ディスク装置
【課題】 ディスク状媒体を用いて記録あるいは再生を行うディスク装置において、小型軽量な装置で、2軸方向の振動を抑圧するディスク装置を得る。
【解決手段】 ディスクを回転させるモータとピックアップ手段とを有するメインフレーム機構3と、メインフレーム機構3に接して設けられた制振部とを備えるディスク装置であって、前記制振部は、第一の方向に可撓性のある第一の変形面と前記第一の方向に略直交する第二の方向に可撓性のある第二の変形面とをもつバネ部材、及びバネ部材に保持される補助質量を有し、前記第一の変形面と前記第二の変形面とが可撓自在に設ける。
【解決手段】 ディスクを回転させるモータとピックアップ手段とを有するメインフレーム機構3と、メインフレーム機構3に接して設けられた制振部とを備えるディスク装置であって、前記制振部は、第一の方向に可撓性のある第一の変形面と前記第一の方向に略直交する第二の方向に可撓性のある第二の変形面とをもつバネ部材、及びバネ部材に保持される補助質量を有し、前記第一の変形面と前記第二の変形面とが可撓自在に設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光ディスクならびに磁気ディスク等のディスク状媒体を用いて記録あるいは再生を行うディスク装置に関するもので、特に、ディスクを高速に回転させた場合に発生する装置振動ならびに装置外部から作用する不要な振動を抑圧する制振部を備えたディスク装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の情報記録再生装置あるいは情報再生装置においては、格納する情報の大容量化、情報転送レートの高速化さらには小型軽量化が進んでいる。磁気ディスクや光ディスクでは、転送レートの高速化に伴い、記録あるいは再生する際のディスク回転速度の高速化が進展している。ディスクは、回転軸と重心位置とが完全には一致することはまれであり、偏重心距離といわれる回転軸に対する重心位置のずれ量を持つ。この偏重心距離とディスクの質量との影響で、ディスクの回転に伴ってディスクを回転させるスピンドルモータの回転軸方向と直交する方向に不要な遠心力を発生する。この不要な遠心力は運動エネルギーであるから、回転速度の2乗に比例するので、不要な遠心力はディスク回転速度の高速化に応じて、2次関数的に急激に増加するし、安定した記録あるいは再生をする上で問題があった。また装置の小型軽量化によって、外部から加えられる振動に対して装置の加速度変動や位置変動が発生しやすい形態となる。そのため、ディスクを記録あるいは再生する際、装置全体がディスク回転と同期して自励振動し、情報の記録あるいは再生を正しく行うことが困難になるという問題があった。
【0003】
この分野において振動を抑える一般的な制振方法として、スピンドルモータを有するメインフレームに、補助質量と補助質量を支持する弾性部材による共振系を増設する方法がある。これは共振系を制振対象に付加することにより、共振系の共振周波数に等しい振動数の加振入力に対して、補助質量の位相が90度遅れて振動する共振現象が発生し、その補助質量の慣性力が制振対象の振動を打ち消すように働くものである。
【0004】
また、偏重心による振動を抑制する方法として、補助質量と、補助質量を支持する圧縮コイルバネと、圧縮コイルバネの伸縮する方向を案内するガイドとにより構成された動吸振器を備える方法がある(例えば、特許文献1参照)。また別の方法として、スピンドルモータを有するメインフレームと、メインフレームを収納する筐体とを第一の弾性体を介して結合させ、さらに共振周波数をディスクの回転周波数よりも若干大きい周波数に設定した補助質量となるサブフレームとメインフレームとを第二の弾性体を介して結合させる方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−003582号公報(第2−4頁、第1図)
【特許文献2】特開平11−328944号公報(第2−5頁、第1−3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の方法では、ガイドにより伸縮する1軸方向にのみ制振が行われるが、ディスクの高速回転による装置振動は、スピンドルモータの回転軸方向と直交する方向に発生するため、スピンドルモータの回転軸方向と直交する1軸方向にのみ制振を行っても、十分な制振を行うことができない。また、ピックアップ手段のトラッキング制御を行う方向に案内するガイドを設けて制振を行ったとしても、制振方向と直交する方向の振動がディスク装置の筐体に取付けられている電気回路基板等を振動させてしまい、その電気回路基板等の振動がピックアップ手段に影響を及ぼすこととなり、ディスクの情報の記録エラーや再生エラー等が発生してしまうという問題があった。
【0007】
なお、特許文献1の方法を用いて、案内軸と付加質量と圧縮コイルばねとからなる動吸振器を2つ用いて、それぞれの案内軸の方向を、ピックアップ手段のトラッキング制御を行う方向とその方向に直交する方向とにして設けるとしても、動吸振器を複数設けるための空間が必要となり、ディスク装置そのものの小型化や軽量化に向かないという問題がある。
【0008】
また、特許文献2の方では、十分な動吸振器の制振効果を確保するためには補助質量であるサブフレームを大きく設定する必要があり、ディスク装置そのものの大型化を招くという問題があった。特に、特許文献2で第二の弾性体の弾性部材として好ましいとされるゴムまたは樹脂で構成する場合は、減衰係数が比較的高いことから、補助質量が共振する際の慣性力を低下させてしまうため、補助質量の設定を大きくする必要があった。
【0009】
この発明は、上述のような課題を解消するためになされたもので、小型軽量な装置で、2軸方向の振動を抑圧するディスク装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係るディスク装置は、ディスクを回転させるモータ及び前記ディスクに情報を記録しまたは情報を読取るピックアップ手段を有するメインフレーム機構と、前記メインフレーム機構に接して設けられた制振部とを備えるディスク装置であって、前記制振部は、第一の方向に可撓性のある第一の変形面と前記第一の方向に略直交する第二の方向に可撓性のある第二の変形面とをもつバネ部材及び前記バネ部材に保持される補助質量を有し、前記第一の変形面と前記第二の変形面とが可撓自在に設けられたものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明は、第一の方向と、第一の方向に略直交する第二の方向とに可撓性のある変形面を有するバネ部材で補助質量を保持し、それぞれの変形面の可撓性を維持してメインフレーム機構に設けられた制振部を備えているため、バネ部材で支持された補助質量を2軸方向に共振させることが可能となる。これにより、ディスク装置内で大きな空間を必要としない小型軽量な制振部による2軸方向の振動の抑圧効果によって安定して記録あるいは再生が可能なディスク装置を構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1に係るディスク装置の全体のモデル図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係るディスク装置の制振部の斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係るディスク装置の制振部の構造を示す分解斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態2に係るディスク装置の全体のモデル図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係るディスク装置の制振部の斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係るディスク装置の制振部の構造を示す分解斜視図である。
【図7】本発明の実施の形態2に係る制振部の磁気回路の構造を示した断面図である。
【図8】本発明の実施の形態2に係る制振部の磁気回路の磁束の方向を示した概略図である。
【図9】本発明の実施の形態2に係る制振部の磁気回路のXY方向の位置関係を示した上面図である。
【図10】本発明の実施の形態3に係るディスク装置の制振部の斜視図である。
【図11】本発明の実施の形態3に係るディスク装置の制振部の構造を示す分解斜視図である。
【図12】本発明の実施の形態4に係るディスク装置の制振部の斜視図である。
【図13】本発明の実施の形態4に係るディスク装置の制振部の構造を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1
図1は、本発明の実施の形態1に係るディスク装置の全体のモデル図であって、X軸方向からみた図である。本明細書では立体の軸をX、Y、Zの3軸で表すこととし、メインフレーム機構3が有するスピンドルモータの回転軸方向をZ軸、Z軸と直交且つメインフレーム機構3が有するピックアップ手段がトラッキング制御を行う方向をX軸、Z軸及びX軸方向に直交する方向をY軸として示す。
【0014】
ディスク装置は、筐体1にメインフレーム機構3を緩衝部2を介して結合する。ここでメインフレーム機構3は、ディスクを回転させるスピンドルモータとディスクに情報を記録しまたは情報を読取るピックアップ手段と、スピンドルモータ及びピックアップ手段を保持するフレーム類とを有する機構系ユニットである。
【0015】
緩衝部2は、筐体1に対してメインフレーム機構3を支持し、筐体1に作用する外部振動の伝達を緩衝する機能を持つもので、ゴムや樹脂などのインシュレータなどを用いてその振動を抑制するものである。このメインフレーム機構3における緩衝部2との結合する面は、メインフレーム機構3の底面であることが好ましく、複数個所で支持することがよく用いられる。
