説明

チャージポンプ回路

【課題】プラス電位及びマイナス電位を生成することができると共に、フライングコンデンサの数とスイッチの数を削減したチャージポンプ回路を提供する。
【解決手段】このチャージポンプ回路は、9個のスイッチSW1〜SW9と第1及び第2のフライングコンデンサC1,C2、第1及び第2出力コンデンサCout1,Cout2で構成される。初段の第1のフライングコンデンサC1はSW1とSW4の接続ノードであるノードN1とSW1とSW2の接続ノードであるノードN2に接続されている。また、次段(最終段)の第2のフライングコンデンサC2はSW4とSW5の接続ノードであるノードN3とSW8とSW9の接続ノードであるノードN4に接続されている。そして、第1の出力端子P1からプラス電位である3VDDが出力され、第2の出力端子P2からマイナス電位である−2VDDが出力される。VDDは電源電位である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャージポンプ回路に関し、特に、マイナス電位及びプラス電位を発生するチャージポンプ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、チャージポンプ回路は複数段のポンピングパケットを構成して入力電位を昇圧して昇圧電位を生成する回路である。特に、接地電位(0V)を基準として、マイナス電位及びプラス電位を発生するチャージポンプ回路は電源回路等に広く用いられている。
【0003】
図5は、この種のチャージポンプ回路を示す回路図である。この回路は、11個のスイッチSW11〜SW21と3つのフライングコンデンサC11,C12,C13、2つの出力コンデンサCout11,Cout12で構成される。
【0004】
フライングコンデンサC11はSW13とSW14の接続ノードであるノードN11とSW11とSW12の接続ノードであるノードN12に接続されている。フライングコンデンサC12はSW14とSW15の接続ノードであるノードN13とSW16とSW17の接続ノードであるノードN14に接続されている。
【0005】
フライングコンデンサC13はSW18とSW19の接続ノードであるノードN16とSW20とSW21の接続ノードであるノードN17に接続されている。スイッチSW11〜SW21のオン、オフの切り替えは、不図示の制御回路により制御されるものとする。
【0006】
そして、第1の出力端子P11からプラス電位である3VDDが出力され、第2の出力端子P12からマイナス電位である−2VDDが出力される。VDDは電源電位である。
【0007】
このチャージポンプ回路の定常状態の動作について図6を参照して説明する。このチャージポンプ回路は、第1の相、第2の相の2サイクルで動作し、まず3VDDを生成するためのプラス昇圧を行い、その後3VDDを電源に用いてマイナス昇圧を行って、−2VDDを生成する。
【0008】
まず、プラス昇圧について説明する。第1の相において、SW12,SW13,SW15,SW16はオンし、SW11,SW14,SW17はオフする。
【0009】
すると、ノードN11の電位はVDD、ノードN12の電位はVSS(接地電位=0V)になることにより、フライングコンデンサC11はVDDとVSSの間に接続されて充電される。ノードN14の電位はVSSからVDDに変化し、ノードN13の電位はフライングコンデンサC12の容量結合により、2VDDから3VDDに変化する。フライングコンデンサC12に蓄積された電荷はSW15を通して放電され、第1の出力端子P11の電位は3VDDとなる。
【0010】
第2の相において、SW12,SW13,SW15,SW16はオフし、SW11,SW14,SW17はオンする。すると、ノードN12はVSSからVDDに変化し、フライングコンデンサC11の容量結合により、ノードN11はVDDから2VDDに変化する。フライングコンデンサC11に蓄積された電荷はSW14を通して放電され、ノードN13の電位は2VDDとなる。第1の相、第2の相の動作を交互に繰り返すことにより、第1の出力端子P11から3VDDが得られる。
【0011】
次に、マイナス昇圧について説明する。第1の相において、SW18,SW20はオンし、SW19、SW21はオフする。すると、ノードN16の電位はVDDになり、ノードN17の電位は3VDDになることにより、フライングコンデンサC13はVDDと3VDDの間に接続されて充電される。第2の相において、SW18,SW20はオフし、SW19、SW21はオンする。すると、ノードN17は3VDDからVSSに変化し、フライングコンデンサC13の容量結合により、ノードN16の電位はVDDから−2VDDに変化する。フライングコンデンサC13に蓄積された電荷はSW19を通して放電され、第2の出力端子P12の電位は−2VDDとなる。
【0012】
なお、チャージポンプ回路については特許文献1、2に記載されている。
【特許文献1】特開2001−231249号公報
【特許文献2】特開2001−286125号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記チャージポンプ回路においては、プラス電位及びマイナス電位を得るために、一度プラス昇圧を行い、そのプラス昇圧の出力電位を電源に用いてマイナス昇圧を行っている。そのため、プラス昇圧部のフライングコンデンサC11,C12とマイナス昇圧部のフライングコンデンサC13が別々に必要となり、それらのフライングコンデンサの接続関係を制御するためのスイッチSW11〜SW21の数も多いという問題があった。
【0014】
