説明

ダンパ機構、およびこれを備えた画像処理装置

【課題】制動手段の弾性力が変化しても本体ユニットの回動力を減衰させる減衰力の変化を抑制し、予め設定された減衰力を得ることができるダンパ機構、および、これを備えた画像処理装置を提供する。
【解決手段】ダンパ機構80は、それぞれの背面側で互いに軸支された上部ユニット40および本体部50との間に介装され、アーム81と、摩擦部材86、ガイド曲面82C、ばね83を備えている。アーム81は、上部ユニット40と本体部50の回動に伴ってL1‐L3面内を所定の方向へ回動する。摩擦部材86、ガイド曲面82Cは、アーム81を所定の方向と異なる狭持方向に狭持する。ばね83は、摩擦部材86およびガイド曲面82Cがアーム81を狭持する狭持力を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、画像処理装置等の第1本体および第2本体からなるクラムシェル型の装置に適用されるダンパ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
複合機等の画像処理装置では、それぞれの一端側をヒンジ等を介して互いに揺動自在に支持された第1本体と第2本体とから構成されたものがある。
【0003】
このような画像処理装置では、第1本体には、例えば、用紙を搬送する搬送機構を含む画像形成部が設けられている。一方、第1本体の上方に載置された第2本体には、例えば、原稿の画像を読み取る原稿読取部が設けられている。画像形成部は、原稿読取部が原稿から読み取った画像情報に基づいて用紙に画像を形成する。用紙のジャム処理時か画像形成部に対するメンテナンス時には第1本体に対して第2本体を揺動させ第1本体の上面を開放する。第1本体および第2本体の間にはダンパ機構が設けられており、開閉時の回動力を減衰させ第2本体の回動速度を低減させている。
【0004】
従来のダンパ機構として、第1扉に回動可能に支持されたブレーキレバーに係合するボスが第2扉の開閉時に異なるブレーキレバーの通路を通過することで、第2扉が閉じる時だけ扉に一定の減衰力を作用させるものもある(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平10−26857号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に示すダンパ機構では、第2扉が閉じるときにボスをブレーキレバーの通路に当接させながら移動させる。ボスはブレーキレバーの通路を弾性変形させながら移動し、第2扉の回動力を減衰させる。このため、ブレーキレバーの弾性力が経年変化すると、第2本体が閉じるときに第2本体に作用する減衰力が変化し予め設定された減衰力が得られなくなるという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、制動手段の弾性力が変化しても本体ユニットの回動力を減衰させる減衰力の変化を抑制し、予め設定された減衰力を得ることができるダンパ機構、および、これを備えた画像処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明のダンパ機構は、それぞれの一端側で互いに所定の揺動面内で揺動自在に支持された第1本体および第2本体の間に介装されるダンパ機構であり、変位部材と、制動手段と、付勢部材とを備えている。変位部材は、第1本体および第2本体の揺動に伴って揺動面内における所定の方向に回動する。制動手段は、変位部材を所定の方向と異なる狭持方向に沿って狭持する。付勢部材は、制動手段の狭持力を生成する。
【0008】
この構成では、変位部材を狭持する制動手段の狭持力は付勢部材によって生成される。このため、制動手段の弾性力が変化しても変位部材に作用する狭持力が変化するのを抑制することができる。
【0009】
この構成において、変位部材は、第1の端部を第1本体または第2本体に回動自在に軸支されるものとしても良い。これにより、第1本体および第2本体の揺動に伴って、変位部材をスムーズに回動させることができる。
【0010】
