説明

デッキクレーンの旋回制御装置

【課題】 デッキクレーンの容量可変機構付き油圧モータの容量を小さくして高速で旋回させて停止時に大容量で低速に切り換えるときに瞬間的に油圧モータの入口側が負圧になることを未然に防止するようにする。
【解決手段】 容量を可変にできるようにしてある油圧モータ1,2に圧油給排ライン5,6及び分岐ライン5a,5bを接続し、圧油を、方向切換弁9を介して圧油給排ライン5と分岐ライン5a又は圧油給排ライン6と分岐ライン6aを通して油圧モータ1,2に供給し、該油圧モータ1,2から排出された圧油を、圧油給排ライン6と分岐ライン6a又は圧油給排ライン5と分岐ライン5aを通してタンク側へ排出させるようにしてある構成において、上記方向切換弁からタンク側に延びる圧油排出ライン8の途中に背圧弁55を設ける。該背圧弁55と方向切換弁9との間の圧油排出ライン8と、圧油給排ライン5及び6との間に、補給ライン51と52を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶に設置されて油圧モータにより旋回動作が行えるようにしてあるデッキクレーンの旋回制御装置に関するものであり、詳しくは、2段式の容量可変機能付きの油圧モータを用いて旋回時の高速、低速の切り換えを行うようにするときに用いるデッキクレーンの旋回制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
デッキクレーンのうち、大型のデッキクレーンでは、旋回用の油圧モータは2個用いられ、フレーム上の旋回環の内歯ギヤに噛合させた2つのピニオンを、それぞれ対応する油圧モータを同期して回転駆動させることにより旋回環を旋回させるようにし、上記油圧モータの回転方向を切り換えることにより、右旋回、左旋回させるようにしてある。
【0003】
これまでに用いられているデッキクレーンの旋回制御装置としては、図2に示す如く、負荷の大きさにより低速(高トルク)、高速(低トルク)に切り換えて使用することができるように容量可変機構付きの油圧モータ1,2を用いたものが実施されている。
【0004】
上記容量可変機構付き油圧モータ1,2は、図2に示す如く、アキシャルシリンダ3のアキシャルピストン4をストローク方向へ往復動させることにより傾転角を変え、供給される圧油の量を可変にするようにしてあるもので、各油圧モータ1,2には、圧油給排ライン5,6と分岐ライン5a,6aが接続されている。
【0005】
上記各圧油給排ライン5と6は、図示してない圧油供給源としての油圧ポンプの吐出側に接続された圧油供給ライン7と図示しないタンクへの圧油排出ライン8に、方向切換弁9を介して接続し、各油圧モータ1,2が、上記方向切換弁9の切り換えにより、圧油給排ライン5を通して供給される圧油により一方向に回転駆動させられたり、圧油給排ライン6を通して供給される圧油により反対方向に回転駆動させられるようにしてある。
【0006】
又、上記油圧モータ1,2の容量の可変は、アキシャルシリンダ3のアキシャルピストン4を移動することによる傾転角の変更により行うようにしてあり、圧油供給ライン7から分岐させた圧油ライン7aの圧力をアキシャルシリンダ3の圧力室3aに供給して低速(大容量)に傾転角を調整したり、圧油ライン7aの圧油を切換弁10を介して図上右側の圧力室3bに供給して高速(小容量)に傾転角を調整するようにしてある。上記切換弁10の切り換えは、上記圧油ライン7a途中の電磁弁11の切り換えにより圧油を切換弁10に作用させて切換弁10を切り換えたり、該切換弁10をスプリングにより復帰させるようにしてある。
【0007】
更に、上記圧油給排ライン5と6には、カウンターバランス弁12,13があり、カウンターバランス弁13は、方向切換弁9をポート(イ)に切り換えたときに、圧油給排ライン5からのパイロット油圧が供給されて油圧モータ1,2の出口側となる圧油給排ライン6を方向切換弁9へ連通させるようにしてある。カウンターバランス弁12は、方向切換弁9をポート(ロ)に切り換えたときに、圧油給排ライン6からパイロット油圧が供給されて油圧モータ1,2の出口側となる圧油給排ライン5を方向切換弁9へ連通させるようにしてある。
