説明

トナー、画像形成装置及びプロセスカートリッジ

【課題】球形トナーのあらゆる環境でのクリーニング性を向上させ、さらに潜像担持体の長寿命化を実現し、良好な画質でかつ安価な電子写真方式を提供すること。
【解決手段】少なくとも結着樹脂、及び着色を含むトナーにおいて、前記トナーが、シリコーンオイルで処理した外添剤を含有し、前記トナー中の総シリコーンオイル遊離量が前記トナーに対し0.2質量%〜0.5質量%であり、前記トナーの平均円形度が0.96〜1であることを特徴とするトナー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法において形成される静電潜像を現像するためのトナー及びこのトナーを用いた画像形成装置、プロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から電子写真に関する研究開発が様々な創意工夫と技術的アプローチにより行われてきている。電子写真法では、潜像担持体(潜像担持体)表面を帯電、露光して形成した静電潜像に着色トナーで現像してトナー像を形成し、該トナー像を転写紙等の被転写体に転写し、これを熱ロール等で定着して画像を形成している。転写されずに潜像担持体上に残留したトナーはクリーニングブレード等により除去される。
【0003】
近年、電子写真方式を利用したカラー画像形成装置は広範に普及してきており、また、デジタル化された画像が容易に入手できることも関係して、プリントされる画像の更なる高精細化が要望されている。近年、画像のより高い解像度や階調性が検討される中で静電潜像を忠実に再現するため、球形トナーの開発がされており、更なる球形化、小粒径化の検討がなされている。粉砕法により製造されたトナーでは、これらの特性に限界があるため、球形化や小粒径化が可能な懸濁重合法、乳化重合法、分散重合法等により製造されたいわゆる重合トナーが採用されつつある。
【0004】
重合トナーの場合、球形であることによるクリーニング性の悪化が問題になっている。
すなわち、球形トナーは潜像担持体上に残留したトナーの除去が困難で帯電ローラの汚染や潜像担持体上に残留したトナーによる画質欠損が生じるという問題がある。
また、近年、低コストで印字できるように機能部材の長寿命が必須でその中でも潜像担持体の長寿命化できる技術が開発されているが、潜像担持体の長寿命化にはクリーニングブレードとの摩擦による膜削れの問題を克服する必要がある。
【0005】
従来、クリーニング性を向上させるために提案がなされている。
特許文献1には外添剤として反応性変性シリコーンオイルにより表面処理された無機酸化物粉末であって、カーボン固定化率が90%以上で、疎水率が95%以上である表面改質無機酸化物粉末を用いることが記載されている。この外添剤はシリコーンオイル固定化率が90%以上と高いため、5質量部添加しても遊離シリコーンオイルを確保することが出来ず、クリーニング性向上、潜像担持体膜削れ量抑制には不十分である。
【0006】
特許文献2にはシリコーンオイルを含む無機微粒子からなり、シリコーンオイルの遊離率が10〜65%である外添剤を用いることが記載されている。この外添剤はトナー中のシリコーンオイル遊離量が少なく、クリーニング性向上、潜像担持体膜削れ量抑制には不十分である。
【0007】
特許文献3にはオイルで表面処理され、遊離オイル量が3%未満である酸化ケイ素を外添剤として用いることが記載されているが、外添剤のシリコーンオイル遊離率が3%以下と固定化率が高く、遊離シリコーンオイルを確保することが出来なため、球形トナーのクリーニング性向上、潜像担持体膜削れ量抑制には不十分である。
【0008】
特許文献4には、シリコーンオイル処理された平均一次粒径が50nm以上150nm以下であるシリカ粒子であって、シリカ粒子の遊離オイル量が0.1質量%以上3質量%以下である外添剤を使用することが記載されている。しかしながら、その実施例に示される外添剤のシリコーンオイル遊離量からトナー中の遊離シリコーンオイル量を計算すると0.15wt%程度しかなく、球形トナーのクリーニング性向上、潜像担持体膜削れ量抑制には不十分である。
【0009】
特許文献5には、疎水化処理された一次粒子の平均粒径が100nm以下の無機微粒子からなり、疎水化処理剤の残存率が重量基準で40〜98.5%であって、かつ該疎水化処理された無機微粒子の溶媒処理残存成分中に、少なくともオルガノポリシロキサン構造を有する化合物を含む外添剤をもちいることが記載されている。しかしながら、その実施例を参照すると、外添剤へのシリコーンオイル添加量が少なく、また、トナーへの添加量も少ない為、必要なシリコーンオイル遊離量が少なく、球形トナーのクリーニング性向上、潜像担持体膜削れ量抑制には不十分である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、球形トナーのあらゆる環境でのクリーニング性を向上させ、さらに潜像担持体の長寿命化を実現し、良好な画質でかつ安価な電子写真方式を提供することを目的とする。
また、本発明は、球形トナーのあらゆる環境での中間転写体の長期的なクリーニング性を向上させ、さらに中間転写体の長寿命化を実現し、現像部材汚染もなく、良好な画質でかつ安価な電子写真方式を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは少なくとも結着樹脂、着色剤を含む静電荷像現像用トナーであって、トナーがシリコーンオイルで処理した外添剤を含有し、トナー中の総シリコーンオイル遊離量がトナーに対し0.2質量%〜0.5質量%であり、トナーの平均円形度が0.96〜1である静電荷像現像用トナーを用いることにより上記課題を解決することができることを見出して、本発明を完成した。
【0012】
本発明の構成は以下の通りである。
(1)少なくとも結着樹脂、及び着色を含むトナーにおいて、
前記トナーが、シリコーンオイルで処理した外添剤を含有し、
前記トナー中の総シリコーンオイル遊離量が前記トナーに対し0.2質量%〜0.5質量%であり、
前記トナーの平均円形度が0.96〜1であることを特徴とするトナー。
(2)外添剤のBET比表面積が10m/g〜50m/gである請求項1に記載のトナー。
(3)外添剤の一次平均粒径が30nm〜150nmである(1)又は(2)に記載のトナー。
(4)外添剤が、シリカ、チタニア及びアルミナからなる群から選ばれる少なくとも1種である(1)〜(3)のいずれかに記載のトナー。
(5)外添剤が、シリカである(1)〜(4)のいずれかに記載のトナー。
(6)外添剤のシリコーンオイルの添加量が、外添剤の表面積あたり2mg/m〜10mg/mである(1)〜(5)のいずれかに記載のトナー。
(7)潜像担持体表面の可視像を中間転写体に転写する転写手段と、転写後、潜像担持体表面の残トナーを潜像担持体クリーニングブレードで除去するトナー除去手段と、中間転写体から被転写体に転写する転写手段と、転写後、該中間転写体上残トナーを中間転写体クリーニングブレードで除去する中間転写体トナー除去手段とを有し、
、前記トナーが、(1)〜(6)のいずれかに記載のトナーであることを特徴とする画像形成装置。
(8)前記潜像担持体クリーニングブレードの反発弾性が10%〜35%であり、クリーニングブレードが20N/m〜50N/mの圧力で当接し、前記潜像担持体クリーニングブレード端部面と前記潜像担持体表面との接触点からの接線とで形成されるの当接角度θが70〜82°である(7)に記載の画像形成装置。
(9)前記中間転写体クリーニングブレードの反発弾性が35%〜55%であり、クリーニングブレードが20N/m〜50N/mの圧力で当接し、前記中間転写体クリーニングブレード端部面と前記中間転写体表面との接触点からの接線とで形成される当接角度θが70〜82°である(7)に記載の画像形成装置。
(10)潜像担持体と、少なくとも潜像担持体上の潜像をトナーで現像する現像装置とを一体化して(7)〜(9)のいずれかに記載の画像形成装置に対して着脱可能に構成したプロセスカートリッジ。
【発明の効果】
【0013】
本発明のトナーを用いると、外添剤であるシリコーンオイル処理シリカが潜像担持体上に静止層を形成し、この制止層によって球形トナーのクリーニングが可能となる。
また、トナーが特定のシリコーンオイル遊離量を有するため潜像担持体とクリーニングブレードの摺擦力が低下し、潜像担持体表層の膜削れを防止することができ潜像担持体の長寿命化が可能となる。
さらに、本発明のトナーを用いた画像形成方法及び画像形成装置によれば、あらゆる環境下でも高画質の画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】クリーニングブレード前面に形成される制止層の状態を示す図である。
【図2】本発明のトナーの状態を示す概念図である。
【図3】本発明の画像形成装置の一例を示す図である。
【図4】フッ素系表層剤構成のソフトローラタイプの定着装置を示す図である。
【図5】多色画像形成装置の一例を示す概略図である。
【図6】リボルバタイプのフルカラー画像形成装置の一例を示す概略図である。
【図7】プロセスカートリッジの構成の一例を示す図である。
【図8】本発明の画像形成装置において用いるクリーニング装置の例を示す図である。
【図9】クリーニング装置のクリーニング部の詳細説明図である。
【図10】クリーニング装置のクリーニングブレードの詳細説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(シリコーンオイル)
本発明に用いるシリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル(例:ポリジメチルシロキサン(PDMS))、メチルフェニルシリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルコール変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、エポキシ・ポリエーテル変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、アクリル、メタクリル変性シリコーンオイル、α−メチルスチレン変性シリコーンオイル等が使用できる。
【0016】
(無機微粒子)
本発明における外添剤を構成する無機微粒子としては、例えばシリカ、アルミナ、酸化チチタニア、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化鉄、酸化銅、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸パリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などを挙げることができる。
その中でも特にシリカ、チタニア、アルミナが好ましい。
添加量はトナーに対し0.1から5重量%、好ましくは0.3から4重量%を用いることができる。
これらの無機微粒子は、電子写真用トナーとして用いる際には、単独で用いても2種以上混合して用いても良い。
【0017】
(無機微粒子粒子径)
シリコーンオイルで処理された無機微粒子の一次粒子の平均粒子径は、30〜150nm、好ましくは30〜100nmである。
この範囲より大きいと、無機微粒子の表面積が少なくなり、担持できるシリコーンオイルの全体量も少量になり、遊離量を本発明範囲に設定してもその効果は発揮しにくい。この範囲より小さいとトナーから遊離しにくくなり、遊離量を本発明範囲に設定してもクリーニングに必要な制止層の形成されにくくなり、効果は発揮しにくい。また、ここでの平均粒子径は、数平均の粒子径である。
【0018】
(無機微粒子のBET比表面積)
外添剤のBET比表面積が10〜50m/gであることが好ましい。
BET比表面積が10m/gを下回ると担持できるシリコーンオイルの全体量も少量になり、遊離量を本発明範囲に設定してもその効果は発揮しにくい。50m/gを超えるとクリーニングに必要な制止層の形成されにくくなり、効果は発揮しにくい。
【0019】
(遊離シリコーンオイル)
本発明で規定する遊離シリコーンオイルとは、必ずしも無機微粒子表面と化学結合せず、微粒子表面の細孔等に物理吸着しているものも含まれる。
より詳しくは、接触して簡単に無機微粒子から脱離する成分のことであり、その測定方法の定義は後述する(「シリコーンオイル遊離量の測定法」の項参照)。
【0020】
(シリコーンオイル処理方法)
あらかじめ、数百℃のオーブンで充分脱水乾燥した無機微粒子とシリコーンオイルを均一に接触させ、無機微粒子表面に付着させる。
無機微粒子にシリコーンオイルを付着させるには、無機微粒子粉体とシリコーンオイルとを回転羽根等の混合機により充分粉体のまま混合させたり、シリコーンオイルが希釈できる比較的低沸点の溶剤によりシリコーンオイルを溶解させ、無機微粒子粉体を液中に含浸させ、溶剤を除去乾燥させる方法により作成できる。
シリコーンオイルの粘度が高い場合には液中で処理するのが好ましい。
その後、シリコーンオイルが付着した無機粉体を100℃から数百℃のオーブン中で熱処理を施すことにより、無機粉体表面の水酸基を用いて金属とシリコーンオイルとのシロキサン結合を形成させたり、シリコーンオイル自身をさらに高分子化、架橋することができる。
【0021】
前記外添剤のシリコーンオイルの添加量は、外添剤の表面積あたり2mg/m〜10mg/mが好ましい。前記添加量が2mg/m未満であると、必要なトナー中のシリコーンオイル遊離量が確保できず、必要なクリーニング特性が確保できなくなることがあり、10mg/mを超えると、トナー中のシリコーンオイル遊離量が多くなりすぎ潜像担持体や現像部材へのフィルミングにより画像不良が発生することがある。
【0022】
あらかじめ、シリコーンオイル中に酸やアルカリ、金属塩、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ジブチル錫ジラウレート等の触媒を含ませて反応を促進させても良い。
また、無機微粒子はシリコーンオイル処理の前にあらかじめシランカップリング剤等の疎水化剤による処理を行なっておいても良い。
あらかじめ疎水化されている無機粉体の方がシリコーンオイルの吸着量は多くなる。
【0023】
本発明における遊離シリコーンの作用効果について説明する。
図1は本発明のトナーを用いて画像形成を行った際のクリーニングブレード付近の状態を撮影したものである。クリーニングブレードの前面にはトナーとクリーニングブレードとの間にシリコーンオイル処理シリカによって制止層が形成され、この制止層がトナーのすり抜けを防止する作用をする。また、特定のシリコーンオイル遊離量があるため潜像担持体とクリーニングブレードとの摺擦力が低下するため潜像担持体表層の膜削れを防止することができる。
【0024】
図2は本発明のトナーの状態を示す概念図である。トナー粒子表面には外添剤としてのシリカ粒子(シリカA、シリカB、シリカC)が外添されており、この各シリカ粒子の表面には遊離していないシリコーンオイル(残存PDMS−ポリジメチルシロキサン)と遊離したシリコーンオイル(遊離PDMS−ポリジメチルシロキサン)とが存在している。
各シリカ粒子におけるPDMSの遊離量を[遊離PDMS(A)量]、[遊離PDMS(B)量]、[遊離PDMS(C)量]と表すと添加シリコーンオイル処理シリカ中総PDMS遊離量及びトナー中総PDMS遊離量は以下の通りとなる。
