説明

ディスク信号解析装置

【課題】記録補償、再生信頼性に優れ、かつPRML処理に見合った自由度のあるディスク信号解析装置を提供することを目的にする。
【解決する手段】本発明は、アナログ再生信号のデジタル値が入力され、理想等化データに適応的に等化させた適応等化データおよび等化誤差を出力する適応等化部と、適応等化データが入力され、ビタビアルゴリズムを用いて復号するビタビ復号部と、所定の抽出条件に基づいてビタビ復号部が復号したデータを検索し、この検索したデータに関連するデータの、等化誤差を抽出するデータ抽出部と、抽出された等化誤差が入力され、この等化誤差の統計値を演算して出力する統計演算部と、統計演算部が出力した統計値を表示する表示部と、を具備したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクの信号を解析する装置に関し、特にPRML(Partial Response Maximum Likelihood )信号処理で復号が行われる次世代高密度光ディスクのライトストラテジ解析に用いて好適なディスク信号解析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図11に従来のディスク信号解析装置の構成を示す。なお、点線のブロックは物理メモリを表している。図11において、光ディスクの再生信号は時間計測部11に入力される。時間計測部11は計数カウンタ、T/V変換回路、PLL回路などを内蔵し、入力された再生信号を2値化してその符号長(パルス幅)を測定する。この符号長は符号長メモリ12に格納される。抽出条件設定部13は再生信号の一部を抽出する抽出条件を設定する。この設定は図示しないキースイッチからのキー入力によって行われる。設定された抽出条件は、抽出条件メモリ14に格納される。
【0003】
データ抽出部15はソフトウエアなどで構成され、抽出条件メモリ14に格納された抽出条件が入力される。データ抽出部15は、符号長メモリ12に格納されたデータを検索し、入力された抽出条件に合致したデータを抽出して、抽出データメモリ16に格納する。
【0004】
統計演算部17はソフトウエアあるいはDSP(Digital Signal Processor)で構成され、抽出データメモリ16に格納されたデータの統計値を演算して統計値メモリ18aに格納する。また、抽出データのヒストグラムを演算してヒストグラムメモリ18bに格納する。表示部19は、この統計値メモリ18a、ヒストグラムメモリ18bに格納されたデータをCRTあるいは液晶ディスプレイに表示する。
【0005】
次に、このディスク信号解析装置の動作を図12フローチャートにより説明する。図12において、工程(12−1)で時間計測部11により時間計測を行う。時間計測部11は入力された再生信号を2値化して符号長(パルス幅)を測定し、測定結果を符号長メモリ12に格納する。図14(A)は符号長メモリ12の格納値の例であり、110.25nsec、111.50nsec・・・・・のデータが格納されている。
【0006】
図13は光ディスクのトラックと2値化信号の関係を示したものである。図13(A)は光ディスク表面に形成されたトラックであり、黒く塗りつぶした部分がトラックマークである。光ピックアップでこのトラックを読みとることにより、同図(B)の再生信号が得られる。時間計測部11は、この再生信号を一定のスレッシュホールドレベルでスライスすることにより、(C)に示す2値化信号に変換し、この2値化信号の符号長を測定する。
【0007】
時間計測が終了すると、工程(12−2)で、例えば“3Tマーク直後スペース”の抽出条件を設定する。この抽出条件は、3Tマーク(符号パターン“111”)の直後のスペース(“0”)を解析するように指示するものである。DVDではT=37nsecなので、3Tマークの長さは約92.5nsec〜129.5nsecになる。
【0008】
次に、工程(12−3)で抽出条件に基づいて符号長メモリ12を検索し、抽出条件に合致したデータを抽出して抽出データメモリ16に格納する。図14(B)は抽出データメモリ16の格納値の例であり、3T直後のスペースのデータが格納される。この例では111.50nsec、185.80nsec・・・・・の値が順次格納されている。
【0009】
次に、工程(12−4)で統計演算処理を行う。すなわち、統計演算部17は抽出データメモリ16に格納されている抽出データを符号長別に分類し、符号長毎に平均値、標準偏差を算出し、統計値メモリ18aに格納する。また、抽出データのヒストグラムを演算し、ヒストグラムメモリ18bに格納する。図14(C)は統計値メモリ18aの格納値の例である。この例では、符号長毎に平均値と標準偏差が格納されている。図14(D)はヒストグラムメモリ18bの格納値をグラフ化したものである。3Tマーク直後から14Tまでのスペースの符号長分布が格納されている。なお、縦点線は理想符号長を表している。
