説明

デジタル地図の位置参照情報受信装置および位置特定方法

【課題】受信した対象道路の基準点を適切な位置に設定し、対象道路および発生事象を正しい位置に再現する。
【解決手段】基準点を含む対象道路の位置を示す位置参照情報を受信し、基準点に基づいてデジタル地図上で対象道路の位置を特定する受信装置であって、位置参照情報に含まれる基準点が、デジタル地図上の複数の地点に該当する場合に、対象道路の所定方向に準じて、デジタル地図上に存在する複数の該当地点のうち、最上流および最下流の少なくとも二つの該当地点を基準点として用いて対象道路の位置を特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル地図上の交通情報を伝達する方法に関し、特に事故、渋滞など道路または道路に密接に関連する事象を正確な位置に表現するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ナビゲーション車載機を搭載する車両が急激に増加している。ナビゲーション車載機は、デジタル地図データベースを保持し、交通情報センターなどから提供される渋滞情報や事故情報に基づいて、渋滞や事故位置を地図上に表示し、また、それらの情報を条件に加えて経路探索を実施する。
【0003】
市販されているデジタル地図データベースには多くの種類があり、地図及びデジタイズ技術、システム実装時のデータ変換処理等の違いから、各々の地図データには誤差が含まれており、その誤差は各社のデジタル地図データベースによって違っている。そのため、交通情報として、例えば事故位置を伝える場合、ある地図データ上で登録した事故位置の経度・緯度データを単独で送信すると、ナビゲーション車載機では、保持しているデジタル地図データベースが送信側と異なる場合、前記の地図の誤差によって、位置がズレたり、異なる道路上の位置を事故位置として識別してしまう虞がある。
【0004】
上記に鑑み、特許文献1は、相対的に示された所定地点の位置に関する相対位置情報に対して、異なる地図データベース間で発生する前記位置のずれを補正する相対位置情報補正装置であって、第1の地図データベースから取得された形状ベクトルに設定されているノードからの相対位置によって示された事象発生地点の相対位置情報を、前記第1の地図データベースに記憶されている前記事象発生地点が属する形状ベクトルの総延長と、第2の地図データベースに記憶されている前記事象発生地点が属する形状ベクトルの総延長とを用いて補正することを特徴とする相対位置情報補正装置を開示している。
【0005】
上記文献の方式によれば、第1の地図データベースと第2の地図データベースとが異なっても、補正された事象発生地点の相対位置情報は当該事象発生地点を正確に表すこととなる。
【0006】
また、特許文献2は、地図データベースから地図データを取得して、所定の区間を示す形状ベクトルを生成する形状ベクトル生成装置であって、前記地図データベースに基づいて生成された形状ベクトルが示す区間または前記区間周辺の、所定の条件を満たす地点を特徴ノードに設定し、前記設定された特徴ノードを含むよう前記形状ベクトルを生成または変更することを特徴とする形状ベクトル生成装置を開示している。
【0007】
したがって、前記地図データベースとは異なる地図データベースを用いる装置で形状ベクトルのマップマッチングを行っても、当該生成または変更された形状ベクトルであれば誤マッチングやマッチングのズレ等が発生することなく、正確なマップマッチングを行うことができる。
【特許文献1】特開2003−287427号公報
【特許文献2】特開2003−288007号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、デジタル地図上における道路の表現方法は、一本線で両方向(上り下り方向)通行可能として表現する方法と、上りと下りの方向別に二本線で表現する方法とがある。このような表現方法の採用基準は、地図メーカーによって異なっている。また、交差点の表現方法も、地図データの作成に用いる地図図面の縮尺によって、交差点内の細かな連結路(わたり線など)が識別できるケースとできないケースとが混在している。したがって、連結路の有無は地図データによって異なるケースがある。このため、地図の種類により、図6(a)と図6(b)に示すような交差点形状の差異が生ずる。一般に図6(a)のような交差点を単純交差点、図6(b)のような交差点を複雑交差点という。そして、上述した文献における道路形状を表現する形状ベクトルの基準点は、一般的に交差点に設定されるが、基準点が設定される交差点が、複雑交差点の場合がある。
【0009】