添加シリコーンオイル処理シリカ中総PDMS遊離量=遊離PDMS(A)量+遊離PDMS(B)量+遊離PDMS(C)量
トナー中総PDMS遊離量=(遊離PDMS(A)量+遊離PDMS(B)量+遊離PDMS(C)量)/トナー量×100
【0025】
遊離シリコーンオイルとはクロロホルムで除去可能なシリコーンオイル部分を指し、この部分は外部との接触、外部からのストレスにより取れる。残存シリコーンオイルはクロロホルムで除去できないシリコーンオイル部分を指し、外部との接触、外部からのストレスでは取れない。
取れたシリコーンオイルは潜像担持体、中間転写体へ移行し、クリーニングブレードとの摩擦低減へ寄与する。
これによりクリーニングブレードの振動を抑制し、振動した際に出来る潜像担持体あるいは中間転写体とクリーニングブレードとの間に出来る隙間を低減し、円形度の高いトナーをクリーニングすることを可能としている。
【0026】
(その他の無機微粒子;極小外添剤)
本発明においては、流動化剤とともに、表面処理を施さない公知の無機微粒子、及び/又は、シリコーンオイル以外の疎水化処理剤により表面処理された公知の無機微粒子を極小外添剤として1種類以上合わせて使用しても良い。
疎水化処理剤としては、例えばシランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤などが好ましい表面処理剤として挙げられる。無機微粒子の具体例としては、例えばシリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ペンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などを挙げることができる。
【0027】
併用する無機微粒子はシリコーンオイルによって処理された無機微粒子よりも平均粒子
径が小さいものが好適に用いられる。
この小さな無機微粒子によってトナー表面の被覆率が上がり、適切な流動性を現像剤に与えることができ、現像時における潜像に対する忠実再現性や現像量を確保することができる。
また、現像剤保存時のトナーの凝集、固化を防止することができる。
添加量はトナーに対し0.01から5重量%、好ましくは0.1から2重量%を用いることができる。
【0028】
(クリーニング助剤)
潜像担持体や一次転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去するためのクリーニング性向上剤を併用しても良い。例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸など脂肪酸金属塩、例えばポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子などのソープフリー乳化重合などによって製造された、ポリマー微粒子などを挙げることかできる。ポリマー微粒子は比較的粒度分布が狭く、体積平均粒径が0.01から1μmのものが好ましい。
【0029】
(樹脂微粒子)
本発明においては樹脂微粒子、例えば、ソープフリー乳化重合や懸濁重合、分散重合によって得られるポリスチレン、メタクリル酸エステルやアクリル酸エステル共重合体やシリコーン、ベンゾグアナミン、ナイロンなどの重縮合系、熱硬化性樹脂による重合体粒子を外添時に併用しても良い。
このような樹脂微粒子と併用することによって現像剤の帯電性が強化でき、逆帯電のトナー粒子を減少させ、地肌汚れを低減することができる。
添加量はトナーに対し0.01から5重量%、好ましくは0.1から2重量%を用いることができる。
【0030】
(結着樹脂)
本発明はトナーの結着樹脂としてポリエステル樹脂が好適に使用される。
ポリエステル樹脂としては、ラクトン類の開環重合物、ヒドロキシカルボン酸の縮重合物、ポリオールとポリカルボン酸との重縮合物などが挙げられ、設計の自由度の観点からポリオールとポリカルボン酸との重縮合物が好ましい。
【0031】
ポリエステル樹脂のピーク分子量は、通常1000〜30000、好ましくは1500〜10000、さらに好ましくは2000〜8000である。1000以上であることにより耐熱保存性が良好となり、30000以下で低温定着性が良好となる。
また、ポリエステル樹脂のガラス転移温度は35〜80℃、好ましくは40〜70℃、より好ましくは45〜65℃の範囲にあるのが良い。35℃以上であることによりトナーが真夏などの高温環境下に置かれたときに変形したり、トナー粒子同士がくっついてしまい本来の粒子としての振る舞いができなくなるということがない。また80℃以下であることにより定着性が良好となる。
【0032】
本発明のトナーは、主部分を形成する樹脂、着色剤および離型剤を溶媒に溶解又は分散させる工程、該溶解物又は分散物を水系媒体中に分散させ造粒する工程を経ることにより得ることができる。また、前記工程により得られたトナーを芯粒子として、該芯粒子分散液に少なくとも、凸部を形成する樹脂微粒子が分散された樹脂微粒子分散液を加えて、芯粒子表面に樹脂微粒子から成る凸部を形成する工程、凸部を形成した芯粒子の分散液から有機溶媒を除去する工程を経ることによって得ることにより、コアシェル構造のトナーを得ることもできる。本発明はコアシェル構造を持ったトナーであることが好ましい。なお、本発明では外添剤を添加する前のトナー粒子をトナー母体粒子ということがある。
【0033】
本発明で使用されるポリエステル樹脂としては以下のポリオール(1)とポリカルボン酸(2)の重縮合物が挙げられ、いかなるものでも使用することができ、また数種のポリエステル樹脂を混合して使用しても良い。
【0034】
(ポリオール)
ポリオール(1)としては、アルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなど);アルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなど);脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなど);ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、3,3′−ジフルオロ−4,4′−ジヒドロキシビフェニル、等の4,4′−ジヒドロキシビフェニル類;ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1−フェニル−1,1−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(別名:テトラフルオロビスフェノールA)、2,2−ビス(3−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン等のビス(ヒドロキシフェニル)アルカン類;ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)エーテル等のビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル類など);上記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド
(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物;上記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物などが挙げられる。
【0035】
これらのうち好ましいものは、炭素数2〜12のアルキレングリコールおよびビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物であり、特に好ましいものはビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、およびこれと炭素数2〜12のアルキレングリコールとの併用である。
【0036】
更に、3〜8価またはそれ以上の多価脂肪族アルコール(グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなど);3価以上のフェノール類(トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなど);上記3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。
尚、上記ポリオールは1種類単独または2種以上の併用が可能で、上記に限定されるものではない。
【0037】
(ポリカルボン酸)
ポリカルボン酸(2)としては、アルキレンジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸など);アルケニレンジカルボン酸(マレイン酸、フマール酸など);芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、3−フルオロイソフタル酸、2−フルオロイソフタル酸、2−フルオロテレフタル酸、2,4,5,6−テトラフルオロイソフタル酸、2,3,5,6−テトラフルオロテレフタル酸、5−トリフルオロメチルイソフタル酸、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ビフェニルジカルボン酸、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ビフェニルジカルボン酸、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−3,3’−ビフェニルジカルボン酸、ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物など)などが挙げられる。
【0038】
これらのうち好ましいものは、炭素数4〜20のアルケニレンジカルボン酸および炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸である。さらに3価以上のポリカルボン酸としては、炭素数9〜20の芳香族ポリカルボン酸(トリメリット酸、ピロメリット酸など)、また上述のものの酸無水物または低級アルキルエステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステルなど)を用いてポリオール(1)と反応させてもよい。
尚、上記ポリカルボン酸は1種類単独または2種以上の併用が可能で、上記に限定されるものではない。
【0039】
(ポリオールとポリカルボン酸の比)
ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)の比率は、水酸基[OH]とカルボキシル基[COOH]の当量比[OH]/[COOH]として、通常2/1〜1/1、好ましくは1.5/1〜1/1、さらに好ましくは1.3/1〜1.02/1である。
【0040】
(ポリエステル樹脂の分子量)
ピーク分子量は、通常1000〜30000、好ましくは1500〜10000、さらに好ましくは2000〜8000である。1000未満では耐熱保存性が悪化し、30000を超えると低温定着性が悪化する。
【0041】
(変性ポリエステル樹脂)
本発明に使用される結着樹脂は、粘弾性調整のために、ウレタン又は/及びウレア基を有する変性されたポリエステル樹脂を含有していても良い。該ウレタン又は/及びウレア基を有する変性されたポリエステル樹脂の含有割合は、前記結着樹脂中、20%以下が好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましい。含有割合が20%より多くなると低温定着性が悪化する。該ウレタン又は/及びウレア基を有する変性されたポリエステル樹脂は、直接結着樹脂に混合しても良いが、製造性の観点から、末端にイソシアネート基を有する比較的低分子量の変性ポリエステル樹脂(以下プレポリマーと表記することがある)と、これと反応するアミン類を結着樹脂に混合し、造粒中/又は造粒後に鎖伸長又は/及び架橋反応して該ウレタン又は/及びウレア基を有する変性されたポリエステル樹脂となる方が好ましい。こうすることにより、粘弾性調整のための比較的高分子量の変性ポリエステル樹脂を含有させることが容易となる。
【0042】
(プレポリマー)
前記イソシアネート基を有するプレポリマーとしては、前記ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)の重縮合物でかつ活性水素基を有するポリエステルをさらにポリイソシアネート(3)と反応させたものなどが挙げられる。上記ポリエステルの有する活性水素基としては、水酸基(アルコール性水酸基およびフェノール性水酸基)、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基などが挙げられ、これらのうち好ましいものはアルコール性水酸基である。
【0043】
(ポリイソシアネート)
ポリイソシアネート(3)としては、脂肪族ポリイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエートなど);脂環式ポリイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネートなど);芳香族ジイソシアネート(トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなど);芳香脂肪族ジイソシアネート(α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなど);イソシアヌレート類;前記ポリイソシアネートをフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタムなどでブロックしたもの;およびこれら2種以上の併用が挙げられる。
【0044】
(イソシアネート基と水酸基の比)
ポリイソシアネート(3)の比率は、イソシアネート基[NCO]と、水酸基を有するポリエステルの水酸基[OH]の当量比[NCO]/[OH]として、通常5/1〜1/1、好ましくは4/1〜1.2/1、さらに好ましくは2.5/1〜1.5/1である。
[NCO]/[OH]が5を超えると低温定着性が悪化する。[NCO]のモル比が1未満では、変性ポリエステル中のウレア含量が低くなり、耐オフセット性が悪化する。末端にイソシアネート基を有するプレポリマー(A)中のポリイソシアネート(3)構成成分の含有量は、通常0.5〜40質量%、好ましくは1〜30質量%、さらに好ましくは2〜20質量%である。0.5質量%未満では、耐オフセット性が悪化する。また、40質量%を超えると低温定着性が悪化する。
【0045】
(プレポリマー中のイソシアネート基の数)
イソシアネート基を有するプレポリマー(A)中の1分子当たりに含有するイソシアネート基は、通常1個以上、好ましくは、平均1.5〜3個、さらに好ましくは、平均1.8〜2.5個である。1分子当たり1個未満では、鎖伸長及び/又は架橋後の変性ポリエステルの分子量が低くなり、耐オフセット性が悪化する。
【0046】
(鎖伸長及び/又は架橋剤)
本発明において、鎖伸長及び/又は架橋剤として、アミン類を用いることができる。アミン類(B)としては、ジアミン(B1)、3価以上のポリアミン(B2)、アミノアルコール(B3)、アミノメルカプタン(B4)、アミノ酸(B5)、およびB1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)などが挙げられる。
