説明

ダイナモ付きボトムブラケット構造

【課題】 1つまたは複数の電動装置を作動させるのに十分なエネルギーを発生可能な発電機構を備えた自転車用ボトムブラケット構造を提供する。
【解決手段】 自転車用ボトムブラケット構造12は、乗り手が自転車をペダリングする際に電気を発生するダイナモ28を有している。ダイナモ28は、自転車フレームの一部に固定された固定部と、自転車フレームの固定部に対して回転可能に連結された回転部とを有している。ダイナモの回転部は、遊星ギアユニット30を介して、自転車用ボトムブラケット構造12の軸部22に連結されている。遊星ギアユニット30は、ダイナモ28の回転部が軸部22よりも高速で回転するように、軸部22とダイナモ28の回転部との間に連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイナモすなわち発電機構を備えた自転車、特に、自転車用ボトムブラケットに装着されたダイナモすなわち発電機構付きボトムブラケット構造に関する。
【背景技術】
【0002】
サイクリングは、交通の手段としてだけでなく、レクリエーションとしてもますます普及している。さらに、自転車競技は、非常に人気の高い競技スポーツになった。自転車がレクリエーション、交通、競技のいずれに使われる場合でも、自転車業界は、自転車の操作がより簡単になり乗り手が楽しく乗れるように、自転車の様々な部品に絶えず改良を重ねてきている。
【0003】
最近では、乗り手にとって自転車の運転がより簡単で楽しくなるように、自転車に電子部品が装着されるようになってきている。そのような自転車は、前方ランプ、電動シフター、電動ディレイラー、その他の電動装置を備えていることがある。このような電動装置には、ほとんどの場合、電気エネルギーを絶えず供給し続ける必要がある。一部の自転車は、電気エネルギーを電動装置に供給するためのバッテリーを備えているが、バッテリーの寿命は限られている。したがって、多くの自転車は、バッテリーが必要とならないように、電動装置に電気エネルギーを供給する発電機構を備えている。これらの発電機構は、しばしばフロントハブ内に装着されて、電動装置に電気エネルギーを供給している。発電機構は、前輪の回転を利用して電気を発生させ、その電力が導線を通じて電動装置へと送られる(特許文献1参照)。発電機構を車輪のフロントハブ内に装着する方法は、非常に効果的であるが、乗り手が惰行運転中に発電機構が前輪の回転を遅くしてしまうおそれがある。
【0004】
また、クランク軸部の回転により電気が発生するように、ダイナモ(発電機構)を自転車のボトムブラケットの部分に装着する方法も提案されている(特許文献2参照)。しかし、発電機構をボトムブラケットに装着すると、乗り手がペダルをゆっくり回しているときには十分に電気が発電されないおそれがある。
【0005】
上記視点から、改良型の自転車用ボトムブラケット構造の必要性が存在するということは、本開示から本技術に精通するものには明らかであろう。本発明では、本技術における上記の必要性ならびにその他の必要性が示され、本開示によって当業者は明確に理解することができるであろう。
【特許文献1】特開2001−213104
【特許文献2】特開昭55−141954
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような発電機構を有する自転車では、発電機構がフロントハブ内に装着された場合、乗り手が惰行運転中に発電機構が前輪の回転を遅くしてしまうおそれがある。また、発電機構が自転車のボトムブラケットの部分に装着された場合、乗り手がペダルをゆっくり回しているときには十分に電気が発電されないおそれがある。
【0007】
本発明の1つの目的は、1つまたは複数の電動装置を作動させるのに十分なエネルギーを発生可能な発電機構を備えた自転車用ボトムブラケット構造を提供することにある。
【0008】
本発明の別の目的は、製造及び組立てが比較的簡単かつ低価格な自転車用ボトムブラケット構造を提供することにある。
【0009】
