説明

デンプン−ポリエステル生分解性グラフト共重合体及びその製造法

化学修飾したデンプン又は化学修飾したデンプン−ナノクレー生成物を含むデンプン−ポリエステルグラフト共重合体及び化学修飾したデンプン−ポリエステルグラフト共重合体組成物を記載する。該組成物は、二軸同方向回転押出し機中において連続的に製造することができる。デンプン−ポリエステル・グラフト共重合体は溶媒キャスティング、溶融キャスティング及びブロー成形が可能であり、特に一回限りの使い捨て用途に使用するための、清澄な透明フィルムに成形することができ、生分解性であり得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)なし。
【0002】
(連邦政府資金による研究又は開発に関する陳述)該当せず。
【0003】
(政府の権利に関する陳述)なし。
【0004】
(発明の背景)
(1)技術分野
本発明はデンプン−ポリエステル・グラフト共重合体に関する。本発明は特に、化学修飾したデンプン−ポリエステル・グラフト共重合体、及び化学修飾したデンプン−ナノクレー・ポリエステル・グラフト共重合体に関する。反応押出しのような反応処理を用いてこれらのグラフト共重合体を製造する方法が開示される。デンプン−ポリエステル・グラフト共重合体は、改善された加工性、表面特性及び拡大した範囲の機械的特性を有する。
【背景技術】
【0005】
(2)関連技術の記載
プラスチック包装は、現行の及び提起されている環境規制及び廃棄物規制、並びに市場主導の持続可能性のイニシアティヴからの圧力に曝されている。プラスチック包装は軽量で嵩張るため、高価な取り扱い及び運搬コストの故に、実行可能な経済的で環境的に信頼できるリサイクル事業には役に立たないとして、会社及び地方自治体に対して主要な問題を提示している。プラスチック包装は生分解性ではなく、そのことにより土壌中への廃棄又は堆肥化が受け容れ難い操作となっている。更に、持続可能性、工業的エコロジー、生分解性及びリサイクル可能性等の課題が、企業の製品包装デザイン、特に1回限りの使い捨て包装のそれにおいて、主要な考慮すべき課題になりつつある。天然の生物高分子は、寿命の短い、1回限りの使い捨て包装、一般消費財、及び海洋プラスチックの製造に対して、生分解性であり、且つ、持続可能性のある解決を与える。デンプン(無水グルコース重合体)は、持続可能かつ生分解性の包装材を製造するための構造上の土台を提供する。デンプン並びにデンプン及び他の重合体とのブレンドの製造が開示されている特許の例としては、米国特許第4,673,438号(Wittwerらに付与);同第4,095,054号(Layらに付与);同第5,256,711号(Tokiwaらに付与);同第5,275,774号(Bahrらに付与);同第5,382,611号(Steptoらに付与);及び同第5,405,564号(Steptoらに付与)が挙げられる。最近では、多相ブレンドの一成分として、熱可塑性デンプン(TPS)を使用することについての事業報告が出てきている(W.Wiedmann and E.Strobel,Starch,43,138(1991);R.L.Shorgen,G.F.Fanta,and W.M.Doan,Starch,45,276,(1993);P.Forssell,J.Mikkila,and T.Sourtti,J.M.S.Pure Appl.Chem.,A33,703(1996);R.Narayan,Polymers from Agricultural Co Products,ACS Symp.Ser.(1994);及びJ.J.G.Van Soest,K.Benes,and D.de.Wit,Polymer,37,3543(1996))。更に他の人も熱可塑性デンプンを製造しており、その場合、未加工のデンプンを、最初に少量の水及びグリセリンのようなより揮発性の乏しい可塑剤とブレンドしてデンプン溶融体を形成し、これを脱気手段に処した後、冷却、固体化して、実質的に全ての水を除去する。このような特許の例としては、米国特許第5,412,005号、同第5,280,055号、同第5,288,765号、同第5,262,458号、同第5,462,980号及び同第5,512,378号(いずれもBastioliらに付与)が挙げられる。
【0006】
デンプンの顆粒は、顆粒表面のヒドロキシル基に基づく水素結合により、親水性及び強い分子間会合を示す。親水性及び温度に対する感受性により、デンプン重合体は熱可塑性用途に対して不適となっている。この点に関して、デンプンの性質の「最適化」するための最適重合体又は重合体とその他の成分の混合物の発見を強調した著者もある。一つの欠点は、上記重合体その他の成分の大部分は、それら自身デンプンより著しく高価であり、それがデンプン溶融体に比べて、そのような重合体ブレンドのコストを増大させる傾向にあるということである。もう一つの欠点は、そのような添加物が、材料科学の観点から見ると、デンプン/重合体ブレンドの機械的特性をほんの僅かしか変えることができないであろうことである。
【0007】
これらの欠点を改善するために、デンプン骨格へのビニルモノマーのグラフト共重合を用いてデンプンを改質した。Fanta及びBagleyは、その合成を概説しており、デンプングラフト共重合体のいくつかの応用について論じている(G.F.Fanta and E.B.Bagley,Encyclopedia of Polymr Science,John Wiley & Sons: New York (1970);及びG.F.Fanta,Block and Graft Copolymers − Vol I,John Wiley & Sons: New York(1973))。Oteyら(F.H.Otey,R.P.Westhoff and W.M.Doane,Industrial Engineering Chemistry Products Research Development,19,592(1980);F.H.Otey and R.P.Westhoff,Industrial Engineering Chemistry Products Research Development,23,284(1984);及びF.H.Otey,R.P.Westhoff and W.M.Doane,Industrial Engineering Chemistry Products Research Development,26,1659(1987))は、デンプンをエチレン−アクリル酸共重合体(EAA)とブレンドした。