説明

デスミア処理方法

【課題】高速信号を扱う配線や高密度配線に適した表面粗さの小さな基材でも、絶縁樹脂材とめっき皮膜との間に強い密着力を形成する表面処理方法を提供する。
【解決手段】少なくとも1種以上の有機溶媒を含有する溶媒混合物水溶液を2層以上に分離させ、2層以上に分離した溶媒混合物水溶液を分散・乳化して膨潤溶媒混合物水溶液とし、その膨潤溶媒混合物水溶液に絶縁樹脂材を浸漬して膨潤処理を行い、膨潤処理された絶縁樹脂材をエッチングすることによって、絶縁樹脂材表面に極微細なテクスチャーを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビルドアップ工法におけるプリント配線基板の絶縁樹脂に対する表面処置方法に関し、特に、樹脂表面に極微細なテクスチャーを形成することができ、樹脂表面を大きく荒らすことなく樹脂と銅等からなるめっき皮膜との密着を得ることができるデスミア処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロニクス産業の飛躍的発展に伴い、プリント配線基板も高密度化、高性能化の要求が高まり需要が大きく拡大している。特に、携帯電話やノートパソコン、カメラ等の最新デジタル機器のマザー配線基板においては、その小型化・薄型化に伴って、配線パターンの高密度化・微細化の要望が高まっている。また、搭載された部品と部品との間においては、より高周波で接続することの要求も高まっており、高速信号を扱うことに有利な表面粗さ(微小な凹凸)の小さな基材が求められている。
【0003】
現在、実装技術としては、セミアディティブ法やフルアディティブ法による回路基板の製造方法が多用されている。
【0004】
一般に、ビルドアップ工法のセミアディティブ法では、絶縁樹脂材の表面を粗化した後に触媒を付与し、無電解銅めっきを行い、さらに電気銅めっきを行うことによって配線基板を形成する。また、フルアディティブ法では、絶縁樹脂材の表面を粗化した後に触媒を付与し、無電解銅めっきのみによって配線基板を形成する。これらの工法により製造される配線基板における絶縁樹脂材とめっき皮膜との密着は、絶縁樹脂材の表面を粗化することで形成される基材表面の凹凸のアンカーへの投錨効果によって得られている。
【0005】
また、ビルドアップ工法に使用される絶縁樹脂材にはフィラーが含有されている場合が多く、このフィラーにより絶縁樹脂の機械的、電気的特性を改善していると同時に、そのフィラーが絶縁樹脂材の粗化時にアンカーを生成する役割も担っている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
このように、無電解めっき又は電解めっき処理よって形成させためっき皮膜は、絶縁樹脂材のアンカー効果によって基材との密着力を得ているが、上述のように、近年基材として高速信号を扱うためや高密度な配線(配線自体および配線間のスペースが狭い)を得るために、基材表面の粗さ、すなわちアンカーとなる凹凸が小さくなる傾向にあり、アンカー効果が小さい基材が多用されているという現状がある。
【0007】
しかしながら、このような表面粗さの小さい基材では、めっき皮膜に充分な密着力を与えることができなくなり、その結果、めっき皮膜を形成させても、そのめっき皮膜は絶縁樹脂材から引き剥がれてしまうという問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−067900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、これら従来の問題点に鑑みてなされたものであり、高速信号や高密度配線に適した表面粗さの小さな基材でも、絶縁樹脂材とめっき皮膜との間に強い密着力を形成する表面処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、2層以上に分離した溶媒混合物水溶液を分散・乳化させたものを用いて絶縁樹脂材に膨潤処理を施すデスミア処理を行うことによって、表面粗さを大きくせずに、絶縁樹脂材とめっき皮膜との密着が得られることを見出した。
【0011】
すなわち、本発明に係る膨潤処理方法は、少なくとも1種以上の有機溶媒を含有する溶媒混合物水溶液を2層以上に分離させ、2層以上に分離した溶媒混合物水溶液を分散又は乳化して膨潤溶媒混合物水溶液とし、該膨潤溶媒混合物水溶液に絶縁樹脂を浸漬して膨潤させる。
【0012】
また、本発明に係るデスミア処理方法は、プリント配線基板の絶縁樹脂に対する表面処理方法であって、少なくとも1種以上の有機溶媒を含有する溶媒混合物水溶液を2層以上に分離させ、2層以上に分離した溶媒混合物水溶液を分散又は乳化して膨潤溶媒混合物水溶液とし、該膨潤溶媒混合物水溶液に絶縁樹脂を浸漬して膨潤させる膨潤処理工程と、上記膨潤処理工程にて膨潤処理された絶縁樹脂をエッチングするエッチング処理工程とを有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、絶縁樹脂材の表面に極微細なテクスチャーを形成することができるので、樹脂表面を大きく荒らすことなく、樹脂とめっき皮膜との間に強い密着力を形成させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本実施の形態に係る表面処理方法について詳細に説明する。
【0015】
本実施の形態に係る表面処理方法は、少なくとも1種以上の有機溶媒を含有する溶媒混合物水溶液を2層以上に分離させ、2層以上に分離した溶媒混合物水溶液を分散又は乳化することによって得られる水溶液を膨潤液(膨潤溶媒混合物水溶液)として用い、絶縁樹脂材に対して膨潤処理を施すことを特徴としている。
【0016】
表面処理に用いられる溶媒混合物水溶液は、所定温度以下では単一層であるが、その所定温度以上に昇温することによって水と分離する有機溶媒を含有させることによって調整し、その溶媒混合物水溶液を所定温度以上に昇温することによって2層以上に分離させる。具体的には、例えば40℃以下では単一層であるが、40℃以上に昇温することによって、2層以上に分離するものを有機溶媒として含有させる。
【0017】
本実施の形態に係る表面処理方法では、このように、所定温度以上に昇温させることによって2層以上に分離した溶媒混合物水溶液を機械的に分散・乳化させることによって膨潤液とし、その膨潤液によって絶縁樹脂材に対して膨潤処理を施す。これにより、膨潤処理を施した絶縁樹脂に対してエッチング処理を行うことで、絶縁樹脂材の表面に極微細なテクスチャーを形成させることができ、その後のめっき処理により形成しためっき皮膜と絶縁樹脂材とを強固に密着させることができる。以下、さらに詳細に本実施の形態に係る表面処理方法について説明していく。
【0018】
<膨潤液の調整>