また、制動手段は第1本体または第2本体に狭持方向に沿って移動自在に支持された制動ローラ部材と、変位部材を挟んで制動ローラ部材に対向する位置に支持され所定の方向に沿って変位部材を案内するガイド部材とから成り、付勢部材は制動ローラ部材をガイド部材へ向け且つ付勢方向に沿って付勢するものとしても良い。これにより、変位部材の回動力を減衰させつつ変位部材を所定の方向に沿って回動させることができる。
【0011】
なお、第1本体または第2本体における制動ローラ部材とガイド部材との間に配置され、揺動面の法線方向に突出する突出部をさらに有し、変位部材にはその長手方向に沿って突出部と係合する長溝が設けられ、長溝の変位部材の第2の端部側の端部には突出部を離脱可能に係止する係止部が形成されるものとしても良い。これにより、第2本体を第1本体と離間する方向へ揺動したときに、係止部を突出部に係止させることができる。
【0012】
さらに、長溝には長手方向の中間位置に突出部が通過するときに突出部と摺接する狭窄部が設けられるものとしても良い。これにより、狭窄部を通過するときに突出部が狭窄部と摺接し、第1本体および第2本体の揺動動作にクリック感をもたせることができる。
【0013】
なお、少なくとも制動ローラ部材とガイド部材と付勢部材とを保持し、第1本体または第2本体に支持される保持ユニットをさらに備えるものとしても良い。これにより、制動ローラ部材とガイド部材と付勢部材とを一体に保持することができる。
【0014】
さらに、保持ユニットには付勢方向に沿って第1係合溝が形成されており、保持ユニットは制動ローラ部材を軸支し且つ第1係合溝に移動可能に係合する保持部材をさらに有し、付勢部材は保持部材とともに制動ローラ部材を付勢するものとしても良い。これにより、制動ローラ部材を第1係合溝に沿って付勢することができる。
【0015】
なお、第1係合溝の変位部材に近接する側の端部に接続された第2係合溝であって第2本体側または第1本体側へ向かって変位部材から除々に離間する第2係合溝が形成されるものとしても良い。これにより、第2本体を第1本体と離間する方向へ揺動するときに、変位部材を付勢する制動ローラ部材が除々に変位部材と離間し制動ローラ部材を介して変位部材に作用する減衰力を低減させることができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、制動手段の弾性力が経時変化しても、変位部材に作用する減衰力の変化を抑制し、予め設定された減衰力を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、この発明を実施するための最良の形態について、図面に基づいて説明する。
【0018】
図1は、この発明の実施形態に係る複合機(画像処理装置)100の構成を示す外観図である。複合機100は、ファクシミリ機能、スキャナ機能、複写機能等を有している。
【0019】
複合機100は、用紙に画像形成処理を行なう本体部(第1本体)50、原稿の画像データを読み取る上部ユニット(第2本体)40、本体部50の上面に対して上部ユニット40を開閉自在に支持するダンパ機構80を備えている。ここで、複合機100の前後方向をL1、幅方向をL2、高さ方向をL3として表記する。
【0020】
本体部50は、幅方向L2に平行な方向へ移動しつつ用紙に画像形成処理を行なう画像形成部60、画像形成部60へ用紙を給紙するとともに画像形成処理を行なった用紙を排紙トレイへ排紙する給排紙部等を備えている。複合機100の前面側には、筐体の一部を成す回動自在なカバー71が取り付けられている。カバー71は、複合機100の前面側へ回動した状態で、上記排紙トレイとして機能する。なお、図1では、画像形成部60は1点鎖線で示している。
【0021】
上部ユニット40は、操作部10、表示部20、原稿読取部30を備えている。上部ユニット40は、背面側の両端部に設けられた基端部40Aを介して揺動自在に本体部50に取り付けられている。このため、上部ユニット40は、図1に示す本体部50に載置された閉位置と、上部ユニット40の開放端側(すなわち、前面側)が本体部50から上方に離間した開位置と、の間に回動する。給排紙時に紙詰まりが発生した場合には、上部ユニット40を開位置に保持して詰まった用紙を取り除くことができる。また、画像形成部60のメンテナンスも行なうことができる。原稿読取部30は、読み取った画像データを画像形成部60へ送信し、画像形成部60は受信した画像データに基づいて画像形成処理を行なう。
