説明

データ処理装置

【課題】脱着可能な記録媒体を脱着した場合に要する処理時間を短縮する。
【解決手段】記録媒体4を脱着した場合、脱着検出手段2は記録媒体4の脱着イベントの発生を検出し、脱着時間計測手段3は脱着検出手段2が検出した脱着イベント発生信号を元に記録媒体4の抜去から再装着までの時間を計測する。脱着時間計測手段3での計測値が所定の時間未満であれば、同一の記録媒体4が再装着されたと見なしてデータ処理手段1は、出来る限り保有しているデータを使用し、記録媒体4のデータ再読み出しを最小限に抑制する。これにより、記録媒体4の脱着に係るデータの処理時間の短縮を図り、脱着前の処理を継続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体の抜去から再装着までの時間長によって脱着時処理内容を変更することで再装着時の処理時間を短縮するデータ処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯端末や各種のAV機器をはじめ、脱着可能な半導体メモリカードやハードディスクなどの記録媒体を装着して、記録媒体内に蓄積されたデータを読み出して加工し、あるいは加工したデータを記録媒体へ書き込むようなデータ処理を行う各種のデータ処理装置が実用化されている。これらのデータ処理装置においては、記録媒体が一旦抜去された場合、媒体抜去を検出して直ちに抜去の処理を行うものがあり(例えば、特許文献1参照)、再び記録媒体が再装着された際に、改めて媒体装着時の処理を実行している。
【0003】
図7は記録媒体の脱着検出手段を備えたデータ処理装置の構成を示すブロック図である。図7において、1はデータ処理手段、2は脱着検出手段、4は記録媒体である。脱着検出手段2は、記録媒体4がデータ処理装置に装着されたことを検出すると、データ処理手段1に記録媒体4の装着時処理を行うように指示する。データ処理手段1は記録媒体4の初期化および以降のデータ処理に必要な記録媒体4の情報取得などの初期化処理を行い、その後に主たるデータ処理を行う。また、脱着検出手段2は、記録媒体4がデータ処理装置から抜去されたことを検出すると、データ処理手段1に記録媒体4の抜去時処理を行うように指示する。データ処理手段1は主たるデータ処理を停止し、記録媒体4への電源供給の停止やクロック信号の停止など、所定の抜去処理を行う。
【0004】
しかしながら、抜去直後に記録媒体4を再挿入したとしても、実行中であった一連の処理データを破棄され、改めて初期化からデータ処理を行うため、記録媒体4の抜去が誤操作などによるものであっても、装置の立ち上がりまで時間がかかってしまうという問題があった。
【特許文献1】特開平3−50622号公報(第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする問題点は、記録媒体の抜去が誤操作など不測の事態に依るものであって、抜去直後に記録媒体を装着し直しても、抜去までに処理されたデータは破棄され、かつ装置の再立ち上げ時間がかかってしまうという点である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、記録媒体の抜去から再装着までの時間を計測し、計測時間長に応じて再装着時の処理内容を変更することを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のデータ処理装置は、記録媒体の抜去から再装着までの時間長に応じた処理を行い、抜去から再装着までの時間長が所定値以下であれば、通常の装着時処理を簡略化して実行するため、装置の再立ち上げ時間を短縮できるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のデータ処理装置は、脱着可能な記録媒体にアクセスし所定のデータ処理を行うデータ処理手段と、前記記録媒体の脱着イベントを検出する脱着検出手段と、前記脱着検出手段によって検出された脱着イベントにおいて記録媒体が抜去されてから再装着されるまでの時間を計測する脱着時間計測手段とを具備し、前記脱着時間計測手段の計測値に従って脱着発生時における前記データ処理手段の処理内容を変更することを特徴とするものである。
【0009】
