説明

ダイアモンド状炭素膜被覆物品

【課題】ダイアモンド状炭素膜被覆物品であって、ダイアモンド状炭素膜の物品本体への密着性に優れているダイアモンド状炭素膜被覆物品を提供する。
【解決手段】少なくとも一部が、アモルファス炭化珪素膜からなる中間層を介して形成されたダイアモンド状炭素(DLC)膜で被覆されているダイアモンド状炭素膜被覆物品W。アモルファス炭化珪素膜は、波長532nmのレーザーを用いるレーザーラマン分光分析においてラマンシフト1400cm-1〜1600cm-1の範囲にスペクトル強度のピークを示す膜である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はダイアモンド状炭素膜で少なくとも一部が被覆された物品に関する。
本発明はまたそのようなダイアモンド状炭素膜の形成方法にも関係している。
【0002】
ダイアモンド状炭素膜は高硬度で耐摩耗性に富み、摺動性、電気絶縁性等にも優れる膜として知られている。そのため、高硬度性、耐摩耗性、摺動性、電気絶縁性等のうち1又は2以上が要求される各種機械部品、工具、電気器具部品、装飾品等の各種物品の少なくとも一部をダイアモンド状炭素膜で被覆することが提案され、実施されてきた。
【0003】
ダイアモンド状炭素膜は、多くの場合、プラズマCVD法により形成される。
例えば、特開2000−119853号公報には、真空チャンバ内にダイアモンド状の硬質炭素膜を形成しようとする物品を配置し、同チャンバ内に炭素含有ガスを導入してこれからプラズマ発生させ、このプラズマのもとで物品に硬質炭素膜を形成することが記載されている。
【0004】
同公報には、開口を有する膜形成対象物品のその開口の中央部に補助電極を配置し、その補助電極を接地電位に設定し、該物品に高周波電圧又は負の直流電圧を印加して該開口を含む真空チャンバ内に炭素含有ガスからプラズマを発生させ、該プラズマのもとで該開口内面に膜形成することも記載されている。
【0005】
また特開2006−199980号公報には、プラズマCVD法による被処理物品(膜形成対象物品)の内面コーティング、特に被処理物品の中空部の内面、例えば筒状被処理物品の中空部の内面へのプラズマCVD法によるコーティング処理が記載されている。
【0006】
さらに言えば、同公報には、内面コーティング対象の被処理物品を真空チャンバ内に配置し、同チャンバに放電用ガス(アルゴンガス及び水素ガス等)を導入するとともにコーティング用材料ガス〔炭素含有ガス(例えばテトラメチルシランガス(TMS)、アセチレンガス等)〕を導入し、チャンバ内ガス圧を制御しつつ被処理物品に放電用電力として非対称パルス電力(プラス側電圧値とマイナス側電圧値とが対称でないパルス電力)を印加し、それにより放電用ガスから筒状被処理物品の中空部に均一なホロー放電を発生させるとともに材料ガスもプラズマ化して該プラズマのもとで被処理物品内面にダイアモンド状炭素(Diamond Like Carbon:DLC)膜を形成することが記載されている。
【0007】
また、ダイアモンド状炭素膜の被処理物品への密着性を向上させるために、ダイアモンド状炭素膜形成に先立ってチャンバ内に放電用ガス(アルゴンガス及び水素ガス)とともに中間層形成用ガス(テトラメチルシラン(TMS)ガス)を導入し、チャンバ内ガス圧を所定圧に維持しつつこれらガスをプラズマ化し、該プラズマのもとで被処理物品の内面に中間層として炭化珪素膜を形成し、次いで水素ガスに代えてコーティング用材料ガス(アセチレンガス)を導入し、TMSガスは導入するがその量を減らし、これらガスのプラズマのもとで被処理物品内面に中間層(炭化珪素膜)を間にしてダイアモンド状炭素(DLC)膜を密着性良好に形成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−119853号公報
【特許文献2】特開2006−199980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特開2006−199980号公報に記載された炭化珪素膜を中間層とするDLC膜は、DLC膜形成対象物品にもよるが、膜形成対象物品への密着性の点で未だ十分とは言えない。
【0010】
