説明

ディジタル透かしを用いた方法及びシステム

【課題】紙幣又は他のセキュリティ文書にディジタル透かしを適用することによって、セキュリティを向上させ、複製を防止する。
【解決手段】機械読み取り可能データを紙幣16にディジタル的に透かし処理する。このような透かしは、種々の装置11によって、光学的スキャナ13を用いて感知し、検出することができる。これに応じて、かかる装置11は介入して、紙幣複製を防止することができる。この構成は、種々の問題、例えば、他の紙幣コピー防止システムを出し抜くためのディジタル画像編集ツールの使用に対処する。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本願は、紙幣及び他の有価証券におけるディジタル透かしの使用に関する。
【発明の背景及び概要】
【0002】
紙幣の偶然の偽造の問題は、初めに20年前に、カラーフォトコピーの導入によって生じた。そして、多数の技術がこの問題に向けて提案された。
【0003】
米国特許明細書第5659628号(リコーに譲渡された)は、紙幣を認識し、紙幣のフォトコピーを防止するようにフォトコピー機を装備することができることを示す幾つかの特許のうちの一つである。このリコーの特許は、日本の円紙幣に印刷された赤い証印が機械認識に好適なパターンであることを特に提案している。米国特許明細書第5845008号(オムロンに譲渡された)と、第5724154号及び第5731880号(双方ともキヤノンに譲渡された)は、紙幣におけるシールエンブレムの存在を感知し、それに応じてフォトコピー機を無効にする他のフォトコピー機を示している。米国特許明細書第5678155号(シャープに譲渡された)は、紙幣における非常に多数の他の特徴(例えば、ロゴ、スタンプ、印章、額面価格、$及び円を含む記号、等)を、紙幣認識に関する基礎として同様に使用することが可能であることを示している。
【0004】
他の技術は、各々のカラーフォトコピー機からの印刷出力をユニークにマークして、コピーを起源の機械まで戻って追跡できるようにすることによって、偽造を防止することを提案している。例えば、米国特許明細書第5568268号は、印刷出力に黄色のドットからなる本質的に感知できないパターンを加え、このパターンを機械に固有のパターンとすることを開示している。米国特許明細書第5557742号は、関連の構成を開示しており、当該構成では、この場合もまた本質的に感知できない形式(小さい黄色の文字)で、フォトコピー機の通し番号を出力文書に印刷している。米国特許明細書第5661574号は、フォトコピー機の通し番号を構成するビットを、このフォトコピー機の印刷出力に表現する装置を示している。ここでは、ビットは、既知の場所における(例えば黄色画素の)画素値を、対応する通し番号のビットが”1”であるか”0”であるかに応じて、一定量(例えば、+/−30)だけ増加又は減少させることによって表されている。
【0005】
パーソナルコンピュータや、カラースキャン、及び印刷技術における最近の進歩は、偶然の偽造のレベルを大幅に向上させた。高品質のスキャナは、現在多くのコンピュータユーザに容易に利用可能であり、300dpiスキャナが100ドル未満で利用可能であり、600dpiスキャナがもう少しで利用可能である。同様に、写真品質のカラーインジェットプリンタが、ヒューレット・パッカード社、エプソン、等から、300ドル未満で一般に利用可能である。
【0006】
これらのツールは新たな脅威をもたらしている。例えば、紙幣を(例えば、ホワイトアウト、シザーズ又はレスクラッド技術によって)改ざんして、先行技術の紙幣検出技術が偽造を防止するために依存している可視パターンを除去/消滅することができる。その結果、このように改ざんされた文書は、紙幣画像の処理を防止するように設計されたフォトコピー機においても自由に走査又はコピーすることができる。除去されたパターンを、次に、例えば、ディジタル画像編集ツールによって加え戻して、紙幣の自由な複製が可能である。
【0007】
ディジタル透かし技術は、偽造の問題に対処する新規の方法を提供するものであり、新たに明らかになった脅威の多くを克服し、以前には利用可能でなかった他の利点をもたらしている。
【0008】
ディジタル透かし(単に「透かし」ということもある)は、幾つかの異なるアプローチによって、急成長している研究分野である。本出願人の研究は、米国特許明細書第5841978号、第5768426号、第5748783号、第5748763号、第5745604号、第5710834号、第5636292号、第5721788号と、国際公開パンフレットWO95/14289、WO96/36163及びWO97/43736に反映されている。
【0009】
本出願人の国際公開パンフレットWO95/14289は、複数のビットコードを種々の電子的又は物理的媒体にノイズ状信号を用いて冗長的に埋め込むシステムを開示しており、この発明を紙一般に用いることができることを示している。一実施形態は、媒体表面の微小トポロジーを変更して、符号化を行うものである。他の実施形態は、そのスキャンした出力データに識別コードを埋め込むスキャナである。
【0010】
本出願人の国際公開パンフレットWO96/36163は、小売りの写真店において使用するためのものであって、消費者が写真を複製することを可能にする複製キオスクを開示している。このキオスクは、透かしデータ(例えば、写真が著作権で保護されていることを示す)が埋め込まれた消費者の写真を検査し、このような透かしデータが検出された場合に、写真の複製を阻止する。この出願は、ラインの輪郭を僅かに変化させる、例えば、僅かに上、下、左、又は右に変化させることによって、情報を、ベクトルグラフィックス及び極めて低次のビットマップ型グラフィックス内に符号化することができることも開示している。
【0011】
他のディジタル透かしの研究は、米国特許明細書第5734752号、第5646997号、第5659726号、第5664018号、第5671277号、第5687191号、第5687236号、第5689587号、第5568570号、第5572247号、第5574962号、第5579124号、第5581500号、第5613004号、第5629770号、第5461426号、第5743631号、第5488664号、第5530759号、第5539735号、第4943973号、第5337361号、第5404160号、第5404377号、第5315098号、第5319735号、第5337362号、第4972471号、第5161210号、第5243423号、第5091966号、第5113437号、第4939515号、第5374976号、第4855827号、第4876617号、第4939515号、第4963998号、第4969041と、国際公開パンフレットWO98/02864、欧州特許出願公開明細書822550号、国際公開パンフレットWO97/39410、英国特許公開明細書第2196167号、欧州特許出願公開明細書第777197号、欧州特許出願公開明細書第736860号、欧州特許出願公開明細書第705025号、欧州特許出願公開明細書第766468号、欧州特許出願公開明細書第782322号、国際公開パンフレットWO95/20291、WO96/26494、WO96/42151、WO97/22206、WO97/26733号によって示されている。上記の特許の幾つかは、可視透かし処理技術に関するものである。他の可視透かし処理技術(例えば、データグリフ)は、米国特許明細書第5706364号、第5689620号、第5684885号、第5680223号、第5668636号、第5640647号、第5594809号において記載されている。(より典型的には、ディジタル透かしはステガノグラフィックである。すなわち、これらは本質的に人間の視覚には感知不可能であり、埋め込まれたデータを見る者の目の前で隠すのに役立つ。)
【0012】
しかしながら、透かし処理の研究の大部分は、特許文献にはなく、むしろ公表された研究にある。上記特許の特許権者に加えて、この分野における他の研究者の何人かとして(透かしに関係する文献をINSPECデータベースにおける著者検索によって見つけることができる)、I.Pitas、Eckhard Koch,Jian Zhao、ノリシゲ モリモト、Laourence Boney、キネオ マツイ、A.Z.Tiekel、Fred Mintzer、B.Macq、Ahmed H.Tewfic、Frederic Jordan、ナオヒサ コマツ及びLawrence O’Gormanを挙げることができる。
【0013】
犯罪対応策に関する1979年のカーナハン(Carnahan)会議でのSzepanskiによるA Signal Theoretic Method for Creating Forgery-Proof Documents forAutomatic Verification(自動検証用偽造証明文書を形成する信号理論的方法)では、この著者は、複雑なラインパターンを用いた文書(例えば、紙幣)の重ね刷りは偽造に対する抑止策となるが、自動検証手順において使用できる意味のある情報を伝えないことを示している。したがって彼は、複数のビットデータを表すパターンを文書に重ねることを代わりに提案している。文書は、表すべきデータビットと同じくらい多くの正方形領域に分割され、キャリアパターンが選択される。”1”ビットに対応する領域では、キャリアパターンが下にある文書標本に加えられ、”0”ビットに対応する領域では、パターンが減じられる。そして、自動検証手順を用いて文書をスキャンし、スキャンしたデータとキャリアバターンとの相関を求めて、ディジタルデータを抽出することができる。この著者は、特に、パスポート写真をこのように処理して持ち主の氏名及び生年月日を伝えるパスポートを考えている。
【0014】
職人は、上記先行技術に熟知しているものと仮定されている。
【0015】
本開示において、透かしに対する参照は、本譲受人の透かし技術を含むだけでなく、上述したもののような他のあらゆる透かし技術を用いて同様に実行することができることを理解すべきである。
【0016】
透かしは、無数の形式の情報に適用することができる。本開示は、その用途において、紙幣、トラベラーズチェック、パスポート、記名株券、等(以下、ひとまとめに”セキュリティ文書”と呼ぶ)に焦点を合わせており、これらは一般的に線画像の使用を特徴とする。しかしながら、以下に考察する原理をこの特定の領域以外で用いることもできることを認識すべきである。
【0017】
画像透かしにおける先行技術の大部分は、画素で構成された画像(例えば、ビットマップ型画像、JPEG/MPEG像、VGA/SVGA表示装置、等)に焦点が合わされている。大部分の透かし技術において、構成画素の輝度又はカラー値をわずかに変化させて、画像を通じたバイナリデータのサブリミナル符号化を行う。(この符号化を、画素領域又はDCT領域のような他の領域において直接行うことができる。) 幾つかのシステムでは、孤立した画素をバイナリデータの一つ以上のビットにしたがって変化させ、他のシステムでは、画素の領域に関連する(例えば、局所的に隣接する、又は、所定のDCT成分に対応する)複数の集団をこのように変化させる。しかしながら、すべての場合において、画素は、埋め込まれるデータの最終的なキャリアとして機能する。