【0010】
そして、工程(12−5)で結果の表示を行う。表示部19は統計値メモリ18a、ヒストグラムメモリ18bに格納されているデータを読み出し、図14(C)のようなリスト形式や同図(D)のようなグラフ形式で表示する表示データを作成する。この表示データはCRTや液晶ディスプレイに表示される。最後に、工程(12−6)で解析処理を続行するかどうかを判定し、続行するときは工程(12−2)に戻って、3Tマーク直前のスペース、14Tマーク直後のスペース等の新たな抽出条件を設定し、続行しないときは終了する。
【0011】
図15に符号間干渉の例を示す。(A)はマーク、(B)はこのマークによって生成した2値化信号である。記録マークの熱拡散によってマークの大きさが変化し、その結果2値化信号にエッジシフトが生じる。
【0012】
図14(D)のヒストグラムを用いて、光ディスク装置のライトストラテジを決定することができる。この図ではヒストグラムが各3T〜14Tの理想符号長(縦点線)に対して右側にシフトしている。このため、2Tマークのレーザ照射時間を長くするか、エッジ際でのレーザパワーを強めるなどのライトストラテジを決定し、符号間干渉を低減させる。また、標準偏差の値によって別のライトストラテジを検討する。
【0013】
光ディスクの信号を高精度で解析するためには、時間を高分解能で測定しなければならない。時間を高分解能で測定する技術、および時間測定回路を用いてジッタを測定する技術は特許文献1および特許文献2に記載されている。
【0014】
符号間干渉を解析し、その結果を直感的に把握できるようにして表示し、効率的に解析を行うことができる符号間干渉解析装置は、特許文献3に記載されている。この解析装置を用いることにより、ライトストラテジを解析することができる。
【0015】
回路規模が小さくて解析時間が早く、種々のPRMLシステムに適用が可能であり、かつエラーが大きい場合でもヒストグラム解析を適切に行うことができるディスク信号解析装置は、特許文献4に記載されている。
【0016】
次世代光ディスクの信号評価について、PRML復号系との相関が得られるPRMLアナライザは特許文献5に記載されている。
【特許文献1】特開平7−27880号公報
【特許文献2】特開平10−282165号公報
【特許文献3】特開2001−126264号公報
【特許文献4】特開2003−203429号公報
【特許文献5】特開2005−182969号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかし、このようなディスク信号解析装置には、次のような課題があった。次世代の高密度光ディスクでは、光学的な限界により高域における再生波形の信号振幅レベルが小さくなる。このことを図16を用いて説明する。図16(A)は従来型光ディスクの再生信号のアイパターン、(B)は次世代高密度光ディスクの再生信号のアイパターンである。次世代高密度光ディスクの再生信号の振幅は、光学的な限界により、高域における再生波形の信号振幅レベルが小さくなる。そのため、2値化して復号する際のジッタが増大してしまうという課題があった。
【0018】
このことを図17を用いて説明する。図17(A)は次世代高密度光ディスクのトラック、(B)はその再生信号、(C)は適当なスレッシュホールドレベルで2値化した信号である。再生信号は図13に比べて品質が悪く、かつ振幅も小さいので、2値化して復号する際にジッタが増大してしまう。そのため、図11に示した従来の光ディスク解析装置でライトストラテジ解析を行うと、最適な記録制御を行うことができない。
【0019】
そのため、次世代高密度光ディスクでは再生信頼性を向上させるためPRML復号を採用し、高密度化と信頼性向上の両立を図っている。しかし、2値化復号でないためライトストラテジ解析の方法が確立されておらず、記録型または1回記録型ディスクの信頼性を高めることができないという課題もあった。
【0020】
従って本発明の目的は、PRML復号が採用される次世代高密度光ディスクのライトストラテジ解析に用いることができ、記録補償、再生信頼性に優れ、かつPRML処理に見合った自由度のあるディスク信号解析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、
アナログ再生信号をデジタル値に変換するAD変換部と、
前記AD変換部で変換されたデジタル値が入力され、理想等化データに適応的に等化させた適応等化データ、および理想等化データと適応等化データの差である等化誤差を出力する適応等化部と、
前記適応等化データが入力され、ビタビアルゴリズムを用いて復号するビタビ復号部と、
所定の抽出条件に基づいて前記ビタビ復号部が復号したデータを検索し、この検索したデータに関連するデータの、前記等化誤差を抽出するデータ抽出部と、
前記抽出された等化誤差が入力され、この等化誤差の統計値を演算して出力する統計演算部と、
