説明

ターボ圧縮機

【課題】潤滑油の跳ね返りによる機械損失を増大させず、圧縮機の設置スペースを小さくすると共に、冷却水の配管工事も容易にできるターボ圧縮機を提供する。
【解決手段】入力軸6aと、この入力軸6aの回転がギヤ4を介して伝達される少なくとも1本のピニオン軸とを有するギヤケース5に、前記ピニオン軸で駆動される第1段圧縮機1と第2段圧縮機2が備えられると共に、これら第1段圧縮機1と第2段圧縮機2とから吐出されるガスを冷却するガスクーラ11,12が夫々備えられたターボ圧縮機において、前記ギヤケース5の下部に潤滑油タンク13が配設されると共に、前記第1段圧縮機1と第2段圧縮機2との下方で、かつ前記潤滑油タンク13の両側面に前記ガスクーラ11,12が夫々配設され、前記潤滑油タンク軸線C3及び前記ガスクーラ軸線C1,C2と前記入力軸6aが平行に配置されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、羽根車の回転軸が、駆動軸から駆動ギヤを介して駆動されるギヤ内蔵型の多段式ターボ圧縮機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
先ず、従来例に係る多段式ターボ圧縮機について、以下添付図6〜9を参照しながら説明する。図6は従来技術1に係る遠心圧縮機の平面図、図7は図6のIV−IV矢視図、図8は従来技術2に係るターボ圧縮機の側断面図、図9は従来技術2に係るターボ圧縮機を複数台設置した場合の冷却水配管系統図の一例である。
【0003】
従来技術1に係る遠心圧縮機の圧縮機本体44は、夫々中空構造の圧縮機基部45と、ギヤボックスハウジング部46と、第一段スクロール部47と、第二段スクロール部48と、モーター取付台49とを備え、これら各部を鋳造によって一体的に形成した構造を有している。
【0004】
そして、圧縮機基部45の内部の一端A側寄りの部分には、潤滑油を貯留する潤滑油貯留室52が形成され、圧縮機基部45の内部の他端B側寄りの部分には、熱交換素子(図示せず)を内装するインタークーラー室50と、他の熱交換素子(図示せず)を内装するアフタークーラー室51が形成されている。
【0005】
また、圧縮機基部45の一端A側寄りの端部には、潤滑油貯留室52の開口部56,57を夫々別箇に覆うように開口部カバー59,60が取り付けられ、圧縮機基部45の他端B側寄りの端部には、インタークーラー室50、アフタークーラー室51の開口部54,55を一体的に覆うように開口部カバー58が取り付けられている。
【0006】
前記開口部カバー58には、両クーラー室50,51に内装された熱交換素子に対して冷却媒体の授受を行うための管路(図示せず)が設けられており、圧縮機基部45の外部から各熱交換素子に対して冷却媒体を流通させることによって、当該冷却媒体と両クーラー室50,51の内部の気体との間で熱交換を行い、前記気体を冷却するようになっている。また、前記のアフタークーラー室51には外部へ開口する気体出口(図示せず)が設けられている。
【0007】
ギヤボックスハウジング部46は、前記の圧縮機基部45の上側部に設けられ、内部には入力軸と出力軸とを有する増速ギヤ機構(図示せず)が内装されている。また、ギヤボックスハウジング部46の上端には、前記増速ギヤ機構を覆うギヤボックスカバー61が取り付けられる一方、ギヤボックスハウジング部46の内部には、増速ギヤの設置部分から前記の潤滑油貯留室52へ延びる潤滑油回収流路75が形成されている。
【0008】
更に、第一段スクロール部47の内部には、スクロール室62から前記の圧縮機基部45の内部のインタークーラー室50の一端A側寄り端部近傍へ延びる第一段吐出流路66が形成されており、インペラ(図示せず)が回転することにより気体入口65から第一段スクロール部47に流入して圧縮される気体は、第一段吐出流路66を経てインタークーラー室50に流入するようになっている。
【0009】
更に、第二段スクロール部48の内部には、前記の圧縮機基部45の内部のインタークーラー室50の他端B側寄り端部近傍からスクロール室67へ延びる第二段吸入流路70と、スクロール室67から圧縮機基部45内部のアフタークーラー室51の他端B側より端部近傍へ延びる第二段吐出流路71とが形成されており、インペラが回転することにより第二段吸入流路70から第二段スクロール部48に流入して圧縮される気体は、第二段吐出流路71を経てアフタークーラー室51に流入するようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0010】
