説明

ターボ冷凍機およびその制御方法

【課題】1台の可変速ターボ圧縮機と1台の固定速ターボ圧縮機を備え、高効率運転が可能とされたターボ冷凍機を提供することを目的とする。
【解決手段】インバータ装置によって回転周波数可変とされて冷媒を圧縮する可変速ターボ圧縮機と、可変速ターボ圧縮機に対して並列に接続され、一定の回転数にて運転されて冷媒を圧縮する固定速ターボ圧縮機と、可変速ターボ圧縮機および固定速ターボ圧縮機の運転を制御する制御部とを備えたターボ冷凍機において、制御部は、要求されるターボ冷凍機の負荷率が所定値未満の場合には、可変速ターボ圧縮機のみを起動する可変速機優先運転モードを選択し、要求されるターボ冷凍機の負荷率が所定値以上の場合には、可変速ターボ圧縮機および固定速ターボ圧縮機を起動する併用運転モードを選択することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変速ターボ圧縮機と固定速ターボ圧縮機を備えたターボ冷凍機およびその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体工場における冷水供給や地域冷暖房に用いられる熱源システムとして、ターボ冷凍機を備えたものが知られている。ターボ冷凍機は、冷媒を圧縮するためのターボ圧縮機を備えている。一般に、1台のターボ冷凍機につき1台のターボ圧縮機が設けられている。ただし、汎用的には生産されているターボ圧縮機を流用して製造コストを抑えることが可能な場合や、1台のターボ圧縮機では能力が不足する大容量に対応する場合には、1台のターボ冷凍機に対して2台のターボ圧縮機を設けることがある。しかし、この場合は、メンテナンスや運転の容易さを考慮して同一容量のターボ圧縮機を並列的に設置するのが通常である。
一方、ターボ冷凍機とは異なる方式のパッケージエアコンでは、下記の特許文献1及び特許文献2に示すように、2台の圧縮機を並列に設置することが知られている。これらの圧縮機は、インバータ装置を用いて回転周波数可変とされた可変速圧縮機と、一定の回転速度で運転される固定速圧縮機との組み合わせとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−35425号公報
【特許文献2】特開平7−83523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の各特許文献に記載された圧縮機は、スクロール圧縮機やロータリ圧縮機が想定されており、空力回転機械であるターボ圧縮機とは動作原理が根本的に異なる。したがって、ターボ冷凍機としての効率向上を考えた場合、スクロール圧縮機やロータリ圧縮機とは全く異なるアプローチとなる。例えば、インバータ装置によって回転周波数可変とされた可変速ターボ圧縮機を用いたターボ冷凍機では、冷却水温度(外気湿球温度)が低い領域では高いCOP(ターボ冷凍機の効率)を示し、冷却水温度が低くかつ、低い圧縮機負荷率の場合には非常に高いCOPを示す。さらに、冷却水温度が高くかつ、高い圧縮機負荷率では一定の回転数にて運転される固定速ターボ圧縮機に比べインバータ損失分だけCOPが低下するという特性を持っている。一方、固定速ターボ圧縮機を用いたターボ冷凍機では、低い圧縮機負荷率の場合には低いCOPを示し、高い圧縮機負荷率で高いCOPを示す。このように、1台のターボ冷凍機に対して可変速ターボ圧縮機と固定速ターボ圧縮機の2台を設置する場合、省エネルギー運転が可能な組み合わせや運転制御方法が期待できる。
【0005】