前記統計演算部が出力した統計値を表示する表示部と、
を具備したものである。信頼性および解析の自由度が高いディスク信号解析装置が得られる。
【0022】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、
前記データ抽出部は、検索した全データの等化誤差を抽出するようにしたものである。検索位置全体の等化誤差データが得られる。
【0023】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明において、
前記データ抽出部は、検索した全データの等化誤差を抽出して、その平均値を出力するようにしたものである。検索位置の平均的な等化誤差データが得られる。
【0024】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の発明において、
前記データ抽出部は、検索した全データに隣接するデータの等化誤差を抽出するようにしたものである。検索位置に隣接する場所の等化誤差データが得られる。
【0025】
請求項5記載の発明は、請求項1記載の発明において、
前記データ抽出部は、検索した全データの等化誤差を抽出し、レベル毎に分類して出力するようにしたものである。検索位置全体の、レベル毎の等化誤差データが得られる。
【0026】
請求項6記載の発明は、
アナログ再生信号をデジタル値に変換するAD変換部と、
前記AD変換部で変換されたデジタル値が入力され、理想等化データに適応的に等化させた適応等化データを出力する適応等化部と、
前記適応等化データが入力され、ビタビアルゴリズムを用いて復号すると共に、差メトリックを出力するビタビ復号部と、
所定の抽出条件に基づいて前記ビタビ復号部が復号したデータを検索し、この検索したデータに関連するデータの差メトリックを抽出するデータ抽出部と、
前記抽出された差メトリックが入力され、この差メトリックの統計値を演算して出力する統計演算部と、
前記統計演算部が出力した統計値を表示する表示部と、
を具備したものである。信頼性および解析の自由度が高いディスク信号解析装置が得られる。
【0027】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の発明において、
前記データ抽出部は、検索したデータ中の、抽出条件に定められた位置の差メトリックを抽出するようにしたものである。検索データの任意位置の差メトリックデータが得られる。
【0028】
請求項8記載の発明は、請求項6記載の発明において、
前記データ抽出部は、検索したデータに隣接する位置の差メトリックを抽出するようにしたものである。検索位置に隣接する位置の差メトリックデータが得られる。
【0029】
請求項9記載の発明は、請求項1若しくは請求項8いずれかに記載の発明において、
前記統計演算部は、平均値および標準偏差を統計値として出力するようにしたものである。抽出位置のデータの様子を、即座に把握することができる。
【0030】
請求項10記載の発明は、請求項1若しくは請求項9記載の発明において、
前記表示部は、前記データ抽出部が抽出したデータの、符号長別ヒストグラムを作成して表示するようにしたものである。符号長別のデータの分布がわかる。
【0031】
請求項11記載の発明は、請求項1若しくは請求項10いずれかに記載の発明において、
前記統計演算部は符号長別に統計値を演算し、前記表示部はこの統計値をリスト形式で表示するようにしたものである。符号長別のデータの分布がわかる。
【0032】
請求項12記載の発明は、
アナログ再生信号をデジタル値に変換するAD変換部と、
前記AD変換部で変換されたデジタル値を理想等化データに適応的に等化させた適応等化データを出力する適応等化部と、
前記適応等化データが入力され、ビタビアルゴリズムによって復号するビタビ復号部と、
前記ビタビ復号部によって復号されたデータが入力され、このデータに誤り訂正処理を施してオリジナルデータを復元する誤り訂正部と、
所定の抽出条件に基づいて前記ビタビ復号部が復号したデータを検索し、この検索したデータに関連するデータと、前記誤り訂正部が出力したオリジナルデータとを比較してエラー率を出力するエラー率算出部と、
前記エラー率算出部が算出したエラー率を表示する表示部と、
を具備したものである。信頼性および解析の自由度が高いディスク信号解析装置が得られる。
【0033】
請求項13記載の発明は、
アナログ再生信号をデジタル値に変換するAD変換部と、
前記AD変換部で変換されたデジタル値を理想等化データに適応的に等化させた適応等化データを出力する適応等化部と、
前記適応等化データが入力され、ビタビアルゴリズムによって復号するビタビ復号部と、
前記ビタビ復号部が復号したデータに対応するオリジナルデータを読み込む外部データ取り込み部と、