【0008】
14,15は圧油供給ライン5,6の間に設けたリリーフ弁である。
【0009】
上記のような構成としてある2段式の容量可変機構付きの油圧モータ1,2を用いるデッキクレーンの旋回制御を行う場合は、油圧モータ1,2を、負荷の大きさにより低速(大容量・高トルク)、高速(小容量・低トルク)に切り換えて使用するようにしてある。
【0010】
次に、デッキクレーンの油圧駆動装置として、旋回制御ではないが、油圧モータを制御して、吊荷を巻上げ、巻卸しを行うようにしたものとして、図3に示すようにしたものがある。
【0011】
すなわち、図3に示すデッキクレーンの油圧駆動装置は、油圧ポンプ16から2個のタンデム型油圧モータ17,18に接続される作動油路19にコントロール弁20を設け、油圧モータ17,18に接続される作動油路19への作動油の供給、遮断を切り換えることにより、油圧モータ17,18に直結されている巻上装置21の巻上げ、中立、巻卸しの動作の切り換えを行うようにし、上記油圧モータ17の出口に接続した油路22と、油圧モータ18の出口に接続した油路23より分岐した油路23aには、それぞれカウンターバランス弁24と25が設けてある。
【0012】
上記カウンターバランス弁24には、作動油路19から分岐された作動油を可変絞り26で絞って流量及び圧力を減じたパイロット油圧を供給するようにして、油圧モータ17の出口側の油路22と上記コントロール弁20への油路27とを連通あるいは遮断するようにしてあり、又、上記別のカウンターバランス弁25には、作動油路19から分岐された作動油を可変絞り28で絞って流量及び圧力を減じたパイロット油圧を供給させるようにして、上記油圧モータ18の出口側の油路23aと上記コントロール弁20への油路23bとを連通あるいは遮断するようにしてある。更に、上記油圧モータ17,18に作動油を供給する作動油路に、負圧の吸収用のアキュムレータ29を設置した構成としてある。これにより、積荷を巻上げ位置から積荷を降ろす際において油圧モータ17,18への作動油路に負圧が発生しようとする際に、アキュムレータ29が作動油路19内に作動油を供給することによって、油圧モータ17,18の吸入側に作動油を充満させ、該油圧モータ17,18の吸入側における負圧による空気の吸い込みを回避するようにしてある(たとえば、特許文献1参照)。
【0013】
又、デッキクレーンではないが、油圧クレーン等の建設機械において、旋回モータの油圧回路を複雑化することなく自動的に設定圧力が変更できて、ショックレスでしかも最適な状態で旋回モータの起動・停止や振れ戻り防止を図るようにしたものもある。
【0014】
図4はその一例を示すもので、ブーム等の旋回部材を旋回させる旋回モータ30の駆動回路31,32を図示しない切換弁を介して油圧ポンプとタンクに選択接続させるようにし、旋回モータ30を起動するとき、あるいは減速停止するとき、駆動回路31,32の圧力を制御してスムースにその起動・停止を行うために、該駆動回路31,32にリリーフバルブが設けてある構成において、上記リリーフバルブとして、設定圧力が電流値により制御され、且つその電流値の増加に従って該設定圧力が減少する逆特性電磁比例リリーフバルブ33,34を用いるように構成したものである。これにより、逆特性電磁比例リリーフバルブ33,34の電流値を旋回モータ30の回転数や駆動回路31,32の圧力に応じて自在に変更することが可能になり、前記のような逆特性を有するので、該電磁比例リリーフバルブ33,34の電気系の故障でも旋回モータの作動の安全性が維持できるものとしてある(たとえば、特許文献2参照)。
【0015】
更に、油圧ショベル等の建設機械に用いられる油圧モータ制御回路として、旋回用油圧モータへ作動油を供給するライン内が負圧状態になることを防止するようにしたものもある。
【0016】
