説明

ディスプレイ装置およびその画素駆動方法

【課題】ディスプレイの画像表示において経時的な画質劣化を抑制する。
【解決手段】ディスプレイ装置100の列ドライバ33および行ドライバ34は、1フィールドに対応して画素回路25を駆動する期間T0〜T5において、当該画素の画像データ電圧VdataをDr-TFT2のゲートに印加して書き込む書込期間T3の前に、Dr-TFT2に対して電源電圧Vddの供給を停止しつつ、Dr-TFT2の経時変化を抑制するために、OLED1の輝度に対応してDr-TFT2を駆動するために予め定められた最大ゲート電圧と最小ゲート電圧との差分の電圧値よりも大きな絶対値を有する特性変化抑制電圧Vrを、期間T1にデータラインDからDr-TFT2のゲートに予め印加し、直後の期間T2にその状態を保持しておく。その後、書込期間T3に入ってからDr-TFT2に電源電圧Vddを印加することでOLED1の発光を開始させ、期間T4の間に発光を継続させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイ装置およびその画素駆動方法に係り、特に、発光ダイオードと、発光ダイオードを駆動する駆動用薄膜トランジスタとを含む画素回路が画素としてマトリクス状に配置された表示パネルを含むディスプレイ装置およびその画素駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスプレイの超薄型化を目指して、基板にプラスチック等の柔軟な材料を用いたフレキシブルディスプレイの研究が盛んである。このようなフレキシブルディスプレイを作製する場合には、ガラス基板を用いるディスプレイを作製する場合とは作製条件が当然異なる。具体的には、ガラス基板を用いるディスプレイを作製する場合には、200℃以上のプロセスを用いて作製するが、フレキシブルディスプレイを作製する場合には、このような200℃以上のプロセスを用いて作製することは難しい。そこで、フレキシブルディスプレイの作製においては、低温プロセスに適した材料として、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)の活性層に有機半導体材料を用いた有機TFTが注目されている。
【0003】
従来、ディスプレイ装置の画素回路において、EL(ELectro Luminescence)素子から成る発光ダイオードと、このEL素子を駆動する駆動用TFTとを有機半導体素子で構成した有機ELディスプレイが知られている。有機EL素子を用いて高輝度、高コントラスト、長寿命なディスプレイ表示を行うには、TFTを用いたアクティブマトリクス駆動が必要不可欠である。このようなアクティブマトリクス駆動を行う有機ELディスプレイにおいて、画素の1セル分の回路として2個のTFTを備える典型的な画素回路を図3に示す。
【0004】
図3に示す画素回路25は、従来公知の一般的なものである。この画素回路25は、OLED(Organic Light Emitting Diode)1と、Dr-TFT2と、データ保持用コンデンサC3と、Sw-TFT4とを備えている。
OLED1は、駆動電流値に応じた輝度で発光する有機発光ダイオードである。
Dr-TFT2は、入力される画像データに応じた画像データ電圧を電流値に変換しOLED1に駆動電流として流す駆動用TFTとして動作すると共に、この画像データ電圧をデータ保持用コンデンサC3に印加するものである。
Sw-TFT4は、表示パネル内にマトリクス配置された複数の画素回路25から所定の画素回路を選択するための選択信号(スキャン信号)を受け、Dr-TFT2を動作させる画素選択用TFTとして動作するものである。
【0005】
Dr-TFT2の作製例として、有機材料を用いたバックゲート型のTFT構造を図6に示す。図6に断面を示すDr-TFT2は、ゲート電極11の上にゲート絶縁膜12が積層され、このゲート絶縁膜12の上には、中央部分に有機半導体13が積層され、かつ、この有機半導体13を間に挟むようにソース電極14およびドレイン電極15が積層されている。なお、図3に示すSw-TFT4も同じ構造とすることができる。
【0006】
図3に示す画素回路25内の各素子間の接続は次の通りである。すなわち、OLED1のカソードは共通電極(図3中ではVcathと表記した)に接続している。また、Dr-TFT2のドレインはOLED1のアノードに接続し、Dr-TFT2のソースは正(+)の電源ラインPに接続している。なお、TFTは、ソースとドレインとを構造上は区別する必要がなく、互いに逆にしても動作するため、以下では必要ない限りこれらを区別しない。Dr-TFT2のようにソース−ドレイン間を流れる電流の向きが常に一定であって、かつp型TFTである場合には、+側がソース、−側がドレインとなる。Dr-TFT2のゲートとソースの間には、データ保持用コンデンサC3が形成されている。Dr-TFT2のゲートとデータラインDとの間には、Sw-TFT4のドレインおよびソースが接続されている。Sw-TFT4のゲートは、走査ラインSに接続している。なお、データラインDは、画素の画像データを供給するためのラインを示し、走査ラインSは画素回路25の画素を選択するためのラインを示す。
【0007】
この画素回路25において、スキャンラインSによりSw-TFT4がオンすると、その画素の画像データに応じたデータ電圧(以下、Vdataと表記する)がSw-TFT4を通ってデータ保持用コンデンサC3に印加される。これにより、データ保持用コンデンサC3に電荷が蓄積されると共に、Dr-TFT2がオンするので、データ電圧Vdataに応じた電流が電源ラインPからDr-TFT2を通ってOLED1に流れて発光する。ここで、画像データ電圧をデータ保持用コンデンサに蓄積する動作は、書き込み(またはプログラミング)と呼ばれ、その期間が書込期間である。書込期間以外ではSw-TFT4はオフ状態であるため、データ保持用コンデンサC3に蓄えられた電荷による電圧VdataでDr-TFT2の動作状態が保持され、画像データに応じた電流が流れ続け、次の書込期間までOLED1が発光し続ける。
【0008】
しかしながら、図3に示すDr-TFT2のように有機EL素子を発光させる駆動用TFT、特に駆動用有機TFTによる電圧−電流変換動作は、アナログ的な動作のため、駆動用TFTのしきい値電圧、移動度など、駆動用TFTの特性の影響を直接的に受けてしまう。また、駆動用TFTに有機材料を用いた場合には、有機材料特有の劣化が起こる。すなわち、有機材料は、大気中の水蒸気や酸素に対して活性であるため、長期間大気に晒されると、材料の特性が劣化する。
【0009】
駆動用TFTのしきい値電圧、移動度などの駆動用TFTの特性は、一般に、連続的な駆動により経時変化を伴う。つまり、連続して2回、3回…とスキャンした場合の駆動用TFTの特性は、1回目、2回目…のスキャンのときよりもそれぞれ劣化する。具体的には、駆動用TFTを用いた画素回路では、そのスキャン1回目の動作初期時と、連続して2回、3回…とスキャンしてから駆動させた後とを比較すると、同じ画像データに対しても画素回路の有機EL素子の発光輝度に変化が生じる。そのため、駆動用TFTの連続的な駆動により経時変化が生じると、それを用いたディスプレイにおいて階調表示機能が劣化するといった、表示画質の劣化に繋がるという問題がある。つまり、この場合には、駆動用TFTのトランジスタ特性が変化することで本来表示しようとしている色が表現できなくなってしまう。
【0010】
これに関連して、従来、ディスプレイの各画素回路間のばらつきを主として補正するためのTFT駆動回路を用いることで、ディスプレイの表示画質の劣化を改善する技術が知られている(例えば非特許文献1、2参照)。
【0011】
非特許文献1に記載されたTFT駆動回路は、駆動用TFT固有のしきい値電圧を、当該TFT駆動回路内のコンデンサに予め記憶させ、その電圧に対して、表示すべき輝度に対応するデータ電圧を重畳して書き込み動作を行う画素回路として機能する。そして、この画素回路ごとに、回路内の駆動用TFT固有のしきい値電圧値をコンデンサに予め記憶させるので、ディスプレイ全体として各画素回路間のばらつきを補正することができる。
【0012】
また、非特許文献2に記載されたTFT駆動回路は、書き込み期間において、データ電極から、駆動用TFTを含む駆動回路部に対して、当該画素が表示すべき輝度に対応する電流(有機EL素子に流れる電流)を流入させ、その電流値に応じた電圧として、その駆動用TFTのゲートに印加された電圧値を、画素内のコンデンサに書き込む動作を行う画素回路として機能する。そして、非特許文献1と同様に、ディスプレイ全体として各画素回路間のばらつきを補正することができる。つまり、非特許文献1に記載されたTFT駆動回路は、電圧プログラム型の駆動回路であるのに対して、非特許文献2に記載されたTFT駆動回路は、電流プログラム型の駆動回路である。このうち、電流プログラム型駆動回路は、有機EL素子に流れる電流から直接的に、駆動用TFTのゲートに印加される電圧値を決定して書き込むタイプなので、駆動用TFTのしきい値電圧のほかに、駆動用TFTの特性としての移動度のばらつきも補正できる。そのため、動作の面においては、電圧プログラム型駆動回路よりも実用的である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Dawson et al. “Design of an Improvement Pixel for a Poly-silicon Active-Matrix Organic LED Display” SID'98 DIGEST, 4.2, pp.11-14(1998).