【0018】
画素で構成された画像は比較的最近の開発だが、線画は数世紀さかのぼる。一つの良く知られている例は、米国紙幣である。例えば1ドル紙幣において、線画は幾つかの異なった方法で使用されている。一つは、(一般的に暗い背景における明るい線から成る)紙幣の縁を取り囲む格子パターンを形成するものである。他のものは、(一般的に明るい背景における暗い線からなる)ジョージワシントンの肖像のようなグレイスケール像を形成するものである。
【0019】
線画におけるグレイスケールをシミュレートする二つの基本的な方法がある。一方は、線の相対的な間隔を変化させ、画像領域を明るくし、又は暗くする。図1Aは、このような配置を示し、領域Bは、構成線がより狭い間隔で設けられることによって、領域Aより暗く見える。他の技術は、構成線の幅を変化させるものであり、より広い線は結果としてより暗い領域を生じ、より狭い線は結果としてより明るい領域を生じる。図1Bは、このような配置を示す。この場合にも、領域Bは、構成線がより広い幅であることによって、領域Aより暗く見える。これらの技術は一緒に使用されることが多い。
【0020】
本発明の一態様によれば、紙幣(又は他のセキュリティ文書)のセキュリティは、機械的に読み取り可能で一般的に感知不可能なディジタルデータ用いて、紙幣の表面におけるインクの分布をわずかに変化させることによって、その表面をマーキングすることにより、向上される。ディジタルデータは、複数のビットを有することができ、(紙幣を単一の局所化された領域のみにおいてマーキングするのではなく)紙幣にわたって冗長的に符号化され得る。符号化は、コード信号又は離散コサイン変換を使用することができる。幾つかの実施形態では、二つの透かしを有利に使用することができ、この場合には、これら二つの透かしを異なったロバスト性(堅牢さ)で、又は、異なったコード信号にしたがって符号化することができる。幾つかのこのような紙幣にホログラムを更に設け、セキュリティを更に向上させてもよい。
【0021】
本発明の他の態様によれば、紙幣(又は他のセキュリティ文書)を複数ビットディジタルデータで符号化して、その後の機械による識別を容易にする。これは、初期紙幣版下を複数ビットディジタルデータと共に受けることによって達成し得る。次にデータのパターンを発生し、このパターン内にディジタルデータを符号化する。次に、初期版下をこのデータにしたがって調節し、紙幣を調節された版下を使用して印刷する。この場合にも、この構成は、望ましくは、紙幣にわたって複数ビットを空間的に拡散させる。
【0022】
一つのこのような実施形態は、線画画像に重ねた点からなる仮想グリッドを置く。これらの点は、垂直及び水平方向において一定間隔を空けている。(水平及び垂直間隔を等しくする必要はない。) 仮想点を、紙幣の有る部分又はすべてにおいて、250μmの等しい垂直及び水平間隔で重ねてもよい。線画を有する紙幣の領域において、線画の構成線は、これらの仮想グリッド点内及び間で蛇行する。
【0023】
各グリッド点を、対応する領域の中心であると考える。領域の輝度は、その領域の境界内の任意の線の領域の中心点に対する近さと、線の太さとの関数である。
【0024】
領域の輝度を変化させるために、線の輪郭を領域内で僅かに変化させる。特に、線を僅かに太くして輝度を低下させ、又はより細くして輝度を上昇させる。(この例においては、明るい背景における暗い線を仮定している。) これらの僅かな変化を行う機能を用い、既知の画素化ベースの透かし技術にしたがって、バイナリデータを線画において符号化する。このような紙幣をその後スキャナによってスキャンすると、スキャナによって発生された画素データの値は、上述の輝度値における変化を反映しており、埋め込まれた透かしデータを復号することが可能となる。
【0025】
別の実施形態では、線の太さを変化させない。代わりに、線の位置を中心仮想グリッド点に向かって又はこれと反対に僅かにシフトさせ、対応する領域の輝度における上昇又は低下を同じ効果で生じさせる。
【0026】
本発明の他の態様によれば、紙幣(又は他のセキュリティ文書)の複製を、紙幣を複数ビットのディジタルデータで符号化することによって防止する。その後、このような紙幣に対応する標本化画像データを提供し、解析して、当該画像データにおけるディジタルデータの存在を検知する。このようなデータが検知れた場合、適切な介入行動を取る。
【0027】
一つのこのような実施形態では、標本化画像データを解析し、紙幣の可視構造特徴の存在も検知する。介入行動を、可視構造及び/又はディジタルデータの双方又はいずれかの検知に応じてトリガすることができる。
【0028】
介入としては、画像データの複製を妨害することや、メッセージを遠隔地に送って紙幣データの処理を報告することや、法的な追跡データを画像データに挿入することを挙げることができる。
【0029】
本発明の他の態様によれば、紙幣(又は他のセキュリティ文書)の複製を、オブジェクトの標本化した光学的輝度に対応する疑わしい画像データを検査し、疑わしい画像データが紙幣に対応するか否かを決定することによって防止する。これらの作業の双方を第1のサイトにおいて行う。疑わしい画像データが紙幣に対応する場合、第2の遠隔サイトに連絡し、紙幣関連データの検知に関する報告を送る。
【0030】
本発明の他の態様によれば、パーソナルコンピュータシステムのプリンタからの出力にマークして、そのより後の識別を可能にする。この方法は、パーソナルコンピュータからプリンタに送られるプリンタデータを受けること(又は傍受すること)と、このデータを機械的に読み取り可能で一般的に感知不可能なディジタル透かし(前記プリンタデータを通して望ましく拡散された)で透かし処理することと、を含む。この透かしは、プリンタデータを、特定のプリンタによって印刷されているとしてマークするように作用し、結果として生じる文書をこのプリンタにマッチングすることを可能にする。
【0031】
本発明の他の態様によれば、紙幣(又は他のセキュリティ文書)を処理(例えば認識又は確認)する装置が、当該装置への文書入力に対応する画像データを発生するスキャナと、画像データ内の複数ビットディジタル透かしデータを検知するプロセッサと、を備える。このような透かしデータの検知は、文書が紙幣であることを示す。透かしデータが検知された場合、制御ユニットは、第1の方法において応答し、装置の動作を(例えば、複製を中止する、法的追跡情報を出力データに挿入する、遠隔サイト又はサービスに警報を出す、等によって)変更又は制限する。透かしが検知されなかった場合、制御ユニットは、第2の異なる方法において応答する。スキャナ、フォトコピー機及びプリンタは、これらのような紙幣認識装置を使用することができる装置の例である。
【0032】
本発明の他の態様によれば、現金処理システムが、複数の紙幣を受ける入力部と、紙幣を入力部から光学検知器を通して輸送するフィード機構と、を備える。光学検知器は、輸送された紙幣に対応するディジタル画像データを発生する。次に、この画像データをプロセッサによって処理し、プロセッサが、紙幣の少なくともある部分における線画にステガノグラフィ式に符号化された複数ビットディジタル透かしデータを検知する。制御ユニットは、検知された透かしデータに依存する方法において応答する。
【0033】
本発明の前述の及び他の特徴及び利点は、添付した図面の参照と共に進める以下の詳細な説明からより容易に明らかになるであろう。
【詳細な説明】
【0034】
図2を参照すると、本発明の例示的形態は、線画画像上に配列された仮想基準点のグリッド10を用いる。点の間の間隔は、例示の配置では250μmであるが、より広い又は狭い間隔ももちろん使用することができる。
【0035】
各々のグリッド点には、図3に示す周囲領域12が関連付けられる。後述するように、これらの領域12の各々の明るさ(又は反射率)を僅かに変化させて、バイナリデータのサブリミナル符号化を行う。
【0036】
領域12は、種々の形状をとることができ、図示の丸められた矩形形状は、単なる見本である。(図示の形状は、四角形の領域よりも視覚アーティファクトを少なくしつつ、相当に大きい領域を包囲することができるという利点を有している。) 他の実施形態では、正方形、矩形、円形、楕円形等を代わりに用いることもできる。
【0037】
図4は、図3の一部の拡大図であり、点のグリッドを通過する線14を示している。線の太さは、もちろん、当該線がその一部となっている特定の画像に依存する。図示した線は約25μm幅であり、より太い又はより細い太さをもちろん使用することができる。
【0038】
図5に示す本発明の第1実施形態では、線の幅は、その線が通過する領域の明るさを変化させるよう、変更制御可能である。その明るさ(反射率)を増すためには、線をより細く形成する(すなわち、その領域ではインクが少ない)。明るさを減らすためには、線をより太く形成する(すなわち、インクが多い)。
【0039】
所定の領域の明るさを増すべきか減じるべきかは、使用する特定の透かし処理アルゴリズムに依存する。画素化画像における画素の明るさ又はカラーを他の方法で変化させるように領域12の明るさを変化させることによって、任意のアルゴリズムを使用することもできる。(幾つかの透かし処理アルゴリズムは、これらの変化を、DCT、ウェブレット又はフーリエのような変換された領域において行う。しかしながら、これらの変化は、最終的に、明るさ又はカラーにおける変化として現れる。)
【0040】
一例のアルゴリズムでは、バイナリデータを、0及び1ではなく、−1及び1のシーケンスとして表す。(バイナリデータは、一つのデータを有することもあるが、より代表的には幾つかのデータを有する。例示の実施形態では、データは、100ビットを有し、その幾つかをエラー訂正又は検出ビットである。)
【0041】
次にバイナリデータシーケンスにおける各々の要素に、−1及び1から成る擬似ランダム数列の対応する要素を乗算し、中間データ信号を生成する。この中間データ信号の各要素は、領域12のような画像の個々の小区域(サブ部分)に対応する。集合的に、これらの要素は、バイナリデータのパターンを形成する。(通常、中間データ信号の各要素は、領域のうちの幾つかにマッピングされる。)
【0042】
各々のこのような領域における(及び、オプションとしてその周囲の)画像を解析して、埋め込まれるデータを隠すための相対的な能力を求め、対応するスケール係数を発生する。例としてのスケール係数は、0から3の範囲で変動してもよい。次に、その領域用のスケール係数に、当該領域に対応する(すなわち、マッピングされた)中間データ信号の要素を乗算して、ツイーク(tweak)(すなわち、バイアス)を生成する。例示のケースでは、結果として生じるツイークは−3から3の範囲にある。集合的に、これらの要素は、グレイスケール化データのパターンを形成する。