また、ターボ冷凍機の容量が大きく2台のターボ圧縮機が必要とされる場合に、固定速ターボ圧縮機を2台設けることが考えられるが、低い圧縮機負荷率での効率向上が期待できない。一方、可変速ターボ圧縮機を2台設けることも考えられるが、インバータ装置が2台分必要となりコストおよびメンテナンスの点で問題がある。そこで、1台の可変速ターボ圧縮機と1台の固定速ターボ圧縮機の組み合わせが考えられる。しかし、現在のところ、このターボ圧縮機の組み合わせによって、最適に効率向上を図る提案がなされていない。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、1台の可変速ターボ圧縮機と1台の固定速ターボ圧縮機を備え、高効率運転が可能とされたターボ冷凍機およびその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のターボ冷凍機およびその制御方法は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかるターボ冷凍機は、インバータ装置によって回転周波数可変とされて冷媒を圧縮する可変速ターボ圧縮機と、該可変速ターボ圧縮機に対して並列に接続され、一定の回転数にて運転されて冷媒を圧縮する固定速ターボ圧縮機と、前記可変速ターボ圧縮機および/または前記固定速ターボ圧縮機によって圧縮された冷媒を、供給された冷却水によって凝縮液化させる凝縮器と、該凝縮器によって凝縮液化された冷媒を膨張させる膨張弁と、該膨張弁によって膨張された冷媒を蒸発させる蒸発器と、前記可変速ターボ圧縮機および前記固定速ターボ圧縮機の運転を制御する制御部とを備えたターボ冷凍機において、前記制御部は、要求される当該ターボ冷凍機の負荷率が所定値未満の場合には、前記可変速ターボ圧縮機のみを起動する可変速機優先運転モードを選択し、要求される当該ターボ冷凍機の負荷率が所定値以上の場合には、前記可変速ターボ圧縮機および前記固定速ターボ圧縮機を起動する併用運転モードを選択することを特徴とする。
【0008】
インバータ装置によって回転周波数可変とされた可変速ターボ圧縮機を用いたターボ冷凍機では、低い圧縮機負荷率の場合には比較的高いCOP(ターボ冷凍機の効率)を示し、高い圧縮機負荷率ではCOPが低下するという特性を持っている。この傾向は、冬期のように低い冷却水温度のときに顕著である。
一方、一定の回転数に運転される固定速ターボ圧縮機を用いたターボ冷凍機では、低い圧縮機負荷率の場合には低いCOPを示し、高い圧縮機負荷率で高いCOPを示す。この傾向は、夏期のように高い冷却水温度のときに顕著である。
本発明は、これらの特性を考慮して、ターボ冷凍機の負荷率が所定値未満の場合には圧縮機負荷率が所定値未満となる可変速ターボ圧縮機のみを起動させる可変速機優先運転モードを選択し、ターボ冷凍機の負荷率が所定値以上の場合には、それぞれの圧縮機の圧縮機負荷率が所定値以上となるので可変速および固定速の両方のターボ圧縮機を起動させる併用運転モードを選択することとした。なお、ターボ冷凍機負荷率は、圧縮機が1台のみの運転の場合には圧縮機負荷率に相当し、圧縮機が2台の運転の場合には圧縮機負荷率の合計に相当する。
一般に、冬期または中間期のように冷却水温度が比較的低い状態では、ターボ冷凍機負荷率が低くなり圧縮機負荷率が所定値未満となる場合が多く、この場合に可変速機優先運転モードを選択することによって、可変速ターボ圧縮機のみで高効率運転を実現する。一方、冷却水温度が比較的高い状態となる夏期では、ターボ冷凍機負荷率が上がり圧縮機負荷率が所定値以上となる場合から、併用運転モードへ移行することによって高効率運転が実現される。このように、可変速機優先運転モードと併用運転モードとを組み合わせることにより、広い圧縮機負荷率にわたって高いCOPを示すターボ冷凍機が実現される。
【0009】
さらに、本発明のターボ冷凍機では、前記ターボ冷凍機の負荷率の前記所定値は、30%以上50%未満とされていることを特徴とする。
【0010】
