説明

データ処理装置

【課題】処理するデータに応じた周波数のクロックを、CPUなどの処理制御部に与えることが可能な技術を開示する。
【解決手段】プリンタ1は、ネットワークを介してデータを受信するデータ通信部と、前記データ通信部が受信したデータを格納する受信バッファ41と、クロックジェネレータ23と、システム制御部22と、そのシステム制御部22が指定した指定クロックに基づき、受信バッファ41に格納されたデータに関する処理を制御するサブCPU21と、受信バッファ41に格納されているデータ量を検知するMAC25と、を備え、システム制御部22は、検知されたデータ量が多いほど、少ない場合に比べて、周波数が高いクロックを指定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークを介して受信したデータを処理するデータ処理装置に関し、当該データ処理装置が有する処理制御部に与えるクロックの周波数を低くすることで消費電力を抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ネットワークを介して受信したパケットの処理を制御するCPUを有し、そのCPUに与えるクロックの周波数を低くすることで消費電力を抑制するプリンタがある(下記特許文献1)。このプリンタは、受信したパケットの種類を判別し、例えば受信頻度が高く、CPUによる処理が単純で簡単なパケット、又は処理時間の短いパケットであると判別したときには、クロックの周波数を、他のパケットの受信時の周波数よりも低くする。これにより、処理するデータに応じた周波数のクロックをCPUに与えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−119617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のプリンタでは、パケットの種類を判別するためにパケットの中身を解析する必要があり、例えば解析中に後続のデータが受信できなくなるといった問題が生じる。
【0005】
本明細書では、受信したデータの解析を要することなく、処理するデータに応じた周波数のクロックを、CPUなどの処理制御部に与えることが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書によって開示されるデータ処理装置は、ネットワークを介してデータを受信するデータ通信部と、前記データ通信部が受信したデータを格納する受信メモリと、周波数が互いに異なる複数のクロックを生成するクロック生成部と、前記複数のクロックからいずれかを指定するクロック指定部と、前記クロック指定部が指定した指定クロックに基づき、前記受信メモリに格納されたデータに関する処理を制御する処理制御部と、前記受信メモリに格納されているデータ量を検知するデータ量検知部と、を備え、前記クロック指定部は、前記データ量検知部が検知したデータ量が多いほど、少ない場合に比べて、周波数が高いクロックを指定する。
【0007】
上記データ処理装置では、前記データ量検知部により検知されたデータ量と、閾値とを大小比較するデータ比較部を備え、前記クロック指定部は、前記データ量が前記閾値を超える場合、前記閾値以下である場合に比べて、周波数が高いクロックを指定してもよい。
【0008】
上記データ処理装置では、前記データ比較部は、前記データ量検知部により検知されたデータ量と、前記複数のクロックにそれぞれ対応する複数の閾値とを大小比較し、前記クロック指定部は、前記データ量が超えた最大の閾値に対応するクロックを指定してもよい。
【0009】
上記データ処理装置では、日時、及び、外部機器との接続状況の少なくとも1つの情報を取得する情報取得部を備え、前記データ比較部は、前記閾値の数、前記閾値の値、及び、前記閾値に対応する周波数の少なくとも1つを、前記情報取得部が取得した情報に応じて変更してもよい。
【0010】
上記データ処理装置では、日時、及び、外部機器との接続状況の少なくとも1つの情報を取得する情報取得部を備え、前記クロック指定部は、前記複数のクロックの周波数のうち最低周波数の値を、前記情報取得部が取得した情報に応じて変更してもよい。
【0011】
