説明

ダイヤモンド材料研磨用の研磨盤及びダイヤモンド材料の研磨方法

【課題】ダイヤモンドを高速かつ高い面精度で研磨することができるダイヤモンド用研磨盤を提供すること。
【解決手段】ダイヤモンドの研磨に用いられる研磨盤であって、ダイヤモンドと当接する研磨盤の研磨面が、酸化物を50体積%以上含み、押し込み硬度が500Kgf/cm以上である材料からなることを特徴とするダイヤモンド材料研磨用の研磨盤であり、酸化物としてはSi,Al,Ti,Cr及び、Zrからなる群より選ばれた1つ以上の元素の酸化物を用いることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイヤモンド材料の加工技術に関し、ダイヤモンド材料を応用した工具・半導体素子及び光学部品の研磨面を高速で得るための研磨盤及びダイヤモンド材料の研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイヤモンドは物質中で最も高い硬度を持つ上、紫外から中赤外に及ぶ広波長域にわたって光学材料として使用できるうえ、耐腐食性、耐熱性、電気的特性や熱的特性に優れにもすぐれることから、工具、光学材料、電子材料として幅広く実用化が進められている。
これらの用途に適用するには、ダイヤモンドを工具の刃先や光学窓・レンズの形状に加工する必要がある。
【0003】
これらの用途に実用化が進められているダイヤモンド材料としては、天然及び超高圧・高温下で合成される単結晶ダイヤモンドと、人工的に合成される多結晶ダイヤモンドとがある。一部では、天然に採取される極めて結晶性の悪いボーツと呼ばれる多結晶ダイヤモンドも利用されるが、極めて少量に過ぎない。人工合成のダイヤモンドには、ダイヤモンド砥粒と金属若しくはセラミックス結合材を超高圧高温下に保持して焼結させて得られる焼結ダイヤモンド、バインダを一切含まず、炭素同素体原料より直接変換合成により得られる多結晶ダイヤモンド、気相合成法により成長させて得られる多結晶ダイヤモンド及び、単結晶ダイヤモンドなどがある。以下、本発明においては、焼結ダイヤモンド、多結晶ダイヤモンド及び単結晶ダイヤモンドを合わせてダイヤモンド材料という。
【0004】
ダイヤモンドの研磨には、鋳鉄板にダイヤモンドの遊離砥粒を埋め込み、この鋳鉄板を高速回転させて、ダイヤモンドを当接せしめ、研磨するスカイフ研磨という手法が、従来から用いられている。
スカイフ研磨では、研磨速度が盤面の状態に大きく依存するが、オリーブオイルなどの潤滑油剤でダイヤモンド砥粒を鋳鉄板に埋め込んで研磨盤面を作成するため、研磨盤面の管理は難度が高く、習熟を要する技術である。スカイフ研磨の他に樹脂やセラミックスまたは金属の結合材にダイヤモンド砥粒を均一に分散させて焼結したダイヤモンド砥石を用いて研磨する場合がある。通常これらの砥石に含まれるダイヤモンド砥粒は25体積%程度であり、基体となる樹脂やセラミックス及び、金属はダイヤモンドに比べはるかに柔らかいため、研磨の進行に伴って盤面が変形してしまう。盤面の変形によって基体中に分散しているダイヤモンド砥粒が脱落し、ダイヤモンドに研磨傷が付いてしまい、スカイフ研磨と同様の問題がある。
【0005】
単結晶ダイヤモンドは機械的特性の結晶異方性が強く、極めて摩耗量が少ない結晶方位と、摩耗しやすい結晶面方位がある。従来単結晶ダイヤモンドはスカイフ研磨や砥石によって摩耗しやすい方位に特化して、形状素加工を行っている。このため、最も摩耗が進行しないことで知られる(111)面はその難加工性がネックとなっており、ダイヤモンドの(111)面を、工具の摩耗方向に適用してダイヤモンドの材質性能を最大に引き出すという利用方法は不可能であった。
【0006】
これに対し、あらゆる面方位が表れる多結晶ダイヤは、最も摩耗が進行しない面方位の粒子も多数が加工面に現れるため加工が困難であり、焼結ダイヤモンド、CVD多結晶ダイヤモンド、超高圧高温下で直接変換法により得られる多結晶ダイヤモンドは、ダイヤモンド砥粒を用いて長時間をかけて共削りせざるをえない。焼結ダイヤモンドは、ダイヤモンドと金属及びセラミックス結合材の複合材料であるため、研磨による摩擦熱で結合材とダイヤモンドの熱膨張差より微視的にクラックが発生し、加工を進行させることができるが、ダイヤモンド単層からなるCVD法及び超高圧高温下で直接変換法により得られる多結晶ダイヤモンドは、非常に加工が困難で長い加工時間を要し、加工コストが高くなる。また、これらの研磨方法で無理に研削圧を加えて加工速度を上げようとすると、ダイヤモンド砥粒による機械的なダメージを強く与えてしまい、結晶に加工歪や微細クラックを生じ、製品性能を損なってしまうといった問題があった。