本発明の別の目的は、遊星ギアユニットを使用する自転車用ボトムブラケット構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的は、基本的に、軸部と、ダイナモと、遊星ギアユニットとから成る自転車用ボトムブラケット構造を提供することによって達成される。軸部は、第1端と、第2端とを有している。ダイナモは、軸部に取り付けられている。この軸部は、固定部と回転部とを有している。遊星ギアユニットは、ダイナモの回転部が軸部よりも高速で回転するように、軸部と、ダイナモの回転部との間に連結される。これにより、ダイナモの回転部が軸部よりも高速で回転するようになるため、1つまたは複数の電動装置を作動させるのに十分なエネルギーをダイナモから発生させることができる。
【発明の効果】
【0011】
1つまたは複数の電動装置を作動させるのに十分なエネルギーを発生可能な発電機構を備えた自転車用ボトムブラケット構造が提供される。これにより、ダイナモの回転部が軸部よりも高速で回転するようになるため、1つまたは複数の電動装置を作動させるのに十分なエネルギーをダイナモから発生させることができる。また、製造及び組立てが比較的簡単かつ低価格な自転車用ボトムブラケット構造が提供される。これにより、自転車用ボトムブラケット構造の製造及び組立てを、簡単かつ低価格で実現することができる。さらに、遊星ギアユニットを使用する自転車用ボトムブラケット構造が提供される。これにより、ダイナモの回転部を軸部よりも高速で回転させることができ、1つまたは複数の電動装置を作動させるのに十分なエネルギーをダイナモから発生させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のその他の目的、特徴、様相、利点は、添付された図面と共に、本発明の実施形態を開示するところの以下の詳細な説明から本技術に精通するものに明らかになる。
【0013】
ここでは、本発明の選択された実施形態が、図を参照しながら説明される。本開示から本技術に精通するものには明らかであるが、以下の本発明にかかる実施例の説明は単なる例示であって、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物によって定義されるような発明を制限するものではない。
【0014】
まず、図1から図5に示すように、本発明の第1実施形態による自転車用ボトムブラケット構造12が装着された自転車10が示されている。ボトムブラケット構造12は、自転車フレーム16のボトムブラケットチューブ14内に装着される。ボトムブラケット構造12の対向する両端部には、各々右クランクアーム18と、左クランクアーム20とが連結され固定されている。自転車10の他の部品は従来と同様であるので、自転車10の他の部品に関する詳細は、ボトムブラケット構造12に関連する部分を除き、ここでは説明または図示しない。さらに、本開示から本技術に精通するものには明らかであるが、本発明の内容から逸脱することなく、自転車10の様々な部品に対して様々な修正を加えることができる。
【0015】
図2に示すように、自転車用ボトムブラケット構造12は、基本的に、軸部22と、第1端取付構造24と、第2端取付構造26と、ダイナモすなわち発電機構28と、遊星ギアユニット30とを備えている。ダイナモ28は、乗り手が自転車10のペダルに踏み込む際に電気が発生するように構成され配置される。以下に説明するように、遊星ギアユニット30は、基本的に、ダイナモ28が軸部22よりも高速で回転するように、軸部22とダイナモ28との間に連結される。
【0016】
軸部22は、第1及び第2取付構造24,26によって、ボトムブラケットチューブ14内に回転自在に支持されている。また、右及び左クランクアーム18,20は、それぞれが軸部22の対向する両端部に連結され固定される。軸部22は、ボトムブラケットの軸部の形成に従来使用されている、高剛性金属材料などの高剛性材料からなっているのが望ましい。図の実施形態による軸部22は、第1端すなわち右端32と第2端すなわち左端34とを有する管状部材である。
【0017】
