説明

デッキガーニッシュ

【課題】本発明は、エンジンルーム内への異物混入を抑制するとともに、効果的に衝撃を吸収することができるデッキガーニッシュを提供する。
【解決手段】デッキガーニッシュ20は、配置された際に車体前方に向く前壁21と、配置された際に車幅方向外側に向くとともに荷重を吸収する荷重吸収構造52を備える横壁22とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両のフロントフードに加わった衝撃を吸収するデッキガーニッシュに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばエンジンルームが車体前部に設けられる自動車などでは、エンジンルームを覆うフロントフードに衝撃が加わった際に、この衝撃を効率よく吸収することで、歩行者への障害値を軽減することが求められている。
【0003】
一方、車体の前部にエンジンルームが形成される自動車などでは、フロントウィンドガラスの下端からフロントフードの後端までの間に、装飾等および、エンジンルーム内への異物混入抑制のために車幅方向にわたって延設されるデッキガーニッシュが備えられている。
【0004】
デッキガーニッシュは、例えば樹脂などから形成されており、ある程度の剛性を有している。このため、フロントフードの上方から衝撃が加わった場合、該衝撃によって、フロントフードは下方に変位してデッキガーニッシュに当接するが、このとき、デッキガーニッシュの剛性によってフロントフードの変位が抑制されてしまう。
【0005】
この結果、フロントフードに加わった衝撃が吸収されにくくなる傾向にある。このため、フロントフードに上方から加わった衝撃を効率よく吸収するために、当該衝撃をデッキガーニッシュで吸収することが提案されている。
【0006】
この種のデッキガーニッシュでは、デッキガーニッシュの前壁(配置された際に前方にを向く壁)の断面形状を略Z字状にすることが行われている。前壁の断面形状が略Z字状であることによって、デッキガーニッシュに上方から衝撃が入力されても、当該衝撃によって前壁が効率よく変形できるようになる。このことによって、フロントフードに入力された衝撃が、効率よくデッキガーニッシュによって吸収されるようになる(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2006−111105号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、エンジンルーム内への異物混入を抑制するために、横壁を備えるデッキガーニッシュが提案されている。横壁は、車幅方向外側に向いている。
【0008】
デッキガーニッシュは、横壁を備えることによって剛性が向上することが考えられる。デッキガーニッシュの剛性が向上すると、荷重が吸収されにくくなることが考えられるので、デッキガーニッシュの剛性が必要以上に向上することは、好ましくない。
【0009】
また、横壁は、前壁の変形を阻害しないように例えばゴムなどの比較的柔らかい別部材で形成することが考えられる。しかしながら、横壁がやわらかい部材で形成されると、デッキガーニッシュに入力される荷重は、主に前壁で吸収されるようになる。
【0010】
デッキガーニッシュの構造が、主に前壁だけで衝撃を吸収する構造であると、吸収できる荷重の範囲が限定されてしまい、荷重を効果的に吸収することが抑制される。
【0011】
したがって、本発明の目的は、エンジンルーム内への異物混入を抑制するとともに、効果的に衝撃を吸収することができるデッキガーニッシュを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のデッキガーニッシュは、配置された際に車体前方に向く前壁と、配置された際に車幅方向外側に向くとともに荷重を吸収する荷重吸収構造を備える横壁とを備える。
【0013】
この構造によれば、デッキガーニッシュが前壁と横壁とを備えることによって、エンジンルーム内への異物の進入経路が少なくなる。さらに、横壁は、荷重吸収構造によって、前壁の変形を阻害しなくなる。また、荷重は、前壁と横壁とによって吸収されるようになるので、吸収可能な荷重の範囲が向上する。
【0014】
本発明の好ましい形態では、前記荷重吸収構造は、前記横壁の一部が他の部位よりも厚みが薄く形成される薄肉部を備える。
