説明

デッキガーニッシュ

【課題】本発明は、効果的に衝撃を吸収するデッキガーニッシュを提供する。
【解決手段】デッキガーニッシュ20は、エンジンルーム12内に設置されたときに車体11の前後方向に向くとともに前後方向に沿う断面形状が車幅方向に一定である第1の前壁部24を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両のフロントフードに加わった衝撃を吸収するデッキガーニッシュに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばエンジンルームが車体前部に設けられる自動車などでは、エンジンルームを覆うフロントフードに衝撃が加わった際に、この衝撃を効率よく吸収することで、歩行者への障害値を軽減することが求められている。
【0003】
一方、車体の前部にエンジンルームが形成される自動車などでは、フロントウィンドガラスの下端からフロントフードの後端までの間に、装飾等およびエンジンルーム内への異物混入抑制のために、車幅方向にわたって延設されるデッキガーニッシュが備えられている。
【0004】
デッキガーニッシュは、例えば樹脂などから形成されており、ある程度の剛性を有している。このため、フロントフードの上方から衝撃が加わった場合、該衝撃によって、フロントフードは下方に変位してデッキガーニッシュに当接するが、このとき、デッキガーニッシュの剛性によってフロントフードの変位が抑制されてしまう。
【0005】
この結果、フロントフードに加わった衝撃が吸収されにくくなる傾向にある。このため、フロントフードに上方から加わった衝撃を効率よく吸収するために、当該衝撃をデッキガーニッシュで吸収することが提案されている。
【0006】
この種のデッキガーニッシュでは、デッキガーニッシュの前壁(配置された際に前方にを向く壁)の断面形状を略Z字状にすることが行われている。前壁の断面形状が略Z字状であることによって、デッキガーニッシュに上方から衝撃が入力されても、当該衝撃によって前壁が効率よく倒れることができるようになる。このことによって、フロントフードに入力された衝撃が、効率よくデッキガーニッシュによって吸収されるようになる(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2006−111105号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に、デッキガーニッシュは、カウルトップの上面に固定されている。それゆえ、デッキガーニッシュの形状は、カウルトップに沿う形状になる。カウルトップの形状は、エンジンルーム内に配置されるエンジンおよびエンジン補機などと干渉しないように考慮されている。
【0008】
エンジンが、エンジンルームにおいて例えば車幅方向中央の後方に配置されると、カウルトップは、エンジンとの干渉を避けるために、カウルトップにおいて車幅方向中央部分(カウルトップにおいてエンジンに対抗する部分)が上方に向かって突出するように湾曲する。そして、カウルトップにおいて車幅方向両端部は、当該カウルトップをエンジンルームの骨組みを構成するサイドメンバなどに固定するため、中央部分によりも下がる形状になる。
【0009】
上記のように構成されるカウルトップに固定されるデッキガーニッシュは、カウルトップに沿う形状となるため、車幅方向中央部分が上方に突出するように湾曲するとともに、車幅方向両端部が下がる形状になる。それゆえ、車体前後方向に沿うデッキガーニッシュの断面形状は、車幅方向に異なる。
【0010】
上記のように、車体前後方向に沿う断面形状が車幅方向に異なることにより、衝撃吸収用のためにZ字状に形成される前壁の形状も、車幅方向中央部分と車幅方向両端部とで異なる。
【0011】
具体的には、上下方向に対する前壁の傾きが、車幅方向に異なる。前壁の傾きが異なることによって、衝撃に対するつぶれやすさに違いが生じる。さらに、前壁の傾きが車幅方向に異なることにより、前壁にねじれが生じる。前壁にねじれが生じることによって、前壁が倒れるためには前壁自体が変形しなければならなくなり、それゆえ、デッキガーニッシュが変形しにくくなる傾向にある。
【0012】
したがって、本発明の目的は、効果的に衝撃を吸収することができるデッキガーニッシュを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のデッキガーニッシュは、エンジンルーム内に設置されたときに車体前後方向に向くとともに前記前後方向に沿う断面形状が車幅方向に一定である縦壁部を備える。
【0014】
