説明

テオフィリン含有コーティング顆粒

【課題】良好な放出制御性を有し、かつ長期保存後も顆粒同士の付着の生じない安定なテオフィリン含有コーティング顆粒の提供。
【解決手段】テオフィリン含有多層コーティング顆粒であって、最内層にテオフィリンを含有する粒子を有し、その外層にアクリル酸アルキル−メタクリル酸アルキルコポリマー、タルク及びヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有する層を有し、さらにその外層に二酸化ケイ素及びヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有する層を有することを特徴とするコーティング顆粒。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、良好な放出制御性を有し、かつ長期保存後も顆粒同士の付着の生じない安定なテオフィリン含有コーティング顆粒に関する。
【背景技術】
【0002】
テオフィリンは、気管支喘息の対症療法剤として繁用されているが、生物学的半減期が約6時間と短いため、1日6時間毎の投与が必要とされており、そのため、投与回数を減らしてコンプライアンスを向上させるテオフィリンの徐放性製剤が求められていた。
【0003】
徐放化技術としては、マトリックス製剤及びコーティング製剤がある。このうち、マトリックス製剤は、マトリックスを形成する基剤を多量に配合する必要性があることから、製剤が大きくなるという欠点がある。一方、コーティング製剤は、製剤の大きさを小型化できるという利点がある。さらに、コーティングされた多数の顆粒を用いる所謂マルチプルユニットタイプの徐放性製剤は、消化管内での移動のばらつきが小さく、生物学的利用率の変動が小さいとされている(非特許文献1)。放出制御皮膜剤としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート 、セルロースアセテートフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース、メタクリル酸メチル・メタクリル酸共重合体、メタクリル酸・アクリル酸エチル共重合体、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートサクシネートおよびポリビニルアセテートフタレートなどが用いられている(特許文献1)。しかし、これらの放出制御皮膜形成剤はpH依存性のポリマーであり、生体内での影響を受けやすいため、安定した放出制御性を得ることが難しいという問題がある。
【0004】
一方、水不溶性ポリマーであるアクリル酸アルキル−メタクリル酸アルキルコポリマーは、味覚遮蔽剤として(特許文献2)、あるいは放出制御剤として(特許文献3)用いられている。
【非特許文献1】薬剤学、30、102−110(1970)
【特許文献1】特開2004−292427号公報
【特許文献2】特表2005−518406号公報
【特許文献3】特表2003−500347号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる観点から、本発明者は、テオフィリンをpH非依存性コーティング剤を用いた徐放性顆粒を開発すべく検討し、pH非依存性ポリマーであるアクリル酸アルキル−メタクリル酸アルキルコポリマーを用いてコーティング顆粒を製造した。ところが、得られたアクリル酸アルキル−メタクリル酸アルキルコポリマーを用いてコーティングしたテオフィリン顆粒は、長期保存すると経時的に顆粒同士が付着してしまうという欠点を有することが判明した。顆粒同士の付着は、溶出性に大きく影響を及ぼし、また、消化管内での移動のばらつきにも影響を及ぼすことは明らかである。
従って、本発明の目的は、長期保存してもコーティング顆粒同士の付着がない安定なテオフィリン含有放出制御製剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明者は、テオフィリン含有コーティング顆粒の付着を防止すべく種々検討した結果、放出制御のためのコーティング層としてアクリル酸アルキル−メタクリル酸アルキルコポリマー、タルク及びヒドロキシプロピルメチルセルロースを用い、その外側に二酸化ケイ素及びヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有するオーバーコート層を設ければ、長期間顆粒同士の付着が防止でき、安定したテオフィリン含有徐放性顆粒が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、テオフィリン含有多層コーティング顆粒であって、最内層にテオフィリンを含有する粒子を有し、その外層にアクリル酸アルキル−メタクリル酸アルキルコポリマー、タルク及びヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有する層を有し、さらにその外層に二酸化ケイ素及びヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有する層を有することを特徴とするコーティング顆粒を提供するものである。
