説明

ターボチャージャの給油装置

【課題】エンジン停止後にも、所定の時間、軸受部にオイルを供給するようにして、軸受部に焼き付きや異常摩耗等が発生しないようにする。
【解決手段】オイルポンプより吐出されたオイルの一部を受け入れ可能な蓄圧室8を有するシリンダー5と、圧縮ばね7のばね力により蓄圧室8内に向かって付勢され、シリンダー5内に往復移動可能に配置されたピストン6とを有する容積可変型の蓄圧器2を備え、蓄圧室8とオイルポンプの吐出口とをチェックバルブを介して連通しているとともに、蓄圧室8と軸受部16とを給油ポート17を介して連通してなり、エンジン運転中は、オイルポンプの吐出力でチェックバルブが開、ピストン6が蓄圧室8の外側に向かって逃がされ、オイルの一部を軸受部16に給油するとともに蓄圧室8に蓄圧し、エンジンが停止されると、チェックバルブが閉じられるとともに蓄圧室8内の蓄圧オイルが放出されて軸受部16に所定時間給油される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はターボチャージャの給油装置に関するものであり、特に、エンジンの停止後、ターボチャージャの軸受部へ所定時間給油するターボチャージャの給油装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高トルク、高出力化、あるいは燃費改善を目的としてターボチャージャが設けられたエンジンがある。このターボチャージャは、エンジンにより駆動されるオイルポンプを備え、該オイルポンプの吐出側の一部が潤滑油系へとつながり、オイルポンプから吐出されたオイルをターボチャージャの軸受部に給油し、ターボシャフトの潤滑を行っている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−270459号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1記載のターボチャージャにおける給油装置のように、エンジン本体により駆動されるオイルポンプを潤滑油系の供給源としているものでは、エンジンが停止されると同時に、オイルポンプの動作も停止される。
【0004】
このため、エンジン停止と同時に給油は止まるが、タービンシャフトは数十秒間、回り続けるため、オイル切れの状態になりやすい。特に、高負荷・高回転中のエンジンを急停止すると、軸受部に焼き付きや異常摩耗を発生させることがある。
【0005】
そこで、エンジン停止後にも、所定の時間、軸受部にオイルを供給するようにして、軸受部に焼き付きや異常摩耗等が発生しないようにするために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、エンジンのオイルポンプより吐出されたオイルをターボチャージャの軸受部へ給油するターボチャージャの給油装置において、前記オイルポンプより吐出されたオイルの一部を受け入れ可能な蓄圧室を有するシリンダーと、圧縮ばねのばね力により前記蓄圧室内に向かって付勢された状態で前記シリンダー内に往復移動可能に配置されているとともに、該シリンダー内の移動により前記蓄圧室の容積を可変可能なピストンとを有する容積可変型の蓄圧器を備え、かつ、前記蓄圧室と前記オイルポンプの吐出口とをチェックバルブを介して連通しているとともに、前記蓄圧室と前記軸受部とを給油ポートを介して連通してなり、前記エンジン運転中は、前記オイルポンプの吐出力で前記チェックバルブが開かれるとともに、前記ピストンが前記蓄圧室の外側に向かって逃がされ、前記オイルポンプからのオイルの一部を前記軸受部に給油するとともに前記蓄圧室に蓄圧し、前記エンジンが停止されると、前記チェックバルブが閉じられるとともに前記蓄圧室内の蓄圧オイルが前記給油ポート側に放出されて前記軸受部に所定時間給油するようにしたターボチャージャの給油装置を提供する。
【0007】
この構成によれば、エンジンの駆動中はオイルの一部が蓄圧室内に蓄圧され、エンジンが停止されると、オイルポンプ側にオイルが戻らないようにチェックバルブが閉じられ、かつ、蓄圧室内のオイルが給油ポート側に放出され、この給油ポート内に放出されたオイルでエンジン停止後も軸受部に所定時間給油が自動的に行われる。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明は、エンジン停止後も軸受部に所定時間給油が自動的に行われるので、オイル不足をきたす虞がなく、ターボチャージャの耐久性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
