説明

ディジタル位相ロックループにおける累算された位相−ディジタル変換

ディジタル位相ロックループ(DPLL)において信号の累算された位相をディジタル値に変換するための技術。模範的な実施形態では、信号が、分周器比Nで信号の周波数を分割するN分割モジュールと対にされる。分割された信号は、分割された信号の立ち上がりエッジと基準信号の立ち上がりエッジとの位相差を測定するデルタ位相−ディジタル変換器へ入力される。累算された分周器比群と較正された位相差群とが合算され、累算されたディジタル位相が生成される。シグマ−デルタ変調器を用いて分周器比Nを変える更なる技術が示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ディジタル位相−ロックループ群(DPLL群)の設計に関し、特に、DPLL群の中の累算された位相−ディジタル変換のための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
現代の通信回路では、既知の周波数を有する基準信号への位相ロックによって任意の周波数の信号群を生成するためにディジタル位相−ロックループ群(DPLL群)が使用される。ディジタル処理でDPLL出力信号の位相を基準信号の位相と比較するために、DPLLは、累算された位相−ディジタル変換器(APDC)として知られている混合信号ブロックを使用するであろう。APDCは、DPLL出力信号の累算された位相のディジタル表現を生成する。
【0003】
従来のDPLL群では、APDCは、時間−ディジタル変換器(TDC)と結合したカウンタを用いて実装されるであろう。カウンタが、出力信号の周期の中の累算された出力信号位相の整数部分を数える一方で、TDCは、累算された出力信号位相の分数部分を測定するであろう。カウンタとTDC出力は、合算されて累算された総計の出力信号位相を生成するであろう。
【0004】
高周波出力信号群を生成するDPLL群に対しては、カウンタとTDCの双方が、相応の高周波で動作することが必要とされるであろう。例えば、カウンタが、出力信号の周波数で経過した周期の合計数を数えることが必要とされる一方で、TDCの遅延線中のバッファ群も、出力信号の周波数で切り替わることが必要とされるであろう。DPLLの構成要素回路類の高周波動作は、一般に、DPLLによってより高い電源消費を引き起こす。更に、累算された出力信号位相の分数部分を対応する整数部分に一致させるためには、カウンタの信号パス遅れとTDCとが正確に一致されなければならない。この要求は、さらにAPDCの設計を複雑にする。
【0005】
先行技術に対して改善された電力効率と設計の容易さの両方を示す新しいAPDCを提供することが望まれるであろう。
【発明の概要】
【0006】
本開示の一態様は、目標信号の累算された位相のディジタル表現を生成する方法であって、分周器比Nで前記目標信号の周波数を分割して分割された信号を生成することと、前記分周器比Nを累算して累算された整数の位相を生成することと、前記分割された信号中のイベントと基準信号中の対応するイベントとの位相差のディジタル表現を生成することと、前記累算された整数の位相と前記ディジタル位相差とを合算して前記目標信号の累算された位相のディジタル表現を生成することとを含む方法を提供する。
【0007】
本開示の他の態様は、目標信号の累算された位相のディジタル表現を生成するための装置であって、分周器比Nで前記目標信号の周波数を分割して分割された信号を生成するN分割モジュールと、前記分周器比Nを累算して累算された整数の位相を生成する累算器と、前記分割された信号中のイベントと基準信号中の対応するイベントとの位相差のディジタル表現を生成するデルタ位相−ディジタル変換器と、前記累算された整数の位相と前記ディジタル位相差とを合算して前記目標信号の累算された位相のディジタル表現を生成する合算器とを含む装置を提供する。
【0008】
本開示の更なる他の態様は、目標信号の累算された位相のディジタル表現を生成するための装置であって、分周器比Nで前記目標信号の周波数を分割して分割された信号を生成する手段と、前記分周器比Nを累算して累算された整数の位相を生成する手段と、前記分割された信号と基準信号との位相差のディジタル表現を生成する手段と、前記累算された整数の位相と前記ディジタル位相差とを合算して前記目標信号の累算された位相のディジタル表現を生成する手段とを含む装置を提供する。
【0009】