これらの論文において、著者等はEAAの中のカルボキシル基とデンプンの中のヒドロキシル基との間で、水素結合が形成されることを示唆した。デンプンの比率を増加すると、フィルムの伸び(パーセント)が減少し、水の拡散速度が増大した。EAAと同様の複合体は、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)のヒドロキシル基とも、形成することができる。上記の著者等は、合成重合体中の無水物基とデンプンの−OH基との間の反応を報告している。米国特許第5,462,983号(Bloembergenらに付与)は、デンプンのようなリグノセルロース、酢酸セルロース等を含有するブレンド及びアロイについて報告している。米国特許第5,314,934号(Tomkaらに付与)は、ポリオレフィン−デンプン重合体ブレンドを製造する方法を提供している。エチレン/アクリル酸エステル/無水マレイン酸三元共重合体が相溶化剤として使用された。これらのブレンドは、低密度ポリエチレン(LDPE)に匹敵する特性を有するフィルムに成形されたと報告されている。米国特許第5,234,977号(Bastioliらに付与)は、フィルム、シート又は繊維形態の生分解性物品の製造に使用される材料を開示しているが、これは、合成熱可塑性重合体及びホウ酸等のホウ素含有化合物が添加された非構造性デンプン(destructurized starch)を含む溶融塊から、押出しによって製造することができる。米国特許第6,277,899号(Bastioliらに付与)は、非構造性デンプン(destructurized starch)成分、合成熱可塑性重合体成分及び流動化剤を含むマトリックスに、溶融分散した充填剤を含む重合体組成物を開示している。米国特許第5,412,005号(Bastioliらに付与)は、デンプン系成分及び重合体成分、好ましくはエチレン−ビニルアルコール又はポリビニルアルコールの重合体、を含有する、生分解性重合体組成物を開示している。
【0008】
米国特許第6,235,816号及び同第6,472,497号は、デンプン・ポリエステル・ブレンドを記載している。
【0009】
他の文献は以下のとおりである。
(1)Ramani Narayan,Steven Bloembergen and Amit Lathia,A Method of Preparing Biodegradable Modified−Starch Moldable Products and Films(生分解性修飾デンプンの成形可能な製品及びフィルムの製造法)、米国特許第5,869,647号、1999年2月9日、1993年7月。
(2)Narayan,R.,Biodegradable Multi−Component Polymeric Materials Based on Unmodified Starch−Like Polysaccharides(未修飾デンプン様多糖類系生分解性多成分重合体材料)、米国特許第5,500,465号、1995年10月31日。
(3)Narayan,R.,Krishnan,M.,DuBois,P.,Polysaccharides Grafted With Aliphatic Polyesters Derived From Cyclic Esters(環状エステル類から誘導された脂肪族ポリエステルをグラフトした多糖類)、米国特許第5,540,929号、1996年7月30日。
(4)Narayan,R.,Krishnan,M.,DuBois,P.,Polysaccharides Grafted With Aliphatic Polyesters Derived From Cyclic Esters(環状エステル類から誘導された脂肪族ポリエステルをグラフトした多糖類)、米国特許第5,578,691号、1996年11月26日。
(5)Narayan,R.,Krishnan,M.,DuBois,P.,Polysaccharides Grafted With Aliphatic Polyesters Derived From Cyclic Esters(環状エステル類から誘導された脂肪族ポリエステルをグラフトした多糖類)、米国特許第5,616,671号、1997年4月1日。
(6)本出願と同時出願の米国特許出願。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
(目的)
従って、本発明の目的は、新規な特性を有する新規なグラフトデンプン・ポリエステル組成物を提供することである。本発明の更なる目的は、経済的で再現性のある組成物を提供することである。これら及びその他の目的は、以下の説明により次第に明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の概要)
本発明は、デンプン、又はデンプンにグラフトされたポリエステルの断片を有する化学修飾したデンプンを含む、デンプン−ポリエステル・グラフト共重合体組成物に関する。好ましくは、上記の化学修飾したデンプンは、熱可塑性のデンプンである。好ましくは上記組成物は、組成物の約0.5〜10重量%の可塑剤を含む。好ましくは、上記組成物は、天然の又は有機化学的に修飾したナノクレーを含有する。好ましくは、上記デンプンは、トウモロコシ、ジャガイモ、小麦、米、サゴ、タピオカ、ワクシーメイズ(waxy maize)、ソルガム(sorghum)及び高アミロースデンプンからなる群より選択される。好ましくは、上記化学修飾され可塑化されたデンプン(chemically modified plasticized starch,CMPS)は、50〜80重量%のデンプンと、デンプンの0.5〜約10重量%の化学改質剤と、組成物の10〜50重量%の可塑剤と、そして任意選択的に、組成物の0.01〜2.0重量%の範囲の量のフリーラジカル開始剤の反応押出しにより製造される。好ましくは、上記化学修飾され可塑化されたデンプン(CMPS)は、50〜80重量%のデンプン重合体と、デンプン重合体の0.5〜約10重量%、より好ましくはデンプンの2〜5重量%の化学改質剤と、組成物の10〜50重量%の可塑剤と、ナノクレーとを含むブレンドから製造され、ここで、ナノクレーは、全組成物の0.5〜25重量%の範囲の量で添加される。好ましくは、上記可塑剤は、グリセリン、ソルビトール及びエチレングリコールのような多価アルコール類からなる群より選択される。好ましくは、上記改質剤は、二塩基酸類又はそれらの無水物からなる群より選択される。好ましくは、上記組成物はフリーラジカル開始剤を含有する。好ましくは、上記フリーラジカル開始剤は過酸化物である。好ましくは、上記組成物は、モンモリロナイト、スメクタイト、ヘクトライト及びそれらの混合物からなる群より選択されるナノクレーを含有する。好ましくは、上記組成物は完全生分解性である。好ましくは、上記組成物は、押出し機中において溶融相でグラフトされたものである。好ましくは、上記組成物は、二軸押出し機中において100〜200℃の範囲の温度でグラフトされたものである。
