説明

ディスクアレイ装置、データ切り戻し方法およびデータ切り戻しプログラム

【課題】I/Oに過大な影響を及ぼさず、かつ可用性の低下を抑制することのできるディスクアレイ装置を提供する。
【解決手段】データディスクを複数含まないように収容する複数のディスクエンクロージャ14と、通常時はスペアディスクであり、データディスクのうちいずれかが故障した際に故障したデータディスクに記録されていたデータが復元されて故障したデータディスクの機能を引き継ぐ第1のディスク15と、故障したデータディスクが交換されてスペアディスクとして復旧した第2のディスク15と、第1のディスクとデータディスクのうちのいずれかが同一のディスクエンクロージャに含まれていれば、第1のディスクに復元されたデータを第2のディスクにコピーする制御部12とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はRAIDによって構成されるディスクアレイ装置に関し、特に該ディスクアレイ装置でデータが復元された後の処理に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ディスク装置、もしくは光ディスク装置などのような不揮発媒体によって構成されるディスクアレイ装置では、RAIDを構成し、ユーザのデータを格納する複数のデータディスクの他に、データディスクが故障した場合に代替として使用されるスペアディスクが実装されていることが普通である。
【0003】
そして、ディスクアレイ装置の多くは、データディスクおよびスペアディスクを含む複数のディスク装置の物理的な集合体である複数のディスクエンクロージャを有する。ディスクエンクロージャ単位で、ディスク装置への電力の供給、もしくは冷却装置の動作などが制御される。その場合、複数のデータディスクが複数のディスクエンクロージャを跨ぐようにRAIDを構成するようにすれば、可用性を高め、さらにディスクエンクロージャ単位で電力供給や冷却装置などを制御することにより、省エネルギー効果を得ることもできる。
【0004】
また、データディスクが故障し、スペアディスクに故障したデータディスクのデータが復元されると、このスペアディスクは故障したデータディスクの機能を引き継ぎ、RAIDの構成に含まれる。故障したデータディスクが撤去され、その代わりに新たなディスク装置が設置されると、交換設置された新たなディスク装置はスペアディスクとなる。
【0005】
そのとき、新たなディスク装置に対して、データが復元されてデータディスクとして動作しているスペアディスクから記録データをコピーし、コピー元のディスクを元のスペアディスクに戻し、新たなディスク装置を元のデータディスクとして機能させる場合がある。これをデータの切り戻しという。ディスクアレイ装置は、データが復元された際にこのデータの切り戻しを行うか行わないかを設定可能であることが普通である。データの切り戻しを行う設定を「データ切り戻しモード」、データの切り戻しを行わない設定を「データ切り戻しなしモード」という。
【0006】
なお、ディスクアレイ装置に関連する技術として、次に示す特許文献がある。特許文献1には、残容量の多いディスクからRAIDグループを設定して残容量の偏りを少なくするという技術が開示されている。特許文献2には、データ復元時間を短縮する技術が開示されている。
【0007】
特許文献3には、RAID装置で複数の同一論理ボリュームを異なる物理ディスクユニットに配置するという技術が開示されている。特許文献4には、ディスクアレイで故障ディスク装置のデータを予備ディスク装置に復元し、故障ディスク装置が交換されたら交換後のディスク装置に予備ディスク装置のデータを復元するという技術が開示されている。
【0008】
【特許文献1】特開2006−146680号公報
【特許文献2】特開2007−087039号公報
【特許文献3】特開平10−133826号公報
【特許文献4】特開平11−184643号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ディスクアレイ装置がデータ切り戻しモードである場合、スペアディスクの位置は固定されているが、データディスクの故障が発生するたびにディスク装置1台分のデータが丸ごとコピーされ、大量のデータ伝送が発生することになる。そのため、ディスク装置を接続するI/Oに過大な影響を及ぼす危険性がある。
【0010】