所定の抽出条件に基づいて前記ビタビ復号部が復号したデータを検索し、この検索したデータに関連するデータと前記外部データ取り込み部が読み込んだオリジナルデータとを比較してエラー率を出力するエラー率算出部と、
前記エラー率算出部が算出したエラー率を表示する表示部と、
を具備したものである。信頼性および解析の自由度が高いディスク信号解析装置が得られる。
【0034】
請求項14記載の発明は、請求項12若しくは請求項13記載の発明において、
前記エラー率算出部は、検索したデータの全データを用いてエラー率を算出するようにしたものである。検索位置全体のエラー率が得られる。
【発明の効果】
【0035】
以上説明したことから明らかなように、本発明によれば次のような効果がある。
ディスク再生信号から適応等化データを求め、この適応等化データをビタビ復号によって復号し、この復号したデータを所定の抽出条件に基づいて検索して、検索位置に関連する位置の等化誤差、差メトリック、エラー率選択して抽出し、表示するようにした。また、等化誤差、差メトリックの統計値を演算表示し、また抽出したデータのヒストグラムを作成、表示するようにした。
【0036】
等化誤差、差メトリック、エラー率を選択して解析パラメータとして扱えるので、信頼性が高く、かつ解析の自由度が高いディスク信号解析装置が得られるという効果がある。次世代高密度光ディスクの再生方式として採用されるPRML方式を用いた光ディスクドライブのライトストラテジ解析に用いて特に効果が大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下本発明を図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明に係るディスク解析装置の一実施例を示す構成図である。なお、図11と同じ要素には同一符号を付し、説明を省略する。また、図11と同じように、点線のブロックは物理メモリを表す。
【0038】
図1において、20はディスク信号解析装置であり、抽出条件設定部13、抽出条件メモリ14、AD変換部21、適応等化部22、ビタビ復号部23、等化誤差メモリ24、差メトリックメモリ25、復号データメモリ26、データ抽出部27、抽出データメモリ28、統計演算部29、演算データメモリ31および表示部32で構成される。
【0039】
AD変換部21には光ディスクの再生信号が入力される。AD変換部21はこの再生信号をデジタル値に変換する。適応等化部22にはAD変換部21によって変換されたデジタル値が入力される。適応等化部22はこのデジタル値に適応等化処理を施し、適応等化データを出力する。
【0040】
ビタビ復号部23には、適応等化部22が出力する適応等化データが入力される。ビタビ復号部23はこの適応等化データから、ビタビアルゴリズムで2値信号に復号して出力する。この復号された2値信号は適応等化部22にフィードバックされる。
【0041】
等化誤差メモリ24には適応等化データの誤差が格納される。この誤差は適応等化部22が適応処理を行う過程で算出される。差メトリックメモリ25はビタビ復号部23が復号過程で算出する差メトリック(SAMとも呼ばれる)を格納する。差メトリックは、次点パスメトリックと採択パスメトリックの差をビット毎に算出したものである。ビタビ復号および差メトリック(SAM)については特許文献4に記載されているので、詳細を省略する。
【0042】
復号データメモリ26はビタビ復号部23が出力する2値信号が格納される。抽出条件は抽出条件設定部13によって設定され、抽出条件設定メモリ14に格納される。
【0043】
データ抽出部27は、抽出条件メモリ14に格納された抽出条件に合致するデータを復号データメモリ26から検索し、等化誤差メモリ24、差メトリックメモリ25および復号データメモリ26から該当するデータを抽出する。この抽出されたデータは抽出データメモリ28に格納される。
【0044】
統計演算部29は抽出データメモリ28に格納されたデータに所定の統計演算処理を施す。この統計演算結果は演算データメモリ31に格納される。表示部32は、演算データメモリ31および抽出データメモリ28に格納されたデータを見易い形式に変換した表示データを作成する。この表示データは図示しないCRTあるいは液晶ディスプレイに表示される。
【0045】
次に、図2フローチャートに基づいてこの実施例の動作を説明する。図2において、工程(2−1)でAD変換部21は再生信号をデジタル値に変換して、適応等化部22に出力する。次に、工程(2−2)で適応等化部22は入力されたデジタル値に適応等化処理を施して適応等化データを出力する。すなわち、光ピックアップの光学的な伝達応答特性に近似させるように、LMS(Least Mean Square)アルゴリズムなどを用いて等化処理を行う。
【0046】