【0043】
次に、紙幣における領域の明るさを、対応するツイーク値にしたがって調節する。−3のツイーク値は、明るさにおける−5%の変化に対応し、−2は−2%変化に対応し、−1は−1%変化に対応し、0は変化なしに対応し、1は+1%変化に対応し、2は+2%変化に対応し、3は+5%変化に対応し得る。(この例は、特許5710834号に開示された実時間符号化器の実施形態において説明された基本的技術に従う。)
【0044】
図5においては、透かし処理アルゴリズムは、領域Aの輝度をある割合だけ低下させ、領域C及びDの明るさをある割合だけ上昇させるべきであると決定している。
【0045】
領域Aでは、輝度を、線の太さを増すことによって低下させる。領域Dでは、輝度を、線の太さを減じることによって上昇させ、Cにおいても同様である(しかし、より少ない程度で)。
【0046】
線は領域Bを通過せず、この領域の明るさを変化させる機会はない。しかしながら、このことは、本方法では致命的ではない。これは、例示の透かし処理アルゴリズムが、データの各ビットを、線画画像にわたって拡散された複数の小区画において冗長に符号化するからである。
【0047】
図5の領域A及びDにおける線の太さに対する変化は、説明のために、誇張してある。図示した変動は可能であるが、大部分のインプリメンテーションは、通常、線の太さを3−50%で調整する(増加又は減少させる)。
【0048】
(多くの透かし処理は、通常、明るさにおいて約+/−1%の変化の信号マージン内で作用をもたらし、符号化を行なう。すなわち、符号化によって加えられた「ノイズ」は、下にある信号のたった1%程度になる。線は、通常、領域の全面積を占めず、線の太さの10%の変化は、領域の明るさに対して1%等の変化をもたらすだけである。紙幣は、アートワークが一般的にフォトリアリズム(写真のようなリアルな描写)を伝える必要がない点において写真と異なる。したがって、紙幣は、写真を透かし処理する際に使用されるよりも大きいエネルギーで符号化することができ、その符号化の結果は依然として美的に十分なものである。例えば、10%のオーダでの局所的な輝度の変化が紙幣においては可能であり、一方、写真におけるこのようなレベルの透かしエネルギーは、一般的に、許容し得ないものと考えられる。幾つかの状況では、20、30、50又は100%までもの局所的な輝度の変化が許容される。)
【0049】
例示の実施形態では、線の太さに対する変化は、一つの領域に適用されるべきツイークのみに応じている。したがって、線が2%のツイークを適用すべき領域の何れかの部分を通過する場合には、この領域における線の太さは、2%の輝度差が生じるように変化する。異なる実施形態では、線の太さにおける変化は、領域における線の位置に応じている。具体的には、線の太さにおける変化は、領域の中心グリッド点とその線の当該点への最近接部との間の距離の関数である。線がグリッド点を通過する場合には、完全な2%の変化が生じる。連続的に距離を大きくすると、連続的により小さくなる変化が加えられる。ツイークの大きさが領域内の線の位置の関数として変化する方法は、バイリニア、バイキュービック、キュービックスプライン、カスタムカーブ等のような種々の補間アルゴリズムのうちの一つを用いることによって決定することができる。
【0050】
他の異なる実施形態では、ある領域における線の太さの変化が、隣接する領域又は周囲の領域のためのツイークの重み付き関数である。したがって、ある領域における線の太さを、一つ以上の隣接する領域に対応するツイーク値にしたがって、増加又は減少させることができる。
【0051】
上述の実施形態の組み合わせを用いることもできる。
【0052】
上述の実施形態では、隣接する領域のツイーク値のトレードオフを行なわなければならないことがある。例えば、線が、領域間の境界線に沿って通ることがあり、四つのグリッド点から等距離の点(等距離ゾーン)を通過することがある。このような場合には、線は、相反するツイーク値を与えられることがあり、ある領域は線の太さを増すことが必要となり、他の領域は線の太さを減じることが必要となることがある。(または、双方で線の太さを増す必要があるが、異なった量となることがある。) 線は等距離ゾーンを通過しないが、線の太さにおける変化が異なったツイーク値を有する領域の付近の関数である場合も同様である。この場合にも同様に、既知の補間関数を用いて、所定の領域における線の太さに行うべき変化を決定する際に、各領域からのツイークに与えるべき重みを決定することができる。
【0053】
例示の透かし処理アルゴリズムでは、画像における明るさの平均変化はゼロであり、画像を全体的に明るくしたり又は暗くしたりすることがないことは、明らかではない。明るさの局所的変化は、量では微小であり、適切な位置に局所化されており、したがって、これらは本質的に人間の目に見えない(例えば、目立たない/サブリミナル)。
【0054】
別の実施形態を図6に示す。図6においては、線の太さではなく線の位置が変化する。
【0055】
図6では、線の元の位置を点線で示し、線の変化した位置を実線で示してある。領域の明るさを低下させるために、線をグリッド点の中心にわずかに近づけるように移動し、領域の明るさを上昇させるために、線をわずかに遠ざけるように移動する。したがって、領域Aでは、線を中心グリッド点に向けて移動し、領域Dでは、離れるように移動する。
【0056】
領域Aの左エッジにおける線は、当該領域から抜け出るときに、その通常の(点線の)位置に戻らないことに注意されたい。これは、領域Aの左の領域も低下した明るさを有するべきだからである。可能であれば、線をその通常の位置に戻さないことが一般的に好適であるが、代わりに、シフトされた線を、それらが隣接する領域に入るときに、シフトされたままにすることができる。このようにすることによって、領域内のより大きい正味の線移動が可能となり、埋め込まれた信号レベルを増大させることができる。
【0057】
この場合においても、図6における線シフトは、幾分誇張してある。より典型的な線シフトは、3−50μmのオーダである。
【0058】
図6の実施形態を考察する一つの方法は、磁気学の類推を用いることである。各領域の中心におけるグリッド点は、磁石とみなすことができる。これは、線を引き付けるか、反発する。例えば、−3のツイーク値は、強い引力に対応し、+2のツイーク値は、中程度の反発力に対応する等とすることができる。図6では、領域Aにおけるグリッド点は、引力(すなわち、負のツイーク値)を示し、領域Dにおけるグリッド点は、反発力(例えば、正のツイーク値)を示す。
【0059】
磁気の類推は、線に加えられる磁気的作用が、線とグリッド点との間の距離に依存するため、有効である。したがって、グリッド点の近くを通る線は、領域の周辺近くの線よりもより多くその位置をシフトされる。
【0060】
(実際には、磁気の類推は、概念的ツール以上に役立つことができる。代わりに、磁気作用をコンピュータプログラムにおいてモデル化し、グリッド点に関する線の所望の配置を解析するのに役立たせることができる。)
【0061】
図5と共に上述した変形例の各々は、図6にも同様に適用可能である。
【0062】
図5及び6の実施形態の組み合わせを、もちろん使用することができ、結果として、透かしエネルギーを増大させ、よりよい信号対ノイズ比が得られ、多くの場合には目立った変化を少なくすることができる。
【0063】
更に他の実施形態では、線を変化させないままで、各領域における輝度を変化させる。これは、領域のそうしなければ何もない部分にインクの小さいドットを散在させることによって行うことができる。紙幣に使用される形式の高品質印刷では、直径3μmオーダの小滴を置くことができる。(更に大きい小滴は、見る者の大部分の知覚しきい値を依然として越えている。) (規則的なアレイ又はランダムに、若しくは、正規分布のような所望のプロファイルにしたがって)領域にこのような小滴をつけることによって、容易に、明るさにおける1%程度の変化を与えることができる。(通常、暗いドットを領域に加えて、明るさを低下させる。明るさの上昇は、明るい色のインクを散らすことによって、又は、そうしなければ領域内に存在する線画に明るい空白を形成することによって容易に行うことができる。)(実際には、現実の製造では、多くのこのような微小ドットは印刷されないが、統計的にある程度は印刷されることがしばしば起こる。)
【0064】
この散在させる技術の変形例では、きわめて薄いメッシュ線を線画に挿入し、一つ以上の領域の明るさを僅かに変化させることができる(いわゆる、背景着色処理)。
【0065】
透かしデータを復号するために、符号化された線画画像を解析用の電子形態に変換しなければならない。この変換は、通常、スキャナによって行なわれる。
【0066】
スキャナはよく知られているので、詳細な説明をここでは行なわない。あえて説明すれば、スキャナは、伝統的には、接近して配置した複数の光検出器セルからなるラインを用いるものであり、これらセルは、画像の連続する帯状の部分から反射された光の量に関係する信号を発生する。大部分の安価な消費者向けスキャナは、1インチあたり300ドット(dpi)の解像度を有し、構成光検出器の中心対中心の間隔は、約84μmである。大部分の業務用画像処理装置やフォトコピーに見られる種類のより高品質のスキャナは、600dpi(42μm)、1200dpi(21μm)又はそれ以上の解像度を有する。
【0067】
300dpiスキャナ(84μmの光検出器の間隔)を例にとると、紙幣における各250μmの領域12は、光検出器の標本の3×3のアレイに略対応する。当然に、まれな場合においてのみ、ある領域が、9個の光検出器の標本がこの領域の輝度を獲得して、他の輝度を獲得しないように、スキャナによって物理的に記録される。より一般的に、線画は、スキャナの光検出器に対して斜めになり、又は、長手方向で位置が合わなくなる(すなわち、幾つかの光検出器は、二つの隣接する領域の小区画を画像化する。) しかしながら、スキャナは領域をオーバサンプリングするので、各々の領域の輝度を明確に決定することができる。
【0068】
一実施形態では、線画からのスキャンデータを2次元アレイで集め、本出願人の以前の特許及び出願において開示した技術の一つにしたがって処理して、データの統計量を(本願人の以前の文書において開示した技術を使用して)解析し、埋め込まれたデータのビットを抽出する。
【0069】
(繰り返すが、本出願人の以前の透かし復号技術に対する参照は、単なる例としてのものである。スキャンを開始して、データが画素形式で利用可能になると、任意の他の透かし復号技術を用いて、対応して符号化された透かしを抽出することは容易である。)
【0070】
