説明

ツーピースクリップ

【課題】ピン部材をベース部材に仮保持されている状態で、ピン部材が不用意に押込みされることを防止する。
【解決手段】ピン部材3をベース部材2の挿通孔に挿通すると、この挿通孔に設けられている被係合部6が、ピン部材3の弾性片に設けた仮保持用係合部3gに係合して、ピン部材3をベース部材2を仮保持させる。この被係合部6は、ピン部材3の挿入方向に対して逆テーパ状に形成されているため、ピン部材3をそれ以上押し込むことができず、ピン部材3が不用意に押し込まれることはない。又この仮保持状態は、弾性片に設けられている操作部3iを両側から摘むことで簡単に解離することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被取付孔に取付けるベース部材と、このベース部材に装着することでベース部材を被取付孔に固定するピン部材とを有するツーピースクリップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば車両の内装部品を車体パネルに取付ける場合の固定手段に、ツーピースクリップが多く採用されている。ツーピースクリップ は、例えば特許文献1(米国特許第5,560,575号公報)に開示されているように、車体パネル等に穿設されている被取付孔に装着されるベース部材と、このベース部材に装着することでベース部材を被取付孔に固定するピン部材とを有している。
【0003】
ところで、ベース部材とピン部材とが別々に搬入された場合、部品管理が煩雑化するばかりでなく、ベース部材にピン部材を一々装着する手間がかかるため、例えば特許文献2(特許第3825608号公報)に開示されているように、ベース部材に対してピン部材が仮保持できる構造とすれば、両部品を仮保持した状態で搬送することができるため、部品管理が容易となり、使い勝手が良くなる。
【0004】
更に、ベース部材にピン部材を仮保持した状態で搬入することで、ベース部材を被取付孔に装着した後、仮保持されているピン部材をベース部材に押し込むだけで、本止めすることができるため、作業効率が向上する。
【特許文献1】米国特許第5,560,575号公報
【特許文献2】特許第3825608号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した特許文献2に開示されている技術では、ピン部材をベース部材に押し込むだけで本止めされてしまうため、例えば搬送中の振動等により部品同士が接触した場合、ピン部材がベース部材に不用意に押し込まれて、本止め状態となってしまう場合もある。ピン部材がベース部材に本止めされて搬入された場合、ピン部材を仮保持位置に戻す作業が必要となり、手間がかかる不都合がある。
【0006】
この対策として、搬送中のピン部材が誤って本止めされないように、仮保持時の保持力を強くすることも考えられるが、一般に、ピン部材の本止めは作業者の手作業に依存している場合が多く、仮保持時の保持力が強いとピン部材の押込み抵抗が大きくなり、本止め作業時における作業者の負担が増加し、作業効率が低下する問題がある。
【0007】
したがって、本発明の目的は、ピン部材をベース部材に仮保持されている状態でのピン部材の不用意な押込みが防止され、且つ、仮保持されているピン部材を本止めする際の押込み抵抗を増大させることなく、容易に押し込むことができて良好な作業性を得ることのできるツーピースクリップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の第1は、被取付孔に装着するベース部材と該ベース部材に係合するピン部材とから成り、
前記ベース部材は、前記ピン部材が挿通される挿通孔と、前記被取付孔の表面外縁に当接する当接部と、該被取付孔の裏面外縁に係合する係合片と、前記挿通孔に設けられて前記ピン部材に係合すると共に該ピン部材の挿入方向に対して逆テーパ或いは直交する方向へ延出する被係合部とを有し、