一般的に光ディスクの特性はPR(121)、PR(1221)とよばれる応答特性に近いが、本実施例においてはPR(1221)の応答特性を有しているとする。適応等化部22は、出力波形をPR(1221)における7値の理想等化データに近づけるように適応的に動作し、適応等化データを出力する。このとき、理想等化データと適応等化データの誤差(“理想等化データ”−“適応等化データ”)である等化誤差を算出し、この等化誤差を等化誤差メモリ24に格納する。
【0047】
次に、工程(2−3)でビタビ復号処理を行う。ビタビ復号部23は、適応等化データからビタビアルゴリズムを用いて2値化復号を行い、復号過程で算出される差メトリックデータを差メトリックメモリ25に、復号データを復号データメモリ26に格納する。
【0048】
次に、工程(2−4)でデータ抽出処理を行う。まず抽出条件設定部13で抽出条件を設定して抽出条件メモリ14に格納する。データ抽出部27は抽出条件メモリ14に格納された抽出条件に合致するデータを復号データメモリ26から検索し、等化誤差メモリ24、差メトリックメモリ25から該当するデータを抽出する。
【0049】
次に、工程(2−5)で統計演算処理を行う。統計演算部29は、抽出データメモリ28に格納されているデータを読み出し、平均値、標準偏差を演算して、図5(A)のような形式で演算データメモリ31に格納する。次に、工程(2−6)で演算データメモリ31等に格納されたデータを表示する。そして、工程(2−7)で解析を続行するかどうかを判断し、続行する場合は工程(2−4)に戻って新たな抽出条件を設定し、続行しない場合は終了する。
【0050】
図3は適応等化した出力波形、復号データ、理想等化データ、適応等化データ、等化誤差、差メトリックを1クロックごとに示した図である。(A)は復号データメモリ26に格納されている復号データ、(B)は理想等化データ、(C)は適応等化部22が算出した適応等化データ、(D)は理想等化データと適応等化データの差である等化誤差、(E)はビタビ復号部23が算出した差メトリックである。
【0051】
上段は理想等化データと適応等化データをグラフ化したものであり、白丸(○)は理想等化データを、黒丸(●)は適応等化データを表している。適応等価部22は、適応等化データ(●)を理想等化データ(○)に近づけるように、適応的に動作する。なお、レベルL0〜L6は、それぞれ7値の理想等化データ0〜6に対応している。また、(E)の差メトリックの欄の∞は、次世代光ディスクで採用されている1−7変調符号規則からくるもので、ビタビ復号時のパスメトリックが片側しか存在しない点を意味している。
【0052】
抽出条件を“4Tマークの全等化誤差”と設定すると、データ抽出部27は復号データから4T(“1111”)を検索し、この4T全ての等化誤差を抽出データメモリ28に格納する。図3では41の部分(データ:0.28, 0.26, 0.11, 0.20)が抽出される。データ抽出部27は復号データメモリ26に格納された全データを検索して、4T部分の等化誤差を全て抽出して、抽出データメモリ28に格納する。抽出結果の一例を図4(A)に示す。
【0053】
抽出条件を“4Tマークの等化誤差平均”と設定すると、データ抽出部27は復号データから4T(“1111”)を検索し、検索した全ての等化誤差の平均値を抽出データメモリ28に格納する。図3では、41部分のデータ(0.28, 0.26, 0.11, 0.20)の平均値0.21を抽出データメモリ28に格納する。データ抽出部27は復号データメモリ26に格納された全データを検索して、4T部分の等化誤差の平均値を抽出データメモリ28に格納する。図4(B)に抽出結果の一例を示す。
【0054】
抽出条件を“4Tマーク直後の等化誤差”と設定すると、データ抽出部27は復号データから4Tマーク(“1111”)を検索し、その直後のデータ0.08(図3の42)を抽出して抽出データメモリ28に格納する。抽出結果の一例を図4(C)に示す。なお、直後だけでなく、隣接する位置であってもよい。
【0055】
抽出条件を“4Tマークの後に連続する3Tスペースのレベル別の等化誤差”と設定すると、データ抽出部27は復号データメモリ26から“1111000”を検索し、その等化誤差(図3の43)をレベル別に分類して抽出データメモリ28に格納する。抽出結果の一例を図4(D)に示す。
【0056】
抽出条件を“2Tスペース後の2Tマークの立ち上がりの差メトリック”と設定すると、データ抽出部27は復号データメモリ26から“0011”を検索し、その立ち上がり(最初の“1”)の差メトリック(図3の44、データ:11.04, 9.79)を抽出して、抽出データメモリ28に格納する。抽出結果の一例を図4(E)に示す。なお、立ち上がりだけでなく、検索条件に合致したデータの任意の位置を指定するようにしてもよい。なお、検索条件、詳細条件は、上記で説明した以外にも、種々設定することができる。
【0057】
