説明

デジタル通信ケーブル、データハーネスおよびこれにアナログ部品を接続するシステム

【課題】埃の多い環境でも汚染されない軽量なデータハーネスを製造する。
【解決手段】DA/AD信号変換器104は、デジタル入力/出力106が受けたデータ信号を、周知の変換技術を使って、デジタル信号からアナログ信号に変換し、アナログ入力/出力108に出力する。このアナログ入力/出力108は、アナログ・コネクタピン110に接続されており、このアナログ・コネクタピン110は、データが供給される部品のデータポートへプラグ接続される。汚染されることを防ぐために、接続コネクタ・ケーシング112が、DA/AD信号変換器の全体を覆うとともに、デジタル通信ケーブル102およびアナログ・コネクタピン110の一部を覆っている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物に用いられる軽量な配線用データハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
現代の乗物用途の多くが、通常の運転において、電子センサおよび電子コントローラを利用している。一般の乗物において、機器の多くが、指定された機能を行うためにセンサや他の機器からのデータを要求する。機器間のデータの伝達を容易にするために、ほとんどの乗物が、電気ハーネスと呼ばれる導線および接続コネクタの束を使用している。ハーネスは、一般に銅線で形成された非常に多くのデータラインを含み、重くなることがある。このような構成において、各データラインは、各端部に接続コネクタを備えている。この接続コネクタを乗物の機器にプラグ接続することによって、データを、ハーネスを介して、データラインの反対側の端部に接続された機器へ送ることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
現在の電気ハーネスは、アナログデータ通信を利用しているが、導線は、一度に単一のアナログ信号しか送れないので、各機器について、ハーネス内で専用の導線が必要とされる。アナログ信号が使用されている理由は、ほとんどのセンサおよび他の機器が、アナログデータを要求し、あるいはアナログ測定を行うからである。アナログ信号を使用する場合、すべての信号を適切に処理しかつその信号を必要としている機器へ導くために、大型で複雑な全機能デジタルエンジン制御(FADEC)が必要になるので、ハーネスの重量が増加してしまう。
【0004】
ハーネスの重量を減らすために、機器間にデジタル通信を利用する試みがなされている。しかし、これらの試みは、必要なセンサおよび他の機器がデジタル通信に対応していないことを少なくとも一つの理由として、たいていは、失敗している。
【0005】
さらに、電気ハーネスは、使用される典型的な環境(すなわち、乗物エンジン)に対して、広範囲の条件変化に対処できるように丈夫に設計されている。ハーネスを丈夫にするための材料が追加されると、重量がさらに増加し、従って、ハーネスが過剰に重くなってしまうことがある。航空機などのいくつかの乗物の用途においては、総重量を減らすことは、設計上の目標の一つであり、現在の電気ハーネスにおける過剰な重量は、この目標に反している。
【0006】
電気ハーネスの重量をさらに減らすために、銅線を使用して電子データを送る代わりに、ハーネスに光ファイバケーブルを使用して、光データ通信を行う試みがなされている。従来の光ハーネスは、データ通信用光ファイバケーブルを備えるとともに、この光ファイバケーブルの各端部を終端させる光接続コネクタを備えている。この光接続コネクタは、変換器を組み込んでいる部品に接続され、この変換器は、光データを、デバイスによって使用され得る電子データに変換する。あるいは、光接続コネクタは、独立した信号変換器に接続され、この信号変換器がさらに機器に接続される。
【0007】
光ファイバシステムは、また、電気システムと比較して、壊れやすく、接続が汚染されやすい。汚れや埃の一部が光ファイバ接続へ入り込むと、ケーブルから部品へ送信中の光信号の全体または一部が遮断され、送信中のデータの読み取りが困難になることがある。この理由により、現在の光ファイバ・ハーネスは、自動車あるいは航空機用の電気ハーネスなどの「汚れた」環境での使用には適していない。この汚染の問題に対処して、接続コネクタを丈夫にするための多くの試みがなされているが、光接続の壊れやすい性質のために、それらの試みは成功していない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のデジタルデータハーネスは、アナログセンサとインタフェースを行う信号指定調整回路(signal specific conditioning circuit)を使用する。この信号指定調整回路は、アナログ信号をデジタル信号に変換し、変換されたデジタル信号は、デジタルデータハーネスを介して送信される。