【非特許文献2】Dawson et al. “The Impact of the Transient Response of Organic Light Emitting Diodes on the Design of Active Matrix OLED Displays” IEDM'98, 32.6, pp.875-878 (1998).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、ディスプレイの表示画質の劣化を改善する従来の電流プログラム型駆動回路は、有機EL素子に流れる電流から直接的に、駆動用TFTのゲートに印加される電圧値を決定するものなので、画素内に配設すべきTFTの個数を大きく増加させなければならないという欠点がある。また、このようにTFTの個数が多いため、それらのTFTを制御するための多くの制御用配線を必要とする。そのため、電流プログラム型駆動回路を用いた場合には、ディスプレイを高精細化することは極めて困難である。また、同様な理由から、電流プログラム型駆動回路を用いてディスプレイの作製上の歩留まりを改善することも極めて困難である。また、そもそも、電流プログラム型駆動回路の技術は、TFT特性の経時変化により特性の劣化が生じたときでも画質を改善するためにTFT数を増加したものであって、駆動用TFTの連続的な駆動に起因するTFT特性の経時的な劣化を遅らせるなどの劣化抑制を目指した技術ではない。
【0015】
また、図6に例示したように、有機材料を用いて駆動用TFTをバックゲート型のTFT構造に作製した場合には、有機材料が長期間大気に晒されることによる材料自体の特性劣化があるという問題に加えて、駆動用TFTの電気的な特性が、有機半導体13とゲート絶縁膜12との界面の状態に敏感に反応して変化してしまうという問題もある。さらに、ディスプレイの表示画質の劣化を改善するために、このような駆動用有機TFTを用いて電流プログラム型駆動回路を作製しようとしても、その場合には、画素内に配設すべきTFTの個数が多数であるため、このような多数の有機TFTを作製することは実用的ではなく極めて困難である。
【0016】
本発明は、前記問題を解決するために創案されたものであり、ディスプレイの画像表示において経時的な画質劣化を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記課題を解決するために、本願発明者らは、ディスプレイの画素内の駆動用TFTのゲートに印加される電圧とそのときのドレイン電流とを所定の階調範囲のゲート電圧に亘って測定し、ゲート電圧を横軸、ドレイン電流を縦軸としてプロットした伝達特性が、スキャンを行う毎に、横軸において一方の方向へとシフトしていくことを、ディスプレイの画像表示において経時的な画質劣化として観測し、種々検討を行った。その結果、画素において駆動用TFTのゲートに画像データ電圧を印加して書き込み動作を行う前に、この画像データ電圧として用いる駆動範囲の電圧よりも大きい制御電圧を駆動用TFTのゲートに予め印加しておくことで、駆動用TFTの経時的な劣化を抑制できることを見出した。
【0018】
そこで、本発明のうち本発明の請求項1のディスプレイ装置は、発光ダイオードと、発光ダイオードを駆動する駆動用TFTと、映像信号に対応した画像データ電圧を所定のデータラインから駆動用TFTのゲートに印加する画素選択用TFTとを含む画素回路が画素としてマトリクス状に配置された表示パネルと、所定の繰返単位期間毎に画素回路を駆動することで表示パネルにおいて画素を繰り返し発光させる駆動回路と、入力される映像信号を各画素の画像データ信号に変換して画像データ信号と映像信号の同期情報を示す同期信号とを駆動回路に出力する信号処理回路とを備えるディスプレイ装置であって、駆動回路が、画素回路を駆動する繰返単位期間において、当該画素の画像データ電圧を駆動用TFTのゲートに印加する期間以外の駆動用TFTの動作前の予め定められた期間に、駆動用TFTの経時変化を抑制するために、発光ダイオードの輝度に対応して当該駆動用TFTを駆動するために予め定められた最大ゲート電圧と最小ゲート電圧との差分の電圧値よりも大きな絶対値を有する制御電圧を、データラインから当該駆動用TFTのゲートに印加することを特徴とする。
【0019】
かかる構成によれば、ディスプレイ装置は、画素回路を駆動する駆動回路により、画素の画像データ電圧を印加していない期間に、駆動用TFTの経時変化を抑制可能な絶対値を有する制御電圧を、データラインから当該駆動用TFTのゲートに印加するので、駆動用TFT特性の経時変化に起因して画素の輝度レベルが低下するといった劣化を抑制することができる。したがって、ディスプレイ装置は、表示パネルによる画像表示において経時的な画質劣化を抑制することができる。
【0020】
また、本発明の請求項2のディスプレイ装置は、請求項1記載のディスプレイ装置において、発光ダイードが有機EL素子であることを特徴とする。
【0021】
かかる構成によれば、ディスプレイ装置は、表示パネルの画素に有機EL素子を備えているので、有機ELディスプレイにおいて、有機EL素子を駆動する駆動用TFT特性の経時変化に起因して画素の輝度レベルが低下するといった劣化を抑制することができる。
【0022】
また、本発明の請求項3のディスプレイ装置は、請求項1または請求項2に記載のディスプレイ装置において、駆動回路が、列ドライバと行ドライバとを備え、列ドライバが、データ用シフトレジスタ回路と、制御電圧用シフトレジスタ回路とを備え、行ドライバが、スキャン用シフトレジスタ回路と、電源電圧制御用シフトレジスタ回路とを備えることとした。
【0023】
かかる構成によれば、ディスプレイ装置は、駆動回路において、列ドライバが、画素回路を駆動する繰返単位期間内の処理に対応した予め定められたタイミングパルスを生成し、信号処理回路から入力する画像データ信号と同期信号と前記生成したタイミングパルスとに基づいて、表示パネルの列方向から画素回路の列を選択し、選択した画素回路の列に画像データ電圧と制御電圧とを異なるタイミングで印加する。そして、駆動回路において、行ドライバが、画素回路を駆動する繰返単位期間内の処理に対応した予め定められたタイミングパルスを生成し、信号処理回路から入力する同期信号と前記生成したタイミングパルスとに基づいて、表示パネルの行方向から画素回路の行を選択し、選択した画素回路の行に走査電圧と電源電圧とを印加する。
【0024】
また、かかる構成によれば、ディスプレイ装置は、駆動回路において、列ドライバが、データ用シフトレジスタ回路によって、表示パネルの列方向の複数のデータラインから画素回路のデータラインを選択して画像データ電圧を印加する。そして、列ドライバは、異なるタイミングで、制御電圧用シフトレジスタ回路によって、表示パネルの列方向の複数のデータラインから画素回路のデータラインを選択して制御電圧を印加する。また、駆動回路において、行ドライバは、スキャン用シフトレジスタ回路によって、表示パネルの行方向の複数の走査ラインから画素回路の走査ラインを選択して走査電圧を印加する。そして、行ドライバは、表示パネルの行方向の複数の電源ラインから画素回路の電源ラインを選択して電源電圧を印加する。
【0025】
したがって、ディスプレイ装置は、駆動回路が、画像データと制御電圧とを選択画素に独立に印加できる列ドライバと、スキャン電圧と電源電圧とを選択画素に独立に印加できる行ドライバとを備えている。そのため、駆動回路は、行ドライバによって、所定の繰返単位期間内において、選択画素へ供給する電源電圧を変動させることができる。仮に制御電圧の印加方向を、発光ダイオードの発光強度が増加する方向と同じマイナス方向とした場合には、制御電圧印加期間に電源電圧の印加を停止しなければ、この期間に発光ダイオードが発光してしまうことがある。しかしながら、駆動回路は、行ドライバによって、選択画素への電源電圧の印加を停止することができるので、制御電圧印加期間に発光ダイオードが発光するといった事態を回避することができる。ところで、駆動用TFTが例えばp型動作するときに、駆動用TFTのゲート電圧とドレイン電流とを二次元プロットした伝達特性が、スキャンを行う毎に、ゲート電圧軸においてプラス方向へとシフトしていくタイプの駆動用TFTの場合や、n型動作しつつ伝達特性がスキャンを行う毎にゲート電圧軸においてマイナス方向へとシフトしていくタイプの駆動用TFTの場合には、制御電圧の印加方向を、発光ダイオードの発光強度が増加する方向と同じマイナス方向にした方が効果的である。そのため、このディスプレイ装置は、このような特性の半導体材料を用いた場合であっても駆動用TFTの電気特性の経時変化に起因して画素の輝度レベルが低下するといった劣化を効果的に抑制することができる。
【0026】
また、前記課題を解決するために、本発明の請求項4の画素駆動方法は、本発明の第1の観点に係る画素駆動方法であって、発光ダイオードと、発光ダイオードを駆動する駆動用TFTと、映像信号に対応した画像データ電圧を所定のデータラインから駆動用TFTのゲートに印加する画素選択用TFTとを含む画素回路が画素としてマトリクス状に配置された表示パネルと、所定の繰返単位期間毎に画素回路を駆動することで表示パネルにおいて画素を繰り返し発光させる駆動回路と、入力される映像信号を各画素の画像データ信号に変換して画像データ信号と映像信号の同期情報を示す同期信号とを駆動回路に出力する信号処理回路とを備えるディスプレイ装置の駆動回路による画素駆動方法であって、駆動回路が、画素回路を駆動する繰返単位期間において、当該画素の画像データ電圧を駆動用TFTのゲートに印加する期間以外の駆動用TFTの動作前の予め定められた期間に、駆動用TFTの経時変化を抑制するために、発光ダイオードの輝度に対応して当該駆動用TFTを駆動するために予め定められた最大ゲート電圧と最小ゲート電圧との差分の電圧値よりも大きな絶対値を有し、かつ、画像データ電圧の印加方向と同じ方向を示すマイナスの制御電圧を、データラインから当該駆動用TFTのゲートに印加し、繰返単位期間の少なくとも制御電圧を印加する期間においては、発光ダイオードに対する電源電圧の印加を停止することを特徴とする。