前記ピン部材は、所定挿入位置で前記係合片の内側への撓みを規制する本体部と、該本体部の挿入端から基端側へ延出され、その先端に設けられた操作部を摘むことで内方に撓み可能とされた弾性片と、該弾性片に設けられて前記係合片の内側への撓みを規制しない第1位置で前記被係合部に係合する仮保持用係合部と、前記係合片の内側への撓みを規制する第2位置で前記ベース部材に係合する本止め用係合部とを有していることを特徴とするツーピースクリップを提供するものである。
【0009】
このような構成では、ピン部材をベース部材の挿通孔に挿通すると、この挿通孔に設けられている被係合部が、ピン部材の弾性片に設けられた仮保持用係合部に係合して、このピン部材を、係合片の内側への撓みを規制しない第1位置で仮保持させる。この被係合部は、ピン部材の挿入方向に対して逆テーパ或いは直交する方向へ延出されているため、ピン部材をそれ以上押し込むことができない。従って、ピン部材がベース部材に対し、第1位置で仮保持されている状態では、ピン部材が不用意に押し込まれることはない。
【0010】
この状態で、ベース部材を被取付孔に装着すると、このベース部材に設けられている当接部が被取付孔の表面外縁に当接し、係合片が内側に撓んで被取付孔を通過し、被取付孔の裏面外縁に係合して、仮固定される。
【0011】
次いで、ピン部材の先端に設けられている操作部を摘んで、仮保持用係合部の被係合部に対する係合を解除した後、この操作部あるいは本体部を押圧して、ピン部材をベース部材に形成されている挿通孔に沿って押込む。すると、ピン部材の本体部が係合片の内側への撓みを規制する第2位置に移動し、その位置でピン部材の本止め用係合部がベース部材に係合して本止めされる。その結果、ベース部材の係合片が内側に撓めなくなり、被取付孔に強固に固定される。
【0012】
このように、仮保持されているピン部材を本止めするに際して、ピン部材の弾性片に形成されている操作部を摘んで仮保持用係合部の被係合部に対する係合を解除するようにしたので、ピン部材を本止めする際の押込み抵抗が増大せず、容易に押し込むことができて良好な作業性を得ることができる。
【0013】
本発明の第2は、前記第1の発明において、前記ピン部材の本体部は、その基端側が前記係合片の基端側内面に当接又は近接するように比較的厚く形成され、その先端側が前記第1位置で前記係合片の内面に対して所定の空隙が設けられるように比較的薄く形成されており、
前記ベース部材の係合片は、その先端の内面側に凸部を有しており、該凸部は、前記第2位置で前記ピン部材の本体部の先端側に当接又は近接するように構成されているツーピースクリップを提供するものである。
【0014】
このような構成では、第1位置において、係合片がピン部材の本体部の先端部との間に形成された空隙によって内側に撓み可能とされるため、ピン部材の本体部をできるだけ深く挿入した状態で仮止めさせることができる。また、第1位置から更にピン部材を挿入して本止めさせた第2位置では、係合片の先端の内面側に形成された凸部が、ピン部材の本体部の先端部に当接又は近接して内側への撓みを規制されるので、第1位置から第2位置への押し込み量を比較的短くすることができる。
【0015】
本発明の第3は、前記第1又は第2の発明において、前記ベース部材に形成されている前記挿通孔に、前記ピン部材の本体部をガイドするガイド溝が形成されているツーピースクリップを提供するものである。
【0016】
このような構成では、ベース部材に形成されている挿通孔に、ピン部材の本体部をガイドするガイド溝が形成されているので、ピン部材をベース部材に対してスムーズに装着することができる。また、ピン部材の先端に設けられている操作部を摘んで、仮保持用係合部の被係合部に対する係合を解除して、ピン部材をベース部材に形成されている挿通孔に沿って更に押込む際に、ピン部材が挿通孔内でガタ付くことを防止できる。
【0017】
本発明の第4は、前記第1〜3のいずれか1つの発明において、前記弾性片は前記本体部の両側に設けられているツーピースクリップを提供するものである。
【0018】
