説明

チロシナーゼ阻害剤、その製法およびその応用

【課題】安全性の高いローズヒップのような素材を原料としたチロシナーゼ阻害剤の提供およびローズヒップを原料として、有効成分の量の変動がない工業的に有効なチロシナーゼ阻害剤の製造方法の提供。
【解決手段】ローズヒップの抽出物を有効成分として含有するチロシナーゼ阻害剤およびノバラの全草、偽果、果実、果皮またはそれらの混合物を水、アルコール類およびそれらの混合物からなる群から選択される抽出溶媒を用いて抽出することを特徴とする上記チロシナーゼ阻害剤の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローズヒップの抽出物を有効成分として含有するチロシナーゼ阻害剤、その製造方法、およびそれを含有する食品及び化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、美容には痩身、美肌、美白などの要素が知られており、シミ、ソバカスや色黒、老人斑、傷ややけど等の炎症後の色素沈着は美容上問題視されている。特に女性において美白に関する意識が高まっている。それらの色素沈着は、紫外線や炎症などの刺激が真皮組織中のメラノーマ細胞を活性化し、メラノーマ細胞に内在する酵素のチロシナーゼが生体成分のチロシンを酸化重合反応させ、黒褐色の色素であるメラニンを産生する機構が明らかにされている。このことから、チロシナーゼの活性を阻害することにより美白効果を得ることを目的として、種々の動植物抽出物を配合した美容飲食品及び化粧料が提案されてきた。
【0003】
一方、ローズヒップはハーブティーやジャムなどに利用されおり、ビタミンCやリコピン、ビタミンPを多く含むことから健康食品の素材としても人気が高く、美容によい食品素材としても利用されている。近年、その美容効果を科学的に検証し、飲食品や化粧料の開発が行われている。例えば、肌の保湿成分であるヒアルロン酸の産生促進剤(特許文献1)、シワやタルミを発生させる要因と考えられるエラスターゼの阻害剤(特許文献2)、痩身を目的とした脂肪分解促進剤(特許文献3)、脂肪代謝改善組成物(特許文献4)などがある。さらに、美白剤であるコウジ酸等の経皮吸収性促進剤(特許文献5)としての利用技術がある。
【0004】
これらの特許文献に記載の飲食品や化粧料には、美容効果の中でも女性に関心の高い美白効果を提供するものはない。特に、特許文献5の技術に関しても、ローズヒップは経皮吸収作用を有することを発明したもので、美白効果の有効成分をコウジ酸及び/又はコウジ酸の誘導体とし、それらの配合を必須とした技術である。
【特許文献1】特開2001−163794号公報
【特許文献2】特開2002−205950号公報
【特許文献3】特開2005−60366号公報
【特許文献4】特開2006−16312号公報
【特許文献5】特開平07−25740号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、安全性の高いローズヒップのような素材を原料としたチロシナーゼ阻害剤の提供を目的とする。また、本発明では、ローズヒップを原料として、有効成分の量の変動がない工業的に有効なチロシナーゼ阻害剤の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、ローズヒップの抽出物に強いチロシナーゼ阻害活性を見出し、本発明を成すに到った。即ち、ローズヒップの抽出物を有効成分として含有するチロシナーゼ阻害剤を提供する。
【0007】
また、本発明では、ローズヒップの抽出物は、ポリフェノール類を主成分として含有する。
【0008】
上記ローズヒップの抽出物は、好ましくは水、アルコール類およびそれらの混合物からなる群から選択される抽出溶媒を用いて抽出される。抽出は、通常、室温または加熱条件下に行われる。
【0009】
本発明では、また、ローズヒップは、ノバラの全草、偽果、果実、果皮またはそれらの混合物であるのが好ましい。
