説明

デジタル放送用ダイバーシティ受信装置

【課題】受信信号の電界強度とDU比に応じて帯域通過フィルタの特性を適切に選択できるデジタル放送用ダイバーシティ受信装置を提供すること。
【解決手段】帯域制限部6a,6bは、選局処理部4a,4bからの中間周波信号に対し通過帯域幅の異なる複数の通過特性を選択して帯域制限を施して出力する。制御部11は、視聴チャネルの電界強度Ed、およびこれに隣接する隣接チャネルの電界強度との比であるDU比を取得し、帯域制限部6a,6bの通過特性を選択する。電界強度Edが狭帯域通過特性を用いたときの所要電界強度よりも小さいときは広帯域通過特性を選択し、DU比が広帯域通過特性を用いたときの所要DU比よりも小さいときは狭帯域通過特性を選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地上デジタル放送などを良好な受信状態で受信するデジタル放送用ダイバーシティ受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地上デジタル放送等の放送システムでは、多数の番組が周波数分割されたチャネルによって伝送されている。地上デジタル放送ではおおよそ470MHzから770MHzのUHF帯の電波が使用され、周波数チャネルのチャネル間隔は6MHzである。放送地域によってどの周波数チャネルが使用されるかは様々であるが、互いに隣接する放送チャネルで放送サービスが実施される場合がある。この場合、ユーザが視聴を所望する周波数チャネルの電界強度に対して、隣接する周波数チャネルの電界強度が強大であると、この隣接チャネルの信号はユーザが視聴を所望するチャネルに対する妨害信号となり、所望チャネルの受信状態を劣化させることになる。
【0003】
デジタル放送用受信装置では、隣接妨害信号による受信状態の劣化を防止するため、所望の信号を通過させ隣接妨害信号を抑圧する中間周波信号用フィルタを備えている。例えば特許文献1には、中間周波信号用フィルタとして複数の特性を備え、妨害電波に応じてフィルタの特性を選定して用いることが開示されている。
【0004】
一方、自動車などの移動体において地上デジタル放送を受信する装置では、複数系統のチューナを備えるダイバーシティ受信装置が用いられている。例えば特許文献2には、放送地域をまたがって移動しても地域ごとの放送を継続して選局することを目的に、第1の受信系統を用いて所望のチャネルの放送を視聴しつつ、第2の受信系統を用いて現在視聴しているチャネル以外の視聴可能チャネルをサーチする方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−218713号公報
【特許文献2】特開2004−320406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
デジタル放送の受信状態を示す指標として、受信装置に入力する受信信号の電界強度EとDU比がある。ここでDU比とは、受信希望信号(Desired)の電界強度と妨害信号(Undesired)の電界強度の比であり、妨害信号の電力が相対的に大きくなるとDU比が小さくなる。電界強度EやDU比が小さくなると、復調部からの出力信号に誤りが発生することになる。また、受信装置の性能を示す指標として「所要電界強度」と「所要DU比」がある。所要電界強度と所要DU比は、復調部出力信号に含まれる誤りをエラーフリーとして許容される値以下にできる最小の電界強度とDU比であり、所要電界強度と所要DU比の値が小さいほど受信装置の性能は良いことになる。
【0007】
受信装置には、所要DU比を改善するため、中間周波信号用の帯域制限フィルタであるバンドパスフィルタが設けられている。通過帯域幅の狭い帯域制限フィルタ(狭帯域通過フィルタ)を用いる場合、希望信号の周波数に近い妨害信号を大きく抑圧し、所要DU比を大幅に小さくすることができる。しかし、希望信号の一部も抑圧されてしまうため、所要電界強度を大きくしてしまう。一方、通過帯域幅の広い帯域制限フィルタ(広帯域通過フィルタ)を用いる場合、希望信号の周波数に近い妨害信号の抑圧度が小さく、所要DU比の改善量は小さいが、希望信号の抑圧は少なく、所要電界強度は変わらない。このように、中間周波信号用の帯域制限フィルタの通過帯域幅は、受信装置の所要電界強度と所要DU比の性能に影響を与えるものであるから、入力する受信信号の電界強度EとDU比の状態に合わせて適切に選定せねばならない。
