説明

ディーゼル動車のハイブリッド型駆動装置

【課題】本発明は、車内用電力を得るための一定周波数発電機を備えた、簡単でコンパクトな構成のエンジンと電気モータにより駆動されるディーゼル動車のハイブリッド型駆動装置を提供する。
【解決手段】エンジン、バッテリおよび発電機/モータからなる電気駆動部ED、車軸を駆動するための出力軸を有する変速機Tからなる、車内電源用発電機を有するディーゼル動車のハイブリッド型駆動装置において、エンジンからの動力を変速機Tの入力軸に伝達する第1動力伝達経路(1〜5)と、一定速回転機構を介してエンジンEからの動力を車内電源用発電機Gに伝達する第2動力伝達経路(1〜25)と、発電機/モータMからの動力を変速機Tの入力軸に伝達する第3動力伝達経路(5〜29)とを備え、前記第2動力伝達経路の噛み合い歯車および歯車支持軸と前記第3動力伝達経路の噛み合い歯車および歯車支持軸とが共用されていることを特徴とするディーゼル動車のハイブリッド型駆動装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行用動力源としてエンジンを備え、車内電力用発電機を有するディーゼル動車のハイブリット型駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ディーゼル動車においても、ハイブリッド型駆動装置が計画され、試作されている。このハイブリッド型駆動装置は、減速時や制動時のエネルギをバッテリに蓄え、このエネルギを発進時や加速時に利用することにより、省エネ、排ガスや騒音の防止などの効果を得ようとするものである。
【0003】
図3には、特許文献1に開示された、鉄道車両におけるシリーズ式のハイブリッド型駆動装置の基本構成が示されている。エンジンEは、図示しない制御装置の指令に基づいて軸トルクを出力し、この軸トルクにより誘導発電機Gを回転し、これを3相交流電力に変換して出力する。コンバータ装置Cは、誘導発電機Gから出力される3相交流電力を直流電力に変換する。なお、コンバータ装置Cは、図示しない制御装置からの電圧指令に基づいて所定の直流電圧となるように制御される。インバータ装置Iは、コンバータ装置Cからの所定の直流電圧の電力を3相交流電力に変換し、この3相交流電力により誘導電動機Mを回転し、軸トルクを出力する。なお、この軸トルクは所定の軸トルクであるように、図示しない制御装置からの指令に基づいてインバータ装置Iの出力電圧および交流周波数が制御される。
【0004】
誘導電動機Mからの軸トルクは減速機Rにおける回転数の減速により増幅され、この増幅された軸トルクによりディーゼル動車の車軸Sは駆動される。なお、バッテリBは、コンバータ装置Cとインバータ装置Iの間の直流部分から直流電力を入力し、あるいは、コンバータ装置Cとインバータ装置Iの間の直流部分に対して直流電力を出力するように接続されている。したがって、誘導電動機Mの軸トルク出力を得るために必要なインバータ装置Iの入力電力をコンバータ装置Cが出力する直流電力で負担できない場合には、バッテリBが出力する直流電力で補足し、同様に、誘導電動機Mの軸トルク出力を得るために必要なインバータ装置Iの入力電力をバッテリBが出力する直流電力で負担できない場合には、コンバータ装置Cが出力する直流電力で補足することが可能である。また、誘導電動機Mにより必要な軸トルクを得るためにインバータ装置Iの入力電力に対して、コンバータ装置Cの出力する直流電力が過剰な場合には、この過剰な直流電力はバッテリBに蓄積される。
【0005】
一方、鉄道車両を減速するときには、誘導電動機Mがブレーキトルクを出力するようにインバータ装置Iを回生動作させ、回生電力をバッテリBに蓄える。ここでバッテリBに蓄積された電力は、鉄道車両を加速するときに優先的に使用されて、鉄道車両の運転に必要なエネルギとして活用される。
【0006】
また、図4には、特許文献2に開示されたハイブリッド型駆動装置を備えた鉄道車両の駆動系統の概要図が示されている。この鉄道車両は、一方の車軸Sが流体変速機TCを介してエンジンEにより駆動されるとともに、他方の車軸S’がインバータ装置IおよびバッテリBからの電力でモータ(交流機)M’により駆動される。エンジンEのアイドリング時には、発電機GによりバッテリBを充電し、車両の減速時には、モータM’を回生ブレーキとして使用し、低速走行時には、主としてモータM’により車軸S’を駆動し、中高速時には、主としてエンジンEにより車軸Sを駆動するようにしたものである。この方式の鉄道車両は、エンジンEとモータM’を単独または併用して走行でき、パラレル方式とも呼ばれると共に、バッテリ容量を上記シリーズ式より小さくすることができる。