図5はその一例を示すもので、旋回用油圧モータ35は、たとえば、斜板型又は斜軸型の油圧モータ等によって構成され、上部旋回体等の慣性体を減速機等を介して旋回駆動するものである。又、油圧モータ35は、油圧ポンプ36とタンク37に一対の主管路38,39を介して接続され、該主管路38,39の途中には、油圧パイロット式の方向切換弁40が設けられ、該方向切換弁40と油圧モータ35との間に主管路38,39の分岐管路41a,41b、42a,42bを介してタンク37に接続するタンク管路43を設けると共に、上記分岐管路41a,41bの途中にそれぞれチェック弁44a,44bを、又、上記分岐管路42a,42bの途中にそれぞれリリーフ弁45a,45bを設け、チェック弁44a,44bは、タンク27から主管路38,39側に向けて作動油が流通するのを許すことにより、主管路38,39内が負圧状態になるのを防止するようにしてある。更に、上記リリーフ弁45a,45bには、内部が可動隔壁46a,46bにより蓄油室47a,47bと圧力室48a,48bとに画成され、各主管路38,39からの圧油を各リリーフ弁45a,45bを介して各蓄油室47a,47bに蓄油することにより、高圧のリリーフ設定圧よりも低い圧力で該リリーフ弁45a,45bを一時的に低圧リリーフさせるアキュムレータ49a,49bを付設し、該アキュムレータ49a,49bの圧力室48a,48bをブレーキ管路50に接続した構成としてある(たとえば、特許文献3参照)。
【0017】
【特許文献1】特開2007−137641号公報
【特許文献2】特開平7−127604号公報
【特許文献3】特開平9−71977号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
ところが、前記した図2に示すデッキクレーンの旋回制御装置を実施するときには、負荷の大きさに応じて可変容量型の油圧モータ1,2を低速(高トルク)、高速(低トルク)に切り換えて使用しているが、高速から低速、すなわち、油圧モータ1,2の容量を、低容量(高速)から大容量(低速)へ切り換えたときには、クレーンの慣性が残るため、瞬間的には大容量かつ高速回転の状態がある。このとき、油圧モータ1,2の入口側の油量が不足し負圧になると、空気を吸引するキャビテーションによる異音発生並びに制御不能状態となるおそれがあり、可変動作を多くとることができなかった。
【0019】
又、特許文献1に記載されたものは、巻上装置21が積荷を巻上げた後、コントロール弁20を中立位置から巻下し位置に切換えて該積荷を降ろすときには、積荷の自重によって巻上装置が逆転し、油圧モータ17,18がポンプ作用を行い、このポンプ作用によって油圧モータ17,18への作動油路19に負圧が発生しようとする際に、アキュムレータ29が作動油路19内に作動油を供給することによって、油圧モータ17,18の吸入側に作動油を充満させるようにしてあるものであるが、油圧モータ17,18のタンクへの排出側の作動油を油圧モータ17,18の入口側へ供給させるようにするものではない。
【0020】
特許文献2に記載されたものは、建設機械等の油圧式の旋回制御装置で、旋回モータ30の駆動回路31,32に設ける該旋回モータ30の起動時・停止時の圧力制御を行うリリーフバルブに、設定圧力が電流値により制御され且つその電流値の増加に従って該設定圧力が減少する逆特性電磁比例リリーフバルブ33,34を用いたというものであり、旋回モータの容量を、低容量から大容量へ切り換えたときの該旋回モータ吸入側が負圧になることを解消するものではない。
【0021】
更に、特許文献3に記載されたものは、油圧モータ35に接続されている一対の主管路38,39に分岐管路41a,41b、42a,42bを介してタンク37に接続するタンク管路43を設け、更に、分岐管路41a,41bにチェック弁44a,44bを設けて、主管路38,39が負圧になるのを防止するようにしたものであるが、タンク管路43は大気に開放されているタンク37に接続されているにすぎないものである。