このような構成では、ピン部材に設けられている弾性片が本体部の両側に設けられているので、ピン部材をベース部材にバランス良く係合させることができる。また、ピン部材の先端に設けられている操作部を摘んで、仮保持用係合部の被係合部に対する係合を解除して、ピン部材をベース部材に形成されている挿通孔に沿って更に押込む際の操作がしやすくなる。
【0019】
第5発明は、前記第1〜4のいずれか1つの発明において、前記ピン部材の本止め用係合部は、前記弾性片に設けられており、前記ベース部材は、前記ピン部材が前記第2位置にあるときに前記操作部を露呈させる切欠き部を有しているツーピースクリップを提供するものである。
【0020】
このような構成では、ベース部材に、ピン部材が第2位置にあるときに操作部を露呈させる切欠き部が設けられているので、この操作部を把持して本止め用係合部の係合を解除し、工具を用いることなくピン部材をベース部材から容易に取り外すことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ベース部材設けられている被係合部が、ピン部材の挿入方向に対して逆テーパ或いは直交する方向へ延出されているため、ピン部材をそれ以上押し込むことができず、従って、ピン部材がベース部材に対して第1位置で仮保持されている状態では、ピン部材が不用意に押し込まれることはなく、取扱性がよい。
【0022】
また、ベース部材に仮保持されているピン部材を本止めするに際しては、ピン部材の弾性片に設けられている操作部を摘んで仮保持用係合部の被係合部に対する係合を解除するようにしたので、ピン部材を本止めする際の押込み抵抗が増大せず、容易に押し込むことができ、良好な作業性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面に基づいて本発明によるツーピースクリップの実施形態を説明する。
[第1実施形態]
図1〜図11に本発明の第1実施形態によるツーピースクリップを示す。図1はツーピースクリップの分解斜視図、図2はベース部材の斜視図、図3はピン部材の斜視図である。
【0024】
図1に示すように、ツーピースクリップ1は、合成樹脂製のベース部材2と、このベース部材2に挿抜自在な合成樹脂製のピン部材3とを備えている。尚、以下の説明では、便宜的にベース部材2の前後、上下方向を、図1に示されている状態を基準として説明する。
【0025】
又、本実施形態で採用するツーピースクリップ1は、車両のカーゴルームの側壁面に設けた被取付パネルとしてのインナパネル21に固定されるものであり、インナパネル21にはベース部材2を装着する角形の被取付孔21aが穿設されている。又、ベース部材2に車両の内装部であるサポートバー4が取付けられている。このサポートバー4は、カーゴボート(図示せず)に設けられているフックを掛止させて支持したり、カーゴネットに設けられているフックを掛止させて支持するものである。尚、本実施形態によるツーピースクリップ1は、ベース部材2を用いて内装部品(ガーニッシュやトリムボード等)を車体の被取付パネルに挟持し、ピン部材3でこの挟持状態を保持固定する場合に適用することもできる。
【0026】
図2に示すように、ベース部材2は、その後部に、被取付孔21aに装着される突出部2aが形成されており、この突出部2aの前端に、被取付孔21aの表面外縁に当接する当接部2bが形成されている。更に、この突出部2aの後端に、被取付孔21aの裏面外縁に係合する係合片2cと、この係合片2cとは反対方向へ延出するフック2dとが形成されている(図5(b)参照)。
【0027】
更に、ベース部材2の下部に、前面から背面方向へ貫通する挿通孔5が形成されている。この挿通孔5の上部に、後述するピン部材3の本体部3aをガイドする本体部ガイド溝5aが形成され、下部に、後述するピン部材3の弾性片3bをガイドする弾性片ガイド溝5bが形成され、この両ガイド溝5a,5bで前面視凸型形状をなしている。又、弾性片ガイド溝5bの入り口に、後述するピン部材3の操作部3iを収容する収容凹部5cが形成されている。
【0028】