しかしながら、この従来技術1に係る遠心圧縮機は、圧縮機本体44とインタークーラー室50及びアフタークーラー室51、並びに圧縮機本体44と前記クーラー室50,51を接続する配管(図示せず)の一部が一体構造となり、増速ギヤを収納するギアボックスハウジング部61の底部に底板61aが形成されているため、このギアボックスハウジング部61内に噴射された潤滑油が、前記底板61aに当って跳ね返り、増速ギヤに衝突して機械損失を増大させる。その結果、遠心圧縮機の性能低下を招くことになる。
【0011】
一方、従来技術2は、増速ギヤ(図示せず)を収納するギヤケース81、第1段圧縮機85及び第2段圧縮機86からなる圧縮機本体と、第1ガス冷却部82及び第2ガス冷却部83、並びに前記圧縮機本体と、第1ガス冷却部82及び第2ガス冷却部83を接続する配管の一部(例えば、1段圧縮空気流通路88や2段圧縮空気流通路89)を一体構造としたところは、上記従来技術1と同一であるが、図8に示す如く、ギヤケース81の底板をなくして、潤滑油タンク87に直接潤滑油が回収される構造になっている(特許文献2参照)。従って、従来技術1の如く、潤滑油が前記底板61aに当って跳ね返り機械損失を増大させて、遠心圧縮機の性能低下を招くことはない。
【0012】
しかしながら、この様な従来技術2に係るターボ圧縮機は、従来技術1に係る遠心圧縮機と同様、第1ガス冷却部82及び第2ガス冷却部83(従来技術1においては、インタークーラー室50及びアフタークーラー室51)の軸線方向(第1ガス冷却部82及び第2ガス冷却部83の長手方向)が、圧縮機のピニオン軸84と平行に配置された駆動軸(図示せず)と直交する方向に配置されている。また、前記駆動軸を駆動する駆動モータは、当然駆動軸と同軸方向に取り付けられるため、この様な圧縮機の外形寸法は駆動軸と平行な方向に比較的長く、この駆動軸と直交する方向に短いものとなる。尚、第1ガス冷却部82及び第2ガス冷却部83の冷却水の給水取合口及び排水取合口は、それら第1ガス冷却部82及び第2ガス冷却部83の軸線方向の端部に配置される。
【0013】
従来技術2に係るターボ圧縮機を複数台設置する場合、メンテナンスの便宜上、図9に示す如く、各圧縮機の駆動軸が並列する様にその複数台のターボ圧縮機を配置する。その結果、各冷却部82,83への給水取合口91及び排水取合口92は、各圧縮機の側面(隣り合う圧縮機の面のうち、互いに対向する面)に配置される。
【0014】
この様に配置した場合、給水取合口91及び排水取合口92へ接続される給水配管91a及び排水配管92aは、何れも給水主配管91b及び排水主配管92bに対して屈曲(即ち、給水主配管91b及び排水主配管92bから略垂直に延びた後、その給水主配管91b及び排水主配管92bと略平行に延びて各圧縮機に接続する様、略直角方向に屈曲)して配管する必要があり、配管工事が複雑で難しくなる。また、各駆動系のメンテナンスやクーラー本体の抜き取りの作業のための十分なスペースを各圧縮機間に確保する必要があるため、広い設置スペースが必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平7−103162号公報
【特許文献2】特許第4048078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、本発明の目的は、潤滑油の跳ね返りによる機械損失を増大させず、圧縮機の設置スペースを小さくすると共に、冷却水の配管工事も容易にできるターボ圧縮機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1に係るターボ圧縮機が採用した手段は、入力軸と、この入力軸の回転がギヤを介して伝達される少なくとも1本のピニオン軸とを有するギヤケースの一方の側面に、前記ピニオン軸で駆動される第1段圧縮機が備えられ、かつ他方の側面に前記ピニオン軸で駆動される第2段圧縮機が備えられると共に、これら第1段圧縮機と第2段圧縮機とから吐出されるガスを冷却するガスクーラが夫々備えられたターボ圧縮機において、前記ギヤケースの下部に潤滑油タンクが配設されると共に、前記第1段圧縮機と第2段圧縮機との下方で、かつ前記潤滑油タンクの両側面に前記ガスクーラが夫々配設され、前記潤滑油タンク及び前記夫々のガスクーラの各軸線と前記入力軸が平行に配置されてなることを特徴とするものである。
