説明

ディスペンス装置およびディスペンス方法

【課題】 剛性の高いチャンバーを用いることなく、安価なチャンバーで構成できると共にタクトタイムの短縮を図ることのできるディスペンス装置およびディスペンス方法を提供すること。
【解決手段】 チャンバー内の可動ステージに載置された基板上のチップを撮像可能な撮像カメラと、予め、撮像カメラが撮像した、チャンバーの圧力が設定減圧になるまでのチップの位置の変化の履歴を記憶する記憶手段と、チャンバーが設定減圧に減圧される途中において、撮像カメラで複数のチップを順次撮像し、撮像時のチャンバー内圧力と記憶手段に記憶された位置の変化の履歴から設定減圧に到達した際のチップの移動位置を計算する演算手段と、を備えているディスペンス装置およびディスペンス方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスペンス装置およびディスペンス方法に関する。より詳しくは、基板とこの基板に搭載されたチップとの間隙にアンダーフィル剤を減圧下で充填する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図7は従来のディスペンス装置の一例を示す概略図である。図7に示すように、従来のディスペンス装置400は、チャンバー520、減圧手段460、基板ステージ710、カメラ720、ディスペンサ730及び制御装置90などを備えている。
【0003】
ディスペンス装置400の基本的な動作について説明する。基板ステージ710には、チップCを搭載した基板Kが載置保持されているものとする。チャンバー520内は減圧手段460により減圧される。カメラ720は、チャンバー520内が設定圧に達し安定した後に、チップCの外観もしくは基板K上のアラインメントマークを読み取って、その画像データを制御装置90に送る。制御装置90では、読み取った画像データからチップCの位置情報を算出する。そして、制御装置90は、上記位置情報に基づいて、ディスペンサ730が最適の充填位置にアンダーフィル剤を充填できるように、基板ステージ710をX,Y方向に駆動することでチップCとディスペンサ730の位置合わせを行う。位置合わせの後、ディスペンサ730は、Z方向下方に駆動されると共にアンダーフィル剤を吐出する。基板ステージ710をX,Y方向に移動しチップCの周りにアンダーフィル剤を吐出する。ディスペンサ730によりチップの周りに吐出されたアンダーフィル剤は、チップCと基板Kとの間に入り込む。アンダーフィル剤の吐出が終了すると、チャンバー520内を大気開放することで、アンダーフィル剤内部のボイドを消滅させる(下記特許文献1参照)。
【0004】
このようなディスペンス装置400では、一般にカメラ720は、チャンバー520の外側に設置し、チャンバー520の外側から例えば透明窓越しに撮像する構成としている。その理由は、チャンバー520内にカメラ720を設置した場合、カメラ720を耐真空とするための様々な手段が必要となり、装置構成が混み入ったものとなると共に高コストとなるからである。また、カメラ720による撮像は、チャンバー520内が設定圧に達し安定した後に行う。その理由は、チャンバー520内の減圧に伴うチャンバー520自体の変形により、基板Kを保持している基板ステージ710の位置がずれてくる弊害を除くためである。もし、大気圧中で撮像したチップCの外観もしくは基板Kのアラインメントマークの画像に基づいて補正量を算出し、この補正量に基づいて設定圧の減圧中で基板ステージ710を位置制御した場合は、減圧したことによるチャンバー520の変形量分のズレがチップCとディスペンサ730の間に生じてしまい、精度の良いディスペンス(充填)ができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−141935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のディスペンス装置400では、減圧が十分に安定した後に、基板Kに搭載された複数のチップCをカメラ720で撮像して、その後ディスペンサ730のノズル位置と複数のチップCの位置合わせを行うので、基板Kに実装されたチップCの数の増加にともない撮像と位置合わせの回数が増える。