前後方向に沿う縦壁部の断面形状が車幅方向に異なる場合、当該縦壁部を変形するために必要な荷重が車幅方向に異なることになり、それゆえ、縦壁部で荷重が吸収されにくくなる。しかしながら、本発明によれば、前後方向に沿う断面形状が車幅方向に一定であるため、縦壁部は、荷重を吸収しやすくなる。
【0015】
本発明の好ましい形態では、前記縦壁部は、前記前後方向に傾斜する。
【0016】
この構造によれば、縦壁部が倒れやすくなる。
【0017】
本発明の好ましい形態では、前記デッキガーニッシュは、第1の壁部と、第2の壁部とを備える。前記第1の壁部は、前記縦壁部の上端に設けられて前後方向に延びる。前記第2の壁部は、前記縦壁部の下端に設けられて前後方向に延びる。前記縦壁部と前記第1の壁部との間には、前記縦壁部と前記第1の壁部との連結部を補強する第1の補強部材が設けられる。前記縦壁部と前記第2の壁部との間には、前記縦壁部と前記第2の壁部との連結部を補強する第2の補強部材が設けられる。
【0018】
この構造によれば、連結部の変形が第1,2の補強部材によって調整できるようになる。
【0019】
本発明の好ましい形態では、前記縦壁部は、前記エンジンルームに設置されたときに上下方向に屈曲する形状の屈曲部を備える。
【0020】
この構造によれば、屈曲部が屈曲することによって、荷重が吸収される。
【0021】
上記形態のさらに好ましい形態では、前記屈曲部には、当該屈曲部を屈曲する荷重を調整する補強部材が設けられる。
【0022】
この構造によれば、補強部材によって、屈曲部で吸収される荷重が調整される。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、デッキガーニッシュは、効果的に衝撃を吸収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の第1の実施形態に係るデッキガーニッシュ20を、図1〜7を用いて説明する。図1は、デッキガーニッシュ20を備える自動車10の車体11の前部を、一部省略して示す斜視図である。
【0025】
図1に示すように、自動車10は、例えば車体の車室よりも前にエンジンルーム12が形成されており、図中、エンジンルーム12内の一部が示されている。エンジンルーム12は、フロントフード17によって覆われている。エンジンルーム12内には、エンジン13と、カウルトップ16と、デッキガーニッシュ20となどが収容されている。
【0026】
フロントフード17は、エンジンルーム12の前縁から後方に向かって延設されており、エンジンルーム12を覆っている。図中、フロントフード17は、2点鎖線で示されており、かつ、一部切り欠かれている。
【0027】
自動車10は、図示しないフロントウィンドガラスを備えている。フロントウィンドガラスは、車室の前方に配置されており、下端がカウルトップ16によって支持されている。カウルトップ16は、エンジンルーム12内に収容される車体11の骨格部材であり、フロントウィンドガラスよりも下方に配置されて、車幅方向に延設されている。
【0028】
なお、エンジンルーム12内には、2点鎖線で示すエンジン13が収容されている。エンジン13は、一例として、エンジンルーム12内において車幅方向略中央に配置されている。
【0029】
それゆえ、カウルトップ16の車幅方向中央部分16a、つまりカウルトップ16においてエンジン13と対向する部分は、エンジン13を避けるように形勢されている。具体的には、カウルトップ16は、車幅方向中央部分16aが上方に向かって突出するように湾曲する形状である。カウルトップ16の車幅方向両端部16bは、中央部分16aからなだらかに下方に下がる形状であり、エンジンルーム12を構成するサイドメンバ12aに固定されている。
【0030】
なお、図中、カウルトップ16の車幅方向一端部しか示されていないが、他端部も同様の構造であってよい。サイドメンバ12aは、車体前後方向に延びており、フェンダ14を支持するなどしている。
【0031】
デッキガーニッシュ20は、カウルトップ16の上方に配置されるとともにフロントフード17の下方に位置しており、車幅方向にわたって延設されている。図2は、デッキガーニッシュ20を拡大して示す斜視図である。なお、図中、デッキガーニッシュ20は、車幅方向の一方側が示されており、他方側が省略されている。デッキガーニッシュ20は、車幅方向に略対称な構造でよいので、一方側を代表して説明する。
【0032】
図2に示すように、デッキガーニッシュ20は、例えば樹脂性であって、前壁21と、上壁23と、横壁22とを有している。
【0033】
前壁21は、デッキガーニッシュ20がエンジンルーム12内に設置された際に車体前方に向いており、車幅方向に延びている。具体的には、前壁21は、例えば、エンジンルーム12の車幅方向両端に配置される両サイドメンバ12a間にわたる長さを有している。前壁21は、第1の前壁部24と、第2の前壁部26とを有している。
