説明

ディスプレイ用光学フィルタの製造方法及びディスプレイ用光学フィルタロール

【課題】製造工程を簡略化することによって優れた生産性を有するディスプレイ用光学フィルタの製造方法を提供する。
【解決手段】表面にメッシュ状の金属導電層302が形成された長尺状の透明フィルム301の走行下、前記金属導電層302上にハードコート層形成用塗工液を間欠塗工することにより、走行方向(矢印a)に間欠的に且つ走行方向における両端部に前記金属導電層302が帯状に露出するようにハードコート層303を形成する工程と、
前記ハードコート層303が形成された金属導電層302上に反射防止層形成用塗工液を間欠塗工することにより、前記ハードコート層303上に反射防止層304を形成する工程を有するディスプレイ用光学フィルタの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイなどのディスプレイの画像表示部に用いられ、電磁波シールド性、反射防止性及び耐傷付き性を有するディスプレイ用光学フィルタの製造方法、前記製造方法により製造されたディスプレイ用光学フィルタを用いたディスプレイ用光学フィルタロールに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ(FPD)及びCRTディスプレイなどの電子ディスプレイが、表示装置として広く普及している。
【0003】
近年、このような表示装置や通信機器等の普及にともない、これらから発生する電磁波によりもたらされる人体への影響が懸念されている。また、携帯電話等の電磁波により精密機器の誤作動などを起こす場合もあり、電磁波は問題視されている。そこで、電子ディスプレイ用フィルタとして、電磁波シールド性および光透過性を有するディスプレイ用光学フィルタが開発され、実用に供されている。
【0004】
このディスプレイ用光学フィルタでは、光透過性と電磁波シールド性を両立することが必要である。そのために、ディスプレイ用光学フィルタには、例えば、透明フィルム上の銅箔等の層を網状にエッチング加工し、開口部を設けたメッシュ状の金属導電層からなる電磁波シールド層が形成されたもの等が知られている。
【0005】
電子ディスプレイ表面は傷が付くと視認性が低下するため、ディスプレイ用光学フィルタには、耐傷付き性を付与するためのハードコート層がさらに用いられている。また、ディスプレイ前面に外光が差し込んだ場合、外光の反射によるコントラスト低下や像の映り込みによって、視認性の低下を招く恐れがある。そこで、光学干渉の原理を用いて反射率を低減するための反射防止層を設置するなど種々の対策がなされている。
【0006】
従来のディスプレイ用光学フィルタでは、上述した各層を積層一体化させ、電磁波シールド性、反射防止性及び耐傷付き性を兼ね備えたディスプレイ用複合機能フィルタとして用いられている。また、電磁波シールド層における電磁波シールド性を良好なものとするために、電磁波シールド層を電子ディスプレイ本体にアース(接地)する必要がある。そのため、ディスプレイ用光学フィルタからメッシュ状の金属導電層を外部にはみ出させ、ディスプレイ用光学フィルタの裏側に折り込ませてアースするか、電磁波シールド層に接触するように導電性粘着テープを挟み込むなどの手段が用いられている。
【0007】
ディスプレイ用光学フィルタにおける各層の積層順序は、ディスプレイ用光学フィルタの用途及び機能などを考慮して決定される。しかしながら、透明フィルムの一方の面に電磁波シールド層を設け、他方の面にハードコート層及び反射防止層を設け、電磁波シールド層接地側が電子ディスプレイ本体側となるように配置される構成を有するディスプレイ用光学フィルタでは、電子ディスプレイ本体側に電磁波シールド層が配置されるため構造上、アースが取り難くなる。
【0008】
そこで、ディスプレイ用光学フィルタでは、透明フィルム/電磁波シールド層/ハードコート層/反射防止層などの積層順序とし、透明フィルムの電磁波シールド層が形成されていない面を電子ディスプレイ本体側に配置するのが好ましい(特許文献1)。
【0009】
このような従来のディスプレイ用光学フィルタを製造するには、所定のサイズに裁断した透明フィルム上に、メッシュ状の金属導電層、ハードコート層及び反射防止層などの各層を順次、形成する方法などが用いられている。
【0010】
【特許文献1】特開平11−337702号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
近年、電子ディスプレイが著しく普及するとともに大画面化が主流となってとなってきている一方で、コストダウンへの要求が強まっている。したがって、ディスプレイ用光学フィルタについてもコストダウンを図るために、生産性の向上が必要とされている。しかしながら、ディスプレイ用光学フィルタの製造方法は、上述の通り、枚葉化した複数の透明フィルム上にメッシュ状の金属導電層、ハードコート層及び反射防止層をそれぞれ形成する手段を用いるため、製造工程が複雑となるだけでなく印刷速度又は塗工速度も遅くなり、生産性を向上させるには限界があった。
【0012】
そこで、本発明の目的は、製造工程を簡略化することによって優れた生産性を有するディスプレイ用光学フィルタの製造方法を提供することである。
【0013】
さらに、本発明は、ディスプレイ用光学フィルタを巻き取ることにより得られるディスプレイ用光学フィルタロールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者等は、上記課題に鑑み種々の検討を行った結果、連続的に形成されたメッシュ状の金属導電層を有する長尺状の透明フィルムを用い、前記透明フィルムを裁断せずに、透明フィルム上のメッシュ状の金属導電層上に、ハードコート層及び反射防止層を間欠塗工に形成することによって上記課題を解決できることを見出した。
【0015】
すなわち、本発明は、表面にメッシュ状の金属導電層が形成された長尺状の透明フィルムの走行下、前記金属導電層上にハードコート層形成用塗工液を間欠塗工することにより、走行方向に間欠的に且つ走行方向における両端部に前記金属導電層が帯状に露出するようにハードコート層を形成する工程と、
前記ハードコート層が形成された金属導電層上に反射防止層形成用塗工液を間欠塗工することにより、前記ハードコート層上に反射防止層を形成する工程を有するディスプレイ用光学フィルタの製造方法により上記課題を解決する。
【0016】
以下、本発明の製造方法の好ましい態様を列記する。
【0017】
