説明

ディスク型回転電機のステータ冷却構造

【課題】 冷媒の粘性抵抗による動力損失を避けながら、コイルやステータコアの絶縁劣化による信頼性の低下を防止することができるディスク型回転電機のステータ冷却構造を提供すること。
【解決手段】 永久磁石9を配置したロータ2と、ステータコア11が円周上に複数配置されたステータ3と、を備え、前記ロータ2と前記ステータ3が軸方向に配設されたディスク型回転電機において、前記ステータ3は、ステータコア11と、コイル12と、前記ステータコア11の周囲に配置される絶縁部材13と、を有し、前記絶縁部材13の一部に冷媒通路20を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータとロータが軸方向に対向配置されるディスク型回転電機のステータ冷却構造の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
永久磁石をロータ内部に埋め込んだ埋込磁石同期モータ(IPMSM:Interior Permanent Magnet Synchronus Motor)や永久磁石をロータ表面に張り付けた表面磁石同期モータ(SPMSM:Surface Permanent Magnet Synchronus Motor)は、損失が少なく、効率が良く、出力が大きい(マグネットトルクのほかにリラクタンストルクも利用できる)等の理由により、電気自動車用モータやハイブリッド車用モータ等の用途にその応用範囲を拡大している。
【0003】
このような永久磁石同期モータであって、ステータとロータとを軸方向に対向配置することで回転軸と平行な回転磁界を発生するディスク型モータは、薄型化が可能であり、レイアウトに制限がある用途に使用されている。このディスク型モータの冷却方式としては、一般的に空冷方式が用いられているが、モータケース内に油(冷媒)を導入し、モータケース内を冷媒で満たすものも知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−243617号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のディスク型モータにあっては、その内部に冷却用の液体が満たされており、コイルやロータは、冷却用液体に常に接触している構造となっているため、コイルやステータコアの絶縁劣化などを発生するおそれがあり、モータ信頼性が低下する、という問題があった。また、冷却用液体に満たされた状態でロータが回転するため、冷却用液体の粘性抵抗による動力損失が避けられない、という問題もあった。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、冷媒の粘性抵抗による動力損失を避けながら、コイルやステータコアの絶縁劣化による信頼性の低下を防止することができるディスク型回転電機のステータ冷却構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明では、永久磁石を配置したロータと、ステータコアが円周上に複数配置されたステータと、を備え、前記ロータと前記ステータが軸方向に配設されたディスク型回転電機において、
前記ステータは、ステータコアと、コイルと、前記ステータコアの周囲または前記コイルの周囲に配置される絶縁部材と、を有し、前記絶縁部材の一部に冷媒通路を設けた。
【発明の効果】
【0007】
よって、本発明のディスク型回転電機のステータ冷却構造にあっては、コイルを冷却する冷媒は、発熱体であるコイルが隣り合って存在するステータコア間に配置された密閉されたコア間冷媒路の中を流れるので、コイルを効果的に冷却することが可能である。また、コイルを冷却する冷媒は、密閉されたコイル冷媒路の中を流れ、ロータとステータとのエアギャップ等には流れ込まないので、フリクションを増加させることはない。この結果、冷媒の粘性抵抗による動力損失を避けながら、コイルやステータコアの絶縁劣化による信頼性の低下を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明のディスク型回転電機のステータ冷却構造を実施するための最良の形態を、図面に示す実施例1〜実施例4に基づいて説明する。
【実施例1】
【0009】
まず、全体構成を説明する。
図1は実施例1のステータ冷却構造が適用された1ロータ・2ステータによるディスク型回転電機を示す全体断面図である。
【0010】