また、マイナス昇圧の出力電位−2VDDは、プラス昇圧の出力電位3VDDを元に生成するために、マイナス昇圧の出力端子P12に急に負荷が加わるとプラス昇圧の出力電位3VDDも低下してしまうという問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のチャージポンプ回路は第1の端子と第2の端子を有する第1のフライングコンデンサと、第3の端子と第4の端子を有する第2のフライングコンデンサと、スイッチング回路と、を備え、スイッチング回路は、第1の相において、第2の端子に電源電位を印加し、第4の端子に接地電位を印加すると共に、第1の端子と第3の端子を短絡して第2のフライングコンデンサを充電し、第2の相において、第1の端子に電源電位を印加し、第2の端子に接地電位を印加すると共に、第3の端子に接地電位を印加して第2のフライングコンデンサを放電することにより第4の端子からマイナスの出力電位を出力し、第3の相において、第2の端子に電源電位を印加し、第4の端子に接地電位を印加すると共に、第1の端子と第3の端子を短絡して第2のフライングコンデンサを充電し、第4の相において、第2の端子に接地電位を印加し、第1の端子に電源電位を印加すると共に、第4の端子に電源電位を印加して第2のフライングコンデンサを放電することにより第3の端子からプラスの出力電位を出力するように制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明のチャージポンプ回路によれば、プラス電位及びマイナス電位を生成することができると共に、従来のチャージポンプ回路に比べてフライングコンデンサの数とスイッチの数を削減することができる。また、マイナス昇圧はプラス昇圧電位を元に生成しないため、それぞれの相関関係がなくなり、マイナス昇圧の出力部に急に負荷が加わっても、プラス昇圧の出力電位の低下を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施形態によるチャージポンプ回路について詳しく説明する。図1はこのチャージポンプ回路の回路図である。この回路は、9個のスイッチSW1〜SW9と第1及び第2のフライングコンデンサC1,C2、第1及び第2の出力コンデンサCout1,Cout2で構成される。
【0018】
初段の第1のフライングコンデンサC1はSW3とSW4の接続ノードであるノードN1とSW1とSW2の接続ノードであるノードN2に接続されている。つまり、第1のフライングコンデンサC1は、第1及び第2の端子を有しており、第1の端子はノードN1に接続され、第2の端子はノードN2に接続されている。
【0019】
また、次段(最終段)の第2のフライングコンデンサC2は、SW4とSW5の接続ノードであるノードN3とSW8とSW9の接続ノードであるノードN4に接続されている。つまり、第2のフライングコンデンサC2は、第3及び第4の端子を有しており、第3の端子はノードN3に接続され、第4の端子はノードN4に接続されている。第2のフライングコンデンサC2は、プラス昇圧部とマイナス昇圧部で共用されている。
【0020】
第1及び第2のフライングコンデンサC1,C2はチャージポンプ回路が形成されたICの外部に取り付けられることが多いが、ICの内部に形成することもできる。スイッチSW1〜SW9のオン、オフの切り替えは、不図示の制御回路により制御されるものとする。また、スイッチSW1〜SW9はMOSトランジスタやバイポーラトランジスタで形成することができる。
【0021】
そして、第1の出力端子P1(本発明のプラスの出力電位を出力する出力端子の一例)からプラス電位である3VDDが出力され、第2の出力端子P2(本発明のマイナスの出力電位を出力する出力端子の一例)からマイナス電位である−2VDDが出力される。VDDは電源電位である。
【0022】
このチャージポンプ回路の定常状態の動作について図2、図3、図4を参照して説明する。このチャージポンプ回路は、第1の相、第2の相、第3の相、第4の相の4サイクルで動作する。
【0023】
第1の相において、SW1、SW4、SW9がオンし、その他のスイッチはオフする。すると、ノードN2の電位はVDDになり、ノードN4の電位は接地電位となり、ノードN1とノードN3は短絡され、ノードN1,N3の電位は2VDDになる。これにより、第1のフライングコンデンサC1の第2の端子にVDDが印加され、第2のフライングコンデンサC2の第4の端子が接地されると共に、第1のフライングコンデンサC1の第1の端子と第2のフライングコンデンサC2の第3の端子が短絡された状態で、第2のフライングコンデンサC2が2VDDに充電される。
【0024】
次に、第2の相において、SW2、SW3、SW6、SW7がオンし、その他のスイッチはオフする。すると、ノードN1の電位はVDDになり、ノードN2の電位はVSSになる。また、ノードN3は2VDDからVSSに変化する。これにより、第1のフライングコンデンサC1はVDDとVSSの間に接続されて充電されると共に、ノードN4の電位は第2のフライングコンデンサC2の容量結合によりVSSから−2VDDに変化する。つまり、第2のフライングコンデンサC2の放電によりその第4の端子からスイッチSW7(本発明の第1のスイッチの一例)を介して、第2の出力端子P2から−2VDDの出力電位が得られる。
【0025】
次に、第3の相において、第1の相と同様に、SW1、SW4、SW9がオンし、その他のスイッチはオフする。すると、ノードN2の電位はVDDになり、ノードN4の電位は接地電位となり、ノードN1とノードN3は短絡され、ノードN1,N3の電位は2VDDになる。これにより、第1のフライングコンデンサC1の第2の端子にVDDが印加され、第2のフライングコンデンサC2の第4の端子が接地されると共に、第1のフライングコンデンサC1の第1の端子と第2のフライングコンデンサC2の第3の端子が短絡された状態で、第2のフライングコンデンサC2が2VDDに充電される。