【0034】
第1の前壁部24は、前壁21において上下方向略中央から上側部分である。第1の前壁部24は、車幅方向に延びており、例えば両サイドメンバ12a間にわたる長さを有している。
【0035】
図3は、図2中に示されるF3―F3線に沿って示す第1の前壁部24近傍の断面図である。図3は、第1の前壁部24において車幅方向中央部分を示している。図3に示すように、第1の前壁部24の下端縁24aにおいて車幅方向中央部分は、カウルトップ16の中央部分16aの上面に接している。図2に示すように、第1の前壁部24の下端縁24aは、例えば、車幅方向に水平に延びている。
【0036】
第1の前壁部24の上端縁24bは、下端縁24aに対して平行であって、車幅方向に水平である。ゆえ、車幅方向一端から他端までの範囲において、上端縁24bから下端縁24aまでの間隔は、一定である。図3に示すように、第1の前壁部24は、平面であるとともに、上端縁24bが下端縁24aよりも車体前方に位置するように、斜めに傾斜している。また、第1の前壁部24の厚みは、略均一であって、前後方向に沿う断面形状が車幅方向に一定である。第1の前壁部24は、本発明で言う縦壁部の一例である。
【0037】
下端縁24aには、車体前方に延びるフランジ部25が形成されている。フランジ部25は、下端縁24aから前方に延びるとともに車幅方向に水平に延びている。フランジ部25において車幅方向中央部分は、カウルトップ16の中央部分16aの上面に沿う形状であって、当該上面に載置されている。フランジ部25は、本発明で言う第2の壁部の一例である。前後方向に沿うフランジ部25の断面形状は、車幅方向に一定である。
【0038】
上記したように、第1の前壁部24は、上端縁24bが下端縁24aよりも前方に位置するように傾斜しており、かつ、フランジ部25は、車幅方向に水平である。それゆえ、第1の前壁部24とフランジ部25との連結部60は、略鋭角状になる。言い換えると、第1の前壁部24とフランジ部25とのなす角度は、鋭角である。前後方向に沿う連結部60の断面形状は、車幅方向に一定である。
【0039】
上記したように、第1の前壁部24の下端縁24aは、カウルトップ16の中央部分16aの上面に接するとともに車幅方向に略水平である。さらに、カウルトップ16の車幅方向両端部16bは、中央部分16aよりも下方に位置している。このように構成されるカウルトップ16および第1の前壁部24によって、第1の前壁部24の下端縁24aにおいて車幅方向両端近傍は、カウルトップ16の上面から離れる。
【0040】
図2に示すように、第2の前壁部26は、前壁21において第1の前壁部24以外の部分であって、つまり前壁21の下側部分である。第2の前壁部26は、第1の前壁部24とカウルトップ16との間を埋めるように、フランジ部25の前端からカウルトップ16の上面にわたって形成されている。それゆえ、本実施形態では、第2の前壁部26は、前から見た形状が、例えば略3角形状である。第1の前壁部24と第2の前壁部26とは、例えば一体に形成されている。
【0041】
図4は、図2中に示されるF4−F4線に沿って示す前壁21の近傍の断面図である。図4は、第2の前壁部26を示している。図4に示すように、第2の前壁部26は、例えば上下方向に延びている。第2の前壁部26の下端縁26aには、フランジ部27が形成されている。
【0042】
フランジ部27は、カウルトップ16の上面に沿って形成されている。図2に示すように、フランジ部27の車幅方向中央側部分は、第1の前壁部24のフランジ部25と一体に形成されている。フランジ部27の車幅方向端部27bは、サイドメンバ12aの上面と重なるように車幅方向外側に延びている。フランジ部25は、サイドメンバ12aに例えばクリップ28によって固定されている。第2の前壁部26の厚みは、例えば均一であってよい。
【0043】
上壁23は、第1の前壁部24の上端縁24bに一体に形成されており、車体後方に延びている。上壁23は、ウェザストリップ61を保持する保持壁部62と、図示しないワイパ装置が設置されるワイパ装置設置部63と、溝部64とを有している。
【0044】
図3に示すように、保持壁部62は、第1の前壁部24の上端縁24bから後方に延びており、平面である。前後方向に沿う保持壁部62の断面形状は、車幅方向に一定である。保持壁部62は、本発明で言う第1の壁部の一例である。
【0045】
上記したように、第1の前壁部24は傾斜し、かつ、保持壁部62は平面である。それゆえ、第1の前壁部24と保持壁部62との連結部66は、鋭角状になる。言い換えると、第1の前壁部24と保持壁部62とのなす角度は、鋭角となる。前後方向に沿う連結部66の断面形状は、車幅方向に一定である。
