説明

ダイズ粉体スラリーおよびそれを提供する方法

【課題】安定で、ホルムアルデヒドを含まず、使用可能(低粘度)な水中での分散形態の脱脂ダイズ粉体を製造する。
【解決手段】脱脂ダイズ粉体、水および1,000から20,000の範囲の分子量を有する水可溶性ポリマー分散剤を含み、スラリーの粘度がDV−III Ultra LV Viscometer粘度計により25℃でスピンドル#31を用いて6rpmで測定して200〜2,000cpsの範囲である安定な水性ダイズ粉体スラリー;並びにそのようなスラリーを提供する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱脂ダイズ粉体、水および1,000〜20,000の範囲の分子量を有する水可溶性ポリマーを含む安定な水性ダイズ粉体スラリーであって、当該スラリーの粘度がDV−III Ultra LVブルックフィールド粘度計により25℃でスピンドル#31を用いて6rpmで測定して200〜2,000cpsの範囲である、安定な水性ダイズ粉体スラリー;並びにそのようなスラリーを提供する方法である。ダイズ粉体を水中に分散させる方法は脱脂ダイズ粉体を水と混合し、ダイズ粒子を安定化させるための水可溶性ポリマー分散性種の存在下で高剪断カウレス型ディゾルバー(Cowles−type dissolver)を用いて粉砕することを含む。
【背景技術】
【0002】
その優れたコスト/性能比のため、フェノール/ホルムアルデヒド(PF)または尿素/ホルムアルデヒド(UF)樹脂については、ガラス繊維断熱材または屋根葺きマットのための熱硬化性バインダー、並びに屋外および室内用木材複合体のための樹脂をはじめとする多くの用途での使用が見いだされてきた。しかし、ホルムアルデヒドに関連する健康および環境の問題のために、ホルムアルデヒドをほとんどまたは全く含まない硬化性組成物が様々な製品において今や非常に望まれている。存在している市販の、ホルムアルデヒドを含まないバインダーは、熱硬化の際にエステル化し熱硬化物質を形成するカルボン酸ポリマーとポリオールとを含む。
【0003】
これらのホルムアルデヒドを含まないバインダーは使用に好適であるが、製造者はPFおよびUF樹脂に替わる、より安価なホルムアルデヒドを含まない代替物を探索している。従前には、天然の産物が考えられており、実際に、PFおよびUF樹脂の1940年代における開発の前でさえ、木材複合体構造物において使用されるダイズベースのバインダーが存在していた。ダイズベースの樹脂はPF/UF樹脂を超えるコストでの利点を維持することができない、というのはそれらを使用可能にすることに関連する処理の量のためである。
【0004】
ダイズ物質は粉砕された豆全体(外皮、オイル、タンパク質、炭水化物、ミネラルなどを含む)、粗挽き粉(meal)(抽出された、または部分的に抽出された)、粉体(すなわち、概して、オイルを約1.5%未満しか含まず、および約30〜35%の炭水化物を含む)、または単離物(すなわち、オイルを約0.5%未満および炭水化物を約5%未満しか含まない、高度に処理された実質的に純粋なタンパク質粉体)の形態で商業的に入手可能である。本明細書で使用される「粉体(flour)」は、その範囲内に、脱脂ダイズ粉体、ダイズタンパク質濃縮物およびダイズタンパク質単離物の定義に適合する物質を含む。本明細書において使用される、用語「脱脂ダイズ粉体」は、前記濃縮物および前記単離物の両方を除くために使用されるが、当該技術分野における慣習的用法として、一方で、1.5%未満の量までオイルが除かれた(脱脂された)粉体を依然として言及するものである。
【0005】
ダイズタンパク質を使用するほとんどの実施者は、処理がより容易なことから、ダイズ単離物またはダイズ濃縮物を利用し、それらは大部分が水可溶性である。しかし、ダイズ濃縮物および単離物の両者は極めて高価なのでバインダーとしての広範な使用を獲得することができない。全粉砕ダイズ豆または脱脂ダイズ粉体のいずれかは、コストの観点からより魅力的な出発点であろうが、その両者は水に不溶性であり共に働くのが困難である。
【0006】
必要とされているものは経済的で環境に優しく(すなわち、水性でホルムアルデヒドを含まない)、最終製造者が容易に処理し使用可能なダイズベースの樹脂である。そのようなダイズベースの樹脂は、PF/UF樹脂バインダーの性能特性に匹敵するためにポリマー修飾される必要があってもよいし、その必要がなくてもよい。この目的のために、製造者はブレンドにおいて使用されうる微細ダイズ粒子の安定な自立分散物を望む。さらに、その粒子サイズは、粒子状物質が樹脂の美観または機能特性に悪影響を及ぼさないような充分に微細なものでなくてはならない。例えば、多くの製造者はこの種の樹脂をカーテンコーティング技術によって繊維基体(例えば、断熱のためのガラス繊維、または屋根用こけら板のためのガラスマット)に適用し、それにより、その後に再生および再利用するために、過剰な水および分散された樹脂が繊維基体の下から真空吸引により除かれる。この一般的な集合物において、繊維がフィルターのように働くので、望まれない大きな粒子状物質は実際に選択的に基体上に補足されるであろう。
【0007】