上記データ処理装置であって、通常モードと、当該通常モードよりも消費電力が少ない省電力モードとを切り替えるモード切替部と、前記通常モード時に前記データに関する処理を制御し、前記省電力モード時に前記データに関する処理の制御を停止するメイン制御部と、を備え、前記処理制御部は、前記メイン制御部よりも消費電力が少なく、少なくとも前記省電力モード時に前記データに関する処理を制御するサブ制御部でもよい。
【0012】
なお、この発明は、データ処理方法、この方法または装置の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体等の種々の態様で実現することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、処理するデータに応じた周波数のクロックを、CPUなどの処理制御部に与えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】一実施形態のプリンタ1の概略構成を示すブロック図
【図2】周波数変更処理を示すフローチャート
【図3】対応関係テーブルのデータ構造を示す図
【図4】昼間におけるディープスリープ時の格納データ量及びクロック周波数の変化を示すグラフ
【図5】夜間におけるディープスリープ時の格納データ量及びクロック周波数の変化を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施形態>
一実施形態について図1〜図5を参照しつつ説明する。
【0016】
(プリンタの概略構成)
図1は、本実施形態のプリンタ1の概略構成を示すブロック図である。プリンタ1は、データ処理装置の一例であり、有線通信または無線通信により、ネットワークを介して、図示しない外部機器と通信可能である。ネットワークは、イーサネット(登録商標)などのLAN(Local Area Network)や、インターネットが好ましい。
【0017】
プリンタ1は、制御回路2と、図示しない印刷機構を有する画像形成部3とを備える。制御回路2及び画像形成部3は、図示しない電力供給部から電力供給され、制御回路2は、外部機器からの印刷指示に基づき画像形成部3に印刷動作を実行させる。なお、画像形成部3は、電子写真方式及びインクジェット方式のいずれでもよい。
【0018】
制御回路2は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)10、PHY(Physical Layer)11、第1メモリ12、第2メモリ13、ファクシミリ通信部14、及び、USB通信部15を有する。PHY11は、ネットワーク物理層を構成し、ネットワークとの接続する接続部であり、データ通信部の一例である。第1メモリ12は、例えばDDR2−SDRAM(Double−Data−Rate2 Synchronous Dynamic Random Access Memory)など、大記憶容量の揮発性メモリが好ましい。
【0019】
第2メモリ13と、ファクシミリ通信部14と、USB通信部15とは、それぞれバス29及び図示しないインターフェース回路を介して接続されている。第2メモリ13には、例えば、プリンタ1全体の制御処理や後述する周波数変更処理を実行するための各種のプログラムや、日時、接続数、閾値、クロック周波数の対応関係テーブルが記憶されている。第2メモリ13は、例えばROMなどの不揮発性メモリが好ましい。ファクシミリ通信部14は、図示しない電話回線を介して外部のファクシミリ装置と通信可能に接続され、当該ファクシミリ装置からファクシミリデータを受信する。また、USB通信部15は、USBポートを有し、そのUSBポートに接続された外部機器からデータを受信することができる。
【0020】
ASIC10は、メインCPU20、サブCPU21、システム制御部22、クロックジェネレータ23、割り込みコントローラ24、ネットワークコントローラ25、メモリコントローラ26、画像処理部27、リアルタイムクロック28を有し、これらはバス29を介して互いにデータ伝送が可能である。また、ASIC10は、第3メモリ30を有し、この第3メモリ30は、上記第1メモリ12よりも記憶容量が小さく消費電力が少ないメモリであって、例えばSRAM(Static Ramdom Access Memory)が好ましい。
【0021】
