トナーセンサーの組立方法
【課題】 高感度を維持しながら、小型薄肉化、低コスト化を達成し得るトナーセンサーの組立方法を提供する。
【解決手段】 厚み方向の一面が開放されており、かつ底部から立設した突起を有する、樹脂製のトナーセンサーのケースを一体成形し、前記トナーセンサーのケースの開放面を閉じるための配線基板を前記トナーセンサーのケースの開放面側に配設するに際し、前記トナーセンサーのケースの突起の先端を前記配線基板に設けた貫通穴に挿入し、前記配線基板を貫通して突出した突起部分を加熱してリベット状に形成することにより、前記トナーセンサーのケースと前記配線基板とを締結するトナーセンサーの組立方法。
【解決手段】 厚み方向の一面が開放されており、かつ底部から立設した突起を有する、樹脂製のトナーセンサーのケースを一体成形し、前記トナーセンサーのケースの開放面を閉じるための配線基板を前記トナーセンサーのケースの開放面側に配設するに際し、前記トナーセンサーのケースの突起の先端を前記配線基板に設けた貫通穴に挿入し、前記配線基板を貫通して突出した突起部分を加熱してリベット状に形成することにより、前記トナーセンサーのケースと前記配線基板とを締結するトナーセンサーの組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、複写機やプリンタなどに用いられてトナーの濃度や残量(あるいはトナーの有無)を検知し、かつ特性のばらつきを抑えて高感度を維持しながら小型薄肉化、低コスト化を達成し得るトナーセンサーの組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複写機やプリンタ等には各種のトナーセンサーが使用されている。例えば、磁性キャリアとトナーからなる二成分系現像剤を用いる二成分現像方式においては、現像剤中のトナー濃度を検知するために、あるいは磁性トナーからなる現像剤を用いる一成分現像方式においては磁性トナーの残量または磁性トナーの有無を検知するために、従来より差動トランス型のトナーセンサーが多用されている。
そして、上記の複写機やレーザプリンタ等の小型薄肉化の要求にともなって、現像装置に装着されるトナーセンサーの小型薄肉化が極めて重要な課題となってきている。
【0003】
図10に従来のトナーセンサー(特許文献1を参照)の要部断面図を示す。
図10において、トナーセンサー84の先端部84bを取付け部材85の固着孔85aに挿入して固着することにより検知面84aを取り付け部材85の一方の面より露出させ、この取付け部材85を複数本の小ネジ87で一定の板厚に成形されたスペーサ86を介してケース81の外面に締着することにより、検知面84aがケース81の内面側に露出されて矢印方向に回転する現像剤の撹拌パドル82に設けられた撹拌羽根82−1と一定のギャップで対向するように構成されている。しかし、図10の現像装置を小型薄肉化する場合、トナーセンサー84の取付けスペースの確保が問題となる。
【0004】
図11は、トナーセンサー84と、現像装置の撹拌パドル82との配置および寸法比率の概略を説明する図である。
現像装置の小型薄肉化を図る上で、トナーセンサー84の幅寸法(w)と厚み寸法(t)を小さくすることが重要である。すなわち、複写機やプリンター等では現像ロールの長手方向寸法は規格化された用紙サイズ(例えば、A4、A3等。)に対応した寸法になっており、図11における撹拌パドル82の長手方向の寸法(l)[現像ロールの長手方向寸法と同じ]が上記用紙サイズによって制限されるので、トナーセンサー84の長手方向の寸法(l’)を小さくしても撹拌パドル82の寸法(l)は小さくできない。したがって、上記の寸法(l’)を小さくするニーズには若干の余裕がある。
このような背景から、現像装置の小型薄肉化を達成するためには撹拌パドル82の半径方向の小寸法化すなわちトナーセンサー84の幅寸法(w)と厚み寸法(t)とを小さくすることが必要である。
【0005】
次に、図12に、小型薄肉化された現像装置に取付けたトナーセンサー84の一例を示す。
