説明

データ通信端末装置及びデータ通信システム

【課題】帯域保証のないインターネットまたはIP通信網などのネットワーク上でのデータ通信端末装置間のリアルタイム通信において、同一パケットの2回送信やデータ補完情報のパケット送信することなく、パケットロスが発生した場合のデータの欠落を抑制する。
【解決手段】IP電話機100は、音声データをサブサンプリングして、奇数番データと偶数番データの2つの音声データ列に分割し、シーケンス番号付加部112で、音声データ列からパケット化するデータ群に、音声データ列の列番号に基づいて、音声パケットの送出順番情報であるシーケンス番号を付加し、パケット送信部105で、音声パケットを送信し、パケット受信部107で音声パケットを受信し、音声復元部108では、シーケンス番号を参照して、音声データを復元し、パケットロスの発生時は、直近のパケットのデータを欠落データにコピーして補完する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LANやインターネット、IP通信網等のネットワークを介して、リアルタイム音声データや映像データの送受信を行うためのデータ通信端末装置、このデータ通信端末装置を用いたデータ通信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ブロードバンドの普及に伴い、インターネット、IP通信網などのネットワークを介しパケット化した音声データあるいは映像データを相手側の装置に送信するとともに、相手側の装置からパケット化した音声データあるいは映像データを受信することにより、双方向にリアルタイム通信を行うデータ通信端末装置が実用化されている。
【0003】
この種のデータ通信端末装置では、データがパケット化されて、ネットワークを介して順次送信されるが、帯域保証がなされていないため、リアルタイムに送受信を行うとパケットロス(パケットの消失)が発生する。これは最優先機能であるリアルタイム性を確保するため、再送の仕組みを具備しないRTPプロトコルを用いることが本質的な要因となっており、リアルタイム性を確保しつつ、パケットの消失を完全に解決することはできない。そのため、パケットの消失を前提として、消失したパケットを受信データ通信端末装置側で復元し、データの品質低下を抑制することが望まれる。
【0004】
従来のデータ通信端末装置として、送信端末装置側では同一のシーケンス番号を付加したRTPパケット化されたデータを2回送信し、受信端末装置側では、2回送信されてきたパケットのうち1つでも受信できれば、正常に受信できたとして、データの欠落により再生される音声のとぎれを防止するという技術が知られている(特許文献番号1参照)。
【0005】
また、音声データ通信端末装置として、パケット化された音声データを送信するとともに、送信側装置では、音声認識処理を施し、音声信号から文字情報データを生成して送信し、受信側装置では、送信されてきた文字情報データから音声信号を復元し、欠落した音声データの補正を行う技術が知られている(特許文献番号2参照)。
【特許文献1】特開2004−282538号公報
【特許文献2】特開2002−330233号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の特許文献1に記載の技術では、シーケンス番号が同一のパケットを2回送信するという冗長性を備えることで、パケットロスを軽減させているため、伝送するデータ量は、2倍となり、相手側端末装置との間のネットワークで必要となる帯域も2倍となってしまう。さらに、2倍となるデータ量が、ネットワークの混雑を助長し、結果として、パケットロスの原因をひきおこす要因にもなるという課題があった。
【0007】
また、上記の特許文献2に記載の技術では、送信側端末装置にあっては、音声データとは別に送信する音声データを音声認識して文字情報データを生成して送信し、受信側端末装置にあっては、パケットロスにより音声データに欠落が生じた場合には、前記の別に送信した文字情報データから音声信号を生成して音声データを補正するため、送信側端末装置には信号処理負荷の大きい音声認識の機能を具備し、受信側端末装置にも、文字情報から音声生成を生成する信号処理負荷の大きい機能を具備する必要があった。
【0008】