【0026】
次に、第4の相において、SW2、SW3、SW5、SW8がオンし、その他のスイッチはオフする。すると、ノードN1の電位はVDDになり、ノードN2の電位はVSSになる。また、ノードN4はVSSからVDDに変化する。これにより、第1のフライングコンデンサC1はVDDとVSSの間に接続されて充電されると共に、ノードN3の電位は第2のフライングコンデンサC2の容量結合により2VDDから3VDDに変化する。つまり、第2のフライングコンデンサC2の放電によりその第3の端子からスイッチSW5(本発明の第2のスイッチの一例)を介して、第1の出力端子P1から3VDDの出力電位が得られる。
【0027】
次に、第1の相に戻り、SW1、SW4、SW9がオンし、その他のスイッチはオフする。すると、ノードN2の電位はVSSからVDDに変化し、ノードN4はVDDからVSSに変化する。ノードN1とノードN3は短絡される。これにより、第1のフライングコンデンサC1、C2の容量結合により、ノードN1、ノードN2の電位は3VDDから2VDDに変化する。
【0028】
そして、第1の相から第4の相の動作が繰り返し行われることにより、第1の出力端子P1から3VDDの出力電位が、第2の出力端子P2から−2VDDの電位が安定して得られる。
【0029】
このように、上述のチャージポンプ回路によれば、プラス昇圧部の最終段の第2のフライングコンデンサC2をマイナス昇圧部と共用しているので、従来方式に比べるとフライングコンデンサの数を1つ削減することができる。またそれに伴い、スイッチの数も2つ削減することができる。さらに、マイナス昇圧はプラス昇圧電位を元に生成しないため、それぞれの相関関係がなくなり、マイナス昇圧の出力部に急に負荷が加わっても、プラス昇圧の出力電位の低下を防止できる。
【0030】
本実施形態においては、プラスの昇圧電位3VDDとマイナス昇圧電位−2VDDを得るチャージポンプ回路について説明したが、本発明はこれに限らず、さらに多段のチャージポンプ回路に適用することができる。即ち、プラス昇圧部については、図5の従来方式のように構成し、その最終段に第2のフライングコンデンサC2とスイッチSW5〜SW9(図1の破線で囲まれた回路部)を付加すればよい。一般に、最終段の前段までのプラス昇圧部の段数をN段とすると、プラス昇圧電位(N+2)VDDとマイナス昇圧電位−(N+1)VDDを得ることができる。この場合、本実施形態のチャージポンプ回路はN=1に該当する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態によるチャージポンプ回路の回路図である。
【図2】本発明の実施形態によるチャージポンプ回路のスイッチのオンオフの状態を示す図である。
【図3】本発明の実施形態によるチャージポンプ回路のフランイングコンデンサの状態を示す図である。
【図4】本発明の実施形態によるチャージポンプ回路の動作を示す波形図である。
【図5】従来例のチャージポンプ回路の回路図である。
【図6】従来例のチャージポンプ回路のスイッチのオンオフの状態を示す図である。
【符号の説明】
【0032】
SW1〜SW9 スイッチ
C1 第1のフライングコンデンサ
C2 第2のフライングコンデンサ
P1 第1の出力端子
P2 第2の出力端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の端子と第2の端子を有する第1のフライングコンデンサと、
第3の端子と第4の端子を有する第2のフライングコンデンサと、
スイッチング回路と、を備え、
前記スイッチング回路は、第1の相において、第2の端子に電源電位を印加し、第4の端子に接地電位を印加すると共に、第1の端子と第3の端子を短絡して第2のフライングコンデンサを充電し、
第2の相において、第1の端子に電源電位を印加し、第2の端子に接地電位を印加すると共に、第3の端子に接地電位を印加して第2のフライングコンデンサを放電することにより第4の端子からマイナスの出力電位を出力し、
第3の相において、第2の端子に電源電位を印加し、第4の端子に接地電位を印加すると共に、第1の端子と第3の端子を短絡して第2のフライングコンデンサを充電し、
第4の相において、第2の端子に接地電位を印加し、第1の端子に電源電位を印加すると共に、第4の端子に電源電位を印加して第2のフライングコンデンサを放電することにより第3の端子からプラスの出力電位を出力するように制御することを特徴とするチャージポンプ回路。
【請求項2】
前記スイッチング回路は、前記第4の端子とマイナスの出力電位を出力する出力端子との間に接続された第1のスイッチと、前記第3の端子とプラスの出力電位を出力する出力端子との間に接続された第2のスイッチを備え、第1のスイッチは前記第2の相においてのみ導通し、第2のスイッチは前記第4の相においてのみ導通することを特徴とする請求項1に記載のチャージポンプ回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−271471(P2008−271471A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−115244(P2007−115244)
【出願日】平成19年4月25日(2007.4.25)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(506227884)三洋半導体株式会社 (1,155)
【Fターム(参考)】