【0007】
これらを解決するために、化学的反応摩耗のみによる研磨方法として、金属との反応摩耗(非特許文献1)や、紫外線を照射することで、表面酸化を促進させながら研磨を進める方法(特許文献1)などが提案されたが、金属との化学的反応摩耗では、研磨面の粗さが大きすぎる上、研磨面の硬度を損なうなどの問題があり、また、紫外線照射による表面反応促進法では、紫外線発生装置や紫外線の保護カバー、オゾンやCOなど高輝度紫外線により雰囲気に発生する有害ガスの警報器など、作業者の安全を確保するための付帯設備が必要となり、工業的な利用には課題があった。
【0008】
一方、ダイヤモンド砥粒に金属メッキを施し、金属基体にダイヤモンド砥粒を固着させた電着砥石で、光学ガラスを研削する際にダイヤモンド電着砥石が極端に摩耗することが知られており、光学ガラスをダイヤモンド電着砥石のツルーアとして利用する試みがなされている(非特許文献2)。しかしながら、粒径数十μmの砥粒の先端数μmを平坦にするために利用されているに過ぎず、砥粒を加工した面の平坦性や平滑性は不十分であった。製品の形状加工に実用化するためには、加工面の平坦性を向上させる必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−253244号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】日本機械学会論文集(C編),76巻764号(2010−4)
【非特許文献2】機械と工具 2005年6月(81−87)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、従来の研磨方法よりも高い研磨速度で研磨を行うことができ、従来研磨が困難であった耐摩耗性の高い面方位を含み、研磨が極めて困難な多結晶ダイヤモンドの研磨についても高速の研磨でありながら、加工面の平坦性を保った加工を行うことを可能とするダイヤモンド用の研磨盤及びこれを用いた研磨方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を進めた結果、研磨盤として、ダイヤモンドと当接する研磨盤の研磨面が、酸化物セラミックスを50%以上含み、押し込み硬度が500Kgf/cm以上である研磨盤を用いることによって上記課題を解決することができることを見いだして本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下に記載する通りのダイヤモンド材料研磨用の研磨盤及びこれを用いた研磨方法に係るものである。
【0013】
(1)ダイヤモンドの研磨に用いられる研磨盤であって、ダイヤモンドと当接する研磨盤の研磨面が、酸化物を50体積%以上含み、押し込み硬度が500Kgf/cm以上である材料からなることを特徴とするダイヤモンド材料研磨用の研磨盤。
(2)前記酸化物がSi,Al,Ti,Cr及び、Zrからなる群より選ばれた1つ以上の元素の酸化物であることを特徴とする(1)に記載のダイヤモンド材料研磨用の研磨盤。
(3)前記研磨面の軟化点が1500℃以上であることを特徴とする(1)または(2)に記載のダイヤモンド材料研磨用の研磨盤。
(4)
前記研磨面の線膨張率が1.0×10−6以下であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のダイヤモンド材料研磨用の研磨盤。
(5)前記研磨面の表面粗さ(Ra)が0.1μm以上10μm以下であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のダイヤモンド材料研磨用の研磨盤。
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載のダイヤモンド材料研磨用の研磨盤に、研磨すべきダイヤモンドを当接せしめ、両者を相対的に摺動させてダイヤモンドの表面を研磨することを特徴とするダイヤモンド材料の研磨方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るダイヤモンド材料研磨用の研磨盤を用いてダイヤモンドを研磨すると、従来の研磨方法よりも高い研磨速度で研磨を行うことができ、従来研磨が困難であった耐摩耗性の高い面方位を含み、研磨が極めて困難な多結晶ダイヤモンドの研磨も従来になく高速の研磨でありながら、加工面の平坦性を保った加工を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の研磨方法に用いる研磨盤には、酸化物セラミックスが50体積%以上含まれる。研磨盤の押し込み硬度は500Kgf/cm以上である。