右クランクアーム18は、軸部22の右端32に連結され固定され、一方で、左クランクアーム20は、軸部22の左端34に連結され固定される。特に、軸部22の外面は、対応する右クランクアーム18のスプラインと合致する環状セレーション(切欠き)すなわちスプライン36を備えている。以下に説明するように、右クランクアーム18は、第1端取付構造24による軸方向力によって、スプライン36上に保持される。左クランクアーム20は、取付手段38によって、軸部22の左端34に固定される。さらに具体的には、軸部22の左端34は、外周面上に配置された複数のセレーション(切欠き)すなわちスプライン40と、左端34の内孔の内周面に形成された内ねじ42とを備えている。したがって、左クランクアーム20は、軸部22の左端34上に形成されたスプライン40と合致するセレーションすなわちスプラインを有しており、軸部22に対して相対回転不能になっている。取付手段38は、内ねじ42と係合し、左クランクアーム20を軸部22の左端34に固定し保持している。
【0018】
軸部22の外周面は、軸部22をボトムブラケットチューブ14に固定するための、第1及び第2端取付構造24,26を装着できるように、さらに構成され配置されている。特に、軸部22の外周面は、第1端32が最大径すなわち最大幅、第2端34が最小径すなわち最小幅となるように、段状に形成されている。このように、スプライン36を有する軸部22の外周面は最大径すなわち最大幅を有し、スプライン40を有する軸部22の外周面は最小径すなわち最小幅を有している。
【0019】
軸部22の外周面は、1つまたは複数のスプロケット46(1つのみ表示)を固定し保持するように構成され配置された、スプライン36に隣接して配置された複数のセレーション(切欠き)すなわちスプライン44をさらに備えるのが望ましい。また、軸部22の外周面は、軸部22の第1端36に隣接して配置された第1の外ねじ51と、軸部22の第2端34に実質的に隣接して配置された第2の外ねじ52とをさらに備えるのが望ましい。外ねじ51の有効外径は、外ねじ52の有効外径よりも大きくなっていることが望ましい。外ねじ51は、第1端取付構造24が固定され保持されるように構成され配置される。第2外ねじ52は、第2端取付構造26が連結され固定されるように構成され配置される。
【0020】
取付手段38は、取付ボルト38aと、座金38bと、固定リング38cとを備えるのが望ましい。取付ボルト38aは、軸部22の内ねじ42と合致する外ねじを有している。取付ボルト38aは、トルク伝達面を有する穴を備えた中空部材であるのが望ましい。取付ボルト38aは、環状フランジを有している。環状フランジは、左クランクアーム20を軸部22の第2端34に保持する軸方向力を左クランクアーム20に与えるために、左クランクアーム20のフランジに当接している。座金38bは、取付ボルト38aの環状フランジと、左クランクアーム20との間に配置されるのが望ましい。固定リング38cは、左クランクアーム20内にねじ込み装着されて、取付ボルト38aの環状フランジに当接するように構成され配置されている。固定リング38cは、装着用工具を受け取るために周上に間隔を隔てて配置された複数のブラインド穴を備えるのが望ましい。
【0021】
第1端取付構造24は、右コーン60と、右カップ61と、複数のボールベアリング62と、右端シール63とを備えるのが望ましい。第1端取付構造24は、軸部22の第1端32をボトムブラケットチューブ14に回転自在に支持している。特に、右コーン60と、右カップ61と、ボールベアリング62とは、第1ベアリングセットすなわち第1ベアリングユニットを形成している。右コーン60と、右カップ61と、ボールベアリング62とは、自転車業界において従来使用されている高剛性材料からなっている。
【0022】
図2及び図3に示すように、右コーン60は、管状部60aと、環状フランジ部60bとを有する環状部材であるのが望ましい。管状部60aは、軸部22の外ねじ51に係合し第1端取付構造24を軸部22に固定する内ねじ60cを有している。また、管状部60aは、ボールベアリング62を回転自在に支持する環状凹面60dを有している。右コーン60の環状フランジ部60bは、スプロケット46及び右クランクアーム18に軸方向力を与える付勢部となるように、段状であることが望ましい。これにより、右コーン60が軸部22の外ねじ51に取り付けられると、スプロケット46及び右クランクアーム18に軸方向力が与えられる。