異なる実施形態では、スキャンデータを、処理に先だって完全なアレイで集めることは行なわない。代わりに、埋め込まれた透かしデータを遅延なく検出するために、スキャンデータは、発生されたときに、リアルタイムで処理される。(スキャナのパラメータによっては、得られたデータの統計量が明確に透かしの存在を示す前に、半インチ程度の線画画像をスキャンしなければならないことがある。)
【0071】
本発明の他の態様によれば、種々のハードウェア装置が、これら装置が処理する任意の線画画像内に埋め込まれたデータを認識し、適宜に応答する能力を備えている。
【0072】
一例はカラーフォトコピー機である。このような装置は、カラースキャナを使用し、入力媒体(例えば、ドル紙幣)に対応する標本化(画素)データを発生する。紙幣に付随した透かしデータが検出された場合には、フォトコピー機は、一つ以上のステップを行うことができる。
【0073】
一つの選択肢は、単に、複製を中止し、貨幣を複製することは違法であることをオペレータに気づかせるメッセージを表示することである。
【0074】
他の選択肢は、遠隔地のサービス又はサイトに接続し、試みられた紙幣の複製を報告することである。電話ダイアル機能を有するフォトコピー機は、当該技術分野において既知であり(例えば、米国特許明細書第5305199号)、この目的に対して容易に適合する。同様に、モデム又はネットワーク通信機能を有するパーソナルコンピュータは、(例えば、インターネット上の)遠隔地にメッセージを送って、試みられた複製について警告を発することができる。遠隔地サービスは、独立サービスであってもよく、又は、政府機関であってもよい。
【0075】
更に他の選択肢は、複製を許可するが、法的な追跡データを、発生する複製に挿入することである。この追跡データは、種々の形式をとることができる。ステガノグラフィ的に符号化されたバイナリデータは一例であり、米国特許明細書第5568268号に示されたデータ埋め込みを使用することもできる。追跡データは、複製を形成した機械の通し番号、及び/又は、複製が形成された日時を記録することができる。プライバシーの問題に対処するために、このような追跡データは、通常はフォトコピーされた出力には挿入されないが、フォトコピーされているものが紙幣であると検知された場合にのみ挿入される。(このような装置を図7に示す。)
【0076】
望ましくは、スキャンデータを、1ラインずつ解析して、最短の遅延で違法のフォトコピー処理を検知する。紙幣がスキャンされている場合に、一つ以上のラインのスキャナ出力が、フォトコピー機の複写ユニットに、紙幣検出決定が行われる前に提供されることがある。この場合には、フォトコピーは二つの領域、即ち、追跡マークが与えられていない第1の領域と、追跡データが挿入された第2の小領域とを有する。
【0077】
上述の原理を用いることができる他のハードウェア装置は、スタンドアローンのスキャナである。スキャナ内部のプログラムされたプロセッサ(又は専用ハードウェア)は、この装置によって発生されるデータを解析し、適宜に応答する。
【0078】
上述の原理を用いることができる更に他のハードウェア装置は、プリンタである。この装置の内部のプロセッサは、印刷すべきグラフィカルデータを解析して、紙幣に付随する透かしを探索する。
【0079】
スキャナ及びプリンタ装置の双方の場合に、応答方法には、動作を不能にすること、又は、追跡情報を挿入することがある。(このような装置は、通常、ダイアル機能はネットワーク接続を持たないが、必要であれば、伝統的なコンピュータのそのような機能を、スキャナ又はプリンタ装置によって、既知の技術を使用して呼び出すことが可能である。)
【0080】
この場合にも同様に、スキャナ又はプリンタデータを、利用可能になったときに処理して、如何なる紙幣処理も最短の遅延で検出するようにすることが望ましい。また、この場合にも同様に、検出決定を行う前に、ある程度の遅延時間がある。したがって、スキャナ又はプリンタ出力は、二つの部分、即ち、追跡データのない部分と、追跡データを有する他の部分とから成る。
【0081】
他の実施形態(図10)では、ユニバーサルID(UID、固有のID)を有する知覚できない透かしを、プリンタによって印刷された文書、スキャナによってスキャンされた文書、又は、フォトコピー機によって複製された文書の全てに挿入する。UIDは、製品の製造者によって保持された登録データベースにおいて、特定のプリンタ/フォトコピー機/スキャナに関連付けられている。製造者は、このデータベースに、製品を最初に出荷した販売者の名前を入力することもできる。さらに、持ち主の名前及び住所を、製品が保証サービス用に登録される場合に、データベースに加えることができる。このような機械の偽造における使用を防止しないが、埋め込まれたUIDは、偽造紙幣を発生した機械を特定することを容易にする。(これは、秘密透かしが最適に使用される用途である。)
【0082】
ディジタル透かしの他の有益な用途は、例えば、現金の受け取り及び支払いの双方を行う自動金銭出納機械のための、信頼性の高い紙幣の認証におけるものである。図8を参照すると、このような機械(11)は、紙幣(16)の表面に対応するディジタルデータを発生する既知の光学スキャナ(13)を備えている。次に、この画像セット(14)を解析して、埋め込まれた透かしデータを抽出する。復号用にコード信号(20)の知識(例えば、ノイズ変調信号、秘密鍵、拡散信号、等)を必要とする透かし処理技術においては、紙幣を、幾つかのこのようなコードにしたがって透かし処理してもよい。これらコードの幾つかは、伝統的な機械によってこれらを読み出すことを公開的に許可している。他のコードは、秘密的であり、政府機関等による使用のために予約されている。(本出願人に発行された特許における公開コード及び秘密コードを参照。)
【0083】
述べたように、紙幣は、現在、幾つかの可視構造、即ちマーキング(例えば、上記で引用した特許に示された印章)を有しており、当該可視構造は、(視覚的検査又は機械検出による)紙幣認証を補助するものとして使用することができる。望ましくは、紙幣を、統合検出システム(24)によって検査し、視覚的構造(22)及びディジタル透かしデータ双方の存在を、紙幣が本物であることを決定する前に、確認する。
【0084】
可視紙幣構造を、既知のパターン認識技術を使用して検知することができる。このような技術の例は、米国特許明細書第5321773号、第5390259号、第5533144号、第5539841号、第5583614号、第5633952号、第4723149号及び第5424807号と、欧州外国出願公開公報第766449号に開示されている。
【0085】
図9を参照すると、例えば、フォトコピー機(30)は、可視構造(32)又は埋め込まれた紙幣透かしデータ(34)のいずれかの存在を感知し、いずれかが存在する場合に(36)、複製を不能にすることができる。スキャナ及びプリンタは、スキャンされた又は印刷すべきデータを、これらの紙幣検証刻印のいずれかに関して解析する同様の機能を装備することができる。いずれかが検出された場合、ソフトウェア(又はハードウェア)がさらなる動作を不能にする。
【0086】
紙幣の透かしデータによる検証は、他の場合には利用できない重要な利点をもたらす。述べたように、元の紙幣に(例えば、ホワイトアウト、シザース、又は、レスクルード技術によって)不正な変更を加えて、可視構造を除去することが可能である。次に、このような文書を、可視構造感知フォトコピー機又はスキャナ/プリンタ装置のいずれかにおいて自由に複製することができる。次に、除去された可視構造を、第2の印刷/フォトコピー処理によって付加することができる。プリンタに紙幣不能化機能を装備していない場合には、画像編集ツールを使用して、可視構造を、このような不正変更された紙幣からスキャンされた画像データセットに挿入し戻し、完全な紙幣を自由に印刷することができる。紙幣に埋め込み用の透かしデータを追加で含めて、これを感知することによって、このような策略は成功しなくなる。
【0087】
(同様の策略は、紙幣非感知スキャナにおいて紙幣画像をスキャンすることである。次に、得られたデータセットを、伝統的な画像編集ツールによって編集し、可視構造を除去することができる。次に、このようなデータセットは、このようなデータを可視構造の存在に関して検査するプリンタ/フォトコピー機においても印刷することができる。この場合にも同様に、欠けている可視構造を、その後の印刷/フォトコピー処理によって挿入することができる。
【0088】
望ましくは、可視構造検出器及び透かし検出器を、1個のハードウェア及び/又はソフトウェアツールとして統合する。この装置は、種々の経済性を、例えば、スキャナとのインタフェース処理、パターン認識及び透かし抽出に関する画素データセットの操作、画像を電子的に再整列しパターン認識/透かし検知を容易にすること、制御信号(例えば、不能化信号)をフォトコピー機/スキャナに発生すること、等においてもたらす。
【0089】
上述した用途は、可能性のある偽造オペレーションを、可視構造又は透かし処理されたデータのいずれかを検出することに応じて不能にしたが、他の用途では、双方の規準が、紙幣を本物として認識する前に、満たされなければならない。このような用途は、典型的には、例えば、上述し、図8に示したATMによる紙幣の受け取り又は引き受けを含む。
【0090】
(以下の明細書を過度に長くすることなく、包括的な開示を与えるために、本出願人は、上記で引用した特許文書を参照することによって援用する。)
【0091】
上述したことから、本発明の実施形態は、線画画像を、バイナリデータ用のサブリミナルキャリアとして機能することが理解できるであろう。加えて、紙幣偽造に対する既存の抑止手段を、通常の迂回策を防止するように拡張し、他の利点を与えている。
【0092】
本発明の原理を幾つかの例示の実施形態に関して説明し、示したが、これらの実施形態は説明だけのものであり、本発明の範囲を限定するものとして捉えるべきでないことを認識すべきである。上述した技術によって導けば、他の透かし処理、復号及び対偽造技術を、詳述した要素の代わりとし及び/又はこれらと組み合わせ、同様の効果を生じることができることは明らかである。
【0093】
例えば、本発明を、グリッド点をもつ規則的な矩形アレイを用いる実施形態を参照して説明したが、当業者は、矩形でも規則的でもない点の他のアレイを代わりに使用することができることを認識するであろう。
【0094】
同様に、本発明を、紙幣を参照して特に説明したが、これらの原理は他のセキュリティ文書にも等しく適用可能である。
【0095】
本発明を、埋め込まれるエネルギーを局部的な画像の特性に応じてスケーリングする実施形態を参照して特に説明したが、他の実施形態において、手動で形成したエネルギープロファイルを実施することができる。すなわち、画像の異なる部分において埋め込まれる信号の大きさを規定するマスクを手動で作り、これを採用して、各領域における輝度の変化を調整することが可能である。
【0096】