図12に示す通り、現像装置の小型薄肉化によって、トナーセンサー84の取付けられているケース81の内壁面の曲率半径(R)が小さくなっており、トナーセンサー84のヘッド部外径寸法(D)と、その幅寸法(w)とをより小さくすることが重要である。というのは、トナーセンサー84を高感度(現像剤のみかけ透磁率の変化量に対する出力電圧の変化量が大きいこと)に維持するためには、図10に示す通り、平坦な検知面84aの全面がそのケース81の内面側に露出されて撹拌パドル82と対向し、十分に撹拌された現像剤を検知する必要がある。しかし、現像装置の小型薄肉化は、究極的に、現像装置のケース81の内面の曲率半径(R)が小さくなることにつながる。このことは近似的に図10の撹拌パドル82の半径(r)が小さくなることでもある。したがって、図12において、ケース81の厚み寸法(t’)を適宜選択しないと、検知面84aの一部または全面がそのケース81の内部に埋没して高感度を維持できなくなる。あるいは逆に検知面84aとともに非検知面である84c部分もケース81の内面側に露出されてしまい、ケース81の内面側に存在する現像剤の円滑な撹拌移動が阻害されて、高感度を維持できない、という不具合がある。特に、R≦2D(近似的にはr≦2D)といった条件では、例えば図10の構成で説明すると、ケース81の内面側に露出される検知面84aが撹拌羽根82−1にあたる場合が多く発生し、この対策として撹拌羽根82−1を小寸法に形成すると、ケース81の内面と撹拌羽根82−1との間が大きく開いてしまう。このため、トナーセンサー84の検知面84a近傍の現像剤が十分に撹拌されず、トナーセンサー84の測定感度が大幅に低下してしまう、という問題が発生する。
このように、現像装置の小型薄肉化を意図しても、トナーセンサーの取付け位置が現像装置のケース内面における平坦部または大曲率半径部分に限定されてしまうし、他方、上記従来のトナーセンサーの(w)および(t)寸法は大きなままであるから、結局、従来のトナーセンサーは現像装置に組み込まれてもその外側に大きくはみ出してしまい、現像装置を小型薄肉化することが到底でき難いのである。
【0006】
また、従来のトナーセンサーの他の例(特許文献2)を図7〜図9に示す。図7はカバー62を省略した従来のトナーセンサーの平面図を表わしており、61はケース、63は取付孔、64はプリント配線基板、65はフラットケーブル、66はコネクタ、68はリード線、69は接続線、70はコイルボビン、79は差動トランス、(w)はケース61の幅寸法である。図8は上記図7のX−Y線断面図を示し、同図において、62はカバー、67は差動トランス79を構成するコイルブロック、(t)はトナーセンサーの厚み寸法である。
また、上記図7、図8のトナーセンサーのヘッド部57の断面図を図9に示す。図9において、51はスリーブ、52はコイルボビン70のつば部、73は半田付け部、55はプリント配線基板64とスリーブ51とに設けられたリード線68の挿入孔である。そして、コイルボビン70の軸部孔にねじ込まれたネジコア71にドライバ挿入孔74を介してドライバ(図示省略)を挿入し、ネジコア71のドライバ挿入溝75にそのドライバの先端を入れてネジコア71をコイルボビン70の軸方向に沿って螺着させつつ回転移動させてそのトナーセンサーの出力値の設定が行なわれるように構成されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図9に開示されるトナーセンサーは、配線基板64と、差動トランスを構成するコイルブロック67との間にスリーブ51が配置されるため、トナーセンサーの厚み寸法(t)を薄くでき難い、という問題を有する。この問題は、本発明者の検討したところでは、差動トランス79のコイル端子が面実装が可能となるように構成されていないことが一要因であることが分かった。
また、図8の構成では、配線基板64上に実装される電気部品が現像剤等で汚染されるのを防止するためにカバー62を付設する必要があり、トナーセンサーの厚み寸法(t)を小さくすることはさらに困難である。
【0008】
他方、図13に示す通り、従来より、トナーセンサーのヘッド部外径寸法(D)すなわちその検知ヘッド部を構成する差動トランスのコイルの巻線外径が小さくなるとトナーセンサーの感度(V)が単調に低下してしまう、という問題がある。高い検出精度を得るためには、感度(トナー濃度の変化に対する出力電圧の比率)を高くする必要がある。
また、トナーセンサーのケース、差動トランスのコイルボビンは通常PBT等の樹脂で成形されるが、その肉厚寸法は機械的強度、寸法精度を確保する上で最低0.4mm以上にしているのが実情である。