【0047】
ジアミン(B1)としては、次のものが挙げられる。
芳香族ジアミン(フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’ジアミノジフェニルメタン、テトラフルオロ−p−キシリレンジアミン、テトラフルオロ−p−フェニレンジアミンなど);
脂環式ジアミン(4,4’−ジアミノ−3,3’ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミンシクロヘキサン、イソホロンジアミンなど);
および脂肪族ジアミン(エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ドデカフルオロヘキシレンジアミン、テトラコサフルオロドデシレンジアミンなど)などが挙げられる。
【0048】
3価以上のポリアミン(B2)としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどが挙げられる。
アミノアルコール(B3)としては、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリンなどが挙げられる。
アミノメルカプタン(B4)としては、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタンなどが挙げられる。
【0049】
アミノ酸(B5)としては、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸などが挙げられる。
B1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)としては、前記B1〜B5のアミン類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)から得られるケチミン化合物、オキサゾリン化合物などが挙げられる。
【0050】
(停止剤)
さらに、必要により鎖伸長及び/又は架橋反応は停止剤を用いて反応終了後の変性ポリエステルの分子量を調整することができる。停止剤としては、モノアミン(ジエチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、ラウリルアミンなど)、およびそれらをブロックしたもの(ケチミン化合物)などが挙げられる。
【0051】
(アミノ基とイソシアネート基の比率)
アミン類(B)の比率は、イソシアネート基を有するプレポリマー(A)中のイソシアネート基[NCO]と、アミン類(B)中のアミノ基[NHx]の当量比[NCO]/[NHx]として、通常1/2〜2/1、好ましくは1.5/1〜1/1.5、さらに好ましくは1.2/1〜1/1.2である。[NCO]/[NHx]が2より大きかったり1/2未満では、ウレア変性ポリエステル(i)の分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。
【0052】
(結晶性ポリエステル樹脂)
本発明のトナーは、低温定着性を向上させるために結晶性ポリエステルを含有してもよい。結晶性ポリエステルも前述のポリオールとポリカルボン酸の重縮合物として得られるが、ポリオールとしては脂肪族ジオールが好ましく具体的にはエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール等が挙げられ、その中でも1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールや1,8−オクタンジオールが好ましく、さらに好ましくは1,6−ヘキサンジオールである。ポリカルボン酸としてはフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸や炭素数2〜8の脂肪族カルボン酸が好ましいが、結晶化度を高くするためには脂肪族カルボン酸がより好ましい。
なお、結晶性樹脂(結晶性ポリエステル)と非結晶性樹脂とは熱特性で判別される。結晶性樹脂は、例えばDSC測定においてワックスのように明確な吸熱ピークを有する樹脂を指す。一方、非結晶性樹脂はガラス転移に基づく緩やかなカーブが観測される。
【0053】
(シェル層用ビニル系樹脂微粒子)
本発明に用いることができるシェル層用樹脂としてビニル系樹脂が好適に用いられる。
ビニル系樹脂からなる樹脂微粒子は、主としてビニル重合性官能基を有する芳香族化合物をモノマーとして含むモノマー混合物を重合させることによって得られる。
【0054】
モノマー混合物中におけるビニル重合性官能基を有する芳香族化合物の含有量は80〜100質量%、好ましくは80〜95質量%、より好ましくは80〜90質量%用いられるのが良い。ビニル重合性官能基を有する芳香族化合物が80質量%未満であると、得られたトナーの帯電性が乏しくなる。
【0055】
ビニル重合性官能基を有する芳香族化合物における重合可能な官能基としては、ビニル基、イソプロペニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などが挙げられる。
具体的なモノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−エチルスチレン、4−tert−ブチルスチレン、4−メトキシスチレン、4−エトキシスチレン、4−カルボキシスチレンもしくはその金属塩、4−スチレンスルホン酸もしくはその金属塩、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、アリルベンゼン、ブチルアクリレート、フェノキシアルキレングリコールアクリレート、フェノキシアルキレングリコールメタクリレート、フェノキシポリアルキレングリコールアクリレート、フェノキシポリアルキレングリコールメタクリレート、メトキシジエチレングリコールメタクリレート等が挙げられる。
この中では、入手が容易で反応性に優れ帯電性の高いスチレン、ブチルアクリレートを主に用いるのが好ましい。
【0056】
また、本発明に用いられるビニル系樹脂には、ビニル重合性官能基と酸基とを有する化合物(以下「酸モノマー」ともいう)をモノマー混合物のうち0〜7質量%含んでいても良い。酸モノマーの含有量は好ましくは0〜4質量%であり、より好ましくは酸モノマーを使用しないのが良い。酸モノマーが7質量%を超えて使用されると、得られるビニ系樹脂微粒子はそれ自身の分散安定性が高いため、油滴が水相中に分散された分散液中にこのようなビニル系樹脂微粒子を添加しても、常温では付着しにくいか、付着をしても脱離しやすい状態にあり、溶媒除去、洗浄、乾燥、外添処理を行う過程で容易に剥がれてしまう。さらに、酸モノマーの使用量が4質量%以下にすることで、得られるトナーが使用される環境によって帯電性の変化が少なくすることができる。
【0057】
ビニル重合性官能基と酸基を有する化合物における酸基としては、カルボキシル酸、スルホニル酸、ホスフォニル酸などが挙げられる。
ビニル重合性官能基と酸基を有する化合物としては、例えばカルボキシル基含有ビニル系モノマー及びその塩((メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、マレイン酸モノアルキル、フマル酸、フマル酸モノアルキル、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸モノアルキル、イタコン酸グリコールモノエーテル、シトラコン酸、シトラコン酸モノアルキル、桂皮酸等)、スルホン酸基含有ビニル系モノマー、ビニル系硫酸モノエステル及びこれらの塩、リン酸基含有ビニル系モノマー及びその塩などがある。この中では、(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、マレイン酸モノアルキル、フマル酸、フマル酸モノアルキルが好ましい。
【0058】
コア部分の樹脂との相溶性が高い場合には所望のトナー表面状態を得られなくなる場合があるため、使用するモノマー混合物及びコア部分の樹脂の極性や構造等を相溶性が低い方向へ制御するとよい。
使用する有機溶媒への溶解性は必要以上に溶解しないようにする。微粒子形状を保てなくなるほど溶解するような場合には、結果として所望のトナー表面状態を得られなくなることがある。
【0059】
ビニル系樹脂微粒子を得る方法としては特に限定されないが、以下の(a)〜(f)が挙げられる。
(a)モノマー混合物を懸濁重合法、乳化重合法、シード重合法または分散重合法等の重合反応により反応させ、ビニル系樹脂微粒子の分散液を製造する。
(b)あらかじめモノマー混合物を重合し、得られた樹脂を機械回転式またはジェット式等の微粉砕機を用いて粉砕し、次いで、分級することによって樹脂微粒子を製造する。
(c)あらかじめモノマー混合物を重合し、得られた樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液を、霧状に噴霧することにより樹脂微粒子を製造する。
(d)あらかじめモノマー混合物を重合し、得られた樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液に溶剤を添加するか、またはあらかじめ溶剤に加熱溶解した樹脂溶液を冷却することにより樹脂微粒子を析出させ、次いで、溶剤を除去して樹脂微粒子を製造する。
(e)あらかじめモノマー混合物を重合し、得られた樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液を、適当な分散剤存在下で水性媒体中に分散させ、これを加熱または減圧等によって溶剤を除去する。
(f)あらかじめモノマー混合物を重合し、得られた樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液中に適当な乳化剤を溶解させた後、水を加えて転相乳化する。
この中で、製造が容易であり、樹脂微粒子を分散液として得られることから次工程への適用がスムーズに行うことができる(a)の方法が好ましい。
【0060】
(a)の方法において、重合反応を行う際には、水系媒体中に分散安定剤を添加する、もしくは重合反応を行うモノマー中に、重合してできた樹脂微粒子の分散安定性を付与できるようなモノマー(いわゆる反応性乳化剤)を添加する、またはこれら2つの手段を併用し、できあがったビニル系樹脂微粒子の分散安定性を付与するのがよい。分散安定剤や反応性乳化剤を使用しないと、粒子の分散状態を維持できないためにビニル系樹脂を微粒子として得ることができなかったり、得られた樹脂微粒子の分散安定性が低いために保存安定性に乏しく保管中に凝集してしまったり、あるいは後述の樹脂微粒子付着工程での粒子の分散安定性が低下するために、芯粒子同士が凝集・合一しやすくなり最終的に得られるトナーの粒径や形状・表面などの均一性が悪くなるため、好ましくない。
【0061】
分散安定剤としては、界面活性剤、無機分散剤などが挙げられ、界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステルなどの陰イオン界面活性剤、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリンなどのアミン塩型や、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウムなどの四級アンモニウム塩型の陽イオン界面活性剤、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体などの非イオン界面活性剤、例えばアラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシンやN−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムべタインなどの両性界面活性剤が挙げられる。無機分散剤としては、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ハイドロキシアパタイトなどが用いられる。
【0062】
本発明における樹脂微粒子を製造する場合に、分子量を調整することを目的として、一般的に用いられる連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては、特に制限されないが、好ましくは炭素数3以上の炭化水素基を有するアルキルメルカプタン系の連鎖移動剤を使用することが好ましい。このような炭素数3以上の炭化水素基を有するアルキルメルカプタン系の疎水性の連鎖移動剤としては、特に制限されないが、ブタンチオール、オクタンチオール、デカンチオール、ドデカンチオール、ヘキサデカンチオール、オクタデカンチオール、シクロヘキシルメルカプタン、チオフェノール、チオグリコール酸オクチル、2−メルカプトプロピオン酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル、メルカプトプロピオン酸2−エチルヘキシルエステル、オクタン酸2−メルカプトエチルエステル、1,8−ジメルカプト−3,6−ジオキサオクタン、デカントリチオール、ドデシルメルカプタン等が挙げられる。この際、疎水性連鎖移動剤は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0063】
この際、連鎖移動剤の添加量は、得られる共重合体を所望の分子量になるように調節できる量であれば特に制限されないが、好ましくは、単量体成分の合計モルに対して、0.01〜30質量部、より好ましくは0.1〜25質量部である。この際、連鎖移動剤の添加量が0.01質量部未満であると、得られる共重合体の分子量が大きくなりすぎるため、定着性が低下したり、重合反応中にゲル化したりしてしまう可能性がある。逆に、連鎖移動剤の添加量が30質量部を超えた場合、未反応の状態で連鎖移動剤が残存し、また得られる共重合体の分子量が小さく、部材汚染を引き起こす。
【0064】
ビニル系樹脂の重量平均分子量は3,000〜300,000、このましくは4,000〜100,000、より好ましくは5,000〜50,000の範囲が良い。重量平均分子量が3,000に満たないと、ビニル系樹脂の力学的強度が弱く脆弱であるため、最終的に得られるトナーのアプリケーションによっては使用状況によってトナー表面が容易に変化してしまい、例えば帯電性の著しい変化や周辺部剤への付着などの汚染、それに伴う品質問題の発生を引き起こすため好ましくない。また、300,000を超えるような場合、分子末端が少なくなるため芯粒子との分子鎖の絡み合いが少なくなり、芯粒子への付着性が低下するため好ましくない。
また、ビニル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、40℃以上、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上が良い。40℃未満では最終的に得られたトナーを高温で保管したときにブロッキングしてしまうなど保存安定性の悪化が生じうるため好ましくない。
【0065】
<着色剤>