メインCPU20は、高周波のクロック信号CLに基づき、各種のデータ処理や演算、制御回路2全体の制御等を行う。メインCPU20はメイン制御部の一例である。サブCPU21は、メインCPU20に比べて、低い周波数の複数のクロック信号CLで動作可能であって、かつ、消費電力が小さい。サブCPU21は、処理制御部及びサブ制御部の一例である。サブCPU21は、ネットワークコントローラ40、ファクシミリ通信部14及びUSB通信部15にバス29を介して問合せし、これらが外部機器と通信可能に接続されているかどうかの接続情報を個別に取得することができる。このとき、サブCPU21は、情報取得部として機能する。
【0022】
システム制御部22は、クロックジェネレータ23に、クロック生成の指示、及び、生成すべきクロック周波数の指示を含む指示信号SG1を出力するハード回路であり、クロック指定部の一例である。クロックジェネレータ23は、周波数が互いに異なる複数のクロック信号CLを生成するハード回路であり、クロック生成部の一例である。具体的には、クロックジェネレータ23は、図示しない基準クロック生成回路及び分周回路を有する。分周回路は、システム制御部22からの指示に応じた分周比が設定され、基準クロック生成回路が生成した基準クロックを、その設定された分周比に応じて分周する。
【0023】
ネットワークコントローラ25は、メインCPU20及びサブCPU21が、PHY11を介して外部機器と通信するための通信制御部であり、ネットワークとの通信を制御するMAC(Media Access Controller)40を有する。MAC40は、受信バッファ41及びバッファカウンタ42を有する。受信バッファ41は、受信メモリの一例であり、PHY11からの受信データを一時的に格納し、FIFO(First In First Out)のデータ構造を有する揮発性メモリであることが好ましい。受信データには、例えばSNMP(Simple Network Management Protocol)、ARP(Address Resolution Protocol)要求、PING(Packet INternet Groper)要求、FTP(File Transfer Protocol)、その他所定のプロトコルに関するデータや、第1メモリ12に格納された画像データの読み出し要求、印刷要求、印刷データが含まれる。
【0024】
バッファカウンタ42は、受信バッファ41に格納されている受信データのデータ量が所定量ずつ増減するごとに、カウント値を増減させる。以下、受信バッファ41に格納されている受信データのデータ量を、格納データ量という。MAC40は、バッファカウンタ42のカウント値に基づき、格納データ量を検知し、その検知された格納データ量と、複数の閾値とを比較し、各閾値を超えるごとに割り込み信号SG2を出力する。MAC40は、データ量検知部及びデータ比較部の一例である。複数の閾値については後で詳説する。
【0025】
メモリコントローラ26は、第1メモリ12及び第3メモリ30へのデータ書き込みや読み出しを制御したり、バス29とのプロトコル変換を行ったりするハード回路である。メモリコントローラ26は、PHY11からの受信データを、主として第3メモリ30に格納し、また、PHY11が印刷要求を受けたことに基づき、第3メモリ30から印刷データを読み出して第1メモリ12に書き込む。また、メモリコントローラ26は、ファクシミリ通信部14及びUSB通信部15にて受信したデータも第3メモリに書き込む。画像処理部27は、第1メモリ12または第3メモリ30に格納された印刷データを、ビットマップデータに変換するなどの処理を行い、画像形成部3に出力する。これにより、画像形成部3は、印刷データに基づく画像を、図示しないシートに形成する印刷動作を実行する。
【0026】
割り込みコントローラ24は、ネットワークコントローラ25、メモリコントローラ26、画像処理部27のいずれかから割り込み信号SG2を受けると、予め定められた優先順位に従ってメインCPU20及びサブCPU21に割り込み指示をする。リアルタイムクロック28は、上記基準クロックに基づき現在日時を計時するハード回路である。リアルタイムクロック28は、クロックジェネレータ23からのクロックに基づいて駆動しており、メインCPU20及びサブCPU21は、リアルタイムクロック28に問合せすることにより現在日時情報を取得することができる。
【0027】
(電力モード)