形状ベクトルを生成し、送る送信装置においては、例えば図6(a)に示すように、単純交差点の基準点から所定の距離(40m)において、事故のような事象が生じた場合、当該基準点からの相対距離で事故位置を設定し、生成されたデータを受信装置に送る。ところが、受信装置側で、対応する交差点を複雑交差点として有し、当該複雑交差点を基準として事故事象を復元する場合、受信装置は、複雑交差点のどの位置(ノード)が基準点なのかを把握することはできない。送信装置は単純交差点として交差点の情報を有しており、複雑交差点のどの位置に基準点を置くかの情報を有していないからである。
【0010】
したがって、例えば、受信装置が、Cのノードを基準点として設定すると、図6(b)に示すように、事故が複雑交差点の中に生じたように、誤って、事故位置を設定してしまうような不都合が生じ得る。上記文献においては、このような事情は一切配慮されていない。
【0011】
本発明は、受信装置側において、受信したデータの基準点が、複数の位置に設定され得る場合、適切な位置に基準点を設定し、正しく事象の発生位置を再現する技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、対象道路の位置を示す位置参照情報と、前記位置参照情報が示す基準点からの事象までの相対的な位置を表す相対情報とを受信する受信部と、前記受信した位置参照情報と相対情報とを用いて自己のデジタル地図上で前記事象に対応する位置を特定する位置特定部と、を備えた受信装置であって、前記位置特定部は、前記位置参照情報が示す基準点が、前記自己のデジタル地図上の複数の地点に該当する場合に、前記対象道路の一定方向に基づく最上流または最下流に該当する点を基準点に設定し、当該設定した基準点からの相対情報によって前記事象に対応する位置を特定する。
【0013】
尚、交通流は、前記対象道路区間の中で上下流方向を示すためのものであり、道路区間の参照方向や、位置参照情報の座標列の順でもかまわない。また、前記位置参照情報が示す基準点が、前記自己のデジタル地図上の複数の地点に該当する場合に、前記対象道路の一定方向に基づく最上流および最下流に該当する点をそれぞれ基準点に設定し、当該設定した基準点からの相対情報によって前記事象に対応する位置を特定するようにしてもよい。
【0014】
上記構成によれば、複数の候補点が基準点に該当しうるような場合であっても、基準点が、デジタル地図上の適切な位置に設定され、対象道路を適切な位置に再現することができる。
【0015】
また、事象の位置を相対距離で表さない場合は基準点からの相対距離が0であると考える。この場合も本願発明の思想範囲である。この場合、たとえば事象の位置は基準点と同様の位置になる。相対距離で事象の位置を表さない場合で、座標列データ等で表される位置参照情報の端点が渋滞表示の始端もしくは終端になることもある。
【0016】
上記構成によれば、対象道路中の事象情報を適切な位置に再現することができる。
【0017】
さらに本発明の一態様として、前記複数の該当地点は、前記自己のデジタル地図上での交差点内に存在するノードである。
【0018】
上記構成によれば、対象道路が複雑交差点を含む場合も、当該対象道路および事象情報を適切な位置に再現することができる。
【0019】
また、本発明は、コンピュータが、対象道路の位置を示す位置参照情報と、前記位置参照情報が示す基準点からの事象までの相対的な位置を表す相対情報とを用いてデジタル地図上で前記事象に対応する位置を特定し、前記位置参照情報が示す基準点が、前記デジタル地図上の複数の地点に該当する場合に、前記対象道路の交通流の方向に基づく最上流または最下流に該当する点を基準点に設定し、当該設定した基準点からの相対情報によって前記事象に対応する位置を特定する位置特定方法をも含む。この方法をコンピュータに実行させるプログラムも本発明に含まれる。
【発明の効果】
【0020】
以上述べたように、本発明によれば、基準点が、対象道路の適切な位置に再現され、同時に事象情報も適切な位置に再現することができる。したがって、事象情報が実情とは異なる不適切な位置に表現されることがなくなり、ユーザの利便性が増すこととなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態である事象情報送信装置10と事象情報受信装置20を含む位置情報伝達システムのブロック図である。例えば、事象情報送信装置10は、交通情報の提供サービスを行うセンター装置を構成し、事象情報受信装置20は、車両に搭載されたカーナビゲーション装置を構成する。
【0023】