【0009】
さらに本発明のデジタル・接続コネクタは、デジタル通信ケーブルを終端させるとともに、デジタル−アナログ/アナログ−デジタル(DA/AD)信号変換器を備えている。また、この接続コネクタは、DA/AD信号変換器のアナログ側から延びている一組の電気接続ピンを有する。ケーシングが、ケーブルの一部、変換器の全体、およびアナログ・コネクタピンの各々の一部、を覆って絶縁するように、接続コネクタを取り囲んでいる。
【0010】
さらに本発明のデジタル・ハーネスは、デジタルデータ通信ラインを利用して、データ通信を行う。これらの通信ラインの各々には、デジタルデータ通信ラインを終端させる接続コネクタが設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】デジタルデータ通信ハーネスの一例を概略的に示す図。
【図2】アナログデータをデジタルデータに変換するセンサ・インタフェースを概略的に示す図。
【図3】光−電気信号変換器が組み込まれた接続コネクタの一例を概略的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、データハーネスを介したデジタル通信を使用するシステムの一例を示す。このシステムは、複数の標準のアナログセンサ302を備えている。アナログセンサ302の各々は、アナログ−デジタル変換器404(図2に示す)に接続されており、このアナログ−デジタル変換器404は、アナログセンサ302からのアナログデータ出力信号をデジタル形式に変換する。このデジタルデータは、データライン304を介して、FADEC306へ送られ、このFADEC306は、ハブとして機能し、ハーネスに沿って、各データを適切な位置へ送ることができる。アナログセンサ信号をデジタルセンサ信号に変換することによって、データハーネス内の導線の数を著しく減らすことができる。データライン304は、アナログ信号の場合には、一度に一つしか送れないが、デジタル信号の場合には、複数のデジタル信号を、データの損失なく、同時に送ることができる。このことによって、データライン304の数が著しく少ないハーネスを製造して、重量を減らすことができる。この重量の減少は、デジタル変換器404に関連する重量の増加によって一部は相殺されるが、デジタルFADECが軽量なため、正味の重量は減少している。
【0013】
ライン上でデジタルデータ信号を使用するために、アナログセンサ302は、出力をデジタル信号に変換しなければならない。図2に概略的に示すシステムにおいては、アナログセンサ信号は、デジタル信号に変換され、データハーネスを介して送信される。図2のシステムは、アナログ出力信号406を出力するアナログセンサ302を備える。アナログ出力信号406は、信号指定調整回路404内へ入り、この信号指定調整回路404は、アナログ出力信号406をデジタル信号に変換し、変換された信号は、データハーネスを介して送信される。信号指定調整回路404は、標準の接続コネクタ410を介して、データハーネスに接続することができる。
【0014】
標準の接続コネクタ410および信号指定調整回路404を使用することによって、センサを、別の形式のコネクタを有する新しいセンサと交換するときに、新しいコネクタを得るために、ハーネス全体を交換する必要がないので、データハーネスが、さらに広範囲のセンサの形式と互換性を持つようになる。つまり、信号指定調整回路404のみを交換すればよい。これによって、データハーネスがアップグレードさせ易いものとなり、従って、このハーネスが接続される乗物内の機器をアップグレードすることに関連するコストが抑えられる。
【0015】
現在、ほとんどの乗物において、デジタルデータ・ストリームを直接的には利用できないセンサおよび機器が使用されている。そのため、内蔵型デジタル−アナログ/アナログ−デジタル(DA/AD)信号変換器を使用して、データをデジタルデータに変換する必要があり、あるいは、外部のDA/AD信号変換器を機器とともに備えている必要がある。DA/AD信号変換器をケーブル・接続コネクタの内部へ移動させることによって、DA/AD信号変換器をシールすることができ、これによって、各接続部内へ作用する種々の環境からの汚染の可能性がなくなる。
【0016】