ターボ冷凍機の負荷率の所定値すなわち可変速機優先運転モードと併用運転モードとを切り替える閾値となるターボ冷凍機負荷率を、30%以上50%未満とすることとした。これにより、可変速ターボ圧縮機は低い圧縮機負荷率とされた可変速機優先運転モードにて主として運転されるので、比較的容量の小さい可変速ターボ圧縮機を選択することができる。つまり、可変速ターボ圧縮機としては、ターボ冷凍機の負荷率30%以上50%未満に相当する容量で足りる。したがって、固定速ターボ圧縮機の半分程度以下の容量の可変速ターボ圧縮機を採用するだけで済むので、汎用的なインバータ装置を使用でき、廉価にターボ圧縮機を構成することができる。
また、閾値となる圧縮機負荷率の所定値は、固定速ターボ圧縮機の効率が所定値以上となる領域(例えば最高効率の20%以内)の下限を設定することが好ましい。これにより、低い圧縮機負荷率で固定速ターボ圧縮機が起動されてターボ冷凍機の効率を低下させてしまうことを防止することができる。
なお、固定速ターボ圧縮機の容量は、可変速ターボ圧縮機の容量との合計がターボ冷凍機の負荷率100%を満たすように選定される。例えば、可変速ターボ圧縮機がターボターボ冷凍機の負荷率30%に相当する容量の場合には、固定速ターボ圧縮機はターボターボ冷凍機の負荷率70%に相当する容量となる。
【0011】
さらに、本発明のターボ冷凍機では、前記固定速ターボ圧縮機の羽根車の冷媒流れ上流側には、該羽根車に流入する冷媒流量を制御するインレットガイドベーンが設けられ、該インレットガイドベーンに対向する壁部には、該インレットガイドベーンを全閉とした際に該インレットガイドベーンと該壁部との隙間を冷媒が漏出することを最小化するシール手段が設けられていることを特徴とする。
【0012】
固定速ターボ圧縮機は、可変速機優先運転モードが選択された際には起動されない。また、固定速ターボ圧縮機は、可変速ターボ圧縮機に対して並列に接続されているので、可変速機優先運転モードの場合であっても固定速ターボ圧縮機の前後には冷媒の圧力差が発生する。この圧力差によって冷媒が高圧側から低圧側に漏れると冷凍に寄与しない冷媒流れが生じるため、冷凍機性能を低下させてしまうことになる。
そこで、本発明では、インレットガイドベーンと壁部との間に冷媒漏れを最小化するシール手段を設け、インレットガイドベーンを全閉とした場合における冷媒漏れを最小化することとした。これにより、可変速機優先運転モードの場合であっても固定速ターボ圧縮機を介して漏れる冷媒量を最小化するため、冷凍機性能の低下を防止することができる。また、固定速ターボ圧縮機における冷媒漏れを最小化するため、冷媒配管に自動開閉弁を追設する必要がなくなる。
なお、シール手段としては、例えば、壁部側に形成したラビリンスシールが挙げられる。
【0013】
また、本発明のターボ冷凍機の制御方法は、インバータ装置によって回転周波数可変とされて冷媒を圧縮する可変速ターボ圧縮機と、該可変速ターボ圧縮機に対して並列に接続され、一定の回転数にて運転されて冷媒を圧縮する固定速ターボ圧縮機と、前記可変速ターボ圧縮機および/または前記固定速ターボ圧縮機によって圧縮された冷媒を、供給された冷却水によって凝縮液化させる凝縮器と、該凝縮器によって凝縮液化された冷媒を膨張させる膨張弁と、該膨張弁によって膨張された冷媒を蒸発させる蒸発器とを備え、前記可変速ターボ圧縮機および前記固定速ターボ圧縮機の運転を制御するターボ冷凍機の制御方法において、要求される当該ターボ冷凍機の負荷率が所定値未満の場合には、前記可変速ターボ圧縮機のみを起動する可変速機優先運転モードを選択し、要求される当該ターボ冷凍機の負荷率が所定値以上の場合には、前記可変速ターボ圧縮機および前記固定速ターボ圧縮機を起動する併用運転モードを選択することを特徴とする。
【0014】
インバータ装置によって回転周波数可変とされた可変速ターボ圧縮機を用いたターボ冷凍機では、低い圧縮機負荷率の場合には比較的高いCOP(ターボ冷凍機の効率)を示し、高い圧縮機負荷率ではCOPが低下するという特性を持っている。この傾向は、冬期のように低い冷却水温度のときに顕著である。