そこで、本発明は、帯域保証のないインターネットまたはIP通信網などのネットワーク上でリアルタイムデータ通信において、伝送するパケットのデータ量を倍増させることなく、また、処理負荷の大きい音声認識、音声生成の機能を備えることなく、パケットロスによるデータの劣化を抑制するデータ通信端末装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、通信ネットワークを介して接続されたデータ通信端末装置間でパケット化されたデータを送受信するデータ通信システムであって、前記データ通信端末装置は、データをサブサンプリングし、N個のデータ列に分割するサブサンプリング部と、前記N個のデータ列を入力し、前記データの分割の順番で、パケット化するデータ群を、繰り返しぬきだして、パケットの送出順番であるシーケンス番号を前記データ群に付加するシーケンス番号付加部と、前記シーケンス番号の付加されたデータ群にパケットヘッダを付加して、パケットとして相手側データ通信端末装置に送信する受信部と、相手側データ通信端末装置からパケットを受信するパケット受信部と、受信した前記パケットから前記シーケンス番号の順番で前記N個のデータ列に再生成し、前記サブサンプリング部におけるデータの分割の順番で、前記N個のデータ列から前記データを復元する復元部とを備え、前記復元部にあっては、パケットロスによってデータの欠落が発生した場合は、前記パケットロスしたパケットに直近するシーケンス番号のパケットのデータで前記欠落したデータを補完することを特徴とするデータ通信システムとした。
【0010】
また、本発明は、通信ネットワークを介して接続され、少なくとも1つ以上のデータ通信端末装置と組み合わせて使用されるデータ通信端末装置であって、データをサブサンプリングし、N個のデータ列に分割するサブサンプリング部と、前記N個のデータ列を入力し、前記データの分割の順番で、パケット化するデータ群を、繰り返しぬきだして、パケットの送出順番であるシーケンス番号を前記データ群に付加するシーケンス番号付加部と、前記シーケンス番号の付加されたデータ群にパケットヘッダを付加して、パケットとして相手側データ通信端末装置に送信する受信部と、相手側データ通信端末装置からパケットを受信するパケット受信部と、受信した前記パケットから前記シーケンス番号の順番で前記N個のデータ列に再生成し、前記サブサンプリング部におけるデータの分割の順番で、前記N個のデータ列から前記データを復元する復元部とを備え、前記復元部にあっては、パケットロスによってデータの欠落が発生した場合は、前記パケットロスしたパケットに直近するシーケンス番号のパケットのデータで前記欠落したデータを補完することを特徴とするデータ通信端末装置とした。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、通信ネットワークを介して接続されたデータ通信端末装置間でパケット化されたデータを送受信するデータ通信システムであって、前記データ通信端末装置はパケット送信においては、データをサブサンプリングし、N個のデータ列に分割するサブサンプリング部と、前記N個のデータ列を入力し、前記データの分割の順番で、パケット化するデータ群を、繰り返しぬきだして、パケットの送出順番であるシーケンス番号を前記データ群に付加するシーケンス番号付加部と、前記シーケンス番号の付加されたデータ群にパケットヘッダを付加して、パケットとして相手側装置に送信するパケット送信部を備え、パケット受信においては、相手側装置からパケットを受信するパケット受信部と、前記パケットからシーケンス番号を参照して前記N個のデータ列からデータを復元し、パケットロスによってデータの欠落が発生した場合には、パケットロスしたパケットとシーケンス番号が直近するパケットのデータで前記欠落したデータを補完する復元部を備えたことにより、欠落したデータは近似度の高いデータで置換して、連続したデータの欠落を補完するので、帯域保証のないインターネットまたはIP通信網などのネットワーク上のリアルタイム性を要求されるデータの送受信において、伝送するパケットのデータ量を倍増させることなく、また、処理負荷の大きい音声認識、音声生成の機能を備えることなく、パケットロスによるデータの劣化を抑制する効果を奏する。
【0012】