先ず、本実施の形態における、絶縁樹脂材に対して膨潤処理を施すための膨潤液(膨潤溶媒混合物水溶液)について説明する。
【0019】
本実施の形態に係る表面処理方法おいては、少なくとも1種以上の有機溶媒を含有し、所定温度以上に昇温させることによって2層以上に分離する溶媒混合物水溶液を用いて膨潤液を調整する。この溶媒混合物水溶液に含有される少なくとも1種以上の有機溶媒は、樹脂物質を膨潤させるのに有効な有機溶媒であって、親水性と疎水性の両方の性質を有する両親媒性であり、その溶媒混合物水溶液において所定温度以上に昇温することによって水と分離するものを使用する。
【0020】
具体的に有機溶媒としては、エチレングリコール、エチレングリコールモノアルキルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノアルキルエーテル、トリエチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル、ジプロピレングリコールジアルキルエーテル、グリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ピロリドン、ピロリジン、ラクトン等からなる群より選択される少なくとも1種類を用いることができる。
【0021】
溶媒混合物水溶液中における有機溶媒化合物の濃度は、50〜900g/L程度とすることが好ましく、200〜700g/L程度とすることがより好ましい。有機化合物の濃度が低すぎると、絶縁樹脂材を十分に膨潤させることができなくなり、表面粗化が十分起こらず、めっき皮膜に膨れが発生し易くなる。一方、有機化合物の濃度が高すぎる場合には、過剰に表面粗化が進み、表面粗さが大きくなるとともに、良好なめっき外観が得られ難くなるので好ましくない。
【0022】
これらの有機溶媒を少なくとも1種含有する溶媒混合物水溶液は、その有機溶媒が両親媒性を有していることから、所定温度以上に昇温することによって水と分離し、2層以上の層を形成する。具体的には、溶媒混合物水溶液を構成する有機溶媒の種類に応じて異なるが、約40〜90℃程度に昇温させることによって、溶媒混合物水溶液を2層以上に分離する。なお、昇温させる温度は、溶媒混合物水溶液を構成する溶媒の種類に依存するとともに、また水との混合比にも依存することから、これらの要素に応じて適宜調整する。
【0023】
このような、上述の有機溶媒を少なくとも1種含有し、昇温することによって2層以上に分離する溶媒混合物水溶液では、所定温度へ昇温させることで、有機層からなる非常に微小な粒子が形成されることとなる。本実施の形態に係る表面処理方法では、この溶媒混合物水溶液を用いることにより、後述する膨潤処理において、生成した極微小な有機層の粒子が、絶縁樹脂材表面の微小部位に作用して膨潤させ、その後のエッチング粗化工程においてその微小な粒子が作用した箇所にのみエッチング孔を形成させるものと考えられる。
【0024】
また、この溶媒混合物水溶液には、更に必要に応じて、水溶性金属水酸化物又は水溶性金属塩を含有させることができる。溶媒混合物水溶液に水溶性金属水酸化物又は水溶性金属塩を含有させることにより、溶媒混合物水溶液を所定温度以上に昇温することによる層分離を容易にすることができるとともに、より微小な有機層の粒子を形成させる。
【0025】
具体的に、水溶性金属水酸化物としては、特に限定されるものではなく、NaOH、KOH、LiOH、Ca(OH)、Mg(OH)等を用いることができ、また水溶性金属塩としては、NaSO、NaCl、NaPO、NaHPO、NaHPO、KPO、KHPO、KHPO、LiCl、LiPO、LiHPO、LiHPO、NaHPO、CaCl、MgCl、AlCl、Al(NO、Al(SO、ZnCl、Zn(NO、ZnSO、CuCl、Cu(NO、CuSO、NiCl、NiSO、Ni(NO、CoCl、CoSO、Co(NO等を1種単独で又は2種以上を併せて用いることができる。
【0026】
これらの水溶性金属水酸化物又は水溶性金属塩の溶媒混合物水溶液中における濃度としては、0.1〜100g/L程度とすることが好ましく、0.3〜30g/L程度とすることがより好ましい。水溶性金属水酸化物又は水溶性金属塩の濃度が低すぎると、溶媒混合物水溶液の層分離を促進する効果が十分に発揮されなくなる。一方、濃度が高すぎる場合には、過剰に表面粗化が進み、表面粗さが大きくなる。
【0027】
次に、上述のようにして生成した2層以上に分離した溶媒混合物水溶液を、機械的に分散又は乳化させることによって膨潤溶媒混合物水溶液(膨潤液)を調整する。この分散・乳化処理は、上述の溶媒混合物水溶液が2層以上に分離している状態において行う必要があるため、2層以上に分離させるために昇温させた所定温度以上において行う。
【0028】
2層以上に分離した溶媒混合物水溶液を機械的に分散又は乳化させる方法としては、既知の機械的方法で分散又は乳化させることができる。
【0029】
具体的には、例えば通常の攪拌機を用いる場合には、プロペラ羽根・タービン羽根及びパドル翼等の羽根の先端速度が10m/sec以下となるようにして攪拌する。また、高速回転遠心放射型攪拌機歯付円板形インペラを用いる場合には、羽根の先端速度を10m/sec〜30m/secにして高速回転させることによって攪拌する。また、攪拌翼を高速回転させるだけでなく、攪拌翼の外周近傍の過度なキャビテーションを防止するために、邪魔板の役目もする固定環(ステーター)を備えた高速回転剪断型攪拌機を用いることによって攪拌する。
【0030】
さらに、メディア式分散機を用いる場合には、円筒のベッセル内に直径0.7mm〜3mm程度までのメディア(材質は、天然砂、ガラスピーズ、ジルコニアピーズなど)を60%〜80%の充填率で充填し、ベッセルの中心部に設置された回転軸に複数個の円板を取り付けて回転させて、メディアに急速旋回作用をベッセルの下部入口からポンプで挿入することによって、メディア相互の摩擦作用で分散・乳化を行う。また、コロイドミルを用いる場合には、高速回転する耐摩耗材製ディスクやローターに、固定ディスクや固定環を極度に接近(10μm〜50μmの間隔)させ、その狭い間隙を保って高速回転している間隙内に流体を供給することによって、極限までの剪断力を与えて分散又は乳化処理を行う。また、高圧噴射式乳化分散機を用いる場合には、高圧プランジャポンプ等で処理液を圧入し、排出部の特殊バルブを調整して高圧(通常10MPa〜70MPa)で噴射させて、出口の固定板に100m/sec〜300m/secの超高速で叩き付けることで分散又は乳化処理を行う。
【0031】
またその他、超音波エネルギーを集中的に発生させて分散又は乳化処理を行う超音波乳化分散機や、スタティックミキサ、ガラス・セラミックス等の多孔質材を通過させる分散・乳化機等の攪拌機を用いることもできる。
【0032】