一方、ディスクアレイ装置がデータ切り戻しなしモードである場合、そのようなコピーに伴う大量のデータ伝送は発生しないので、I/Oへの過大な影響はない。しかしながら、このモードでは、故障したデータディスクが交換されると、そこに交換設置された新たなディスク装置がそのままスペアディスクとなるので、データディスクの故障が発生するたびにスペアディスクの位置が変わることになる。
【0011】
そのため、前述のように複数のデータディスクが複数のディスクエンクロージャを跨ぐようにRAIDを構成している場合には、データディスクの故障でスペアディスクの位置が変わることにより、複数のデータディスクが同一のディスクエンクロージャに含まれてしまう場合がありうる。これでは、たとえば該ディスクエンクロージャの電源系統などのトラブルにより、同一のディスクエンクロージャに含まれる複数のデータディスクが同時に故障するというような危険性もあることになる。従って、可用性が低下することになる。
【0012】
一方、前述の各特許文献の中で、特許文献4には前述のデータの切り戻しを行う技術が開示されている。しかしながら、データの切り戻しを行うことによって発生する上述の問題を解決する構成は記載されていない。特許文献1〜3にも、もちろんその問題を解決する構成は記載されていない。
【0013】
本発明の目的は、データディスクの故障が発生した際にI/Oに過大な影響を及ぼさず、かつ可用性の低下を抑制することのできるディスクアレイ装置、データ切り戻し方法およびデータ切り戻しプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明に係るディスクアレイ装置は、RAIDを構成する複数のデータディスクを含むディスクアレイ装置であって、データディスクを複数含まないように収容する複数のディスクエンクロージャと、通常時はスペアディスクであり、データディスクのうちいずれかが故障した際に故障したデータディスクに記録されていたデータが復元されて故障したデータディスクの機能を引き継ぐ第1のディスクと、故障したデータディスクが交換されてスペアディスクとして設置される第2のディスクと、第1のディスクとデータディスクのうちのいずれかが同一のディスクエンクロージャに含まれていれば、第1のディスクに復元されたデータを第2のディスクに複写する制御部とを有することを特徴とする。
【0015】
上記目的を達成するため、本発明に係るデータ切り戻し方法は、RAIDを構成する複数のデータディスクと、データディスクを複数含まないように収容する複数のディスクエンクロージャと、通常時はスペアディスクである第1のディスクとを有するディスクアレイ装置にあって、データの切り戻しを行う方法であって、データディスクのうちいずれかが故障した際に故障したデータディスクに記録されていたデータを第1のディスクに復元して故障したデータディスクの機能を引き継ぐデータ復元工程と、故障したデータディスクから交換された第2のディスクをスペアディスクとするスペアディスク設置工程と、第1のディスクとデータディスクのうちのいずれかが同一のディスクエンクロージャに含まれているか否かを判断する判断工程と、判断工程で第1のディスクとデータディスクのうちのいずれかが同一のディスクエンクロージャに含まれていると判断されれば、第1のディスクに復元されたデータを第2のディスクに複写するデータ複写工程とを有することを特徴とする。
【0016】
上記目的を達成するため、本発明に係るデータ切り戻しプログラムは、RAIDを構成する複数のデータディスクと、データディスクを複数含まないように収容する複数のディスクエンクロージャと、通常時はスペアディスクである第1のディスクとを有するディスクアレイ装置を制御するコンピュータに、データディスクのうちいずれかが故障した際に故障したデータディスクに記録されていたデータを第1のディスクに復元して故障したデータディスクの機能を引き継ぐデータ復元処理と、故障したデータディスクから交換された第2のディスクをスペアディスクとするスペアディスク設置処理と、第1のディスクとデータディスクのうちのいずれかが同一のディスクエンクロージャに含まれているか否かを判断する判断処理と、判断処理で第1のディスクとデータディスクのうちのいずれかが同一のディスクエンクロージャに含まれていると判断されれば、第1のディスクに復元されたデータを第2のディスクに複写するデータ複写処理とを実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、複数のデータディスクが同一のディスクエンクロージャに含まれているか否かを判断し、可用性を保ちつつ必要以上の大量のデータ伝送を発生させない。これによって、データディスクの故障が発生した際にI/Oに過大な影響を及ぼさず、かつ可用性の低下を抑制することのできるという、従来にない優れたディスクアレイ装置、データ切り戻し方法およびデータ切り戻しプログラムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、本発明の実施の形態に係るディスクアレイ10の構成を示す機能ブロック図である。ディスクアレイ10は、I/O受付部11、制御部12、バッファ13、管理テーブル16、および複数のディスクエンクロージャ14を含む。各々のディスクエンクロージャ14は、それぞれ複数の物理ドライブ15を含む。