そこで本発明は、少なくとも一部が、アモルファス炭化珪素膜からなる中間層を介して形成されたダイアモンド状炭素膜で被覆されているダイアモンド状炭素膜被覆物品であって、ダイアモンド状炭素膜の物品本体への密着性に優れているダイアモンド状炭素膜被覆物品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は前記課題を解決するため研究し、中間層である炭化珪素膜の硬度、ヤング率等が低いと炭化珪素膜がDLC膜を介して加えられる外力により崩壊し易く、炭化珪素膜が崩壊すると、DLC膜の物品本体への密着性が損なわれることを見出した。
【0012】
本発明はこの知見に基づき、前記課題を解決するため、少なくとも一部が、アモルファス炭化珪素膜からなる中間層を介して形成されたダイアモンド状炭素膜で被覆されているダイアモンド状炭素膜被覆物品であり、前記アモルファス炭化珪素膜は、波長532nmのレーザーを用いるレーザーラマン分光分析においてラマンシフト1400cm-1〜1600cm-1の範囲にスペクトル強度のピークを示す膜であるダイアモンド状炭素膜被覆物品を提供する。
【0013】
ここで、「ダイアモンド状炭素膜被覆物品」は、各種機械部品、工具、電気器具部品、装飾品等の各種物品のうちいずれのものでもよい。
本発明に係るダイアモンド状炭素膜被覆物品における中間層である前記アモルファス炭化珪素からなる中間層は、波長532nmのレーザーを用いるレーザーラマン分光分析においてラマンシフト1400cm-1〜1600cm-1の範囲にスペクトル強度のピークを示す膜である。
【0014】
このことは、中間層であるアモルファス炭化珪素膜がC−H結合よりSi−C結合やC−C結合に富み、強固であることを意味している。
【0015】
かくして本発明に係るダイアモンド状炭素膜被覆物品は、中間層であるアモルファス炭化珪素膜が外力を受けても崩壊し難く、それだけダイアモンド状炭素膜の物品本体への密着性が良好に維持される。
【0016】
本発明に係るダイアモンド状炭素膜被覆物品における中間層であるアモルファス炭化珪素膜のより好ましいものとして、インデンテーション硬度が15GPa以上(低くとも15GPa)、ヤング率が130GPa以上(小さくとも130GPa)であるものを例示できる。
【0017】
本発明に係るダイアモンド状炭素膜被覆物品は、中間層及びダイアモンド状炭素膜が物品本体の外表面にのみ形成されているものでもよいが、凹み部分の内面に形成されているものでもよい。そのような凹み部分としては、筒状物品の内面部分、リング状物品の内周面、碗状物品の中空部内面、隙間部分の隙間内面等を例示できるが、一般的に言えば、アスペクト比1以上の凹み部分を例示できる。
【0018】
アスペクト比1以上の凹み部分とは、例えば凹み穴のような凹み部分なら、凹みの長さ(或いは深さ)/開口内径が1以上であり、隙間部分のような凹み部分なら、その深さ/隙間寸法が1以上であり、円筒状或いはリング状の物品の内面なら、円筒長さ(リング厚さ)/開口内径が1以上である。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように本発明によると、少なくとも一部が、アモルファス炭化珪素膜からなる中間層を介して形成されたダイアモンド状炭素膜で被覆されているダイアモンド状炭素膜被覆物品であって、ダイアモンド状炭素膜の物品本体への密着性に優れているダイアモンド状炭素膜被覆物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】中間層及びダイアモンド状炭素膜を形成するための膜形成装置例を概略的に示す図である。
【図2】膜形成対象物品例の平面図である。
【図3】炭素膜被覆物品例の一部の断面を模式的に示す図である。
【図4】実施例中間層のレーザーラマン分光分析結果を示す図である。
【図5】比較例中間層のレーザーラマン分光分析結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は中間層及びダイアモンド状炭素膜形成のための膜形成装置10を示している。
ダイアモンド状炭素膜は以下DLC膜と言うことがある。
