説明

トナー、並びに、現像剤、プロセスカートリッジ、画像形成方法、及び画像形成装置

【課題】低温定着性に優れ、耐スペント性及び耐熱保存性が良好であり、鮮鋭性の良好な高品質画像を長期間に亘って形成することができるトナー、並びに、現像剤、プロセスカートリッジ、画像形成方法、及び画像形成装置の提供。
【解決手段】少なくとも結着樹脂を含むトナー材料と、炭素数が6〜22である脂肪酸とを有機溶媒に溶解乃至分散して溶解乃至分散液を調製する溶解乃至分散液調製工程と、前記溶解乃至分散液を、アクリル樹脂微粒子を含む水系媒体に添加して乳化乃至分散させて乳化乃至分散液を調製する乳化乃至分散液調製工程と、前記乳化乃至分散液から有機溶媒を除去する有機溶媒除去工程と、を含むトナーの製造方法により製造されるトナーである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真、静電記録、静電印刷等における静電荷像を現像するためのトナー、並びに、現像剤、プロセスカートリッジ、画像形成方法、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複写機は、高画質を維持しつつ、小型で高速かつ多数枚の複写可能なものが求められている。しかしながら、現状の複写機においては、必ずしも小型化が達成されていない。小型化が達成されていない要因として、転写残トナーを回収した後にスペースが生じることが挙げられる。ここで、回収した転写残トナーを、現像器に供給することによって、環境問題に順応した、小型・高速複写機を達成することができ、さらに、補給するトナーに対して、複写可能な枚数が増加するため、パーコピーコストも低下し、経済性を向上させることができる。
【0003】
ここで、回収した転写残トナーを現像器に供給して現像することは既に行われているが、画質の劣化、画像濃度の低下、及び画像長期安定性の低下、など問題がある。
【0004】
上述の問題点を解決するために、現像剤の粒度分布を規制する技術が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0005】
特許文献1には、トナーの体積平均粒径をD(μm)としたとき、D/(√2)〜√2Dの範囲に全トナー粒子の90質量%以上が存在し、かつD/(√2)より小さい粒子が5質量%以下であるトナー粉体を使用して、リサイクルの際のかぶり、トナー飛散等の弊害を防止する技術である。しかしながら、前記技術には、細かい潜像を忠実に再現した複写物を得ることができないという問題がある。
【0006】
さらに、特許文献2には、特定の粒度分布を有するトナーを用いる技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、前記技術には、リサイクルトナーによるキャリアスペントやかぶりが発生するという問題がある。
【0007】
ところで、電子写真法による画像形成においては、熱定着方法によって画像支持体上にトナーを固着することにより、恒久的な可視複写画像が得られる。この場合に、オーバーヘッドプロジェクター(OHP)用トランスペアレンシーシート(以下、「OHPシート」と記す)を画像支持体として、その上にトナー、特に、カラートナーによる複写画像を形成する場合は、OHPでの投影像の良好な光透過性を得るために、画像表面を平滑な状態に定着して投影時における画像表面での透過光の散乱や乱反射等を防止することが要求される。
【0008】
この要求を満たすために、従来より、一般的な手法として、溶融温度において従来の黒色トナーに比べて、低い粘弾性を有する溶融状態に急速に変化し得るカラートナーを使用し、加熱加圧することによって画像表面が容易に平滑化していた。
【0009】
しかしながら、上記のようにトナーの粘弾性特性を低くすることは、同時にガラス転移温度の低下も伴うため、常温時、即ち、実機内での使用時におけるトナーの力学的な強度低下も生じる。従って、例えば、現像器内での撹拌等の機械的なストレスが加わることにより、トナー表面の外添剤が埋没して、現像性及び転写性が劣化するという問題を生じる。また、キャリア粒子へトナー粒子が固着するといういわゆるトナースペントが発生するという問題を生じる。このような問題は、特に、近年の高画質化のためにトナーを小粒径化する場合において顕著に発生する。これは、トナーの粒径が小さくなるに従い、機械的なストレスを受け易くなることに起因するものである。
【0010】
上記のような問題を解決するため、体積平均粒径Dv(μm)と170℃における貯蔵弾性率G´170(dyne/cm)が特定の関係を有するトナーを用いてOHP透過性を向上させる技術が提案されている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、前記技術では、理論上、トナーの平均粒径が小さくなると、トナーの貯蔵弾性率が大きくなって、低温定着性及び光沢性が不利な方向となり、もって、色再現性が低下してしまうという問題がある。即ち、近年のトナーの小粒径化による高画質化と、トナーの低温定着性及び色再現性とを両立させることができないという問題がある。
【0011】
前記トナーの低温定着性を向上するため、特定の結晶性ポリエステルと、非晶質ハイブリッド樹脂とを含有するトナー用結着樹脂を用いる技術が提案されている(例えば、特許文献4参照)。しかしながら、前記技術には、結晶性ポリエステルが顔料との相溶性が悪いことに起因するかぶりや画像濃度むらが発生するという問題がある。
【0012】
前記トナーの低温定着性を向上するため、結晶性ポリエステルの他に、有機溶媒に溶解しない可塑剤を含有させることで低温定着性の改善を試みた技術が提案されている。しかしながら、前記技術には、分散剤の使用が必要不可欠となり、定着下限温度が高くなってしまうという問題がある。
【0013】
前記トナーの低温定着性を向上するため、非晶質ポリエステルと、結晶性ポリエステルとを含有するトナー用結着樹脂が提案されている(例えば、特許文献5参照)。しかしながら、結晶性ポリエステルと非晶性ポリエステルを併用する場合は、両者の樹脂の組成が近いために、溶融混練時に、エステル交換反応等が生じて結晶性ポリエステルの高い結晶性を維持することができずに、トナーの保存性が低下するという問題がある。
【0014】
前記トナーの低温定着性を向上するため、結着樹脂として、‐OCOC‐R‐COO‐(CH)n‐(但し、式中、Rは炭素数2〜20の直鎖状不飽和脂肪族基を示し、nは2〜20の整数を示す)で表わされる構造を樹脂全体における全エステル結合の60モル%含有する結晶性ポリエステルを用いる技術が提案されている(例えば、特許文献6参照)。しかしながら、前記技術には、トナーの保存性が低いという問題がある。
【0015】
前記トナーの低温度下の保存性及び低速での定着性が向上するために、セバシン酸又はアジピン酸をカルボン酸成分とした結晶性ポリエステルと、スチレン−アクリル樹脂とからなるトナー用結着樹脂が提案されている(例えば、特許文献7及び8参照)。しかしながら、前記技術には、他の性能が十分でないという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、低温定着性に優れ、耐スペント性及び耐熱保存性が良好であり、鮮鋭性の良好な高品質画像を長期間に亘って形成することができるトナー、並びに、現像剤、プロセスカートリッジ、画像形成方法、及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 少なくとも結着樹脂を含むトナー材料と、炭素数が6〜22である脂肪酸とを有機溶媒に溶解乃至分散して溶解乃至分散液を調製する溶解乃至分散液調製工程と、前記溶解乃至分散液を、アクリル樹脂微粒子を含む水系媒体に添加して乳化乃至分散させて乳化乃至分散液を調製する乳化乃至分散液調製工程と、前記乳化乃至分散液から有機溶媒を除去する有機溶媒除去工程と、を含むトナーの製造方法により製造されることを特徴とするトナーである。
<2> 脂肪酸が液体乃至固体である前記<1>に記載のトナーである。
<3> 脂肪酸の有機溶媒中の含有量が、10質量%以上である前記<1>から<2>のいずれかに記載のトナーである。
<4> 溶解乃至分散液調製工程は、結着樹脂100質量部に対して、1.0質量部〜20.0質量部の脂肪酸を添加することを含む前記<1>から<3>のいずれかに記載のトナーである。
<5> 脂肪酸における二重結合数が0〜2である前記<1>から<4>のいずれかに記載のトナーである。
<6> 結着樹脂がポリエステル樹脂である前記<1>から<5>のいずれかに記載のトナーである。
<7> 結着樹脂のガラス転移温度Tgが30℃〜70℃である前記<1>から<6>
のいずれかに記載のトナーである。
<8> 脂肪酸の含有量がトナー100質量部に対して0.1質量部〜20.0質量部である前記<1>から<7>のいずれかに記載のトナーである。
<9> トナーのガラス転移温度Tgが20℃〜55℃である前記<1>から<8>のいずれかに記載のトナーである。
<10> アクリル樹脂微粒子がトナー表面近傍に粒子状態で存在して粒子層を形成する前記<1>から<9>のいずれかに記載のトナーである。
<11> トナーの体積平均粒径が3μm〜7μmである前記<1>から<10>のいずれかに記載のトナーである。
<12> トナーの体積平均粒径/個数平均粒径が1.05〜1.25である前記<1>から<11>のいずれかに記載のトナーである。
<13> トナーの平均円形度が0.950〜0.990である前記<1>から<12>のいずれかに記載のトナーである。
<14> トナーのBET比表面積が0.5m/g〜4.0m/gである前記<1>から<13>のいずれかに記載のトナーである。
<15> トナー材料は、活性水素基含有化合物及び該化合物と反応可能な変性ポリエステル樹脂を含む前記<1>から<14>のいずれかに記載のトナーである。
<16> 前記<1>から<15>のいずれかに記載のトナーを含むことを特徴とする現像剤である。
<17> 電子写真感光体表面を帯電させる帯電工程と、帯電された電子写真感光体表面を露光して静電潜像を形成する露光工程と、前記静電潜像を前記<1>から<15>のいずれかに記載のトナーを用いて現像して可視像を形成する現像工程と、前記可視像を中間転写体上に一次転写する一次転写工程と、前記中間転写体上に転写された可視像を記録媒体上に二次転写する二次転写工程と、前記記録媒体上に転写された転写像を定着させる定着工程と、前記電子写真感光体上に残留するトナーを除去するクリーニング工程と、を含むことを特徴とする画像形成方法である。
<18> 二次転写工程において、可視像の記録媒体上への転写の線速度が300mm/sec〜1,000mm/secであり、二次転写手段のニップ部での転写時間が0.5msec〜20msecである前記<17>に記載の画像形成方法である。
<19> 電子写真感光体と、前記電子写真感光体表面を帯電させる帯電手段と、帯電された電子写真感光体表面を露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像を前記<1>から<15>のいずれかに記載のトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を直接又は中間転写体を介して記録媒体上に転写する転写手段と、前記記録媒体上に転写された転写像を定着させる定着手段と、前記電子写真感光体上に残留するトナーを除去するクリーニング手段と、を有することを特徴とする画像形成装置である。
<20> 少なくとも電子写真感光体、帯電手段、露光手段、及び現像手段を含む画像形成要素を複数配列してなるタンデム方式である前記<19>に記載の画像形成装置である。
<21> 電子写真感光体と、該電子写真感光体上に形成された静電潜像を前記<1>から<15>のいずれかに記載のトナーを用いて現像し可視像を形成する現像手段とを少なくとも有し、画像形成装置本体に着脱可能であることを特徴とするプロセスカートリッジである。
<22> 帯電手段、転写手段及びクリーニング手段から選ばれる少なくとも1つの手段をさらに含むことを特徴とする前記<21>に記載のプロセスカートリッジである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、低温定着性に優れ、耐スペント性及び耐熱保存性が良好であり、鮮鋭性の良好な高品質画像を長期間に亘って形成することができるトナー、並びに、現像剤、プロセスカートリッジ、画像形成方法、及び画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、接触式のローラ式帯電装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】図2は、接触式のブラシ式帯電装置の一例を示す概略構成図である。
【図3】図3は、磁気ブラシ式帯電装置の一例を示す概略構成図である。
【図4】図4は、現像装置の一例を示す概略構成図である。
【図5】図5は、定着装置の一例を示す概略構成図である。
【図6】図6は、定着ベルトの層構成を示す図である。
【図7】図7は、本発明のプロセスカートリッジの一例を示す概略構成図である。
【図8】図8は、本発明の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図9】図9は、本発明の画像形成装置の他の一例を示す概略構成図である。
【図10】図10は、シェル粒子が表層を一様に覆っていること(アクリル樹脂粒子がトナー表面近傍に粒子状態で存在して粒子層を形成すること)を示すSEM写真(4,000倍)である。
【図11】図11は、シェル粒子が表層を一様に覆っていること(アクリル樹脂粒子がトナー表面近傍に粒子状態で存在して粒子層を形成すること)を示すSEM写真(10,000倍)である。
【図12】図12は、シェル粒子が表層を一様に覆っていること(アクリル樹脂粒子がトナー表面近傍に粒子状態で存在して粒子層を形成すること)を示すSEM写真(20,000倍)である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(トナー)
本発明のトナーは、溶解乃至分散液調製工程と、乳化乃至分散液調製工程と、有機溶媒除去工程と、を含むトナーの製造方法により製造される。
【0021】
<溶解乃至分散液調製工程>
前記溶解乃至分散液調製工程は、トナー材料を、脂肪酸を含む有機溶媒に溶解乃至分散して溶解乃至分散液を調製する工程である。
【0022】
−脂肪酸−
前記脂肪酸としては、有機溶媒に溶解し、結着樹脂に対して可塑効果を示す限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記脂肪酸の炭素数としては、6〜22である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、8〜12が好ましい。
前記脂肪酸の炭素数が、6未満であると、耐熱保存性及び耐キャリア汚染性が低下することがあり、22を超えると、低温定着性を得ることができない。一方、前記脂肪酸の炭素数が前記好ましい範囲内であると、低温定着と保存性との両立が可能である点で有利である。
【0023】
前記脂肪酸の二重結合数が、0〜2であることが好ましい。前記脂肪酸の二重結合数が、2を超えると、融点が大幅に低下し、常温で可塑剤がトナー中から染み出してくるため、キャリア汚染性が低下することがある。
【0024】
前記脂肪酸の有機溶媒中の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10質量%以上が好ましい。
前記脂肪酸の有機溶媒中の含有量が、10質量%未満であると、可塑剤が樹脂の架橋骨格の内部に入り込むことができない成分量が増加し、可塑効果が十分に発現しないことがある。一方、前記脂肪酸の有機溶媒中の含有量が前記好ましい範囲内であると、可塑剤が樹脂の架橋骨格の内部に十分に入り込むことができ、可塑効果が十分に発現するという点で有利である。
【0025】
前記溶解乃至分散液調製工程における脂肪酸の添加量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、結着樹脂100質量部に対して0.01質量部〜20.0質量部が好ましく、0.1質量部〜5質量部がより好ましく、0.1質量部〜3質量部が特に好ましい。
前記溶解乃至分散液調製工程における脂肪酸の添加量が、結着樹脂100質量部に対して1.0質量部未満であると、可塑効果が十分に得られないことがあり、20.0質量部を超えると可塑剤がブリードアウトし、耐熱保存性や耐キャリア汚染性の悪化を招くことがある。一方、前記溶解乃至分散液調製工程における脂肪酸の添加量が前記特に好ましい範囲内であると、低温定着と保存性・汚染性との両立が可能という点で有利である。
【0026】
前記脂肪酸が液体の場合は、そのまま酢酸エチル等の有機溶媒に添加し、前記脂肪酸が固体の場合は、酢酸エチルに溶解させた状態で添加することが好ましい。
【0027】
−有機溶媒−
前記トナー材料を溶解乃至分散する有機溶媒としては、トナー材料を溶解乃至分散可能な溶媒であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、トナーの造粒時乃至造粒後の除去の容易性の点で沸点が150℃未満のものが好ましく、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。また、エステル系溶剤が好ましく、酢酸エチルが特に好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記有機溶媒の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、トナー材料100質量部に対し40質量部〜300質量部が好ましく、60質量部〜140質量部がより好ましく、80質量部〜120質量部が更に好ましい。なお、溶解乃至分散液の調製は、有機溶媒中に、活性水素基含有化合物、活性水素基含有化合物と反応可能な重合体、未変性ポリエステル樹脂、離型剤、着色剤、帯電制御剤、等のトナー材料を、溶解乃至分散させることにより行うことができる。また、トナー材料の中で、活性水素基含有化合物と反応可能な重合体(プレポリマー)以外の成分は、後述する水系媒体の調製において、水系媒体中に添加混合してもよいし、あるいは、溶解乃至分散液を水系媒体に添加する際に、溶解乃至分散液と共に水系媒体に添加してもよい。
【0028】
−トナー材料−
前記トナー材料としては、少なくとも結着樹脂を含む限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、結着樹脂もしくは活性水素基含有化合物、該活性水素基含有化合物と反応可能な重合体(プレポリマー)と着色剤を含み、更に必要に応じて、離型剤、帯電制御剤等のその他の成分を含んでいてもよい。前記トナー材料の溶解乃至分散液は、トナー材料を有機溶媒に溶解乃至分散させて調製することが好ましい。なお、有機溶媒は、トナーの造粒時乃至造粒後に除去することが好ましい。
【0029】
−−結着樹脂−−
前記結着樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばポリエステル系樹脂、シリコーン樹脂、スチレン・アクリル樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ジエン系樹脂、フェノール樹脂、テルペン樹脂、クマリン樹脂、アミドイミド樹脂、ブチラール樹脂、ウレタン樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂等、公知の結着樹脂を用いることができる。これらの中でも、定着時にシャープメルトし、画像表面を平滑化できる点で、低分子量化しても十分な可とう性を有しているポリエステル系樹脂が好ましく、ポリエステル系樹脂にさらに他の樹脂を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
前記ポリエステル系樹脂とは、下記一般式(1)で表される少なくとも1種のポリオールと、
A−(OH)m ・・・一般式(1)
[式中、Aは炭素数1〜20のアルキル基、アルキレン基、置換基を有していてもよい芳香族基若しくはヘテロ環芳香族基を表す。mは2〜4の整数を表す。]
下記一般式(2)で表される少なくとも1種のポリカルボン酸と、をポリエステル化したものである。
B−(COOH)n ・・・一般式(2)
[式中、Bは炭素数1〜20のアルキル基、アルキレン基、置換基を有していてもよい芳香族基若しくはヘテロ環芳香族基を表す。nは2〜4の整数を表す。]
【0031】
前記一般式(1)で表されるポリオールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン、ビスフェノールA、ビスフェノールA酸化エチレン付加物、ビスフェノールA酸化プロピレン付加物、水素化ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA酸化エチレン付加物、水素化ビスフェノールA酸化プロピレン付加物等が挙げられる。
【0032】
前記一般式(2)で表されるポリカルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばマレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、n−ドデセニルコハク酸、イソオクチルコハク酸、イソドデセニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、イソドデシルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、イソオクテニルコハク酸、イソオクチルコハク酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸等、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキセンジカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、エチレングリコールビス(トリメリット酸)などが挙げられる。
【0033】
前記結着樹脂の重量平均分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3,000以上が好ましく、5,000〜1,000,000がより好ましく、7,000〜500,000が特に好ましい。前記重量平均分子量が、3,000未満であると、耐ホットオフセット性が悪化することがある。
【0034】
前記結着樹脂のガラス転移温度(Tg)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30℃〜70℃が好ましく、40℃〜65℃がより好ましい。前記結着樹脂のガラス転移温度(Tg)が30℃未満であると、トナーの耐熱保存性が悪化することがあり、70℃を超えると、低温定着性が十分でないことがある。架橋反応、伸長反応したポリエステル樹脂が共存した電子写真用トナーでは、従来のポリエステル系トナーと比較してガラス転移温度が低くても良好な保存性を示す。
【0035】
前記ガラス転移点(Tg)は、具体的に次のような手順で決定される。測定装置として島津製作所製TA−60WS、及びDSC−60を用い、次に示す測定条件で測定した。
測定条件
サンプル容器:アルミニウム製サンプルパン(フタあり)
サンプル量:5mg
リファレンス:アルミニウム製サンプルパン(アルミナ10mg)
雰囲気:窒素(流量50mL/min)
温度条件
開始温度:20℃
昇温速度:10℃/min
終了温度:150℃
保持時間:なし
降温温度:10℃/min
終了温度:20℃
保持時間:なし
昇温速度:10℃/min
終了温度:150℃
【0036】
