説明

チップコイルの製造装置及び製造方法

【課題】導線と電極との接合状態が安定したチップコイルの製造装置及び製造方法を提供すること。
【解決手段】両端部に鍔部3を有するコア1の巻胴部2に導線4が巻線されたチップコイルの製造装置100であって、導線を繰出すノズル6と、ノズル6を支持すると共にコア1の軸を中心に旋回させることによって導線4をコア1に巻回す導線巻回機構30と、導線4を所定長さ潰し平角状とする導線潰し機構31と、導線4の平角状部7、8を鍔部3aに形成された電極5a、5bに加熱押圧し、平角状部7、8と電極5a、5bとを接合するリード線接合機構12とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップコイルの製造装置及び製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
小型電子機器等に用いられるチップコイルとして、両端部に鍔部を有するコアの巻胴部に導線を巻回し、導線の端部を鍔部に形成された電極に固定したものが知られている(特許文献1)。
【0003】
導線の端部を鍔部に形成された電極に固定するには、ヒータを用いて導線の端部を鍔部に押圧して、導線の絶縁被膜を剥離すると共に、電極の半田を溶融させて導線を電極に接合する。このように、ヒータを用いて導線を電極に加圧圧着させる。
【特許文献1】特開平10−312922
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電子機器の小型化に伴い、チップコイルの小型化、高性能化の要求が強まっている。そのような要求を満たすため、コアの大きさに対して径の大きい導線を用いる場合がある。
【0005】
径の大きな丸型の導線を用いてチップコイルを製造する場合、ヒータを用いて導線の絶縁被膜を剥離すると共に、電極の半田を溶融させて導線を電極に加圧圧着させるには、導線を大きな力で鍔部に押圧しなければならない。そのため、鍔部や電極が破損してしまうことがある。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、導線と電極との接合状態が安定したチップコイルの製造装置及び製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、両端部に鍔部を有するコアの巻胴部に導線が巻線されたチップコイルの製造装置であって、前記導線を繰出す導線繰出し部材と、前記導線繰出し部材を支持すると共に前記コアの軸を中心に旋回させることによって導線をコアに巻回す導線巻回手段と、前記導線を所定長さ潰し平角状とする導線潰し手段と、前記鍔部に形成された電極と、前記導線の平角状部を前記電極に加熱押圧し、前記平角状部と前記電極とを接合する接合手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、事前に導線を平角状に潰した後に、その平角状部を加熱押圧して電極に接合させるため、導線を大きな力で鍔部に押圧する必要がない。したがって、鍔部や電極を破損する可能性が低く、導線と電極との接合状態が安定したチップコイルを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0010】
(第1の実施の形態)
まず、本発明の第1の実施の形態に係るチップコイル製造装置100について説明する。図1はチップコイル製造装置100を示す斜視図であり、図2は導線が巻線されるコアを示す斜視図である。
【0011】
チップコイル製造装置100は、コア1に対して導線4を巻回し、導線4の両端部のリード線をコア1に設けられた電極5(5a、5b)に接合してチップコイルを製造する装置である。
【0012】
コア1は、図2に示すように、導線4が巻回される巻胴部2と、巻胴部2の両端に設けられた鍔部3(3a、3b)とを備えるものである。電極5a、5bは、鍔部3の片方の鍔部3aの外側面3cに並列に形成され、後述するように、電極5aには巻始めリード部が接合され、電極5bには巻終りリード部が接合される。電極5a、5bの表面には、導線4を接合するための半田が形成されている。
【0013】
導線4は、断面が円形の丸型導線であり、表面は絶縁被膜によって被覆されている。
【0014】
チップコイル製造装置100は、図1に示すように、コア1を支持するコア支持機構10と、コア1に対して導線4の巻回しを行う巻線機構11と、巻線機構11によるコア1への巻線終了後に、導線4の両端部のリード線を電極に接合する導線接合手段としてのリード線接合機構12とを備える。
【0015】
コア支持機構10は、基盤14上に配置され軸13a中心に回転するインデックス台13上に複数配置される。また、巻線機構11とリード線接合機構12は、インデックス台13の周囲に配置される。したがって、インデックス台13が回転することによって、コア支持機構10によって支持されたコア1は、巻線機構11に対向する位置からリード線接合機構12に対向する位置へと順番に送られる。そして、それぞれの位置にて巻線工程、導線接合工程が行われることによってチップコイルが製造される。
【0016】
以下に、チップコイル製造装置100を詳細に説明する。
【0017】
まず、図1及び図3を参照してコア支持機構10について説明する。図3は、コア支持機構10の部分拡大図である。コア支持機構10は、インデックス台13上の外縁部に複数個配置される。それぞれのコア支持機構10は、コア1の巻胴部2の軸方向がインデックス台13の径方向と一致し、かつコア1の鍔部3aの外側面3cが外向きとなるようにコア1を支持する。
【0018】
コア支持機構10は、インデックス台13の軸13aから放射方向に延在して配置されたコア支持治具21を備える。コア支持治具21は、直方体の本体部22と、本体部22の端部に形成されたL字型部23と、L字型部23の開口している2面に臨む一対のチャック部材24とを備える。
【0019】