本開示の更なる他の態様は、目標信号の累算された位相のディジタル表現を生成するコンピュータプログラム生産品であって、コンピュータに、分周器比Nで前記目標信号の周波数を分割して分割された信号を生成させるコードと、コンピュータに、前記分周器比Nを累算して累算された整数の位相を生成させるコードと、コンピュータに、前記分割された信号中のイベントと基準信号中の対応するイベントとの位相差のディジタル表現を生成させるコードと、コンピュータに、前記累算された整数の位相と前記ディジタル位相差とを合算して前記目標信号の累算された位相のディジタル表現を生成させるコードとを含むコンピュータ読み取り可能な媒体を含むコンピュータプログラム生産品を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、従来技術のDPLL10の構成を描写する。
【図2】図2は、動作中の先行技術のDPLL10の中に存在する信号群の事例を表す。
【図3】図3は、本開示によるAPDCの実施形態190.2を描写する。
【図4】図4は、動作中のAPDC190.2の中に存在する信号群の事例を表す。
【図5】図5は、図3に描写されたΔPDC320の模範的な伝達関数を表す。
【図6】図6は、APDC190.2に使用されるΔPDCの模範的な実施形態を描写する。
【図7】図7は、本開示による方法の模範的な実施形態を描写する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
添付の図面に関連させて以下に示される詳細な説明は、本発明の模範的な実施形態の記述として意図されており、本発明が実施されうる模範的な実施形態のみを表わすようには意図されてはいない。この記述を通して使用される用語“模範的な(exemplary)”は、“例(example)、事例(instance)、あるいは実例(illustration)の役目をする”ことを意味しており、必ずしも他の模範的な実施形態において好ましい又は有益であると解釈されるべきでない。詳細な説明は、発明の模範的な実施形態についての完全な理解を提供する目的で特定の詳細を含んでいる。発明の模範的な実施形態がこれらの特定の詳細なしで実施されてもよいことは、この技術分野における熟練者にとって自明であろう。いくつかの事例では、良く知られた構造および装置は、ここに表現される模範的な実施形態の新規性を不明瞭にしないようにするため、ブロック図で示される。
【0012】
この明細書および請求項では、要素が他の要素に“接続される(connected to)”又は“結合される(coupled to)”と呼ばれる場合、それは他の要素に直接に接続又は結合されうる、又は介在する要素が存在するかもしれない。これとは対照的に、要素が“直接接続される(directly connected to)”又は“直接結合される(directly coupled to)”と呼ばれる場合、介在する要素は存在しない。
【0013】
図1は、先行技術のDPLL10の構成を描写する。DPLL10は、ディジタル位相比較器102、ディジタルループフィルタ106、ディジタル制御発振器(DCO)114、および累算された位相−ディジタル変換器(APDC)190.1を含む。さらに、APDC190.1は、カウンタ118、時間−ディジタル変換器120、較正乗算器124、および合算器126を含む。
【0014】
動作中、DCO114は、ディジタル入力信号112aによって制御される周波数を有する出力信号114aを生成する。信号114aが、APDC190.1のカウンタ118およびTDC120の両方に同時に供給される。さらに、基準信号130aが、TDC120に提供される。ある構成では、基準信号130aの周波数(Fref)は、DCO出力信号114aの周波数より低いかもしれない。カウンタ118およびTDC120は、基準信号130aの周期毎に経過したDCO出力信号114aの周期の累積数を共同で数え、カウンタ118は経過した周期の数の整数部分を数え、TDC出力信号120aは残りの分数部分を計算するように構成されてもよい。さらに、TDC出力信号120aは、カウンタ出力118aと合算されて合算器出力信号126aを形成する前に、較正係数kc122で乗算される。合算器出力信号126aは、DCO出力信号114aの累算された位相を表わす。
【0015】
また、図1に示されるように、合算器出力信号126aが累算された目標位相100aと比較され、位相比較器出力102aが生成され、これがループフィルタ106に供給される。ループフィルタ出力106aが利得要素112に供給され、信号112aが生成され、これが順に供給されてDCO出力信号114aの周波数が制御される。