実施例1のディスク型回転電機は、回転軸1と、ロータ2と、ステータ3,3と、回転電機ケース4(ケース)と、を備えていて、前記回転電機ケース4は、フロント側サイドケース4aと、リヤ側サイドケース4bと、両サイドケース4a,4bにボルト結合された外周ケース4cにより構成されている。
【0011】
前記回転軸1は、フロント側サイドケース4aに設けられた第1軸受け5とリヤ側サイドケース4bに設けられた第2軸受け6によって回転自在に支持されている。
【0012】
前記ロータ2は、前記回転軸1に固定され、ステータ3,3から与えられる回転磁束に対し、永久磁石9,9に反力を発生させ、回転軸1を中心に回転するように、回転軸1に固定された電磁鋼鈑(強磁性体)によるロータベース8と、前記ステータ3,3との対向面に埋め込まれた複数の永久磁石9,9と、を有して構成されている。前記複数の永久磁石9,9は、隣接する表面磁極(N極,S極)が、互いに相違するよう配置されている。ここで、ロータ2とステータ3,3の間にはエアギャップ10,10と呼ばれる隙間が存在し、互いに接触することはない。
【0013】
前記ステータ3,3は、前記フロント側サイドケース4aとリヤ側サイドケース4bとにそれぞれ固定され、ステータコア11と、コイル12と、絶縁部材13と、を有して構成されている。前記コイル12は、絶縁部材13を介し、ステータコア11に集中巻きされる。また、ステータコア11,11は、フロント側サイドケース4aとリヤ側サイドケース4bとにそれぞれ固定されている。
【0014】
次に、実施例1のステータ冷却構造を図1〜図3に基づき説明する。図2は実施例1のステータ冷却構造が適用されたステータを示す縦断正面図、図3は実施例1のステータ冷却構造が適用された図2のA−A線によるステータを示す縦断側面図である。
実施例1のステータ冷却構造は、前記ステータコア11の周囲に配置される絶縁部材13の一部に冷媒通路20を設けることで構成される。前記冷媒通路20は、非磁性材料による冷媒パイプ21を絶縁部材13に埋め込むことにより設けられる。
【0015】
前記冷媒パイプ21は、図3に示すように、両端部を絶縁部材13から突出させて絶縁部材13に対し埋め込み、前記突出した冷媒パイプ21の両端部を、フロント側サイドケース4aとリヤ側サイドケース4bに形成した冷媒供給路と冷媒排出路に接続した。
【0016】
前記フロント側サイドケース4aとリヤ側サイドケース4bには、それぞれフロント側エンドプレート22aとリヤ側エンドプレート22bを固定し、両エンドプレート22a,22bのそれぞれに、冷媒入口ポート23と冷媒出口ポート24とを設定した。
【0017】
前記フロント側サイドケース4aとリヤ側サイドケース4bに、前記冷媒入口ポート23から冷媒を供給する環状の冷媒供給ジャケット25と、前記冷媒出口ポート24へと冷媒を排出する環状の冷媒排出ジャケット26と、該冷媒排出ジャケット26に連通する軸方向の排出用冷媒通路27と、を形成している。
【0018】
前記冷媒パイプ21は、突出した冷媒パイプ21の両端部のうち、一端部を前記両サイドケース4a,4bのそれぞれに形成した冷媒供給ジャケット25に接続し、他端部を前記両サイドケース4a,4bのそれぞれに固定した冷媒連通部材28に接続した。
【0019】
前記冷媒連通部材28は、前記冷媒パイプ21に形成した冷媒通路20と、前記両サイドケース4a,4bに形成した排出用冷媒通路27及び冷媒排出ジャケット26とに連通し、冷媒の流れ方向をロータ2との対向付近位置で径方向に変える冷媒返送通路29を有する。
【0020】
前記ステータコア11は、図2に示すように、周方向幅の狭い電磁鋼鈑を内側から積層し、途中で周方向幅の広い電磁鋼鈑を積層することで、回転軸1に直交する断面形状がT字形状としている。
【0021】
前記絶縁部材13,13は、図2に示すように、回転軸1に直交する断面形状が、T字断面の前記ステータコア11にコイル12を巻き回した際に形成される一対の直角三角形状である。
【0022】
前記冷媒パイプ21,21は、図2および図3に示すように、一対の三角断面による絶縁部材13,13のそれぞれに対し、軸方向に貫通させて埋め込み設定している。なお、冷媒のシールは、図1に示すように、必要箇所にO−リングを設定することで確保している。
【0023】
次に、作用を説明する。