【0023】
図9、図10および図11に示すように、右カップ61は、高剛性材料からなっているのが望ましい。右カップ61は、ボトムブラケットチューブ14に装着され固定される。右カップ61は、管状部61aと、外側当接フランジ61bと、内側環状フランジ61cとを備えた管状部材であるのが望ましい。管状部61aは、ボトムブラケットチューブ14の内ねじと係合する外ねじ61dをさらに備えるのが望ましい。ねじ61dは、左ねじであるのが望ましい。外側当接フランジ61bは、右カップ61がボトムブラケットチューブ14内に完全に装着されたときに、ボトムブラケットチューブ14の右側軸端に当接する当接部材である。外側当接フランジ61bは、装着を簡単にするための切り欠きを有する形状、すなわちトルクを伝達しやすい形状(図示せず)を有していることが望ましい。
【0024】
内側環状フランジ61cは、ツイストロック用切り欠き61eを4箇所に備えるのが望ましい。ツイストロック用切り欠き61eは、ダイナモ28の一部をそこに取り付けられるように略L字形状に形成されていることが望ましい。また、内側環状フランジ61cは、ダイナモ28の電線Wが貫通するための電線通路孔61fをさらに備えるのが望ましい。内側環状フランジ61cの内面には、回転するボールベアリング62を支持する凹状ベアリング面61gが形成されている。このように、ボールベアリング62は、軸部22がボトムブラケットチューブ14に対して回転可能になるように、右コーン60のベアリング面60dと、右カップ61のベアリング面61gと間に回転自在に支持される。ボールベアリング62は、金属材料などの高剛性材料からなっているのが望ましい。
【0025】
シーリング部材63は、エラストメリック材料などのフレキシブルな弾性シールタイプの材料からなっているのが望ましい。シール63は、管状部61aの内面に形成された内面溝に装着されるのが望ましい。
【0026】
図2に示すように、第2端取付構造26は、基本的に、左コーン64と、左カップ65と、複数のボールベアリング66と、環状端部用シール67とを備えている。このように、第2端取付構造26は、軸部22の左端34をボトムブラケットチューブ14に対して回転自在に支持するように構成され配置されている。特に、左コーン64と、左カップ65と、ボールベアリング66とは、第2ベアリングセットすなわち第2ベアリングユニットを形成している。左コーン64と、左カップ65と、ボールベアリング66とは、自転車業界において従来使用されている高剛性材料からなっている。
【0027】
左コーン64は、内ねじ64aと、環状凹状ベアリング面64bと、複数のスプラインすなわちセレーション64cとを有する管状部材である。左コーン64の外周面は、装着を簡単にするための切り欠き、スプラインおよびセレーションを有する形状、すなわちトルクを伝達しやすい形状(図示せず)を有していることが望ましい。内ねじ64aは、第2端取付構造26を軸部22に固定するために、軸部22の外ねじ52にねじ込み装着される。凹状ベアリング面64bは、左コーン64の外周面上に形成されており、従来の方法でボールベアリング66を回転自在に支持している。スプラインすなわちセレーション64cは、左コーン64の外周面上に形成されている。以下に説明するように、スプラインすなわちセレーション64cは、遊星ギアユニット30を固定し保持するように構成され配置される。
【0028】
左コーン64は、軸部22に設置されたロックナット68及びワッシャ69によって、偶発的に緩まないように予防されていることが望ましい。特に、ナット68は、左コーン64に軸方向力を与えられるように、外ねじ52に係合する内ねじを有している。
【0029】