【0019】
ディスクアレイ10は、ホストコンピュータ20に接続され、ホストコンピュータ20からの読み出し命令(read)、書き込み命令(write)、および停止命令などのI/O要求によりデータの読み書きを行う。その際、ディスクアレイ10とホストコンピュータ20との間の接続は、ファイバチャネル(FC)、Ultra SCSIなど、任意のインターフェイスを適用することができる。
【0020】
I/O受付部11は、ホストコンピュータ20からのI/O要求を受け付け、該I/O要求に基づく各ディスクエンクロージャ14へのデータの読み書きなどの動作を制御部12に実行させ、実行した結果(I/O結果)をホストコンピュータ20に返却する。バッファ13は、未処理のI/O要求およびI/O結果を保持する。また、制御部12は、物理ドライブ15の中に故障したものの有無を検出し、故障を検出した場合には後述のデータ復元の動作を行う。
【0021】
ディスクアレイ10の中で、複数の物理ドライブ15がRAID1もしくはRAID5などを形成する。その場合の各々の物理ドライブ15は、それぞれ別々のディスクエンクロージャ14に含まれる。
【0022】
制御部12は、各々の物理ドライブ15によって構成されるRAID構成を、管理テーブル16に保存する。このRAID構成には、RAIDを構成する各々の物理ドライブ15がどのディスクエンクロージャ14に含まれているかについての情報が含まれる。また、該RAID構成がデータ切り戻しモードであるか否かについての情報も、RAID構成に含まれる。
【0023】
RAIDの規格に基づいて行われるデータ復元の動作、および本発明のデータ切り戻しの動作が行われた場合、RAID構成が変更されることになるが、この場合には制御部12が管理テーブル16に保存されたデータを書き換える。
【0024】
図2は、図1のディスクアレイ10で、データディスクが故障した際に制御部12が行うデータ復元の動作を示すフローチャートである。制御部12をコンピュータによって制御されるものとすれば、図2のフローチャートを該コンピュータによって実行されるプログラムとして構成することができる。
【0025】
動作を開始し、制御部12がデータディスクの故障を検出すると(ステップS101)、まず制御部12は管理テーブル16のRAID構成を参照して、故障したデータディスクに対応するスペアディスクの存在の有無を検出する(ステップS102)。スペアディスクが存在しない場合はそのまま終了し、データ復元の動作は行われない。スペアディスクが存在する場合はステップS103に進む。
【0026】
ステップS102でスペアディスクが存在する場合、制御部12は、故障していない他のデータディスクに記憶されているデータによって、故障したデータディスクのデータをスペアディスク上に復元する(ステップS103)。この動作は、RAIDの規格に基づいて行われる。そして制御部12は、管理テーブル16を参照して、該RAID構成がデータ切り戻しモードであるか否かについて判断する(ステップS104)。データ切り戻しモードであればステップS106に進み、制御部12がデータ切り戻しを実行する。
【0027】
ステップS104でデータ切り戻しモードでない場合、制御部12は、スペアディスク上にデータを復元した結果、1つのディスクエンクロージャに同一のRAIDに含まれる複数のデータディスクが存在する状態になっているか否かを判断する(ステップS105)。複数のデータディスクが存在するディスクエンクロージャが存在しなければ、そのまま終了する。
【0028】
複数のデータディスクが存在するディスクエンクロージャが存在すればステップS106に進み、故障したデータディスクが交換されてスペアディスクとして復旧したことを確認した上で、制御部12がデータ切り戻しを実行する。ここでいうデータ切り戻しとは、コピー元のデータディスクの記録データをコピー先のスペアディスクにコピーし、該スペアディスクをデータディスク、該データディスクをスペアディスクに各々変更する処理である。ステップS106のデータ切り戻しが終了したら、図2のフローチャートに示す処理は終了する。