(1)間欠塗工をダイコート法を用いて行う。
【0018】
(2)間欠塗工を、前記透明フィルムを1〜100cm/秒の速度で走行させながら行う。
【0019】
(3)ハードコート層形成用塗工液が、25℃において3〜35mPa・sの粘度を有する。
【0020】
(4)ハードコート層形成用塗工液が、紫外線硬化性塗工液である。
【0021】
(5)前記ハードコート層形成用塗工液を間欠塗工した後、紫外線を照射する。
【0022】
(6)帯状に露出させた金属導電層の幅を、2〜50mmとする。
【0023】
(7)ハードコート層間に露出させた金属導電層の幅を、2〜50mmとする。
【0024】
(8)反射防止層形成用塗工液が、25℃において3〜35mPa・sの粘度を有する。
【0025】
(9)反射防止層形成用塗工液が、紫外線硬化性塗工液である。
【0026】
(10)前記反射防止層形成用塗工液を間欠塗工した後、紫外線を照射する。
【0027】
(11)金属導電層が、5〜50μmの線幅を有し、開口率が70〜95%である。
【0028】
(12)金属導電層の厚さが、前記ハードコート層及び前記反射防止層の合計の厚さよりも薄い。
【0029】
(13)前記金属導電層の厚さが、0.1〜10μmである。
【発明の効果】
【0030】
本発明の方法によれば、好ましくはロール・トゥー・ロール(Roll to Roll)方式を用いることにより、製造工程を簡略化でき、製造が容易で生産性に優れるディスプレイ用光学フィルタを製造することが可能となる。また、本発明により得られるディスプレイ用光学フィルタは、前記ハードコート層及び前記反射防止層の周辺部にメッシュ状の金属導電層が露出していることにより、電子ディスプレイ本体への接地を容易に行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下に、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明のディスプレイ用光学フィルタの製造方法の好適な一実施形態を示す説明図である。なお、本発明の製造方法が図1に示す方法に限定されるわけではない。
【0032】
本発明のディスプレイ用光学フィルタの製造方法は、まず、表面にメッシュ状の金属導電層が形成された長尺状の透明フィルムの走行下、前記金属導電層上にハードコート層形成用塗工液を間欠塗工することにより、ハードコート層を間欠的に形成する工程を実施する。長尺状の透明フィルムを走行させるには、例えば、図1に示すように、ロール・トゥー・ロール方式などを用いて行うことができる。
【0033】
すなわち、本発明の方法では、まず、表面にメッシュ状の金属導電層(図示せず)が形成された長尺状の透明フィルム101を巻き取ったロール100から透明フィルム101を引き出し、透明フィルム101の走行下、メッシュ状の金属導電層上にハードコート層形成用塗工液を塗工装置110により間欠塗工することでハードコート層103を間欠的に形成する工程を実施する(図1(a))。その後、前記ハードコート層103が形成された金属導電層を有する透明フィルムを巻き取ったロール105から透明フィルム106を引き出し、ハードコート層103と同様にして、透明フィルム106の走行下に、反射防止層形成用塗工液を塗工装置120による間欠塗工により、前記ハードコート層103上に反射防止層104を形成する工程を実施する(図1(b))。
【0034】
このような本発明の方法によれば、所定の長さを有する金属導電層が形成された透明フィルムを枚葉化する前に、ハードコート層及び反射防止層を形成するため、従来の枚葉塗工法に比べて生産性を非常に高く向上させることができる。
【0035】
また、本発明の方法では、メッシュ状の金属導電層上にハードコート層及び反射防止層を間欠塗工する際に塗工部位を調整することによって、ハードコート層及び反射防止層の周辺部にメッシュ状の金属導電層を容易に露出させる。すなわち、本発明の方法により得られたディスプレイ用光学フィルタの上面図を示す図3(a)、及び図3(a)のAA'における断面図を示す図3(b)のように、本発明の方法により得られたディスプレイ用光学フィルタは、所定の長さを有する透明フィルム301上に、ハードコート層303及び反射防止層304の間と、前記透明フィルムの走行方向(矢印a)の両端部とにメッシュ状の金属導電層302を露出させる。このような塗工部位の調整は、間欠塗工時に容易且つ高精度で行うことができる。このようにメッシュ状の金属導電層を露出させることで、メッシュ状の金属導電層を折り曲げたり露出させたりする特別な接地作業を必要とせず、電子ディスプレイ本体にアースを設置することが可能となる。
【0036】
以下、本発明の方法について、順を追ってより詳細に説明する。
【0037】
(ハードコート層)
本発明の方法では、まず、表面にメッシュ状の金属導電層が形成された長尺状の透明フィルムの走行下、前記金属導電層上にハードコート層形成用塗工液を間欠塗工することにより、走行方向に間欠的に且つ走行方向における両端部に前記金属導電層が帯状に露出するようにハードコート層を形成する工程を実施する。
【0038】
前記間欠塗工は、例えば、メッシュ状の金属導電層上の所定の区間にハードコート層形成用塗工液を塗工した後、所定の区間には一切、塗工せず、この塗工区間と無塗工区間とを繰り返すことにより行われる。このように間欠塗工によれば、透明フィルムの走行方向において間欠的にハードコート層を形成することができ、形成されたハードコート層の間に金属導電層を露出させることが容易且つ高精度でできる。さらに、間欠塗工時にハードコート層の幅方向の塗工区間を調整することによって、前記透明フィルムの走行方向の両端部にも金属導電層が帯状に露出している区間を容易に且つ高精度で形成することができる。
【0039】
前記ハードコート層としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂などの熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂を含む層が挙げられる。なお、本発明において、ハードコート層とは、JIS5600−5−4(1999)で規定される鉛筆硬度試験でH以上の硬度を有するものをいう。
【0040】
前記ハードコート層を形成するには、前記樹脂または前記樹脂のモノマーもしくはオリゴマーの他、必要に応じて、無機系帯電防止粒子、光重合開始剤などの反応開始剤及びトルエンなどの溶剤等を含むハードコート層形成用塗工液を間欠塗工する方法が用いられる。その後、加熱、電子線または紫外線の照射により硬化させるのが好ましい。また、加熱、電子線または紫外線の照射により硬化させる場合には、後述する反射防止層の硬化と同時に行っても良い。