図2に示すように、左カップ65は、金属材料などの高剛性材料からなっているのが望ましい。左カップ65は、ボトムブラケットチューブ14の左端に連結され固定される。図の実施形態による左カップ65は、外側管状部65aと、環状当接フランジ65bと、内側環状フランジ65cとを有する管状部材である。管状部65aの外面は、ボトムブラケットチューブ14の左端のねじにねじ込み係合可能な外ねじ65dを備えている。ねじ65dは、右ねじであるのが望ましい。当接フランジ65bは、管状部65aの外端から外方に延びている。この当接フランジ65bは、左カップ65がボトムブラケットチューブ14の左端に完全にねじ込み装着されたときに、ボトムブラケットチューブ14の端に当接する環状当接部となる。環状フランジ65bは、複数の切り欠きを備えるのが望ましい。複数の切り欠きは、トルク伝達面(図示せず)を形成している。
【0030】
内側環状フランジ65cには、以下に説明するように、遊星ギアユニット30を係合させるための複数のセレーションすなわちスプライン65eが内側に形成されていることが望ましい。さらに、内側環状フランジ65cは、ボールベアリング66を回転自在に支持する環状凹状ベアリング面65fを有するのが望ましい。
【0031】
端部用シール67は、内側環状フランジ65cの軸方向に延びた部分に形成された溝内に装着されるのが望ましい。このように、シール67は、左コーン64と左カップ65との間の隙間から汚染物質がボトムブラケット構造12内に入り込まないように配置されている。
【0032】
図2を参照すると、ダイナモすなわち発電機構28は、一般的に、比較的従来どおりの部品である。したがって、ダイナモ28に関する詳細は、本発明に関連する部分を除き、ここでは説明または図示しない。ダイナモ28は、基本的に、ヨークユニット70と、磁気ユニット71とを備えている。ヨークユニット70は固定部になっており、磁気ユニット71は回転部になっている。このように、本実施形態によるヨークユニット70は、ボトムブラケットチューブ14に支持され固定されるように構成され配置されている。一方で、磁気ユニット71は、遊星ギアユニット30を介して、軸部22と共に回転するように構成され配置されている。
【0033】
図2及び図3に示すように、ヨークユニット70は、基本的に、発電コイル72と、ヨーク73と、取付用スリーブ74と、固定ナット75とを備えている。発電コイル72は、コイルの巻き付けられるボビンを有する固定子を形成している。発電コイル72は、図1に示された電気シフターのような1つまたは複数の電動装置に接続されるコードすなわちワイヤWを有している。すなわち、発電コイル72の磁気ユニット71に対する相対回転によって、電気エネルギーが発生しコードWを通じて電動装置に送られる。ヨーク73は、発電コイル72を収容し支持するための爪部を備えた1対のカップ状部材であるのが望ましい。例えば、発電コイル72及びヨーク73の構造は、U.S. Patent No. 6,409,197 に開示されているダイナモの対応部品と同様に構成され配置されうる。ヨーク73は、取付用スリーブ74の外周面上に固定される。
【0034】
取付用スリーブ74は、高剛性材料からなっているのが望ましい。図3、図12から図14に示すように、取付用スリーブ74は、管状部74aと、環状当接部74bとを有する管状部材である。環状当接部74bは、管状部74aの第1端から半径方向外方に向けて延びている。管状部74aの第2端は、固定ナット75がねじ込み装着される外ねじ74cを有している。固定ナット75がねじ74cによって管状部74aにねじ込まれると、発電コイル72及びヨーク73が管状部74aに装着され固定される。固定ナット75には、発電コイル72及びヨーク73が取付用スリーブ74に対して相対回転しないように、十分な軸方向力を加えておくことが望ましい。環状フランジ74bは、電気コードWが貫通可能な配線用開口すなわちスロット74dを備えている。また、環状フランジ74bは、複数のもどり止め部74eをさらに備えるのが望ましい。もどり止め部74eは、右カップ61のツイストロック用切り欠き61eに受け取られるように構成され配置される。もどり止め部74eは、ツイストロック用切り欠き61eの拡大領域に挿入される。そして、取付用スリーブ74が右カップ61に対してねじられるか回転させられる。すると、もどり止め部74eがツイストロック用切り欠き61e内で周方向に移動して、取付用スリーブ74が右カップ61に固定され保持される。右カップ61はボトムブラケットチューブ14に固定されているので、ヨークユニット70も右カップ61を介してボトムブラケットチューブ14に連結され固定される。
