説明

デジタルペン入力システム

【課題】
専門的な知識や高度な設備を用いることなく、簡便に帳票用紙を作成することができるデジタルペン入力システムを提供する。
【解決手段】
所定のパターンを有するドットのみが印刷されたブランクスペースを有する原紙と、このブランクスペースに帳票レイアウトを印刷するプリンタと、ペン先で情報を記入すると共にペン先が通過した位置のドットを撮影して端末装置に出力するデジタルペンとを具備し、上記端末装置は、上記帳票レイアウトを読み込んで帳票レイアウトデータを生成するレイアウト読込手段と、この帳票レイアウトデータに基いて認識領域を設定する認識領域設定手段と、この認識領域ごとに認識処理タイプを設定する処理タイプ設定手段とを備え、デジタルペンから出力したドットパターン情報を、上記認識領域及び認識処理タイプを参照して認識処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙にペン書きすると共に記入した情報を電子データとして記録するデジタルペン入力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルペン入力システムとは、通常の帳票レイアウトと共に所定のパターンでドットが印刷された帳票用紙に、小型のカメラを装着したペンで記入すると共にペンに設けられたカメラで用紙に印刷されたドットを撮影し、撮影したドットパターン情報をパソコンなどの端末装置に送信して、このデータから帳票の種類及びペン先が通過した帳票上での座標位置を算出して、帳票用紙に記入された情報を電子データ化するものである(特許文献1)。
【0003】
このシステムを利用するユーザは、各ユーザの業務に適したアプリケーションソフトをそれぞれ独自に作成し、デジタルペン専用の連携アプリケーションキットを介して、作成したアプリケーションソフトに撮影したドットパターン情報を読み込ませて、帳票用紙に記入された情報を電子データとして保存する。
【0004】
ところで、従来、デジタルペン入力システムで用いられる帳票用紙は、専用のアプリケーションを用いて帳票レイアウトを作成し、専門的な印刷設備によって白紙にこの帳票レイアウトと共に所定のパターンを有するドットを印刷して、さらに、デジタルペンが処理する特殊な機能などを定義(帳票定義)して、印刷された帳票レイアウトの特定の枠線内にチェックを入れることで用紙への記入開始や記入終了を示すコードとしたり、ペン内臓のメモリに蓄積されたデータを端末装置に送信したり、メモリ内のデータを消去したりする機能を設定して作成される。
【0005】
したがって、帳票用紙の作成には、専門的なアプリケーションとそのアプリケーションを扱うための知識に加えて印刷設備と高度な印刷技術が必要であって、専門の業者に発注しなければならず、帳票用紙の作成には多額のコストがかかるうえに、これら帳票レイアウト及び帳票定義は帳票用紙を作成する段階で全て決定されている必要がある。つまり、帳票レイアウトや帳票定義を変更する場合には、些細な変更であっても、業者に発注して作成し直す必要があり、その都度、多額のコストがかかることになる。
【0006】
そのため、このシステムを導入するためにシステムの試用及び評価をしたり、このシステムを用いたソリューションの提案をする場合などのデジタルペン入力システムの導入以前の段階や、デジタルペン入力システムを導入した後に帳票用紙の改善をする場合でも、各業務の使用態様に合った帳票用紙や新しい帳票用紙を作成するためには、それぞれの帳票用紙を作成するごとに多額の初期コストを要し、デジタルペン入力システムの普及を阻害する原因となっていた。
【特許文献1】特表2003−511761号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
解決しようとする問題点は、システムの試用や評価などシステム導入以前の段階において帳票用紙の作成に多額のコストがかかってしまう点であり、本発明は、専門的な知識や高度な設備を用いることなく、簡便に帳票用紙を作成することができるデジタルペン入力システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1記載のごとく、所定のパターンを有するドットのみが印刷されたブランクスペースを有する原紙と、このブランクスペースに帳票レイアウトを印刷して帳票用紙を作成するプリンタと、ペン先で情報を記入すると共にペン先が通過した位置のドットを撮影して、このドットパターン情報を端末装置に出力するデジタルペンとを具備し、上記端末装置は、上記帳票用紙の帳票レイアウトを読み込んで帳票レイアウトデータを生成するレイアウト読込手段と、生成した帳票レイアウトデータに基いて認識処理すべき認識領域を設定する認識領域設定手段と、設定した認識領域ごとに認識処理タイプを設定する処理タイプ設定手段とを備え、デジタルペンから端末装置に出力したドットパターン情報を、設定した上記認識領域及び認識処理タイプを参照して認識処理することを特徴とするデジタルペン入力システムを提供する。