【0029】
以後、図2で示したデータ復元処理の第1〜第4の実例について説明する。以後の例に示す全てのデータディスクおよびスペアディスクは、図1の物理ドライブ15である。同ように、以後の例に示す全てのディスクエンクロージャは、図1のディスクエンクロージャ14である。図1のI/O受付部11、制御部12、バッファ13、管理テーブル16、およびホストコンピュータ20については、以後の例では記載を省略している。
【0030】
各々のディスクエンクロージャ14をDE0、DE1、DE2…の記号で呼ぶ。また、各々のディスクエンクロージャに含まれる物理ドライブ15を、該物理ドライブ15がデータディスクとスペアディスクのいずれとして動作しているかに応じて、単にデータディスクもしくはスペアディスクという。該物理ドライブ15がデータディスクとして動作している場合はD0、D1、D2…の記号で呼び、該物理ドライブ15がスペアディスクとして動作している場合はS0、S1、S2…の記号で呼ぶ。
【0031】
従って、同一の物理ドライブ15が、動作状態に応じてデータディスクであることもあれば、スペアディスクであることもある。また、それに応じて「D0」「D1」「S0」などの記号も変更されていく。このため、たとえば記号「D0」のデータディスクが記号「S0」のスペアディスクに変更された場合、「データディスク201(D0)がスペアディスク201(S0)となる」などのように表記する。このように、そのディスクがデータディスクであってもスペアディスクであっても、同一の装置には同一の参照番号を付す。
【0032】
図3は、図2で示したデータ復元処理の第1の実例を示す概念図である。図3(A)に示すように、ディスクアレイ10の中で、データディスク201(D0)はディスクエンクロージャ211(DE0)、データディスク202(D1)はディスクエンクロージャ212(DE1)に実装されている。各々別のディスクエンクロージャに実装されているデータディスク201(D0)とデータディスク202(D1)とがRAID1を構成する。またスペアディスク203(S0)はディスクエンクロージャ212(DE1)に実装されている。
【0033】
今、この中でデータディスク201(D0)が故障したものとする。この場合、図3(B)に示すように、データディスク202(D1)に記憶されているデータによって、故障したデータディスク201(D0)のデータがスペアディスク203(S0)上に復元される。そして、制御部12からの警報に基づいて、保守員が故障したデータディスク201(D0)を新しい物理ディスク204と交換して設置する。
【0034】
図3(C)に示すように、ディスクエンクロージャ212(DE1)上でデータを復元されたスペアディスク203(S0)が、データディスク203(D0)として動作する。そして、ディスクエンクロージャ211(DE0)上に交換された新しい物理ディスク204は、スペアディスク204(S0)として動作する。しかし、この状態ではデータディスク203(D0)とデータディスク202(D1)は同じディスクエンクロージャ212(DE1)に実装されていることになる。
【0035】
この場合、制御部12はディスクエンクロージャ212(DE1)上のデータディスク203(D0)の記録データを、ディスクエンクロージャ211(DE0)上のスペアディスク204(S0)に切り戻す。これによって、図3(D)に示すように、データを切り戻されたスペアディスク204(S0)が新たにデータディスク204(D0)となり、データディスク203(D0)はスペアディスク203(S0)となる。これで、RAID1を構成する各データディスクは元通り各々別のディスクエンクロージャに実装されている状態となる。
【0036】
図4は、図2で示したデータ復元処理の第2の実例を示す概念図である。図4(A)に示すように、ディスクアレイ10の中で、データディスク221(D0)はディスクエンクロージャ231(DE0)、データディスク222(D1)はディスクエンクロージャ232(DE1)に実装されている。各々別のディスクエンクロージャに実装されているデータディスク221(D0)とデータディスク222(D1)とがRAID1を構成する。またスペアディスク223(S0)はディスクエンクロージャ233(DE2)に実装されている。
【0037】