さらに、本発明は、上記のコーティング顆粒、又は上記のコーティング顆粒とテオフィリン含有速放性顆粒を含有するカプセル剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のコーティング顆粒は、長期保存しても顆粒同士の付着がなく、溶出性が変化せず、安定かつ良好な放出制御性を有するため、テオフィリン含有製剤の投与回数を減らすことができる。また、本発明のコーティング顆粒は、表面が滑らかで、製造管理上も服用上も良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のコーティング顆粒は、テオフィリンを含有する多層コーティング顆粒である。その最内層はテオフィリンを含有する粒子である。この粒子は、テオフィリン単独でもよいが、テオフィリンを含有する速放性顆粒、すなわち徐放化されていない顆粒であるのが望ましい。
【0010】
このような速放性顆粒は、テオフィリンを配合する以外は、通常の顆粒と同様、薬学的に許容される担体とともに造粒して製造できる。造粒手段としては、湿式法、乾式法、噴霧造粒法のいずれでもよい。また、湿式法の手段としては、押し出し法、転動法、流動層法、転動流動法のいずれでもよい。
【0011】
速放性顆粒に配合される基剤としては、例えば、賦形剤、崩壊剤、結合剤等が挙げられる。賦形剤として、マンニトール、結晶セルロース、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、マルチトール、ブドウ糖、果糖、粉糖、乳糖、デンプン、デキストリン、無水ケイ酸、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、リン酸カルシウム等が挙げられる。崩壊剤としては、カルメロースカルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、カルメロース、カルメロースナトリウム、アルファー化デンプン、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、トウモロコシデンプン、部分アルファー化デンプン等が挙げられる。結合剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、プルラン、ポリビニルピロリドン、コポリビドン等が挙げられる。
【0012】
本発明のコーティング顆粒は、前記テオフィリン含有顆粒の外層に、アクリル酸アルキル−メタクリル酸アルキルコポリマー、タルク及びヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有する層を有する。この層は、テオフィリンを放出制御するためのコーティング層である。
本発明に用いるアクリル酸アルキル−メタクリル酸アルキルコポリマーはpH非依存性の放出制御皮膜剤であるが極度に低いガラス転移温度を有しており、例えば後述するアクリル酸エチル−メタクリル酸メチルコポリマーのガラス転移温度は−8℃であり、その他の放出制御皮膜剤であるメタクリル酸メチル・メタクリル酸共重合体の150℃、メタクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体の160℃に比べるとかなり低い。したがって、室温では、形成したコーティング皮膜は粘性のあるゴム状のままであり、このため製造時及び製造直後に顆粒同士の付着を引き起こし易い。
しかし、これらの3成分を併用することにより、テオフィリンの放出制御を良好にすることができるとともに、製造時及び製造直後の顆粒同士の付着を防止することができる。
【0013】
アクリル酸アルキル−メタクリル酸アルキルコポリマーは、水不溶性ポリマーであり、pH非依存的にテオフィリンの放出制御作用を示す。アクリル酸アルキル−メタクリル酸アルキルコポリマーとしては、アクリル酸C1-6アルキル−メタクリル酸C1-6アルキルコポリマーが好ましく、特にアクリル酸エチル−メタクリル酸メチルコポリマーが好ましい。当該コポリマーの市販品としては、例えば、オイドラギットNE30D(レーム社)やコリコートEMM30D(BASFジャパン)等が挙げられる。
これらの市販品は、エマルジョンとして市販されており、アクリル酸エチルとメタクリル酸メチルをポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(100E.O.)を乳化剤として、水溶液中で重合して得られたコポリマーである。
【0014】
アクリル酸アルキル−メタクリル酸アルキルコポリマーの使用量は、テオフィリンの放出制御性の点から固形分として、最内層の粒子100重量部に対して3〜80重量部、さらに5〜60重量部、特に7〜40重量部が好ましい。また、この含有量はコーティング顆粒100重量部に対して、2〜45重量部、さらに4〜40重量部、特に6〜30重量部が好ましい。