事象情報送信装置10は、事象情報入力部11と、位置参照情報変換部12と、デジタル地図データベース13と、送信部14と、受信部15と、事象内容情報変換部16とを含む。
【0024】
事象情報入力部11には、道路に配置された各種のセンサー、プローブ車両などの外部装置から収集した事象情報が入力される。事象情報は、(1)対象道路の形状を示す座標列からなる位置参照情報(位置情報)と、(2)当該対象道路における事象内容情報を含む。ここで、事象内容情報とはコンテンツ情報ともいい、道路規制、道路・交通障害、渋滞、事故などの交通状態に関する交通情報や、特定場所の性質、名称などを表すPOI(Point of Interest;対象物の位置や対象となるポイント)などを含む。位置参照情報変換部12は、事象情報入力部11から入力された位置参照情報を、座標列データに変換する。デジタル地図データベース13は第1のデジタル地図を表現するデジタル地図データを蓄積する。事象内容情報変換部16は、事象情報入力部11から入力された事象内容情報を、予め定められた規則に従い、送信に適したデータに変換する。送信部14は、変換された位置参照情報及び事象内容情報を含む事象情報を、事象情報受信装置20に送信する。受信部15は、後述するように、事象情報受信装置20から、位置参照情報に関する評価値を受信する。
【0025】
事象情報送信装置10の位置参照情報変換部12は、種々のエンコーディングパラメータを用いて、位置参照情報を変換し、座標データ列を生成する。すなわち、本作用から見れば、事象情報送信装置10は、当該データ列を生成するエンコーダとして機能する。
【0026】
事象情報受信装置20は、受信部21と、位置特定部22と、事象内容情報処理部23と、第2のデジタル地図を表現するデジタル地図データを蓄積するデジタル地図データベース24と、事象情報活用部25と、送信部26とを含む。
【0027】
受信部21は、事象情報送信装置10から送られた事象情報を受信する。位置特定部22は、受信部21が受信した事象情報中の位置参照情報である座標列データを用いて、第2のデジタル地図上における位置参照情報の位置特定(マッチング)を行う。すなわち、位置特定部22は、受信した位置参照情報に対応する対象道路を、第2のデジタル地図上で特定する。事象内容情報処理部23は、受信部21が受信した事象情報中の事象内容情報を処理し、後述する事象情報活用部25が利用可能なデータ形式に変換する。デジタル地図データベース24は第2のデジタル地図を表現するデジタル地図データを蓄積する。事象情報活用部25は種々の態様にて、事象情報を活用する。
【0028】
例えば、事象情報活用部25が液晶表示装置等によって構成される表示部の場合、位置特定部22によって第1のデジタル地図上の対象道路区間に対応する第2のデジタル地図上の道路区間の位置を特定し、事象内容情報処理部23から入力された当該事象内容情報を表示する。またさらに、事象情報活用部25は、経路誘導等の機能を有する場合は、特定した道路上の渋滞状況や通行可能可否等の交通情報を活用して推奨経路の探索をおこなう。
【0029】
事象情報受信装置20の位置特定部22、事象内容情報処理部23は、事象情報送信装置10から受信した事象情報の位置参照情報、事象内容情報をそれぞれ処理し、ユーザが検知可能な形に変換する。すなわち、本作用から見れば、事象情報受信装置20は、事象情報を再現するデコーダとして機能する。
【0030】
図2及び図3は、位置参照情報変換部12によって生成され、送信部14から事象情報受信装置20へ送信される位置参照情報(受信装置側で対象となる道路区間を特定する為の情報)の生成手順の一例を示す。
【0031】
まず、位置参照情報変換部12は、図2(a)に示す送信しようとする対象道路区間のデータ(地図データ内で当該道路区間を一意に識別できるID、座標列データなど、)を受領する。当該座標列データは、事象情報入力部12から得られるものである。続いて、位置参照情報変換部12は、図2(b)に示すように、対象道路区間の始点および終点が、次の適合条件(1)から(3)を満たすように、対象道路区間の延伸を行う。ただし、図2(b)の左側に示すように、始点または終点が適合条件を満たす場合、延伸は行われない。
【0032】
(1)対象道路区間の外側近傍に交差点が存在する場合、交差点を含むように、対象道路区間を延伸する。
(2)対象道路区間の対象道路が低位クラス道路(都道府県道など)である場合、上位クラス道路(高速道路など)との交差点を含むように、対象道路区間を延伸する。