今、この中でデータディスク221(D0)が故障したものとする。この場合、図4(B)に示すように、データディスク222(D1)に記憶されているデータによって、故障したデータディスク221(D0)のデータがスペアディスク223(S0)上に復元される。そして、制御部12からの警報に基づいて、保守員が故障したデータディスク221(D0)を新しい物理ディスク224と交換して設置する。
【0038】
図4(C)に示すように、ディスクエンクロージャ233(DE2)上でデータを復元されたスペアディスク223(S0)が、データディスク223(D0)として動作する。そして、ディスクエンクロージャ231(DE0)上に交換された新しい物理ディスク224は、スペアディスク224(S0)として動作する。
【0039】
この状態ではデータディスク223(D0)はディスクエンクロージャ233(DE2)に、データディスク222(D1)はディスクエンクロージャ232(DE1)に実装され、この両者が各々別のディスクエンクロージャに実装されていることになるので、管理テーブル16に記録されたRAID構成がデータ切り戻しモードでない限りはデータの切り戻しは行われない。
【0040】
図5〜6は、図2で示したデータ復元処理の第3の実例を示す概念図である。図5(A)に示すように、ディスクアレイ10の中で、データディスク241(D0)はディスクエンクロージャ251(DE0)、データディスク242(D1)はディスクエンクロージャ252(DE1)、データディスク243(D2)はディスクエンクロージャ253(DE2)、データディスク244(D3)はディスクエンクロージャ254(DE3)、データディスク245(D4)はディスクエンクロージャ255(DE4)に各々実装されている。各ディスクエンクロージャに跨って実装されているデータディスク241(D0)〜245(D4)がRAID5を構成する。またスペアディスク246(S0)はディスクエンクロージャ255(DE4)に実装されている。
【0041】
今、この中でデータディスク244(D3)が故障したものとする。この場合、図5(B)に示すように、データディスク244(D3)を除くデータディスク241(D0)〜245(D4)に記憶されているデータによって、故障したデータディスク244(D3)のデータがスペアディスク246(S0)上に復元される。そして、制御部12からの警報に基づいて、保守員が故障したデータディスク244(D3)を新しい物理ディスク247と交換して設置する。
【0042】
図6(C)に示すように、ディスクエンクロージャ255(DE4)上でデータを復元されたスペアディスク246(S0)が、データディスク246(D3)として動作する。そして、ディスクエンクロージャ254(DE3)上に交換された新しい物理ディスク247は、スペアディスク247(S0)として動作する。しかし、この状態ではデータディスク245(D4)とデータディスク246(D3)は同じディスクエンクロージャ255(DE4)に実装されていることになる。
【0043】
この場合、制御部12はディスクエンクロージャ255(DE4)上のデータディスク246(D3)の記録データを、ディスクエンクロージャ254(DE3)上のスペアディスク247(S0)に切り戻す。これによって、図5(D)に示すように、データを切り戻されたスペアディスク247(S0)が新たにデータディスク247(D3)となり、データディスク246(D3)はスペアディスク246(S0)となる。これで、RAID5を構成する各データディスクは元通りディスクエンクロージャに跨って実装されている状態となる。
【0044】
図7〜8は、図2で示したデータ復元処理の第4の実例を示す概念図である。図7(A)に示すように、ディスクアレイ10の中で、データディスク261(D0)はディスクエンクロージャ271(DE0)、データディスク262(D1)はディスクエンクロージャ272(DE1)、データディスク263(D2)はディスクエンクロージャ273(DE2)、データディスク264(D3)はディスクエンクロージャ274(DE3)、データディスク265(D4)はディスクエンクロージャ275(DE4)に各々実装されている。各ディスクエンクロージャに跨って実装されているデータディスク261(D0)〜265(D4)がRAID5を構成する。またスペアディスク266(S0)はディスクエンクロージャ276(DE5)に実装されている。
【0045】