【0027】
かかる手順によれば、本発明の請求項4の画素駆動方法は、画素回路を駆動する駆動回路によって、画素の画像データ電圧を印加していない期間に、駆動用TFTの経時変化を抑制可能な絶対値を有したマイナスの制御電圧を、データラインから当該駆動用TFTのゲートに印加し、少なくともその期間には電源電圧の印加を停止する。したがって、駆動用TFTが例えばp型動作するときに、駆動用TFTのゲート電圧とドレイン電流とを二次元プロットした伝達特性が、スキャンを行う毎に、ゲート電圧軸においてプラス方向へとシフトしていくタイプの駆動用TFTの場合や、n型動作しつつ伝達特性がスキャンを行う毎にゲート電圧軸においてマイナス方向へとシフトしていくタイプの駆動用TFTの場合に、画素の輝度レベルが低下するといった劣化を効果的に抑制することができる。この際に、制御電圧の印加方向は、発光ダイオードの発光強度が増加する方向と同じマイナス方向なので、仮に、この制御電圧印加期間に電源電圧の印加を停止しなければ、この期間に発光ダイオードが発光してしまう。ところが、この第1の観点に係る画素駆動方法では、駆動回路により、この制御電圧印加期間を少なくとも含む期間に、電源電圧の印加を停止する制御を行う。したがって、画素の画像データ電圧を印加していない期間に、データと無関係な無駄な発光を防止することができる。
【0028】
また、前記課題を解決するために、本発明の請求項5の画素駆動方法は、本発明の第2の観点に係る画素駆動方法であって、発光ダイオードと、発光ダイオードを駆動する駆動用TFTと、映像信号に対応した画像データ電圧を所定のデータラインから駆動用TFTのゲートに印加する画素選択用TFTとを含む画素回路が画素としてマトリクス状に配置された表示パネルと、所定の繰返単位期間毎に画素回路を駆動することで表示パネルにおいて画素を繰り返し発光させる駆動回路と、入力される映像信号を各画素の画像データ信号に変換して画像データ信号と映像信号の同期情報を示す同期信号とを駆動回路に出力する信号処理回路とを備えるディスプレイ装置の駆動回路による画素駆動方法であって、駆動回路が、画素回路を駆動する繰返単位期間において、当該画素の画像データ電圧を駆動用TFTのゲートに印加する期間以外の駆動用TFTの動作前の予め定められた期間に、駆動用TFTの経時変化を抑制するために、発光ダイオードの輝度に対応して当該駆動用TFTを駆動するために予め定められた最大ゲート電圧と最小ゲート電圧との差分の電圧値よりも大きな絶対値を有し、かつ、画像データ電圧の印加方向とは逆方向を示すプラスの制御電圧を、データラインから印加することを特徴とする。
【0029】
かかる手順によれば、本発明の請求項5の画素駆動方法は、画素回路を駆動する駆動回路によって、画素の画像データ電圧を印加していない期間に、駆動用TFTの経時変化を抑制可能な絶対値を有したプラスの制御電圧を、データラインから当該駆動用TFTのゲートに印加する。したがって、駆動用TFTが例えばp型動作するときに、駆動用TFTのゲート電圧とドレイン電流とを二次元プロットした伝達特性が、スキャンを行う毎に、ゲート電圧軸においてマイナス方向へとシフトしていくタイプの駆動用TFTの場合や、n型動作しつつ伝達特性がスキャンを行う毎にゲート電圧軸においてプラス方向へとシフトしていくタイプの駆動用TFTの場合には、画素の輝度レベルが低下するといった劣化を効果的に抑制することができる。この際に、制御電圧の印加方向は、発光ダイオードの発光強度が増加する方向と逆のプラス方向なので、電源電圧の印加に関わらず、この制御電圧印加期間に発光ダイオードは発光しない。したがって、この第2の観点に係る画素駆動方法では、第1の観点に係る画素駆動方法よりも少ない処理で、画素の輝度変化を効果的に抑制することができる。
【0030】
また、前記課題を解決するために、本発明の請求項6の画素駆動方法は、本発明の第3の観点に係る画素駆動方法であって、発光ダイオードと、発光ダイオードを駆動する駆動用TFTと、データ保持用コンデンサと、映像信号に対応した画像データ電圧を所定のデータラインから駆動用TFTおよびデータ保持用コンデンサに印加する画素選択用TFTとを含む画素回路をディスプレイ装置の画素として、所定の繰返単位期間に、画像データ電圧を駆動用TFTのゲートに印加しつつデータ保持用コンデンサに書き込む書込期間と、書込期間に続いて駆動用TFTのゲートに印加し続ける電圧により発光ダイオードを発光させる発光期間と、データ保持用コンデンサに書き込まれた電圧により発光ダイオードを発光させる保持期間とを備えて繰り返し駆動する駆動回路による画素駆動方法であって、駆動回路が、繰返単位期間において、駆動用TFTの動作前の予め定められた期間として書込期間よりも前、または、保持期間よりも後に、駆動用TFTの経時変化を抑制するために、発光ダイオードの輝度に対応して当該駆動用TFTを駆動するために予め定められた最大ゲート電圧と最小ゲート電圧との差分の電圧値よりも大きな絶対値を有する制御電圧を、データラインから当該駆動用TFTのゲートに印加することを特徴とする。
【0031】
かかる手順によれば、本発明の請求項6の画素駆動方法は、画素回路を駆動する駆動回路によって、画素の画像データ電圧を印加していない期間として書込期間よりも前、または、保持期間よりも後に、駆動用TFTの経時変化を抑制可能な制御電圧を、データラインから当該駆動用TFTのゲートに印加する。これにより、制御電圧を例えば1μs以下といった非常に短い瞬間的なパルスで印加した場合には、制御電圧の電圧方向がプラスであってもマイナスであっても、画像データの発光に影響しないため、制御電圧の印加処理という少ない処理だけで、画素の輝度レベルが低下するといった劣化を抑制することができる。したがって、この第3の観点に係る画素駆動方法では、駆動用TFTが例えばp型動作するときに、駆動用TFTのゲート電圧とドレイン電流とを二次元プロットした伝達特性が、スキャンを行う毎に、ゲート電圧軸においてプラス方向へとシフトしていくタイプの駆動用TFTの場合でも、マイナス方向へとシフトしていくタイプの駆動用TFTの場合でも、当該駆動用TFT特性の経時変化に起因して画素の輝度レベルが低下するといった劣化を効果的に抑制することができる。また、同様に、駆動用TFTがn型動作するときに、伝達特性がスキャンを行う毎にゲート電圧軸においてマイナス方向へとシフトしていくタイプの駆動用TFTの場合でも、プラス方向へとシフトしていくタイプの駆動用TFTの場合でも、当該駆動用TFT特性の経時変化に起因して画素の輝度レベルが低下するといった劣化を効果的に抑制することができる。
【0032】
また、本発明の請求項7の画素駆動方法は、請求項6に記載の画素駆動方法において、駆動回路が、繰返単位期間の駆動用TFTの動作前の予め定められた期間において、制御電圧を駆動用TFTのゲートに印加した後に、制御電圧の印加を停止することとした。
【0033】
かかる手順によれば、本発明の請求項7の画素駆動方法は、制御電圧を、データラインから当該駆動用TFTのゲートに印加した後であって、駆動用TFTが動作する前に制御電圧の印加を停止するので、制御電圧を例えば1μs以下といった非常に短い瞬間的なパルスを印加せずに比較的長期間の矩形パルス等をゲートに印加することができる。そして、駆動用TFTが動作する前に制御電圧の印加を停止するので、この比較的長期間の間にデータ保持用コンデンサに書き込ませてしまった不要な制御電圧値を消去することができる。そのため、駆動用TFTが動作する期間に入ってからは、同じデータラインから入る画素の画像データをデータ保持用コンデンサに正しく書き込むことができる。したがって、本画素駆動方法は、駆動用TFTが例えばp型動作するときに、駆動用TFTのゲート電圧とドレイン電流とを二次元プロットした伝達特性が、スキャンを行う毎に、ゲート電圧軸においてプラス方向へとシフトしていくタイプの駆動用TFTの場合や、駆動用TFTがn型動作するときに、伝達特性がスキャンを行う毎にゲート電圧軸においてマイナス方向へとシフトしていくタイプの駆動用TFTの場合に有効である。
【発明の効果】
【0034】
請求項1に記載の発明によれば、ディスプレイ装置は、画素回路を駆動する駆動回路により、画素の画像データ電圧を印加していない期間に、駆動用TFTの経時的な劣化を抑制可能な予め定められた絶対値を有する制御電圧を、データラインから当該駆動用TFTのゲートに印加するので、駆動用TFT特性の経時変化に起因して画素の輝度レベルが低下するといった劣化を抑制することができる。これにより、表示パネルの画像表示、特に階調表示における画質変化を改善することができる。さらに、この際に、発光ダイオード、駆動用TFT及び画素選択用TFTによる基本的な画素回路の構成素子数を増やすことなく、画素の輝度変化を抑制することができる。
【0035】
請求項2に記載の発明によれば、ディスプレイ装置は、有機EL素子を備えているので、有機ELディスプレイにおいて画素の輝度変化を抑制することができる。
請求項3に記載の発明によれば、ディスプレイ装置は、駆動回路が、画像データと制御電圧とスキャン電圧と電源電圧とを選択画素に独立に印加できるので、駆動用TFTがp型動作するときに駆動用TFTの伝達特性がスキャンを行う毎にゲート電圧軸においてプラス方向へとシフトしていくタイプの駆動用TFTの場合や、n型動作しつつ伝達特性がスキャンを行う毎にゲート電圧軸においてマイナス方向へとシフトしていくタイプの駆動用TFTの場合であっても画素の輝度変化を効果的に抑制することができる。
【0036】