【0016】
メインフレーム機構3には、制振部10が設けられており、制振部10は、補助質量190をX方向及びY方向に可撓性のある支持部材によって中空に保持して構成されている。なお、図1では支持部材を粘弾性モデルとしてX方向用の粘弾性モデルを10Xとし、Y方向用の粘弾性モデルを10Yとして示している。制振部10はディスクの中心に近い箇所に設けることが好ましい。
【0017】
このように補助質量190をX方向及びY方向に可撓性のある支持部材によって中空に保持することで、補助質量190はメインフレーム機構3から伝達される力Fxを受けると、X方向に可動してその慣性力によりメインフレーム機構3のX方向の振動を抑圧する。また、補助質量5はメインフレーム機構3から伝達される力Fyを受けると、Y方向に可動してその慣性力によりメインフレーム機構3のY方向の振動を抑圧する。
【0018】
図2は、本実施の形態における制振部10の構成を示す斜視図であり、図3はその分解斜視図である。図2及び図3において、制振部10は、ベース部材101と、バネ部材111及び112と、バネ保持部材104と補助質量190とで構成され、ベース部材101がメインフレーム機構3に固定されている。この制振部10はメインフレーム機構3のX方向及びY方向と平行に設置することが好ましい。
【0019】
バネ部材111は、X方向に可撓性のある第1の変形面111aと、Y方向に可撓性のある第2の変形面111bとを有する。バネ部材112は、バネ部材111と同じ寸法で構成されており、バネ部材111と同様にX方向に可撓性のある第1の変形面112aと、Y方向に可撓性のある第2の変形面112bとを有する。これらバネ部材111及び112は、図2及び図3に示すように、L字型の板バネで構成し、それぞれの板バネの端部のうち、それぞれの一方を補助質量190に接続し、他方をバネ保持部材104に接続する。図2及び図3では変形面111b側の端部と変形面112b側の端部とを補助質量190に接続し、変形面111a側の端部と変形面112a側の端部とをバネ保持部材104に接続している。またバネ保持部材104は、バネ部材111及び112を固定支持するのに十分な厚みを持った板状の直方体であり、変形面111b及び変形面112bと略並行にベース部材101に固定されている。
【0020】
ここで、バネ部材111及び112とバネ保持部材104とで上下に開口面のある直方体の筒形状を形成し、バネ保持部材104のみがベース部材101と固定するように、バネ部材111及び112とベース部材101との間にはそれぞれが接触しないように隙間を形成されている。また、変形面111b側の端部と変形面112b側の端部とが接続されている面によって略直方体の補助質量190が、ベース部材101との間が接触しないように中空に保持されている。また補助質量190は、バネ部材111及び112の変形面111a、111b、112a、112bが変形しても、バネ部材111及び112とバネ保持部材104との他の面にぶつからないだけの隙間を持って保持されていることが好ましい。さらに補助質量190は、バネ部材111及び112と接続する面190aに突出部を設けることで、接続される変形面111bと変形面112bの接触領域を限定して可撓する領域を確保することが可能となるので、制振部10の大型化を抑えることができる。
【0021】
また、バネ部材111及び112の変形面111a、111b、112a、112bは長手方向にスリットを設けることで、補助質量190との共振系の共振周波数の調整を行っている。共振周波数を低くしたい場合はスリットの幅を大きくすればよい。これにより、各変形面の長手方向の長さを長くする必要なく、共振周波数を低く設定することができ、小型に構成が可能となっている。
【0022】
ここで板バネ111及び112は、それぞれの第1の変形面が平行で且つそれぞれの第2の変形面が平行になるよう配置されれば良い。したがって、図2及び図3に示したように板バネ111と板バネ112はY方向に線対称の配置に限定するものではなく、点対称となる配置でも良い。この場合、補助質量190の突出部を190aの面及び190bの面に設けて板バネ111及び112の一方の変形面の一端のそれぞれに接続して、他方の変形面の一端をそれぞれベース部材101に固定された二つのバネ保持部材で補助質量190が中空に保持するように保持する構成とすることとなる。
【0023】
次に制振部10の振動があった場合の作用について説明する。メインフレーム機構3から補助質量190にX方向の力が伝達されると、板バネ111の第1の変形面111aと板バネ112の第1の変形面112aがX方向にたわみ、補助質量190はX方向へ移動する。また、メインフレーム機構3から補助質量190にY方向の力が伝達されると、板バネ111の第2の変形面111bと板バネ112の第2の変形面112bがたわみ、補助質量190はY方向へ移動する。したがって、補助質量190は図3の白抜き矢印で示すX方向とY方向の2軸方向に移動する。一方、Z方向に対して、板バネ111、112は変形面を有さないため、Z方向に剛性は高く、補助質量190はZ方向に移動しない。
【0024】
以上の結果から、上述した制振部10の構成及び作用によって、第1の方向であるX方向と、第2の方向であるY方向の振動を抑圧する動吸振器の機能が実現できる。したがって、ディスクの高速回転によるスピンドルモータの回転軸方向となるZ軸方向と直交する2軸方向に発生する装置振動を、小型軽量な構成で、抑圧することが可能となる。また、緩衝部2で抑制しきれなかった筐体1に作用する外部振動の伝達によるメインフレーム機構3の振動に対しても抑圧する効果をもつ。さらに、板バネ支持にしたことで少ない部品点数、摩擦のない無音可動が可能となる。
【0025】
また、補助質量190と板バネ111、112とから構成される共振系、すなわち動吸振器の共振周波数はX方向、Y方向ともに、ディスクの回転周波数の最大値に設定することが好ましい。偏重心ディスクの回転により発生する装置振動は、回転速度の2乗に比例することから、最大のディスク回転速度において、ディスク情報の記録あるいは再生に影響が大きい。一方、ディスクが低速回転の際に発生する装置振動は微弱であり、影響が少ない。したがって、共振周波数をディスクの回転周波数の最大値に設定することにより、効果的に振動の影響を抑えることが可能となる。
【0026】
また、バネ部材111及び112は板バネを用いることが好ましい。板バネはゴムや樹脂のインシュレータと比較して、粘性係数が小さいため、共振系の減衰係数を小さくすることができる。減衰係数が小さい板バネを用いることで、動吸振器の補助質量が共振する際の慣性力を大きくすることができ、制振効果が高まる。したがって、ゴムや樹脂のインシュレータを用いた際と比較して、補助質量を小型軽量にすることが可能となる。また、共振周波数は共振系のパラメータから決定されるため、抑圧したい周波数域が得られるようにバネ部材を設計する必要がある。ゴムや樹脂のインシュレータの場合は、制振対象の周波数の変化に対し部材の見直しが必要となるが、板バネでは図中に示してあるように板バネの平面にスリットや穴を設けることで、比較的、安価で容易に、共振周波数の設定が可能となる。材質は金属製が好ましい。車載用途などの過酷な使用環境においては、使用時の温度変化が激しく、ゴムや樹脂などの温度依存性の高い材質を用いた場合、共振系のパラメータ変動が激しいため、共振周波数や共振時の利得が安定しない。したがって、温度依存性の低い金属製の材質を用いることで、高い信頼性が得られる。
【0027】
実施の形態2
実施の形態1では、メインフレーム機構3から補助質量に伝達される力を受けたときに、その慣性力によりメインフレーム機構3の振動を抑圧する作用を持つ構成としていたが、発明の実施の形態2では、メインフレーム機構3から補助質量に伝達される力をセンサユニットによって検出し、それに応じて補助質量を駆動する補助質量駆動部を備えることで補助質量の慣性力を制御する作用をもたせることで制振部の大型化を抑えながら制振効果を向上させることができる。
【0028】
図4は、本発明の実施の形態2に係るディスク装置の全体のモデル図であって、X軸方向からみた図である。また、実施の形態1と同じ符号のものに関しては構成及び作用が実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0029】
メインフレーム機構3には、制振部20が設けられており、制振部20は、補助質量290をX方向及びY方向に可撓性のある支持部材によって中空に保持して構成されている。なお、図4では支持部材を粘弾性モデルとしてX方向用の粘弾性モデルを20Xとし、Y方向用の粘弾性モデルを20Yとして示している。
【0030】
ここでメインフレーム機構3からX方向に伝達される力Fxをセンサユニット7で検出あるいは推定し、センサユニット7からの出力を増幅器8によって増幅させてドライバ9に信号を送り、ドライバ9は補助質量駆動部6に増幅器8の出力に応じた電気信号を供給して補助質量駆動部6が補助質量290を駆動する。ここで、センサユニット7は、例えばメインフレーム機構3と筐体1との相対位置に基づいて、緩衝部2の弾性係数及び粘性係数を加味して伝達される力Fxを検出する方法などが知られている。
【0031】
図5は、本実施の形態における制振部20の構成を示す斜視図であり、図6はその分解斜視図である。図5及び図6において、制振部20は、ベース部材201、バネ部材211及び212、バネ保持部材204、駆動用コイル230、駆動用コイル保持部材202、及び補助質量290で構成され、ベース部材201がメインフレーム機構3に固定されている。この制振部20はメインフレーム機構3のX方向及びY方向と平行に設置することが好ましい。