【0015】
この構造によれば、荷重吸収構造は、簡素な構造となる。また、薄肉部の数、形状、大きさなどを調整することによって、吸収する荷重を調整することができる。
【0016】
または、前記荷重吸収構造は、前記横壁の少なくとも一部に形成されて当該横壁を車幅方向内側から外側へ貫通し、周方向に当該横壁を不連続にする不連続部である。
【0017】
この構造によれば、荷重吸収構造は、簡素な構造となる。また、不連続部の形状、大きさ、数などを調整することによって、吸収する荷重を調整することができる。
【0018】
または、本発明のデッキガーニッシュは、配置された際に車体前方に向く前壁と、配置された際に車幅方向外側に向く横壁とを備える。前記前壁の車幅方向側端縁と、前記側端縁と隣り合う前記横壁の前端縁との間の少なくとも一部には、前記側端縁と前記前端縁とを不連続にする不連続部が形成される。
【0019】
この構造によれば、横壁と前壁とによって、エンジンルーム内への異物の進入経路が少なくなる。さらに、不連続部によって、前壁の変形と横壁の変形とが互いに干渉することが抑制されるので、デッキガーニッシュは、変形しやすくなる。
【0020】
上記形態の好ましい形態では、前記前壁と前記横壁とにおいて前記不連続部を挟んで互いに隣り合う部位の一方には、他方の一部を覆う腕部が形成される。前記腕部と前記他方とは、互いに回動可能に連結される。
【0021】
この構造によれば、前壁と横壁とが不連続部を挟んで腕部を用いて回動可能に連結されるので、前壁の姿勢と横壁の姿勢とが安定する。さらに、変形などによって前壁の姿勢と横壁の姿勢とが互いにずれるような場合であって、互いに回動自在であるので、お互いの姿勢のずれが吸収される。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、デッキガーニッシュは、エンジンルーム内への異物混入を抑制することができるとともに、衝撃を効果的に吸収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の一実施形態に係るデッキガーニッシュ20を、図1〜7を用いて説明する。図1は、デッキガーニッシュ20を備える自動車10の車体11の前部を、一部省略して示す斜視図である。
【0024】
図1に示すように、自動車10は、例えば車体の車室よりも前にエンジンルーム12が形成されており、図中、エンジンルーム12内の一部が示されている。エンジンルーム12は、フロントフード17によって覆われている。エンジンルーム12内には、エンジン13と、カウルトップ16と、デッキガーニッシュ20となどが収容されている。
【0025】
フロントフード17は、エンジンルーム12の前縁から後方に向かって延設されており、エンジンルーム12を覆っている。図中、フロントフード17は、2点鎖線で示されており、かつ、一部切り欠かれている。
【0026】
自動車10は、図示しないフロントウィンドガラスを備えている。フロントウィンドガラスは、車室の前方に配置されており、下端がカウルトップ16によって支持されている。カウルトップ16は、エンジンルーム12内に収容される車体11の骨格部材であり、フロントウィンドガラスよりも下方に配置されて、車幅方向に延設されている。
【0027】
なお、エンジンルーム12内には、2点鎖線で示すエンジン13が収容されている。エンジン13は、一例として、エンジンルーム12内において車幅方向略中央に配置されている。
【0028】
それゆえ、カウルトップ16の車幅方向中央部分16a、つまりカウルトップ16においてエンジン13と対向する部分は、エンジン13を避けるように形勢されている。具体的には、カウルトップ16は、車幅方向中央部分16aが上方に向かって突出するように湾曲する形状である。カウルトップ16の車幅方向両端部16bは、中央部分16aからなだらかに下方に下がる形状であり、エンジンルーム12を構成するサイドメンバ12aに固定されている。
【0029】
なお、図中、カウルトップ16の車幅方向一端部しか示されていないが、他端部も同様の構造であってよい。サイドメンバ12aは、車体前後方向に延びており、フェンダ14を支持するなどしている。
【0030】