請求項4に記載の発明によれば、画素駆動方法は、駆動回路により、画素の画像データ電圧を印加していない期間に、駆動用TFTの経時変化を抑制可能な予め定められた絶対値を有するマイナスの制御電圧を、データラインから当該駆動用TFTのゲートに印加しつつ、制御電圧印加期間を少なくとも含む期間に電源電圧の印加を停止する制御を行うので、画素の画像データ電圧を印加していない期間に、データと無関係な無駄な発光を防止しつつ、駆動用TFT特性の経時変化に起因する画素の輝度変化を抑制することができる。
【0037】
請求項5に記載の発明によれば、画素駆動方法は、駆動回路により、画素の画像データ電圧を印加していない期間に、駆動用TFTの経時変化を抑制可能な予め定められた絶対値を有するプラスの制御電圧を、データラインから当該駆動用TFTのゲートに印加する単純な制御で、駆動用TFT特性の経時変化に起因する画素の輝度変化を抑制することができる。
【0038】
請求項6に記載の発明によれば、画素駆動方法は、駆動回路により、書込期間よりも前または保持期間よりも後に、駆動用TFTの経時変化を抑制可能な予め定められた絶対値を有する制御電圧を、データラインから当該駆動用TFTのゲートに印加するので、画素回路に含まれる駆動用TFTがp型またはn型動作するときに、駆動用TFTの伝達特性がスキャンを行う毎にゲート電圧軸においてプラス方向またはマイナス方向の一方へとシフトしていく4つタイプのいずれの駆動用TFTを用いても、当該駆動用TFT特性の経時変化に起因する画素の輝度変化を効果的に抑制することができる。
【0039】
請求項7に記載の発明によれば、画素駆動方法は、駆動回路により、制御電圧の印加中にデータ保持用コンデンサに書き込ませてしまった不要な制御電圧値を消去した上で画素の画像データを正しく書き込みつつ、駆動用TFT特性の経時変化に起因する画素の輝度変化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施形態に係るディスプレイ装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係るディスプレイ装置の列ドライバおよび行ドライバの構成例を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係るディスプレイ装置の画素の構成例を示す回路図である。
【図4】通常駆動により画素を3回までスキャンした場合のDr-TFTの伝達特性の経時的な劣化を示すグラフである。
【図5】本発明の実施形態に係る画素駆動法により画素を3回までスキャンした場合のDr-TFTの伝達特性の経時的な劣化を示すグラフである。
【図6】バックゲート型のTFT構造に作製されたDr-TFTを模式的に示す断面図である。
【図7】ディスプレイ装置の画素をスキャンしたときのDr-TFTの断面を模式的に示す図であって、(a)は通常駆動の1回スキャン後の状態、(b)は通常駆動の複数回スキャン後の状態、(c)は本発明の実施形態に係る画素駆動法にて1回スキャン後の状態、(d)は本発明の実施形態に係る画素駆動法にて複数回スキャン後の状態をそれぞれ示している。
【図8】本発明の実施形態に係るディスプレイ装置の画素の輝度変化を抑制する画素駆動方法で用いる各ラインの信号波形のタイミングチャートの一例である。
【図9】本発明の実施形態に係るディスプレイ装置の画素の輝度変化を抑制する画素駆動方法で用いる各ラインの信号波形のタイミングチャートの他の例である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図面を参照して本発明のディスプレイ装置および画素駆動方法を実施するための形態について詳細に説明する。以下では、説明の都合上、1.画素駆動方法の概要、2.駆動用TFTの特性変化を抑制する原理、3.ディスプレイ装置の構成、4.ディスプレイ装置の動作の各章について順次説明することとする。
【0042】
[1.画素駆動方法の概要]
本発明の実施形態に係るディスプレイ装置は、一例として、アクティブマトリクス型有機ELディスプレイであるものとして、本発明の実施形態に係る画素駆動方法を説明する。画素駆動方法の前提として、まず、ディスプレイ装置の主要部の構成を説明する。このディスプレイ装置の構成例を図1に示し、画素の1セル分の回路として2個のTFTを備える典型的な画素回路を図3に示す。図3に示す画素回路25の構成および動作は、背景技術において説明した通りなので詳細な説明を省略する。
【0043】
本発明の実施形態に係る画素駆動方法について図3を参照(適宜図1参照)して説明する。この画素駆動方法では、画像データの書込、発光および保持の一連の処理により画素を繰り返し発光させる繰り返し単位期間において、画像データの書き込み直前(または発光保持の直後)に、所定の期間を設けて、Dr-TFT2のゲートに、特性変化を抑制するための制御電圧(以下、特性変化抑制電圧Vrと呼称する)を印加する制御を、画素回路25の外部に設けた駆動回路により行う。この駆動回路は、図1に示す列ドライバ33および行ドライバ34に相当する。これら列ドライバ33および行ドライバ34の構成例を図2に示す。なお、列ドライバ33および行ドライバ34を含めて図1に示すディスプレイ装置100の構成については後記する。
【0044】
本発明の実施形態に係る画素駆動方法において、Dr-TFT2のゲートに、特性変化抑制電圧Vrを印加するための駆動回路による具体的な制御としては、まず、Sw-TFT4がオン状態の期間に、電源電圧(以下、Vddと表記する)をオフし、特性変化抑制電圧Vrを印加する。すると、この制御により、その後、画素の画像データである画像データ電圧(以下、Vdata表記する)をデータ保持用コンデンサC3に書き込みつつ、それに同期して電源電圧Vddをオンすることで、画素の発光が得られる。そして、Dr-TFT2の動作前に特性変化抑制電圧Vrを印加する期間を設けた制御により、Dr-TFT2の特性の経時的な劣化を抑制することができる。この画素駆動方法によれば、非特許文献2に記載の電流プログラム型駆動回路のように画素内に多数のTFTを追加することなくDr-TFT2の特性の経時的な劣化を抑制することができる。つまり、画素の1セル分の回路として2個のTFTを備える典型的な画素回路25内のTFT個数を増やすことなく、Dr-TFT2の特性の経時的な劣化を抑制することができる。
【0045】
[2.駆動用TFTの特性変化を抑制する原理]
本発明の実施形態に係る画素駆動方法において、ディスプレイの画素内に配設された駆動用TFTであるDr-TFT2を、有機材料を用いてバックゲート型のTFT構造に作製して実験により測定した測定結果と、この測定結果を種々検討することで得られた、Dr-TFT2の特性変化を抑制する原理とについて図4ないし図7を参照(適宜図3参照)して説明する。
【0046】
<試料>
ここで作製したDr-TFT2の断面図を図6に示す。ここでは、図6に示すDr-TFT2において、有機半導体13に、一般的な有機半導体材料であるペンタセンを用いた。また、ゲート絶縁膜12には、高誘電率材料の五酸化タンタル(Ta2O5)を用いた。
【0047】
<実験方法>
走査ラインSからの信号によりSw-TFTを駆動して画素を選択するスキャンを行い、データラインDから、画像データ電圧Vdataをゲート電圧として、このDr-TFT2のゲート(ゲート電極11)に印加して、Dr-TFT2を駆動して書き込みを行う一連の動作を行って、予め定めた階調範囲に対応した電圧範囲で、種々の電圧値に変化させ、ゲート電圧を横軸、ドレイン電流を縦軸としてプロットした。ただし、このときに、画素においてDr-TFT2が書込動作を行う前に、Dr-TFT2のゲートに特性変化抑制電圧Vrを印加する期間を設けた。
【0048】
この特性変化抑制電圧Vrと、Dr-TFT2の書き込み動作中に印加される画素の画像データ電圧Vdataとは、共にゲートに印加される電圧であるが、単にゲート電圧と呼称する場合には、画素の画像データ電圧Vdataを意味する。また、本実施形態においては、特性変化抑制電圧Vrと画像データ電圧Vdataとの間には、次の式(1)の関係がある。
|Vr|>|Vdata| … 式(1)
【0049】
なお、OLED1が有機EL素子の場合には、直流電流値に応じた明るさで発光するため、このときのドレイン電流がOLED1の輝度に直接寄与することとなる。そのため、階調範囲に対応したゲート電圧範囲に対応して測定されたドレイン電流範囲は、ディスプレイの画素のコントラストを示す。
【0050】
また、このときのゲート電圧と階調範囲との対応関係は、ゲート電圧が0[V]のときを「白レベル」、ゲート電圧が+20[V]のときを「黒レベル」にそれぞれ対応させた。つまり、階調範囲の最大ゲート電圧を+20[V]、最小ゲート電圧を0[V]とした。このとき、最大ゲート電圧と最小ゲート電圧との差分の電圧値は20[V]である。
【0051】
そして、本発明の実施形態に係る画素駆動方法に特有の特性変化抑制電圧Vrを-40[V]の一定値とした。Vrの電圧値をこのような値に設定した根拠および符号については後記する。また、測定条件として、ドレイン電圧の電圧値を15[V]とした。このドレイン電圧値は、階調範囲の最大ゲート電圧と最小ゲート電圧との差分の電圧値と同程度の値とした。
【0052】
そして、各画素を連続して選択するスキャンの回数を1回目、2回目、3回目と変化させたときに、Dr-TFT2のゲートに特性変化抑制電圧Vrを予め印加した後に、画像データ電圧Vdataとしてゲートに印加されるゲート電圧と、そのときのドレイン電流との関係で表される伝達特性をそれぞれ測定した。また、比較として、特性変化抑制電圧Vrを印加することなく同様の測定を行った。
【0053】
<測定結果>