【0041】
前記塗工液を間欠塗工するには、従来公知の方法を用いて行えばよい。具体的には、ディッピング、バーコート、ブレードコート、ナイフコート、リバースロールコート、グラビアロールコート、スクイズコート、カーテンコート、スプレイコート、ダイコートなどの方法が用いられる。なかでも、幅方向の均一性や、塗布面の平滑性に優れることから、ダイコート法を用いるのが好ましい。ダイコート法としてより具体的には、スロットダイ、バキューム式スロットダイなどが好ましい。
【0042】
前記間欠塗工は、前記透明フィルムを1〜100cm/秒、特に8〜30cm/秒の走行速度で引き出しながら行うのが好ましい。これにより、間欠塗工時に均一な厚さを有するハードコート層を所望の位置に精度よく塗工することができ、表面平滑性に優れるディスプレイ用光学フィルタを作製することが可能となる。
【0043】
前記ハードコート層形成用塗工液の粘度は、25℃において、3〜35mPa・s、特に3〜20mPa・sとするのが好ましい。これにより、間欠塗工時に均一な厚さを有するハードコート層を所望の位置に精度よく塗工することができ、表面平滑性に優れるディスプレイ用光学フィルタを作製することが可能となる。
【0044】
また、ハードコート層を形成するために用いられる前記塗工液における各材料を以下に詳述する。
【0045】
ハードコート層に用いられる樹脂のうち、熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、レゾルシノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フラン樹脂、シリコン樹脂などを挙げることができる。
【0046】
また、紫外線硬化性樹脂(モノマー、オリゴマー)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルポリエトキシ(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンモノ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、N−ビニルカプロラクタム、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、o−フェニルフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジプロポキシジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリス〔(メタ)アクリロキシエチル〕イソシアヌレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートモノマー類;ポリオール化合物(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、トリメチロールプロパン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4−ジメチロールシクロヘキサン、ビスフェノールAポリエトキシジオール、ポリテトラメチレングリコール等のポリオール類、前記ポリオール類とコハク酸、マレイン酸、イタコン酸、アジピン酸、水添ダイマー酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の多塩基酸又はこれらの酸無水物類との反応物であるポリエステルポリオール類、前記ポリオール類とε−カプロラクトンとの反応物であるポリカプロラクトンポリオール類、前記ポリオール類と前記、多塩基酸又はこれらの酸無水物類のε−カプロラクトンとの反応物、ポリカーボネートポリオール、ポリマーポリオール等)と有機ポリイソシアネート(例えば、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、ジシクロペンタニルジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4′−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,2′−4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等)と水酸基含有(メタ)アクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキサン−1,4−ジメチロールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート等)の反応物であるポリウレタン(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応物であるビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートオリゴマー類等を挙げることができる。これら化合物は1種又は2種以上、混合して使用することができる。これらの紫外線硬化性樹脂を、熱重合開始剤とともに用いて熱硬化性樹脂として使用してもよい。
【0047】
本発明の方法において使用するハードコート層形成用塗工液は、間欠塗工後、紫外線を照射するのが好ましい。紫外線照射により塗工したハードコート層形成用塗工液を硬化させることで、透明フィルムとの密着性や耐傷付き性に優れるハードコート層とすることができる。したがって、前記ハードコート層形成用塗工液は、紫外線硬化性塗工液であるのが好ましい。
【0048】
前記ハードコート層形成用塗工液を紫外線硬化性塗工液とするには、ハードコート層形成用塗工液が上記紫外線硬化性樹脂(モノマー、オリゴマー)を含むのが好ましい。また、上記の紫外線硬化性樹脂(モノマー、オリゴマー)の内、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の硬質の多官能モノマーを主に使用することが好ましい。
【0049】
ハードコート層は、ディスプレイ表面への埃の付着による視認性の低下を防止するため、無機系帯電防止粒子をさらに含んでいてもよい。前記無機系帯電防止粒子としては、スズドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、リンドープ酸化スズ(PTO)、アンチモン酸亜鉛、インジウムドープ酸化亜鉛、酸化ルテニウム、酸化レニウム、酸化銀、酸化ニッケル、酸化銅、Sb23、SbO2、In23、SnO2、ZnO、AlをドープしたZnO、TiO2などが挙げられる。