【0046】
保持壁部62の前後端には、保持壁部62からウェザストリップ61が脱落することなどを抑制する保持突起65が1つずつ形成されている。前端に形成される保持突起65は、例えば第1の前壁部24の上端縁24bが上方に突出することによって形成されている。ウェザストリップ61は、保持壁部62上に載置されており、当該保持壁部62とフロントフード17との間に介在されている。
【0047】
第1の前壁部の一例としての保持壁部62と、第1の前壁部24と、第2の前壁部の一例としてのフランジ部25との断面形状とは、略Z字状に形成されており、当該断面形状は、車幅方向に一定である。
【0048】
図2に示すように、ワイパ装置設置部63は、保持壁部62の後方に形成されている。ワイパ装置設置部63の後部は、下方に下がる形状である。言い換えると、ワイパ装置設置部63は、前端部が最も上方に突出するように形成されている。このように、ワイパ装置設置部63が下方に下がる形状であることによって、ワイパ装置が上方に突出することが抑制される。
【0049】
なお、上記のように、ワイパ装置設置部63の前端が立ち上がる形状であることによって、フロントフード17とデッキガーニッシュ20との間からエンジンルーム12内が見えることを防止して、車体の見栄えを向上する。
【0050】
溝部64は、保持壁部62とワイパ装置設置部63との間に形成されている。図2〜4に示すように、溝部64は、車幅方向外側が内側よりも次第に広がる形状である。
【0051】
横壁22は、デッキガーニッシュ20において車幅方向外側に向いている部位であって、車幅方向両端を覆っている。横壁22は、デッキガーニッシュ20において車幅方向端側から異物がエンジンルーム12内に進入することを抑制する。横壁22は、第1の横壁部35と、第2の横壁部36とを有している。
【0052】
第1の横壁部35は、第1の前壁部24の車幅方向両端縁24cと上壁23の車幅方向端23aとに、例えば一体に形成されており、車幅方向に向いている。第1の横壁部35は、横壁22において、上下方向略中央より上側部分であって、第1の前壁部24と隣り合う部分である。
【0053】
第1の横壁部35には、第1のスリット38が形成されている。第1のスリット38は、例えば第1の横壁部35の前端縁35bの近傍に配置され、かつ、細長い形状である。第1のスリット38は、車幅方向に第1の横壁部35を貫通している。
【0054】
第2の横壁部36は、第1の横壁部35の先端(車幅方向外側端)に一体に形成されており、下方に向かって延びている。第2の横壁部36の下端縁には、フランジ部42が形成されている。フランジ部42は、サイドメンバ12aの上面に載っており、当該上面に沿って車幅方向外側に延びている。フランジ部42は、例えばサイドメンバ12aの上面に例えばクリップ28で固定される。本実施形態では、フランジ部42は、サイドメンバ12aに2箇所固定されている。
【0055】
第2の横壁部36には、第2のスリット51が形成されている。第2のスリット51は、第2の横壁部36の前端縁36aから後方に向かって形成されている。第2のスリット51は、車幅方向内側から外側に向かって第2の横壁部36を貫通している。
【0056】
また、第2の横壁部36には、段部54が形成されている。段部54は、複数の突部55が連なることによって構成されている。具体的には、本実施形態では、5個の突部55が用いられている。各突部55は、上下方向に互いに所定間隔離間して配置されて第2の横壁部36に形成されており、第2の横壁部36に対して車幅方向外側に向かって突出している。突部55は、第2の横壁部36と一体に形成されている。
【0057】
言い換えると、第2の横壁部36には、車幅方向外側から内側に向かって切り欠くように形成されるとともに前後方向に延びる複数の溝56が上下方向に所定間隔開けて形成されることになる。溝56が複数形成されることによって、第2の横壁部36において溝56間の部分が突部55となる。
【0058】
上記のように構成される第1,2のスリット38,51と段部54とは、衝撃に対して横壁22が変形できるようにするものである。
【0059】
つぎに、デッキガーニッシュ20に荷重が入力された場合における、デッキガーニッシュ20の変形を説明する。
【0060】
図1に矢印で示すように、例えばフロントフード17の上方から荷重が入力されると、デッキガーニッシュ20には、フロントフード17を介して荷重が入力される。第1の前壁部24の上端縁24bが最もフロントフード17に接近している箇所であるため、デッキガーニッシュ20に伝達される荷重は、例えば第1の前壁部24の上端縁24bからに入力される。なお、デッキガーニッシュ20に荷重Lが入力されたとする。