Dr-TFT2のゲートに特性変化抑制電圧Vrを予め印加した場合の測定結果を図5に示し、印加しない場合の実験結果を図4に示す。図4および図5は、ゲート電圧を横軸、ドレイン電流を縦軸としてプロットした伝達特性を示す片対数のグラフであって、横軸は、Dr-TFT2のゲート電圧[V]を示し、縦軸は、Dr-TFT2のドレイン電流[A]を示す。なお、縦軸のドレイン電流の符号はマイナス(−)である。図4および図5において、スキャンの回数が1回目である駆動初期の伝達特性の測定結果を実線(1st scan)で示した。また、連続スキャンを2回行った場合の伝達特性の測定結果を破線(2nd scan)で示した。さらに、連続スキャンを3回行った場合の伝達特性を一点鎖線(3rd scan)で示した。
【0054】
特性変化抑制電圧Vrを印加しない場合には、図4に示すように、このDr-TFT2の伝達特性は、画素を選択するスキャンを行う毎に、横軸においてゲート電圧の正(+)方向(図中右)へとシフトしていくことが観測された。つまり、1回目のスキャンにより実線で示した特性が、2回目には破線で示した特性へと変化し、さらに、3回目には一点鎖線で示した特性へと変化する。
【0055】
また、別の観点では、図4に示す実線(1st scan)において、ゲート電圧が20[V]の場合を示す黒レベルのドレイン電流値(丸印で示す部分)が、2、3回目のスキャンでは、数十倍に上昇し、白レベル(ゲート電圧が0[V]の場合)のドレイン電流値に近づいてしまう。これは、本来は黒で表示したい画素の色が白色に近づいてしまうことを意味する。すなわち、複数スキャンの後に白黒のコントラストが小さくなった。
【0056】
要するに、画素を選択するスキャンを行う毎に、Dr-TFT2の伝達特性は、経時的に劣化することが観測された。これは、Dr-TFT2の有機半導体13(図6参照)の構成材料であるペンタセンが大気中の酸素や水蒸気によって酸化され、有機半導体13とゲート絶縁膜12との界面の可動電荷等の影響により特性が変化したものであると考えられる。
【0057】
これに対して、Dr-TFT2のゲートに特性変化抑制電圧Vrを予め印加した場合には、図5に示すように、このDr-TFT2の伝達特性は、画素を選択するスキャンを行う毎に、横軸においてゲート電圧の正(+)方向(図中右)へとシフトしていくことが観測されたが、特性変化抑制電圧Vrを印加しない場合と比較して、シフト幅が著しく小さくなった。
【0058】
また、別の観点では、図5に示す実線(1st scan)において、ゲート電圧が20[V]の場合を示す黒レベルのドレイン電流値が、2、3回目のスキャンでは、上昇することが観測されたが、特性変化抑制電圧Vrを印加しない場合と比較して、上昇率が著しく小さくなり、複数スキャンの後であっても白黒のコントラストの変化は著しく小さくなった。
要するに、Dr-TFT2のゲートに特性変化抑制電圧Vrを予め印加しておいた場合には、Dr-TFT2の伝達特性が経時的に劣化することを抑制することができると結論付けられる。
【0059】
なお、使用する有機半導体13の材料やゲート絶縁膜12の材料に起因して、Dr-TFT2の伝達特性が、画素を選択するスキャンを行う毎に、横軸においてゲート電圧の正(+)方向(図中右)へとシフトしていくことが必ず観測される訳ではなく、横軸においてゲート電圧の負(−)方向(図中左)へとシフトしていくことが観測される場合も多々ある。この実験で作製した試料の場合には、特性変化抑制電圧Vrを印加しない通常駆動において、Dr-TFT2の伝達特性が、画素を選択するスキャンを行う毎に、横軸においてゲート電圧の正(+)方向(図中右)へとシフトしていくことが観測されたために、Dr-TFT2のゲートに負(−)方向の特性変化抑制電圧Vrを印加することとしたが、逆に横軸においてゲート電圧の負(−)方向(図中左)へシフトしていくことが観測された場合には、Dr-TFT2のゲートに正(+)方向の特性変化抑制電圧Vrを印加することで、同様の効果を得ることができる。
【0060】
<特性変化抑制のメカニズム>
図6に断面を示す駆動用有機TFTであるDr-TFT2の内部では、画素の画像データVdataを書き込む駆動時において、次のようにモデル化できる現象が起きていると考えられる。すなわち、Dr-TFT2のゲート電極11に、画像データ電圧Vdataとしてゲート電圧を印加して、Dr-TFT2を駆動すると、このゲート電圧により、ゲート絶縁膜12の表面(厚み方向で有機半導体13側の領域)と有機半導体13との界面に、TFT動作に直接関係する電荷としてのキャリア20が誘起される。また、ゲート絶縁膜12においてその表面(厚み方向で有機半導体13側の領域)よりも内部には、TFT動作に直接は関係しない電荷としての可動電荷21が存在している。なお、図7(a)では、一例として、表面から換算して厚みの1/3程度の位置に可動電荷21を表示した。この可動電荷21は、ゲート絶縁膜12の厚み方向に対して、例えば、符号22で示す可動範囲で移動することが可能である。
【0061】
特性変化抑制電圧Vrを印加しない通常駆動の場合、スキャンの回数が1回目である駆動初期時には、図7(a)に示すように、可動電荷21は、ゲート絶縁膜12の厚み方向において、ゲート絶縁膜12の表面と有機半導体13との界面に誘起されたキャリア20から離れた領域に存在している。ところが、可動電荷21は移動できるので、スキャンの回数を2回目、3回目と増加させてDr-TFT2を連続的に駆動すると、徐々に、可動電荷21がキャリア20に近づいてくる。やがて、可動電荷21は、Dr-TFT2の特性に影響を与えるような領域であるチャネル近傍領域に集まってくる。その後、図7(b)に示すように、ゲート絶縁膜12の表面と有機半導体13との界面に存在する準位に可動電荷21が捕獲されることで、移動が困難な固定電荷となる。なお、図7(b)では、このときの様子として、キャリア20と可動電荷21とが重なるように表示した。このように可動電荷21が固定電荷となった結果、Dr-TFT2の特性が変化してしまう。
【0062】
これに対して、Dr-TFT2の動作前に、すなわち、画素の画像データ電圧Vdataを書き込む前に、この駆動電圧(画像データ電圧Vdata)よりも大きな制御電圧を、Dr-TFT2のゲートに特性変化抑制電圧Vrとして予め印加しておくと、印加しない場合と比較して、可動電荷21をチャネル近傍から、より遠ざけることができる。
具体的には、Dr-TFT2の動作前に、Dr-TFT2のゲート電極11に、特性変化抑制電圧Vrを印加すると、図7(c)に示すように、可動電荷21は、ゲート絶縁膜12の厚み方向において、ゲート絶縁膜12の表面と有機半導体13との界面に誘起されたキャリア20から、比較的離れた領域(図中下側の領域)に遠ざけられる。なお、図7(c)では、図7(a)と比較するために、一例として、表面から換算して厚みの2/3程度の位置に可動電荷21を表示した。
【0063】
画素において、特性変化抑制電圧Vrの大きさは、前記した式(1)に示すように、そのときの駆動電圧(画像データ電圧Vdata)よりも大きな制御電圧であればよいが、画素に表示させようとする色によって、ゲート電圧値は異なるので、ディスプレイにおいて各色の表示をカバーするために、通常の駆動電圧の範囲全体の各電圧値(階調範囲のすべてのゲート電圧)に対して前記した式(1)の関係を満たすようにした。つまり、特性変化抑制電圧Vrの絶対値が、最大ゲート電圧と最小ゲート電圧との差分の電圧値よりも大きくなるようにした。このようにすると、Dr-TFT2の通常の駆動時の電圧による影響を受けづらくすることが可能である。
【0064】
例えば、ゲート電圧が0[V]のときを「白レベル」、ゲート電圧が+20[V]のときを「黒レベル」にそれぞれ対応させたときには、Dr-TFT2の通常の駆動電圧の範囲の大きさは20[V]である。そのため、この場合には、特性変化抑制電圧Vrを-40[V]に設定して実験を行った。その結果、Dr-TFT2の通常の駆動電圧の範囲内(0〜20[V])では、スキャンの回数を2回目、3回目と増加させてDr-TFT2を連続的に駆動したとしても、毎回Dr-TFT2が動作する前に特性変化抑制電圧Vrを、Dr-TFT2のゲートに印加するので、可動電荷21の移動範囲が毎回小さく、図7(d)に示すように、可動電荷21が、チャネルを形成するキャリア20に近づくことも少ない。つまり、Dr-TFT2の特性の経時変化が起こりにくくなる。これにより、Dr-TFT2の特性の経時的な劣化を抑制することができる。
【0065】
[3.ディスプレイ装置の構成]
ディスプレイ装置100は、図1に示すように、表示パネル31と、信号処理回路32と、列ドライバ33と、行ドライバ34とを備えている。
【0066】
<表示パネル>
表示パネル31は、水平方向にm個、垂直方向にn個のマトリクス状に配置されたm×n画素を備えている。すなわち、表示パネル31には、画素の1セル分の回路として、画素回路25が水平方向にm個、垂直方向にn個のマトリクス状に配置されている。なお、図1では、各画素回路25を(i,j)(1≦i≦m、1≦j≦n)で区別している。
【0067】
この画素回路25の一般的な構成例は図3に示した通りである。なお、図3に示す電源ラインPと、走査ラインSとデータラインDとは、例えば、図1に示す電源ラインP1〜Pnのいずれかと、走査ラインS1〜Snのいずれかと、データラインD1〜Dmのいずれかとをそれぞれ示している。
【0068】
画素回路25は、図3に示すように、OLED1と、Dr-TFT2、データ保持用コンデンサC3と、SW-TFT4とを備えている。これら各要素およびその接続関係は、一般的なものである。本実施形態のディスプレイ装置100では、一例として、OLED1と、Dr-TFT2、SW-TFT4とを有機半導体材料で構成することとした。
【0069】
OLED1は、有機発光ダイオードであり、例えば、電流駆動型の有機EL素子から構成されている。OLED1は、電流駆動型の有機EL素子で構成されている場合、Dr-TFT2のドレイン端子から入力される直流電流値に応じた明るさで発光する。有機EL素子は、素子そのものが発光する有機発光材料を構成要素とすることから、素子作製プロセスとして低温プロセスを用いて作製することができる。