【0050】
ハードコート層における無機系帯電防止粒子の含有量は、上述した樹脂100質量部に対して、0.001〜1質量部とするのが好ましい。これによりハードコート層の透明性を低下させずに無機系帯電防止粒子を含有させることができる。
【0051】
紫外線硬化性樹脂の光重合開始剤として、紫外線硬化性樹脂の性質に適した任意の化合物を使用することができる。例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパン−1などのアセトフェノン系、ベンジルジメチルケタールなどのベンゾイン系、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系、イソプロピルチオキサントン、2−4−ジエチルチオキサントンなどのチオキサントン系、その他特殊なものとしては、メチルフェニルグリオキシレートなどが使用できる。特に好ましくは、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパン−1、ベンゾフェノン等が挙げられる。これら光重合開始剤は、必要に応じて、4−ジメチルアミノ安息香酸のごとき安息香酸系叉は、第3級アミン系などの公知慣用の光重合促進剤の1種または2種以上を任意の割合で混合して使用することができる。また、光重合開始剤のみの1種または2種以上の混合で使用することができる。特に1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャリティケミカルズ社製、イルガキュア184)が好ましい。
【0052】
本発明の方法では、上述したハードコート層形成用塗工液を、間欠塗工した後、図1に示すようにハードコート層形成用紫外線照射装置111などにより紫外線を照射する場合、光源としては、紫外〜可視領域に発光する多くのものが採用でき、例えば超高圧、高圧、低圧水銀灯、ケミカルランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、マーキュリーハロゲンランプ、カーボンアーク灯、白熱灯、レーザー光等を挙げることができる。照射時間は、ランプの種類、光源の強さによって一概には決められないが、数秒〜数分程度である。また、硬化促進のために、予め積層体を40〜120℃に加熱し、これに紫外線を照射してもよい。
【0053】
本発明の方法において、メッシュ状の金属導電層上に形成されるハードコート層の形状は、ディスプレイ用光学フィルタの用途に合わせて決定すればよいが、矩形状であるのが好ましい。前記ハードコート層の硬化後の厚さは、0.1〜100μm程度とするのが好ましい。また、前記ハードコート層の屈折率は、1.48〜1.55程度とするのが好ましい。
【0054】
間欠的に形成されるハードコート層の間に露出させる金属導電層の幅、すなわち図3(a)におけるL1の長さは、好ましくは2〜50mm、より好ましくは5〜20mmとするのが好ましい。これによりディスプレイ用光学フィルタを電子ディスプレイ本体へアースを確実に行うことができる。
【0055】
また、前記透明フィルムの走行方向の両端部に帯状に露出させるハードコート層の幅、すなわち図3(a)におけるL2の長さは、好ましくは2〜50mm、より好ましくは5〜20mmとするのが好ましい。これによりディスプレイ用光学フィルタを電子ディスプレイ本体へアースを確実に行うことができる。
【0056】
(反射防止層)
次に、本発明の方法では、上述の通りにして形成したハードコート層が形成された金属導電層上に反射防止層形成用塗工液を間欠塗工することにより、前記ハードコート層上に反射防止層を形成する工程を実施する。
【0057】
反射防止層は、ハードコート層よりも屈折率が低い低屈折率層が好ましく用いられる。
【0058】
前記低屈折率層としては、化学蒸着(CVD)および物理蒸着(PVD)等の手段により形成された金属酸化物からなる透明薄膜を用いることも可能であるが、生産性の向上の観点から酸化物微粒子およびフッ素樹脂微粒子などの屈折率調整用微粒子を、ポリマー、好ましくは紫外線硬化性樹脂中に分散させた硬化層であるのが好ましい。
【0059】
前記低屈折率層を形成するには、後記する各種成分を含む低屈折率層形成用塗工液を、間欠塗工する方法が用いられる。間欠塗工方法として、具体的には、ハードコート層において上述した方法と同様の方法が用いられる。その後、加熱、電子線または紫外線の照射により硬化させるのが好ましい。
【0060】
低屈折率層を形成するために用いられる紫外線硬化性樹脂などの樹脂としては、ハードコート層において上述したのと同様のものが用いられる。
【0061】
前記酸化物微粒子としては、ジルコニア、チタニア、酸化セレン、および酸化亜鉛が好ましく挙げられる。また、前記フッ素樹脂微粒子としては、FET(フルオロエチレン/プロピレン共重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ETFE(エチレン/テトラフルオロエチレン)、PVF(ポリフッ化ビニル)、PVD(ポリフッ化ビニリデン)などからなるものが挙げられる。
【0062】
低屈折率層における屈折率調整用微粒子の平均粒子径は、1nm〜1μm、好ましくは5〜200nmとするのがよい。また、前記平均粒子径がこれらの範囲内であれば、屈折率調整用微粒子の添加によって、得られる光学フィルタの巻取性を向上させることができる。なかでも、中空シリカが特に好ましく挙げられる。中空シリカとしては、平均粒子径10〜100nm、好ましくは10〜50nm、比重0.5〜1.0、好ましくは0.8〜0.9のものが好ましい。
【0063】
低屈折率層における屈折率調整用微粒子の含有量は、上述した紫外線硬化性樹脂などのバインダ樹脂100質量部に対して、5〜90重量部、好ましくは10〜70重量部とするのがよい。
【0064】
前記低屈折率層の屈折率は、1.20〜1.50、特に1.30〜1.50とするのが好ましい。また、前記低屈折率層の厚さは、50〜440nm、特に50〜200nm程度とするのが好ましい。
【0065】
反射防止層は、上述した低屈折率層のみからなってもよいが、低屈折率層の他に低屈折率層よりも低屈折が高い高屈折率層がさらに設けられてもよい。高屈折率層を形成するには、以下の導電性金属酸化物微粒子を用いる以外は低屈折率層と同様の方法が用いられる。