【0010】
本発明のチロシナーゼ阻害剤は、種々の食品または化粧料に使用することができる。
【0011】
また、本発明は、上記チロシナーゼ阻害剤およびその応用の製造に際して、工程中の品質管理試験としてポリフェノール類の定量を行うことによって、効果を一定に保証できる製造方法を提供するものである。即ち、本発明は、ローズヒップが抽出溶媒を用いて抽出されることを特徴とする上記チロシナーゼ阻害剤の製造方法を提供する。
【0012】
本発明のローズヒップの抽出物の製造法では、抽出物中のポリフェノール含有量を測定して品質を一定に保つことが可能である。
【発明の効果】
【0013】
従来のローズヒップを配合した健康食品や化粧料は、ビタミンCを含有することから間接的に美白効果を期待するものがあった。しかし、驚くべきことに、本発明のローズヒップの抽出物には、ビタミンCを含まないか、または含まれていても微量である。実際、ローズヒップの熱水抽出物及び含水アルコールの還流抽出物にビタミンCは含まれていないことが本発明において確認された。また、従来、ローズヒップの抽出物がチロシナーゼ阻害剤作用を有するとの報告は知られていない。本発明では、ローズヒップの抽出物中に、ビタミンCが含まれていないことと、ビタミンCに由来しないチロシナーゼ阻害機能を発揮することを新たに見出したのである。
【0014】
従来のローズヒップの抽出物は飲食品や化粧料に利用に利用されることがあったが、
チロシナーゼ阻害機能を目的として利用されたものはない。本発明では、ローズヒップの抽出物のチロシナーゼ阻害活性に注目し、さらにそのチロシナーゼ阻害活性は、ローズヒップに含まれるポリフェノールによるものであることも確認した。本発明は、これまで注目されることがなく利用されてこなかった、ローズヒップのポリフェノールに新たな利用法として美白効果を見出したものである。
【0015】
ローズヒップは天産物であり産地や収穫時期等によってその内容成分が変動する恐れがあるが、従来の技術では有効成分が特定されておらず、工業的に製造する際、品質管理上、効果の保証ができないなどの問題があった。本発明では、ローズヒップの抽出物に含まれるポリフェノール含量を測定し、チロシナーゼ阻害活性との相関を評価したところ、正の相関を持つことを発見した。この知見に基づき、本発明では、ローズヒップのチロシナーゼ阻害活性を有効かつ効果的に利用する方法を新たに見出したのである。
【0016】
本発明では、食経験が豊富で安全性の高いローズヒップのような素材を原料としたチロシナーゼ阻害剤を提供することができる。
【0017】
本発明のチロシナーゼ阻害剤は、肌のメラニンの沈着を抑制し、シミ、ソバカスや色黒、老人斑、傷ややけど等の炎症後の色素沈着を予防及び改善することができる。本発明のチロシナーゼ阻害剤は食品及び化粧料の形態で使用される。
【0018】
本発明は、長年の食経験があって安全なローズヒップから抽出されるポリフェノールは優れたチロシナーゼ阻害活性を有しており、美容上問題となる、シミ、ソバカス、色黒、老人斑、傷ややけど等の炎症後の色素沈着を予防及び改善する美白効果を有するチロシナーゼ阻害剤、飲食品及び化粧料を提供することができる。また、品質管理の一環として、製造の際にポリフェノールを定量することで美白効果を一定に保証できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明において、ローズヒップは、バラ科バラ属に属するノバラのロサ・カニーナ(Rosa canina)、ロサ・ラビジノーサ(R.rubiginosa)、ロサ・センチフォリア(R.centifolia)、ロサ・ルゴーサ(R.rugosa)、ロサ・ダマリス(R.dumalis)、ロサ・モリス(R.molis)、及びロサ・シェラディー(R.sheradii)などに属する1種又は2種以上の植物体である。ローズヒップは、その全草、好ましくは偽果及び果実、さらに好ましくは果皮部分を用いることができる。