この体積含有率は、研磨盤を解砕してICP(誘導結合高周波プラズマ分光分析)による定量分析の他、SEMやTEMによる断面観察により測定できる。
押し込み硬度が500Kgf/cm未満であると、研磨中に研磨盤の盤面の変形がすこぶる大きくなり、ダイヤモンドを望む形状に加工できなくなる可能性がある。
【0016】
本発明の研磨盤を構成する酸化物は、Si,Al,Ti,Cr及び、Zrからなる群より選ばれる1つ以上の元素の酸化物からなることが好ましい。これらの酸化物を含む酸化物セラミックスは、炭素による還元反応を受けやすく、ダイヤモンドの化学的反応摩耗を促進させる。これらの酸化物は、研削に関与する研磨面のみに存在していれば良い。酸化物が研磨盤の内部に含まれていない場合は、研磨によって新たに発生した面に同様の酸化物が生じるような化合物等で研磨盤を構成すれば、上記の効果を持続させることができる。たとえば、SiやSiで研磨盤を構成した場合、研磨盤の表面には酸化膜であるSiOが形成されており、これらを研磨盤として用いた場合にも同様の効果が得られる。
また、酸化物以外の成分としてはcBNや、β―Siなどの硬質材料を含んでいても良く、cBNを用いることが特に好ましい。
【0017】
本発明の研磨盤の軟化点は1500℃以上であることが望ましい。軟化点が1500℃未満であると、研磨中に研磨盤の盤面の変形が進み、望む形状にダイヤモンドを加工することができなくなる可能性がある。
【0018】
本発明の研磨盤の線膨張率は1.0×10−6以下であることが望ましい。
前記研磨盤の線膨張率が1.0×10−6を超えると、研磨中に研磨盤の盤面の変形が進み、望む形状にダイヤモンドを加工することができなくなる可能性がある。
【0019】
本発明の研磨盤の面粗さ(Ra)は0.1μm以上10μm以下であることが望ましい。
Raが0.1μm未満であると、研削抵抗が低すぎて十分な研磨速度が得られない可能性があり、10μmを超える場合には研削抵抗が高くなりすぎて、研磨盤を破損する可能性がある。
【0020】
本発明において研磨盤の材料として酸化物を含む材料を用いた理由について以下述べる。
ダイヤモンドの加工への反応摩耗の実用化は様々な方法が提案されてきたが、従来の方法は、例えば鉄との反応摩耗を利用した加工方法のように、摩耗速度が速くても摩耗量を制御して、実用化可能なレベルの形状精度に加工することが困難であったり、非常に高い面精度で形状を制御することができても、加工時間がかかりコスト高となってしまい、商業的に実用化ができないものが殆どであった。
【0021】
これに対し、酸化物セラミックスを研磨盤として用いることで、研磨盤表面でダイヤモンドを摺動させた際に発生する摩擦熱により、ダイヤモンド表面の炭素により酸化物の還元反応が進み、ダイヤモンドの加工が進行する。摺動面の温度を高くすると、反応が促進される。これにより、高い研磨速度と高い面精度とを両立することができる。
なお、摺動面の温度を高くする方法としては、摺動部での線速度を速くして摩擦熱の発生量を増やす方法や、スポット集光可能な発熱灯やパルス発振レーザにより外部加熱を行なう方法を用いることができる。
【0022】
本発明の研磨方法は、研磨盤として本発明の研磨盤を使用し、この研磨盤に研磨すべきダイヤモンドを当接せしめ、酸素を含む雰囲気中で両者を相対的に摺動させてダイヤモンドの表面を研磨するものである。
ダイヤモンド研磨中に研磨盤とダイヤモンド材料との摺動表面は、局所的に高温になっており、雰囲気中に酸素を含むと雰囲気中の酸素によって、高温になったダイヤモンド表面の酸化が促進され、研磨を進行させることができる。
酸素分圧が高いと研磨速度を向上させるには好ましいが、大気中での摺動で十分な効果が得られる。
研磨のための具体的な設備としては、研磨盤を保持して回転ブレ無く高速に回転させる機構と、被加工体であるダイヤモンド材料を保持し、高速回転している研磨盤に一定圧力で当接せしめる機構と、研磨盤の径方向に被加工体を搖動させる機構とを有する設備を用いる。
【実施例】
【0023】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を詳述する。これらの実施例は例示であって、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではなく、本発明の範囲は特許請求の範囲の範囲によって示され、特許請求の範囲の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0024】
<研磨用試料のダイヤモンドの作製>