【0066】
高屈折率層は、樹脂、好ましくは紫外線硬化性樹脂中に、スズドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、リンドープ酸化スズ(PTO)、アンチモン酸亜鉛、インジウムドープ酸化亜鉛、酸化ルテニウム、酸化レニウム、酸化銀、酸化ニッケル、酸化銅、Sb23、SbO2、In23、SnO2、ZnO、AlをドープしたZnO、TiO2等の導電性金属酸化物微粒子(無機化合物)を屈折率調整用微粒子として分散させた層であるのが好ましい。
【0067】
高屈折率層における導電性金属酸化物微粒子の平均粒子径は、10〜10000nm、好ましくは10〜50nmとするのがよい。
【0068】
高屈折率層は、屈折率を1.6以上、特に1.64以上としたものが好適である。膜厚は一般に10〜500nmの範囲、好ましくは20〜200nmである。
【0069】
低屈折率層と高屈折率層とを有する反射防止層において、これらの積層順序及び積層数は特に制限されず目的に応じて決定すればよいが、生産性向上の観点から、ハードコート層上に高屈折率層及び低屈折率層がこの順で積層されてなる反射防止層が好ましい。この場合、低屈折率層の屈折率は、高屈折率層の屈折率よりも低い値とする。
【0070】
なお、製造工程の簡略化及び材料費の削減の観点から、反射防止層は低屈折率層のみからなるのが好ましい。
【0071】
反射防止層を形成する際に、間欠塗工は、前記透明フィルムを1〜100cm/秒、特に8〜30cm/秒の走行速度で引き出しながら行うのが好ましい。これにより、間欠塗工時に均一な厚さを有する反射防止層を所望の位置に精度よく塗工することができ、表面平滑性に優れるディスプレイ用光学フィルタを作製することが可能となる。
【0072】
本発明において、上述した低屈折率層及び高屈折率層など反射防止層の形成のために用いられる塗工液(反射防止層形成用塗工液)の粘度は、25℃において、3〜35mPa・s、特に3〜20mPa・sとするのが好ましい。このような範囲内の粘度を有する塗工液によれば、間欠塗工時に均一な厚さを有する反射防止層を所望の位置に精度よく塗工することができ、表面平滑性に優れるディスプレイ用光学フィルタを作製することが可能となる。
【0073】
反射防止層形成用塗工液の間欠塗工は、ハードコート層形成用塗工液を間欠塗工した部位と同じ部位に行われるのが好ましい。
【0074】
本発明の方法において使用する反射防止層形成用塗工液は、間欠塗工後、紫外線を照射するのが好ましい。紫外線照射により反射防止層形成用塗工液を硬化させることにより、ハードコート層との密着性に優れる反射防止とすることができる。
【0075】
したがって、前記反射防止層形成用塗工液は、紫外線硬化性塗工液であるのが好ましい。前記反射防止層形成用塗工液を紫外線硬化性塗工液とするには、反射防止層形成用塗工液が上記紫外線硬化性樹脂(モノマー、オリゴマー)を含むのが好ましい。また、上記の紫外線硬化性樹脂(モノマー、オリゴマー)の内、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の硬質の多官能モノマーを主に使用することが好ましい。
【0076】
また、上述した反射防止層形成用塗工液を間欠塗工した後、図1に示すように反射防止層形成用紫外線照射装置121により紫外線を照射して硬化させる場合、光源として紫外〜可視領域に発光する多くのものが採用でき、具体的にはハードコート層において上述したのと同様な手段を用いることができる。
【0077】
本発明の方法では、メッシュ状の金属導電層上にハードコート層及び反射防止層を形成する際に少なくとも一部にロール・トゥー・ロール方式を用いて行うのが好ましい。例えば、図1に示すように、透明フィルム101上の金属導電層にハードコート層103を形成した後、透明フィルム101を巻き取ってロール105とし(図1(a))、このロール105から再度、透明フィルム106を引き出してハードコート層103上に反射防止層104を形成する(図1(b))方法などが用いられる。
【0078】
このようにロール・トゥー・ロール方式を用いて行う場合、ハードコート層を形成する工程と、反射防止層を形成する工程とは別々に行ってもよいが、これらの工程を連続させて行ってもよい。例えば、図2に示すように、透明フィルム201上の金属導電層(図示せず)にハードコート層203を形成した後、透明フィルム201を巻き取らずに続けて、ハードコート層203上に反射防止層204を形成する方法も用いられる。このような方法によれば、より製造工程を簡略化することが可能となる。
【0079】
(メッシュ状の金属導電層)
本発明の方法では、上述したハードコート層及び反射防止層は、透明フィルム上に好ましくは連続的に形成されたメッシュ状の金属導電層上に形成される。前記メッシュ状の金属導電層としては、(1)金属繊維及び金属被覆有機繊維の金属をメッシュ状にしたもの、(2)透明フィルム上の銅箔等の金属箔をエッチング加工し、開口部を設けてメッシュ状にしたもの、(3)透明フィルム上に導電性インクをメッシュ状に印刷したもの(例、金属粒子含有樹脂層)などを挙げることができる。
【0080】
連続的に形成されたメッシュ状の金属導電層を有する透明フィルムのロールは、市販されているものを直接、用いてもよい他、ハードコート層及び反射防止層を形成する工程に先立って、透明フィルム上に連続的にメッシュ状の金属導電層を作製したものを巻き取る工程を行うことにより得られたロールを用いることもできる。
【0081】
前記(1)の金属導電層を透明フィルム上に作製する場合、金属繊維及び金属被覆有機繊維の金属を網状にしたものを別途、作製した後に、前記透明フィルム上に加熱加圧する手段などが用いられる。
【0082】
前記(1)の金属導電層を構成する金属繊維及び金属被覆有機繊維の金属としては、銅、ステンレス、アルミニウム、ニッケル、チタン、タングステン、錫、鉛、鉄、銀、炭素或いはこれらの合金、好ましくは銅、ステンレス、ニッケルが用いられる。金属被覆有機繊維の有機材料としては、ポリエステル、ナイロン、塩化ビニリデン、アラミド、ビニロン、セルロース等が用いられる。
【0083】
前記(2)の金属導電層の場合、金属箔の金属としては、銅、ステンレス、アルミニウム、ニッケル、鉄、真鍮、或いはこれらの合金、好ましくは銅、ステンレス、アルミニウムが用いられる。
【0084】