(3)後で述べる道路特定点(RP;Routing Point)が設定可能な箇所まで、対象道路区間を延伸する。道路特定点が設定可能な箇所とは、(a)あいまいさがない(周辺に類似道路が少なく、誤判定リスクが小さい)、(b)微小なジグザグ、凸凹がなく、道路方位が安定している、といったような箇所である。
【0033】
次に位置参照情報変換部12は、図2(c)に示すように、対象道路区間の始点、終点、道路の属性の変更点(国道から一般道、連絡線から本線への変更など)に、属性変更点(IP;Intersection Point)を設定する。
【0034】
更に位置参照情報変換部12は、図2(d)に示すように、道路特定点RPを、道路区間の始点、終点、道路区間の途中に設定する。「IP∧RP」は「IPかつRP」の意味である。尚、隣接する道路特定点RP間で最短経路探索を行った場合に、他の道路パスが選出されないよう、逐次挿入する(例えば右から2番目のRP)。また、道路特定点RPの設定は、次の条件(1)から(3)を満たすように行われる。
【0035】
(1)設定可能箇所に道路特定点RPを設定する。
(2)隣り合うRPの道なり距離が直線距離の2倍以内となるようにRPを設定する。
(3)可能な限り交差点IPと重なるように道路特定点RPを設定する。
(4)数が必要最小限となるように、道路特定点RPを設定する。
(5)道路特定点RP間の対象道路の重み付け経路コストは、他の全ての代替経路のコストよりも規定以上(たとえば25%以上)の優位性を確保するよう、道路特定点RPを設定する。
【0036】
更に位置情報変換部12は、図3(a)に示すように、事象情報受信装置20側で誤判定を起こしやすい区間を、道路形状表現区間として次の条件にしたがって設定する。
【0037】
(1)道路特定点RPまたは交差点IPがあいまいさをもつ(周辺に類似道路があり、誤判定リスクが高い)。
(2)低位クラス道路
(3)最短経路を保障するRPが設定できない区間
【0038】
更に位置参照情報変換部12は、図3(b)に示すように、図3(a)の処理で設定された対象道路区間を構成する形状構成点(SP;Shape Point )の抽出、および道なり距離が直線距離の規定値を超えないように補間点(LP;Location Point)の抽出を行う。
【0039】
最後に位置参照情報変換部12は、図3(c)に示すように、交差点IP、道路特定点RP、形状構成点SP、補間点LPの各々に対し、条件に合致する属性情報を設定し、位置参照情報の座標列データを生成する。
【0040】
図4は、事象情報受信装置20における位置特定部22において実施される、対象道路区間の位置参照情報のデジタル地図上での特定処理の手順を示す。図4(a)は事象情報受信装置20の受信部21が受信する、事象情報送信装置10から送信された事象情報の位置参照情報を示す。図4(b)に示すように、まず、位置特定部22は位置参照情報から道路形状区間を抽出し、パターンマッチング(位置特定)で、デジタル地図データベース24の第2のデジタル地図上の該当道路区間を特定する。
【0041】
次に位置特定部22は、図4(c)に示すように、受信した位置参照情報内の道路特定点RPの緯度、経度、属性から、検索半径(DSA)内の道路特定点RPの候補点を、第2のデジタル地図から抽出するとともに、形状端点付近に擬似道路特定点RPを設定する。
【0042】
そして、位置特定部22は、図4(d)に示すように、道路特定点RP間の経路の候補を、ダイクストラ法などの経路探索手法(RS;Route Search)を用いて候補経路として算出する。本例では、2×3=6つの候補経路が算出されている。
【0043】
最後に位置特定部22は、図4(e)に示すように、各候補経路の評価値および/または各道路特定点RPの候補の地点の評価値から、最終候補を決定する。
【0044】
ところで、既に述べたように、交差点の中には、図5(b)に示すような、2本の道路が交差し、複数のノード、リンクが発生するようないわゆる複雑交差点が存在する。そして、本実施形態においては、事象情報受信装置20は、図5(b)の複雑交差点の形式(実際の交差点の形状)で交差点の情報を有するが、事象情報送信装置10は、図5(a)に示す単純交差点の形式で、当該交差点の情報を有する。
【0045】
事象情報送信装置10は、例えば図5(a)に示すように、単純交差点の基準点から所定の距離(40m)において、事故のような事象が生じた場合、当該基準点から相対距離をもって離れた相対位置で事故位置を設定し、当該相対位置を事象内容情報として事象情報受信装置20に送る。尚、相対距離は、例えば下流側の基準点からの距離が正の値、上流側の基準点からの距離が負の値で表現され、基準点の上流側と下流側を識別可能ならしめるものである。基準点は、図2、図3におけるIP、LP、RP等のいずれかのノードに該当する。ここで、事象情報送信装置10は、対象道路と当該対象道路中の交通流を表現する交通情報を送信するのであり、交通流は、位置参照情報と、事象内容情報(渋滞、混雑など)によって表現される。