【0020】
ローズヒップの抽出は常法により得ることができ、例えば、各植物をそれぞれ抽出溶媒とともに浸漬または加熱還流して抽出する。抽出により得られた抽出液は、必要に応じてろ過や濃縮を行ってもよい。抽出溶媒としては、通常、用いられる溶媒であれば任意に用いることができる。例えば、水、アルコール類(例えば、エタノール、メタノール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン等)、含水アルコール類(即ち、水とアルコール類との混合物)、その他の有機溶媒(例えば、クロロホルム、ジクロロエタン、四塩化炭素、アセトン、酢酸エチル、ヘキサン等)を、それぞれ単独あるいは組み合わせて用いることができ、好ましくは水または含水エタノールを用いることができる。
【0021】
上記溶媒で抽出して得た抽出液をそのまま、あるいは濃縮した抽出物を吸着法、例えばイオン交換樹脂や逆層吸着剤を用いて不純物を除去したものや、ポーラスポリマー(例えばアンバーライトXAD7HP)等の充填剤を充填したカラムを用いて精製し、濃縮したものをチロシナーゼ阻害剤として使用することができる。また、分配法、例えば水/酢酸エチルで抽出する方法も用いることができる。
【0022】
本発明のチロシナーゼ阻害剤には、「ポリフェノール」が有効成分として含まれている。「ポリフェノール」とは、アルカリ溶液中でフォリン‐デニス試薬中のモリブデン酸を還元して青色を呈する成分を意味する。また、好ましくは、ポリフェノールのうち塩酸―ブタノール溶液中で加熱する時、赤色を呈する成分のプロアントシアニジンを含有する抽出物が用いることができる。
【0023】
本発明では、ローズヒップの抽出物中のポリフェノールの量を測定することにより、チロシナーゼ阻害活性の程度を確認することができる。なぜならば、ローズヒップの抽出物中のポリフェノールの量と、チロシナーゼ阻害活性の程度とが、後述の実施例に示されているように、線形的相関関係を有していることが確認されたからである。この関係から、ローズヒップの産地や収穫時期等によってその抽出物の内容成分が変動することがあっても、チロシナーゼ阻害活性の程度を予め抽出物の時点で確認することができるのである。このことにより、工業的に製造する場合に、品質管理を確実に行うことができ、効能の均一性が確保できる。
【0024】
ポリフェノールの量は、特に制限されないが、好ましくは、アルカリ溶液中でFolin−Ciocalteu reagantと反応させて呈する青色を比色定量する方法が用いられる。この方法によって、本発明のチロシナーゼ阻害剤中のポリフェノールの量が確認でき、それによりチロシナーゼ阻害活性の程度がほぼ確実に予測することができる。本発明のポリフェノール含有量の測定は、ローズヒップの抽出、濃縮及びチロシナーゼ阻害剤の配合等、飲食品及び化粧料の製造のどの工程中で行ってもよい。
【0025】
ポリフェノール含有量の測定は、より具体的には、ローズヒップの抽出物にFolin−Ciocalteu reagant を加えた後、炭酸ナトリウム溶液を加え加熱する。その後冷却して、波長685nmの吸光度を測定することにより行われる。なお、標準物質として没食子酸を用い、没食子酸換算でポリフェノール含量を測定する。
【0026】
チロシナーゼ阻害剤の応用
本発明のチロシナーゼ阻害剤は、それ自体を粉剤、錠剤、シロップ剤又はカプセル剤の形状にして服用してもよい。また、本発明のチロシナーゼ阻害剤は、食品(例えば、ヨーグルト、アイスクリーム、飴、ガム、菓子、パン、めん類など)に配合し、美容・美白効果を有する食品としても使用することができる。さらに、本発明のチロシナーゼ阻害剤は、水やその他の溶剤に溶解し、必要に応じて糖類や甘味料、酸味料、香料等を添加し、飲料(例えば、飲料水、乳飲料、炭酸飲料、ドリンク剤)としても使用することができる。本発明では、飲料も食品に含むこととする。
【0027】