【0032】
バネ部材211は、X方向に可撓性のある第1の変形面211aと、Y方向に可撓性のある第2の変形面211bとを有する。バネ部材212は、バネ部材211と同じ寸法で構成されており、バネ部材111と同様にX方向に可撓性のある第1の変形面212aと、Y方向に可撓性のある第2の変形面212bとを有する。これらバネ部材211及び212は、図5及び図6に示すように、L字型の板バネで構成し、それぞれの板バネの端部のうち、それぞれの一方を補助質量290に接続し、他方をバネ保持部材204に接続する。図5及び図6では変形面211b側の端部と変形面212b側の端部とを補助質量290に接続し、変形面211a側の端部と変形面212a側の端部とをバネ保持部材204に接続している。またバネ保持部材204は、バネ部材211及び112を固定支持するのに十分な厚みを持った板状の直方体であり、変形面211b及び変形面212bと略並行にベース部材201に固定されている。
【0033】
駆動用コイル230は、バネ保持部材204と、バネ保持部材204と対抗する面にベース部材201に固定された駆動用コイル保持部材202とを支持脚として固定支持されている。この駆動用コイル230は、ドライバ9と電気的に接続されており、ドライバ9から駆動信号が入力される。また、バネ部材211及び212の変形面211a、212a、211b、212bは長手方向にスリットを設けることで、補助質量との共振系の共振周波数の調節、さらに、変形面211b、212bにおいては駆動用コイル230との干渉を避けている。
【0034】
永久磁石220は着磁方向がそれぞれ逆になった2つの領域を有したもので、図6では220aと220bと区別して示している。永久磁石220はヨーク241、242との内部に設置される。永久磁石220、ヨーク241、242は全体として可動する磁気回路として機能し、また永久磁石220とヨーク241、242を一体とした要素は補助質量290としての機能を果たすものであり、これら補助質量290は、バネ保持部材204、板バネ211、212との衝突を避けるため、補助質量290がX方向、Y方向に動く移動量を考慮して隙間を設けた状態で板バネ211、212によって中空に保持される。
【0035】
次に、制振装置の動作について説明する。メインフレーム機構3から補助質量290にX方向の力が伝達されると、板バネ211の第1の変形面211aと板バネ212の第1の変形面212aがX方向にたわみ、補助質量290はX方向へ可動する。また、メインフレーム機構3から補助質量290にY方向の力が伝達されると、板バネ211の第2の変形面211bと板バネ212の第2の変形面212bがY方向にたわみ、補助質量290はY方向へ移動する。したがって、補助質量290は、図5の白抜き矢印で示すX方向とY方向の2軸方向に移動する。一方、Z方向に対しては、板バネ211、212は変形面を有さないため、Z方向に剛性は高く、補助質量290はZ方向には移動しない。
【0036】
図7に、制振部の磁気回路の構造をY軸方向からみた断面図を示す。永久磁石220aはヨーク241側がS極、ヨーク242側がN極に着磁されている。永久磁石220bはヨーク241側がN極、ヨーク242側がS極に着磁されている。磁気回路のヨーク241、242に対し、永久磁石220はヨーク241上に固定され、ヨーク242に対して磁気ギャップを有して対向する構造となっている。さらに、この磁気ギャップに駆動用コイル230が配置される構成となっている。
【0037】
図8に、磁気回路の磁束の流れの模式図を示す。磁気ギャップにおいて、永久磁石220a側の領域(領域Aという)では、磁束がヨーク241側からヨーク242側に流れているのに対して、永久磁石220b側の領域(領域Bという)では磁束がヨーク242側からヨーク241側に流れており、磁束の方向が領域Aと領域Bとでは逆になっている。図7に示すように、駆動用コイル230は、領域Aと領域Bとの磁気ギャップに配置される。
【0038】
駆動用コイル230に電流を通電すると、駆動用コイル230は図7の白抜き矢印で示す第1の方向であるX方向にローレンツ力を受ける。図7では領域Aの駆動用コイル230は図7の+Y方向に電流が流れ、領域Bの駆動用コイル230は−Y方向に電流が流れているため、駆動用コイル220は−X方向に力を受ける。駆動用コイル230は制振装置のベース部材201に対して位置固定されているため、磁気回路のヨーク241、242ならびに永久磁石220が+X方向に移動し補助質量290として機能する。
【0039】
図9に、駆動用コイル230と永久磁石220の位置関係を説明する上面図を示す。永久磁石220はX方向とY方向に平行な略長方形で、領域Aと領域Bとの境はY方向に平行になっている。領域Aの磁束は+Z方向に流れており、領域Bでは−Z方向に流れている。駆動用コイル230はX方向とY方向に平行な略長方形で、Y方向に平行な1辺230aは領域Aの略中心を通り、Y方向に平行な他の1辺230bは領域Bの略中心を通る。本発明の磁気回路によるX方向への駆動方法は、磁束内を通る駆動用コイル230が受けるローレンツ力を利用しているため、駆動用コイル230の1辺230aと他の1辺230bとがそれぞれ領域A、領域B内にあるときに駆動力を受ける。
【0040】
したがって、永久磁石220の領域A、領域BのX方向長さは、磁気回路による補助質量290のX方向の駆動域となっている。また、駆動用コイル230のY方向長さは、永久磁石220のY方向長さよりも補助質量290のY方向の可動量分、上下にそれぞれ長手になっており、駆動用コイル230の1辺230aと他の1辺230bを通る永久磁石220の磁束は、補助質量290の構成要素である永久磁石220のY方向への移動に対して一定となる。したがって、補助質量290のY方向への移動に対して、磁気回路によるX方向への駆動力は変化せず、常に安定したX方向への駆動を行うことができる。
【0041】
以上のことから、第1の方向であるX方向に対しては電気信号によって補助質量290を駆動動作させる、いわゆる能動的動吸振器の機能を実現できる。補助質量290を磁気回路により能動的に駆動させることで、補助質量290の慣性力を高め、制振効果の向上が得られる。また、共振周波数以外の振動に対しても、装置振動を打ち消すように駆動させることで制振を行うことが可能となる。第2の方向であるY方向に対しては実施形態1と同様な動吸振器(以下、受動的動吸振器という)の機能が実現できる。ここで補助質量駆動部6は、補助質量290を駆動するものであって、駆動用コイル230やそれを支持する要素を示す。
【0042】
したがって、ディスクの高速回転によるスピンドルモータの回転軸方向と直交する2軸方向に発生する装置振動を、小型軽量な構成で抑圧し、磁気回路による補助質量の駆動方向に対しては飛躍的に高い制振効果を得ることが可能となる。これにより、小型軽量なディスク装置で高密度ディスクを高速回転させた場合でも、ピックアップ手段がトラッキング制御を行う方向に、磁気回路により補助質量290を駆動させるX方向を設定することで、ピックアップ手段を記録あるいは再生可能になるよう振動を抑圧し、さらに、ピックアップ手段のトラッキング制御を行う方向に対してディスク面内に直交する方向にY方向を設定することで、筐体に伝達する振動を抑圧することが可能となる。また、板バネ支持にしたことで少ない部品点数、摩擦のない無音可動が可能となる。また、言うまでもないが、駆動用コイル230にドライバ9からの駆動信号を送らない状態では、能動的動吸振器を受動的動吸振器として機能させることも可能である。
【0043】
また、補助質量290と板バネ211、212とから構成される共振系、すなわちX方向の能動的動吸振器とY方向の受動的動吸振器の共振周波数はともにディスクの回転周波数の最大値に設定することが好ましい。X方向の能動的動吸振器の場合、共振系の共振周波数と制御対象の周波数とが大きく離れていると、多大な制御力が必要となる。したがって、偏重心ディスクの回転により発生する装置振動が最も大きい、ディスクの回転周波数の最大値に設定することで、制御力を最小とし、効果的に振動の影響を抑えることが可能となる。
【0044】
実施の形態3
実施の形態1及び実施の形態2では、制振部をX方向及びY方向に可撓性をもつL字型の板バネを2つ設けて2軸の制振機構について示したが、X方向及びY方向に可撓性をもつ略コの字型の板バネを用いて構成しても構わない。
【0045】
図10は、本発明の実施の形態3に係るディスク装置の制振部の構成を示す斜視図であり、図11はその分解斜視図である。図10及び図11において、制振部は、ベース部材301、バネ部材311、バネ保持部材304、駆動用コイル330、駆動用コイル保持部材302、及び補助質量390で構成され、ベース部材301がメインフレーム機構3に固定されている。この制振部はメインフレーム機構3のX方向及びY方向と平行に設置することが好ましい。
【0046】
バネ部材311は、X方向に可撓性のある第1の変形面311a及び311bと、Y方向に可撓性のある第2の変形面311c及び311dとを有する。このバネ部材311は、図5及び図6に示すように、略コの字型の板バネで構成され、変形面311cと311dとの中間をバネ保持部材304と接続してベース部材301に中空で保持される。このようにして変形面311a及び311bと、変形面311c及び311dとはX方向及びY方向の振動に応じて変形可能に保持される。
【0047】
バネ部材311における第1の変形面311a及び311bの開口面側の端部は、底面とX軸方向の側面からなるヨーク341の側面と接続される。ヨーク341は、底面の内側に永久磁石320を設け、ヨーク342を上面となるようにヨーク341の内側面で挟み込むように接続して、このヨーク341、342及び永久磁石320が一体となって補助質量390となる。永久磁石320は、着磁方向がそれぞれ逆になった2つの領域を有したもので、図11中は320aと320bと区別している。