デッキガーニッシュ20は、カウルトップ16の上方に配置されるとともにフロントフード17の下方に位置しており、車幅方向にわたって延設されている。図2は、デッキガーニッシュ20を拡大して示す斜視図である。なお、図中、デッキガーニッシュ20は、車幅方向の一方側が示されており、他方側が省略されている。デッキガーニッシュ20は、車幅方向に略対称な構造でよいので、一方側を代表して説明する。
【0031】
図2に示すように、デッキガーニッシュ20は、例えば樹脂性であって、前壁21と、横壁22と、上壁23とを有している。
【0032】
前壁21は、車体前方に向いており、車幅方向に延びている。具体的には、前壁21は、例えば、エンジンルーム12の車幅方向両端に配置される両サイドメンバ12a間にわたる長さを有している。前壁21は、第1の前壁部24と、第2の前壁部26とを有している。
【0033】
第1の前壁部24は、前壁21において上下方向略中央から上側部分である。第1の前壁部24は、車幅方向に延びており、例えば両サイドメンバ12a間にわたる長さを有している。
【0034】
第1の前壁部24の下端縁24aにおいて車幅方向中央部分は、カウルトップ16の中央部分16aの上面に接している。第1の前壁部24の下端縁24aは、例えば、車幅方向に水平に延びている。下端縁24aには、車体前方に延びるフランジ部25が形成されている。フランジ部25は、上記されたように、車幅方向に例えば水平に延びている。フランジ部25において車幅方向中央部分は、カウルトップ16の上面に沿う形状であって、当該上面に載置されている。
【0035】
第1の前壁部24の上端縁24bと下端縁24aとの間は、例えば車幅方向一端から他端までの範囲で、略一定の間隔である。それゆえ、上端縁24bも車幅方向に略水平である。第1の前壁部24は、平面であるとともに、上端縁24bが下端縁24aよりも車体前方に位置するように、斜めに傾斜している。
【0036】
第1の前壁部24の厚みは、例えば略均一であってよい。なお、これは一例であって、限定されない。例えば、局部的に厚みが異なるように形成されてもよい。
【0037】
上記したように、第1の前壁部24の下端縁24aは、カウルトップ16の中央部分16aの上面に接するとともに車幅方向に略水平である。さらに、カウルトップ16の車幅方向両端部16bは、中央部分16aよりも下方に位置している。このように構成されるカウルトップ16および第1の前壁部24によって、第1の前壁部24の下端縁24aにおいて車幅方向両端近傍は、カウルトップ16の上面から離れる。
【0038】
第2の前壁部26は、前壁21において第1の前壁部24以外の部分であって、つまり前壁21の下側部分である。第2の前壁部26は、第1の前壁部24とカウルトップ16との間を埋めるように、第1の前壁部24のフランジ部25の前端から下方に向かって形成されている。それゆえ、本実施形態では、第2の前壁部26は、前から見た形状が、例えば略3角形状である。第1の前壁部24と第2の前壁部26とは、例えば一体に形成されている。
【0039】
第2の前壁部26の下端縁26aには、フランジ部27が形成されている。フランジ部27の車幅方向中央側部分は、第1の前壁部24のフランジ部25と一体に形成されている。フランジ部27の車幅方向端部27bは、サイドメンバ12aの上面と重なるように車幅方向外側に延びている。フランジ部25は、サイドメンバ12aに例えばクリップ28によって固定されている。
【0040】
第2の前壁部26の厚みは、例えば均一であってよい。例えば、第1の前壁部24と略同じであってよい。なお、これに限定されない。第2の前壁部26の厚みは、局部的に異なるように形成されてもよい。
【0041】
上壁23は、第1の前壁部24の上端縁24bに例えば一体に形成されており、車体後方に向かって延びている。上壁23には、例えば図示しないワイパ装置などが設置される。それゆえ、上壁23は、第1の前壁部24の上端縁24bから後方に移動するにつれて、例えば下方に向かって突出するように湾曲している。このように湾曲状に形成される湾曲部29に例えば図示しないワイパ装置などが設置されていることによって、ワイパ装置が上方に突出することが抑制される。
【0042】
なお、上記のように、上壁23が下方に突出するように湾曲する形状であることによって、上壁23において第1の前壁部24の上端縁24bの近傍は、湾曲部29の下端部29aに対して立ち上がる形状である。この立ち上がり部30は、フロントフード17に向かって立ち上がっている。立ち上がり部17は、フロントフード17とデッキガーニッシュ20との間からエンジンルーム12内が見えることを防止して、車体の見栄えを向上している。