測定した結果は前記島津製作所製データ解析ソフト(TA−60、バージョン1.52)を用いて解析を行った。解析方法は2度目の昇温のDSC微分曲線であるDrDSC曲線のもっとも低温側に最大ピークを示す点を中心として±5℃の範囲を指定し、解析ソフトのピーク解析機能を用いてピーク温度を求める。次にDSC曲線で前記ピーク温度+5℃、及び−5℃の範囲で解析ソフトのピーク解析機能をもちいてDSC曲線の最大吸熱温度を求める。ここで示された温度がトナーのTgに相当する。
【0037】
トナーに含有される結着樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ポリエステル系樹脂が好ましい。前記ポリエステル系樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ウレア変性ポリエステル系樹脂、未変性ポリエステル樹脂が好ましい。前記ウレア変性ポリエステル系樹脂は、活性水素基含有化合物としてのアミン類(B)と、該活性水素基含有化合物と反応可能な重合体としてのイソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)とを水系媒体中で反応させて得られる。前記ウレア変性ポリエステル系樹脂は、ウレア結合のほかに、ウレタン結合を含んでいてもよい。該ウレア結合と該ウレタン結合との含有モル比(ウレア結合/ウレタン結合)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100/0〜10/90が好ましく、80/20〜20/80がより好ましく、60/40〜30/70が特に好ましい。ウレア結合が10未満であると、耐ホットオフセット性が悪化することがある。
【0038】
ウレア変性ポリエステル樹脂と未変性ポリエステル樹脂の好ましい具体例としては、以下のものが挙げられる。
(1)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをイソホロンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物との混合物
(2)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをイソホロンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物
【0039】
(3)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをイソホロンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物
(4)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをイソホロンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物
【0040】
(5)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーを、ヘキサメチレンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物
(6)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをヘキサメチレンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物
【0041】
(7)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物をイソホロンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをエチレンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物
(8)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物をジフェニルメタンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをヘキサメチレンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物との混合物
【0042】
(9)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸/ドデセニルコハク酸無水物の重縮合物をジフェニルメタンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをヘキサメチレンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物及びテレフタル酸の重縮合物との混合物
(10)ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物をトルエンジイソシアネートと反応させたポリエステルプレポリマーをヘキサメチレンジアミンでウレア化したものと、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物及びイソフタル酸の重縮合物との混合物
【0043】
前記ウレア変性ポリエステル樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、(1)活性水素基含有化合物と反応可能な重合体(例えば、イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A))を含む溶解乃至分散液を、活性水素基含有化合物(例えば、アミン類(B))と共に、水系媒体中に乳化乃至分散させ、油滴を形成し、該水系媒体中で両者を伸長反応乃至架橋反応させることにより生成させてもよく、(2)溶解乃至分散液を、予め活性水素基含有化合物を添加した水系媒体中に乳乃至分散させ、油滴を形成し、該水系媒体中で両者を伸長反応乃至架橋反応させることにより生成させてもよい。あるいは、(3)溶解乃至分散液を、水系媒体中に添加混合させた後で、活性水素基含有化合物を添加し、油滴を形成し、該水系媒体中で粒子界面から両者を伸長反応乃至架橋反応させることにより生成させてもよい。なお、(3)の場合、生成するトナー表面に優先的に変性ポリエステル樹脂が生成され、該トナー粒子に濃度勾配を設けることが可能となる。
【0044】
乳化乃至分散により、結着樹脂を生成させるための反応条件としては、特に制限はなく、活性水素基含有化合物と反応可能な重合体と活性水素基含有化合物との組み合わせに応じて適宜選択することができる。なお、反応時間としては、10分間〜40時間が好ましく、2時間〜24時間がより好ましい。
【0045】
水系媒体中において、活性水素基含有化合物と反応可能な重合体(例えば、イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A))を含む分散体を安定に形成する方法としては、例えば、水系媒体中に、活性水素基含有化合物と反応可能な重合体(例えば、イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A))、着色剤、離型剤、帯電制御剤、未変性ポリエステル樹脂等のトナー材料を有機溶媒に溶解乃至分散させて調製した溶解乃至分散液を添加し、せん断力により分散させる方法、等が挙げられる。
【0046】
乳化乃至分散において、水系媒体の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、トナー材料100質量部に対し、50質量部〜2,000質量部が好ましく、100質量部〜1,000質量部がより好ましい。使用量が50質量部未満であると、トナー材料の分散状態が悪く、所定の粒径のトナー粒子が得られないことがあり、2,000質量部を超えると、生産コストが高くなるからである。
水系媒体には先に説明したアニオン性界面活性剤、樹脂微粒子Aの他に以下の無機化合物分散剤や高分子系保護コロイドを併用することができる。難水溶性の無機化合物分散剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ヒドロキシアパタイト、等が挙げられる。
【0047】
前記高分子系保護コロイドとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸類、水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体、ビニルアルコール又はビニルアルコールとのエーテル類、ビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類、アミド化合物又はこれらのメチロール化合物、クロライド類、窒素原子若しくはその複素環を有するもの等のホモポリマー又は共重合体、ポリオキシエチレン系、セルロース類、などが挙げられる。
前記酸類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマール酸、マレイン酸、無水マレイン酸等が挙げられる。
前記水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸β−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸β−ヒドロキシプロピル、アクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−クロロ2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノアクリル酸エステル、ジエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、グリセリンモノアクリル酸エステル、グリセリンモノメタクリル酸エステル、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、などが挙げられる。
【0048】
前記ビニルアルコール又はビニルアルコールとのエーテル類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテル等が挙げられる。また、ビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等が挙げられる。また、アミド化合物又はこれらのメチロール化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド酸、又はこれらのメチロール化合物、などが挙げられる。
【0049】
前記クロライド類としては、例えば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライド等が挙げられる。また、窒素原子若しくはその複素環を有するもの等ホモポリマー又は共重合体としては、例えば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、ビニルビリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミン等が挙げられる。
【0050】
前記ポリオキシエチレン系としては、例えば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエステル等が挙げられる。また、セルロース類としては、例えば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。
【0051】
リン酸カルシウム塩等の酸、アルカリに溶解可能な分散安定剤を用いた場合は、塩酸等の酸によりリン酸カルシウム塩を溶解した後、水洗する方法、酵素により分解する方法等によって、微粒子からリン酸カルシウム塩を除去することが可能となる。
【0052】
また、前記結着樹脂は、紙等の記録材に対し接着性を示し、活性水素基含有化合物と、活性水素基含有化合物と反応可能な重合体と、を水系媒体中で反応させてなる接着性ポリマーを含むことが好ましい。
【0053】
−−活性水素基含有化合物−−
本発明においては、前記トナー材料中に、活性水素基含有化合物及び該化合物と反応可能な変性ポリエステル樹脂が含まれることにより、得られるトナーの機械的強度が高まり、樹脂微粒子や外添剤の埋没を抑制することができる。活性水素基含有化合物がカチオン性の極性を有す場合には、樹脂微粒子を静電的に引き寄せることもできる。また、トナーの加熱定着時の流動性を調節でき定着温度幅を広げることもできる。なお、活性水素基含有化合物及び該化合物と反応可能な変性ポリエステル樹脂は、結着樹脂前駆体であるとも言える。
【0054】
前記活性水素基含有化合物は、水系媒体中で、該活性水素基含有化合物と反応可能な重合体が伸長反応、架橋反応等する際の伸長剤、架橋剤等として作用する。活性水素基含有化合物としては、活性水素基を有する限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、該活性水素基含有化合物と反応可能な重合体がイソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)である場合には、イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)と伸長反応、架橋反応等の反応により高分子量化可能な点で、アミン類(B)が好適である。
【0055】
前記活性水素基としては、活性水素基を有すれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水酸基(アルコール性水酸基又はフェノール性水酸基)、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基、等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0056】
アミン類(B)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジアミン(B1)、3価以上のポリアミン(B2)、アミノアルコール(B3)、アミノメルカプタン(B4)、アミノ酸(B5)、B1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)、などを用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ジアミン(B1)、ジアミン(B1)と少量の3価以上のポリアミン(B2)との混合物、が特に好ましい。
【0057】
ジアミン(B1)としては、例えば、芳香族ジアミン、脂環式ジアミン、脂肪族ジアミン、等が挙げられる。該芳香族ジアミンとしては、例えば、フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン等が挙げられる。該脂環式ジアミンとしては、例えば、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミンシクロヘキサン、イソホロンジアミン等が挙げられる。該脂肪族ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
【0058】
3価以上のポリアミン(B2)としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、等が挙げられる。また、アミノアルコール(B3)としては、例えば、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリン、等が挙げられる。また、アミノメルカプタン(B4)としては、例えば、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタン、等が挙げられる。また、アミノ酸(B5)としては、例えば、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸、等が挙げられる。
【0059】
B1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)としては、例えば、B1からB5のいずれかのアミン類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)から得られるケチミン化合物、オキサゾリゾン化合物、等が挙げられる。
【0060】
活性水素基含有化合物と活性水素基含有化合物と反応可能な重合体との伸長反応、架橋反応等を停止させるには、反応停止剤を用いる。反応停止剤を用いると、接着性基材の分子量等を所望の範囲に制御することができる点で好ましい。該反応停止剤としては、モノアミン(ジエチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、ラウリルアミン等)、又はこれらをブロックしたもの(ケチミン化合物)、などを用いることができる。
【0061】
アミン類(B)と、イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)との混合比率としては、イソシアネート基含有プレポリマー(A)中のイソシアネート基[NCO]と、アミン類(B)中のアミノ基[NHx]の混合当量比([NCO]/[NHx])が、1/3〜3/1であることが好ましく、1/2〜2/1であることがより好ましく、1/1.5〜1.5/1であることが特に好ましい。混合当量比([NCO]/[NHx])が、1/3未満であると、低温定着性が低下することがあり、3/1を超えると、ウレア変性ポリエステル樹脂の分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化することがあるからである。
【0062】
−−活性水素基含有化合物と反応可能な重合体−−
前記活性水素基含有化合物と反応可能な重合体(以下「プレポリマー」)としては、活性水素基含有化合物と反応可能な部位を少なくとも有しているものであれば特に制限はなく、公知の樹脂等の中から適宜選択することができ、例えば、ポリオール樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、又はこれらの誘導体樹脂、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、溶融時の高流動性、透明性の点で、ポリエステル樹脂が特に好ましい。
【0063】
プレポリマーにおける活性水素基含有化合物と反応可能な部位としては、特に制限はなく、公知の置換基等の中から適宜選択することができるが、例えば、イソシアネート基、エポキシ基、カルボン酸、酸クロリド基、等が挙げられる。これらは、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上が含まれていてもよい。これらの中でも、イソシアネート基が特に好ましい。プレポリマーの中でも、高分子成分の分子量を調節し易く、乾式トナーにおけるオイルレス低温定着特性、特に定着用加熱媒体への離型オイル塗布機構のない場合でも良好な離型性及び定着性を確保できる点で、ウレア結合生成基含有ポリエステル樹脂(RMPE)が特に好ましい。
【0064】
前記ウレア結合生成基としては、例えば、イソシアネート基、等が挙げられる。ウレア結合生成基含有ポリエステル樹脂(RMPE)における該ウレア結合生成基が該イソシアネート基である場合、該ポリエステル樹脂(RMPE)としては、イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)等が特に好適である。イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリオール(PO)とポリカルボン酸(PC)との重縮合物であり、かつ活性水素基含有ポリエステル樹脂をポリイソシアネート(PIC)と反応させてなるもの、等が挙げられる。ポリオール(PO)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジオール(DIO)、3価以上のポリオール(TO)、ジオール(DIO)と3価以上のポリオール(TO)との混合物、等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ジオール(DIO)単独、又はジオール(DIO)と少量の3価以上のポリオール(TO)との混合物、が好ましい。
【0065】
前記ジオール(DIO)としては、例えば、アルキレングリコール、アルキレンエーテルグリコール、脂環式ジオール、脂環式ジオールのアルキレンオキサイド付加物、ビスフェノール類、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、等が挙げられる。
前記アルキレングリコールとしては、炭素数2〜12のものが好ましく、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等が挙げられる。アルキレンエーテルグリコールとしては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。また、脂環式ジオールとしては、例えば、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等が挙げられる。また、脂環式ジオールのアルキレンオキサイド付加物としては、例えば、脂環式ジオールに対し、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加物としたもの等が挙げられる。また、ビスフェノール類としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等が挙げられる。また、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物としては、例えば、ビスフェノール類に対し、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加物としたもの等が挙げられる。これらの中でも、炭素数2〜12のアルキレングリコール、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物等が好ましく、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物と炭素数2〜12のアルキレングリコールとの混合物が特に好ましい。
【0066】
前記3価以上のポリオール(TO)としては、3〜8価又はそれ以上のものが好ましく、例えば、3価以上の多価脂肪族アルコール、3価以上のポリフェノール類、3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、等が挙げられる。また、3価以上の多価脂肪族アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。また、3価以上のポリフェノール類としては、例えば、トリスフェノール体(本州化学工業株式会社製のトリスフェノールPAなど)、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等が挙げられる。また、3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物としては、例えば、3価以上のポリフェノール類に対し、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加物したもの等が挙げられる。
【0067】
前記ジオール(DIO)と3価以上のポリオール(TO)との混合物におけるジオール(DIO)と3価以上のポリオール(TO)との混合質量比(DIO:TO)としては、100:0.01〜10が好ましく、100:0.01〜1がより好ましい。
【0068】