また、本発明によれば、通信ネットワークを介して接続され、少なくとも1つ以上のデータ通信端末装置と組み合わせて使用されるデータ通信端末装置であって、パケット送信においては、データをサブサンプリングし、N個のデータ列に分割するサブサンプリング部と、前記N個のデータ列を入力し、前記データの分割の順番で、パケット化するデータ群を、繰り返しぬきだして、パケットの送出順番であるシーケンス番号を前記データ群に付加するシーケンス番号付加部と、前記シーケンス番号の付加されたデータ群にパケットヘッダを付加して、パケットとして相手側装置に送信するパケット送信部を備え、パケット受信においては、相手側装置からパケットを受信するパケット受信部と、前記パケットからシーケンス番号を参照して前記N個のデータ列からデータを復元し、パケットロスによってデータの欠落が発生した場合には、パケットロスしたパケットとシーケンス番号が直近するパケットのデータで前記欠落したデータを補完する復元部を備えたことにより、欠落したデータは近似度の高いデータで置換して、連続したデータの欠落を補完するので、帯域保証のないインターネットまたはIP通信網などのネットワーク上のリアルタイム性を要求されるデータの送受信において、伝送するパケットのデータ量を倍増させることなく、また、処理負荷の大きい音声認識、音声生成の機能を備えることなく、パケットロスによるデータの劣化を抑制する効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本願の請求項1に記載の発明は、通信ネットワークを介して接続されたデータ通信端末装置間でパケット化されたデータを送受信するデータ通信システムであって、前記データ通信端末装置は、データをサブサンプリングし、N個のデータ列に分割するサブサンプリング部と、前記N個のデータ列を入力し、前記データの分割の順番で、パケット化するデータ群を、繰り返しぬきだして、パケットの送出順番であるシーケンス番号を前記データ群に付加するシーケンス番号付加部と、前記シーケンス番号の付加されたデータ群にパケットヘッダを付加して、パケットとして相手側データ通信端末装置に送信するパケット送信部と、相手側データ通信端末装置からパケットを受信するパケット受信部と、受信した前記パケットから前記シーケンス番号の順番で前記N個のデータ列に再生成し、前記サブサンプリング部におけるデータの分割の順番で、前記N個のデータ列から前記データを復元する復元部とを備え、前記復元部にあっては、パケットロスによってデータの欠落が発生した場合は、前記パケットロスしたパケットにシーケンス番号が直近するパケットのデータで前記欠落したデータを補完することを特徴とするデータ通信システムである。
【0014】
これにより、欠落したデータは近似度の高いデータで置換して、連続したデータを補完するので、帯域保証のないインターネットまたはIP通信網などのネットワーク上のリアルタイム性を要求されるデータの送受信において、パケットロスによるデータの劣化を抑制する効果を奏する。
【0015】
また、本願の請求項2に記載の発明は、上記請求項1の構成に加えて、前記直近するシーケンス番号は、パケットロスしたパケットのシーケンス番号の前後Nの値の範囲内に含まれるものである。
【0016】
これにより、上記請求項1の効果に加えて、欠落したデータを置換するデータは、近似度がさらに高まり、帯域保証のないインターネットまたはIP通信網などのネットワーク上のリアルタイム性を要求されるデータの送受信において、パケットロスによるデータの劣化をさらに抑制する効果を奏する。
【0017】
本願の請求項3に記載の発明は、通信ネットワークを介して接続され、少なくとも1つ以上のデータ通信端末装置と組み合わせて使用されるデータ通信端末装置であって、データをサブサンプリングし、N個のデータ列に分割するサブサンプリング部と、前記N個のデータ列を入力し、前記データの分割の順番で、パケット化するデータ群を、繰り返しぬきだして、パケットの送出順番であるシーケンス番号を前記データ群に付加するシーケンス番号付加部と、前記シーケンス番号の付加されたデータ群にパケットヘッダを付加して、パケットとして相手側データ通信端末装置に送信するパケット送信部と、相手側データ通信端末装置からパケットを受信するパケット受信部と、受信した前記パケットから前記シーケンス番号の順番で前記N個のデータ列に再生成し、前記サブサンプリング部におけるデータの分割の順番で、前記N個のデータ列から前記データを復元する復元部とを備え、前記復元部にあっては、パケットロスによってデータの欠落が発生した場合は、前記パケットロスしたパケットにシーケンス番号が直近するパケットのデータで前記欠落したデータを補完することを特徴とするデータ通信端末装置である。
