説明

ディジタルコンテンツの利用管理方法、管理装置および管理プログラム

【課題】 公開普及目的のディジタルコンテンツにおいて、誰もが容易に利用可能で、かつ許諾外利用を未然防止するシステムを提供する。
【解決手段】 管理装置200は、端末装置100からネットワーク700経由で提供されるディジタルコンテンツをコピーし、編集加工内容を検出するためのマーカーを挿入して生成した仮編集コンテンツをネットワーク700上に流通させておく。管理装置200は、端末装置300が仮編集コンテンツを編集して作成した仮派生コンテンツを受信し、それに含まれるマーカーを抽出して編集条件を検出する。管理装置200は、検出した編集条件が、元コンテンツの利用許諾条件を満たしているか否かを判定し、満たす場合は、オリジナルのディジタルコンテンツに編集条件に沿って編集を行い、新たに生成した仮派生コンテンツの利用許諾条件と共に、編集できない形式にパッケージ化して端末装置300へ送信する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディジタルコンテンツの利用管理方法、管理装置および管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
文化遺産や博物館収蔵物等のディジタルコンテンツの流通において、これまでは放送や映画等に関する著作権議論が支配的であり「善意の利用者による発見的利用や仲介」については議論されていなかった。そのため、ディジタルコンテンツを引用利用するなどして派生コンテンツを作成させたり流通させたりする必然性は、殆ど認められていなかった。
【0003】
このような社会的背景から、従来のディジタルコンテンツの利用管理方法としては、以下のような方法がとられていた。
まず、管理センタ又はコンテンツ提供元が、ディジタルコンテンツの権利情報や属性情報を含む管理情報を、電子透かし等によって当該コンテンツの実体に埋め込んだり、あるいは、当該コンテンツのヘッダ領域に埋め込んだりする処理を予め施した上で、インターネット等のネットワークを経由して流通させておく。利用者がそのコンテンツを利用希望した場合には、管理センタ又はコンテンツ提供元が、当該コンテンツに埋め込まれた管理情報を読み出して、その管理情報と利用希望者の利用条件等を比較し、所定の判定基準に基づいて、利用を許可して利用者へオリジナルコンテンツを配布して利用させるか、あるいは「許諾条件に合致しない」として利用させない等の処理を行っていた。
ところが、利用者がコンテンツを利用する場合はもちろん、単にコンテンツの由来情報や利用許諾条件を閲覧しようとする場合でも、利用者に許諾外(不正)利用の意図があるか否かの区別がなされないために、管理センタ又はコンテンツ提供元からの情報提示は「閲覧には利用許諾権利の取得が必要」「○○円の利用料が発生」「不正に・・した場合処罰されます」等、利用の可否やコンテンツの利用許諾権利の取得にまつわる限定的な選択肢のみであった。すなわち、利用者は基本的に不正利用者扱いであり、由来情報や利用許諾を閲覧する場合でも、利用許諾の権利を取得する以外に選択肢は無い状態であった。
【0004】
また、放送や映画等の番組コンテンツのように、個々の閲覧や消費を前提とし、複数のコンテンツを組み合わせて新たな派生コンテンツを作成する場合には、利用者への物理媒体の手渡し、あるいは、漏洩の危険性の無い暗号化されたネットワークを介した配布等を行うことで、身元の明確な利用者(例えば、制作事業者等)のみが当該コンテンツを入手し、これを編集して派生コンテンツを作成していた。
【0005】
なお、同出願人の従来技術としては、「著作物管理方法及びシステム」(特許文献1参照)があり、この中では、著作権情報の透かし埋め込みによる著作権管理方法を説明している。
【特許文献1】特開平10−294726号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術によるディジタルコンテンツの利用には、以下の4つの問題点が考えられる。
【0007】
第1に、従来、管理センタ又はコンテンツ提供元は、当該コンテンツに関する付随情報を利用者に全く参照させないか、あるいは利用者が利用許諾条件を許諾した場合に限って最低限の付随情報を参照させる、という設計規範のいずれかによっており、利用者はコンテンツの利用に関して、事前に選択肢を知ることすらできなかった。すなわち、コンテンツを引用利用し派生コンテンツを生成することが、利用者にとっては容易ではないという問題があった。
【0008】
第2に、従来、管理センタ又はコンテンツ提供元がディジタルコンテンツを利用希望者へ配布する際は、オリジナルコンテンツを記録した物理媒体の手渡しや暗号化されたネットワーク等を介して、許諾条件を遵守し、無断で他用途に転用することを想定し得ない利用者にオリジナルコンテンツをそのまま配布する方法がとられていた。そのため、コンテンツを配布しても安全と思われる信頼できる利用者のみがコンテンツを利用できる設計規範となっており、ディジタルコンテンツを一般の利用者に広く公開するものではなく、結果として利用者制限になってしまう問題も存在した。
【0009】
第3に、第2の問題点で記したとおり、従来、管理センタ又はコンテンツ提供元は利用者へオリジナルコンテンツを配布していた。そのため、コンテンツの許諾外用途への流用は利用者の意識に委ねることとなり、許諾外利用の未然防止の点で問題があった。
【0010】
第4に、利用者が複数のコンテンツを用いて派生コンテンツを生成する際には、コンテンツ毎に利用許諾条件が異なることが想定されるため、それらの条件を組み合わせた、新たな利用許諾条件が発生する。例えば複数の画像コンテンツを組み合わせて新しい画像コンテンツを作成する場合、作成した画像の利用許諾条件は、元の画像それぞれに設定されている利用許諾条件(画像の画素サイズ、拡大縮小率、肖像権、利用期間等)の全ての項目について、最も強い制限を組み合わせた新たな許諾条件となる。なお、ここで「最も強い制限を組み合わせた」とは、具体的には、例えば2枚の画像コンテンツにおいて、1枚目の画像は2005年1月1日から1年間利用を許諾しているのに対し、2枚目の画像は2005年1月1日から3ヶ月間しか利用を許諾してない場合、これらの画像を引用して作成された派生コンテンツは、利用期間の短い方である3ヶ月間しか利用できない利用許諾条件となる、ということである。
その後利用者は、全てのコンテンツの利用許諾条件を満たすことにより、そのまま全てのコンテンツを引用利用するか、あるいは、一部のコンテンツの引用利用を取りやめることで、組み合わせた新たな許諾条件が派生コンテンツの利用許諾条件に適したものとなるようにする、等の判断が必要となる。しかし、派生コンテンツに引用されるコンテンツの一部については、利用者の過失や錯誤により許諾外利用となってしまう問題も存在した。
【0011】