WescottらWood Adhesives 2005:セッション3A−生物ベースの接着剤、263〜269ページは耐久性のあるダイズベース接着剤分散物を記載する。しかし、これらの系は依然、ダイズ成分、ダイズ豆粉体のかなりの処理を伴う。特に、ダイズ粉体はまず変性され、極性骨格アミドおよび極性側鎖基を露出し、さらにそのダイズ粉体は、熱と共に、ホルムアルデヒドおよびフェノールの混合物中に分散される。両方の工程は製造者にかなりのコストを負担させるが、ホルムアルデヒド処理は樹脂バインダーマーケットの最初に現れるホルムアルデヒドを含まないセグメントのために特に望まれない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】WescottらWood Adhesives 2005:セッション3A−生物ベースの接着剤、263〜269ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
よって、脱脂ダイズ粉体のようなより安価な代替的なダイズ源を分散させる方法についての必要性が存在している。本発明者らは、驚くべきことに、安定で、ホルムアルデヒドを含まず、使用可能(低粘度)な水中での分散形態の脱脂ダイズ粉体を製造する方法を開発した。この方法は脱脂ダイズ粉体を水と混合し、ダイズ粒子を安定化するための水可溶性ポリマー分散剤の存在下で高速カウレスディゾルバーを用いて粉砕することを含む。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、(i)スラリーの全重量を基準にして、10〜60重量パーセントの脱脂ダイズ粉体、(ii)エチレン性不飽和モノマーの重合により製造され、1,000〜20,000の範囲の分子量を有する水可溶性ポリマー分散剤を、スラリーの全重量のパーセンテージとしてポリマー系活性成分の重量基準で0.2重量%〜4重量%、および(iii)水;を含む水性ダイズ粉体スラリーであって、当該スラリーの粘度が25℃において200〜2,000cpsの範囲である、水性ダイズ粉体スラリーである。
本発明のある実施形態においては、水可溶性ポリマー分散剤がポリカルボキシ(コ)ポリマーまたはその塩である。
本発明のある実施形態においては、水可溶性ポリマー分散剤は、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリラート、マレイン酸;それらの無水物;およびそれらの塩からなる群から選択される1種以上のモノマーに由来する重合単位を含むホモポリマーまたはコポリマーである。
別の実施形態においては、水可溶性ポリマー分散剤は水可溶性リン含有ポリマーを含む。
ある実施形態においては、水可溶性ポリマー分散剤は10,000未満の分子量を有する。別の実施形態においては、水可溶性ポリマー分散剤は5,000未満の分子量を有する。
本発明は(a)(i)スラリーの全重量を基準にして10〜60重量パーセントの脱脂ダイズ粉体、(ii)エチレン性不飽和モノマーの重合により製造され、1,000〜20,000の範囲の分子量を有する水可溶性ポリマー分散剤を、スラリーの全重量のパーセンテージとしてポリマー系活性成分の重量基準で0.2重量%〜4重量%、および(iii)水を含む混合物を形成する工程;並びに(b)スラリーの粘度が200〜2,000cpsの範囲になるまで高剪断で混合する工程;を含む水性ダイズ粉体スラリーを提供する方法でもある。
この方法のある実施形態においては、混合する工程(b)は高剪断カウレス型ディゾルバーを用いて行われる。
この方法のある実施形態においては、混合する工程(b)は高剪断分散インペラを用いて行われる。
この方法のある実施形態においては、水可溶性ポリマー分散剤はポリカルボキシ(コ)ポリマーまたはその塩である。
この方法のある実施形態においては、水可溶性ポリマー分散剤は(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリラート、マレイン酸;それらの無水物;およびそれらの塩からなる群から選択される1種以上のモノマーに由来する重合単位を含むホモポリマーまたはコポリマーである。
この方法のある実施形態においては、水可溶性ポリマー分散剤は10,000未満の分子量を有する。別の実施形態においては、水可溶性ポリマー分散剤は5,000未満の分子量を有する。
本発明の他の形態は以下に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明のある実施形態(Prolia(商標)200/70脱脂ダイズ粉体およびAcusol(商標)420N水可溶性ポリマーの使用)について、剪断速度(rpm)に対してプロットされるブルックフィールド粘度(cps単位)についてのダイズ粉体流動曲線を描く。図1Aは混合物がベンチトップスターラーを用いて撹拌される場合の結果の粘度曲線を示し(比較例);図1Bは混合物がカウレス高剪断ディゾルバーを用いて粉砕される場合の結果の粘度曲線を示す(本発明の実施例)。 ProliaはCargill,Inc.(米国、ミネソタ州、ミネアポリス)の商標であり、Acusolはロームアンドハース社(米国、ペンシルバニア州、フィラデルフィア)の商標である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上述のように、ダイズ物質が粉砕された豆全体、粗挽き粉、粉体または単離物の形態でもたらされうる。「粉体(flour)」はその範囲内に、脱脂ダイズ粉体の定義および単離物(または濃縮物)の定義に適合する物質を含むが、用語「脱脂ダイズ粉体」はタンパク質単離物(または濃縮物)を言及するものではないことに留意されたい。