【0022】
そこで、本発明は、可変容量型の油圧モータを用いた旋回制御装置において、油圧モータ容量を低容量(高速)から大容量(低速)へ可変した場合に、クレーンの慣性が残る瞬間的には大容量かつ高速回転の状態があることに鑑み、かかる大容量かつ高速回転の状態の際に油圧モータの入口側が負圧となることを未然に防止できるようにするデッキクレーンの旋回制御装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、上記課題を解決するために、容量を可変にできるようにしてある旋回用油圧モータに接続した圧油給排ラインを、方向切換弁を介して油圧ポンプとタンクに接続して、上記方向切換弁の切り換えにより圧油を油圧モータに給排させて旋回動作を行わせるようにしてあるデッキクレーンの旋回制御装置において、上記圧油給排ラインの途中位置と上記方向切換弁を通して排出される圧油の排出ラインの途中位置とを、補給ラインを介し接続すると共に、該補給ラインの途中に、圧油排出ラインの圧油を圧油給排ラインを通して油圧モータ入口へのみ流すようにするためチェック弁を設け、且つ上記圧油排出ラインの補給ラインの接続位置よりもタンク側の位置に、背圧弁を設けて、圧油排出側の圧力を背圧弁により高く設定するようにした構成とする。
【0024】
又、上記構成において、補給ラインを、方向切換弁の切り換えにより油圧モータへ圧油を供給する側となる圧油給排ラインの途中位置と方向切換弁を通してタンクへ戻される圧油排出ラインの途中位置との間に、上記方向切換弁をバイパスさせて接続するようにする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、以下の如き優れた効果を発揮する。
(1)容量を可変にできるようにしてある旋回用油圧モータに接続した圧油給排ラインを、方向切換弁を介して油圧ポンプとタンクに接続して、上記方向切換弁の切り換えにより圧油を油圧モータに給排させて旋回動作を行わせるようにしてあるデッキクレーンの旋回制御装置において、上記圧油給排ラインの途中位置と上記方向切換弁を通して排出される圧油の排出ラインの途中位置とを、補給ラインを介し接続すると共に、該補給ラインの途中に、圧油排出ラインの圧油を圧油給排ラインを通して油圧モータ入口へのみ流すようにするためチェック弁を設け、且つ上記圧油排出ラインの補給ラインの接続位置よりもタンク側の位置に、背圧弁を設けて、圧油排出側の圧力を背圧弁により高く設定するようにした構成とし、更に、補給ラインを、方向切換弁の切り換えにより油圧モータへ圧油を供給する側となる圧油給排ラインの途中位置と方向切換弁を通してタンクへ戻される圧油排出ラインの途中位置との間に、上記方向切換弁をバイパスさせて接続するようにした構成としてあるので、旋回動作時に油圧モータを小容量低トルクで高速回転させている状態から、旋回停止に際して油圧モータを大容量高トルクで低速回転に切り換えるとき、クレーンの慣性で瞬間的に大容量で高速回転状態になることに伴い、油圧モータの入口側の油量が不足して負圧になるような場合に、補給ラインを通して排出側の圧油が油圧モータの入口側へ補給でき、負圧によるキャビテーションを発生させるようなことが未然に防止される。
(2)これにより、旋回起動/停止時は高トルク低速運転、起動後の軽負荷運転では低トルク高速運転、高負荷変動時には高トルク低速運転を、油圧モータの入口側に負圧を生じさせることなく行わせることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照して説明する。
【0027】