又、図2、図9(c)に示すように、弾性片ガイド溝5bの底面は、その両側に前部から後方へスリット5dが形成されている。従って、この弾性片ガイド溝5bの底面は前部側を固定端とする片持ちとなっており、その自由端側である後端部に係合片2cが形成されている。又、この係合片2cの裏面に肉厚の凸部2eが形成されており、この凸部2eの前端が前部側から斜面2fを介して連続形成されている。従って、相対的にこの凸部2eに位置する弾性片ガイド溝5bの高さが狭められている。
【0029】
又、図5、図7に示すように、弾性片ガイド溝5bの両側壁部5fの入り口側に被係合部6が突設されている。この被係合部6の前面6aが、ピン部材3の挿入方向に対して逆テーパ状、すなわち、側壁部5fから図5(a)の上方へ傾斜する斜面に形成されている。尚、この被係合部6の前面6aはピン部材3の挿入方向に対して直交する方向、すなわち図5(a)の水平方向へ延出されていても良い。
【0030】
又、図3、図10に示すように、ピン部材3は、本体部3aと弾性片3bとを有している。この本体部3aの上部が、ベース部材2の挿通孔5に形成されている本体部ガイド溝5aに挿通され、又、本体部3aの底面挿入端側に、弾性片ガイド溝5bの底面に形成されている斜面2fに対応する斜面3cが形成され、この斜面3cを介して挿入端側に、所定に肉盗みされた係合保持部3dが連続されている。この係合保持部3dが係合片2cの裏面に形成されている凸部2eに臨まされると係合片2cの内方への撓みが規制される。従って、係合片2cは被取付孔21aの裏面外縁に対する係合状態が保持される。更に、この本体部3aの押圧側端部である前面に、押込み用押圧部3eが形成されている。
【0031】
又、図3、図4に示すように、この係合保持部3dは、その両側が挿入側端部から押圧側端部方向へ拡開するテーパ状に形成されており、ピン部材3をベース部材2の挿通孔5に装着する際にガイドされる。
【0032】
一方、弾性片3bは、本体部3aの挿入端側に連結され、この本体部3aの挿入端側の両側から押圧部方向へ向かって延出する弾性変位部3fを有している。図10(a)に示すように、弾性片3bは、挿入端側から押圧部方向へ向かうと共に側方へ拡開されており、弾性変位部3fの弾性により縮小方向へ弾性変形自在にされている。
【0033】
更に、この弾性片3bの側壁に、仮保持用係合部3gと本止め用係合部3hとが形成されている。更に、この弾性片3の先端側に操作部3iが一体形成されている。又、仮保持用係合部3gは、弾性変位部3fに形成されている。この仮保持用係合部3gは、弾性片ガイド溝5bの側壁部5fに突設されている被係合部6に係合自在にされており、図5(a)、図10に示すように、仮保持用係合部3gが、被係合部6の前面6aに接合する斜面に形成されている。この仮保持用係合部3gが被係合部6に係合された状態では、操作部3iがベース部材2の前面から所定距離L1だけ突出された第1位置にあり、この状態でピン部材3が仮保持される。
【0034】
又、図5(b)に示すように、ピン部材3がベース部材2に仮保持されている状態では、挿入端側に形成されている係合保持部3dが、係合片2cの裏面から所定に離間した位置に保持される。従って、係合保持部3dと係合片2cの裏面との間に空隙が形成されるため、係合片2cは弾性片ガイド溝5b側、すなわち内方への撓みが許容される。この場合、係合保持部3dが肉薄とされて係合片2cとの間に空隙を形成しているので、ピン部材3をできるだけ深く挿入した位置で仮保持させることができる。
【0035】
一方、本止め用係合部3hは、仮保持用係合部3gよりも操作部3i側に形成されており、図8に示すように、本止め用係合部3hは、被係合部6の後端部6bに係合される。この後端部6bは、ピン部材3の挿入方向に対してほぼ直交する方向、すなわち、図8(a)の水平方向へ突出されている。
【0036】
ピン部材3に形成されている本止め用係合部3hが、ベース部材2に形成されている被係合部6の後端部6bに係合されている状態では、ピン部材3の先端に形成されている係合保持部3dが、係合片2cの裏面に形成されている凸部2eに臨まされ、又、操作部3iが弾性片ガイド溝5bに形成されている収容凹部5cに格納される。このように、ピン部材3に形成されている本止め用係合部3hが、ベース部材2に形成されている被係合部6の後端部6bに係合されている状態では、ピン部材3がベース部材2に没入された第2位置で本止めされる。また、係合片2cの裏面に凸部2eを形成して、肉薄とされた係合保持部3dに当接又は近接するようにしたので、ピン部材が仮保持された位置から、本止めされる位置への移動量を小さくすることができ、操作性を向上させることができる。