【0048】
ヨーク341は突出部341a、341bを備えることで、変形面311aと変形面311bがX方向にたわむ際、ヨーク341と変形面311a、311bとの衝突を避ける。また、同様にバネ保持部材304は突出部を備えることで、変形面311cと変形面311dがY方向にたわむ際、バネ保持部材304と変形面311c、311dとの衝突を避ける。また、補助質量390は、駆動用コイル保持部材302、バネ保持部材304との衝突を避けるため、補助質量390がY方向に動く移動量を考慮して隙間を設けた状態でバネ部材311に保持される。
【0049】
駆動用コイル330は、バネ保持部材304と、バネ保持部材304と対抗する面にベース部材301に固定された駆動用コイル保持部材302とを支持脚として固定支持されている。この駆動用コイル330は、ドライバ9と電気的に接続されており、ドライバ9から駆動信号が入力される。ここで駆動用コイル330は、ヨーク341、342及び永久磁石320からなる補助質量390に接触せずに開口部を通り抜けて設けられる。
【0050】
次に、制振部の動作について説明する。メインフレーム機構3から補助質量390にX方向の力が伝達されると、板バネ311の第1の変形面311aと第2の変形面311bがX方向にたわみ、補助質量390はX方向へ可動する。また、メインフレーム機構3から補助質量390にY方向の力が伝達されると、板バネ311の第3の変形面311cと第4の変形面311dがY方向にたわみ、補助質量390はY方向へ移動する。したがって、補助質量390は、図10の白抜き矢印で示すX方向とY方向の2軸方向に移動する。一方、Z方向に対しては、板バネ311は変形面を有さないため、Z方向に剛性は高く、補助質量390はZ方向には移動しない。
【0051】
以上の構成によって、第1の方向であるX方向に対しては電気信号によって補助質量390を駆動動作させる能動的動吸振器の機能を実現できる。第2の方向であるY方向に対しては受動的動吸振器の機能が実現できる。したがって、ディスクの高速回転によるスピンドルモータの回転軸方向と直交する2軸方向に発生する装置振動を、小型軽量な構成で抑圧し、駆動方向に対しては飛躍的に高い制振効果を得ることが可能となる。
【0052】
また、板バネ支持にしたことで少ない部品点数、摩擦のない無音可動が可能となる。さらに、コの字型にすることで板バネを1部品とし、L字型の板バネを2部品用いるよりもより部品点数を減らすことができるため、組立て性を改善することが可能となる。また、ここでは補助質量駆動部を備える制振部として説明したが、実施の形態1のように補助質量駆動部を備えない構成の制振部においても所期の目的を果たすことはいうまでもない。
【0053】
実施の形態4
実施の形態1から実施の形態3における制振部のバネ部材は2つの直交する方向に可撓性のあるL字型板バネ若しくはコの字型板バネを用いて構成していたが、一つの方向に可撓性のある板バネをX方向に平行に並べたものと、それに略直交するY方向に平行に並べたものでバネ部材を構成する制振部を備えても所期の目的を果たす。図12は、実施の形態4における制振部の構成を示す斜視図であり、図13はその分解斜視図である。
【0054】
バネ保持部材404は、Y方向に平行にベース部材401に固定されており、バネ部材のX方向に平行な側面にバネ部材413及び414の端部をベース部材401と接触しないように固定している。ここでバネ部材413及び414は一つの方向に可撓性のある板バネであり、それぞれがY方向に可撓性を有することになる。
【0055】
駆動用コイル保持部材402は、板状の一方の平面中央部に突出部402aを有し、その突出部402aでバネ部材413の他方の端部とベース部材401と接触しないように固定されている。同様に駆動用コイル保持部材403は、駆動用コイル保持部材402と対向して配置され、板状の一方の平面中央部に突出部403aaを有し、その突出部403aでバネ部材414の他方の端部とベース部材401と接触しないように固定されている。また、駆動用コイル保持部材402及び403のそれぞれは長手方向側面の一方の中央部で駆動用コイル430を支えるように固定され、それぞれの長手方向側面の他方で可動部ベース部材405を固定する。さらに、駆動用コイル430は、図12、図13に図示していないドライバ9からの駆動信号が入力される。
【0056】
ヨーク441は、底面の内側に永久磁石420を設け、ヨーク442を上面となるようにヨーク441の内側面で挟み込むように接続されている。また、ヨーク441のY方向に平行な面の駆動用コイル保持部材403側にそれぞれ突出部441a及び441bを設けられている。
【0057】
バネ部材411は一方の端部を駆動用コイル保持部材402の短手方向側面の一方に固定され、他方の端部をヨーク441の突出部441aに固定されている。同様にバネ部材412は一方の端部を駆動用コイル保持部材402の短手方向側面の他方に固定され、他方の端部をヨーク441の突出部441bに固定されている。
【0058】
このように保持することで、バネ部材411及び412は一つの方向に可撓性のある板バネであり、それぞれがX軸方向に可撓性を有することになる。この際、永久磁石420とヨーク441及び442とを一体としてX方向補助質量491となり、X方向補助質量に加えてバネ部材411及び412と駆動用コイル保持部材402及び403と可動部ベース部材405と駆動用コイル430とを一体としてY方向補助質量492となる。
【0059】
次に、制振装置の動作について説明する。メインフレーム機構3からX方向補助質量491にX方向の力が伝達されると、板バネ411と板バネ412がX方向にたわみ、X方向補助質量491はX方向へ可動する。また、メインフレーム機構3からY方向補助質量492にY方向の力が伝達されると、板バネ413と板バネ414がY方向にたわみ、Y補助質量492はY方向へ移動する。したがって、各補助質量は図12の白矢印で示すX方向とY方向の2軸方向に移動する。一方、Z方向に対しては、板バネ411、412、413、414は変形面を有さないため、Z方向に剛性は高く、X方向補助質量491、Y方向補助質量492はZ方向には移動しない。
【0060】
以上の構成によって、第1の方向であるX方向に対しては電気信号によってX方向補助質量491を駆動動作させる能動的動吸振器の機能が実現できる。第2の方向であるY方向に対してはY方向補助質量492による受動的動吸振器の機能を実現できる。したがって、ディスクの高速回転によるスピンドルモータの回転軸方向と直交する2軸方向に発生する装置振動を、小型軽量な構成で抑圧し、駆動方向に対しては飛躍的に高い制振効果を得ることが可能となる。さらに、X方向への能動的動吸振器全体をY方向補助質量492が含んでいることで、質量を増加させ、Y方向への受動的動吸振器の制振効果を向上させることが可能となる。また、板バネ支持にしたことで部品点数の削減、摩擦のない無音可動が可能となる。
【符号の説明】
【0061】
1 筐体
2 緩衝部
3 メインフレーム機構
10 制振部
101 ベース部材
104 バネ保持部材
190 補助質量
【技術分野】
【0001】
この発明は、光ディスクならびに磁気ディスク等のディスク状媒体を用いて記録あるいは再生を行うディスク装置に関するもので、特に、ディスクを高速に回転させた場合に発生する装置振動ならびに装置外部から作用する不要な振動を抑圧する制振部を備えたディスク装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の情報記録再生装置あるいは情報再生装置においては、格納する情報の大容量化、情報転送レートの高速化さらには小型軽量化が進んでいる。磁気ディスクや光ディスクでは、転送レートの高速化に伴い、記録あるいは再生する際のディスク回転速度の高速化が進展している。ディスクは、回転軸と重心位置とが完全には一致することはまれであり、偏重心距離といわれる回転軸に対する重心位置のずれ量を持つ。この偏重心距離とディスクの質量との影響で、ディスクの回転に伴ってディスクを回転させるスピンドルモータの回転軸方向と直交する方向に不要な遠心力を発生する。この不要な遠心力は運動エネルギーであるから、回転速度の2乗に比例するので、不要な遠心力はディスク回転速度の高速化に応じて、2次関数的に急激に増加するし、安定した記録あるいは再生をする上で問題があった。また装置の小型軽量化によって、外部から加えられる振動に対して装置の加速度変動や位置変動が発生しやすい形態となる。そのため、ディスクを記録あるいは再生する際、装置全体がディスク回転と同期して自励振動し、情報の記録あるいは再生を正しく行うことが困難になるという問題があった。
【0003】
この分野において振動を抑える一般的な制振方法として、スピンドルモータを有するメインフレームに、補助質量と補助質量を支持する弾性部材による共振系を増設する方法がある。これは共振系を制振対象に付加することにより、共振系の共振周波数に等しい振動数の加振入力に対して、補助質量の位相が90度遅れて振動する共振現象が発生し、その補助質量の慣性力が制振対象の振動を打ち消すように働くものである。
【0004】
また、偏重心による振動を抑制する方法として、補助質量と、補助質量を支持する圧縮コイルバネと、圧縮コイルバネの伸縮する方向を案内するガイドとにより構成された動吸振器を備える方法がある(例えば、特許文献1参照)。また別の方法として、スピンドルモータを有するメインフレームと、メインフレームを収納する筐体とを第一の弾性体を介して結合させ、さらに共振周波数をディスクの回転周波数よりも若干大きい周波数に設定した補助質量となるサブフレームとメインフレームとを第二の弾性体を介して結合させる方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−003582号公報(第2−4頁、第1図)