【0018】
これにより、欠落したデータは近似度の高いデータで置換して、連続したデータを補完するので、帯域保証のないインターネットまたはIP通信網などのネットワーク上のリアルタイム性を要求されるデータの送受信において、パケットロスによるデータの劣化を抑制する効果を奏する。
【0019】
本願の請求項4に記載の発明は、上記請求項3の構成に加えて、前記直近するシーケンス番号は、パケットロスしたパケットのシーケンス番号の前後Nの値の範囲内に含まれるものである。
【0020】
これにより、上記請求項3の効果に加えて、欠落したデータを置換するデータは、近似度がさらに高まり、帯域保証のないインターネットまたはIP通信網などのネットワーク上のリアルタイム性を要求されるデータの送受信において、パケットロスによるデータの劣化をさらに抑制する効果を奏する。
【実施例】
【0021】
以下、本発明の実施例におけるデータ通信端末装置の一態様としてIP電話機について、図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施例におけるIP電話機100のブロック図である。
【0023】
IP電話機100は、自分の音声を入力するマイク101と相手側IP電話機の音声を出力するスピーカ102からなる受話器103と、マイク101から音声データを入力し、サブサンプリングにより、音声データを奇数番データからなる音声データ列(1)と、偶数番のデータからなる音声データ列(2)に分割するサブサンプリング部104と、サブサンプリング部104から音声データ列(1)、(2)を入力し、音声パケットの送出順番情報であるシーケンス番号を付加するシーケンス番号付加部112と、シーケンス番号付加部112の出力を入力し、RTPパケットヘッダを付加して、順次、音声パケット化して送信するパケット送信部105と、ネットワークと接続し、パケットの送受信を行うネットワークインターフェース部106と、音声パケットの受信を行うパケット受信部107と、送信側IP電話機で分割された音声データを復元する音声復元部108と、IP電話の発呼、着呼の呼制御を行う呼制御部109と、IP電話機100全体の制御を行う制御部110と、ダイヤル操作や設定操作を行う操作部111とを備えて、IP電話機の基本機能とリアルタイムに送受信する音声データの復元を実現する。
【0024】
本実施例のIP電話機の間で通話を構成するシステムを図2に示す。図2はIP電話通信システム200の構成図である。IP電話システム200はインターネット又はIP通信網等のネットワーク201にIP電話機100、IP電話機120が接続されて構成され、IP電話機100とIP電話機120との間で呼制御により通話が確立され、音声パケットの送受信が行われる。
【0025】
次に、図1及び図2を参照して、IP電話機100の発呼時の音声データ送信の動作を説明する。
【0026】
利用者は、操作部111から相手の電話番号を入力して相手側IP電話機120にダイヤル発呼を行う。呼制御部109は、呼制御プロトコルで相手側IP電話機120と呼接続の通信を行い、IP電話機120と呼接続を確立する。マイク101から入力された音声データは、サブサンプリング部104において、サブサンプリングにより、奇数番のデータからなる音声データ列(1)と、偶数番のデータからなる音声データ列(2)の2つの音声データ列に分割される。シーケンス番号付加部112は、サブサンプリング部104から音声データ列(1)及び音声データ列(2)を入力し、音声データ列の列番号(即ち1または2)に基づいて、音声パケットの送出順番情報であるシーケンス番号を4つのデータ単位で付加する(シーケンス番号の付加方法については図4で後述する。)。
【0027】
パケット送信部105では、シーケンス番号付加部112から入力したデータにシーケンRTPパケットのヘッダであるRTPヘッダを付加し、音声パケット化してネットワークインターフェース部106から送信する。
【0028】