チャック部材24は、本体部22の外周面に当接する円形凸部24cを揺動中心として、一端にはコア1の鍔部3をL字型部23に対して押圧する押え部24aが形成され、他端24bは弾性部材25によって本体部22に連結されている。弾性部材25は、通常の状態ではチャック部材24の他端24bを本体部22から離す方向、つまり押え部24aが鍔部3を押圧する方向に付勢している。また、チャック部材24の他端24b近傍には、シリンダ26内を摺動自在に移動するピストン27が配置され、ピストン27は、チャック部材24の他端24bを弾性部材25の付勢力に抗して押圧可能である。
【0020】
コア1は、電極5が形成されていない鍔部3bの外周面がチャック部材24の押え部24aによって押圧されることによって、L字型部23の内周面と押え部24aにて支持される。このように、コア1は、コア支持治具21の端部から電極5が形成された鍔部3aと巻胴部2とが突出した状態で、コア支持治具21に支持される。
【0021】
コア1のコア支持治具21への取り付け、及びコア支持治具21からの取り外しの際には、シリンダ26を駆動し、ピストン27によってチャック部材24の他端24bを押圧し弾性部材25を圧縮する。これにより、チャック部材24の押え部24aは、L字型部23を開放する方向へ揺動するため、L字型部23へのコア1の着脱が可能となる。そして、ピストン27の押圧を解除することによって、弾性部材25の付勢力にてチャック部材24は元の位置に戻る。
【0022】
コア支持機構10の下部には、導線4の両端部の巻始めリード部及び巻終りリード部の延長部をそれぞれ保持する延長部保持部材としてのクランプ28が一対設けられる。クランプ28は、シリンダ29の駆動によって開閉する。
【0023】
次に、図1及び図4〜図6を参照して巻線機構11について説明する。巻線機構11は、図1に示すように、導線4を繰出す導線繰出し部材としてのノズル6と、導線4をコア1の巻胴部2に巻回す導線巻回手段としての導線巻回機構30と、導線4を部分的に潰し平角状とする導線潰し手段としての導線潰し機構31とを備える。なお、図4は導線巻回機構30を示す断面図であり、図5は導線潰し機構31を示す断面図であり、図6は導線潰し機構31によって導線4を潰した状態を示す図である。
【0024】
導線巻回機構30は、インデックス台13外周にインデックス台13とは別体に設けられた固定台33上に、コア支持機構10に対向して配置される。導線巻回機構30は、直交3軸方向に移動可能な第一基台34に配置され、図1及び図4に示すように、第一基台34先端の壁部34aを貫通し、壁部34aに軸受35を介して軸中心に回転可能に支持された円筒部材36と、円筒部材36を回転させる円筒部材回転機構37と、ノズル6を支持すると共に、円筒部材36の先端に取り付けられたノズル支持盤38とを備える。
【0025】
ノズル支持盤38は、円筒部材36と同軸上に取り付けられ、外縁部にてノズル6を支持している。これにより、円筒部材回転機構37の動作によって円筒部材36が回転すると、ノズル支持盤38に支持されたノズル6は、コア1の巻胴部2の軸を中心に旋回する。
【0026】
円筒部材回転機構37は、円筒部材36と平行な出力軸を有するノズル旋回モータ40と、ノズル旋回モータ40の出力軸に固定された第一プーリー41と、円筒部材36におけるノズル支持盤38とは逆端に取り付けられると共に、第一プーリー41とベルト42を介して連結された第二プーリー43とを備える。円筒部材回転機構37によって、ノズル旋回モータ40の回転がノズル支持盤38に伝達される。
【0027】
線材供給源(図示せず)から供給される導線4は、図4に示すように、第二プーリー43及び円筒部材36の中空部と、円筒部材36の胴部に設けられた貫通孔36aを挿通し、ノズル6へと導かれる。
【0028】
導線4は、導線巻回機構30に導入される前に導線潰し機構31に導かれ、潰されることによって平角状部が形成される。
【0029】
導線潰し機構31は、図1に示すように、第一基台34上に導線巻回機構30と直列に配置される。導線潰し機構31は、直方体状の筐体45内に設けられ、筐体45には導線4が挿通する断面長方形の貫通路46が開口している。
【0030】
導線潰し機構31は、図5に示すように、筐体45内に設けられたカム機構47によって、上下移動板48を貫通路46内に導き、上下移動板48の先端部48aを貫通路46の内壁46aに当接させることによって導線4を平角状に潰す。
【0031】
上下移動板48の先端部48aには、導線4の線径の略半分の深さを有する断面長方形の溝部49が形成され、先端部48aが貫通路46の内壁46aに当接することによって、図6に示すように、導線4が溝部49の形状にプレス成形される。このようにして、丸型の導線4の所定部分が平角状に成形される。
【0032】
上下移動板48は、貫通路46の底面46bに連通するガイド通路50に摺動自在に挿入され、カム機構47によってガイド通路50に沿って移動する。カム機構47は、上下移動板48に固定された円柱状のカム51と、カム51が嵌合するカム溝52が形成された横移動板53と、横移動板53が摺動自在に挿入されるガイド通路54と、横移動板53に連結されシリンダ55内を摺動自在に移動するピストン56とを備える。
【0033】
カム溝52は、横移動板53がガイド通路54に沿って移動した場合に、カム51が横移動板53の移動方向とは直交方向に移動するように、斜めに形成されている。したがって、シリンダ55を駆動することによってカム51はカム溝52に案内され、カム51に連結された上下移動板48は、ガイド通路50に沿って移動し貫通路46内に導かれる。このように、カム機構47の動作によって上下移動板48が上昇し、導線4は平角状に成形される。
【0034】
以上の構成の他に、巻線機構11は、ノズル6から繰出された導線4の先端の巻始めリード部を保持すると共に、導線4の張力を調整する導線保持機構60も備える。以下に、図1及び図7を参照して、導線保持機構60について説明する。図7は、導線保持機構60を示す側面図である。
【0035】
