説明

ダイヤフラムバルブ

【課題】バグフィルタの除塵装置に用いるパルスジェットバルブにおいて、流路損失の少ない弁体構造を提供する。
【解決手段】電磁弁22により制御されるパイロット方式のダイヤフラム弁に於いて、弁体26の開弁時に被制御流体同士の衝突を回避するため、弁体26の下流側先端に被制御流体の整流を目的とした案内部材24を突設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバグフィルタのパルスジェット方式の払い落し機構を備えた集じん機のダイヤフラムバルブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から焼却処理施設やコークス炉、粉体工場などの各種工場から発生する粉じんあるいはダストを含んだ排ガスの処理装置としてバグフィルタを使用した集じん機が使用されている。
【0003】
そして集じんの際の空気流と逆方向にバグフィルタに圧縮空気を瞬間的に噴射させて、バグフィルタに付着、堆積した粉じんを払い落とす方法としてパルスエア方式の払い落し機構が採用されている。
【0004】
そこで、パルスエア方式の払い落し機構は、ダイヤフラム30の変位によって導管31の弁座32を閉弁状態(図4)と開弁状態(図5)とに切り替えて、圧縮空気タンク(図示せず)へ連通するヘッダーパイプ33と導管31とを断続的に連通させ、バグフィルタの外表面に付着した紛じんを導管31に配設したパルス噴射ノズルから噴出した圧縮空気によって払い落とすようにしている。
【0005】
しかし、従来の構造ではダイヤフラム30が上方あるいは下方へ変位して導管31の弁座32に離間あるいは当接して閉弁状態から開弁状態に切り替えるようにしているので、ダイヤフラム30の弁体34が上方へ変位したとき、ヘッダーパイプ33の圧縮空気が導管31に向かって流れ込むようになるが、ダイヤフラム30の弁体34が平面であるため流れ込む際、圧縮空気が弁体34の平面に当たりそこで乱流が生じて、ヘッダーパイプ33から導管31内へ圧縮空気が流入する際にスムーズな流れにならず乱入が大きく、その部位での気流による圧力損失が増大し圧縮空気の供給量の低下を招き、そのためより大きな圧縮空気タンクが必要となり余分なコスト上昇につながってしまうといった問題があった。
【0006】
特に、ろ過面積を広く持つバグフィルタを用いた大型集塵機の場合は逆洗気流の圧縮空気をかなり増大させないと捕集粉じんの払い落しが十分に行われず短期間で圧力損失の上昇を招いてしまうという問題が見られた。これを防止しようと圧縮空気を増大して運転が行われているが、このためより多くの圧縮空気を発生するため、強大な圧縮機が必要で運転に大きなエネルギー損失が懸念されていた。
【発明の概要】

【発明が解決しょうとする課題】
【0007】
そこで、本発明は上記のような問題点を解決しょうとしたもので、まず本発明の目的は、パルス噴射ノズルから吹き出す圧縮空気の空気圧を強大なものとしなくてもバグフィルタ内側に流入する圧縮空気量の増大が図れて、バグフィルタの捕集粉じんの払い落とし効果が十分に得られるようにしたものである。
【0008】
本発明の次の目的は、ヘッダーパイプから導管内へ圧縮空気が流れ込む際、圧力損失が上昇することなくスムーズに流入できるようにしたものである。
【0009】
本発明の次の目的は、圧縮空気量を増やすことなくバグフィルタの捕集粉じんの払い落とし効果を十分に行えるようにし、省エネルギー化およびコスト低減に役立つようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の解決手段は、バルブ本体内にコンプレッサーに連通するヘッダーパイプの開口部を閉鎖するように取り付けたメインダイヤフラム組立部材と、バルブ本体とメインダイヤフラム組立部材とで形成されたメインダイヤフラム室と、バルブ本体に形成したメインダイヤフラム室に連通する溝および大気に通じる排気孔と、バルブ本体に固定したキャップと、キャップ内に形成したパイロットダイヤフラム室と、パイロットダイヤフラム室内に設けたパイロットダイヤフラム組立部材と、メインダイヤフラム室内およびパイロットダイヤフラム室内にそれぞれ装着したコイルばねと、パイロットダイヤフラム室内に装着した電磁弁と、一端に弁座を形成した導管とからなり、特にメインダイヤフラム組立部材にスリーブ形状の案内部材を一体に取り付たけたものである。
【0011】
ここでメインダイヤフラム組立部材にスリーブ形状の案内部材を一体に取り付ける方法としては、ねじ止めする方法、圧入する方法、接着する方法などが可能である。
【0012】