金属箔は一般的に気相成膜法により形成される。その形成方法としては、特に制限はないが、スパッタリング、イオンプレーティング、電子ビーム蒸着、真空蒸着、化学蒸着等の気相製膜法や、印刷、塗工等が挙げることができるが、気相成膜法(スパッタリング、イオンプレーティング、電子ビーム蒸着、真空蒸着、化学蒸着)が好ましい。
【0085】
前記(3)の金属導電層の場合には、次のような導電性インキを用い、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法、静電印刷法等により透明フィルムの表面に連続的に印刷することにより作製できる。
【0086】
具体的には、粒径100μm以下のカーボンブラック粒子、或いは銅、アルミニウム、ニッケル等の金属又は合金の粒子等の導電性粒子を50〜90重量%濃度でPMMA、ポリ酢酸ビニル、エポキシ樹脂等のバインダ樹脂に分散させたものである。このインクは、トルエン、キシレン、塩化メチレン、水等の溶媒に適当な濃度に希釈または分散させて透明フィルムの板面に印刷により塗布し、その後、必要に応じ室温〜120℃で乾燥させ透明フィルム上に塗着させる。上記と同様の導電性材料の粒子をバインダ樹脂で覆った粒子を静電印刷法により直接塗布し熱等で固着させる方法も用いられる。塗着後、必要に応じて乾燥し、紫外線を照射することにより得られる。
【0087】
前記導電性粒子を構成する無機化合物としては、例えば、アルミニウム、ニッケル、インジウム、クロム、金、バナジウム、スズ、カドミウム、銀、プラチナ、銅、チタン、コバルト、鉛等の金属、合金;或いはITO、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム−酸化スズ(ITO、いわゆるインジウムドープ酸化スズ)、酸化スズ−酸化アンチモン(ATO、いわゆるアンチモンドープ酸化スズ)、酸化亜鉛−酸化アルミニウム(ZAO;いわゆるアルミニウムドープ酸化亜鉛)等の導電性酸化物等を挙げることができる。特に、ITOが好ましい。平均粒径は10〜10000nm、特に10〜50nmが好ましい。
【0088】
前記バインダ樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、マレイン酸樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ポリイミド樹脂、含ケイ素樹脂等を挙げることができる。さらに、これらの樹脂のうち熱硬化性樹脂であることが好ましい。
【0089】
上述した(1)〜(3)の金属導電層の他にも、(4)透明フィルム上に、溶剤に対して可溶な材料によってドットを形成した後、溶剤に対して不溶な導電材料からなる導電材料層を形成し、フィルム面を溶剤と接触させてドット及びドット上の導電材料層を除去することによりメッシュ状にした金属導電層などを用いることもできる。これは、例えば、特開2001−332889号公報に開示された方法を用いて実施することができる。
【0090】
メッシュ状の金属導電層のメッシュパターンの形状には特に制限はなく、例えば四角形の開口部が形成された格子状の印刷膜や、円形、六角形、三角形又は楕円形の開口部が形成されたパンチングメタル状の印刷膜等が挙げられる。また、開口部は規則的に並んだものに限らず、ランダムパターンとしても良い。
【0091】
また、金属導電層のメッシュとしては、5〜50μmの線幅を有し、開口率70〜95%のものが好ましい。より好ましい線幅は5〜40μm、開口率は75〜90%である。このようなメッシュ状の金属導電層であれば、電磁波シールド性及び光透過性に優れ、間欠塗工によりハードコート層及び金属導電層を形成しても凹凸の発生が抑制されたディスプレイ用光学フィルタを形成することができる。
【0092】
なお、導電性メッシュの開口率とは、当該導電性メッシュの投影面積における開口部分が占める面積割合を言う。
【0093】
ディスプレイ用光学フィルタは、電子ディスプレイ表面の意匠性及び視認性を向上させるために表面が平滑であるのが好ましい。したがって、本発明の方法において、金属導電層の厚さを、ハードコート層及び反射防止層の合計の厚さよりも薄くするのが好ましい。これにより、高い透明性を確保しつつ、凹凸の発生が抑制された平滑性に優れるディスプレイ用光学フィルタを得ることができる。
【0094】
また、ディスプレイ用光学フィルタの表面の平滑性を向上させる観点から、金属導電層の厚さを、0.1〜10μm、好ましくは0.5〜8μm、特に好ましくは0.5〜5μmとするのがよい。これにより、ディスプレイ用光学フィルタの表面の優れた平滑性を確保するとともに、ディスプレイ用光学フィルタを巻き取る際にクラック、巻ぐせやシワの発生を抑制することができる。
【0095】
本発明の方法では、透明フィルム上に作製したメッシュ状の金属導電層をさらに低い抵抗値にして、電磁波シールド効果を向上させたい場合は、メッシュ状の金属導電層上に金属メッキ層を形成することが好ましい。
【0096】
金属メッキ層は、公知の電解メッキ法、無電解メッキ法により形成することができる。メッキに使用される金属としては、一般に銅、銅合金、ニッケル、銀、金、亜鉛又はスズ等を使用することが可能であり、これらは単独で使用しても、2種以上の合金として使用しても良い。好ましくは銅、銅合金、銀、又はニッケルであり、特に経済性、導電性の点から、銅又は銅合金を使用することが好ましい。
【0097】
また、メッシュ状の金属導電層には防眩性能を付与させても良い。そのため、本発明の方法では、金属導電層に黒化処理を行う工程により、金属導電層の表面に黒化処理層を設けることにより行っても良い。例えば、金属導電層の酸化処理、硫化処理、クロム合金等の黒色メッキ、又は黒もしくは暗色系のインクの塗布等により行うことができる。なかでも、黒化処理としては、酸化処理及び硫化処理が好ましい。
【0098】
前記黒化処理として酸化処理を行う場合には、黒化処理液として、一般には次亜塩素酸塩と水酸化ナトリウムの混合水溶液、亜塩素酸塩と水酸化ナトリウムの混合水溶液、ペルオキソ二硫酸と水酸化ナトリウムの混合水溶液等を使用することが可能であり、特に経済性の点から、次亜塩素酸塩と水酸化ナトリウムの混合水溶液、又は亜塩素酸塩と水酸化ナトリウムの混合水溶液を使用することが好ましい。
【0099】
前記黒化処理として硫化処理を行う場合には、黒化処理液として、一般には硫化カリウム、硫化バリウム及び硫化アンモニウム等の水溶液を使用することが可能であり、好ましくは、硫化カリウム及び硫化アンモニウムであり、特に低温で使用可能である点から、硫化アンモニウムを使用することが好ましい。