【0022】
操作部10は、上部ユニット40の原稿カバー32に隣接する右上面に配置され、複写機能などの各種機能の選択、複写枚数の指定やファクシミリデータの送信先の指定等を受け付ける各種の操作ボタンから成る。
【0023】
表示部20は、前面側右寄りに設けられており、複合機100の状態等を表示する。
【0024】
原稿読取部30は、透明ガラス体から成る原稿載置台がその上面に設けられており、原稿載置台に載置された原稿の画像データを読み取る。
【0025】
原稿カバー32は、背面側の両端がヒンジを介して上部ユニット40に軸支されている。このため、原稿カバー32は原稿載置台を被覆する位置と、原稿カバー32の開放端側が上方に回動した位置と、の間に回転させることができる。
【0026】
ダンパ機構80は、複合機100の右側端部の中央付近に配置されており、上部ユニット40が開位置から閉位置に揺動するときに上部ユニット40に作用する回転力を減衰させる緩衝機構である。
【0027】
なお、本実施形態では、ダンパ機構80を右側端部に配置している。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、複合機100の仕様に応じて、左側端部側にダンパ機構80を設けても良い。また、上部ユニット40の重量が比較的重い場合には、左右両端部にダンパ機構80をそれぞれ設けることもできる。
【0028】
図2は、ダンパ機構80の構成を示す複合機100の右側面の概略構成図である。図3(A)は、本体部50の内側、すなわち左側面側から見たダンパ機構80の構成を示す分解斜視図である。図3(B)は、本体部50の外側、すなわち右側面側から見たダンパ機構80の構成を示す分解斜視図である。
【0029】
ダンパ機構80は、上部ユニット40の開閉に伴って回動するアーム(変位部材)81と、アーム81を狭持して上部ユニット40の下方への回動速度を緩和させる保持ユニット82と、を備えている。
【0030】
アーム81は、本体部50に対する上部ユニット40の開閉(揺動)動作に伴って、L1‐L3面内を所定の方向に回動する変位部材である。所定の方向には、上部ユニット40が閉位置から開位置へ向かうときに上部ユニット40側へ向かう回動方向と、上部ユニット40が開位置から閉位置へ向かうときに本体部50側へ向かう回動方向とが含まれる。
【0031】
アーム81は、長手方向の中央部やや上方から下端部にかけて長溝81Aが形成されている。アーム81の上端部(第1の端部)には、板厚方向、すなわち幅方向L2に貫通する貫通孔81Bが設けられている。また、上部ユニット40にはアーム81の上端部近傍に回動溝40Gが設けられている。回動溝40Gは、上部ユニット40が閉位置に位置するときに前後方向L1に平行な方向を長手方向とする長溝である。回動溝40Gおよび貫通孔81Bには、回動軸40Eが挿嵌されている。これにより、上部ユニット40を開閉するときに、アーム81を回動溝40Gに沿って回動させることができる。
【0032】
なお、本実施形態の複合機100では、アーム81の上端部を上部ユニット40に回動自在に支持させる例を挙げて説明している。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、アーム81の長さやアーム81の回動範囲等の複合機100の仕様に応じて必要な場合には、上部ユニット40がアーム81を回動自在に支持する位置を適宜変更しても良い。
【0033】
長溝81Aは、中央部付近に狭窄部81Cが設けられ、下端部(第2の端部)には係止部81Dが設けられている。長溝81Aは、その上端部側から中央部付近に位置する狭窄部81Cの直上方まで溝幅が除々に狭くなる絞り形状を呈している。
【0034】
狭窄部81Cは、直上方までの絞り形状を成す溝部分の溝幅を大きな曲率で下方に向かって拡幅させて設けられた湾曲部である。
【0035】
長溝81Aの下端部には、円状を成す係止部81Dが設けられている。長溝81Aは、上方に位置する狭窄部81Cから下方の係止部81Dの直上方にかけて溝幅が除々に狭くなる絞り形状を呈している。係止部81Dは下方に向かって大きな曲率で溝を湾曲させて円状に形成されている。
【0036】