【0070】
Dr-TFT2は、OLED1を駆動する駆動用TFTであり、例えば、p型の有機半導体材料で構成される。このDr-TFT2は、図6に断面を示すバックゲート型のTFT構造に作製される。データ保持用コンデンサC3は、Dr-TFT2のゲート端子に入力されるデータ電圧の充放電を行うためのコンデンサである。なお、データ保持用コンデンサC3は、意図的に作製しなくても、Dr-TFT2の寄生容量で代用できる場合がある。
SW-TFT4は、例えばp型の有機半導体材料で構成され、p型動作する。SW-TFT4は、Dr-TFT2と同じものを画素選択用に転用することができる。
【0071】
<信号処理回路>
信号処理回路32は、入力される映像信号を、各画素の画像データ信号に変換し、この画像データ信号と、映像信号の同期情報を示す同期信号とを、列ドライバ33および行ドライバ34に出力するものである。この信号処理回路32は、ディスプレイの各ドライバを介して、表示パネル31の各画素を走査して選択した画素にその画素の画像を表示させる信号を出力するための一般的な回路から構成されている。ここで、列ドライバ33および行ドライバ34は、信号処理回路32と協働し、所定の繰返単位期間毎に画素回路25を駆動することで、表示パネル31において画素を繰り返し発光させる制御を行う一般的な機能を有した駆動回路である。本実施形態では、所定の繰返単位期間を、放送をはじめとする動画像システムで用いられているインターレース方式における1フィールドに対応させて説明する。
【0072】
なお、このインターレース方式は、画素からの出力信号に基づくフレーム(フレーム画像)を構成する走査線のうち、偶数ラインの走査線から成る偶数フィールドと、奇数ラインの走査線から成る奇数フィールドとに分け、時間をずらして2種類のフィールドで信号を読み出すことにより、時間方向のサンプリング周波数(例えば59.94fps(Frame Per Second))を、フレーム単位で信号を読み出す場合の周波数(例えば29.97fps)の2倍とし、動解像度の改善を図るものである。
【0073】
<列ドライバ>
列ドライバ33は、行ドライバ34および信号処理回路32と協働して動作する前記した一般的な機能を備えると共に、以下の2つの機能をさらに備えている。
すなわち、列ドライバ33は、画素回路25を駆動する1フィールド内の処理に対応した予め定められたタイミングパルスを生成する機能を備えている。このタイミングパルスは、列ドライバ33が内蔵する図示しないパルス発生器により発生することができる。
また、列ドライバ33は、信号処理回路32から入力する画像データ信号および同期信号と、生成したタイミングパルスとに基づいて、表示パネル31において列方向から画素回路の列を選択し、選択した画素回路の列に対して、画像データ電圧Vdataと特性変化抑制電圧Vrとを異なるタイミングで印加する機能を備えている。
【0074】
ここで、このタイミングパルスは、例えば、図8にてDで示される波形(図8において上から2番目の波形)で表される。図8にてDで示される波形において、期間T1のパルス幅で表される負の電圧が特性変化抑制電圧Vrを示し、期間T3のパルス幅で表される負の電圧が画像データ電圧Vdataを示している。図示するように、特性変化抑制電圧Vrの絶対値は、画像データ電圧Vdata(ゲート電圧)の絶対値よりも大きくなるように設定されている。
【0075】
また、図8にてDr-TFT(Gate)で示される波形は、Dr-TFT2のゲートに印加され電圧の波形(図8において上から4番目の波形)を示している。このゲート電圧の波形によれば、図示するように、期間T1において、特性変化抑制電圧Vrに一致した負の大きな電圧がDr-TFT2のゲートに印加されている。また、期間T3に入って画像データ電圧Vdataが印加されるようになると、データ保持用コンデンサC3のチャージに応じた推移で負の電圧が増加し、コンデンサに書き込まれたチャージは期間T4が終わるまで保持されていることが分かる。
【0076】
列ドライバ33は、このように画像データ電圧Vdataと特性変化抑制電圧Vrとを異なるタイミングで印加する機能を実現するために、図2に示すように、データ用シフトレジスタ回路331と、特性変化抑制電圧用シフトレジスタ回路332とを備えている。なお、図2において符号35で示すアンプは、各シフトレジスタから出力される信号電圧を、画素回路25内のTFTやOLEDに加えるべき電圧値まで増幅する素子であって、図示を省略した電源がそれぞれ接続されているものである。
【0077】
データ用シフトレジスタ回路331は、信号処理回路32から入力する画像データ信号を画像データ電圧Vdataに変換すると共に、信号処理回路32から入力する同期信号に応じてシフトレジスタ機能により表示パネル31の列方向の複数のデータライン(D1〜Dm)から画素回路25のデータラインDjを選択し、画像データ電圧Vdataを印加するものである。このデータ用シフトレジスタ回路331は、図8にてDで示される波形において、期間T3のパルス幅で表される期間が終了すると画像データ電圧Vdataを停止する。そのため、図8にてDで示される波形において、期間T4のパルス幅で表される期間には、当該データラインの電圧は元に戻って0となり、次のフィールドに対応した期間において、期間T1のパルス幅で表される期間が始まるまで0のままである。
【0078】
特性変化抑制電圧用シフトレジスタ回路332は、図示しないパルス発生器により発生したタイミングパルスに応じて特性変化抑制電圧Vrを生成すると共に、信号処理回路32から入力する同期信号に応じてシフトレジスタ機能により表示パネル31の列方向の複数のデータライン(D1〜Dm)から、画素回路のデータラインDjを選択し、生成した特性変化抑制電圧Vrを印加するものである。
【0079】
特性変化抑制電圧用シフトレジスタ回路332には、特性変化抑制電圧の電圧値Vrが設定されている。特性変化抑制電圧用シフトレジスタ回路332は、タイミングパルス中の期間T1のパルス幅に応じた期間に特性変化抑制電圧Vrを、データラインDから画素回路25のDr-TFT2のゲートに印加する。この特性変化抑制電圧用シフトレジスタ回路332は、図8にてDで示される波形において、期間T1のパルス幅で表される期間が終了すると特性変化抑制電圧Vrを停止する。そのため、図8にてDで示される波形において、期間T2のパルス幅で表される期間には、当該データラインの電圧は元に戻って0となる。
【0080】
<行ドライバ>
行ドライバ34は、列ドライバ33および信号処理回路32と協働して動作する前記した一般的な機能を備えると共に、以下の2つの機能をさらに備えている。
すなわち、行ドライバ34は、画素回路25を駆動する1フィールド内の処理に対応した予め定められたタイミングパルスを生成する機能を備えている。このタイミングパルスは、行ドライバ34が内蔵する図示しないパルス発生器により発生することができる。
また、行ドライバ34は、信号処理回路32から入力する同期信号と、生成したタイミングパルスとに基づいて、表示パネル31において行方向から画素回路の行を選択し、選択した画素回路の行に対して、走査電圧(以下、Vscanと表記する)と電源電圧Vddとを所定のタイミングで印加する機能を備えている。
【0081】
ここで、走査電圧Vscanに対応したタイミングパルスは、例えば、図8にてSで示される波形(図8において上から1番目の波形)で表される。図8にてSで示される波形において、期間T1,T2,T3を合わせたパルス幅で表される負の電圧が走査電圧Vscanを示している。また、電源電圧Vddに対応したタイミングパルスは、例えば、図8にてPで示される波形(図8において上から3番目の波形)で表される。図8にてPで示される波形において、期間T3の後半部分と期間T4とを合わせたパルス幅で表される正の電圧が電源電圧Vddを示している。併せて、図8には、Dr-TFT4のソース−ドレイン間に流れる電流として電流Idsの波形(図8において上から5番目の波形)を表示した。この電流Idsの波形は、画素においてOLED1の発光状態のオン/オフ(発光/非発光)を示している。図示するように、OLED1の発光状態のオンを示す期間と、電源電圧Vddのオンを示す期間とはほぼ一致している。
【0082】
行ドライバ34は、このように走査電圧Vscanと電源電圧Vddとを所定のタイミングで印加する機能を実現するために、図2に示すように、スキャン用シフトレジスタ回路341と、電源電圧制御用シフトレジスタ回路342とを備えている。なお、行ドライバ34を構成するスキャン用シフトレジスタ回路341と電源電圧制御用シフトレジスタ回路342とを、説明の都合により図2においては左右に分離して図示したが、これらは図1のように一体構成の行ドライバ34を示すものである。
【0083】
スキャン用シフトレジスタ回路341は、信号処理回路32から入力する同期信号に応じて走査電圧Vscanを生成すると共に、この同期信号に応じてシフトレジスタ機能により表示パネル31の行方向の複数の走査ラインS1〜Snから画素回路25の走査ラインSiを選択し、走査電圧Vscanを印加するものである。このスキャン用シフトレジスタ回路341は、図8にてSで示される波形において、期間T1,T2,T3を合わせたパルス幅で表される期間で画素を選択する。
【0084】
電源電圧制御用シフトレジスタ回路342は、図示しないパルス発生器により発生したタイミングパルスに応じて、外部電源Eから入力する電源電圧Vddのオン/オフを切り替えると共に、信号処理回路32から入力する同期信号に応じて、表示パネル31の行方向の複数の電源ラインP1〜Pnから画素回路25の電源ラインPiを選択し、タイミングパルスでオン状態の場合には、電源電圧Vddを印加し、タイミングパルスでオフ状態の場合には、電源電圧Vddを切断するものである。この電源電圧制御用シフトレジスタ回路342は、図8にてPで示される波形において、期間T3の後半部分と期間T4とを合わせたパルス幅で表される期間には、電源電圧Vddを印加するが、1フィールド内の他の期間では、電源電圧Vddの供給を停止する。