次に、統計演算部29および表示部32の動作を説明する。統計演算部29は、抽出データメモリ28に格納されたデータの平均値および標準偏差を演算し、演算データメモリ31に格納する。図5に統計処理の一例を示す。図5(A)は、詳細条件が“全等化誤差”の統計処理の一例である。平均値aveと標準偏差σが計算される。同図(B)は詳細条件が“レベル別等化誤差”の統計処理の一例である。レベル別に平均値aveと標準偏差σが計算される。表示部32はこれらの値をテキスト形式で表示する。
【0058】
図6(A)は詳細条件を“2T〜9Tの全等化誤差”としたときの、演算データメモリ31に格納される値および表示部32が表示する表示の一例である。下段は符号長(T)毎の平均値aveと標準偏差σの値、上段は符号長毎のヒストグラムである。ヒストグラムの点線は誤差ゼロの点を示している。
【0059】
データ抽出部27は符号長毎に抽出条件に合致するデータを検索して、抽出データメモリ28に格納する。統計演算部29は抽出データメモリ28を読み出し、図6(A)の下段のように、符号長毎に平均値と標準偏差を算出する。表示部32はこれら平均値と標準偏差を表示すると共に、抽出データメモリ28を参照して、符号長毎にヒストグラムを作成して表示する。このヒストグラムの形状、理想値からのシフト量、分散量などから、符号長に応じた最適なライトストラテジを検討することができる。
【0060】
図6(B)は、抽出条件として“4Tマーク3Tスペースのレベル別等化誤差”を設定したときの結果であり、レベル別に平均値、標準偏差およびヒストグラムが計算され、表示される。右側が平均値aveと標準偏差σの計算値、左側がヒストグラムである。黒く塗りつぶした51は4Tマーク3Tスペースの条件で抽出したヒストグラム、実線52は全データのヒストグラムであり、点線は誤差ゼロ点を表す。
【0061】
図6(C)は、抽出条件として“2Tスペース2Tマークの立ち上がりの差メトリック”とした場合の結果であり、横軸は差メトリック(SAM)である。黒く塗りつぶした部分53は“2Tスペース2Tマーク”の条件で抽出したデータのヒストグラム、実線54は差メトリックの理想値が10となる全データのヒストグラムである。抽出データのヒストグラム53は、全体のヒストグラム54よりゼロ側にシフトしているので、差メトリックを理想10に近づけるようにライトストラテジの最適化を行えばよい。aveは差メトリックの平均値、σは標準偏差である。
【0062】
なお、図6(C)では平均値、標準偏差およびヒストグラムを1つとしたが、抽出したデータを符号長で分類し、符号長毎に平均値、標準偏差、ヒストグラムを求めるようにしてもよい。
【0063】
また、図1実施例では等化誤差メモリ24、差メトリックスメモリ25の両方を具備し、等化誤差、差メトリックスの両方を用いるようにしたが、図6の(B)、(C)からわかるように、等化誤差、差メトリックスのどちらを用いてもライトストラテジを行うことができる。従って、等化誤差メモリ24、差メトリックスメモリ25のどちらか一方を具備するようにしてもよい。
【0064】
図7に本発明の他の実施例を示す。なお、図1と同じ要素には同一符号を付し、説明を省略する。図7において、60はディスク信号解析装置であり、抽出条件設定部13、抽出条件メモリ14、AD変換部21、適応等化部22、ビタビ復号部23、復号データメモリ26、誤り訂正部61、オリジナルデータメモリ62、外部データ取り込み部63、エラー率算出部64、エラー率メモリ65および表示部32で構成される。
【0065】
誤り訂正部61にはビタビ復号部23の出力が入力される。誤り訂正部61は、入力されたデータからリードソロモン積符号のアルゴリズム等を用いて誤り訂正を行い、復号データと比較するためのリファレンスとなるオリジナルデータを生成する。このオリジナルデータはオリジナルデータメモリ62に格納される。
【0066】
外部データ取り込み部63は、ファイルあるいはイーサネット(登録商標)等の通信手段を用いて、復号データと比較するためのリファレンスとなるオリジナルデータを取り込み、オリジナルデータメモリ62に格納する。ファイルは外部接続のハードディスクや光ディスク、あるいはUSBメモリに格納する。
【0067】
エラー率算出部64には抽出条件メモリ14に格納された抽出条件が入力される。エラー率算出部64は、復号データメモリ26とオリジナルデータメモリ62に格納されたデータのうち、抽出条件に合致したデータを比較して、一致しない割合であるエラー率を計算する。このエラー率はエラー率メモリ65に格納される。表示部32はエラー率メモリ65の内容を表示する。
【0068】
図8フローチャートを用いて、この実施例の動作を説明する。図8において、工程(8−1)で再生信号をデジタル値に変換し、工程(8−2)で適応等化部22を用いて適応等化処理を行う。そして、工程(8−3)でビタビ復号部23を用いて復号処理を行い、復号データを復号データメモリ26に格納すると共に、誤り訂正部61に出力する。ここまでの工程は、図2とほぼ同じである。