【0018】
本発明の請求項2に係るターボ圧縮機が採用した手段は、請求項1に記載のターボ圧縮機において、前記潤滑油タンク内に、このタンク内の油溜まり部を上下に画成する中仕切り板が設けられ、前記中仕切り板の端部と前記潤滑油タンクの内壁とによって、前記画成された上下の油溜り部を連通する開孔部が形成されてなることを特徴とするものである。
【0019】
本発明の請求項3に係るターボ圧縮機が採用した手段は、請求項1または2に記載のターボ圧縮機において、前記ガスクーラのハウジングには、このガスクーラの軸線方向に熱交換器を挿通するための貫通穴が形成されてなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明の請求項1に係るターボ圧縮機によれば、入力軸と、この入力軸の回転がギヤを介して伝達される少なくとも1本のピニオン軸とを有するギヤケースの一方の側面に、前記ピニオン軸で駆動される第1段圧縮機が備えられ、かつ他方の側面に前記ピニオン軸で駆動される第2段圧縮機が備えられると共に、これら第1段圧縮機と第2段圧縮機とから吐出されるガスを冷却するガスクーラが夫々備えられたターボ圧縮機において、前記ギヤケースの下部に潤滑油タンクが配設されると共に、前記第1段圧縮機と第2段圧縮機との下方で、かつ前記潤滑油タンクの両側面に前記ガスクーラが夫々配設され、前記潤滑油タンク及び前記夫々のガスクーラの各軸線と前記入力軸が平行に配置されてなる。
【0021】
その結果、ターボ圧縮機の機械損失を増やすことなく、かつ、ガスクーラへの給排水配管を屈曲させずに夫々の主配管に接続できる。そのため、配管工事が簡単で設置スペースも小さくできる上、これら給排水配管が前記圧縮機のメンテナンス上、邪魔になることがない。
【0022】
本発明の請求項2に係るターボ圧縮機によれば、前記潤滑油タンク内に、このタンク内の油溜まり部を上下に画成する中仕切り板が設けられ、前記中仕切り板の端部と前記潤滑油タンクの内壁とによって、前記画成された上下の油溜り部を連通する開孔部が形成されてなるので、潤滑油タンク内の貯留時間が長くなり、潤滑油中の気泡を消滅させ得る。その結果、前記ギヤや軸受の潤滑及び冷却能力の低下、並びに腐食を防止できる。また、潤滑油の使用量を少なくして、潤滑油タンクの容量も少量化できるので、圧縮機全体の大きさも小型化できるメリットが生じる。
【0023】
本発明の請求項3に係るターボ圧縮機によれば、前記ガスクーラのハウジングには、このガスクーラの軸線方向に熱交換器を挿通するための貫通穴が形成されてなるので、当該ハウジングの鋳造時に中子を両端支持でき、ガスクーラ内部のシールが確実に行える様になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態に係る3段式ターボ圧縮機の模式的系統図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る3段式ターボ圧縮機の電動機を省略した模式的平面図である。
【図3】図2のA−A矢視図である。
【図4】図2のB−B矢視図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る3段式ターボ圧縮機を複数台設置した場合の冷却水配管の系統図の一例である。
【図6】従来技術1に係る遠心圧縮機の平面図である。
【図7】図6のIV-IV矢視図である。
【図8】従来技術2に係るターボ圧縮機の側断面図である。
【図9】従来技術2に係るターボ圧縮機を複数台設置した場合の冷却水配管の系統図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