【0043】
上壁23の厚みは、例えば略均一であってよい。例えば、前壁21と同じであってもよい。なお、これは、限定されるものではない。上壁23は、例えば局部的に厚みが異なるように形成されてもよい。
【0044】
上記のように、前壁21と上壁23とが一体に形成されることによって、第1の前壁部24、フランジ部25および上壁23において第1の前壁部24の上端縁24bの近傍の断面形状は、略Z字状になる。これは、図中矢印で示すように、デッキガーニッシュ20に衝撃が作用する際に、前壁21が効率よく変形して、衝撃を吸収できるようにするためである。
【0045】
横壁22は、デッキガーニッシュ20において車幅方向外側に向いている部位であって、車幅方向両端を覆っている。横壁22は、第1の横壁部35と、第2の横壁部36とを有している。横壁22は、デッキガーニッシュ20において車幅方向端側から異物がエンジンルーム12内に進入することを抑制する。
【0046】
第1の横壁部35は、第1の前壁部24の車幅方向両端縁24cと上壁23の車幅方向端23aとに、例えば一体に形成されており、車幅方向に向いている。第1の横壁部35は、横壁22において、上下方向略中央より上側部分であって、矢印で示す周方向Cに第1の前壁部24と隣り合う部分である。なお、本発明で言う周方向とは、上下方向V周りの周方向である。
【0047】
第1の横壁部35の下端縁35aには、フランジ部37が形成されている。フランジ部37は、車幅方向外側に向かって延びている。フランジ部37は、第1の前壁部24のフランジ部25と一体に形成されている。
【0048】
第1の横壁部35には、第1のスリット38が形成されている。第1のスリット38は、上壁23の立ち上がり部30の下方に配置されており、フランジ部37の車幅方向中間近傍まで延びている。
【0049】
具体的には、第1のスリット38は、第1の横壁部35の前端縁35bの近傍に配置されており、下端縁35aに向かう細長い形状である。第1のスリット38は、車幅方向に第1の横壁部35とフランジ部37とを貫通している。つまり、第1のスリット38は、第1の横壁部35を周方向Cに不連続にしている。第1のスリット38は、本発明で言う荷重吸収構造としての不連続部の一例である。
【0050】
第2の横壁部36は、本体部40と、荷重吸収構造52とを備えている。本体部40は、第1の横壁部35のフランジ部37の先端(車幅方向外側端)に一体に形成されており、下方に向かって延びている。
【0051】
本体部40の下端縁には、フランジ部42が形成されている。フランジ部42は、サイドメンバ12aの上面に載っており、当該上面に沿って車幅方向外側に延びている。フランジ部42は、例えばサイドメンバ12aの上面に例えばクリップ28で固定される。本実施形態では、フランジ部42は、サイドメンバ12aに2箇所固定されている。
【0052】
本体部40は、第2の前壁部26と周方向Cに連続していない。具体的には、第2の前壁部26と本体部40との間には、切れ目43が形成されている。切れ目43は、略上下方向に延びている。それゆえ、第2の前壁部26と第2の横壁部36とは、クリップ46で互いに固定されている。切れ目43は、本発明で言う不連続部として機能している。
【0053】
この固定構造を具体的に説明する。図3は、図2中に示されるF3−F3線に沿って示すデッキガーニッシュ20の断面図であって、第2の前壁部26と第2の横壁部36とがクリップ46を用いて固定されている様子を示している。
【0054】
図2に示すように、第2の横壁部36の前端縁36aにおいて例えば上下方向略中央には、腕部44が形成されている。図3に示すように、腕部44は、本体部40の前端縁36aから車体前方に向かって延びるとともに、第2の前壁部26の車幅方向端を回りこんで、車幅方向内側に延びている。それゆえ、腕部44は、上方から見ると、略L字状である。
【0055】