保持ユニット82は、ばね(付勢部材)83、ホルダ(保持部材)84、摩擦部材(制動手段、制動ローラ部材)86を有し、アーム81を上下方向に回動可能に狭持している。これにより、ばね83、ホルダ84、摩擦部材86を保持ユニット82に一体に保持させることができる。なお、本実施形態では、保持ユニット82が、ばね83、ホルダ84、摩擦部材86を保持している例を挙げて説明している。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、複合機100の仕様に応じて、ばね83、ホルダ84、摩擦部材86を本体部50に直接取り付けるものとしても良い。
【0037】
保持ユニット82は、支持フレーム85を介して本体部50に固定支持されている。支持フレーム85は、アーム81を挟んで保持ユニット82と対向する右側面部側に位置している。
【0038】
保持ユニット82の後方側の側面には、ガイド曲面(制動手段、ガイド部材)82Cが設けられている。ガイド曲面82Cは、前面側に凸状を成す曲面である。このように、アーム81と当接するガイド曲面82Cをアーム81の回動方向にそって緩やかにカーブさせることで、アーム81をスムーズに回動させることができる。
【0039】
ガイド曲面82Cは、アーム81を挟んで対向する摩擦部材86との間でアーム81を狭持している。ばね83が摩擦部材86をアーム81側へ付勢することで、摩擦部材86とガイド曲面82Cとの間でアーム81を狭持する狭持力が生成される。
【0040】
なお、本実施形態では、ガイド部材として、保持ユニット82と一体に形成されたガイド曲面82Cを用いる例を挙げて説明している。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、ガイド曲面82Cの代わりに、保持ユニット82に軸支されたローラ部材を設けても良い。
【0041】
保持ユニット82の左側面部には、第1係合部(第1係合溝)82Aと第2係合部(第2係合溝)82Bから成るL字状の係合溝と、長溝81Aと係合する摺動軸(突出部)82Dとが設けられている。第1係合部82Aは前後方向L1と並行に設けられている。第2係合部82Bは、第1係合部82Aの後方の端部から上方へアーム81と離間する前方へと延びて弧状に形成されている。
【0042】
摺動軸82Dは、ガイド曲面82Cと摩擦部材86との間に配置されており、長溝81Aと係合している。ここで、摺動軸82Dの外径は、狭窄部81Cの上端付近の最も溝幅が狭くなる箇所と、係止部81Dの上端付近の最も溝幅が狭くなる箇所とそれぞれ摺接しつつ通過する長さに形成されている。
【0043】
本実施形態では、ガイド部材として、ガイド曲面82Cを用いる例を挙げて説明している。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、ガイド曲面82Cを設けずに摺動軸82Dと摩擦部材86との間にアーム81を狭持させて、アーム81の回動力を減衰させても良い。但し、ガイド曲面82Cの方が摺動軸82Dよりもアーム81と当接する当接面のカーブが緩いため、本実施形態のようにガイド曲面82Cとアーム81を当接させる方がより好ましい。
【0044】
なお、本実施形態では、保持ユニット82に第1係合部82Aと第2係合部82Bとから成るL字状の係合溝と、摺動軸82Dとが設けられている例を挙げて説明している。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、上記L字状の係合溝と摺動軸82Dを保持ユニット82に設ける代わりに、本体部50のフレーム部分に設けるものとしても良い。
【0045】
本実施形態では、アーム81に長溝81Aを設け、長溝81Aと係合する摺動軸82Dを設ける例を挙げて説明している。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、複合機の仕様に応じて長溝81Aと摺動軸82Dを設けなくとも良い。但し、この場合には、上部ユニット40を開位置で保持できないので、本実施形態のようにアーム81と長溝81Aを設ける方がより好ましい。
【0046】