【0012】
本発明は又、有機酸又はその酸の無水物とデンプン又は化学修飾したデンプンとの混合物及びポリエステル重合体を、デンプンにポリエステルの断片をグラフトして組成物を形成する温度でブレンドすることを含む、デンプン・ポリエステル・グラフト共重合体組成物を製造するための方法に関する。
【0013】
最も好ましくは、本発明は、生分解性デンプン重合体と、有機二塩基酸、有機二塩基酸の有機無水物及びそれらの混合物からなる群より選択される化学改質剤と、可塑剤と、生分解性ポリエステル樹脂と、ナノクレーと、任意選択的にフリーラジカル開始剤との反応押出しした混合物を含む、デンプン系共重合体組成物であって、その混合物が加熱及び混合物からの水の排出を行いつつ押出されたものである、上記組成物に関する。
【0014】
最も好ましくは、本発明は又、生分解性デンプン重合体と、有機二塩基酸、有機二塩基酸の有機無水物及びそれらの混合物からなる群より選択される化学改質剤と、可塑剤と、生分解性ポリエステル樹脂と、ナノクレーと、任意選択的にフリーラジカル開始剤との反応押出しした混合物を含む混合物を反応押出しすることを含み、その混合物が加熱及び混合物からの水の排出を行いつつ押出されたものである、デンプン系組成物を製造する方法に関する。
【0015】
本発明において、反応の機構は、上記処理からのポリエステル樹脂の断片がデンプンのヒドロキシル基と反応することである。酸又は酸無水物はポリエステル重合体と反応して、反応性断片を生成する。このように、本発明は、デンプンに結合したポリエステル重合体の断片を有する、独特の組成物を提供する。
【0016】
本発明は、特に、新規な両親媒性の、デンプン−ポリエステル・グラフト共重合体、及び化学修飾したデンプン又は二軸同方向回転押出し機中において連続的に製造した、化学修飾したデンプン−ナノクレー生成物を含む、化学修飾したデンプン−ポリエステル・グラフト共重合体組成物を提供する。より低い粘度と良好な加工性を有する、化学修飾した可塑化したデンプン生成物、及び化学修飾した可塑化したデンプン−ナノクレー生成物は、同時係属特許出願に記載されている。本発明のデンプン−ポリエステル・グラフト共重合体は、直ちにブロー成形、フィルムへの押出し成形、及び鋳造することができる。生分解性ポリエステルの例としては、ポリカプロラクトン(PCL)、酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体(PVAc/VA)、ポリ乳酸又はポリラクチド(PLA)、ポリグリコール酸又はポリグリコリド(PGA)、及び立体異性体の各種組み合わせ、細菌性の及び合成のポリ−β−ヒドロキシブチレート(PHB)、β−ヒドロキシブチレート−β−ヒドロキシバレレート共重合体(PHB/V)、及びその他のポリ−β−ヒドロキシアルカン酸エステル(PHA)、生分解性脂肪族ポリエステル、及び脂肪族−芳香族共ポリエステルを含む関連共ポリエステル類が挙げられる。好ましくは、上記ポリエステルは、上記ポリエステルが下記式:
【化1】


式中、Rは1〜12個の炭素原子を有する低級アルキル基又は芳香族基であり;nは0〜10であり;そしてxは200〜2,000である;
及び下記式:
【化2】


式中、a、b及びmは2〜8であり;そしてx/yは3/2と10/1の間である;
からなる群より選択される組成物からなる群より選択される。
【0017】
本発明は、環境的に信頼でき、ASTM標準に従う完全生分解性の、新規な重合体物質を提供する。
【0018】
本発明によれば、デンプン又は化学修飾したデンプンを含有するグラフト共重合体、又は化学修飾したデンプン−ナノクレー組成物、及びポリエステル、好ましくは生分解性を有するものから製造される、生分解性の成形可能な製品又はフィルムが提供される。新規なデンプン−ポリエステル・グラフト共重合体が、良好な伸び、圧縮性及び表面特性を有することが見出された。
【0019】
本発明の一つの実施態様において、デンプンは、エステル交換触媒としてのマレイン酸の存在下に、脂肪族−芳香族共ポリエステル、特にブチレン(アジペート−テレフタレート)共重合体との押出しにより、良好な伸び、圧縮性及び表面特性を有するデンプン−ポリエステル・グラフト共重合体組成物を形成する。もう一つの実施態様においては、化学修飾したデンプン又は化学修飾したデンプン−ナノクレー生成物を脂肪族の又は脂肪族−芳香族共ポリエステルと反応させて、特性及び加工性の改善された新規なグラフト共重合体製品が提供された。
【0020】
(発明の詳細な説明)
本発明において有用な出発物質デンプンは任意のデンプンとすることができ、未加工のものでも又は修飾したものでもよい。そのようなデンプンには任意の植物源由来のものが含まれ、トウモロコシ、ジャガイモ、小麦、米、サゴ、タピオカ、ワクシーメイズ(waxy maize)、ソルガム(sorghum)、及び高アミロースデンプン、即ち、高アミローストウモロコシのような、少なくとも40重量%、より具体的には少なくとも65重量%のアミロース含量を有するデンプンが含まれる。デンプン粉末もまた、デンプン源として用いることができる。更に、前記のいずれかの基材から誘導される変換産物も含まれ、例えば、酸及び/又は加熱による加水分解処理により製造されるデキストリン;次亜塩素酸ナトリウムのような酸化剤を用いた処理により製造される酸化デンプン;酵素変換又は穏やかな酸による加水分解によって製造される高流動度デンプン(fluidity starch)又は低粘度デンプン(thin boiling starch);及び誘導体化及び架橋デンプン;が挙げられる。最終ブレンドにおけるデンプンの割合は、5〜45重量%、好ましくは10〜30重量%である。
【0021】
可塑剤は多価アルコールであり、好ましくは、グリセリン、ソルビトール、エチレングリコール及びそれらの混合物である。最終ブレンド中の可塑剤の濃度は5〜50重量%であり、好ましくは5〜20重量%が好ましい。