前記ポリカルボン酸(PC)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ジカルボン酸(DIC)、3価以上のポリカルボン酸(TC)、ジカルボン酸(DIC)と3価以上のポリカルボン酸との混合物、等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ジカルボン酸(DIC)単独、又はジカルボン酸(DIC)と少量の3価以上のポリカルボン酸(TC)との混合物が好ましい。
【0069】
前記ジカルボン酸(DIC)としては、例えば、アルキレンジカルボン酸、アルケニレンジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、等が挙げられる。また、アルキレンジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等が挙げられる。また、アルケニレンジカルボン酸としては、炭素数4〜20のものが好ましく、例えば、マレイン酸、フマール酸等が挙げられる。また、芳香族ジカルボン酸としては、炭素数8〜20のものが好ましく、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。これらの中でも、炭素数4〜20のアルケニレンジカルボン酸、炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸が好ましい。
【0070】
前記3価以上のポリカルボン酸(TC)としては、3〜8価又はそれ以上のものが好ましく、例えば、芳香族ポリカルボン酸、等が挙げられる。また、芳香族ポリカルボン酸としては、炭素数9〜20のものが好ましく、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
【0071】
前記ポリカルボン酸(PC)としては、ジカルボン酸(DIC)、3価以上のポリカルボン酸(TC)、及び、ジカルボン酸(DIC)と3価以上のポリカルボン酸との混合物、から選択されるいずれかの酸無水物又は低級アルキルエステル物を用いることもできる。低級アルキルエステルとしては、例えば、メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステル等が挙げられる。
【0072】
前記ジカルボン酸(DIC)と3価以上のポリカルボン酸(TC)との混合物におけるジカルボン酸(DIC)と3価以上のポリカルボン酸(TC)との混合質量比(DIC:TC)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、100:0.01〜10が好ましく、100:0.01〜1がより好ましい。
【0073】
前記ポリオール(PO)とポリカルボン酸(PC)とを重縮合反応させる際の混合比率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ポリオール(PO)における水酸基[OH]と、ポリカルボン酸(PC)におけるカルボキシル基[COOH]との当量比([OH]/[COOH])が、通常、2/1〜1/1であるのが好ましく、1.5/1〜1/1であるのがより好ましく、1.3/1〜1.02/1であるのが特に好ましい。
【0074】
前記ポリオール(PO)のイソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、0.5〜40質量%が好ましく、1〜30質量%がより好ましく、2〜20質量%が特に好ましい。前記含有量が、0.5質量%未満であると、耐ホットオフセット性が悪化し、トナーの耐熱保存性と低温定着性とを両立させることが困難になることがあり、40質量%を超えると、低温定着性が悪化することがあるからである。
【0075】
前記ポリイソシアネート(PIC)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、イソシアヌレート類、これらのフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタム等でブロックしたもの、などが挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、テトラデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート、テトラメチルヘキサンジイソシアネート等が挙げられる。また、脂環式ポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。また、芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、ジフェニレン−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジイソシアナト−3,3’−ジメチルジフェニル、3−メチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルエーテル−4,4’−ジイソシアネート等が挙げられる。また、芳香脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。また、イソシアヌレート類としては、例えば、トリス−イソシアナトアルキル−イソシアヌレート、トリイソシアナトシクロアルキル−イソシアヌレート等が挙げられる。これらは、1種単独でも使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0076】
前記ポリイソシアネート(PIC)と、活性水素基含有ポリエステル樹脂(例えば水酸基含有ポリエステル樹脂)とを反応させる際の混合比率としては、ポリイソシアネート(PIC)におけるイソシアネート基[NCO]と水酸基含有ポリエステル樹脂における水酸基[OH]との混合当量比([NCO]/[OH])が、通常、5/1〜1/1であるのが好ましく、4/1〜1.2/1でるのがより好ましく、3/1〜1.5/1であるのが特に好ましい。前記イソシアネート基[NCO]が、5を超えると、低温定着性が悪化することがあり、1未満であると、耐オフセット性が悪化することがあるからである。
【0077】
前記ポリイソシアネート(PIC)のイソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、0.5質量%〜40質量%が好ましく、1質量%〜30質量%がより好ましく、2質量%〜20質量%がさらに好ましい。前記含有量が、0.5質量%未満であると、耐ホットオフセット性が悪化し、耐熱保存性と低温定着性とを両立させることが困難になることがあり、40質量%を超えると、低温定着性が悪化することがあるからである。
【0078】
前記イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマー(A)の1分子当たりに含まれるイソシアネート基の平均数としては、1以上が好ましく、1.2〜5がより好ましく、1.5〜4がより好ましい。イソシアネート基の平均数が1未満であると、ウレア結合生成基で変性されているポリエステル樹脂(RMPE)の分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化するからである。
【0079】
前記活性水素基含有化合物と反応可能な重合体の重量平均分子量(Mw)としては、テトラヒドロフラン(THF)可溶分のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)による分子量分布で、3,000〜40,000が好ましく、4,000〜30,000がより好ましい。前記重量平均分子量(Mw)が、3,000未満であると、耐熱保存性が悪化することがあり、40,000を超えると、低温定着性が悪化することがあるからである。
【0080】
前記ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)による分子量分布の測定は、例えば、以下のようにして行うことができる。即ち、まず、40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定させ、この温度でカラム溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を毎分1mlの流速で流し、試料濃度を0.05〜0.6質量%に調整した樹脂のテトラヒドロフラン試料溶液を50〜200μl注入して測定する。試料における分子量の測定に当たっては、試料の有する分子量分布を数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント数との関係から算出する。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、Pressure Chemical Co.又は東洋ソーダ工業株式会社製の分子量が6×102、2.1×102、4×102、1.75×104、1.1×105、3.9×105、8.6×105、2×106、及び4.48×106のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いることが好ましい。なお、検出器としてはRI(屈折率)検出器を用いることができる。
【0081】
−着色剤−
前記着色剤としては、特に制限はなく、公知の染料及び顔料の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミュウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミュウムレッド、カドミュウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン、等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0082】
前記着色剤のトナーにおける含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1質量%〜15質量%が好ましく、3質量%〜10質量%がより好ましい。着色剤の含有量が、1質量%未満であると、トナーの着色力の低下が見られ、15質量%を超えると、トナー中での顔料の分散不良が起こり、着色力の低下、及びトナーの電気特性の低下を招くことがある。
【0083】
前記着色剤は、樹脂と複合化されたマスターバッチとして使用してもよい。樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、ポリエステル、スチレン又はその置換体の重合体、スチレン系共重合体、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックス、等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0084】
前記スチレン又はその置換体の重合体としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエン、などが挙げられる。前記スチレン系共重合体としては、例えば、スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレンービニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレンーアクリロニトリルーインデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体、等が挙げられる。
【0085】
マスターバッチは、マスターバッチ用樹脂と、着色剤とを高せん断力をかけて混合又は混練して製造することができる。この際、着色剤と樹脂の相互作用を高めるために、有機溶媒を添加することが好ましい。また、いわゆるフラッシング法も着色剤のウエットケーキをそのまま用いることができ、乾燥する必要がない点で好適である。このフラッシング法は、着色剤の水を含んだ水性ペーストを樹脂と有機溶媒とともに混合又は混練し、着色剤を樹脂側に移行させて水分及び有機溶媒成分を除去する方法である。前記混合又は混練には、例えば、三本ロールミル等の高せん断分散装置が好適に用いられる。着色剤は2樹脂に対する親和性の差を利用することで、第一の樹脂相、第二の樹脂相いずれにも任意に含有させることができる。着色剤はトナー表面に存在した際にトナーの帯電性能を悪化させることがよく知られている。そのため内層に存在する第一の樹脂相に選択的に着色剤を含有させることで、トナーの帯電性能(環境安定性、電荷保持能、帯電量等)を向上させることができる。
【0086】
−離型剤−
前記離型剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、融点が50〜120℃の低融点の離型剤が好ましい。低融点の離型剤は、前記樹脂と分散されることにより、離型剤として効果的に定着ローラとトナー界面との間で働き、これによりオイルレス(定着ローラにオイルの如き離型剤を塗布しない)でもホットオフセット性が良好である。
【0087】
前記離型剤としては、例えば、ロウ類、ワックス類、等が好適に挙げられる。ロウ類及びワックス類としては、例えば、カルナウバワックス、綿ロウ、木ロウ、ライスワックス等の植物系ワックス;ミツロウ、ラノリン等の動物系ワックス;オゾケライト、セルシン等の鉱物系ワックス;パラフィン、マイクロクリスタリン、ペトロラタム等の石油ワックス;などの天然ワックスが挙げられる。また、これら天然ワックスのほか、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス等の合成炭化水素ワックス;エステル、ケトン、エーテル等の合成ワックス;などが挙げられる。更に、12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド、塩素化炭化水素等の脂肪酸アミド;低分子量の結晶性高分子樹脂である、ポリ−n−ステアリルメタクリレート、ポリ−n−ラウリルメタクリレート等のポリアクリレートのホモ重合体あるいは共重合体(例えば、n−ステアリルアクリレート−エチルメタクリレートの共重合体等);側鎖に長いアルキル基を有する結晶性高分子、などを用いてもよい。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0088】
前記離型剤の融点としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50℃〜120℃が好ましく、60℃〜90℃がより好ましい。前記融点が、50℃未満であると、ワックスが耐熱保存性に悪影響を与えることがあり、120℃を超えると、低温での定着時にコールドオフセットを起こし易いことがある。離型剤の溶融粘度としては、該ワックスの融点より20℃高い温度での測定値として、5cps〜1,000cpsが好ましく、10cps〜100cpsがより好ましい。前記溶融粘度が、5cps未満であると、離型性が低下することがあり、1,000cpsを超えると、耐ホットオフセット性、低温定着性への向上効果が得られなくなることがある。前記離型剤の前記トナーにおける含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、40質量%以下が好ましく、3質量%〜30質量%がより好ましい。前記含有量が、40質量%を超えると、トナーの流動性が悪化することがある。
【0089】
前記離型剤は2樹脂に対する親和性の差を利用することで、第一の樹脂相、第二の樹脂相いずれにも任意に含有させることができる。トナー外層に存在する第二の樹脂相に選択的に含有させることで、離型剤の染み出しが定着時の短い加熱時間でも充分生じるため、充分な離型性を得ることができる。また、離型剤を内層に存在する第一の樹脂相に選択的に含有させることで、感光体、キャリア等の他の部材への離型剤のスペントを抑制させることができる。本発明では、離型剤の配置を比較的自由に設計することがあり、各々の画像形成プロセスに応じて任意の配置を取ることができる。
【0090】
−帯電制御剤−
前記帯電制御剤としては、特に制限はなく、公知のもの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体又はその化合物、タングステンの単体又はその化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸の金属塩、サリチル酸誘導体の金属塩、等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0091】
前記帯電制御剤は、市販品を使用してもよく、該市販品としては、例えば、電子供与性の官能基を持つ樹脂又は化合物、アゾ染料、有機酸の金属錯体などを用いることができる。具体的には、ニグロシン系染料のボントロン03、第四級アンモニウム塩のボントロンP−51、含金属アゾ染料のボントロンS−34、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(以上、オリエント化学工業株式会社製)、サリチル酸系金属錯体のTN−105、第四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(以上、保土谷化学工業株式会社製)、第四級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、第四級アンモニウム塩のコピーチャージ NEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(以上、ヘキスト社製)、LRA−901、ホウ素錯体であるLR−147(日本カーリット社製)、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物、などが挙げられる。
【0092】
前記帯電制御剤は、トナー粒子本体中の樹脂に対する親和性の差を利用することで、トナー粒子本体中の樹脂相に任意に含有させることができる。帯電制御剤を内層に存在するトナー粒子本体中の樹脂相に選択的に含有させることで、感光体、キャリア等の他の部材への帯電制御剤のスペントを抑制させることができる。本発明のトナーの製造方法では、帯電制御剤の配置を比較的自由に設計することがあり、各々の画像形成プロセスに応じて任意の配置を取ることができる。
【0093】
<乳化乃至分散液調製工程>
前記乳化乃至分散液調製工程は、前記溶解乃至分散液を、少なくともアクリル樹脂微粒子を含む水系媒体に添加して乳化乃至分散させて乳化乃至分散液を調製する工程である。前記水系媒体は、樹脂微粒子などのその他の成分を含有していてもよい。
【0094】
−アクリル樹脂微粒子−
前記アクリル樹脂微粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、乳化液滴に付着した際に溶解せず、表面に固定化されるためには、架橋重合体であることが好ましく、少なくとも2つの不飽和基を持つ単量体と共重合させたものが好ましい。
前記少なくとも2つの不飽和基を持つ単量体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩(「エレミノールRS−30」;三洋化成工業製)、ジビニルベンゼン等のジビニル化合物、1,6−ヘキサンジオールアクリレートなどのジアクリレート化合物が挙げられる。
前記アクリル樹脂微粒子における樹脂成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、トナーを構成する樹脂と非相溶性のスチレン-アクリル樹脂が好ましく、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体が好ましく挙げられ、また、スチレン−その他の樹脂との共重合体としては、スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体、などが挙げられる。
前記アクリル樹脂微粒子の粒子径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、乳化粒子の粒子径と粒子径分布とを制御する点で、20nm〜200nmが好ましく、40nm〜100nmがより好ましい。
前記アクリル樹脂微粒子の粒子径は、例えば、SEM、TEM、光散乱法などによって測定できる。好ましくは、レーザー散乱測定法による粒度分布測定器(堀場製作所製LA−920)によって、測定レンジに入るように適切な濃度に希釈して測定すればよい。粒子径は体積平均径として求められる。
【0095】
前記アクリル樹脂微粒子は、アニオン性界面活性剤溶液と混合されたときに不安定で凝集する性質を有する方が、トナー材料の液滴表面に付着しやすくなる。そのためには、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン界面活性剤を用いたり、樹脂中にアミン基、アンモニウム塩基などのカチオン性基を導入することによっても作製可能である。
【0096】
なお、前記アクリル樹脂微粒子はトナー表面近傍に粒子形状を成した状態で粒子層を形成することが好ましい。
前記アクリル樹脂微粒子は、トナー内部、且つ、トナー表面近傍に粒子形状を成した状態で粒子層を形成する。トナーの成分であるワックスは定着前はトナー内部で別の相として(内部の樹脂と分離して)存在しており、これらの成分がトナー最表面に露出するとトナーの流動性が損なわれたり、他の部材を汚染したり、トナーと部材との非静電的付着力が上がって転写がしづらくなったりするという問題が生じる。トナーをコア−シェル構造として外部と隔離できるシェルを形成することは上記の問題に対しては有効であるが、均一なシェル層を形成すると内部の成分が定着するときに突出しにくくなり、その機能を発揮できなくなる。例えば、加熱されて定着助剤の効果で柔らかくなった樹脂はシェルによって紙との接触が妨げられ、また離型効果を発揮するワックスはシェルによってトナー外部への滲み出しを妨げられる。
【0097】
そこで、本発明では、トナー母体粒子(着色粒子)の表面をアクリル樹脂微粒子等の架橋樹脂微粒子からなる層によって形成する。この架橋樹脂からなる層はアクリル樹脂微粒子等の架橋樹脂微粒子から構成することが好ましく、粒子の層は粒子の集合体の形態が好ましい。この形態は透過型電子顕微鏡で観察することができ、粒子が密集して少なくとも表面で1層好ましくは2層から5層の状態で存在する。トナー母体粒子の構造を形成するには、アクリル樹脂微粒子等の架橋樹脂微粒子の適度な架橋度と粒子径に応じた添加量が必要である。
【0098】
前記アクリル樹脂微粒子のTgの範囲としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、60℃〜100℃が好ましい。この範囲にガラス転移温度を調製することにより、定着性の阻害と表面の保護を両立できる。
【0099】
前記アクリル樹脂微粒子の粒子径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、40nm〜100nmが好ましく、50nm〜100nmがより好ましい。粒子径が小さければ、少量で表面を覆うことができるが、形成される層厚が小さくなりすぎ、また、粒子径が大きければ必要量は多量になるばかりでなく、定着阻害効果が大きくなる。
【0100】
前記アクリル樹脂微粒子の架橋度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10%〜80%が好ましく、30%〜60%がより好ましい。前記架橋度が10%未満であると、トナー表面に付着してもトナー内部に溶解、吸収されて均一に表面に配置できないことがあり、また、前記架橋度が80%を超えると、トナー表面で微粒子が粒子の形態で存在するが、微粒子同士の膨潤性、接着性が低く表面の微粒子層の強度が低く使用中にトナー表面から脱離、消失してトナーの表面保護機能が失われ、接触部材汚染も発生する。
【0101】
前記架橋度を上記範囲内とすることにより、トナー粒子表面で粒子の形態を残すことができ、また、トナーを構成する樹脂の中で適度に融合する形態とすることができる。
【0102】