【0013】
ダイズタンパク質の何らかの源(例えば、ダイズ豆粉体またはダイズ豆粗挽き粉)は最終生成物におけるバインダー修飾剤としての使用に好適であり得るが、普通の脱脂ダイズ粉体が最も豊富でコスト効果的である。ダイズタンパク質のこの源は機能的ウレアーゼを本質的に含まない。ダイズタンパク質についての情報は例えば、Kirk−Othmer,Encyclopedia of Chemical Technology,第4版、22巻、591〜619ページ(1997)に見ることができる。
【0014】
好ましくは、ダイズの最初の源は、約0.1インチ(0.25cm)未満、より好ましくは約0.05インチ(0.125cm)未満の粒子サイズ(最大寸法により決定されるものとして)を有する。粒子サイズがこれよりさらに大きい場合には、タンパク質物質は、最適な特性を有する繊維マットを製造するのに好適なバインダーを生じさせるのに充分に可溶性または分散性であることができない。結果として、得られる繊維マットは低減した引張り特性および悪化した美的外観を有する場合がある。繊維マットへの適用前にダイズがポリマーとブレンドされるこれらの実施形態において、物質を均一に分散させるのに必要な時間は、粒子がより大きくなるほど、望ましくなくより長くなる傾向がある。あるいは、バインダーの残りの成分とは別に、ダイズがウェットレイド(wet−laid)マットに適用される場合には、より大きなサイズの粒子を使用すると、滑らかで美的に受け入れられうる硬化したマットを得られない場合がある。適用のいずれの態様についても、大きな粒子は望ましくない、というのは繊維マットがその大きな粒子を効果的にろ別し、基体の表面上にそれらを捉えることができるからである。
【0015】
これらの理由のために、ダイズ粉体は、その一般的により小さな粒子サイズ分布、すなわち、約0.005インチ(0.013cm)のために、より好ましい。典型的には、粉体のほとんどすべてが80〜100メッシュスクリーンを通過するように、乾燥抽出されたダイズ粗挽き粉が粉砕される。安定なダイズ粉体スラリーが必要とされる特定の適用については、より高いメッシュスクリーンを通過するように粉砕された粉体が好ましい。粉砕されたダイズについて、最小の粒子サイズ要求は存在しないと思われるが、しかし、商業的に入手可能なダイズ豆粉体および脱脂ダイズ粉体の粒子サイズは、概して、約0.003インチ(0.008cm)未満である。例えば、ある商業的に入手可能なダイズ豆粉体においては、約92%を超えるものが325メッシュスクリーンを通過し、これは約0.003インチ(0.008cm)未満の粒子サイズに対応する。よって、広範囲のダイズ粉体、例えば、その粒子の少なくとも90〜95%が100メッシュより小さく、200メッシュより小さく、または400メッシュより小さい粉体が好適であり得る。本発明においては、325のメッシュサイズが好ましく、400以上のメッシュサイズが最も好ましい。
【0016】
脱脂ダイズ粉体の製造者は水中でのタンパク質の分散性を比較する手段として、タンパク質分散指数(Protein Dispersibility Index;PDI)を特徴づける。PDIを決定する1つの方法において、ダイズ豆のサンプルが粉砕され、特定量の水と混合され、次いでその2つが特定の時間、特定のrpmで一緒にブレンドされる。次いで、得られる混合物および元の豆粉体は、燃焼試験を用いて測定されるそのタンパク質窒素含量を有し、PDIは、混合物中のタンパク質窒素濃度のパーセンテージを、粉体におけるパーセンテージで割ったものとして算出され、よって、100のPDIはダイズ粉体中に存在するタンパク質含量の全分散性を示す。所与の粉体の全溶解度は、炭水化物含量に従って、PDIよりも低くなる場合があることに留意されるべきである。PDIは使用されるダイズ豆の種類によるだけでなく、製造プロセスによっても影響されうることが示されてきており;例えば、熱処理はより低いPDIを示してきた。
【0017】
脱脂ダイズ粉体生成物は典型的には20、70および90のPDI値で提供される。90をはじめとする、より高いPDI値を有するものは、より多量の可溶性タンパク質を有し、これはそれらの結合特性に有用なので、概して好まれてきた。しかし、炭水化物含有物の不溶性は脱脂ダイズ粉体の溶解性を依然として妨げている。
【0018】
水性ダイズベースのバインダーの今後の製造者は、有用な固形分含量(水性分散物中に約5%〜25%固形分またはさらにこれより高い)で、容易な撹拌および注ぎまたはポンプ輸送での移送を可能にする安定な粘度で提供される、微細な粒子サイズのダイズの安定で均一な水性分散物を必要とする。最低限の処理しかなされていないグレードのダイズ粉体は、水中に単純に撹拌されてそのような分散物を生じさせることができないことが見いだされている。よって、低剪断ポンプおよびブレンディングミキサー(blending mixers)の使用は商業的に有用な分散物を生じさせることができない。しかし、高剪断カウレスディゾルバーを用いる粉砕により幾分有用な粘度が達成されうる。類似の結果を達成することができ、その結果本発明に従う他の高速剪断装置には、これらに限定されるものではないが、(a)1,000〜3,500rpm、好ましくは2,000〜3,500rpmの範囲の速度で回転する高速剪断インペラまたはポンプ(例えば、Ladish社、Tri−Clover DivisionによるTri−Blender);(b)ホモジナイザー(例えば、Oakes Machine社によるOakes Mixer);および(c)高速アジテータ、ミキサー、またはタービン(例えば、Lancoによる「Likwifier」タービンミキサーおよび「Lightnin」社によるミキサーおよびエアレーター)が挙げられる。