【0008】
特許文献1に開示されるデジタル放送受信機は、送信周波数のオフセットから隣接妨害信号の有無を判断し、妨害信号がある場合には狭帯域通過フィルタを選択し、妨害信号がない場合には広帯域通過フィルタを選択するものである。この場合、受信信号の電界強度の状態は全く考慮されておらず、フィルタを最適に選択することができない。例えば、受信信号の電界強度が所要電界強度に対して余裕がない場合でも、妨害信号がある場合には常に狭帯域通過フィルタを選択することになり、所要電界強度を満足しない場合が生じる。また、隣接妨害信号の有無の判断を送信周波数のオフセットにより行っており、実際に受信した信号のDU比に基づいている訳ではないので、確実とは言えない。
【0009】
また特許文献2に開示されるダイバーシティ受信装置では、第2の受信系統を用いて他のチャネル、例えば隣接妨害信号となり得るチャネルの受信状況を知ることができる。しかしながら、移動体での自動選局を目的としているため、受信中の希望信号に対する隣接妨害信号を抑圧するためにDU比を算出することや、DU比が劣化した場合にフィルタを切り替えるなどの技術は必要ではなく、何ら考慮されていない。
【0010】
本発明の目的は、受信信号の電界強度とDU比に応じて帯域通過フィルタの特性を適切に選択できるデジタル放送用ダイバーシティ受信装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、第1のチューナ部と、第2のチューナ部と、復調部とを備えるデジタル放送用ダイバーシティ受信装置であって、前記第1のチューナ部と前記第2のチューナ部は、それぞれ、アンテナで受信した高周波信号を中間周波信号に周波数変換して選局を行なう選局処理部と、該中間周波信号に対し通過帯域幅の異なる複数の通過特性から選択された通過特性にて帯域制限を施して出力する帯域制限部とを有し、前記復調部は、前記第1のチューナ部と前記第2のチューナ部から出力される中間周波信号の復調とダイバーシティ処理を行なうとともに、前記帯域制限部に対しその通過特性を選択するための制御信号を出力する制御部を有する。前記制御部は、前記第1のチューナ部または前記第2のチューナ部で受信する視聴チャネルの電界強度Ed、および該視聴チャネルの電界強度と該視聴チャネルに隣接する隣接チャネルの電界強度の比であるDU比を取得し、取得した電界強度EdおよびDU比に基づき前記帯域制限部の通過特性を選択する。
【0012】
好ましくは、前記帯域制限部は、通過帯域幅の広い第1の通過特性と、該第1の通過特性よりも通過帯域幅の狭い第2の通過特性を有し、前記制御部は、前記取得した電界強度Edが前記第2の通過特性を用いたときの所要電界強度よりも小さいときは前記第1の通過特性を選択し、前記取得したDU比が前記第1の通過特性を用いたときの所要DU比よりも小さいときは前記第2の通過特性を選択する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、受信状態が変化しても常に良好な品質の信号を出力するデジタル放送用ダイバーシティ受信装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明によるデジタル放送用ダイバーシティ受信装置の一実施例を示すブロック図。
【図2】復調処理部10の内部構成の一例を示す図。
【図3】広帯域通過フィルタの動作例を示す図。
【図4】狭帯域通過フィルタの動作例を示す図。
【図5】受信装置に入力する信号の電界強度とDU比の許容範囲を示す図。
【図6】本実施例におけるフィルタ選択制御を示すフローチャート。
【図7】図6における隣接妨害信号の電界強度の取得工程を示すフローチャート。
【図8】図6におけるフィルタ切替工程を詳細に示すフローチャート。
【図9】本発明によるデジタル放送用ダイバーシティ受信装置の他の実施例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は、本発明によるデジタル放送用ダイバーシティ受信装置の一実施例を示すブロック図である。デジタル放送用ダイバーシティ受信装置1は、2つの受信系統、すなわちチューナ部3aとチューナ部3bとを備える。
【0017】