高純度グラファイトを原料とし、超高圧・高温発生装置を用いて15GPa−2200℃で高圧・高温処理して、バインダを一切含まず、組織粒径がナノメートルオーダーの等方性多結晶ダイヤモンドを合成した。このナノ多結晶ダイヤモンド(NPD:Nano-Polycrystalline Diamond)から、レーザ加工により、5mm□×2mmtの板材を切り出して、研磨用試料を作製した。
【0025】
<研磨盤の作製>
以下の実施例1〜8及び比較例1、2においては、得られた酸化物を含有する材料をφ10〜50mm×3mmtに成形し、平坦度・面粗さを調整して研磨盤を作製した。
この研磨盤を先端がφ50mmで、クランプ部分がφ30mm×60mmの逆T字型金属製円筒ホルダの先端に接合し、研削機の砥石軸にクランプできるようにした。研磨盤の盤面は、クランプ軸に対する垂直度1μm以下かつ、平面度1μm以下に固定砥粒及び、遊離砥粒による研削加工により整えた。
<研磨試験>
研磨試料のクランプ部は下台にエアシリンダーによる研削荷重制御機構を設け、研磨中の研磨盤への試料の押しつけ荷重が一定となるように制御した。
研磨盤は3000rpmで回転させ、試料は200gfの一定荷重で5mm□の面をそれぞれの研磨盤で約10分間研磨した。
【0026】
<評価方法>
(研磨速度)
研磨後の試料について、摩耗量(板厚の減少量)を試料厚みの測定により求めた。
その結果を表1に、後述する比較例3に示す汎用されている焼結ダイヤモンドを用いた場合の摩耗量を基準値(=1)とした場合の相対比較値で示した。この値は研磨速度の相対比較値を示すものである。
【0027】
(表面粗さRa)
作製した研磨盤について、表面粗さ(Ra)を原子間力顕微鏡(AFM:SII社製 Nano Navi II )により測定した。
【0028】
(研磨面表面粗さRa)
研磨後の試料について、表面粗さ(Ra)を原子間力顕微鏡(AFM:SII社製 Nano Navi II )により測定した。
【0029】
(研磨面平坦度)
研磨後の試料の表面平坦度を表面粗さ計を用いた平坦度測定方法により求めた。
(軟化点)
JIS R 3103−1:2001に規定される方法により測定した。
【0030】
[実施例1]
アルミナ原料粉末にAlB粉末及び、TiコーティングしたcBN砥粒を所定の比率に秤量し、メタノールを分散媒としてアルミナ製ボールとポットを用いてボールミルを用いて1時間混合を行った後に、真空エバポレーターを用いてメタノールを除去して、100℃で乾燥させ、150メッシュのふるいを通して混合粉末を得た。その後、この混合粉末を超硬カプセルに充填して5GPa−1400℃で超高圧高温処理を行うことにより、酸化物を80体積%含有する焼結体を得た。得られた焼結体は研削後、砥粒サイズ2−4μmのダイヤモンドでラッピングを行い、所定の面粗さを持つ研磨盤とした。
【0031】
[実施例2]
引上げ法によって作成されたサファイア単結晶体を研磨盤として使用した。引上げ法は、イリジウムるつぼに高純度アルミナ原料を所定量チャージして、融点である2,040℃以上に加熱して融液状態にし、所定方位の結晶面を有するサファイア単結晶の種をゆっくり下げて融液に浸漬し、数mm/hrの速度で引き上げ、1インチの直径の単結晶に成長させるものである。引き上げ後に、ゆっくり温度を室温まで下げて単結晶体を冷やし、さらに結晶に残っている熱歪を低減するためにアニール処理を行った。得られた単結晶体は研削後、砥粒サイズ4−6μmcBN砥粒でラッピングを行い、所定の面粗さを持つ研磨盤とした。
【0032】
[実施例3]
アルミナ原料粉末を150メッシュのふるいを通して造粒粉末を得た。その後、この粉末は、カーボン型に充填し、通電加熱焼結法にて1700℃で焼結した。焼結条件は酸素雰囲気(0.1MPa)、プレス圧力は30MPaとした。得られた焼結体は研削後、砥粒サイズ4−6μmcBN砥粒でラッピングを行い、所定の面粗さを持つ研磨盤とした。
【0033】
[実施例4]
アルミナ原料粉末にTiO粉末を所定の比率に秤量し、メタノールを分散媒としてアルミナ製ボールとポットを用いてボールミルを用いて1時間混合を行った後に、真空エバポレーターを用いてメタノールを除去して、100℃で乾燥させ、150メッシュのふるいを通して混合粉末を得た。その後、この混合粉末は、カーボン型に充填し、通電加熱焼結法にて1700℃で焼結した。焼結条件は酸素雰囲気(0.1MPa)、プレス圧力は30MPaとした。得られた焼結体は研削後、砥粒サイズ4−6μmcBN砥粒でラッピングを行い、所定の面粗さを持つ研磨盤とした。
【0034】
[実施例5]