一方、一定の回転数に運転される固定速ターボ圧縮機を用いたターボ冷凍機では、低い圧縮機負荷率の場合には低いCOPを示し、高い圧縮機負荷率で高いCOPを示す。この傾向は、夏期のように高い冷却水温度のときに顕著である。
本発明は、これらの特性を考慮して、ターボ冷凍機の負荷率が所定値未満の場合には圧縮機負荷率が所定値未満となる可変速ターボ圧縮機のみを起動させる可変速機優先運転モードを選択し、ターボ冷凍機の負荷率が所定値以上の場合には、それぞれの圧縮機の圧縮機負荷率が所定値以上となるので可変速および固定速の両方のターボ圧縮機を起動させる併用運転モードを選択することとした。なお、ターボ冷凍機負荷率は、圧縮機が1台のみの運転の場合には圧縮機負荷率に相当し、圧縮機が2台の運転の場合には圧縮機負荷率の合計に相当する。
一般に、冬期または中間期のように冷却水温度が比較的低い状態では、ターボ冷凍機負荷率が低くなり圧縮機負荷率が所定値未満となる場合が多く、この場合に可変速機優先運転モードを選択することによって、可変速ターボ圧縮機のみで高効率運転を実現する。一方、冷却水温度が比較的高い状態となる夏期では、ターボ冷凍機負荷率が上がり圧縮機負荷率が所定値以上となる場合から、併用運転モードへ移行することによって高効率運転が実現される。このように、可変速機優先運転モードと併用運転モードとを組み合わせることにより、広い圧縮機負荷率にわたって高いCOPを示すターボ冷凍機の制御方法が実現される。
【発明の効果】
【0015】
本発明のターボ冷凍機およびその制御方法によれば、以下の作用効果を奏する。
ターボ冷凍機の負荷率が所定値未満の場合には可変速ターボ圧縮機のみを起動させる可変速機優先運転モードを選択し、ターボ冷凍機の負荷率が所定値以上の場合には可変速および固定速の両方のターボ圧縮機を起動させる併用運転モードを選択することとし、広いターボ冷凍機の負荷率にわたって高いCOPを示すターボ冷凍機が実現される。
また、冷却水温度が所定値以下とされた冬期のように冷却水温度が低いときには、可変速機優先運転モードを選択することとし、さらなる効率向上を実現する。
また、冷却水温度が所定値以上とされた夏期のように冷却水温度が高いときには、併用運転モードを選択することとし、さらなる効率向上を実現する。
また、冷却水温度が夏期のように高くもなく冬期のように低くもない中間期の場合には、ターボ冷凍機の負荷率が所定値未満の場合には可変速機優先運転モードを選択し、ターボ冷凍機の負荷率が所定値以上の場合には併用運転モードを選択することとし、さらなる効率向上を実現する。
また、インレットガイドベーンと壁部との間に冷媒漏れを最小化するシール手段を設け、インレットガイドベーンを全閉とした場合における冷媒漏れを最小化することとしたので、可変速機優先運転モードの場合であっても冷媒の固定速ターボ圧縮機を介して漏れる量を最小化するため、冷凍機性能の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態にかかるターボ冷凍機を備えた熱源システムを示した概略構成図である。
【図2】ターボ冷凍機のCOPを冷凍機ユニット(ターボ冷凍機)負荷率に対して示したグラフである。
【図3】インレットガイドベーンを全閉とした状態を示した正面図である。
【図4】(a)は図3の切断線A−Aにおける断面図であり、(b)は図3の切断線B−Bにおける断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明にかかる実施形態について、図面を参照して説明する。
図1には、本発明にかかるターボ冷凍機を備えた熱源システムの一実施形態が示されている。熱源システム1は、複数台(本実施形態では2台)が並列に設けられたターボ冷凍機3と、複数台(本実施形態では4台)が並列に設けられた冷却塔5とを備えている。