同様に、一つの符号化技術を特に詳述したが、本発明はこれに限定されない。セキュリティ文書に対応する標本化光学データから検出することができるように、複数ビットのバイナリデータをセキュリティ文書に隠す如何なる技術も同様に用いることができる。インクに対するわずかな変更(例えば、カラー、密度、分布、等)を伴うこのような技術が全てではない。例えば、他のアプローチは、下にある媒体(紙、ポリマー等)をディジタル的に透かし処理するものである。これは、媒体の微細構造を変化させ(微少な点字式)、符号化データのパターンを表すことによって行うことができる。このようなテクスチャ処理を、光学的に検知し、パターン化データを発生した符号化アルゴリズムに対応するアルゴリズムを使用して復号することができる。他の選択肢は、紙幣上又は紙幣内にラミネート材を用いることであり、この場合には、ラミネート材が、その上/その中に表された透かしを有する。ラミネート材を、(上記のように)テクスチャ処理することができ、又は、その光学的透明度を、透かしであるノイズ状パターンに従って変化させることが可能であり、或いは、化学特性を同様に変化させることが可能である。このようなアプローチは、例えば、上記で引用した本出願人の国際公開パンフレットに詳述されている。
【0097】
本発明を幾つかのハードウェア装置(例えば、スキャナ、フォトコピー機及びプリンタ)及び幾つかの用途(偽造防止及び紙幣認証)を参照して特に説明したが、本技術はこれらに限定されない。例えば、多くの異なった装置に、本明細書で詳述した紙幣認識機能を装備してもよい。一例には、紙幣を認証のために検査する現金受納支払い機がある。他の例は、これによって処理されたデータを検査し、紙幣に関して同じ起源であるかどうかを決定し、適切に干渉するパーソナルコンピュータである。
【0098】
更に他の用途を、この技術によって同様に取り扱うこともできる。一つは、紙幣処理であり、例えば、紙幣を数え、分類し、読み取り、流通から特定の年数を経たものと偽造紙幣を選択する銀行又は発行機関によって使用される装置である。このような装置は、複数の紙幣を受ける入力部(例えば、ホッパー)と、紙幣を入力部から光学検出器を通過させて輸送するフィードマシーンとを備えることができる。光学検出器は、輸送された紙幣に対応するディジタル画像データを発生する。次に、この画像データをプロセッサによって処理し、当該プロセッサは、紙幣の少なくともある部分におけるアートワークにステガノグラフィ的に符号化された複数ビットのディジタル透かしデータを検出する。制御ユニットは、検知された透かしデータに応じた方法で応答する。例えば、制御ユニットは、復号データに基づいて、紙幣を、額面又は年数によって分類するか、偽造品を間引くように、装置を動作させる。
【0099】
さらに、本発明の方法を、ハードウェア、ソフトウェア、又はそれらの組み合わせによって行うことができる(例えば、幾つかの画像処理オペレーションを専用ハードウェアによって実行し、他のオペレーションをソフトウェアにおいて実行する)ことが、認識されるであろう。
【0100】
更に他の実施形態では、透かしの少なくとも一部を、発光インクを使用して印刷することが可能である。これによって、例えば、紙幣を示された商人が、スキャナ及びコンピュータ解析に頼ることなく、(例えば、ブラックライトの下で検査することによって)紙幣におけるある透かし状の印の存在を迅速に認識することが可能となる。このような発光インクは、紙幣の額面のように、紙幣において人間が読むことができる印を印刷することもできる。(インクジェットプリンタ及び他の普通の多数の印刷技術は、シアン/マゼンタ/イエロー/ブラックを用いてカラーを形成するので、これらは、限られたスペクトルのカラーのみを発生することができる。発光カラーは、これらの能力外である。ハイライト用のマーカーに使用されるイエロー、ピンク及びグリーン染料のような発光カラーを同様に使用することが可能であり、ブラックライトなしで見えるという利点を有する。
【0101】
上に詳述した符号化技術及び他の符号化技術に対する改善は、ディジタル透かしのロバスト性(堅牢さ)の反復的な評価と、再透かし処理オペレーションにおける対応する調節とを加えることである。特に、多ビットの透かしを符号化する場合には、下にあるコンテンツ(例えば、アートワーク)の特性によって、幾つかのビットを他のビットより堅牢に(例えば、強く)符号化することができる。この改善に用いる例示の技術では、透かしを最初に符号化する。次に、試験的な復号オペレーションを行う。次に、復号オペレーションにおいて復号された各ビットに関する信頼性測定値(例えば、信号対ノイズ比)を評価する。弱く符号化されていると思われるビットを特定し、対応する変更を透かし処理パラメータに行い、これらビットの相対的強さを向上させる。次に、このオブジェクトを新たに、変更したパラメータを用いて透かし処理する。このプロセスを、必要に応じて、符号化データを構成するすべてのビットが符号化オブジェクトからほぼ等しく検出可能になるまで、又は、ある所定の信号対ノイズ比しきい値を満たすまで、繰り返すことができる。
【0102】
紙幣、同様の大部分の他の媒体及びオブジェクトは、一般的に多数の透かしの使用によって利益を得る。例えば、紙幣を、一旦、空間領域においてマークし、2回目に空間周波数領域においてマークすることができる。(ある領域におけるどのような変化も、他の領域における影響を有するということを認識すべきである。ここで、変化が直接影響する領域を参照する。)
【0103】
他の選択肢は、紙幣(又は他の物理的又はディジタル的オブジェクト)に、二つの異なるレベルのロバスト性(堅牢さ)又は強さの透かしをマークする。より堅牢な透かしは、種々の形式の改ざんに耐え、介入する歪みが複数発生した後でも、オブジェクトにおいて検出可能である。堅牢さの少ない透かしは、オブジェクトの1度の歪みで損なわれるほどに弱く形成することができる。紙幣では、例えば、堅牢さの少ない透かしは、認証マークとして役に立つ。如何なるスキャン及び再印刷動作も、これを読み取り不可能にする。堅牢な透かし及び弱い透かしの双方が、本物の紙幣において存在すべきであり、前者の透かしみが偽造の場合に存在する。
【0104】
更に他の選択肢は、二つの異なった透かしを二つの異なったコード信号にしたがって符号化することである。一方の透かしは、試みられた偽造操作において使用された装置を(例えば、通し番号によって)特定することができる。他方の透かしを他の目的に使用することができる。
【0105】
上記の考察は、種々の課題に対する種々の技術的処置を行なっており、特に紙幣に関して説明している。例示的な解決法を詳述した。他のものは、通常の知識を用いて上記で与えた解決法から推定することによって当業者には明らかとなろう。
【0106】
例えば、本明細書で開示した技術及び解決法は、引用した参考文献からの要素及び技術を使用する。引用した文献からの他の要素及び技術を単に組み合わせ、本発明の範囲内で他の実施例を得ることができる。したがって、例えば、透かしデータを有する又は有さないホログラムを、紙幣において、追加のセキュリティのために用いることができ、単一ビット透かし処理を、共通に多ビット透かし処理の代わりとすることができ、知覚不可能な透かしを使用して説明した技術を可視透かし(絵文字等)を使用して実行し得ることがあり、透かしエネルギーの局所的なスケーリングを行って、人間の知覚可能性を増すことなく、透かしの信号対ノイズ比を上昇させることができ、種々のフィルタ処理オペレーションを種々の機能のために用いることができ、符号化処理は、1画素(又はDCT係数)の粒度で行なうことができ、又は、隣接する画素(又はDCT係数)のグループを同様に処理してもよく、符号化を、コンテンツ改ざんの予測される形態に耐えるように最適化してもよい。等、等、等である。(引用した変形例は、一般的にすべて本出願人の国際公開パンフレットに詳述されている。)このように、例示の実施形態は、上に参照した教示を組み合わせることによって利用可能な解決法のうちの単なる選択したサンプルである。他の解決法は、本明細書では、必ずしも徹底的に説明していないが、上記開示を与えられ、引用した技術に精通した当業者には、十分に理解の範囲内にある。
【0107】
<種々雑多のもの>
(以下の記載の大部分は、もとは、紙幣に関する上記考察の前の米国優先権出願において与えられている。本特許請求の範囲は、紙幣の用途を強調しているので、明確にするために、以下の題材を、明細書の終わりに移動した。紙幣の用途を参照しては特に説明していないが、この題材は、紙幣用途をより完全に理解することができる有用な内容を与える。)
【0108】
既存の透かし符号化技術に対する改善は、マークの堅牢さの反復的評価と、再透かし処理オペレーションにおける対応の調節とを加えることである。特に、多ビット透かしを符号化する場合には、下にあるコンテンツの特性によって、幾つかのビットを他のビットより堅牢に(例えば、強く)符号化することができる。この改善に用いる例示の技術では、透かしを最初にオブジェクトに埋め込む。次に、試験復号オペレーションを行う。次に、この復号オペレーションにおいて復号された各ビットに関する信頼性測定値(例えば、信号対ノイズ比)を評価する。弱く符号化されていると思われるビットを特定し、対応する変更を透かし処理パラメータに行い、これらビットの相対的強さを増大させる。次に、このオブジェクトを新たに、変更したパラメータで透かし処理する。このプロセスを、必要に応じて、符号化データを構成するすべてのビットが符号化オブジェクトからほぼ等しく検出可能になるまで、又は、ある所定の信号対ノイズ比しきい値を満たすまで、繰り返すことができる。
【0109】
上記解析は、ビット毎に信頼性を評価したが、関係する反復的手順は、部分毎に信頼性を評価することができる。すなわち、符号化されたオブジェクトを部分で考え、各々の部分を、それによって符号化されたデータのロバスト性(堅牢さ)に関して解析する。「弱い」符号化を示す部分において、符号化パラメータを調節し、一つ以上のその後の再符号化オペレーションにおける符号化を強めることができる。
【0110】
これらの部分は異なった形態をとることができ、例えば、静止又は動画像における矩形パッチ、オーディオ又はビデオにおける短時間の抜粋、変換された領域におけるオブジェクトの係数ベースの表現でのあるDCT/フーリエ/ウェブレット係数(又は隣接する係数のグループ)をとることができる。
【0111】
この技術によって、符号化オブジェクトを空間的又は時間的に抜粋又はフィルタ処理(例えばスペクトル的に)しても、このような処理後に残る透かしエネルギーが正確な復号を可能にする確実性が増す。
【0112】
例示の実施形態では、この反復的プロセスを、高度に自動化し、本質的にユーザに透過的なものとする。ユーザは、単に、オブジェクトを透かし処理するようコンピュータ制御システムに命令し、当該システムは、試験透かし処理を行い、復号を行い、続く調節を行い、所望の透かし品質条件を満たす最終的な符号化オブジェクトが発生されるまで必要に応じて反復することによって、応答する。
【0113】