図1の膜形成装置10は、真空チャンバ1、チャンバ1外からチャンバ1内へ立設された支柱状の物品ホルダ2、物品ホルダ2及びそれに支持される膜形成対象物品Wへ非対称パルス電力を供給するためのパルス電源装置3、チャンバ1内から排気してチャンバ1内を所定圧に設定するための排気装置4、チャンバ1内へアルゴン(Ar)ガス、水素ガス(H2 )、テトラメチルシラン(TMS:Si(CH3)4)ガス及びアセチレンガス(C22 )のうち1又は2以上のガスを所定のタイミングで供給できるガス供給装置5を含んでいる。
【0022】
真空チャンバ1は接地電位に設定されている。物品ホルダ2は導電製のステンレススチール、アルミニウム合金等からなる導電性ホルダであり、チャンバ1の底壁に設けた電気絶縁性部材11を気密に貫通してチャンバ1内へ立ち上がっている。膜形成対象物品Wは物品に応じた導電性の物品保持部材21を用いてホルダ2に支持される。
【0023】
膜形成装置10を用いて膜形成対象物品に炭化珪素膜を中間層としてDLC膜を密着性良好に形成する実施例及び特開2006−199980号公報記載の条件に従って炭化珪素膜を中間層としてDLC膜を形成する比較例を説明する。
【0024】
膜形成対象物品Wは、実施例でも、比較例でも同じであり、図2に示すように、中央に円形孔hを有する円盤である。図1に示すように10枚の円盤Wが、各隣り合う円盤間にスペーサリングrを挟んで積み重ねられるとともに、膜形成装置10の支柱状物品ホルダ2に円形孔h及びスペーサリングrの中央孔部分で嵌められ、ホルダ2に予め取り付けておいた物品保持部材21上に搭載される。
【0025】
円盤WはJISのSKH51製のものであり、外径D=100mm、中央孔径d=20mm、厚みt=2mmのものである。
スペーサリングrはSUS304製のものであり、外径30mm、中央孔径20mm、厚み10mmである。
図1に示すように各隣り合う円盤Wにおいて、互い向かい合う円盤面間に深さα=35mm、間隙寸法β=10mmの間隙gの形態の凹み部分が形成された恰好になっている。
【0026】
膜形成装置10の支柱状物品ホルダ2は断面円形のホルダであり、その外径は、円盤中央孔径及びスペーサリング中央孔径より僅かに小さく、各円盤Wは重ねられてスペーサリングrと共に物品ホルダ2に嵌装され、物品保持部材21に搭載された状態では物品ホルダ2と電気的に導通状態に置かれる。
【0027】
(1)実施例1
各物品Wの露出している面に、従って前記の間隙gを形成している円盤面にも中間層及びDLC膜を形成する。
【0028】
(1-1) 炭化珪素膜からなる中間層の形成
<中間層形成条件>
放電用ガス
アルゴンガス 100sccm
水素ガス 0sccm
中間層材料ガス
TMS 20sccm
チャンバ内圧 100Pa
電源3から供給する非対称パルス電力 100W
【0029】
これら条件下で中間層として物品Wの露出面に0.2μmの炭化珪素膜を形成した。
この中間層炭化珪素膜について、堀場製作所製のラマン分光分析装置(U−1000)を用い、以下の分析条件で分析したところ、図4に示すように、ラマンシフト1400cm-1〜1600cm-1の範囲にスペクトル強度のピークが認められ、C−H結合よりもSi−C結合やC−C結合に富む強固なアモルファス炭化珪素膜であることが確認された。
【0030】
ラマン分光分析装置による分析条件
分析モード :マクロモード測定
レーザー波長 :532nm
レーザーパワー :バンドパスフィルタ直後にて100mWに設定
レーザーピーム径 :100μm
分光器 :焦点距離1m ダブルモノクロメーター、
1800gr/mm回折格子
分光器スリット幅 :500μm
検出器 :光電子増倍管
測定範囲 :800cm-1〜2000cm-1 測定間隔 :1cm-1
データ取り込み時間 :1sec
【0031】
中間層炭化珪素膜について、エリオニクス社製インデンテーション硬度計(ナノインデンター ENT−1100a)を用い測定荷重100mgでインデンテーション硬度を測定したところ17.0GPaであった。ヤング率は147.5GPaであった。
この中間層炭化珪素膜は水素、炭素、珪素を含有するもの(a−SiC:H)であるが、炭素(C)と珪素(Si)の互いの原子比(atom比)をEDS(エネルギー分散形X線分光器)で測定したところ、C:Si=67:33であった。
【0032】