また、差動トランスを構成するコイルボビンにおいては、コイル巻線の仕切部であるつば部と、出力値の設定を行うためのネジ状磁性体(ネジコア)の挿入空間とをそのコイルボビンに形成することが必要である。したがって、従来のトナーセンサーにおいては、実用上、コイルボビンに巻回されるコイルの径寸法を小さくすることが困難であり、トナーセンサーのヘッド部外径寸法(D)を約10mm以上としたものが主流となっている。トナーセンサーにおいては、外径(D)寸法に対応してコイルボビンに巻回されるコイルの巻線部分の軸方向長さ(L)を所定の値に設定する必要がある。
以上の理由から、従来のトナーセンサーでは上記の寸法(w)と(t)とを小さくすることが困難であった。
本発明は、感度ばらつきを抑制し、高感度を維持しながら、小型薄肉化、低コスト化を達成し得るトナーセンサーの組立方法を提供することを目的とする。
【特許文献1】特開平5−35099号公報
【特許文献2】実開平3−75456号公報
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を達成するために、本発明のトナーセンサーの組立方法は、厚み方向の一面が開放されており、かつ底部から立設した突起を有する、樹脂製のトナーセンサーのケースを一体成形し、前記トナーセンサーのケースの開放面を閉じるための配線基板を前記トナーセンサーのケースの開放面側に配設するに際し、前記トナーセンサーのケースの突起の先端を前記配線基板に設けた貫通穴に挿入し、前記配線基板を貫通して突出した突起部分を加熱してリベット状に形成することにより、前記トナーセンサーのケースと前記配線基板とを締結することを特徴とする。本発明によれば、トナーセンサーを薄肉でかつ堅牢に組立ることができる。特に、前記締結部は熱融着によりかしめているので、特別な締結具が不要となりトナーセンサー構造の簡略化とともに低コスト化に有効である。
本発明のトナーセンサーの組立方法において、前記配線基板の実装面がトナーセンサーのケースと対向して配設され、前記配線基板を貫通して突出した突起部分の加熱は加熱棒を接触させて行うことが好ましい。
【0010】
また本発明のトナーセンサーの組立方法は、交流で励磁される1次コイルと前記1次コイルに結合される2次コイルとがボビンに巻回された差動トランスと、配線基板と、前記各部品を収容するケースとを備えたトナーセンサーの組立方法であって、前記ボビンは樹脂製の一体成形品であり、軸方向の端部に突起及び前記コイルの端子を有し、前記ボビンの突起を前記配線基板に設けた穴に嵌着し、前記差動トランスを前記配線基板に面実装することを特徴とする。本発明によれば、前記コイルの巻線がコイルボビンに巻装されて構成される差動トランスの端子を、その差動トランスの台座部から前記配線基板側に向かって形成しているので、前記差動トランスを前記配線基板に容易に面実装することができる。
本発明のトナーセンサーの組立方法において、前記ボビンはポリフェニレンサルファイド樹脂製又は液晶ポリマー製であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、下記の効果が得られる。
(1)配線基板がトナーセンサーのカバー(ケース蓋)を兼ねるとともに、配線基板をケースに一体的に固定できるので、部品点数を省略でき、もって低コスト化に極めて有利である。
(2)差動トランスが面実装に最適な構造になっているので面実装が容易であり、かつ高感度を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面により本発明を詳細に説明する。
図1は本発明に係るトナーセンサーを検知面側から見た要部平面図、図2は図1のA−A線断面図である。なお、理解を容易にするために図1において、トナーセンサーのケース24を外した状態で図示するとともに、そのケース24が配線基板7と係合する部分を点線で示している。
両図において、1は差動トランスであり、例えば、ガラスビーズを40重量%含むPPS樹脂で形成したコイルボビン2の外周面に4箇所のつば部3a、3b、3c、3dが形成されており、上記つば部を仕切部として1次コイル23および2次コイルである検知コイル21と基準コイル22とが巻回されている。差動トランス1の先端のつば部3d側が、トナーセンサーのケース24に形成された凹部26に嵌め込まれて、トナーセンサーの検知部(ヘッド部)17が構成されている。