腕部44の前部分(腕部44において前後方向に第2の前壁部26と重なる部分)45は、クリップ46を用いて第2の前壁部26に連結されている。クリップ46は、一対の抜け止部47と、これら抜け止部47間に設けられる軸部48とを有している。軸部48は、例えば円柱状である。第2の前壁部26と第2の横壁部36の本体部40とは、抜け止部47間に挟まれるとともに、軸部48が第2の前壁部26と第2の横壁部36とを貫通している。
【0056】
腕部44において本体部40との接続箇所49には、第1のヒンジ部50が形成されている。第1のヒンジ部50の構造は、接続箇所49が車幅方向内側から外側に向かって切り欠かれるように腕部44の他の部位よりも薄く形成されることによって、形成されている。それゆえ、図2中、第1のヒンジ部50は、点線で示されている。点線で示すように、例えば第1のヒンジ部50は、腕部44の上端から下端にわたって形成されている。
【0057】
このように、第2の前壁部26と第2の横壁部36とが、腕部44とクリップ46とによって固定されることによって、第2の前壁部26と第2の横壁部36との姿勢が安定する。それゆえ、デッキガーニッシュ20をエンジンルーム12内に取り付ける際にも、当該取り付け作業が容易になる。なお、クリップ28は、クリップ46と略同じ構造であってよい。
【0058】
本体部40において腕部44の上方には、第2のスリット51が形成されている。第2のスリット51は、本体部40前端縁36aから後方に向かって切りかかれるように形成されている。第2のスリット51は、車幅方向内側から外側に向かって本体部40を貫通している。第2のスリット51は、本発明で言う不連続部として機能している。
【0059】
図4は、図2中に示されるF4−F4線に沿って示す横壁22の断面図である。図2,4に示すように、荷重吸収構造52は、第2のヒンジ部53と、段部54とを備えている。
【0060】
第2のヒンジ部53は、本体部40において上端の近傍に形成されている。図4に示すように、第2のヒンジ部53は、本体部40が車幅方向内側から外側に向かって切りかかれるように薄く形成されることによって、形成されている。それゆえ、図2中、第2のヒンジ部53は点線で示されている。図2に示すように、第2のヒンジ部53は、例えば本体部40の前端から後端にわたって形成されている。第2のヒンジ部53は、本発明で言う薄肉部の一例である。
【0061】
図4に示すように、段部54は、本体部40において第2のヒンジ部53よりも下方に形成されている。段部54は、複数の突部55が連なることによって構成されている。具体的には、本実施形態では、5個の突部55が用いられている。各突部55は、上下方向に互いに所定間隔離間して配置されて本体部40に形成されており、本体部40に対して車幅方向外側に向かって突出している。突部55は、本体部40と一体に形成されている。
【0062】
言い換えると、本体部40には、車幅方向外側から内側に向かって切り欠くように形成されるとともに前後方向に延びる複数の溝56が上下方向に所定間隔開けて形成されることになる。溝56が複数形成されることによって、本体部40において溝56間の部分が突部55となる。なお、本実施形態では、上から3個目の突部55は、周方向に腕部44と隣り合うように配置されている。溝56は、本発明で言う薄肉部の一例である。
【0063】
つぎに、デッキガーニッシュ20に荷重が入力された場合における、デッキガーニッシュ20の変形を説明する。
【0064】
図1に示すように、例えばフロントフード17の上方から荷重Lが入力されると、デッキガーニッシュ20には、フロントフード17を介して荷重Lが入力される。第1の前壁部24の上端縁24bが最もフロントフード17に接近している箇所であるため、デッキガーニッシュ20に伝達される荷重は、例えば第1の前壁部24の上端縁24bからに入力される。
【0065】
図5は、あらかじめ設定された値以上の荷重が入力されたデッキガーニッシュ20を示す斜視図である。なお、あらかじめ設定された値とは、デッキガーニッシュ20が変形し始める値である。荷重Lは、デッキガーニッシュ20が変形を始める値以上の値である。
【0066】
図5に示すように、第1の前壁部24の上端縁24bから荷重が入力されることによって、第1の横壁部35が変形する。具体的には、上記されたように、第1の前壁部24およびその周辺を合わせた断面形状は、略Z字状である。それゆえ、第1の前壁部24は、図中矢印で示すように、前方に倒れこむように変形する。
【0067】