【0016】
この技術分野における通常の熟練者は、図1に描写された先行技術のDPLL10が、基準信号130aに位相ロックされた出力信号114aを生成することを理解するであろう。
【0017】
図1の中のDPLL10が説明の目的だけのために図示されたものであることに注意されたい。この技術分野における通常の熟練者は、本開示の技術が、図示しない代替のDPLLアーキテクチャに容易に適用されてもよいことを理解するであろう。例えば、DPLL10は、図1に示されていない追加のフィルタリング又はゲインの要素を含むかもしれない。さらに、DPLL10は、例えば、この技術分野において良く知られた二点変調技術を用いて、DCO出力信号の周波数、振幅、又は位相を変調する、更なる要素群を含むかもしれない。そのような模範的な実施形態は本開示の範囲内にあることが意図されている。
【0018】
図2は、動作中にDPLL10の中に存在する信号群の事例を表す。図2では、DCO出力信号114aの事例は、基準信号130aの事例に沿って示される。図2に示される信号群は、模範だけのために意図されたものであり、本開示の範囲を図示された基準信号130aに対する出力信号114aのある特定の関係に制限することを意味してはいないことに注意されたい。代替の模範的な実施形態(図示せず)では、出力信号114aと基準信号130aとの間の相対的な周波数は、図2に示されるものよりも高いかもしれないし、低いかもしれない。そのような模範的な実施形態は本開示の範囲内にあることが意図されている。
【0019】
図2において、カウンタ出力信号118aは、基準時間t=t0から経過したDCO出力信号114aの累積された周期の整数を数えることがわかる。一方、較正されたTDC出力信号124aは、基準信号130aの立ち上がりエッジとそのすぐ前に先行するDCO出力信号114aの立ち上がりエッジとの間において経過する、(信号114aの周期で表現された)時間を生じさせることがわかる。合算器出力信号126aは、基準信号130aの立ち上がりエッジで、TDC出力信号124aとカウンタ出力信号118aとを合算することにより生成される。合算器出力信号126aは、時間t=t0以降の信号114aの累算された総計の位相を表す。
【0020】
例えば、時間t=t1では、合算器出力信号126aは、カウンタ出力信号118aによる3の整数部分、および較正されたTDC出力信号124aによる0.25の分数部分を有し、合算して3.25周期の全出力信号となる。同様に、時間t=t2では、合算器出力信号126aは、カウンタ出力信号118aによる6の整数部分、および較正されたTDC出力信号124aによる0.5の分数部分を有し、合算して総計6.5周期の出力信号となる。
【0021】
この技術分野における通常の熟練者は、合算器出力信号126aおよび図1および図2に示される他の信号群が任意の単位で表現されてもよく、本開示の範囲が使用されるある特定の単位に制限されていないことを理解するであろうことに注意されたい。例えば、信号の126aは、基準信号130aの周期で表現されてもよく、あるいは図2に示される又は示されない任意の単位の拡大縮小されたバージョンで表現されてもよい。そのような模範的な実施形態は本開示の範囲内にあることが意図されている。
【0022】
カウンタ118およびTDC120を含む先行技術のAPDC190.1は、本開示の技術による扱われる少なくとも2つの欠点を示す。
【0023】
第1に、APDC190.1の中のカウンタ118およびTDC120の両方は、DCO出力信号114aの周波数で直接動作する。したがって、DCO出力信号114aが高周波信号である場合、カウンタ118およびTDC120の内部の信号切替えが対応して高いレベルの電力を消費するであろう。例えば、カウンタ118は、一般に、DCO出力信号114aの周期毎に累算された総計の周期数を、経過を追って出力することが必要とされる。図2を参照して記述されるように、カウンタ118の出力が比較的低周波の基準信号130aの1つの周期当たり一度だけサンプリングされる場合でさえそうである。さらに、TDC120の内の遅延線の個別のバッファも、DCO出力信号114aの周波数で切り替えることが必要とされるであろう。
【0024】