また、保持ユニット82の左側面部の下部には、リブ82Eが設けられている。リブ82Eは、ホルダ84の直下方に前後方向L1に沿って設けられている。リブ82Eは、ホルダ84の下部と当接して前後方向L1へのホルダ84の移動を案内する。また、第2係合部82Bに沿って上方へホルダ84が回動するときにホルダ84の前面側の下部と当接してホルダ84の回動動作を補助する。これにより、ホルダ84を係合溝に沿ってスムーズに移動させることができる。
【0047】
摩擦部材86は、幅方向L2と並行な方向を軸方向として円柱状に形成されており、シリコンゴムから成る摩擦ローラである。摩擦部材86の軸中心には貫通孔86Aが設けられている。なお、本発明は、摩擦部材86を円柱状に限定するものではない。例えば、摩擦部材86の代わりに、多角形状やボール状の摩擦部材を用いても良い。
【0048】
ホルダ84は、前後方向L1と並行な方向を長手方向とする板状の保持部材であり、ホルダ84の後方部には幅方向L2と並行な方向に突出する軸84Aが設けられている。
【0049】
軸84Aは、第1係合部82Aおよび第2係合部82Bから成る係合溝に係合されるとともに、摩擦部材86の貫通孔86Aに遊挿されている。このように、貫通孔86Aと軸84Aとの間に遊びを設けることで摩擦部材86が変形し易くすることができる。
【0050】
このため、摩擦部材86がアーム81と当接したときに変形してアーム81と当接する当接面を広くすることができ、アーム81に作用する摩擦力をより大きくすることができる。
【0051】
ホルダ84の後方部には、遊挿される摩擦部材86の外周に沿って後方が開放端を成す半円弧状の突出部84Bが延設されている。突出部84Bの前方部には、ばね83を係止する係止部84Cが設けられている。ばね83は保持ユニット82の前方の側面と係止部84Cとの間に取り付けられており、ホルダ84を介して摩擦部材86をアーム81に付勢している。これにより、摩擦部材86がアーム81を付勢する付勢力が大きくなると、第1係合部82Aに沿って前方へ摩擦部材86を移動させて、アーム81へ作用する付勢力、すなわち狭持力が変化するのを抑制することができる。また、摩擦部材86の弾性力が経時変化により変化しても、ばね83が摩擦部材86をアーム81側へ付勢するので、アーム81へ作用する付勢力の変化を抑制することもできる。このため、予め設定された減衰力をアーム81へ作用させることができる。
【0052】
なお、本実施形態では、摩擦部材86は、第1係合部82Aおよび第2係合部82Bを用いて前後方向L1および高さ方向L3に移動可能に支持されている例を挙げて説明している。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、第1係合部82Aおよび第2係合部82Bを設けずに、摩擦部材86をばね83に付勢させることも考えられる。しかし、この場合には、摩擦部材86がアーム81と当接する位置を係合溝によって一定の範囲に規制することができないので、本実施形態のように係合溝を設ける方がより好ましい。また、複合機100の仕様に応じて、例えば、上部ユニット40を閉位置から開位置へ移動させるときにも上部ユニット40の回転力を減衰させる場合には、第2係合部82Bを設けなくても良い。この場合には、上部ユニット40を開くときにも回転力を減衰させることができる。
【0053】
図4(A)は、上部ユニット40が開位置に位置するときのダンパ機構80周辺の構成を示す図である。図4(B)は、上部ユニット40を開位置から閉位置へ移動させる途中のダンパ機構80周辺の動作を示す図である。
【0054】
図4(A)に示すように、上部ユニット40が開位置に位置するときには、係止部81Dに摺動軸82Dが係止されている。これにより、上部ユニット40を開位置に保持することができる。開位置に係止されているときに、上部ユニット40の前方部分が下方へ付勢されると、係止部81Dの湾曲に沿ってアーム81が下方へ移動し、係止部81Dと摺動軸82Dとの係合が解除される。
【0055】
図4(B)に示すように、アーム81は摩擦部材86によってガイド曲面82Cへ付勢されつつ下方へと回動する。このとき、摩擦部材86とガイド曲面82Cとの間にアーム81が狭持されている。アーム81は、摩擦部材86およびガイド曲面82Cから回動力を減衰させる抗力、すなわち狭持力を受けながら下方へ回動する。これにより、アーム81の回動力を減衰させることができる。また、摩擦部材86がアーム81から前方向へ所定の押圧力以上の力を受けると、摩擦部材86は、ばね83の付勢力に抗して前方へ移動する。これにより、アーム81に作用する抗力を一定に保つという効果もある。