図1は本発明の実施の一形態を示すもので、図2に示したと同様に、2個の容量可変機構付き油圧モータ1,2に、圧油給排ライン5,6と、該圧油給排ライン5,6から分岐させた分岐ライン5a,6aとを接続し、方向切換弁9の切り換えにより油圧ポンプの吐出側に接続されている圧油供給ライン7とタンクに接続されている圧油排出ライン8とを、上記圧油給排ライン5又は6に接続できるようにしてあり、更に、上記容量可変機構付きの油圧モータ1と2を、アキシャルシリンダ3の作動により低容量(高速)、大容量(低速)に切り換えるようにしてあり、電磁弁11のソレノイドを励磁して、切換弁10を介してアキシャルシリンダ3の図上右側の圧力室3bに圧油給排ライン5,6の圧油を導入させることにより、アキシャルピストン4が図上左方向へ移動させられて油圧モータ1,2の傾転角が変えられて小容量(高速)に切り換えられる。又、上記電磁弁11のソレノイドを消磁して、切換弁10を図示の位置に切り換えると、油圧ポンプ側の圧油がアキシャルシリンダ3の図上左側の圧力室3aに導入されることにより、アキシャルピストン4が図上右方向へ移動させられて油圧モータ1,2の傾転角が変えられて大容量(低速)に切り換えられるようにしてある構成において、2個の油圧モータ1,2に接続されている圧油給排ライン5,6と、方向切換弁9と図示しないタンクとを接続する圧油排出ライン8との間に補給ライン51,52をそれぞれ接続して設けた構成とする。
【0028】
詳述すると、2個の油圧モータ1及び2に接続されている圧油給排ライン5及び6の各途中位置と、圧油排出ライン8の途中位置との間に、方向切換弁9をバイパスするように補給ライン51と52を接続して設ける。上記各補給ライン51,52の各途中に、上記圧油排出ライン8から圧油給排ライン5,6の方向へのみ圧油を流すようにするチェック弁53,54を設ける。更に、上記圧油排出ライン8における補給ライン51,52の接続位置よりもタンクに近い下流側位置に、絞り弁による背圧弁55を設け、該背圧弁55は、これよりも上流側で、上記補給ライン51又は52及び油圧モータ1,2に接続される圧油給排ライン5又は6の圧力損力を差し引いても零以上の背圧が立つように絞りを決めるようにする。すなわち、油圧モータ1,2の入口圧力は、
油圧モータ入口圧力=背圧弁の背圧Pd−圧力損失Δp>0
となるようにする。そのために、上記背圧弁55は、無負荷旋回時において、圧油供給ライン7の途中位置に、たとえば、圧力計56の位置での圧力が最低2.0MPa以上となるよう決定するものとしてある。
【0029】
その他の構成は、図2に示したものと同じであり、同一のものには同一符号が付してある。
【0030】
本発明のデッキクレーンの旋回制御装置は、上記構成としてあるので、デッキクレーンで吊荷をした後、吊荷を右又は左へ旋回させる場合は、方向切換弁9をポート(イ)又はポート(ロ)が連通するように切り換える。
【0031】
方向切換弁9を、たとえば、ポート(イ)側に切り換えると、圧油供給ライン7が方向切換弁9を介して図1において左側の圧油給排ライン5と連通し、圧油給排ライン5とその分岐ライン5aを通して2個の油圧モータ1,2のそれぞれの左側の入口へ供給される。これにより油圧モータ1,2が回転駆動させられて、吊荷を左旋回か右旋回のいずれか一方の方向へ旋回させられることになる。
【0032】
上記油圧モータ1,2の駆動によりデッキクレーンを旋回させようとする場合、旋回起動時は、油圧モータ1,2の容量を大容量に可変して大トルクが得られるようにし、且つ低速回転で駆動させるようにする。
【0033】
その後、旋回動作が行われているときは、油圧モータ1,2の容量を小容量に可変にしてトルクを小さくし、且つ高速回転させて駆動させるようにする。
【0034】
次に、旋回を停止させるときは、油圧モータ1,2の容量を、小容量(高速)から大容量(低速)へ可変させるようにする。この際、クレーンの慣性で瞬間的に旋回動作が低速になることはなく、高速状態で大容量になることになり、油圧モータ1,2の入口側に供給される油量が不足し負圧になることがある。
【0035】
油圧モータ1,2の入口側の油量が不足して負圧になると、キャビテーションによる異常発生並びに制御不能状態となるおそれがある。
【0036】