まず、高出力による回転電機の連続運転を行うと、銅損や鉄損によりステータにおいて熱を発生し、コイルの温度が時間の経過と共に上昇する。加えて、ロータ上の永久磁石は、磁石内部にうず電流が誘起されることによる発熱があり、回転電機内の雰囲気温度も高いものとなる。このため、高出力による連続運転を確保するには、ステータを冷却する必要がある。
【0024】
この対策として、回転電機で一般的な空冷を採用した場合、抜熱性能が悪いため、高出力の回転電機では、コイルの温度が上昇してしまい、連続出力時間が短くなってしまう。一方、冷却方式として回転電機内に冷媒を導入するものでは(例えば、特開平10−243617号公報)、冷媒に満たされた状態でロータが回転するため、冷媒の粘性抵抗による動力損失が避けられないし、また、コイルやロータが常に冷媒に接触している構造となっているため、コイルやステータコアが絶縁劣化し、信頼性を低下させてしまう。
【0025】
これに対し、実施例1のステータ冷却構造では、ステータコア11の周囲に配置される絶縁部材13を利用し、絶縁部材13の一部に冷媒通路20を設けることで、冷媒の粘性抵抗による動力損失を避けながら、コイル12やステータコア11の絶縁劣化による信頼性の低下を防止し、冷却効率を向上させた結果、連続出力を大幅に増加させた。
【0026】
実施例1のステータ冷却作用を説明すると、まず、冷媒は冷媒入口ポート23から環状の冷媒供給ジャケット25に供給され、この冷媒供給ジャケット25から各冷媒パイプ21の冷媒通路20に導かれ、ステータ3を冷却する。つまり、コイル12の銅損による熱がコイル12に接触する絶縁部材13へ伝達されると共に、ステータコア11の鉄損による熱がステータコア11に接触する絶縁部材13へ伝達されることで、絶縁部材13が高温となる。一方、絶縁部材13は冷媒パイプ21の外周面に密着することで、高温となった絶縁部材13の熱を、冷媒パイプ21内を軸方向に流れる冷媒により抜くという抜熱作用によりステータ3が冷却される。
【0027】
そして、冷媒通路20を経過した冷媒は、冷媒返送通路29→排出用冷媒通路27→冷媒排出ジャケット26→冷媒出口ポート24を通って外部に排出される。なお、冷媒返送通路29は、ステータ3のロータ2に近い位置の径方向に配置され、排出用冷媒通路27は、ステータ3に近接する内周位置に配置されることから、冷媒返送通路29と排出用冷媒通路27とを流れる冷媒によっても、ステータ3の熱を抜く抜熱作用が発揮されることになる。
【0028】
上記のように、実施例1のステータ冷却構造は、絶縁部材13の一部に冷媒通路20を設けた構造であり、冷媒がコイル12やステータコア11に直接接触することがないので、絶縁劣化による信頼性の低下を防止できる。
【0029】
しかも、絶縁部材13に非磁性材料による冷媒パイプ21を埋め込んで冷媒通路20を設けた構成としたので、冷媒が絶縁部材13に浸透してコイル12やステータコア11に接触することによる絶縁劣化をも確実に避けることができる。言い換えれば、冷媒や絶縁部材13の選択の自由度が向上する。また、冷媒パイプ21を非磁性材料としたので、ロータ2の回転によるループ電流の発生も防止できる。
【0030】
さらに、冷媒は、ステータコア11のケース取付け面側から供給され、ロータ2との対向面付近で排出され、ケース内の排出用冷媒通路27に戻される構造としたので、外部冷却システム(図示せず)によって冷やされた冷媒が、まず、コイル12やステータコア11の抜熱を行なうので、冷却効果が高い。
【0031】
次に、効果を説明する。
実施例1のディスク型回転電機のステータ冷却構造にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0032】
(1) 永久磁石9を配置したロータ2と、ステータコア11が円周上に複数配置されたステータ3と、を備え、前記ロータ2と前記ステータ3が軸方向に配設されたディスク型回転電機において、前記ステータ3は、ステータコア11と、コイル12と、前記ステータコア11の周囲に配置される絶縁部材13と、を有し、前記絶縁部材13の一部に冷媒通路20を設けたため、冷媒の粘性抵抗による動力損失を避けながら、コイル12やステータコア11の絶縁劣化による信頼性の低下を防止することができる。
【0033】
(2) 前記冷媒通路20は、非磁性材料による冷媒パイプ21を絶縁部材13に埋め込むことにより設けたため、絶縁劣化の確実な回避により、冷媒や絶縁部材13の選択自由度を向上させることができると共に、ロータ2の回転によるループ電流の発生を防止することができる。
【0034】