先ず、本発明の実施の形態に係るターボ圧縮機につき、3段式ターボ圧縮機に適用した態様例として、以下添付図1〜5を参照しながら説明する。図1は本発明の実施の形態に係る3段式ターボ圧縮機の模式的系統図、図2は本発明の実施の形態に係る3段式ターボ圧縮機の電動機を省略した模式的平面図、図3は図2のA−A矢視図、図4は図2のB−B矢視図、図5は本発明の実施の形態に係る3段式ターボ圧縮機を複数台設置した場合の冷却水配管の系統図の一例である。
【0026】
この3段式ターボ圧縮機は、図1に示す如く、入力歯車6に1−2段ピニオンギヤ7と3段ピニオンギヤ8とを噛み合わして形成されたツインピニオン型の増速機(ギヤ)4を備えている。その増速機4は増速機ハウジング(ギヤケース)5に収容されている。そして、前記入力歯車6は、その中央部分において、入力軸6aに接続されている。また、入力軸6aは、増速機ハウジング(ギヤケース)5に内蔵された軸受等(図示せず)により回転可能に支持されている。
【0027】
同時に、前記入力軸6aの一端が、増速機ハウジング5から突出しており、電動機Mの出力軸6bに接続されている。前記入力軸6aと出力軸6bとの接続は、軸心にずれがあった場合でも振動や騒音を発することなく回転力を伝達可能なよう、カップリング23を介して接続されている。増速機ハウジング5は、ハウジング下部の増速機下ハウジング5aと、ハウジング上部の増速機上ハウジング5bとから構成されている。そして、増速機下ハウジング5aが、後述する潤滑油タンク13の上方に接続されている。
【0028】
また、前記入力歯車6には、1−2段ピニオンギヤ7と3段ピニオンギヤ8が噛み合わされており、前記1−2段ピニオンギヤ7はピニオン軸7aによって、更に、前記3段ピニオンギヤ8はピニオン軸8aによって回転可能に支持されている。即ち、換言すれば、本発明の実施の形態に係る3段式ターボ圧縮機は、入力軸6aの回転が入力歯車6、1−2段ピニオンギヤ7を介して伝達されるピニオン軸7aと、入力軸6aの回転が入力歯車6、3段ピニオンギヤ8を介して伝達されるピニオン軸8aを有していると言える。
【0029】
そして、増速機4から見て、1−2段ピニオンギヤ7のピニオン軸7aの反電動機M側の一端に第1段インペラ1aが接続され、この第1段インペラ1aに第1段圧縮機ケーシング1bが周設されている。一方、増速機4から見て、1−2段ピニオンギヤ7のピニオン軸7aの電動機M側の他端には第2段インペラ2aが接続され、この第2段インペラ2aに第2段圧縮機ケーシング2bが周設されている。また、このターボ圧縮機は、増速機4から見て3段ピニオンギヤ8のピニオン軸8aの反電動機M側の一端に第3段インペラ3aが接続され、この第3段インペラ3aに第3段圧縮機ケーシング3bが周設されている。
【0030】
これら第1段インペラ1a、第2段インペラ2a及び第3段インペラ3aの何れも、第1段圧縮機ケーシング1b、第2段圧縮機ケーシング2b及び第3段圧縮機ケーシング3b内の渦巻室(図示せず)に夫々収納され、第1段圧縮機1、第2段圧縮機2及び第3段圧縮機3が構成されている。
【0031】
即ち、この3段式ターボ圧縮機には、増速機ハウジング(ギヤケース)5の一方の側面にピニオン軸7aで駆動される第1段圧縮機1が備えられ、かつ、増速機ハウジング(ギヤケース)5の他方の側面に同じくピニオン軸7aで駆動される第2段圧縮機が備えられている。そして、この3段式ターボ圧縮機には、増速機ハウジング(ギヤケース)5の一方の側面に、ピニオン軸8aで駆動される第3段圧縮機3が備えられ、かつ、増速機ハウジング(ギヤケース)5の一方の側面にピニオン軸8aで駆動される第3段圧縮機3が備えられている。
【0032】
図示しない吸込フィルタを介して吸い込まれた空気A0は、第1段圧縮機1によって圧縮され、第1段圧縮空気として第1段圧縮機1の吐出口と第2段圧縮機2の吸込口とを連通する第1段圧縮空気流路21に導かれる。そして、この第1段圧縮空気は、第1段圧縮空気流路21を構成する第1段圧縮機吐出配管21aと、第2段圧縮機吸込配管21bの間に介設された第1段インタクーラ(ガスクーラ)11を経て第2段圧縮機2に導入される。
【0033】
第2段圧縮機2に導入された第1段圧縮空気は、更に第2段圧縮機2によって圧縮され、第2段圧縮空気として第2段圧縮機2の吐出口と第3段圧縮機3の吸込口とを連通する第2段圧縮空気流路22に導かれる。そして、この第2段圧縮空気は、第2段圧縮空気流路22を構成する第2段圧縮機吐出配管22aと、第3段圧縮機吸込配管22bの間に介設された第2段インタクーラ(ガスクーラ)12を経て第3段圧縮機3に導入される。そして、この第3段圧縮機3によって圧縮された第3段圧縮空気A3が、圧縮空気の需要先に供給されるように構成されている。ここで、符号20は、各配管を接続する管継手である。