本発明のチロシナーゼ阻害剤は、化粧料中に配合して、皮膚から吸収することも可能である。化粧料としては、化粧水、乳液、クリーム、パック、洗顔料、ファンデーションなど一般的なものが上げられる。
【0028】
チロシナーゼ阻害剤の使用量
本発明のチロシナーゼ阻害剤の使用量は、その使用形態に応じて大きく変化してよいが、薬剤として経口薬剤として使用する場合は、抽出液の濃縮エキスの形態で、成人60Kgに対して0.01〜20.0g/日、好ましくは0.02〜10.0g/日、より好ましくは0.03〜0.6g/日である。0.01g/日より少ないと、チロシナーゼ阻害活性の有効性が認識しにくい。20.0g/日よりも多量でも特に弊害は見られないが、摂取量に比例したチロシナーゼ阻害活性が見られなくなるおそれがある。
【0029】
食品として使用する場合は、チロシナーゼ阻害剤の使用量は食品の形態に応じて大きく変化してよく、例えば食品全体量に対して0.0005〜20.0重量%、好ましくは0.01〜10.0重量%、より好ましくは0.25〜6.0重量%であってよい。食品として使用する場合は、多量の使用も可能であるが、上限として薬剤としての一日の摂取量が目安となる。
【0030】
化粧料
本発明のチロシナーゼ阻害剤は、表皮への異常なメラニン色素沈着予防効果等の美白効果に優れている。そのため、美白化粧料として好適に用いることができる。
【0031】
本発明の化粧料において、ローズヒップの抽出物の含有量は、化粧料全体に対し、0.0005〜20.0重量%程度、好ましくは0.001〜10.0重量%程度である。
【0032】
本発明の化粧料は、上記有効成分に、更に、他の美白剤、紫外線吸収剤及び角化改善剤からなる群から選ばれた1種又は2種以上を配合することにより、美白効果が更に向上し、また、メラニン抑制効果の向上のみならず、日焼けの予防効果を有する美白化粧料として用いることができる。
【0033】
上記他の美白剤としては、アラントイン、ビタミンC、ビタミンE誘導体、グリチルリチン、アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム塩等のアスコルビン酸誘導体、コージ酸、アルブチン、パンテチン酸誘導体、プラセンタエキス、抗炎症剤、ヨクイニン、緑茶、葛根、桑白皮、甘草、オウゴン、アロエ、橙皮、カミツレ、霊芝等の各種生薬・植物抽出物等の公知の美白剤が挙げられる。上記美白剤の配合量は、化粧料全体に対し、好ましくは0.0001〜40重量%、更に好ましくは0.01〜20重量%である。
【0034】
また、上記紫外線吸収剤としては、ジベンゾイルメタン誘導体、ケイ皮酸エステル誘導体、ベンゾフェノン誘導体、p−アミノ安息香酸誘導体等の有機系紫外線吸収剤、及び亜鉛華、雲母、雲母チタン、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム等の無機系紫外線吸収剤等が挙げられる。上記紫外線吸収剤の配合量は、美白化粧料全体に対し、好ましくは0.1〜20重量%、更に好ましくは0.5〜10重量%である。
【0035】
また、上記角化改善剤としては、スフィンゴシン誘導体や特開平5−194185号公報に記載のアミン誘導体等が挙げられる。上記角化改善剤の配合量は、粧料全体に対し、好ましくは0.0001〜40重量%、更に好ましくは0.01〜20重量%である。
【0036】
また、本発明の美白化粧料には、上記有効成分、上記の公知の美白剤、上記紫外線吸収剤、上記角化改善剤以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の成分を配合することができる。上記の任意の成分は、化粧料の剤型に応じて、公知の皮膚外用剤や顔面化粧用化粧料に通常配合される成分、例えば、精製水、エタノール、油状成分、保湿剤、増粘剤、防腐剤、乳化剤、薬効成分、粉体、香料、乳化安定剤、pH調整剤等が用いられる。
【0037】