導線保持機構60は、導線4の先端を保持するためのチャック機構61と、チャック機構61によって保持した導線4の張力を緩和させる張力緩和機構62と、導線4のリード線を電極5に位置合せする際に、チャック機構61によって保持した導線4の張力を安定させる張力安定機構63とを備える。
【0036】
導線保持機構60を構成する各部材は、第一基台34と平行に延在し、直交3軸方向に移動可能な第二基台64に設けられる。第二基台64の先端部には、導線4の巻始めリード部を保持する導線保持部材としてのチャック部材65が揺動可能に支持されている。
【0037】
チャック部材65は、長板状の部材であり、先端部側面部には切り欠き部65aが形成されている。切り欠き部65aには、切り欠き部65a内周面との間にて導線4を挟持する押板66が配置される。
【0038】
チャック部材65の後端部にはシリンダ67が結合され、押板66には、シリンダ67内に摺動自在に挿入され、チャック部材65を貫通するピストン68の端部が結合している。シリンダ67を駆動することによって押板66が移動し、切り欠き部65a内周面との間にて導線4を挟持する。このように、チャック部材65、押板66、シリンダ67、及びピストン68にてチャック機構61が構成される。
【0039】
チャック部材65は、第二基台64の先端下部に設けられた支持板69に支持される軸70を中心として揺動する。後述するように、導線4のリード線を電極5に位置合せする際には、導線4を保持したチャック部材65を移動させ、導線4をコア1の鍔部3の頂面3dに係合させ、導線4を伸ばす操作を行う。この際、チャック部材65は、導線4の張力を緩和するように揺動するため、導線4の張力が必要以上に大きくなることが防止される。このように、チャック部材65、支持板69、及び軸70にて張力緩和機構62が構成される。
【0040】
第二基台64の先端部には、コの字状の切り欠き部64aが形成されている。したがって、チャック部材65が揺動する場合には、チャック部材65の後端部は切り欠き部64a内に入り込むことができるため、第二基台64がチャック部材65の揺動を妨げることはない。
【0041】
第二基台64におけるチャック部材65後端部付近には、シリンダ71と、シリンダ71内に摺動自在に挿入されチャック部材65の後端側に当接可能なピストン72とが配置される。また、第二基台64の下部には、チャック部材65の後端側がピストン72に押圧された場合に、チャック部材65の揺動を規制しチャック部材65を水平に保つための保持板73が設けられている。チャック部材65の揺動を停止させたい場合には、シリンダ71を動作させ、チャック部材65の後端側をピストン72と保持板73とで挟むことによってチャック部材65を固定する。なお、チャック部材65が揺動中の場合には、ピストン72をシリンダ71内に収容し、ピストン72がチャック部材65に干渉するのを防止する。
【0042】
チャック部材65の先端部には、チャック部材65に保持された導線4が案内されるガイド部材75が、弾性部材としてのコイルスプリング76を介在して設けられている。ガイド部材75は、図1に示すように半円柱形状の部材であり、導線4が案内される曲面部75aを下方にして、チャック部材65を摺動可能に貫通する平行な二つの棒状部材74の下端に結合されている。棒状部材74は、コイルスプリング76を挿通しており、コイルスプリング76の両端は、それぞれチャック部材65とガイド部材75に結合されている。これにより、ガイド部材75の移動に伴って、コイルスプリング76は伸縮し付勢力を発揮する。このように、棒状部材74、ガイド部材75、及びコイルスプリング76にて張力安定機構63が構成される。
【0043】
以上にて説明した巻線機構11は、図1に示す3軸移動機構79によって、直交3軸方向に移動可能である。以下に、図1を参照して、3軸移動機構79について説明する。
【0044】
固定台33には上下移動台80が配置され、上下移動台80には側面の四面が開口しているボックス状のフレーム81が固定配置される。フレーム81内部の中空部には、筐体82と、筐体82の端部に取り付けられたモータ83と、モータ83の出力軸に結合するボールねじ84と、ボールねじ84が螺合する移動台85とからなる移動機構86が一対設けられ、その一対の移動機構86は水平直交方向に交差して配置される。そして、第一基台34は、一対の移動機構86上に配置されるため、一対の移動機構86によって水平2方向へ移動することが可能となる。
【0045】
フレーム81の上面には、上記一対の移動機構86と同様の構成である一対の移動機構87が配置される。第二基台64は、一対の移動機構87上に配置され、水平2方向へ移動することが可能となる。このように、第一基台34及び第二基台64は、それぞれ別個に水平2方向へ移動可能である。
【0046】
第一基台34及び第二基台64は、フレーム81を介して連結されているため、第一基台34及び第二基台64の鉛直方向への移動は、フレーム81を固定載置する上下移動台80を鉛直方向へ移動させることによって行われる。
【0047】
固定台33にはモータ88が固定配置され、モータ88の出力軸に連結するボールねじ89は上下移動台80に螺合する。上下移動台80には固定台33に立設する摺動軸90が貫通している。これにより、上下移動台80は、モータ88の回転によって摺動軸90に沿って鉛直方向に移動可能となる。なお、上下移動台80は、固定台33に立設する支柱91と支柱91に係合するバネ92とによって、支持されている。
【0048】
このように、巻線機構11は、3軸移動機構79によって直交3軸方向に移動可能であり、コア1に対して位置決めされる。
【0049】
次に、図1を参照して、リード線接合機構12について説明する。リード線接合機構12は、インデックス台13外周にインデックス台13とは別体に設けられた支持台94上に、コア支持機構10に対向して配置される。
【0050】