(1-2) 中間層上のDLC膜形成
<DLC膜形成条件>
使用ガス
アルゴンガス 50sccm
TMS 5sccm
アセチレンガス 50sccm
チャンバ内圧 5Pa
電源3から供給する非対称パルス電力 150W
【0033】
これら条件下で中間層上に膜厚3.0μmのDLC膜を形成した(図3参照)。
それ自体既に知られているボールオンディスク試験によりDLC膜の剥離荷重を測定したところ3500〔N〕であり、DLC膜の密着性が良好であることが確認された。
なお、ボールオンディスク試験は、JISのSKH51製の円盤下面にJISのSUJ2製ボール(直径3/8インチ)を120度の等中心角度間隔、且つ、円盤中心からボール中心までの距離(ボール回転半径)18mmで3個固定し、室温のエンジンオイルSM5W30中で、該ボールを円盤を介してDLC膜に均等に押しつけつつ該円盤を30rpmで回転させ、押し付け荷重を次第に増加していき、ロードセルにより、DLC膜の剥離等により摩擦力が急激に大きくなるときを把握し、そのときの押しつけ荷重を剥離荷重とする試験である。
【0034】
(2)実施例2
実施例1と同様、各物品Wの露出している面に、従って前記の間隙gを形成している円盤面にも中間層及びDLC膜を形成する。
【0035】
(2-1) 炭化珪素膜からなる中間層の形成
<中間層形成条件>
放電用ガス
アルゴンガス 100sccm
水素ガス 10sccm
中間層材料ガス
モノメチルシランガス 20sccm
チャンバ内圧 100Pa
電源3から供給する非対称パルス電力 100W
【0036】
これら条件下で中間層として物品Wの露出面に0.2μmの炭化珪素膜を形成した。
この中間層炭化珪素膜について、実施例1と同じラマン分光分析装置(U−1000)を用い、同じ分析条件で分析したところ、ラマンシフト1400cm-1〜1600cm-1の範囲にスペクトル強度のピークが認められ、C−H結合よりもSi−C結合やC−C結合に富む強固なアモルファス炭化珪素膜であることが確認された。
【0037】
またこの中間層炭化珪素膜について、実施例1と同じ硬度計(ENT−1100a)を用いて測定荷重100mgでインデンテーション硬度を測定したところ15.8GPaであった。ヤング率は138.0GPaであった。
この中間層炭化珪素膜について炭素(C)と珪素(Si)の互いの原子比(atom比)をEDSで測定したところ、C:Si=65:35であった。
【0038】
(2-2) 中間層上のDLC膜形成
<DLC膜形成条件>
使用ガス
アルゴンガス 50sccm
TMS 5sccm
アセチレンガス 50sccm
チャンバ内圧 5Pa
電源3から供給する非対称パルス電力 150W
【0039】
これら条件下で中間層上に膜厚3.0μmのDLC膜を形成した。
実施例1と同じボールオンディスク試験によりDLC膜の剥離荷重を測定したところ
3000〔N〕であり、DLC膜の密着性が良好であることが確認された。
【0040】
(3)比較例
各物品Wの露出している面に、従って前記の間隙gを形成している円盤面にも中間層及びDLC膜を形成する。
【0041】
(3-1) 炭化珪素膜からなる中間層の形成
<中間層形成条件>
放電用ガス
アルゴンガス 50sccm
水素ガス 100sccm
中間層材料ガス
TMS 30sccm
チャンバ内圧 8Pa
電源3から供給する非対称パルス電力 100W
【0042】
これら条件下で中間層として物品Wの露出面に厚さ0.2μmの炭化珪素膜を形成した。
この中間層炭化珪素膜について、実施例1と同じラマン分光分析装置(U−1000)を用い、同じ分析条件で分析したところ、図5に示すように、ラマンシフト1200cm-1〜1800cm-1の範囲にはスペクトル強度のピークが認められなかった。すなわち、比較例における中間層では、むしろC−H結合に富んでおり、実施例の中間層ほど強固ではないことが分かった。
【0043】
また中間層炭化珪素膜について、実施例の場合と同じ硬度計を用いて測定荷重100mgでインデンテーション硬度を測定したところ13.5GPaであった。ヤング率は116.8GPaであった。
このように比較例の中間層炭化珪素膜は実施例における中間層炭化珪素膜より硬度等の点で劣っていた。
【0044】
(3-2) 中間層上のDLC膜形成