【特許文献2】特開平11−328944号公報(第2−5頁、第1−3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の方法では、ガイドにより伸縮する1軸方向にのみ制振が行われるが、ディスクの高速回転による装置振動は、スピンドルモータの回転軸方向と直交する方向に発生するため、スピンドルモータの回転軸方向と直交する1軸方向にのみ制振を行っても、十分な制振を行うことができない。また、ピックアップ手段のトラッキング制御を行う方向に案内するガイドを設けて制振を行ったとしても、制振方向と直交する方向の振動がディスク装置の筐体に取付けられている電気回路基板等を振動させてしまい、その電気回路基板等の振動がピックアップ手段に影響を及ぼすこととなり、ディスクの情報の記録エラーや再生エラー等が発生してしまうという問題があった。
【0007】
なお、特許文献1の方法を用いて、案内軸と付加質量と圧縮コイルばねとからなる動吸振器を2つ用いて、それぞれの案内軸の方向を、ピックアップ手段のトラッキング制御を行う方向とその方向に直交する方向とにして設けるとしても、動吸振器を複数設けるための空間が必要となり、ディスク装置そのものの小型化や軽量化に向かないという問題がある。
【0008】
また、特許文献2の方では、十分な動吸振器の制振効果を確保するためには補助質量であるサブフレームを大きく設定する必要があり、ディスク装置そのものの大型化を招くという問題があった。特に、特許文献2で第二の弾性体の弾性部材として好ましいとされるゴムまたは樹脂で構成する場合は、減衰係数が比較的高いことから、補助質量が共振する際の慣性力を低下させてしまうため、補助質量の設定を大きくする必要があった。
【0009】
この発明は、上述のような課題を解消するためになされたもので、小型軽量な装置で、2軸方向の振動を抑圧するディスク装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係るディスク装置は、ディスクを回転させるモータ及び前記ディスクに情報を記録しまたは情報を読取るピックアップ手段を有するメインフレーム機構と、前記メインフレーム機構に接して設けられた制振部とを備えるディスク装置であって、前記制振部は、第一の方向に可撓性のある第一の変形面と前記第一の方向に略直交する第二の方向に可撓性のある第二の変形面とをもつバネ部材及び前記バネ部材に保持される補助質量を有し、前記第一の変形面と前記第二の変形面とが可撓自在に設けられたものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明は、第一の方向と、第一の方向に略直交する第二の方向とに可撓性のある変形面を有するバネ部材で補助質量を保持し、それぞれの変形面の可撓性を維持してメインフレーム機構に設けられた制振部を備えているため、バネ部材で支持された補助質量を2軸方向に共振させることが可能となる。これにより、ディスク装置内で大きな空間を必要としない小型軽量な制振部による2軸方向の振動の抑圧効果によって安定して記録あるいは再生が可能なディスク装置を構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1に係るディスク装置の全体のモデル図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係るディスク装置の制振部の斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係るディスク装置の制振部の構造を示す分解斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態2に係るディスク装置の全体のモデル図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係るディスク装置の制振部の斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係るディスク装置の制振部の構造を示す分解斜視図である。
【図7】本発明の実施の形態2に係る制振部の磁気回路の構造を示した断面図である。
【図8】本発明の実施の形態2に係る制振部の磁気回路の磁束の方向を示した概略図である。
【図9】本発明の実施の形態2に係る制振部の磁気回路のXY方向の位置関係を示した上面図である。
【図10】本発明の実施の形態3に係るディスク装置の制振部の斜視図である。
【図11】本発明の実施の形態3に係るディスク装置の制振部の構造を示す分解斜視図である。
【図12】本発明の実施の形態4に係るディスク装置の制振部の斜視図である。
【図13】本発明の実施の形態4に係るディスク装置の制振部の構造を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1
図1は、本発明の実施の形態1に係るディスク装置の全体のモデル図であって、X軸方向からみた図である。本明細書では立体の軸をX、Y、Zの3軸で表すこととし、メインフレーム機構3が有するスピンドルモータの回転軸方向をZ軸、Z軸と直交且つメインフレーム機構3が有するピックアップ手段がトラッキング制御を行う方向をX軸、Z軸及びX軸方向に直交する方向をY軸として示す。
【0014】
ディスク装置は、筐体1にメインフレーム機構3を緩衝部2を介して結合する。ここでメインフレーム機構3は、ディスクを回転させるスピンドルモータとディスクに情報を記録しまたは情報を読取るピックアップ手段と、スピンドルモータ及びピックアップ手段を保持するフレーム類とを有する機構系ユニットである。
【0015】
緩衝部2は、筐体1に対してメインフレーム機構3を支持し、筐体1に作用する外部振動の伝達を緩衝する機能を持つもので、ゴムや樹脂などのインシュレータなどを用いてその振動を抑制するものである。このメインフレーム機構3における緩衝部2との結合する面は、メインフレーム機構3の底面であることが好ましく、複数個所で支持することがよく用いられる。
【0016】
メインフレーム機構3には、制振部10が設けられており、制振部10は、補助質量190をX方向及びY方向に可撓性のある支持部材によって中空に保持して構成されている。なお、図1では支持部材を粘弾性モデルとしてX方向用の粘弾性モデルを10Xとし、Y方向用の粘弾性モデルを10Yとして示している。制振部10はディスクの中心に近い箇所に設けることが好ましい。
【0017】
このように補助質量190をX方向及びY方向に可撓性のある支持部材によって中空に保持することで、補助質量190はメインフレーム機構3から伝達される力Fxを受けると、X方向に可動してその慣性力によりメインフレーム機構3のX方向の振動を抑圧する。また、補助質量5はメインフレーム機構3から伝達される力Fyを受けると、Y方向に可動してその慣性力によりメインフレーム機構3のY方向の振動を抑圧する。
【0018】
図2は、本実施の形態における制振部10の構成を示す斜視図であり、図3はその分解斜視図である。図2及び図3において、制振部10は、ベース部材101と、バネ部材111及び112と、バネ保持部材104と補助質量190とで構成され、ベース部材101がメインフレーム機構3に固定されている。この制振部10はメインフレーム機構3のX方向及びY方向と平行に設置することが好ましい。
【0019】
バネ部材111は、X方向に可撓性のある第1の変形面111aと、Y方向に可撓性のある第2の変形面111bとを有する。バネ部材112は、バネ部材111と同じ寸法で構成されており、バネ部材111と同様にX方向に可撓性のある第1の変形面112aと、Y方向に可撓性のある第2の変形面112bとを有する。これらバネ部材111及び112は、図2及び図3に示すように、L字型の板バネで構成し、それぞれの板バネの端部のうち、それぞれの一方を補助質量190に接続し、他方をバネ保持部材104に接続する。図2及び図3では変形面111b側の端部と変形面112b側の端部とを補助質量190に接続し、変形面111a側の端部と変形面112a側の端部とをバネ保持部材104に接続している。またバネ保持部材104は、バネ部材111及び112を固定支持するのに十分な厚みを持った板状の直方体であり、変形面111b及び変形面112bと略並行にベース部材101に固定されている。
【0020】
ここで、バネ部材111及び112とバネ保持部材104とで上下に開口面のある直方体の筒形状を形成し、バネ保持部材104のみがベース部材101と固定するように、バネ部材111及び112とベース部材101との間にはそれぞれが接触しないように隙間を形成されている。また、変形面111b側の端部と変形面112b側の端部とが接続されている面によって略直方体の補助質量190が、ベース部材101との間が接触しないように中空に保持されている。また補助質量190は、バネ部材111及び112の変形面111a、111b、112a、112bが変形しても、バネ部材111及び112とバネ保持部材104との他の面にぶつからないだけの隙間を持って保持されていることが好ましい。さらに補助質量190は、バネ部材111及び112と接続する面190aに突出部を設けることで、接続される変形面111bと変形面112bの接触領域を限定して可撓する領域を確保することが可能となるので、制振部10の大型化を抑えることができる。
【0021】
また、バネ部材111及び112の変形面111a、111b、112a、112bは長手方向にスリットを設けることで、補助質量190との共振系の共振周波数の調整を行っている。共振周波数を低くしたい場合はスリットの幅を大きくすればよい。これにより、各変形面の長手方向の長さを長くする必要なく、共振周波数を低く設定することができ、小型に構成が可能となっている。