ここで、「高剪断カウレス型ディゾルバー」とは、当該技術分野において知られているこれらの種類のすべての高速剪断装置をいう。機械的剪断は任意の好適な装置によりもたらされうるが、DV−III Ultra LVブルックフィールド粘度計で、25℃、スピンドル#31を用いて6rpmで測定される、ダイズ粉体分散物の粘度を5000cps未満、好ましくは1500cps未満まで低減させるのに充分でなければならない。高剪断粉砕装置を用いて約1,000cpsの粘度が達成されうるが、約600〜800cpsまたは400〜600cpsの低粘度でさえ、使用の容易さのために最終製造者によって好まれる。
【0019】
本発明の好ましい実施形態において、ダイズ粉体分散物についてさらにより望まれる粘度範囲、約400〜600cpsを達成するために、水可溶性ポリマー種の添加が、高剪断粉砕(high shear grinding)プロセスにおいて有利に使用されうることが見いだされた。すなわち、粒子凝集体を崩壊させるのに高剪断粉砕が有効であるが、より小さな粒子が再凝集を受けやすいことを本発明者らは見いだした。水可溶性ポリマー種のような可溶性種の添加は、微細粒子を安定化し、かつ再凝集を妨げるのを助ける。さらに、より高いPDIの脱脂ダイズ粉体のスラリーは、そのような水可溶性ポリマー分散性種の存在下で高剪断下で粉砕する場合に、より低い粘度を示す。
【0020】
本発明の水可溶性ポリマーは任意の重合方法、例えば、当該技術分野において知られているような、溶液重合、バルク重合、不均一相重合(例えば乳化重合、懸濁重合、分散重合および逆−エマルジョン重合など)およびこれらの組み合わせにより製造されることができる。
【0021】
そのようなポリマー系種の分子量は連鎖調整剤(chain regulator)の使用により制御されうる。連鎖調整剤はポリマー鎖の成長の長さを制限するように機能する化合物である。いくつかの好適な連鎖調整剤には、例えば、硫黄化合物、例えばメルカプトエタノール、2−エチルヘキシルチオグリコラート、チオグリコール酸およびドデシルメルカプタンがある。典型的には、連鎖調整剤の量は、当該技術分野において知られているように、使用されるすべてのモノマーの合計重量を基準にした重量パーセンテージとして、20重量%以下、より一般的には7重量%以下である。
【0022】
分子量を制御する別の公知の方法は、第2級C2−C6アルコールまたはそれらと水との混合物、例えば、米国特許第4,301,266号および4,774,303号に記載されるような、例えば、イソプロパノールもしくはsec−ブタノールまたはこれらと水との混合物の存在下で重合を行うことを伴う。連鎖調整の多くの方法がポリマーに変化をもたらすことができ、例えば結果的に連鎖調整剤に関連するポリマー末端基を生じさせうる。よって、例えば、連鎖調整剤としてのイソプロパノールの使用は、結果的に、ポリマーにイソプロピルおよび/またはラクトン末端基を生じさせうる。
【0023】
好ましくは、水可溶性ポリマーの重量平均分子量は約300〜約100,000、または約1,000〜100,000、より好ましくは1,000〜20,000、または2,000〜20,000、およびさらにより好ましくは2,000〜5,000または2,000〜3,000である。
【0024】
本発明の水可溶性ポリマーは少なくとも1種のアニオン性モノマーから形成されうる。アニオン性モノマーは、少なくとも1種のアニオンがポリマー骨格に共有結合された重合単位を形成する化合物である。共有結合したアニオン(単数または複数)に対応するカウンターカチオン(単数または複数)は溶液中にあるか、アニオンとの錯体であるか、ポリマー上のほかのどこかに位置するか、またはこれらの組み合わせであることができる。ある実施形態においては、ある範囲のpH値で水中に存在する場合にアニオン形態で存在するアニオンを含む1種以上のアニオン性モノマーが使用されるが、その一方でそのアニオンは何らかの他のpH値で中性形態で存在することができる。
【0025】
ある好適なアニオン性モノマーには、例えば、エチレン性不飽和酸モノマー、例えば、エチレン性不飽和カルボン酸モノマー、マレインモノマー、およびエチレン性不飽和スルホン酸モノマーがある。好適な不飽和カルボン酸モノマーには、例えば、アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、2−メチルイタコン酸、α,β−メチレングルタル酸、およびモノアルキルフマラート;メタアクリル酸およびそれらの混合物が挙げられる。好適なマレインモノマーには、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、およびこれらの置換体が挙げられる。好適な不飽和スルホン酸モノマーには、例えば、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびパラ−スチレンスルホン酸が挙げられる。
【0026】