【0034】
そして、本発明の実施の形態に係るターボ圧縮機は、上記の如き3段式ターボ圧縮機において、入力歯車6に1−2段ピニオンギヤ7と3段ピニオンギヤ8とを噛み合わして形成された増速機4の下方に、ひいては、増速機ハウジング(ギヤケース)5の下部に、潤滑油タンク13が配設される一方、第1段圧縮機1、第2段圧縮機2及び第3段圧縮機3の下方で、かつ潤滑油タンク13の両側面に、円筒形状を有する第1段インタクーラ11及び第2段インタクーラ12が夫々配設されている。
【0035】
同時に、このターボ圧縮機を平面視したとき(図2参照)、潤滑油タンク軸線C3及び第1段インタクーラ軸線C1、第2段インタクーラ軸線C2と圧縮機の入力軸6aが平行に配置されている。ここで、第1段インタクーラ11の外殻を構成する第1段インタクーラ胴体(ハウジング)11a、第2段インタクーラ12の外殻を構成する第2段インタクーラ胴体(ハウジング)12a及びこれら両インタクーラ胴体11a,12aに挟まれた潤滑油タンク13は、鋳物により一体的に形成されている。
【0036】
前記第1段及び第2段インタクーラ11,12を夫々構成する第1段及び第2段インタクーラ胴体11a,12aには、各インタクーラ軸線C1,C2方向に貫通穴が形成された略円筒形状を有するものが好ましい。そして、第1段及び第2段インタクーラ胴体11a,12aの貫通穴内に、熱交換器11b,12bが各インタクーラ軸線C1,C2方向に挿通して収納されている。
【0037】
更に、これら第1段及び第2段インタクーラ11,12内の熱交換器11b,12bを構成する管巣11c,12cに冷却水を供給、もしくはそれら管巣11c,12cから(圧縮空気を冷却後の)冷却水を排出して、前記第1段圧縮空気及び第2段圧縮空気を夫々冷却可能に構成されている。尚、符号13aは潤滑油タンク蓋を、符号19a,19bはインタクーラ蓋を、また符号18,18は第1段及び第2段インタクーラ11,12のシール部を示す。
【0038】
冷却水の給排水取合口(図5に示す符号31,32)は、第1段及び第2段インタクーラ胴体11a,12aにおける各インタクーラ軸線C1,C2方向の両端側の何れか、例えば反電動機M側の第1段及び第2段インタクーラ蓋19a,19aに夫々設けるのが、後述する理由から好ましい。そして、前記給排水取合口の取り付けられていない側のインタクーラ蓋19b,19bを取り外すことによって、前記熱交換器11b,12bの第1段及び第2段インタクーラ軸線C1,C2方向への挿通が可能に構成されている。
【0039】
この様に、第1段乃至第3段圧縮機1,2,3の下方で、かつ潤滑油タンク13の両側面の空間に、ガス冷却のための第1段及び第2段インタクーラ11,12を設けることによって、圧縮機全体のコンパクト化が可能となった。また、前記熱交換器11b,12bの第1段及び第2段インタクーラ軸線C1,C2方向への挿通が可能な構成としたので、熱交換器11b,12bの第1段及び第2段インタクーラ11,12への装脱着が簡単になり、各インタクーラ11,12のメンテナンスが容易になった。更に、潤滑油タンク13の潤滑油タンク蓋13a側の端面が、電動機に邪魔されることが無くなったので、潤滑油タンク13への給油も容易となった。
【0040】
そしてまた、第1段及び第2段インタクーラ11,12を構成する第1段及び第2段インタクーラ胴体11a,12aは、これら第1段及び第2段インタクーラ軸線C1,C2方向に貫通穴が形成されているので、当該インタクーラ胴体11a,12aの鋳造時に、中子をその両端で強固に支持して、当該インタクーラ胴体11a,12aの鋳造時の加工精度を向上でき、第1及び第2インタクーラ11,12におけるシール部18,18のシールが確実に行える様になる。
【0041】
