説明

ダイヤフラム三方弁及び差圧排水システム

【課題】構造が単純でしかも小型安価なダイヤフラム三方弁及び差圧排水システムを提供する。
【解決手段】大気から遮断しうる密閉性と強度を有する筐体1と、前記筐体1を作動室3及び制御室4に分離するダイヤフラム2と、前記作動室3に接続される接続管5及び排気管6とからなるダイヤフラム三方弁であって、前記作動室3には外部との開放・遮断を行う吸気弁13、並びに前記排気管6と前記作動室3とを接続する排気室21が設けられており、さらに前記制御室4から導かれる制御パイプ32と前記排気管6に接続される負圧接続管34との間に制御弁31が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用の吸引装置や燃料電池の気液分離器に使用できるダイヤフラム三方弁及び差圧排水システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外科手術においては大量の灌流水が使用され、患者の体液や血液と共に排出される汚水を吸引除去する必要がある。また、歯科や耳鼻科の治療においても水が使用されその汚水を吸引する必要がある。さらには、燃料電池においても固体高分子電解質膜に吸収されなかった水分や反応生成物である水を含んだオフガスが燃料電池に環流し固体高分子膜に付着すると燃料電池の発電効率が著しく低下するため、オフガスの気液分離を行う必要がある。
【0003】
例えば特許文献1には、患者の口腔内の唾液等をバキュームシリンジ若しくはサライバエゼクタとその吸引管を介して、吸引ポンプによって負圧にされたバキュームタンクに導くようにした医療用バキューム装置が提案されている。この技術においては、バキュームタンクからの排水管路に第1の弁体及び第2の弁体を設け、交互に開閉することにより排水を可能とすることが開示されている。しかし、この装置では吸引のための負圧源とは別に第1の弁体を駆動するための加圧空気源が必要となるため、装置が大型化し、また構成が複雑になるため価格も高くなってしまうという問題点がある。
【0004】
また、特許文献2には、手術時において汚水を自動で吸排水処理して、人手を伴わず、廉価な費用で処理できる自動吸排水装置が提案されている。この技術では、吸引室内の汚水が所定量に達すると、液面センサを作動させて制御盤にその信号を送り、真空ポンプを停止させて吸引を一旦停止する。同時に電磁開閉弁を開いて吸引室に貯留された汚水を排水室内に落下して移動させる。この技術においては汚水を排出するために一旦真空ポンプを停止させなければならない。また、吸引室と排水室との差圧がある中で電磁開閉弁を開閉するためには大きな出力が必要となる。
【0005】
さらに特許文献3には、ダイヤフラム弁を用いた差圧弁が開示されている。この技術では、ダイヤフラム弁に固定されたシャフトの動作により第1及び第2のパイロット弁を開閉して圧力を調整する機構が示されているが、解圧を目的としたものではない。
【0006】
【特許文献1】特公昭61−53060号公報
【特許文献2】特開2003−325658号公報
【特許文献3】特開2002−228029号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上述の技術の問題点に鑑みてなされたものであり、構造が単純でしかも小型安価なダイヤフラム三方弁及び差圧排水システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため本発明によるダイヤフラム三方弁では、大気から遮断しうる密閉性と強度を有する筐体と、前記筐体を作動室及び制御室に分離するダイヤフラムと、前記作動室に接続される接続管及び排気管とからなるダイヤフラム三方弁であって、前記作動室には外部との開放・遮断を行う吸気弁、並びに前記排気管と前記作動室とを接続する排気室が設けられており、さらに前記制御室から導かれる制御パイプと前記排気管に接続される負圧接続管との間に制御弁が設けられていることを特徴とする。
【0009】
前記制御弁は切替弁であり、前記制御室内圧力を前記排気管からの負圧と大気圧とに切替可能であることが望ましい。
【0010】
前記吸気弁は前記ダイヤフラムに固着されており、前記制御室が負圧にされた際に前記作動室を外部から遮断し前記作動室が負圧となる。また前記制御室が大気圧にされた際に前記作動室を外部に対して開放し、前記作動室が大気圧となるよう構成されていることが好適である。
【0011】
さらに、前記排気室は前記排気管接続部より前記作動室内に突出しており、上部に排気口を備えていることが望ましい。
【0012】
また、本発明による差圧排水システムでは、減圧時に閉鎖する排水弁Aを備えた排水口Aを有し、吸入管と負圧管とが接続された気液分離室と、前記気液分離室の前記排水口Aに隣接し、減圧時に閉鎖する排水弁Bを備えた排水口Bを有する中間室と、前記排水弁Bに隣接する排水室と、一方が前記中間室に接続され他方が前記負圧管に接続された上記のダイヤフラム三方弁とからなることを特徴とする。
【0013】