ASIC10は、互いに消費電力が異なる複数の電力モードを選択的に実行することができる。本実施形態では、複数の電力モードには、通常モード、その通常モードよりも消費電力が少ないスリープモード、そのスリープモードよりもさらに消費電力が少ないディープスリープモードが含まれる。
【0028】
ASIC10は、プリンタ1の電源オン時、通常モードを実行し、制御回路2全体及び画像形成部3に電力を供給して通電し動作可能な状態にする。このため、通常モードでは、ASIC10は、画像形成部3に印刷動作を実行させることができる。また、このとき、クロックジェネレータ23は、例えば133[MHz]の高周波クロック信号CLを生成し、ASIC10の各構成要素に与える。なお、通常モード時に、サブCPU21を停止させてもよい。メインCPU20は、印刷要求を受信しない状態が第1基準時間だけ継続したことを条件に、通常モードからスリープモードに移行する。
【0029】
スリープモードでは、ASIC10は、画像形成部3への電力供給を、通常モードよりも低下或いは停止させる。従って、画像形成部3に印刷動作を実行させることができなくなる。ただし、通常モードに復帰し易くするため、クロックジェネレータ23は、通常モードと同等以下の周波数のクロック信号CLを生成することが好ましい。ASIC10は、印刷要求を受信しない状態が第1基準時間よりも長い第2基準時間だけ継続したことを条件に、スリープモードからディープスリープモードに移行する。例えば画像形成部3が定着器を有する電子写真方式である場合には、スリープモードに移行後、定着器をファンなどにより所定温度まで冷却することがあり、その冷却に要する時間が、第1基準時間と第2基準時間との時間差以上であることが好ましい。
【0030】
ディープスリープモードでは、ASIC10は、画像形成部3に加えて、メイン制御部20、第1メモリ12、画像処理部27への電力供給を、通常モードよりも低下或いは停止させる。従って、メイン制御部20による高速処理、第1メモリ12へのアクセス、及び、画像処理部27でのデータ処理を実行することができなくなる。しかも、サブCPU21は、次述する周波数変更処理を実行することにより、検知された格納データ量に応じて、クロックジェネレータ23に生成させるクロック信号CLの周波数を増減させる。
【0031】
なお、ASIC10は、スリープモード或いはディープスリープモードを実行中に、外部機器から即時印刷を示す印刷指示を受けたとき、予約印刷を受信した後に当該予約印刷で予約された時刻が到来したときや、第3メモリ30のデータ格納量が所定の上限量に達したときなどに、通常モードに復帰する。
【0032】
(周波数変更処理)
図2は、周波数変更処理を示すフローチャートであり、図3は、日時、接続数、閾値、クロック周波数の上記対応関係テーブルのデータ構造を示す図である。ディープスリープモードに移行すると、メインCPU20は停止し、サブCPU21は、第2メモリ13から圧縮された周波数変更プログラム及び上記対応関係テーブルを読み出して第3メモリ上で解凍した後に第2メモリ13を停止させ、当該周波数変更プログラムに従って図2に示す周波数変更処理を実行する。
【0033】
まずサブCPU21は、リアルタイムクロック28から上記現在日時情報を取得し、また、ネットワークコントローラ40、ファクシミリ通信部14及びUSB通信部15から上記接続情報を取得する(S1)。そして、サブCPU21は、上記対応関係テーブルを参照して、クロック周波数の初期値、換言すれば最低周波数値として、現在日時及び接続情報に対応する値を指定し、クロックジェネレータ23が生成するクロック信号CLの周波数を、その指定した値に変更させる(S2)。
【0034】
夜間は、昼間に比べて、データを受信する頻度が低く、受信するデータ量が少ない場合がある。そこで、対応関係テーブルによれば、クロック周波数の初期値は、昼間の時間帯に比べて夜間の時間帯の方が低い値に設定されている。これにより、夜間ではクロック周波数の初期値を低くして消費電力を抑制することができる。一方、昼間ではクロック周波数の初期値を有る程度高く維持することで、サブCPU21によるデータに関する処理を速くして格納データ量を抑制し、且つ、膨大なデータを一度に受信するときにも即座に対応することができる。
【0035】
また、例えばPHY11と、ファクシミリ通信部14及びUSB通信部15とに同時にデータ転送が行われた場合、PHY11だけが外部機器に通信可能に接続されている場合に比べて、データ転送がバス29で調停されるため、第3メモリ30へのデータ転送が遅くなる。そうすると、その分だけ、サブCPU21が受信バッファ41に格納されている受信データを、第3メモリを利用して処理することができず、格納データ量が増大する。