【0037】
図8(b)に示すように、ピン部材3がベース部材2に本止めされた状態では、ピン部材3に形成されている係合保持部3dが、係合片2cの裏面に形成されている凸部2eに対設されているため、係合片2cの内方への撓みが規制され、この係合片2cは被取付孔21aの裏面外縁に対する係合状態が保持される。
【0038】
次に、このような構成からなるツーピースクリップ1の取付手順について説明する。ツーピースクリップ1は、ベース部材2にピン部材3が仮保持された状態で搬入される。
【0039】
ピン部材3をベース部材2に仮保持するに際しては、先ず、ベース部材2の前面に開口されている挿通孔5の弾性片ガイド溝5bに、ピン部材3の挿入側を装着し、先端側に形成されている押込み用押圧部3eを押圧する。すると、ピン部材3の挿入側端部に形成されている係合保持部3dの両側が押圧側端部方向へ拡開するテーパ状に形成されているため、このテーパ面にガイドされて、本体部3aが、挿通孔5の本体部ガイド溝5aに挿通され、又、この本体部3aの両側に形成されている弾性片3bが、弾性片ガイド溝5bに挿通される。
【0040】
そして、ピン部材3の押込み用押圧部3eを更に押込むと、弾性片3bの外側が、弾性片ガイド溝5bの側壁部5fに突設されている被係合部6に当接し、弾性変位部3fの弾性変形により、弾性片3bは内方へ傾倒して、被係合部6を乗り越える。その後、この弾性片3bの外側に形成されている仮保持用係合部3gが、被係合部6を通過しようとすると、弾性変位部3fは自己の弾性により拡開し、弾性片3bの外面に形成されている仮保持用係合部3gが、被係合部6に係合される。
【0041】
図5(a)に示すように、被係合部6の前面6aが、ピン部材3の挿入方向に対して逆テーパ状に形成され、又、弾性片3bの外面に形成されている仮保持用係合部3gが、この前面6aに係合する形状に形成されているため、被係合部6の前面6aに弾性片3bの仮保持用係合部3gが係合されることで、ピン部材3の挿通が停止され、ピン部材3は第1の位置L1で仮保持される。従って、搬送時にピン部材3に対して外力が印加されても、このピン部材3がベース部材2に押込まれて、不用意に本止め状態となってしまうことがない。更に、組みつけに際し、作業者は仮保持状態を明確に把握することができるため、ベース部材2に対するピン部材3の組付けが容易となり、作業性が良い。
【0042】
その後、搬入されたツーピースクリップ1を車両のインナーパネル21に穿設されている被取付孔21aに取付ける。取付に際しては、先ず、ピン部材3が仮保持されているベース部材2の後端に形成されている係合片2cとフック2dとを、被取付孔21aの裏面外縁に係合させる。図5に示すように、ピン部材3が仮保持されている状態では、ピン部材3の挿入部先端側に形成されている係合保持部3dと、係合片2cの裏面に形成されている凸部2eとの間に空隙が形成されているため、係合片2bの内方への撓みが許容されるので、係合片2cとフック2dとを、被取付孔21aの裏面外周に容易に係合させることができる。
【0043】
係合片2cとフック2dとが、被取付孔21aの裏面外周に係合されると、ベース部材2の後端に形成されている突出部2aが、インナパネル21に穿設されている被取付孔21aに装着され、又、この突出部2aの前端に形成されている当接部2bが、被取付孔21の表面外縁に当接して、ベース部材2がインナパネル21に仮固定される(図5の状態)。
【0044】