【0022】
修飾したデンプンもまた、本発明で使用することができる。「修飾した」という語は、デンプンが、当該技術分野において公知の典型的な方法、例えば、エステル化、エーテル化、酸化、酸加水分解、架橋及び酵素変換、によって誘導体化され、又は修飾されることが可能であることを意味する。典型的には、修飾したデンプンとしては、酢酸エステル、ジカルボン酸の半エステル、特にアルケニルコハク酸類のようなエステル類;ヒドロキシエチル及びヒドロキシプロピルデンプンのようなエーテル類;2−ジエチルアミノエチルクロリド(DEC)で修飾したデンプン及び3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドのような4級アンモニウム試薬で修飾したデンプンのようなカチオン性デンプン類;次亜塩素酸で酸化されたデンプン類;オキシ塩化リン、エピクロロヒドリン及び正リン酸、トリポリリン酸又はそれらの混合物のナトリウム塩又はカリウム塩と反応して製造したリン酸塩誘導体のような架橋剤と反応したデンプン類が挙げられる。これらの及びその他の慣用のデンプン修飾は、下記のような出版物に記載されている:“Starch:Chemistry and Technology”(「デンプン:化学と技術」)、Second Edition,Edited by Roy L.Whistler,et al.,chapter X;Starch Derivations:Production and Uses(デンプン誘導体:製造と用途)by M.W.Rutenberg,et al.,Academic Press,Inc.1984。
【0023】
生分解性ポリエステル重合体の例としては、ポリカプロラクトン(PCL)、酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体(PVAc/VA)、ポリ乳酸又はポリラクチド(PLA)、ポリグリコール酸又はポリグリコリド(PGA)、及び立体異性体の各種組み合わせ、細菌性の及び合成のポリ−β−ヒドロキシブチレート(PHB)、β−ヒドロキシブチレート−β−ヒドロキシバレレート共重合体(PHB/V)、及び他のポリ−β−ヒドロキシアルカン酸エステル(PHA)、及びECOFLEX(商標)のような生分解性脂肪族−芳香族ポリエステルを含む関連共ポリエステル類が挙げられる。
【0024】
本発明のデンプン−ポリエステル・グラフト共重合体の形成において、選択されたデンプン出発物質は、エステル交換の触媒として作用する、無水マレイン酸、マレイン酸又はそれらの混合物の存在下に、生分解性ポリエステル重合体と反応させるのが好ましい。
【0025】
無水マレイン酸及び/又はその加水分解された対応する酸は、デンプン又は可塑化デンプンと、デンプンの乾燥重量に対して酸無水物(又は酸)約0.1〜10重量%、好ましくは約0.5〜4重量%の量で混ぜ合わされる。酸無水物又は加水分解された酸は、通常微粉末形態で添加され、それを押出し機中に直接加えることによって、生分解性のポリエステルと一緒に押出される。マレイン酸エステル化したデンプンを使用する場合は、既に系内に存在する無水マレイン酸が触媒として作用するため、改めて加える必要はない。その他の有機二塩基酸又はその無水物も、同時係属出願明細書に記載されているように、使用することができる。なお、この同時係属出願明細書の内容は、参照により本明細書の記載の一部とする。
【0026】
前記したように、任意のデンプンが本発明に使用することができるものの、特に本発明で有用なデンプン材料は、トウモロコシ、ジャガイモ、タピオカ及び高アミロースデンプン、即ち、少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも65重量%のアミロースを含有するデンプンである。更に好ましいのは、マレイン化により修飾したデンプン、特に無水マレイン酸又はマレイン酸を用いたものである。二種類又はそれ以上のデンプン出発物質ブレンドは、耐水性、強度、柔軟性、色等のような特性を改善するための添加剤又は合成化合物としても使用することができる。
【0027】
押出し工程を実施するために用いられる装置は、任意のスクリュータイプ押出し機とすることができる。一軸又は二軸押出し機を使用することができるが、二軸押出し機を使用することが好ましい。そのような押出し機には、典型的には、水平の筒状容器の中に回転するスクリューを有し、容器の一端の上部に投入口を設け、成形用のダイを排出側の一端に設けるのが良い。二軸スクリューを使用する場合は、それらは同方向回転噛合い又は非噛合い型とすることができる。それぞれのスクリューには、らせん状階段又はネジ部、そして典型的には比較的深い供給部とそれに続く勾配の付いた移行部及び比較的浅く、深さ一定の計量部を持たせるのが良い。モーター駆動スクリューは、一般に、筒又は容器の中にぴったり取り付けられ、材料が押出し機を通過するにつれて、それを混合、加熱及びせん断することを可能にする。
【0028】
押出し機容器の長さ方向の温度の制御は重要であり、スクリューの長さに沿ってゾーン毎に達成される。熱交換手段、典型的には、油のような加熱媒体を循環するための、容器壁に位置した流路、チャンバー又は穴のような通路、又はキャルロッド(calrod)又はコイルタイプのヒーターのような電気ヒーターが、しばしば使用される。これに加えて、熱交換手段は、又、スクリュー装置のシャフト中に又はそれに沿って設置されてもよい。
【0029】
押出し機に用いられるいずれの要素の変更も、従来の設計の慣習に従って、所望する通りに行うことができる。押出し及び典型的な設計のバリエーションについての更なる説明は、“Encyclopedia of Polymer Science and Engineering”,Volume 6,1986,pp.571 to 631に見出すことができる。
【0030】
押出し工程の実施において、押出し機中の温度は、具体的な材料、所望の性質及び用途によって変化する。それらは、一般に、約100〜250℃の範囲であり、好ましくは約150〜210℃の範囲とする。押出し機中のデンプンの全水分含有量、即ち、投入口供給デンプン中に存在する水分、並びに水性酸無水物及び/又は酸中の水分は、デンプンの重量に対して約25重量%以下である。より具体的には、デンプンの全水分含量は、デンプンの重量に対して、約8〜25重量%の範囲、好ましくは約10〜21重量%の範囲、より好ましくは約15〜21重量%の範囲である。