【0069】
次に、工程(8−4)で誤り訂正処理を行う。誤り訂正部61はビタビ復号部23から入力されたデータから、リードソロモン積符号のアルゴリズム等を用いて誤り訂正を行ってオリジナルデータを生成し、オリジナルデータメモリ62に格納する。
【0070】
次に、工程(8−5)でエラー率を算出する。エラー率算出の前に、抽出条件設定部13によって抽出条件を設定して、抽出条件メモリ14に格納する。エラー率算出部64は、抽出条件メモリ14に格納された抽出条件に合致するデータを復号データメモリ26から検索し、このデータとオリジナルデータメモリ62に格納されたデータを比較してエラー率を算出し、エラー率メモリ65に格納する。図10(A)にエラー率の格納例を示す。
【0071】
次に、工程(8−6)でエラー率を表示する。表示部32は、例えば図10(B)のような形式でエラー率を表示する。最後に、工程(8−7)で解析を続行するかどうかを判定し、続行するときは工程(8−5)に戻り、続行しないときは終了する。
【0072】
図9は、この実施例の復号データとオリジナルデータを1クロック毎に示したものである。図9において、(A)はビタビ復号部23が出力する復号データ、(B)はオリジナルデータであり、黒丸(●)は適応等化部22が出力する適応等化データを、白丸(○)は理想等化データを表す。
【0073】
抽出条件を“2Tマークに連続する4Tスペースのエラー率”と設定されているとすると、71が抽出範囲になる。この範囲のデータ数は6個、誤りデータは1個なので、エラー率は17%になる。図9はデータの一部であり、実際には“2Tマークに連続する4Tスペース”を満たす領域は他にもあるので、エラー率は異なった値になる。
【0074】
なお、図7では誤り訂正部61でオリジナルデータを再構成する構成と、外部データ取り込み部63からオリジナルデータを取り込む構成の両方を具備するものとしたが、実際にはどちらか一方があればよい。
【0075】
これらの実施例では、下記の4つの手法でライトストラテジを行うための情報を提供する。
(1)等化誤差の統計値/ヒストグラムを用いる。
(2)差メトリックの統計値/ヒストグラムを用いる。
(3)オリジナルデータと復号データを比較したエラー率を用い、復号データから誤り訂正でオリジナルデータを作成する。
(4)オリジナルデータと復号データを比較したエラー率を用い、外部からオリジナルデータを入力する。
これらの手法は単独で用いてもよく、複数個組み合わせて使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の一実施例を示す構成図である。
【図2】本発明の一実施例の動作を示すフローチャートである。
【図3】データの一例を示す特性図である。
【図4】各メモリの格納される値の例を示した図である。
【図5】各メモリの格納される値の例を示した図である。
【図6】統計値、ヒストグラムの表示を例示した図である。
【図7】本発明の他の実施例を示す構成図である。
【図8】本発明の他の実施例の動作を示すフローチャートである。
【図9】データの一例を示す特性図である。
【図10】エラー率の格納例、表示例を示した図である。
【図11】従来のディスク信号解析装置の構成図である。
【図12】従来のディスク信号解析装置の動作を示すフローチャートである。
【図13】光ディスクのトラックと再生信号の関係を示した波形図である。
【図14】各メモリの格納例を示した図である。
【図15】符号間干渉によるエッジシフトが発生することを説明する図である。
【図16】光ディスクの再生信号のアイパターンである。
【図17】ジッタが増大することを説明する図である。
【符号の説明】
【0077】
13 抽出条件設定部
14 抽出条件メモリ
20、60 ディスク信号解析装置
21 AD変換部
22 適応等化部
23 ビタビ復号部
24 等化誤差メモリ
25 差メトリックメモリ
26 復号データメモリ
27 データ抽出部
28 抽出データメモリ
29 統計演算部
31 演算データメモリ
32 表示部
41〜44 抽出したデータ
51〜54 ヒストグラム
61 誤り訂正部
62 オリジナルデータメモリ
63 外部データ取り込み部
64 エラー率算出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アナログ再生信号をデジタル値に変換するAD変換部と、
前記AD変換部で変換されたデジタル値が入力され、理想等化データに適応的に等化させた適応等化データ、および理想等化データと適応等化データの差である等化誤差を出力する適応等化部と、
前記適応等化データが入力され、ビタビアルゴリズムを用いて復号するビタビ復号部と、
所定の抽出条件に基づいて前記ビタビ復号部が復号したデータを検索し、この検索したデータに関連するデータの、前記等化誤差を抽出するデータ抽出部と、