音声データ列は、順次、パケット化されて相手側IP電話機120に送信され、利用者が受話器103をおくと音声パケットの送信が終了し、呼制御部106は呼接続を切断する。
【0029】
次に、図1及び図2を参照して、IP電話機100の着呼時の音声データ受信の動作を説明する。
【0030】
IP電話機100は、IP電話機120から着呼すると、スピーカ102が鳴動する。呼制御部109は、呼制御プロトコルでIP電話機120と呼接続の通信を行い、利用者が受話器103をとって応答すると、呼接続が確立する。パケット受信部107は、ネットワークインターフェース部106を介して順次、音声パケットを受信する。音声復元部108では、IP電話機120で分割して送信した音声パケットからシーケンス番号を参照して音声データ列を復元し、音声をスピーカ102から出力する。
【0031】
音声パケットは順次、相手側IP電話機120から受信され、利用者が受話器103をおくと音声パケットの受信が終了し、呼制御部109は呼接続を切断する。
【0032】
次に、サブサンプリング部104、シーケンス番号付加部112、パケット送信部105において、音声データ列から音声パケットを生成する過程の詳細を図3、図4及び図5を参照して説明する。図3は、サブサンプリング部104におけるサブサンプリング処理過程を示す図である。また、図4は、シーケンス番号の付加の過程を示す図である。図5は、送信される音声パケットを示す図である。
【0033】
サブサンプリング部104では、マイク101から図3(a)に示す音声データ列を、バッファメモリ(図示省略)に入力し、前記バッファメモリからデータを交互に取り出して図3(b)に示す奇数番のデータからなる音声データ列(1)(データ(1)、(3)、(5)、(7)、(9)、(11)、(13)、(15)、・・・)と、偶数番のデータからなる音声データ列(2)(データ(2)、(4)、(6)、(8)、(10)、(12)、(14)、(16)、・・・)の2つの音声データ列に分割する。
【0034】
シーケンス番号付加部112は、サブサンプリング部104から音声データ列(1)、音声データ列(2)を入力し、図4に示すように、4データ単位でシーケンス番号を割り当てて付加する。音声データ列(1)の4データ(データ(1)、(3)、(5)、(7))に対してシーケンス番号(1)を付加し、音声データ列(2)の4データ(データ(2)、(4)、(6)、(8))に対してシーケンス番号(2)を付加する。同様にして、音声データ列(1)のデータ(9)、(11)、(13)、(15)に対してシーケンス番号(3)、音声データ列(2)のデータ(10)、(12)、(14)、(16)に対してシーケンス番号(4)を付加する。
【0035】
以下、一般式としてシーケンス番号はデータの順番で次のように規定される。
【0036】
音声データ列(1)の4データ(データ(2d−1)、(2d+1)、(2d+3)、(2d+5))にあってはシーケンス番号(d)
音声データ列(2)の4データ(データ(2d)、(2d+2)、(2d+4)、(2d+6))にあってはシーケンス番号(d+1)
パケット送信部105では、シーケンス番号付加部112から、シーケンス番号が付加された4データ単位のデータを入力し、RTPヘッダを付加し、図5に示す、音声パケット(1)、(2)、(3)、(4)を生成してネットワークインターフェース部106から送出する。
【0037】
次に、パケット受信部107及び音声復元部108において、音声パケットからシーケンス番号を参照して音声データ列を復元する過程を説明する。
【0038】
送信側IP電話機120では、音声データの奇数番目のデータと偶数番目のデータを分割してパケット送信しているので、奇数番のシーケンス番号のパケットとその上の偶数番のシーケンス番号のパケットからなる、連続する2つのパケットに着目するとパケットロスの発生の有無に対して、次の3つのケースが生じうる。
【0039】
ケース(1)奇数番のシーケンス番号のパケットと偶数番シーケンス番号のパケットの2つのパケットが到達
ケース(2)奇数番のシーケンス番号のパケットと偶数番シーケンス番号のパケットのいずれか1つのパケットがパケットロス
ケース(3)奇数番のシーケンス番号のパケットと偶数番シーケンス番号のパケットの2つのパケットがパケットロス