具体的には、上記油状成分としては、流動パラフィン、ワセリン、パラフィンワックス、スクワラン、ミツロウ、カルナバロウ、オリーブ油、ラノリン、高級アルコール、脂肪酸、高級アルコールと脂肪酸の合成エステル油、シリコーン油、フッ素系油剤等が挙げられる。
【0038】
また、上記保湿剤としては、ソルビトール、キシリトール、グリセリン、マルチトール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム、ポリオキシプロピレン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0039】
また、上記増粘剤としては、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、カラギーナン、ゼラチン等の水溶性高分子、塩化ナトリウム、塩化カリウム等の電解質等が挙げられる。
【0040】
また、上記防腐剤としては、尿素、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。
【0041】
また、上記乳化剤としては、レシチン、水素添加レシチン、α−モノアルキルグリセリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、シリコーン乳化剤等が挙げられる。
【0042】
また、上記薬効成分としては、抗ヒスタミン剤(塩酸ジフェドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン、グリチルリチン酸誘導体等)、ホルモン類(エストラジオール、エストロン、エチルエストラジオール、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン等)等が例示される。
【0043】
また、上記粉体としては、タルク、セリサイト、マイカ、カオリン、シリカ、ベントナイト、バーミキュライト、硫酸バリウム、ベンガラ、酸化鉄、群青等が挙げられる。
【0044】
また、上記香料としては、リモネン、リナノール、シトラール、β−イオノン、ベンジルベンゾエート、インドール、オイゲノール、オーランチオール、ゲラニオール、リラール、ダマスコン、ベンジルアセテート、ジャスミンラクトン、ガラクソリッド、精油等が挙げられる。
【0045】
また、上記pH調整剤としては、乳酸−乳酸ナトリウム、クエン酸−クエン酸ナトリウム等の緩衝剤が挙げられる。
【0046】
本発明の化粧料は、常法により種々の形態にすることができ、その形態には特に制限されないが、一般には、ローション状、乳液状、クリーム状、軟膏状、スティック状、有機溶媒や精製水などによる溶液状、パック状、ゲル状等とするのが好ましい。即ち、本発明の美白化粧料は、ローション、オイルエッセンス、O/W型又はW/O型のクリーム、乳化型化粧料、パック、軟膏、美白ファンデーション等の美白化粧料や、化粧乳液、化粧水、油性化粧料、口紅、ファンデーション、皮膚洗浄剤、ヘアトニック、整髪剤、養毛剤、育毛剤、浴用剤、シャンプー、リンス等の皮膚外用剤として使用される。
【0047】
本発明の化粧料は、紫外線による皮膚の炎症、しみ、そばかす、日焼け後の色素沈着部等の患部に局所的に適用することにより、該部位を治療・改善し正常な皮膚色に戻すことができるものであり、また、予め局所的に適用した場合には、上記症状を予防することができるものである。
【0048】
本発明のポリフェノール含有量の測定は、ローズヒップの抽出、濃縮及び該阻害剤の配合等、飲食品及び化粧料の製造のどの工程中で行ってもよく、その測定法は特に制限されないが、好ましくは、アルカリ溶液中でFolin−Ciocalteu reagantと反応させて呈する青色を比色定量する方法が用いられる。上記測定法によってその含有量を一定に保つことで、製品のチロシナーゼ阻害活性を一定に保証できる製造方法を提供することができる。
【実施例】