まず第1の受信系統であるチューナ部3aの構成について説明する。アンテナ2aより入力された高周波信号は、選局処理部4aに入力される。選局処理部4aは、高周波信号を中間周波信号に周波数変換する選局処理を行ない、スイッチ手段5aへ中間周波信号を出力する。スイッチ手段5aおよびスイッチ手段7aは、後段の制御部11からの制御信号に従い、通過帯域幅の広い広帯域通過フィルタ6a−1を通過する経路(1)、もしくは通過帯域幅の狭い狭帯域通過フィルタ6a−2を通過する経路(2)のいずれかを選択する。
【0018】
スイッチ手段5aおよびスイッチ手段7aにより経路(1)が選択された場合、選局処理部4aから出力された中間周波信号は、広帯域通過フィルタ6a−1により周波数帯域が制限され、利得制御部8aに入力される。スイッチ手段5aおよびスイッチ手段7aにより経路(2)が選択された場合、選局処理部4aから出力された中間周波信号は、狭帯域通過フィルタ6a−2により周波数帯域が制限され、利得制御部8aに入力される。
【0019】
利得制御部8aの利得は、後段の復調処理部10からの利得制御信号(図示せず)によって制御され、利得制御部8aが出力する中間周波信号は復調処理部10に入力される。復調処理部10の安定な動作のためには、入力される中間周波信号の振幅を一定に保つ必要がある。そこで、復調処理部10において、入力された中間周波信号を検波し、その振幅が一定の強度となるように利得制御部8aの利得を制御するAGC(Automatic Gain Control)回路を構成している。
【0020】
次に第2の受信系統であるチューナ部3bの構成について説明する。アンテナ2bより入力された高周波信号は、選局処理部4bに入力される。選局処理部4bは、高周波信号を中間周波信号に周波数変換する選局処理を行ない、スイッチ手段5bへ中間周波信号を出力する。スイッチ手段5bおよびスイッチ手段7bは、後述する制御部11からの制御信号に従い、広帯域通過フィルタ6b−1を通過する経路(3)、もしくは狭帯域通過フィルタ6b−2を通過する経路(4)のいずれかを選択する。
【0021】
スイッチ手段5bおよびスイッチ手段7bにより経路(3)が選択された場合、選局処理部4bから出力された中間周波信号は、広帯域通過フィルタ6b−1により周波数帯域が制限され、利得制御部8bに入力される。スイッチ手段5bおよびスイッチ手段7bにより経路(4)が選択された場合、選局処理部4bから出力された中間周波信号は、狭帯域通過フィルタ6b−2により周波数帯域が制限され、利得制御部8bに入力される。
【0022】
利得制御部8bは利得制御部8aと同様に、後段の復調処理部10からの利得制御信号(図示せず)に従いAGC制御が実施され、一定の振幅の中間周波信号を復調処理部10に出力する。
【0023】
復調部9は、復調処理部10および制御部11を含む構成となっている。ダイバーシティ受信装置では、通常受信時には、2つの受信系統により同一周波数にある高周波信号を選局する。この場合、復調処理部10は、上記2系統のチューナ部3aおよびチューナ部3bから入力された中間周波信号を復調処理し、さらに最大比合成によるダイバーシティ処理を行ない、処理後のデジタル信号を後段のバックエンド部(図示せず)に出力する。バックエンド部では、デジタル圧縮された信号を伸長し、映像信号および音声信号としてディスプレイやスピーカに出力する。
【0024】
さらに復調部9は、チューナ部3a,3bで受信している高周波信号の電界強度と、視聴チャネルと隣接チャネル(隣接妨害信号)の電界強度の比(DU比)を測定して、それらの受信状態に応じて前記した広帯域通過フィルタ6a−1、6b−1、または狭帯域通過フィルタ6a−2、6b−2を選択する構成としている。
【0025】
復調処理部10は、チューナ部3aおよびチューナ部3bの両系統に入力する信号の電界強度情報を取得して、制御部11に出力する。またDU比を取得する際には、ダイバーシティ受信装置の有する2つの受信系統を使い分けて使用する。すなわち、例えばチューナ部3aはユーザが視聴中の高周波信号(希望信号)を受信し、チューナ部3bは希望信号に隣接する周波数チャネルの高周波信号(隣接妨害信号)を受信する状態に切り替える。そして、両者から希望信号の電界強度と隣接妨害信号の電界強度を取得して、制御部11に出力する。制御部11は、希望信号の電界強度と隣接妨害信号の電界強度の比であるDU比を算出する。そして、取得した希望信号の電界強度と算出したDU比の両方の値に基づき、最適な帯域通過フィルタを選択するように、スイッチ手段5a、7a、5b、7bに制御信号を出力する。
【0026】