前記架橋度は、樹脂に溶剤が膨潤、溶解するのに必要な十分な時間樹脂を溶剤に浸した後、樹脂を取り出してその質量を測定して乾燥後残存する質量によって求めることができる。
【0103】
前記架橋度は、以下に述べる方法で定量することができる。ソックスレー抽出装置の円筒ろ紙内部に3gの樹脂微粒子の乾燥物を入れ、酢酸エチルを用いて12時間沸騰、還流抽出することにより可溶分を抽出する。残存した不溶物を乾燥精秤することによって残存量を架橋度(%)で計算する。
【0104】
次に、トナーの表面に架橋樹脂微粒子を配置する方法について述べる。水中でトナー粒子を造粒する場合には、微粒子表面の電荷がトナー表面の電荷と符号が異なるか電荷の大きさが異なる場合、静電引力によるいわゆるヘテロ凝集が起こりやすくトナーの表面に微粒子が均一に集合、付着しやすくなる。トナー表面に微粒子が付着するだけでなく、本発明の構成すなわちトナー表面で最外層を形成し、物理的力によっても剥がれなくするためにはトナー表層の樹脂層にもぐりこむ必要がある。その時に水中で有機溶剤や重合性モノマー、トナー構成樹脂からなるトナー前駆体の油滴との親和性が重要なファクターとなる。水系への親和性が強い場合には、トナー表面にとどまり内部に固定されず、逆に油滴への親和性が強すぎる場合には内部に侵入するが、表面近傍にとどまらない。この性質を調整するためには微粒子と樹脂の極性、微粒子の表面の極性を中間的なものに調整する必要がある。樹脂を構成する官能基、微粒子を製造する際の界面活性剤などの選択に影響を受ける。但し、トナー表層に固定化されたときに、有機溶剤、重合性モノマー、トナー構成樹脂からなるトナー前駆体に微粒子が溶解してしまわないように、微粒子を架橋することによってトナー表層で粒子の形態で存在させることができる。
【0105】
−−カチオン界面活性剤−−
前記カチオン界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アミン塩型界面活性剤、四級アンモニウム塩型の陽イオン界面活性剤、などが挙げられる。前記アミン塩型界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリン、などが挙げられる。また、四級アンモニウム塩型の陽イオン界面活性剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウム、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記カチオン界面活性剤の中でも、フルオロアルキル基を有する脂肪族一級、二級又は三級アミン酸、パーフルオロアルキル(炭素数6〜10個)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩等の脂肪族四級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、などが好ましい。
【0106】
前記カチオン界面活性剤の市販品としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、サーフロンS−121(旭硝子株式会社製);フロラードFC−135(住友3M株式会社製);ユニダインDS−202(ダイキン工業株式会社製)、メガファックF−150、F−824(大日本インキ株式会社製);エクトップEF−132(ト−ケムプロダクツ株式会社製);フタージェントF−300(ネオス株式会社製)、等が挙げられる。
【0107】
−−ノニオン界面活性剤−−
前記ノニオン界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体、などが挙げられる。
【0108】
−−両性界面活性剤−−
前記両性界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシン、N−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムべタイン等が挙げられる。
【0109】
−水系媒体−
前記水系媒体としては、アクリル樹脂微粒子を含む限り、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、水、水と混和可能な溶剤、これらの混合物、などを用いることができるが、これらの中でも、水が特に好ましい。水と混和可能な溶剤としては、水と混和可能であれば特に制限はなく、例えば、アルコール、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ類、低級ケトン類、などを用いることができる。アルコールとしては、例えば、メタノール、イソプロパノール、エチレングリコール等が挙げられる。また、低級ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0110】
前記水系媒体の調製は、例えば、アニオン性界面活性剤の存在下で樹脂微粒子を水系媒体に分散させることにより行う。アニオン性界面活性剤と樹脂微粒子の水系媒体中への添加量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、それぞれ0.5質量%〜10質量%が好ましい。
【0111】
−乳化乃至分散−
溶解乃至分散液の水系媒体中への乳化乃至分散は、溶解乃至分散液を水系媒体中で攪拌しながら分散させることが好ましい。分散の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知の分散機などを用いて行うことができる。分散機としては、低速せん断式分散機、高速せん断式分散機などが挙げられる。このトナーの製造方法においては、乳化乃至分散の際、活性水素基含有化合物と、活性水素基含有化合物と反応可能な重合体と、を伸長反応乃至架橋反応させると、接着性基材が生成する。
樹脂微粒子を、乳化中または乳化後に水系媒体に加えても良い。高速せん断分散機にて分散させながら行うか、乳化後低速攪拌に切り替えて添加するか、適宜トナーへの樹脂微粒子の付着性、固定化状況を見ながら行われる。
【0112】
−樹脂微粒子−
前記樹脂微粒子における樹脂としては、水系媒体中で水性分散液を形成しうる樹脂であれば特に制限はなく、公知の樹脂の中から目的に応じて適宜選択することができる。前記樹脂微粒子用の樹脂としては、熱可塑性樹脂であっても熱硬化性樹脂でもよく、例えば、ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート樹脂、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、微細な球状の樹脂微粒子の水性分散液が得られ易い点で、ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂及びポリエステル樹脂から選択される少なくとも1種で形成されるのが好ましい。
前記ビニル樹脂は、ビニルモノマーを単独重合又は共重合したポリマーであり、例えば、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、(メタ)アクリル酸−アクリル酸エステル重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、などが挙げられる。
【0113】
前記樹脂微粒子は、アニオン性であることが必要である。アニオン性界面活性剤とともに用いた際に凝集させないためである。前記樹脂微粒子は、後に述べる製法でアニオン活性剤を用いたり、樹脂中にカルボン酸基、スルホン酸基などのアニオン性基を導入することによっても作製できる。
前記樹脂微粒子の粒子径としては、一次粒子の平均粒子径として5nm〜50nmが乳化粒子の粒子径と粒子径分布を制御する点から好ましく、10nm〜25nmの粒子径であることがより好ましい。
前記樹脂微粒子の粒子径は、例えば、SEM、TEM、光散乱法などによって測定できる。好ましくは、レーザー散乱測定法による粒度分布測定器(堀場製作所製LA−920)によって、測定レンジに入るように適切な濃度に希釈して測定すればよい。粒子径は体積平均径として求められる。
【0114】
前記樹脂微粒子は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択した公知の方法に従って重合させることにより得ることができるが、樹脂微粒子の水性分散液として得ることが好ましい。樹脂微粒子の水性分散液の調製方法としては、例えば、以下の方法が好適に挙げられる。
(1)ビニル樹脂の場合、ビニルモノマーを出発原料として、懸濁重合法、乳化重合法、シード重合法及び分散重合法から選択されるいずれかの重合反応により、直接、樹脂微粒子Aの水性分散液を製造する方法
(2)ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の重付加乃至縮合系樹脂の場合、前駆体(モノマー、オリゴマー等)又はその溶剤溶液を適当な分散剤の存在下、水性媒体中に分散させた後、加熱、又は硬化剤を添加して硬化させて、樹脂微粒子の水性分散液を製造する方法
(3)ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の重付加乃至縮合系樹脂の場合、前駆体(モノマー、オリゴマー等)又はその溶剤溶液(液体であることが好ましい。加熱により液状化してもよい)中に適当な乳化剤を溶解させた後、水を加えて転相乳化する方法
(4)予め重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であってもよい)により調製した樹脂を機械回転式又はジェット式等の微粉砕機を用いて粉砕し、次いで、分級することによって樹脂微粒子を得た後、適当な分散剤の存在下、水中に分散させる方法
(5)予め重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であってもよい)により調製した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液を霧状に噴霧することにより樹脂微粒子を得た後、該樹脂微粒子を適当な分散剤の存在下、水中に分散させる方法
(6)予め重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であってもよい)により調製した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液に貧溶剤を添加するか、又は予め溶剤に加熱溶解した樹脂溶液を冷却することにより樹脂微粒子を析出させ、次に溶剤を除去して樹脂微粒子を得た後、樹脂微粒子を適当な分散剤存在下、水中に分散させる方法
(7)予め重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であってもよい)により調製した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液を、適当な分散剤存在下、水性媒体中に分散させた後、加熱又は減圧等によって溶剤を除去する方法
(8)予め重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であってもよい)により調製した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液中に適当な乳化剤を溶解させた後、水を加えて転相乳化する方法。
【0115】
−−アニオン性界面活性剤−−
前記アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステル等が挙げられ、フルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤が好適に挙げられる。フルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤としては、例えば、炭素数2〜10のフルオロアルキルカルボン酸又はその金属塩、パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−[ω−フルオロアルキル(炭素数6〜11)オキシ]−1−アルキル(炭素数3〜4)スルホン酸ナトリウム、3−[ω−フルオロアルカノイル(炭素数6〜8)−N−エチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキル(炭素数11〜20)カルボン酸又はその金属塩、パーフルオロアルキルカルボン酸(炭素数7〜13)又はその金属塩、パーフルオロアルキル(炭素数4〜12)スルホン酸又はその金属塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(炭素数6〜10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(炭素数6〜10)−N−エチルスルホニルグリシン塩、モノパーフルオロアルキル(炭素数6〜16)エチルリン酸エステル等が挙げられる。
【0116】
前記フルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤の市販品としては、例えば、サーフロンS−111、S−112、S−113(旭硝子社製);フロラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−129(住友3M社製);ユニダインDS−101、DS−102(ダイキン工業社製);メガファックF−110、F−120、F−113、F−191、F−812、F−833(大日本インキ社製);エクトップEF−102、103、104、105、112、123A、123B、306A、501、201、204(ト−ケムプロダクツ社製);フタージェントF−100、F150(ネオス社製)、等が挙げられる。
また、ドデシルジフェニルエーテルスルホン酸ナトリウム等も安価で入手しやすく、安全性にも問題がないため好ましい。
【0117】
<有機溶媒除去工程>
前記有機溶媒除去工程は、前記乳化乃至分散液から有機溶媒を除去する工程である。
【0118】
−有機溶媒の除去−
乳化乃至分散により得られた乳化スラリーから、有機溶媒を除去する。有機溶媒の除去は、(1)反応系全体を徐々に昇温させて、油滴中の有機溶媒を完全に蒸発除去する方法、(2)乳化分散体を乾燥雰囲気中に噴霧して、油滴中の非水溶性有機溶媒を完全に除去してトナー微粒子を形成し、併せて水系分散剤を蒸発除去する方法、等が挙げられる。有機溶媒の除去が行われるとトナー粒子が形成される。形成されたトナー粒子に対し、洗浄、乾燥等を行い、更にその後、所望により分級等を行う。該分級は、例えば、液中でサイクロン、デカンター、遠心分離等により、微粒子部分を取り除くことにより行う。なお、乾燥後に粉体として取得した後に分級操作を行ってもよい。
【0119】
得られたトナー粒子を、着色剤、離型剤、帯電制御剤等の粒子と共に混合したり、更に機械的衝撃力を印加したりすることにより、トナー粒子の表面から離型剤等の粒子が脱離するのを防止することができる。機械的衝撃力を印加する方法としては、例えば、高速で回転する羽根によって混合物に衝撃力を加える方法、高速気流中に混合物を投入し加速させて粒子同士又は複合化した粒子を適当な衝突板に衝突させる方法、等が挙げられる。この方法に用いる装置としては、例えば、オングミル(ホソカワミクロン株式会社製)、I式ミル(日本ニューマチック株式会社製)を改造して粉砕エアー圧カを下げた装置、ハイブリダイゼイションシステム(株式会社奈良機械製作所製)、クリプトロンシステム(川崎重工業株式会社製)、自動乳鉢、等が挙げられる。
【0120】
<トナーのその他の成分>
トナーの他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、無機微粒子、流動性向上剤、クリーニング性向上剤、磁性材料、金属石鹸、等が挙げられる。
【0121】
−無機微粒子−
前記無機微粒子は、トナー粒子に流動性、現像性、帯電性等を付与するための外添剤として使用する。この無機微粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ペンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0122】
前記トナーの流動性や現像性、帯電性を補助するための無機微粒子としては、80〜500nmの一次平均粒径を有する大粒径の無機微粒子の他にも、小粒径の無機微粒子を好ましく用いることができる。特に、疎水性シリカ及び又は疎水性酸化チタンが好ましい。前記無機微粒子の一次平均粒径は、5nm〜50nmであることが好ましく、10nm〜30nmであることがより好ましい。また、BET法による比表面積は、20〜500m/gであることが好ましい。無機微粒子の使用割合は、トナーの0.01質量%〜5質量%であることが好ましく、0.01質量%〜2.0質量%であることがより好ましい。
【0123】
−流動性向上剤−
前記流動性向上剤とは、表面処理を行って疎水性を上げ、高湿度下においても流動特性や帯電特性の悪化を防止する剤のことであり、例えば、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイル、等が挙げられる。シリカ、酸化チタンは、このような流動性向上剤により表面処理行い、疎水性シリカ、疎水性酸化チタンとして使用するのが特に好ましい。
【0124】
−クリーニング性向上剤−
前記クリーニング性向上剤は、感光体や一次転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去するためにトナーに添加される剤のことであり、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸等の脂肪酸金属塩、ポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子等のソープフリー乳化重合により製造されたポリマー微粒子、などが挙げられる。ポリマー微粒子は、比較的粒度分布が狭いものが好ましく、体積平均粒径が0.01μm〜1μmのものが好適である。
【0125】
−磁性材料−
前記磁性材料としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、鉄粉、マグネタイト、フェライト、等を用いることができる。これらの中でも、色調の点で白色のものが好ましい。
【0126】
<トナーの好ましい態様>
前記水系媒体が、アクリル樹脂微粒子に加え、平均粒子径が5nm〜50nmのアニオン性の樹脂微粒子とアニオン性界面活性剤とを含むことが好ましい。
【0127】
以下では、より好ましい態様である、水系媒体として平均粒子径が5nm〜50nmのアニオン性の樹脂微粒子とアニオン性界面活性剤とを含む水系媒体を用いた場合について詳細に説明する。
上記のようにして得られたトナーは、着色剤及び結着樹脂を中心としたトナー材料を核としたトナー粒子本体の表面に、樹脂微粒子が付着している。なお、トナーの平均粒子径は、乳化工程における水系媒体の攪拌等の乳化乃至分散条件により調整される。
【0128】
前記アニオン性の樹脂微粒子は、トナー表面に付着して融着、融合し、比較的硬い表面を形成する。また、前記樹脂微粒子は、アニオン性を有するため、トナー材料を含む液滴に吸着し、液滴同士の合一を抑える効果があり、トナーの粒度分布を制御するのに重要である。さらにトナーの負帯電性を与えることもできる。これらの効果を発揮するために、アニオン性の樹脂微粒子は平均粒子径が5nm〜50nmとするとよい。
【0129】
<トナーの特性>
−トナーのガラス転移温度(Tg)−
前記トナーのガラス転移温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20℃〜55℃が好ましい。
前記ガラス転移温度が、20℃未満であると、耐熱保存性が悪化し、トナーのブロッキングが発生することがあり、55℃を超えると、定着下限温度の上昇が起こり、低温定着化をすることができないことがある。
−トナーの粒径−
前記トナーの粒径としては、質量平均粒径が1μm〜8μmである限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。特に、トナーの質量平均粒径が3μm〜7μmであることがより好ましい。質量平均粒径が3μmよりも小さいときは、一次転写及び二次転写においてトナーチリが発生することがあり、質量平均粒径が7μmよりも大きいときは、ドット再現性が不十分になり、ハーフトーン部分の粒状性も悪化して高精細な画像が得られなくなってしまうことがある。
【0130】
本発明の製造方法によるトナーにおける質量平均粒径(Dw)と個数平均粒径(Dn)との比(Dw/Dn)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1.25以下が好ましく、1.05〜1.25がより好ましい。質量平均粒径と個数平均粒径との比(Dw/Dn)が、1.05未満であると、二成分現像剤では現像装置における長期の撹拌においてキャリアの表面にトナーが融着し、キャリアの帯電能力の低下や、クリーニング性の悪化につながり易い。一成分現像剤では、現像ローラへのトナーのフィルミングや、トナーを薄層化するためブレード等の部材へのトナー融着が発生し易くなることがある。また、Dw/Dnが1.25を超えると、高解像で高画質の画像を得ることが難しくなり、現像剤中のトナーの収支が行われた場合にトナーの粒子径の変動が大きくなることがある。一方、質量平均粒径と個数平均粒径との比(Dw/Dn)を低くすることで、帯電量分布が均一になり、地肌かぶりを少なくすることができる。質量平均粒径と個数平均粒径との比(Dw/Dn)が1.25を超えると、トナーの帯電量分布も広くなるために高品位な画像を得るのが困難になることがある。
【0131】
また、トナーの質量平均粒径と個数平均粒径との比(Dw/Dn)が、1.05〜1.25であると、保存安定性、低温定着性、及び耐ホットオフセット性のいずれにも優れたトナーとなりやすい。特に、フルカラー複写機に使用した場合に画像の光沢性に優れる。二成分現像剤では長期にわたるトナーの収支が行われても、現像剤中のトナー粒子径の変動が少なく、現像装置における長期の攪拌においても良好で安定した現像性が得られ、一成分現像剤ではトナーの収支が行われてもトナーの粒子径の変動が少なくなるとともに、現像ローラへのトナーのフィルミングやトナーを薄層化するブレード等への部材へのトナーの融着がなく、現像装置の長期使用(攪拌)においても良好で安定した現像性が得られ、高画質の画像を得ることが可能となる。
【0132】
−トナーの質量平均粒径(Dw)、体積平均粒径(Dv)、及び個数平均粒径(Dn)−
トナーの質量平均粒径(Dw)、体積平均粒径(Dv)、及び個数平均粒径(Dn)は、粒度測定器(「マルチサイザーIII」、ベックマンコールター社製)を用い、アパーチャー径100μmで測定し、解析ソフト(Beckman Coulter Multisizer 3 Version3.51)にて解析を行った。具体的には、ガラス製100mlビーカーに10wt%界面活性剤(アルキルベンゼンスフォン酸塩ネオゲンSC−A;第一工業製薬性)を0.5ml添加し、各トナー0.5g添加しミクロスパーテルでかき混ぜ、次いでイオン交換水80mlを添加した。得られた分散液を超音波分散器(W−113MK−II本多電子社製)で10分間分散処理した。前記分散液を、前記マルチサイザーIIIを用いて、測定用溶液としてアイソトンIII(ベックマンコールター製)を用いて測定を行った。測定は装置が示す濃度が8±2%に成るように前記トナーサンプル分散液を滴下した。本測定法は、粒径の測定再現性の点から前記濃度を8±2%にすることが重要である。この濃度範囲であれば粒径に誤差は生じない。
【0133】
−トナーの平均円形度−
前記トナーの平均円形度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.950〜0.990であることが好ましい。