エンジン停止後にも、所定の時間、軸受部にオイルを供給するようにして、軸受部に焼き付きや異常摩耗等が発生しないようにするという目的を、エンジンのオイルポンプより吐出されたオイルをターボチャージャの軸受部へ給油するターボチャージャの給油装置において、前記オイルポンプより吐出されたオイルの一部を受け入れ可能な蓄圧室を有するシリンダーと、圧縮ばねのばね力により前記蓄圧室内に向かって付勢された状態で前記シリンダー内に往復移動可能に配置されているとともに、該シリンダー内の移動により前記蓄圧室の容積を可変可能なピストンとを有する容積可変型の蓄圧器を備え、かつ、前記蓄圧室と前記オイルポンプの吐出口とをチェックバルブを介して連通しているとともに、前記蓄圧室と前記軸受部とを給油ポートを介して連通してなり、前記エンジン運転中は、前記オイルポンプの吐出力で前記チェックバルブが開かれるとともに、前記ピストンが前記蓄圧室の外側に向かって逃がされ、前記オイルポンプからのオイルの一部を前記軸受部に給油するとともに前記蓄圧室に蓄圧し、前記エンジンが停止されると、前記チェックバルブが閉じられるとともに前記蓄圧室内の蓄圧オイルが前記給油ポート側に放出されて前記軸受部に所定時間給油するようにして実現した。
【実施例1】
【0010】
以下、本発明に係るターボチャージャの給油装置について、好適な実施例をあげて説明する。
【0011】
図1は本発明に係るターボチャージャの給油装置の一例を示す給油系統図である。図1において、給油装置1は、容積可変型の蓄圧器2を備えている。該蓄圧器2は、上面がカバー3で閉塞され、内部にシリンダー室4を設けたシリンダー5を有し、シリンダー室4内にピストン6と圧縮ばね7を配設している。
【0012】
ピストン6は、シリンダー室4内で、該ピストン6の下側に蓄圧室8を形成するようにして、該シリンダー室4内に上下方向移動可能に配設されている。したがって、ピストン6で画成される蓄圧室8は、ピストン6が図1に二点鎖線で示すように、シリンダー室4内で最も下側に移動されているときには、蓄圧室8の容積は0で、実線で示すように、下側から上方に移動するにしたがって次第に容積が増加するように変化する、容積可変型の蓄圧室になっている。
【0013】
圧縮ばね7は、ピストン6とカバー3との間に圧縮された状態で配設されており、ピストン6を常に下側に向かって付勢している。したがって、蓄圧室8内の圧力が圧縮ばね7のばね力よりも小さいとき、ピストン6は蓄圧室8の容積を減ずる方向になる、図1中に二点鎖線で示す位置である下側へ移動される。
【0014】
シリンダー5の下面には、内部に管路9を設けた管体10を一体に有し、管体10の下端にターボチャージャ本体11に取り付けられた取付用フランジ12を一体に設けている。また、管路9と蓄圧室8との間は、オイルポート13で連通されている。
【0015】
なお、取付用フランジ12が取り付けられるターボチャージャ本体11上の位置には、管路9と連結される管路14を設けている。該管路14は、ターボチャージャのタービンシャフト15と該タービンシャフト15を回転可能に支持している軸受部16との間に潤滑用の給油を行う給油ポート17へ通じている。
【0016】
また、管体10の側面には、給油口18aを有する給油部18を設けている。該給油部18には、図2に示すように、エンジンにより駆動されるオイルポンプ19のオイル吐出口20に通じる給油用アイジョイント21が連結されている。該給油用アイジョイント21とオイル吐出口20との間には、ボール22aと圧縮ばね22bとでなるチェックバルブ22を設けている。
【0017】
カバー3の中央には、図1に示すように、貫通孔23aを有する管部23が設けられている。該管部23には、エンジンのクランクケース内へ通じるブリーザパイプ24が、ブリーザ用アイジョイント25を介して接続されている。
【0018】
次に、このように構成された給油系統の動作を(1)〜(4)の順に説明する。
【0019】
(1) エンジンが始動されると、オイルポンプ19が駆動されて、該オイルポンプ19からオイルが吐出される。オイル吐出口20側から所定圧以上の圧力が得られると、圧縮ばね22bのばね圧に抗してボール22aが、図2中の二点鎖線で示す位置に移動されてチェックバルブ22が開き、オイル吐出口20から吐出されたオイルが、給油用アイジョイント21と給油部18を通って管路9及び管路14内に供給される。そして、このオイルが給油ポート17を通り、軸受部16とタービンシャフト15との間に供給され、タービンシャフト15を潤滑し始める。
【0020】