従来、文化遺産等の情報をディジタル資産化して保有や継承を行うことや、学術目的等による善意の第三者のアイデア等を積極活用して利用すること等、ブロードバンド化が進むインターネットにおけるディジタルコンテンツの公開普及には、それを促進させる目的や必要があった。それにも係らず、従来、公開目的のディジタルコンテンツとして提供されている環境は、不充分かつ限定的なものでしかなかった。
【0012】
そこで、本発明の目的は、地域文化情報のように公開普及と利用の促進を目的とするディジタルコンテンツの利用において、コンテンツの提供元と関わりがある特定の者に限定されない一般の利用者も利用が可能で、広範囲なコンテンツから引用利用の目的に適したコンテンツを容易に選択でき、意図的な許諾外(不正)利用だけでなく過失や錯誤による許諾外利用も防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記した課題を解決するため、本発明は、ネットワーク経由でディジタルコンテンツを提供する第1の端末装置と、前記第1の端末装置から提供された前記コンテンツを管理する管理装置と、前記コンテンツを利用する第2の端末装置とを備えるディジタルコンテンツ利用管理システムにおけるディジタルコンテンツの利用方法であって、前記管理装置が、前記第1の端末装置から前記ネットワークを介して受信した前記コンテンツをコピーして仮編集コンテンツを生成し、前記第1の端末装置から受信した前記コンテンツの利用を許諾する条件である利用許諾条件を前記仮編集コンテンツの所定の領域に付随情報として挿入するステップと、前記仮編集コンテンツに、マーカーを挿入するステップと、前記マーカーを用いて、前記第2の端末装置による編集加工の度合いである編集条件を検出するステップと、前記検出した編集条件と、前記第2の端末装置から前記ネットワークを介して受信した、前記仮編集コンテンツに含まれる前記利用許諾条件とを照合するステップと、前記編集条件と前記仮編集コンテンツに含まれる前記利用許諾条件とを照合するステップにおいて、前記編集条件が前記利用許諾条件を満たしている場合に、前記コンテンツを前記編集条件に基づいて編集加工した派生コンテンツを生成し、前記派生コンテンツを編集不可能な形式のパッケージデータに変換し、前記パッケージデータを前記第2の端末装置へ送信するステップとを実行する方法とした。
その他の手段については、後記する実施の形態で述べる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、公開普及と利用の促進を目的とするディジタルコンテンツの利用において、コンテンツの提供元と関わりがある特定の者に限定されない一般の利用者も利用が可能で、広範囲なコンテンツから引用利用の目的に適したコンテンツを容易に選択でき、意図的な許諾外(不正)利用だけでなく過失や錯誤による許諾外利用も防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明を実施するための最良の形態(以下「実施形態」とする)について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施形態の説明では、「ディジタルコンテンツ」を適宜「コンテンツ」と省略する。
【0016】
本実施形態では、博物館が、郷土料理とこれを活かした学校給食の献立等、複数の写真を所蔵しており、その写真について教育用途での利用を広く館外に認めているものとする。これに対し、比較文化学研究者が、地域毎の風土や気候に合わせた工夫が生活習慣や食事等に反映されていることを、画像を交えて具体的に解説する学術記事をインターネット上で紹介する場合を例に説明する。
【0017】
(システム構成)
図1は、本発明の実施形態に係るディジタルコンテンツの利用管理システム(以下、適宜「本システム」と記載)の構成図である。
本システムは、コンテンツ提供元10、利用センタ20、利用者30、およびそれらを接続するネットワーク700を含んで構成されており、コンテンツ提供元10には端末装置100が、利用者30には端末装置300がそれぞれ備えられている。また、利用センタ20には管理装置200が備えられている。
コンテンツ提供元10は、コンテンツを提供する元となる機関(本事例では博物館に相当)である。端末装置100は、コンテンツ提供元10に属する者(本事例では博物館の館員に相当)が操作してディジタルコンテンツや付随情報の登録を行うコンピュータである。
利用センタ20は、ディジタルコンテンツの利用を管理する機関であり、管理装置200は、ディジタルコンテンツおよびそのディジタルコンテンツに関する付随情報等の保存や、コンテンツを利用するための情報の管理等を行うコンピュータである。管理装置200の機能については、後に図2を用いて詳細に説明する。
利用者30は、利用センタ20に保存されているディジタルコンテンツの利用を希望する者(本事例では比較文化学研究者に相当)である。端末装置300は、利用者30が操作して、コンテンツの編集や、利用センタ20に対してコンテンツの利用申請等を行うコンピュータである。なお、利用者が機関に属する場合は、その機関を利用者30としてもよい。
ネットワーク700は、端末装置100,300と、管理装置200とが通信を行うための通信網であり、例えば、インターネット、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、イントラネット等に相当する。
【0018】
(管理装置の構成)
図2は、本システムにおける管理装置200の構成を示すブロック図である。図1を参照しつつ、図2を用いて管理装置200の構成を説明する。
【0019】
管理装置200は、記憶部210、CPU(Central Processing Unit)220、メインメモリ230、入出力インタフェース240、およびネットワークインタフェース250を備えるコンピュータにより実現される。また、管理装置200は、各種情報の入力を行うためのキーボードやマウス等の入力装置260と、管理装置200から出力された情報を表示させる液晶モニタ等の出力装置270とが接続されているが、これらについては管理装置200に含まれた構成でもよい。
【0020】
記憶部210は、管理プログラム211、コンテンツ記憶部212、および仮編集コンテンツ記憶部213を備え、各種の情報を所定領域に格納する。記憶部210とメインメモリ230は、CPU220が演算処理を行う際の記憶領域である。
管理プログラム211は、CPU220の諸機能を動作させるためのプログラムである。コンテンツ記憶部212は、コンテンツ提供元10(図1参照)の端末装置100からネットワーク700を介して登録されたディジタルコンテンツを記憶する。仮編集コンテンツ記憶部213は、CPU220で生成された仮編集コンテンツを記憶する。仮編集コンテンツとは、コンテンツ提供元10(図1参照)の端末装置100から送信されたオリジナルのコンテンツを用いてCPU220にて生成される、利用者30(図1参照)の端末装置300に配布するための流通用となるコンテンツである。仮編集コンテンツ生成の処理については、図4を用いて後記する。