上記課題解決手段による作用は次の通りである。ダイヤフラムバルブより圧縮空気を吹き出す場合は、まず、電磁弁に通電すると、パイロットダイヤフラム室内の流体は電磁弁を通り大気へ流出される。したがって、パイロットダイヤフラム室内の圧力は大気圧となる。この瞬間、パイロットダイヤフラム室内の圧力はメインダイヤフラム室内の圧力より低くなりこの圧力差によりパイロットダイヤフラム組立部材が浮き上がるためメインダイヤフラム室内の流体が排気孔より大気へ流れる。このとき、メインダイヤフラム室内の圧力はヘッダーパイプの圧力より低くなり、この圧力差によりメインダイヤフラム組立部材と共にスリーブ形状の案内部材が浮き上がり、弁座を開くようになることから、圧縮空気が弁座を介して導管へ導かれることになりダイヤフラムバルブより圧縮空気を吹き出せるようになっている。
【0013】
次に、圧縮空気の吹き出しを止める場合は、電磁弁への通電を止めるとパイロットダイヤフラム室内に導通孔(ブリードホール)を通して圧縮空気が供給され、コイルばねの復元力によりパイロットダイヤフラム組立部材が降下し閉鎖される。さらにヘッダーパイプ側圧力がメインダイヤフラム室内に補給され同圧となるため、メインダイヤフラム室内の圧力とコイルばねの復元力によりメインダイヤフラム組立部材が降下して弁座を閉じることから、ダイヤフラムバルブからの圧縮空気の吹き出しは止まるようになっている。
【発明の効果】
【0014】
本発明のダイヤフラムバルブは次のような効果が得られる。
(1)圧縮空気の空気圧を強大なものとしなくてもダイヤフラムバルブからの圧縮空気を吹き出す空気量の増大が図れて、バグフィルタの捕集粉じんの払い落とし効果が十分に得られる。
(2)メインダイヤフラム組立部材にスリーブ形状の案内部材を一体に取り付たけたので、ヘッダーパイプから導管内へ圧縮空気が流れ込む際、圧力損失が上昇することなくスムーズに流入する。
(3)流入抵抗の低減などの流量特性の改善が図られるため、圧縮空気圧を低下せしめることができる。したがって、コンプレッサーの動力を減少でき省エネ効果が発揮できると共にコスト低減が計られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のダイヤフラムバルブの閉弁状態を示す概略図。
【図2】本発明のダイヤフラムバルブの開弁状態を示す概略図。
【図3】ダイヤフラムバルブを使用した集じん機の断面概略図。
【図4】従来のダイヤフラムバルブの閉弁状態を示す概略図。
【図5】従来のダイヤフラムバルブの開弁状態を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
一般に集じん機1は図3に示すように、下部ホッパー2とバグフィルタ3を備えた集じん室4とダスト払い機構を設けた清浄室5と粉じんあるいはダストを含んだ排ガスを集じん室4に導入するガス導入口6とから構成されている。
【0017】
そして、圧送または吸引によって粉じんあるいはダストを含んだ排ガスが集じん室4内に入りダストはバグフィルタ3外面に付着、堆積され、ろ過されたエアーはバグフィルタ内面を通って清浄室5に設けた排気口7より清浄空気として外気に排気される。そして、バグフィルタ3表面に付着したダストは後述するパルスジェット方式の払い落し機構により一定時間毎に払い落され、下部ホッパー2へ落される。
【0018】
パルスジェット方式の払い落し機構は、バルブ本体8とバルブ本体8を構成する導管9に配設されたパルス噴射ノズル10とから構成されている。
【0019】
次に、バルブ本体8について図1〜3を参照して説明する。
バルブ本体8はバルブケース11内にコンプレッサーに連通するヘッダーパイプ12の開口部を閉鎖するように取り付けたメインダイヤフラム組立部材13と、バルブケース11とメインダイヤフラム組立部材13とで形成するメインダイヤフラム室14と、バルブケース11に形成したメインダイヤフラム室14に連通する溝15および大気に通じる排気孔16と、バルブケース11に固定したキャップ17と、キャップ17内に形成したパイロットダイヤフラム室18と、パイロットダイヤフラム室18内に設けたパイロットダイヤフラム組立部材19と、メインダイヤフラム室14内およびパイロットダイヤフラム室18内にそれぞれ装着したコイルばね20、21と、パイロットダイヤフラム室18内に装着した電磁弁22と、一端に弁座23を形成した導管9とからなり、特にメインダイヤフラム組立部材13にスリーブ形状の案内部材24を一体に取り付たけたものである。
【0020】
そしてメインダイヤフラム組立部材13はバルブケース11とヘッダーパイプ12間に押し付けられて係止されたダイヤフラム25と、ダイヤフラム25の下部に固定した弁体26と、ダイヤフラム25の上部に固定した当て具27から構成されている。そしてバルブケース11内部と当て具27間にはコイルばね20が装着されヘッダーパイプ12の開口部をダイヤフラム25で常時閉鎖するようになっている。
【0021】