なお、図中、Rは減速機、LBは断流器、そしてFRはフィルタリアクトルである。ところで、図3および図4に示される鉄道車両の駆動装置では、バッテリBよりインバータを介した交流電力によって誘導電動機MおよびモータM’を駆動するように構成されており、車内で使用される交流電力も同様にバッテリBよりインバータを介して供給されるものである。また、ディーゼル車両に車内電力を供給する手段としては、回転速度が変化するエンジンに連結して発電機を駆動させても、常に一定周波数の交流電力が得られ、インバータで変換することなく直接車内電力の電源とし利用できる、特許文献3に開示されるような動力伝達装置が提案されている。しかしながら、前記のハイブリッド型駆動装置においてこのような発電機構を持たせようとすると、装置の構成が複雑になって大型化し、ハイブリッド型ディーゼル車両には適用できなかった。
【0007】
【特許文献1】特開2004−282859号公報
【特許文献2】特開2000−350308号公報
【特許文献3】特開2001−58523号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そして、このような従来のハイブリッド型駆動装置を備えた鉄道車両、特にディーゼル動車においては、次のような問題があった。すなわち、シリーズ式にあっては、エンジン駆動の発電装置と電車用に匹敵する駆動装置とを併せ持つ必要があるので、駆動装置全体の構成が複雑になると共に製作費も高額になるばかりでなく、床下への機器配置が難しく、重量も重くなるという欠点があった。また、発電機、インバータそしてモータの各効率が相乗されるので、全体の動力伝達効率が悪くなると共に、加速時には、発電電力とバッテリ電力とを併用し、かつ車内電力をも供給しながら走行するので、バッテリ容量を大きくする必要があり、バッテリ寸法が大きく、重くなる欠点があった。
【0009】
また、パラレル式にあっては、エンジン駆動部と電気(交流機)駆動部とを併せ持つので、駆動装置の構成が複雑で製作費が高額になると共に、それらの重量が大きくなる。さらに、エンジン駆動部と電気駆動部の両方のメンテナンスが必要で、メンテナンスの負担増になるばかりでなく、エンジン駆動部は、低速走行時に流体変速機(トルクコンバータ)を介して動力の伝達を行うために、低速走行時における動力伝達効率が良くなかった。
【0010】
したがって、この発明は、ディーゼル動車の低速走行時、すなわち、停車および発進時には、電気モータにより駆動して低騒音化と排気ガスの排出削減を図るとともに減速および制動時には動力回生し、一方、トルクコンバータを無くして動力伝達の効率を良くすると共に車内用電源として一定周波数の電力をエンジン駆動の発電機により供給する、簡単な構成でコンパクトなハイブリッド型駆動装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、エンジン、バッテリおよび発電機/モータからなる電気駆動部、車軸を駆動するための出力軸を有する変速機からなる、車内電源用発電機を有するディーゼル動車のハイブリッド型駆動装置において、エンジンからの動力を変速機の入力軸に伝達する第1動力伝達経路と、一定速回転機構を介してエンジンからの動力を車内電源用発電機に伝達する第2動力伝達経路と、発電機/モータからの動力を変速機の入力軸に伝達する第3動力伝達経路とを備え、前記第2動力伝達経路の噛み合い歯車および歯車支持軸と前記第3動力伝達経路の噛み合い歯車および歯車支持軸とが共用されているものである。
【0012】
なお、変速機は、前進クラッチ、後進クラッチおよび複数の速度段クラッチと、これらクラッチの係合、離脱と組み合わされて、入力軸から出力軸に動力を伝達するように噛み合わされる歯車とからなることが好ましく、また、第1動力伝達経路、第2動力伝達経路および第3動力伝達経路において、エンジンからの動力を伝達するために係合または離脱するクラッチ群を変速機の入力側に設けることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のディーゼル動車のハイブリッド型駆動装置によれば、ディーゼル動車の発進時には、エンジンを停止して電気モータで走行し、駅構内における騒音を減少すると共に排気ガスの排出を無くすことができ、また、トルクコンバータを無くして、減速および制動時には、発電機により発電した電力をバッテリに蓄え、省エネを図ると共に、モータ走行用の駆動軸系と車内電源用の一定周波数発電機の駆動軸系とを共用にしたので、ディーゼル動車のハイブリッド型駆動装置を簡単な構成でかつコンパクトにすることができる。
【0014】