(3) 前記冷媒パイプ21は、両端部を絶縁部材13から突出させて絶縁部材13に対し埋め込み、前記突出した冷媒パイプ21の両端部を、フロント側サイドケース4aとリヤ側サイドケース4bに形成した冷媒供給路と冷媒排出路に接続したため、外部冷却システムによって冷やされた冷媒が、まず、コイル12やステータコア11の抜熱を行なうので、高いステータ冷却効果を得ることができる。
【0035】
(4) 前記フロント側サイドケース4aとリヤ側サイドケース4bに、冷媒を供給する環状の冷媒供給ジャケット25と、冷媒を排出する環状の冷媒排出ジャケット26と、該冷媒排出ジャケット26に連通する軸方向の排出用冷媒通路27と、を形成し、前記冷媒パイプ21は、突出した冷媒パイプ21の両端部のうち、一端部を前記両サイドケース4a,4bのそれぞれに形成した冷媒供給ジャケット25に接続し、他端部を前記両サイドケース4a,4bのそれぞれに固定した冷媒連通部材28に接続し、前記冷媒連通部材28は、前記冷媒パイプ21に形成した冷媒通路20と、前記両サイドケース4a,4bに形成した排出用冷媒通路27及び冷媒排出ジャケット26とに連通し、冷媒の流れ方向をロータ2との対向付近位置で径方向に変える冷媒返送通路29を有するため、3分割構造の回転電機ケース4のうち、両サイドケース4a,4bに排出用冷媒通路27を形成する部分を軸方向に一体に突出することで、冷媒をステータコア11のケース取付け面側から供給してケース内の排出用冷媒通路27に戻す構造を容易に得ることができる。
【0036】
(5) 前記ステータコア11は、回転軸1に直交する断面形状がT字形状であり、前記絶縁部材13,13は、回転軸1に直交する断面形状が、T字断面の前記ステータコア11にコイル12を巻き回した際に形成される一対の直角三角形状であり、前記冷媒パイプ21,21は、一対の三角断面による絶縁部材13,13のそれぞれに対し、軸方向に貫通させて埋め込み設定したため、1組のステータコア11とコイル12に対し2本の冷媒パイプ21,21により、高い抜熱効果でのステータ冷却を行うことができる。
【実施例2】
【0037】
実施例2は、回転電機ケースを2分割とし、ステータ外周側の冷却に重点を置いた例である。
【0038】
構成を説明すると、図4は実施例2のステータ冷却構造が適用された1ロータ・2ステータによるディスク型回転電機を示す全体断面図である。
【0039】
実施例2のディスク型回転電機は、回転軸1と、ロータ2と、ステータ3,3と、回転電機ケース4(ケース)と、を備えていて、前記回転電機ケース4は、一対の第1ケース4dと第2ケース4eによる2分割構造とされている。なお、他の構造は、図1に示す実施例1のディスク型回転電機と同様であるので、対応する構成に同一符合を付して説明を省略する。
【0040】
次に、実施例2のステータ冷却構造を図4〜図6に基づき説明する。図5は実施例2のステータ冷却構造が適用されたステータを示す縦断正面図、図6は実施例2のステータ冷却構造が適用された図5のB−B線によるステータを示す縦断側面図である。
実施例2のステータ冷却構造は、前記ステータコア11の周囲に配置される絶縁部材13の一部に、冷媒パイプ21を絶縁部材13に埋め込むことにより、冷媒通路20を設けることで構成される点では実施例1と同様である。
【0041】
前記ステータコア11は、図5に示すように、周方向幅が徐々に広くなる電磁鋼鈑を内側から積層し、途中から同じ周方向幅の電磁鋼鈑を積層することで、回転軸1に直交する断面形状が逆台形状としている。
【0042】
前記絶縁部材13は、図5および図6に示すように、ステータコア11の逆台形断面形状の外径側長辺上に設けられ、回転軸1に直交する断面形状が、逆台形断面の前記ステータコア11にコイル12を鋭角による曲げが無く巻き回しができるように設定された半円形状である。
【0043】
前記冷媒パイプ21は、図5および図6に示すように、半円形断面の絶縁部材13の中央部に対し、軸方向に貫通させて埋め込み設定している。なお、他の構成は実施例1のステータ冷却構造と同様であるので説明を省略する。
【0044】
次に、実施例2でのコイル冷却作用を説明すると、冷媒入口ポート23から環状の冷媒供給ジャケット25に供給された冷媒は、実施例1と同様に、冷媒通路20→冷媒返送通路29→排出用冷媒通路27→冷媒排出ジャケット26→冷媒出口ポート24を通って外部に排出される。
【0045】