リード線接合機構12は、溶着電源(図示せず)から供給される電流によって加熱されるヒータチップ96と、ヒータチップ96が固定載置される移動台97と、移動台97を案内するガイドレール98と、移動台97に結合されたピストン99と、ピストン99が摺動自在に挿入されるシリンダ101とを備える。
【0051】
ヒータチップ96の先端部は、二つの突出部96aを有し、それぞれの突出部96aは、コア1の鍔部3aに形成された電極5a、5bに対向する。シリンダ101を駆動することによって、熱を帯びたヒータチップ96はガイドレール98に沿って移動し、突出部96aが導線4の巻始めリード部及び巻終りリード部をそれぞれ電極5a、5bに加熱押圧する。このようにして、導線4のリード線を電極5に接合する。
【0052】
支持台94におけるリード線接合機構12の下方には、図1に示すように、リード線と電極5との接合後に、リード線を切断するための導線切断機構103が設けられている。導線切断機構103は、リード線の延長部に切り込みを加える切込付与具としてのカッター104と、リード線に切り込みを加えた後、リード線における切り込みとクランプ28との間を押圧し、切り込みとクランプ28との間の張力を大きくさせ、リード線を切り込みから切断する導線押圧部材105とを備える。
【0053】
カッター104及び導線押圧部材105は、ピストン−シリンダ機構によって別個に、コア1と近離方向に移動可能である。
【0054】
カッター104の先端は、図8に示すように、巻始めリード部4aと巻終りリード部4bとの間を通り鍔部3aに当接する凸状の当接部104aと、当接部104aの両側に形成され巻始めリード部4a及び巻終りリード部4bに対して切り込みを加えるカッター部104bとで構成される。当接部104aとカッター部104bとの段差は、導線4の線径未満であるため、当接部104aを鍔部3aに当接させることによって、カッター部104bにてリード線(4a、4b)に対して切り込みを加えることができる。
【0055】
次に、チップコイル製造装置100の動作について説明する。チップコイル製造装置100の動作は、チップコイル製造装置100に搭載された図示しないコントローラにて制御される。
【0056】
まず、主に図9を参照して、巻線工程、及びリード線(4a、4b)と電極5との位置合せ工程について説明する。図9は、巻線工程と位置合せ工程とを時系列順に示した図である。
【0057】
準備としてコア1をコア支持治具21に支持させる。具体的には、コア支持機構10におけるシリンダ26を駆動し、ピストン27にてチャック部材24を押圧することによって、コア支持治具21のL字型部23を開放する。そして、コア1における電極5が形成されていない鍔部3bをL字型部23に載置した後、ピストン27による押圧を解除する。これにより、弾性部材25の付勢力によってチャック部材24の押え部24aは、鍔部3bをL字型部23に対して押圧し、コア1はコア支持治具21に支持される。
【0058】
コア1は、コア支持治具21にて支持された状態では、コア支持治具21の端部から電極5が形成された鍔部3aと巻胴部2とが突出した状態となる。
【0059】
導線4は、線材供給源(図示せず)から供給され、導線潰し機構31における貫通路46、及び導線巻回機構30の円筒部材36の中空部を挿通し、ノズル6に導かれる。
【0060】
ノズル6から繰出された導線4は、ノズル6上部に配置された導線保持機構60のチャック部材65にて保持されている(図9(A))。チャック部材65とノズル6との間の導線4は、巻始めリード部4aであり、所定長さ潰された平角状部7が形成されている。
【0061】
このような状態から、コア1への巻線動作が開始される。
【0062】
まず、3軸移動機構79を駆動し、第一基台34及び第二基台64を移動させ、ノズル6の回転軸である円筒部材36の中心軸を、コア1の巻胴部2の軸方向と一致させると共に、ノズル6をコア1の巻胴部2の外周に向けて移動させる(図9(B))。
【0063】
導線4の巻始めリード部4aを鍔部3b内壁に接触するように巻胴部2に這わせ、その状態にて、ノズル旋回モータ40を駆動する。これにより、ノズル6は巻胴部2の周囲を旋回し、ノズル6から繰出される導線4は、巻胴部2に巻き回される(図9(C))。
【0064】
所定巻数の巻線が終了した後、巻線動作を止め、導線潰し機構31のカム機構47を駆動することによって、導線4を所定長さ潰し平角状にする。そして、導線4を所定距離進めた後、巻線動作を止め、再度導線4を所定長さ潰し平角状にする。このように、導線4には、所定間隔を置いた二つの平角状部8、9が形成される。
【0065】
再度巻線動作を再開し、最初に潰された平角状部8を、電極5が形成された鍔部3a近傍に配置する。そして、ノズル6を移動させ、平角状部8を鍔部3aの頂面3dに係合させる。また、この動作と同時に、巻始めリード部4aを保持したチャック部材65も移動させ、巻始めリード部4aの平角状部7も、鍔部3aの頂面3dに係合させる(図9(D))。
【0066】
平角状部7、8を鍔部3aの頂面3dに係合させた状態にて、ノズル6及びチャック部材65をそれぞれコア1から離れる方向へ移動させ、導線4を伸ばす。このようにすることによって、次の動作である平角状部7、8の電極5a、5bへの位置合せが容易となる。
【0067】
平角状部7、8を鍔部3aの頂面3dに係合させ、かつ伸ばした状態にて、上下移動台80を下方へ移動させることによって、ノズル6及びチャック部材65を一緒に下降させ、平角状部7、8を鍔部3aに沿って折り曲げ、それぞれ電極5a、5bに位置合せする(図9(E))。なお、上記した導線4を伸ばす操作を行わない場合には、ノズル6及びチャック部材65の下降の際、導線4は緩んでしまい正確な位置合せが困難となる。
【0068】
このように、巻始めリード部4aの平角状部7は電極5aに位置合せされ、もう一方の平角状部8は電極5bに位置合せされる。この平角状部8が形成されるリード線は、巻終りリード部4bである。
【0069】