ケース(1)では、パケットロスはなく正常に通信され、音声の劣化は生じない。また、ケース(3)では、音声データの補完はできないため、音声の劣化はさけられない。
【0040】
本実施例に係る発明ではケース(2)での音声データの補完・復元の実現を固有の機能とし、以下のその補完・復元過程を説明する。
【0041】
パケット受信部107では、図6に示す音声パケットを受信する。図6はパケットロスが生じた場合の受信した音声パケットを示す図である。パケット(2)とパケット(3)がパケットロスしている。
【0042】
音声復元部108では、音声パケットのシーケンス番号を参照し、シーケンス番号(1)のデータ部をシーケンス番号(2)に該当するデータ部にコピーして補完し、シーケンス番号(4)のデータ部をシーケンス番号(3)に該当するデータ部にコピーして補完する。
【0043】
図7は、パケットロスが生じた場合の音声データの補完・復元過程を示す図である。図7(a)に示すように音声データ列(1)(データ(1)、(3)、(5)、(7)、(10)、(12)、(14)、(16)・・・)及び、音声データ列(2)(データ(1)、(3)、(5)、(7)、(10)、(12)、(14)、(16)・・・)が再生され、音声データ列(1)、音声データ列(2)から交互にデータを取り出して、図8(b)が示す音声データ列(データ(1)、(1)、(3)、(3)、(5)、(5)、(7)、(7)、(10)、(10)・・・)が復元される。
【0044】
すなわち、音声復元部108では各音声パケットのシーケンス番号を参照し、偶数のシーケンス番号のパケットがパケットロスした場合は、1つ小さいシーケンス番号のパケットで置換し、奇数のシーケンス番号のパケットがパケットロスした場合は、1つ大きいシーケンス番号のパケットで置換することで補完を行う。
【0045】
以上の通り、送信動作にあっては、サブサンプリングにより、音声データを奇数番目のデータ列からなる音声データ列(1)と偶数番目のデータ列からなる音声データ列(2)に分割し、音声データ列の列番号とパケット化する音声データの順番からシーケンス番号を生成して、音声パケットにシーケンス番号を付加して送信し、受信動作にあってはシーケンス番号を参照して、送信側IP電話機の送信した音声データを復元する。
【0046】
さらに、パケットロスが生じた場合、シーケンス番号が奇数か偶数かに応じて、直近のシーケンス番号のパケットのデータをパケットロスで欠落したデータ部にコピーする補完の機能を備える。
【0047】
これによって、パケットロスによって奇数番のシーケンス番号のパケットと偶数番シーケンス番号のパケットのいずれか1つのパケットがパケットロスした場合、パケットロスしていないもう一方のパケットのデータをコピーして補完することで、実質的にパケット欠落部に対応する音声のみが、実質的にサンプリング周波数が2倍になったのと同等の近似度の高いデータ補完によりデータ欠落による音声の抑制をもたらす。
【0048】
なお、補完の機能に関して、本実施例では置換により補完を行っているが、重み付け平均、線形、非線形、論理フィルタ等の補正処理をさらに備えるものであってもかまわない。
【0049】
以上、実施例で説明したように、本発明のIP電話機100は、送信動作にあっては、マイク101から入力した音声データを、サブサンプリング部104でサブサンプリングにより、奇数番データと偶数番データの2つの音声データ列に分割し、シーケンス番号付加部112では、音声データ列(1)、(2)を入力し、音声データ列の列番号に基づいて、音声パケットの送出順番情報であるシーケンス番号を付加し、パケット送信部105では、音声パケットとして送信し、受信動作にあっては、パケット受信部107で音声パケットを受信し、音声復元部108では、送信動作で付加したシーケンス番号を参照して、音声データを復元し、さらに、パケットロスによって奇数番のシーケンス番号のパケットと偶数番シーケンス番号のパケットのいずれか1つのパケットがパケットロスした場合、パケットロスしていないもう一方のパケットのデータをコピーして補完することにより、データ欠落による音声の劣化を抑制している。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明のデータ通信端末装置及びデータ通信システムは、帯域保証のないインターネットまたはIP通信網における、リアルタイム性の要求されるデータ送受信において、パケットロスによるデータの欠落を抑制できるため、音声、映像等の双方向リアルタイム通信装置及びそれを用いたシステムとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施例のIP電話機のブロック図