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載のごとく構成したことにより、原紙のブランクスペースに印刷した任意の帳票レイアウトを読み込んで、この帳票レイアウトデータに従って認識処理すべき認識領域及び認識処理タイプを設定して、これらの認識設定に基いて認識処理ができるため、専用のアプリケーションや専門的な設備を要することなくデジタルペン入力に対応した帳票用紙を作成して利用することができ、システムの試用及び評価などのために少量多種の帳票用紙を簡便に必要な枚数だけ供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図1は、本発明に係るデジタルペン入力システムの構成を示す図である。
【0011】
このデジタルペン入力システムは、デジタルペン10と、このデジタルペン10と通信可能な端末装置20と、図1において拡大図視したごとく所定のパターンでドット32が印刷された原紙30と、この原紙30に帳票レイアウトを印刷するプリンタユニット22とにより構成されている。
【0012】
端末装置20は、デジタルペン10と無線又は有線によって通信することができるもので、例えばパーソナルコンピュータやサーバ装置などである。端末装置20はモニタ21を備え、プリンタ22と接続されている。通信はLAN、インターネット回線又はUSB接続などを介して行なわれる。
【0013】
原紙30は、図1において拡大して図視したように所定のパターンで印刷された多数のドット32を有しており、このドット32のみが印刷されたブランクスペース31を備える汎用用紙である。ブランクスペース31は原紙30の中央部に配置され、プリンタ22によって、このブランクスペース31に帳票レイアウトを印刷して帳票用紙35を作成する。
【0014】
ブランクスペース31の周囲には、複数のチェックボックス33が設けられていてもよい。このチェックボックス33にはデジタルペン10によって処理される特殊な機能などがあらかじめ定義されている。ドット32は赤外線を吸収するインクによって印刷されており、帳票レイアウトの枠線やチェックボックス33はこのドット32と干渉することがないように赤外線を吸収しないインクによって印刷される。
【0015】
次に、デジタルペン10の構造について説明する。図2はデジタルペンの構造の一構成例を示す図である。
【0016】
デジタルペン10は、用紙に書き込むためのペン先11及びインクカートリッジ17を備えると共に、ペン先11の筆圧を検出する筆圧センサ18と、ペン先11の通過した用紙上のドット32を撮影するカメラ12と、デジタルペン10の制御及びデータの処理を行なうプロセッサ13と、データを記憶するメモリ14と、端末装置20と有線又は無線により通信を行なう通信ユニット15と、デジタルペン10を駆動するバッテリ16とにより構成される。
【0017】
デジタルペン10を用いて帳票用紙35に文字等を書き込むと筆圧センサ18が筆圧を検出し、プロセッサ13は、カメラ12によってドット32を撮影させる。このカメラ12は赤外線を利用したもので、赤外線を吸収するインクによって印刷されたドット32のみを撮影することができる。
【0018】
撮影したドットパターン情報は、時系列順にメモリ14に保存され、通信ユニット15によってメモリ14に保存されたこれらのデータが端末装置20へと送信される。データの通信は、帳票用紙35への記入を終えた後にメモリ14に保存されたデータを端末装置20へ送信したり、デジタルペン10で帳票用紙35へ記入すると同時にデータを無線又は有線で端末装置20へと送信する。
【0019】
メモリ14には、ドットパターン情報と共に筆圧センサ18によって測定した筆圧データやデジタルペン10に内蔵された計時機能(図示せず)から読み取った時刻データ等を併せて保存させてもよい。
【0020】
また、端末装置20に送信されるドットパターン情報は、デジタルペン10のカメラ12で撮影したドットパターン画像データであってもよいし、撮影したドットパターン画像データから算出したペン先11の軌跡を示すストロークデータなどでもよく、さらにドットパターン情報と共に筆圧データや時刻データ等を送信するようにしてもよい。
【0021】
次に、レイアウト読込手段の実施形態について説明する。レイアウト読込手段により帳票用紙35に印刷された帳票レイアウトから帳票レイアウトデータ36を生成することができる。レイアウト読込手段は、帳票レイアウトが印刷された帳票用紙35をスキャナで読み込んで画像データを生成し、この画像データを帳票レイアウトデータ36として用いる。また、別の実施形態では、文書作成ソフトや表計算ソフトで作成したデータを読み込んで画像データを生成し、この画像データを帳票レイアウトデータ36として用いることもできる。
【0022】
次に、図3乃至図4を参照して認識領域設定手段の実施形態について説明する。認識領域設定手段により帳票用紙35に認識処理すべき認識領域の範囲を設定することができる。この認識領域は、レイアウト読込手段によって生成した帳票レイアウトデータ36を用いて、例えば帳票レイアウトデータ36の左上端を原点としてピクセルやミリメートル単位で縦と横の座標を設定しておき、認識領域の左上端の座標値とその認識領域の縦と横の長さによって各認識領域を設定する。