また、前記データ処理手段は、記録媒体へアクセスしておらずアイドル状態であった時に脱着が発生しかつ前記記録媒体が抜去されてから再び挿入されるまでの時間が所定時間以下であった場合、脱着が発生する前に使用していた前記記録媒体のデータを使用することで、前記記録媒体からのデータ再読み出し処理を省くことを特徴とする。
【0010】
また、前記データ処理手段は、記録媒体からデータを読み出している時または読み出したデータを処理している時に前記記録媒体の脱着が発生しかつ前記記録媒体が抜去されてから再び挿入されるまでの時間が所定時間以下であった場合、脱着が発生した時に読み出していたデータまたは処理していたデータのみを破棄し、破棄したデータの再読み出しから処理を再開することを特徴とする。
【0011】
また、前記データ処理手段は、記録媒体へデータを書き込んでいる時に脱着が発生しかつ前記記録媒体が抜去されてから再び挿入されるまでの時間が所定時間以下であった場合、脱着が発生した時に書き込んでいたデータの再書き込みから処理を再開することを特徴とする。
【0012】
また、記録媒体の脱着発生以降に、前記データ処理手段の主たる処理の空き時間に、記録媒体内の情報とデータ処理手段に保持された情報の比較処理を実施することで、データ処理の信頼性を向上させることを特徴とする。
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0014】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1によるデータ処理装置の構成を示すブロック図である。同図おいて、1は記録媒体にアクセスするとともに所定のデータ処理を行なうデータ処理手段、2は記録媒体の脱着イベントを検出する脱着検出手段、3は記録媒体が抜去されてから装着されるまでの時間を計測する脱着時間計測手段、4はメモリカード等の着脱可能な記録媒体である。
【0015】
図2は、本発明の実施の形態1における脱着イベント発生時の処理を説明するためのフローチャートである。
【0016】
以下、図1および図2を用いて、記録媒体脱着時の動作を説明する。
【0017】
脱着検出手段2は、記録媒体4の装着状態を常に監視しており、記録媒体4が抜去された場合に抜去イベントが発生したことを脱着時間計測手段3に報せる(S20)。脱着時間計測手段3は、記録媒体抜去イベント発生時には次に記録媒体装着イベントが発生するまでの時間計測を開始し(S21)、予め設定された所定のタイムアウト時間になるか、脱着検出手段2から記録媒体装着イベント発生の報せが来るまで時間計測を継続する(S22、S23)。記録媒体装着イベント発生の報せが来る前にタイムアウト時間に到達すれば、脱着時間計測手段3は、データ処理手段1に対し通常の記録媒体抜去処理を行うように指示する(S26)。また、この場合、次に記録媒体4が装着された際には、通常の装着時処理が実行される。ここでタイムアウト時間は、脱着された記録媒体4が同一のものであり、さらに前記記録媒体4に格納された情報が変更不可であることが想定できる時間を設定するものとする。
【0018】
一方、タイムアウト時間に到達する前に記録媒体が装着されれば、脱着時間計測手段3は脱着検出手段2からの記録媒体装着イベント発生の報せを受け、時間計測を停止する(S24)とともに、データ処理手段1に対し、記録媒体4の抜去発生前のデータ処理を続行するように指示する(S25)。ただし、最小限必要な記録媒体4の初期化などの処理は、データ処理続行の前に行うこととする。
【0019】
このように、記録媒体4の抜去から再装着までの時間長に応じて以降の処理を変えることで、不測の事態により脱着が発生した場合などの再立ち上げまでの時間を短縮することができる。
【0020】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2は、アイドル状態での記録媒体脱着時の処理に関する。
【0021】
図3は、本発明の実施の形態2によるデータ処理装置の動作を説明するための説明図である。
【0022】
データ処理手段1は、記録媒体4から読み込んだデータに所定の加工処理を施したり、所定の加工処理を施したデータを記録媒体4に格納したりするための加工処理を施す手段である。なお、ここで言う加工処理とは、データを何らか形で扱う処理全般を含むものである。
【0023】