そのため、充填に要するタクトタイムが長くなってしまう。なお、減圧にしたことによるチャンバー520の変形量の影響を少なくするには、剛性の高いチャンバーを用いればよいが、その場合、装置コストが高くなる。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、剛性の高いチャンバーを用いることなく、安価なチャンバーで構成できると共にタクトタイムの短縮を図ることのできるディスペンス装置およびディスペンス方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
チップが搭載された基板の周囲雰囲気を、予め設定された減圧条件にするチャンバーと、チャンバー内に設けられたアンダーフィル剤を基板とチップの間隙に充填するディスペンサと、を備えたディスペンス装置であって、
前記チャンバー内の可動ステージに載置された基板上のチップを撮像可能な撮像カメラと、
予め、前記撮像カメラが撮像した、前記チャンバーの圧力が設定減圧になるまでのチップの位置の変化の履歴を記憶する記憶手段と、
前記チャンバーが設定減圧に減圧される途中において、撮像カメラで複数のチップを順次撮像し、撮像時のチャンバー内圧力と前記記憶手段に記憶された位置の変化の履歴から設定減圧に到達した際のチップの移動位置を計算する演算手段と、を備えていることを特徴とするディスペンス装置である。
【0009】
請求項2に記載の発明は、
請求項1に記載の発明において、
前記撮像カメラが、前記チャンバーに設けられた透明窓を介して、前記チャンバーの外側から前記チャンバー内の可動ステージに載置された基板上のチップを撮像可能な撮像カメラであるディスペンス装置である。
【0010】
請求項3に記載の発明は、
チャンバー内を設定減圧の状態にした後に、基板とこの基板に搭載されたチップとの間隙にディスペンサを用いてアンダーフィル剤を、充填するディスペンス方法であって、
前記チャンバー内の基板上のチップを撮像するステップと、
前記撮像カメラが撮像した、前記チャンバーの圧力が設定減圧になるまでのチップの位置の変化の履歴を記憶手段に記憶するステップと、
前記記憶手段に記憶されたチップの位置の変化の履歴に基づいて、前記チャンバーが設定値圧に減圧される途中において、設定減圧に到達した際のチップの移動位置を計算するステップと、
設定減圧の到達後、計算されたチップの移動位置に基づいてチップと基板との間隙にディスペンサを用いてアンダーフィル剤を充填するステップと、
を有することを特徴とするディスペンス方法である。
【0011】
請求項4に記載の発明は、
請求項3に記載の発明において、
チップを撮像するステップが、前記チャンバーに設けられた透明窓を介して、前記チャンバーの外側から前記チャンバー内の基板上のチップを撮像するステップであるディスペンス方法である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1および3に記載の発明によれば、減圧途中に複数のチップの位置を画像認識して、予め記憶していたチップの位置の変化の履歴に基づいてディスペンサのノズル位置を位置合わせするので、チャンバー内が設定減圧に到達して安定するまで待って撮像する場合に比べて、アンダーフィル剤の充填動作を先行して行うことが出来る。従って、装置のタクトタイムの短縮を図ることができる。また、従来どおりの剛性のチャンバーを用いることができるので、装置コストの低減を図ることができる。
【0013】
請求項2および4に記載の発明によれば、撮像カメラが、チャンバーに設けられた透明窓を介して、チャンバーの外側からチャンバー内の可動ステージに載置された基板上のチップを撮像しているので、安価な撮像カメラで装置を構成することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るディスペンス装置を備えた実装システムの正面図である。