図2は、復調処理部10の内部構成の一例を示す図である。電界強度測定部12a,12bは、それぞれ、チューナ部3a,3bの両系統に入力する高周波信号の電界強度を求め、制御部11へ出力する。そのため、まずチューナ部3a,3bから電界強度測定部12a,12bに出力された中間周波信号の電界強度を測定する。そして、現在接続中の帯域通過フィルタ6a−1、6b−1、6a−2、6b−2のフィルタゲインと、復調処理部10が出力する利得制御部8a,8bへの利得制御情報を用いて、測定した電界強度を逆補正することでチューナ部3a,3bへの入力信号の電界強度を求めることができる。
【0027】
合成部13は、通常受信時には2つのチューナ部3a,3bから出力された中間周波信号に対し、復調処理および最大比合成によるダイバーシティ処理を施す。一方、DU比取得の期間においては、2つのチューナ部3a,3bのうち視聴チャネルを選局しているチューナ部(例えば3a)が出力する中間周波信号のみに復調処理を施し、バックエンド部へ出力する。
【0028】
次に、広帯域通過フィルタ6a−1、6b−1と狭帯域通過フィルタ6a−2、6b−2の動作を比較して説明する。
図3は、広帯域通過フィルタの動作例を示す図である。広帯域通過フィルタ6a−1、6b−1の周波数特性をフィルタゲイン21として示す。そして、フィルタ通過前後の希望信号30,31、および希望信号に隣接するチャネルの隣接妨害信号40,41の電界強度を示す。隣接妨害信号には、希望信号から見て低い周波数に位置する妨害信号(下隣接妨害信号)と、希望信号から見て高い周波数に位置する妨害信号(上隣接妨害信号)とが存在するが、ここではその両方を示している。広帯域通過フィルタ6a−1、6b−1を使用した場合、通過前後の希望信号30,31はその帯域幅に渡り強度が減衰しないので、電界強度は劣化しない。一方隣接妨害信号40,41は、帯域幅の大部分の強度が抑圧されるものの希望信号31に近い部分41’は十分抑圧されずに残ってしまう。その結果、希望信号31に対する隣接妨害信号41のDU比の改善は不十分となる。
【0029】
図4は、狭帯域通過フィルタの動作例を示す図である。狭帯域通過フィルタ6a−2、6b−2の周波数特性をフィルタゲイン22として示す。そして、フィルタ通過前後の希望信号30,32、および希望信号に隣接するチャネルの隣接妨害信号40,42の電界強度を示す。狭帯域通過フィルタ6a−2、6b−2を使用した場合、通過前後の隣接妨害信号40,42はその帯域幅に渡り強度が抑圧されるので、所望のDU比の改善が得られる。一方希望信号30,32は、隣接妨害信号42に近い部分32’の強度が減衰してしまう。その結果、希望信号32の電界強度の劣化を招くことになる。
【0030】
図5は、受信装置に入力する信号の電界強度とDU比の許容範囲を示す図である。横軸はチューナ部に入力する希望信号の電界強度Ed、縦軸はDU比であり、広帯域通過フィルタおよび狭帯域通過フィルタを使用したときの受信可能な範囲をそれぞれ示している。受信可能な範囲とは、復調処理後の出力信号に含まれる誤りがエラーフリーとして許容される値以下となる範囲であり、そのための電界強度EdとDU比の最小値(閾値)が所要電界強度と所要DU比である。ここでは所要電界強度と所要DU比はそれぞれ2つの閾値を有しており、所要電界強度をE1,E2(ただしE1<E2)、所要DU比をDU1,DU2(ただしDU1<DU2)とする。
【0031】
広帯域通過フィルタ6a−1、6b−1使用時は、受信可能範囲の閾値は所要電界強度がE1、所要DU比がDU2である。一方狭帯域通過フィルタ6a−2、6b−2使用時は、受信可能範囲の閾値は所要電界強度がE2、所要DU比がDU1である。このように使用するフィルタにより閾値が異なるのは、図3と図4で述べたようにフィルタの動作特性が異なるからである。すなわち、広帯域通過フィルタは狭帯域通過フィルタと比べ、帯域通過フィルタによるDU比の改善が劣るため、その分高い所要DU比(DU2)に設定している。一方、狭帯域通過フィルタは広帯域通過フィルタと比べ、希望信号の電界強度Edの劣化を招くため、その分高い所要電界強度(E2)に設定している。
【0032】
本実施例では、受信信号の電界強度とDU比を検知し、受信状況に応じて広帯域通過フィルタもしくは狭帯域通過フィルタを選択して使用する。これにより、1つのフィルタに固定して使用する場合に比べ、復調処理後の出力信号に含まれる誤りを低減し、受信可能とする範囲を広くできる。つまり、図4において、広帯域通過フィルタを用いることで領域(1)の受信状況を救済し、狭帯域通過フィルタを用いることで領域(2)の受信状況を救済する。その結果、受信可能な領域を(0)+(1)+(2)に拡大させることができる。特に、電界強度とDU比の両方の受信状況に基づいてフィルタを選択するので、DU比のみに基づく場合と比較し、バランスのとれた最適な受信性能を実現することができる。