リード線(4a、4b)と電極5との位置合せは、リード線の平角状部7、8を利用して行われる。平角状部7、8は、丸型の導線と比較して鍔部3a上にてずれ難く安定する。したがって、リード線を電極5に対して正確に位置合せすることができる。
【0070】
チャック部材65を下降させ、平角状部7を折り曲げ電極5に位置合せする過程にて、導線保持機構60の張力緩和機構62及び張力安定機構63が動作する。この動作について、図10を参照して説明する。図10(A)は張力緩和機構62の動作を説明する図であり、図10(B)は張力安定機構63の動作を説明する図である。
【0071】
巻始めリード部4aを鍔部3aに係合させ伸ばす際には、チャック部材65をコア1から離れる方向へ移動させるため、巻始めリード部4aの張力は大きくなる。このような状況では、張力緩和機構62は、図10(A)に示すように、シリンダ71内にピストン72を収容し、チャック部材65が軸70を中心に揺動可能となるように設定される。なお、シリンダ71中の駆動媒体を排出し、ピストン72がシリンダ71中を自由に摺動できるようにしても、チャック部材65は揺動可能となる。
【0072】
このように設定することによって、チャック部材65がコア1から離れる方向へ移動し、その後、下降する過程にて巻始めリード部4aの張力が大きくなる場合でも、チャック部材65は揺動し、巻始めリード部4aの張力を抑えるように作用する。したがって、巻始めリード部4aの張力が過度に大きくなることを防止することができる。
【0073】
図10(B)に示すように、チャック部材65がさらに下降すると、巻始めリード部4aは張力安定機構63のガイド部材75の曲面部75aに当接し案内される。このように、巻始めリード部4aがガイド部材75に案内された場合には、張力緩和機構62のシリンダ71を動作させ、チャック部材65の後端部をピストン72と保持板73とで挟む。これにより、チャック部材65は固定され、揺動不能となる。
【0074】
巻始めリード部4aがガイド部材75に案内された状態において、巻始めリード部4aの張力が変動した場合には、その張力の変動は、ガイド部材75とチャック部材65との間に介在されたコイルスプリング76によって吸収される。このように、巻始めリード部4aを電極5に位置合せする際、張力安定機構63の作用によって巻始めリード部4aの張力を安定させることができる。
【0075】
次に、図11を参照して、巻始めリード部4aの平角状部7と電極5a、及び巻終りリード部4bの平角状部8と電極5bの接合工程について説明する。図11は、導線接合工程を時系列順に示した図である。
【0076】
図9(E)に示した、リード線(4a、4b)と電極5を位置合せした状態から、ノズル6及びチャック部材65をさらに下降させる。このとき、コア1の下方には、一対のクランプ28が開放状態にて配置されており、双方のリード線をクランプ28の開放部に通して下降させる(図11(A))。
【0077】
ノズル6を下降させることによって、図11(A)に示すように、ノズル6からは、所定間隔を置いた二つの平角状部8、9のうち、後に潰された平角状部9が繰出される。
【0078】
開放していたクランプ28を閉じ、双方のリード線を固定保持する。巻終りリード部4b側を固定保持するクランプ28は、平角状部8、9の間を固定保持する(図11(B))。
【0079】
次に、チャック部材65における押板66による巻始めリード部4aの挟持を解除する。そして、チャック部材65を移動させ、巻終りリード部4bにおけるクランプ28と後に潰された平角状部9との間を保持する(図11(C))。
【0080】
チャック部材65が巻終りリード部4bを保持した状態にて、チャック部材65とノズル6は、巻線工程の初期位置に戻る。この動作によって、巻終りリード部4bは切断される(図11(D))。初期位置に戻ったチャック部材65が保持する導線4は、次に巻線されるコア1の巻始めリード部4aとなる。つまり、導線潰し機構31によって成形された二つの平角状部8、9のうち、後に潰された平角状部9は、巻始めリード部4aの平角状部となる。
【0081】
巻終りリード部4bの切断後、インデックス台13を回転させ、巻線工程及び位置合せ工程が終了したコア1をリード線接合機構12に対向させる。
【0082】
加熱されたヒータチップ96を前進させ、突出部96aにて巻始めリード部4aの平角状部7及び巻終りリード部4bの平角状部8を、それぞれ電極5a、5bに対して押圧する(図11(E))。
【0083】
平角状部7、8は潰されているため、平角状部7、8の絶縁被膜は薄く形成された状態となっている。また、平角状部7、8は潰され高さが低いため、ヒータチップ96を半田に近づけることができ、ヒータチップ96の熱が半田に伝わり易い。したがって、ヒータチップ96は、平角状部7、8の絶縁被膜、及び電極5の表面に形成された半田の双方を容易に溶融することができる。これにより、図12(A)に示すように、半田107を介して平角状部7、8の側面部と電極5とが接合される。
【0084】
平角状部7、8は平らに潰されているため高さが低い。したがって、図12(B)に示す丸型の導線4の場合と比較して、側面部による半田107の吸い上げ量を少なくすることができる。これにより、電極5における半田量の減少を抑えることができ、半田フィレット部107を大きく残すことができるため、その後に他の電子部品を電極5に接続する際の接続面積を確保することができる。
【0085】
次に、図8及び図13を参照して、導線切断機構103の動作について説明する。図8はカッター104の動作を示す図であり、図13は導線押圧部材105の動作を示す図である。
【0086】
接合工程の終了後、図8に示すように、リード線接合機構12の下部に配置されたカッター104を前進させ、当接部104aを巻始めリード部4aと巻終りリード部4bの間を通し、鍔部3aにおける外側面3cの電極5の下部に当接させる。これにより、巻始めリード部4a及び巻終りリード部4bには、カッター部104bによって切り込み106が加えられる。その後、切り込みを加えたカッター104は、後退し元の位置に戻る。