本発明の水可溶性ポリマーは場合によっては少なくとも1種のカチオン性モノマーの使用を伴う。カチオン性モノマーは、少なくとも1種のカチオンがポリマーに共有結合される重合単位を形成する化合物である。共有結合したカチオン(単数または複数)に対応するカウンターアニオン(単数または複数)は、溶液中にあるか、カチオンとの錯体であるか、ポリマー上のほかのどこかに位置するか、またはこれらの組み合わせであることができる。ある実施形態においては、ある範囲のpH値で水中に存在する場合にはカチオン形態でするカチオンを含む1種以上のカチオン性モノマーが使用されるが、その一方で、そのカチオンは何らかの他のpH値で中性形態で存在することができる。あるいは、ある実施形態においては、永続的にカチオン形態であるカチオンを含む1種以上のカチオン性モノマーが使用され、例えば、4級アンモニウム塩、および米国特許出願公開第2006/0199756A1号、パラグラフ[0061]〜[0066]に記載される、当業者に知られているような他のカチオン性モノマーが使用される。
【0027】
ある実施形態においては、ポリマーは場合によってはカチオン性モノマーでもアニオン性モノマーでもない何らかのモノマーからの重合単位を含まない。ある実施形態においては、ポリマーは非イオン性モノマー(すなわち、カチオン性モノマーでもアニオン性モノマーでもないモノマー)からの少なくとも1種の重合単位を含む。いくつかの好適な非イオン性モノマーには、例えば、1つの二重結合、2つの二重結合または3つ以上の二重結合を有する化合物を含む、エチレン性不飽和非イオン性化合物がある。好適なエチレン性不飽和非イオン性モノマーには、例えば、オレフィン、置換オレフィン(例えば、ビニルハライド、およびビニルカルボキシラート)、ジエン、(メタ)アクリラート、置換(メタ)アクリラート、(メタ)アクリルアミド、置換(メタ)アクリルアミド、スチレン、置換スチレン、およびこれらの混合物が挙げられる。本明細書において使用される、「(メタ)アクリラート」は、アクリル酸およびメタクリル酸のエステルであり;「置換」とは、任意の置換基をいい、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル基、アルキル基、ビニル基、(メタ)アクリル基、グリシジル基、ヒドロキシアルキル基、アルキレンオキシド基、ポリアルキレンオキシド基、およびこれらの組み合わせがある。ある実施形態においては、(メタ)アクリラートエステル、置換(メタ)アクリラートエステル、(メタ)アクリルアミド、置換(メタ)アクリルアミドおよびこれらの混合物の群から選択される1種以上の非イオン性モノマーが使用される。ある実施形態においては、アクリルアミドまたはメタクリルアミドまたはこれらの混合物が使用される。
【0028】
ある好適な実施形態においては、水可溶性ポリマー種は少なくとも2つのカルボン酸基、無水物基またはその塩を含むポリカルボキシ(コ)ポリマーである。エチレン性不飽和カルボン酸、例えば、メタクリル酸、アクリル酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、2−メチルマレイン酸、イタコン酸、2−メチルイタコン酸、α,β−メチレングルタル酸、モノアルキルマレアート、およびモノアルキルフマラート;エチレン性不飽和酸無水物、例えば、マレイン酸無水物、イタコン酸無水物、アクリル酸無水物およびメタクリル酸無水物;並びにこれらの塩が、付加ポリマーの重量基準で約1重量%〜100重量%の量で使用されることができる。追加のエチレン性不飽和モノマーが存在していてもよい。
【0029】
好ましい実施形態においては、水可溶性ポリマーは水性媒体中でのポリカルボキシ(コ)ポリマーの溶液の形態であり、例えば、塩基性媒体中に溶解されたアルカリ−可溶性樹脂またはポリアクリル酸ホモポリマーであり、重量平均分子量は約300〜約100,000、または1,000〜100,000でありうる。好ましいのは、約1,000〜約20,000、または2,000〜20,000、より好ましくは約2,000〜約5,000、または2,000〜3,000の分子量である。
【0030】
そのようなある実施形態においては、ポリカルボキシ付加(コ)ポリマーは、フリーラジカル付加重合によって製造され、300〜1000の数平均分子量を有する、エチレン性不飽和カルボン酸のオリゴマーまたはコ−オリゴマーでありうる。別の実施形態においては、ポリマー種はポリアクリル酸ホモポリマー(pAA)であり、これについては、20,000以下の重量平均分子量が好適であり、より好ましくは10,000以下、または5,000以下またはさらにより好ましくは3,000以下、および500〜2,000または2,000〜3,000が有利である。多くの市販の分散剤および類似の組成物種が水可溶性ポリマーとして機能しうる。これらの組成物において添加剤として使用されるポリマーは、所望の場合には、NHOHで中和されうる。
【0031】
その多くが100,000未満の重量平均分子量を有する、他の市販の分散剤が、ダイズ粉体スラリーについて望ましい低い粘度を達成することにおいて、同様に機能するであろう候補物質であることが考えられる。これらには、例えば、ロームアンドハース社(米国、ペンシルバニア州、フィラデルフィア)から入手可能なAcumer(商標)、およびAcusol(商標)製品系列が挙げられる。
【0032】