【図2】本発明に係るディスペンス装置の正面図である。
【図3】実装システムの動作手順の概要を示すフローチャートである。
【図4】ダミーチップをカメラで撮像した際の移動位置を説明する図である。
【図5】チップの位置の変化のデータを示すグラフである。
【図6】本発明に係るディスペンスノズルとチップの位置合わせの動作手順を示すフローチャートである。
【図7】従来のディスペンス装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の望ましい実施の形態を、添付図面を参照しながら説明する。図1は本発明に係るディスペンス装置を備えた実装システムの正面図、図2は本発明に係るディスペンス装置の正面図、図3は学習データを示す図である。図1〜2において、直交座標系の3軸をX、Y、Zとして、紙面横方向をX方向、紙面に直交する方向をY方向、鉛直方向をZ方向、Z軸回りの回転方向をθ方向とする。
【0016】
図1に示すように、実装システム1は、基板ローダー2、チップ搭載装置3、ディスペンス装置4及び基板アンローダー8をこの順に併設した構成とされると共に、制御装置9を備える。基板ローダー2から基板アンローダー8に至るまでには、図示は省略したが、基板Kを移送経路Vに沿い移送するための基板移送手段を備える。この基板移送手段は、基板Kを保持し且つ伸縮自在のアームを備えたロボット、または基板Kを走行可能に構成されたローラ付レール部材などにより構成される。
【0017】
基板ローダー2は、基板Kをチップ搭載装置3に順次供給する装置であり、複数の基板Kを収容可能な基板マガジン21ごと基板Kを保温可能なオーブン22、及び基板Kを待機させるための待機ステージ23を備える。待機ステージ23の内部には、基板Kを適切な温度に保温するためのヒーターが埋設される。
【0018】
チップ搭載装置3は、基板ローダー2から供給されてきた基板KにチップCを搭載する装置であり、基板Kを所定位置に固定保持すると共にX,Y,θ各方向に駆動可能な可動ステージ31、搭載すべきチップCをそのバンプ形成面を上向きにしてストックするチップストッカー32、真空吸着によりチップストッカー32からチップCを取り出すと共にバンプ形成面が下向きとなるようにチップCを反転させるチップ反転部33、上方に位置するチップCと下方に位置する基板Kとの位置情報を同時に取得可能に構成された2視野カメラ34、並びにチップ反転部33で反転したチップCのバンプ非形成面を真空吸着により保持しながら当該チップCを基板Kに搭載及び加圧するボンディングヘッド35などを備える。可動ステージ31の内部には、基板Kを適切な温度に加熱及び保温するためのヒーターが埋設される。
【0019】
ディスペンス装置4は、基板Kとこの基板Kに搭載されたチップCとの間隙にアンダーフィル剤を充填する装置であり、図2に示されるように、チャンバー52、基板ステージ71、カメラ72、圧力センサ75、ディスペンサ73、真空ポンプ46などを備える。
【0020】
チャンバー52は、開閉可能に設けられた第1ゲートバルブ42及び第2ゲートバルブ43を備える。また、配管及び開閉バルブ62を介して真空ポンプ46に接続されるとともに、内部を大気開放するための開放バルブ47を備える。チャンバー52の上面には、カメラ72によるチャンバー52内の撮像を可能とするための透明窓54を備える。
【0021】
基板ステージ71は、アンダーフィル剤の充填対象となる基板K(すなわちチップCが搭載された基板K)を固定保持可能に構成される。保持面71Hには、基板Kを真空吸着保持するための多数の微径孔が穿設され、これらの微径貫通孔は真空ポンプ46に接続される。また、ステージ駆動部74によりにX,Y方向に駆動可能に構成される。基板ステージ71の内部には、固定保持された基板Kを適切な温度に加熱及び保温するためのヒーターが埋設される。
【0022】