これらのような分散・乳化機を、1種類又は複数を組み合わせて使用することによって、2層以上に分離した溶媒混合物水溶液を、機械的に分散又は乳化させる。このように、昇温することによって2層以上に分離した溶媒混合物水溶液を、分散・乳化機を用いて機械的に分散・乳化させることにより、昇温することによって生成した有機層の粒子を均一に分散させることができる。そして、これにより、以降の膨潤処理において均一に分散した粒子を絶縁樹脂材の表面に均一に付着させることができ、エッチング処理により、極微細で、かつ均一なテクスチャー(凹凸)を形成させることが可能となる。
【0033】
また、この分散又は乳化を行う2層以上に分離した溶媒混合物水溶液には、更に必要に応じて、界面活性剤を含有させることができる。溶媒混合物水溶液に界面活性剤を含有させることにより、2層以上に分離した溶媒混合物水溶液の分散又は乳化処理を容易にすることができる。また、分散又は乳化処理を均一に行うことを可能にし、その後の工程における表面粗化のためのエッチング処理も均一とすることができる。
【0034】
具体的に、界面活性剤としては、特に限定されるものではなく、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤及び両性界面活性剤等、いずれを用いてもよく、1種単独で又は2種以上を併せて用いることができる。
【0035】
例えば、ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、アルキルアリルホルムアルデヒド縮合ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル等のエーテル型界面活性剤、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アルカノールアミド硫酸塩等のエーテルエステル型界面活性剤、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、エチレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等のエステル型界面活性剤、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン等の含窒素型界面活性剤等を用いることができる。
【0036】
また、アニオン系界面活性剤としては、例えばラウリル酸、ミリスチン酸、パルチミン酸、ステアリン酸、オレイン酸の炭素数12〜18のカルボン酸の塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、炭素数12〜18のN−アシルアミノ酸、N−アシルアミノ酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、炭素数12〜18のアシル化ペプチド等のカルボン酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン重縮合物、スルホコハク酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、N−アシルスルホン酸塩等のスルホン酸塩、硫酸化油、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレン硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル硫酸塩、アルキルアミド硫酸塩等の硫酸塩エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸塩、アルキルリン酸塩等のリン酸エステル塩等を用いることができる。
【0037】
また、両性界面活性剤としては、例えばカルボキシベタイン型界面活性剤、アミノカルボン酸塩の他、イミダゾリウムベタイン、レチシン等を用いることができる。低級アルコール類としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、イソブタノール等の炭素数1〜4程度のアルコール類等を用いることができる。
【0038】
これらの界面活性剤の溶媒混合物水溶液中への添加量としては、0.1〜20g/L程度とすることが好ましく、0.3〜10g/Lとすることがより好ましい。界面活性剤の濃度が低すぎると、分散・乳化が十分に起こらなくなる。一方、濃度が高すぎる場合には、過剰に表面粗化が進み、表面粗さが大きくなる。
【0039】
以上のようにして調整した膨潤液を用いて、絶縁樹脂材に対して膨潤処理を行い、その膨潤処理を施した絶縁樹脂材に対してエッチング処理を施す、デスミア処理を行う。
【0040】
<膨潤処理及びエッチング処理>
本実施の形態に係る表面処理方法は、例えば絶縁樹脂基板の一面側又は両面側に形成した樹脂層に対して必要に応じてレーザー等の周知の方法によってビア用凹部を形成した後、膨潤処理及びエッチング処理を施して、プリント配線基板を構成する絶縁樹脂層の表面を粗面化するデスミア処理を行う。特に、本実施の形態における表面処理方法においては、上述のようにして調整した膨潤液に、絶縁樹脂基板を浸漬して樹脂層の表面を膨潤する膨潤処理を施す。
【0041】
ここで、本実施の形態に係る表面処理方法を適用することができる絶縁樹脂材としては、特に限定されるものではなく周知のものを用いることができる。具体的には、例えば、エポキシ樹脂(EP樹脂)や、熱硬化性樹脂フィルムであるポリイミド樹脂(PI樹脂)、ビスマレイミド―トリアジン樹脂(BT樹脂)、ポリフェニレンエーテル樹脂(PPE樹脂)等や、さらに熱可塑性樹脂フィルムである液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK樹脂)、ポリエーテルイミド樹脂(PEI樹脂)、ポリエーテルサルホン(PES樹脂)等、種々の樹脂を用いることができる。あるいは、連続多孔質PTFE等の三次元網目状フッ素系樹脂基材にEP樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸させた樹脂−樹脂複合材料からなる板材等を使用してもよい。さらに可撓性フィルム等を用いてもよい。特に好ましい樹脂としては、後工程において例えば無電解めっき処理を行う場合に、めっき浴に有害な溶出物がなく、界面剥離を起こさない等、工程に対する耐性を有するとともに、硬化を行い回路を形成した後、回路面及び上下面の層と十分な密着性を有し、冷熱サイクル等の試験で剥離やクラック等を発生しない樹脂であるとよい。また、例えばインクジェット法により導電性ペーストを絶縁樹脂上に塗布して回路パターンを形成させる場合には、一般的にガラスエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ガラスポリイミド樹脂、ガラスビスマレイミド樹脂、ガラスポリフェニレンオキサイド樹脂、アラミドエポキシ樹脂、液晶ポリマーフィルム等の導電性ペーストとの密着性の良い絶縁樹脂を選択することが好ましい。さらに、この絶縁樹脂材は、例えば導電層が形成された複数の基板を接着して多層構造とされたものを使用してもよい。