前記平均円形度が0.950よりも低いと、現像時の画像均一性が悪化したり、電子写真感光体から中間転写体もしくは中間転写体から記録材へのトナー転写効率が低下し均一転写が得られなくなることがある。また、前記トナーは、水系媒体中で乳化処理をして作製されたものであり、特に、カラートナーにおける小粒径化や、平均円形度が上記の範囲の形状を得るために効果的である。
【0134】
前記トナーの平均円形度としては、平均円形度SR=(粒子投影面積と同じ面積の円の周囲長/粒子投影像の周囲長)×100%で定義される。フロー式粒子像分析装置(「FPIA−2100」;シスメックス社製)を用いて計測し、解析ソフト(FPIA−2100 Data Processing Program For FPIA Version00−10)を用いて解析を行った。具体的には、ガラス製100mLビーカーに10wt%界面活性剤(アルキルベンゼンスフォン酸塩ネオゲンSC−A;第一工業製薬性)を0.1mL〜0.5mL添加し、各トナー0.1g〜0.5g添加しミクロスパーテルでかき混ぜ、次いでイオン交換水80mLを添加した。得られた分散液を超音波分散器(本多電子社製)で3分間分散処理した。前記分散液を、前記FPIA−2100を用いて濃度を5,000〜15,000個/μLが得られるまでトナーの形状及び分布を測定した。本測定法は平均円形度の測定再現性の点から前記分散液濃度が5,000個/μL〜15,000個/μLにすることが重要である。前記分散液濃度を得るために前記分散液の条件、即ち、添加する界面活性剤量、トナー量を変更する必要がある。前記界面活性剤量は、前述したトナー粒径の測定と同様にトナーの疎水性により必要量が異なり、多く添加すると泡によるノイズが発生し、少ないとトナーを十分にぬらすことができないため、分散が不十分となる。また、トナー添加量は粒径のより異なり、小粒径の場合は少なく、また大粒径の場合は多くする必要があり、トナー粒径が3μm〜7μmの場合、トナー量を0.1g〜0.5g添加することにより分散液濃度を5000個/μL〜15000個/μLにあわせることが可能となる。
【0135】
−トナーの体積固有抵抗−
前記トナーの体積固有抵抗ρ(Ωcm)の常用対数値Logρは、10.9LogΩcm〜11.4LogΩcmであることが好ましい。これにより、トナー中の着色剤等の分散状態が良好であり、良好なトナーの帯電安定性が得られ、トナー飛散やかぶりが良好となる。トナーのLogρが10.9LogΩcmより小さい場合には、導電性が高くなり、これにより帯電不良が生じ、地汚れやトナー飛散等が増加する傾向が見られる。また、静電オフセット等による異常画像の発生も生じ、高品位の画像が安定して得られない。また、トナーのLogρが11.4LogΩcmより大きい場合には、抵抗が高くなるため帯電量が上昇し、画像濃度が低下する恐れがある。
【0136】
−トナーのBET比表面積−
前記トナーのBET比表面積は、0.5m/g〜4.0m/gであることが好ましく、0.5m/g〜2.0m/gであることがより好ましい。前記BET比表面積が、0.5m/g未満であると、トナー表面全体を密に覆う状態となり、前記樹脂微粒子がトナー内部の結着樹脂成分と定着紙との接着性を阻害し、定着下限温度の上昇が見られる。また、樹脂微粒子がワックスの染み出しを阻害し、ワックスの離型性効果が得られず、オフセットの発生が見られる。一方、前記BET比表面積が、4.0m/gを超えると、トナー表面上に残存する有機微粒子が凸部として大きく突出したり、粗状態の多重層として樹脂微粒子が残存し、やはり樹脂微粒子がトナー内部の結着樹脂成分と定着紙との接着性を阻害し、定着下限温度の上昇が見られる。また、樹脂微粒子がワックスの染み出しを阻害し、ワックスの離型性効果が得られず、オフセットの発生が見られる。また、添加剤が浮出し、表面の凹凸により画質に影響が現れやすい。
【0137】
前記トナーの着色としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、ブラックトナー、シアントナー、マゼンタトナー及びイエロートナーから選択される少なくとも1種とすることができ、各色のトナーは前記着色剤の種類を適宜選択することにより得ることができるが、カラートナーであるのが好ましい。
【0138】
(現像剤)
本発明の現像剤は、本発明の前記トナーを少なくとも含有してなり、キャリア等の適宜選択したその他の成分を含有してなる。該現像剤としては、一成分現像剤であってもよいし、二成分現像剤であってもよいが、近年の情報処理速度の向上に対応した高速プリンター等に使用する場合には、寿命向上等の点で前記二成分現像剤が好ましい。
前記トナーを用いた前記一成分現像剤の場合、トナーの収支が行われても、トナーの粒子径の変動が少なく、現像剤担持体としての現像ローラへのトナーのフィルミングや、トナーを薄層化するためのブレード等の層厚規制部材へのトナーの融着がなく、現像手段の長期の使用(撹拌)においても、良好で安定した現像性及び画像が得られる。また、前記トナーを用いた前記二成分現像剤の場合、長期にわたるトナーの収支が行われても、現像剤中のトナー粒子径の変動が少なく、現像手段における長期の撹拌においても、良好で安定した現像性が得られる。
【0139】
−キャリア−
前記キャリアとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、芯材と、該芯材を被覆する樹脂層とを有するものが好ましい。
【0140】
前記芯材の材料としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、50〜90emu/gのマンガン−ストロンチウム(Mn−Sr)系材料、マンガン−マグネシウム(Mn−Mg)系材料などが好ましく、画像濃度の確保の点では、鉄粉(100emu/g以上)、マグネタイト(75〜120emu/g)等の高磁化材料が好ましい。また、トナーが穂立ち状態となっている静電潜像担持体への当りを弱くでき高画質化に有利である点で、銅−ジンク(Cu−Zn)系(30〜80emu/g)等の弱磁化材料が好ましい。これらは、1種単独で使用してもよい、2種以上を併用してもよい。
【0141】
前記樹脂層の材料としては、特に制限はなく、公知の樹脂の中から目的に応じて適宜選択することができるが、例えばアミノ系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ハロゲン化オレフィン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリフッ化ビニル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリトリフルオロエチレン樹脂、ポリヘキサフルオロプロピレン樹脂、フッ化ビニリデンとアクリル単量体との共重合体、フッ化ビニリデンとフッ化ビニルとの共重合体、テトラフルオロエチレンとフッ化ビニリデンと非フッ化単量体とのターポリマー等のフルオロターポリマー(フッ化三重(多重)共重合体)、シリコーン樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、シリコーン樹脂が特に好ましい。
【0142】
前記シリコーン樹脂としては、特に制限はなく、一般的に知られているシリコーン樹脂の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、オルガノシロサン結合のみからなるストレートシリコーン樹脂;アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等で変性したシリコーン樹脂、などが挙げられる。
前記シリコーン樹脂としては、市販品を用いることができ、ストレートシリコーン樹脂としては、例えば、信越化学工業株式会社製のKR271、KR255、KR152;東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製のSR2400、SR2406、SR2410などが挙げられる。
前記変性シリコーン樹脂としては、市販品を用いることができ、例えば、信越化学工業株式会社製のKR206(アルキド変性)、KR5208(アクリル変性)、ES1001N(エポキシ変性)、KR305(ウレタン変性);東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製のSR2115(エポキシ変性)、SR2110(アルキド変性)、などが挙げられる。
なお、シリコーン樹脂を単体で用いることも可能であるが、架橋反応する成分、帯電量調整成分等を同時に用いることも可能である。
【0143】
前記樹脂層には、必要に応じて導電粉等を含有させてもよく、該導電粉としては、例えば、金属粉、カーボンブラック、酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛、などが挙げられる。これらの導電粉の平均粒子径としては、1μm以下が好ましい。前記平均粒子径が1μmを超えると、電気抵抗の制御が困難になることがある。
【0144】
前記樹脂層は、例えば、前記シリコーン樹脂等を溶剤に溶解させて塗布溶液を調製した後、該塗布溶液を前記芯材の表面に公知の塗布方法により均一に塗布し、乾燥した後、焼付を行うことにより形成することができる。前記塗布方法としては、例えば、浸漬法、スプレー法、ハケ塗り法、などが挙げられる。
前記溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、セルソルブ、ブチルアセテート、などが挙げられる。
前記焼付としては、特に制限はなく、外部加熱方式であってもよいし、内部加熱方式であってもよく、例えば、固定式電気炉、流動式電気炉、ロータリー式電気炉、バーナー炉等を用いる方法、マイクロウエーブを用いる方法、などが挙げられる。
【0145】
前記樹脂層の前記キャリアにおける量としては、0.01質量%〜5.0質量%が好ましい。前記量が、0.01質量%未満であると、前記芯材の表面に均一な前記樹脂層を形成することができないことがあり、5.0質量%を超えると、前記樹脂層が厚くなり過ぎてキャリア同士の造粒が発生し、均一なキャリア粒子が得られないことがある。
【0146】
前記現像剤が二成分現像剤である場合には、前記キャリアの該二成分現像剤における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、90質量%〜98質量%が好ましく、93質量%〜97質量%がより好ましい。
前記二成分現像剤のトナーとキャリアの混合割合は、一般にキャリア100質量部に対しトナー1質量部〜10.0質量部が好ましい。
【0147】
前記キャリアの重量平均粒径Dwは、15μm〜40μmであることが好ましい。前記重量平均粒径が、15μm未満であると、転写工程においてキャリアも一緒に転写されてしまうキャリア付着が起こりやすくなり、40μmを超えると、キャリア付着は起こりにくいものの、高画像濃度を得るためにトナー濃度を高くした場合、地汚れが発生しやすくなる恐れがある。また、潜像のドット径が小さい場合、ドット再現性のバラツキが大きくなり、ハイライト部の粒状性が悪くなる恐れもある。
【0148】
前記キャリアの重量平均粒径Dwは、個数基準で測定された粒子の粒径分布(個数頻度と粒径との関係)に基づいて算出されたものである。この場合の重量平均粒径Dwは、下記式(1)で表される。
Dw={1/Σ(nD3)}×{Σ(nD4)}・・・(1)
前記式(1)中、Dは、各チャネルに存在する粒子の代表粒径(μm)を示し、nは、各チャネルに存在する粒子の総数を示す。なお、チャネルとは、粒径分布図における粒径範囲を等分に分割するための長さを示すもので、本発明においては、2μmを採用した。また、各チャネルに存在する粒子の代表粒径としては、各チャネルに保存する粒子の粒径の下限値を採用した。
【0149】
また、キャリア及びキャリアの芯材粒子における個数平均粒径Dpは、個数基準で測定された粒子の粒径分布に基づいて算出されたものである。この場合の個数平均粒径Dpは、式(2)で表される。
Dp=(1/ΣN)×(ΣnD)・・・(2)
前記式(2)中、Nは、計測した全粒子数を示し、nは、各チャネルに存在する粒子の総数を示し、Dは、各チャネル(2μm)に保存する粒子の粒径の下限値を示す。
【0150】
前記粒径分布を測定するための粒度分析計としては、例えば、マイクロトラック粒度分析計(モデルHRA9320−X100、Honewell社製)を用いることができる。その測定条件は以下の通りである。
[1]粒径範囲:8μm〜100μm
[2]チャネル長さ(チャネル幅):2μm
[3]チャネル数:46
[4]屈折率:2.42
【0151】
(画像形成方法及び画像形成装置)
本発明の画像形成方法は、帯電工程と、露光工程と、現像工程と、一次転写工程と、二次転写工程と、定着工程と、クリーニング工程とを含み、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
本発明の画像形成装置は、電子写真感光体と、帯電手段と、露光手段と、現像手段と、一次転写手段と、二次転写手段と、定着手段と、クリーニング手段とを有し、更に必要に応じてその他の手段を有してなる。
【0152】
前記画像形成方法は、前記二次転写工程において、トナー像の記録媒体への転写の線速度は300mm/sec〜1000mm/secであり、二次転写手段のニップ部での転写時間は0.5msec〜20msecとすることが好ましい。
【0153】
また、本発明のフルカラー画像形成方法は、電子写真感光体、帯電手段、露光手段、現像手段、一次転写手段、及びクリーニング手段のセットを複数有するタンデム型であることが好ましい。電子写真感光体を複数個配備して、各々の回転時に1色ずつ現像するいわゆるタンデム型では、潜像形成工程と現像・転写工程とが各色毎に行われて各色のトナー像が形成されるため、単色の画像形成速度とフルカラーの画像形成速度との差が小さく、高速印字に対応できる利点を有している。しかし、各色のトナー像を別々の電子写真感光体に形成し、各色トナー層の積層(色重ね)を行うことによりフルカラー画像を形成するため、各色のトナー粒子間での帯電性等が異なるなど、特性にばらつきがあると各色のトナー粒子による現像トナー量に差が生じ、色重ねによる二次色の色相の変化が大きくなり、色再現性が低下する。
【0154】
タンデム型による画像形成方法に使用されるトナーにおいては、各色のバランスを制御するための現像トナー量を安定化すること(各色のトナー粒子間でばらつきがないこと)、各色のトナー粒子間で電子写真感光体及び記録媒体に対する付着性が均一であることが必要である。この点に関しては、本発明のトナーは好適である。
【0155】
<電子写真感光体>
前記電子写真感光体としては、その材質、形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記形状としては、例えば、ドラム状、シート状、エンドレスベルト状などが挙げられる。前記構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、前記大きさとしては、前記画像形成装置の大きさや仕様等に応じて適宜選択することができる。前記材質としては、例えばアモルファスシリコン、セレン、CdS、ZnO等の無機感光体;ポリシラン、フタロポリメチン等の有機感光体(OPC)、などが挙げられる。
【0156】
前記アモルファスシリコン感光体は、例えば、支持体を50〜400℃に加熱し、該支持体上に真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、熱CVD法、光CVD法、プラズマCVD法等の成膜法により、a−Siからなる感光層を形成したものである。これらの中でも、プラズマCVD法が特に好ましく、具体的には、原料ガスを直流、高周波又はマイクロ波グロー放電によって分解し、支持体上にa−Siからなる感光層を形成する方法が好適である。
【0157】
前記有機感光体(OPC)は、(1)光吸収波長域の広さ、光吸収量の大きさ等の光学特性、(2)高感度、安定な帯電特性等の電気的特性、(3)材料の選択範囲の広さ、(4)製造の容易さ、(5)低コスト、(6)無毒性、等の理由から一般に広く応用されている。このような有機感光体の層構成としては、単層構造と、積層構造とに大別される。
前記単層構造の感光体は、支持体と、該支持体上に単層型感光層を設けてなり、更に必要に応じて、保護層、中間層、その他の層を有してなる。
前記積層構造の感光体は、支持体と、該支持体上に電荷発生層、及び電荷輸送層を少なくともこの順に有する積層型感光層を設けてなり、更に必要に応じて、保護層、中間層、その他の層を有してなる。
【0158】
<帯電工程及び帯電手段>
前記帯電工程は、静電潜像担持体表面を帯電させる工程であり、前記帯電手段により行われる。
前記帯電手段としては、前記静電潜像担持体の表面に電圧を印加して一様に帯電させることができるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、(1)静電潜像担持体と接触して帯電させる接触方式の帯電手段と、(2)静電潜像担持体と非接触で帯電させる非接触方式の帯電手段とに大別される。
【0159】
前記帯電手段は、少なくとも交番電圧を重畳した直流電圧を印加するのが好ましい。交番電圧を重畳した直流電圧を印加することにより、直流電圧のみを印加する場合に比べて電子写真感光体の表面電圧を所望の値に安定化させることができるため、より均一帯電させることが可能となる。更に、帯電手段は、電子写真感光体に帯電部材を接触させ、帯電部材に電圧を印加することによって帯電を行うのが好ましい。電子写真感光体に帯電部材を接触させ、帯電部材に電圧を印加して帯電を行うことによって、特に交番電圧を重畳した直流電圧を印加することで得られる均一帯電性の効果を更に向上させることが可能となる。
【0160】
(帯電工程)
本発明の画像形成方法において使用される帯電装置としては、例えば図1及び図2に示した接触式の帯電装置を用いることができる。
【0161】
−ローラ式帯電装置−
図1に接触式帯電装置の一種であるローラ式帯電装置500の一例の概略構成を示した。被帯電体である像担持体としての感光体505は矢印の方向に所定の速度(プロセススピード)で回転駆動される。この感光体505に接触させた帯電部材である帯電ローラ501は芯金502とこの芯金502の外周に同心一体にローラ上に形成した導電ゴム層503を基本構成とし、芯金の両端を不図示の軸受け部材などで回転自由に保持させるとともに、不図示の加圧手段によって感光ドラムに所定の加圧力で押圧させており、本図の場合はこの帯電ローラ501は感光体505の回転駆動に従動して回転する。帯電ローラ501は、直径9mmの芯金上に100,000Ω・cm程度の中抵抗の導電ゴム層503を被膜して直径16mmに形成されている。帯電ローラ501の芯金502と図示の電源504とは電気的に接続されており、電源504により帯電ローラ501に対して所定のバイアスが印加される。これにより感光体505の周面が所定の極性、電位に一様に帯電処理される。
【0162】
本発明で使われる帯電装置の形状としてはローラ式帯電装置の他にも、磁気ブラシ式帯電装置、ファーブラシ式帯電装置など、どのような形態をとってもよく、電子写真方式の画像形成装置の仕様や形態にあわせて選択可能である。磁気ブラシ式帯電装置を用いる場合、磁気ブラシは例えばZn−Cuフェライト等、各種フェライト粒子を帯電部材として用い、これを支持させるための非磁性の導電スリーブ、これに内包されるマグネットロールによって構成される。また、ファーブラシ式帯電装置を用いる場合、例えばファーブラシの材質としては、カーボン、硫化銅、金属、及び金属酸化物により導電処理されたファーを用い、これを金属や他の導電処理された芯金に巻き付けたり張り付けたりすることで帯電装置とする。
【0163】
−ファーブラシ式帯電装置−
図2に接触式のファーブラシ式帯電装置510の一例の概略構成を示す。被帯電体としての像担持体としての感光体515は矢印の方向に所定の速度(プロセススピード)で回転駆動される。この感光体515に対して、ファーブラシによって構成されるファーブラシローラ511が、ブラシ部513の弾性に抗して所定の押圧力をもって所定のニップ幅で接触させてある。
【0164】
前記接触式帯電装置としてのファーブラシローラ511は、電極を兼ねる直径6mmの金属製の芯金512に、ブラシ部513としてユニチカ株式会社製の導電性レーヨン繊維REC−Bをパイル地にしたテープをスパイラル状に巻き付けて、外径14mm、長手方向長さ250mmのロールブラシとしたものである。ブラシ部513のブラシは300デニール/50フィラメント、1平方ミリメートル当たり155本の密度である。このロールブラシを内径が12mmのパイプ内に一方向に回転させながらさし込み、ブラシと、パイプが同心となるように設定し、高温多湿雰囲気中に放置してクセ付けで斜毛させた。
【0165】
ファーブラシローラ511の抵抗値は印加電圧100Vにおいて1×10Ωである。この抵抗値は、金属製の直径30mmのドラムにファーブラシローラをニップ幅3mmで当接させ、100Vの電圧を印加したときに流れる電流から換算した。このブラシ式帯電装置510の抵抗値は、被帯電体である感光体515上にピンホール等の低耐圧欠陥部が生じた場合にもこの部分に過大なリーク電流が流れ込んで帯電ニップ部が帯電不良になる画像不良を防止するために10Ω以上であることが好ましく、感光体515表面に十分に電荷を注入させるために10Ω以下であることがより好ましい。
【0166】
前記ブラシの材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばユニチカ株式会社製のREC−B、REC−C、REC−M1、REC−M10、東レ株式会製のSA−7、日本蚕毛株式会製のサンダーロン、カネボウ株式会社製のベルトロン、クラレ株式会社製のクラカーボ、レーヨンにカーボンを分散したもの、三菱レーヨン株式会社製のローバルなどが挙げられる。前記ブラシは、一本が3〜10デニールで、10〜100フィラメント/束、80〜600本/mmの密度が好ましい。毛足は1〜10mmが好ましい。
【0167】
前記ファーブラシローラ511は感光体515の回転方向と逆方向(カウンター)に所定の周速度(表面の速度)をもって回転駆動され、感光体面に対して速度差を持って接触する。そしてこのブラシローラ511に電源514から所定の帯電電圧が印加されることで、回転感光体面が所定の極性・電位に一様に接触帯電処理される。
前記ファーブラシローラ511による感光体515の接触帯電は直接注入帯電が支配的となって行われ、回転感光体表面はファーブラシローラ511に対する印加帯電電圧とほぼ等しい電位に帯電される。
前記帯電部材の形状としてはファーブラシローラ511の他にも、帯電ローラ、ファーブラシなど、どのような形態をとってもよく、画像形成装置の仕様や形態にあわせて選択可能である。帯電ローラを用いる場合、芯金上に100,000Ω・cm程度の中抵抗ゴム層を被膜して用いるのが一般的である。磁気ブラシを用いる場合、磁気ブラシは例えばZn−Cuフェライト等、各種フェライト粒子を帯電部材として用い、これを支持させるための非磁性の導電スリーブ、これに内包されるマグネットロールによって構成される。
【0168】
−磁気ブラシ式帯電装置−
図3は、磁気ブラシ式帯電装置の一例を示す概略構成を示した図である。被帯電体、像担持体としての感光体515は矢印の方向に所定の速度(プロセススピード)で回転駆動される。この感光体515に対して、磁気ブラシによって構成されるブラシローラ511が、ブラシ部513の弾性に抗して所定の押圧力をもって所定のニップ幅で接触させてある。
【0169】