今、この中でデータディスク264(D3)が故障したものとする。この場合、図7(B)に示すように、データディスク264(D3)を除くデータディスク261(D0)〜265(D4)に記憶されているデータによって、故障したデータディスク264(D3)のデータがスペアディスク266(S0)上に復元される。そして、制御部12からの警報に基づいて、保守員が故障したデータディスク264(D3)を新しい物理ディスク267と交換して設置する。
【0046】
図8(C)に示すように、ディスクエンクロージャ276(DE5)上でデータを復元されたスペアディスク266(S0)が、データディスク266(D3)として動作する。そして、ディスクエンクロージャ274(DE3)上に交換された新しい物理ディスク267は、スペアディスク267(S0)として動作する。
【0047】
この状態ではRAID5を構成するデータディスク261(D0)〜263(D2)および265(D4)と266(D3)が、各々別のディスクエンクロージャに実装されていることになるので、RAID構成がデータ切り戻しモードでない限りはデータの切り戻しは行われない。
【0048】
以上で示したように、本実施の形態に係るディスクアレイ10は、データ切り戻しモードに設定されていない限りは、複数のデータディスクが同一のディスクエンクロージャに含まれているか否かを判断し、含まれている場合に限ってデータの切り戻しを行うように構成されている。従って、複数のデータディスクが同一のディスクエンクロージャに含まれることに伴う可用性の低下を抑制することができる。
【0049】
かつ、複数のデータディスクが同一のディスクエンクロージャに含まれていない場合は可用性の低下が生じないと考えることができるので、データの切り戻しを行わない。これによって、必要以上の大量のデータ伝送を発生させないので、I/Oへの過大な影響を抑制することもできる。
【0050】
なお、RAIDには、RAID1、RAID3、RAID4、RAID5、RAID6、RAID10、RAID30、RAID50、トリプルミラー、DPなどのようなRAIDタイプがあるが、どのRAIDタイプにおいても本実施の形態で説明した処理を適用することが可能である。また、ディスクエンクロージャおよび物理ディスクの台数が多くなっても、本実施の形態で説明した処理を適用することが可能である。
【0051】
これまで本発明について図面に示した特定の実施の形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する限り、これまで知られたいかなる構成であっても採用することができることは言うまでもないことである。
【産業上の利用可能性】
【0052】
RAIDを構成する複数のデータディスクを含むディスクアレイ装置において利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施の形態に係るディスクアレイの構成を示す機能ブロック図である。
【図2】図1のディスクアレイで、データディスクが故障した際に制御部が行うデータ復元の動作を示すフローチャートである。
【図3】図2で示したデータ復元処理の第1の実例を示す概念図である。
【図4】図2で示したデータ復元処理の第2の実例を示す概念図である。
【図5】図2で示したデータ復元処理の第3の実例を示す概念図である。
【図6】図5の続きである。
【図7】図2で示したデータ復元処理の第4の実例を示す概念図である。
【図8】図7の続きである。
【符号の説明】
【0054】
10 ディスクアレイ
11 I/O受付部
12 制御部
13 バッファ
14 ディスクエンクロージャ
15 物理ドライブ
16 管理テーブル
20 ホストコンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
RAIDを構成する複数のデータディスクを含むディスクアレイ装置であって、
前記データディスクを複数含まないように収容する複数のディスクエンクロージャと、
通常時はスペアディスクであり、前記データディスクのうちいずれかが故障した際に前記故障したデータディスクに記録されていたデータが復元されて前記故障したデータディスクの機能を引き継ぐ第1のディスクと、
前記故障したデータディスクが交換されてスペアディスクとして設置される第2のディスクと、
前記第1のディスクと前記データディスクのうちのいずれかが同一の前記ディスクエンクロージャに含まれていれば、前記第1のディスクに復元されたデータを前記第2のディスクに複写する制御部と
を有することを特徴とするディスクアレイ装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1のディスクに復元されたデータを前記第2のディスクに複写した後、前記第2のディスクを前記故障したデータディスクの機能を引き継ぐデータディスクとし、前記第1のディスクをスペアディスクに戻すことを特徴とする請求項1に記載のディスクアレイ装置。