別の実施形態においては、水可溶性ポリマー分散剤は水可溶性リン含有(phosphorous−containing)ポリマー、またはその塩である。このようなポリマーは当該技術分野において知られており、例えば、米国特許第6,489,287号および第4,681,686号を参照されたい、そしてこのようなポリマーは、例えば、A−P(O)(OX)またはA−P(O)(OX)(B)のタイプのホスホナート基(式中、Aはエチレン性不飽和モノマーを含んでなるポリマーであり;Bは水素、フェニル、C1−C6アルキルであるか、またはエチレン性不飽和モノマーから構成されるポリマーであり;Xは水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムまたはアミン残基である)を含むことができる。
【0033】
別の実施形態においては、水可溶性ポリマー分散剤は類似の低分子量ポリアスパラギン酸種である。この種も当該技術分野において知られており、例えば、Biopolymers,A.Steinbuchel,Ed.,Wiley−VCH、Weinheim,2003、第7巻、175ページを参照されたい。
【0034】
別の実施形態においては、水可溶性ポリマーは、本明細書において記載されるポリマー分散剤の混合物を含む。
【0035】
本明細書において報告される水可溶性(コ)ポリマー分子量は、他に示されない限りは、当該技術分野において知られているように、ポリアクリル酸標準を用いる、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定される重量平均分子量(Mw)である。ゲル浸透クロマトグラフィーは、他にサイズ排除クロマトグラフィーとして知られており、実際に、そのモル質量ではなく溶液中でのその流体力学的サイズに従ってポリマー鎖の分布のメンバーを分ける。この系は、次いで、既知の分子量および組成の標準物で較正され、溶出時間を分子量と相関させる。GPCの技術はModern Size Exclusion Chromatography, W.W.Yau,J.J.Kirkland,D.D.Bly;Wiley−Interscience,1979およびA Guide to Materials Characterization and Chemical Analysis,J.P.Sibilia;VCH,1988,81〜84ページに詳細に説明されている。本明細書において報告されるMwについての分子量はダルトン単位である。
【0036】
水可溶性ポリマー種は少量で、典型的には、スラリーの全重量のパーセンテージとしてポリマー系活性成分の重量基準で0.1〜5%、好ましくは0.2〜4%、より好ましくは0.5〜3%、または1〜2%で添加され、スラリーの粘度を低減することにおけるダイズ粉体粒子のための分散剤として機能する。
【0037】
水性ダイズ粉体スラリーは、スラリーの全重量を基準にして5〜95重量%の脱脂ダイズ粉体、好ましくは、10〜60重量%、または10〜40重量%、および最も好ましくは10〜30重量%、または15〜25重量%の脱脂ダイズ粉体を含むことができる。水性ダイズ粉体スラリーの粘度は100〜3,000cps、好ましくは200〜2,000cps、または200〜1,000cps、およびより好ましくは200〜800cps、または200〜600cpsである。
【0038】
実施例に記載される、特に好ましい本発明の実施形態は、スラリーの全重量を基準にして10〜60%、好ましくは約20%の脱脂ダイズ粉体を含み、1〜2%の水可溶性ポリマー、例えば、Acusol(商標)420Nの存在下でカウレスディゾルバーでの高剪断混合によって水性スラリーが形成される、安定な水性ダイズ粉体スラリーによって表される。この種のスラリーは沈降に対して安定であり、使用者、最終製造者の両方にとって都合がよい、約400〜600cpsの粘度を有し、かつ最小の粘度ドリフト(viscosity drift)を有する。
【0039】
本明細書において使用される、語句「アルキル」は、1以上の炭素原子を有する任意の脂肪族アルキル基を意味し、このアルキル基には、n−アルキル、s−アルキル、i−アルキル、t−アルキル基または5、6もしくは7員環構造を1以上含む環式脂肪族が挙げられる。
【0040】
本明細書において使用される、語句「水性」または「水性溶媒」には、水および実質的に水と水混和性溶媒とで構成される混合物が挙げられる。
【0041】
本明細書において使用される、語句「安定な水性脱脂ダイズ粉体スラリー」は、何らかの許容できる程度まで粒子の沈降に関して安定であり、かつ何らかの許容できる程度まで粘度ドリフトの影響を受けない、水不溶性粒子状ダイズ物質を含む水中での脱脂ダイズ粉体の分散物を記載するために使用される。
【0042】
本明細書において使用される、「重量%」または「重量パーセント」は固形分基準の重量パーセントを意味する。
【0043】
他に示されない限りは、本明細書において使用される、用語「コポリマー」は独立して、コポリマー、ターポリマー、ブロックコポリマー、セグメント化コポリマー、グラフトコポリマーおよびそれらの任意の混合物または組み合わせを包含する。(コ)ポリマーはホモポリマーまたはコポリマーを意味する。
【0044】
本明細書において使用される、語句「エマルジョン(コ)ポリマー」は乳化重合によって製造された、水性媒体中に分散された(コ)ポリマーを意味する。
【0045】
本明細書において使用される、語句「ホルムアルデヒドを含まない組成物」とは、添加されたホルムアルデヒドを実質的に含まず、乾燥および/または硬化の結果として実質的なホルムアルデヒドを生じさせない組成物をいう。