【0087】
次に、図13に示すように、カッター104の下部に配置された導線押圧部材105を前進させ、巻始めリード部4a及び巻終りリード部4bにおける切り込み106とクランプ28との間を押圧する。これにより、切り込み106とクランプ28との間の張力が大きくなり、切り込み106に力が集中して、巻始めリード部4a及び巻終りリード部4bは、切り込み106から切断される。
【0088】
なお、巻始めリード部4a及び巻終りリード部4bにおける切り込み106とクランプ28との間の張力を大きくする方法として、コア1とクランプ28とを相対移動させることによっても行うことができる。この場合には、導線押圧部材105の設置は不要となる。
【0089】
従来は、リード線の切断は、鍔部の端部にリード線を引っ掛け、引っ張ることによって行っていたため、鍔部が破損してしまうこともあった。しかし、導線切断機構103によるリード線の切断方法によれば、予めリード線に切り込み106を付与し、その切り込み106に力を集中させることによってリード線を切断するため、切断に際して大きな力を必要としない。したがって、鍔部3の破損を防止することができる。
【0090】
以上のようにして、チップコイル製造装置100によってチップコイルが製造される。チップコイル製造装置100によって得られるチップコイルにおけるリード線は平角状であるため、チップコイルの寸法を抑えることができる。したがって、チップコイルの寸法を、所望の寸法内に収めることが容易となる。
【0091】
以上の第1の実施の形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0092】
リード線の電極5への接合は、予め導線4を平角状に成形し、その平角状部を電極5に対して加熱押圧することによって行われるため、従来の丸型の導線の場合のように大きな力で電極5に対して押圧する必要がない。したがって、電極5や鍔部3を破損する可能性が低く、リード線と電極5との接合状態が安定したチップコイルを得ることができる。
【0093】
また、リード線と電極5との位置合せは、リード線の平角状部7、8を鍔部3に係合させることによって行われる。平角状部7、8は、丸型の導線と比較して鍔部3上にてずれ難く安定する。したがって、リード線を電極5に対して正確に位置合せすることができる。
【0094】
また、電極5に接合するリード線が平角状であるため、丸型の導線の場合と比較して、リード線への半田の乗り上げを少なくすることができる。したがって、半田フィレット部を大きく残すことができるため、その後に他の電子部品を電極5に接続する際の接続面積を確保することができる。
【0095】
さらに、巻始めリード部4a及び巻終りリード部4bに対応する電極5a、5bは、コア1における片方の鍔部3の外側面3cに並列に形成されている。したがって、巻始めリード部4a及び巻終りリード部4bと電極5との接合を同時に行うことができるため、効率良くチップコイルを製造することができる。
【0096】
(第2の実施の形態)
次に、図14及び図15を参照して、本発明の第2の実施の形態に係るチップコイル製造装置200について説明する。図14はチップコイル製造装置200を示す斜視図であり、図15は巻線工程と位置合せ工程とを時系列順に示した図である。
【0097】
チップコイル製造装置200における上記第1の実施の形態に係るチップコイル製造装置100との相違点は、導線4を平角状に潰すタイミングが異なる点である。
【0098】
以下では、第1の実施の形態に係るチップコイル製造装置100との相違点を中心に説明し、チップコイル製造装置100と同一の部材については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0099】
チップコイル製造装置100では、第一基台34上に導線潰し機構31が配置され、導線4は、ノズル6に導かれる前に導線潰し機構31によって平角状に潰される。
【0100】
これに対して、チップコイル製造装置200は、図14に示すように、導線潰し機構31に代わり、基盤14上でかつ巻線機構11に対向するコア支持機構10の近傍に配置される導線潰し機構201を備える。
【0101】
導線潰し機構201は、導線4の一部を平角状に潰す押圧機構202と、押圧機構202を導線4に案内する案内機構203とを備える。
【0102】
押圧機構202は、支持部材204にて支持される一対の押圧板205a、205bを備える。一対の押圧板205a、205bは、支持部材204の内周底面に設けられたレール(図示省略)に摺動自在に係合して配置され、シリンダ等の駆動部材(図示省略)にて互いに近づく方向に移動可能に構成される。導線4は、一対の押圧板205a、205bにて挟まれ、押圧されることによって平角状に潰される。
【0103】
ここで、支持部材204の内周底面に設けられるレールは、コア1の巻胴部2の軸方向と平行に配置されることが望ましく、また、一対の押圧板205a、205bは、導線4を挟持する押圧面がコア1の鍔部3aと平行に配置されることが望ましい。レール及び押圧板205a、205bをこのように配置することによって、一対の押圧板205a、205bにて潰された導線4の平角状部は、鍔部3aに形成された電極5の表面と平行に成形されるため、その後に行われる導線4と電極5との接合が容易となる。
【0104】
案内機構203は、筐体206と、筐体206の端部に取り付けられたモータ207と、モータ207の出力軸に結合するボールねじ208と、ボールねじ208が螺合する移動台209とからなる移動機構210を一対備える。
【0105】
一方の移動機構210は基盤14上に水平に配置され、他方の移動機構210は鉛直方向に配置される。互いの移動台209は連結部材211によって結合され、支持部材204は、他方の移動機構210の移動台209に結合される。これにより、支持部材204に支持された一対の押圧板205a、205bは、水平、鉛直の2方向に移動することが可能となる。
【0106】