透かし処理は、非常に多数の形式の情報に用いることができる。これらには、ディジタル形式(例えば、画素から成る画像、ディジタルビデオ、MP3/MP4オーディオ等)又はアナログ表現(例えば、非標本化音楽、印刷された画像、紙幣等)のいずれかにおいて表現された画像(ビデオを含む)及びオーディオを含む。透かし処理は、ディジタルコンテンツ(例えば、画像、オーディオ)に、圧縮前又は後に適用することが可能である。透かし処理はまた、コンテンツの種々の「記述」又は「合成」言語表現、例えば、Structured Audio、Csound、NetSound、SNHC Audio等(http://sound.media.mit.edu/mpeg4/を参照)においても、透かしデータ及び意図されたオーディオ信号を発生する合成コマンドを指定することによって用いることができる。透かし処理は、通常の媒体にも、当該媒体が情報を伝えるか否かに拘わらず、適用可能である。例としては、紙、プラスチック、ラミネート、紙/フィルムの感光乳剤等がある。透かしは、単一の情報ビット、又は任意の数のビットも埋め込むことができる。
【0114】
透かし処理された情報の物理的表示は、僅かに変化された画素値、画像の輝度、画像のカラー、DCT係数、瞬時のオーディオ振幅等のような、変化された信号値の形態を最も一般的にとる。しかしながら、透かしは、媒体の表面微細構造における変化、局所的な化学的変化(例えば、写真の感光乳剤におけるもの)、光学密度における局所的な変化、発光における局所的な変化のような、他の方法において示すこともできる。透かしは、ホログラム及び従来の紙透かしにおいても任意に実現することが可能である。
【0115】
既存の技術への一つの改善は、確立したウェブクローラー(Crawler)サービス(例えば、AltaVista、Excite又はInktomi)を用い、その通常のデータ収集/インデックス処理に加えて、透かし処理されたコンテンツ(ウェブ上、インターネットニュースグループ、BBSシステム、オンラインシステム等におけるもの)を探索することである。これらのようなクローラーは、後に解析するために、透かしを埋め込まれているかもしれないファイル(例えば、*.JPG、*.WAV等)をダウンロードすることができる。これらのファイルを、後に説明するように、リアルタイムで処理することができる。より一般的には、このようなファイルを、クローラーコンピュータと異なるコンピュータによって、待ち行列に入れて、処理する。各々のこのようなファイルにおいて透かし読み取りオペレーションを行う代わりに、スクリーニング技術を用いて、透かしデータを運んでいると最も思われるものを特定することが可能である。一つのこのような技術は、DCT処理を画像に対して行い、特定の透かし処理技術に関するスペクトル係数(例えば、傾けて埋め込まれたサブリミナルグリッドに関する係数)を探すことである。拡散スペクトルに基づく透かしを復号するために、解析コンピュータは、データ信号を拡散させるのに使用されたノイズ信号へのアクセスを必要とする。一実施形態では、当事者が、当該当事者のマークしたコンテンツが特定され得るように、ノイズ/鍵信号をクローラーサービスに提供する。クローラーサービスは、これらの情報を秘密に保持し、様々なノイズ情報を、画像(ここで、画像を、像、ビデオ、及びオーディオを手短に称するものとして使用した)の復号に、透かし処理されたデータが(あるならば)見つかるまで使用する。これによって、ウェブクローラーを使用して、単に公的に符号化された透かしではなく、現在の場合のように、非公開に符号化された透かしを有するコンテンツの場所を見つけることが可能になる。解析用にコンテンツデータを待ち行列に入れることで、計算的近道のためのある機会が得られる。例えば、等しいサイズの画像(例えば、256×256画素)をより大きい画像中にタイル化し、透かしデータの存在に関してユニットとして検査する。復号技術(又は、任意のプレスクリーニング技術)がDCT変換等を用いる場合、変換のブロックサイズをタイル化して、タイルサイズ(又は、これらの整数分数)に対応させることが可能となる。次に、透かしを有する可能性があるものと示されたブロックに対して、完全な読み出し処理が行なわれる。待ち行列に入れられたデータが、ファイル名、ファイルサイズ又はチェックサムによって分類されている場合には、重複のファイルを確認することができる。このような重複を確認したら、解析コンピュータは、ファイルの一つのインスタンスのみを考慮すればよい。透かしデータがこのようなファイルから検出された場合には、コンテンツプロバイダに、ファイルのコピーが検出された各々のURLを知らせることができる。
【0116】
一部のコメンテータは、透かし処理された画像に関するウェブクローラーの探索を、透かし処理された画像をサブブロック(タイル)に分解することによって打ち破ることができることに気づいている。HTML命令等は、サブブロックを、タイル化された様式で生じさせ、完全な画像を再形成する。しかしながら、小さいサイズの構成サブブロックのために、透かし読み取りを確実に達成することができない。
【0117】
この攻撃は、画像フェイルそれら自身に加えて、画像ファイルをウェブページでの表示用に配置する表示命令(例えば、HTML)を収集するようウェブクローラーに命令することによって、克服する。ウェブページから集められたファイルを透かしに関して綿密に検査する前に、これらファイルを、表示命令によって指定された配置に整列させることができる。この配置によって、タイルを再組み立てし、透かしデータを容易に再生することができる。
【0118】
画像透かしのウェブクローラーによる検出に対する他のこのような想定される攻撃は、ファイルにおける画像(及び、したがって透かし)をスクランブルし、Java(登録商標)アプレット等を用いて画像を見る前にアンスクランブルすることである。既存のウェブクローラーは、当該ウェブクローラーがファイルを見つけたときに、そのファイルを検査し、結果として透かしを検出しない。しかしながら、Javaデスクランブル化アプレットを、ユーザがファイルへのアクセスを望む場合に、呼び出すことができるように、同じアプレットを同様にウェブクローラーに用いて、透かし検出についてこのように試みられた策略を克服することができる。
【0119】
種々のウェブクローラーによって「コンテンツ」の場所を見つけ、インデックス化できるが、「コンテンツ」の内容は未知である。例えば*.JPGファイルは、ポルノグラフィ、日没の写真等を含むことがある。
【0120】
透かしを使用して、コンテンツ内にメタデータを消去不可能に関連付けることができる(慣例的にメタデータで行われているように、オブジェクトの他の部分を形成するデータ構造で格納されるのとは異なる)。透かしは、「日没」というテキスト等を含むことができる。代わりに、更にコンパクトな情報表現を採用することも可能である(例えば、符号化された参照情報)。さらに、透かしは、ユニークID(UID)を含む(又は、完全にこれから成る)ことができ、当該UIDは、ネットワーク接続された遠隔地のデータベースであってメタデータ記述子を含むデータベースへのインデックス(鍵)として機能することができる。リモートデータは、拡張可能マークアップ言語(XML)タグセットによって記述されたメタデータを含むことができる。このような構成によって、ウェブクローラー等は、メタデータ記述子タグを抽出して、インデックス化することができ、探索を、単にファイル名によるのではなく、ファイルコンテンツの意味論的記述(Semantic Description)に基づいて行なうことが可能となる。
【0121】
既存の透かしは、一般に、著作権情報を伝えるのに役立つ情報を埋め込む。幾つかのシステムは、著作権所有者を示すテキストを埋め込む。他のシステムは、著作権使用者の名前及び関連情報を格納したデータベースへのインデックスとして使用されるUIDを埋め込む。
【0122】
将来のことを考えると、透かしは、静的な著作権警告として以上に役に立つはずである。一つの選択肢は、透かしを使用して、「インテリジェンス」をコンテンツに埋め込むことである。インテリジェンスの一つの形態は、その「ホーム」を知ることである。「ホーム」は、コンテンツが関係するサイトのURLとすることができる。例えば、車の写真を、この画像を発行した車ディーラーのウェブサイトを特定するデータで透かし処理することができる。画像がどこに行こうとも、透かしは、元の配布者に戻るリンクとして働く。同じ技術を会社のロゴに用いることができる。これらがインターネット上のどこでコピーされても、適切に装備されたブラウザ等は、そのデータを復号して、会社のホームページへリンクし戻すことが可能である。(復号は、ロゴ上にカーソルを配置し、右のマウスボタンを押すことによって、行なうことができる。このマウスの操作によって、その一部が「透かし復号」であるオプションウィンドウが開く。)
【0123】
透かしのデータ負荷を減少するために、インテリジェンスを、コンテンツの透かしにおいて完全に符号化する必要はない。代わりに、透かしは、この場合にも、UIDを提供することができ、このとき、当該UIDは、自動車ディーラーのURL等を検索することができる遠隔地データベースのレコードを特定する。このように、画像等はマーケッティングエージェントとなり、顧客をベンダーとリンクする(ある視覚的な販売技術が投入されている)。画像の配布が、追跡して停止することを必要とする害悪である著作権の例とは異なり、画像の配布は、ここでは、販売の機会として取り扱うことができる。透かし処理された画像は、商業取引への入り口になる。
【0124】
(透かし処理されたコンテンツファイルとその最終的なホームとの間の中間データベースを使用すること(すなわち、間接的にリンクすること)は、重要な利点を提供する。即ち、これによって、配布者は、データベースにおけるレコードを更新することによって、「ホーム」を簡単に変更することが可能となる。このように、例えば、ある会社が、他の会社に買収された場合に、前者の会社のスマート画像を、データベースのレコードを更新することによって、新たな会社のホームウェブページを指すようにすることができる。これとは異なり、古い会社のホームURLがオブジェクトにおいてハードコード(例えば、透かし処理)されている場合、これは、結局は放棄されるURLを指すこともある。この意味において、中間データベースは、ファイルをその現在のホームに結合する交換機として機能する。
【0125】
上記技術は、ディジタルコンテンツファイルに限定されるものではない。同じアプローチを、印刷された画像等に等しく適用可能である。例えば、印刷されたカタログは、ジャケットを示す写真を含むことができる。この写真に透かしデータを埋め込む。このデータは、(例えば、当業者に既知の)簡単な操作及び復号技術を使用する簡単なハンドスキャナ/復号器デバイスによって抽出することができる。ハンドスキャナ等を用いる透かし読み取り用途では、透かしデコーダを画像の回転に対して堅牢にすることが重要である。これは、カタログ写真が軸を外れて走査されることが多いからである。一つの選択肢は、カタログ写真にサブリミナルグラティキュール(例えば、視覚的同期コード)を符号化して、画像データのセットを、復号前に適切な配置へと修復するように前処理可能とすることである。