【0036】
そこで、対応関係テーブルによれば、クロック周波数の初期値は、外部機器との接続数が多いほど高い値に設定されている。これにより、前者の場合には、サブCPU21による第3メモリ内のデータ処理を速くし格納データ量を抑制し、且つ、膨大なデータを一度に受信するときにも即座に対応することができる。一方、後者の場合には、消費電力を抑制することができる。
【0037】
次に、サブCPU21は、ネットワークコントローラ25からの上記割り込み信号SG2の待機状態に入る(S3:NO)。サブCPU21は、割り込み信号SG2の入力が無い状態が、規定時間(例えば10分)以上継続した場合(S7:YES)、クロックジェネレータ23が生成するクロック信号CLの周波数を初期値に戻し(S8)、再びS3の処理に戻る。これにより、割り込み信号SG2の入力が無い状態が規定時間を経ってもクロック信号CLを初期値に戻さない構成に比べて、ASIC10での消費電力を軽減することができる。サブCPU21は、割り込み信号SG2の入力が、割り込み信号SG2の入力が無い状態が規定時間未満である場合(S7:YES)、S3の処理に戻る。
【0038】
サブCPU21は、割り込み信号SG2を、割り込みコントローラ24を介して受信すると(S3:YES)、当該割り込み信号SG2に基づき、格納データ量がどの閾値を超えたかを把握し、その超えた閾値のうち最大の閾値を特定する(S4)。サブCPU21は、上記対応関係テーブルを参照して、最大の閾値に対応するクロック周波数を指定する(S5)。
【0039】
本実施形態では、上記複数の閾値には、第1閾値、第2閾値、第3閾値が含まれ、第1閾値から第3閾値に向って大きいデータ量に設定されている。対応関係テーブルによれば、大きい閾値ほど、高いクロック周波数に対応付けられている。また、前述したように、夜間は、昼間に比べて、データを受信する頻度が低く、受信するデータ量が少ない場合がある。そこで、対応関係テーブルによれば、夜間の方が昼間に比べて、低い閾値までに設定され、閾値の数も多く、且つ、各閾値に対応するクロック周波数も低い。
【0040】
図4は昼間におけるディープスリープ時の格納データ量及びクロック周波数の変化を示すグラフであり、図5は夜間におけるディープスリープ時の格納データ量及びクロック周波数の変化を示すグラフである。各図において、実線グラフが格納データ量の変化を示し、一点鎖線グラフがクロック周波数の変化を示す。
【0041】
図4に示すように、昼間では、最低周波数は12[MHz]に設定されており、格納データ量が第1閾値を超えると、クロック周波数は一気に133[MHz]に変更される。格納データ量が第1閾値以下になるとクロック周波数は12[MHz]に戻される。このように、昼間では、クロック周波数は、格納データ量に応じて1段階だけ変更される。
【0042】
図5に示すように、夜間では、最低周波数は8[MHz]に設定されており、格納データ量が第1閾値を超えると、クロック周波数は24[MHz]に変更され、格納データ量が第2閾値を超えると、クロック周波数は48[MHz]に変更され、更に格納データ量が第3閾値を超えると、クロック周波数は133[MHz]に変更される。このように、夜間では、クロック周波数は、格納データ量に応じて多段階に変更される。
【0043】
サブCPU21は、クロック周波数を指定し変更すると(S5)、プリンタ1の電源がオフされなければ(S6:NO)、S3に戻り、電源がオフされれば(S6:YES)、本周波数変更処理を終了する。
【0044】
(本実施形態の効果)
本実施形態によれば、サブCPU21は、検知された格納データ量が多いほど、少ない場合に比べて、周波数が高いクロックに基づき受信データに関する処理を制御する。これにより、受信データの解析を要することなく、処理するデータに応じた周波数のクロックを、サブCPU21に与えることができる。このため、データ解析に時間がかかることにより格納データ量が受信バッファ41の格納上限量に達してしまい、受信データを取りこぼすことを抑制することができる。また、格納データ量が多いほど、クロック周波数を高くすることにより、サブCPU21が受信バッファ41からデータを吸い出すスピードが速くなるので、受信データが受信バッファ41に格納し切れずに取りこぼすことを抑制することができる。