【0035】
図2から図5を再び参照すると、遊星ギアユニット30は、基本的に、リングギア81と、固定リング82と、保持クリップ83と、ギアホルダー84と、3つの遊星ギア85と、太陽ギア86とを備えている。磁気ユニット71は、太陽ギア86と共にヨークユニット70の回りに回転するように、太陽ギア86に装着され固定される。遊星ギア装置30は、ダイナモ28の磁気ユニット(回転部)71が軸部22の回転よりも高速で回転するように、軸部22とダイナモ28の磁気ユニット71との間に連結される。磁気ユニット71は、ヨークユニット70まわりに同軸に配置された複数の磁石を備えるのが望ましい。特に、軸部22の回転が永久磁石に伝達され永久磁石が軸部22よりも速い回転速度で回転するように、永久磁石は遊星ギアユニット30に取り付けられる。
【0036】
図2、図4、図5に示すように、リングギア81は、高剛性材料からなる環状部材である。リングギア81は、複数の内側セレーションすなわちスプライン81aと、複数のギア内歯81bを備えるのが望ましい。内側セレーション81aは、左カップ65の外側セレーション65eに係合する。このように、リングギア81は左カップ65に固定されて、左カップ65が自転車用ボトムブラケットチューブ14に固定される。すなわち、リングギア81は、ボトムブラケットチューブ14に対して相対回転不能である。以下に説明するように、ギア内歯81bは、遊星ギア85の回転を制御するように、遊星ギア85の歯に係合する。
【0037】
図2、図4、図5に示すように、固定リング82は、複数の内側セレーションすなわちスプライン82aと、複数の外側セレーションすなわちスプライン82bとを備えている。内側セレーション82aは、固定リング82が軸部22と共に回転するように、左コーン64の外側セレーション64cに係合する。外側セレーション82bは、ギアホルダー84が固定リング82に対して相対回転しないように、ギアホルダー84に係合する。したがって、ギアホルダー84は軸部22と共に回転する。
【0038】
図2、図4、図5に示すように、ギアホルダー84は、高剛性材料からなる管状部材である。ギアホルダー84は、ギアホルダー84と固定リング82とが互いに固定されるように、固定リング82の外側セレーション82bに係合する複数の内側セレーションすなわちスプライン84aを備えている。ギアホルダー84は、その中心を基準として120°の角度で配置された3つの遊星ギア用開口84bをさらに備えている。遊星ギア用開口84bには、遊星ギア85が装着される。ここでは、ピン87が、遊星ギア85をギアホルダー84に回転自在に支持している。したがって、軸部22が回転させられると、ギアホルダー84が軸部22と共に回転し、遊星ギア85が、リングギア81と係合しながら回転する。
【0039】
遊星ギア85は、第1ギア部85aと第2ギア部85bとを備えている。第1ギア部85aの直径は、第2ギア部85bの直径より小さく設定されている。また、第1ギア部85aの周上の歯数は、第2ギア部85bの歯数より少なく設定されている。第1ギア部85aの歯は、リングギア81のギア歯81bに係合している。したがって、ギアホルダー84が回転すると、第1ギア部85aと、リングギア81のギア歯81bとの係合によって、遊星ギア85が回転する。この各遊星ギア85の回転が太陽ギア86に伝達されて、太陽ギア86は軸部22の回りにより速い回転速度で回転する。
【0040】
図2、図3、図5、図15から図17に示すように、太陽ギア86は、第1管状部86aと、第2管状部86bとを備えている。第1管状部86aの内面には、永久磁石78が取り付けられている。したがって、永久磁石78は太陽ギア86と共に回転する。第2管状部86bは、ギア外歯86cと内ねじ86dとを有している。ギア外歯86cは、遊星ギア85の第2ギア部85bのギア歯と係合する。したがって、遊星ギア85が回転すると、太陽ギア86が回転する。