【0015】
本発明において使用するタルクとしては、日本薬局方タルクが挙げられる。タルクの含有量は、テオフィリンの放出制御性、及び製造時、製造直後の顆粒同士の付着防止の点から、アクリル酸アルキル−メタクリル酸アルキルコポリマー100重量部に対して10〜200重量部が好ましく、50〜150重量部がより好ましく、75〜125重量部が特に好ましい。
【0016】
本発明において使用するヒドロキシプロピルメチルセルロースとしては、メトキシ基含有率が19〜30重量%、好ましくは27〜30重量%であり、ヒドロキシプロポキシ基含有率が4〜12重量%、好ましくは7〜12重量%であり、かつ粘度が3〜15mm2/s(20℃)のものが最も好ましい。ここで、粘度は、試料2gを水98mLに溶解した水溶液を、日本薬局方の粘度測定法第一法(毛細管粘度計法)により、20℃で測定した値をいう。市販品としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2208、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2906、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910、具体的には、メトローズ90SH、メトローズ65SH、メトローズ60SH、TC−5(信越化学工業製)、メトセルK、メトセルF、メトセルE(ダウ・ケミカル製)、マーポローズ(松本油脂製薬製)を使用することができる。
【0017】
テオフィリン放出制御コーティング層中のヒドロキシプロピルメチルセルロースの含有量は、テオフィリンの放出制御性及び製造時、製造直後の顆粒同士の付着防止の点から、アクリル酸アルキル−メタクリル酸アルキルコポリマー100重量部に対して1〜70重量部、さらに2〜50重量部、特に3〜30重量部が好ましい。
【0018】
当該放出制御コーティング層は、前記のテオフィリン含有顆粒に、アクリル酸アルキル−メタクリル酸アルキルコポリマー、タルク及びヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有する分散液でコーティングすることにより形成することができる。当該分散液の溶剤としては、精製水が好ましく用いられる。本発明において使用するアクリル酸アルキル−メタクリル酸アルキルコポリマー、タルク及びヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有する分散液中の、アクリル酸アルキル−メタクリル酸アルキルコポリマー(固形分)の含量は1〜20重量%が好ましく、2〜15重量%がより好ましく、3〜10重量%が特に好ましい。また、タルクの含量は0.1〜40重量%が好ましく、1〜22.5重量%がより好ましく、2.25〜12.5重量%が特に好ましい。ヒドロキシプロピルメチルセルロースの含量は0.1〜15重量%が好ましく、0.4〜7.5重量%がより好ましく、0.9〜3重量%が特に好ましい。
【0019】
コーティング手段としては公知の方法が用いられる。例えば、流動層コーティング装置にテオフィリン含有顆粒を投入し、アクリル酸アルキル−メタクリル酸アルキルコポリマー、タルク及びヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有する分散液を噴霧することにより放出制御コーティング層を有する顆粒を得ることができる。
【0020】
また、当該放出制御コーティング層には、前記の各成分以外に、医薬品の添加物として許容され、かつ経口投与可能な各種任意成分を所望に応じて配合する事が可能である。そのような添加剤として、例えば、可塑剤、着色剤及び溶解補助剤などが挙げられる。可塑剤としては、例えば、マクロゴール400、マクロゴール6000、クエン酸トリエチル及びトリアセチンなどがあり、その配合量は、分散液に対して10重量%以下である。
着色剤としては、例えば、各種食用色素、タール色素及び三二酸化鉄などがあり、その配合量は、分散液に対して5重量%以下である。
溶解補助剤としては、例えば、プロピレングリコール及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールなどがあり、その配合量は、分散液に対して5重量%以下である。
【0021】
本発明のコーティング顆粒は、上記放出制御コーティング層の外層に、二酸化ケイ素及びヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有する層を有する点に特徴がある。この層(オーバーコート)は、長期保存時のコーティング顆粒同士の付着を防止する作用を有する。
本発明においては、上記タルク及びヒドロキシプロピルメチルセルロースを加えた3成分系の放出制御コーティング層が製造時及び製造直後のコーティング顆粒同士の付着を防止し、さらにオーバーコート層として二酸化ケイ素とヒドロキシプロピルメチルセルロースの2成分を含有する層を設けることにより、アクリル酸アルキル−メタクリルアルキルコポリマーの極度に低いガラス転移温度に起因していると考えられる長期保存による放出制御コーティング層のゴム状の性質が強まることを抑制しているものと考えられる。