【0031】
更に、デンプン−ポリエステル・グラフト共重合体は一段プロセスで製造することができ、その場合、デンプンは、先ず押出し機の最初のゾーンで可塑化され、次いでエステル交換触媒と共にポリエステルを添加して、デンプン−ポリエステル・グラフト共重合体を形成する。更に、デンプンは、押出し機の最初のゾーンで、可塑剤であるグリセリンの存在下に、無水マレイン酸又はマレイン酸を用いてマレイン酸エステル化し、次いで下流でポリエステルを添加することによって、デンプン−ポリエステル・グラフト共重合体を形成することができる。
【0032】
デンプン−ポリエステル・グラフト共重合体を利用することによって、全体の加工温度は、ポリエステル成分単独の加工温度より十分低い温度に下げることができる。このことは、PHBやPHB/Vのような高温溶融のポリエステルを用いた製造に関しては特に重要である。それらのポリエステルは、より高い加工温度で熱分解するので、加工時間帯はもっと狭い。この改良は、反応ブレンドプロセスによって達成される相溶性によるものであり、その結果、ポリエステル成分の結晶の微小構造及び/又は多相材料の形態における変化を生じ、それによって、より低い加工温度でその加工を可能としている。各成分が相溶性を有するということは重要である。
【0033】
本発明の組成物は、もし分解可能なポリエステル重合体が使用されるなら、生分解性を保持することができる。デンプン及び修飾デンプンの耐水性は、高分子量の生分解性ポリエステルとのグラフト共重合、特にPCL又はPHB/V、及び同様の生分解性ポリエステルのような半結晶性のポリエステルとのグラフト共重合によって改善される。このことは、ポリエステル、デンプン及び可塑剤の選択を通して、適切なブレンド組成を工夫することによって、更に達成される。
【0034】
本発明は、当該技術分野において公知の各種の方法、例えば、押出しペレット化、射出成形、及び製膜等の方法によって加工することができる。例えば、本発明に従って作成されたデンプン−ポリエステル・グラフト共重合体組成物は、射出成形して各種の成形製品を得ることができ、押出しキャスティング又は溶液キャスティングを行って、半透明の柔軟なフィルム、並びに透明なフィルムを得ることができる。
【0035】
以下の実験例は、生分解性デンプン又は可塑化したデンプン及び生分解性ポリエステルを含有する生分解性製品をエステル交換触媒の存在下に形成することに対する本発明の有用性を実証するものである。
【0036】
堆肥化の実験において本発明に従って作られた材料の例により、生分解性が確認されている。
【実施例】
【0037】
(例1)
二軸同方向回転CENTURY押出し機中において、エステル交換触媒としてマレイン酸を使用して、ECOFLEX(商標)(PBAT)−可塑化デンプン(PS)グラフト共重合体の合成を行った。PSは、可塑剤としてグリセリン(20重量%)を用い、Corn Products社(Chicago,IL)から入手したレギュラーコーンスターチ(水分含有量12%)の可塑化によって、同じ押出し機中で製造した。Aldrich社から入手したマレイン酸は、乳鉢と乳棒を用いて微粉末にすりつぶし、BASF社(ドイツ)から入手したECOFLEX(商標)ポリエステル(ブチレンアジペート−ブチレンテレフタレート共重合体)と予備ブレンドした後、押出し機の供給口へ供給した。マレイン酸の使用濃度は、全濃度に対して1重量%であった。一方、予め50℃で一夜オーブン乾燥したPSを微粉末にすりつぶし、外部供給装置を用いて押出し機の供給口へ供給した。供給速度は、(ECOFLEX(商標)+マレイン酸):PS=70:30の比になるように調整した。温度プロフィールを図1及び表1に、使用スクリュー形状を図2にそれぞれ示す。図2A、図2B及び図2Cにおいては、全体のスクリュー形状は3つの部分、即ち、12.5D間隔の部分1と、これに続く15.5D間隔の部分2及び最後に12D間隔の部分3に分割されている。排気口は、未反応のマレイン酸及び水を除去するために、開放したままにした。押出されたストランドは水浴を使用して冷却し、インラインでペレット化した。
【0038】
【表1】

【0039】
得られたペレットを、オーブン中75℃で一夜乾燥した。このペレットを、ソックスレー抽出装置を用いてジクロロメタンで完全抽出した。抽出したグラフト共重合体溶液をキャスティングし、透明フィルムを形成した。このフィルムのFTIRによる分析(図3)により、反応性及びグラフト共重合体が実際に存在したことを確認した。
【0040】
(例2)
ECOFLEX(商標)の代わりに、Dow Chemical社(Midland, MI)から入手したPCL(商標)ポリエステル(ポリ−ε−カプロラクタム)(分子量:70,000g/mol)を使用して、例1の手順を行った。得られたペレットもまた、オーブン中75℃で一夜乾燥した。このペレットを、ソックスレー抽出装置を用いてジクロロメタンで完全抽出した。抽出したグラフト共重合体溶液をキャスティングし、透明フィルムを形成した。このフィルムのFTIRによる分析(図3)により、反応性及びグラフト共重合体が実際に存在したことを確認した。
【0041】
(例3)
デンプン−ポリエステル・グラフト共重合体の合成を、以下のように行った。同時係属出願明細書の中で説明したような、改質剤であるマレイン酸及び可塑剤であるグリセリン(20重量%)を用いた、Corn Products社(Chicago,IL)から入手したレギュラーコーンスターチの反応押出し加工によって製造された、化学修飾した可塑化デンプン(CMPS)を、75℃で一夜オーブン乾燥し、微粉末にすりつぶし、外部供給装置を使用して押出し機の供給口へ供給した。この組成物は、本出願人による同時係属出願明細書に記載されており、この明細書は参照により本明細書の記載の一部とする。ECOFLEX(商標)もまた、CENTURY(商標)供給装置(Traverse City,MI)を使用して、押出し機の供給口へ供給した。供給速度は、ECOFLEX:CMPS=70:30の比を得るように然るべく調整した。温度プロフィール及び使用スクリュー形状は例1と同様である。排気口は、未反応のマレイン酸及び水を除去するために、開放したままにした。押出されたストランドは水浴を使用して冷却し、インラインでペレット化した。このペレットをオーブン中75℃で一夜乾燥し、表面の水分を除去した。このペレットを、ソックスレー抽出装置を用いてジクロロメタンで完全抽出した。抽出したグラフト共重合体溶液をキャスティングし、透明フィルムを形成した。このフィルムのFTIRによる分析(図4)により、反応性及びグラフト共重合体が実際に存在したことを確認した。