カメラ72は、撮像により得た画像データを制御装置9に送信可能な構成とされ、チャンバー52の外側から透明窓54越しに、チャンバー52の内圧による変形の影響を受けないように支持され、チャンバー52内における基板K上のチップCを撮像可能となる位置に設置される。圧力センサ75は、チャンバー52内の圧力を測定してその測定値を制御装置9に送信可能な構成とされる。なお、カメラ72は、基板ステージ71との相対位置関係が、チャンバー52の内圧による変形が発生しても一定の関係であれば、チャンバー52の内部に設けられていても良い。
【0023】
ディスペンサ73は、アンダーフィル剤を吐出する吐出ノズル73Nを備え、且つZ方向に駆動可能とされる。ディスペンサ73は、チェックバルブ69、配管68及び三方弁65を介して第1貯留部66及び第2貯留部67に接続される。第1貯留部66及び第2貯留部67は、それぞれ所定量のアンダーフィル剤を貯留可能な例えばシリンジ容器で構成される。また、配管68は、開閉バルブ64を介して真空ポンプ46に接続される。
【0024】
図1にもどり、基板アンローダー8は、アンダーフィル剤の充填が完了した基板Kをディスペンス装置4から順次取り出す装置であり、基板ローダー2と同様に、複数の基板Kを収容可能な基板マガジン81ごと基板Kを保温可能なオーブン82を備える。
【0025】
制御装置9は、タッチパネル等の入出力装置、メモリチップやマイクロプロセッサなどを主体とした適当なハードウエア、このハードウエアを動作させるためのコンピュータプログラムを組み込んだハードディスク装置、及び各構成部とデータ通信を行う適当なインターフェイス回路などから構成され、実装システム1が一連の動作を行うための指令信号を各構成部に送るように構成される。なお、この一連の動作の一部をPLC(プログラマブルロジックコントローラ)で行うようにしてもよい。
【0026】
制御装置9には記憶手段91と演算手段92が備えられている。記憶手段91には、実装システム1の全体を制御するプログラム、後述するチャンバー52内の圧力と基板ステージ71の歪みデータが記憶されている。演算手段92は、記憶手段91に記憶された歪みデータ、チャンバー52内の圧力に基づいて、チップCの移動位置を計算できる。
【0027】
次に、図3〜6を参照して、以上のように構成された実装システム1の動作について説明する。図3は実装システム1の動作手順の概要を示すフローチャート、図4はダミーチップCのチャンバー52内圧力による移動状態、図5はチップCの位置の変化のデータ、図6は本発明に係るディスペンサ73とチップCの位置合わせの動作手順を示すフローチャートを説明するための図である。
【0028】
図3に示すように、実装システム1の動作は、学習データ収集ステップS0、アンダーフィル剤供給ステップS1、基板搬送ステップS2、チップ搭載ステップS3、ディスペンスステップS4及び基板搬出ステップS5の順に行われる。
【0029】
以下の説明では、ディスペンス装置4の初期状態は次の状態とする。すなわち第1ゲートバルブ42及び第2ゲートバルブ43は共に閉じている。開放バルブ47は閉じている。また、第1貯留部66及び第2貯留部67には充分な量のアンダーフィル剤が貯留され、開閉バルブ64は閉じている。
【0030】
まず、図3の学習データ収集ステップS0について説明する。始めに、ダミーチップCdを搭載したダミー基板Kdを、第1ゲートバルブ42を開きチャンバー52に搬入し、基板ステージ71上に載置保持する。第1ゲートバルブ42を閉じ、真空ポンプ46を作動させ開閉バルブ62を開ける。チャンバー52内の圧力が設定圧PSになるまで減圧される。大気圧状態から設定圧PSになる間、カメラ72を用いてダミー基板Kd上のダミーチップCdの位置を観測する。チャンバー52の基板ステージ71は、減圧にともない歪みを生じる。歪みにより、基板ステージ71に載置保持されているダミー基板Kd上のダミーチップCdが図4に示すように移動する。図4において、(A)はチャンバー52が大気圧状態で、(B)は減圧途中、(C)は設定圧PS、の各状態を示している。図4に示すダミーチップCdの角部D0の移動をX方向、Y方向およびθ方向に分けて表記すると図5に示すようになる。θ方向は、例えばダミーチップCdの角部2点D0とD1を結ぶ直線とX軸との傾きから求める。図5は、横軸をチャンバー52の圧力とし、縦軸をX方向、Y方向およびθ方向の変化の履歴を表記している。設定圧PSに到達した際に、X方向の移動位置はxsとなり、Y方向の移動位置はysとなり、θ方向の移動位置は、θsとなる。これらの、各圧力におけるダミーチップCdのX方向、Y方向およびθ方向の変化の履歴は学習データGとして記憶手段91に記憶する。