第2に、先行技術のAPDC190.1の中のカウンタ118およびTDC120の両方は、DCO出力信号114aを入力信号として受け入れ、APDC190.1内に設けられるべきDCO出力信号114aについて別々の事例を要求するであろう。そのようなDCO出力信号114aの別々の事例の遅延での不整合は、DCO出力信号114aの周期の数え違いを生じさせるであろう。したがって、APDC190.1の回路設計においては、一般に、APDC190.1の中の信号パス遅れを注意深く整合させることが必要である。
【0025】
本開示によれば、N分割モジュールおよびデルタ位相−ディジタル変換器(ΔPDC)を含む新しいAPDCが記述される。新しいAPDCは、より低い電力を消費し、先行技術のAPDC190.1よりもより容易に設計されるであろう。
【0026】
図3は、本開示による新しいAPDCの実施形態190.2を描写する。図3では、DCO出力信号114aは、N分割モジュール318と結合され、これは分周器比Nもしくは316aでDCO出力信号114aの周波数を分割し、分割された信号318aを生成する。図示される模範的な実施形態では、分周器比Nがシグマ・デルタ変調器によって生成される実施形態に本開示を制限する必要はないが、分周器比N 316aは、シグマ・デルタ変調器316によって生成される。累算器317は、基準信号130aの立ち上がりエッジで分周器比N 316aを累算し、累算された整数の位相317aを生成する。
【0027】
動作中、DCO出力信号114aはN分割モジュール318によって周波数が分割され、分割された信号318aが生成される。模範的な実施形態では、N分割モジュール318は、DCO出力信号114aのN個のパルス毎に単一のパルスを出力するように構成されている。Nは整数の分周器比である。分周器比N 316aは、一般に、DCO出力信号114aの望ましい周波数と基準信号130aの周波数との比に略対応するように選択される。信号114aと信号130aの非整数(即ち、分数)の比を生成するためには、分周器比N 316aは、時間に応じて、例えば基準周期単位で、複数の基準周期における分周器比Nの平均が望ましい分数の比に対応するように、変化されるであろう。
【0028】
模範的な実施形態では、時間に応じた分周器比Nの変化は擬似乱数的な方法で行われ、測定される累算位相の中の周期的な誤差の偏りが回避されるであろう。これは、例えば、シグマ・デルタ変調器316を用いることにより実現されるであろう。この技術分野における通常の熟練者は、さらに、擬似乱数的な分周器比Nがシグマ・デルタ変調器316以外の手段を用いて生成されてもよいことを理解するであろうことに注意されたい。そのような代替の模範的な実施形態は本開示の範囲内にあることが意図されている。
【0029】
分周器出力信号318aはデルタ位相−ディジタル変換器(ΔPDC)320に供給され、これは分周器出力信号318aと基準信号130aとの位相差のディジタル表現320aを生成する。累算された整数の位相317aおよび位相差320aは合算326され、合算器出力信号126aが生成される。
【0030】
さらにAPDC190.2の動作を明確にするため、図2に描写されたDCO出力信号114aおよび基準信号130aの同じ事例を用いて、図4に、APDC190.2の中に存在する信号群の事例を例示する。図4では、DCO出力信号114aがN分割モジュール318によって処理され、信号318aが生成される。図示される模範的な実施形態では、分周器比Nを変えることについて既に述べた原則に従い、分周器比は、最初、値N1=3を有するように構成され、続いて、値N2=4を有するように構成される。したがって、分周器出力信号318aは、図示されるDCO出力信号114aの最初の3つの周期に対し単一のパルスを含み、また、DCO出力信号114aの次の4周期に対し単一のパルスを含む。
【0031】
図示される模範的な実施形態では、ΔPDC出力信号320aは、分周器出力信号318aの立ち上がりエッジを基準信号130aの対応する立ち上がりエッジと比較することにより生成される。例えば、時間t=t1では、ΔPDC出力信号320aは、分周器出力信号318aの立ち上がりエッジが、基準信号130aの対応する立ち上がりエッジよりも信号114aの0.25周期だけ先行する(即ち、ΔPDC出力信号320aが正である)ことを示す。時間t=t2では、ΔPDC出力信号320aは、分周器出力信号318aの立ち上がりエッジが、基準信号130aの対応する立ち上がりエッジよりも信号114aの0.5周期だけ後を追う(即ち、ΔPDC出力信号320aが負である)ことを示す。