【0033】
図6は、本実施例におけるフィルタ選択制御を示すフローチャートである。フィルタ選択制御は、復調部9の制御部11が主体に行う。以下ステップ順に説明する。
S101では、受信装置が通常の受信状態となるようにチューナ部3a,3b、復調部9の状態を初期化する。
S102では、各スイッチ手段5a,7a,5b,7bを介し、広帯域通過フィルタ6a−1、6b−1を選択する。
S103では、チューナ部3a,3bにより視聴するチャネルを選局する。この段階では、チューナ部3a,3bは、同一周波数にある高周波信号(希望信号)を選局する。復調処理部10は、各チューナ部が出力する中間周波信号を復調し、最大比合成によるダイバーシティ処理を行ない、デジタル信号をバックエンド部に出力する。
【0034】
S104では、復調処理部10により希望信号の電界強度Edを取得する。この電界強度Edは、チューナ部3aまたは3bに入力する高周波信号の強度である。そして、取得した希望信号の電界強度Edを図5に示した所要電界強度E2と比較判定する。
判定の結果、希望信号の電界強度Edが所要電界強度E2以上の場合には(Ed≧E2、図5の領域(0)(2)に相当)、S105へ進む。判定の結果、所要電界強度E2よりも小さい場合には(Ed<E2、図5の領域(1)(3)に相当)、現在の広帯域通過フィルタの使用を継続し、S104に戻る。
【0035】
S105では、復調処理部10により隣接妨害信号の電界強度Euを取得する。S105の詳細処理については図7で後述する。
S106では、制御部11は希望信号電界強度Edと隣接妨害信号電界強度Euとの比からDU比を算出する(DU比=Ed/Eu)。そして、算出したDU比を図5に示した所要DU比(DU2)と比較判定する。
判定の結果、算出したDU比が所要DU比(DU2)より小さい場合には(DU比<DU2、図5の領域(2)に相当)、S107へ進む。判定の結果、所要DU比(DU2)以上の場合には(DU比≧DU2、図5の領域(0)に相当)、現在の広帯域通過フィルタの使用を継続し、S104に戻る。
【0036】
S107では、各スイッチ手段5a,7a,5b,7bを介し、広帯域通過フィルタ6a−1、6b−1から狭帯域通過フィルタ6a−2、6b−2へ切替える。S107の詳細処理については図8で後述する。
引き続き、狭帯域通過フィルタ6a−2、6b−2使用時にも、希望信号の電界強度およびDU比に基づきフィルタ切替処理を行なう。
【0037】
S108では、復調処理部10により希望信号の電界強度Edを取得する。取得した希望信号の電界強度Edを図5に示した所要電界強度E2と比較判定する。
判定の結果、希望信号の電界強度Edが所要電界強度E2よりも小さい場合には(Ed<E2、図5の領域(1)(3)に相当)、S109へ進む。判定の結果、所要電界強度E2以上の場合には(Ed≧E2、図5の領域(0)(2)に相当)、現在の狭帯域通過フィルタの使用を継続し、S108に戻る。
【0038】
S109では、復調処理部10により隣接妨害信号の電界強度Euを取得する。S109の詳細処理については図7で後述する。
S110では、制御部11は希望信号電界強度Edと隣接妨害信号電界強度Euとの比からDU比を算出する(DU比=Ed/Eu)。そして、算出したDU比を図5に示した所要DU比(DU2)と比較判定する。
判定の結果、算出したDU比が所要DU比(DU2)以上の場合には(DU比≧DU2、図5の領域(1)に相当)、S111へ進む。判定の結果、所要DU比(DU2)より小さい場合には(DU比<DU2、図5の領域(3)に相当)、現在の狭帯域通過フィルタの使用を継続し、S108に戻る。
【0039】
S111では、各スイッチ手段5a,7a,5b,7bを介し、狭帯域通過フィルタ6a−2、6b−2から広帯域通過フィルタ6a−1、6b−1へ切替える。S111の詳細処理については図8で後述する。
【0040】
以上のフィルタ選択制御によれば、受信状況が図5の領域(1)の場合は広帯域通過フィルタを、領域(2)の場合は狭帯域通過フィルタを使用することになり、それぞれ誤り低減のために最適なフィルタを選択することができる。なお、領域(0)の場合は双方のフィルタを使用することになるが、いずれの場合でも出力信号に含まれる誤りは許容値以下となるので問題ない。