【0023】
認識領域設定手段の第1の実施形態において座標値の設定は、図3に示すように、モニタ21にダイアログボックス23と帳票レイアウトデータ36とを表示して、認識領域の左上端を基準位置としてその座標値をダイアログボックス23に入力し、さらにその認識領域の縦及び横の長さを入力して行なう。
【0024】
また、認識領域設定手段の第2の実施形態では図4に示すように、帳票レイアウトデータ36をモニタ21に表示し、このレイアウトデータ上をマウスでドラッグして所望の範囲を選択し、その選択範囲を認識領域として設定する。
【0025】
次に、処理タイプ設定手段について説明する。処理タイプ設定手段により認識領域設定手段で設定した認識領域について、各認識領域ごとの処理タイプを設定することができる。ここで設定される処理タイプとは、例えば、データ出力時における認識領域のデータ順序、認識領域に記入される情報の種別(手書き文字、印字文字、チェックマーク、図形や絵など)、文字属性(記号、漢字、ひらがな、カタカナや英数字など)、言語(日本語、英語、フランス語やロシア語など)、認識領域内に記入される文字数(所定の文字数やフリーピッチなど)及び出力形式(固定長出力、データ区切記号や出力のon−offなど)などである。
【0026】
次に、このようにして構成したデジタルペン入力システムの使用態様の一例について説明する。
【0027】
オペレータは、まずプリンタ22によって原紙30のブランクスペース31に帳票レイアウトが印刷された帳票用紙35から、レイアウト読込手段によって帳票レイアウトデータ36を生成する。そして、この帳票レイアウトデータ36に基いて認識領域設定手段及び処理タイプ設定手段により、それぞれ認識領域F及び認識処理タイプを設定する。これらの設定はモニタ21に帳票レイアウトデータ36を表示して端末装置20上で行なわれる。
【0028】
この帳票用紙35にデジタルペン10で記入し、ドットパターン情報を端末装置20に出力すると、このドットパターン情報に基いて電子データ化された記入情報画像から、各認識領域Fごとに設定された認識処理タイプに従って認識処理を行なって、所望のデータ形式で保存される。
【0029】
上記のごとく構成したデジタルペン入力システムは以下に述べるような効果を奏する。
【0030】
本発明にかかるデジタルペン入力システムは、ドット32のみが印刷されたブランクスペース31を有する原紙30にプリンタ22で帳票レイアウトを印刷すると共に、レイアウト読込手段によって帳票レイアウトデータ36を生成し、認識領域設定手段及び処理タイプ設定手段によって認識領域及び認識処理タイプを設定してデジタルペン入力用の帳票用紙として利用することができるため、少量多種の帳票用紙を簡便に必要な枚数だけ供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係るデジタルペン入力システムの構成を示す図である。
【図2】デジタルペンの構造の一構成例を示す図である。
【図3】認識領域設定手段の第1の実施形態を説明する図である。
【図4】認識領域設定手段の第2の実施形態を説明する図である。
【符号の説明】
【0032】
10 デジタルペン
20 端末装置
21 モニタ
22 プリンタ
23 ダイアログボックス
30 原紙
31 ブランクスペース
32 ドット
33 チェックボックス
35 帳票用紙
36 帳票レイアウトデータ
F 認識領域


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のパターンを有するドットのみが印刷されたブランクスペースを有する原紙と、このブランクスペースに帳票レイアウトを印刷して帳票用紙を作成するプリンタと、ペン先で情報を記入すると共にペン先が通過した位置のドットを撮影して、このドットパターン情報を端末装置に出力するデジタルペンとを具備し、
上記端末装置は、上記帳票用紙の帳票レイアウトを読み込んで帳票レイアウトデータを生成するレイアウト読込手段と、生成した帳票レイアウトデータに基いて認識処理すべき認識領域を設定する認識領域設定手段と、設定した認識領域ごとに認識処理タイプを設定する処理タイプ設定手段とを備え、デジタルペンから端末装置に出力したドットパターン情報を、設定した上記認識領域及び認識処理タイプを参照して認識処理することを特徴とするデジタルペン入力システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−309354(P2006−309354A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−128625(P2005−128625)
【出願日】平成17年4月26日(2005.4.26)
【出願人】(595031340)メディアドライブ株式会社 (3)
【Fターム(参考)】