前記接触帯電部材としての磁気ブラシとしては、平均粒径が25μmのZn−Cuフェライト粒子と、平均粒径10μmのZn−Cuフェライト粒子を、質量比1:0.05で混合して、それぞれの平均粒径の位置にピークを有する、平均粒径25μmのフェライト粒子を、中抵抗樹脂層でコートした磁性粒子を用いた。接触帯電部材は、上述で作成された被覆磁性粒子、及び、これを支持させるための非磁性の導電スリーブ、これに内包されるマグネットロールによって構成され、上記被覆磁性粒子をスリーブ上に、厚み1mmでコートして、感光体との間に幅約5mmの帯電ニップを形成した。また、該磁性粒子保持スリーブと感光体との間隙は、約500μmとした。更に、マグネットロールは、スリーブ表面が、感光体表面の周速に対して、その2倍の速さで逆方向に摺擦するように、回転され、感光体と磁気ブラシとが均一に接触するようにした。
【0170】
<露光工程及び露光手段>
前記露光工程は、帯電された電子写真感光体表面を露光する工程であり、前記露光手段により行われる。
前記露光は、例えば、前記露光手段を用いて前記電子写真感光体の表面を像様に露光することにより行うことができる。
前記露光における光学系は、アナログ光学系とディジタル光学系とに大別される。前記アナログ光学系は、原稿を光学系により直接電子写真感光体上に投影する光学系であり、前記ディジタル光学系は、画像情報が電気信号として与えられ、これを光信号に変換して電子写真感光体を露光し作像する光学系である。
前記露光手段としては、前記帯電手段により帯電された前記電子写真感光体の表面に、形成すべき像様に露光を行うことができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、複写光学系、ロッドレンズアレイ系、レーザ光学系、液晶シャッタ光学系、LED光学系、などの各種露光器が挙げられる。
なお、本発明においては、前記電子写真感光体の裏面側から像様に露光を行う光背面方式を採用してもよい。
【0171】
<現像工程及び現像手段>
前記現像工程は、前記静電潜像を、本発明の前記トナー乃至現像剤を用いて現像して可視像を形成する工程である。
前記可視像の形成は、例えば、前記静電潜像を前記トナー乃至前記現像剤を用いて現像することにより行うことができ、前記現像手段により行うことができる。
前記現像手段は、例えば、トナー乃至現像剤を用いて現像することができる限り、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、前記トナー乃至現像剤を収容し、前記静電潜像に該トナー乃至該現像剤を接触又は非接触的に付与可能な現像手段を少なくとも有するものが好適に挙げられる。
【0172】
前記現像手段は、乾式現像方式のものであってもよいし、湿式現像方式のものであってもよい。また、単色用現像手段であってもよいし、多色用現像手段であってもよく、例えば、前記トナー乃至前記現像剤を摩擦攪拌させて帯電させる攪拌器と、回転可能なマグネットローラとを有してなるもの、などが好適に挙げられる。
【0173】
前記現像手段内では、例えば、前記トナーと前記キャリアとが混合攪拌され、その際の摩擦により該トナーが帯電し、回転するマグネットローラの表面に穂立ち状態で保持され、磁気ブラシが形成される。該マグネットローラは、前記電子写真感光体近傍に配置されているため、該マグネットローラの表面に形成された前記磁気ブラシを構成する前記トナーの一部は、電気的な吸引力によって該電子写真感光体の表面に移動する。その結果、前記静電潜像が該トナーにより現像されて該電子写真感光体の表面に該トナーによる可視像が形成される。
【0174】
本発明において感光体の潜像を現像するに際しては、交互電界を印加することが好ましい。図4に示した現像器600において、現像時、現像スリーブ601には、電源602により現像バイアスとして、直流電圧に交流電圧を重畳した振動バイアス電圧が印加される。背景部電位と画像部電位は、上記振動バイアス電位の最大値と最小値の間に位置している。これによって現像部603に向きが交互に変化する交互電界が形成される。この交互電界中で現像剤のトナーとキャリアが激しく振動し、トナー605が現像スリーブ601及びキャリアへの静電的拘束力を振り切って感光体604に飛翔し、感光体の潜像に対応して付着する。なお、トナー605は、上述の本発明の製造方法で製造されたトナーである。
【0175】
振動バイアス電圧の最大値と最小値の差(ピーク間電圧)は、0.5〜5kVが好ましく、周波数は1〜10kHzが好ましい。振動バイアス電圧の波形は、矩形波、サイン波、三角波等が使用できる。振動バイアスの直流電圧成分は、上記したように背景部電位と画像部電位の間の値であるが、画像部電位よりも背景部電位に近い値である方が、背景部電位領域へのかぶりトナーの付着を防止する上で好ましい。
【0176】
振動バイアス電圧の波形が矩形波の場合、デューティ比を50%以下とすることが好ましい。ここでデューティ比とは、振動バイアスの1周期中でトナーが感光体に向かおうとする時間の割合である。このようにすることにより、トナーが感光体に向かおうとするピーク値とバイアスの時間平均値との差を大きくすることができるので、トナーの運動が更に活発化し、トナーが潜像面の電位分布に忠実に付着してざらつき感や解像力を向上させることができる。またトナーとは逆極性の電荷を有するキャリアが感光体に向かおうとするピーク値とバイアスの時間平均値との差を小さくすることができるので、キャリアの運動を沈静化し、潜像の背景部にキャリアが付着する確率を大幅に低減することができる。
【0177】
<転写工程及び転写手段>
前記転写工程は、前記可視像を記録媒体に転写する工程であり、転写手段を用いて行われる。前記転写手段としては。静電潜像担持体上の可視像を記録媒体に直接転写する転写手段と、又は中間転写体を用い、該中間転写体上に可視像を一次転写した後、該可視像を前記記録媒体上に二次転写する二次転写手段とに大別される。
前記転写は、例えば、前記可視像を転写帯電器を用いて前記静電潜像担持体を帯電することにより行うことができ、前記転写手段により行うことができる。前記転写手段としては、可視像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する一次転写手段と、該複合転写像を記録媒体上に転写する二次転写手段とを有する態様が好ましい。
【0178】
−中間転写体−
前記中間転写体としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の転写体の中から適宜選択することができ、例えば、転写ベルト、転写ローラなどが好適に挙げられる。
前記中間転写体の静止摩擦係数は、0.1〜0.6が好ましく、0.3〜0.5がより好ましい。前記中間転写体の体積抵抗は数Ωcm以上10Ωcm以下であることが好ましい。このように中間転写体の体積抵抗を数Ωcm以上10Ωcm以下とすることにより、中間転写体自身の帯電を防ぐとともに、電荷付与手段により付与された電荷が該中間転写体上に残留しにくくなるので、二次転写時の転写ムラを防止できる。また、二次転写時の転写バイアス印加を容易にすることができる。
【0179】
前記中間転写体の材質としては、特に制限はなく、公知の材料の中から目的に応じて適宜選択することができるが、以下のものが好適である。
(1)ヤング率(引張弾性率)の高い材料を単層ベルトとして用いたものであり、例えばPC(ポリカーボネート)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PAT(ポリアルキレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)とPAT(ポリアルキレンテレフタレート)とのブレンド材料、ETFE(エチレンテトラフロロエチレン共重合体)とPCとのブレンド材料、ETFEとPATとのブレンド材料、PCとPATとのブレンド材料、カーボンブラック分散の熱硬化性ポリイミドなどが挙げられる。これらヤング率の高い単層ベルトは画像形成時の応力に対する変形量が少なく、特にカラー画像形成時にリブズレが生じにくいという利点を有している。
(2)上記(1)のヤング率の高いベルトを基層とし、その外周上に表面層又は中間層を形成した2〜3層構成のベルトであり、このような2〜3層構成のベルトは単層ベルトの硬さに起因して発生するライン画像の中抜けを防止しうる性能を有している。
(3)樹脂、ゴム又はエラストマーを用いたヤング率の比較的低い弾性ベルトであり、このような弾性ベルトは、その柔らかさによりライン画像の中抜けが殆ど生じないという利点を有している。また、弾性ベルトの幅を駆動ロール及び張架ロールより大きくし、ロールより突出したベルト耳部の弾力性を利用して蛇行を防止できるので、リブや蛇行防止装置を必要とせず低コストを実現できる。
これらの中でも、前記(3)の弾性ベルトが特に好ましい。
前記弾性ベルトは、転写部においてトナー層、平滑性の悪い記録媒体に対応して変形する。つまり、局部的な凹凸に追従して弾性ベルトは変形するため、トナー層に対して過度に転写圧を高めることなく、良好な密着性が得られ、文字の中抜けが無く、平面性の悪い記録媒体に対しても均一性の優れた転写画像が得られる。
【0180】
前記弾性ベルトに用いる樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ポリカーボネート樹脂、フッ素系樹脂(ETFE,PVDF)、ポリスチレン樹脂、クロロポリスチレン樹脂、ポリ−α−メチルスチレン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体(例えば、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−アクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体(例えば、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン−α−クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体等のスチレン系樹脂(スチレン又はスチレン置換体を含む単重合体又は共重合体)、メタクリル酸メチル樹脂、メタクリル酸ブチル樹脂、アクリル酸エチル樹脂、アクリル酸ブチル樹脂、変性アクリル樹脂(例えば、シリコーン変性アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂変性アクリル樹脂、アクリル−ウレタン樹脂等)、塩化ビニル樹脂、スチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニリデン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアミド樹脂、変性ポリフェニレンオキサイド樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0181】
前記弾性ベルトに用いるゴムとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば天然ゴム、ブチルゴム、フッ素系ゴム、アクリルゴム、EPDMゴム、NBRゴム、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレンターポリマー、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ウレタンゴム、シンジオタクチック1,2−ポリブタジエン、エピクロロヒドリン系ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、多硫化ゴム、ポリノルボルネンゴム、水素化ニトリルゴムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記弾性ベルトに用いるエラストマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリウレア熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0182】
前記弾性ベルトに用いる抵抗値調節用導電剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カーボンブラック、グラファイト、アルミニウム、ニッケル等の金属粉末;酸化錫、酸化チタン、酸化アンチモン、酸化インジウム、チタン酸カリウム、酸化アンチモン−酸化錫複合酸化物(ATO)、酸化インジウム−酸化錫複合酸化物(ITO)等の導電性金属酸化物などが挙げられる。なお、前記導電性金属酸化物は、硫酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム等の絶縁性微粒子を被覆したものでもよい。
【0183】
また、前記弾性ベルトの表層は、弾性材料による静電潜像担持体への汚染防止、ベルト表面の摩擦抵抗を低減させてトナーの付着力を小さくし、クリーニング性、二次転写性を高めることができるものが好ましい。前記表層は、例えばポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等のバインダー樹脂と、表面エネルギーを小さくして潤滑性を高めることができる材料、例えばフッ素樹脂、フッ素化合物、フッ化炭素、二酸化チタン、シリコンカーバイト等の粉体又は粒子とを含有することが好ましい。また、フッ素系ゴム材料のように熱処理を行いフッ素リッチな表層を形成して、表面エネルギーを小さくしたものを使用することもできる。
【0184】
前記弾性ベルトの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、(1)回転する円筒形の型に材料を流し込みベルトを形成する遠心成型法、(2)液体塗料を噴霧して膜を形成するスプレー塗工法、(3)円筒形の型を材料の溶液中に浸けて引き上げるディッピング法、(4)内型や外型の中に注入する注型法、(5)円筒形の型にコンパウンドを巻き付けて加硫研磨を行う方法などが挙げられる。
【0185】
また、前記弾性ベルトの伸びを防止する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば(1)芯体層に伸びを防止する材料を添加する方法、(2)伸びの少ない芯体層にゴム層を形成する方法、などが挙げられる。
前記伸びを防止する材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、綿、絹等の天然繊維;ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、ポリウレタン繊維、ポリアセタール繊維、ポリフロロエチレン繊維、フェノール繊維等の合成繊維;炭素繊維、ガラス繊維、ボロン繊維等の無機繊維;鉄繊維、銅繊維等の金属繊維などが挙げられ、これら材料を織布状又は糸状としたものが好適に用いられる。
【0186】
前記芯体層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、(1)筒状に織った織布を金型等に被せ、その上に被覆層を設ける方法、(2)筒状に織った織布を液状ゴム等に浸漬して芯体層の片面又は両面に被覆層を設ける方法、(3)糸を金型等に任意のピッチで螺旋状に巻き付け、その上に被覆層を設ける方法などが挙げられる。
前記被覆層の厚みは、該被覆層の硬度にもよるが、厚すぎると表面の伸縮が大きくなり表層に亀裂が発生しやすくなる。また、伸縮量が大きくなって画像の伸びや縮みが大きくなることから厚すぎる(約1mm以上)ことは好ましくない。
【0187】
前記転写手段(前記第一次転写手段、前記第二次転写手段)は、前記静電潜像担持体上に形成された前記可視像を前記記録媒体側へ剥離帯電させる転写器を少なくとも有するのが好ましい。前記転写器は、1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。前記転写器としては、コロナ放電によるコロナ転写器、転写ベルト、転写ローラ、圧力転写ローラ、粘着転写器、などが挙げられる。
なお、記録媒体としては、代表的には普通紙であるが、現像後の未定着画像を転写可能であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、OHP用のPETベース等も用いることができる。
【0188】
<定着工程及び定着手段>
前記定着工程は、記録媒体に転写された可視像を定着手段を用いて定着させる工程である。
前記定着手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、定着部材と該定着部材を加熱する熱源とを有する定着装置が好適に用いられる。
前記定着部材としては、互いに当接してニップ部を形成可能であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、無端状ベルトとローラとの組合せ、ローラとローラとの組合せ、などが挙げられるが、ウォームアップ時間を短縮することができ、省エネルギー化の実現の点で、無端状ベルトとローラとの組合せや誘導加熱などによる前記定着部材の表面からの加熱方法を用いるのが好ましい。
前記定着部材としては、例えば、公知の加熱加圧手段(加熱手段と加圧手段との組合せ)が挙げられる。前記加熱加圧手段としては、前記無端状ベルトと前記ローラとの組合せの場合には、例えば、加熱ローラと加圧ローラと無端ベルトとの組合せが挙げられ、前記ローラと前記ローラとの組合せの場合には、例えば、加熱ローラと加圧ローラとの組合せ、などが挙げられる。
【0189】
前記定着手段は、磁性金属から構成されて電磁誘導により加熱される加熱ローラと、加熱ローラと平行に配置された定着ローラと、加熱ローラと定着ローラとに張り渡され、加熱ローラにより加熱されるとともにこれらのローラによって回転される無端帯状のトナー加熱媒体(加熱ベルト)と、加熱ベルトを介して定着ローラに圧接されるとともに、加熱ベルトに対して順方向に回転して定着ニップ部を形成する加圧ローラとを有することにより、定着ベルトの温度が短時間で上昇し、かつ安定した温度制御が可能となる。また、表面の粗い記録媒体を使用した場合にも、定着時にある程度転写紙の表面に応じた状態で定着ベルトが作用するため、十分な定着性が得られるようになる。
【0190】
前記定着手段は、オイルレスあるいはオイル微量塗布タイプであることが好ましい。これを達成するために、トナー中に離型剤(ワックス)を含有し、更にそれがトナー粒子中に微分散しているものを定着することが好ましい。離型剤がトナー粒子中に微量分散しているトナーにより、定着時に離型剤が浸み出しやすく、オイルレス定着装置において、あるいは微量オイル塗布定着装置でオイル塗布効果が少なくなってきた場合においても、トナーのベルト側への転移を抑制することができる。離型剤がトナー粒子中に分散した状態で存在するためには、離型剤と結着樹脂とは相溶しないことが好ましい。また、離型剤がトナー粒子中に微分散するためには、例えばトナー製造時の混練の剪断力を利用する方法がある。離型剤の分散状態は、トナー粒子の薄膜切片をTEMで観察することにより判断できる。前記離型剤の分散径は小さい方が好ましいが、小さすぎると定着時の染み出しが不十分な場合がある。従って、倍率1万倍で離型剤が確認できれば、離型剤が分散した状態で存在していると判断する。1万倍で離型剤が確認できない大きさでは、微分散していたとしても、定着時の染み出しが不十分な場合がある。
【0191】
本発明の画像形成方法において使用される定着装置としては、例えば図5に示した定着装置を用いることができる。図5に示す定着装置は、誘導加熱手段760の電磁誘導により加熱される加熱ローラ710と、加熱ローラ710と平行に配置された定着ローラ720(対向回転体)と、加熱ローラ710と定着ローラ720とに張り渡され、加熱ローラ710により加熱されるとともに少なくともこれらのいずれかのローラの回転により矢印A方向に回転する無端帯状の定着ベルト(耐熱性ベルト、トナー加熱媒体)730と、定着ベルト730を介して定着ローラ720に圧接されるとともに定着ベルト730に対して順方向に回転する加圧ローラ740(加圧回転体)とから構成されている。
【0192】
加熱ローラ710は、例えば鉄、コバルト、ニッケル又はこれら金属の合金等の中空円筒状の磁性金属部材からなり、外径を例えば20mm〜40mm、肉厚を例えば0.3mm〜1.0mmとして、低熱容量で昇温の早い構成となっている。
定着ローラ720(対向回転体)は、例えばステンレススチール等の金属製の芯金721と、耐熱性を有するシリコーンゴムをソリッド状又は発泡状にして芯金721を被覆した弾性部材722とからなる。そして、加圧ローラ740からの押圧力でこの加圧ローラ740と定着ローラ720との間に所定幅の接触部を形成するために外径を20mm〜40mm程度として加熱ローラ710より大きくしている。弾性部材722は、その肉厚を4〜6mm程度としている。この構成により、加熱ローラ710の熱容量は定着ローラ720の熱容量より小さくなるので、加熱ローラ710が急激に加熱されてウォームアップ時間が短縮される。
【0193】
加熱ローラ710と定着ローラ720とに張り渡された定着ベルト730は、誘導加熱手段760により加熱される加熱ローラ710との接触部位W1で加熱される。そして、加熱ローラ710と定着ローラ720の回転によって定着ベルト730の内面が連続的に加熱され、結果としてベルト全体に渡って加熱される。
【0194】
図6に定着ベルト730の層構成を示す。ベルト730の構成は、内層から表層に向かって基体731と、発熱層732と、中間層733と、離型層734とを有している。
前記基体731としては、例えばポリイミド(PI)樹脂などの樹脂層からなるものが好ましい。前記発熱層732としては、例えばNi、Ag、SUS等の導電材料層である。前記中間層733としては、均一定着のための弾性層である。前記離型層734としては、離型効果とオイルレス化のための弗素樹脂材料等の樹脂層である。
【0195】
前記離型層734の厚みとしては、10μm〜300μmが好ましく、200μm程度が特に好ましい。このようにすれば、図5に示すような定着装置700において、記録媒体770上に形成されたトナー像(T)を定着ベルト730の表層部が十分に包み込むため、トナー像(T)を均一に加熱溶融することが可能になる。離型層734の厚み、即ち表面離型層は経時耐磨耗性を確保するためには最低10μmであることが好ましい。また、離型層734の厚みが300μmよりも大きい場合には、定着ベルト730の熱容量が大きくなってウォームアップにかかる時間が長くなる。更に、トナー像定着工程において定着ベルト730の表面温度が低下しにくくなって、定着部出口における融解したトナーの凝集効果が得られず、定着ベルト730の離型性が低下してトナー像Tのトナーが定着ベルト730に付着し、いわゆるホットオフセットが発生する。なお、定着ベルト730の基体として、上記金属からなる発熱層732としてもよいが、フッ素系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、PEEK樹脂、PES樹脂、PPS樹脂などの耐熱性を有する樹脂層を用いてもよい。
【0196】
加圧ローラ740は、例えば銅又はアルミ等の熱伝導性の高い金属製の円筒部材からなる芯金741と、この芯金741の表面に設けられた耐熱性及びトナー離型性の高い弾性部材742とから構成されている。芯金741には上記金属以外にSUSを使用してもよい。加圧ローラ740は定着ベルト730を介して定着ローラ720を押圧して定着ニップ部(N)を形成しているが、本実施の形態では、加圧ローラ740の硬度を定着ローラ720に比べて硬くすることによって、加圧ローラ740が定着ローラ720(及び定着ベルト730)へ食い込む形となり、この食い込みにより、記録媒体770は加圧ローラ740表面の円周形状に沿うため、記録媒体770が定着ベルト730表面から離れやすくなる効果を持たせている。この加圧ローラ740の外径は定着ローラ720と同じ20mm〜40mm程度であるが、肉圧は0.5mm〜2.0mm程度で定着ローラ720より薄く構成されている。
【0197】