【0042】
本実施の形態においては、上述のような周知の絶縁樹脂材を、2層以上に分離した溶媒混合物水溶液を分散・乳化させて生成した膨潤溶媒混合物水溶液(膨潤液)に浸漬することによって、絶縁樹脂表面に膨潤処理を施す。
【0043】
この膨潤処理は、処理時間としては、約30秒〜約15分間が好ましく、より好ましくは約1〜約10分間であり、適用する絶縁樹脂材の種類によって適宜調整する。
【0044】
膨潤処理方法としては、調整した膨潤液に絶縁樹脂を所定時間浸漬することによって膨潤処理を施す。この浸漬させることによる膨潤処理は、膨潤液を絶縁樹脂材に十分に接触させることが可能であるという観点から効率的であるが、これに限られるものではない。例えば、膨潤液を絶縁樹脂材に対して噴霧することによって、十分に膨潤液を接触させるようにしてもよい。
【0045】
また、この膨潤処理においては、膨潤液の調整に際して溶媒混合物水溶液を2層以上に分離させるために昇温させた所定温度以上において行う。具体的には、溶媒混合物水溶液を構成する有機溶媒の種類や有機溶媒と水との混合比に応じて異なるが、約40〜約90℃程度の使用温度にて膨潤処理を行う。なお、膨潤液のpHとしては、pH1〜14の広い範囲で処理することができる。
【0046】
そして次に、上述のように膨潤処理を施した絶縁樹脂材に対して、エッチング処理を施す。このエッチング処理は、例えば過マンガン酸ナトリウム、過マンガン酸カリウム、クロム酸ナトリウム、クロム酸カリウム等を含有する周知の樹脂エッチング剤を用いて周知の方法で行うことができる。
【0047】
具体的には、例えば過マンガン酸ナトリウムを含有したエッチング剤を用いる場合、その濃度を5〜600g/L程度とすることが好ましく、10〜60g/L程度とすることがより好ましい。エッチング処理液の濃度が低すぎる場合、エッチング効果が不足して適度なテクスチャーを形成することができず、めっき皮膜との密着を得られなくなる。また、めっき皮膜にスキップ、膨れ等が発生し易くなる点からも好ましくない。一方、濃度が高すぎる場合には、過剰なエッチングを招き、絶縁樹脂材の表面粗さを大きくし、例えば高速信号を扱う配線や高密度配線等には適さなくなる。また、作業的、経済的観点からも好ましくない。
【0048】
また、エッチング処理における温度条件としては約50〜約80℃程度が好ましく、この温度条件で約1〜約10分間、絶縁樹脂材をエッチング液に浸漬させることによってエッチング処理を行う。なお、絶縁樹脂材をエッチング液に浸漬させることによってエッチング処理することに限られず、絶縁樹脂に対してエッチング液を噴霧させることによって処理するようにしてもよい。
【0049】
このように、上述のようにして膨潤処理を施した絶縁樹脂に対してエッチング処理を施すことにより、その絶縁樹脂に極微細なテクスチャーを形成し、絶縁樹脂表面を粗化することができる。
【0050】
本実施の形態においては、このように、絶縁樹脂のエッチング処理に先立ち、昇温することによって2層以上に分離した溶媒混合物水溶液を分散・乳化させることによって調整した膨潤液を用いて膨潤処理を行う。具体的に、昇温によって分離・生成した微小な有機層の粒子が、分散・乳化によってより微細になるとともに水溶液中に均一に分散し、この微細な粒子が分散した膨潤液を用いて膨潤処理を行うことで、その微細な粒子が作用して、絶縁樹脂材表面に微細に膨潤させることを可能にすると考えられる。そして、その膨潤処理後の絶縁樹脂材に対してエッチング処理を施すことで、絶縁樹脂表面上の膨潤処理によって膨潤した微細な箇所に、極微細なエッチング孔を形成させることができ、その結果、絶縁樹脂材表面に極微細なテクスチャーを形成することができるものと考えられる。
【0051】
このように、本実施の形態に係る表面処理方法は、従来のように単一層の膨潤液を用いて、絶縁樹脂材表面全体を膨潤させるのではなく、昇温することによって2層以上に分離する溶媒混合物水溶液を用いて有機層からなる微細な粒子を形成し、それを均一に分散させた膨潤液を用いて絶縁樹脂材表面に膨潤処理を施すようにしている。この本実施の形態に係る表面処理方法によれば、微細な粒子による膨潤作用及びエッチング処理により、樹脂表面上に極微細なテクスチャー(凹凸)が形成され、絶縁樹脂上に形成しためっき皮膜との密着性を向上させることができる。
【0052】
上述のようにして樹脂基板の表面を粗化すると、次に、粗化処理によって樹脂基板表面に生じた処理残渣を還元処理によって溶解除去する。具体的には、粗化処理で用いたエッチング処理液に含有されていた、例えば過マンガン酸ナトリウムに由来するマンガン酸化物が残渣となって生じた樹脂基板表面を、還元剤を含有した処理液を用いて還元反応により溶解除去することによって清浄にする。
【0053】
還元処理液としては、例えば、硫酸ヒドロキシルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸等、種々のアミン系化合物からなる還元剤を含有させたものを用いることができる。還元剤の濃度としては、1〜200g/L程度とすることが好ましく、5〜100g/L程度とすることがより好ましい。還元剤の濃度が低すぎる場合には、マンガン酸化物等の処理残渣の除去効果が不足し易く、一方で濃度が高すぎる場合には、くみ出し量が増加するので、経済的に好ましくない。
【0054】
また、上述のようなアミン系化合物等の還元剤を含有させた還元処理液には、硫酸または水酸化ナトリウム等のpH調整剤や、樹脂基板の表面濡れ性を向上させることを目的として、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリアセチレングリコールといった非イオン系界面活性剤等の界面活性剤を含有させることもできる。
【0055】
還元処理の処理条件としては、上述のような還元剤を含有する処理液を用いて、約20〜約90℃程度の温度条件で約5〜約30分間、絶縁樹脂を浸漬させてマンガン酸化物等の粗化処理残渣を溶解除去する。還元処理液のpHは、pH1〜14程度の広い範囲で用いることができる。
【0056】