【0126】
スキャナ/プリンタ装置は、モデムを装備したコンピュータ、電話、又は、他の任意の通信装置に結合することができる。前者の例では、装置は、ブラウザをカタログベンダーの注文ページにリンクするURLデータをコンピュータのウェブブラウザに供給する。(装置は、自身の透かしデコーダを備える必要はなく、このタスクはコンピュータによって行うことができる。) ベンダーの注文ページは、オンライン業者によって慣例的に行われているように、ジャケットのサイズ及びカラーの選択肢、在庫の利用可能性を詳述し、注文命令(クレジットカード番号、配達選択子等)を要求することができる。電話に接続されたこのような装置は、(例えば、透かしにおいて符号化されたデータから既知の)カタログベンダーの無料自動注文電話番号にダイアルし、ジャケットを注文センタに確認することができる。次に、音声プロンプトによって、サイズ、色、及び配達の選択肢の顧客による選択を要求することができ、これらは、タッチトーン命令又は発音された単語によって(ベンダーの設備における既知の音声認識ソフトウェアを使用して)入力される。
【0127】
このような用途では、透かしは、購入取引において用いられる不可視バーコードとして概念化し得る。ここで、他の場合にもそうであるように、透かしは、印刷の世界とディジタルの世界を橋渡しするシームレスなインタフェースとして機能することができる。
【0128】
コンテンツにインテリジェンスを与える他の方法は、透かしを使用して、Java又はActiveXコードを提供することである。当該コードは、コンテンツに埋め込むことができ、又は、遠隔地に格納してコンテンツに対してリンクすることができる。透かし処理されたオブジェクトをアクティブにすると、このコードを(自動的に、又は、ユーザの自由選択で)実行することができる。このコードは、どのような機能も仮想的に実行することができる。一つは、「ホームに電話をかける」ことであって、ブラウザを起動し、オブジェクトのホームにリンクするものである。オブジェクトは、どのようなデータもそのホームへ中継することができる。このデータは、当該データのある属性及びその用途を指定することができる。コードは、許可を受けるまで、下にあるコンテンツへのアクセスを防止することもできる。一例は、ディジタル映画であり、このディジタル映画は、ダブルクリックされた時に、透かしで埋め込まれたJavaアプレットであってブラウザを介してその映画の配給者にリンクするアプレットを自動的に実行する。次に、ユーザは、クレジットカード番号の入力を促される。その番号が照合され、課金が行われた後に、アプレットは、ファイルのコンテンツを、映画を観るためのコンピュータのビューワーに受け渡す。これらの動作に関するサポートは、望ましくは、コンピュータのオペレーティングシステム又はプラグインソフトウェアを介して提供される。
【0129】
オペレーティングシステムがコンテンツ形式を知っているならば(例えば、オブジェクト指向ファイルシステムにおいて、又は、「メディアアウェア」ファイルシステムにおいて)、同様の機能をそのオペレーティングシステムと共に提供して、透かし処理されたコンテンツの特別な処理をトリガすることができる。一つの例としての用途は、外部オーディオ/画像/ビデオ装置からのコンテンツの獲得におけるものである。
【0130】
これらのような装置を使用して、スマート画像コンテンツがコンテンツの消費者によってアクセスされるときに、ユーザ提供型の人口統計情報を集めることが可能である。この人口統計情報は、遠隔地のデータベースに書き込みことができ、市場調査、消費者に提供されたコンテンツについての情報のカスタム化又は個人化、販売機会、宣伝等に使用することができる。
【0131】
オーディオ及びビデオ等において、透かしは、WWWファンサイトへのリンク、俳優のバイオグラフィ、抱き合わせ商品(Tシャツ、CD、コンサートチケット)販売の宣伝のような、関連する情報を伝えるのに役に立つ。かかる用途では、ユーザインタフェース(例えば、画面)上に小さいロゴを表示して、追加情報の存在を知らせることが望ましい(必須ではない)。消費者が、ロゴを、ある選択装置(マウス、遠隔制御ボタン等)を介して選択したときに、情報を消費者に公開し、その後、当該消費者はその情報に接触することが可能となる。
【0132】
資産権の管理について多くのことが書かれている(特許が与えられている)。サンプルの特許文書には、米国特許明細書第5715403号、第5638443号、第5634012号、第5629980号がある。この場合も同様に、技術的研究の多くが、学会誌の記事において記録されている。これら記事は、IBMのCryptolopeシステム、ポートランドソフトウェアのZipLockシステム、ソフトバンクネットソリューションによるライツエクスチェンジサービス、及びインターネットトラストテクノロジーズによるDigiBoxシステムといった関連する会社名及びトレードマークに関して検索することによって特定することが可能である。
【0133】
例示の資産管理システムは、暗号化された形態で(例えば、ウェブサーバから、又は、新たなコンピュータのハードディスクにおいて)コンテンツを利用可能とする。暗号化されたコンテンツには、コンテンツを特定するデータ(例えば、プレビュー)と、コンテンツに関する種々の権利を特定するデータとが関連付けられている。ユーザがコンテンツのより完全な使用を望む場合には、当該ユーザは、課金権限(クレジットカード)を配給者に与え、次いで配給者が暗号解除鍵を与えて、コンテンツへのアクセスを許可する。(このようなシステムは、オブジェクトベースの技術を使用して実現されることが多い。このようなシステムでは、コンテンツは、一般に「安全なコンテナ」において配給されると言われる。)
【0134】
他の資産管理システムは、「平文で」、即ち、暗号化せず、安全なコンテナにおいてではなく、コンテンツを配布する。このような装置は、例えば、企業資産管理システムにおいて(例えば、コンテナベースのアプローチが普及している電子商取引用途とは対照的に)、一般的である。
【0135】
望ましくは、コンテンツをマーク(個人化/シリアライズ)し、コンテンツの如何なる不法な使用も追跡できるようにすべきである。このマーキングは、透かし処理によって行うことができ、これによって、マークは、コンテンツが如何なる形態でどこに行っても、共に移動することが保証される。透かし処理は、(暗号化された)オブジェクトの配布の前に、データベースにおいて特定のコンテナに関連づけられているUIDを符号化することによる等して、配給者によって行うことができる。コンテンツへのアクセスが可能である場合(例えば、アクセス権が安全なコンテナに対して与えられている場合、又は、暗号化されていないコンテンツがユーザに利用可能となっている場合)、データベースのレコードを更新して、購買者/ユーザ、購買日、与えられた権利等を反映させることができる。代案として、透かしエンコーダを、コンテンツにアクセスするために使用されるソフトウェアツールに含めることがある(例えば、安全なコンテナベースのシステム用の暗号解読エンジン)。このようなエンコーダは、透かしデータをコンテンツに、当該コンテンツがユーザに提供される前に(例えば、コンテンツが、安全なコンテナシステムにおいて、コンテナから取り出される前に)、埋め込むことができる。埋め込まれるデータは、上述したようなUIDを含むことができる。このUIDは、配給者によって、コンテンツ/コンテナを配給する前に割り当てることができる。或いは、UIDは、アクセス(又はアクセス権)が許可されるまで未知である又は形成されないデータストリングとすることができる。UIDに加えて、透かしは、配給者に未知の他のデータ、例えば、コンテンツにアクセスする時間及び方法を指定する情報を含むことができる。
【0136】
更に他の非コンテナベースのシステムにおいて、アクセス権を、この場合にも同様に、透かしによって実現することができる。例えば、完全な解像度の画像を、ウェブ上で自由に利用可能にすることができる。ユーザは、画像をウェブページ又は雑誌に取り入れたい場合に、画像に、その使用の期間及び状態に関して問い合せることができる。これは、埋め込まれた透かしによって指定されたウェブサイトへの(直接的、又は、中間データベースを経ての)リンクを生じて、このリンクによって所望の情報を指定してもよい。次に、ユーザは、必要な支払いを手配し、必要な権利が保護されていることが知っている画像を使用することができる。
【0137】
画像/ビデオ/オーディオ資産へのエンドユーザへの(例えば、管理されたコンテンツ記憶装置からの)配布時のタグ付けは、UIDのみから成る必要はない。他のデータ、例えば、通し番号、受取人の身元、配給日等を、コンテンツ中に透かし処理することも可能である。更に、透かし処理されたデータは、関連の資産管理データベースに含まれるメタデータへの永続的なリンクを確立するように機能することが可能である。
【0138】
示したように、ディジタル透かしは、伝統的な(例えば紙)透かし技術を使用して実現することも可能である。透かし処理媒体(例えば、紙、プラスチック、ポリマ)に対する既知の技術は、米国特許明細書第5536468号、第5275870号、第4760239号、第4256652号、第4370200号において開示されており、これらを、ロゴ等ではなく視覚的透かしの表示に適合させることが可能である。透過光によって見えるように設計された伝統的な透かしの幾つかの形態もまた、スキャナで通常使用されるような反射光では、低レベル信号として見えることに注意されたい。透過照明検出システムを用い、このような透かしを、当該技術分野において既知のオプトエレクトロニクスによる伝統的な透かし検出技術を使用して検出することもできる。
【0139】
同様に示したように、ディジタル透かしを、光学ホログラムの一部として実現することが可能である。ホログラムを生成して、安全に組み込む既知の技術は、米国特許明細書第5319475号、第5694229号、第5492370号、5483363号、第5658411号及び第5310222号に開示されている。ホログラムを透かし処理するために、透かしを、ホログラム回折格子を生成する画像又はデータモデルで表すことができる。一実施形態では、ホログラムを従来通りに生成し、オブジェクト又はシンボルを表示する。透かしマーキングは、画像の背景において現れ、結果として当該透かしマーキングを全ての視角から検知することが可能である。この場合には、透かし表現は、見る者にとって本質的に感知不可能であることは必須ではない。必要な場合には、はっきりと見えるノイズ状パターンを、ホログラムを付ける用途を損なうことなく使用することができる。
【0140】