ターボ冷凍機3は、冷媒を圧縮する2台のターボ圧縮機7,8と、これらターボ圧縮機7,8によって圧縮された冷媒を凝縮液化させる凝縮器9と、この凝縮器9によって凝縮液化された冷媒を膨張させる膨張弁(図示せず)と、この膨張弁によって膨張された冷媒を蒸発させる蒸発器11とを備えている。
2台のうちの一方のターボ圧縮機7は、インバータ装置によって回転周波数可変とされた電動モータ13によって駆動される。したがって、このターボ圧縮機7は、可変速ターボ圧縮機とされている。
他方のターボ圧縮機8は、電動モータ14によって一定の回転速度にて運転される固定速ターボ圧縮機とされている。
【0018】
凝縮器9には、冷却水ポンプ15によって供給された冷却水が導かれるようになっている。冷却水ポンプ15は、インバータ装置によって回転周波数可変とされた電動モータ(図示せず)によって駆動される。凝縮器9へ供給される冷却水の入口温度と、凝縮器9から流出する冷却水の出口温度は、図示しない温度センサによって計測され、後述する制御部へと出力値が送信される。
各冷却水ポンプ15は、冷却水還ヘッダ17から導かれた冷却水を吸込み、凝縮器9側へ吐出する。凝縮器9側から吐出された冷却水は、冷却水往ヘッダ19へと導かれる。冷却水還ヘッダ17には、全てのターボ冷凍機3及び全ての冷却塔5が共通に接続されている。冷却水往ヘッダ19にも、全てのターボ冷凍機3及び全ての冷却塔5が共通に接続されている。
【0019】
蒸発器11には、冷水ポンプ21によって供給された冷水が導かれるようになっている。冷水ポンプ21は、インバータ装置によって回転周波数可変とされた電動モータ(図示せず)によって駆動される。蒸発器11へ供給される冷水の入口温度と、蒸発器11から流出する冷水の出口温度は、図示しない温度センサによって計測され、後述する制御部へと出力値が送信される。また、冷水流量についても流量計によって計測され、後述する制御部へと出力値が送信される。制御部では、冷水入口出口温度差と、冷水流量と、冷水の比熱と、冷水の比重を乗じることによって、外部負荷にて消費されている負荷が算出される。
各冷水ポンプ21は、冷水還ヘッダ23から導かれた冷水を吸込み、蒸発器11側へ吐出する。蒸発器11側から吐出された冷水は、冷水往ヘッダ25へと導かれる。冷水還ヘッダ23には、全てのターボ冷凍機3が共通に接続されている。冷水往ヘッダ25にも、全てのターボ冷凍機3が共通に接続されている。
冷水還ヘッダ23及び冷水往ヘッダ25は、図示しない外部負荷に接続されている。外部負荷には、蒸発器11によって冷却された冷水(例えば7℃)が冷水往ヘッダ25を介して供給され、外部負荷にて使用され昇温した冷水(例えば12℃)は、冷水還ヘッダ23を介して蒸発器11側に戻される。
【0020】
冷却塔5は、冷却塔ファン30と、散水ヘッダ32と、冷却水貯留タンク34とを備えている。
冷却塔ファン30は、冷却塔5内に外気を導入するために用いられ、電動モータ36によって駆動される。この電動モータ36としては、インバータ装置によって回転周波数可変としたものが好適に用いられる。
散水ヘッダ32は、上方から冷却水を外気中に散布し、外気と接触させることによって顕熱だけでなく蒸発潜熱をも用いて冷却水を冷却する。散水ヘッダ32と冷水往ヘッダ19との間には冷却水往用開閉弁38が設けられている。
冷却水貯留タンク34には、散布されて外気によって冷却された冷却後の冷却水が貯留される。冷却水貯留タンク34内に貯留された冷却水は、冷却水還用開閉弁40を介して冷却水還ヘッダ17へと導かれる。
冷却水往用開閉弁38と冷却水還用開閉弁40を開閉することによって冷却塔5の起動停止が行われる。これにより、冷却塔5の起動台数を変更することができる。
冷却塔5には、湿度センサ(図示せず)が設けられている。この湿度センサによって、外気湿球温度が得られる。湿度センサの出力は、後述する制御部へと送られる。なお、湿度センサに代えて、乾球温度と相対湿度と外気圧で、外気湿球温度を出しても良い。
【0021】