なお、基盤14上に配置される一方の移動機構210は、ボールねじ208がコア1の巻胴部2の軸方向と直交する方向に延在するように配置される。
【0107】
次に、図15を参照して、チップコイル製造装置200による巻線工程、及びリード線4a、4bと電極5との位置合せ工程について説明する。
【0108】
コア1に巻線を行うにあたっての準備は、上記第1の実施の形態と概ね同様であるが、異なる点は、図15(A)に示すように、巻線を開始する際に巻始めリード部4aに平角状部が形成されていない点である。
【0109】
まず、3軸移動機構79を駆動し、ノズル6の回転軸をコア1の巻胴部2の軸方向と一致させると共に、ノズル6を巻胴部2の外周に向けて移動させる(図15(B))。
【0110】
次に、ノズル旋回モータ40を駆動することによって、巻胴部2に導線4を数ターン巻線する。この状態にて、案内機構203を駆動し押圧機構202を移動させ、一対の押圧板205a、205bの間に巻始めリード部4aが位置するように押圧機構202を位置決めする。そして、図15(C)に示すように、駆動部材によって一対の押圧板205a、205bを互いに近づく方向に移動させ、巻始めリード部4aを押圧する。これにより、巻始めリード部4aには、平角状部7が形成される。巻始めリード部4aへの平角状部7の成形後、押圧機構202を後退させる。
【0111】
次に、ノズル旋回モータ40を駆動し巻線動作を再開させ、巻胴部2へ所定巻数の巻線を終えた後、巻線動作を止める。
【0112】
次に、図15(D)に示すように、ノズル6を電極5bの上方に移動させる。この状態におけるノズル6から巻胴部2までの導線4が、巻終りリード部4bである。そして、再度案内機構203を駆動し、押圧機構202にて巻終りリード部4bにも平角状部8を形成する。巻終りリード部4bへの平角状部8の成形後、押圧機構202を後退させる。
【0113】
次に、図15(E)に示すように、巻始めリード部4aを保持したチャック部材65とノズル6との双方を移動させ、巻始めリード部4aの平角状部7及び巻終りリード部4bの平角状部8を鍔部3aの頂面3dに係合させる。
【0114】
その後、図15(F)に示すように、上下移動台80を下方へ移動させることによって、ノズル6及びチャック部材65を一緒に下降させ、平角状部7、8を鍔部3aに沿って折り曲げ、それぞれ電極5a、5bに位置合せする。このように、巻始めリード部4aの平角状部7は電極5aに位置合せされ、巻終りリード部4bの平角状部8は電極5bに位置合せされる。
【0115】
次の工程である平角状部7と電極5a、及び平角状部8と電極5bの接合工程は、上記第1の実施の形態と同等であるため、説明を省略する。
【0116】
なお、以上では、巻始めリード部4aへの平角状部7の成形は、巻胴部2に導線4を数ターン巻線した後に行ったが、巻終りリード部4bへの平角状部8の成形と同じタイミングで行うようにしてもよい。つまり、巻胴部2へ所定巻数の巻線を終えた後に、巻始めリード部4a及び巻終りリード部4bに対して順次平角状部7、8を成形するようにしてもよい。
【0117】
以上のように、チップコイル製造装置200では、巻始めリード部4a及び巻終りリード部4bへの平角状部7、8の成形は、平角状部7、8を電極5a、5bに位置合せする直前に電極5a、5bの近傍で行われる。つまり、巻始めリード部4a及び巻終りリード部4bを電極5a、5bに導いた後に、平角状部7、8の成形が行われる。
【0118】
以上の第2の実施の形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0119】
本発明の製造装置及び製造方法によって製造されるチップコイルは、主に小型電子機器に用いられるものであるため、極小のコア1及び極細の導線4が用いられる場合がある。そのような場合に、導線4を巻線する前(電極5に導かれる前)に予め導線4の一部を潰して平角状部7、8にする方法では、巻線中に導線4の平角状部7、8にて断線してしまう場合がある。また、コア1に形成される電極5も極小であるため、予め成形した平角状部7、8を電極5に対して正確に位置決めすることが困難な場合もある。
【0120】
しかし、チップコイル製造装置200は、巻始めリード部4a及び巻終りリード部4bを電極5a、5bに導いた後に平角状部7、8の成形を行うものであり、平角状部7、8の成形後に導線4の巻線が行われることはない。
【0121】
したがって、平角状部7、8が引き回されることがないため、平角状部7、8にて断線することはなく、また、電極5が極小であっても平角状部7、8を正確に電極5a、5bに位置決めすることができる。
【0122】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明は、チップコイルの製造装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るチップコイル製造装置100を示す斜視図である。
【図2】コア1を示す斜視図である。
【図3】コア支持機構10の部分拡大図である。
【図4】導線巻回機構30を示す断面図である。
【図5】導線潰し機構31を示す断面図である。
【図6】導線潰し機構31によって導線を潰した状態を示す図である。
【図7】導線保持機構60を示す側面図である。
【図8】カッター104の動作を示す図である。
【図9】巻線工程と位置合せ工程とを時系列順に示した図である。
【図10】(A)張力緩和機構62の動作を説明する図である。(B)張力安定機構63の動作を説明する図である。
【図11】導線接合工程を時系列順に示した図である。
【図12】(A)半田を介したリード線の平角状部と電極との接合状態を示す断面図である。(B)従来の導線と電極との接合状態を示す断面図である。
【図13】導線押圧部材105の動作を示す図である。
【図14】本発明の第2の実施の形態に係るチップコイル製造装置200を示す斜視図である。
【図15】巻線工程と位置合せ工程とを時系列順に示した図である。