【請求項3】
前記複数のデータディスクによって構成されるRAIDの構成を保存し、前記制御部によって前記構成を書き換えることが可能な管理テーブルが前記制御部に併設されていることを特徴とする、請求項2に記載のディスクアレイ装置。
【請求項4】
前記管理テーブルは前記RAIDがデータ切り戻しモードであるか否かについての情報を含むと共に、
前記RAIDがデータ切り戻しモードであれば、前記第1のディスクと前記データディスクのうちのいずれもが同一の前記ディスクエンクロージャに含まれていなくても、前記制御部が前記第1のディスクに復元されたデータを前記第2のディスクに複写することを特徴とする、請求項3に記載のディスクアレイ装置。
【請求項5】
前記RAIDのRAIDタイプが、RAID1,RAID3,RAID4,RAID5,RAID6,RAID10,RAID30,RAID50,トリプルミラー,DPのうちのいずれか1つ以上を含むことを特徴とする、請求項2に記載のディスクアレイ装置。
【請求項6】
RAIDを構成する複数のデータディスクと、前記データディスクを複数含まないように収容する複数のディスクエンクロージャと、通常時はスペアディスクである第1のディスクとを有するディスクアレイ装置にあって、データの切り戻しを行う方法であって、
前記データディスクのうちいずれかが故障した際に前記故障したデータディスクに記録されていたデータを前記第1のディスクに復元して前記故障したデータディスクの機能を引き継ぐデータ復元工程と、
前記故障したデータディスクから交換された第2のディスクをスペアディスクとするスペアディスク設置工程と、
前記第1のディスクと前記データディスクのうちのいずれかが同一の前記ディスクエンクロージャに含まれているか否かを判断する判断工程と、
前記判断工程で前記第1のディスクと前記データディスクのうちのいずれかが同一の前記ディスクエンクロージャに含まれていると判断されれば、前記第1のディスクに復元されたデータを前記第2のディスクに複写するデータ複写工程と
を有することを特徴とするデータ切り戻し方法。
【請求項7】
前記データ複写工程の後、前記第2のディスクを前記故障したデータディスクの機能を引き継ぐデータディスクとし、前記第1のディスクをスペアディスクに戻す機能引き継ぎ工程を設けたことを特徴とする、請求項6に記載のデータ切り戻し方法。
【請求項8】
前記判断工程が、前記RAIDがデータ切り戻しモードであるか否かを確認する工程を含み、
前記RAIDがデータ切り戻しモードであれば、前記データ複写工程が、前記第1のディスクと前記データディスクのうちのいずれもが同一の前記ディスクエンクロージャに含まれていなくても、前記第1のディスクに復元されたデータを前記第2のディスクに複写することを特徴とする、請求項7に記載のデータ切り戻し方法。
【請求項9】
RAIDを構成する複数のデータディスクと、前記データディスクを複数含まないように収容する複数のディスクエンクロージャと、通常時はスペアディスクである第1のディスクとを有するディスクアレイ装置を制御するコンピュータに、
前記データディスクのうちいずれかが故障した際に前記故障したデータディスクに記録されていたデータを前記第1のディスクに復元して前記故障したデータディスクの機能を引き継ぐデータ復元処理と、
前記故障したデータディスクから交換された第2のディスクをスペアディスクとするスペアディスク設置処理と、
前記第1のディスクと前記データディスクのうちのいずれかが同一の前記ディスクエンクロージャに含まれているか否かを判断する判断処理と、
前記判断処理で前記第1のディスクと前記データディスクのうちのいずれかが同一の前記ディスクエンクロージャに含まれていると判断されれば、前記第1のディスクに復元されたデータを前記第2のディスクに複写するデータ複写処理と
を実行させることを特徴とするデータ切り戻しプログラム。
【請求項10】
前記データ複写処理の後、前記第2のディスクを前記故障したデータディスクの機能を引き継ぐデータディスクとし、前記第1のディスクをスペアディスクに戻す機能引き継ぎ処理を実行させることを特徴とする、請求項9に記載のデータ切り戻しプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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