【0041】
図7は、図6における隣接妨害信号の電界強度の取得工程(S105およびS109)を詳細に示すフローチャートである。ここでは、チューナ部3aが希望信号を受信し、チューナ部3bが隣接妨害信号を受信するものとする。
S201では、合成部13のダイバーシティ受信を解除し、チューナ部3aから出力される中間周波信号のみを視聴用希望信号として復調する状態へ切り替える。
【0042】
S202では、視聴に使用しないチューナ部3bにて希望信号より低い周波数側の下隣接妨害信号を選局する。
S203では、強度測定部12bにて下隣接妨害信号の電界強度Eu(low)を測定し、測定した電界強度Eu(low)を制御部11へ出力する。
【0043】
S204では、視聴に使用しないチューナ部3bにて希望信号より高い周波数側の上隣接妨害信号を選局する。
S205では、強度測定部12bにて上隣接妨害信号の電界強度Eu(high)を測定し、測定した電界強度Eu(high)を制御部11へ出力する。この後制御部11は、測定された下隣接妨害信号および上隣接妨害信号の電界強度Eu(low),Eu(high)を用いてDU比を算出する(前記S106およびS110)。
【0044】
S206では、チューナ部3bにて視聴中の希望信号を選局するように切り替える。
S207では、2つのチューナ部3a,3bから出力される中間周波信号を用いて、合成部13はダイバーシティ受信を再開する。
【0045】
以上の工程により2つのチューナ部3a,3bを使い分けることで、隣接妨害信号の電界強度を効率良く取得することができる。なお、上記S201とS207の処理を行なうことで、視聴しない隣接妨害信号を復調及びダイバーシティ合成してしまう誤動作を避けることができる。
この例では、チューナ部3aで希望信号を受信し、チューナ部3bで隣接妨害信号を受信するようにしたが、両者の役割を入れ替えても構わない。
【0046】
図8は、図6におけるフィルタ切替工程(S107およびS111)を詳細に示すフローチャートである。ここでは広帯域通過フィルタから狭帯域通過フィルタへ切り替える場合を説明するが、逆の切替の場合も同様である。
S301では、チューナ部3bにおいて、スイッチ手段5b,7bを介して広帯域通過フィルタ6b−1から狭帯域通過フィルタ6b−2への切替を行なう。
【0047】
S302では、復調処理部10はチューナ部3bから入力される中間周波信号の同期確立判定を行なう。同期確立判定とは、復調処理部10に入力される中間周波信号の復調可否を判定することである。チューナ部3bの同期が確立したら、S303へ進む。
S303では、チューナ部3aにおいて、スイッチ手段5a,7aを介して広帯域通過フィルタ6a−1から狭帯域通過フィルタ6a−2への切替を行なう。
【0048】
このようにフィルタ切替処理をS301からS303のステップに分けて行なうことで、チューナ部3aとチューナ部3bが同時にフィルタ切替動作に入ることがない。従って中間周波信号の瞬断はなく、復調処理部10が出力するデジタル信号の誤り発生を防止することができる。
この例では、2つのチューナ部3a,3bにおいて、チューナ3bのフィルタ切替を先に行なったが、チューナ部3aのフィルタ切替を先に行なっても構わない。
【0049】
本実施例によれば、2系統ある受信信号経路のうち一方を使用してDU比の取得を行ない、受信信号の電界強度とDU比に基づき広帯域通過フィルタもしくは狭帯域通過フィルタを選択するようにしたので、常に最良の受信性能を保持するデジタル放送用ダイバーシティ受信装置を提供できる。
【実施例2】
【0050】
図9は、本発明によるデジタル放送用ダイバーシティ受信装置の他の実施例を示すブロック図である。本実施例は、実施例1(図1)におけるスイッチ手段5a,5b,7a,7bと、広帯域通過フィルタ6a−1,6b−1と、狭帯域通過フィルタ6a−2,6b−2をなくし、代わりにチューナ部3aに帯域制限部14a、チューナ部3bに帯域制限部14bを配する構成としている。図1と同等の機能を有する機能ブロックには同一の符号を記し、説明を省略する。
【0051】
帯域制限部14aおよび14bは、制御部11からの制御信号により通過特性が変化する機能を備えており、広帯域通過フィルタもしくは狭帯域通過フィルタの2つの状態を有する。そのため帯域制限部14aおよび14bは、例えば電圧により容量が変化する可変容量ダイオードや電圧により誘導係数の変化するインダクタ等により構成される。この構成によれば、広帯域通過フィルタと狭帯域通過フィルタとの間の状態切替は経路の切替を必要としないため、中間周波信号は瞬断することなく復調部9に提供される。