【0041】
図2及び図3に示すように、固定リング88は、太陽ギア86の内ねじ86dにねじ込み装着されるのが望ましい。固定リング88は、遊星ギア85をギア外歯86cに保持するように構成され配置された環状当接フランジを有している。
【0042】
ここで使用する、次の「前方、後方、上方、上、下方、垂直、水平、下、横」などの方向を示す用語、ならびに他の同様の方向を表す用語は、本発明が装着された自転車の方向を表すものとする。したがって、本発明を説明するこれらの用語は、本発明の装着された自転車を基準に解釈されなければならない。ここで使用されている「ほぼ」、「約」、「おおよそ」などの程度を表す用語は、最終結果が著しく変化しない妥当量の変化を意味する修正用語である。これらの用語は、修正対象の用語の意味を無効にしない範囲で、±5%の偏差を含むものと解釈される。
【0043】
ここでは、本発明の選択された実施形態を説明し図示しているが、本開示から本技術に精通するものには明らかであるが、請求の範囲で定義された本発明の目的又は範囲から逸脱しなければ、様々な修正、変更を加えることができる。さらに、本発明による複数の実施形態の説明は、例示することのみを目的とし、添付された請求項や請求項と同等と見なされる内容によって規定される発明を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
ここで、本開示の一部を形成する添付図面を参照する。
【図1】本発明の第1実施形態による自転車用ボトムブラケット構造が装着された自転車の斜視図。
【図2】本発明の第1実施形態による、図1に示された自転車用ボトムブラケット構造の部分的長手方向断面図。
【図3】本発明の第1実施形態による、図1及び図2に示された自転車用ボトムブラケット構造の右側端部の部分拡大長手方向断面図。
【図4】本発明の第1実施形態による、図1から図3に示された自転車用ボトムブラケット構造の右側端部の部分拡大長手方向断面図。
【図5】本発明の第1実施形態による、図1から図4に示された自転車用ボトムブラケット構造の選択部品の分解透視図。
【図6】本発明の第1実施形態による、遊星ギアの取り付けられた、図2から図5に示されたギアホルダーの左側軸端面図。
【図7】本発明の第1実施形態による、図6に示されたギアホルダー及び遊星ギアの側面図。
【図8】本発明の第1実施形態による、ギアホルダーに取り付けられた遊星ギアと噛み合う太陽ギアの左側軸端立面図。
【図9】本発明の第1実施形態による、図2から図5に示された右カップの左側軸端立面図。
【図10】本発明の第1実施形態による右カップの、図9の10−10線による断面図。
【図11】図9及び図10に示された右カップの右側軸端立面図。
【図12】本発明の第1実施形態による、図2、図3、図5に示された取付スリーブの左側軸端立面図。
【図13】図12に示された取付スリーブの、図12の13−13線による長手方向断面図。
【図14】図10及び図11に示された右カップの右側軸端立面図。
【図15】本発明の第1実施形態による、図2、図3、図5に示された太陽ギアの左側軸端立面図。
【図16】永久磁石の取り付けられた、図15に示された太陽ギアの、図15の16−16線による断面図。
【図17】図15及び図16に示された太陽ギアの外側軸端立面図。
【符号の説明】
【0045】
12 自転車用ボトムブラケット構造
14 ボトムブラケットチューブ
22 軸部
24 第1端取付構造
26 第2端取付構造
28 ダイナモ(発電機構)
30 遊星ギアユニット
32 右端(第1端)
34 左端(第2端)
60 右コーン
61 右カップ
61f 電線通路孔
62 ボールベアリング
64 左コーン
65 左カップ
66 ボールベアリング
67 環状端部用シール
70 ヨークユニット
71 磁気ユニット
74 取付用スリーブ
74a 管状部
74b 環状当接部
74d スロット(配線用開口)
81 リングギア