【0085】
[4.ディスプレイ装置の動作]
本実施形態のディスプレイ装置100の動作について、図1および図2を参照(適宜図3および図8参照)して説明する。
ディスプレイ装置100は、信号処理回路32によって、列ドライバ33に対して、図1に示すように、選択すべき画素が配置されたデータラインD1〜Dmが何列目であるのかを示す情報(D)を出力し、かつ、図2に示すように、選択画素の画像データとその同期信号とを出力する。
また、信号処理回路32は、行ドライバ34に対して、図1に示すように、選択すべき画素が配置された走査ラインS1〜Snが何行目であるのかを示す情報(S)を出力し、かつ、図2に示すように、選択画素の画像データの同期情報を示す同期信号を出力する。
【0086】
ディスプレイ装置100は、信号処理回路32、列ドライバ33および行ドライバ34が協働することによって、表示パネル31のデータラインD、走査ラインSおよび電源ラインPを経由した表示パネル31の各画素回路25に対する電圧制御を次のように行う。
【0087】
まず、例えば、奇数フィールドにおいて、期間T0では、SW-TFT4に対して、走査ラインSからの走査電圧Vscanの供給を停止しておく。この期間には、まだ画素は選択されていない。このとき、Dr-TFT2に対して、データラインDからのデータ電圧Vdataの供給も停止している。
【0088】
次に、期間T1の初めから期間T3の終わりまで、SW-TFT4に対して、走査ラインSから、走査電圧Vscanを印加して、SW-TFT4をオンさせて、画素を選択する。また、期間T0の初めから期間T3の途中まで、Dr-TFT2に対して、電源ラインPからの電源電圧Vddの供給を停止しておくことで、この期間にOLED1が発光することを防止する。これらの前提で、期間T1の初めから終わりまで、Dr-TFT2のゲートに対して、データラインDから特性変化抑制電圧Vrをマイナス方向に印加する。特性変化抑制電圧Vrの供給を停止してから、期間T2の間は、データラインDの電圧を0にして、その状態を保持しておく。
【0089】
期間T2の間には、データラインDの電圧を0にして、その状態を保持する理由は次の通りである。すなわち、期間T1においてDr-TFT2のゲートに印加する特性変化抑制電圧Vrの印加方向はマイナス方向であって画像データ電圧Vdataと同じ印加方向であるため、そのままではOLED1を発光させてしまうと共に、この特性変化抑制電圧Vrがデータ保持用コンデンサC3に書き込まれてしまう。そのため、特性変化抑制電圧Vrの印加を停止した後で、データラインDの電圧を0にして、その状態を保持する期間T2を設けた。これにより、期間T1にデータ保持用コンデンサC3に書き込まれてしまった不要なデータを消去することができると共に、OLED1の無駄な発光を防止することができる。
【0090】
そして、引き続いて画素が選択されている期間T3は、書込期間であって、Dr-TFT2のゲートに、データラインDからデータ電圧Vdataを印加しておく。これにより、期間T3の初めからDr-TFT2が駆動すると共に、図8に示すように、このデータ電圧Vdataがデータ保持用コンデンサC3に書き込まれ始める。そして、これらの動作に同期して、期間T3の途中から期間T4の終わりまでDr-TFT2に対して、電源ラインPから電源電圧Vddを印加し続ける。これにより、図8に示すようにOLED1が発光を開始する。
【0091】
そして、期間T4では、SW-TFT4に対して、走査ラインSからの走査電圧Vscanの供給を停止して、SW-TFT4をオフし、Dr-TFT2に対して、データラインDからのデータ電圧Vdataの供給を停止する。ただし、期間T3の間にデータ保持用コンデンサC3に蓄えられた電荷が放電され、この電圧VdataでDr-TFT2の動作状態が保持され、画像データに応じた電流が流れ続け、次の書込期間までOLED1が発光し続ける。
【0092】
続いて、例えば、偶数フィールドにおいて、同様の制御を行う。その後は、奇数フィールド、偶数フィールド、…のように順次同様の制御を行う。
【0093】
したがって、本実施形態の画素駆動法およびディスプレイ装置によれば、ディスプレイ装置100の列ドライバ33および行ドライバ34により、画素の画像データ電圧を印加していない期間に、Dr-TFT2の経時的な劣化を抑制する特性変化抑制電圧Vrを、データラインDからDr-TFT2のゲートに印加するので、Dr-TFT2の特性の経時変化に起因して画素の輝度レベルが低下するといった劣化を抑制することができる。これにより、ディスプレイ装置100の表示パネル31の画像表示、特に階調表示における画質変化を改善することができる。さらに、この際に、表示パネル31の画素回路25内のTFT数を増やすことなく、画素の輝度変化を抑制することができる。
【0094】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その趣旨を変えない範囲で様々に実施することができる。
【0095】
(変形例1)
例えば、本実施形態では、Dr-TFT2の伝達特性に応じて、Dr-TFT2のゲートに負(−)方向の特性変化抑制電圧Vrを印加することとしたが、Dr-TFT2のゲートに正(+)方向の特性変化抑制電圧Vrを印加することで、同様の効果を得ることもできる。この場合には、ディスプレイ装置100は、信号処理回路32、列ドライバ33および行ドライバ34が協働することによって、表示パネル31のデータラインD、走査ラインSおよび電源ラインPを経由した表示パネル31の各画素回路25に対する電圧制御を、図9に示すタイミングチャートにしたがって行う。
【0096】
図9に示すように、この場合には、まず、例えば、奇数フィールドにおいて、期間T1の初めから期間T3の終わりまで、SW-TFT4に対して、走査ラインSから、走査電圧Vscanを印加して、SW-TFT4をオンさせて、画素を選択する。また、期間T1の初めから期間T4の終わりまで、Dr-TFT2に対して、電源ラインPからの電源電圧Vddを印加し続けておく。これらの前提で、期間T1の初めから終わりまで、Dr-TFT2のゲートに対して、データラインDから特性変化抑制電圧Vrをプラス方向に印加する。特性変化抑制電圧Vrの供給を停止してから、期間T2の間は、データラインDの電圧を0にして、その状態を保持しておく。ここで、期間T1においてDr-TFT2のゲートに印加する特性変化抑制電圧Vrの印加方向はプラス方向であって、画像データ電圧Vdataの印加方向とは逆であるため、そのままでもOLED1を発光させてしまうことはない。
【0097】
そして、期間T3は、書込期間であって、Dr-TFT2のゲートに、データラインDからデータ電圧Vdataを印加しておく。これにより、期間T3の初めからDr-TFT2が駆動すると共に、図9に示すように、このデータ電圧Vdataがデータ保持用コンデンサC3に書き込まれ始める。これにより、図9に示すようにOLED1が発光を開始する。
【0098】
そして、期間T4では、SW-TFT4に対して、走査ラインSからの走査電圧Vscanの供給を停止して、SW-TFT4をオフし、Dr-TFT2に対して、データラインDからのデータ電圧Vdataの供給を停止する。ただし、期間T3の間にデータ保持用コンデンサC3に蓄えられた電荷が放電され、この電圧VdataでDr-TFT2の動作状態が保持され、画像データに応じた電流が流れ続け、次の書込期間までOLED1が発光し続ける。続いて、例えば、偶数フィールドにおいて、同様の制御を行う。その後は、奇数フィールド、偶数フィールド、…のように順次同様の制御を行う。
【0099】
このように、Dr-TFT2のゲートに対して、データラインDから特性変化抑制電圧Vrをプラス方向に印加する場合には、期間T1の初めから期間T4の終わりまで、Dr-TFT2に対して、電源ラインPからの電源電圧Vddを印加し続けておくことができる。そのため、この場合には、ディスプレイ装置の行ドライバ34において、電源電圧制御用シフトレジスタ回路342が、外部電源Eから入力する電源電圧Vddのオン/オフを切り替える必要はない。したがって、外部電源Eからの電源電圧Vddを、行ドライバ34を介さずに、表示パネル31の各画素回路25の電源ラインPに連続して入力することもできる。
【0100】
(変形例2)
また、本実施形態では、特性変化抑制電圧Vrを印加する期間T1と、書込期間T3との間に、データラインDの電圧を0にして、その状態を保持する期間T2を設けることとしたが、特性変化抑制電圧Vrを印加する期間T1が極めて短い時間である場合には、期間T2を省略してもよい。ここで、極めて短い時間とは、特性変化抑制電圧Vrが画像データの発光に影響を与えないような時間であり、例えば、1[μs]以下の時間でOLED1の発光立ち上がり時間よりも短い時間を示す。
【0101】
(変形例3)
また、本実施形態では、Dr-TFT2およびSw-TFT4がp型動作する有機TFTの場合ついて説明したが、これに限らず、n型動作する有機TFTで構成される場合においても、同様に実施することができる。その場合には、Dr-TFT2およびSW-TFT4の極性がp型からn型に反転することになり、図8および図9を参照して説明した特性変化抑制電圧Vrの符号を、正負反転して考慮すればよい。つまり、n型動作しつつ伝達特性がスキャンを行う毎にゲート電圧軸においてマイナス方向へとシフトしていくタイプの駆動用TFTの場合には、図8を参照して説明したように、特性変化抑制電圧Vrの印加方向をマイナス方向にすればよい。また、n型動作しつつ伝達特性がスキャンを行う毎にゲート電圧軸においてプラス方向へとシフトしていくタイプの駆動用TFTの場合には、図9を参照して説明したように、特性変化抑制電圧Vrの印加方向をプラス方向にすればよい。