ここで、実施例1では、冷媒返送通路29により冷媒が内側方向に移行するのに対し、実施例2では、冷媒返送通路29により冷媒が外側方向に移行する。加えて、実施例2では、ステータコア11の外径部に設定された絶縁部材13に冷媒パイプ21に埋め込み設定されているため、ステータ冷却作用としては、高温となりやすいステータ外周側の冷却に重点を置いたものとなる。なお、他の作用は、実施例1と同様である。
【0046】
次に、効果を説明すると、実施例2のディスク型回転電機のステータ冷却構造にあっては、実施例1の(1)〜(4)の効果に加え、下記の効果を得ることができる。
【0047】
(6) 前記ステータコア11は、回転軸1に直交する断面形状が逆台形状であり、前記絶縁部材13は、ステータコア11の逆台形断面形状の外径側長辺上に設けられ、回転軸1に直交する断面形状が半円形状であり、前記冷媒パイプ21は、前記絶縁部材13に対して軸方向に貫通させて埋め込み設定したため、ステータ外周側のコイル12およびステータコア11を高い冷却効果により冷却することができる。
【実施例3】
【0048】
実施例3は、冷媒パイプとして、断面形状が円形ではなく、円形以外の異形断面形状によるパイプを用いた例である。
【0049】
すなわち、実施例3の第1例では、図7(a)に示すように、前記ステータコア11は、回転軸1に直交する断面形状がT字形状であり、前記絶縁部材13,13は、T字断面のステータコア11にコイル12を巻き回した際にコア外周部に形成される一対の直角断面形状を有し、前記冷媒パイプ21’,21’は、前記絶縁部材13,13の直角断面形状に対応する直角断面形状を有し、前記絶縁部材13,13に対して軸方向に貫通させて埋め込み設定している。この場合、接続部分は、接着剤などでシールする。なお、他の構成については、実施例1と同様であるので、図示並びに説明を省略する。
【0050】
また、実施例3の第2例では、図7(b)に示すように、前記ステータコア11は、回転軸1に直交する断面形状がT字形状であり、前記絶縁部材13,13は、T字断面のステータコア11にコイル12を滑らかに巻き回した際にコア外周上部に形成される半円断面形状を有し、前記冷媒パイプ21"は、前記絶縁部材13の半円断面形状に対応する楕円断面形状を有し、前記絶縁部材13に対して軸方向に貫通させて埋め込み設定している。この場合、接続部分は、接着剤などでシールする。なお、他の構成については、実施例2と同様であるので、図示並びに説明を省略する。
【0051】
次に、実施例3のステータ冷却作用を説明すると、実施例3では、冷媒パイプ21’および冷媒パイプ21"から明らかなように、絶縁部材13の断面形状に対応する異形断面形状に設定したことで、円形断面の冷媒パイプ21を用いた実施例1,2に比べ、絶縁部材13と接触する抜熱面積を拡大することができ、この結果、抜熱効率を高めることが可能である。なお、他の作用は実施例1,2と同様であるので説明を省略する。
【0052】
次に、効果を説明すると、実施例3のディスク型回転電機のステータ冷却構造にあっては、実施例1,2の効果に加え、下記の効果を得ることができる。
【0053】
(7) 前記ステータコア11は、回転軸1に直交する断面形状がT字形状であり、前記絶縁部材13は、T字断面のステータコア11にコイル12を巻き回した際にコア外周部に形成される断面形状を有し、前記冷媒パイプ21’,21"は、前記絶縁部材の断面形状に対応する異形断面形状を有し、前記絶縁部材13に対して軸方向に貫通させて埋め込み設定したため、絶縁部材13と接触する抜熱面積の拡大により、冷媒パイプ21’,21"による抜熱効率を向上させることができる。
【実施例4】
【0054】
実施例4は、冷媒通路をコイルの外側に配置した例である。
【0055】
すなわち、実施例4の第1例では、図8(a)に示すように、前記ステータコア11は、回転軸1に直交する断面形状が逆台形状であり、絶縁紙等による第1絶縁部材31を介してコイル12が巻き回され、前記コイル12の外周部に絶縁シールのための樹脂モールド等による第2絶縁部材32が外径側の径方向厚みを厚くして形成され、前記冷媒パイプ21は、前記第2絶縁部材32の外径位置に、軸方向に貫通させて埋め込み設定している。なお、他の構成は実施例2と同様であるので、図示並びに説明を省略する。
【0056】
また、実施例4の第2例では、図8(b)に示すように、前記ステータコア11は、回転軸1に直交する断面形状が逆台形状であり、絶縁紙等による第1絶縁部材31を介してコイル12が巻き回され、前記コイル12の外周部に絶縁シールのための樹脂モールド等による第2絶縁部材32’が内径側の径方向厚みを厚くして形成され、前記冷媒パイプ21は、前記第2絶縁部材32’の内径位置に、軸方向に貫通させて埋め込み設定している。なお、他の構成は実施例1と同様であるので、図示並びに説明を省略する。