【0022】
ここで板バネ111及び112は、それぞれの第1の変形面が平行で且つそれぞれの第2の変形面が平行になるよう配置されれば良い。したがって、図2及び図3に示したように板バネ111と板バネ112はY方向に線対称の配置に限定するものではなく、点対称となる配置でも良い。この場合、補助質量190の突出部を190aの面及び190bの面に設けて板バネ111及び112の一方の変形面の一端のそれぞれに接続して、他方の変形面の一端をそれぞれベース部材101に固定された二つのバネ保持部材で補助質量190が中空に保持するように保持する構成とすることとなる。
【0023】
次に制振部10の振動があった場合の作用について説明する。メインフレーム機構3から補助質量190にX方向の力が伝達されると、板バネ111の第1の変形面111aと板バネ112の第1の変形面112aがX方向にたわみ、補助質量190はX方向へ移動する。また、メインフレーム機構3から補助質量190にY方向の力が伝達されると、板バネ111の第2の変形面111bと板バネ112の第2の変形面112bがたわみ、補助質量190はY方向へ移動する。したがって、補助質量190は図3の白抜き矢印で示すX方向とY方向の2軸方向に移動する。一方、Z方向に対して、板バネ111、112は変形面を有さないため、Z方向に剛性は高く、補助質量190はZ方向に移動しない。
【0024】
以上の結果から、上述した制振部10の構成及び作用によって、第1の方向であるX方向と、第2の方向であるY方向の振動を抑圧する動吸振器の機能が実現できる。したがって、ディスクの高速回転によるスピンドルモータの回転軸方向となるZ軸方向と直交する2軸方向に発生する装置振動を、小型軽量な構成で、抑圧することが可能となる。また、緩衝部2で抑制しきれなかった筐体1に作用する外部振動の伝達によるメインフレーム機構3の振動に対しても抑圧する効果をもつ。さらに、板バネ支持にしたことで少ない部品点数、摩擦のない無音可動が可能となる。
【0025】
また、補助質量190と板バネ111、112とから構成される共振系、すなわち動吸振器の共振周波数はX方向、Y方向ともに、ディスクの回転周波数の最大値に設定することが好ましい。偏重心ディスクの回転により発生する装置振動は、回転速度の2乗に比例することから、最大のディスク回転速度において、ディスク情報の記録あるいは再生に影響が大きい。一方、ディスクが低速回転の際に発生する装置振動は微弱であり、影響が少ない。したがって、共振周波数をディスクの回転周波数の最大値に設定することにより、効果的に振動の影響を抑えることが可能となる。
【0026】
また、バネ部材111及び112は板バネを用いることが好ましい。板バネはゴムや樹脂のインシュレータと比較して、粘性係数が小さいため、共振系の減衰係数を小さくすることができる。減衰係数が小さい板バネを用いることで、動吸振器の補助質量が共振する際の慣性力を大きくすることができ、制振効果が高まる。したがって、ゴムや樹脂のインシュレータを用いた際と比較して、補助質量を小型軽量にすることが可能となる。また、共振周波数は共振系のパラメータから決定されるため、抑圧したい周波数域が得られるようにバネ部材を設計する必要がある。ゴムや樹脂のインシュレータの場合は、制振対象の周波数の変化に対し部材の見直しが必要となるが、板バネでは図中に示してあるように板バネの平面にスリットや穴を設けることで、比較的、安価で容易に、共振周波数の設定が可能となる。材質は金属製が好ましい。車載用途などの過酷な使用環境においては、使用時の温度変化が激しく、ゴムや樹脂などの温度依存性の高い材質を用いた場合、共振系のパラメータ変動が激しいため、共振周波数や共振時の利得が安定しない。したがって、温度依存性の低い金属製の材質を用いることで、高い信頼性が得られる。
【0027】
実施の形態2
実施の形態1では、メインフレーム機構3から補助質量に伝達される力を受けたときに、その慣性力によりメインフレーム機構3の振動を抑圧する作用を持つ構成としていたが、発明の実施の形態2では、メインフレーム機構3から補助質量に伝達される力をセンサユニットによって検出し、それに応じて補助質量を駆動する補助質量駆動部を備えることで補助質量の慣性力を制御する作用をもたせることで制振部の大型化を抑えながら制振効果を向上させることができる。
【0028】
図4は、本発明の実施の形態2に係るディスク装置の全体のモデル図であって、X軸方向からみた図である。また、実施の形態1と同じ符号のものに関しては構成及び作用が実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0029】
メインフレーム機構3には、制振部20が設けられており、制振部20は、補助質量290をX方向及びY方向に可撓性のある支持部材によって中空に保持して構成されている。なお、図4では支持部材を粘弾性モデルとしてX方向用の粘弾性モデルを20Xとし、Y方向用の粘弾性モデルを20Yとして示している。
【0030】
ここでメインフレーム機構3からX方向に伝達される力Fxをセンサユニット7で検出あるいは推定し、センサユニット7からの出力を増幅器8によって増幅させてドライバ9に信号を送り、ドライバ9は補助質量駆動部6に増幅器8の出力に応じた電気信号を供給して補助質量駆動部6が補助質量290を駆動する。ここで、センサユニット7は、例えばメインフレーム機構3と筐体1との相対位置に基づいて、緩衝部2の弾性係数及び粘性係数を加味して伝達される力Fxを検出する方法などが知られている。
【0031】
図5は、本実施の形態における制振部20の構成を示す斜視図であり、図6はその分解斜視図である。図5及び図6において、制振部20は、ベース部材201、バネ部材211及び212、バネ保持部材204、駆動用コイル230、駆動用コイル保持部材202、及び補助質量290で構成され、ベース部材201がメインフレーム機構3に固定されている。この制振部20はメインフレーム機構3のX方向及びY方向と平行に設置することが好ましい。
【0032】
バネ部材211は、X方向に可撓性のある第1の変形面211aと、Y方向に可撓性のある第2の変形面211bとを有する。バネ部材212は、バネ部材211と同じ寸法で構成されており、バネ部材111と同様にX方向に可撓性のある第1の変形面212aと、Y方向に可撓性のある第2の変形面212bとを有する。これらバネ部材211及び212は、図5及び図6に示すように、L字型の板バネで構成し、それぞれの板バネの端部のうち、それぞれの一方を補助質量290に接続し、他方をバネ保持部材204に接続する。図5及び図6では変形面211b側の端部と変形面212b側の端部とを補助質量290に接続し、変形面211a側の端部と変形面212a側の端部とをバネ保持部材204に接続している。またバネ保持部材204は、バネ部材211及び112を固定支持するのに十分な厚みを持った板状の直方体であり、変形面211b及び変形面212bと略並行にベース部材201に固定されている。
【0033】
駆動用コイル230は、バネ保持部材204と、バネ保持部材204と対抗する面にベース部材201に固定された駆動用コイル保持部材202とを支持脚として固定支持されている。この駆動用コイル230は、ドライバ9と電気的に接続されており、ドライバ9から駆動信号が入力される。また、バネ部材211及び212の変形面211a、212a、211b、212bは長手方向にスリットを設けることで、補助質量との共振系の共振周波数の調節、さらに、変形面211b、212bにおいては駆動用コイル230との干渉を避けている。
【0034】
永久磁石220は着磁方向がそれぞれ逆になった2つの領域を有したもので、図6では220aと220bと区別して示している。永久磁石220はヨーク241、242との内部に設置される。永久磁石220、ヨーク241、242は全体として可動する磁気回路として機能し、また永久磁石220とヨーク241、242を一体とした要素は補助質量290としての機能を果たすものであり、これら補助質量290は、バネ保持部材204、板バネ211、212との衝突を避けるため、補助質量290がX方向、Y方向に動く移動量を考慮して隙間を設けた状態で板バネ211、212によって中空に保持される。
【0035】
次に、制振装置の動作について説明する。メインフレーム機構3から補助質量290にX方向の力が伝達されると、板バネ211の第1の変形面211aと板バネ212の第1の変形面212aがX方向にたわみ、補助質量290はX方向へ可動する。また、メインフレーム機構3から補助質量290にY方向の力が伝達されると、板バネ211の第2の変形面211bと板バネ212の第2の変形面212bがY方向にたわみ、補助質量290はY方向へ移動する。したがって、補助質量290は、図5の白抜き矢印で示すX方向とY方向の2軸方向に移動する。一方、Z方向に対しては、板バネ211、212は変形面を有さないため、Z方向に剛性は高く、補助質量290はZ方向には移動しない。
【0036】
図7に、制振部の磁気回路の構造をY軸方向からみた断面図を示す。永久磁石220aはヨーク241側がS極、ヨーク242側がN極に着磁されている。永久磁石220bはヨーク241側がN極、ヨーク242側がS極に着磁されている。磁気回路のヨーク241、242に対し、永久磁石220はヨーク241上に固定され、ヨーク242に対して磁気ギャップを有して対向する構造となっている。さらに、この磁気ギャップに駆動用コイル230が配置される構成となっている。
【0037】