本発明の着色剤としては公知の染料及び顔料が全て使用でき、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミュウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミュウムレッド、カドミュウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン及びそれらの混合物が使用できる。着色剤の含有量はトナーに対して通常1〜15質量%、好ましくは3〜10質量%である。
【0066】
<離型剤>
本発明に使用する離型剤としては、公知のものが使用でき、例えばポリオレフィンワックス(ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなど);長鎖炭化水素(パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、サゾールワックスなど);カルボニル基含有ワックスなどが挙げられる。カルボニル基含有ワックスとしては、ポリアルカン酸エステル(カルナウバワックス、モンタンワックス、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18−オクタデカンジオールジステアレートなど);ポリアルカノールエステル(トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエートなど);ポリアルカン酸アミド(エチレンジアミンジベヘニルアミドなど);ポリアルキルアミド(トリメリット酸トリステアリルアミドなど);およびジアルキルケトン(ジステアリルケトンなど)、モノ/ジエステルなどが挙げられる。上記の内、極性が小さく溶融粘度が低いという理由から好ましいものはポリオレフィンワックス、長鎖炭化水素であり、特に好ましいものはパラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスである。
【0067】
離型剤の含有量は4〜15質量部が好ましく、5〜10質量部がより好ましい。4質量部より少ないと定着器に対してトナーの離型性が確保できず、オフセットが発生し、画像不良となる。15質量部より多いとトナー表面に離型剤が多く存在し、現像部材汚染を引き起こし汚染部のみ白く抜けるなどの画像不良が発生する。
【0068】
<トナーの製造方法>
本発明のトナーの製造方法を以下に例示するが、これに制限されるものではない。
<コア粒子(主部分)造粒工程>
(有機溶媒)
造粒に用いる有機溶媒としては、沸点が100℃未満の揮発性であることが、後の溶剤除去が容易になる点から好ましい。このような有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどを単独あるいは2種以上組合せて用いることができる。特に、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル系、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒および塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素が好ましい。ポリエステル系樹脂および着色剤は同時に溶解又は分散させても良いが、通常それぞれ単独で溶解又は分散され、その際使用する有機溶媒はそれぞれ異なっていても同じでも良いが、後の溶媒処理を考慮すると同じ方が好ましい。また、ポリエステル系樹脂を好適に溶解させる溶媒(単独または混合)を選択すると、本発明で好ましく用いられる離型剤はその溶解度の違いからほとんど溶解しない。
【0069】
(ポリエステル系樹脂の溶解又は分散)
ポリエステル系樹脂の溶解又は分散液は、樹脂濃度が40%〜80%程度であることが好ましい。濃度が高すぎると溶解又は分散が困難になり、また粘度が高くなって扱いづらい。また、濃度が低すぎると微粒子の製造量が少なくなり、除去すべき溶媒量が多くなる。ポリエステル系樹脂に前記末端にイソシアネート基を有する変性ポリエステル樹脂を混合する場合は、同じ溶解又は分散液に混合しても良いし、別々に溶解又は分散液を作製しても良いが、それぞれの溶解度と粘度を考慮すると、別々の溶解又は分散液を作製する方が好ましい。
【0070】
(水系媒体)
用いる水系媒体としては、水単独でもよいが、水と混和可能な溶剤を併用することもできる。混和可能な溶剤としては、アルコール(メタノール、イソプロパノール、エチレングリコールなど)、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ類(メチルセルソルブなど)、低級ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)などが挙げられる。樹脂微粒子100質量部に対する水系媒体の使用量は、通常50〜2000質量部、好ましくは100〜1000質量部である。
【0071】
(無機分散剤および有機樹脂微粒子)
上記水系媒体中に、前記のポリエステル系樹脂および離型剤の溶解物または分散物を分散させる際、無機分散剤または有機樹脂微粒子をあらかじめ水系媒体中に分散させておくことにより、粒度分布がシャープになるとともに分散が安定である点で好ましい。無機分散剤としては、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ハイドロキシアパタイトなどが用いられる。有機樹脂微粒子を形成する樹脂としては、水性分散体を形成しうる樹脂であれば、いかなる樹脂であっても使用でき、熱可塑性樹脂であっても熱硬化性樹脂であっても良いが、例えはビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、2種以上を併用しても差し支えない。このうち好ましいのは、微細球状樹脂粒子の水性分散体が得られやすいという観点からビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂およびそれらの併用である。
【0072】
(界面活性剤)
また、上記樹脂微粒子を製造する際に、必要に応じて、界面活性剤等を用いることもできる。界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステルなどの陰イオン界面活性剤、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリンなどのアミン塩型や、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウムなどの四級アンモニウム塩型の陽イオン界面活性剤、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体などの非イオン界面活性剤、例えばアラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシンやN−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムべタインなどの両性界面活性剤が挙げられる。
【0073】
また、フルオロアルキル基を有する界面活性剤を用いることにより、非常に少量でその効果をあげることができる。好ましく用いられるフルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤としては、炭素数2〜10のフルオロアルキルカルボン酸、及び、その金属塩、パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−[ω−フルオロアルキル(C6〜C11)オキシ]−1−アルキル(C3〜C4)スルホン酸ナトリウム、3−[ω−フルオロアルカノイル(C6〜C8)−N−エチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキル(C11〜C20)カルボン酸及び金属塩、パーフルオロアルキルカルボン酸(C7〜C13)及びその金属塩、パーフルオロアルキル(C4〜C12)スルホン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(C6〜C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(C6〜C10)−N−エチルスルホニルグリシン塩、モノパーフルオロアルキル(C6〜C16)エチルリン酸エステルなどが挙げられる。また、カチオン性界面活性剤としては、フルオロアルキル基を有する脂肪族1級、2級もしくは3級アミン酸、パーフルオロアルキル(C6−C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩などの脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩などが挙げられる。
【0074】
(保護コロイド)
また、高分子系保護コロイドにより分散液滴を安定化させても良い。例えばアクリル酸、メタクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸または無水マレイン酸などの酸類、あるいは水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体、例えばアクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸β−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸β−ヒドロキシプロピル、アクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノアクリル酸エステル、ジエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、グリセリンモノアクリル酸エステル、グリセリンモノメタクリル酸エステル、N−メチロ−ルアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなど、ビニルアルコールまたはビニルアルコールとのエ一テル類、例えばビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテルなど、またはビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニルなど、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドあるいはこれらのメチロール化合物、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドなどの酸クロライド類、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミンなどの窒素原子、またはその複素環を有するものなどのホモポリマーまたは共重合体、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフエニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエステルなどのポリオキシエチレン系、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース類などが使用できる。なお、分散安定剤としてリン酸カルシウム塩などの酸、アルカリに溶解可能な物を用いた場合は、塩酸等の酸により、リン酸カルシウム塩を溶解した後、水洗するなどの方法によって、微粒子からリン酸カルシウム塩を除去する。その他酵素による分解などの操作によっても除去できる。分散剤を使用した場合には、該分散剤がトナー粒子表面に残存したままとすることもできるが、洗浄除去するほうがトナーの帯電面から好ましい。
【0075】
(分散の方法)
分散の方法としては特に限定されるものではないが、低速せん断式、高速せん断式、摩擦式、高圧ジェット式、超音波などの公知の設備が適用できる。高速せん断式分散機を使用した場合、回転数は特に限定はないが、通常1000〜30000rpm、好ましくは5000〜20000rpmである。分散時の温度としては、通常、0〜150℃(加圧下)、好ましくは20〜80℃である。
【0076】
(油相作製工程)
有機溶媒中に樹脂、着色剤、離型剤などを溶解あるいは分散させた油相を作製する方法としては、有機溶媒中に攪拌をしながら樹脂、着色剤などを徐々に添加していき、溶解あるいは分散させればよい。ただし、着色剤として顔料を用いる場合や、離型剤や帯電制御剤などのなかで有機溶媒に溶解しにくいようなものを添加する場合、有機溶媒への添加に先立って粒子を小さくしておくことが好ましい。
前述のように着色剤のマスターバッチ化も手段の一つであり、同様の方法を離型剤や帯電制御剤に展開することもできる。
また別の手段として、有機溶媒中で、必要に応じて分散助剤を添加し、着色剤、離型剤、帯電制御剤を湿式で分散を行いウエットマスターを得ることも可能である。
さらに別の手段として、有機溶媒の沸点未満で溶融するようなものを分散するのであれば、有機溶媒中で、必要に応じて分散助剤を添加し、分散質とともに攪拌しながら加熱を行い一旦溶解させた後、攪拌もしくはせん断しながら冷却を行うことによって晶析を行い、分散質の微結晶を生成させる方法を行っても良い。
【0077】
以上の手段を用いて分散された着色剤、離型剤、帯電制御剤は、有機溶媒中に樹脂とともに溶解あるいは分散された後、さらに分散を行っても良い。分散に際しては公知のビーズミルやディスクミルなどの分散機を用いることができる。
【0078】
(芯粒子作製工程)
水系媒体中に前述の工程で得られた油相を分散させ、油相からなる芯粒子が分散した分散液を作製する方法としては、特に限定されるものではないが、低速せん断式、高速せん断式、摩擦式、高圧ジェット式、超音波などの公知の設備が適用できる。分散体の粒径を2〜20μmにするために高速せん断式が好ましい。高速せん断式分散機を使用した場合、回転数は特に限定はないが、通常1000〜30000rpm、好ましくは5000〜20000rpmである。分散時間は特に限定はないが、バッチ方式の場合は、通常0.1〜5分である。5分を超えて分散を行うと、望ましくない小径の粒子が残存してしまったり、分散が過分散状態になって系が不安定になり凝集体や粗大粒子が発生したりすることがあるので好ましくない。分散時の温度としては、通常、0〜40℃、好ましくは10〜30℃である。40℃を超えると分子運動が活発になることから分散安定性が低下し凝集体や粗大粒子が発生しやすくなるため好ましくない。また、0℃未満になると分散体の粘度が高くなり、分散に必要なせん断エネルギーが増大するため製造効率が低下する。
【0079】
界面活性剤は、前述の樹脂微粒子の製造法に関する説明で記載したものと同じものが使用できるが、溶媒を含む油滴を効率よく分散するためには、HLBが高めのジスルホン酸塩のものが好ましい。界面活性剤は、水系媒体中での濃度が1〜10質量%、好ましくは2〜8質量%、より好ましくは3〜7質量%の範囲にあるのが良い。10質量%を超えると、油滴が小さくなりすぎたり、逆ミセル構造を形成して逆に分散安定性が低下して油滴の粗大化が発生したりするため好ましくない。また1質量%未満では油滴の分散を安定に行うことができずに油滴が粗大化してしまうため好ましくはない。