【0021】
CPU220は、記憶部210に格納されたプログラムや情報を参照して各種演算処理を行う。CPU220は、仮編集コンテンツ生成部221および派生コンテンツ処理部222を含んで構成される。
仮編集コンテンツ生成部221は、付随情報挿入部221a、マーカー挿入部221b、およびディジタル署名部221cを含んで構成され、派生コンテンツ処理部222は、付随情報検証部222a、編集条件検出部222b、条件検証部222c、診断結果生成部222d、許諾条件制御部222e、および派生コンテンツ生成部222fを含んで構成される。これらの各種機能については、図4および図5を用いて後記する。
【0022】
本実施形態の管理装置200は、予め管理プログラム211を記憶部210に格納しており、これをCPU220が読み出し実行することで、CPU220に備わるそれぞれの機能(仮編集コンテンツ生成部221、派生コンテンツ処理部222)を実現する。さらに、この管理プログラムをコンピュータによる読み取り可能な記憶媒体(CD−ROM等)に記憶して提供することが可能である。また、そのプログラムをネットワーク700経由で提供することも可能である。
【0023】
入出力インタフェース240は、入力装置260および出力装置270と、記憶部210およびCPU220との間のデータ入出力のインタフェースを司る。
【0024】
ネットワークインタフェース250は、記憶部210、CPU220と、ネットワーク700との間のデータ入出力のインタフェースを司る。
【0025】
記憶部210、CPU220、メインメモリ230、入出力インタフェース240、およびネットワークインタフェース250は、それぞれ互いに接続されている。また、記憶部210およびCPU220内に備わっているそれぞれのデータや機能についても、同様に接続されている。
【0026】
管理装置200にネットワーク700を介して接続される端末装置100,300は、管理装置200と同様、メインメモリ、CPU、記憶部、ネットワークインタフェース、入出力装置等を備える一般的なコンピュータにより実現され、例えばPC(Personal Computer)、PDA(Personal Digital Assistant)、携帯電話機等により実現される。
【0027】
(処理概要)
図3は、本実施形態に係るディジタルコンテンツ利用管理システムの処理概要図である。まず、第1段階として、仮編集コンテンツ生成処理を説明する。
これは、本事例では、博物館の館員が、端末装置100を用いて、博物館で所蔵している郷土料理とこれを活かした学校給食の献立等の写真(ディジタルコンテンツ)を利用センタ20へ登録する処理である。すなわち、コンテンツ提供元10の端末装置100が、ディジタルコンテンツ(写真a1,b1)と共に、そのコンテンツの許諾管理者情報や利用許諾条件を、登録要求として利用センタ20へ送信し、利用センタ20の管理装置200の仮編集コンテンツ生成部221は、受信した登録要求に含まれる情報を用いて、コンテンツを流通させるための仮編集コンテンツ(写真a2,b2)を生成し保存しておく。
なお、本実施形態での許諾管理者情報とは、ディジタルコンテンツの利用を許諾する者(コンテンツ発行者)の情報であり、本事例では博物館の館員の情報に相当する。
また、本実施形態での利用許諾条件とは、コンテンツを利用する際に許諾可能な条件を示す内容である。本事例での写真a1では、学校給食の献立の写真に一部、小学校の生徒の顔も写り込んでいるため、このコンテンツを利用する場合には「○○小学校で撮影、生徒の肖像権利用許諾取得済」という付記を付けるか、あるいは、生徒の顔が写り込んでいる部分をカットした部分領域を付記なしで使うかの、いずれかを選択する場合に限って利用を許諾する等の条件があり、写真b1では、栄養のバランスや彩りに配慮した郷土料理の献立の全容を納めたものであり、一部だけを切り取ったりせず、画像全体での利用のみを許諾する等の条件がある。
【0028】
次に、第2段階として、派生コンテンツ生成処理を説明する。
この処理は、本事例では、比較文化学研究者が、利用センタ20に保存されている郷土料理と学校給食の献立の写真(ディジタルコンテンツ)を使用してインターネット上に公開する学術記事を作成するために、利用センタ20へ利用申請を行い、利用申請を受信した利用センタ20が、派生コンテンツを生成して比較文化学研究者へ送信する処理である。
すなわち、まず、利用者30の端末装置300が、利用センタ20に保存されている仮編集コンテンツ(写真a2,b2)を要求し、取得する。仮編集コンテンツ(写真a2,b2)にはそれぞれ、マーカー付コンテンツ、付随情報(利用許諾条件、許諾管理者情報)およびディジタル署名が含まれているが、これらの情報については、後に図5を用いて詳細に説明する。
端末装置300は、取得した仮編集コンテンツ(写真a2,b2)を編集し、編集した編集済仮編集コンテンツを含むHTML(Hyper Text Markup Language)データ等の仮派生コンテンツを作成する。端末装置300は作成した仮派生コンテンツを用いて、利用申請を利用センタ20へ送信する。管理装置200の派生コンテンツ処理部222は受信した利用申請の内容を検証し、検証の結果、問題があった場合には、その内容をあらわす診断レポートを端末装置300へ送信する。問題が無かった場合には、派生コンテンツ処理部222が、受信した利用申請の内容に基づいて、保存されているオリジナルのコンテンツから派生コンテンツを生成し、その派生コンテンツをさらに派生コンテンツの利用条件として許諾されない用途への転用を制限する形式、例えば各々の引用コンテンツを取り出して編集すること等を不可能とする形式にパッケージ化したパッケージデータを、端末装置300へ送付する。
【0029】
(仮編集コンテンツ生成処理)
以下に説明する処理は、第1段階として実施される、仮編集コンテンツ生成処理である。シーケンスをあらわす図4に沿って、適宜図1〜3を参照しながら説明する。
【0030】
まず、コンテンツ提供元10の端末装置100が、管理装置200にディジタルコンテンツの登録要求を送信する(S301)。この登録要求には、ディジタルコンテンツと、コンテンツそれぞれの利用許諾条件および許諾管理者情報が含まれる。
【0031】