【0049】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はなんら限定されるものではない。
【0050】
試料の調製
(製造例1)
ローズヒップ(Rosa caninaの偽果)の乾燥物から、種子を取り除いた果皮と果肉部分(シェル)50gに抽出溶媒として精製水500mlを加え還流条件下で1時間抽出し、ろ過し、ろ液を減圧下で濃縮乾固してシェル水抽出物25.6gを得た。
【0051】
(製造例2)
抽出溶媒を50%エタノールに変更した以外は製造例1と同様にして、シェル50%エタノール抽出物21.9gを得た。
【0052】
(製造例3)
抽出溶媒を100%エタノールに変更した以外は製造例1と同様にして、シェルエタノール抽出物3.0gを得た。
【0053】
(製造例4)
ローズヒップ(Rosa caninaの偽果)の乾燥物から取り出した種子、50gに抽出溶媒として50%エタノール、500mlを加え還流条件下で1時間抽出し、ろ過し、ろ液を減圧下で濃縮乾固して種子50%エタノール抽出物2.4gを得た。
【0054】
(製造例5)
ローズヒップ(Rosa caninaの偽果)の乾燥物の粉砕物を製造例4と同様に抽出して、ホール50%エタノール抽出物18.3gを得た。
【0055】
(製造例6)
シェル50%エタノール抽出物のポリフェノール含有量を高めるために、カラム処理を行った。具体的には、蒸留水に溶解した製造例2で得られた抽出物1.15gを、あらかじめ、メタノール、50%メタノール、蒸留水の順で洗浄したC18カートリッジカラム(Warers Sep−Pak Vac 35cc C18)に供した。蒸留水100ml、0.2%TFA/メタノール溶液100mlの順で20ml/min以下の流速で溶出した。0.2%TFA/メタノール溶出画分を減圧下で濃縮乾固してシェル50%エタノール抽出物のポリフェノール画分270mgを得た。
【0056】
(製造例7)
供試物を製造例2のシェル50%エタノール抽出物から製造例5のホール50%エタノール抽出物に変更した以外は製造例6と同様にして、ホール50%エタノール抽出物のポリフェノール画分323mgを得た。
【0057】
上記製造例1〜7で得た抽出物を用いて以下の実験を行った。
【0058】
ビタミンC含有の確認;シリカゲル薄層クロマトグラフィーに0.2%のビタミンC溶液と被検液を並べてスポットし、アセトン/酢酸/メタノール/トルエン(5/5/20/7)の混合溶媒で展開し、0.02%ジクロロインドフェノール溶液で発色させて、ビタミンC含有の有無を確認した。その結果、製造例1〜7にビタミンCのスポットは確認されなかった。
【0059】
チロシナーゼ阻害活性の測定;pH6.5、50mMに調整したリン酸緩衝液0.07mlと、基質として12mMのドーパ溶液0.1ml、2μlの被検溶液(ジメチルスルホキシド、エタノール、水、もしくはそれらの混合液に製造例1〜7の抽出物を溶解)を96穴マイクロプレートに分注した。5分間、30℃にプレインキュベートした後、0.03mlのチロシナーゼ溶液(666U/ml)を加え、15分間、30℃でインキュベートした。反応終了後、波長490nmの吸光度を測定した。また、同様の操作及び吸光度測定を、基質を添加せずに蒸留水を用いて行った。さらに、試料溶液を添加せずに試料を溶かす溶媒に同様の測定を行い、下記の数式によりチロシナーゼ活性阻害率(%)を求めた。
【0060】
チロシナーゼ活性阻害率(%)=〔1−(A−B)/(C−D)〕×100
【0061】
但し、上記数式中、Aは、基質溶液添加,試料溶液添加時の吸光度を意味する。Bは、基質溶液無添加,試料溶液添加時の吸光度を意味する。Cは、基質溶液添加,試料溶液無添加時の吸光度を意味する。Dは、基質溶液無添加,試料溶液無添加時の吸光度を意味する。
そして、試料溶液の濃度を段階的に減少させて前記チロシナーゼ活性阻害率を測定し、阻害率が50%になる試料濃度IC50をプロビット法により求めた(このIC50値が小さいほどチロシナーゼ阻害作用が強い)。結果を表1に示す。