【0080】
(シェル層用樹脂微粒子付着工程)
得られた芯粒子分散液は、攪拌を行っている間は安定に芯粒子の液滴を存在させておくことができる。その状態に前述のビニル系樹脂微粒子分散液を投入して芯粒子上に付着させる。ビニル系樹脂微粒子分散液の投入は、30秒以上かけて行うのが良い。30秒未満で投入を行うと、分散系が急激に変化するために凝集粒子が発生したり、ビニル系樹脂微粒子の付着が不均一になったりするため好ましくない。一方闇雲に長い時間、例えば60分を超えて添加するのは生産効率の面から好ましくはない。
樹脂微粒子分散液は、芯粒子分散液に投入する前に、適宜濃度調整のために希釈あるいは濃縮しても良い。ビニル系樹脂微粒子分散液の濃度は、5〜30質量%が好ましく、8〜20質量%がより好ましい。5%未満では、分散液の投入に伴う有機溶媒濃度の変化が大きく、樹脂微粒子の付着が不十分になるため好ましくない。また30質量%を超えるような場合、樹脂微粒子が芯粒子分散液中に偏在しやすくなり、その結果樹脂微粒子の付着が不均一になるため避けたほうが良い。
【0081】
本発明の方法によって芯粒子に対して樹脂微粒子が十分な強度で付着するのは、樹脂微粒子が芯粒子の液滴に付着したときに、芯粒子が自由に変形できるために樹脂微粒子界面と接触面を十分に形成すること、および、有機溶媒によって樹脂微粒子が膨潤もしくは溶解し、樹脂微粒子と芯粒子内の樹脂とが接着しやすい状況になることだと思われる。した
がって、この状態において有機溶媒は系内に十分に存在することが必要である。具体的には、芯粒子分散液の状態において、固形分(樹脂、着色剤、および必要に応じて離型剤、帯電制御剤など)に対して10質量%〜70質量%、好ましくは30質量%〜60質量%、さらに好ましくは40質量%〜55質量%の範囲にあるのがよい。70質量%を超えると、一度の製造工程で得られる着色樹脂粒子が少なくなり生産効率が低いこと、また有機溶媒が多いと分散安定性が低下して再凝集が発生するなど、安定した製造が難しくなることなどから好ましくない。また、10質量%未満であると前述のように芯粒子に対して樹脂微粒子が十分な強度で付着できなくなり好ましくない。しかしながら、芯粒子を製造する時に好ましい有機溶媒濃度よりも樹脂粒子を付着させる時の好ましい濃度の方が低い場合は、芯粒子を製造した後に有機溶媒を一部除去することで有機溶媒濃度を調整して樹脂粒子を付着させ、その後有機溶媒を完全に除去しても良い。ここで、有機溶媒を完全に除去するとは、後述の脱溶工程で通常使用される公知の方法において除去できる範囲のレベルである。
【0082】
芯粒子にビニル系樹脂微粒子を付着するときの温度としては、10〜60℃、好ましくは20〜45℃である。60℃を超えると、製造に必要なエネルギーが増大するために製造環境負荷が大きくなることに加え、低酸価のビニル系樹脂微粒子が液滴表面に存在することもあり分散が不安定になり粗大粒子が発生する可能性もあるため好ましくない。一方10℃未満では分散体の粘度が高くなり、樹脂微粒子の付着が不十分になるため好ましくない。
【0083】
(脱溶)
得られた着色樹脂分散体から有機溶剤を除去するために、公知の方法を使用することができる。例えば、常圧または減圧下で系全体を徐々に昇温し、液滴中の有機溶剤を完全に蒸発除去する方法を採用することができる。
【0084】
(伸長又は/及び架橋反応)
ウレタン又は/及びウレア基を有する変性されたポリエステル樹脂を導入する目的で、末端にイソシアネート基を有する変性ポリエステル樹脂およびこれと反応可能なアミン類を添加する場合は、水系媒体中にトナー組成物を分散する前に油相中でアミン類を混合しても良いし、水系媒体中にアミン類を加えても良い。上記反応に要する時間は、ポリエステルプレポリマーの有するイソシアネート基構造と、加えたアミン類との反応性により選択されるが、通常1分〜40時間、好ましくは1〜24時間である。反応温度は、通常、0〜150℃、好ましくは20〜98℃である。
【0085】
<洗浄、乾燥工程>
水系媒体に分散されたトナー粒子を洗浄、乾燥する工程は、公知の技術が用いられる。
即ち、遠心分離機、フィルタープレスなどで固液分離した後、得られたトナーケーキを常温〜約40℃程度のイオン交換水に再分散させ、必要に応じて酸やアルカリでpH調整した後、再度固液分離するという工程を数回繰り返すことにより不純物や界面活性剤などを除去した後、気流乾燥機や循環乾燥機、減圧乾燥機、振動流動乾燥機などにより乾燥することによってトナー粉末を得る。この際、遠心分離などでトナーの微粒子成分を取り除いても良いし、また、乾燥後に必要に応じて公知の分級機を用いて所望の粒径分布にすることができる。
【0086】
<外添処理>
得られた乾燥後のトナー粉体にシリコーンオイル処理外添剤、その他外添剤を外添する具体的手段としては、高速で回転する羽根によって混合物に衝撃力を加える方法、高速気流中に混合物を投入し、加速させ、粒子同士または複合化した粒子を適当な衝突板に衝突させる方法などがある。装置としては、オングミル(ホソカワミクロン社製)、I式ミル(日本ニューマチック社製)を改造して、粉砕エアー圧カを下げた装置、ハイブリダイゼイションシステム(奈良機械製作所社製)、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、自動乳鉢などがあげられる。
【0087】
[画像形成方法、画像形成装置、プロセスカートリッジ]
<画像形成装置、プロセスカートリッジ>
本発明の画像形成装置は、本発明のトナーを用いて画像を形成する。なお、本発明のトナーは、一成分現像剤及び二成分現像剤のいずれにも用いることができるが、一成分現像剤として用いることが好ましい。また、本発明の画像形成装置は、無端型の中間転写手段を有することが好ましい。さらに、本発明の画像形成装置は、潜像担持体と、潜像担持体及び/又は中間転写手段に残存したトナーをクリーニングするクリーニング手段を有することが好ましい。このとき、クリーニング手段は、クリーニングブレードを有してもよいし、有さなくてもよい。また、本発明の画像形成装置は、加熱装置を有するローラ又は加熱装置を有するベルトを用いて画像を定着する定着手段を有することが好ましい。さらに、本発明の画像形成装置は、定着部材にオイル塗布を必要としない定着手段を有することが好ましい。さらに、必要に応じて適宜選択したその他の手段、例えば、除電手段、リサイクル手段、制御手段等を有してなることが好ましい。
【0088】
本発明の画像形成装置は、潜像担持体と、現像手段、クリーニング手段等の構成要素をプロセスカートリッジとして構成し、プロセスカートリッジを画像形成装置本体に対して着脱自在に構成してもよい。また、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、分離手段及びクリーニング手段の少なくとも1つを潜像担持体と共に支持してプロセスカートリッジを形成し、画像形成装置本体に着脱自在の単一ユニットとし、画像形成装置本体のレール等の案内手段を用いて着脱自在の構成としてもよい。
【0089】
図3に、本発明の画像形成装置の一例を示す。この画像形成装置は、図示を省略している本体筐体内に、図3中、時計方向に回転駆動される潜像担持体(1)が収納されており、潜像担持体(1)の周囲に、帯電装置(2)、露光装置(3)、本発明のトナー(T)を有する現像装置(4)、クリーニング部(5)、中間転写体(6)、支持ローラ(7)、転写ローラ(8)、除電手段(不図示)等を備えている。
この画像形成装置は、記録媒体例としての複数枚の記録紙(P)を収納する給紙カセット(不図示)を備えており、給紙カセット内の記録紙(P)は、図示しない給紙ローラにより1枚ずつ図示しないレジストローラ対でタイミング調整された後、転写手段としての転写ローラ(8)と、中間転写体(6)の間に送り出される。
【0090】
この画像形成装置は、潜像担持体(1)を図3中、時計方向に回転駆動して、潜像担持体(1)を帯電装置(2)で一様に帯電した後、露光装置(3)により画像データで変調されたレーザーを照射して潜像担持体(1)に静電潜像を形成し、静電潜像の形成された潜像担持体(1)に現像装置(4)でトナーを付着させて現像する。次に、現像装置(4)でトナー像を形成した潜像担持体(1)から中間転写体(6)に転写バイアスを付加してトナー像を中間転写体(6)上に転写し、さらに該中間転写体(6)と転写ローラ(8)の間に記録紙(P)を搬送することにより、記録紙(P)にトナー像を転写する。さらに、トナー像が転写された記録紙(P)を定着手段(不図示)に搬送する。
【0091】
定着手段は、内蔵ヒータにより所定の定着温度に加熱される定着ローラと、定着ローラに所定圧力で押圧される加圧ローラとを備え、転写ローラ(8)から搬送されてきた記録紙を加熱、加圧して、記録紙上のトナー像を記録紙に定着させた後、排紙トレー(不図示)上に排出する。
【0092】
一方、画像形成装置は、転写ローラ(8)でトナー像を記録紙に転写した潜像担持体(1)をさらに回転して、クリーニング部(5)で潜像担持体(1)の表面に残留するトナーを掻き落として除去した後、不図示の除電装置で除電する。画像形成装置は、除電装置で除電した潜像担持体(1)を帯電装置(2)で一様に帯電させた後、上記と同様に、次の画像形成を行う。
【0093】
以下、本発明の画像形成装置に好適に用いられる各部材について詳細に説明する。
潜像担持体(1)としては、その材質、形状、構造、大きさ等について、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができるが、その形状としては、ドラム状、ベルト状が好適に挙げられ、その材質としては、例えば、アモルファスシリコン、セレン等の無機潜像担持体、ポリシラン、フタロポリメチン等の有機潜像担持体等が挙げられる。これらの中でも、長寿命性の点で、アモルファスシリコンや有機潜像担持体が好ましい。
【0094】
潜像担持体(1)に静電潜像を形成する際には、例えば、潜像担持体(1)の表面を帯電させた後、像様に露光することにより行うことができ、静電潜像形成手段により行うことができる。静電潜像形成手段は、例えば、潜像担持体(1)の表面を帯電させる帯電装置(2)と、潜像担持体(1)の表面を像様に露光する露光装置(3)を少なくとも備える。
【0095】
帯電は、例えば、帯電装置(2)を用いて潜像担持体(1)の表面に電圧を印加することにより行うことができる。
帯電装置(2)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、導電性又は半導電性のローラ、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を備えた、それ自体公知の接触帯電器、コロトロン、スコロトロン等のコロナ放電を利用した非接触帯電器等が挙げられる。
【0096】
帯電装置(2)の形状としては、ローラの他にも、磁気ブラシ、ファーブラシ等の形態
を採ってもよく、電子写真装置の仕様や形態に合わせて選択可能である。磁気ブラシを用いる場合、磁気ブラシは、例えば、Zn−Cuフェライト等、各種フェライト粒子を帯電部材として用い、これを支持させるための非磁性の導電スリーブ、これに内包されるマグネットロールによって構成される。また、ブラシを用いる場合、例えば、ファーブラシの材質としては、カーボン、硫化銅、金属又は金属酸化物により導電処理されたファーを用い、これを金属や他の導電処理された芯金に巻き付けたり張り付けたりすることで構成される。
帯電装置(2)は、上記のような接触式の帯電器に限定されるものではないが、帯電器から発生するオゾンが低減された画像形成装置が得られるので、接触式の帯電器を用いることが好ましい。
【0097】
露光は、例えば、露光装置(3)を用いて潜像担持体の表面を像様に露光することにより行うことができる。露光装置(3)としては、帯電装置(2)により帯電された潜像担持体(1)の表面に、形成すべき像様に露光を行うことができる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、複写光学系、ロッドレンズアレイ系、レーザー光学系、液晶シャッタ光学系等の各種露光器が挙げられる。
【0098】
現像は、例えば、本発明のトナーを用いて静電潜像を現像することにより行うことができ、現像装置(4)により行うことができる。現像装置(4)は、例えば、本発明のトナーを用いて現像することができる限り、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、本発明のトナーを収容し、静電潜像にトナーを接触又は非接触的に付与可能な現像器を少なくとも有するものが好適に挙げられる。
【0099】
現像装置(4)としては、周面にトナーを担持し、潜像担持体(1)に接して回転すると共に、潜像担持体(1)上に形成された静電潜像にトナーを供給して現像を行う現像ローラ(40)と、現像ローラ(40)の周面に接し、現像ローラ(40)上のトナーを薄層化する薄層形成部材(41)を有する態様が好ましい。
【0100】
現像ローラ(40)としては、金属ローラ及び弾性ローラのいずれかが好適に用いられる。金属ローラとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、アルミニウムローラ等が挙げられる。金属ローラは、ブラスト処理を施すことで、比較的容易に任意の表面摩擦係数を有する現像ローラ(40)を作製することができる。具体的には、アルミニウムローラにガラスビーズブラストで処理することにより、ローラ表面を粗面化でき、現像ローラ上に適正なトナー付着量が得られる。
【0101】
弾性ローラとしては、弾性ゴム層を被覆したローラが用いられ、さらに、表面にはトナーと逆の極性に帯電しやすい材料からなる表面コート層が設けられる。弾性ゴム層は、薄層形成部材(41)との当接部での圧力集中によるトナー劣化を防止するために、JIS−Aで60度以下の硬度に設定される。表面粗さ(Ra)は、0.3〜2.0μmに設定され、必要量のトナーが表面に保持される。また、現像ローラ(40)には、潜像担持体(1)との間に電界を形成させるための現像バイアスが印加されるので、弾性ゴム層は、103〜1010Ωの抵抗値に設定される。現像ローラ(40)は、時計回りの方向に回転し、表面に保持したトナーを薄層形成部材(41)及び潜像担持体(1)との対向位置へと搬送する。
【0102】
薄層形成部材(41)は、供給ローラ(42)と現像ローラ(40)の当接位置よりも低い位置に設けられる。薄層形成部材(41)は、ステンレス(SUS)、リン青銅等の金属板バネ材料を用い、自由端側を現像ローラ(40)の表面に10〜40N/mの押圧力で当接させたもので、その押圧下を通過したトナーを薄層化するとともに摩擦帯電によって電荷を付与する。さらに、薄層形成部材(41)には摩擦帯電を補助するために、現像バイアスに対してトナーの帯電極性と同方向にオフセットさせた値の規制バイアスが印
加される。
【0103】
現像ローラ(40)の表面を構成するゴム弾性体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、スチレン−ブタジエン系共重合体ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン系共重合体ゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム又はこれらの2種以上のブレンド物等が挙げられる。これらの中でも、エピクロロヒドリンゴムとアクリロニトリル−ブタジエン系共重合体ゴムのブレンドゴムが特に好ましい。