ディジタル透かしを、ラベル及びタグと共に用いることもできる。伝統的なラベル/タグ印刷プロセスに加えて、セキュリティのために調整した技術を用いることもできる。セキュリティラベル/タグを生成することに有用な既知の技術は、米国特許明細書第5665194号、第5732979号、第5651615号及び第4268983号に開示されている。透かし処理されたデータの感知不可能性と、機械復号の容易さは、透かし処理されたタグ/ラベルに関する利益のうちの一部である。加えて、その費用は、多くの関連技術(例えば、ホログラム)よりかなり低い。この用途における透かしを使用し、製品ラベルのオリジナリティを、関連する製品の商人又は顧客のいずれかに対して、簡単なスキャナ装置を使用して、保証することができ、それによって偽造製品販売の比率を減少させることが可能である。
【0141】
次の装置の不可避の社会的分岐(social ramification)を当面の間、都合良く無視して、ステガノグラフィ的セットアップを考察する。これによって、「マスタクロック」駆動機能に基づく所定の計算システムは、小さな変更で、当該計算システムを、このシステムが第2の計算システムとディジタル通信するときに、ユニークに特定することができる電気的オペレーションにおける信号を加えることができる。言及した僅かな変更とは、第1の計算システムの基本動作に少しも影響せず、二つのシステム間の通信にも影響しないようなものである。
【0142】
言及した社会的分岐とは、インターネットでは純粋な匿名性の概念が依然として存在するというアイデアと、プライバシーに対する権利の関連のアイデアとを示すものである。この概念の「良いこと」は、非匿名性が活用の種となり得ると思われ、この概念の「悪いこと」は、自分自身のアクションに対する責任からの幻想的な逃避であると思われる。いずれにせよ、所定の物理的なオブジェクトをその近隣に対して単に識別することについての社会的に中立的な概念のための基礎が存在すると思われ、それ故、以下のアプローチは、計算システムにユニーク信号を与え、第1のシステムと通信する第2のシステムが第1のシステムを識別できるようにする。
【0143】
スペクトル拡散原理を使用し(例えば、「ノイズ状」キャリア信号を情報信号によって変調して、データ信号を生じる)、コンピュータのクロック信号の瞬時の位相を変調して、ステガノグラフィ的に符号化されたデータを伝達する。一実施形態では、クロック周波数の位相を、データ信号に従って瞬時に変化させる。(幾つかの実施形態では、データ信号は、ノイズ様キャリヤ信号による変調を反映する必要はなく、変化しない情報信号を送ることができる。) 例示のシステムでは、クロック信号の周期は3ナノ秒であり、瞬時の位相シフトは、+/−10ピコ秒のオーダにおけるものである。(これらの数値は、もちろん、仕様内で依然として実行しつつ、使用する特定のマイクロプロセッサと、その位相ノイズに対する耐性とに依存する。) バイナリの”1”を符号化すべき場合には、位相は10ピコ秒進められる。バイナリの”0”を符号化すべき場合には、位相は10ピコ秒遅らせられる。連続的なクロックのエッジは、データ信号の対応するビットに従って、データの終わりに達するまで、連続的に進められ、又は、遅らせられる。そして、データ信号が、望ましくは、冗長符号化を提供するよう、繰り返す。
【0144】
かかるコンピュータのクロックシステムの変調は、その接続デバイスとの通信を含むオペレーションを通して行なわれる。したがって、例えば、モデム又はネットワーク接続はクロック信号の位相変調によって影響を受けたデータを伝達する。特に、何らかのこのような通信(例えば、RS−232C、TCP/IP、無線モデム通信等)における信号伝送は、均一に間隔のあいたクロックエッジにおいては生じず、代わりに、その正確な時間的特長が、クロック信号を変調したデータ信号に従って僅かに変化するクロックエッジにおいて生じる。
【0145】
このようなコンピュータから送られた情報を受ける遠隔地コンピュータは、信号のタイミング(例えば、そのエッジの遷移)を検査し、それによって符号化データ信号を識別することができる。
【0146】
遠隔地コンピュータへのチャネルが、完全に近い時間的忠実度を提供する(すなわち、可変遅延をデータの伝播に本質的に導入しない)場合、データは、各エッジ遷移のその予測される公称値からの瞬時のオフセットを単に示すことによって抽出することができ、データ信号の対応する要素は、それによって特定される。データ信号がノイズ状信号によって変調されている場合、同じノイズ状信号による復調によって、オリジナルの情報信号が提供される。(ノイズ信号によるこのような復調は、オリジナルの情報信号がクロック位相シフトのための基底としての役割を果たしている場合には、必要ない。)
【0147】
より典型的には、遠隔地コンピュータへのチャネルは、時間的歪みを導入する。一例にはインターネットがあり、ここでは、異なったパケットが、起点とするコンピュータと受信コンピュータとの間の異なった経路を辿る。このような環境では、多数のデータを、データ信号を抽出するために、抽出して処理しなければならない。例えば、エッジが進んでいるか又は遅れているかを決定するために、所定のビットに対応する数千のエッジ遷移を平均化し又は別の方法で処理して、これによって、ビットを高い統計的確実性で復号しなければならないことがある。したがって、極めて可変の伝送遅延をもった環境(例えば、引用したインターネットの例)では、100ビットのメッセージは、確実なメッセージの復元を保証するために、100万のオーダのエッジ変化における収集及び処理を必要とすることがある。しかしながら、インターネットにおけるデータレートを加速すれば、これは、数秒のデータのみを必要とし得る。
【0148】
例示の的実施形態では、コンピュータのマスタクロックは、位相変調器として構成されており、データ信号によって駆動される位相ロックループ(PLL)回路によって制御される。復号は、位相復調器として構成された他のPLLによって行う。(二つのPLLは、同じ時間基準を共有する必要はない。これは、復号を、平均クロック周期からの瞬時のエッジ遷移の偏差を検査することによって、進めることができるからである。) このようなPLL位相変調器及び復調器の設計は、当業者の通常の能力の範囲内にあるものである。
【0149】
本発明の原理を適用し得る多くの考え得る実施形態を考慮すれば、詳述した実施形態は、単に説明だけのものであり、本発明の範囲を限定するものと捉えられるべきではないことが理解されるはずである。むしろ、特許請求の範囲及びその均等物の範囲及び精神に入るように、全ての実施形態を本発明として請求する。
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1A】線画を使用してグレイスケール効果を達成する先行技術を示す図である。
【図1B】線画を使用してグレイスケール効果を達成する先行技術を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態による、画像に重ねることができるグリッド点の仮想アレイを示す図である。
【図3】図2の実施形態による、画像に重ねることができる領域の仮想アレイを示す図である。
【図4】通過する線画画像からの線を有する図3の抜粋を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態により、図3の線の幅を変化させて、透かし符号化を行うことを示す図である。
【図6】本発明の他の実施形態により、図3の線の位置を変化させて、透かし符号化を行うことを示す図である。
【図7】本発明の他の実施形態によるフォトコピー機のブロック図である。
【図8】本発明の原理を用いる自動金銭出納機の一部を示す図である。
【図9】本発明の原理を用いる装置(例えば、フォトコピー機、スキャナ又はプリンタ)の一部を示す図である。
【図10】本発明の原理を用いる装置(例えば、フォトコピー機、スキャナ又はプリンタ)の一部を示す図である。
【符号の説明】
【0151】
11…自動金銭出納機械、13…光学スキャナ、14…画像セット、16…紙幣、20…コード信号、22…視覚的構造、24…統合検出システム、30…フォトコピー機、32…可視構造、34…紙幣透かしデータ。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷された複数の製品画像を有する紙のカタログであって、該複数の画像の少なくとも一つは、複数ビットのディジタル透かしデータをステガノグラフィ的に符号化するよう僅かに変更されている、該紙のカタログと、
画像データを、前記紙のカタログにおける製品画像から取得するための携帯用デバイスと、
前記画像データにおける前記複数ビットのディジタル透かしデータを復号するためのディジタル透かし検出器と、
を備え、
復号された前記複数ビットのディジタル透かしデータは、不体裁な可視の機械読取可能なバーコードのようなマーキングを用いて前記カタログをマークする必要なしに、前記製品に関する商業取引を開始するために用いることができる、
システム。
【請求項2】
コンピュータネットワークにおけるコンテンツに対してインデックスを設ける方法であって、
自動ウェブクローラーを用いて、コンピュータネットワークにおけるディジタルコンテンツの位置を特定するステップと、
前記コンテンツの少なくともある部分に対して、該コンテンツ中に隠されるように符号化された複数ビットのディジタル透かしデータを検出するステップであって、前記ディジタル透かしの符号化は前記コンテンツを含むディジタルデータへの僅かな変更の形態をとり、該変更は人間が認識し得るには非常に僅かであるがコンピュータ解析によれば復号可能であり、検出された前記ディジタル透かしデータは識別子を含む、該ステップと、
検出された前記ディジタル透かしの識別子をキーとして用いて、ネットワークアクセス可能なデータベースにアクセスするステップと、
前記ネットワークアクセス可能なデータベースから、前記コンテンツに関連する少なくとも一つのメタデータ記述子を取得するステップと、
前記データベースから取得される前記メタデータ記述子を用いて、前記コンテンツを指し示すステップと、
を含む方法。
【請求項3】
前記ネットワークアクセス可能なデータベースから取得される前記メタデータ記述子は、XMLフォーマットにおけるものである、請求項2に記載の方法。


【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−178081(P2008−178081A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−303525(P2007−303525)
【出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【分割の表示】特願2006−130650(P2006−130650)の分割
【原出願日】平成11年4月14日(1999.4.14)
【出願人】(500111792)ディジマーク コーポレイション (25)
【Fターム(参考)】