アルミナ原料粉末にZrO粉末を所定の比率に秤量し、メタノールを分散媒としてアルミナ製ボールとポットを用いてボールミルを用いて1時間混合を行った後に、真空エバポレーターを用いてメタノールを除去して、100℃で乾燥させ、150メッシュのふるいを通して混合粉末を得た。その後、この混合粉末は、カーボン型に充填し、通電加熱焼結法にて1600℃で焼結した。焼結条件は酸素雰囲気(0.1MPa)、プレス圧力は30MPaとした。得られた焼結体は研削後、砥粒サイズ4−6μmcBN砥粒でラッピングを行い、所定の面粗さを持つ研磨盤とした。
【0035】
[実施例6〜8]
直接法によって得られた石英母材を、カーボン型に充填し1800℃で成形した。成形条件は酸素雰囲気で0.05MPa。得られた合成石英体は、ラッピングにより所定の形状に成形した後、砥粒サイズ4−6μmcBN砥粒でラッピングを行い、所定の面粗さを持つ研磨盤とした。
【0036】
[比較例1]
原料粉末としてソーダガラス(NaaO−CaO−SiO)を用いた以外は実施例1と同様にして研磨盤を作製した。
得られた研磨盤を用いて実施例1と同様にして研磨試験、評価を行った。
【0037】
[比較例2]
アルミナ原料粉末にAlB粉末及び、TiコーティングしたcBN砥粒を所定の比率に秤量し、メタノールを分散媒としてアルミナ製ボールとポットを用いてボールミルを用いて1時間混合を行った後に、真空エバポレーターを用いてメタノールを除去して、100℃で乾燥させ、150メッシュのふるいを通して混合粉末を得た。その後、この混合粉末を超硬カプセルに充填して5GPa−1400℃で超高圧高温処理を行うことにより、酸化物を20体積%を含有する焼結体を得た。得られた焼結体は研削後、砥粒サイズ2−4μmのダイヤモンドでラッピングを行い、所定の面粗さを持つ研磨盤とした。
得られた研磨盤を用いて実施例1と同様にして研磨試験、評価を行った。
【0038】
[比較例3]
研磨盤としてスカイフ研磨を行なうための鋳鉄製の研磨盤を用いた。
研磨材としては0.5〜2μmのダイヤモンド粒子を用いた。
また、研磨盤としてφ300mmのものを用い、2000rpmで回転させて研磨したことを除いては実施例1と同様にして研磨試験、評価を行った。
【0039】
[比較例4]
研磨盤としてメタルボンド砥石を用いた。
メタルボンド砥石は#3000−集中度125のものを用いた。
また、研磨盤としてφ300mmのものを用い、2000rpmで回転させて研磨したことを除いては実施例1と同様にして研磨試験、評価を行った。
評価結果を表1に示した。
【0040】
【表1】

【0041】
上記表1に示された結果から、本発明の研磨方法は従来の研磨方法と比較して、非常に高速であり、かつ、従来方法による研磨面と同等の平坦度で研磨できることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイヤモンドの研磨に用いられる研磨盤であって、ダイヤモンドと当接する研磨盤の研磨面が、酸化物を50体積%以上含み、押し込み硬度が500Kgf/cm以上である材料からなることを特徴とするダイヤモンド材料研磨用の研磨盤。
【請求項2】
前記酸化物がSi,Al,Ti,Cr及び、Zrからなる群より選ばれた1つ以上の元素の酸化物であることを特徴とする請求項1に記載のダイヤモンド材料研磨用の研磨盤。
【請求項3】
前記研磨面の軟化点が1500℃以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のダイヤモンド材料研磨用の研磨盤。
【請求項4】
前記研磨面の線膨張率が1.0×10−6以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のダイヤモンド材料研磨用の研磨盤。
【請求項5】
前記研磨面の表面粗さ(Ra)が0.1μm以上10μm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のダイヤモンド材料研磨用の研磨盤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のダイヤモンド材料研磨用の研磨盤に、研磨すべきダイヤモンドを当接せしめ、両者を相対的に摺動させてダイヤモンドの表面を研磨することを特徴とするダイヤモンド材料の研磨方法。

【公開番号】特開2013−52488(P2013−52488A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193710(P2011−193710)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】