実施例1と同じDLC膜形成条件で中間層上に膜厚3.0μmのDLC膜を形成した。 実施例1と同じボールオンディスク試験によりDLC膜の剥離荷重を測定したところ
1000〔N〕であり、実施例と比べ、DLC膜の密着性が劣っていた。
【0045】
従来、放電用ガスとしてアルゴンガスを用いる場合、比較例のように、これを水素ガスで希釈する方が放電が安定することが知られており、また、チャンバ内のガス圧は高くすると放電が起こり難く、比較例のように例えば8Pa程度と低くする方が放電が起こりやすいことが知られていた。TMSガス等の中間層材料ガスを用いて中間層として炭化珪素膜を形成するにあたっても、このような技術常識に従い、強く安定した放電状態に中間層材料ガスを導入して中間層を形成する考え方が支配的であった。
【0046】
しかし、この考え方に従って形成される中間層炭化珪素膜は、前記比較例から分かるように、前記実施例におけるようなラマン波形におけるピークが見られないことから、高分子に近い構造であり、且つ、硬度が低い膜であるため、表層のDLC膜と物品本体とを強固に密着させることはできなかった。
【0047】
本発明者は思考錯誤を重ね、従来の考え方からすると、その外にある、放電用ガスには水素ガスを用いない、或いは用いてもその量を従来より著しく減らし、そのため、放電電流が従来より低下し、放電が暗くなる、という条件を敢えて採用することで、波長532nmのレーザーを用いるレーザーラマン分光分析においてラマンシフト1400cm-1〜1600cm-1の範囲にスペクトル強度のピークを示す強固な中間層炭化珪素膜を得ることができることを見いだし本発明を完成したのである。
【0048】
ここで、「放電用ガスには水素ガスを用いない、或いは用いてもその量を従来より著しく減らす」に関連して中間層形成時の導入ガス成分中におけるH2 とSiHx (CH3 y の流量比〔H2 流量/SiHx (CH3 y 流量〕は2以下とする例を挙げることができる。
該流量比は実施例1では0、実施例2では0.5、比較例では3.3である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明はダイアモンド状炭素膜の物品本体への密着性に優れているダイアモンド状炭素膜被覆物品を提供することに利用できる。
【符号の説明】
【0050】
10 膜形成装置
1 真空チャンバ
2 支柱状物品ホルダ
3 パルス電源装置
4 排気装置
5 ガス供給装置
W 物品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部が、アモルファス炭化珪素膜からなる中間層を介して形成されたダイアモンド状炭素膜で被覆されているダイアモンド状炭素膜被覆物品であり、前記アモルファス炭化珪素膜は、波長532nmのレーザーを用いるレーザーラマン分光分析においてラマンシフト1400cm-1〜1600cm-1の範囲にスペクトル強度のピークを示す膜であることを特徴とするダイアモンド状炭素膜被覆物品。
【請求項2】
前記アモルファス炭化珪素膜はインデンテーション硬度が15GPa以上、ヤング率が130GPa以上である請求項1記載のダイアモンド状炭素膜被覆物品。
【請求項3】
前記アモルファス炭化珪素膜からなる中間層を介して形成されたダイアモンド状炭素膜で被覆されている物品部分の少なくとも一部はアスペクト比1以上の凹み部分である請求項1又は2記載のダイアモンド状炭素膜被覆物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−1759(P2012−1759A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−137352(P2010−137352)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【特許番号】特許第4750896号(P4750896)
【特許公報発行日】平成23年8月17日(2011.8.17)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【出願人】(591029699)日本アイ・ティ・エフ株式会社 (25)
【Fターム(参考)】