【0042】
(例4)
デンプン−ポリエステル・グラフト共重合体の合成を以下のように行った。同時係属出願明細書の中で説明したような、改質剤であるマレイン酸、BENTONE 166(商標)(BENTONE 166(商標)は、Elementis Specialties社から入手した、非常に改善された分散特性を有するアルキルアリールアンモニウム・ヘクトライト・クレーであり、抜群の機械的特性、難燃性及び高度に改善されたガスバリア性を提供する)及び可塑剤であるグリセリン(20重量%)を用いた、Corn Products社から入手したレギュラーコーンスターチの反応押出し加工によって製造された、化学修飾した可塑化デンプン(CMPS)を、75℃で一夜オーブン乾燥し、微粉末にすりつぶし、外部供給装置を用いて押出し機の供給口に供給した。ECOFLEX(商標)もまた、CENTURY(商標)供給装置を用いて、押出し機の供給口に供給した。供給速度は、ECOFLEX:CMPS=70:30の比を得るように然るべく調整した。温度プロフィール及び使用スクリュー形状は例1と同様である。排気口は、マレイン酸及び水を除去するために、開放したままにした。押出されたストランドは水浴を使用して冷却し、インラインでペレット化した。このペレットをオーブン中75℃で一夜乾燥し、表面の水分を除去した。
【0043】
(例5)
デンプン−ポリエステル・グラフト共重合体の合成を以下のように行った。同時係属出願明細書の中で説明しているような、改質剤であるマレイン酸、BENTONE 111(商標)(BENTONE 111(商標)は、Elementis Specialties社から入手した、特殊スメクタイト・クレーであり、抜群の機械的特性、難燃性及び高度に改善されたガスバリア性を提供する)、可塑剤であるグリセリン(20重量%)を用いた、Corn Products社から入手したレギュラーコーンスターチの反応押出し加工によって製造された、化学修飾した可塑化デンプン(CMPS)を、75℃で一夜オーブン乾燥し、微粉末にすりつぶし、外部供給装置を用いて押出し機の供給口に供給した。ECOFLEX(商標)もまた、CENTURY(商標)供給装置を用いて、押出し機の供給口に供給した。供給速度は、ECOFLEX:CMPS=70:30の比を得るように然るべく調整した。温度プロフィール及び使用スクリュー形状は例1と同様である。排気口は、マレイン酸及び水を除去するために、開放したままにした。押出されたストランドは水浴を使用して冷却し、インラインでペレット化した。このペレットをオーブン中75℃で一夜乾燥し、表面の水分を除去した。
【0044】
(例6)
ECOFLEX(商標)の代わりにポリカプロラクトン(PCL)ポリエステルを用いて、例3に記載した手順を行った。得られたペレットもまた、オーブン中75℃で一夜乾燥した。このペレットを、ソックスレー抽出装置を用いてジクロロメタンで完全抽出した。この抽出したグラフト共重合体溶液をキャスティングし、透明フィルムを形成した。このフィルムのFTIRによる分析により、反応性及びグラフト共重合体が実際に存在したことを確認した。
【0045】
(例7)
例3で説明した手順に従い、ECOFLEX(商標)及び架橋ECOFLEX(商標)(フリーラジカル開始剤を用いて架橋した)を、異なる比率でPS及びCMPSと共に溶融押出しした。全ての試料を、ソックスレー装置を用いてジクロロメタンで抽出した。抽出の結果を表2に示す。
【0046】
【表2】

【0047】
表2に見られるように、ECOFLEX(商標)/CMPS(70/30;w/w及び60/40;w/w)グラフト共重合体については、殆んど完全な抽出が達成される。この溶液をキャスティングすると、透明なフィルムが得られた。このことは、ECOFLEX(商標)及びCMPSが共有結合で結合し、ジクロロメタン(ECOFLEX(商標)は可溶であるが、PSは溶解しない溶媒である)で抽出可能なグラフト共重合体を形成していることを実証している。しかしながら、PSが溶媒に不溶性のために、上記グラフト共重合体はコロイド状分散液を形成し、清澄な透明溶液を形成しない。
【0048】
この結果は、過酸化物を使用しないで製造したCMPSを含有するブレンド(表2の第6行を参照)に対しても当てはまる。しかしながら、50/50及び40/60ブレンドについては、それぞれ47%及び38%(それぞれのECOFLEX(商標)の量に近い)のみが抽出された。このことは、ECOFLEX(商標)がCMPSと反応していないという事実を支持する。このように、反応は、存在するポリエステル及びCMPS相の相対量にも依存する。更に、表2(第7及び9行)から、CMPSの代わりにPSを使用すると、反応は非常に僅かしか又は全く起こらないということが、明らかにわかる。このことは、デンプンのヒドロキシル基とECOFLEX(商標)のエステル官能基との間の反応が、マレイン酸のようなエステル交換触媒の存在下でのみ起こるということを示唆する。ECOFLEX(商標)ポリエステルが架橋され、CMPSと反応ブレンドされた場合、上記ポリエステルの約83%が抽出される。これは、架橋したポリエステルの或るゲル(網目)部分が、化学反応に対して不浸透性であるという事実のためであろう。
【0049】
(例8)
例1、3、4及び5で説明した手順に従って、PS及びCMPSの両者を用いて製造した数種類のグラフト共重合体試料を押出してフィルムとした。フィルムは、Killion(商標)(Pawcatuck,CT)単軸ブロー製膜装置を用いて作成した。スクリューの直径は25.4mmで、L:D比は25:1であった。ダイの内径は50.8mmであり、ダイ・ギャップ・サイズは1.5mmであった。上記ブロー製膜条件を表3に示す。
【0050】
【表3】

【0051】