【0062】
【表1】

【0063】
表1の結果から、製造例2、4、5を比較した場合、製造例2が最も活性が強く、シェルに最も強い活性成分があることが確認できた。また、抽出溶媒として、製造例1、2、3を比較した場合、製造例2が最も強く、50%エタノールが有利であることが確認できた。さらに、ビタミンCや糖類を除去した製造例6、7と除去前の製造例2、5を比較した場合、約3〜4倍に活性が強くなっており、活性成分が濃縮されたことが確認された。活性成分が溶出されたのが0.2%TFA/メタノール画分だったことから、活性成分はビタミンCや糖類ではなく、ポリフェノールであることが推測された。
【0064】
ポリフェノール含有量の測定;製造例1〜7の抽出物を0.1%に調整した95%メタノール溶液0.5mlに、蒸留水7ml、Folin−Ciocalteu reagant 0.5mlを加え、3分後、2mlの20%炭酸ナトリウム溶液を加え100℃で1分間加熱した。冷却後、波長685nmの吸光度を測定した。なお、標準物質として没食子酸を用い、没食子酸換算でポリフェノール含量を測定した。
【0065】
上記ポリフェノール含有量でローズヒップ抽出物の品質は十分担保することができるが、ローズヒップのポリフェノールはプロアントシアニジンとフラボノイドとを含有することが知られているので、念のため、プロアントシアニジン含有量とチロシナーゼ阻害活性との相関関係と、フラボノイド含有量とチロシナーゼ阻害活性との相関関係も調べることにする。
【0066】
プロアントシアニジン含量の測定;製造例1〜7の抽出物を0.1%に調整した95%メタノール溶液1mlに、n−ブタノールと濃塩酸混液(95:5)6ml、硫酸アンモニウム鉄・12水和物2%の2N塩酸溶液0.2mlを混合し、栓をした試験管中で95℃、40分間加熱し、冷却後、波長550nmの吸光度を測定した。なお、標準物質としてシアニジン塩酸塩を用い、シアニジン塩酸塩換算でプロアントシアニジン含量を測定した。
【0067】
フラボノイド含量の測定;製造例1〜7の抽出物を0.1%に調整した95%メタノール溶液1mlに、2%の塩化アルミニウム・6水和物のメタノール溶液1mlを加え、10分後に、波長394nmの吸光度を測定し、その吸光度から、塩化アルミニウムメタノール溶液の代わりにメタノールを同量加えた時の吸光度を差し引いた。なお、標準物質としてハイペロシドを用い、ハイペロシド換算でフラボノイド含量を測定した。
【0068】
上記の方法で測定したポリフェノール含量、プロアントシアニジン含量、フラボノイド含量とチロシナーゼ阻害活性の相関を検討した。チロシナーゼ活性の大きさを各抽出物のIC50の逆数とし、各成分の含有量とを散布図上にプロットした結果を図1、2、3に示す。図1より、チロシナーゼ阻害活性(1/IC50)はポリフェノール含量と正の相関があり、相関係数が0.980となり、危険率1%で有意な相関であることが分かった。(回帰式1参照)また、図2、3より、ポリフェノールの構成要素であるうちフラボノイドの含量とは有意な相関は見られなかったが、プロアントシアニジンの含量とは正の相関があり、相関係数が0.980となり、危険率1%で有意な相関であることが分かった。(回帰式2、3参照)さらに、最もチロシナーゼ阻害活性の強かった製造例6のポリフェノールのうち、プロアントシアニジンが79%を占めるのに対し、フラボノイドの量は僅か10%だった。このことからも、ポリフェノールであるプロアントシアニジンがチロシナーゼ阻害活性の本質的な成分となっていると考えられた。
【0069】
<回帰式1> y =1.95*10−5x ‐2.11*10−4
【0070】
但し、上記回帰式中、yはチロシナーゼ阻害活性(1/IC50)を意味する。xは各抽出物のポリフェノール含有量(mg/g)を意味する。
【0071】
<回帰式2> y =2.38*10−5x ‐1.81*10−4