【0046】
また、一定方向とはたとえば、交通の方向性(交通流)を挙げているが、他にもノード列の方向やノードの属性(方向フラグ等)によるものも含まれる。
【0047】
ところが、事象情報受信装置20は、当該複雑交差点を基準として事故の事象情報を復元する場合、複雑交差点内のどの位置(ノード)が基準点なのかを把握することはできない。事象情報送信装置10は、図5(a)に示すような単純交差点の形で交差点の情報を有し、複雑交差点のどの位置に基準点を置くかの情報を有していないからである。また、受信装置側の複雑交差点内には複数のノードが存在し、複数のノードの該当する複数の地点が基準点となりうるからである。故に、既に述べたように、図6(b)のように、事故が不適切な位置に表現される事態が生じ得る。
【0048】
そこで、本実施形態においては、事象情報受信装置20側において、受信したデータの基準点が、複雑交差点内の複数の位置に設定され得る場合、すなわち、複雑交差点内の複数の位置に、基準点の候補となる複数の候補点が存在する場合、以下のような処理が行われる。
【0049】
事象情報受信装置20の位置特定部22は、受信したデータの基準点に相当する位置に複数の候補点が存在する場合、交通流中において最上流に位置する第1の候補点(第1のノード)または、交通流中において最下流に位置する第2の候補点(第2のノード)を選定し、基準点とする。この選定は交通流の方向と基準点と事象位置との位置関係から選定される。
【0050】
当該処理を経た後、位置特定部22は位置特定(デコード)を行い、事象の再現を行う。
【0051】
以下、例として複雑交差点において基準点になりえる候補点が複数存在する場合について説明する。
【0052】
事象情報受信装置20の位置特定部22は、受信したデータの基準点の交差点が複雑交差点であった場合、当該複雑交差点に存在する、例えば交通流中において最上流に位置する第1の候補点(第1のノード)と、交通流中において最下流に位置する第2の候補点(第2のノード)とを選定し、基準点とする。当該処理を経た後、位置特定部22は位置特定(デコード)を行い、事象の再現を行う。
【0053】
すなわち、図5(a)に示すように、事象情報送信装置10において生成される交通情報の基準点より上流側をαとし、基準点より下流側をβとする。また、事象内容情報として基準点から40m下流の位置に事故が設定されている。
【0054】
図5(a)の位置参照情報を受信した事象情報受信装置20の位置特定部22は、基準点の位置特定を行う。ここで特定された地点が、デジタル地図データベース24の第2のデジタル地図において、図5(b)に示すように、いわゆる複雑交差点に該当したと仮定する。この場合、複雑交差点には複数のノード、リンクが存在し、基準点が複数のノードに該当することとなる。
【0055】
そこで、位置特定部22は、複数の基準点のうち、上流側αの基準点として、複雑交差点に含まれる基準点のうち、最上流に位置する基準点Aを採用する(第1の候補点、ノードの選定)。さらに位置特定部22は、複数の基準点のうち、下流側βの基準点として、複雑交差点に含まれる基準点のうち、最下流に位置する基準点Bを採用する(第2の候補点、ノードの選定)。
【0056】
上記処理の結果、位置特定部22は、基準点Bに基づき、事故地点を、基準点Bよりも下流側に位置する交通流の所定位置に設定することができ、事象内容情報処理部23は、適切な位置に事故地点を表現することができる。したがって、表示部としての事象情報活用部25は、事象情報送信装置10が送信した元の事象情報と実質的に変わらない適切な位置に事象を表示することができる。
【0057】
なお、上記説明においては、基準点が複数の位置に設定される場合として、複雑交差点の例を挙げた。しかしながら、本発明は、受信装置側において、受信したデータの基準点が、複数の位置に設定され得る場合、適切な位置に基準点を設定し、適切な事象の発生位置を再現することを目的としている。基準点が複数の位置に設定される場合というのは、複雑交差点の例には限定されない。
【0058】
例えば、小さな橋梁などのように道路上の小さな構造物は、小縮尺(粗い)地図では一点で描写せざるを得ないが、大縮尺(詳細)地図ではある程度の幅(面積)をもって描写される。デジタル地図データを作成する際、小縮尺か大縮尺かどちらの地図図面を使用するかによって、橋梁を表す地点(構成点)の数は異なってくる。
【0059】