例えば記録媒体4に格納された画像データを読み出し、読み出したデータを加工し、図示しない表示装置に加工した画像を表示させたり、あるいは図示しない入力装置から取り込んだ画像データに所定の加工処理を施し、記録媒体4に格納したりするといった役割を持っている。しかしながらデータ処理手段1は、前述したような処理を常時行っている訳ではなく、ひとまとまりの処理N(Nは自然数であり、処理をナンバリングするための表記である)が完了してから次の処理N+1を開始するトリガとなるイベントが発生するまでの間に何も処理を行わないアイドル期間が存在する(図3(a)参照)。
【0024】
データ処理手段1は、自身の動作状態を保持しておき、アイドル期間中に記録媒体4の脱着が発生しても、記録媒体4へのアクセスも、データ処理手段1が保有するデータの変化もないため、抜去されている時間が所定のタイムアウト時間内であれば、特に何もせず、記録媒体4の装着後に、処理N+1を開始するトリガとなるイベント待ちとなる。ただし、記録媒体4が一旦データ処理装置から抜去されたために再初期化が必要な場合は、記録媒体4の初期化処理のみ行うこととする。この状態を示したものが図3(c)である。一方、抜去されている時間がタイムアウト時間より長い場合は、図3(b)の通り、イベントを待つことなく、抜去処理される。
【0025】
このように、データ処理手段1の動作状態を保持しておくことで、アイドル期間中に不測の事態により脱着が発生した場合に、再立ち上げ時間の最短化を図ることができる。
【0026】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3は、記録媒体のデータ読み出し中の記録媒体脱着時の処理に関する。
【0027】
図4は、本発明の実施の形態3によるデータ処理装置の動作を説明するための説明図である。
【0028】
データ処理手段1は、前記記録媒体4からデータを読み出す際に、読み出しアドレスや読み出しデータ長などの情報を保持しておき、データ読み出し中に記録媒体4の脱着が発生した場合、記録媒体4の抜去されている時間が所定のタイムアウト時間内であれば、記録媒体4の装着後に、保持している読み出し情報を元に、脱着によってアクセスが中断されたデータの再読み出しから処理を再開する。
【0029】
ただし、記録媒体4が一旦データ処理装置から抜去されたために再初期化が必要な場合は、記録媒体4の初期化処理を行った後に、前記の読み出し処理を再開することとする。
【0030】
このように、記録媒体4からのデータ読みだしの際に、データ読みだし情報を保持しておくことで、データ読み出し中に不測の事態により脱着が発生した場合でも、抜去されている時間が所定のタイムアウト時間内であれば、中断したデータ読み出し処理から再開することができる。
【0031】
(実施の形態4)
本発明の実施の形態4は、記録媒体へのデータ書き込み中の記録媒体脱着時の処理に関する。
【0032】
図5は、本発明の実施の形態4によるデータ処理装置の動作を説明するための説明図である。
【0033】
前記データ処理手段1は、前記記録媒体4へデータを書き込む際に、書き込みアドレスや書き込みデータ長などの情報を保持しておき、データ書き込み中に記録媒体4の脱着が発生した場合、記録媒体4の抜去されている時間が所定のタイムアウト時間内であれば、記録媒体4の装着後に、保持している書き込み情報を元に、脱着によってアクセスが中断されたデータの再書き込みから処理を再開する。
【0034】
ただし、記録媒体4が一旦データ処理装置から抜去されたために再初期化が必要な場合は、記録媒体4の初期化処理を行った後に、前記の書き込み処理を再開することとする。
【0035】
このように、記録媒体4からのデータ書き込みの際に、データ書き込み情報を保持しておくことで、データ書き込み中に不測の事態により脱着が発生した場合でも、抜去されている時間が所定のタイムアウト時間内であれば、中断したデータ書き込み処理から再開することができる。
【0036】
(実施の形態5)
図6は、本発明の実施の形態5によるデータ処理装置の動作を説明するための説明図である。
【0037】