前記抽出された等化誤差が入力され、この等化誤差の統計値を演算して出力する統計演算部と、
前記統計演算部が出力した統計値を表示する表示部と、
を具備したことを特徴とするディスク信号解析装置。
【請求項2】
前記データ抽出部は、検索した全データの等化誤差を抽出するようにしたことを特徴とする請求項1記載のディスク信号解析装置。
【請求項3】
前記データ抽出部は、検索した全データの等化誤差を抽出して、その平均値を出力するようにしたことを特徴とする請求項1記載のディスク信号解析装置。
【請求項4】
前記データ抽出部は、検索した全データに隣接するデータの等化誤差を抽出するようにしたことを特徴とする請求項1記載のディスク信号解析装置。
【請求項5】
前記データ抽出部は、検索した全データの等化誤差を抽出し、レベル毎に分類して出力するようにしたことを特徴とする請求項1記載のディスク信号解析装置。
【請求項6】
アナログ再生信号をデジタル値に変換するAD変換部と、
前記AD変換部で変換されたデジタル値が入力され、理想等化データに適応的に等化させた適応等化データを出力する適応等化部と、
前記適応等化データが入力され、ビタビアルゴリズムを用いて復号すると共に、差メトリックを出力するビタビ復号部と、
所定の抽出条件に基づいて前記ビタビ復号部が復号したデータを検索し、この検索したデータに関連するデータの差メトリックを抽出するデータ抽出部と、
前記抽出された差メトリックが入力され、この差メトリックの統計値を演算して出力する統計演算部と、
前記統計演算部が出力した統計値を表示する表示部と、
を具備したことを特徴とするディスク信号解析装置。
【請求項7】
前記データ抽出部は、検索したデータ中の、抽出条件に定められた位置の差メトリックを抽出するようにしたことを特徴とする請求項6記載のディスク信号解析装置。
【請求項8】
前記データ抽出部は、検索したデータに隣接する位置の差メトリックを抽出するようにしたことを特徴とする請求項6記載のディスク信号解析装置。
【請求項9】
前記統計演算部が演算、出力する統計値は、平均値および標準偏差であることを特徴とする請求項1若しくは請求項8いずれかに記載のディスク信号解析装置。
【請求項10】
前記表示部は、前記データ抽出部が抽出したデータの、符号長別ヒストグラムを作成して表示するようにしたことを特徴とする請求項1若しくは請求項9記載のディスク信号解析装置。
【請求項11】
前記統計演算部は符号長別に統計値を演算し、前記表示部はこの統計値をリスト形式で表示するようにしたことを特徴とする請求項1若しくは請求項10いずれかに記載のディスク信号解析装置。
【請求項12】
アナログ再生信号をデジタル値に変換するAD変換部と、
前記AD変換部で変換されたデジタル値を理想等化データに適応的に等化させた適応等化データを出力する適応等化部と、
前記適応等化データが入力され、ビタビアルゴリズムによって復号するビタビ復号部と、
前記ビタビ復号部によって復号されたデータが入力され、このデータに誤り訂正処理を施してオリジナルデータを復元する誤り訂正部と、
所定の抽出条件に基づいて前記ビタビ復号部が復号したデータを検索し、この検索したデータに関連するデータと、前記誤り訂正部が出力したオリジナルデータとを比較してエラー率を出力するエラー率算出部と、
前記エラー率算出部が算出したエラー率を表示する表示部と、
を具備したことを特徴とするディスク信号解析装置。
【請求項13】
アナログ再生信号をデジタル値に変換するAD変換部と、
前記AD変換部で変換されたデジタル値を理想等化データに適応的に等化させた適応等化データを出力する適応等化部と、
前記適応等化データが入力され、ビタビアルゴリズムによって復号するビタビ復号部と、
前記ビタビ復号部が復号したデータに対応するオリジナルデータを読み込む外部データ取り込み部と、
所定の抽出条件に基づいて前記ビタビ復号部が復号したデータを検索し、この検索したデータに関連するデータと前記外部データ取り込み部が読み込んだオリジナルデータとを比較してエラー率を出力するエラー率算出部と、
前記エラー率算出部が算出したエラー率を表示する表示部と、
を具備したことを特徴とするディスク信号解析装置。
【請求項14】
前記エラー率算出部は、検索したデータの全データを用いてエラー率を算出するようにしたことを特徴とする請求項12若しくは請求項13記載のディスク信号解析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2007−149237(P2007−149237A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−343095(P2005−343095)
【出願日】平成17年11月29日(2005.11.29)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】