【0031】
チャンバー52を設定圧PSまで減圧すると、真空ポンプ46を停止し開閉バルブ62を閉じ、開閉バルブ47を開けてチャンバー52を大気圧まで戻す。チャンバー52が大気圧まで戻ったら、第2ゲートバルブ43を開けて、基板ステージ71に載置保持されているダミー基板Kdを取り出す。以上で、学習データ収集ステップS0を終了する。
【0032】
次に、図3のステップS1のアンダーフィル剤の供給動作を行う。三方弁65を第1貯留部66側もしくは第2貯留部67側に設定し、アンダーフィル剤を配管68を経由してディスペンサ73に供給する。
【0033】
次に、図3のステップS2の基板搬送動作を行う。基板マガジン21にストックされた各基板Kは、オーブン22内で所定の一定温度に保たれている。基板移送手段は、基板マガジン21にストックされた各基板Kを待機ステージ23を経て一枚ずつチップ搭載装置3へと供給する。
【0034】
次に、図3のステップS3のチップ搭載動作を行う。チップ搭載装置3において、チップ反転部33は、X,Y,Z方向に駆動され、チップストッカー32にストックされたチップCのバンプ形成面を真空吸着することにより取り出す。その後、水平軸J1回りに回動されることにより、バンプ形成面が下向きとなるようにチップCを反転させる。ボンディングヘッド35は、X,Y,Z方向に駆動されることにより、反転したチップCを真空吸着することによりチップ反転部33から受け取る。そして、2視野カメラ34がチップC及び基板Kの位置を読み取り、その位置情報に基づいて、可動ステージ31がX,Y,θ各方向に駆動され、チップCと基板Kとの位置合わせ(アラインメント)を行う。その後、ボンディングヘッド35は、Z方向下側に駆動され、真空吸着により保持したチップCを基板K上の搭載箇所に搭載すると共に加熱及び加圧する。同様のチップ搭載動作を基板Kの全てのチップ搭載箇所にチップCについて繰り返す。
【0035】
次に、図3のステップS4のディスペンス動作を行う。ステップS4の詳細を図6に示し、以下、図6に基づいてディスペンス動作を説明する。ディスペンス装置4において、第1ゲートバルブ42が開き(ステップS41)、チップ搭載装置3でチップCが搭載された基板Kは、基板移送手段によりチャンバー52内に搬入され、基板ステージ71上に載置保持される(ステップS42)。基板Kがチャンバー52に搬入されると、第1ゲートバルブ42を閉じる(ステップS43)。また、開放バルブ47を閉じる。
【0036】
開閉バルブ62は、チャンバー52内が設定圧PSになるまで開状態とされる。これにより、チャンバー52内は徐々に減圧される(ステップS44)。
【0037】
以下のディスペンス動作は、基板Kに搭載されている複数のチップCに対して行われるので、図6のフロチャートではチップCの順番を明確にするためCnと表記しnに1,2,3・・を代入することでチップC1,C2,C3・・に対応する様に表す。
【0038】
まず、チップC1の位置情報を計算するために、nに1を入れる(ステップS45)。次に、ステージ駆動部74を動作させ、透明窓54の下側にチップCnを配置し、カメラ72でチップCnを撮像する(ステップS46)。
【0039】
次に、チャンバー52内の圧力を圧力センサ75を用いて測定する(ステップS47)。チップCnの撮像データとチャンバー52の圧力データは、制御装置9に送られる。
【0040】
制御装置9では、送られてきた画像認識データと圧力データと、予め測定している学習データGとから、チャンバー52が設定圧PSに到達した際のチップCnの移動位置を計算する(ステップS47)。
【0041】