次いで、図6に示すように、ピン部材3の押圧側端部の両側に配設されている操作部3iを摘んで、ピン部材3の両側に配設されている弾性片3bを、図7に示すように、弾性変位部3fの弾性変形により、本体部3a側へ傾倒させる。すると、弾性片3bに形成されている仮保持用係合部3gと、弾性片ガイド溝5bの側壁部5fに形成されている被係合部6との係合が解離される。そして、この状態でピン部材3をベース本体2の挿入側端部方向へ押圧する。このとき、本体部3aは挿通孔5の本体部ガイド溝5aに挿通されているため、ピン部材3は本体部ガイド溝5aに支持されて移動する。従って、弾性片3bが本体部3a側へ傾倒していても、ピン部材3をガタ付くことなくスムーズに直線移動させることができる。
【0045】
その後、仮保持用係合部3gが被係合部6を乗り越えたところで、操作部3iに対するつまみ把持力を解除し、本体部3aの押圧側端面に設けた押込み用押圧部3eを、挿入側端部方向へ押圧する。
【0046】
そして、図8に示すように、弾性片3bの外側に形成されている本止め用係合部3hが、被係合部6を乗り越えると、操作部3iが、弾性片ガイド溝5bに形成されている収容凹部5cに収容されて、本止めされる。
【0047】
このように、仮保持されているピン部材3を本止めするに際し、作業者はピン部材3に形成されている操作部3iを把持し、弾性片3bに形成されている仮保持用係合部3gと、弾性片ガイド溝5bに突設されている被係合部6との係合を解離してから押込むようにしたので、ピン部材3を本止めする際の押込み抵抗が増大せず作業性がよい。
【0048】
そして、図8(b)に示すように、ピン部材3がベース部材2に本止めされた状態では、ピン部材3の挿入側端部に形成されている係合保持部3dが、係合片2cの裏面に形成されている凸部2eに対設されて、当接又は近接した状態となる。従って、係合片2cの内方への撓みが規制されるため、ベース部材2がインナパネル21に確実に固定される。
【0049】
又、ツーピースクリップ1をインナパネル21から取り外す場合は、図11に示すように、工具として、例えばドライバ22の先端を、ベース部材2の前面に開口されている本体部ガイド溝5aの上部から斜めに差し込み、その先端で本体部を引っかけてピン部材3を引き出す。図8(a)に示すように、本止め用係合部3hが基部から外側へ挿入方向へ傾斜するテーパ状に形成されているため、工具を用いることで引き出すことができる。或いは、操作部3iの両端と収容凹部5cとの間に差し込む工具を用いて、両操作部3iを摘むことで、容易に外すことができる。
【0050】
このように、本実施形態では、工具を用いてピン部材3を引き出すようにしたので、例えば、ツーピースクリップ1が外部から比較的見えやすい部位に固定されていても、ピン部材3が簡単に外されてしまうことがない。
[第2実施形態]
図12〜図15に本発明の第2実施形態を示す。尚、第1実施形態と同一の構成部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0051】
上述した第1実施形態では、ピン部材3をベース部材2に本止めした後、このピン部材3を取り外す場合、ドライバなどの工具を用いる必要があったが、本実施形態では、工具を用いることなく、ピン部材3を簡単に取り外すことができるようにしたものである。
【0052】
すなわち、ベース部材2に形成されている弾性片ガイド溝5bの押圧側端部に、左右に貫通する切欠き部5gが形成されている。図15に示すように、ベース部材2の弾性片ガイド溝5bの押圧側端部に切欠き部5gを形成することで、ピン部材3の操作部3iが本止め状態(第2位置)にある場合であっても、この操作部3iが下側から露呈されているため、作業者は簡単に把持して取り外すことができる。尚、ピン部材3の仮保持状態、及び本止め状態は、前述した第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0053】
このように、本実施形態では、ピン部材3を工具を用いることなく、ベース部材2から簡単に取り外すことができるため、例えばツーピースクリップ1全体がカバーで覆われている場合、或いはツーピースクリップ1を外部から見え難い部位に取付ける場合などにおいて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】第1実施形態によるツーピースクリップの分解斜視図