なお、絶縁樹脂にアンカーを形成させるシリカ系フィラーを含有した絶縁樹脂を用いた場合には、この絶縁樹脂表面に対する還元処理時、又は還元処理の後に、シリカ系フィラーをエッチングさせる効果のあるエッチング処理液(以下、フィラーエッチング処理液という。)を用いて、エッチング処理を施すようにしてもよい。具体的には、フッ素化合物が含有されているフィラーエッチング処理液を用いて処理することができ、そのフッ素化合物としては、フッ化水素、フッ化ナトリウム、ホウフッ化水素酸、フッ化水素アンモニウム、フッ化水素ナトリウム、ヘキサフルオロケイ酸アンモニウム、ヘキサフルオロリン酸アンモニウム等から選択される1種又は2種以上を任意の割合で混合させて用いることができる。このように、フッ素化合物が含有されているフィラーエッチング処理液を用いて処理することにより、絶縁樹脂表面をより一層微細な粗さとすることができるとともに、絶縁樹脂とめっき皮膜との密着性をより向上させることができる。なお、この技術事項については、本件発明者等が先に出願した特願2008−123457に記載されている。
【0057】
本実施の形態に係る表面処理方法においては、回路パターンを構成するめっき皮膜を形成するにあたり、絶縁樹脂材に対して上述の膨潤処理を施し、膨潤処理を施した絶縁樹脂材に対してエッチング処理を行うことによって、その表面に極微細なテクスチャーを形成することができる。このようにして形成された極微細なテクスチャーは、例えば高速信号を扱う配線や高密度な配線等の基板に形成しても断線や接続不良等の原因となることはなく、後述するようにして形成しためっき皮膜と絶縁樹脂材とを強固に密着させることができる。
【0058】
以下では、上述のようにしてテクスチャーを形成した絶縁樹脂材上に施すめっき処理について説明するが、このめっき処理は、下記のものに限定されるものではない。
【0059】
<めっき処理>
上述のようにしてプリント配線基板を構成する絶縁樹脂材に対して表面処理を施すと、次に、その処理した絶縁樹脂に対して周知の方法によりめっき処理を施し、絶縁樹脂材上にめっき皮膜を形成させる。このめっき処理においては、セミアディティブ法を用いてもよく、フルアディティブ法を用いて処理するようにしてもよい。
【0060】
以下では具体的に、フルアディティブ法によるめっき処理について説明する。なお、この説明においては、銅めっき皮膜を形成する例について具体的に説明するが、金属めっき皮膜は銅めっき皮膜に限られず、ニッケル等のその他の金属めっき皮膜であってもよい。また、めっき処理方法としては、フルアディティブ法によるめっき処理だけではなく、セミアディティブ法を用いた電気めっきによりめっき皮膜を形成するようにしてもよい。
【0061】
先ず、プリント配線基板を構成する絶縁樹脂材に対して膨潤処理、エッチング処理、還元処理を施した後、周知の方法により清浄処理を行って樹脂基板をクリーニングする。清浄処理は、例えば、清浄溶液中に65℃で5分間、表面処理を施した樹脂基板を浸漬させて、表面のゴミ等を除去するとともに、樹脂基板に水濡れ性を与える。洗浄溶液としては、酸性溶液を用いても、アルカリ性溶液を用いてもよい。この清浄処理工程によって、樹脂基板の表面を清浄にし、後工程にて形成されるめっき皮膜の密着性をより向上させることができる。
【0062】
樹脂基板をクリーニングすると、次に、回路パターンを形成する樹脂基板材の表面に触媒を付与する。この触媒付与において用いられる触媒は、例えば、2価のパラジウムイオン(Pd2+)を含有した触媒液、例えば、塩化パラジウム(PdCl・2HO)、塩化第一スズ(SnCl・2HO)、塩酸(HCl)等で組成される混合溶液を用いることができる。この触媒液の濃度としては、例えば、Pd濃度が100〜300mg/L、Sn濃度が10〜20g/L、HCl濃度が150〜250mL/Lの各濃度組成とすることができる。そして、この触媒液中に樹脂基板を、例えば温度30〜40℃の条件で1〜3分間浸漬し、先ずPd−Snコロイドを樹脂基板の表面に吸着させ、次に常温条件下で、例えば50〜100mL/Lの硫酸又は塩酸からなるアクセレータ(促進剤)に浸漬させて触媒の活性化を行う。この活性化処理によって、錯化合物のスズが除去され、パラジウム吸着粒子となり、最終的にパラジウム触媒として、その後の無電解銅めっきによる銅の析出を促進させるようにする。
【0063】
なお、水酸化ナトリウムやアンモニア溶液をアクセレータとして用いてもよい。また、この樹脂基板に対する触媒付与に際しては、コンディショナー液やプレディップ液を用いた前処理を施し、より樹脂基板と銅めっき皮膜との密着性をより一層に高めるようにしてもよい。さらに、触媒の樹脂基板の表面への馴染みを良くする前処理を施すようにしてもよい。なお、触媒液は、当然上記のものに限られるものではない。
【0064】
上述のように樹脂基板材に触媒を付与すると、次に、適宜所望の回路パターンを形成するためのめっきレジストを形成する。すなわち、次の工程で回路パターンを構成する銅めっき皮膜を形成させる箇所以外をマスキングするレジストパターンを形成する。このレジストパターンは、めっき処理終了後にエッチング操作等により剥離除去してもよいが、剥離除去せずに、ソルダーレジストとして機能するようにしてもよい。めっきレジストの形成方法は、周知の方法を利用して行うことができる。
【0065】
めっきレジストを形成すると、次に無電解めっき法等のめっき処理により、表面に極微細なテクスチャーが形成された絶縁樹脂材上に、回路パターンを構成する銅めっき皮膜を形成する。
【0066】
具体的に、このめっき処理においては、無電解銅めっき浴として、例えば、錯化剤としてEDTAを用いためっき浴を用いることができる。この無電解銅めっき浴の組成の一例としては、硫酸銅(10g/L)、EDTA(30g/L)を含有し、水酸化ナトリウムによってpH12.5に調整された無電解銅めっき浴を使用することができる。また、錯化剤としてロッシェル塩を用いた無電解銅めっき浴を使用してもよい。そして、この無電解銅めっき浴中に絶縁樹脂基板を、例えば60〜80℃の温度条件で30〜600分間浸漬することによって、銅めっき皮膜を形成させていく。なお、例えば、多層配線基板において下層との導通のためのビア等を形成させた場合には、液の攪拌を十分に行って、ビアにイオン供給が十分に行われるようにするとよい。攪拌方法としては、空気攪拌やポンプ循環等による方法等を適用することができる。
【0067】
なお、無電解めっき法により銅めっき皮膜を析出させるにあたり、めっきレジストの形成後、例えば10%硫酸及びレデュサーを用いて、樹脂基板の表面に付着している触媒のパラジウム吸着粒子を還元することによって触媒を活性化させ、樹脂基板上における銅めっき皮膜の形成を促進させるようにしてもよい。
【0068】
また、このめっき処理においては、樹脂基板材との密着をさらに向上させるために、二段階めっき処理を施すようにしてもよい。すなわち、樹脂基板材上に下地めっき皮膜を形成する一次めっき処理を行い、そして形成された下地めっき皮膜上に、電気めっき法によって下地めっき皮膜よりも膜厚の厚い厚付けめっき皮膜を形成する二次めっき処理を行って回路パターンを形成するようにしてもよい。そして特に、一次めっき処理に際しては、二次めっき処理において形成される厚付けめっき皮膜の内部応力の向きとは異なる向きの内部応力、換言すると、二次めっき処理において形成される厚付けめっき皮膜の内部応力とは逆方向の向きの内部応力であって、一般的には引張内部応力を有する下地めっき皮膜を形成させる無電解めっき浴を用いてめっき処理を行うようにしてもよい。