前記中間室と前記ダイヤフラム三方弁とを接続する接続管は、前記中間室の上方に接続されていることが好適である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によるダイヤフラム三方弁では、吸入のための負圧発生源による負圧と大気圧だけを使用するため、他の圧力源が必要なくその分構造が単純で製造コストを抑えることができる。また、本発明による差圧排水システムでは、ダイヤフラム三方弁の圧力分路により制御弁を開閉するため小電力とすることができ、また制御弁を小型化できるため、ランニングコストを大幅に抑制することが可能である。さらに負圧発生源を連続運転したままで吸引・排水が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【実施例】
【0015】
以下、図面に基づいて本発明の詳細について説明する。図1は本発明によるダイヤフラム三方弁の断面模式図である。このダイヤフラム三方弁は、大気から遮断しうる密閉性と強度を有する筐体1と、前記筐体1を作動室3及び制御室4に分離するダイヤフラム2と、前記作動室3に接続される接続管5及び排気管6とからなっており、作動室3には外部との開放・遮断を行う吸気弁13、並びに前記排気管6と前記作動室3とを接続する排気室21が設けられており、さらに前記制御室4から導かれる制御パイプ32と前記負圧管6から導かれる負圧接続管34との間に制御弁31が設けられている。
【0016】
図1は本発明によるダイヤフラム三方弁の停止状態である。排気管6の先にある真空ポンプ等の負圧発生源(図示してない)を停止しているため、作動室3内は吸気弁13が開放されて大気圧に保持されている。一方、ソレノイドバルブ等の制御弁31は負圧接続管34側を遮断し、大気流入口33側を開放してあるため、制御室4内も大気圧に保持されている。
【0017】
本ダイヤフラム三方弁を作動させる場合は、排気管6に接続されている負圧発生源を作動し、制御弁31を負圧接続管34側に切り換える。これにより制御室4と作動室3とはそれぞれ減圧されるが、制御室4は密閉されているのに比べて作動室3は吸気弁13が開放されているため、作動室3と制御室4との間に差圧が生じる。この差圧によりダイヤフラム2は、図1の上方すなわち制御室4の容量を減少させる方向に移動する。この動作により、ダイヤフラム2に固着されている吸気弁子12も上方に移動し、吸気弁13が閉鎖される。それに伴って作動室3内は減圧され、接続管5に連結された装置に負圧が生じる。この状態を示すのが図2である。このとき接続管5に連結された装置は密閉されていないため、作動室3と制御室4との差圧は残存し、吸気弁13の閉鎖状態も保持される。
【0018】
万一接続管5から吸入された流体に水等の液体が混入していても、作動室3内に蓄積し、排気口22は排気室21の上部に設けられているため、液体が排気管6に混入することはない。制御弁31を大気流入口33側に切り換えると、制御室4の圧力が上昇してダイヤフラム2は下方へ押し下げられる。最終的には図3に示したように、ダイヤフラム2の移動により排気口22が閉鎖されて減圧が停止し、また吸気弁13が開放して大気が流入し作動室3内及び接続管5に連結した装置の圧力を大気圧に上昇させる。
【0019】
図4は本発明による差圧排水システムの断面模式図である。この差圧排水システムは、減圧時に閉鎖する排水弁A106を備えた排水口A105を有し、吸入管103と負圧管104とが接続された気液分離室101と、前記気液分離室101の前記排水口A105に隣接し、減圧時に閉鎖する排水弁B108を備えた排水口B107を有する中間室102と、排水弁B108に隣接する排水室109と、一方が前記中間室102に接続され他方が前記負圧管104に接続されたダイヤフラム三方弁121とから構成される。
【0020】
図4は上記差圧排水システムの停止状態である。負圧管104の先にある真空ポンプ等の負圧発生源(図示してない)を停止しているため、気液分離室101内は排水弁A106が開放されて大気圧に保持されている。一方、ダイヤフラム三方弁121においても、ソレノイドバルブ等の制御弁31は負圧接続管34側を遮断し、大気流入口33側を開放してあり、また前述のように負圧発生源も停止しているため制御室4と作動室3の圧力が同じく大気圧で、従ってこのダイヤフラム三方弁121に接続されている中間室102内も大気圧に保持されている。
【0021】
本差圧排水システムを作動させる場合は、負圧管6に接続されている負圧発生源を始動する。これにより気液分離室101内が減圧されて排水弁A106が閉じて排水口A105を閉鎖するため、吸入管103を通して対象流体が吸入される。この状態を示すのが図5である。この状態において、対象流体は気液分離室101内に蓄積し、気体のみが負圧管104を通して排出される。
【0022】
蓄積された対象流体を排出するためにはダイヤフラム三方弁121の制御弁31を負圧接続管34側に切り換える。これにより制御室4と作動室3とはそれぞれ減圧されるが、制御室4は密閉されているのに比べて作動室3は吸気弁13が開放されているため、作動室3と制御室4との間に差圧が生じる。この差圧によりダイヤフラム2は、図1の上方すなわち制御室4の容量を減少させる方向に移動する。この動作により、ダイヤフラム2に固定されている吸気弁子12も上方に移動し、吸気弁13が閉鎖される。それに伴って作動室3内は減圧され接続管5に連結された中間室102に負圧が生じる。従って、中間室102内が減圧され排水弁B108が閉じて排水口B107を閉鎖する。この状態では中間室102内は対象流体が吸入される気液分離室101よりも圧力が低くなる。それに伴い排水弁A106が開放され、気液分離室101内の流体は中間室102内へ移動する。この状態を示すのが図6である。