移動位置の計算は、例えば、チップC1を画像認識した際に、測定圧力がP1の時は、次のように求める。まず、図5の学習データGから、ダミーチップCdが圧力P1の時のX方向の移動位置x1、Y方向の移動位置y1、θ方向に移動位置θ1を求める。ダミーチップCdの場合、この状態の後、減圧が進み設定圧PSに到達すると、X方向の移動位置はxs、Y方向の移動位置はys、θ方向の移動位置はθsとなる。そこで、ダミーチップCdで測定した学習データから測定圧力P1から設定圧力PSになるまでの移動量をX方向、Y方向およびθ方向について求める。X方向の移動量Δx1はxsとx1との差、Y方向の移動量Δy1はysとy1との差、θ方向の移動量はθsとθ1との差として求める。チップC1が測定圧力P1から設定圧PSに到達した場合のX方向の移動量はΔx1、Y方向の移動量はΔy1、θ方向の移動量はΔθ1となる。次に、チップC1を画像認識した座標に、Δx1,Δy1およびΔθ1を加え、設定圧PSに到達した際のチップC1の移動位置を求める。求められたチップC1の移動位置は、記憶手段91に記憶する。
【0042】
次に、ダミーチップCdで発生した位置の変化は、各チップC1、C2、・・においても同様に発生するので、基板Kに搭載されている全てのチップCに対して移動位置の計算が行われたか確認し(ステップS49)、未完の場合は、nを加算(n=n+1)し、ステップS46に戻る(ステップS50)。基板Kには複数のチップCが搭載されている。対象となるチップCnをカメラ72で画像認識するため、ステージ駆動部74を駆動し基板ステージ71を移動させる。その間、チャンバー52内の圧力は減圧が続いている。各圧力に対応する移動位置から設定圧PSに到達した場合の移動量を求る。なお、図5ではチップCnを画像認識した際のチャンバー52内の圧力をPnと表記した。
【0043】
チャンバー52内の圧力が設定圧PSに到達後も、基板K上のチップCの画像認識は搭載されている全てのチップCの画像認識が完了するまで続行される。
【0044】
基板Kに搭載されているチップCは、各チップCが正規位置に搭載されているとは限らない。チップ毎に微妙にズレが生じている。しかし、本願発明では、全てのチップCを画像認識し設定圧PS到達時の移動位置を求めているので、これらの全てのチップCにディスペンサ73の吐出ノズル73N位置を正確に位置決めすることが出来るようになる。また、減圧途中からチップCの画像認識を開始し設定圧PSに到達した場合の移動位置を求めているので、設定圧PSになってからチップCの画像認識を開始する従来の方法に比べて、短時間でアンダーフィル剤の充填動作を開始することが出来る。そのため、装置のタクトタイムを短縮することができる。
【0045】
全てのチップCに対して移動位置の計算が完了すると、図6のステップS51に移行する。まず、nに1を代入しチップCnより開始する(ステップS51)。次に、ステージ駆動部74を動作させ基板ステージ71を移動させ、ディスペンサ73の下側にチップCnを配置させる。移動に際して、ステップS48で計算した値(学習データGに基づいて設定圧PSに到達した場合の移動位置を計算した値)に基づいて基板ステージ71を移動させる(ステップS52)。
【0046】
次に、ディスペンサ73を下降し、チップCn周りに基板ステージ710をX,Y方向に移動し、吐出ノズル73Nからアンダーフィル剤を吐出しチップCnと基板Kの間隙に充填する(ステップS53)。
【0047】
次に、全ての搭載チップCに対してアンダーフィル剤を充填したかをチェックし(ステップS54)、未完の場合は、nを加算(n=n+1)し、ステップS52に戻る(ステップS55)。
【0048】
全ての搭載チップCにアンダーフィル剤の充填が完了すると、開放バルブ47を開けて、チャンバー52を大気開放する(ステップS56)。次に、第2ゲートバルブ43を開けて(ステップS57)、基板Kをチャンバー52から搬出する(ステップS58)。
【0049】
このように、チャンバー52内が実際に設定圧PSに到達して安定するまで待ってから各チップCの撮像を行わなくても、減圧動作の途中の学習データGを元にチップCの移動位置を計算しているので、減圧完了状態から各チップCにディスペンス作業を行うまでのタクトタイムの大幅な短縮を図ることが出来る。また、従来どおりの剛性のチャンバーを用いることができるので、装置コストの低減を図ることができる。