【0069】
なお、上述しためっき処理において用いためっき浴及びその組成、処理条件等は一例であり、当然これらに限られるものではない。
【0070】
また、上述の例は無電解銅めっき浴を用いためっき処理の具体例であるが、無電解銅めっき処理を行う場合について説明したが、めっき金属としては、銅に限られるものではなく、例えば、無電解ニッケルめっき浴を用いても、良好に適用することができる。なお、ニッケルめっき浴の組成の一例としては、例えば、硫酸ニッケル(20g/L)、次亜リン酸ナトリウム(15g/L)、クエン酸塩(30g/L)を含有し、pH8〜9に調整されためっき浴を用いることができる。
【0071】
また、めっき処理方法としては、フルアディティブ法によるめっき処理だけではなく、セミアディティブ法を用いた電気めっき処理によりめっき皮膜を形成するようにしてもよい。
【0072】
また、インクジェット法等によって、回路パターンを形成した場合においても、同様に本実施の形態に係る表面処理方法を適用することができる。すなわち、具体的に一例を挙げて説明すると、周知の技術を用いて合成した、例えば、Au、Ag、Cu、Pd、W、Ni、Ta、Bi、Pb、In、Sn、Zn、Ti、Al等から選択される1種又は2種以上の金属微粒子等からなる導電性の金属粒子を、水の他、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル系溶剤、アルコール系溶剤、炭化水素系溶剤等の有機溶剤の分散溶媒に均一に分散にして導電性ペーストとし、生成された導電性ペーストの液滴を、インクジェット法等を利用して絶縁樹脂の基板上に塗布することによって回路パターンを形成する。次に、このようにしてインクジェット法等を用いて導電性ペーストにより形成した回路パターンが配置された基板上に絶縁層を積層し、レーザー等を用いてトレンチを形成して、当該導電性ペーストからなる回路パターンを露出させる。そして、このようにして形成されたトレンチ内に、例えば無電解めっき処理により、めっき金属を析出させるようにする。このように、インクジェット法等を利用して導電性ペーストからなる回路パターンを形成した場合においても、予め絶縁樹脂表面に本実施の形態に係る表面処理方法を施すことによって、過度に絶縁樹脂材の表面を粗くすることなく、絶縁樹脂とめっき皮膜との密着性を向上させることができる。また、このようにインクジェット法等により回路パターンを形成させた場合には、ボイドの発生を抑制し、ボイドに起因する配線不良を回避でき、より接続信頼性の向上した基板を作成することが可能となる。また、配線の高さのばらつきを抑えることも可能となり、より均一な回路表面を有した、接続信頼性の高い回路基板を形成することができる。さらに、インクジェット法等を用いて回路パターンを形成した場合には、めっきレジストを用いて電気めっき処理や無電解めっき処理により回路パターンを形成した場合と比較して、回路パターンの位置ずれや現像不良等の発生がなく、より正確に所望とする微細な回路パターンを描画することができるようになる。なお、この技術事項については、本件発明者等が先に出願した特願2007−285363に記載されている。
【0073】
以上説明したように、本実施の形態に係る表面処理方法は、少なくとも1種以上の有機溶媒を含有する溶媒混合物水溶液を2層以上に分離させ、2層以上に分離した溶媒混合物水溶液を分散又は乳化して膨潤溶媒混合物水溶液とし、その膨潤溶媒混合物水溶液に絶縁樹脂を浸漬して膨潤処理を施す。
【0074】
すなわち、少なくとも1種以上の有機溶媒を含有する溶媒混合物水溶液を、所定温度以上に昇温することによって2層以上に分離させ、分離した溶媒混合物水溶液を機械的に分散・乳化させることによって膨潤溶媒混合物水溶液を生成して、膨潤液とする。
【0075】
そして、この膨潤液を用いて膨潤処理した絶縁樹脂材に対してエッチング処理を施し、絶縁樹脂材の表面を粗化する。
【0076】
このように、昇温させることによって2層以上に分離した溶媒混合物水溶液を分散又は乳化させて生成して膨潤溶媒混合物水溶液(膨潤液)を用いて絶縁樹脂材を膨潤する膨潤処理を施し、膨潤処理された絶縁樹脂材に対してエッチング処理を施すことによって、昇温によって生成した有機層からなる微粒子が分散されることによって均一となり、その微粒子が樹脂表面上に極微細に均一に作用して膨潤するため、その膨潤された箇所のみにエッチング孔が形成されることとなり、絶縁樹脂材の表面に極微細なテクスチャーを形成することができると考えられる。そして、これにより、絶縁樹脂材の表面を大きく荒らすことなく、均一かつ極微細な凹凸によって、プリント配線基板を構成する絶縁樹脂材とめっき皮膜との間に強固な密着力を形成させることができるとともに、高速信号を扱う配線等に適したプリント基板を形成することができる。
【0077】
なお、本発明は、上述の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲での設計変更等があっても本発明に含まれる。
【0078】
また、本発明は、上記の実施形態に係る配線基板の製造方法、ビルドアップ工法による高密度多層配線基板の製造にのみ適用されるものではなく、例えば、ウエハレベルCSP(Chip SizエポキシPackageまたはChip ScaleエポキシPackage)、あるいはTCP(Tape Carrier Package)等における多層配線層の製造工程にも適用されるものである。
【実施例】
【0079】
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。なお、下記のいずれかの実施例に本発明の範囲が限定されるものではない。
【0080】
(実施例1)
先ず、下記の有機溶剤を含有させてなる溶媒混合物水溶液を80℃に昇温し、2層に分離した溶液をプロペラ攪拌機により分散・乳化して膨潤液を生成した。
ジエチレングリコールモノブチルエーテル:200g/L
ジエチレングリコールジエチルエーテル:250g/L
【0081】
次に、一般的な絶縁樹脂(味の素ファインテクノ株式会社製 ABF-GX13)を積層させた基板を用い、この基板を生成した膨潤液に1分間浸漬して膨潤処理を行った。
【0082】
その後、膨潤液に浸漬させた基板を樹脂エッチング液(上村工業株式会社製 DES-502)によりエッチングした後、還元液(上村工業株式会社製 DEN-503H)にて還元処理を行い、基板の表面粗さ(Ra)及び凹凸の平均間隔(RSm)を測定した。