付随情報挿入部221aは、受信したディジタルコンテンツをコンテンツ記憶部212(図2参照)に保存する(S302)。続いて、付随情報挿入部221aは保存したディジタルコンテンツをコピーして、仮編集コンテンツを生成し(S303)、生成した仮編集コンテンツのヘッダ領域に、ステップS301で受信した許諾管理者情報および利用許諾条件を示すテキスト情報を、例えばXML(eXtensible Markup Language)形式等を用いて、付随情報として挿入する(S304)。なお、代表的な画像フォーマットであるJPEG(Joint Photographic Experts Group)フォーマットでは、ヘッダ領域に情報を埋め込んでもディジタルコンテンツの実体には影響を与えない領域が標準化仕様として存在するので、そのような領域に付随情報を埋め込んでもよい。
【0032】
続いて、マーカー挿入部221bは、編集パターントレース用マーカー(以下、適宜「マーカー」と記載)を仮編集コンテンツの実体部に挿入する(S305)。ここでマーカーとは、管理装置200が、コンテンツの編集条件(編集加工の度合い)を検出するためのものである。編集条件とは、コンテンツを編集する際に元のコンテンツが、例えば何倍に拡大されたか、何度回転されたか、元の領域のどの部分が切り出されたか、等の情報である。
マーカーの生成方法の一例を、周波数空間で処理を行う場合と、画素空間で処理を行う場合とを、図6の上部「マーカー挿入」を参照しながらそれぞれ説明する。なお、これらの処理を行った結果は、どちらもマーカーが挿入された画像データが生成されることになる。
【0033】
(周波数空間でのマーカー挿入)
まず、マーカー挿入部221bが、仮編集コンテンツの画像データ(図6の符号601)の画素を周波数直交変換(例えば、2次元フーリエ変換)し、繰り返しの粗い成分(低周波成分)から繰り返しの密な成分(高周波成分)までに置き換えて周波数空間における周波数領域のデータを得る(図6の符号611)。次に、得られた周波数領域のωx,ωy軸上それぞれ1箇所、計2箇所に、周波数領域のデータを充分超える値(例えば、得られた周波数領域最大値のさらに2倍等)を算出し、重畳する(図6の符号612)。この算出された値がマーカーである。
続いて、必要に応じてマーカー挿入部221bが、周波数領域の低周波成分に雑音成分を重畳する(図6の符号613)ことで、画像データの情報を劣化させてもよい。
以上の処理によって得られた周波数領域のデータ(図6の符号614)を、マーカー挿入部221bが逆周波数直交変換(例えば、逆2次元フーリエ変換)して画像データに再構成する。すなわち周波数領域から画素に戻すことで、マーカーが挿入され、かつ画像も劣化された画像データ(図6の符号604)が生成される。
【0034】
(画素空間でのマーカー挿入)
まず、マーカー挿入部221bが予め周波数空間で、ωx,ωy軸上にそれぞれ1箇所、計2箇所に、一般的な画像データから得られる平均的な周波数領域より充分大きな値と、その2箇所以外は0の周波数の値を作成し(図6の符号612)、これを逆周波数直交変換(例えば、逆2次元フーリエ変換)して、マーカー画像(検出用画像)を生成しておく。このマーカー画像は、画素空間では縦および横の縞模様としてあらわされる(図6の符号602)。なお、ここで作成するデータで、2箇所の値を互いに異なる値としておくと、検出を行う際にどちらの値かを判別しやすくなり、好適である。
マーカー挿入時にはマーカー挿入部221bが、予め生成しておいたマーカー画像(図6の符号602)とコンテンツの画像データ(図6の符号601)とを、それぞれ同じ画素位置毎の画素の値を掛け合わせることで、元コンテンツの画像データに、縦および横の縞模様が重畳された画像データ(図6の符号604)が生成される。なお、この画像データに、必要に応じて画像劣化(図6の符号603)を行ってもよい。
このような方法によれば、マーカー画像を予め生成しておくことにより、マーカー挿入の都度、周波数直交変換処理を行う必要が無くなるので、周波数空間において処理を行う場合と比べて、より高速な処理が可能となる。
【0035】
次に、ディジタル署名部221cは、ステップS304において仮編集コンテンツのヘッダ領域に挿入された付随情報について、ディジタル署名(以下、適宜「署名」と記載)を生成する(S306)。
ここで、ディジタル署名とは、送信する情報(本実施形態では、仮編集コンテンツ)に暗号化された署名情報を付加する技術である。このディジタル署名を用いることで、付随情報が利用者30によって改竄されていないか否かを検証する。署名は、ディジタル署名部221cが、仮編集コンテンツのヘッダ領域に挿入されている付随情報を用いてハッシュコードを作成し、さらにそのハッシュコードを、自身(管理装置200)の秘密鍵を用いて暗号化することで生成される。
以上、署名を生成する方法の一例を説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、ハッシュコードを作成せずに、付随情報自体を暗号化したものを署名として付与してもよい。また、画像データ自体にもハッシュコードを作成し、これを暗号化して生成したディジタル署名を付与することも考えられる。この場合、コンテンツの改竄を防止する効果を持つ。
【0036】
ディジタル署名部221cは、生成した署名を仮編集コンテンツに付与する(S307)。なお、ステップS306〜S307における、署名を生成し、付与する処理については、ステップS304の付随情報を挿入した後に行ってもよい。
以上の処理で生成された、マーカー付コンテンツ、付随情報(許諾管理者情報、利用許諾条件)および署名を含む仮編集コンテンツを、ディジタル署名部221cは仮編集コンテンツ記憶部213へ保存する(S308)。
【0037】
利用センタ20は、以上の方法で仮編集コンテンツを保存した後、その仮編集コンテンツを、ネットワーク700を利用していつでも誰でも自由にダウンロード可能としておく。
【0038】
(派生コンテンツ生成処理)
次に、第2段階として実施される、派生コンテンツ生成処理を、シーケンスをあらわす図5に沿って適宜図1〜3を参照しながら説明する。
【0039】
まず、利用者30の端末装置300は、利用したいコンテンツの仮編集コンテンツ要求を利用センタ20へ送信する(S401)。利用センタ20は、受信したコンテンツに対応する、仮編集コンテンツ記憶部213に保存してある仮編集コンテンツを端末装置300へ送信する。それにより、端末装置300はこれを取得する(S402)。
【0040】
端末装置300は、市販のWWW(World Wide Web)ホームページ編集ソフトウェア等を用いて、取得した仮編集コンテンツを編集し(S403)、さらに、編集済仮編集コンテンツとテキスト情報等から、HTMLデータ等の仮派生コンテンツを作成する(S404)。このとき、各々の仮編集コンテンツには、付随情報として元のディジタルコンテンツの利用許諾情報が含まれているので、利用者30はその情報を閲覧し、作成した仮派生コンテンツが利用許諾条件を満たしているか否かを確認することが可能である。例えば、前記したとおり写真a1は、「○○小学校で撮影、生徒の肖像権利用許諾取得済」という付記を付けるか、あるいは、生徒の顔が写り込んでいる部分をカットした部分領域を付記なしで使うかのいずれかを選択する等の条件があり、写真b1は、画像全体での利用のみを許諾する等の条件がある。このような情報を利用者30は端末装置300を用いて確認できる。