なお、電気モータのみによる駆動を発進時の加速に限定することにより、モータ出力はより小さくて済み、電気機器類を小型化することができる。また、路線や走行条件に応じて、エンジン走行、モータ走行および両者の併用による走行として運転することにより、従来のエンジン駆動によるディーゼル動車の走行性能に比して遜色のない走行性能を得ることができる。
【0015】
本発明のハイブリッド型駆動装置は、基本的には、図5に示されるディーゼルエンジンEと車軸Sとの間に変速機Tを介した従来の駆動装置から出発している。変速機Tは前進クラッチ、後進クラッチ、複数の速度段クラッチ(この例では4個の速度段クラッチ)を有し、それらのクラッチの係合と離脱により出力軸に動力を伝達する出力軸を備えている。なお、トルクコンバータTCは省略するものである。
【0016】
図1に示されるように、変速機Tの入力側(エンジンE側)には、バッテリBおよび発電機/モータMからなる、一定周波数発電機Gの駆動系を兼ねた電気駆動部EDが設けられ、発電機/モータMおよび一定周波数発電機Gは、車両の減速、制動時に、発電機として作用して回生制動し、発電機/モータMで発生した電力は車内電力として供給される。なお、インバータIはバッテリBの直流電力を交流に変換してモータとして作動する発電機/モータMに出力し、発電機/モータMが発電機として作動するときは、発電された交流電力を直流に変換してバッテリBに出力するものであり、インバータIは一定周波数発電機Gで発電された交流電力の一部を直流に変換してバッテリBに出力し、一定周波数発電機Gが停止中のときは、バッテリBの直流電力を交流に変換し、車内電力として提供するものである。また、ディーゼル車両の発進時や加速時には、バッテリBの電力により発電機/モータMを電気モータとして駆動し、エンジンEによる駆動を遮断することにより、排気ガスの削減と低騒音化を可能にする。すなわち、動力回生時には、変速機Tの速度段クラッチと前進クラッチ(又は後進クラッチ)を結合状態にすると共に、緩やかな減速時のように大きな制動力を必要としない場合には、エンジンブレーキが作用しないように電気駆動部EDのマスタクラッチ4を遮断しておき、駅などに近づいて速やかに減速させるために大きな制動力が必要なときには、マスタクラッチ4を接続してエンジンブレーキを同時に作用させるものである。なお、一定周波数発電機Gは、エンジンEによる駆動時および回生制動時に駆動され、一定周波数の電力を車内電力として供給すると共に、その余剰部分はインバータIを介してバッテリBに蓄えられる。
【0017】
一定周波数発電機Gの機能や駆動手段については、特許文献3に開示されている。すなわち、駆動源であるエンジンEの回転速度が変化しても、常に、一定の回転数(回転速度)で発電機Gを駆動するものである。発電された一定周波数の電力は、車内の空調や照明、車両の制御などに使用されると共に、一部はバッテリBに蓄えられる。なお、一定周波数の電源を使用する利点は、車内電力を発電機Gから直接供給することができるので、インバータI、Iが小型化でき、制御機器も簡素化できる点にある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図1および図2に示されるディーゼル動車のハイブリッド型駆動装置について本発明の実施の形態を説明する。ディーゼル動車のハイブリッド型駆動装置は、図1に示されるように、主に、エンジンE、バッテリBおよび発電機/モータMからなる電気駆動部ED、車軸を駆動する出力軸を有する変速機Tとからなっている。エンジンEからの動力は、トルクコンバータを介することなく、図2に示される、電気駆動部EDの入力軸1に伝えられ、この入力軸1から入力ピニオン2、マスタギヤ3を介して、マスタクラッチ4の入力側に伝えられ、マスタクラッチ4の係合(オン)によりマスタ軸5に伝達される。このマスタ軸5は変速機Tの入力軸に結合されており、エンジンEからの動力は、変速機Tにおいて高速段および低速段に変速されて車軸S’を駆動する。このエンジンEからマスタ軸5に至る動力伝達経路を第1動力伝達経路というものである。なお、マスタ軸5のマスタピニオン6は、中間軸7の中間ギヤ8と噛み合い中間軸7を駆動し、この中間軸7の中間ピニオン9はメインクラッチ10の入力側である第1メインギヤ11と噛み合うが、メインクラッチ10が係合されない限り、第2メインギヤ13への動力の伝達は行われない。
【0019】