図6は、図5中に示されるF6−F6線に沿って示す横壁22の断面図である。図6は、変形している横壁22を上下方向に沿って切断して示す断面図である。第1の横壁部35は、第1の前壁部24の変形にあわせて、例えば車幅方向外側に向かって突出するようにたわむ。この際、第1のスリット38によって、第1の横壁部35は、変形しやすい。
【0068】
ついで、図5に示すように、第2の前壁部26は、図中矢印で示すように、後方に突出するようにたわむ。図6に示すように、第2の前壁部26の変形にあわせて、第2の横壁部36も変形する。第2の横壁部36に上方より荷重が入力されると、当該荷重は、第2のヒンジ部53と段部54とに作用する。
【0069】
第2のヒンジ部53は、上記されたように、薄く形成されている。それゆえ、第2のヒンジ部53に荷重が入力されることによって、本体部40は、第2のヒンジ部53で屈曲する。具体的には、本体部40において第2のヒンジ部53よりも下側が車幅方向外側に向かって折れ曲がる。
【0070】
段部54は、上記されたように、薄く形成された溝56を備える構造である。それゆえ、段部54に荷重が入力されると、段部54は、車幅方向外側に向かって突出するように、湾曲する。なお、本実施形態では、上から3個目の突部55が腕部44と隣りあっているため、上から3個目の突部55を境に段部の上方と下方とが車幅方向外側に向かって湾曲している。
【0071】
図7は、上記のように変形しているデッキガーニッシュ20において、腕部44の近傍を示す斜視図である。図7に示すように、第2の前壁部26と第2の横壁部36とは、切れ目43によって連続していない。また、第2の前壁部26と第2の横壁部36とは、腕部44とクリップ46とによって連結されている。
【0072】
それゆえ、第2の前壁部26の変形と第2の横壁部36の変形とは、互いに大きく干渉することがない。それゆえ、第2の前壁部26の変形と第2の横壁部36の変形との違いから、上下方向にクリップ46の位置と腕部44の位置とがずれる。
【0073】
このとき、腕部44と第2の前壁部26とがクリップ46の軸部48回りに相対的に回転することによって、上記のような互いの位置のずれが吸収される。それゆえ、第2の前壁部26と第2の横壁部36との変形が大きく阻害されることが抑制される。
【0074】
なお、図5に示すように、第2の前壁部26のフランジ部27をサイドメンバ12aに固定するクリップ28の軸部48には、せんだん方向の荷重が作用する。同様に、第2の横壁部36のフランジ部37をサイドメンバ12aに固定するクリップ28の軸部48には、せんだん方向の荷重が作用する。
【0075】
これらのせんだん荷重が、各クリップ28に対してあらかじめ設定された値を超えると、各クリップ28は、破壊されるように形成されているクリップ28が破壊されることによっても、荷重Lが吸収される。
【0076】
第2の前壁部26と腕部44とを互いに連結するクリップ46の軸部48には、第2の前壁部26と腕部44の相対位置の変化によって、せんだん荷重が作用する。このせんだん荷重が、クリップ46に対してあらかじめ設定された値を超えると、クリップ46は破壊されるように形成されている。クリップ46が破壊されることによっても荷重が吸収される。
【0077】
また、第2の前壁部26と第2の横壁部36とに加わる荷重がより大きくなると、第1,2のヒンジ部50,53が破壊される。第1,2のヒンジ部50,53は破壊されることによっても、荷重が吸収される。
【0078】
このように構成されるデッキガーニッシュ20では、横壁22に荷重吸収構造52が施されることによって、横壁22が前壁21の変形を阻害することが抑制される。さらに、前壁21と横壁22とが変形することによって、デッキガーニッシュ20が吸収可能な荷重の範囲が大きくなる。それゆえ、デッキガーニッシュ20は、横壁22によって異物の進入が抑制されるとともに、荷重を効果的に吸収できる。
【0079】
荷重吸収構造52の一例として第2のヒンジ部53が用いられることによって、簡素な構造で、横壁22を変形することができる。また、荷重吸収構造52の一例として溝56を複数有する段部54が用いられることによって、横壁22(具体的には、第2の横壁部36)の変形を調整することができる。この点について、具体的に説明する。
【0080】