【0057】
次に、実施例4のステータ冷却作用を説明すると、図8(a)に示す実施例4の第1例では、冷媒パイプ21を第2絶縁部材32の外径位置に設定したことで、ステータ外周側のコイル12を高い冷却効果により冷却することができる。図8(b)に示す実施例4の第2例では、冷媒パイプ21を第2絶縁部材32’の内径位置に設定したことで、ステータ内周側のコイル12を高い冷却効果により冷却することができる。なお、他の作用は実施例1,2と同様である。
【0058】
次に、効果を説明すると、実施例4のディスク型回転電機のステータ冷却構造にあっては、実施例1,2の効果に加え、下記の効果を得ることができる。
【0059】
(8) 前記ステータコア11には、第1絶縁部材31を介してコイル12が巻き回され、前記コイル12の外周部に第2絶縁部材32,32’が形成され、前記冷媒パイプ21は、前記第2絶縁部材32,32’に軸方向に貫通させて埋め込み設定したため、ステータコア11に巻き回されたコイル12のうち、冷媒パイプ21と近接するコイル部分を高い冷却効果により冷却することができる。
【0060】
以上、本発明のディスク型回転電機のステータ冷却構造を実施例1〜実施例4に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0061】
実施例1〜4では、絶縁部材の一部に設ける冷媒通路を、非磁性体による冷媒パイプにより形成した好ましい例を示したが、絶縁部材の一部に軸方向貫通穴を直接形成し、これを冷媒通路としても良い。
【0062】
実施例1〜4では、ステータコアとコイルによる1つのステータティースに対し、冷媒通路を1本もしくは2本設定する例を示したが、1つのステータティースに対し冷媒通路を3本以上の複数本設定するようにしても良いし、また、複数の冷媒通路を軸方向に複数回往復するように冷媒の流れを規定する冷媒路構造としても良い。
【0063】
実施例1〜4では、ロータとステータとが軸方向にエアギャップを介して配置されるディスク型回転電機の例を示したが、例えば、ロータとステータとの軸方向隙間には油膜が存在するだけで、実質的にエアギャップを介在しないようなディスク型回転電機にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
実施例1〜4では、ディスク型回転電機と述べているが、それはディスク型モータとして適用しても良いし、また、ディスク型ジェネレータとして適用しても良い。また、実施例1〜4では、1ロータ・2ステータのディスク型回転電機への適用例を示したが、2ロータ・1ステータや1ロータ・1ステータや2ロータ・2ステータ等のロータ数やステータ数が異なるディスク型回転電機にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】実施例1のステータ冷却構造が適用された1ロータ・2ステータによるディスク型回転電機を示す全体断面図である。
【図2】実施例1のステータ冷却構造が適用されたステータを示す縦断正面図である。
【図3】実施例1のステータ冷却構造が適用された図2のA−A線によるステータを示す縦断側面図である。
【図4】実施例2のステータ冷却構造が適用された1ロータ・2ステータによるディスク型回転電機を示す全体断面図である。
【図5】実施例2のステータ冷却構造が適用されたステータを示す縦断正面図である。
【図6】実施例2のステータ冷却構造が適用された図5のB−B線によるステータを示す縦断側面図である。
【図7】実施例3のステータ冷却構造が適用された第1例のステータを示す縦断正面図と第2例のステータを示す縦断正面図である。
【図8】実施例4のステータ冷却構造が適用された第1例のステータを示す縦断正面図と第2例のステータを示す縦断正面図である。
【符号の説明】
【0066】
1 回転軸
2 ロータ
3 ステータ
4 回転電機ケース
4a フロント側サイドケース
4b リヤ側サイドケース
4c 外周ケース
4d 第1ケース
4e 第2ケース
5 第1軸受け
6 第2軸受け
8 ロータベース
9 永久磁石
10 エアギャップ
11 ステータコア
12 コイル
13 絶縁部材
20 冷媒通路
21,21’,21" 冷媒パイプ
22a フロント側エンドプレート
