量G1)、バリー針入度計(Bally-Penetrometer)中で外部からの水の作用の存在下で繰り返し貫入(Stauchung)に晒す。この場合、傷跡側で水中に浸漬された皮革の予め定められた区間(=貫入部分)、例えば靴を履いた際の靴の上側皮革を折り曲げ、再び伸ばす。水の漏出を伝導度測定器により測定する。水が皮革を染み通る時間を測定する。最終的に、この試料を計量し(=質量G2)、吸水率を質量差により算出する。
【0071】
【数1】

【0072】
バリー針入度計(Bally-Penetrometer)による測定の際に水の漏出時間が長く、かつ吸水率が僅かであればある程、疎水化作用は、よりいっそう良好である。本発明によるシロキサンポリマーは、通常の非官能性ジメチルポリシロキサンとの比較で明らかによりいっそう良好な疎水化作用を示す。
【0073】
結果は、次の表に記載されている:
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式
【化1】

〔式中、
3は、水素原子または1〜30個の炭素原子を有する1価炭化水素基、特に水素原子を意味する〕で示される少なくとも1個の3価基Bを有するβ−ケトカルボニル官能性シロキサンポリマーを含有する組成物でタンパク質含有の繊維状物質を処理する方法。
【請求項2】
基Bとして一般式
【化2】

〔式中、R3は、請求項1記載の意味を有し、R1は、2価の有機基を表わし、R4は、水素原子または1〜30個の炭素原子を有する炭化水素基を表わし、R5、R6およびR7は、それぞれ1〜30個の炭素原子を有する炭化水素基を表わす〕で示される群から選択されたSiC結合した基B1を使用する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
基Bとして一般式
−R1−Y−C(=O)−CHR3−C(=O)−CH23 (IV)および
−R1−Y−C(=O)−CR3=C(−OH)−CH23 (V)および
〔式中、R1およびR3は、それぞれ請求項1または2に記載の意味を有し、
Yは、酸素原子または式〜で示される基
−(NR8−R1’z−NR2−を表わし、
この場合、R1'は、R1の意味を有し、
2は、水素原子または1〜18個の炭素原子を有する炭化水素基を表わし、
8は、R2または式−C(=O)−CHR3−C(=O)−CH23または−C(=O)−CR3=C(−OH)−CH23を表わし、
zは、0または1〜10の整数、特に0、1または2である〕で示される群から選択されたSiC結合した基B2を使用する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
基B2として一般式
−CH2CH2CH2−NH(−Z)および
−CH2CH2CH2−NH1-x(−Z)x−CH2CH2−NH(−Z)、
〔式中、Zは、式−C(=O)−CHR3−C(=O)−CH23または−C(=O)−CR3=C(−OH)−CH23で示される基を表わし、
3は、請求項1記載の意味を有し、Xは、0または1である〕で示される群から選択されたSiC結合した基を使用する、請求項3記載の方法。
【請求項5】
シロキサンポリマーとして一般式
【化3】

〔式中、
Xは、基Bを含む有機基を表わし、この場合Bは、請求項1記載の意味を有し、
Rは、基1個当たり1〜18個の炭素原子を有する1価の置換されていてよい炭化水素基を表わし、
9は、水素原子または1〜8個の炭素原子を有するアルキル基を表わし、
aは、0または1であり、
cは、0、1、2または3であり、
dは、0または1であり、
但し、a+c+dの総和は、3以下であり、かつ1分子当たり平均で少なくとも1個の基Xが含まれている〕で示される単位からなるオルガノポリシロキサンを使用する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
シロキサンポリマーとして一般式
g3-g−SiO(SiR2O)l(SiRXO)kSiR3-gg (VIIa)および
(R9O)R2Si(SiR2O)n(SiRXO)mSiR2(OR9) (VIIb)
〔式中、A、R、R9およびXは、請求項5に記載した意味を有し、
gは、0または1であり、
kは、0または1〜30の整数であり、かつ
lは、0または1〜1000の整数であり、
mは、1〜30の整数であり、かつ
nは、0または1〜1000の整数であり、
但し、1分子当たり平均で少なくとも1つの基Xが含まれている]で示される群から選択されるオルガノポリシロキサンを使用する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
基Xは、請求項2記載のSiC結合した基B1または請求項3または4記載のSiC結合した基B2である、請求項5または6記載の方法。
【請求項8】
前記組成物は、請求項1から7までのいずれか1項に記載のβ−ケトカルボニル官能性シロキサンポリマーおよび有機溶剤を含有する、有機溶剤中のβ−ケトカルボニル官能性シロキサンポリマーの溶液である、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記組成物は、請求項1から7までのいずれか1項に記載のβ−ケトカルボニル官能性シロキサンポリマー、乳化剤および水を含有する水性乳濁液である、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
タンパク質含有の繊維状物質は、皮革またはウールまたはウール製品である、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
皮革の処理は、後鞣し中または後鞣し後に行なう、請求項10記載の方法。

【公表番号】特表2009−540143(P2009−540143A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−514732(P2009−514732)
【出願日】平成19年5月23日(2007.5.23)
【国際出願番号】PCT/EP2007/054981
【国際公開番号】WO2007/144249
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】