熱源システムは、図示しない制御部を備えており、この制御部は、ターボ圧縮機7,8、膨張弁、冷却水ポンプ15、冷却塔ファン30、冷却水往用開閉弁38、冷却水還用開閉弁40、及び冷水ポンプ21の動作を制御する。
【0022】
上記構成の熱源システム1は、以下のように動作する。
制御部の指令によってターボ圧縮機7,8が起動され、冷媒を圧縮する。これらターボ冷凍機7,8の起動の順番については、後述する。
ターボ冷凍機7,8によって圧縮された冷媒は、凝縮器9へと導かれ、冷却水ポンプ15によって冷却水還ヘッダ17から供給された冷却水により冷却されて凝縮液化される。凝縮器9にて凝縮潜熱を得て昇温した冷却水は、冷却水往ヘッダ19へと導かれ、冷却水往用開閉弁38を介して散水ヘッダ32へと導かれる。冷却水は、散水ヘッダ32から外気に対して散水され、冷却塔ファン30によって導かれた外気との接触によって冷却される。冷却後の冷却水は、冷却水貯留タンク34内に一時的に貯留された後、冷却水還用開閉弁40を介して冷却水還ヘッダ17へと導かれる。このようにして冷却水は、凝縮器9と冷却塔5との間で循環する。
凝縮器9にて凝縮液化した液冷媒は、図示しない膨張弁によって膨張された後、蒸発器11へと導かれる。蒸発器11では、液冷媒が蒸発することによって冷水から蒸発潜熱を奪い冷水を冷却する。冷水は、冷水還ヘッダ23から冷水ポンプ21によって蒸発器11へと導かれ、蒸発器11にて冷却されて所望温度(例えば7℃)となり、冷水往ヘッダ25へと導かれる。冷水往ヘッダ25は、図示しない外部負荷に接続されており、冷水は、外部負荷にて使用されて所定温度(例えば12℃)まで昇温した後に冷水還ヘッダ23へと戻される。
蒸発器11にて蒸発した冷媒は、ターボ圧縮機7,8の吸込口へと導かれ再び圧縮される。
【0023】
次に、ターボ圧縮機7,8の起動方法について、図2を用いて説明する。同図の横軸はターボ冷凍機の負荷率を示し、縦軸はターボ冷凍機3のCOPを示す。ターボ冷凍機の負荷率は、要求される冷水出口温度を維持するために必要な運転を継続する際に要求されるターボ冷凍機3の出力(運転されているターボ圧縮機7,8の合計出力)を、これらターボ冷凍機3の合計定格出力(ターボ圧縮機7,8の定格出力の合計)で除したものである。制御部では、熱源システム1及びターボ冷凍機3の現在の運転状態を把握しており、常にターボ冷凍機の負荷率を得ている。
同図において、破線は可変速ターボ圧縮機7を示しており、2点鎖線は固定速ターボ圧縮機8を示している。また、各曲線は、冷却水入口温度(凝縮器9へ流入する冷却水温度)ごとに、具体的には12℃,20℃,32℃のそれぞれにおけるCOPが示されている。冷却水入口温度の12℃は冬期を代表し、20℃は中間期昼間や夏期夜間(以下、単に「中間期」という。)を代表し、32℃は夏期昼間(以下、単に「夏期」という。)を代表している。
【0024】
同図から分かるように、可変速ターボ圧縮機7を用いたターボ冷凍機は、冬期のように低い冷却水温度(例えば12℃)では、低いターボ冷凍機の負荷率の場合には比較的高いCOPを示し、高いターボ冷凍機の負荷率ではCOPが低下するという特性を持っている。一方、固定速ターボ圧縮機8を用いたターボ冷凍機では、夏期のように高い冷却水温度(例えば30℃)では、低いターボ冷凍機の負荷率では大きくCOPが低下しているが、高いターボ冷凍機の負荷率では一定の高いCOPを示す。
【0025】
本実施形態では、上述のようなターボ圧縮機の特性をふまえ、以下のように運転制御を行う。
ターボ冷凍機の負荷率が所定値(例えば30%)未満の場合には、可変速ターボ圧縮機7のみが起動され(可変速機優先運転モード)、ターボ冷凍機の負荷率が所定値以上の場合には、定格(100%)まで両ターボ圧縮機7,8が起動される(併用運転モード)。なお、閾値となるターボ冷凍機の負荷率は、30%に限定されるものではなく、ターボ冷凍機の特性に合わせて適宜設定される。ただし、30%以上50%未満の間で閾値を設けるのが好ましい。
