説明

テクスチャー形成用エッチング液

【課題】 均一性に優れた微細なピラミッド状凹凸部を容易に安定して再現するエッチング液を提供する。
【解決手段】 アルカリ金属水酸化物溶液をベースに脂肪族ポリアルコールを添加することにより、シリコン表面に均一で微細なピラミッド状凹凸部を安定して得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば単結晶シリコン太陽電池や光センサーなどに使用するために、単結晶シリコン表面{面方位(100)}にテクスチャー(texture)と呼ばれる微細なピラミッド状凹凸部を形成するテクスチャー形成に用いられるエッチング液に関する。
詳しくは、液中でエッチングすることによりシリコン表面にピラミッド状凹凸部(テクスチャー)を形成するテクスチャー形成用エッチング液に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のテクスチャー形成用エッチング液として、水酸化ナトリウム(NaOH)又は水酸化カリウム(KOH)からなるアルカリ性媒体に、リグニン、セルロース類、ケトン類、エステル類、グリコール類の中から一種か又は複数種が添加されたエッチング液を85℃に加熱し、この溶液中に4〜5分間シリコンウエハを浸漬してウエットエッチングすることにより、シリコンウエハの表面にピラミッド状凹凸部が形成されるものがある(例えば、特許文献1参照)。
また、60〜95℃に加温した水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムにイソプロピルアルコール(IPA)を添加したエッチング液に、シリコンウエハを10〜30分間浸漬させることにより、ピラミッド状凹凸部(テクスチャー構造)が形成されるものもある(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−19605号公報(第3〜5頁)
【特許文献2】特開2000−183378号公報(第2頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし乍ら、このような従来のテクスチャー形成用エッチング液では、特許文献1の場合、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムのベースに、リグニン、セルロース類、ケトン類、エステル類、グリコール類の中から一種か又は複数種を添加するが、これらの合成が困難で工業的に得難いという問題があった。
また特許文献2の場合、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムにイソプロピルアルコールを添加するが、イソプロピルアルコールは揮発性、引火性が高い物質であるため、大量使用には火災対策、防爆が必要で設備費用が高価になるという問題があった。
【0005】
本発明のうち第一の発明は、均一性に優れた微細なピラミッド状凹凸部を容易に安定して再現するエッチング液の提供を目的としたものである。
第二の発明は、第一の発明の目的に加えて、均一で微細なピラミッド状凹凸部の再現性を向上させるエッチング液の提供を目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明のうち第一の発明は、アルカリ金属水酸化物溶液をベースとし、これに添加剤として脂肪族ポリアルコールを含有したことを特徴とするものである。
第二の発明は、第一の発明の構成に、前記エッチング液のベースとして、アルカリ金属水酸化物に炭酸水素ナトリウム又は炭酸水素カリウムを加えた構成を加えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のうち第一の発明は、アルカリ金属水酸化物溶液をベースに脂肪族ポリアルコールを添加することにより、シリコン表面に均一で微細なピラミッド状凹凸部を安定して得られる。
従って、均一性に優れた微細なピラミッド状凹凸部を容易に安定して再現するエッチング液を提供することができる。
その結果、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムのベースに、リグニン、セルロース類、ケトン類、エステル類、グリコール類の中から一種か又は複数種を添加する従来のものに比べ、安定かつ安価な合成が可能であると共に、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムにイソプロピルアルコールを添加する従来のものに比べ、火災対策、防爆を必要とせず、その分だけ設備も簡素化できるから低コストで製造できる。
【0008】
第二の発明は、第一の発明の効果に加えて、アルカリ金属水酸化物に炭酸水素ナトリウム又は炭酸水素カリウムを加えることにより、均一で微細なピラミッド状凹凸部を更に安定して得られる。
従って、均一で微細なピラミッド状凹凸部の再現性を向上させるエッチング液を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のテクスチャー形成用エッチング液は、例えば水酸化ナトリウム(NaOH)又は水酸化カリウム(KOH)などのアルカリ金属水酸化物溶液をベースとし、これに添加剤として例えばポリビニルアルコール(PVA)やポリ−1−メチルビニルアルコール(PMVA)などの脂肪族ポリアルコールを含有させることで得られ、このエッチング液に、シリコン基板を浸漬してシリコン表面のアルカリエッチングすることにより、均一で微細なピラミッド状凹凸部が形成されるものである。
更に必要に応じて、上記エッチング液のベースとして、アルカリ金属水酸化物に炭酸水素ナトリウム又は炭酸水素カリウムを加えることも可能である。
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0010】
この実施例は、水酸化ナトリウムが4重量%と、炭酸水素ナトリウムが4重量%とを混合したベース液に対し、添加剤としてポリビニルアルコール(重合度500)を0.01重量%添加したものである。
エッチング条件としては、エッチング温度は85℃、エッチング時間は13分である。
【0011】
その結果は、図1に示した電子顕微鏡写真で見ることができる。
それにより、シリコン基板の表面に均一で微細なピラミッド状凹凸部を安定して得られ、このピラミッド状凹凸部の均一性、エッチングにおける再現安定性が良好であることが実験により解った。
【0012】
更に、分光光度計の測定による反射率の分布を図2のグラフに示している。
それにより、反射率は波長800nm付近で14.4%の最小値が得られた。
【0013】
また、水酸化ナトリウムに適量の炭酸水素ナトリウムを添加することで、均一で微細なピラミッド状凹凸部を更に安定して得られることが実験により解った。
【0014】
尚、前示実施例では、エッチング液のベースが、水酸化ナトリウムに炭酸水素ナトリウムを混合したベース液にポリビニルアルコールを添加した場合のみを説明したが、これに限定されず、上記水酸化ナトリウムのみにポリビニルアルコールやポリ−1−メチルビニルアルコール(PMVA)などの脂肪族ポリアルコールを添加したり、水酸化ナトリウムに代えて水酸化カリウムを使用したり、炭酸水素ナトリウムに代えて炭酸水素カリウムを使用しても良い。
この場合も、上述したものと同様な結果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施例を示すテクスチャー形成用エッチング液を用いて形成したピラミッド状凹凸部の一例の電子顕微鏡写真である。
【図2】反射率の分布を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液中でエッチングすることにより、シリコン表面に凹凸部を形成するテクスチャー形成用エッチング液において、
アルカリ金属水酸化物溶液をベースとし、これに添加剤として脂肪族ポリアルコールを含有したことを特徴とするテクスチャー形成用エッチング液。
【請求項2】
前記エッチング液のベースとして、アルカリ金属水酸化物に炭酸水素ナトリウム又は炭酸水素カリウムを加えた請求項1記載のテクスチャー形成用エッチング液。

【図2】
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【図1】
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【公開番号】特開2009−123811(P2009−123811A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−294253(P2007−294253)
【出願日】平成19年11月13日(2007.11.13)
【出願人】(304027279)国立大学法人 新潟大学 (310)
【出願人】(802000019)株式会社新潟TLO (27)
【出願人】(000214928)直江津電子工業株式会社 (37)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】