更に、増速機4を収納した増速機ハウジング5は、ハウジング下部の増速機下ハウジング5aと、ハウジング上部の増速機上ハウジング5bとから構成されており、潤滑油タンク13は、増速機下ハウジング5aの下部に形成され、更に、潤滑油タンク13の両側面の空間に、第1段及び第2段インタクーラ11,12が設けられている。この様な構成とすることによって、本発明に係るターボ圧縮機のコンパクト化が図られると共に、特に、潤滑油タンク13の下方ではなく、その両側面の空間に、第1段及び第2段インタクーラ11,12が設けられていることで、増速機4を構成するギヤ6〜8と潤滑油タンク13の潤滑油面との距離を大きくすることができるので、潤滑油の跳ね返りによる機械損失を解消し得る。
【0042】
即ち、図4において、潤滑油タンク13に貯留された潤滑油14は、潤滑油タンク蓋13aに設けられた図示しない給油口から油ポンプ17によって吸い上げられ、1−2段ピニオンギヤ7用のシャワノズル9と3段ピニオンギヤ8用のシャワノズル10から、入力歯車6、1−2段ピニオンギヤ7及び3段ピニオンギヤ8に向けて噴射され、これら増速機4の潤滑・冷却に利用されるが、高速で回転している増速機4の入力歯車6及び3段ピニオンギヤ8に跳ね飛ばされた潤滑油14aは、潤滑油面14bから跳ね返ったとしても増速機4までは届かず、潤滑油14aの跳ね返りによる機械損失を解消することができる。ここで、符号24は入力歯車6の回転方向である。
【0043】
また、本発明の実施の形態に係るターボ圧縮機は、図5に示す通り、第1及び第2インタクーラ11,12の給水取合口31,31及び排水取合口32,32が、第1段及び第2段インタクーラ軸線C1,C2方向の反電動機M側のインタクーラ蓋に夫々設けられているので、前記ターボ圧縮機を複数台設置した場合の、給水取合口31及び排水取合口32へ接続される給水配管31a及び排水配管32aは、何れも給水主配管31b及び排水主配管32bに対して屈曲させることなく接続可能である。
【0044】
即ち、給水配管31a及び排水配管32aは、給水主配管31b及び排水主配管32bから略垂直に延びた後、屈曲することなく、その給水配管31a及び排水配管32aと略同軸上に配置された給水取合口31及び排水取合口32へ接続される。そのため、配管工事が簡単で設置スペースも小さくできる上、これらの配管が圧縮機のメンテナンスの障害となることがない。
【0045】
更に、本発明の実施の形態に係るターボ圧縮機は、図2,4に示す如く、潤滑油タンク13内に、このタンク13内の油溜り部15を上下に画成する中仕切り板16が設けられている。尚、その中仕切り板16の端部とタンク13の内壁とによって、中仕切り板16にて画成された上下の油溜り部15を連通する開孔部16aが形成されている。
【0046】
増速機4に跳ね飛ばされて油溜り部15に貯留された潤滑油14は、潤滑油タンク蓋13aに設けられた図示しない給油口から油ポンプ17に吸い上げられ、再び入力歯車6や1−2段ピニオンギヤ7及び3段ピニオンギヤ8、更には図示しない軸受の潤滑・冷却に供されるが、高速で回転している前記ギヤ6〜8に跳ね飛ばされた潤滑油14aは、空気(気泡)を巻き込んで潤滑油タンク13内の油溜り部15に戻って来る。この気泡を含んだままの潤滑油14は、前記ギヤ6〜8や軸受を潤滑・冷却する能力の低下や腐食の原因になったりする。
【0047】
気泡を消去する方法としては、潤滑油タンク13の容量を大きくして、戻って来た潤滑油16が再利用されるまでの時間を長くし、気泡を油面に浮き上がらせて飛散させるのが一般的であるが、それでは潤滑油14が多量に必要になってしまう。上記の如く中仕切り板16を設けることによって、潤滑油14が油ポンプ17に吸い込まれるまでに、前記ギヤ6〜8に跳ね飛ばされて油溜り部15の潤滑油面14bに落下した潤滑油14は、中仕切り板16に画成された上側の油溜り部15の潤滑油14の流れに沿って開孔部16aを経由し、次いで、中仕切り板16に画成された下側の油溜り部15の潤滑油14の流れに沿って、潤滑油タンク蓋13a方向に向かうことになる。
【0048】
そのため、潤滑油14が油ポンプ17に吸い込まれるまでに確実に長い経路を辿ることになり、再利用されるまでの時間が長くなって、潤滑油14中の気泡が油面まで浮き上がるので、気泡を増速機ハウジング5内の気相部へ飛散させることができる。
【0049】
中仕切り板16が無い場合は、増速機4から潤滑油タンク13の潤滑油面14bに落下した潤滑油14は、最短経路で潤滑油タンク蓋13aへ向かうが、これと比較して中仕切り板16を設けた本発明の実施の形態の場合は、潤滑油タンク13の潤滑油面14bに落下した前記潤滑油14は、約3倍長い距離を経由して潤滑油タンク13を出て行くことになる。