【符号の説明】
【0050】
1 実装システム
2 基板ローダー
3 チップ搭載装置
4 ディスペンス装置
8 基板アンローダー
9 制御装置
21 基板マガジン
22 オーブン
23 待機ステージ
31 可動ステージ
32 チップストッカー
34 2視野カメラ
35 ボンディングヘッド
42 第1ゲートバルブ
43 第2ゲートバルブ
46 真空ポンプ
47 開放バルブ
52 チャンバー
54 透明窓
62 開閉バルブ
64 開閉バルブ
65 三方弁
68 配管
69 チェックバルブ
71 基板ステージ
72 カメラ
73 ディスペンサ
75 圧力センサ
81 基板マガジン
82 オーブン
90 制御装置
91 記憶手段
92 演算手段
J1 水平軸
400 ディスペンス装置
460 減圧手段
520 チャンバー
710 基板ステージ
71H 保持面
720 カメラ
730 ディスペンサ
73N 吐出ノズル
C チップ
Cd ダミーチップ
K 基板
Kd ダミー基板
G 学習データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チップが搭載された基板の周囲雰囲気を、予め設定された減圧条件にするチャンバーと、チャンバー内に設けられたアンダーフィル剤を基板とチップの間隙に充填するディスペンサと、を備えたディスペンス装置であって、
前記チャンバー内の可動ステージに載置された基板上のチップを撮像可能な撮像カメラと、
予め、前記撮像カメラが撮像した、前記チャンバーの圧力が設定減圧になるまでのチップの位置の変化の履歴を記憶する記憶手段と、
前記チャンバーが設定減圧に減圧される途中において、撮像カメラで複数のチップを順次撮像し、撮像時のチャンバー内圧力と前記記憶手段に記憶された位置の変化の履歴から設定減圧に到達した際のチップの移動位置を計算する演算手段と、を備えていることを特徴とするディスペンス装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発明において、
前記撮像カメラが、前記チャンバーに設けられた透明窓を介して、前記チャンバーの外側から前記チャンバー内の可動ステージに載置された基板上のチップを撮像可能な撮像カメラであるディスペンス装置。
【請求項3】
チャンバー内を設定減圧の状態にした後に、基板とこの基板に搭載されたチップとの間隙にディスペンサを用いてアンダーフィル剤を、充填するディスペンス方法であって、
前記チャンバー内の基板上のチップを撮像するステップと、
前記撮像カメラが撮像した、前記チャンバーの圧力が設定減圧になるまでのチップの位置の変化の履歴を記憶手段に記憶するステップと、
前記記憶手段に記憶されたチップの位置の変化の履歴に基づいて、前記チャンバーが設定値圧に減圧される途中において、設定減圧に到達した際のチップの移動位置を計算するステップと、
設定減圧の到達後、計算されたチップの移動位置に基づいてチップと基板との間隙にディスペンサを用いてアンダーフィル剤を充填するステップと、
を有することを特徴とするディスペンス方法。
【請求項4】
請求項3に記載の発明において、
チップを撮像するステップが、前記チャンバーに設けられた透明窓を介して、前記チャンバーの外側から前記チャンバー内の基板上のチップを撮像するステップであるディスペンス方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−119590(P2011−119590A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−277669(P2009−277669)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【出願人】(000219314)東レエンジニアリング株式会社 (505)
【Fターム(参考)】