【0041】
端末装置300は、仮派生コンテンツを作成したら、利用センタ20に電子メールやHTTP(HyperText Transfer Protocol)のPUTコマンド等を用いて、利用申請として送信する(S405)。
【0042】
利用センタ20は、利用者30毎に予め割り当てるユニークな利用者IDと、利用者30の端末装置300から申請された仮派生コンテンツ毎に割り当てたユニークな仮派生IDとを用いて、利用申請を管理する。
【0043】
端末装置300からの利用申請を受信した管理装置200は、派生コンテンツ処理部222の付随情報検証部222aにおいて、受信した情報からディジタル署名を抽出し(S406)、抽出したディジタル署名を検証する(S407)。
検証は、ステップS405で受信した利用申請に含まれる付随情報から作成したハッシュコードと、ステップS406で抽出したディジタル署名を自身(管理装置200)の公開鍵で復号化して生成したハッシュコードとを比較する。両者が一致すれば、付随情報が改竄されていないことが証明される。
【0044】
ステップS407の検証の結果、署名が壊れていたり、予期せぬ加工で欠落していたり等によってハッシュコードが一致せず、付随情報の正当性が確認できなかった場合(S407→NG)は、診断結果生成部222dが、利用センタ20に送信された編集済仮編集コンテンツの付随情報の真正確認ができなかったことと、利用センタ20から仮編集コンテンツを再度取得し、仮派生コンテンツを作成し直すか、あるいは、仮編集コンテンツの付随情報が損なわれない特定(複数)の画像編集ソフトの一覧を示して編集加工のやり直しを推奨する、等の情報が記述された診断レポートを生成し(S408)、利用者IDを用いて、当該の利用者30の端末装置300に診断レポートを送信する(S409)。
【0045】
一方、検証の結果、付随情報の正当性が確認できた場合(S407→OK)は、編集条件検出部222bは、受信した利用申請から、編集済仮編集コンテンツの編集条件(編集加工の度合い)を検出する(S410)。
【0046】
ステップS410の検出の方法を、図6の下部「マーカーによる検出」に沿って説明する。
受信した仮派生コンテンツに含まれる編集済仮編集コンテンツの実体部である画像データ(図6の符号605)を、編集条件検出部222bが周波数直交変換(例えば、2次元フーリエ変換)し、周波数空間における周波数領域のデータを得る(図6の符号615)。得られたデータにおいて、ステップS305で挿入した、周波数領域の中で値の大きい2箇所を検出する(図6の符号616)。検出したそれぞれのマーカーの位置(図6の符号616)と、仮編集コンテンツ記憶部213に保存されている仮編集コンテンツのマーカーの位置(図6の符号612)とを比較し、平行移動した距離や周波数領域の中心からの距離等を調べる。例えば、図6の符号616においては、ωx,ωyに与えられたマーカーの位置が、保存されている仮編集コンテンツ(図6の符号612)と比較して、それぞれ中心から1/2の位置に移動していることから、縦横それぞれ1/2の縮小が行われたと判定できる。また、例えば、マーカーが時計回りに90度移動していれば、時計回りに90度回転の編集加工が行われていることになる。横軸ωx上の値だけが周波数領域の中心から2倍離れた位置に移動していれば、仮編集コンテンツは横軸方向に2倍拡大の編集加工が行われていると判定できる。
【0047】
なお、図4のステップS305におけるマーカー挿入時に、周波数空間で処理を行った場合でも、画素空間で処理を行った場合でも、このステップS410の編集条件検出処理への影響はない。
【0048】
編集条件検出部222bで編集条件を検出した後、条件検証部222cは、仮派生コンテンツに利用された、元となる全ての編集済仮編集コンテンツに付随している利用許諾条件と、前記ステップS410で検出した編集条件とを比較し、編集条件が利用許諾条件を満たしているか否かを、コンテンツ毎に照合する(S411)。例えば、利用許諾条件でコンテンツの縮小は50%と定められているにもかかわらず、編集条件はこれを超える25%まで縮小されている等、本来保有すべき情報を損なう可能性がある場合、すなわち1つ以上の許諾外利用が検出された場合(S411→NG)には、診断結果生成部222dが、いかなる利用許諾条件とどの編集条件が不適切なのかを記述した診断レポートを生成し(S408)、利用者IDを用いて当該の利用者30の端末装置300へ、生成した診断レポートを送信する(S409)。
【0049】
一方、予め設定された利用許諾条件を満たしていた場合(S411→OK)は、許諾条件制御部222eが、元となる仮編集コンテンツの利用許諾条件の項目毎に最も強い利用制限を選択し、新たな利用許諾条件を生成する(S412)。これは前記したとおり、例えば複数の元コンテンツの利用許諾条件で、利用期間がそれぞれ違うものであった場合には、派生コンテンツの利用許諾条件は、利用期間の最も短いものとなる、ということである。
【0050】
続いて、派生コンテンツ生成部222fは、コンテンツ記憶部212に保存してあるオリジナルコンテンツに、ステップS410で検出した編集条件と同じ編集を施し、HTMLデータ等の派生コンテンツを生成する。
その後、派生コンテンツ生成部222fは、許諾管理者情報を、予め規定された所定の情報(例えば、一律に利用センタ20や利用者30とする、あるいは派生コンテンツを作成する際に元となった割合の多いコンテンツ提供元10とする等)で設定し、この許諾管理者情報とステップS412で生成した利用許諾条件とで付随情報とする。派生コンテンツ生成部222fは、この付随情報と派生コンテンツを含めて、利用者30が編集不可能な形式に変換する(S413)。本実施形態では、この編集できない形式に変換することをパッケージ化と呼ぶ。このパッケージ化は、利用者30が編集不可能であればどのような形式でもよく、例えば、米国Adobe Systems社のPDF(Portable Document Format)文書形式等が考えられる。なお、ここで仮にパッケージ化せずに、元コンテンツを含む派生コンテンツを端末装置300に送信した場合、利用者30が派生コンテンツから分離して取得したディジタルコンテンツを、過失や錯誤等によって別のコンテンツに転用してしまったり、あるいは、許諾外(不正)利用の意図のある利用者30がコンテンツの利用許諾条件を改竄して第三者に配布したりすることも可能となってしまい、結果として許諾外利用が発生する危険性がある。パッケージ化は、それらを防止する効果を持つ。
派生コンテンツ生成部222fは、パッケージデータを端末装置300へ送信する(S414)。
【0051】