【0032】
図示されるΔPDC出力信号320aの事例が説明の目的だけのためのものであり、本開示の範囲を2つの信号間の位相差の測定のためのある特定の技術に制限することを意味していないことに注意されたい。代替の模範的な実施形態(図示せず)では、2つの信号間の位相差は、立ち上がりエッジ以外の信号中のイベント、例えば、立ち下がりエッジ、あるいはその他の周期的な信号特性から導き出されてもよい。そのような他の実施形態は本開示の範囲内にあることが意図されている。
【0033】
さらに図4に示されるように、累算された整数の位相317aは、基準信号130aの立ち上がりエッジで、分周器比N1、N2などを累算し、t=t0以降の累算されたDCO周期の連続数を供給する。合算器出力信号126aは、基準信号130aの立ち上がりエッジで、累算された整数の位相317aとΔPDC出力信号320aとを合算し、DCO出力信号114aの累算された総計の位相を生成する。例えば、時間t=t1では、3の累算された整数の位相317aは、0.25のΔPDC出力信号320aと合算され、DCO出力信号114aの累算された総計の位相に対し総計3.25の周期を生成する。時間t=t2では、7の累算された整数の位相317aは、−0.5のΔPDC出力信号320aと合算され、DCO出力信号114aの累算された総計の位相に対し総計6.5の周期を生成する。
【0034】
この技術分野における通常の熟練者は、APDC190.2の設計が先行技術のAPDC190.1のそれよりもいくつかの利点をもたらすことを理解するであろう。
【0035】
第1に、APDC190.2の中のN分割モジュール318の出力信号318aが、一般に、DCO出力信号114aの周波数よりもN倍小さい周波数に遷移する一方で、ΔPDC320内の遅延線のバッファ群は、より低い分割された周波数に対応するように切り替えられる。したがって、APDC190.2は、一般に、対応するAPDC190.1よりも少ない電力を消費するであろう。その構成要素は、DCO出力信号114aの周波数で直接動作することが必要とされる。
【0036】
第2に、APDC190.2は、N分割モジュール318に供給されるべきDCO出力信号114aの単一の事例のみを必要する。これにより、信号遅延の不整合から生じる数え違いの問題を避ける。これは、一般に、APDC190.1よりもAPDC190.2を設計することをより簡単にし、このことは前に述べたように注意深く信号パス遅れを整合させることを必要とする。
【0037】
さらにΔPDC320の機能を明確にするため、図3に描写されたΔPDC320の模範的な伝達関数を、図5に表す。図5では、ΔPDCは、分周器出力信号318aの立ち上がりエッジと基準信号130aの立ち上がりエッジとの間の時間間隔Δt1を対応するディジタル位相差ΔP1に変換することがわかる。図示される模範的な実施形態では、信号318aの立ち上がりエッジが信号130aの立ち上がりエッジよりも先行する場合、ディジタル位相差ΔP1は正であり、また、信号130aの立ち上がりエッジが信号318aの立ち上がりエッジよりも先行する場合、ディジタル位相差ΔP1は負である。代替の模範的な実施形態(図示せず)では、ディジタル位相差ΔP1の極性は逆にされるであろう。
【0038】
図5に描写されたΔPDCは、負の時間間隔Tmin(即ち、信号130aの立ち上がりエッジが信号318aの立ち上がりエッジよりも先行する時間間隔)から正の時間間隔Tmax(即ち、信号318a立ち上がりエッジが信号318a立ち上がりエッジよりも先行する時間間隔)までに及ぶ時間間隔Δt1を適用するであろう。これらの時間区間は、負の位相差Pminから正のディジタル位相差Pmaxまでに及ぶディジタル位相差ΔP1に対応する。この技術分野における通常の熟練者は、ΔPDCが適用されることが必要とされる時間/位相の範囲が、例えば、DCO出力信号114aの周波数と基準信号130aとの比に近似させるために使用される分周器比Nの期待される精度に依存するであろうことを理解するであろう。
【0039】
図5の中の伝達関数が説明の目的だけのために示されたものであり、本開示の範囲を位相−ディジタル変換のためのある特定の技術に制限することを意味していないことに注意されたい。
【0040】