現像ローラ(40)は、例えば、導電性シャフトの外周にゴム弾性体を被覆することにより製造される。導電性シャフトは、例えば、ステンレス(SUS)等の金属で構成される。
【0104】
転写は、例えば、潜像担持体(1)を帯電することにより行うことができ、転写ローラにより行うことができる。転写ローラとしては、トナー像を中間転写体(6)上に転写して転写像を形成する第一次転写手段と、転写像を記録紙(P)上に転写する第二次転写手段(転写ローラ(8))を有する態様が好ましい。このとき、トナーとして、二色以上、好ましくは、フルカラートナーを用い、トナー像を中間転写体(6)上に転写して複合転写像を形成する第一次転写手段と、複合転写像を記録紙(P)上に転写する第二次転写手段を有する態様がさらに好ましい。
なお、中間転写体(6)は、特に制限はなく、目的に応じて、公知の転写体の中から適宜選択することができ、例えば、転写ベルト等が好適に挙げられる。
【0105】
中間転写体クリーニングブレードは本発明においては20〜50N/mの押圧力を中間転写体クリーニングブレードに印加することが好ましい。
またその際、中間転写体クリーニングブレード9と中間転写体6表面との接触部が拡大し、外添剤、トナー通過阻止力が分散しないように、中間転写体表面での中間転写体クリーニングブレード9との接触点での接線と、中間転写体クリーニングブレード20における中間転写体6側の面とで形成される接触角度を70〜82°としている。
【0106】
また、押圧力を増大させた場合、中間転写体クリーニングブレード20の中間転写体6との接触部周辺での弾性変形が大きくなり、接触面積も増大する傾向にあるが、中間転写体表面での中間転写体クリーニングブレード20との接触点での接線と、中間転写体クリーニングブレード20における中間転写体6側の面とで形成される接触角度を70〜82°としているので、不要な接触を減らし、印加された押圧力からシャープな分布のトナー通過阻止力を得ることが可能となっている。
【0107】
さらに、反発弾性を35〜55%の範囲に保つことにより、ブレード長手方向にて発生する摩擦力のムラに対して弾性変形により対応し、安定した接触を保つことが可能となっている。
【0108】
潜像担持体、中間転写体クリーニングブレードとも反発弾性が低く、当接圧力が低く、当接角度が大きい場合、L/L環境下でクリーニングブレードの反発弾性が低く、当接圧力が低く、当接角度が大きい為、外添剤、トナーの阻止力が一番悪くなる条件である。
クリーニングブレードの反発弾性が高く、当接圧力が高く、当接角度が小さい場合、H/H環境下でクリーニングブレードの反発弾性が高く、当接圧力が高く、当接角度が小さい為、ブレードの捲くれ上がりが一番悪くなる条件である。
【0109】
転写手段(第一次転写手段、第二次転写手段)は、潜像担持体(1)上に形成されたトナー像を記録紙(P)側へ剥離帯電させる転写器を少なくとも有することが好ましい。転写手段は、1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。転写手段としては、コロナ放電によるコロナ転写器、転写ベルト、転写ローラ、圧力転写ローラ、粘着転写器等が挙げられる。
【0110】
なお、記録紙(P)としては、代表的には、普通紙であるが、現像後の未定着像を転写可能なものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、OHP用のPETベース等も用いることができる。
【0111】
定着は、例えば、記録紙(P)に転写されたトナー像に対して、定着手段を用いて行うことができ、各色のトナー像に対して、記録紙(P)に転写する毎に行ってもよいし、各色のトナー像を積層した状態で一度に同時に行ってもよい。
定着手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、公知の加熱加圧手段が好適である。加熱加圧手段としては、加熱ローラと加圧ローラの組み合わせ、加熱ローラと加圧ローラと無端ベルトの組み合わせ等が挙げられる。なお、加熱加圧手段による加熱温度は、80〜200℃が好ましい。
【0112】
図4に示すようなフッ素系表層剤構成のソフトローラタイプの定着装置であってよい。
これは、加熱ローラ(9)は、アルミ芯金(10)上にシリコーンゴムからなる弾性体層(11)及びPFA(四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)表層(12)を有しており、アルミ芯金内部にヒータ(13)を備えている。加圧ローラ(14)は、アルミ芯金(15)上にシリコーンゴムからなる弾性体層(16)及びPFA表層(17)を有している。なお、未定着画像(18)が印字された記録紙(P)は図示のように通紙される。
【0113】
なお、本発明においては、目的に応じて、定着手段と共に、又は、これに代えて、例えば、公知の光定着器を用いてもよい。
【0114】
除電は、例えば、潜像担持体に対して、除電バイアスを印加することにより、行うことができ、除電手段により好適に行うことができる。除電手段は、特に制限はなく、潜像担持体に対して、除電バイアスを印加することができればよく、公知の除電器の中から適宜選択することができ、例えば、除電ランプ等が好適に挙げられる。
【0115】
クリーニングは、例えば、潜像担持体上に残留するトナーを、クリーニング手段により除去することにより、好適に行うことができる。クリーニング手段は、特に制限はなく、潜像担持体上に残留するトナーを除去することができればよく、公知のクリーナの中から適宜選択することができ、例えば、磁気ブラシクリーナ、静電ブラシクリーナ、磁気ローラクリーナ、ブレードクリーナ、ブラシクリーナ、ウエブクリーナ等が好適に挙げられる。
本発明ではもっとも安価な手段としてブレードクリーニングが好ましい。
【0116】
図8は、本発明の画像形成装置において用いるクリーニング装置5を示す図であり、図9は、クリーニング部の詳細説明図であり、図10は、クリーニングブレードの詳細説明図である。
図8において、潜像担持体1表面に付着したトナーを清掃するために使用されるクリーニング装置5は、トナー回収ケース5cと当該トナー回収ケース5c内に設けられた支点軸5dにより支持され、潜像担持体1方向に回転可動が可能であり、且つクリーニングブレード5bを装着可能とした可動部材5e及び支点軸5dを中心にクリーニングブレード5b装着位置と反対側の可動部材5e端部に装着され、可動部材5eに回転力およびクリーニングブレード5bに潜像担持体1への押圧力を供給する引張バネ5f、前記クリーニングブレード5bの接触により潜像担持体1表面より掻き取られたトナーをトナー回収ケース内で移送するスクリュー5gを備えている。
【0117】
また、図8および図9に示すように、潜像担持体クリーニングブレード5bは、図10に示される板状のクリーニングブレード5b−1及びこれを支持する支持部材5b−2から構成され、クリーニングブレード5bは、バネ等による付勢手段により、クリーニングブレード5b−1が矢印方向(時計回り)に回転する潜像担持体1表面に所定の接触角θで圧接されて使用される。
【0118】
クリーニングブレード5b−1に使用される材質としては、硬度〔JIS−A型〕が60〜80、伸びが300〜350%、永久伸びが1.0〜5.0%、300%モジュラスが100〜350kg/cm、反発弾性が10〜35%の範囲にあるものが用いられ、従来、板状ブレード部材において慣用されている樹脂、例えばウレタン系,スチレン系,オレフィン系,塩化ビニル系,ポリエステル系,ポリアミド系,フッ素系樹脂などの熱可塑性樹脂の中から適宜選択して用いることができる。また、特にクリーニングブレード摩擦係数についてはより低いものが望ましい。
支持部材5b−2の材質は、特に限定はされることはない。
例えば、金属、プラスチック、セラミック等を用いることができるが、ある程度の強度がかかるため、金属板が望ましく、特にSUS等の鋼板、アルミニウム板、リン青銅板等を用いることが望ましい。
【0119】
前記トナーを使用する際、従来のブレードクリーニング方式では押圧力の増加に伴って、クリーニングブレード5b及び潜像担持体1表面の接触部では摩擦力が上昇し、潜像担持体1の回転駆動と共に、クリーニングブレード5bの接触端が潜像担持体回転方向に巻き込まれ、破壊に至る場合や、少なくとも接触部において巻き込みによる圧縮から弾性による復元の繰り返し運動における振幅が拡大し、潜像担持体表面との密着性が低下し、外添剤、トナーのすり抜けによるクリーニング不良が発生するなど、制止層の生成を阻害し、画像上にノイズとして出現するため、クリーニングブレードによる潜像担持体表面への押圧力を適正化させ、外添剤、トナー制止力を向上させる必要が生じ、本事例においては20〜50N/mの押圧力をクリーニングブレードに印加する必要がある。
またその際、クリーニングブレード5bと潜像担持体1表面との接触部が拡大し、外添剤、トナー通過阻止力が分散しないように、潜像担持体表面でのクリーニングブレード5bとの接触点での接線と、クリーニングブレード5bにおける潜像担持体1側の面とで形成される接触角度を70〜82°としている。
【0120】
また、押圧力を増大させた場合、クリーニングブレード5bの潜像担持体1との接触部周辺での弾性変形が大きくなり、接触面積も増大する傾向にあるが、潜像担持体表面でのクリーニングブレード5bとの接触点での接線と、クリーニングブレード5bにおける潜像担持体1側の面とで形成される接触角度を70〜82°としているので、不要な接触を減らし、印加された押圧力からシャープな分布のトナー通過阻止力を得ることが可能となっている。
【0121】
さらに、反発弾性を10〜35%の範囲に保つことにより、ブレード長手方向にて発生する摩擦力のムラに対して弾性変形により対応し、安定した接触を保つことが可能となっている。
【0122】
リサイクルは、例えば、クリーニング手段により除去したトナーを、リサイクル手段により現像手段に搬送することにより、好適に行うことができる。リサイクル手段としては、特に制限はなく、公知の搬送手段等が挙げられる。
【0123】
制御は、例えば、制御手段により各手段を制御することにより、好適に行うことができる。制御手段は、各手段を制御することができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の機器が挙げられる。
本発明の画像形成装置、画像形成方法およびプロセスカートリッジによれば、定着性に優れ、現像プロセスにおけるストレスに対して割れなどの劣化のない静電潜像現像用トナーを用いることで、良好な画像を提供することができる。
【0124】
<多色画像形成装置>
図5は、本発明を適用した多色画像形成装置の一例を示す概略図である。この図5はタンデム型のフルカラー画像形成装置である。
【0125】
この図5において、画像形成装置は、図示しない本体筐体内に、図中時計方向に回転駆動される潜像担持体(1)が収納されており、潜像担持体(1)の周囲に、帯電装置(2)、露光装置(3)、現像装置(4)、中間転写体(6)、支持ローラ(7)、転写ローラ(8)等が配置されている。画像形成装置は、図示しないが複数枚の記録紙を収納する給紙カセットを備えており、給紙カセット内の記録紙(P)は、図示しない給紙ローラにより1枚ずつ図示しないレジストローラ対でタイミング調整された後、中間転写体(6)と転写ローラ(8)の間に送り出され、定着手段(19)によって定着される。
【0126】
画像形成装置は、潜像担持体(1)を図5中時計方向に回転駆動して、潜像担持体(1)を帯電装置(2)で一様に帯電した後、露光装置(3)により画像データで変調されたレーザーを照射して潜像担持体(1)に静電潜像を形成し、静電潜像の形成された潜像担持体(1)に現像装置(4)でトナーを付着させて現像する。画像形成装置は、現像装置(4)で潜像担持体にトナーを付着して形成されたトナー画像を、潜像担持体(1)から中間転写体に転写させる。これをシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、及びブラック(K)の4色それぞれについて行い、フルカラーのトナー画像を形成する。20は中間転写体クリーニングブレードである。
【0127】
次に、図6は、リボルバタイプのフルカラー画像形成装置の一例を示す概略図である。
この画像形成装置は、現像装置の動作を切り替えることによって1つの潜像担持体(1)上に順次複数色のトナーを現像していくものである。そして、転写ローラ(8)で中間転写体(6)上のカラートナー画像を記録紙(P)に転写し、トナー画像の転写された記録紙(P)を定着部に搬送し、定着画像を得る。
【0128】
一方、画像形成装置は、中間転写体(6)でトナー画像を記録紙(P)に転写した潜像担持体(1)を更に回転して、クリーニング部(5)で潜像担持体(1)表面に残留するトナーをブレードにより掻き落として除去した後、除電部で除電する。画像形成装置は、除電部で除電した潜像担持体(1)を帯電装置(2)で一様に帯電させた後、上記同様に、次の画像形成を行う。なお、クリーニング部(5)は、ブレードで潜像担持体(1)上の残留トナーを掻き落とすものに限るものではなく、例えばファーブラシで潜像担持体(1)上の残留トナーを掻き落とすものであってもよい。20は中間転写体クリーニングブレードである。
本発明の画像形成方法及び画像形成装置では、前記現像剤として本発明の前記トナーを用いているので良好な画像が得られる。
【0129】
<プロセスカートリッジ>
本発明のプロセスカートリッジは、静電潜像を担持する静電潜像担持体と、該静電潜像担持体上に担持された静電潜像を、本発明のトナーを用いて現像し可視像を形成する現像手段とを、少なくとも有してなり、更に必要に応じて適宜選択した、帯電手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段、除電手段などのその他の手段を有してなり、画像形成装置本体に着脱自在なものである。
【0130】
前記現像手段としては、本発明の前記トナー乃至前記現像剤を収容する現像剤収容器と、該現像剤収容器内に収容されたトナー乃至現像剤を担持しかつ搬送する現像剤担持体とを、少なくとも有してなり、更に、担持させるトナー層厚を規制するための層厚規制部材等を有していてもよい。本発明のプロセスカートリッジは、各種電子写真装置、ファクシミリ、プリンターに着脱自在に備えさせることができ、後述する本発明の画像形成装置に着脱自在に備えさせるのが好ましい。
【0131】
前記プロセスカートリッジは、例えば、図7に示すように、潜像担持体(1)を内蔵し、帯電装置(2)、現像装置(4)、転写ローラ(8)、クリーニング部(5)を含み、更に必要に応じてその他の手段を有してなる。図7中、(L)は露光装置からの露光、(P)は記録紙をそれぞれ示す。前記潜像担持体(1)としては、前記画像形成装置と同様なものを用いることができる。前記帯電装置(2)には、任意の帯電部材が用いられる。
【0132】