【0050】
以上説明した通り、本発明の実施の形態に係るターボ圧縮機によれば、増速機4や軸受の潤滑及び冷却能力の低下要因となる潤滑油14中の気泡を消滅させることができる。更には、潤滑油14の使用量を少なくし、潤滑油タンク13の容量も少量化できるので、圧縮機全体の大きさも小型化できるメリットが生じる。
【0051】
尚、本発明の実施の形態に係るターボ圧縮機については、3段式ターボ圧縮機に適用した態様例を説明したが、本願発明に係るターボ圧縮機は、3段式ターボ圧縮機に限定されることなく、2段式ターボ圧縮機或いは4段以上の多段式ターボ圧縮機においても当然有効である。
【符号の説明】
【0052】
A0:空気,
A3:第3段圧縮空気,
C1:第1インタクーラ軸線,
C2:第1インタクーラ軸線,
C3:潤滑油タンク軸線,
M:電動機,
1:第1段圧縮機, 1a:第1段インペラ, 1b:第1段圧縮機ケーシング,
2:第2段圧縮機, 2a:第2段インペラ, 2b:第2段圧縮機ケーシング,
3:第3段圧縮機, 3a:第3段インペラ, 3b:第3段圧縮機ケーシング,
4:増速機(ギヤ),
5:増速機ハウジング(ギヤケース),
5a:増速機下ハウジング, 5b:増速機上ハウジング,
6:入力歯車, 6a:入力軸, 6b:出力軸,
7:1−2段ピニオンギヤ, 7a:ピニオン軸,
8:3段ピニオンギヤ, 8a:ピニオン軸,
9,10:シャワノズル,
11:第1段インタクーラ(ガスクーラ), 11a:第1段インタクーラ胴体,
11b:熱交換器, 11c:管巣,
12:第2段インタクーラ(ガスクーラ), 12a:第2段インタクーラ胴体,
12b:熱交換器, 12c:管巣,
13:潤滑油タンク, 13a:潤滑油タンク蓋,
14,14a:潤滑油, 14b:潤滑油面,
15:油溜り部,
16:中仕切り板, 16a:開孔部,
17:油ポンプ,
18:シール部,
19a,19b:インタクーラ蓋,
20:管継手,
21:第1段圧縮空気流路, 21a:第1段圧縮機吐出配管,
21b:第2段圧縮機吸込配管,
22:第2段圧縮空気流路, 22a:第2段圧縮機吐出配管,
22b:第3段圧縮機吸込配管,
23:カップリング, 24:回転方向,
31:給水取合口, 31a:給水配管, 31b:給水主配管,
32:排水取合口, 32a:排水配管, 32b:排水主配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力軸と、この入力軸の回転がギヤを介して伝達される少なくとも1本のピニオン軸とを有するギヤケースの一方の側面に、前記ピニオン軸で駆動される第1段圧縮機が備えられ、
かつ他方の側面に前記ピニオン軸で駆動される第2段圧縮機が備えられると共に、
これら第1段圧縮機と第2段圧縮機とから吐出されるガスを冷却するガスクーラが夫々備えられたターボ圧縮機において、
前記ギヤケースの下部に潤滑油タンクが配設されると共に、
前記第1段圧縮機と第2段圧縮機との下方で、かつ前記潤滑油タンクの両側面に前記ガスクーラが夫々配設され、
前記潤滑油タンク及び前記夫々のガスクーラの各軸線と前記入力軸が平行に配置されてなることを特徴とするターボ圧縮機。
【請求項2】
前記潤滑油タンク内に、このタンク内の油溜まり部を上下に画成する中仕切り板が設けられ、前記中仕切り板の端部と前記潤滑油タンクの内壁とによって、前記画成された上下の油溜り部を連通する開孔部が形成されてなることを特徴とする請求項1に記載のターボ圧縮機。
【請求項3】
前記ガスクーラのハウジングには、このガスクーラの軸線方向に熱交換器を挿通するための貫通穴が形成されてなることを特徴とする請求項1または2に記載のターボ圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−60882(P2013−60882A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199770(P2011−199770)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】