【符号の説明】
【0125】
100,200 チップコイル製造装置
1 コア
2 巻胴部
3,3a,3b 鍔部
3d 鍔部の頂面
4 導線
4a 巻始めリード部
4b 巻終りリード部
5,5a,5b 電極
6 ノズル
7,8,9 平角状部
10 コア支持機構
11 巻線機構
12 リード線接合機構
30 導線巻回機構
31 導線潰し機構
60 導線保持機構
62 張力緩和機構
63 張力安定機構
65 チャック部材
96 ヒータチップ
104 カッター
105 導線押圧部材
106 切り込み
107 半田
201 導線潰し機構
202 押圧機構
205a,205b 押圧板
203 案内機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端部に鍔部を有するコアの巻胴部に導線が巻線されたチップコイルの製造装置であって、
前記導線を繰出す導線繰出し部材と、
前記導線繰出し部材を支持すると共に前記コアの軸を中心に旋回させることによって導線を前記コアの巻胴部に巻回す導線巻回手段と、
前記導線を所定長さ潰し平角状とする導線潰し手段と、
前記導線の平角状部を前記鍔部に形成された前記電極に加熱押圧し、前記平角状部と前記電極とを接合する接合手段と、
を備えることを特徴とするチップコイルの製造装置。
【請求項2】
前記接合手段は、前記電極の表面に形成された半田を介して、前記平角状部の側面と前記電極とを接合することを特徴とする請求項1に記載のチップコイルの製造装置。
【請求項3】
前記電極は、前記導線の両端部の巻始めリード部及び巻終りリード部に対応する二つの電極を有し、
前記導線潰し手段によって前記巻始めリード部及び前記巻終りリード部のそれぞれに前記平角状部が形成され、
前記二つの電極は、一方の鍔部の外側面に並列に形成され、
前記接合手段によって前記巻始めリード部及び前記巻終りリード部の前記平角状部をそれぞれ前記電極に接合することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のチップコイルの製造装置。
【請求項4】
前記巻始めリード部の先端を保持する導線保持部材と、
前記導線保持部材に保持されている導線の張力を緩和するために当該導線保持部材を揺動可能とする張力緩和機構と、
を備えることを特徴とする請求項3に記載のチップコイルの製造装置。
【請求項5】
前記導線保持部材に弾性部材を介在して設けられ、前記導線保持部材に保持されている導線が案内されるガイド部材を備え、
当該ガイド部材は、前記巻始めリード部を前記電極に位置合せする際、前記導線保持部材に保持されている導線の張力を安定させることを特徴とする請求項4に記載のチップコイルの製造装置。
【請求項6】
前記導線保持部材に保持されている導線が前記ガイド部材に案内されている場合には、前記張力緩和機構は前記導線保持部材を揺動不能に設定することを特徴とする請求項5に記載のチップコイルの製造装置。
【請求項7】
前記平角状部と前記電極の接合後、前記リード部の延長部に切り込みを加える切込付与具を備え、
前記切り込みと前記延長部を保持する延長部保持部材との間の張力を大きくさせることによって前記リード部を前記切り込みから切断することを特徴とする請求項3に記載のチップコイルの製造装置。
【請求項8】
前記切込付与具の先端は、
前記巻始めリード部と前記巻終りリード部との間を通り前記鍔部に当接する凸状の当接部と、
当該当接部の両側に形成され前記巻始めリード部及び前記巻終りリード部に対して切り込みを加えるカッター部と、
で構成されることを特徴とする請求項7に記載のチップコイルの製造装置。
【請求項9】
両端部に鍔部を有するコアの巻胴部に導線が巻線されたチップコイルの製造方法であって、
導線を潰すことによって所定間隔を置いた二つの平角状部を形成する工程と、
一方の平角状部が線材保持部材にて保持された巻始めリード部に配置されると共に、他方の平角状部が巻終りリード部に配置されるように巻線を行う工程と、
前記巻始めリード部及び前記巻終りリード部の平角状部をそれぞれ前記鍔部に形成された電極に位置合せする工程と、
それぞれの前記平角状部を前記電極に加熱押圧し、前記平角状部と前記電極とを接合する工程と、
を含むことを特徴とするチップコイルの製造方法。
【請求項10】
両端部に鍔部を有するコアの巻胴部に導線が巻線されたチップコイルの製造方法であって、
導線を前記コアの巻胴部に巻回す工程と、
前記鍔部に形成された電極に導かれた導線の巻始めリード部及び巻終りリード部を潰すことによって、巻始めリード部及び巻終りリード部に平角状部を形成する工程と、
前記巻始めリード部及び前記巻終りリード部の平角状部をそれぞれ前記鍔部に形成された電極に位置合せする工程と、
それぞれの前記平角状部を前記電極に加熱押圧し、前記平角状部と前記電極とを接合する工程と、
を含むことを特徴とするチップコイルの製造方法。
【請求項11】
前記電極は、一方の鍔部の外側面に並列に形成され、
前記位置合せは、
前記巻始めリード部及び前記巻終りリード部の平角状部を、前記一方の鍔部の頂面に係合させ、当該鍔部に沿って折り曲げることによって行われることを特徴とする請求項9又は請求項10に記載のチップコイルの製造方法。

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図10】
image rotate

【図13】
image rotate

【図1】
image rotate

【図4】
image rotate

【図9】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2007−266578(P2007−266578A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−6076(P2007−6076)
【出願日】平成19年1月15日(2007.1.15)
【出願人】(000227537)日特エンジニアリング株式会社 (106)
【Fターム(参考)】