上記フィルムの引っ張り特性を、100 lbsのロードセルを取り付けたINSTRON(商標)機械特性試験機を用いて測定した。クロスヘッド・スピードは1インチ/分であった。長方形(寸法:4’x1’)のフィルム試料を、温度23℃、相対湿度50%で40時間コンディショニングした後、ASTM D−882試験に従って試験した。試験の結果を図4、図5及び図6に示す。約30%のPSを含有するECOFLEX(商標)−PSグラフト共重合体の引っ張り強度及び弾性モジュラスの値が、純粋のECOFLEX(商標)ポリエステルの値と比較して、略6分の1への減少を示すことが観察される。しかしながら、ECOFLEX(商標)/CMPSグラフト共重合体及び架橋ECOFLEX(商標)(ECOFLEX)/CMPSグラフト共重合体は、LDPEに匹敵する引っ張り特性値を示す。更に、ECOFLEX(商標)/CMPSの製造においてクレーを混合すると、そのフィルムの引っ張り強度は、更に約2,800〜3,000psi(ECOFLEX(商標)/CMPSの2倍)に向上する。グラフト共重合体の破断伸びの値は、ECOFLEX(商標)及びLDPEより高い。それぞれASTM D1922及びASTM F1306に従って測定した引き裂き及び突刺特性は、LDPE並みであることが分かった(表4)。
【表4】

【0052】
上記例は、本発明が、環境的に健全な方法で自然に戻すことのできる農業資源を利用した、新規なデンプン系グラフト共重合体を提供することを実証している。本発明に従って作られる重合体物質は環境適合可能であり、このことは、熱可塑性ではあるが、適切な環境条件下では、それらのリグノセルロース系対応物質と同様の方法で分解する、完全生分解性の材料を設計し加工することによって達成される。
【0053】
上記記載は、本発明を説明するためだけのものであって、本発明は、この後に添付される特許請求の範囲によってのみ限定されるものであることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】ポリエステル・グラフト・デンプンの製造のための押出し装置の図解である。
【図2A】新規なグラフト共重合体の反応押出し製造に使用されるスクリュー形状を描いた図である。スクリュー形状は、図2A、その次に図2B、更にその次に図2Cという3つの部分に分割されている。
【図2B】新規なグラフト共重合体の反応押出し製造に使用されるスクリュー形状を描いた図である。スクリュー形状は、図2A、その次に図2B、更にその次に図2Cという3つの部分に分割されている。
【図2C】新規なグラフト共重合体の反応押出し製造に使用されるスクリュー形状を描いた図である。スクリュー形状は、図2A、その次に図2B、更にその次に図2Cという3つの部分に分割されている。
【図3】ECOFLEX(商標)(ポリブチレンアジペート−テレフタレート共重合体、BASF(ドイツ)から入手)と可塑化したデンプン(PS)とのグラフト共重合体のFTIR測定結果を示すグラフである。反応性を確証するため、純粋なECOFLEX(商標)、PS及びECOFLEX(商標)/PSブレンド(触媒抜き)のFTIRスキャンも示す。
【図4】ECOFLEX(商標)とCMPS(無水マレイン酸改質剤とマレイン酸改質剤の両者を使用して作成)とのグラフト共重合体のFTIR測定結果を示すグラフである。反応性を確証するため、純粋なECOFLEX(商標)及びレギュラーコーンスターチのFTIRスキャンも示す。
【図5】ECOFLEX(商標)、ECOFLEX(商標)とCMPSとのグラフト共重合体、架橋したECOFLEX(商標)とCMPSとのグラフト共重合体、ECOFLEX(商標)とPSとのグラフト共重合体、及びLDPEの引っ張り強度の値を示す棒グラフである。
【図6】ECOFLEX(商標)、ECOFLEX(商標)とCMPSとのグラフト共重合体、架橋したECOFLEX(商標)とCMPSとのグラフト共重合体、ECOFLEX(商標)とPSとのグラフト共重合体、及びLDPEの弾性モジュラスの値を示す棒グラフである。
【図7】ECOFLEX(商標)、ECOFLEX(商標)とCMPSとのグラフト共重合体、架橋したECOFLEX(商標)とCMPSとのグラフト共重合体、ECOFLEX(商標)とPSとのグラフト共重合体、及びLDPEの破断伸びの値を示す棒グラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デンプン、又はデンプンにグラフトしたポリエステルの断片を有する化学修飾したデンプンを含む、デンプン−ポリエステル・グラフト共重合体組成物。
【請求項2】
化学修飾したデンプンが熱可塑性のデンプンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
組成物の約0.5〜25重量%の可塑剤を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
天然の又は有機化学的に修飾したナノクレーを含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
デンプンがトウモロコシ、ジャガイモ、小麦、米、サゴ、タピオカ、ワクシーメイズ(waxy maize)、ソルガム(sorghum)及び高アミロースデンプンからなる群より選択される、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項6】
デンプンが化学修飾したデンプンであり、その化学修飾したデンプンが、50〜80重量%のデンプンと、デンプンに対して0.5〜約10重量%の化学改質剤と、組成物の10〜50重量%の可塑剤と、任意選択的に、組成物の0.01〜2.0重量%の範囲の量のフリーラジカル開始剤とを反応押出しすることにより製造される、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項7】
50〜80重量%のデンプン重合体と、デンプン重合体の0.5〜約10重量%、より好ましくはデンプンの2〜5重量%の化学改質剤と、組成物の10〜50重量%の可塑剤と、全組成物の0.5〜25重量%の範囲の量で添加されるナノクレーとを含むブレンドから製造される、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項8】
ポリエステルが下記式:
【化1】


式中、Rは1〜12個の炭素原子を有する低級アルキル基又は芳香族基であり;nは0〜10であり;そしてxは200〜2,000である;
及び下記式:
【化2】


式中、a、b及びmは2〜8であり;そしてx/yは3/2と10/1の間である;
からなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
ポリエステルが組成物の50〜90重量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
可塑剤が多価アルコールである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項11】