【0083】
続いて、その基板に対して、触媒付与プロセス(スルカッププロセス:クリーナーコンディショナーACL-009, プレディップ PED-104、キャタリスト AT-105、アクセレレータ AL-106(全て上村工業株式会社製))により触媒を付与した後、無電解銅めっき液(上村工業株式会社製 PEA)にて無電解銅めっき処理を行い、0.5μmのめっき皮膜を形成させた。
【0084】
そして、さらに電気銅めっき液(上村工業株式会社製 ETN)を用いて、電気銅めっき処理を行い、30μmの厚みの銅めっき皮膜を形成させ、銅めっき皮膜の引き剥がし強度を測定した。
【0085】
(実施例2)
実施例1とは異なり、下記の有機溶剤及び界面活性剤、並びに水溶性金属酸化物を含有させてなる溶媒混合物組成物を80℃に昇温し、2層に分離した溶液をプロペラ攪拌機により分散・乳化した膨潤液を生成した。
ジエチレングリコールモノブチルエーテル:400g/L
ジエチレングリコールジエチルエーテル:100g/L
アデカコール W-287(旭電化工業株式会社製ポリカルボン酸型陰イオン界面活性剤):0.5g/L
水酸化ナトリウム:5g/L
【0086】
上記組成からなる溶媒混合物水溶液を用いた以外は、実施例1と同じように以降の処理を行った。すなわち、一般的な絶縁樹脂(味の素ファインテクノ株式会社製 ABF-GX13)を積層させた基板を用い、この基板を生成した膨潤液に1分間浸漬し膨潤処理を行った後、樹脂エッチング、還元処理を行い、基板の表面粗さ(Ra)及び凹凸の平均間隔(RSm)を測定した。そして、実施例1と同様に、前処理、無電解銅めっき、電気銅めっきを行って、銅めっき皮膜の引き剥がし強度を測定した。
【0087】
(比較例1)
下記の有機溶剤を用い、使用温度を80℃に設定して膨潤液とした。
ジエチレングリコールモノブチルエーテル:400g/L
なお、上記有機溶剤は、使用温度80℃においては単一層水溶液であった。
【0088】
上記有機溶剤からなる膨潤液を用い、一般的な絶縁樹脂(味の素ファインテクノ株式会社製 ABF-GX13)を積層させた基板を、生成したその膨潤液に5分間浸漬し膨潤処理を行った以外は、実施例1と同様に処理した。すなわち、膨潤処理を行った後、樹脂エッチング、還元処理を行い、基板の表面粗さ(Ra)及び凹凸の平均間隔(RSm)を測定し、続いて、前処理、無電解銅めっき、電気銅めっきを行って、銅めっき皮膜の引き剥がし強度を測定した。
【0089】
(比較例2)
下記の有機溶剤及び水溶性金属酸化物からなる水溶液を用い、使用温度を60℃に設定して膨潤液とした。
n-メチル-2-ピロリドン:300g/L
エチレングリコールブチルエーテル:200g/L
水酸化ナトリウム:3g/L
なお、上記組成からなる水溶液は、使用温度60℃においては単一層水溶液であった。
【0090】
上記有機溶剤等からなる膨潤液を用い、一般的な絶縁樹脂(味の素ファインテクノ株式会社製 ABF-GX13)を積層させた基板を、生成したその膨潤液に10分間浸漬し膨潤処理を行った以外は、実施例1と同様に処理した。すなわち、膨潤処理を行った後、樹脂エッチング、還元処理を行い、基板の表面粗さ(Ra)及び凹凸の平均間隔(RSm)を測定し、続いて、前処理、無電解銅めっき、電気銅めっきを行って、銅めっき皮膜の引き剥がし強度を測定した。
【0091】
(比較例3)
下記の有機溶剤を用い、使用温度を70℃に設定して膨潤液とした。
n-メチル-2-ピロリドン:500g/L
なお、上記有機溶剤は、使用温度70℃においては単一層水溶液であった。
【0092】
上記有機溶剤からなる膨潤液を用い、一般的な絶縁樹脂(味の素ファインテクノ株式会社製 ABF-GX13)を積層させた基板を、生成したその膨潤液に15分間浸漬し膨潤処理を行った以外は、実施例1と同様に処理した。すなわち、膨潤処理を行った後、樹脂エッチング、還元処理を行い、基板の表面粗さ(Ra)及び凹凸の平均間隔(RSm)を測定し、続いて、前処理、無電解銅めっき、電気銅めっきを行って、銅めっき皮膜の引き剥がし強度を測定した。
【0093】
(比較例4)
下記の有機溶剤を含む100%溶剤を用い、使用温度を70℃に設定して膨潤液とした。
n-メチル-2-ピロリドン:700g/L
エチレングリコールブチルエーテル:300g/L
なお、上記水溶液は、使用温度70℃においては単一層水溶液であった。
【0094】
上記有機溶剤等からなる膨潤液を用い、一般的な絶縁樹脂(味の素ファインテクノ株式会社製 ABF-GX13)を積層させた基板を、生成したその膨潤液に5分間浸漬し膨潤処理を行った以外は、実施例1と同様に処理した。すなわち、膨潤処理を行った後、樹脂エッチング、還元処理を行い、基板の表面粗さ(Ra)及び凹凸の平均間隔(RSm)を測定し、続いて、前処理、無電解銅めっき、電気銅めっきを行って、銅めっき皮膜の引き剥がし強度を測定した。
【0095】
上記実施例及び比較例において、樹脂基板の表面粗さ(Ra)及び凹凸の平均間隔(RSm)については、レーザー顕微鏡(株式会社キーエンス製 VK-8550)を用いて各試料あたり3点を測定し、平均値を測定した。また、めっき皮膜の引き剥がし強度については、オートグラフ(島津製作所株式会社製 AGS-100D)を用いて測定した。実施例及び比較例のそれぞれの測定結果を以下の表1に示す。
【0096】
【表1】

【0097】
この表1に示されるように、昇温することによって水と分離する有機溶媒を用いて、複数層に分離した溶媒混合物水溶液を調整し、その溶媒混合物水溶液を機械的に分散・乳化することによって生成した膨潤液を用いて膨潤処理を行った実施例1では、表面粗さ(Ra)が0.25μmと極微小な表面粗さで、650N/mもの大きな引き剥がし強度を示した。また、実施例1と同様の有機溶媒を用いるとともに、水溶性金属水酸化物である水酸化ナトリウムを用いて複数層に分離した溶媒混合物水溶液を調整し、界面活性剤を含有させて機械的に分散・乳化することによって生成した膨潤液を用いて膨潤処理を行った実施例2においても、Ra0.37μmほどの極微小な表面粗さで、670N/mもの大きな引き剥がし強度を実現することができた。このように、実施例1及び2においては、基板表面の粗さを大きくしなくとも、大きな引き剥がし強度を実現することができた。
【0098】
これに対し、単一の有機溶媒を用いて、昇温しても水と分離せず単一層であった水溶液を膨潤液として膨潤処理を行った比較例1では、Ra0.33μmと表面粗さは小さかったものの、引き剥がし強度は330N/mと非常に弱く、樹脂と銅めっき皮膜との密着度は小さかった。また、比較例2では、上述の実施例1及び2と同様に、複数の有機溶媒を用い、さらに水溶性金属水酸化物を含有させた混合物水溶液を用いて処理を行ったが、その水溶液は分離せず単一層しか形成しなかったとともに、Ra0.44μmと表面粗さは実施例1及び2と比較して大きく、その引き剥がし強度は390N/mと非常に弱かった。