図6は、APDC190.2で使用されるΔPDCの模範的な実施形態320.1を描写する。図6では、ΔPDC320.1は、差動時間−ディジタル変換器600(ΔTDC)を含んでいることがわかる。ΔTDC600は、図5に描写された信号130aおよび318aの間の時間間隔Δt1の大きさを測定し、また、信号130aの立ち上がりエッジが信号318aの立ち上がりエッジよりも先行するか遅れるかどうかについての情報を提供する。ΔTDC600に続き、時間−位相較正モジュール610は、ΔTDC600出力信号の単位をDCO出力信号114aの位相の単位に正規化するために提供される。例えば、時間−位相較正モジュール610は、信号をTDCバッファ遅れの単位からDCO出力信号114aの周期に変換するかもしれない。
【0041】
図6の中のΔPDCの実施形態が説明の目的だけのために示されたものであり、本開示の範囲を明確に示されたΔPDCのある特定の模範的な実施形態に制限することを意味していないことに注意されたい。この技術分野における通常の熟練者は、図5を参照して記述される特性に基づいてΔPDCの構成を容易に引き出すであろう。模範的な実施形態では、ΔPDCは、2008年4月18日に出願された、米国特許出願シリアル番号12/102,768、“Phase to digital converter in all digital phase locked loop”、および、2008年1月4日に出願された、米国特許出願シリアル番号11/969,364、“Phase-locked loop with self-correcting phase-to-digital transfer function”(共に、本願の譲受人に譲渡され、参照によりその内容がすべて本明細書に組み込まれる。)に開示された原理によって設計されてもよい。
図7は、本開示による方法の模範的な実施形態を描写する。図7に描写された方法が実例のみのためのものであることを意味し、本開示の範囲を方法のある特定の実施形態に制限することを意味していないことに注意されたい。図7において、ステップ700では、目標信号の周波数が分周器比Nで分割される。ステップ710では、分周器比Nが累算され、累算された整数の位相が生成される。ステップ720では、基準信号と分割された信号との位相差のディジタル表現が生成される。ステップ730では、累算された整数の位相とディジタル位相差とが合算され、目標信号の累算された位相のディジタル表現が生成される。
【0042】
この技術分野における通常の熟練者は、情報および信号群が様々な異なる技術および技法のいずれかを用いて表現できるであろうことを理解するであろう。例えば、上記の記述の全体にわたって参照されるであろうデータ、命令、コマンド、情報、信号、ビット、シンボルおよびチップは、電圧、電流、電磁波、磁界又は粒子、光場又は粒子、あるいはそれの任意の組合せによって表現されてもよい。
【0043】
また、この技術分野における通常の熟練者は、ここに開示された模範的な実施形態に関連して記述される様々な実例の論理ブロック、モジュール、回路、およびアルゴリズムのステップが電子ハードウェア、コンピュータソフトウェア、あるいは両方の組合せとして構築されてもよいことを理解するであろう。このハードウェアとソフトウェアとの互換性を明確に表すため、様々な実例のコンポーネント、ブロック、モジュール、回路およびステップは概してそれらの機能性に関して記述された。そのような機能性がハードウェアとソフトウェアのいずれのものとして構築されるかは、システム全体にかかる特定の用途および設計制約条件に依存する。熟練者は、それぞれの特定用途に対して方法を変えて前述の機能性を構築するであろう。しかし、そのような構築の判断は、本発明の模範的な実施形態の範囲から逸脱するものと解釈されてはならない。
【0044】
ここに開示された模範的な実施形態に関連して記述された様々な実例の論理ブロック、モジュール、および回路は、ここに記述された機能を実施する汎用プロセッサ、ディジタルシグナルプロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)あるいは他のプログラマブルロジックデバイス、離散したゲート又はトランジスタロジック、離散したハードウェアコンポーネント、あるいはそれらの任意の組合せで構築又は実施されてもよい。汎用プロセッサはマイクロプロセッサであってもよいが、代わりに、上記プロセッサは従来のプロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、又はステートマシンであってもよい。また、プロセッサは、例えば、DSPとマイクロプロセッサとの組合せ、複数のマイクロプロセッサ、DSPコアと結合する1つ又は複数のマイクロプロセッサ、あるいは他のそのような構成のコンピューティングデバイスとして構築されてもよい。