エンジンEからの動力を、発電機Gが一定速回転するように発電機軸25に伝達する経路(一定速回転機構)を第2動力伝達経路というものである。すなわち、第2動力伝達回路は、第1動力伝達経路の動力伝達においてメインクラッチ10が係合することにより、エンジンEからの動力は、中間ピニオン9,第1メインギヤ11、メインクラッチ10、ワンウエイクラッチ14、高速段滑りクラッチ16および低速段滑りクラッチ21等を介して発電機軸25に伝達される。車両の運転速度が低速の場合には、メインクラッチ10(オン)→第2メインギヤ13→第1高速ピニオン17(高速段滑りクラッチ16オフ)→第1高速ギヤ18→低速ピニオン20→低速段滑りクラッチ21(オン)→低速ギヤ22(第2中間軸23)→第1被動ギヤ24→発電機駆動軸25、また、運転速度が高速の場合には、メイン軸12→ワンウエイクラッチ14(メインクラッチ10オフ)→第3メインギヤ15→第2高速ピニオン26→(低速段滑りクラッチ21オフ)→高速段滑りクラッチ16(オン)→被動ギヤ24→発電機駆動軸25の伝達経路である。なお、発電機駆動軸25に動力が伝達される場合には、バッテリBの蓄電量が所定値に達するまでの間、発電機/モータMを発電機として駆動するためにエンジンEからの動力がPTO軸29にも伝達される。すなわち、低速ピニオン20→PTO軸ギヤ27→PTO軸クラッチ28(オン)→PTO軸29の伝達経路である。
【0020】
発電機/モータMの作動時には、メインクラッチ10とPTO軸クラッチ28が係合し(マスタクラッチ4はオフ)、動力は、一定周波数発電の際に使用する歯車列の一部を利用してメインクラッチ10に至り、メインクラッチ10→第1メインギヤ11→中間ピニオン9→中間軸7→中間ギヤ8→マスタピニオン6→マスタ軸5の伝達経路である。すなわち、第3動力伝達経路といわれるもので、発電機/モータMをモータとして作動する時には、PTO軸クラッチ28(オン)→PTO軸ギヤ27→低速ピニオン20→第1高速ギヤ18(低速段滑りクラッチ21オフ)→高速段滑りクラッチ16(オフ)→第2メインギヤ13→メインクラッチ10(オン)の伝達経路である。なお、低速ピニオン20からメインクラッチ10の間には、複数の変速数に応じて、各歯車、滑りクラッチが配置される。そして、発電機/モータMを電気モータとして作動する時には、通常、モータの回転速度を減速して変速機Tの入力軸へ伝達し、また、回生制動時には、変速機T側から入力される回転速度を増速して、発電機/モータMに伝達するように回転速度比が設定される。さらに、発電機/モータMをモータとして走行する時にバッテリBの残容量が少なくなった場合には、エンジンEを始動してマスタクラッチ4を結合し、エンジンEの動力を、第一動力伝達回路を介して付加し、走行することができる。
【0021】
このようなハイブリッド型駆動装置を搭載したディーゼル動車は、以下のように操作されることができる。
(1)発進時
エンジンEを停止、マスタクラッチ4を遮断した(オフ)状態で、バッテリBに充電された電力を利用し、発電機/モータMをモータとして作動させ、PTO軸クラッチ28およびメインクラッチ10を係合し、第3動力経路を介して発電機/モータMの動力を変速機Tに伝達し、モータMの回転速度を上げて発進、加速する。なお、このとき、車内電力はバッテリBから供給されており、変速機Tは1速段の前進クラッチ又は後進クラッチが結合されている。この実施例では、モータ単独運転による発進時の加速特性及びモータで所定距離走行後にエンジン駆動に切り換えたときの加速特性、車両重量の増加や動力伝達効率に及ぼす影響などを総合的に加味して、発電機/モータMの容量を100kw/1500min−1に設定している。
【0022】
(2)力行時
PTO軸クラッチ28を遮断(メインクラッチ10は係合した状態)し、マスタクラッチ4を係合(オン)させてエンジンEを起動し、このエンジンEの動力を第1動力伝達経路により変速機Tの入力軸に伝達し、車輪Sを駆動する。この時、メインクラッチ10から、第2伝達経路を介して、一定周波数発電機Gの駆動軸25にエンジン動力が伝達されて発電が行われる。なお、一定周波数発電機Gの容量は、車両の電力使用量により定まってくるが、発電機/モータMの容量に比べると小さく、この実施例では40kWに設定されている。
【0023】
(3)エンジン駆動時におけるモータによる動力加勢
上記(2)の力行時において、PTO軸29のPTO軸クラッチ28を係合(オン)し、バッテリBの電力でモータMを駆動して動力加勢することもできる。なお、この時には、上記(2)の力行状態が維持されているので、一定周波数発電機Gにより車内電力が供給されており、PTO軸ギヤ27→低速ピニオン20→第1高速ギヤ18→第1高速ピニオン17→第2メインギヤ13→メインクラッチ10→第1メインギヤ11→中間ピニオン9→中間軸7→中間ギヤ8→マスタピニオン6→マスタ軸5の第3動力伝達経路が第2動力伝達経路と併用して利用される。
【0024】
(4)惰行時
上記(2)の力行状態において、変速機Tの速度段クラッチを遮断する。なお、エンジンEは作動しており、車内電力は一定周波数発電機Gを駆動して供給される状態が維持される。