【0072】
但し、上記回帰式中、yはチロシナーゼ阻害活性(1/IC50)を意味する。xは各抽出物のアントシアニジン含有量(mg/g)を意味する。
【0073】
<回帰式3> y =1.31*10−5x ‐2.14*10−4
【0074】
但し、上記回帰式中、yはチロシナーゼ阻害活性(1/IC50)を意味する。xは各抽出物のフラボノイド含有量(mg/g)を意味する。
【0075】
(処方例1)
濃縮グレープフルーツ50g、糖類200g、酸味料0.12g、実施例2と同様の条件で調整したローズヒップの抽出物0.1g及び適量の香料に全体が1000gとなるように精製水を混合した。ついで、200mlづつにビンに充填して75℃で15分間殺菌し、グレープフルーツジュースを製造した。
【0076】
(処方例2)
マイクロクリスタリンワックス10g、ミツロウ20g、ラノリン200g、流動パラフィン100g、スクワラン50g、ソルビタンセスキオレイン酸エステル40g、ポリオキシエチレン(20モル)ソルビタンモノオレイン酸エステル10g、プロピレングリコール70g、実施例2と同様の条件で調整したローズヒップの抽出物10g、亜硫酸水素ナトリウム0.1g、エチルパラベン3g、及び適量の香料に全体が1000gとなるように精製水を混合した。70℃中で加熱溶解し、ホモミキサーで均一に乳化し、乳化後よく撹拌しながら30℃まで冷却して、乳液を製造した。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】実施例1〜7の抽出物のポリフェノール含量とチロシナーゼ阻害活性の相関を示すグラフである。
【図2】実施例1〜7の抽出物のプロアントシアニジン含量とチロシナーゼ阻害活性の相関を示すグラフである。
【図3】実施例1〜7の抽出物のフラボノイド含量とチロシナーゼ阻害活性の相関を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローズヒップの抽出物を有効成分として含有するチロシナーゼ阻害剤。
【請求項2】
ローズヒップの抽出物が、ポリフェノール類を主成分としている請求項1記載のチロシナーゼ阻害剤。
【請求項3】
ローズヒップの抽出物が、水、アルコール類およびそれらの混合物からなる群から選択される抽出溶媒を用いて抽出される請求項2記載のチロシナーゼ阻害剤。
【請求項4】
抽出が、室温または加熱条件下に行われる請求項3記載のチロシナーゼ阻害剤。
【請求項5】
ローズヒップが、ノバラの全草、偽果、果実、果皮またはそれらの混合物である請求項1記載のチロシナーゼ阻害剤。
【請求項6】
請求項1記載のチロシナーゼ阻害剤を含有する食品。
【請求項7】
請求項1に記載のチロシナーゼ阻害剤を含有する化粧料。
【請求項8】
ローズヒップが抽出溶媒を用いて抽出されることを特徴とする請求項1記載のチロシナーゼ阻害剤の製造方法。
【請求項9】
抽出溶媒が、水、アルコール類およびそれらの混合物からなる群から選択される請求項8記載のチロシナーゼ阻害剤の製造方法。
【請求項10】
抽出が、室温または加熱条件下に行われる請求項9記載のチロシナーゼ阻害剤の製造方法。
【請求項11】
ローズヒップが、ノバラの全草、偽果、果実、果皮またはそれらの混合物である請求項10記載のチロシナーゼ阻害剤の製造方法。
【請求項12】
抽出物中のポリフェノール含有量を測定して品質を一定に保つ請求項8記載のチロシナーゼ阻害剤の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−261987(P2007−261987A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−88380(P2006−88380)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(592004998)三基商事株式会社 (12)
【Fターム(参考)】