【0061】
図5は、あらかじめ設定された値以上の荷重が入力されたデッキガーニッシュ20を示す斜視図である。なお、あらかじめ設定された値とは、デッキガーニッシュ20が変形し始める値である。荷重Lは、デッキガーニッシュ20が変形を始める値以上の値である。
【0062】
図5に示すように、第1の前壁部24の上端縁24bから荷重が入力されることによって、第1の前壁部24が変形する。図6は、図5中に示されるF6−F6線に沿って示すデッキガーニッシュ20の断面図である。図6は、第1の前壁部24において車幅方向中央部分およびその近傍を示している。図7は、図5中に示されたF7−F7線に沿って示すデッキガーニッシュ20の断面図である。図7は、前壁21において、車幅方向端部を示している。
【0063】
図6,7に示すように、第1の前壁部24の上端縁24bに作用した荷重Lは、連結部60,66に作用する。その結果、第1の前壁部24は、上端縁24bが前方に移動するように、倒れこむ。このとき、連結部66では、保持壁部62が第1の前壁部24に近づくように変位するとともに、連結部60では、第1の前壁部24がフランジ部25に近づくように変位する。図中、変形する前の第1の前壁部24およびその近傍が2点鎖線で示されている。
【0064】
前後方向に沿う第1の前壁部24の断面形状が車幅方向に一定であることによって、連結部60,66を変形するために必要な荷重は、車幅方向に一定となる。それゆえ、第
1の前壁部24は、荷重を吸収しやすくなる。この点について、具体的に説明する。
【0065】
前後方向に沿う第1の前壁部24の断面形状が車幅方向に異なる場合、つまり、第1の前壁部の傾斜が車幅方向に異なる場合では、保持壁部62と第1の前壁部24とフランジ部25とのZ字状の断面形状が、車幅方向に異なることになる。
【0066】
このような場合、連結部60,66を変形するために必要な荷重つまり連結部60,66で吸収される荷重が、車幅方向に異なることになり、それゆえ、第1の前壁部24が倒れにくくなる。つまり、荷重が吸収されにくくなる。
【0067】
さらに、第1の前壁部24の傾斜が異なることによって、第1の前壁部24には、ねじれが生じることになる。このため、第1の前壁部24を倒すためには、連結部60,66を変形するとともに、第1の前壁部24自体も変形しなければならなくなり、それゆえ、デッキガーニッシュ20が荷重を吸収しにくくなる。
【0068】
なお、横壁22は、上記された第1,2のスリット38,51および段部54によって、変形できる構造となっており、それゆえ、前壁21の変形に伴って変形する。このように前壁21と横壁22とが変形することによって、荷重Lがデッキガーニッシュ20に吸収される。
【0069】
このように構成されるデッキガーニッシュ20では、前後方向に沿う第1の前壁部24の断面形状が車幅方向に一定であるため、第1の前壁部24に加わった荷重が効果的に吸収される。つまり、デッキガーニッシュ20は、効果的に荷重を吸収することができる。
【0070】
また、デッキガーニッシュ20の構造が、第1の前壁部24の上下端に1つずつ連結部60,66を設ける構造を採用することによって、第1の前壁部24自体に複雑な衝撃吸収構造を設ける必要がなくなるので、簡素な構造で衝撃を効果的に吸収できるようになる。
【0071】
また、第1の前壁部24が傾斜するので、連結部60,66で荷重が吸収されやすくなる。
【0072】
つぎに、本発明の第2の実施形態に係るデッキガーニッシュを、図8を用いて説明する。なお、第1の実施形態と同様な機能を有する構成は、同一の符号を付して説明を省略する。本実施形態では、連結部60,66に補強部材としてのリブ71,73が設けられる点が第1の実施形態と異なる。他の構造は、第1の実施形態と同様であってよい。
【0073】
上記異なる点について、具体的に説明する。図8は、第1の前壁部24において、車幅方向中央部分における前後方向に沿う断面図である。なお、図8は、後述されるリブ71,73を通るように切断された第1の前壁部24およびその近傍を示している。
【0074】
図8に示すように、連結部60には、板状のリブ71が複数設けられている。リブ71は、例えば連結部60の内側に固定されており、車幅方向に離間して配置されている。連結部66には、板状のリブ73が複数設けられている。リブ73は、例えば連結部66の内側に固定されており、車幅方向に離間して配置されている。
【0075】
リブ71,73は、連結部60,66が屈曲する荷重を調整する。具体的には、リブ71,73の素材、形状、数を調整することによって、連結部60,66が屈曲する荷重が調整される。リブ71は、本発明で言う第2の補強部材の一例である。リブ73は、本発明で言う第1の補強部材の一例である。