図8に、磁気回路の磁束の流れの模式図を示す。磁気ギャップにおいて、永久磁石220a側の領域(領域Aという)では、磁束がヨーク241側からヨーク242側に流れているのに対して、永久磁石220b側の領域(領域Bという)では磁束がヨーク242側からヨーク241側に流れており、磁束の方向が領域Aと領域Bとでは逆になっている。図7に示すように、駆動用コイル230は、領域Aと領域Bとの磁気ギャップに配置される。
【0038】
駆動用コイル230に電流を通電すると、駆動用コイル230は図7の白抜き矢印で示す第1の方向であるX方向にローレンツ力を受ける。図7では領域Aの駆動用コイル230は図7の+Y方向に電流が流れ、領域Bの駆動用コイル230は−Y方向に電流が流れているため、駆動用コイル220は−X方向に力を受ける。駆動用コイル230は制振装置のベース部材201に対して位置固定されているため、磁気回路のヨーク241、242ならびに永久磁石220が+X方向に移動し補助質量290として機能する。
【0039】
図9に、駆動用コイル230と永久磁石220の位置関係を説明する上面図を示す。永久磁石220はX方向とY方向に平行な略長方形で、領域Aと領域Bとの境はY方向に平行になっている。領域Aの磁束は+Z方向に流れており、領域Bでは−Z方向に流れている。駆動用コイル230はX方向とY方向に平行な略長方形で、Y方向に平行な1辺230aは領域Aの略中心を通り、Y方向に平行な他の1辺230bは領域Bの略中心を通る。本発明の磁気回路によるX方向への駆動方法は、磁束内を通る駆動用コイル230が受けるローレンツ力を利用しているため、駆動用コイル230の1辺230aと他の1辺230bとがそれぞれ領域A、領域B内にあるときに駆動力を受ける。
【0040】
したがって、永久磁石220の領域A、領域BのX方向長さは、磁気回路による補助質量290のX方向の駆動域となっている。また、駆動用コイル230のY方向長さは、永久磁石220のY方向長さよりも補助質量290のY方向の可動量分、上下にそれぞれ長手になっており、駆動用コイル230の1辺230aと他の1辺230bを通る永久磁石220の磁束は、補助質量290の構成要素である永久磁石220のY方向への移動に対して一定となる。したがって、補助質量290のY方向への移動に対して、磁気回路によるX方向への駆動力は変化せず、常に安定したX方向への駆動を行うことができる。
【0041】
以上のことから、第1の方向であるX方向に対しては電気信号によって補助質量290を駆動動作させる、いわゆる能動的動吸振器の機能を実現できる。補助質量290を磁気回路により能動的に駆動させることで、補助質量290の慣性力を高め、制振効果の向上が得られる。また、共振周波数以外の振動に対しても、装置振動を打ち消すように駆動させることで制振を行うことが可能となる。第2の方向であるY方向に対しては実施形態1と同様な動吸振器(以下、受動的動吸振器という)の機能が実現できる。ここで補助質量駆動部6は、補助質量290を駆動するものであって、駆動用コイル230やそれを支持する要素を示す。
【0042】
したがって、ディスクの高速回転によるスピンドルモータの回転軸方向と直交する2軸方向に発生する装置振動を、小型軽量な構成で抑圧し、磁気回路による補助質量の駆動方向に対しては飛躍的に高い制振効果を得ることが可能となる。これにより、小型軽量なディスク装置で高密度ディスクを高速回転させた場合でも、ピックアップ手段がトラッキング制御を行う方向に、磁気回路により補助質量290を駆動させるX方向を設定することで、ピックアップ手段を記録あるいは再生可能になるよう振動を抑圧し、さらに、ピックアップ手段のトラッキング制御を行う方向に対してディスク面内に直交する方向にY方向を設定することで、筐体に伝達する振動を抑圧することが可能となる。また、板バネ支持にしたことで少ない部品点数、摩擦のない無音可動が可能となる。また、言うまでもないが、駆動用コイル230にドライバ9からの駆動信号を送らない状態では、能動的動吸振器を受動的動吸振器として機能させることも可能である。
【0043】
また、補助質量290と板バネ211、212とから構成される共振系、すなわちX方向の能動的動吸振器とY方向の受動的動吸振器の共振周波数はともにディスクの回転周波数の最大値に設定することが好ましい。X方向の能動的動吸振器の場合、共振系の共振周波数と制御対象の周波数とが大きく離れていると、多大な制御力が必要となる。したがって、偏重心ディスクの回転により発生する装置振動が最も大きい、ディスクの回転周波数の最大値に設定することで、制御力を最小とし、効果的に振動の影響を抑えることが可能となる。
【0044】
実施の形態3
実施の形態1及び実施の形態2では、制振部をX方向及びY方向に可撓性をもつL字型の板バネを2つ設けて2軸の制振機構について示したが、X方向及びY方向に可撓性をもつ略コの字型の板バネを用いて構成しても構わない。
【0045】
図10は、本発明の実施の形態3に係るディスク装置の制振部の構成を示す斜視図であり、図11はその分解斜視図である。図10及び図11において、制振部は、ベース部材301、バネ部材311、バネ保持部材304、駆動用コイル330、駆動用コイル保持部材302、及び補助質量390で構成され、ベース部材301がメインフレーム機構3に固定されている。この制振部はメインフレーム機構3のX方向及びY方向と平行に設置することが好ましい。
【0046】
バネ部材311は、X方向に可撓性のある第1の変形面311a及び311bと、Y方向に可撓性のある第2の変形面311c及び311dとを有する。このバネ部材311は、図5及び図6に示すように、略コの字型の板バネで構成され、変形面311cと311dとの中間をバネ保持部材304と接続してベース部材301に中空で保持される。このようにして変形面311a及び311bと、変形面311c及び311dとはX方向及びY方向の振動に応じて変形可能に保持される。
【0047】
バネ部材311における第1の変形面311a及び311bの開口面側の端部は、底面とX軸方向の側面からなるヨーク341の側面と接続される。ヨーク341は、底面の内側に永久磁石320を設け、ヨーク342を上面となるようにヨーク341の内側面で挟み込むように接続して、このヨーク341、342及び永久磁石320が一体となって補助質量390となる。永久磁石320は、着磁方向がそれぞれ逆になった2つの領域を有したもので、図11中は320aと320bと区別している。
【0048】
ヨーク341は突出部341a、341bを備えることで、変形面311aと変形面311bがX方向にたわむ際、ヨーク341と変形面311a、311bとの衝突を避ける。また、同様にバネ保持部材304は突出部を備えることで、変形面311cと変形面311dがY方向にたわむ際、バネ保持部材304と変形面311c、311dとの衝突を避ける。また、補助質量390は、駆動用コイル保持部材302、バネ保持部材304との衝突を避けるため、補助質量390がY方向に動く移動量を考慮して隙間を設けた状態でバネ部材311に保持される。
【0049】
駆動用コイル330は、バネ保持部材304と、バネ保持部材304と対抗する面にベース部材301に固定された駆動用コイル保持部材302とを支持脚として固定支持されている。この駆動用コイル330は、ドライバ9と電気的に接続されており、ドライバ9から駆動信号が入力される。ここで駆動用コイル330は、ヨーク341、342及び永久磁石320からなる補助質量390に接触せずに開口部を通り抜けて設けられる。
【0050】
次に、制振部の動作について説明する。メインフレーム機構3から補助質量390にX方向の力が伝達されると、板バネ311の第1の変形面311aと第2の変形面311bがX方向にたわみ、補助質量390はX方向へ可動する。また、メインフレーム機構3から補助質量390にY方向の力が伝達されると、板バネ311の第3の変形面311cと第4の変形面311dがY方向にたわみ、補助質量390はY方向へ移動する。したがって、補助質量390は、図10の白抜き矢印で示すX方向とY方向の2軸方向に移動する。一方、Z方向に対しては、板バネ311は変形面を有さないため、Z方向に剛性は高く、補助質量390はZ方向には移動しない。
【0051】
以上の構成によって、第1の方向であるX方向に対しては電気信号によって補助質量390を駆動動作させる能動的動吸振器の機能を実現できる。第2の方向であるY方向に対しては受動的動吸振器の機能が実現できる。したがって、ディスクの高速回転によるスピンドルモータの回転軸方向と直交する2軸方向に発生する装置振動を、小型軽量な構成で抑圧し、駆動方向に対しては飛躍的に高い制振効果を得ることが可能となる。
【0052】
また、板バネ支持にしたことで少ない部品点数、摩擦のない無音可動が可能となる。さらに、コの字型にすることで板バネを1部品とし、L字型の板バネを2部品用いるよりもより部品点数を減らすことができるため、組立て性を改善することが可能となる。また、ここでは補助質量駆動部を備える制振部として説明したが、実施の形態1のように補助質量駆動部を備えない構成の制振部においても所期の目的を果たすことはいうまでもない。
【0053】
実施の形態4
実施の形態1から実施の形態3における制振部のバネ部材は2つの直交する方向に可撓性のあるL字型板バネ若しくはコの字型板バネを用いて構成していたが、一つの方向に可撓性のある板バネをX方向に平行に並べたものと、それに略直交するY方向に平行に並べたものでバネ部材を構成する制振部を備えても所期の目的を果たす。図12は、実施の形態4における制振部の構成を示す斜視図であり、図13はその分解斜視図である。
【0054】
バネ保持部材404は、Y方向に平行にベース部材401に固定されており、バネ部材のX方向に平行な側面にバネ部材413及び414の端部をベース部材401と接触しないように固定している。ここでバネ部材413及び414は一つの方向に可撓性のある板バネであり、それぞれがY方向に可撓性を有することになる。
【0055】