【0102】
(変形例4)
また、本実施形態に係る画素駆動方法において、Dr-TFT2が一般的な有機半導体材料で構成されているものとして説明したが、本発明において、特性変化を抑制する対象の駆動用TFTは、無機半導体材料で構成してもよい。例えば、シリコン等の無機半導体材料で構成した駆動用TFTは、例えば、可動電荷が少ないと考えられるので、図7を参照して説明した可動電荷の捕獲を原因とした特性変化だけではない。特に、電子の流れるチャネルに作製により欠陥が生じていたり、駆動によりチャネルに欠陥が生じたりすると、それらが原因となって徐々に特性が変化することがある。ただし、無機半導体材料で構成した駆動用TFTに対しても、そのゲートに駆動用のゲート電圧を印加する前に、それよりも大きな特性変化抑制電圧Vrを予め印加する制御を行う期間を設けることで、駆動用TFTの経時的な劣化を抑制することが可能である。
【符号の説明】
【0103】
1 OLED(発光ダイオード)
2 Dr-TFT(駆動用TFT)
3 データ保持用コンデンサC
4 SW-TFT(画素選択用TFT)
11 ゲート電極
12 ゲート絶縁膜
13 有機半導体
14 ソース電極
15 ドレイン電極
20 キャリア
21 可動電荷
22 可動範囲
25 画素回路
31 表示パネル
32 信号処理回路
33 列ドライバ(駆動回路)
34 行ドライバ(駆動回路)
35 アンプ
100 ディスプレイ装置
331 データ用シフトレジスタ回路
332 特性変化抑制電圧用シフトレジスタ回路(制御電圧用シフトレジスタ回路)
341 スキャン用シフトレジスタ回路
342 電源電圧制御用シフトレジスタ回路
Vcath 共通電極
Vr 特性変化抑制電圧(制御電圧)
Vdd 電源電圧
Vdata データ電圧(画像データ電圧)
Vscan 走査電圧
D、D1、…、Dj、…、Dm データライン
P、P1、…、Pi、…、Pn 電源ライン
S、S1、…、Si、…、Sn 走査ライン
T1、T2、T3、T4 期間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光ダイオードと、前記発光ダイオードを駆動する駆動用TFTと、映像信号に対応した画像データ電圧を所定のデータラインから前記駆動用TFTのゲートに印加する画素選択用TFTとを含む画素回路が画素としてマトリクス状に配置された表示パネルと、所定の繰返単位期間毎に前記画素回路を駆動することで前記表示パネルにおいて画素を繰り返し発光させる駆動回路と、入力される映像信号を各画素の画像データ信号に変換して前記画像データ信号と前記映像信号の同期情報を示す同期信号とを前記駆動回路に出力する信号処理回路とを備えるディスプレイ装置であって、
前記駆動回路は、
前記画素回路を駆動する前記繰返単位期間において、当該画素の画像データ電圧を前記駆動用TFTのゲートに印加する期間以外の前記駆動用TFTの動作前の予め定められた期間に、前記駆動用TFTの経時変化を抑制するために、前記発光ダイオードの輝度に対応して当該駆動用TFTを駆動するために予め定められた最大ゲート電圧と最小ゲート電圧との差分の電圧値よりも大きな絶対値を有する制御電圧を、前記データラインから当該駆動用TFTのゲートに印加することを特徴とするディスプレイ装置。
【請求項2】
前記発光ダイードは有機EL素子であることを特徴とする請求項1に記載のディスプレイ装置。
【請求項3】
前記駆動回路は、列ドライバと行ドライバとを備え、
前記列ドライバは、前記画素回路を駆動する前記繰返単位期間内の処理に対応した予め定められたタイミングパルスを生成し、前記信号処理回路から入力する画像データ信号と同期信号と前記生成したタイミングパルスとに基づいて、前記表示パネルの列方向から前記画素回路の列を選択し、選択した画素回路の列に前記画像データ電圧と前記制御電圧とを異なるタイミングで印加し、
前記行ドライバは、前記画素回路を駆動する前記繰返単位期間内の処理に対応した予め定められたタイミングパルスを生成し、前記信号処理回路から入力する同期信号と前記前記生成したタイミングパルスとに基づいて、前記表示パネルの行方向から前記画素回路の行を選択し、選択した画素回路の行に走査電圧と電源電圧とを印加し、
前記列ドライバは、
前記表示パネルの列方向の複数のデータラインから前記画素回路のデータラインを選択して前記画像データ電圧を印加するデータ用シフトレジスタ回路と、
前記表示パネルの列方向の複数のデータラインから前記画素回路のデータラインを選択して前記制御電圧を印加する制御電圧用シフトレジスタ回路とを備え、
前記行ドライバは、
前記表示パネルの行方向の複数の走査ラインから前記画素回路の走査ラインを選択して前記走査電圧を印加するスキャン用シフトレジスタ回路と、
前記表示パネルの行方向の複数の電源ラインから前記画素回路の電源ラインを選択して前記電源電圧を印加する電源電圧制御用シフトレジスタ回路とを備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のディスプレイ装置。
【請求項4】
発光ダイオードと、前記発光ダイオードを駆動する駆動用TFTと、映像信号に対応した画像データ電圧を所定のデータラインから前記駆動用TFTのゲートに印加する画素選択用TFTとを含む画素回路が画素としてマトリクス状に配置された表示パネルと、所定の繰返単位期間毎に前記画素回路を駆動することで前記表示パネルにおいて画素を繰り返し発光させる駆動回路と、入力される映像信号を各画素の画像データ信号に変換して前記画像データ信号と前記映像信号の同期情報を示す同期信号とを前記駆動回路に出力する信号処理回路とを備えるディスプレイ装置の前記駆動回路による画素駆動方法であって、
前記駆動回路は、
前記画素回路を駆動する前記繰返単位期間において、当該画素の画像データ電圧を前記駆動用TFTのゲートに印加する期間以外の前記駆動用TFTの動作前の予め定められた期間に、前記駆動用TFTの経時変化を抑制するために、前記発光ダイオードの輝度に対応して当該駆動用TFTを駆動するために予め定められた最大ゲート電圧と最小ゲート電圧との差分の電圧値よりも大きな絶対値を有し、かつ、前記画像データ電圧の印加方向と同じ方向を示すマイナスの制御電圧を、前記データラインから当該駆動用TFTのゲートに印加し、
前記繰返単位期間の少なくとも前記制御電圧を印加する期間においては、前記発光ダイオードに対する電源電圧の印加を停止することを特徴とする画素駆動方法。
【請求項5】
発光ダイオードと、前記発光ダイオードを駆動する駆動用TFTと、映像信号に対応した画像データ電圧を所定のデータラインから前記駆動用TFTのゲートに印加する画素選択用TFTとを含む画素回路が画素としてマトリクス状に配置された表示パネルと、所定の繰返単位期間毎に前記画素回路を駆動することで前記表示パネルにおいて画素を繰り返し発光させる駆動回路と、入力される映像信号を各画素の画像データ信号に変換して前記画像データ信号と前記映像信号の同期情報を示す同期信号とを前記駆動回路に出力する信号処理回路とを備えるディスプレイ装置の前記駆動回路による画素駆動方法であって、
前記駆動回路は、
前記画素回路を駆動する前記繰返単位期間において、当該画素の画像データ電圧を前記駆動用TFTのゲートに印加する期間以外の前記駆動用TFTの動作前の予め定められた期間に、前記駆動用TFTの経時変化を抑制するために、前記発光ダイオードの輝度に対応して当該駆動用TFTを駆動するために予め定められた最大ゲート電圧と最小ゲート電圧との差分の電圧値よりも大きな絶対値を有し、かつ、前記画像データ電圧の印加方向とは逆方向を示すプラスの制御電圧を、前記データラインから印加することを特徴とする画素駆動方法。
【請求項6】
発光ダイオードと、前記発光ダイオードを駆動する駆動用TFTと、データ保持用コンデンサと、映像信号に対応した画像データ電圧を所定のデータラインから前記駆動用TFTおよび前記データ保持用コンデンサに印加する画素選択用TFTとを含む画素回路をディスプレイ装置の画素として、所定の繰返単位期間に、前記画像データ電圧を前記駆動用TFTのゲートに印加しつつ前記データ保持用コンデンサに書き込む書込期間と、前記書込期間に続いて前記駆動用TFTのゲートに印加し続ける電圧により前記発光ダイオードを発光させる発光期間と、前記データ保持用コンデンサに書き込まれた電圧により前記発光ダイオードを発光させる保持期間とを備えて繰り返し駆動する駆動回路による画素駆動方法であって、
前記駆動回路は、
前記繰返単位期間において、前記駆動用TFTの動作前の予め定められた期間として前記書込期間よりも前、または、前記保持期間よりも後に、前記駆動用TFTの経時変化を抑制するために、前記発光ダイオードの輝度に対応して当該駆動用TFTを駆動するために予め定められた最大ゲート電圧と最小ゲート電圧との差分の電圧値よりも大きな絶対値を有する制御電圧を、前記データラインから当該駆動用TFTのゲートに印加することを特徴とする画素駆動方法。
【請求項7】
前記駆動回路は、
前記繰返単位期間の前記駆動用TFTの動作前の予め定められた期間において、前記制御電圧を前記駆動用TFTのゲートに印加した後に、前記制御電圧の印加を停止することを特徴とする請求項6に記載の画素駆動方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−158822(P2011−158822A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−22103(P2010−22103)
【出願日】平成22年2月3日(2010.2.3)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】