【0076】
本実施形態では、第1の実施形態の効果に加えて、デッキガーニッシュ20が吸収可能な荷重を調整することができるようになる。
【0077】
つぎに、本発明の第3の実施形態に係るデッキガーニッシュを、図9を用いて説明する。なお、第1の実施形態と同様な機能を有する構成は、同一の符号を付して説明を省略する。本実施形態では、第1の前壁部24の形状が、第1の実施形態と異なる。他の構造は、第1の実施形態と同様であってよい。
【0078】
上記異なる点について具体的に説明する。図9は、本実施形態の第1の前壁部24において車幅方向中央部分の前後方向に沿う断面図を示している。図9は、後述されるリブ74を通るように切断された第1の前壁部24およびその近傍を示している。
【0079】
図9に示すように、本実施形態では、第1の前壁部24は、上下方向に折れ曲がる形状の屈曲部72を複数備えており、例えばW字状である。屈曲部72の内側には、板状のリブ74が複数設けられている。リブ74は、例えば屈曲部72の内側に固定されており、車幅方向に離間して配置されている。リブ74は、屈曲部72が屈曲する荷重を調整する。具体的には、リブ74の素材、形状、数を調整することによって、屈曲部72が屈曲する荷重が調整される。リブ74は、本発明で言う補強部材の一例である。
【0080】
本実施形態では、前後方向に沿う第1の前壁部24の断面形状が車幅方向に一定であることによって、荷重が入力されると各屈曲部72が効率よく屈曲するので、第1の実施形態と同様な効果が得られる。また、リブ74によって、デッキガーニッシュ20が吸収可能な荷重を調整することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るデッキガーニッシュを備える自動車の車体の前部を一部省略して示す斜視図。
【図2】図1に示されたデッキガーニッシュを拡大して示す斜視図。
【図3】図2中に示されるF3―F3線に沿って示す第1の前壁部近傍の断面図。
【図4】図2中に示されるF4−F4線に沿って示す前壁の近傍の断面図。
【図5】図1に示されたデッキガーニッシュにあらかじめ設定された値以上の荷重が入力された状態を示す斜視図。
【図6】図5中に示されるF6−F6線に沿って示すデッキガーニッシュの断面図。
【図7】図5中に示されるF7−F7線に沿って示すデッキガーニッシュの断面図。
【図8】本発明の第2の実施形態に係るデッキガーニッシュの第1の前壁部を、車幅方向中央部分において前後方向に沿って示す断面図。
【図9】本発明の第3の実施形態に係るデッキガーニッシュの第1の前壁部を、車幅方向中央部分において前後方向に沿って示す断面図。
【符号の説明】
【0082】
12…エンジンルーム、20…デッキガーニッシュ、25…フランジ部(第2の補強部材)、62…保持壁部(第1の壁部)、71…リブ(第2の補強部材)、72…屈曲部、73…リブ(第1の補強部材)、74…リブ(補強部材)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンルーム内に設置されたときに車体前後方向に向くとともに前記前後方向に沿う断面形状が車幅方向に一定である縦壁部を具備することを特徴とするデッキガーニッシュ。
【請求項2】
前記縦壁部は、前記前後方向に傾斜することを特徴とする請求項1に記載のデッキガーニッシュ。
【請求項3】
請求項1に記載において、
前記縦壁部の上端に設けられて前後方向に延びる第1の壁部と、
前記縦壁部の下端に設けられて前後方向に延びる第2の壁部と、
を具備し、
前記縦壁部と前記第1の壁部との間には、前記縦壁部と前記第1の壁部との連結部を補強する第1の補強部材が設けられ、
前記縦壁部と前記第2の壁部との間には、前記縦壁部と前記第2の壁部との連結部を補強する第2の補強部材が設けられることを特徴とするデッキガーニッシュ。
【請求項4】
前記縦壁部は、前記エンジンルームに設置されたときに上下方向に屈曲する形状の屈曲部を具備することを特徴とする請求項1に記載のデッキガーニッシュ。
【請求項5】
前記屈曲部には、当該屈曲部を屈曲する荷重を調整する補強部材が設けられることを特徴とする請求項4に記載のデッキガーニッシュ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−155768(P2008−155768A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−346482(P2006−346482)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】