化学修飾したデンプンのための改質剤が二塩基酸類及びそれらの無水物からなる群より選択される、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項12】
フリーラジカル開始剤を更に含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項13】
過酸化物であるフリーラジカル開始剤を更に含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項14】
モンモリロナイト、スメクタイト、ヘクトライト、及びそれらの混合物からなる群より選択されるナノクレーを更に含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項15】
完全生分解性である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項16】
押出し機中において溶融相でグラフトされた、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項17】
二軸押出し機中において100〜200℃の範囲の温度でグラフトされた、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項18】
有機酸又はその酸の無水物とデンプン又は化学修飾したデンプンとの混合物及びポリエステルを、ポリエステルの断片をデンプンにグラフトして組成物を形成する温度でブレンドすることを含む、デンプン・ポリエステル・グラフト共重合体組成物を製造するための方法。
【請求項19】
ブレンドが押出し機中において約100〜200℃の間の温度で行われる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
有機酸が二塩基酸である、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
有機酸が、無水物とデンプン中に含有される水との反応により、ブレンド中においてその場で生成される二塩基酸である、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項22】
組成物が可塑剤を更に含む、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項23】
更に過酸化物開始剤がブレンド中に混合される、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項24】
更にナノクレーがブレンド中に混合される、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
生分解性デンプン重合体と、有機二塩基酸、有機二塩基酸の無水物及びそれらの混合物からなる群より選択される化学改質剤と、可塑剤と、生分解性ポリエステルと、任意選択的にフリーラジカル開始剤との、反応押出しされた混合物を含む、デンプン系共重合体組成物であって、その混合物が加熱及び混合物からの水の排出を行いつつ押出されたものである、上記組成物。
【請求項26】
デンプンが、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、タピオカデンプン、米デンプン、小麦デンプン及びキャッサバデンプンからなる群より選択される、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
デンプンが混合物の約5〜90重量%である、請求項25に記載の組成物。
【請求項28】
デンプンが、0〜95度の流動度を有する未修飾、酸化又は低粘度デンプン(thin boiling starch)である、請求項25に記載の組成物。
【請求項29】
デンプンが、約0.5〜15重量%の水分含有量を有する、請求項25に記載の組成物。
【請求項30】
デンプンが粉末形態である、請求項25に記載の組成物。
【請求項31】
ポリエステルが下記式:
【化3】


式中、Rは1〜12個の炭素原子を有する低級アルキル基又は芳香族基であり;nは0〜10であり;そしてxは200〜2,000である;
及び下記式:
【化4】


式中、a、b及びmは1〜8であり;そしてx/yは3/2と10/1の間である;
からなる群より選択される、請求項25に記載の組成物。
【請求項32】
ポリエステルが組成物の50〜90重量%である、請求項25に記載の組成物。
【請求項33】
可塑剤が、グリセリン、ソルビトール、エチレングリコール及びそれらの混合物のような多価アルコールからなる群より選択される、請求項25に記載の組成物。
【請求項34】
混合物の10〜70重量%の間の量のポリヒドロキシ有機可塑剤を更に含む、請求項25に記載の組成物。
【請求項35】
化学改質剤が環状二塩基酸無水物である、請求項25に記載の組成物。
【請求項36】
有機酸無水物又は有機酸が、マレイン酸(無水物)、コハク酸(無水物)、イタコン酸(無水物)、フタル酸(無水物)及びそれらの混合物からなる群より選択される、請求項25に記載の組成物。
【請求項37】
デンプンが混合物の50〜80重量%である、請求項25に記載の組成物。
【請求項38】
生分解性デンプン重合体と、有機二塩基酸、有機二塩基酸の有機無水物及びそれらの混合物からなる群より選択される化学改質剤と、可塑剤と、生分解性ポリエステル樹脂と、任意選択的にフリーラジカル開始剤との混合物を反応押出しすることを含み、その混合物が加熱及び混合物からの水の排出を行いつつ押出されたものである、デンプン系組成物を製造するための方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−530744(P2007−530744A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−505289(P2007−505289)
【出願日】平成17年11月15日(2005.11.15)
【国際出願番号】PCT/US2005/041238
【国際公開番号】WO2006/055505
【国際公開日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(594114134)ミシガン ステイト ユニバーシティー (22)
【Fターム(参考)】