【0056】
さらに、アーム81の狭窄部81C付近を摺動軸82Dが通過するときに、摺動軸82Dが狭窄部81Cと摺接する。これにより、アーム81の回動動作にクリック感を持たせることができる。これにより、上部ユニット40の閉動作にクリック感を付与することができる。上部ユニット40を閉めるときに、ユーザはクリック感を頼りに上部ユニット40がどの程度回動しているのかを感知することができる。
【0057】
図5(A)は、上部ユニット40が閉位置に位置するときのダンパ機構80周辺の構成を示す図である。図5(B)は、上部ユニット40を閉位置から開位置へ移動させる途中のダンパ機構80周辺の動作を示す図である。
【0058】
図5(A)に示すように、上部ユニット40が閉位置に位置するときには、アーム81は摩擦部材86によってガイド曲面82Cに付勢された状態で保持されている。摺動軸82Dは長溝81Aと離間した位置に保持されている。
【0059】
図5(B)に示すように、上部ユニット40が上方の開位置へ向かって移動し始めると、摩擦部材86はアーム81を介して上方への付勢力を受け第2係合部82Bに沿って上方へ移動する。これにより、摩擦部材86がアーム81を付勢する付勢力を低減し、上部ユニット40の開位置への移動をスムーズに行なうことができる。
【0060】
また、長溝81Aはアーム81の長手方向に沿って上方に拡幅する2段の絞り形状を呈している。このため、上部ユニット40を開くときに、摺動軸82Dは長溝81Aをスムーズに移動することができる。
【0061】
上記実施形態では、複合機100がダンパ機構80を備えている例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、複写機能のみ有しているコピー機、ファクシミリ機能のみ有しているファクシミリ機にダンパ機構80を備えさせても良い。この場合にも、上記実施形態に係るダンパ機構80と同様の効果を得ることができる。
【0062】
上記実施形態では、ダンパ機構80は、上部ユニット40の回動溝40Gに回動軸40Eを介してアーム81が回動可能に支持されるとともに、アーム81を支持する保持ユニット82が本体部50に備えられている例を挙げて説明した。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、本体部50に回動溝を設けて回動軸を介してアーム81を回動可能に支持させるとともに、保持ユニット82を上部ユニット40に備えさせるものとしても良い。この場合には、上部ユニット40が第1本体に相当し、本体部50が第2本体に相当する。
【0063】
上記実施形態では、コイルばねであるばね83を用いて摩擦部材86をアーム81に付勢する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ばね83の代わりに、板ばね183を用いても良い。この場合には、図6(A)に示すように、保持ユニット82に回転可能に支持された板ばね183を介してホルダ84を付勢させる。これにより、上記実施形態に係るダンパ機構80と同様の効果を得ることができる。また、図6(B)に示すように、ばね83の代わりに、樹脂ばね283を用いるものとしても良い。この場合には、保持ユニット82に回転可能に支持された樹脂ばね283を介してホルダ84を付勢させる。これにより、上記実施形態に係るダンパ機構80と同様の効果を得ることができる。
【0064】
ここで、図1〜6は、上記実施形態について説明する概略図であり、切断面の断面表記については適宜省略して示している。
【0065】
なお、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】この発明の一実施形態に係る複合機の全体の構成を示す図である。
【図2】複合機の右側面部の構成を模式的に示す図である。
【図3】(A)は、本体部の内側から見た状態を示すダンパ機構の分解斜視図である。(B)は、本体部の外側から見た状態を示すダンパ機構の分解斜視図である。