次に、図に示すプロセスカートリッジによる画像形成プロセスについて示すと、潜像担持体(1)は、矢印方向に回転しながら、帯電装置(2)による帯電、露光手段(図示せず)による露光(L)により、その表面に露光像に対応する静電潜像が形成される。この静電潜像は、現像装置(4)でトナー現像され、該トナー現像は転写ローラ(8)により、記録紙(P)に転写され、プリントアウトされる。次いで、像転写後の潜像担持体表面は、クリーニング部(5)によりクリーニングされ、更に除電手段(図示せず)により除電されて、再び、以上の操作を繰り返すものである。
【実施例】
【0133】
以下、本発明を実施例及び比較例を示すことにより更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
以下では、「部」及び「%」は特にことわらない限り質量部及び質量%を示す。
【0134】
まず、実施例及び比較例において得たトナーについての分析及び評価の方法について述べる。
以下では本件発明のトナーを一成分現像剤として用いた場合についての評価を行ったが、本発明のトナーは、好適な外添処理と好適なキャリヤを使用することにより、二成分現像剤としても使用することができる。
【0135】
<測定方法>
(シリコーンオイル遊離量の測定法)
トナー中の遊離シリコーンオイル量(シリコーンオイル遊離量)の測定は、以下の(1)〜(3)の手順からなる定量方法によって測定する。
(1)遊離シリコーンオイルの抽出
試料のトナーをクロロホルムに浸漬、攪拌、放置する。
遠心分離により上澄み液を除去した後の固形分に、新たにクロロホルムを加え、攪拌、放置する。
この操作を繰り返し、試料から遊離シリコーンオイルを取り除く。
(2)炭素量の定量
遊離シリコーンオイルを取り除いた試料中の炭素量の定量をCHN 元素分析装置(CHN コーダーMT−5型(ヤナコ製))により測定する。
(3)シリコーンオイル遊離量の定量
シリコーンオイル遊離量を下記の式(1)により求める。
シリコーンオイル遊離量=(C0−C1)/C×100×40/12(wt%) ・・・(1)
ここで、
C :処理剤シリコーンオイル中炭素含有率(wt%)
C0:抽出操作前の試料中炭素量(wt%)
C1:抽出操作後の試料中炭素量(wt%)
係数40/12:ポリジメチルシロキサンの構造中のC量から全体量への換算係数 以下にポリジメチルシロキサンの構造式を示す。
【0136】
【化1】

【0137】
トナー中の総シリコーンオイル遊離量がトナーに対し0.2wt%〜0.5wt%が好ましく、0.3wt%〜0.5wt%がより好ましく、0.3wt%〜0.4wt%がさらに好ましい。0.2wt%より少ないとクリーニング性が悪化し、また潜像担持体膜削れ量も多くなる。0.5wt%より多くなると、現像の部材汚染が発生し、例えば一成分現像で用いられる規制ブレードが汚染され、印字耐久を重ねると汚染により、帯電能力が低下し、トナーの帯電量の低下が起こる。
【0138】
(平均粒径)
次に、トナー粒子の粒度分布の測定方法について説明する。
コールターカウンター法によるトナー粒子の粒度分布の測定装置としては、コールターカウンターTA−IIやコールターマルチサイザーII(いずれもコールター社製)があげられる。測定方法は以下の通りである。
【0139】
まず、電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩)を0.1〜5ml加える。ここで、電解液とは1級塩化ナトリウムを用いて約1%NaCl水溶液を調製したもので、例えばISOTON−II(コールター社製)が使用できる。ここで、更に測定試料を固形分にして2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は、超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行ない、前記測定装置により、アパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、トナー粒子又はトナーの体積、個数を測定して、体積分布と個数分布を算出する。得られた分布から、トナーの体積平均粒径(Dv)、個数平均粒径(Dn)を求めることができる。
【0140】
チャンネルとしては、例えば2.00〜2.52μm未満;2.52〜3.17μm未満;3.17〜4.00μm未満;4.00〜5.04μm未満;5.04〜6.35μm未満;6.35〜8.00μm未満;8.00〜10.08μm未満;10.08〜12.70μm未満;12.70〜16.00μm未満;16.00〜20.20μm未満;20.20〜25.40μm未満;25.40〜32.00μm未満;32.00〜40.30μm未満の13チャンネルを使用し、粒径2.00μm以上乃至40.30μm未満の粒子を対象とすることができる。
【0141】
本発明のトナーにおいて良好な画質でかつ安価な電子写真方式を提供するためには、トナーの体積平均粒径が3〜9μm、好ましくは4〜8μm、より好ましくは4〜7μmの範囲にあることが好ましい。3μm未満ではトナー付着力が相対的に増大し、電界によるトナー操作性が落ちるため、安価なブレードでのクリーニングが困難になり好ましくない。また、9μmを超える場合は、細線の再現性など画像品位が低下する。
また、前記トナーの体積平均粒径と個数平均粒径の比(体積平均粒径/個数平均粒径)は、1.25以下が好ましく、1.20以下がより好ましく、1.17以下がさらに好ましい。1.25を超えると、繰り返し印字することにより粒径の大きなトナーもしくは場合によっては小さなトナーが消費され、現像装置内に残存するトナーの平均粒径が変化するため、残存したトナーを現像するための最適な現像条件がずれてしまい、その結果、帯電不良、搬送量の極端な増加もしくは減少、トナー詰まり、トナーこぼれなど諸現象が発生しやすくなる。
【0142】
(平均円形度)
形状の計測方法としては粒子を含む懸濁液を平板上の撮像部検知帯に通過させ、CCDカメラで光学的に粒子画像を検知し、解析する光学的検知帯の手法が適当である。この手法で得られる投影面積の等しい相当円の周囲長を実在粒子の周囲長で除した値が平均円形度である。
この値はフロー式粒子像分析装置FPIA−2000により平均円形度として計測した値である。具体的な測定方法としては、容器中の予め不純固形物を除去した水100〜150ml中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスフォン酸塩を0.1〜0.5ml加え、更に測定試料を0.1〜0.5g程度加える。試料を分散した懸濁液は超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行ない、分散液濃度を3000〜1万個/μlとして前記装置によりトナーの形状及び分布を測定することによって得られる。
【0143】
(樹脂微粒子の体積平均粒径)
樹脂微粒子の体積平均粒径の測定方法としては、ナノトラック粒度分布測定装置 UPA−EX150(日機装製、動的光散乱法/レーザードップラー法)で測定することができる。具体的な測定方法としては、樹脂微粒子が分散された分散液を測定濃度範囲に調整して測定する。その際、あらかじめ分散液の分散溶媒のみでバッククラウンド測定をしておく。この測定法により、本発明で用いられる樹脂微粒子の体積平均粒径範囲である、数十nm〜数μmまでを測定することが可能である。
【0144】
(分子量)
使用するポリエステル樹脂やビニル系共重合樹脂などの分子量は、通常のGPC(gel permeation chromatography)によって以下の条件で測定した。
・装置:HLC−8220GPC(東ソー社製)
・カラム:TSKgel SuperHZM−M x 3
・温度:40℃
・溶媒:THF(テトラヒドロフラン)
・流速:0.35ml/分
・試料:濃度0.05〜0.6%の試料を0.01ml注入
以上の条件で測定したトナー樹脂の分子量分布から単分散ポリスチレン標準試料により作製した分子量校正曲線を使用して重量平均分子量Mwを算出した。単分散ポリスチレン標準試料としては、5.8×100,1.085×10000,5.95×10000,3.2×100000,2.56×1000000,2.93×1000,2.85×10000,1.48×100000,8.417×100000,7.5×1000000の物を10点使用した。
【0145】
(ガラス転移点および吸熱量)
使用するポリエステル樹脂やビニル系共重合樹脂などのガラス転移点の測定としては、例えば示差走査熱量計(例えばDSC−6220R:セイコーインスツル社)を用いて、まず、室温から昇温速度10℃/minで150℃まで加熱した後、150℃で10min間放置、室温まで試料を冷却して10min放置、再度150℃まで昇温速度10℃/minで加熱して、ガラス転移点以下のベースラインと、ガラス転移点以上のベースラインの高さが1/2に相当する曲線部分から求めることができる。
【0146】
また、離型剤や結晶性樹脂などの吸熱量や融点の測定も同様に行える。吸熱量は測定された吸熱ピークのピーク面積を計算することにより求められる。一般的に、トナー内部に用いる離型剤はトナーの定着温度より低い温度で融解し、その際の融解熱が吸熱ピークとなって現われる。また、離型剤によっては融解熱の他に固相での相転移による転移熱を伴うものがあるが、本発明ではその合計を融解熱の吸熱量とする。
【0147】
(比表面積)
無機粒子のBET比表面積の測定は、QUANTACHROME社製比表面積計オートソープ1を使用し以下の通り行う。
測定サンプル約0.1gをセル中に秤取し温度40℃、真空度1.0×10-3mmHg以下で12時間以上脱気処理を行う。
その後、液体窒素により冷却した状態で窒素ガスを吸着し多点法により値を求める。
【0148】
(外添剤粒子径)
本発明に使用される無機微粒子の粒子径は、動的光散乱を利用する粒径分布測定装置、例えば大塚電子社製のDLS−700やコールターエレクトロニクス社製のコールターN4により測定可能である。
しかし、シリコーンオイル処理後の粒子の二次凝集を解離することは困難であるため、走査型電子顕微鏡もしくは透過型電子顕微鏡により得られる写真から直接粒子径を求めることが好ましい。
この場合、少なくとも100個以上の無機微粒子を観察しその長径の平均値を求める。
【0149】
(クリーニングブレード反発弾性)
反発弾性は23℃でJIS K6255に準拠したリュプケ式反発弾性試験装置(安田精機製作所製)により求めた。
【0150】
(クリーニングブレード当接圧力)
当接圧の測定は、潜像担持体と同径の金属管の長手方向幅5mmを可動とし、可動面裏側にロードセルを配置し、長さ当りの押し当て力を測定して当接力とした。
【0151】
(評価手法1:潜像担持体のクリーニング性・膜削れ量・規制ブレード汚染性)
<潜像担持体クリーニング性(1)>
リコー製IPSIO SP C220を用い、モノクロモードでB/W比6%の所定のプリントパターンをN/N環境下(23℃、45%)で1000枚連続印字した。
クリーニングブレードは反発弾性30%、当接圧力30N/m、当接角度75°で実施した。
1000枚印字終了した時点の潜像担持体上に残留しているトナーをテープ(キハラ株式会社 Tテープ)で剥離し、分光濃度計Xrite 939でL*を測定した。
◎:90以上
○:85以上90未満
△:80以上85未満
×:80未満
【0152】
<潜像担持体クリーニング性(2)>
リコー製IPSIO SP C220を用い、モノクロモードでB/W比6%の所定のプリントパターンをL/L環境下(10℃、15%)で1000枚連続印字した。
クリーニングブレードは反発弾性10%、当接圧力20N/m、当接角度82°で実施した。この条件はL/L環境下でクリーニングブレードの反発弾性が低く、当接圧力が低く、当接角度が大きい為、外添剤、トナーの阻止力が一番悪くなる条件である。
前記条件で1000枚印字終了した時点の潜像担持体上に残留しているトナーをテープで剥離し、分光濃度計Xrite 939でL*を測定した。
◎:90以上
○:85以上90未満
△:80以上85未満
×:80未満
【0153】
<潜像担持体クリーニング性(3)>
リコー製IPSIO SP C220を用い、モノクロモードでB/W比6%の所定のプリントパターンをH/H環境下(27℃、80%)で1000枚連続印字した。
クリーニングブレードは反発弾性35%、当接圧力50N/m、当接角度70°で実施した。この条件はH/H環境下でクリーニングブレードの反発弾性が高く、当接圧力が高く、当接角度が小さい為、クリーニングブレードが破壊、まくれ上がりが悪くなる条件である。
前記条件で1000枚印字中にクリーニングブレードのまくれ上がりが発生した枚数をカウントした。
◎:1000枚以上
○:900枚以上1000枚未満
△:800枚以上900枚未満
×:800枚未満
【0154】
<潜像担持体膜削れ量>
前記クリーニング性−1評価前後で潜像担持体の膜厚を測定し、膜削れ量を測定した。
測定は、渦電流式膜厚測定器(フィッシャー社製)により任意の測定点80点における膜厚を測定することによって行った。
◎:0.3μm以下
○:0.3μmより多く、0.4μm以下
△:0.4μmより多く、0.6μm以下
×:0.6μmより多い
【0155】
<規制ブレード汚染>
前記クリーニング性評価前後でトナー帯電量差を測定し、規制ブレード汚染度合いを評価した。
帯電量は現像ローラ上トナーをトレック・ジャパン社製吸引式小型帯電量測定装置を用いて10点平均で求めた。
◎:帯電量差5μC/g以下
○:帯電量差5μC/gより多く、10μC/g以下
△:帯電量差10μC/gより多く、15μC/g以下
×:15μC/gより多い
【0156】
(評価手法2:中間転写体のクリーニング性・膜削れ量・規制ブレード汚染性)
<中間転写体クリーニング性(1)>
リコー製IPSIO SP C220を用い、モノクロモードでB/W比6%の所定のプリントパターンをL/L環境下(10℃、15%)で1000枚連続印字した。
クリーニングブレードは反発弾性35%、当接圧力20N/m、当接角度82°で実施した。この条件はL/L環境下でクリーニングブレードの反発弾性が低く、当接圧力が低く、当接角度が大きい為、外添剤、トナーの阻止力が一番悪くなる条件である。
前記条件で1000枚印字終了した時点の潜像担持体上に残留しているトナーをテープ(キハラ株式会社 Tテープ)で剥離し、分光濃度計Xrite 939でL*を測定した。
◎:90以上
○:85以上90未満
△:80以上85未満
×:80未満
【0157】
<中間転写体クリーニング性(2)>
リコー製IPSIO SP C220を用い、モノクロモードでB/W比6%の所定のプリントパターンをH/H環境下(27℃、80%)で1000枚連続印字した。
クリーニングブレードは反発弾性55%、当接圧力50N/m、当接角度70°で実施した。この条件はH/H環境下でクリーニングブレードの反発弾性が高く、当接圧力が高く、当接角度が小さい為、クリーニングブレードが破壊、まくれ上がりが悪くなる条件である。
前記条件で1000枚印字中にクリーニングブレードのまくれ上がりが発生した枚数をカウントした。
◎:1000枚以上
○:900枚以上1000枚未満
△:800枚以上900枚未満
×:800枚未満
【0158】
<中間転写体削れ量>
前記中間転写体クリーニング性(1)評価前後で中間転写体の縦スジ本数を測定し、削れ量を測定した。
◎:5本以下
○:5本より多く、10本以下
△:10本より多く、20本以下
×:20本より多い
【0159】