前記記録媒体4へのデータアクセス中に記録媒体4の脱着イベントが発生した場合、データ処理手段1は、実施の形態3および実施の形態4で記述した動作を行うとともに、記録媒体4に格納されている記録媒体4に関する情報(例えば、ファイルシステム情報など)と、最初の記録媒体装着時に記録媒体4から読み出し、データ処理手段1が保持している記録媒体4に関する情報とを比較する処理を、データ処理手段1の主たる役割であるデータ処理の合間、すなわち、主たる処理のアイドル期間中に行う。
【0038】
このように、データアクセス中に記録媒体4の脱着イベントが発生した直後に、記録媒体4の情報と、データ処理手段1が保有している情報を比較する処理を設けることで、処理しているデータの信頼性を向上することができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明にかかるデータ処理装置は、脱着可能な記録媒体が抜去されてから再装着される間での時間長に応じて装着時処理を変更することによって、前記脱着時間が所定の時間内であれば装置の再立ち上げ時間を短くし、不測の事態により脱着が発生しても脱着前の処理の継続が望まれる用途における各種機器に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施の形態1におけるデータ処理装置の構成を示すブロック図
【図2】同実施の形態1におけるデータ処理装置の脱着イベント発生時の処理の流れを示す説明図
【図3】同実施の形態2におけるデータ処理装置の動作を説明するための説明図
【図4】同実施の形態3におけるデータ処理装置の動作を説明するための説明図
【図5】同実施の形態4におけるデータ処理装置の動作を説明するための説明図
【図6】同実施の形態5におけるデータ処理装置の動作を説明するための説明図
【図7】従来のデータ処理装置の構成を示すブロック図
【符号の説明】
【0041】
1 データ処理手段
2 脱着検出手段
3 脱着時間計測手段
4 記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱着可能な記録媒体にアクセスし所定のデータ処理を行うデータ処理手段と、前記記録媒体の脱着イベントを検出する脱着検出手段と、前記脱着検出手段によって検出された脱着イベントにおいて記録媒体が抜去されてから再装着されるまでの時間を計測する脱着時間計測手段とを具備し、前記脱着時間計測手段の計測値に従って脱着発生時における前記データ処理手段の処理内容を変更することを特徴とするデータ処理装置。
【請求項2】
前記データ処理手段は、記録媒体へアクセスしておらずアイドル状態であった時に脱着が発生しかつ前記記録媒体が抜去されてから再び挿入されるまでの時間が所定時間以下であった場合、脱着が発生する前に使用していた前記記録媒体のデータを使用することで、前記記録媒体からのデータ再読み出し処理を省くことを特徴とする請求項1に記載のデータ処理装置。
【請求項3】
前記データ処理手段は、記録媒体からデータを読み出している時または読み出したデータを処理している時に前記記録媒体の脱着が発生しかつ前記記録媒体が抜去されてから再び挿入されるまでの時間が所定時間以下であった場合、脱着が発生した時に読み出していたデータまたは処理していたデータのみを破棄し、破棄したデータの再読み出しから処理を再開することを特徴とする請求項1に記載のデータ処理装置。
【請求項4】
前記データ処理手段は、記録媒体へデータを書き込んでいる時に脱着が発生しかつ前記記録媒体が抜去されてから再び挿入されるまでの時間が所定時間以下であった場合、脱着が発生した時に書き込んでいたデータの再書き込みから処理を再開することを特徴とする請求項1に記載のデータ処理装置。
【請求項5】
記録媒体の脱着発生以降に、前記データ処理手段の主たる処理の空き時間に、記録媒体内の情報とデータ処理手段に保持された情報の比較処理を実施することで、データ処理の信頼性を向上させることを特徴とした請求項1に記載のデータ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−215604(P2006−215604A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−24736(P2005−24736)
【出願日】平成17年2月1日(2005.2.1)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】