82 固定リング
83 保持クリップ
84 ギアホルダー
85 遊星ギア
86 太陽ギア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端と第2端とを有する軸部と、
固定部と回転部とを有し前記軸部に装着されるダイナモと、
前記ダイナモの回転部が前記軸部より高速回転するように、前記軸部と前記ダイナモの回転部との間に連結された遊星ギアユニットと、
を備える自転車用ボトムブラケット構造。
【請求項2】
前記ダイナモの固定部はヨークユニットを有しており、前記ダイナモの回転部は磁気ユニットを有している、
請求項1に記載の自転車用ボトムブラケット構造。
【請求項3】
前記ダイナモの固定部は、前記ダイナモの回転部の内部に前記ダイナモの回転部と同軸に配置されている、
請求項1又は2に記載の自転車用ボトムブラケット構造。
【請求項4】
前記遊星ギアユニットは、前記ダイナモの回転部に装着された太陽ギアと前記軸部と共に回転するように装着された第1遊星ギアとを有し、
前記第1遊星ギアは、前記軸部の回転に応じて前記太陽ギアを回転させるように前記太陽ギアに係合している、
請求項1から3のいずれかに記載の自転車用ボトムブラケット構造。
【請求項5】
前記遊星ギアユニットは、複数の前記第1遊星ギアをさらに有しており、
複数の前記第1遊星ギアは、前記軸部と共に回転するように装着されており、前記軸部の回転に応じて前記太陽ギアを回転させるように前記太陽ギアに係合している、
請求項4に記載の自転車用ボトムブラケット構造。
【請求項6】
前記遊星ギアユニットは、前記軸部と共に回転するように装着されたギアホルダーをさらに有しており、
前記ギアホルダーは、前記第1遊星ギアを支持している、
請求項4又は5に記載の自転車用ボトムブラケット構造。
【請求項7】
前記遊星ギアユニットは、固定フレーム部に固定されるように構成され配置された固定リングギアと、前記ギアホルダーに装着された第2遊星ギアとをさらに有しており、
前記第2遊星ギアは、前記固定リングギアに係合している、
請求項6に記載の自転車用ボトムブラケット構造。
【請求項8】
前記固定リングギアは、ベアリングセットのアウターカップに装着されており、
前記ダイナモの固定部は、ベアリングセットのアウターカップに装着された取付構造を有している、
請求項7に記載の自転車用ボトムブラケット構造。
【請求項9】
前記ダイナモの固定部は、ヨークユニットを有しており、
前記ヨークユニットは、磁気ユニットを含む前記ダイナモの回転部の内部に前記ダイナモの回転部と同軸に配置されたスリーブに装着されている、
請求項1から8のいずれかに記載の自転車用ボトムブラケット構造。
【請求項10】
前記ダイナモの固定部の前記スリーブは、一端に取付構造を有している、
請求項9に記載の自転車用ボトムブラケット構造。
【請求項11】
前記スリーブの前記取付構造は、前記ヨークユニットの電気コードが配置されるワイヤアクセス開口を有している、
請求項10に記載の自転車用ボトムブラケット構造。
【請求項12】
前記スリーブは、前記ヨークユニットの電気コードが配置されるワイヤアクセス開口を有している、
請求項10に記載の自転車用ボトムブラケット構造。
【請求項13】
前記スリーブの前記取付構造は、ベアリングセットのアウターカップに装着されている、
請求項10から12のいずれかに記載の自転車用ボトムブラケット構造。
【請求項14】
前記スリーブ及び前記アウターカップは、前記ヨークユニットの電気コードが配置されるワイヤアクセス開口を有している、
請求項13に記載の自転車用ボトムブラケット構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2006−15987(P2006−15987A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−185518(P2005−185518)
【出願日】平成17年6月24日(2005.6.24)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】