【図2】同、ベース部材の斜視図
【図3】同、ピン部材の斜視図
【図4】同、ツーピースクリッブの取付状態を示す斜視図
【図5】同、(a)は図2のV−V断面図、(b)は(a)のb−b断面図
【図6】同、ピン部材をベース部材に本止めする状態を示す斜視図
【図7】同、ピン部材をベース部材に本止めする状態を示す、図5(a)相当の断面図
【図8】同、(a)は本止め時における図7相当の断面図、(b)は(a)のb−b断面図
【図9】同、ベース部材を示し、(a)は正面図、(b)は(a)の右側面図、(c)は(a)の底面図
【図10】同、ピン部材を示し、(a)は平面図、(b)は(a)の右側面図、(c)は(a)の平面図
【図11】同、本止め状態のピン部材を取り外す態様を示す図8(b)相当の断面図
【図12】第2実施形態によるツーピースクリップの分解斜視図
【図13】同、ベース部材の正面図
【図14】同、図13のXIV-XIV断面図
【図15】同、本止め状態のピン部材を取り外す態様を示す図14相当の断面図
【符号の説明】
【0055】
1…ツーピースクリップ
2…ベース部材
2a…突出部
2b…当接部
2c…係合片
3…ピン部材
3a…本体部
3b…弾性片
3d…係合保持部
3e…押込み用押圧部
3f…弾性変位部
3g…仮保持用係合部
3h…本止め用用係合部
3i…操作部
5…挿通孔
5a…本体部ガイド溝
5b…弾性片ガイド溝
5c…収容凹部
5d…スリット
5f…側壁部
6…被係合部
21a…被取付孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被取付孔に装着するベース部材と該ベース部材に係合するピン部材とから成り、
前記ベース部材は、前記ピン部材が挿通される挿通孔と、前記被取付孔の表面外縁に当接する当接部と、該被取付孔の裏面外縁に係合する係合片と、前記挿通孔に設けられて前記ピン部材に係合すると共に該ピン部材の挿入方向に対して逆テーパ或いは直交する方向へ延出する被係合部とを有し、
前記ピン部材は、所定挿入位置で前記係合片の内側への撓みを規制する本体部と、該本体部の挿入端から基端側へ延出され、その先端に設けられた操作部を摘むことで内方に撓み可能とされた弾性片と、該弾性片に設けられて前記係合片の内側への撓みを規制しない第1位置で前記被係合部に係合する仮保持用係合部と、前記係合片の内側への撓みを規制する第2位置で前記ベース部材に係合する本止め用係合部とを有していることを特徴とするツーピースクリップ。
【請求項2】
前記ピン部材の本体部は、その基端側が前記係合片の基端側内面に当接又は近接するように比較的厚く形成され、その先端側が前記第1位置で前記係合片の内面に対して所定の空隙が設けられるように比較的薄く形成されており、
前記ベース部材の係合片は、その先端の内面側に凸部を有しており、該凸部は、前記第2位置で前記ピン部材の本体部の先端側に当接又は近接するように構成されている請求項1記載のツーピースクリップ。
【請求項3】
前記ベース部材に形成されている前記挿通孔に、前記ピン部材の本体部をガイドするガイド溝が形成されている請求項1又は2記載のツーピースクリップ。
【請求項4】
前記弾性片は前記本体部の両側に設けられている請求項1〜3のいずれか1つに記載のツーピースクリップ。
【請求項5】
前記ピン部材の本止め用係合部は、前記弾性片に設けられており、前記ベース部材は、前記ピン部材が前記第2位置にあるときに前記操作部を露呈させる切欠き部を有している請求項1〜4のいずれか1つに記載のツーピースクリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−299708(P2009−299708A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−151717(P2008−151717)
【出願日】平成20年6月10日(2008.6.10)
【出願人】(000124096)株式会社パイオラックス (331)
【Fターム(参考)】