電磁誘導により加熱ローラ710を加熱する誘導加熱手段760は、図5に示すように、磁界発生手段である励磁コイル761と、この励磁コイル761が巻き回されたコイルガイド板762とを有している。コイルガイド板762は加熱ローラ710の外周面に近接配置された半円筒形状をしており、励磁コイル761は長い一本の励磁コイル線材をこのコイルガイド板762に沿って加熱ローラ710の軸方向に交互に巻き付けたものである。なお、励磁コイル761は、発振回路が周波数可変の駆動電源(不図示)に接続されている。励磁コイル761の外側には、フェライト等の強磁性体よりなる半円筒形状の励磁コイルコア763が、励磁コイルコア支持部材764に固定されて励磁コイル761に近接配置されている。
【0198】
<クリーニング工程及びクリーニング手段>
前記クリーニング工程は、前記静電潜像担持体上に残留するトナーを除去する工程であり、クリーニング手段により好適に行うことができる。
【0199】
前記クリーニング手段としては、特に制限はなく、前記静電潜像担持体上に残留するトナーを除去することができればよく、公知のクリーナの中から適宜選択することができ、例えば、磁気ブラシクリーナ、静電ブラシクリーナ、磁気ローラクリーナ、クリーニングブレード、ブラシクリーナ、ウエブクリーナなどが挙げられる。これらの中でも、トナー除去能力が高く、小型で安価であるクリーニングブレードが特に好ましい。
前記クリーニングブレードに用いられるゴムブレードの材質としては、例えば、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、クロロプレンゴム、ブタジエンゴム、等が挙げられ、これらの中でも、ウレタンゴムが特に好ましい。
【0200】
<その他の工程及びその他の手段>
前記除電工程は、前記静電潜像担持体に対し除電バイアスを印加して除電を行う工程であり、除電手段により好適に行うことができる。
前記除電手段としては、特に制限はなく、前記静電潜像担持体に対し除電バイアスを印加することができればよく、公知の除電器の中から適宜選択することができ、例えば、除電ランプ等が好適に挙げられる。
【0201】
前記リサイクル工程は、前記クリーニング工程により除去した前記電子写真トナーを前記現像手段にリサイクルさせる工程であり、リサイクル手段により好適に行うことができる。前記リサイクル手段としては、特に制限はなく、公知の搬送手段等が挙げられる。
【0202】
前記制御工程は、前記各工程を制御する工程であり、制御手段により好適に行うことができる。
前記制御手段としては、前記各手段の動きを制御することができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の機器が挙げられる。
【0203】
次に、本発明の画像形成装置により本発明の画像形成方法を実施する一の態様について、図面を参照して説明する。
図8及び図9に示したタンデム方式の画像形成装置100を用いることができる。図8において、画像形成装置100は電子写真方式によるカラー画像形成を行うための画像書込部(120Bk,120C,120M,120Y)、画像形成部(130Bk,130C,130M,130Y)、給紙部140から主に構成されている。画像信号を元に、画像処理部(図示せず)で画像処理を行い、画像形成用の黒(Bk),シアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y)の各色信号に変換し、画像書込部(120Bk,120C,120M,120Y)に送信する。画像書込部(120Bk,120C,120M,120Y)は、例えば、レーザ光源、回転多面鏡等の偏光器、走査結像光学系及びミラー群(いずれも図示せず)からなるレーザ走査光学系であり、上記の各色信号に対応した4つの書込光路を有し、画像形成部(130Bk,130C,130M,130Y)に各色信号に応じた画像書込を行う。
【0204】
画像形成部(130Bk,130C,130M,130Y)は、黒,シアン,マゼンタ,イエロー用の各感光体(210Bk,210C,210M,210Y)を備え、これらの各色用の感光体(210Bk,210C,210M,210Y)には、通常有機感光体(OPC)が用いられる。各感光体(210Bk,210C,210M,210Y)の周囲には、帯電装置(215Bk,215C,215M,215Y)、上記画像書込部(120Bk,120C,120M,120Y)からのレーザ光の露光部、各色用の現像装置(200Bk,200C,200M,200Y)、1次転写装置(230Bk,230C,230M,230Y)、クリーニング装置(300Bk,300C,300M,300Y)、除電装置(図示せず)等が配設されている。なお、上記現像装置(200Bk,200C,200M,200Y)には、2成分磁気ブラシ現像方式を用いている。また、中間転写ベルト(220)が各感光体(210Bk,210C,210M,210Y)と1次転写装置(230Bk,230C,230M,230Y)との間に介在し、この中間転写ベルト220に各感光体から各色のトナー像が順次重ね合わせて転写され、各感光体上のトナー像を担持する。
【0205】
中間転写ベルト220は、単層の樹脂層であることが好ましいが、必要に応じて、弾性層、表層を有していてもよい。
【0206】
場合によっては、この中間転写ベルト220の外側で、最終色の1次転写位置通過後で2次転写位置通過前の位置に転写前帯電手段としてのプレ転写チャージャ502が配設されるのが好ましい。このプレ転写チャージャ502は、上記1次転写部で感光体210に転写された中間転写ベルト220上のトナー像を記録媒体としての転写紙に転写する前に、トナー像をトナー像と同極性に均一に帯電するものである。
【0207】
各感光体(210Bk,210C,210M,210Y)から転写された中間転写ベルト220上のトナー像は、ハーフトーン部及びベタ部を含んでいたりトナーの重ね合せ量が異なる部分を含んでいたりするため、帯電量がばらついている場合がある。また、中間転写ベルト移動方向における1次転写部の隣接下流側の空隙に発生する剥離放電により、1次転写後の中間転写ベルト220上のトナー像内に帯電量のばらつきが発生する場合もある。このような同一トナー像内の帯電量のばらつきは中間転写ベルト220上のトナー像を転写紙に転写する2次転写部における転写余裕度を低下させてしまう。そこで、プレ転写チャージャで転写紙へ転写する前のトナー像をトナー像と同極性に均一に帯電することにより、同一トナー像内の帯電量のばらつきを解消し、2次転写部における転写余裕度を向上させている。
【0208】
以上、この画像形成方法によれば、各感光体(210Bk,210C,210M,210Y)から転写した中間転写ベルト220上のトナー像をプレ転写チャージャ502で均一に帯電することにより、中間転写ベルト220上のトナー像内に帯電量のばらつきがあっても、2次転写部における転写特性を、中間転写ベルト220上のトナー像の各部に渡ってほぼ一定にすることができる。従って、転写紙へ転写する時の転写余裕度の低下を抑え、トナー像を安定して転写できる。
【0209】
なお、この画像形成方法において、プレ転写チャージャで帯電される帯電量は、帯電対象物である中間転写ベルト220の移動速度に依存して変化する。例えば、中間転写ベルト220の移動速度が遅ければ、中間転写ベルト220上のトナー像の同一部分がプレ転写チャージャによる帯電領域を通過する時間が長くなるので、帯電量が大きくなる。逆に、中間転写ベルト220の移動速度が速いと、中間転写ベルト220上のトナー像の帯電量が小さくなる。従って、中間転写ベルト220上のトナー像がプレ転写チャージャによる帯電位置を通過している途中に中間転写ベルト220の移動速度が変化するような場合には、その中間転写ベルト220の移動速度に応じて、トナー像に対する帯電量が途中で変化しないようにプレ転写チャージャを制御することが好ましい。
【0210】
1次転写装置(230Bk,230C,230M,230Y)の間に導電性ローラ(241),(242),(243)が設けられている。そして、転写紙は給紙部140から給紙された後、レジストローラ対160を介して転写ベルト180に担持され、中間転写ベルト220と転写ベルト180が接触するところで2次転写ローラ170により中間転写ベルト220上のトナー像が転写紙に転写され、カラー画像形成が行われる。
【0211】
そして、画像形成後の転写紙は2次転写ベルト180で定着装置150に搬送され、画像が定着されてカラー画像が得られる。転写されずに残った中間転写ベルト220上のトナーは、中間転写ベルトクリーニング装置260によってベルトから除去される。
【0212】
転写紙への転写前の中間転写ベルト220上のトナー極性は、現像時と同じマイナス極性であるため、2次転写ローラ170にはプラスの転写バイアス電圧が印加され、トナーは転写紙上に転写される。この部分でのニップ圧が転写性に影響し、定着性に大きく影響する。また、転写されずに残った中間転写ベルト220上のトナーは、転写紙と中間転写ベルト220とが離れる瞬間にプラス極性側に放電帯電され、0〜プラス側に帯電される。なお、転写紙のジャム時や非画像域に形成されたトナー像は、2次転写の影響を受けないため、もちろんマイナス極性のままである。
【0213】
感光体層の厚みを30μmとし、光学系のビームスポット径を50μm×60μm、光量を0.47mWとしている。感光体(黒)210Bkの帯電(露光側)電位V0を−700V、露光後電位VLを−120Vとして現像バイアス電圧を−470V即ち現像ポテンシャル350Vとして現像工程が行われるものである。感光体(黒)210Bk上に形成されたトナー(黒)の顕像はその後、転写(中間転写ベルト及び転写紙)、定着工程を経て画像として完成される。転写は最初、1次転写装置(230Bk、230C、230M、230Y)から中間転写ベルト220へ全色転写された後、更に別の2次転写ローラ170へのバイアス印加により転写紙へ転写される。
【0214】
次に、感光体クリーニング装置について詳細に説明する。図8において、各現像装置(200Bk,200C,200M,200Y)と各クリーニング装置(300Bk,300C,300M,300Y)とは、各々トナー移送管(250Bk,250C,250M,250Y)で接続されている(図8中の破線)。そして、各トナー移送管(250Bk,250C,250M,250Y)の内部には、スクリュー(不図示)が入っており、各クリーニング装置(300Bk,300C,300M,300Y)で回収されたトナーが、各現像装置(200Bk,200C,200M,200Y)へ移送されるようになっている。
【0215】
従来の4つの感光体ドラムとベルト搬送との組合わせによる直接転写方式では、感光体と転写紙が当接することにより紙粉が付着しトナーを回収すると紙粉が含有しているので、画像形成時にトナー抜け等の画像劣化をきたし使用することができなかった。更に、従来の1つの感光体ドラムと中間転写とを組合わせたシステムでは、中間転写体の採用で転写紙転写時の感光体への紙粉付着はなくなったが、感光体への残トナーのリサイクルを行おうした場合、混色したトナーを分離することは実用上不可能である。また、混色トナーを黒トナーとして使用する提案があるが、全色混合しても黒にならず、プリントモードにより色が変化するため1つの感光体の構成ではトナーリサイクルは不可能であった。
【0216】
これに対して、このフルカラー画像形成装置では、中間転写ベルト220を使用するので紙粉の混入が少なく、かつ、紙転写時の中間転写ベルト220への紙粉の付着も防止される。各感光体(210Bk,210C,210M,210Y)が独立した色のトナーを使用するので各感光体クリーニング装置(300Bk,300C,300M,300Y)を接離する必要もなく、確実にトナーのみを回収することができる。
【0217】
前記中間転写ベルト220上に残ったプラス帯電されたトナーは、マイナス電圧が印加された導電性ファーブラシ262でクリーニングされる。導電性ファーブラシ262への電圧印加方法は、導電性ファーブラシ261と極性が異なるだけで全く同一である。転写されずに残ったトナーも2つの導電性ファーブラシ261,262でほとんどクリーニングされる。ここで、導電性ファーブラシ262でクリーニングされずに残ったトナー、紙粉、タルク等は、導電性ファーブラシ262のマイナス電圧により、マイナス帯電される。次の黒色の1次転写は、プラス電圧による転写であり、マイナス帯電したトナー等は中間転写ベルト220側に引き寄せられるため、感光体(黒)210Bk側への移行は防止できる。
【0218】
図9は、本発明の画像形成方法において使用される画像形成装置の他の一例を示すもので、タンデム型間接転写方式の電子写真式の画像形成装置を備えた複写装置100である。図9中110は、複写装置本体、200はそれを載せる給紙テーブル、300は複写装置本体110上に取り付けるスキャナ、400は更にその上に取り付ける原稿自動搬送装置(ADF)である。複写装置本体110には、中央に、無端ベルト状の中間転写体50を設ける。
【0219】
そして、図9に示すとおり、この例では3つの支持ローラ14、15、16に掛け回して図中時計回りに回転搬送可能とする。この図示例では、3つのなかで第2の支持ローラ15の左に、画像転写後に中間転写体50上に残留する残留トナーを除去する中間転写体クリーニング装置17を設ける。また、3つのなかで第1の支持ローラ14と第2の支持ローラ15間に張り渡した中間転写体50上には、その搬送方向に沿って、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの4つの画像形成手段18を横に並べて配置してタンデム画像形成装置120を構成する。
【0220】
このタンデム画像形成装置120の上には、図9に示すように、更に露光装置21を設ける。一方、中間転写体50を挟んでタンデム画像形成装置120と反対の側には、2次転写装置22を備える。2次転写装置22は、図示例では、2つのローラ23間に、無端ベルトである2次転写ベルト24を掛け渡して構成し、中間転写体50を介して第3の支持ローラ16に押し当てて配置し、中間転写体50上の画像をシートに転写する。2次転写装置22の横には、シート上の転写画像を定着する定着装置25を設ける。定着装置25は、無端ベルトである定着ベルト26に加圧ローラ27を押し当てて構成する。上述した2次転写装置22には、画像転写後のシートをこの定着装置25へと搬送するシート搬送機能も備えてなる。もちろん、2次転写装置22として、転写ローラや非接触のチャージャを配置してもよく、そのような場合はこのシート搬送機能を併せて備えることは難しくなる。なお、図示例では、このような2次転写装置22及び定着装置25の下に、上述したタンデム画像形成装置120と平行に、シートの両面に画像を記録すべくシートを反転するシート反転装置28を備える。
【0221】
さて、いまこのカラー電子写真方式の画像形成装置を用いてコピーをとるときは、原稿自動搬送装置400の原稿台130上に原稿をセットする。又は、原稿自動搬送装置400を開いてスキャナ300のコンタクトガラス32上に原稿をセットし、原稿自動搬送装置400を閉じてそれで押さえる。
【0222】
そして、不図示のスタートスイッチを押すと、原稿自動搬送装置400に原稿をセットしたときは、原稿を搬送してコンタクトガラス32上へと移動して後、他方コンタクトガラス32上に原稿をセットしたときは、直ちにスキャナ300を駆動し、第1走行体33及び第2走行体34を走行する。そして、第1走行体33で光源から光を発射するとともに原稿面からの反射光を更に反射して第2走行体34に向け、第2走行体34のミラーで反射して結像レンズ35を通して読取りセンサ36に入れ、原稿内容を読み取る。
【0223】
また、不図示のスタートスイッチを押すと、不図示の駆動モータで支持ローラ14、15、16の1つを回転駆動して他の2つの支持ローラを従動回転し、中間転写体50を回転搬送する。同時に、個々の画像形成手段18でその感光体10を回転して各感光体10上にそれぞれ、ブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの単色画像を形成する。そして、中間転写体50の搬送とともに、それらの単色画像を順次転写して中間転写体50上に合成カラー画像を形成する。
【0224】
一方、不図示のスタートスイッチを押すと、給紙テーブル200の給紙ローラ142の1つを選択回転し、ペーパーバンク143に多段に備える給紙カセット144の1つからシートを繰り出し、分離ローラ145で1枚ずつ分離して給紙路146に入れ、搬送ローラ147で搬送して複写機本体100内の給紙路148に導き、レジストローラ49に突き当てて止める。
【0225】
又は、給紙ローラを回転して手差しトレイ51上のシートを繰り出し、分離ローラ58で1枚ずつ分離して手差し給紙路53に入れ、同じくレジストローラ49に突き当てて止める。
【0226】
そして、中間転写体50上の合成カラー画像にタイミングを合わせてレジストローラ49を回転し、中間転写体50と2次転写装置22との間にシートを送り込み、2次転写装置22で転写してシート上にカラー画像を記録する。
【0227】
画像転写後のシートは、2次転写装置22で搬送して定着装置25へと送り込み、定着装置25で熱と圧力とを加えて転写画像を定着して後、切換爪55で切り換えて排出ローラ56で排出し、排紙トレイ57上にスタックする。又は、切換爪55で切り換えてシート反転装置28に入れ、そこで反転して再び転写位置へと導き、裏面にも画像を記録して後、排出ローラ56で排紙トレイ57上に排出する。
【0228】
一方、画像転写後の中間転写体50は、中間転写体クリーニング装置17で、画像転写後に中間転写体50上に残留する残留トナーを除去し、タンデム画像形成装置120による再度の画像形成に備える。ここで、レジストローラ49は一般的には接地されて使用されることが多いが、シートの紙粉除去のためにバイアスを印加することも可能である。
【0229】
(プロセスカートリッジ)
本発明のプロセスカートリッジは、静電潜像を担持する電子写真感光体と、該電子写真感光体上に担持された静電潜像を、トナーを用いて現像し可視像を形成する現像手段とを、少なくとも有してなり、更に必要に応じて適宜選択した、帯電手段、露光手段、転写手段、クリーニング手段、除電手段などのその他の手段を有してなる。
前記トナーとして、本発明の前記トナーを用いる。
【0230】
前記現像手段としては、前記トナー乃至前記現像剤を収容する現像剤収容器と、該現像剤収容器内に収容されたトナー乃至現像剤を担持しかつ搬送する現像剤担持体とを、少なくとも有してなり、更に、現像剤担持体に担持させるトナー層厚を規制するための層厚規制部材等を有していてもよい。具体的には、上記画像形成装置及び画像形成方法で説明した一成分現像手段、及び二成分現像手段のいずれかを好適に用いることができる。
また、前記帯電手段、露光手段、転写手段、クリーニング手段、及び除電手段としては、上述した画像形成装置と同様なものを適宜選択して用いることができる。
前記プロセスカートリッジは、各種電子写真方式の画像形成装置、ファクシミリ、プリンターに着脱可能に備えさせることができ、本発明の前記画像形成装置に着脱可能に備えさせるのが特に好ましい。
【0231】
ここで、本発明のプロセスカートリッジの一例を図7に示す。この図7に示したプロセスカートリッジ800は、感光体801、帯電手段802、現像手段803、及びクリーニング手段806を備えている。このプロセスカートリッジ800の動作を説明すると、感光体801が所定の周速度で回転駆動される。感光体801は回転過程において、帯電手段802によりその周面に正又は負の所定電位の均一帯電を受け、次いで、スリット露光やレーザービーム走査露光等の不図示の像露光手段からの画像露光光を受け、こうして感光体801の周面に静電潜像が順次形成され、形成された静電潜像は、次いで、現像手段802によりトナー像化され、現像されたトナー像は、給紙部から感光体801との転写手段(不図示)との間に感光体801の回転と同期されて給送された記録媒体に、転写手段により順次転写されていく。像転写を受けた記録媒体は感光体面から分離されて不図示の像定着手段へ導入されて像定着され、複写物(コピー)として装置外へプリントアウトされる。像転写後の感光体801の表面は、クリーニング手段806によって転写残りトナーの除去を受けて清浄面化され、更除電された後、繰り返し画像形成に使用される。
【実施例】
【0232】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0233】
(実施例1)
<トナーの製造>
−未変性ポリエステル(低分子量ポリエステル)の合成−
冷却管、攪拌機、及び窒素導入管の付いた反応槽内に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物67質量部、ビスフェノールAプロピオンオキサイド3モル付加物84質量部、テレフタル酸274質量部、及びジブチルチンオキサイド2質量部を投入し、常圧下、230℃にて8時間反応させた。次いで、該反応液を10〜15mmHgの減圧下にて5時間反応させて、未変性ポリエステルを合成した。
得られた未変性ポリエステルは、数平均分子量(Mn)が2,100、重量平均分子量(Mw)が5,600、ガラス転移温度(Tg)が55℃であった。
【0234】
−マスターバッチ(MB)の調製−
水1,000質量部、及びカーボンブラック(「Printex35」;デグサ社製、DBP吸油量=42ml/100g、pH=9.5)540質量部、及び前記未変性ポリエステル1,200質量部を、ヘンシェルミキサー(三井鉱山株式会社製)を用いて混合した。該混合物を二本ロールで150℃にて30分混練した後、圧延冷却し、パルペライザー(ホソカワミクロン株式会社製)で粉砕して、マスターバッチを調製した。
【0235】
−プレポリマーの合成−
冷却管、撹拌機、及び窒素導入管の付いた反応容器内に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物682質量部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物81質量部、テレフタル酸283質量部、無水トリメリット酸22質量部、及びジブチルチンオキサイド2質量部を仕込み、常圧下で、230℃にて8時間反応させた。次いで、10〜15mHgの減圧下で、5時間反応させて、中間体ポリエステルを合成した。得られた中間体ポリエステルは、数平均分子量(Mn)が2,100、重量平均分子量(Mw)が9,600、ガラス転移温度(Tg)が55℃、酸価が0.5mgKOH/g、水酸基価が49mgKOH/gであった。
次に、冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器内に、前記中間体ポリエステル411質量部、イソホロンジイソシアネート89質量部、及び酢酸エチル500質量部を仕込み、100℃にて5時間反応させて、プレポリマー(前記活性水素基含有化合物と反応可能な重合体)を合成した。
得られたプレポリマーの遊離イソシアネート含有量は、1.60質量%であり、プレポリマーの固形分濃度(150℃、45分間放置後)は50質量%であった。
【0236】
−アクリル樹脂微粒子の調製−
撹拌棒、及び温度計をセットした反応容器内に、水683質量部、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム(カチオンDS、花王製)10質量部、スチレン136質量部、メタクリル酸メチル136質量部、エチレングリコールジメタクリレート2質量部、及び過硫酸アンモニウム1質量部を仕込み、400回転/分で15分間撹拌したところ、白色の乳濁液が得られた。加熱して、系内温度65℃まで昇温し10時間反応させた。更に、1%過硫酸アンモニウム水溶液30質量部を加え、75℃で5時間熟成してアクリル樹脂(スチレン−メタクリル酸メチル)微粒子の水性分散液〔アクリル樹脂微粒子分散液〕を得た。
得られた〔アクリル樹脂微粒子分散液〕の分散粒子の体積平均粒径を粒度分布測定器(堀場製作所製、LA−920で測定)は、80nmであり、Tgは105℃であった。
【0237】
−樹脂微粒子の調製−