駆動用コイル保持部材402は、板状の一方の平面中央部に突出部402aを有し、その突出部402aでバネ部材413の他方の端部とベース部材401と接触しないように固定されている。同様に駆動用コイル保持部材403は、駆動用コイル保持部材402と対向して配置され、板状の一方の平面中央部に突出部403aaを有し、その突出部403aでバネ部材414の他方の端部とベース部材401と接触しないように固定されている。また、駆動用コイル保持部材402及び403のそれぞれは長手方向側面の一方の中央部で駆動用コイル430を支えるように固定され、それぞれの長手方向側面の他方で可動部ベース部材405を固定する。さらに、駆動用コイル430は、図12、図13に図示していないドライバ9からの駆動信号が入力される。
【0056】
ヨーク441は、底面の内側に永久磁石420を設け、ヨーク442を上面となるようにヨーク441の内側面で挟み込むように接続されている。また、ヨーク441のY方向に平行な面の駆動用コイル保持部材403側にそれぞれ突出部441a及び441bを設けられている。
【0057】
バネ部材411は一方の端部を駆動用コイル保持部材402の短手方向側面の一方に固定され、他方の端部をヨーク441の突出部441aに固定されている。同様にバネ部材412は一方の端部を駆動用コイル保持部材402の短手方向側面の他方に固定され、他方の端部をヨーク441の突出部441bに固定されている。
【0058】
このように保持することで、バネ部材411及び412は一つの方向に可撓性のある板バネであり、それぞれがX軸方向に可撓性を有することになる。この際、永久磁石420とヨーク441及び442とを一体としてX方向補助質量491となり、X方向補助質量に加えてバネ部材411及び412と駆動用コイル保持部材402及び403と可動部ベース部材405と駆動用コイル430とを一体としてY方向補助質量492となる。
【0059】
次に、制振装置の動作について説明する。メインフレーム機構3からX方向補助質量491にX方向の力が伝達されると、板バネ411と板バネ412がX方向にたわみ、X方向補助質量491はX方向へ可動する。また、メインフレーム機構3からY方向補助質量492にY方向の力が伝達されると、板バネ413と板バネ414がY方向にたわみ、Y補助質量492はY方向へ移動する。したがって、各補助質量は図12の白矢印で示すX方向とY方向の2軸方向に移動する。一方、Z方向に対しては、板バネ411、412、413、414は変形面を有さないため、Z方向に剛性は高く、X方向補助質量491、Y方向補助質量492はZ方向には移動しない。
【0060】
以上の構成によって、第1の方向であるX方向に対しては電気信号によってX方向補助質量491を駆動動作させる能動的動吸振器の機能が実現できる。第2の方向であるY方向に対してはY方向補助質量492による受動的動吸振器の機能を実現できる。したがって、ディスクの高速回転によるスピンドルモータの回転軸方向と直交する2軸方向に発生する装置振動を、小型軽量な構成で抑圧し、駆動方向に対しては飛躍的に高い制振効果を得ることが可能となる。さらに、X方向への能動的動吸振器全体をY方向補助質量492が含んでいることで、質量を増加させ、Y方向への受動的動吸振器の制振効果を向上させることが可能となる。また、板バネ支持にしたことで部品点数の削減、摩擦のない無音可動が可能となる。
【符号の説明】
【0061】
1 筐体
2 緩衝部
3 メインフレーム機構
10 制振部
101 ベース部材
104 バネ保持部材
190 補助質量
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクを回転させるモータ及び前記ディスクに情報を記録しまたは情報を読取るピックアップ手段を有するメインフレーム機構と、
前記メインフレーム機構に接して設けられた制振部とを備えるディスク装置であって、
前記制振部は、第一の方向に可撓性のある第一の変形面と前記第一の方向に略直交する第二の方向に可撓性のある第二の変形面とをもつバネ部材及び前記バネ部材に保持される補助質量を有し、前記第一の変形面と前記第二の変形面とが可撓自在に設けられたものである
ことを特徴とするディスク装置。
【請求項2】
前記メインフレーム機構から前記補助質量の第一の方向に伝達される伝達力を検出するセンサユニットと、
前記センサユニットの検出結果に基づき前記補助質量を駆動する補助質量駆動部と
を備えることを特徴とする請求項1に記載のディスク装置。
【請求項3】
補助質量は、ヨークと前記ヨークに取り付けられた磁石とからなり、
補助質量駆動部は、前記ヨークと前記磁石との隙間に配置されメインフレーム機構に支持されるコイルからななり、
前記駆動用コイルの第二の方向の長さは、前記磁石の第二の方向の長さと前記補助質量の第二の方向の可動量とを足した長さ以上である
ことを特徴とする請求項2に記載のディスク装置。
【請求項4】
第一の方向は、前記ピックアップ手段のトラッキング制御を行う方向である
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のディスク装置。
【請求項5】
第二の方向は、前記ディスクの面に平行な方向である
ことを特徴とする請求項4に記載のディスク装置。
【請求項6】
補助質量とバネ部材とから構成される共振系の共振周波数は、第一の方向と第二の方向共にディスクの回転周波数の最大値に設定することを特徴とした請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のディスク装置。
【請求項7】
バネ部材は、2つの略L字型板バネよりなされるものであって、
それぞれの前記L字型板バネの一方の面が前記補助質量と接する面であり、それぞれの前記L字型板バネの他方の面がそれぞれ対向して構成されている
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のディスク装置。
【請求項8】
バネ部材は、略コの字型板バネよりなされるものである
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のディスク装置。
【請求項9】
バネ部材は、1組の平行な板バネと、前記1組の平行な板バネと直角に位置する他の1組の平行な板バネにより構成される
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のディスク装置。
【請求項1】
ディスクを回転させるモータ及び前記ディスクに情報を記録しまたは情報を読取るピックアップ手段を有するメインフレーム機構と、
前記メインフレーム機構に接して設けられた制振部とを備えるディスク装置であって、
前記制振部は、第一の方向に可撓性のある第一の変形面と前記第一の方向に略直交する第二の方向に可撓性のある第二の変形面とをもつバネ部材及び前記バネ部材に保持される補助質量を有し、前記第一の変形面と前記第二の変形面とが可撓自在に設けられたものである
ことを特徴とするディスク装置。
【請求項2】
前記メインフレーム機構から前記補助質量の第一の方向に伝達される伝達力を検出するセンサユニットと、
前記センサユニットの検出結果に基づき前記補助質量を駆動する補助質量駆動部と
を備えることを特徴とする請求項1に記載のディスク装置。
【請求項3】
補助質量は、ヨークと前記ヨークに取り付けられた磁石とからなり、
補助質量駆動部は、前記ヨークと前記磁石との隙間に配置されメインフレーム機構に支持されるコイルからななり、
前記駆動用コイルの第二の方向の長さは、前記磁石の第二の方向の長さと前記補助質量の第二の方向の可動量とを足した長さ以上である
ことを特徴とする請求項2に記載のディスク装置。
【請求項4】
第一の方向は、前記ピックアップ手段のトラッキング制御を行う方向である
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のディスク装置。
【請求項5】
第二の方向は、前記ディスクの面に平行な方向である
ことを特徴とする請求項4に記載のディスク装置。
【請求項6】
補助質量とバネ部材とから構成される共振系の共振周波数は、第一の方向と第二の方向共にディスクの回転周波数の最大値に設定することを特徴とした請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のディスク装置。
【請求項7】
バネ部材は、2つの略L字型板バネよりなされるものであって、
それぞれの前記L字型板バネの一方の面が前記補助質量と接する面であり、それぞれの前記L字型板バネの他方の面がそれぞれ対向して構成されている
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のディスク装置。
【請求項8】
バネ部材は、略コの字型板バネよりなされるものである
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のディスク装置。
【請求項9】
バネ部材は、1組の平行な板バネと、前記1組の平行な板バネと直角に位置する他の1組の平行な板バネにより構成される
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のディスク装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−38364(P2012−38364A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174562(P2010−174562)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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