本発明では、このような油圧モータ1,2に入口側となる圧油給排ライン5が負圧になると、方向切換弁9からタンクへ戻される圧油排出ライン8の圧油が、補給ライン51を通して圧油給排ライン5の下流側と分岐ライン5aへ導かれ、油圧モータ1,2の入口側へ圧油排出ライン8を流れる圧油が供給されることになる。これにより不足する油量が補給させられ、負圧になることが防止されることになる。この際、背圧弁55により圧油排出ライン8が絞られて、該圧油排出ライン8の圧力が高く設定されて油圧モータ1,2の入口側と差圧が生じるようにしてあり、しかも、油圧モータ1,2の入口までの圧力損失分よりも高い圧力が確保できるようにしてあるため、上記油圧モータ1,2の入口側で負圧が生じるようになると、自動的に油量を補給することができる。
【0037】
方向切換弁9をポート(ロ)側に切り換えて、圧油を圧油給排ライン6とその分岐ライン6aを経て2個の油圧モータ1,2の右側へ供給するようにすれば、前記とは逆方向に旋回させることができるが、この場合でも、旋回を始めて1,2の容量を小容量(高速)から大容量(低速)へ可変させるようにするが、クレーンの慣性で前記したと同様の現象が生じ、油圧モータ1,2の入口側が負圧になることがある。この場合は、背圧弁55で高い圧力に設定された圧油排出ライン8の圧油が、補給ライン52から圧油給排ライン6、分岐ライン6aを経て油圧モータ1,2へ供給されることになり、油圧モータ1,2入口側が負圧になることを防止できることになる。
【0038】
上記において、カウンターバランス弁12,13の応答速度が油圧モータ1,2の容量切り換え速度よりも遅い場合にも、油圧モータ1,2入口の負圧を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明のデッキクレーンの旋回制御装置の実施の一形態を示す概要図である。
【図2】容量可変機構付き油圧モータを用いたデッキクレーンの旋回制御装置として現在実施されているものの回路図である。
【図3】従来のデッキクレーンの巻上装置の油圧駆動装置の系統図である。
【図4】従来の建設機械等で用いられている旋回制御装置の回路図である。
【図5】従来の建設機械等に用いられている油圧モータ制御回路図である。
【符号の説明】
【0040】
1 油圧モータ
2 油圧モータ
5 圧油給排ライン
6 圧油給排ライン
7 圧油供給ライン
8 圧油排出ライン
9 方向切換弁
51 補給ライン
52 補給ライン
53 チェック弁
54 チェック弁
55 背圧弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容量を可変にできるようにしてある旋回用油圧モータに接続した圧油給排ラインを、方向切換弁を介して油圧ポンプとタンクに接続して、上記方向切換弁の切り換えにより圧油を油圧モータに給排させて旋回動作を行わせるようにしてあるデッキクレーンの旋回制御装置において、上記圧油給排ラインの途中位置と上記方向切換弁を通して排出される圧油の排出ラインの途中位置とを、補給ラインを介し接続すると共に、該補給ラインの途中に、圧油排出ラインの圧油を圧油給排ラインを通して油圧モータ入口へのみ流すようにするためチェック弁を設け、且つ上記圧油排出ラインの補給ラインの接続位置よりもタンク側の位置に、背圧弁を設けて、圧油排出側の圧力を背圧弁により高く設定するようにした構成を有することを特徴とするデッキクレーンの旋回制御装置。
【請求項2】
補給ラインを、方向切換弁の切り換えにより油圧モータへ圧油を供給する側となる圧油給排ラインの途中位置と方向切換弁を通してタンクへ戻される圧油排出ラインの途中位置との間に、上記方向切換弁をバイパスさせて接続するようにした請求項1記載のデッキクレーンの旋回制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−242006(P2009−242006A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−87111(P2008−87111)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】