撹拌棒、及び温度計をセットした反応容器内に、水683質量部、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩(エレミノールRS−30、三洋化成工業製)16質量部、スチレン83質量部、メタクリル酸83質量部、アクリル酸ブチル110質量部、過硫酸アンモニウム1質量部を仕込み、400回転/分で15分間撹拌したところ、白色の乳濁液が得られた。加熱して、系内温度75℃まで昇温し5時間反応させた。更に、1質量%過硫酸アンモニウム水溶液30質量部を加え、75℃で5時間熟成してビニル系樹脂(スチレン−メタクリル酸−アクリル酸ブチル−メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)の水性分散液[樹脂微粒子分散液]を得た。
得られた[樹脂微粒子分散液]の分散粒子の体積平均粒径(堀場製作所製 LA−920で測定)は、42nmであった。
【0238】
−溶解乃至分散液の調製−
ビーカー内に前記未変性ポリエステル100質量部、及び酢酸エチル130質量部を、攪拌し溶解させた。次いで、カルナウバワックス(分子量=1,800、酸価=2.5mgKOH/g、針入度=1.5mm(40℃))10質量部、前記マスターバッチ10質量部、及び、ステアリン酸(炭素数18の飽和脂肪酸)5質量部を仕込み、ビーズミル(「ウルトラビスコミル」;アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/hr、ディスク周速度6m/s、及び0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填した条件で3パスして原料溶解液を調製し、前記プレポリマーを40質量部添加し、攪拌した後、溶解乃至分散液を調製した。
【0239】
−水系媒体相の調製−
水660質量部、前記樹脂微粒子分散液1.25質量部、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの48.5質量%の水溶液(「エレミノールMON−7」;三洋化成工業製)25質量部、及び酢酸エチル60質量部を混合撹拌し、乳白色の液体(水相)を得た。さらに、前記アクリル樹脂微粒子分散液を50質量部加えた。光学顕微鏡で観察すると数百μmの凝集体が見られた。本水系媒体相をTK式ホモミキサー(特殊機化工業社製)を用い、回転数8,000rpmで攪拌すると該凝集体がほぐれ、数μmの小凝集体に分散できることを光学顕微鏡によって確認した。したがって、この後行われるトナー材料の乳化工程においてもアクリル樹脂微粒子は分散してトナー材料成分の液滴に付着することが期待できた。このようにアクリル樹脂微粒子は凝集を生じるが、せん断によってほぐれることがトナー表面に均一に付着させる上で重要である。
【0240】
−乳化乃至分散液の調製−
前記水系媒体相150質量部を容器に入れ、TK式ホモミキサー(特殊機化工業社製)を用い、12,000rpmの回転数で攪拌し、これに前記溶解乃至分散液100質量部を添加し、10分間混合して乳化乃至分散液(乳化スラリー)を調製した。
【0241】
−有機溶媒の除去−
脱気用配管、攪拌機及び温度計をセットしたフラスコに、前記乳化スラリー100質量部を仕込み、攪拌周速20m/分で攪拌しながら30℃にて12時間減圧下、脱溶剤し脱溶剤スラリーとした。
【0242】
−洗浄及び乾燥−
前記脱溶剤スラリー全量を減圧濾過した後、濾過ケーキにイオン交換水300質量部を添加し、TK式ホモミキサーで混合、再分散(回転数12,000rpmにて10分間)した後濾過した。得られた濾過ケーキにイオン交換水300質量部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12,000rpmにて10分間)した後濾過する操作を3回行った。得られた濾過ケーキを順風乾燥機にて45℃で48時間乾燥し、目開き75μmメッシュで篩い、トナー母体粒子を得た。
【0243】
−外添処理−
トナー母体粒子aを100質量部に対して、平均粒径100nmの疎水性シリカ0.6質量部と、平均粒径20nmの酸化チタン1.0質量部と、平均粒径15nmの疎水性シリカ微粉体を0.8質量部とをヘンシェルミキサーにて混合し、トナーを得た。
【0244】
(実施例2)
実施例1において、ステアリン酸をカプリン酸に変更した以外は、実施例1と同様にトナーを作製した。トナーに用いたカプリン酸は、炭素数10個の飽和脂肪酸である。可塑効果は実施例1よりも優れており、耐熱保存性、耐キャリア汚染性双方とも実使用上問題無いレベルであった。
【0245】
(実施例3)
実施例1において、ステアリン酸をラウリン酸に変更した以外は、実施例1と同様にトナーを作製した。トナーに用いたラウリン酸は、炭素数12個の飽和脂肪酸である。可塑効果は実施例1よりも優れており、耐熱保存性、耐キャリア汚染性双方とも実使用上問題無いレベルであった。
【0246】
(実施例4)
実施例1において、ステアリン酸をパルミチン酸に変更した以外は、実施例1と同様にトナーを作製した。トナーに用いたパルミチン酸は、炭素数16個の飽和脂肪酸である。可塑効果は実施例1と同等レベルであり、耐熱保存性、耐キャリア汚染性双方とも実使用上問題無いレベルであった。
【0247】
(実施例5)
実施例1において、ステアリン酸をオレイン酸に変更した以外は、実施例1と同様にトナーを作製した。トナーに用いたオレイン酸は、炭素数18個で、二重結合を1つ有する脂肪酸である。可塑効果は実施例1よりも優れており、耐熱保存性、耐キャリア汚染性双方とも実使用上問題無いレベルであった。
【0248】
(実施例6)
実施例1において、ステアリン酸をリノール酸に変更した以外は、実施例1と同様にトナーを作製した。トナーに用いたリノール酸は、炭素数18個で、二重結合を2つ有する脂肪酸である。可塑効果は実施例1よりも優れており、耐熱保存性、耐キャリア汚染性双方とも実使用上問題無いレベルであった。
【0249】
(実施例7)
実施例1において、ステアリン酸をエルカ酸に変更した以外は、実施例1と同様にトナーを作製した。トナーに用いたエルカ酸は、炭素数22個で、二重結合を1つ有する脂肪酸である。可塑効果は実施例1と同等レベルであり、耐熱保存性、耐キャリア汚染性双方とも実使用上問題無いレベルであった。
【0250】
(実施例8)
実施例1において、ステアリン酸をカプリル酸に変更した以外は、実施例1と同様にトナーを作製した。トナーに用いたカプリル酸は、炭素数8個の飽和脂肪酸である。可塑効果は実施例1よりも優れており、耐熱保存性、耐キャリア汚染性双方とも実使用上問題無いレベルであった。
【0251】
(実施例9)
実施例3において、ラウリン酸の添加量を1%に減量した以外は、実施例3と同様にトナーを作製した。可塑効果は実施例3よりも劣るが、所望の低温定着化を達成できるレベルであった。耐熱保存性、耐キャリア汚染性双方とも実使用上問題無いレベルであった。
【0252】
(実施例10)
実施例3において、ラウリン酸の添加量を20%に増量した以外は、実施例3と同様にトナーを作製した。可塑効果は実施例3よりも優れており、耐熱保存性及び耐キャリア汚染性においては、若干劣る結果であったが、実使用上問題無いレベルであった。
【0253】
(比較例1)
実施例1において、ステアリン酸を吉草酸(炭素数4個の飽和脂肪酸)に変更した以外は、実施例1と同様にトナーを作製した。可塑効果は発現したが、水相側への抜け出しが顕著であり、改善が見込めなかった。
【0254】
(比較例2)
実施例1において、ステアリン酸をモンタン酸に変更した以外は、実施例1と同様にトナーを作製した。トナーに用いたモンタン酸は、炭素数30個の飽和脂肪酸である。可塑効果は発現したが、酢酸エチルに溶解せず、トナー中に取り込むためには分散剤の使用が必要であり、その分散剤が定着下限温度への悪化をもたらすことから、低温定着化の達成は見込めなかった。
【0255】
(比較例3)
実施例1において、ステアリン酸を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にトナーを作製した。可塑効果が発現しないため、低温定着化の達成が困難であり、改善が見込めなかった。
【0256】
実施例1〜10及び比較例1〜3で得られた結着樹脂の物性を表1に示す。
【表1】

【0257】
実施例1〜10及び比較例1〜3で得られたトナーの物性を表2に示す。
【表2】

【0258】
(製造例1)
<キャリアの作製>
下記キャリア処方をホモミキサーで10分間分散し、アルミナ粒子を含むアクリル樹脂及びシリコーン樹脂の被覆膜形成溶液を調製した。
−キャリア処方−
・アクリル樹脂溶液(固形分50質量%)・・・21.0質量部
・グアナミン溶液(固形分70質量%)・・・6.4質量部
・アルミナ粒子(粒径0.3μm、固有抵抗1014(Ω・cm))・・・7.6質量部
・シリコーン樹脂溶液(固形分23質量%、SR2410、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)・・・65.0質量部
・アミノシラン(固形分100wt%、SH6020、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)・・・1.0質量部
・トルエン・・・60質量部
・ブチルセロソルブ・・・60質量部
【0259】
次に、芯材として焼成フェライト粉[(MgO)1.8(MnO)49.5(Fe2348.0、平均粒径25μm]を用い、該芯材表面に上記被覆膜形成溶液を膜厚が0.15μmになるようにスピラコーター(岡田精工社株式会社製)により塗布し、乾燥させて、被覆フェライト粉を得た。得られた被覆フェライト粉を電気炉中にて150℃で1時間放置して焼成した。冷却後フェライト粉バルクを目開き106μmの篩を用いて解砕し、重量平均粒径35μmのキャリアを作製した。
前記被覆膜の膜厚は、透過型電子顕微鏡にてキャリア断面を観察することにより、キャリア表面を覆う被覆膜を観察することができるため、その膜厚の平均値をもって膜厚とした。
【0260】
(製造例2)
<2成分系現像剤の作製>
前記実施例1〜10及び比較例1〜3で得られたトナーと上記キャリアを用い、キャリア100質量部に対しトナー7質量部を容器が転動して攪拌される型式のターブラミキサーを用いて均一混合し、帯電させて二成分系現像剤を作製した。
【0261】
次に、作製したトナー及び二成分現像剤を用いて、以下のようにして、低温定着性、耐熱保存性、及びTEM観察による表面配置を評価した。結果を表3に示す。
【0262】
<低温定着性>
定着性リコー製imagioNeo450を用いて、普通紙及び厚紙の転写紙(リコー製タイプ6200及びNBSリコー製複写印刷用紙<135>)にベタ画像で、1.0±0.1mg/cmのトナーが現像される様に調整を行ない、定着ベルトの温度が可変となる様に調整を行なって、普通紙でオフセットの発生しない下限温度を測定し低温定着性を評価した。その際、脂肪酸を添加しないトナーの定着下限温度に対して、脂肪酸を添加することで定着下限温度が何℃低下したかで評価した。
評価基準は、下記の通りである。
○・・・定着下限温度が10℃以上低下
△・・・定着下限温度が5℃以上10℃未満低下
×・・・定着下限温度が0℃以上5℃未満低下
【0263】
<耐熱保存性>
トナーを温度40℃・湿度70%の環境下に2週間放置した後、前記トナーを75メッシュの篩にかけ、所定の振動を加えた後、篩上に残った凝集トナー量を測定した。
評価基準は、評価基準は、下記の通りである。
○・・・凝集トナー量が0.5mg未満
△・・・凝集トナー量が0.5mg以上1.0mg未満
×・・・凝集トナー量が1.0mg以上
【0264】
<耐キャリア汚染性(耐スペント性)>
富士ゼロックス社製のDocuColor
8000 Digital Pressを改造して、線速及び転写時間を調整可能にチューニングした評価機を用い、各現像剤について、A4サイズ、トナー付着量0.6mg/cmのベタパターンをテスト画像として100,000枚のランニング試験を実施した。耐キャリア汚染性の代用指標として1000枚ごとに現像剤を一部サンプリングしてブローオフ法により帯電量を測定し、初期値とランニング試験後のトナーの帯電量を比較することで耐久性を評価した。
評価基準は、評価基準は、下記の通りである。
○・・・帯電量の減少が5μc/g未満
△・・・帯電量の減少が5μc/g以上10μc/g未満
×・・・帯電量の減少が10μc/g以上
【0265】
【表3】

【0266】
(比較例4)
実施例1において、アクリル樹脂微粒子を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にトナーを作製した。乳化時において、油滴の合一が顕著となり、トナー化することができなかった。
【0267】
(実施例11)
実施例1において、アクリル樹脂微粒子におけるメタクリル酸メチルの比率を増加させ、ガラス転移温度Tgを65℃まで下げた樹脂微粒子を用いたこと以外は、実施例1と同様にトナーを作製した。更なる低温定着が可能だが、耐熱保存性が実施例1に劣る結果となった。
【0268】
(実施例12)
実施例1において、分子量300,000のアクリル樹脂微粒子を用いた以外は、実施例1と同様にトナーを作製した。低温定着性においては実施例1よりも若干劣る結果であり、耐熱保存性及びキャリア汚染性においては、実施例1と同等レベルであった。
【0269】
(実施例13)
実施例1において、粒径100nmのアクリル樹脂微粒子を用いた以外は、実施例1と同様にトナーを作製した。低温定着性及び耐熱保存性においては、実施例1と同等レベルであったが、キャリア汚染性においては実施例1よりも劣る結果であった。
【0270】
(実施例14)
実施例1において、ステアリン酸をカプロン酸に変更した以外は、実施例1と同様にトナーを作製した。トナーに用いたカプロン酸は、炭素数6個の飽和脂肪酸である。可塑効果は実施例1と同等レベルであり、耐熱保存性、耐キャリア汚染性双方とも実使用上問題無いレベルであった。
【0271】
(実施例15)
実施例3において、ラウリン酸の添加量を酢酸エチル130部に対して12部に変更した以外は、実施例3と同様にトナーを作製した。可塑効果は実施例3よりも優れており、耐熱保存性、耐キャリア汚染性双方とも実使用上問題無いレベルであった。
【0272】
(実施例16)
実施例3において、ラウリン酸の添加量を酢酸エチル130部に対して13部に変更した以外は、実施例3と同様にトナーを作製した。可塑効果は実施例15よりも優れており、耐熱保存性、耐キャリア汚染性双方とも実使用上問題無いレベルであった。
【0273】
(実施例17)
実施例3において、ラウリン酸の添加量を酢酸エチル130部に対して14部に変更した以外は、実施例3と同様にトナーを作製した。可塑効果は実施例15よりも優れており、耐熱保存性、耐キャリア汚染性双方とも実使用上問題無いレベルであった。
【0274】
(実施例18)
実施例3において、ラウリン酸の添加量を未変性ポリエステル100部に対して0.9部に変更した以外は、実施例3と同様にトナーを作製した。可塑効果は実施例3よりも若干劣る結果となった。
【0275】
(実施例19)
実施例3において、ラウリン酸の添加量を未変性ポリエステル100部に対して21.0部に変更した以外は、実施例3と同様にトナーを作製した。耐熱保存性は若干劣る結果となった。
【0276】
(実施例20)
実施例1において、ステアリン酸をリノレン酸に変更した以外は、実施例1と同様にトナーを作製した。トナーに用いたリノレン酸は、炭素数18個の二重結合数1個の不飽和脂肪酸である。可塑効果は実施例1よりも若干優れていた。耐熱保存性、耐キャリア汚染性双方とも実使用上問題無いレベルであった。
【産業上の利用可能性】
【0277】
本発明のトナーは、フルカラー画像形成方法において、低温定着性に優れ、耐スペント性及び耐熱保存性が良好であるので、高品位な画像を安定的に得ることができ、各種電子写真方式の画像形成に好適である。
【符号の説明】
【0278】
10K ブラック用静電潜像担持体
10Y イエロー用静電潜像担持体
10M マゼンタ用静電潜像担持体
10C シアン用静電潜像担持体
14,15,16 支持ローラ
17 中間転写クリーニング装置
18 画像形成手段
21 露光装置
22 2次転写装置
23 ローラ
25 定着装置
26 定着ベルト
27 加圧ローラ
28 シート反転装置
32 コンタクトガラス
33 第1走行体
34 第2走行体
35 結像レンズ
36 読取りセンサ
49 レジストローラ
50 中間転写体
51 手差しトレイ
53 手差し給紙路
55 切換爪
56 排出ローラ
57 排出トレイ
100 画像形成装置
110 複写機装置本体
120 タンデム画像形成装置
130 原稿台
142 給紙ローラ
143 ペーパーバンク
144 給紙カセット
145 分離ローラ
146 給紙路
147 搬送ローラ
148 給紙路
200 給紙テーブル
220 中間転写ベルト
300 スキャナ
400 原稿自動搬送装置
500 ローラ式帯電装置
501 帯電ローラ
502 芯金
503 導電ゴム層
505 感光体
510 ブラシ式帯電装置
511 ファーブラシローラ
513 ブラシ部
514 電源
515 感光体
600 現像器
601 現像スリーブ
602 電源
603 現像部
604 感光体
605 トナー
710 加熱ローラ
720 定着ローラ
730 無端帯状の定着ベルト
731 基体
732 発熱層
733 中間層
734 離型層
740 加圧ローラ
741 芯金
742 弾性部材
760 誘導加熱手段
761 励磁コイル
762 コイルガイド板
763 励磁コイルコア
764 励磁コイルコア支持部材
770 記録媒体
800 プロセスカートリッジ
801 感光体
802 帯電手段
803 現像手段
804 現像剤
806 クリーニング手段
100 画像形成装置
120Bk,120C,120M,120Y 画像書込部
130Bk,130C,130M,130Y 画像形成部
140 給紙部
200Bk,200C,200M,200Y 現像装置
210Bk,210C,210M,210Y 感光体
215Bk,215C,215M,215Y 帯電装置
230Bk,230C,230M,230Y 1次転写装置
300Bk,300C,300M,300Y クリーニング装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0279】
【特許文献1】特開平2‐157765号公報
【特許文献2】特許第2896826号公報
【特許文献3】特許第3885241号公報
【特許文献4】特開2004‐191516号公報
【特許文献5】特開2001‐222138号公報
【特許文献6】特開2005‐338814号公報
【特許文献7】特開平11‐249339号公報
【特許文献8】特開2003‐302791号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも結着樹脂を含むトナー材料と、炭素数が6〜22である脂肪酸とを有機溶媒に溶解乃至分散して溶解乃至分散液を調製する溶解乃至分散液調製工程と、
前記溶解乃至分散液を、アクリル樹脂微粒子を含む水系媒体に添加して乳化乃至分散させて乳化乃至分散液を調製する乳化乃至分散液調製工程と、
前記乳化乃至分散液から有機溶媒を除去する有機溶媒除去工程と、を含むトナーの製造方法により製造されることを特徴とするトナー。
【請求項2】
脂肪酸が液体乃至固体である請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
脂肪酸の有機溶媒中の含有量が、10質量%以上である請求項1から2のいずれかに記載のトナー。
【請求項4】
溶解乃至分散液調製工程は、結着樹脂100質量部に対して、1.0質量部〜20.0質量部の脂肪酸を添加することを含む請求項1から3のいずれかに記載のトナー。
【請求項5】
脂肪酸における二重結合数が0〜2である請求項1から4のいずれかに記載のトナー。
【請求項6】
結着樹脂がポリエステル樹脂である請求項1から5のいずれかに記載のトナー。
【請求項7】
結着樹脂のガラス転移温度Tgが30℃〜70℃である請求項1から6のいずれかに記載のトナー。
【請求項8】
脂肪酸の含有量がトナー100質量部に対して0.1質量部〜20.0質量部である請求項1から7のいずれかに記載のトナー。
【請求項9】
トナーのガラス転移温度Tgが20℃〜55℃である請求項1から8のいずれかに記載のトナー。
【請求項10】
アクリル樹脂微粒子がトナー表面近傍に粒子状態で存在して粒子層を形成する請求項1から9のいずれかに記載のトナー。
【請求項11】
トナーの体積平均粒径が3μm〜7μmである請求項1から10のいずれかに記載のトナー。
【請求項12】
トナーの体積平均粒径/個数平均粒径が1.05〜1.25である請求項1から11のいずれかに記載のトナー。
【請求項13】
トナーの平均円形度が0.950〜0.990である請求項1から12のいずれかに記載のトナー。
【請求項14】
トナーのBET比表面積が0.5m/g〜4.0m/gである請求項1から13のいずれかに記載のトナー。
【請求項15】
トナー材料は、活性水素基含有化合物及び該化合物と反応可能な変性ポリエステル樹脂を含む請求項1から14のいずれかに記載のトナー。
【請求項16】
請求項1から15のいずれかに記載のトナーを含むことを特徴とする現像剤。
【請求項17】
電子写真感光体表面を帯電させる帯電工程と、
帯電された電子写真感光体表面を露光して静電潜像を形成する露光工程と、
前記静電潜像を請求項1から15のいずれかに記載のトナーを用いて現像して可視像を形成する現像工程と、
前記可視像を中間転写体上に一次転写する一次転写工程と、
前記中間転写体上に転写された可視像を記録媒体上に二次転写する二次転写工程と、
前記記録媒体上に転写された転写像を定着させる定着工程と、
前記電子写真感光体上に残留するトナーを除去するクリーニング工程と、
を含むことを特徴とする画像形成方法。
【請求項18】
二次転写工程において、可視像の記録媒体上への転写の線速度が300mm/sec〜1,000mm/secであり、二次転写手段のニップ部での転写時間が0.5msec〜20msecである請求項17に記載の画像形成方法。
【請求項19】
電子写真感光体と、
前記電子写真感光体表面を帯電させる帯電手段と、
帯電された電子写真感光体表面を露光して静電潜像を形成する露光手段と、
前記静電潜像を請求項1から15のいずれかに記載のトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、
前記可視像を直接又は中間転写体を介して記録媒体上に転写する転写手段と、
前記記録媒体上に転写された転写像を定着させる定着手段と、
前記電子写真感光体上に残留するトナーを除去するクリーニング手段と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項20】
少なくとも電子写真感光体、帯電手段、露光手段、及び現像手段を含む画像形成要素を複数配列してなるタンデム方式である請求項19に記載の画像形成装置。
【請求項21】
電子写真感光体と、該電子写真感光体上に形成された静電潜像を請求項1から15のいずれかに記載のトナーを用いて現像し可視像を形成する現像手段とを少なくとも有し、画像形成装置本体に着脱可能であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項22】
帯電手段、転写手段及びクリーニング手段から選ばれる少なくとも1つの手段をさらに含むことを特徴とする請求項21に記載のプロセスカートリッジ。

【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−227339(P2011−227339A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−97968(P2010−97968)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】