デジタル電気コネクタは、周知のものであるが、アナログセンサにデジタルデータハーネスを丈夫に接続するための標準のコネクタはない。図3は、機器上のアナログデータポートにデジタル通信ケーブル102を接続するための標準の接続コネクタ410を示しており、この接続コネクタ410は、図2の実施例に使用することができる。この接続コネクタ410は、DA/AD信号変換器104を内蔵している。また、この信号変換器104は、一組のデジタル入力/出力106と、複数のアナログ入力/出力108と、を有する。アナログ入力/出力108の各々は、アナログ・コネクタピン110に接続されている。接続コネクタ・ケーシング112は、DA/AD信号変換器104の全体を取り囲み、汚染および電磁干渉(EMI)をさらに防ぐために、気密シールすることができる。接続コネクタ410はさらにプラグ部114を有し、このプラグ部114の形状は、該接続コネクタ410を所望の部品の入力ポートに適切に接続できるように形成される。電力は、別個の電力・戻りラインによってデジタル・ハーネスを通して供給されるか、あるいはデジタル信号データライン上に直接供給される。
【0017】
図3に示す接続コネクタ410は、デジタル通信ケーブル102を介して送られてくる初期のデジタルデータ・ストリームを受ける。このデータ・ストリームは、接続コネクタ410に達すると、DA/AD信号変換器104のデジタル入力/出力106で受けられる。そして、DA/AD信号変換器104が、周知の変換技術を使って、データ信号をデジタル信号からアナログ信号へ変換し、アナログ入力/出力108に、アナログデータ信号を出力する。アナログ入力/出力108は、アナログ・コネクタピン110に接続されており、このアナログ・コネクタピン110は、データが供給される機器のデータポートへプラグ接続される。
【0018】
汚染を防ぐために、接続コネクタ・ケーシング112が、DA/AD信号変換器の全体を覆うとともにデジタル通信ケーブル102とアナログ・コネクタピン110の一部を覆う。この覆いの形成は、非導電性でかつ各デジタル接続に障害とならない種々の適切なポッティング材料(充填材料)を使用して行うことができる。あるいは、接続コネクタ・ケーシング112が気密にシールされている場合、接続コネクタ・ケーシング112は、ポッティング材料を使用することなく、丈夫な性能を維持し続けることができる。このような接続コネクタ410は、接続コネクタ・ケーシング112がシールされている限り、各接続部が汚染されないようにすることができる。さらに、電磁干渉と雷の影響から保護するファラデーシールドとして機能するように、電気アセンブリの全体を導電性のケーシングを使って覆うとともに、電気的に終端させることができる。さらには、光アイソレータまたは光変換器などの手段によって、各デジタル信号と電力とを電気的に絶縁することができる。
【0019】
接続コネクタ・ケーシング112は、デジタル通信ケーブル102とDA/AD信号変換器104との間のすべての接続部の全体を覆うことによって、種々の汚れ、埃または他の材料が接続部を汚染してデータ通信を妨害してしまうことを防ぐ。この接続コネクタ・ケーシング112は、ケーブルの接続や取り外しの際に光接続を露出させないので、通常の使用時と設置/保守時の両方において、汚染を防ぐ。
【0020】
さらには、DA/AD信号変換器104を双方向変換器とし、アナログセンサ302が、データハーネスを介してのデータ信号の送信と、データハーネスからのデータ信号の受信と、の両方を行えるようにすることができる。この双方向の機能性が無い場合、DA/AD信号変換器104は、デジタルデータからアナログデータへの変換またはアナログデータからデジタルデータへの変換のいずれか一方しかできない。双方向DA/AD信号変換器104よって追加される機能性によって、データ入力およびデータ出力のいずれについても単一の標準の接続コネクタ410を使うことができるので、データハーネスがさらにアップグレードさせ易いものとなる。
【0021】
図3の代替的な構成として、DA/AD信号変換器104が、電気−光信号変換器に置き換えられる。この例においては、さらに、デジタル通信ケーブル102が光ファイバケーブルに置き換えられ、これによって、データハーネスがさらに軽量になる。このような代替的な実施例は、上記の実施例と同様に機能し得るものであり、上記の開示の範囲内に含まれる。
【0022】
本発明の好ましい実施例を開示したが、当業者であれば、本発明の範囲を逸脱することなく、いくつかの変形がなされ得ることを理解されよう。
【符号の説明】
【0023】
104…DA/AD信号変換器
106…デジタル入力/出力
108…アナログ入力/出力
110…アナログ・コネクタピン
112…接続コネクタ・ケーシング
114…プラグ部
410…接続コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのデジタル通信ワイヤと、
第1の端部にデジタル接続を有するとともに、第2の端部にアナログ接続を有し、上記少なくとも1つのデジタル通信ワイヤを終端させるデジタル−アナログ/アナログ−デジタル(DA/AD)信号変換器と、
上記アナログ接続に接続された一組のコネクタピンと、