また、1次コイル23の入出力端子8a、8bと、2次コイル21、22の入出力端子9a、9b、10a、10bとがコイルボビン2と一体に樹脂成形された台座部2bの下方部分に各々付設されている。これらの端子をプリント配線基板7に半田付けすることで差動トランス1がプリント配線基板7に面実装されるように構成されている。
図1において、11はIC部品、12はツェナーダイオード、14はコンデンサ、15は抵抗、16はコネクターである(但し、図2ではこれらの部品を省略している)。
【0013】
コイルボビン2の中心軸部には、図2に示すように、出力値を設定するためのネジコア4(例えば、ソフトフェライトで形成されている。)が挿入される空間5が設けられて、ネジコア4がコイルボビン2の軸方向に移動自在に螺着されている。ネジコア4には凹溝6が設けられて、プリント配線基板7に設けられたドライバー挿入孔25を介して挿入されたドライバーの先端部(図示せず)を上記凹溝6に差し込んでネジコア4をその軸方向に回転移動させて出力値の設定が行えるように構成されている。
【0014】
13aおよび2箇所の13bで示す部分はトナーセンサーのケース24(例えば、ガラスビーズを20重量%含むABS樹脂で形成されている。)と一体に樹脂成形されたボスピンであり、これらボスピン13a、13b、13bによって、配線基板7とトナーセンサーのケース24とが強固に結合されている。その結合は、図2に示す通り、ボスピン13の先端部13aが熱融着されてリベット状となることで達成される。すなわち、上記ボスピン13a、13b、13bは、プリント配線基板7に設けられた貫通孔18を貫通してその各先端部分がプリント配線基板7の外側に突出するとともに、その突出部分を形成する樹脂の溶融温度より高い温度(例えば、使用する樹脂の溶融温度より1〜100℃程度高い温度が樹脂の劣化を抑えて効率よく熱融着作業を行う上で好ましい。)に保持された図示しない加熱棒(溶融樹脂の付着防止のため、その表面がテフロン(登録商標)でコートされている。)を接触させて、上記先端部13a、13b、13bを加熱溶融状態としてリベット状に形成した後、冷却凝固することによりケース24とプリント配線基板7が一体的に結合されている。したがって、この構成によれば、特別な締結具を用いる必要がなく、しかも配線基板7がトナーセンサーのケースを兼用しており、トナーセンサーの厚み寸法(t)を小さく薄肉化できるとともに、差動トランス1の組み込まれた空間に現像剤等が侵入して電気的不具合が発生するのが抑制される。
【0015】
トナーセンサーにおいては、高感度を得る上で、検知コイル21と検知面27とのギャップG(すなわちこのギャップGは現像剤と検知コイル21との最短距離に相当する。)が小さい程有利である。本発明では、例えば、上記のPPS樹脂を用い、さらに適当な射出成形条件を選ぶことで、図2に示すつば部3dの厚み(t3d)を0.35mmに形成することができる。一方、従来のトナーセンサーに組み込まれたコイルボビンでは、つば部3dの厚み(t3d)が0.50mmより大なる寸法になっている。したがって、本実施例では、ギャップGが従来に比べて少なくとも0.15mm狭められているので、それだけ感度(V)の増加が可能である。
本発明においては、つば部の厚み寸法(t3d)は0.50mm未満とすることが感度向上の点から好ましいが、より好ましくは0.35mm以下、特に好ましくは0.30〜0.20mmである。なお、つば部の厚み寸法(t3d)を0.20mm未満に形成することは実用性のある通常の成形手段(射出成形等)を採用する以上、コストパーフォーマンスおよびコイルボビンの機械的強度等を勘案して現実的でない。また、検知面27におけるトナーセンサーのケース24の厚み寸法(t24)は、ABS樹脂を用いた場合、0.45mmに形成することができる。さらに、検知面27の平面度はケース24の成形に際して良好(例えば、2/100程度。)に維持する必要があることは勿論である。
【0016】
本発明において、コイルボビンを形成する樹脂としては、例えば、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステル樹脂等の公知の樹脂(好ましくは耐熱性を有する樹脂)を使用することができる。