なお、本実施形態では、派生コンテンツに付随情報を含めてパッケージ化したが、必要に応じて、付随情報を含めずに派生コンテンツだけをパッケージ化して端末装置300へ送信してもよい。
【0052】
上記処理で生成した派生コンテンツや付随情報は、再利用することができる。具体的には、ステップS413で生成した派生コンテンツをオリジナルコンテンツの入力とし、ステップS412で生成した利用許諾条件とステップS413で設定した許諾管理者情報を付随情報の入力として、仮編集コンテンツ生成部221におけるコンテンツ保存処理(図4のS302)から順次行う。それによって、生成された派生コンテンツについて、2次的、3次的な利用も可能となる。
【0053】
図4,図5における利用センタ20の管理装置200の処理について、適宜図1,図2を参照しながら、図7のフローに沿って説明する。
【0054】
(仮編集コンテンツ生成処理)
まず、管理装置200は、コンテンツ提供元10の端末装置100から、コンテンツの登録要求を受信する(S501)。受信した登録要求に含まれているディジタルコンテンツを、管理装置200の付随情報挿入部221aは、コンテンツ記憶部212に保存し(S502)、さらに保存したディジタルコンテンツをコピーして、仮編集コンテンツを生成する(S503)。続いて付随情報挿入部221aは、受信した登録要求に含まれる利用許諾条件や許諾管理者情報を付随情報として、仮編集コンテンツのヘッダ部に挿入する(S504)。
【0055】
続いて、マーカー挿入部221bは、仮編集コンテンツ毎に編集パターントレース用マーカーを仮編集コンテンツの実体部に挿入する(S505)。
次に、ディジタル署名部221cは、付随情報に改竄等があった場合に判別できるよう、付随情報についてのディジタル署名を生成し(S506)、生成した署名を仮編集コンテンツに付与する(S507)。なお、図5で説明したとおり、ステップS506〜S507における、ディジタル署名を生成し、付与する処理は、ステップS504の後に行ってもよい。
以上の処理で生成したマーカー付コンテンツ、付随情報、および署名を含めて、仮編集コンテンツとして、管理装置200のディジタル署名部221cは、仮編集コンテンツ記憶部213へ保存する(S508)。
【0056】
(派生コンテンツ生成処理)
ステップS502で管理装置200のコンテンツ記憶部212に保存されているコンテンツは、ネットワーク700を介して利用者30の端末装置300から自由に閲覧できる状態になっている。管理装置200は、利用者30の端末装置300から仮編集コンテンツ要求を受信すると(S509)、仮編集コンテンツ記憶部213に保存されている、要求された仮編集コンテンツを端末装置300へ送信する(S510)。
【0057】
利用者30の端末装置300から利用申請が送信されてきたら、管理装置200はこれを受信し(S511)、付随情報検証部222aは、受信した利用申請に含まれる署名を抽出する(S512)。
管理装置200は、抽出した署名を用いて、付随情報に改竄された可能性が無いか否かを検証する(S513)。検証した結果、付随情報の正当性が確認できなかった場合(S513→NG)、診断結果生成部222dはその結果を記述した診断レポートを生成し(S514)、端末装置300へ診断レポートを送信する(S515)。
一方、検証の結果、付随情報の正当性が確認できた場合(S513→OK)は、編集条件検出部222bは、仮編集コンテンツの編集条件(編集加工の度合い)を検出する(S516)。
【0058】
続いて、条件検証部222cは、検出した編集条件と、仮派生コンテンツに利用された元となる全ての編集済仮編集コンテンツの利用許諾条件とを照合し(S517)、編集条件が利用許諾条件を満たしていない場合(S517→NG)は、診断結果生成部222dがその状況を記述した診断レポートを生成し(S514)、生成した診断レポートを端末装置300へ送信する(S515)。
一方、編集条件が利用許諾条件を満たしている場合(S517→OK)は、許諾条件制御部222eは、元となる仮編集コンテンツの利用許諾条件を基に派生コンテンツの利用許諾条件を生成する(S518)。
【0059】
続いて、派生コンテンツ生成部222fは、ステップS502で保存してあるオリジナルのディジタルコンテンツに対して、ステップS516で検出した編集条件に基づいて編集を施して派生コンテンツを生成し、さらに許諾条件等の付随情報も含んだ状態で、利用者30の端末装置300が編集不可能な形式にパッケージ化する(S519)。パッケージ化によって生成したパッケージデータは、派生コンテンツ生成部222fが端末装置300へ送信する(S520)。
【0060】
(従来方法との比較)
図8は、ディジタルコンテンツの公開利用に係る、従来の方法と本発明の方法との比較をあらわしている。左欄に示す項目について、順に説明する。
【0061】
(1)利用者
従来の方法では、身元が保証されていると認定を受けた一部の利用者等、派生コンテンツの生成のためにオリジナルコンテンツを配布しても不正利用をしないと想定できる、信頼に足る者に限られていたのに対し、本発明では誰でも利用することが可能となる。
【0062】
(2)利用可能コンテンツ
従来の方法では、限定された著名なコンテンツに限られていたのに対し、本発明では、事前に登録する一般利用者が、各々の興味や経験等に応じて多様な引用利用が可能となるため、著名なものに限定することなく、今後アイデンティティの確立や普及促進を目指す地域文化コンテンツ等も含めた、公開が可能なコンテンツ全般にわたる多様なコンテンツを取り扱うことができる。
また、従来の方法では、編集に必要となる元コンテンツを配布する際、予め典型的な解像度(精細度、あるいは、画像サイズ)のパターンを用意しておく手段がとられていたため、用意されているパターンが利用者の希望する解像度に合致せず、希望のレイアウトを生成できない等の不都合があった。しかし本発明では、編集パターントレース用マーカーを用いて利用者の希望する解像度を検出し、利用許諾条件に合致した場合、利用者が希望する解像度の画像を自動生成できるので、許諾内であればあらゆる解像度のコンテンツを扱うことができ、結果として用途に応じたレイアウトを実現することが可能となる。
【0063】
(3)利用許諾条件の確認
従来の方法では、許諾管理者等の人手によって行われていたのに対し、本発明では利用センタの管理装置において、利用する複数の元コンテンツ各々の利用許諾条件だけでなく派生コンテンツの新たな利用許諾条件まで鑑みて、利用者の編集条件(編集加工の度合い)を判別する。
【0064】
(4)利用許諾の取得
複数のコンテンツを利用する場合、従来の方法では、利用者はコンテンツ毎の取得はもちろん、それが複数のコンテンツ提供元にわたる場合には、コンテンツ提供元毎に、利用許諾の取得を必要としていたのに対し、本発明では、複数のコンテンツ提供元からの複数のコンテンツを利用センタに登録して一括管理することで、利用者は利用センタで一括して利用許諾を取得することが可能となる。