【0045】
また、格納データ量が閾値を超える場合、閾値以下である場合に比べて、周波数が高いクロックが指定される。即ち、格納データ量が閾値を超えるかどうかに応じてクロックの周波数を段階的に変える。これにより、周波数を格納データ量に応じて連続的に変える場合に比べて、クロックジェネレータ23の構成を簡略化することができる。
【0046】
また、格納データ量が閾値を超えるごとに、その閾値を1ランク大きい値に変更することにより、指定クロックの周波数を1段ずつ高くしていく構成でよい。これに対し、本実施形態によれば、検知された格納データ量と、複数のクロックにそれぞれ対応する複数の閾値とが大小比較され、格納データ量が超えた最大の閾値に対応するクロックが指定される。これにより、データ量が急激に増加した場合でも、指定クロックの周波数を複数段分、一気に高くすることができ、格納データ量の増加に応じた適切な周波数のクロックでデータに関する処理を制御することができる。
【0047】
更に、日時に応じて、閾値の数、閾値の値、及び、閾値に対応する周波数が変更される。これにより、日時や外部機器の接続状態への変化に応じて適切な周波数のクロックを指定することができる。また、日時、及び、外部機器との接続状況の情報に応じて、複数のクロックの周波数のうち最低周波数の値が変更される。これにより、日時や外部機器の接続状態への変化に応じて適切な最低周波数のクロックを指定することができる。
【0048】
また、ディープスリープ、換言すれば省電力モード時においてメインCPU20による制御を停止させつつ、受信したデータの解析を要することなく、処理するデータに応じた周波数のクロックを、サブCPU21に与えることができる。
【0049】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような種々の態様も本発明の技術的範囲に含まれる。特に、各実施形態の構成要素のうち、最上位の発明の構成要素以外の構成要素は、付加的な要素なので適宜省略可能である。
(1)上記実施形態では、印刷機能を有するプリンタ1を例に挙げて説明した。しかし、上記実施形態は、ファクシミリ装置などの画像形成装置や、画像読取装置、或いは、印刷機能、コピー機能、画像読取機能及びファクシミリ機能のうち少なくとも2つを備える複合機にも適用することができる。要するに、受信したデータに関する処理をするデータ処理装置であればよく、受信したデータを所定形式に変換したり、圧縮したり、解凍したり、加工したり、解析したり、不揮発性メモリに記憶したり、表示装置に表示させたりする、いずれの装置にも本実施形態を適用することができる。
【0050】
(2)上記実施形態では、クロックジェネレータ23は、基準ブロックの分周比を変更することにより、周波数が互いに異なる複数のクロックを択一的に生成する構成であった。しかし、周波数が互いに異なる複数のクロックを同時に生成し、それら複数のクロックから指定されたクロックを、選択回路を介して出力する構成でもよい。
【0051】
(3)上記実施形態では、クロック周波数の初期値を、現在日時及び接続情報に応じて変更した。しかし、クロック周波数の初期値を、現在日時及び接続情報のいずれか1つに応じて変更してもよいし、これらに応じて変更しない構成でもよい。
【0052】
(4)上記実施形態では、昼間、夜間という時間帯に応じて、クロック周波数の初期値を変更した。しかし、その他の時間帯や、平日と休日という曜日に応じて、クロック周波数の初期値を変更してもよい。
【0053】
(5)上記実施形態では、日時に応じて、閾値の数、閾値の値、閾値に対応するクロック周波数の値を変更した。しかし、日時に応じて、閾値の数、閾値の値、閾値に対応するクロック周波数の値のうち少なくとも1つを変更する構成であればよい。また、外部機器の接続数が少ないほど、閾値の数、閾値の値、閾値に対応するクロック周波数の値のうち少なくとも1つを小さくしてもよい。
【0054】
(6)上記実施形態では、システム制御部22、クロックジェネレータ23、メモリコントローラ26、画像処理部27、リアルタイムクロック28、バッファカウンタ42等はハード回路で構成した。しかし、これらの少なくとも1つはCPUによって構成してもよい。また、ASIC10からシステム制御部22及び割り込みコントローラ24の少なくとも1つを取り除き、その機能をサブCPU21に実行させる構成でもよい。また、メインCPU20及びサブCPU21の少なくとも1つをASICなどのハード回路で構成してもよい。