上記デジタル通信ワイヤの一部、上記DA/AD変換器、および上記一組のコネクタピンの各々の一部、を覆う接続コネクタ・ケーシングと、
を備えるデジタル通信ケーブル。
【請求項2】
上記DA/AD信号変換器が汚染されないように、上記接続コネクタ・ケーシングは、気密シールされ、かつファラデーシールドされていることを特徴とする請求項1に記載のデジタル通信ケーブル
【請求項3】
上記DA/AD信号変換器は、双方向変換器であることを特徴とする請求項1に記載のデジタル通信ケーブル
【請求項4】
送電部品をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のデジタル通信ケーブル。
【請求項5】
複数のデジタル通信ケーブルを備える航空機用データハーネスであって、
上記デジタル通信ケーブルの各々は、少なくとも一方の端部にデジタル・接続コネクタを有し、
上記デジタル・接続コネクタは、第1の端部にデジタル接続を有するとともに第2の端部にアナログ接続を有するデジタル−アナログ/アナログ−デジタル(DA/AD)信号変換器と、上記アナログ接続に接続された一組のコネクタピンと、上記デジタル通信ケーブルの一部、上記DA/AD信号変換器、上記コネクタピンの一部、を覆う接続コネクタ・ケーシングと、を備えることを特徴とするデータハーネス。
【請求項6】
上記接続コネクタ・ケーシングは、気密シールされていることを特徴とする請求項5に記載のデータハーネス。
【請求項7】
上記接続コネクタ・ケーシングは、ファラデーシールドを備えることを特徴とする請求項6に記載のデータハーネス。
【請求項8】
上記接続コネクタ・ケーシングは、電気的に終端されていることを特徴とする請求項7に記載のデータハーネス。
【請求項9】
上記接続コネクタ・ケーシングは、少なくとも一部が非導電性ポッティング材料で充填されていることを特徴とする請求項6に記載のデータハーネス。
【請求項10】
上記DA/AD信号変換器は、双方向変換器であることを特徴とする請求項5に記載のデータハーネス。
【請求項11】
上記デジタル通信ケーブルの各々は、複数のデジタルデータ信号を同時に送信できることを特徴とする請求項5に記載のデータハーネス。
【請求項12】
上記デジタル通信ケーブルは光ファイバケーブルからなり、上記DA/AD変換器は電子−光データ変換器からなることを特徴とする請求項5に記載のデータハーネス。
【請求項13】
上記デジタル通信ケーブルは、少なくとも送電ケーブルを含むことを特徴とする請求項5に記載のデータハーネス。
【請求項14】
デジタルデータハーネスにアナログ機器を接続するシステムであって、
デジタルデータハーネスと、
アナログ出力を有する少なくとも1つのアナログ機器と、
上記少なくとも1つのアナログ機器を上記デジタルデータハーネスに接続する信号指定調整回路と、
を備え、上記信号指定調整回路において、アナログデータがデジタルデータに変換され、上記デジタルデータハーネスを介して、少なくとも1つの行先へ送られることを特徴とするシステム。
【請求項15】
上記少なくとも1つの行先は、上記データを所望の機器へルーティングすることができるデジタルデータ・ボックスを含むことを特徴とする請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
上記デジタル・ハーネスは、
少なくとも1つの光ケーブルと、
第1の端部に光接続を有するとともに、第2の端部に電気接続を有し、少なくとも1つの光ファイバを終端させる光−電気信号変換器と、
上記電気接続に接続された一組のコネクタピンと、
上記光ケーブルの一部、上記変換器、および上記一組のコネクタピンにおける各コネクタピンの一部、を覆う接続コネクタ・ケーシングと、
を備えることを特徴とする請求項14に記載のシステム。
【請求項17】
上記デジタル・ハーネスは、複数のデータラインを含み、該データラインの各々が複数のデジタルデータ信号を同時に通信できることを特徴とする請求項14に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−34970(P2011−34970A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174096(P2010−174096)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【出願人】(500107762)ハミルトン・サンドストランド・コーポレイション (165)
【氏名又は名称原語表記】HAMILTON SUNDSTRAND CORPORATION
【住所又は居所原語表記】One Hamilton Road, Windsor Locks, CT 06096−1010, U.S.A.
【Fターム(参考)】