【0023】
続いて、制御弁31を大気流入口33側に切り換えると、制御室4の圧力が上昇してダイヤフラム2は下方へ押し下げられる。最終的には図3に示したように、ダイヤフラム2の移動により排気口22が閉鎖されて減圧が停止し、また吸気弁13が開放して大気が流入し作動室3内及び接続管5に連結した中間室102の圧力を大気圧に上昇させる。大気が中間室102内に流入して圧力が上がると、排水弁A106が閉じて排水口A105を閉鎖する。一方中間室102と排水室109の差圧がなくなるため、排水弁B108は自重により開放される。これにより中間室102内の流体は排水口B107を通して排水室109に排出される。この状態を示すのが図7である。
【0024】
上述したように、本発明による差圧排水ポンプでは、吸引回路が流体により満たされていても三方弁の作動により気液分離室及び中間室を解圧して大気圧に戻すことができるため、負圧発生源を運転したまま排水が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0025】
上述したように、本発明によるダイヤフラム三方弁では吸引のための負圧と大気圧のみを使用してダイヤフラムを作動させるため、構造が単純で安価なダイヤフラム三方弁を提供することができる。また、本発明による差圧排水システムではダイヤフラム駆動用の制御弁として容量の小さなものが利用できるため、小型で安価な排水システムを実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明によるダイヤフラム三方弁の構成を示す断面模式図である。
【図2】図1に示したダイヤフラム三方弁の吸引時の状態を示す図である。
【図3】図1に示したダイヤフラム三方弁の排出時の状態を示す図である。
【図4】本発明による差圧排水システムの構成を示す断面模式図である。
【図5】図4に示した差圧排水システムの動作時の状態を示す図である。
【図6】図4に示した差圧排水システムの流体移動時の状態を示す図である。
【図7】図4に示した差圧排水システムの排出時の状態を示す図である。
【符号の説明】
【0027】
1 筐体
2 ダイヤフラム
3 作動室
4 制御室
5 接続管
6 排気管
11 大気導入口
12 吸気弁子
13 吸気弁
21 排気室
22 排気口
31 制御弁
32 制御パイプ
33 大気流入口
34 負圧接続管
101 気液分離室
102 中間室
103 吸入管
104 負圧管
105 排水口A
106 排水弁A
107 排水口B
108 排水弁B
109 排水室
110 排水管
121 ダイヤフラム三方弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気から遮断しうる密閉性と強度を有する筐体と、前記筐体を作動室及び制御室に分離するダイヤフラムと、前記作動室に接続される接続管及び排気管とからなるダイヤフラム三方弁であって、前記作動室には外部との開放・遮断を行う吸気弁、並びに前記排気管と前記作動室とを接続する排気室が設けられており、さらに前記制御室から導かれる制御パイプと前記排気管に接続される負圧接続管との間に制御弁が設けられていることを特徴とするダイヤフラム三方弁。
【請求項2】
前記制御弁は切替弁であり、前記制御室内圧力を前記排気管からの負圧と大気圧とに切替可能であることを特徴とする請求項1記載のダイヤフラム三方弁。
【請求項3】
前記吸気弁は前記ダイヤフラムに固着されており、前記制御室が負圧にされた際に前記作動室を外部から遮断し前記作動室が負圧となる。また前記制御室が大気圧にされた際に前記作動室を外部に対して開放し、前記作動室が大気圧となるよう構成されていることを特徴とする請求項1または2記載のダイヤフラム三方弁。
【請求項4】
前記排気室は前記排気管接続部より前記作動室内に突出しており、上部に排気口を備えていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のダイヤフラム三方弁。
【請求項5】
減圧時に閉鎖する排水弁Aを備えた排水口Aを有し、吸入管と負圧管とが接続された気液分離室と、前記気液分離室の前記排水口Aに隣接し、減圧時に閉鎖する排水弁Bを備えた排水口Bを有する中間室と、前記排水弁Bに隣接する排水室と、一方が前記中間室に接続され他方が前記負圧管に接続された請求項1乃至4のいずれかに記載のダイヤフラム三方弁とからなることを特徴とする差圧排水システム。
【請求項6】
前記中間室と前記ダイヤフラム三方弁とを接続する接続管は、前記中間室の上方に接続されていることを特徴とする請求項5記載の差圧排水システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−106661(P2011−106661A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280979(P2009−280979)
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(509340584)インディ株式会社 (1)
【Fターム(参考)】