【0045】
ここに開示された模範的な実施形態に関連して記述された方法又はアルゴリズムのステップは、ハードウェア、プロセッサによって実行されるソフトウェアモジュール、あるいは2つの組合せで直接実施されてもよい。ソフトウェアモジュールは、この技術分野において既知であるランダムアクセスメモリ(RAM)、フラッシュメモリ、読み取り専用メモリ(ROM)、電気的にプログラマブルなROM(EPROM)、電気的に消去可能でプログラマブルなROM(EEPROM)、レジスタ、ハードディスク、取外し可能ディスク、CD−ROM、あるいはその他の形の記憶媒体に存在してもよい。模範的な記憶媒体は、プロセッサが記憶媒体から情報を読んだり記憶媒体へ情報を書いたりすることができるようにそのプロセッサに結合される。代わりに、記憶媒体はプロセッサに不可欠であってもよい。プロセッサおよび記憶媒体は、ASIC中に存在してもよい。ASICは、ユーザ端末中に存在してもよい。代わりに、プロセッサおよび記憶媒体は、ユーザ端末中の離散したコンポーネントとして存在してもよい。
【0046】
1つ又は複数の模範的な実施形態では、記述された機能は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、あるいはそれらの任意の組合せで構築されてもよい。もしソフトウェアで構築されれば、機能は、コンピュータ可読媒体上の1つ又は複数の命令又はコードとして記憶され又は送信されてもよい。コンピュータ可読媒体は、記憶媒体と通信媒体の両方を含み、ある場所から他の場所へコンピュータプログラムの転送を促進する任意の媒体を含んでいる。記憶媒体は、コンピュータによってアクセスすることができる任意の利用可能な媒体であってもよい。限定しない例として、コンピュータ可読媒体は、インストラクション又はデータ構造の形で所望のプログラムコードを運ぶ又は記憶するために使用され、コンピュータによってアクセスすることができる、RAM、ROM、EEPROM、CD−ROMまたはその他の光学ディスク記憶装置、磁気ディスク記憶装置あるいはその他の磁気記憶装置を含んでいてもよい。また、任意の接続は、コンピュータ可読媒体と適切に称される。例えば、同軸ケーブル、ファイバ光ケーブル、撚線対、ディジタル加入者線(DSL)、あるいは赤外線、無線およびマイクロ波のような無線技術を用いて、ソフトウェアがウェブサイト、サーバ、あるいはその他の遠隔のソースから送信される場合、同軸ケーブル、ファイバ光ケーブル、撚線対、DSL、あるいは赤外線、無線およびマイクロ波のような無線技術は、媒体の定義に含まれる。ここで使用されるディスク(disk)およびディスク(disc)は、コンパクトディスク(CD)、レーザーディスク(登録商標)、光ディスク、ディジタルバーサタイルディスク(DVD)、フロッピー(登録商標)ディスク、およびブルーレイディスク(登録商標)を含む。ここで、ディスク(disk)は、通常、磁気的にデータを再生するのに対し、ディスク(disc)は、レーザでデータを光学的に再生する。また、上記の組合せは、コンピュータ可読媒体の範囲内に含まれるべきである。
【0047】
前述の開示された模範的な実施形態の記述は、任意の当業者が本発明を作成又は使用することを可能にするために提供される。これらの模範的な実施形態への様々な変更は、当業者にとって容易に理解できるであろう。また、ここに定義された総括的な原理は、発明の趣旨又は範囲から逸脱することなく、他の模範的な実施形態に適用されてもよい。したがって、本発明は、ここに示された模範的な実施形態に制限されることを意図しておらず、ここに開示された原理および新しい特徴に相反しない広い範囲が認められるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標信号の累算された位相のディジタル表現を生成する方法であって、
分周器比Nで前記目標信号の周波数を分割して分割された信号を生成することと、
前記分周器比Nを累算して累算された整数の位相を生成することと、
前記分割された信号中のイベントと基準信号中の対応するイベントとの位相差のディジタル表現を生成することと、
前記累算された整数の位相と前記ディジタル位相差とを合算して前記目標信号の累算された位相のディジタル表現を生成することと
を含む方法。
【請求項2】