【0025】
(5)減速、回生制動時
下り勾配や駅で停車するために減速する場合には、必要とする制動力の大きさに応じてエンジンブレーキを併用するが、予め定められた制動力までは発電機/モータMと一定周波数発電機Gの両方を発電機として作用させて回生ブレーキのみとし、速やかに減速するときや停車するときなど、大きな制動力を必要とする場合には、上記回生ブレーキに加えてエンジンブレーキを作用させる。すなわち、上記(4)の惰行運転により発電機Gの駆動軸25にエンジン動力が伝達されて発電している状態において、マスタクラッチ4を遮断(オフ)してエンジンEからの第1伝達経路を断ち、PTO軸クラッチ28を結合した後、変速機Tの速度段クラッチを結合して車軸Sからの軸トルクを発電機/モータMのPTO軸29に伝達し、発電機/モータMおよび一定周波数発電機Gを発電機として作動させて回生制動とし、発生した電力をバッテリBに蓄えると共に、車内電力として供給する。そして、さらに大きな制動力を必要とする場合には、マスタクラッチ4を再度結合して車軸Sからの軸トルクを第1動力伝達経路を経てエンジンにも伝達し、エンジンブレーキを併用する。なお、この制動力の制御は、車両のエアーブレーキと同様に運転席から操作される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は本発明のハイブリッド型駆動装置の概略説明図である。
【図2】図2は、本発明のハイブリッド型駆動装置の電気駆動部の概略説明図である。
【図3】図3は、従来のシリーズ式ハイブリッド型駆動装置の基本構成を示す説明図である。
【図4】図4は、従来のパラレル式ハイブリッド型駆動装置の構成の説明図である。
【符号の説明】
【0027】
E エンジン
G 発電機
C コンバータ
B バッテリ
,I インバータ
M 発電機/モータ
R 減速機
S 車軸
T 変速機
ED 電気駆動部
LB 断流機
1 EDの入力軸
2 入力ピニオン
3 マスタギヤ
4 マスタクラッチ
5 マスタ軸
6 マスタピニオン
7 第1中間軸
8 中間ギヤ
9 中間ピニオン
10 メインクラッチ
11 第1メインギヤ
12 メイン軸
13 第2メインギヤ
14 ワンウエイクラッチ
15 第3メインギヤ
16 高速段滑りクラッチ
17 第1高速ピニオン
18 第1高速ギヤ
20 低速ピニオン
21 低速段滑りクラッチ
22 低速ギヤ
23 第2中間軸
24 第1被動ギヤ
25 発電機駆動軸
26 第2高速ピニオン
27 PTO軸ギヤ
28 PTO軸クラッチ
29 PTO軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンE、バッテリBおよび発電機/モータMからなる電気駆動部ED、車軸を駆動するための出力軸を有する変速機Tからなる、車内電力用発電機を有するディーゼル動車のハイブリッド型駆動装置において、エンジンEからの動力を変速機Tの入力軸に伝達する第1動力伝達経路と、一定速回転機構を介してエンジンEからの動力を車内電力用発電機Gに伝達する第2動力伝達経路と、発電機/モータMからの動力を変速機Tの入力軸に伝達する第3動力伝達経路とを備え、前記第2動力伝達経路の噛み合い歯車および歯車支持軸と前記第3動力伝達経路の噛み合い歯車および歯車支持軸とが共用されていることを特徴とするディーゼル動車のハイブリッド型駆動装置。
【請求項2】
上記変速機Tが、前進クラッチ、後進クラッチおよび複数の速度段クラッチと、これらクラッチの係合、離脱と組み合わされて、その入力軸から出力軸に動力を伝達するように噛み合わされる歯車とからなることを特徴とする請求項1記載のディーゼル動車のハイブリッド型駆動装置。
【請求項3】
上記第1動力伝達経路、第2動力伝達経路および第3動力伝達経路において、エンジンからの動力を伝達するために係合または離脱するクラッチ群を上記変速機の入力側に設けたことを特徴とする請求項1または2記載のディーゼル動車のハイブリッド型駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−49809(P2008−49809A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−227549(P2006−227549)
【出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(303025663)株式会社日立ニコトランスミッション (25)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【Fターム(参考)】