ターボ圧縮機の運転切り替えの閾値となるターボ冷凍機の負荷率が30%とされた場合には、可変速ターボ圧縮機7としては定格出力の30%程度の容量が選定され、固定速ターボ圧縮機8としては定格の70%程度の容量が選定される。
【0026】
ターボ冷凍機の負荷率30%以下の領域では、同図において太実線で示したように、固定速ターボ圧縮機8よりも高いCOPを示す可変速ターボ圧縮機7が示すCOPが選択されることになる。一般に、30%未満のターボ冷凍機の負荷率では、冬期(領域A)や中間期(領域B)での運転となる。したがって、30%未満のターボ冷凍機の負荷率では可変速ターボ圧縮機7を選択することによって、高効率での運転が実現される。
【0027】
ターボ冷凍機の負荷率30%以上100%以下の領域では、同図において太実線で示したように、固定速ターボ圧縮機8と可変速ターボ圧縮機7が示すCOPの中間値が選択されることになる。30%以上100%以下のターボ冷凍機の負荷率の領域では、中間期(領域B)や夏期(領域C)での運転となる。中間期や夏期における冷却水入口温度では、固定速ターボ圧縮機8のCOPはターボ冷凍機の負荷率が30%を超えると十分に向上しているため、両ターボ冷凍機7,8を併用運転しても高効率とされた運転が実現される。
【0028】
このように、本実施形態では、可変速機優先運転モードと併用運転モードとを組み合わせることにより、広いターボ冷凍機の負荷率にわたって高いCOPを示すターボ冷凍機3が実現される。
また、可変速機優先運転モードと併用運転モードとを切り替える閾値となるターボ冷凍機の負荷率を、30%以上50%未満とすることとした。これにより、可変速ターボ圧縮機7は低いターボ冷凍機の負荷率とされた可変速機優先運転モードにて主として運転されるので、比較的容量の小さい可変速ターボ圧縮機7を選択することができる。つまり、可変速ターボ圧縮機7としては、ターボ冷凍機の負荷率30%以上50%未満に相当する容量で足りる。したがって、固定速ターボ圧縮機8の半分程度以下の容量の可変速ターボ圧縮機を採用するだけで済むので、汎用的なインバータ装置を使用でき、廉価にターボ圧縮機を構成することができる。
【0029】
次に、図3及び図4を用いて、固定速ターボ圧縮機8に設けられたインレットガイドベーンの構成について説明する。
インレットガイドベーン50は、固定速ターボ圧縮機8の羽根車(図示せず)の上流側に設けられ、羽根車に流入する冷媒の流量を制御するものである。インレットガイドベーン50は、中心軸体52と外周リング54との間に設けられ、複数のベーン56が放射状に配置されている。ベーン56は、略扇形とされた板状体である。各ベーン56は、中心軸体52の中心を通る回動軸線58周りに回動するようになっている。図3における状態は、閉状態を示しており、各ベーン56の面が冷媒流路に対して直交するように位置されている。開状態の場合には、各ベーン56は90°回動し、各ベーン56の面が冷媒流れに沿う位置とされる。
図4(a)には、図3の切断線A−Aにおける断面が示されている。同図に示されているように、外周リング54の内周面には冷媒流れ方向(図において縦方向)に複数段の溝54aが形成され、ラビリンスシール(シール手段)を構成している。また、図3の切断線B−Bにおける断面を示した図4(b)に示されているように、中心軸体52の外周面にも複数段の溝52aが形成され、ラビリンスシール(シール手段)を構成している。
このように、各ベーン56と外周リング54及び中心軸体52との間にラビリンスシールを設け、全閉状態における冷媒漏れを最小化するようにした。これにより、可変速機優先運転モードのように、固定速ターボ圧縮機8が起動されていないにもかかわらず並列配置された可変速ターボ圧縮機7によって固定速ターボ圧縮機8の前後に冷媒の圧力差が生じている場合であっても、インレットガイドベーンを全閉として冷媒漏れを最小化することとした。これにより、可変速機優先運転モードの場合であっても冷媒の固定速ターボ圧縮機を介して漏れる量を最小化するため、冷凍機性能の低下を防止することができる。また、固定速ターボ圧縮機8における冷媒漏れを最小化するため、冷媒配管に開閉弁を追設する必要がなくなる。