【0100】
黒化処理層の厚さは、特に制限されないが、0.01〜1μm、好ましくは0.01〜0.5μmとするのがよい。前記厚さが、0.01μm未満であると、光の防眩効果が充分でない恐れがあり、1μmを超えると、斜視した際の見かけ上の開口率が低下する恐れがある。
【0101】
(透明フィルム)
上述したメッシュ状の金属導電層が形成される透明フィルムとしては、透明(「可視光に対して透明」を意味する。)であれば特に制限はないが、一般にプラスチックフィルムが使用される。例えば、ポリエステル{例、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート}、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、アクリル樹脂、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン、トリアセテート樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、金属イオン架橋エチレン−メタクリル酸共重合体、ポリウレタン、セロファン等を挙げることができる。これらの中でも、加工時の負荷(熱、溶剤、折り曲げ等)に対する耐性が高く、透明性が特に高い等の点で、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等が好ましい。特に、PETが、加工性に優れているので好ましい。
【0102】
透明フィルムの厚さは、光学フィルタの用途等によっても異なるが、一般に1μm〜10mm、1μm〜5mm、特に25〜250μmが好ましい。
【0103】
(透明粘着剤層)
本発明の方法では、透明フィルムのメッシュ状の金属導電層などが形成された面とは逆の面に透明粘着剤層を形成する工程をさらに有していてもよい。透明粘着剤層は、本発明のディスプレイ用光学フィルタを電子ディスプレイに接着するための層であり、接着機能を有する樹脂を含む層などが挙げられる。
【0104】
透明接着剤層を形成するには、前記樹脂の他、必要に応じて添加剤を混合し、押出機、ロール等で混練した後、カレンダー、ロール、Tダイ押出、インフレーション等の成膜法により所定の形状にシート成形したものを、透明フィルムに貼着すればよい。
【0105】
透明接着剤層に用いられる前記樹脂としては、例えば、ブチルアクリレート等から形成されたアクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、SEBS(スチレン/エチレン/ブチレン/スチレン)及びSBS(スチレン/ブタジエン/スチレン)等の熱可塑性エラストマー(TPE)を主成分とするTPE系粘着剤及び接着剤等も用いることができる。
【0106】
透明粘着材層の厚さは、一般に5〜500μm、特に10〜100μmの範囲が好ましい。光学フィルタは、一般に上記粘着剤層をディスプレイのガラス板に加熱圧着することによる装備することができる。
【0107】
本発明の方法において、透明フィルム上にメッシュ状の金属導電層、ハードコート層及び反射防止層を形成した後は、透明フィルムを図3(b)において点線で示すように、ハードコート層及び反射防止層の間で裁断して枚葉化することによって、ディスプレイ用光学フィルタとすることができる。
【0108】
また、図1及び図2に示すように、金属導電層、ハードコート層及び反射防止層を形成された透明フィルムを、裁断せずにロール状に巻き取ってディスプレイ用光学フィルタロール107、207とすることができる。このようなディスプレイ用光学フィルタロールは、ディスプレイ用光学フィルタを使用する際に、前記ロールからディスプレイ用光学フィルタを裁断して枚葉化すればよい。ディスプレイ用光学フィルタロールとすることにより、輸送時や保管時の取り扱い性を向上させることができる。
【0109】
また、金属導電層、ハードコート層及び反射防止層を形成された透明フィルムは、図1及び図2に示す実施形態に限定されず、ディスプレイ用光学フィルタロール107、207のようにロール状に巻き取らずに裁断して枚葉化することにより、ディスプレイ用光学フィルタとしてもよい。
【0110】
上述した本発明の方法により得られるディスプレイ用光学フィルタは、ディスプレイの画像表示ガラス板の表面に透明粘着層を介して貼り合わされて使用されるのが好ましい。ディスプレイとしては、表面電界型ディスプレイ(SED)を含む電界放出型ディスプレイ(FED)、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ(FPD)、及びCRTディスプレイなどが挙げられる。
【実施例】
【0111】
以下、本発明を実施例により説明する。本発明は、以下の実施例により制限されるものではない。
【0112】
なお、以下において、各塗工液の粘度の測定は、R100型粘度計(東機産業社製)を用いて、25℃、コーンの回転数20rpmの条件下で行った。
【0113】
(実施例1)
1.メッシュ状の金属導電層の作製
ポリビニルアルコール樹脂(分子量3000)と硫酸バリウムの混合物(質量比 ポリビニルアルコール樹脂:硫酸バリウム=2:1)を、水とメタノールの混合溶液(質量比 水:メタノール=1:4)に溶解して、固形分量30wt%のポリビニルアルコール樹脂塗工液(25℃:粘度3000mPa・s)を調製した。この塗工液をインクとして用いて、PETフィルムロール(PETフィルム:長さ10000mm、幅780mm、厚さ250μm)からPETフィルムを引き出し、グラビア印刷により正方形のドットを印刷した。これを乾燥後に銅を真空蒸着して、厚さ0.1μmの銅層を得た。次いで、常温の水でドット部分を溶解除去し、水洗の後に乾燥して、メッシュ状の銅層(金属導電層;厚さ0.1μm)が形成された透明フィルムを巻芯に巻き取った。
【0114】
2.ハードコート層の作製
下記の配合;
ジルコニア(平均粒子径80nm) 80質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA) 20質量部
イルガキュア184(チバスペシャリティケミカル社製) 4質量部
シクロヘキサノン 100質量部