上記の樹脂の内では、ヤング率(測定法:ASTM D638)が0.5×104Kg/mm2以上(好ましくは10×104Kg/mm2以上)のものがコイルボビンへの巻線時またはトナーセンサーへの組込時に発生する割れ、欠け等を抑制できるので好ましい。
特に、液晶ポリマー(溶融状態で液晶性を示す)の1種である液晶性ポリエステル樹脂(主鎖中に剛直鎖を有するポリエステル)を使用すると好ましい。
【0017】
液晶性ポリエステル樹脂には、(a)パラヒドロキシ安息香酸とポリエチレンテレフタレート樹脂との共重合体、(b)ポリーpーヒドロキシベンゾエートとナフトエ酸との共重合体、等の種々の基本組成を有するものがあるが、ヤング率のより大きな全芳香族の(b)が好ましい。
【0018】
液晶ポリマーでは完全溶融温度より低い液晶状態の温度で、例えば公知の射出成形手段を用いて、本発明に係るコイルボビンの樹脂成形を行うと、流動性が高く、上記の通りの非常に薄肉のコイルボビンが得られるので好ましい。また、PPS樹脂でも同様に非常に薄肉のコイルボビンが得られるので好ましい。
また、特に、ヤング率が16×104Kg/mm2以上の液晶ポリマーを使用すると良い。このような液晶ポリマーの具体例としては、全芳香族のサーモトロピック液晶性ポリエステルであるベクトラA130(18×104(単位はKg/mm2、以下同じ)、C130(16×104)、A230(30×104)、B230(38×104)、A410(21×104)、A422(18×104)、C400(17×104)、A540(16×104)(以上セラニーズ社)、XYDAR RC−210(16.2×104)、G−43C(16.1×104)(以上ダートコ社)などが挙げられる。
【0019】
因みに、ヤング率は、鋼:220×104、アルミニウム:68×104、メタアクリル樹脂:4.2×104、ポリスチレン樹脂:3.2〜3.6×104、ポリフェニレンサルファイド樹脂:10×104(何れも単位はKg/mm2)であるから、一般の熱可塑性樹脂を使用するよりも大きな剛性を得ることができる。また、上記の樹脂において、機械的性質や耐熱性等を向上させるために、ガラス繊維やカーボン繊維、公知のウイスカ、ガラスビーズ、公知のセラミック粒子等の1種または2種以上をフィラーとしてその樹脂重量に対して10〜50重量%添加することができ、より好ましくは20〜40重量%を添加できる。
【0020】
本発明に係るトナーセンサーにおいては、小型薄肉化および実用に耐え得る感度を得る上で、D<7.0mm,L/D=0.5〜3.0を満足するように差動トランスを形成することが好ましい。この理由は、図2のトナーセンサーのヘッド部17の外径寸法がD≧7mmであると、上述した通り、現像装置の小型薄肉化によって、R≦2D(近似的にr≦2Dおよび/またはR’≦2D)という構成となってしまい、トナーセンサー30の感度が大幅に低下してしまうので好ましくない。
例えば、上記図2において、コイルボビン2において各コイル20、21、22が同軸に巻回される部分の外径寸法を4.4mmに形成するとともに、各つば部3a、3b、3c、3d部分の外径寸法を5.1mmに形成し、さらに、各コイル巻線20、21、22の外径(φ)を4.6mm、巻線部分の軸方向長さ(L)を4.4mm、検出ヘッド部17の外径(D)を6.0mmとすることにより、L/D=0.73とすることができる。
【0021】
図2のトナーセンサー30において、D<7mmの条件のもとに、(L/D)を変化させた場合の感度(V)の変化を図5に示す。
図5から、感度1(V)基準ではL/D=1〜2.5が好ましく、0.5(V)基準ではL/D=0.5〜3.0が好ましいことがわかる。実用上、トナーセンサーの感度が0.5(V)以上有れば、十分実用に耐えうるので、(L/D)を0.5〜3.0に設定することが極めて重要である。
【0022】
次に、本発明に係るトナーセンサーに組み込まれる差動トランス1において、その差動トランス1に配置された端子側から見た構成の一例を図4(a)に示す。また図4(a)のB−B線断面図を図4(b)に示す。