上記のように、段部54は、複数の溝56を有する構造である。段部54は、本体部40が溝56で屈曲することによって、変形する。それゆえ、溝56の数、形状、大きさを調整することによって、段部54で吸収される荷重を調整することができる。
【0081】
また、第1の横壁部35に第1のスリット38が形成されることによって、第1の横壁部35が変形しやすくなる。さらに、第1のスリット38の数、形状、大きさを調整することによって、第1の横壁部35の変形を調整することができる。
【0082】
このように、荷重吸収構造52は、荷重による変形を調整する調整機構としても機能する。
【0083】
また、第2の前壁部26と第2の横壁部36とが切れ目43によって互いに不連続であることによって、第2の横壁部36が第2の前壁部26の変形を阻害することが抑制される。
【0084】
また、第2の横壁部36に第2のスリット51が形成されることによって、第2の横壁部36が変形しやすくなる。
【0085】
また、第2の前壁部26と第2の横壁部36とが互いにクリップ46によって連結されることによって、切れ目43に起因してお互いの姿勢が不安定になることが抑制される。それゆえ、デッキガーニッシュ20をエンジンルーム12内に設置するなどの作業に対して、デッキガーニッシュ20の剛性が保たれるにで、当該作業を行いやすくなる。さらに、腕部44と第2の前壁部26とがクリップ46によって互いに回転自在に支持される。それゆえ、荷重による変形がお互いに影響することが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の一実施形態に係るデッキガーニッシュを備える自動車の車体の前部を、一部省略して示す斜視図。
【図2】図1に示されたデッキガーニッシュを拡大して示す斜視図。
【図3】図2中に示されるF3−F3線に沿って示すデッキガーニッシュの断面図。
【図4】図2中に示されるF4−F4線に沿って示す横壁の断面図。
【図5】図1に示されたデッキガーニッシュにあらかじめ設定された値以上の荷重が入力された状態を示す斜視図。
【図6】図5中に示されるF6−F6線に沿って示す横壁の断面図。
【図7】図1に示したデッキガーニッシュが変形した状態において、腕部の近傍を示す斜視図。
【符号の説明】
【0087】
20…デッキガーニッシュ、21…前壁、22…横壁、38…第1のスリット(不連続部)、43…切れ目(不連続部)、44…腕部、51…第2のスリット(不連続部)、52…荷重吸収構造、53…第2のヒンジ部(薄肉部)、56…溝(薄肉部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配置された際に車体前方に向く前壁と、
配置された際に車幅方向外側に向くとともに、荷重を吸収する荷重吸収構造を備える横壁と
を具備することを特徴とするデッキガーニッシュ。
【請求項2】
前記荷重吸収構造は、前記横壁の一部が他の部位よりも厚みが薄く形成される薄肉部を備えることを特徴とする請求項1に記載のデッキガーニッシュ。
【請求項3】
前記荷重吸収構造は、前記横壁の少なくとも一部に形成されて当該横壁を車幅方向内側から外側へ貫通し、周方向に当該横壁を不連続にする不連続部を備えることを特徴とする請求項1に記載のデッキガーニッシュ。
【請求項4】
配置された際に車体前方に向く前壁と、
配置された際に車幅方向外側に向く横壁と
を具備し、
前記前壁の車幅方向側端縁と、前記側端縁と隣り合う前記横壁の前端縁との間の少なくとも一部には、前記側端縁と前記前端縁とを不連続にする不連続部が形成されることを特徴とするデッキガーニッシュ。
【請求項5】
前記前壁と前記横壁とにおいて前記不連続部を挟んで互いに隣り合う部位の一方には、他方の一部を覆う腕部が形成され、
前記腕部と前記他方とは、互いに回動可能に連結されることを特徴とする請求項4に記載のデッキガーニッシュ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−155818(P2008−155818A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−348309(P2006−348309)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【出願人】(592190970)株式会社イクヨ (3)
【Fターム(参考)】