【符号の説明】
【0030】
1 熱源システム
3 ターボ冷凍機
5 冷却塔
7 ターボ圧縮機
9 凝縮器
11 蒸発器
13 電動モータ
15 冷却水ポンプ
17 冷却水還ヘッダ
19 冷却水往ヘッダ
21 冷水ポンプ
23 冷水還ヘッダ
25 冷水往ヘッダ
30 冷却塔ファン
32 散水ヘッダ
34 冷却水貯留タンク
36 電動モータ
38 冷却水往用開閉弁
40 冷却水還用開閉弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インバータ装置によって回転周波数可変とされて冷媒を圧縮する可変速ターボ圧縮機と、
該可変速ターボ圧縮機に対して並列に接続され、一定の回転数にて運転されて冷媒を圧縮する固定速ターボ圧縮機と、
前記可変速ターボ圧縮機および/または前記固定速ターボ圧縮機によって圧縮された冷媒を、供給された冷却水によって凝縮液化させる凝縮器と、
該凝縮器によって凝縮液化された冷媒を膨張させる膨張弁と、
該膨張弁によって膨張された冷媒を蒸発させる蒸発器と、
前記可変速ターボ圧縮機および前記固定速ターボ圧縮機の運転を制御する制御部と、
を備えたターボ冷凍機において、
前記制御部は、要求される当該ターボ冷凍機の負荷率が所定値未満の場合には、前記可変速ターボ圧縮機のみを起動する可変速機優先運転モードを選択し、要求される当該ターボ冷凍機の負荷率が所定値以上の場合には、前記可変速ターボ圧縮機および前記固定速ターボ圧縮機を起動する併用運転モードを選択することを特徴とするターボ冷凍機。
【請求項2】
前記ターボ冷凍機の負荷率の前記所定値は、30%以上50%未満とされていることを特徴とする請求項1に記載のターボ冷凍機。
【請求項3】
前記固定速ターボ圧縮機の羽根車の冷媒流れ上流側には、該羽根車に流入する冷媒流量を制御するインレットガイドベーンが設けられ、
該インレットガイドベーンに対向する壁部には、該インレットガイドベーンを全閉とした際に該インレットガイドベーンと該壁部との隙間を冷媒が漏出することを最小化するシール手段が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のターボ冷凍機。
【請求項4】
インバータ装置によって回転周波数可変とされて冷媒を圧縮する可変速ターボ圧縮機と、
該可変速ターボ圧縮機に対して並列に接続され、一定の回転数にて運転されて冷媒を圧縮する固定速ターボ圧縮機と、
前記可変速ターボ圧縮機および/または前記固定速ターボ圧縮機によって圧縮された冷媒を、供給された冷却水によって凝縮液化させる凝縮器と、
該凝縮器によって凝縮液化された冷媒を膨張させる膨張弁と、
該膨張弁によって膨張された冷媒を蒸発させる蒸発器と、
を備え、
前記可変速ターボ圧縮機および前記固定速ターボ圧縮機の運転を制御するターボ冷凍機の制御方法において、
要求される当該ターボ冷凍機の負荷率が所定値未満の場合には、前記可変速ターボ圧縮機のみを起動する可変速機優先運転モードを選択し、要求される当該ターボ冷凍機の負荷率が所定値以上の場合には、前記可変速ターボ圧縮機および前記固定速ターボ圧縮機を起動する併用運転モードを選択することを特徴とするターボ冷凍機の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−236835(P2010−236835A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−87515(P2009−87515)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】