【0052】
復調処理部10は、チューナ部3aとチューナ部3bへ入力される信号の電界強度を測定し、制御部11は、希望信号の電界強度Edおよび隣接妨害信号とのDU比を算出し、帯域制限部14aおよび14bに制御信号を出力する。
【0053】
第1の受信系統であるチューナ部3aの動作について説明する。アンテナ2aより入力された高周波信号は、選局処理部4aに入力される。選局処理部4aは、高周波信号に選局処理を行ない、帯域制限部14aに中間周波信号を出力する。選局処理部4aから出力された中間周波信号は、帯域制限部14aの状態により広帯域通過、もしくは狭帯域通過の特性で帯域制限され、利得制御部8aに入力される。利得制御部8aにより強度が調整された中間周波信号は復調処理部9に入力される。
【0054】
次に第2の受信系統であるチューナ部3bの動作について説明する。アンテナ2bより入力された高周波信号は、選局処理部4bに入力される。選局処理部4bは、高周波信号に選局処理を行ない、帯域制限部14bに中間周波信号を出力する。選局処理部4bから出力された中間周波信号は、帯域制限部14bの状態により広帯域通過、もしくは狭帯域通過の特性で帯域制限され、利得制御部8bに入力される。利得制御部8bにより強度調整された中間周波信号は復調処理部9に入力される。復調処理部10の動作は実施例1と同様である。
【0055】
本実施例におけるフィルタ制御動作は、実施例1と同様に、受信信号の電界強度とDU比を検知し、受信状況に応じて帯域制限部14aおよび14bを広帯域通過フィルタもしくは狭帯域通過フィルタの状態に切替えるものである。そのとき、2つの受信系統の一方で隣接妨害信号を受信しDU比の検知を行なう。ただし、帯域制限部14a,14bによるフィルタ状態の切替では伝送する中間周波信号の瞬断が起こらないため、図8に示す同期確立の工程を施す必要はなくなる。
【0056】
本実施例では、帯域制限部14a,14bは広帯域通過フィルタと狭帯域通過フィルタの2つの状態をとり得るものとしたが、さらに通過特性の種類を増やし通過帯域幅をほぼ連続的に変化させることも可能である。これによれば、受信状況に応じてさらにきめ細かにフィルタの最適化を図ることができ、より受信性能の優れたデジタル放送用ダイバーシティ受信装置を提供できる。
【0057】
なお各実施例においては、復調処理部10はダイバーシティ処理を行うものとして説明したが、チューナ3aおよびチューナ3bにそれぞれ独立した復調処理部を接続してもよい。すなわち、2系統ある信号受信経路のうち一方を使用してDU比の検知を行ない、受信信号の状態に合わせてチューナ部の帯域制限特性を制御することで、常に最良の受信状態を保つデジタル放送用受信装置を提供できる。
【符号の説明】
【0058】
1・・・デジタル放送用ダイバーシティ受信装置、
2a,2b・・・アンテナ、
3a、3b・・・チューナ部、
4a,4b・・・選局処理部、
5a,5b,7a,7b・・・スイッチ手段、
6a−1,6b−1・・・広帯域通過フィルタ、
6a−2,6b−2・・・広帯域通過フィルタ、
8a,8b・・・可変利得制御部、
9・・・復調部、
10・・・復調処理部、
11・・・制御部、
12a,12b・・・電界強度測定部、
13・・・合成部、
14a,14b・・・帯域制限部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のチューナ部と、第2のチューナ部と、復調部とを備えるデジタル放送用ダイバーシティ受信装置において、
前記第1のチューナ部と前記第2のチューナ部は、それぞれ、アンテナで受信した高周波信号を中間周波信号に周波数変換して選局を行なう選局処理部と、該中間周波信号に対し通過帯域幅の異なる複数の通過特性から選択された通過特性にて帯域制限を施して出力する帯域制限部とを有し、
前記復調部は、前記第1のチューナ部と前記第2のチューナ部から出力される中間周波信号の復調とダイバーシティ処理を行なうとともに、前記帯域制限部に対しその通過特性を選択するための制御信号を出力する制御部を有し、