すなわち、受信装置の位置特定において、基準点になるべき候補が複数ある場合、そのうちの最上流と最下流の少なくとも2つの候補点(第1及び第2の候補点)を基準点として設定し、真の基準点として位置特定を行うような、受信装置、位置特定方法も本発明に含まれ得る。
【0060】
以上、本発明の各種実施形態を説明したが、本発明は前記実施形態において示された事項に限定されず、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者がその変更・応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明によれば、事象情報が実情とは異なる不適切な位置に表現されることがなくなり、ユーザの利便性が増す受信装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】事象情報送受信装置を含む事象情報伝達システムのブロック図
【図2】事象情報送信装置における位置参照情報の生成処理の手順を示す模式図
【図3】事象情報送信装置における位置参照情報の生成処理の手順を示す模式図
【図4】事象情報受信装置における位置参照情報の生成処理の手順を示す模式図
【図5】本実施形態における複雑交差点での基準点の設定および事象情報の設定を示す図
【図6】従来技術における複雑交差点での基準点の設定および事象情報の設定を示す図
【符号の説明】
【0063】
10 事象情報送信装置
11 事象情報入力部
12 位置情報変換部
13 デジタル地図データベース
14 送信部
15 受信部
16 事象内容情報変換部
20 交通情報受信装置
21 受信部
22 位置特定部
23 事象内容情報処理部
24 デジタル地図データベース
25 事象情報活用部
26 送信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象道路の位置を示す位置参照情報と、前記位置参照情報が示す基準点からの事象までの相対的な位置を表す相対情報とを受信する受信部と、
前記受信した位置参照情報と相対情報とを用いて自己のデジタル地図上で前記事象に対応する位置を特定する位置特定部と、を備えた受信装置であって、
前記位置特定部は、前記位置参照情報が示す基準点が、前記自己のデジタル地図上の複数の地点に該当する場合に、前記対象道路の一定方向に基づく最上流または最下流に該当する点を基準点に設定し、当該設定した基準点からの相対情報によって前記事象に対応する位置を特定する受信装置。
【請求項2】
請求項1記載の受信装置であって、
前記位置参照情報が示す基準点が、前記自己のデジタル地図上の複数の地点に該当する場合に、前記対象道路の一定方向に基づく最上流および最下流に該当する点をそれぞれ基準点に設定し、当該設定した基準点からの相対情報によって前記事象に対応する位置を特定する受信装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の受信装置であって、
前記複数の該当地点は、前記自己のデジタル地図上での交差点内に存在するノードである受信装置。
【請求項4】
コンピュータが、対象道路の位置を示す位置参照情報と、前記位置参照情報が示す基準点からの事象までの相対的な位置を表す相対情報とを用いてデジタル地図上で前記事象に対応する位置を特定し、前記位置参照情報が示す基準点が、前記デジタル地図上の複数の地点に該当する場合に、前記対象道路の交通流の方向に基づく最上流または最下流に該当する点を基準点に設定し、当該設定した基準点からの相対情報によって前記事象に対応する位置を特定する位置特定方法。
【請求項5】
請求項4記載の位置特定方法であって、
前記自己のデジタル地図上の複数の地点に該当する場合に、前記対象道路の交通流の方向に基づく最上流および最下流に該当する点をそれぞれ基準点に設定し、当該設定した基準点からの相対情報によって前記事象に対応する位置を特定する位置特定方法。
【請求項6】
請求項4または5記載の位置特定方法をコンピュータに実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−237114(P2010−237114A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−86974(P2009−86974)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、経済産業省、「情報大航海プロジェクト」委託研究、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】