で各材料を混合して得た塗工液(25℃:粘度5mPa・s)を、金属導電層が形成された透明フィルムのロールから17cm/秒の速度で透明フィルムを引き出しながら、この透明フィルム上にダイコートを用いて、硬化後に長さ600mm、幅580mm、厚さ100μmのハードコート層が得られるように塗布する塗布区間と、長さ100mmの無塗布区間とを繰り返して間欠塗工を行った。その後、80℃、1分間、乾燥させた後、高圧水銀ランプにより200mJ/cm2の紫外線照射により硬化させ、金属導電層上にハードコート層を形成した。また、透明フィルムの走行方向の両端部には、それぞれ10mmの幅でメッシュ状の金属導電層を帯状に露出させた。
【0115】
3.低屈折率層の作製
ハードコート層の作製に続けて、下記の配合:
オプスターJN−7212 (JSR(株)製) 100質量部
メチルエチルケトン 117質量部
メチルイソブチルケトン 117質量部
で各材料を混合して得た塗工液(25℃:粘度1.5mPa・s)を、ダイコートを用いて上記ハードコート層と同様にしてハードコート層上に間欠塗工した。なお、前記塗工液の塗布厚さは、硬化後のハードコート層の厚さが90nmとなるように調整した。その後、80℃、1分間、乾燥させた後、高圧水銀ランプにより200mJ/cm2の紫外線照射により硬化させ、ハードコート層上に低屈折率層を形成した。これにより図3(a)及び図3(b)に示すようなハードコート層及び低屈折率層(反射防止層)が形成されたディスプレイ用光学フィルタを得、その後、巻芯に巻き取ることにより、ディスプレイ用光学フィルタロールを得た。
【0116】
4.切断
ディスプレイ用光学フィルタロールからディスプレイ用光学フィルタを、引き出しながら、700mmの長さに切り出すことにより、ディスプレイ用光学フィルタを得た。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】本発明のディスプレイ用光学フィルタの製造方法の一例を示す説明図であり、図1(a)は透明フィルム上のメッシュ状の金属導電層上にハードコート層を形成する工程を示し、図1(b)はハードコート層上に反射防止層を形成する工程を示す。
【図2】本発明のディスプレイ用光学フィルタの製造方法の一例を示す説明図である。
【図3】本発明の方法により得られたディスプレイ用光学フィルタの説明図であって、図3(a)はディスプレイ用光学フィルタの上面図を示し、図3(b)はディスプレイ用光学フィルタの図3(a)のAA'における断面図を示す。
【符号の説明】
【0118】
100、200 透明フィルムロール、
101、301 透明フィルム、
302 メッシュ状の金属導電層、
103、203、303 ハードコート層、
104、204、304 反射防止層、
105 ハードコート層が形成された電磁波シールド層を有する透明フ
ィルムロール、
105b ハードコート層が形成された電磁波シールド層を有する透明フ
ィルム、
106、206 光学フィルタロール
110、220 ハードコート層形成用塗工装置、
111、221 ハードコート層形成用紫外線照射装置、
120 反射防止層形成用塗工装置、
121 反射防止層形成用紫外線照射装置、
矢印a 透明フィルムの走行方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にメッシュ状の金属導電層が形成された長尺状の透明フィルムの走行下、前記金属導電層上にハードコート層形成用塗工液を間欠塗工することにより、走行方向に間欠的に且つ走行方向における両端部に前記金属導電層が帯状に露出するようにハードコート層を形成する工程と、
前記ハードコート層が形成された金属導電層上に反射防止層形成用塗工液を間欠塗工することにより、前記ハードコート層上に反射防止層を形成する工程と、を有するディスプレイ用光学フィルタの製造方法。
【請求項2】
前記間欠塗工を、ダイコート法を用いて行う請求項1に記載のディスプレイ用光学フィルタの製造方法。
【請求項3】
前記間欠塗工を、前記透明フィルムを1〜100cm/秒の速度で走行させながら行う請求項1又は2のいずれか1項に記載のディスプレイ用光学フィルタの製造方法。
【請求項4】
前記ハードコート層形成用塗工液が、25℃において3〜35mPa・sの粘度を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載のディスプレイ用光学フィルタの製造方法。
【請求項5】
前記ハードコート層形成用塗工液が、紫外線硬化性塗工液である請求項1〜4のいずれか1項に記載のディスプレイ用光学フィルタの製造方法。
【請求項6】
前記ハードコート層形成用塗工液を間欠塗工した後、紫外線を照射する請求項5に記載のディスプレイ用光学フィルタの製造方法。
【請求項7】
前記帯状に露出させた金属導電層の幅を、2〜50mmとする請求項1〜6のいずれか1項に記載のディスプレイ用光学フィルタの製造方法。
【請求項8】
前記ハードコート層間に露出させた金属導電層の幅を、2〜50mmとする請求項1〜7のいずれか1項に記載のディスプレイ用光学フィルタの製造方法。
【請求項9】
前記反射防止層形成用塗工液が、25℃において3〜35mPa・sの粘度を有する請求項1〜8のいずれか1項に記載のディスプレイ用光学フィルタの製造方法。
【請求項10】
前記反射防止層形成用塗工液が、紫外線硬化性塗工液である請求項1〜9のいずれか1項に記載のディスプレイ用光学フィルタの製造方法。
【請求項11】
前記反射防止層形成用塗工液を間欠塗工した後、紫外線を照射する請求項10に記載のディスプレイ用光学フィルタの製造方法。
【請求項12】
前記金属導電層が、5〜50μmの線幅を有し、開口率が70〜95%である請求項1〜11のいずれか1項に記載のディスプレイ用光学フィルタの製造方法。
【請求項13】
前記金属導電層の厚さが、前記ハードコート層及び前記反射防止層の合計の厚さよりも薄い請求項1〜12のいずれか1項に記載のディスプレイ用光学フィルタの製造方法。
【請求項14】
前記金属導電層の厚さが、0.1〜10μmである請求項1〜13のいずれか1項に記載のディスプレイ用光学フィルタの製造方法。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法により形成されたディスプレイ用光学フィルタを巻き取ることにより得られるディスプレイ用光学フィルタロール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−197409(P2008−197409A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−32936(P2007−32936)
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】