【0065】
(5)錯誤や過失による許諾外利用
従来の方法では、利用者へオリジナルコンテンツを配布していたために、利用者の編集結果が利用許諾条件を満たしているかについては利用者の意識に委ねられ、それを信頼するしか方法が無かったのに対し、本発明では、予め定められている利用許諾条件と利用者の編集条件とを、利用センタの管理装置が照合して判別することにより、許諾外利用は自動防止される。
【0066】
(6)利用者が認識していない不正行為
従来の方法では、例えばオリジナルコンテンツを入手した第1の利用者が、そのコンテンツの付随情報の利用許諾条件を不正に改竄した場合、第2の利用者が改竄を知らずに第1の利用者からコンテンツを入手して編集加工を行い、改竄された利用許諾条件に基づいて派生コンテンツを利用すると、元のコンテンツの許諾外利用になる可能性があり、それを防止する手段は無かった。それに対し本発明では、利用者にはオリジナルコンテンツではなく、劣化されている流通用のコンテンツを配布し、さらに、最終的に利用者へ渡すデータも編集不可能な形式にパッケージ化されているため、第1の利用者から第2の利用者へ改竄したデータが配布されることはない。さらにディジタル署名を付与しているため、付随情報に改竄等があった場合は、利用センタで把握可能となる。すなわち、不正行為は未然に防止される。
【0067】
(7)他目的への不正流出
従来の方法では、利用者へオリジナルコンテンツを配布していたため、その後の使用は利用者の意識に委ねられ、それを信頼するしかなかった。しかし、本発明では、劣化された流通用のコンテンツを配布することや、利用者から送信された編集条件と利用許諾条件とを管理装置が照合して判別し、パッケージ化して利用者へ送信することにより、多目的への不正な流出は自動防止される。
【0068】
(8)広範な利用促進のためのインセンティブ
ここでのインセンティブとは、公開目的のコンテンツについて、さらに広範な利用促進を図る誘因となるものである。
従来の方法では、公開普及されているディジタルコンテンツの流通管理システムは、有名な文化遺産等を有償で取り扱うシステムとして幾つか存在していたが、有名でないコンテンツについてはごく僅かであり、例え公開されていても、有名な文化遺産の許諾管理に必要となる利用に限定されていた。しかも、公開されるコンテンツは強固な権利保護を一義としていたため、無名な地域文化コンテンツ等が積極的な普及促進のために様々な利用を許容する場合については、既存の流通管理システムで取り扱うことはできなかった。しかしながら、本発明では、利用センタの利用者IDや仮派生ID等を管理したデータベース等を用いることにより、例えばコンテンツが利用される毎に、コンテンツ提供元や利用者に対し、その寄与に応じた報酬の分配や、コンテンツの有名度に応じた報酬の分配を行うことも可能となる。結果として、従来の有名なコンテンツだけでなく、無名なコンテンツについても、ディジタルコンテンツの公開普及を推進する効果が期待できる。
【0069】
本発明によれば、図8に示すとおり、意図的な許諾外(不正)利用か否か等を問わず、利用者の錯誤や過失等に伴う許諾外利用を未然妨止し、登録された利用許諾条件に基づいて正当なディジタルコンテンツの利用が可能となり、従来に無いメリットを実現することが可能である。
また、利用センタにおいてディジタルコンテンツの利用を一括管理することで、利用許諾条件の照合等における処理が自動化されるので、低コストな運用を実現し、公平性を備えたディジタルコンテンツの利用促進を図ることができる。さらに利用者に対しては、利用センタから、安全かつ簡便な利用を促すナビゲーションを提供することも可能である。
【0070】
(その他)
従来からの実証実験等、実用化の進んでいるコンテンツ単体の単純利用のためのシステムを「派生コンテンツの安全確実な流通手段」として利用しつつ、さらに本実施形態を「コンテンツの利用を安全に促進するシステム」として付加的に利用することも可能である。
図9は、省庁施策等で推進されている文化遺産情報のオンライン化に対する本発明との関係の一例をあらわしている。ここで、コンテンツ提供元10に複数の博物館9011〜901nが例示されており、利用センタ20には、コンテンツ提供元10から提供されたディジタルコンテンツやその利用に関する情報を保存するメタデータ902を備えてある。また、利用者30(例えば流通事業者や個人利用者等)が、利用センタ20のメタデータ902に保存されているコンテンツを用いて作成した、インターネット上における派生コンテンツの紹介記事の例903が例示されている。図9で示したとおり、従来技術である実証実験(二重線で囲んだ部分)に加えて、本発明の実施形態における機能を、再利用促進のために付加(破線で囲んだ部分)することも可能であり、すなわち、本発明は既存システムとの親和性を保有する。
【0071】
本発明に係る構成例として、端末装置100,300および管理装置200の3台の装置間で処理を行う場合を説明したが、コンテンツ提供元10が複数ある場合や、利用者30が複数存在する場合も考えられる。当然、本発明においても、4台以上の端末間で処理を行うことが可能である。
また、仮編集コンテンツとして、マーカー付コンテンツ、付随情報、および署名を構成要素としたが、これに限るものではなく、他の情報を含むものであってもよい。扱うディジタルコンテンツについても画像データに限らず、映像、音声、文字、数値データ等、様々な媒体を扱うことができる。
その他についても、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変形可能である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明のディジタルコンテンツ利用管理システムの構成図である。
【図2】図1に示した管理装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明のディジタルコンテンツ利用管理システムの処理概要図である。
【図4】本発明のディジタルコンテンツ利用管理システムにおける、仮編集コンテンツ生成処理のシーケンス図である。
【図5】本発明のディジタルコンテンツ利用管理システムにおける、派生コンテンツ生成処理のシーケンス図である。
【図6】編集パターントレース用マーカーの説明図である。
【図7】図2に示した管理装置にて行われる処理フロー図である。
【図8】ディジタルコンテンツの公開利用に係る、従来の方法と本発明の方法との比較をあらわす図である。
【図9】省庁施策等で推進されている文化遺産情報のオンライン化に対する本発明との関係の一例をあらわす図である。
【符号の説明】
【0073】
10 コンテンツ提供元
20 利用センタ
30 利用者
100,300 端末装置
200 管理装置
210 記憶部
211 管理プログラム