【0022】
オーバーコート層に用いられる二酸化ケイ素としては、含水二酸化ケイ素が挙げられる。二酸化ケイ素の含有量は、コーティング顆粒の付着防止効果の点から、ヒドロキシプロピルメチルセルロース100重量部に対して1〜50重量部、さらに3〜30重量部、特に5〜20重量部が好ましい。ヒドロキシプロピルメチルセルロースの含有量は、コーティング顆粒の付着防止効果の点から、放出制御コーティング層を施した顆粒100重量部に対して0.05〜20重量部、さらに0.1〜10重量部、特に0.5〜5重量部が好ましい。
【0023】
オーバーコート層は、前記の放出制御コーティング層に、二酸化ケイ素及びヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有する分散液でコーティングすることにより形成することができる。当該分散液の溶剤としては、精製水、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール、アセトン又はそれらの混合物が挙げられる。これらの溶剤の中では、通常、精製水が好ましく用いられる。本発明において使用する二酸化ケイ素及びヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有する分散液中の、二酸化ケイ素の含量は0.05〜10重量%が好ましく、0.1〜7重量%がより好ましく、0.5〜5重量%が特に好ましい。また、ヒドロキシプロピルメチルセルロースの含量は1〜50重量%が好ましく、3〜30重量%がより好ましく、5〜20重量%が特に好ましい。
【0024】
コーティング手段としては公知の方法が挙げられる。例えば、流動層コーティング装置に放出制御コーティング層を有する顆粒を投入し、二酸化ケイ素及びヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有する分散液を噴霧することによりオーバーコート層を有する顆粒を得ることができる。
【0025】
また、当該オーバーコーティング層には前記の各成分以外に、医薬品の添加物として許容され、かつ経口投与可能な各種任意成分を所望に応じて配合する事が可能である。そのような添加剤として、例えば、可塑剤、着色剤及び溶解補助剤などが挙げられる。可塑剤としては、例えば、マクロゴール400、マクロゴール6000、クエン酸トリエチル、及びトリアセチンなどがあり、その配合量は、分散液に対して0.01〜20重量%である。
着色剤としては、例えば、各種食用色素、タール色素及び三二酸化鉄などがあり、その配合量は、分散液に対して5重量%以下である。
溶解補助剤としては、例えば、プロピレングリコール及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールなどがあり、その配合量は、分散液に対して5重量%以下である。
【0026】
得られたテオフィリン含有コーティング顆粒中のテオフィリンの含有量は、1〜85重量%、さらに5〜75重量%、特に10〜65重量%が好ましい。
【0027】
本発明のテオフィリン含有コーティング顆粒には、その表面にさらにタルク、二酸化ケイ素等の帯電防止剤層を設けてもよい。
【0028】
本発明のテオフィリン含有コーティング顆粒は、テオフィリンの放出制御性及び経時的な顆粒同士の付着性が防止されているので、このまま顆粒として使用できる他、カプセル剤、錠剤等とすることができる。
【0029】
本発明のコーティング顆粒の粒径としては、200μmから1000μmが好ましい。なお、ここで粒径は篩過法により測定できる。
【0030】
本発明のコーティング顆粒に加えて、テオフィリン含有速放性顆粒、すなわち放出制御を施していない顆粒を併用することにより、製剤全体からのテオフィリンの溶出性を制御することもできる。ここで用いられるテオフィリン含有速放性顆粒は、前記のコーティング顆粒の最内層の顆粒と同様にして製造することができる。また、この速放性顆粒に配合される基剤も前記と同様のものを用いることができる。
【0031】
前記コーティング顆粒と速放性顆粒を併用する場合、テオフィリンの含有比は、2:8〜9:1、特に3:7〜8:2が好ましい。また、これらの併用系でも、顆粒、カプセル剤及び錠剤としてもよい。
【0032】
得られた本発明のコーティング顆粒を含有する医薬品は、気管支喘息の対症療法剤として有用である。テオフィリンの合計含有量は、成人あたり1日投与量として100〜400mgであるのが好ましい。
【実施例】
【0033】
以下、本発明について実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0034】
製造例1