(2) 給油用アイジョイント21からの給油圧力が規定(例えば0.3Mpa)の圧力に達すると、給油用アイジョイント21から給油されたオイルの一部は、オイルポート13を通り、蓄圧室8内へ向かい、圧縮ばね7の反力に打ち勝ってピストン6を押し上げながら蓄圧室8に充填される。
【0021】
(3) (2)の動作中、圧縮ばね7回りの空気、またはピストン6とシリンダー5の隙間から漏れたオイルは、ブリーザ用アイジョイント25及びブリーザパイプ24を通してエンジンのクランクケース内に、またはターボオイルリターンパイプへ戻し、また空気は外気へと逃がす。そして、エンジンを停止したり、エンジンの給油装置(オイルポンプ19等)等に故障が発生したりしない限りは、圧縮ばね7の反力と蓄圧室8内に充填されたオイル圧力は、ピストン6を介して平衡状態を保つ。
【0022】
(4) エンジンが止まったり、停止させたりした場合は、オイル吐出口20側から所定圧以上の圧力が得られなくなり、図2中の実線で示すように、圧縮ばね22bのばね圧でボール22aが開口22cに押し付けられて閉となる。すなわち、給油用アイジョイント21とオイル吐出口20との間をチェックバルブ22が閉じ、オイルポンプ19側へのオイルの逆流が防止される。これにより、給油用アイジョイント21と給油ポート17間のオイル圧力が低下し、圧縮ばね7の反力と蓄圧室8内に充填されたオイル圧力の平衡状態が崩れ、圧縮ばね7の反力の方がオイル圧力よりも大きくなり、圧縮ばね7が伸びる。そして、圧縮ばね7が伸びるに従い、ピストン6が下側に押され、ピストン6に押された蓄圧室8内のオイルが、オイルポート13を通って、給油ポート17から軸受部16とタービンシャフト15との間に供給され、エンジンの停止後もタービンシャフト15を潤滑する。なお、このエンジンの停止後、タービンシャフト15を潤滑している時間は、蓄圧室8の容量、圧縮ばね7のばね定数、オイルポート13の径の大きさ等により設定される。
【0023】
したがって、この実施例によれば、エンジンの駆動中はオイルの一部が蓄圧室8内に蓄圧され、エンジンが停止されると、オイルポンプ19側にオイルが戻らないようにチェックバルブ22が閉じられ、かつ、蓄圧室8内のオイルが給油ポート17側に放出され、この給油ポート17内に放出されたオイルで、軸受部16に所定時間給油を自動的に行うので、オイル不足をきたす虞がなく、ターボチャージャの耐久性を向上させることができることになる。
【0024】
尚、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係るターボチャージャの給油装置の一例を示す給油系統図。
【図2】同上給油装置におけるチェックバルブの構成を示す拡大断面図。
【符号の説明】
【0026】
1 給油装置
2 蓄圧器
3 カバー
4 シリンダー室
5 シリンダー
6 ピストン
7 圧縮ばね
8 蓄圧室
11 ターボチャージャ本体
12 取付用フランジ
13 オイルポート
15 タービンシャフト
16 軸受部
17 給油ポート
18 給油部
18a 給油口
19 オイルポンプ
20 オイル吐出口
21 給油用アイジョイント
22 チェックバルブ
24 ブリーザパイプ
25 ブリーザ用アイジョイント


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンのオイルポンプより吐出されたオイルをターボチャージャの軸受部へ給油するターボチャージャの給油装置において、
前記オイルポンプより吐出されたオイルの一部を受け入れ可能な蓄圧室を有するシリンダーと、圧縮ばねのばね力により前記蓄圧室内に向かって付勢された状態で前記シリンダー内に往復移動可能に配置されているとともに、該シリンダー内の移動により前記蓄圧室の容積を可変可能なピストンとを有する容積可変型の蓄圧器を備え、かつ、前記蓄圧室と前記オイルポンプの吐出口とをチェックバルブを介して連通しているとともに、前記蓄圧室と前記軸受部とを給油ポートを介して連通してなり、
前記エンジン運転中は、前記オイルポンプの吐出力で前記チェックバルブが開かれるとともに、前記ピストンが前記蓄圧室の外側に向かって逃がされ、前記オイルポンプからのオイルの一部を前記軸受部に給油するとともに前記蓄圧室に蓄圧し、前記エンジンが停止されると、前記チェックバルブが閉じられるとともに前記蓄圧室内の蓄圧オイルが前記給油ポート側に放出されて前記軸受部に所定時間給油するようにしたことを特徴とするターボチャージャの給油装置。


【図1】
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【図2】
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