【0055】
(7)上記実施形態では、2つのCPU20,21を備える構成であった。しかし、1つのCPUだけを備え、このCPUが上記周波数変更処理を実行する構成でもよい。
【0056】
(8)上記実施形態では、受信バッファ41に格納されているデータ量を直接
検知した。しかし、受信バッファ41に書き込んだデータ量と、受信バッファ41から読み出したデータ量とを監視し、前者から後者を減算したデータ残量を格納データ量として検知してもよい。
【符号の説明】
【0057】
1:プリンタ1 11:PHY 20:メインCPU 21:サブCPU 22:システム制御部 23:クロックジェネレータ 41:受信バッファ 40:MAC40

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークを介してデータを受信するデータ通信部と、
前記データ通信部が受信したデータを格納する受信メモリと、
周波数が互いに異なる複数のクロックを生成するクロック生成部と、
前記複数のクロックからいずれかを指定するクロック指定部と、
前記クロック指定部が指定した指定クロックに基づき、前記受信メモリに格納されたデータに関する処理を制御する処理制御部と、
前記受信メモリに格納されているデータ量を検知するデータ量検知部と、を備え、
前記クロック指定部は、前記データ量検知部が検知したデータ量が多いほど、少ない場合に比べて、周波数が高いクロックを指定する、データ処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のデータ処理装置であって、
前記データ量検知部により検知されたデータ量と、閾値とを大小比較するデータ比較部を備え、
前記クロック指定部は、前記データ量が前記閾値を超える場合、前記閾値以下である場合に比べて、周波数が高いクロックを指定する、データ処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載のデータ処理装置であって、
前記データ比較部は、前記データ量検知部により検知されたデータ量と、前記複数のクロックにそれぞれ対応する複数の閾値とを大小比較し、
前記クロック指定部は、前記データ量が超えた最大の閾値に対応するクロックを指定する、データ処理装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載のデータ処理装置であって、
日時、及び、外部機器との接続状況の少なくとも1つの情報を取得する情報取得部を備え、
前記データ比較部は、前記閾値の数、前記閾値の値、及び、前記閾値に対応する周波数の少なくとも1つを、前記情報取得部が取得した情報に応じて変更する、データ処理装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のデータ処理装置であって、
日時、及び、外部機器との接続状況の少なくとも1つの情報を取得する情報取得部を備え、
前記クロック指定部は、前記複数のクロックの周波数のうち最低周波数の値を、前記情報取得部が取得した情報に応じて変更する、データ処理装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のデータ処理装置であって、
通常モードと、当該通常モードよりも消費電力が少ない省電力モードとを切り替えるモード切替部と、
前記通常モード時に前記データに関する処理を制御し、前記省電力モード時に前記データに関する処理の制御を停止するメイン制御部と、を備え、
前記処理制御部は、前記メイン制御部よりも消費電力が少なく、少なくとも前記省電力モード時に前記データに関する処理を制御するサブ制御部である、データ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−234315(P2012−234315A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101784(P2011−101784)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】