【図2】本実施例のIP電話通信システムの構成図
【図3】本実施例のサブサンプリング部におけるサブサンプリング処理過程を示す図
【図4】本実施例のシーケンス番号の付加の過程を示す図
【図5】本実施例の送信される音声パケットを示す図
【図6】本実施例のパケットロスが生じた場合の受信した音声パケットを示す図
【図7】本実施例のパケットロスが生じた場合の音声データの補完・復元過程を示す図
【符号の説明】
【0052】
100 IP電話機
101 マイク
102 スピーカ
104 サブサンプリング部
105 パケット送信部
107 パケット受信部
108 音声復元部
112 シーケンス番号付加部
120 IP電話機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信ネットワークを介して接続されたデータ通信端末装置間でパケット化されたデータを送受信するデータ通信システムであって、
前記データ通信端末装置は、データをサブサンプリングし、N個のデータ列に分割するサブサンプリング部と、
前記N個のデータ列を入力し、前記データの分割の順番で、パケット化するデータ群を、繰り返しぬきだして、パケットの送出順番であるシーケンス番号を前記データ群に付加するシーケンス番号付加部と、
前記シーケンス番号の付加されたデータ群にパケットヘッダを付加して、パケットとして相手側データ通信端末装置に送信するパケット送信部と、
相手側データ通信端末装置からパケットを受信するパケット受信部と、
受信した前記パケットから前記シーケンス番号の順番で前記N個のデータ列に再生成し、前記サブサンプリング部におけるデータの分割の順番で、前記N個のデータ列から前記データを復元する復元部とを備え、
前記復元部にあっては、パケットロスによってデータの欠落が発生した場合は、前記パケットロスしたパケットにシーケンス番号が直近するパケットのデータで前記欠落したデータを補完することを特徴とするデータ通信システム。
【請求項2】
前記直近するシーケンス番号は、パケットロスしたパケットのシーケンス番号の前後Nの値の範囲内に含まれることを特徴とする請求項1に記載のデータ通信システム。
【請求項3】
通信ネットワークを介して接続され、少なくとも1つ以上のデータ通信端末装置と組み合わせて使用されるデータ通信端末装置であって、
データをサブサンプリングし、N個のデータ列に分割するサブサンプリング部と、
前記N個のデータ列を入力し、前記データの分割の順番で、パケット化するデータ群を、繰り返しぬきだして、パケットの送出順番であるシーケンス番号を前記データ群に付加するシーケンス番号付加部と、
前記シーケンス番号の付加されたデータ群にパケットヘッダを付加して、パケットとして相手側データ通信端末装置に送信するパケット送信部と、
相手側データ通信端末装置からパケットを受信するパケット受信部と、
受信した前記パケットから前記シーケンス番号の順番で前記N個のデータ列に再生成し、前記サブサンプリング部におけるデータの分割の順番で、前記N個のデータ列から前記データを復元する復元部とを備え、
前記復元部にあっては、パケットロスによってデータの欠落が発生した場合は、前記パケットロスしたパケットにシーケンス番号が直近するパケットのデータで前記欠落したデータを補完することを特徴とするデータ通信端末装置。
【請求項4】
前記直近するシーケンス番号は、パケットロスしたパケットのシーケンス番号の前後Nの値の範囲内に含まれることを特徴とする請求項3に記載のデータ通信端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−194704(P2007−194704A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−8465(P2006−8465)
【出願日】平成18年1月17日(2006.1.17)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】