図4(a)、(b)において、コイルボビン2の下方に位置する台座部2bには略L字形の端子8a、8b、9a、9b、10a、10bが各々その一端をコイルボビン2に埋設させて設けられている。これらの端子8a、8b、9a、9b、10a、10bはコイルボビン2を射出成形する際に、図示されない射出成形用金型内に予め図4の位置になるように配置されて、次いで金型内の成形空間に溶融樹脂が充填されて、その後溶融樹脂が冷却固化されて図4(a)のように台座部2bと一体に成形されて固着される。これらの端子はいずれも台座部2bから下方に伸びており、上記配線基板7上に面実装するのに最適な構造となっている。また、台座部2bの下方端部には突起2c、2cが設けられて、この突起2c、2cがプリント配線基板7に設けられた穴(図示せず)に嵌着されてより面実装され易く構成されている。台座部2bには実装作業を容易に行えるように溝32が設けられている。
【0023】
本発明に係るトナーセンサーは図3に示すような回路構成とすることができる。なお図3において、4はネジコア、29は検知する現像剤を示している。図3に示すように、交流で励振される1次コイル23からの出力波形と、1次コイル23に結合されかつ差動結線された検知コイル21と基準コイル22の差動出力波形とを位相比較回路に入力し、ここで両者の位相差を比較し、次に平滑回路で処理している。また、図3(b)には、図3(a)におけるa,b,c,dの各部における時間tに対する出力データの一例を示している。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係るトナーセンサーの一実施例を示す平面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】本発明に係るトナーセンサーにおける回路構成の一例を示すブロック図(a)と、同センサーの出力特性を示す図(b)である。
【図4】本発明に係るトナーセンサーにおける差動トランスの端子構成の一例を示す平面図(a)と、そのB−B線断面図(b)である。
【図5】本発明に係るトナーセンサーにおける感度と(L/D)との相関図である。
【図6】本発明に係るトナーセンサーの他の例を示す平面図である。
【図7】従来のトナーセンサーを示す平面図である。
【図8】図7のX−Y線断面図である。
【図9】従来のトナーセンサーのヘッド部の断面図である。
【図10】従来の現像装置の断面図である。
【図11】従来の現像装置に取り付けられたトナーセンサーの断面図である。
【図12】従来の現像装置における現像ロールとトナーセンサーとの配置関係を説明する概略図である。
【図13】トナーセンサーの感度とヘッド部の外径寸法との相関を示す図である。
【符号の説明】
【0025】
1 差動トランス、2 コイルボビン、2b 台座部、2c 突起、
3、3a、3b、3c、3d つば部、4 ネジコア、5 孔、6 凹溝、
7 配線基板、8a、8b、9a、9b、10a、10b 端子、
11 IC部品、12 ツェナーダイオード、
13、13a、13b ボスピン、14 コンデンサ、
15 抵抗、16 コネクタ、17 ヘッド部、21 検知コイル、
22 基準コイル、23 1次コイル、24 ケース、25 貫通孔、
26 凹部、27 検知面、30,31 トナーセンサー、32 溝
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、複写機やプリンタなどに用いられてトナーの濃度や残量(あるいはトナーの有無)を検知し、かつ特性のばらつきを抑えて高感度を維持しながら小型薄肉化、低コスト化を達成し得るトナーセンサーの組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複写機やプリンタ等には各種のトナーセンサーが使用されている。例えば、磁性キャリアとトナーからなる二成分系現像剤を用いる二成分現像方式においては、現像剤中のトナー濃度を検知するために、あるいは磁性トナーからなる現像剤を用いる一成分現像方式においては磁性トナーの残量または磁性トナーの有無を検知するために、従来より差動トランス型のトナーセンサーが多用されている。
そして、上記の複写機やレーザプリンタ等の小型薄肉化の要求にともなって、現像装置に装着されるトナーセンサーの小型薄肉化が極めて重要な課題となってきている。
【0003】
図10に従来のトナーセンサー(特許文献1を参照)の要部断面図を示す。