<規制ブレード汚染(現像部材汚染)>
前記クリーニング性評価前後でトナー帯電量差を測定し、規制ブレード汚染度合いを評価した。
◎:帯電量差5μC/g以下
○:帯電量差5μC/gより多く、10μC/g以下
△:帯電量差10μC/gより多く、15μC/g以下
×:15μC/gより多い
【0160】
次に、実施例等で用いたトナーの原料の調製方法について述べる。
<外添剤の処理方法>
(シリカ1)
シリコーンオイルとして300csのポリジメチルシロキサン(信越化学社製)の所定量をヘキサン30重量部に溶解し、処理用外添剤 OX50(日本アエロジル株式会社製 平均粒径が35nmの未処理シリカ)100重量部をその中に攪拌しながら超音波照射することによって分散した。
窒素パージ下の攪拌下に、表1−1に示すシリコーンオイル添加量となるように導入し、攪拌を継続した状態で、表1に示す反応温度及び反応時間で処理して[シリカ1]を得た。
以下、表1に示す部分以外は[シリカ1]を得た場合と同様にして[シリカ2]〜[シリカ9]、[チタニア1]、[アルミナ1]を得た。
表1−1はシリコーンオイル処理シリカ中のカーボン量、カーボン遊離率、カーボン残存量を示したものである。また、表1−2はこれをシリコーンオイル処理シリカ中のシリコーンオイル(PDMS:ポリジメチルシロキサン)の量、遊離率、残存量に換算した値を示したものである。
【0161】
【表1−1】

【0162】
【表1−2】

【0163】
<非結晶性ポリエステルの合成>
(ポリエステル1)
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物2765部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物480部、テレフタル酸1100部、アジピン酸225部およびジブチルチンオキサイド10部を入れ、常圧230℃で8時間反応し、さらに10〜15mmHgの減圧で5時聞反応した後、反応容器に無水トリメリット酸130部を入れ、180℃、常圧で2時間反応し、[ポリエステル1]を得た。[ポリエステル1]は、数平均分子量2200、重量平均分子量5600、Tg43℃、酸価24であった。
【0164】
(ポリエステル2)
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物264部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物523部、テレフタル酸123部、アジピン酸173部およびジブチルチンオキサイド1部を入れ、常圧230℃で8時間反応し、さらに10〜15mmHgの減圧で8時聞反応した。その後、反応容器に無水トリメリット酸26部を入れ、180℃、常圧で2時間反応し、[ポリエステル2]を得た。[ポリエステル2]は、数平均分子量4000、重量平均分子量17000、Tg65℃、酸価12であった。
【0165】
<結晶性ポリエステルの合成>
(ポリエステル3)
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応容器中に、1,6−ヘキサンジオール500部、コハク酸500部、ジブチルチンオキサイド2.5部を入れ、常圧200℃で8時間反応し、さらに10〜15mmHgの減圧で1時聞反応し、[ポリエステル3]を得た。[ポリエステル3]は、DSC測定にて65℃で吸熱ピークを示した。
【0166】
<プレポリマーの合成>
冷却管、撹拌機および窒索導入管の付いた反応容器中に、1,2−プロピレングリコール366部、テレフタル酸566部、無水トリメリット酸44部およびチタンテトラブトキシド6部を入れ、常圧230℃で8時間反応し、さらに10〜15mmHgの減圧で5時間反応し[中間体ポリエステル1]を得た。[中間体ポリエステル1]は、数平均分子量3200、重量平均分子量12000、Tg55℃であった。
次に、冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応容器中に、[中間体ポリエステル1]420部、イソホロンジイソシアネート80部、酢酸エチル500部を入れ100℃で5時間反応し、[プレポリマー]を得た。[プレポリマー]の遊離イソシアネート質量
%は、1.34%であった。
【0167】
<シェル層用樹脂微粒子分散液の作製>
(ビニル系共重合樹脂微粒子V−1)
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応容器中に、ドデシル硫酸ナトリウム1.6部、イオン交換水492部を入れ、80℃に加熱した後、過硫酸カリウム2.5部をイオン交換水100部に溶解したものを加え、その15分後にスチレンモノマー160部、ブチルアクリレートモノマー40部、n−オクチルメルカプタン3.5部の混合液を90分かけて滴下し、その後さらに60分80℃に保った。その後冷却して、[ビニル系共重合樹脂微粒子V−1]の分散液を得た。この分散液の固形分濃度を測定すると25%であった。また、微粒子の体積平均粒径は130nmであった。分散液を少量シャーレに取り、分散媒を蒸発させて得た固形物を測定したところ、数平均分子量11000、重量平均分子量18000、Tg83℃であった。
【0168】
<マスターバッチの合成>
カーボンブラック(キャボット社製 リーガル400R):40部、結着樹脂:ポリエステル樹脂(三洋化成RS−801 酸価10、Mw20000、Tg64℃):60部、水:30部をヘンシェルミキサーにて混合し、顔料凝集体中に水が染み込んだ混合物を得た。これをロ−ル表面温度130℃に設定した2本ロールにより45分間混練を行ない、パルベライザーで1mmφの大きさに粉砕し、[マスターバッチ1]を得た。
【0169】
[実施例1]
<油相の作製>
撹拌棒および温度計をセットした容器に、[ポリエステル1]4部、[ポリエステル3]20部、パラフィンワックス(融点72℃)8部、酢酸エチル96部を仕込み、撹拌下80℃に昇温し、80℃のまま5時間保持した後、1時間で30℃に冷却した。次いで[マスターバッチ1]35部を加えて1時間混合した後、容器を移し替えて、ビーズミル(ウルトラビスコミル、アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/hr、ディスク周速度6m/秒、0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填、3パスの条件で分散を行い、[原料溶解液1]を得た。次いで、[原料溶解液1]81.3部に[ポリエステル1]の70%酢酸エチル溶液74.1部、[ポリエステル2]21.6部および酢酸エチル21.5部を加えてスリーワンモーターで2時間攪拌し[油相1]を得た。[油相1]の固形分濃度(130℃、30分で測定)が49%となるように酢酸エチルを加えて調整した。
【0170】
<水相の調製>
イオン交換水472部、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの50%水溶液(エレミノールMON−7:三洋化成工業製)81部、造粘剤としてカルボキシメチルセルロースの1%水溶液67部、酢酸エチル54部を混合撹拌し、乳白色の液体を得た。これを[水相1]とする。
【0171】
<乳化工程>
前記[油相1]全量にTKホモミキサー(特殊機化製)で5,000rpmにて1分間混合した後、[水相1]321部を加え、TKホモミキサーで、回転数8,000〜13,000rpmで調整しながら20分間混合し[コア粒子スラリー1]を得た。
【0172】
<シェル工程(コア粒子への樹脂微粒子付着工程)>
前記[コア粒子スラリー1]をスリーワンモーターを用いて200rpmで攪拌しながら、[ビニル系共重合樹脂微粒子V−1]21.4部を5分間かけて滴下し、そのまま30分攪拌しつづけた。その後、スラリーサンプルを少量採取して10倍の水で希釈し、遠心分離装置を用いて遠心分離したところ、試験管の底にトナー母体粒子が沈降し、上澄み液はほぼ透明であった。以上のようにして[シェル後スラリー1]を得た。
【0173】
<脱溶剤>
撹拌機および温度計をセットした容器に、[シェル後スラリー1]を投入し、30℃で8時間脱溶剤を行い、[分散スラリー1]を得た。
【0174】
<洗浄⇒乾燥>
[分散スラリー1]100部を減圧濾過した後、
(1):濾過ケーキにイオン交換水100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後濾過した。
(2):(1)の濾過ケーキにイオン交換水100部を加え、超音波振動を付与してTKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで30分間)した後、減圧濾過した。リスラリー液の電気伝導度が10μS/cm以下となるようにこの操作を繰り返した。
(3):(2)のリスラリー液のpHが4となる様に10%塩酸を加え、そのままスリーワンモーターで攪拌30分後濾過した。
(4):(3)の濾過ケーキにイオン交換水100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後濾過した。リスラリー液の電気伝導度が10μS/cm以下となるようにこの操作を繰り返し[濾過ケーキ1]を得た。残りの[分散スラリー1]も同様に洗浄し、[濾過ケーキ1]として追加混合した。
[濾過ケーキ1]を循風乾燥機にて45℃で48時間乾燥し、目開き75μmメッシュで篩い、[トナー母体1]を得た。
この母体トナー100部に表1−1に示すシリコーンオイル処理した疎水性シリカ3部と、1次粒径約10nmの疎水性シリカ1部をヘンシェルミキサーにて混合して、実施例1の現像剤を得た。得られたトナーの円形度は0.99、体積平均粒径(Dv)6.1μm、個数平均粒径(Dn)5.3μm、Dv/Dnは1.15であった。
【0175】
[実施例2〜11]、[比較例1〜6]
表1に示す外添剤を用いた以外は実施例1と同様にして実施例2〜11、比較例1〜6の現像剤を得た。円形度は製造時のTKホモミキサーの回転数を調整し、変更した。
【0176】
上記で得た現像剤を用いて潜像担持体クリーニングブレードによる潜像担持体のクリーニング性及び潜像担持体の膜削れ量を評価した。
評価結果を表2−1、表2−2に示す。
表2−1はカーボン量基準で表したものであり、表2−2はPDMS量基準で表したものである。
また、同じく上記で得た現像剤を用いて中間転写体クリーニングブレードによる中間転写体のクリーニング性及び中間転写体の膜削れ量を評価した。
評価結果を表3−1、表3−2に示す。
表3−1はカーボン量基準で表したものであり、表3−2はPDMS量基準で表したものである。
この表に示された評価結果から、本発明のトナーを用いた実施例の現像剤は比較例の現像剤と比べてクリーニング性及び膜削れ量において優れていることが分かる。
【0177】
【表2−1】

【0178】
【表2−2】

【0179】
【表3−1】

【0180】
【表3−2】

【符号の説明】
【0181】
(図3〜図7)
1 潜像担持体
2 帯電装置
3 露光装置
4 現像装置
5 クリーニング部
6 中間転写体
7 支持ローラ
8 転写ローラ
9 加熱ローラ
10 アルミ芯金
11 弾性体層
12 PFA表層
13 ヒータ
14 加圧ローラ
15 アルミ芯金
16 弾性体層
17 PFA表層
18 未定着画像
19 定着手段
20 中間転写体クリーニングブレード
40 現像ローラ
41 薄層形成部材
42 供給ローラ
L 露光
P 記録紙
T 静電荷像現像用トナー
(図8〜図10)
5 クリーニング装置
5b クリーニングブレード
5b−1 板状のクリーニングブレード
5b−2 支持部材
5c トナー回収ケース
5d 支点軸
5e 可動部材
5f 引張バネ
5g スクリュー
θ接触角
【先行技術文献】
【特許文献】
【0182】
【特許文献1】特開2009−292915号公報
【特許文献2】特開2009−98700号公報
【特許文献3】特開2009−25744号公報
【特許文献4】特開2009−98194号公報
【特許文献5】特開2002−148847号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも結着樹脂、及び着色を含むトナーにおいて、
前記トナーが、シリコーンオイルで処理した外添剤を含有し、
前記トナー中の総シリコーンオイル遊離量が前記トナーに対し0.2質量%〜0.5質量%であり、
前記トナーの平均円形度が0.96〜1であることを特徴とするトナー。
【請求項2】
外添剤のBET比表面積が10m/g〜50m/gである請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
外添剤の一次平均粒径が30nm〜150nmである請求項クレーム1又は2に記載のトナー。
【請求項4】
外添剤が、シリカ、チタニア及びアルミナからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれかに記載のトナー。
【請求項5】
外添剤が、シリカである請求項1〜4のいずれかに記載のトナー。
【請求項6】
外添剤のシリコーンオイルの添加量が、外添剤の表面積あたり2mg/m〜10mg/mである請求項1〜5のいずれかに記載のトナー。
【請求項7】
潜像担持体表面の可視像を中間転写体に転写する転写手段と、転写後、潜像担持体表面の残トナーを潜像担持体クリーニングブレードで除去するトナー除去手段と、中間転写体から被転写体に転写する転写手段と、転写後、該中間転写体上残トナーを中間転写体クリーニングブレードで除去する中間転写体トナー除去手段とを有し、
、前記トナーが、請求項1〜6のいずれかに記載のトナーであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
前記潜像担持体クリーニングブレードの反発弾性が10%〜35%であり、クリーニングブレードが20N/m〜50N/mの圧力で当接し、前記潜像担持体クリーニングブレード端部面と前記潜像担持体表面との接触点からの接線とで形成されるの当接角度θが70〜82°である請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記中間転写体クリーニングブレードの反発弾性が35%〜55%であり、クリーニングブレードが20N/m〜50N/mの圧力で当接し、前記中間転写体クリーニングブレード端部面と前記中間転写体表面との接触点からの接線とで形成される当接角度θが70〜82°である請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項10】
潜像担持体と、少なくとも潜像担持体上の潜像をトナーで現像する現像装置とを一体化して請求項7〜9のいずれかに記載の画像形成装置に対して着脱可能に構成したプロセスカートリッジ。

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2012−198525(P2012−198525A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−46346(P2012−46346)
【出願日】平成24年3月2日(2012.3.2)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】