【0046】
本明細書において使用される、用語「(メタ)アクリラート」はアクリラート、メタクリラートおよびその混合物を意味し、本明細書において使用される用語「(メタ)アクリル」はアクリル、メタクリルおよびその混合物を意味する。
【0047】
本明細書において使用される、語句「(C3−C12)−」または「(C3−C6)−」などは、それぞれ、3〜12の炭素原子および3〜6の炭素原子を含む有機化合物または有機化合物の構造部分をいう。
【0048】
他に示されない限りは、本明細書において使用される、語句「分子量」はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリマーの重量平均分子量をいう。
【0049】
他に示されない限りは、本明細書において使用される、用語「粘度」はDV−III Ultra LVブルックフィールド粘度計で、一定の25℃で維持されたサンプル温度で、スピンドル#31を用いて6rpmで測定した粘度をいう。
【0050】
上述の通り、ダイズベースのバインダーは木材複合体バインダーとしての有用性を見いだしている。ダイズベースのバインダーは特に不織ウェブを結合するのにも有用である。「不織ウェブ」とは天然および/または合成繊維から製造される、繊維がランダムまたは半−ランダムな配列(すなわち、意図的に配列されていない)で並べられている、任意の物品またはシート様形態をいう。ウェブ形成プロセスの間に何らかの配列の形成(主として、機械方向に)が起こるが、これは従来の織りプロセスまたは編みプロセスから得られる配列化とは全く異なっていることを当業者は理解している。ウェブ形成に使用するのに好適な繊維には、これらに限定されないが、ガラス繊維、セルロース、修飾セルロース(セルロースアセタート)、綿、ポリエステル、レイヨン、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリ酢酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリオレフィン、並びに2以上の繊維形成性ポリマー、例えばポリプロピレンおよびポリエチレンテレフタラートなどを含む2成分繊維が挙げられる。これらダイズベースのバインダーとの使用に好適な不織ウェブの定義に含まれるものは、化学的または機械的処理の作用により製造された多孔性フィルム(例えば、開口フィルム)である。紙および紙製品も、これらダイズベースのバインダーのための基体として有用でありうる。後者は、任意の重量の不織ウェブを用いた有用性を見いだすであろうし、かつ特定の用途の要求に大きく依存するであろう。不織ウェブを製造するための製造プロセスは当該技術分野において周知である。これらには、例えば、ウェットレイド(wet−laid)、エアレイド(air−laid)(ドライレイド、dry−laid)、スパンボンド、スパンレース、メルトブローおよびニードルパンチが挙げられる。特に好適なウェブは約100グラム/平方メートル(gsm)未満のベース重量(何らかのコーティングまたは処理が適用される前のウェブの重量)を有する。別の態様においては、ウェブは約20gsm未満のベース重量を有する。
【0051】
不織布は、機械的手段により、例えば、ウェットレイドプロセスにより、エアレイドプロセスにより、およびニードルパンチングにより引き起こされる絡まりあいにより;化学的手段、例えば、ポリマーバインダーでの処理により;または機械的および化学的手段の組み合わせにより、不織布形成の前、その間、またはその後で、全体的にまたは部分的に一体化されうる繊維から構成される。ある不織布は周囲温度よりも実質的に高い温度で使用され、例えば、ガラス繊維含有不織布は、シングル屋根板またはロール屋根葺き材料の製造に従って、加熱アスファルト系組成物で含浸される。不織布が150℃〜250℃の温度で加熱アスファルト系組成物と接触させられる場合には、不織布は垂れ、縮みまたは他の変形をする場合がある。よって、ダイズ−ベースの樹脂組成物を組み込んだ不織布は、水性樹脂組成物によってもたらされる特性、例えば、引張り強さなどを実質的に保持すべきである。さらに、水性樹脂組成物は、例えば、硬化した組成物が処理条件下で、剛性もしくは脆性すぎるか、または粘着性になる場合におけるような、本質的な不織布特性を実質的に損なうべきではない。
【0052】
好ましくは、繊維マットのバインダー組成物はホルムアルデヒドを含まない。よって、ダイズベースのバインダーのダイズ成分のあらゆるホルムアルデヒド処理またはホルムアルデヒド修飾が回避されるべきである。さらに、ポリマー修飾されたダイズベースのバインダーについては、水性バインダー組成物のホルムアルデヒド含量を最小化するために、ホルムアルデヒドを含まないポリマー含有組成物のためのポリマーを製造する場合に、重合用添加物または添加剤自体がホルムアルデヒドを含まず、重合プロセスの間にホルムアルデヒドを生成させず、および耐熱性不織物の処理の間にホルムアルデヒドを生成または放出しない重合用添加物または添加剤、例えば、開始剤、還元剤、連鎖移動剤、硬化剤、殺生物剤、界面活性剤、乳化剤、カップリング剤、消泡剤、ダスト抑制剤、充填剤などを使用することが好ましい。
【実施例】
【0053】
これらの実施例は脱脂ダイズ粉体を分散させる様式を変更することによる粘度における効果を示す。ダイズ粉体は分散させるのが困難であり、高粘度分散物(>2,000cps)が潜在的な市販の最終使用者に望ましくない。よって、以下の実施例においては、1,000cps未満の粘度を有するダイズ粉体分散物が望ましく、200〜600cpsの粘度が最も望ましい。