このような構造であるので、常時は集じん機1本体の清浄室5の下流側に接続した吸引フアン(図示せず)によりダストを含んだ空気はガス導入口6に導かれ、ダストがバグフィルタ3でろ過され清浄空気が清浄室5を介して排気口7より清浄空気として外気に排気される。その際、バグフィルタ3の外表面にダストが付着し、通気抵抗が所定値に到達したとき、または使用期間が一定時間経過したときに定期的に電磁弁22に通電すると、電磁弁22が作動する。このため、パイロットダイヤフラム室18内の流体は電磁弁22を通り大気へ流出される。この瞬間、パイロットダイヤフラム室18内の圧力はメインダイヤフラム室14内の圧力より低くなり、この圧力差によりパイロットダイヤフラム組立部材19が浮き上がり、メインダイヤフラム室14内の流体が排気孔16より大気へ流れる。このとき、メインダイヤフラム室14内の圧力はヘッダーパイプ12の圧力より低くなり、この圧力差によりメインダイヤフラム組立部材13と共にスリーブ形状の案内部材24が浮き上がり、弁座23を開くようになることから、圧縮空気が弁座23を介して導管9へ導かれることにより圧縮空気が吹き出される。そして吹き出された圧縮空気は導管9に配設したパルス噴射ノズル10から洗浄空気をバグフィルタ3内面に噴き出し、バグフィルタ3の外表面に付着したダストを払い落とすようになる。
【0022】
次に、バグフィルタ3のダスト払い落としが完了した時点で、電磁弁20への通電を止めるとパイロットダイヤフラム室18内に圧力が補給されると共に電磁弁22が元の位置に戻りコイルばね21が押し付けられるためパイロットダイヤフラム組立部材19が降下しパイロットダイヤフラム室18内が閉鎖される。また、ヘッダーパイプ12側圧力がメインダイヤフラム室14内に補給され同圧となるため、メインダイヤフラム室14内の圧力とコイルばね20の復元力によりメインダイヤフラム組立部材13が降下して弁座23を閉じることから、ダイヤフラムバルブ8からの圧縮空気の吹き出しは止まりダストを払い落としが終了する。
【0023】
尚、本実施例では本発明の一実施例を述べたもので、これに限定されることなく、種々変更しても何ら本発明の要旨を変更するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0024】
パルスジェット方式の払い落し機構を備えた集じん機に本発明のダイヤフラムバルブを使用することにより、圧縮空気の空気圧を強大なものとしなくてもバグフィルタ内側に流入する圧縮空気量の増大が図れて、バグフィルタの捕集紛じんの払い落とし効果が十分に得られるようにしたもので実用的はなはだ大なるものである。
【符号の説明】
【0025】
1・・・集じん機 2・・・下部ホッパー 3・・・バグフィルタ
4・・・集じん室 5・・・清浄室 6・・・ガス導入口
7・・・排気口 8・・・ダイヤフラムバルブ 9・・・導管空
10・・・パルス噴射ノズル 11・・・バルブ本体
12・・・ヘッダーパイプ 13・・・メインダイヤフラム組立部材
14・・・メインダイヤフラム室 15・・・溝 16・・・排気孔
17・・・キャップ 18・・・パイロットダイヤフラム室
19・・・パイロットダイヤフラム組立部材 20,21・・・コイルばね
22・・・電磁弁 23・・・弁座 24・・・案内部材
25・・・ダイヤフラム 26・・・弁体 27・・・当て具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンプレッサーに連通するヘッダーパイプの開口部を閉鎖するように取り付けたメインダイヤフラム組立部材と、バルブケースとメインダイヤフラム組立部材とで形成されたメインダイヤフラム室と、バルブ本体に形成したメインダイヤフラム室に連通する溝および大気に通じる排気孔と、バルブ本体に固定したキャップと、キャップ内に形成したパイロットダイヤフラム室と、パイロットダイヤフラム室内に設けたパイロットダイヤフラム組立部材と、メインダイヤフラム室内およびパイロットダイヤフラム室内にそれぞれ装着したコイルばねと、パイロットダイヤフラム室内に装着した電磁弁と、一端に弁座を形成した導管とからなり、メインダイヤフラム組立部材にスリーブ形状の案内部材を一体に取り付たけたことを特徴とするダイヤフラムバルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−247056(P2012−247056A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131615(P2011−131615)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(390040888)日本エアー・フィルター株式会社 (45)
【Fターム(参考)】