前記分割された信号中のイベントは立ち上がりエッジであり、前記基準信号中の対応するイベントは対応する立ち上がりエッジである、請求項1の方法。
【請求項3】
前記分周器比Nで前記目標信号の周波数を分割することは、前記目標信号のN個のパルス毎に単一パルスを生成することを含む、請求項1の方法。
【請求項4】
前記目標信号の周波数と前記基準信号の周波数との比に略対応するように前記分周器比Nを選択することをさらに含む、請求項1の方法。
【請求項5】
シグマ・デルタ変調器を用いて前記分周器比Nを変えることをさらに含む、請求項4の方法。
【請求項6】
前記目標信号は、ディジタル位相ロックループ(DPLL)の中のディジタル制御発振器(DCO)の出力信号であり、前記目標信号の累算された位相のディジタル表現は、前記DPLLの中の累算された基準位相と比較される、請求項1の方法。
【請求項7】
目標信号の累算された位相のディジタル表現を生成するための装置であって、
分周器比Nで前記目標信号の周波数を分割して分割された信号を生成するN分割モジュールと、
前記分周器比Nを累算して累算された整数の位相を生成する累算器と、
前記分割された信号中のイベントと基準信号中の対応するイベントとの位相差のディジタル表現を生成するデルタ位相−ディジタル変換器と、
前記累算された整数の位相と前記ディジタル位相差とを合算して前記目標信号の累算された位相のディジタル表現を生成する合算器と
を含む装置。
【請求項8】
前記分割された信号中のイベントは立ち上がりエッジであり、前記基準信号中の対応するイベントは対応する立ち上がりエッジである、請求項7の装置。
【請求項9】
前記N分割モジュールは、前記目標信号のN個のパルス毎に単一パルスを生成する、請求項7の装置。
【請求項10】
前記目標信号の周波数と前記基準信号の周波数との比に略対応するように前記分周器比Nが選択される、請求項7の装置。
【請求項11】
前記分周器比Nを変えるシグマ・デルタ変調器をさらに含む、請求項10の装置。
【請求項12】
前記目標信号は、ディジタル位相ロックループ(DPLL)の中のディジタル制御発振器(DCO)の出力信号であり、前記目標信号の累算された位相のディジタル表現は、前記DPLLの中の累算された基準位相と比較される、請求項7の装置。
【請求項13】
目標信号の累算された位相のディジタル表現を生成するための装置であって、
分周器比Nで前記目標信号の周波数を分割して分割された信号を生成する手段と、
前記分周器比Nを累算して累算された整数の位相を生成する手段と、
前記分割された信号と基準信号との位相差のディジタル表現を生成する手段と、
前記累算された整数の位相と前記ディジタル位相差とを合算して前記目標信号の累算された位相のディジタル表現を生成する手段と
を含む装置。
【請求項14】
前記分周器比Nを疑似乱数的に変調する手段をさらに含む、請求項13の装置。
【請求項15】
目標信号の累算された位相のディジタル表現を生成するコンピュータプログラム生産品であって、
コンピュータに、分周器比Nで前記目標信号の周波数を分割して分割された信号を生成させるコードと、
コンピュータに、前記分周器比Nを累算して累算された整数の位相を生成させるコードと、
コンピュータに、前記分割された信号中のイベントと基準信号中の対応するイベントとの位相差のディジタル表現を生成させるコードと、
コンピュータに、前記累算された整数の位相と前記ディジタル位相差とを合算して前記目標信号の累算された位相のディジタル表現を生成させるコードと
を含むコンピュータ読み取り可能な媒体を含むコンピュータプログラム生産品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2011−530882(P2011−530882A)
【公表日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−522208(P2011−522208)
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【国際出願番号】PCT/US2009/052813
【国際公開番号】WO2010/017274
【国際公開日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【出願人】(595020643)クゥアルコム・インコーポレイテッド (7,166)
【氏名又は名称原語表記】QUALCOMM INCORPORATED
【Fターム(参考)】