テオフィリン1200g、D−マンニトール2412g、カルメロースカルシウム210g、結晶セルロース210g、ヒドロキシプロピルセルロース168gを高速攪拌造粒機(パウレック:FM−VG−25)に投入し、混合する。その後エタノール水混合液1200mL加えて練合した後、造粒機(ダルトン:EXDCS−60G)、マルメライザー(ダルトン:Q400)にて球形顆粒を製し、流動層造粒乾燥機(フロイント産業:NFLO−5)にて乾燥し乾燥品を得た。その乾燥品を16メッシュから30メッシュを分取して芯顆粒を製した。
【0035】
参考例1
アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマーエマルジョン固形分(商品名オイドラギトNE30D:販売会社樋口商会)475g、タルク475g、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(商品名TC−5R:販売会社信越化学工業)50gを精製水4500gに分散又は溶解し、コーティング液を得た。得られたコーティング液を芯顆粒3000gに流動層造粒乾燥機(フロイント産業:NFLO−5)にてコーティングし、テオフィリン含有コーティング顆粒を得た。
【0036】
参考例2
アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマーエマルジョン固形分(商品名オイドラギトNE30D:販売会社樋口商会)375g、タルク375g、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(商品名TC−5R:販売会社信越化学工業)250gを精製水4800gに分散又は溶解し、コーティング液を得た。得られたコーティング液を芯顆粒3000gに流動層造粒乾燥機(フロイント産業:NFLO−5)にてコーティングし、テオフィリン含有コーティング顆粒を得た。
【0037】
比較例1〜3
参考例1のテオフィリン含有コーティング顆粒においてヒドロキシプロピルメチルセルロースをヒドロキシプロピルセルロース(比較例1:商品名HPC−L:販売会社日本曹達)、ポリビニルアルコール(比較例2:商品名ポバール205S:販売会社クラレ)、コポリピドン(比較例3:商品名プラスドンS−630:販売会社アイエスピー・ジャパン)としたコーティング液を調製し、参考例1と同様の方法でコーティングし、テオフィリン含有コーティング顆粒を得た。
【0038】
比較例4〜5
参考例1のテオフィリン含有コーティング顆粒においてタルクをステアリン酸マグネシウム(比較例4:商品名ステアリン酸マグネシウム:販売会社太平化学)、軽質無水ケイ酸(比較例5:商品名アドソリダー101:販売会社フロイント産業)としたコーティング液を調製し、参考例1と同様の方法でコーティングし、テオフィリン含有コーティング顆粒を得た。
【0039】
比較試験1
参考例1〜2、比較例1〜5のテオフィリン含有コーティング顆粒の製造直後の外観を確認した。なお、外観は目視で評価を行い、顆粒の付着がないものを○、顆粒の付着が生じたものを×で表示した。結果を表1及び2に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【0042】
テオフィリン含有顆粒に、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有せず、代わりにヒドロキシプロピルセルロース(比較例1)、ポリビニルアルコール(比較例2)又はコポリピドン(比較例3)を含有したコーティング液でコーティングしたテオフィリン含有コーティング顆粒、及びタルクを含有せず、代わりにステアリン酸マグネシウム(比較例4)又は軽質無水ケイ酸(比較例5)を含有したコーティング液でコーティングしたテオフィリン含有コーティング顆粒は、製造直後から顆粒の付着が認められた。一方、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びタルクを含有した参考例1及び2では、製造直後には顆粒の付着が認められず、良好な外観を有するテオフィリン含有コーティング顆粒であることが明らかであった。
【0043】
しかしながら、参考例1の顆粒を長期間保存すると、経時的に顆粒同士が付着することが観察された。そこで、以下の顆粒を製造し、長期保存後の顆粒同士の付着性について検討した。
【0044】
実施例1
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(商品名TC−5R:販売会社信越化学工業)80g、含水二酸化ケイ素20g、クエン酸トリエチル10gを精製水780gに分散及び溶解し、コーティング液を得た。得られたコーティング液を参考例1のテオフィリン含有コーティング顆粒1000gに流動層造粒乾燥機(フロイント産業:NFLO−5)にてコーティングし、テオフィリン含有コーティング顆粒を得た。
【0045】
比較例6〜8
実施例1のテオフィリン含有コーティング顆粒においてヒドロキシプロピルメチルセルロースをヒドロキシプロピルセルロース(比較例6:商品名HPC−L:販売会社日本曹達)、ポリビニルアルコール(比較例7:商品名ポバール205S:販売会社クラレ)、コポリピドン(比較例8:商品名プラスドンS−630:販売会社アイエスピー・ジャパン)としたコーティング液を調製し、実施例1と同様の方法でコーティングし、テオフィリン含有コーティング顆粒を得た。