前記制御部は、前記第1のチューナ部または前記第2のチューナ部で受信する視聴チャネルの電界強度Ed、および該視聴チャネルの電界強度と該視聴チャネルに隣接する隣接チャネルの電界強度の比であるDU比を取得し、取得した電界強度EdおよびDU比に基づき前記帯域制限部の通過特性を選択することを特徴とするデジタル放送用ダイバーシティ受信装置。
【請求項2】
請求項1に記載のデジタル放送用ダイバーシティ受信装置において、
前記隣接チャネルの電界強度を取得する場合、前記復調部は前記第1のチューナ部と前記第2のチューナ部からの信号を最大比合成するダイバーシティ処理を停止し、前記第1のチューナ部にて視聴チャネルを選局し該第1のチューナ部の出力から視聴チャネルの電界強度を取得するとともに、前記第2のチューナ部にて視聴チャネルに隣接する隣接チャネルを選局し該第2のチューナ部の出力から隣接チャネルの電界強度を取得することを特徴とするデジタル放送用ダイバーシティ受信装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のデジタル放送用ダイバーシティ受信装置において、
前記帯域制限部は、通過帯域幅の広い第1の通過特性と、該第1の通過特性よりも通過帯域幅の狭い第2の通過特性を有し、
前記制御部は、前記取得した電界強度Edが前記第2の通過特性を用いたときの所要電界強度よりも小さいときは前記第1の通過特性を選択し、前記取得したDU比が前記第1の通過特性を用いたときの所要DU比よりも小さいときは前記第2の通過特性を選択することを特徴とするデジタル放送用ダイバーシティ受信装置。
【請求項4】
請求項3に記載のデジタル放送用ダイバーシティ受信装置において、
前記帯域制限部が選択する通過特性を前記第1の通過特性と前記第2の通過特性との間で切替える場合、前記第1、第2のチューナ部のいずれか一方のチューナ部における帯域制限部の切替えを先行して行い、
切り替えが行なわれたチューナ部から出力される中間周波信号が前記復調部で復調可能となった後に、他方のチューナ部における帯域制限部の切替えを行うことを特徴とするデジタル放送用ダイバーシティ受信装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載のデジタル放送用ダイバーシティ受信装置において、
前記帯域制限部は、前記通過帯域幅が連続的に変化可能な通過特性を有することを特徴とするデジタル放送用ダイバーシティ受信装置。
【請求項6】
第1のチューナ部と、第2のチューナ部と、復調部とを備えるデジタル放送用ダイバーシティ受信装置において、
前記第1のチューナ部と前記第2のチューナ部は、それぞれ、アンテナで受信した高周波信号を中間周波信号に周波数変換する選局処理を行なう選局処理部と、該選局処理部から出力される中間周波信号が通過する経路として第1の経路もしくは第2の経路を選択するスイッチ手段と、該第1の経路上に配置され前記中間周波信号に第1の帯域通過幅にて帯域制限を施す第1のフィルタと、第2の経路上に配置され前記中間周波信号に第2の帯域通過幅にて帯域制限を施す第2のフィルタと、該第1のフィルタもしくは該第2のフィルタから出力される中間周波信号を利得調整して出力する利得制御部を備え、
前記復調部は復調処理部と制御部とを含み、該復調処理部は、前記第1のチューナ部と前記第2のチューナ部の前記利得制御部から出力される2系統の中間周波信号を復調処理し、最大比合成によるダイバーシティ処理を行ないデジタル信号としてバックエンド部に出力するとともに、前記第1のチューナ部と前記第2のチューナ部が選局している高周波信号の各々の電界強度を取得して前記制御部に出力し、該制御部は、視聴に使用する希望周波数チャネル信号の電界強度Ed、および該希望周波数チャネル信号の電界強度と該希望周波数チャネル信号に隣接する隣接周波数チャネル信号の電界強度との比であるDU比を取得し、取得した電界強度EdおよびDU比に基づき前記スイッチ手段に対して前記第1の経路もしくは前記第2の経路を選択する制御信号を出力することを特徴とするデジタル放送用ダイバーシティ受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−120006(P2011−120006A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−275662(P2009−275662)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(000153535)株式会社日立メディアエレクトロニクス (452)
【Fターム(参考)】