【0054】
【表1】

【0055】
表1A.水性ダイズ粉体スラリーは、スラリーの全重量を基準にして20%の脱脂ダイズ粉体(Prolia200/70、200メッシュ粒子サイズ、および70のPDIを有する)を含み、水性スラリーは0、1%および2%のAcrysol(商標)420N(「分散剤」)(水可溶性ポリ酸ポリマー)の存在下でラボラトリーベンチトップスターラーを用いて撹拌することにより形成された。
表1B.水性ダイズ粉体スラリーは、スラリーの全重量を基準にして20%の脱脂ダイズ粉体(Prolia200/70、200メッシュ粒子サイズ、および70のPDIを有する)を含み、水性スラリーは0、1%および2%のAcrysol(商標)420N(「分散剤」)(水可溶性ポリ酸ポリマー)の存在下でカウレスディゾルバーで高剪断混合することにより形成された。
【0056】
表1Aおよび1Bにおけるデータは図1Aおよび1Bの粘度曲線としても示される。表1A(および図1A)は、1.0%または2.0%の量でのポリ酸分散剤の添加は、スラリー混合物が単に撹拌される場合には、スラリーの粘度を低減させる試みにおける効果をほとんどまたは全く有しない。表1Aにおけるデータと表1Bのデータを比較すると(図1Bにも示される)、ダイズ粉体スラリーを粉砕することはスラリーの粘度を低減することにおいて有利な効果を有していることが認められうる。例えば、12rpmの剪断速度において測定される場合には、高剪断粉砕を使用することにより、粘度は約1,000cpsまで低下されるが、これに対して、単に撹拌する場合には約2,000cpsである。この有利な効果は、少量(1〜2%)の水可溶性ポリマー分散剤も高剪断混合プロセスに存在する場合に大いに増幅される。よって、12rpmの同じ剪断速度で測定される粘度は、水可溶性ポリマーの存在下で粉砕することにより約300cpsまでさらに低減されることができる。後者は、製造が容易に行われうるさらにより望ましい粘度範囲である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)スラリーの全重量を基準にして10〜60重量パーセントの脱脂ダイズ粉体、
ii)エチレン性不飽和モノマーの重合により製造され、1,000〜20,000の範囲の分子量を有する水可溶性ポリマー分散剤を、スラリーの全重量のパーセンテージとしてポリマー系活性成分の重量基準で0.2重量%〜4重量%、および
iii)水
を含む水性ダイズ粉体スラリーであって、
スラリーの粘度が25℃において200〜2,000cpsの範囲である、水性ダイズ粉体スラリー。
【請求項2】
水可溶性ポリマー分散剤が(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリラート、マレイン酸;それらの無水物;およびそれらの塩からなる群から選択される1種以上のモノマーに由来する重合単位を含むホモポリマーまたはコポリマーである、請求項1に記載のスラリー。
【請求項3】
水可溶性ポリマー分散剤が水可溶性リン含有ポリマーを含む、請求項1に記載のスラリー。
【請求項4】
水可溶性ポリマー分散剤が10,000未満の分子量を有する、請求項1に記載のスラリー。
【請求項5】
水可溶性ポリマー分散剤が5,000未満の分子量を有する、請求項1に記載のスラリー。
【請求項6】
(a)(i)スラリーの全重量を基準にして10〜60重量パーセントの脱脂ダイズ粉体、
(ii)エチレン性不飽和モノマーの重合により製造され、1,000〜20,000の範囲の分子量を有する水可溶性ポリマー分散剤を、スラリーの全重量のパーセンテージとしてポリマー系活性成分の重量基準で0.2重量%〜4重量%、および
(iii)水
を含む混合物を形成する工程;並びに
(b)スラリーの粘度が200〜2,000cpsの範囲になるまで高剪断で混合する工程;
を含む水性ダイズ粉体スラリーを提供する方法。
【請求項7】
混合する工程(b)が高剪断カウレス型ディゾルバーを用いて行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
混合する工程(b)が高剪断分散インペラを用いて行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
水可溶性ポリマー分散剤が(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリラート、マレイン酸;それらの無水物;およびそれらの塩からなる群から選択される1種以上のモノマーに由来する重合単位を含むホモポリマーまたはコポリマーである、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
水可溶性ポリマー分散剤が10,000未満の分子量を有する、請求項6に記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−221476(P2009−221476A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−40385(P2009−40385)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】