【0046】
比較例9〜10
実施例1のテオフィリン含有コーティング顆粒において含水二酸化ケイ素をステアリン酸マグネシウム(比較例9:商品名ステアリン酸マグネシウム:販売会社太平化学)、タルク(比較例10:商品名タルク:販売会社日本タルク)としたコーティング液を調製し、実施例1と同様の方法でコーティングし、テオフィリン含有コーティング顆粒を得た。
【0047】
比較試験2
実施例1、比較例6〜10のテオフィリン含有コーティング顆粒を40℃・2ヵ月保存後の外観を確認した。なお、外観は目視で評価を行い、顆粒の付着がないものを○、顆粒の付着が生じたものを×で表示した。結果を表3及び表4に示す。
【0048】
【表3】

【0049】
【表4】

【0050】
テオフィリン含有コーティング顆粒に、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有せず、代わりにヒドロキシプロピルセルロース(比較例6)、ポリビニルアルコール(比較例7)、コポリピドン(比較例8)を含有したコーティング液でコーティングしたテオフィリン含有コーティング顆粒、及び含水二酸化ケイ素を含有せず、代わりにステアリン酸マグネシウム(比較例9)、タルク(比較例10)を含有したコーティング液でコーティングしたテオフィリン含有コーティング顆粒は、40℃・2ヵ月保存後に顆粒の付着が認められた。一方、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及び含水二酸化ケイ素を含有した実施例1では、40℃・2ヵ月保存後でも顆粒の付着が認められず、良好な外観を有するテオフィリン含有コーティング顆粒であることが明らかであった。
【0051】
比較試験3
比較試験2で得られた実施例1及び比較例6の製造直後、40℃・2ヶ月保存後のカプセル剤について、溶出試験器(富山産業:NTR−6100)を用いて、試験液として水、液量900mL、液温度37℃、パドル法(回転数:50/分)で溶出試験を実施した。結果を表5、表6、図1及び図2に示す。
【0052】
【表5】

【0053】
【表6】

【0054】
ヒドロキシプロピルメチルセルロース及び含水二酸化ケイ素を含有した実施例1では、40℃・2ヶ月保存後もほとんど溶出率に変化は見られなかったが、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有せず、代わりにヒドロキシメチルセルロースを含有した比較例6では大きく溶出率が低下することが確認された。実施例1では40℃・2ヵ月後も顆粒同士の付着がないため、溶出率への影響はないが、比較例6では顆粒同士の付着のため、顆粒表面の面積が小さくなり溶出率が低下したものと思われた。
【0055】
製造例1のテオフィリン含有の芯顆粒150mgと実施例1のテオフィリン含有コーティング顆粒150mgを1号カプセルに封入し、40℃・2ヶ月保存後に顆粒同士が付着しているかを確認したところ、顆粒同士の付着はなく、本発明の効果が確認された。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】実施例1の製造直後及び40℃・2ヶ月保存後の溶出率
【図2】比較例1の製造直後及び40℃・2ヶ月保存後の溶出率

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テオフィリン含有多層コーティング顆粒であって、最内層にテオフィリンを含有する粒子を有し、その外層にアクリル酸アルキル−メタクリル酸アルキルコポリマー、タルク及びヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有する層を有し、さらにその外層に二酸化ケイ素及びヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有する層を有することを特徴とするコーティング顆粒。
【請求項2】
さらにその外層に帯電防止剤を含有する層を有するものである請求項1記載のコーティング顆粒。
【請求項3】
請求項1又は2記載のコーティング顆粒と、テオフィリン含有速放性顆粒を含有する顆粒。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載の顆粒を含有するカプセル剤。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−174481(P2008−174481A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−8703(P2007−8703)
【出願日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(000163006)興和株式会社 (618)
【Fターム(参考)】