【0099】
この比較例1及び2においては、デスミア処理等を行って形成した絶縁樹脂材の表面粗さ(Ra)は、実施例1及び2と略同程度であったにも拘わらず、その引き剥がし強度には上述のように大きな違いがでた。このことは、表1中の凹凸の平均間隔(RSm)の値から明確に判るように、実施例1及び2では、表面粗さを小さくすることができたとともに、その凹凸を表面上に微細に形成させることできたことから、表面粗さが小さくなっても、650N/m以上のもの強い引き剥がし強度を実現することができたと考えられる。一方で、比較例1及び2では、表面粗さを小さくすることはできたものの、その表面に形成された凹凸はまばらであり、凹凸の平均間隔として比較例1では5.89μm、比較例2では6.28μmと、実施例の2倍近い平均間隔となっていた。
【0100】
このように、実施例1及び2では、表面粗さを小さくすることができたとともに、その粗さの小さい凹凸の絶縁樹脂材表面上における間隔も小さくすることができた。すなわち、実施例1及び2では、絶縁樹脂表面上に、表面粗さが小さく、また凹凸の平均間隔も小さい、極微細なテクスチャー(凹凸)を形成することができ、これにより650N/m以上のもの強い引き剥がし強度を実現することができた。一方で、比較例1及び2においては、表面粗さを小さくすることができたものの、単一層の水溶液を用いて膨潤処理を行ったため、その膨潤液が絶縁樹脂材表面の全体に広範囲に亘って作用し、その結果、樹脂表面上に形成された凹凸の平均間隔は大きく、まばらなテクスチャーとなり、十分な引き剥がし強度を実現することはできなかったものと考えられる。
【0101】
また、比較例3及び4についてもみてみると、単一の有機溶剤を用い、70℃に昇温させても水と分離せず単一層であった水溶液を膨潤液として膨潤処理を行った比較例3では、めっき処理後の基材と銅めっきとの引き剥がし強度は690N/mと大きかったものの、その絶縁樹脂基材上の表面粗さはRa0.68μmと非常に大きな粗さとなった。また、複数の有機溶剤を用いるとともに、70℃の高温に昇温させることによって膨潤処理を行った比較例4では、めっき処理後の引き剥がし強度は比較例3よりもさらに大きい760N/mもの大きさとなったものの、絶縁樹脂基材上に形成された表面粗さはRa0.86μmと非常に粗くなってしまった。なお、この比較例4において用いた溶媒混合物水溶液は分離せず単一層しか形成しなかった。
【0102】
また、これらの比較例3及び4では、表1から明確に判るように、実施例1及び2に比して非常に大きな凹凸の平均間隔(RSm)の値を示した。すなわち、表面粗さが小さく、凹凸の平均間隔も小さい、極微細な凹凸が表面に形成された実施例1及び2に対し、比較例3及び4では、絶縁樹脂材の表面は大きな表面粗さを示したとともに、その形成された凹凸は表面全体にまばらに形成されたことが判る。
【0103】
これらの比較例1乃至4の結果は、膨潤処理で用いた膨潤液の性質に依存するものと考えられる。すなわち、例えば比較例1で用いた有機溶媒であるジエチレングリコールモノブチルエーテルは、膨潤剤として多用されているが、この有機溶媒は水溶性の溶媒であるため、昇温しても水と分離することはなく単一層となる。この膨潤液を用いて膨潤処理を行った場合、単一層であるために、絶縁樹脂材表面の全体に広範囲に亘って作用し、したがってその後のエッチング処理により、膨潤液が作用した絶縁樹脂材表面全体がエッチングされ、その結果、表面粗さ(Ra)が大きくなるとともに、凹凸の平均間隔も大きい凹凸が形成されたものと考えられる。
【0104】
以上の結果から明確に判るように、昇温することによって所定温度以上で水と分離する性質を有する両親媒性の有機溶剤を含有させ、その所定温度以上で2層以上に分離した溶媒混合物水溶液を調整し、その水溶液を機械的に分散・乳化させて膨潤液として、その膨潤液を用いて絶縁樹脂基材に膨潤処理を施すことによって、その後のエッチング処理により、絶縁樹脂材の表面上に、極微細なテクスチャーを形成させることが可能となり、小さな表面粗さでもめっき処理後の絶縁樹脂基材とめっき皮膜との間に強固な密着力を形成することができる。
【0105】
そして、このような、絶縁樹脂材の表面上に極微細なテクスチャーが形成され、めっき皮膜との間に強固な密着力が形成された基板を用いることによって、高速信号を扱う配線や高密度の配線等に適したプリント基板を製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種以上の有機溶媒を含有する溶媒混合物水溶液を2層以上に分離させ、2層以上に分離した溶媒混合物水溶液を分散又は乳化して膨潤溶媒混合物水溶液とし、該膨潤溶媒混合物水溶液に絶縁樹脂を浸漬して膨潤させる膨潤処理方法。
【請求項2】
所定温度以上に昇温することによって上記溶媒混合物水溶液を2層以上に分離する請求項1記載の膨潤処理方法。
【請求項3】
上記有機溶媒は、エチレングリコール、エチレングリコールモノアルキルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノアルキルエーテル、トリエチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル、ジプロピレングリコールジアルキルエーテル、グリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ピロリドン、ピロリジン、ラクトンからなる群から選択される少なくとも1種である請求項2記載の膨潤処理方法。
【請求項4】
上記溶媒混合物水溶液は、水溶性金属水酸化物又は水溶性金属塩を含有する請求項1乃至3の何れか1項記載の膨潤処理方法。
【請求項5】
上記溶媒混合物水溶液に界面活性剤を含有させて分散又は乳化する請求項1乃至4の何れか1項記載の膨潤処理方法。
【請求項6】
プリント配線基板の絶縁樹脂に対する表面処理方法であって、
少なくとも1種以上の有機溶媒を含有する溶媒混合物水溶液を2層以上に分離させ、2層以上に分離した溶媒混合物水溶液を分散又は乳化して膨潤溶媒混合物水溶液とし、該膨潤溶媒混合物水溶液に絶縁樹脂を浸漬して膨潤させる膨潤処理工程と、
上記膨潤処理工程にて膨潤処理された絶縁樹脂をエッチングするエッチング処理工程と
を有するデスミア処理方法。

【公開番号】特開2010−182925(P2010−182925A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−25917(P2009−25917)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(000189327)上村工業株式会社 (101)
【Fターム(参考)】