212 コンテンツ記憶部
213 仮編集コンテンツ記憶部
220 CPU
221 仮編集コンテンツ生成部
221a 付随情報挿入部
221b マーカー挿入部
221c ディジタル署名部
222 派生コンテンツ処理部
222a 付随情報検証部
222b 編集条件検出部
222c 条件検証部
222d 診断結果生成部
222e 許諾条件制御部
222f 派生コンテンツ生成部
230 メインメモリ
240 入出力インタフェース
250 ネットワークインタフェース
260 入力装置
270 出力装置
700 ネットワーク



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワーク経由でディジタルコンテンツを提供する第1の端末装置と、前記第1の端末装置から提供された前記コンテンツを管理する管理装置と、前記コンテンツを利用する第2の端末装置とを備えるディジタルコンテンツ利用管理システムにおけるディジタルコンテンツの利用方法であって、
前記管理装置が、
前記第1の端末装置から前記ネットワークを介して受信した前記コンテンツをコピーして仮編集コンテンツを生成し、前記第1の端末装置から受信した前記コンテンツの利用を許諾する条件である利用許諾条件を前記仮編集コンテンツの所定の領域に付随情報として挿入するステップと、
前記仮編集コンテンツに、マーカーを挿入するステップと、
前記マーカーを用いて、前記第2の端末装置による編集加工の度合いである編集条件を検出するステップと、
前記検出した編集条件と、前記第2の端末装置から前記ネットワークを介して受信した、前記仮編集コンテンツに含まれる前記利用許諾条件とを照合するステップと、
前記編集条件と前記仮編集コンテンツに含まれる前記利用許諾条件とを照合するステップにおいて、前記編集条件が前記利用許諾条件を満たしている場合に、前記コンテンツを前記編集条件に基づいて編集加工した派生コンテンツを生成し、前記派生コンテンツを編集不可能な形式のパッケージデータに変換し、前記パッケージデータを前記第2の端末装置へ送信するステップと
を含んで実行することを特徴とするディジタルコンテンツの利用管理方法。
【請求項2】
前記仮編集コンテンツにマーカーを挿入するステップにおいて、
前記管理装置が前記仮編集コンテンツの画素を周波数直交変換し、得られる周波数領域の周波数の値を超える値を算出して、前記算出の結果得られた周波数を周波数領域に重畳し、前記重畳した周波数領域を逆周波数直交変換する
ことを特徴とする請求項1に記載のディジタルコンテンツの利用管理方法。
【請求項3】
前記仮編集コンテンツにマーカーを挿入するステップにおいて、
前記管理装置が予めマーカー画像を生成しておき、
前記仮編集コンテンツの画素に前記マーカー画像を重畳する
ことを特徴とする請求項1に記載のディジタルコンテンツの利用管理方法。
【請求項4】
前記管理装置は、
前記第2の端末装置から受信した前記仮編集コンテンツの前記利用許諾条件を用いて前記派生コンテンツの利用許諾条件を生成し、前記派生コンテンツと共に編集不可能な形式のパッケージデータに変換するステップと、
前記パッケージデータを前記第2の端末装置へ送信するステップと
をさらに含んで実行することを特徴とする請求項1に記載のディジタルコンテンツの利用管理方法。
【請求項5】
前記管理装置が、
前記第1の端末装置から前記ネットワークを介して受信した前記コンテンツの利用を許諾する者である許諾管理者情報を、前記利用許諾条件と共に、前記仮編集コンテンツの所定の領域に前記付随情報として挿入するステップと、
前記付随情報の改竄の有無を検証するための電子署名を、前記付随情報を用いて生成し、前記仮編集コンテンツに付与するステップと、
前記第2の端末装置が前記仮編集コンテンツを編集加工して作成した仮派生コンテンツを、前記ネットワークを介して受信し、前記仮派生コンテンツに含まれる前記電子署名を抽出するステップと、
前記抽出した電子署名を用いて、前記付随情報の改竄の有無を検証するステップと
をさらに含んで実行することを特徴とする請求項1に記載のディジタルコンテンツの利用管理方法。
【請求項6】
前記管理装置が以下のいずれかの場合において、検証結果又は照合結果と、その内容を記述した診断レポートを生成し、前記診断レポートを前記第2の端末装置へ送信するステップをさらに含んで実行することを特徴とする請求項5に記載のディジタルコンテンツの利用管理方法。
(1)前記電子署名を用いて前記付随情報の改竄の有無を検証するステップで、前記付随情報の正当性が確認できなかった場合
(2)前記編集条件と、前記利用許諾条件とを照合するステップで、前記利用許諾条件の範囲外に相当する前記編集条件が1以上あった場合
【請求項7】
ネットワーク経由でディジタルコンテンツを提供する第1の端末装置と、前記第1の端末装置から提供された前記コンテンツを管理する管理装置と、前記コンテンツを利用する第2の端末装置とを備えるディジタルコンテンツ利用管理システムに用いられる前記管理装置であって、
前記第1の端末装置から前記ネットワークを介して受信した前記コンテンツをコピーして仮編集コンテンツを生成し、前記第1の端末装置から受信した前記コンテンツの利用を許諾する条件である利用許諾条件を前記仮編集コンテンツの所定の領域に付随情報として挿入する付随情報挿入部と、
前記仮編集コンテンツに、マーカーを挿入するマーカー挿入部と、
前記マーカーを用いて、前記第2の端末装置による編集加工の度合いである編集条件を検出する編集条件検出部と、
前記検出した編集条件と、前記第2の端末装置から前記ネットワークを介して受信した、前記仮編集コンテンツに含まれる前記利用許諾条件とを照合する条件検証部と、
前記編集条件と前記仮編集コンテンツに含まれる前記利用許諾条件とを照合する条件検証部において、前記編集条件が前記利用許諾条件を満たしている場合に、前記コンテンツを前記編集条件に基づいて編集加工した派生コンテンツを生成し、前記派生コンテンツを編集不可能な形式のパッケージデータに変換し、前記パッケージデータを前記第2の端末装置へ送信する派生コンテンツ生成部と
を備えることを特徴とする管理装置。
【請求項8】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のディジタルコンテンツの利用管理方法を、コンピュータである前記管理装置に実行させることを特徴とする管理プログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−350971(P2006−350971A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−179970(P2005−179970)
【出願日】平成17年6月20日(2005.6.20)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】