【図4】(A)は、上部ユニットが開位置に位置しているときのダンパ機構周辺の状態を示す模式図である。(B)は、上部ユニットが開位置から下方へ移動しているときのダンパ機構周辺の状態を示す模式図である。
【図5】(A)は、上部ユニットが閉位置に位置しているときのダンパ機構周辺の構成を示す模式図である。(B)は、上部ユニット40が閉位置から上方へ移動しているときのダンパ機構周辺の構成を示す模式図である。
【図6】(A)は、板ばねを用いた場合のダンパ機構周辺の構成を示す模式図である。(B)は、樹脂ばねを用いた場合のダンパ機構周辺の構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0067】
40 上部ユニット(第2本体)
50 本体部(第1本体)
80 ダンパ機構
81 アーム(変位部材)
83 ばね(付勢部材)
86 摩擦部材(制動手段、制動ローラ部材)
82C ガイド曲面(制動手段、ガイド部材)
100 複合機(画像処理装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれの一端側で互いに所定の揺動面内で揺動自在に支持された第1本体および第2本体の間に介装されるダンパ機構であって、
前記第1本体および前記第2本体の揺動に伴って前記揺動面内における所定の方向に回動する変位部材と、
前記変位部材を前記所定の方向と異なる狭持方向に沿って狭持する制動手段と、
前記制動手段の狭持力を生成する付勢部材と、
を備えているダンパ機構。
【請求項2】
前記変位部材は、第1の端部を前記第1本体または前記第2本体に回動自在に軸支されている、
請求項1に記載のダンパ機構。
【請求項3】
前記制動手段は、前記第1本体または前記第2本体に前記狭持方向に沿って移動自在に支持された制動ローラ部材と、前記変位部材を挟んで前記制動ローラ部材に対向する位置に支持され前記所定の方向に沿って前記変位部材を案内するガイド部材とから成り、
前記付勢部材は、前記制動ローラ部材を前記ガイド部材へ向け且つ付勢方向に沿って付勢する、
請求項1または2に記載のダンパ機構。
【請求項4】
前記第1本体または前記第2本体における前記制動ローラ部材と前記ガイド部材との間に配置され、前記揺動面の法線方向に突出する突出部をさらに有し、
前記変位部材には、その長手方向に沿って前記突出部と係合する長溝が設けられ、
前記長溝の前記変位部材の第2の端部側の端部には、前記突出部を離脱可能に係止する係止部が形成されている、
請求項3に記載のダンパ機構。
【請求項5】
前記長溝には、長手方向の中間位置に前記突出部が通過するときに前記突出部と摺接する狭窄部が設けられている、
請求項4に記載のダンパ機構。
【請求項6】
少なくとも前記制動ローラ部材と前記ガイド部材と前記付勢部材とを保持し、前記第1本体または前記第2本体に支持される保持ユニットをさらに備えている、
請求項3から5のいずから1項に記載のダンパ機構。
【請求項7】
前記保持ユニットには前記付勢方向に沿って第1係合溝が形成されており、
前記保持ユニットは、前記制動ローラ部材を軸支し且つ前記第1係合溝に移動可能に係合する保持部材をさらに有し、
前記付勢部材は、前記保持部材とともに前記制動ローラ部材を付勢する、
請求項6に記載のダンパ機構。
【請求項8】
前記第1係合溝の前記変位部材に近接する側の端部に接続された第2係合溝であって前記第2本体側または前記第1本体側へ向かって前記変位部材から除々に離間する第2係合溝が形成されている、
請求項7に記載のダンパ機構。
【請求項9】
用紙に画装形成処理を行なう画像形成部を有する第1本体と、
前記第1本体とそれぞれの一端側で互いに軸支され、原稿の画像を読み取る原稿読取部を有する第2本体と、
前記第1本体および前記第2本体との間に介装された請求項1から8のいずれか1項に記載のダンパ機構と、
を備えている画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−293735(P2009−293735A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−149404(P2008−149404)
【出願日】平成20年6月6日(2008.6.6)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】