22b リヤ側エンドプレート
23 冷媒入口ポート
24 冷媒出口ポート
25 冷媒供給ジャケット
26 冷媒排出ジャケット
27 排出用冷媒通路
28 冷媒連通部材
29 冷媒返送通路
31 第1絶縁部材
32 第2絶縁部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
永久磁石を配置したロータと、ステータコアが円周上に複数配置されたステータと、を備え、前記ロータと前記ステータが軸方向に配設されたディスク型回転電機において、
前記ステータは、ステータコアと、コイルと、前記ステータコアの周囲または前記コイルの周囲に配置される絶縁部材と、を有し、
前記絶縁部材の一部に冷媒通路を設けたことを特徴とするディスク型回転電機のステータ冷却構造。
【請求項2】
請求項1に記載されたディスク型回転電機のステータ冷却構造において、
前記冷媒通路は、非磁性材料による冷媒パイプを絶縁部材に埋め込むことにより設けたことを特徴とするディスク型回転電機のステータ冷却構造。
【請求項3】
請求項2に記載されたディスク型回転電機のステータ冷却構造において、
前記冷媒パイプは、両端部を絶縁部材から突出させて絶縁部材に対し埋め込み、前記突出した冷媒パイプの両端部を、ケースに形成した冷媒供給路と冷媒排出路に接続したことを特徴とするディスク型回転電機のステータ冷却構造。
【請求項4】
請求項3に記載されたディスク型回転電機のステータ冷却構造において、
前記ケースに、冷媒を供給する冷媒供給ジャケットと、冷媒を排出する冷媒排出ジャケットと、該冷媒排出ジャケットに連通する軸方向の排出用冷媒通路と、を形成し、
前記冷媒パイプは、突出した冷媒パイプの両端部のうち、一端部を前記ケースに形成した冷媒供給ジャケットに接続し、他端部を前記ケースに固定した冷媒連通部材に接続し、
前記冷媒連通部材は、前記冷媒パイプに形成した冷媒通路と、前記ケースに形成した排出用冷媒通路及び冷媒排出ジャケットとに連通し、冷媒の流れ方向をロータとの対向付近位置で径方向に変える冷媒返送通路を有することを特徴とするディスク型回転電機のステータ冷却構造。
【請求項5】
請求項2乃至4の何れか1項に記載されたディスク型回転電機のステータ冷却構造において、
前記ステータコアは、回転軸に直交する断面形状がT字形状であり、
前記絶縁部材は、回転軸に直交する断面形状が、T字断面のステータコアにコイルを巻き回した際に形成される一対の三角形状であり、
前記冷媒パイプは、一対の三角断面による絶縁部材のそれぞれに対し、軸方向に貫通させて埋め込み設定したことを特徴とするディスク型回転電機のステータ冷却構造。
【請求項6】
請求項2乃至4の何れか1項に記載されたディスク型回転電機のステータ冷却構造において、
前記ステータコアは、回転軸に直交する断面形状が逆台形状であり、
前記絶縁部材は、ステータコアの逆台形断面形状の外径側長辺上に設けられ、回転軸に直交する断面形状が半円形状であり、
前記冷媒パイプは、前記絶縁部材に対して軸方向に貫通させて埋め込み設定したことを特徴とするディスク型回転電機のステータ冷却構造。
【請求項7】
請求項2乃至4の何れか1項に記載されたディスク型回転電機のステータ冷却構造において、
前記ステータコアは、回転軸に直交する断面形状がT字形状であり、
前記絶縁部材は、T字断面のステータコアにコイルを巻き回した際にコア外周部に形成される断面形状を有し、
前記冷媒パイプは、前記絶縁部材の断面形状に対応する異形断面形状を有し、前記絶縁部材に対して軸方向に貫通させて埋め込み設定したことを特徴とするディスク型回転電機のステータ冷却構造。
【請求項8】
請求項2乃至4の何れか1項に記載されたディスク型回転電機のステータ冷却構造において、
前記ステータコアには、第1絶縁部材を介してコイルが巻き回され、
前記コイルの外周部に第2絶縁部材が形成され、
前記冷媒パイプは、前記第2絶縁部材に軸方向に貫通させて埋め込み設定したことを特徴とするディスク型回転電機のステータ冷却構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−50752(P2006−50752A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−227072(P2004−227072)
【出願日】平成16年8月3日(2004.8.3)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】