図10において、トナーセンサー84の先端部84bを取付け部材85の固着孔85aに挿入して固着することにより検知面84aを取り付け部材85の一方の面より露出させ、この取付け部材85を複数本の小ネジ87で一定の板厚に成形されたスペーサ86を介してケース81の外面に締着することにより、検知面84aがケース81の内面側に露出されて矢印方向に回転する現像剤の撹拌パドル82に設けられた撹拌羽根82−1と一定のギャップで対向するように構成されている。しかし、図10の現像装置を小型薄肉化する場合、トナーセンサー84の取付けスペースの確保が問題となる。
【0004】
図11は、トナーセンサー84と、現像装置の撹拌パドル82との配置および寸法比率の概略を説明する図である。
現像装置の小型薄肉化を図る上で、トナーセンサー84の幅寸法(w)と厚み寸法(t)を小さくすることが重要である。すなわち、複写機やプリンター等では現像ロールの長手方向寸法は規格化された用紙サイズ(例えば、A4、A3等。)に対応した寸法になっており、図11における撹拌パドル82の長手方向の寸法(l)[現像ロールの長手方向寸法と同じ]が上記用紙サイズによって制限されるので、トナーセンサー84の長手方向の寸法(l’)を小さくしても撹拌パドル82の寸法(l)は小さくできない。したがって、上記の寸法(l’)を小さくするニーズには若干の余裕がある。
このような背景から、現像装置の小型薄肉化を達成するためには撹拌パドル82の半径方向の小寸法化すなわちトナーセンサー84の幅寸法(w)と厚み寸法(t)とを小さくすることが必要である。
【0005】
次に、図12に、小型薄肉化された現像装置に取付けたトナーセンサー84の一例を示す。
図12に示す通り、現像装置の小型薄肉化によって、トナーセンサー84の取付けられているケース81の内壁面の曲率半径(R)が小さくなっており、トナーセンサー84のヘッド部外径寸法(D)と、その幅寸法(w)とをより小さくすることが重要である。というのは、トナーセンサー84を高感度(現像剤のみかけ透磁率の変化量に対する出力電圧の変化量が大きいこと)に維持するためには、図10に示す通り、平坦な検知面84aの全面がそのケース81の内面側に露出されて撹拌パドル82と対向し、十分に撹拌された現像剤を検知する必要がある。しかし、現像装置の小型薄肉化は、究極的に、現像装置のケース81の内面の曲率半径(R)が小さくなることにつながる。このことは近似的に図10の撹拌パドル82の半径(r)が小さくなることでもある。したがって、図12において、ケース81の厚み寸法(t’)を適宜選択しないと、検知面84aの一部または全面がそのケース81の内部に埋没して高感度を維持できなくなる。あるいは逆に検知面84aとともに非検知面である84c部分もケース81の内面側に露出されてしまい、ケース81の内面側に存在する現像剤の円滑な撹拌移動が阻害されて、高感度を維持できない、という不具合がある。特に、R≦2D(近似的にはr≦2D)といった条件では、例えば図10の構成で説明すると、ケース81の内面側に露出される検知面84aが撹拌羽根82−1にあたる場合が多く発生し、この対策として撹拌羽根82−1を小寸法に形成すると、ケース81の内面と撹拌羽根82−1との間が大きく開いてしまう。このため、トナーセンサー84の検知面84a近傍の現像剤が十分に撹拌されず、トナーセンサー84の測定感度が大幅に低下してしまう、という問題が発生する。
このように、現像装置の小型薄肉化を意図しても、トナーセンサーの取付け位置が現像装置のケース内面における平坦部または大曲率半径部分に限定されてしまうし、他方、上記従来のトナーセンサーの(w)および(t)寸法は大きなままであるから、結局、従来のトナーセンサーは現像装置に組み込まれてもその外側に大きくはみ出してしまい、現像装置を小型薄肉化することが到底でき難いのである。
【0006】
また、従来のトナーセンサーの他の例(特許文献2)を図7〜図9に示す。図7はカバー62を省略した従来のトナーセンサーの平面図を表わしており、61はケース、63は取付孔、64はプリント配線基板、65はフラットケーブル、66はコネクタ、68はリード線、69は接続線、70はコイルボビン、79は差動トランス、(w)はケース61の幅寸法である。図8は上記図7のX−Y線断面図を示し、同図において、62はカバー、67は差動トランス79を構成するコイルブロック、(t)はトナーセンサーの厚み寸法である。
また、上記図7、図8のトナーセンサーのヘッド部57の断面図を図9に示す。図9において、51はスリーブ、52はコイルボビン70のつば部、73は半田付け部、55はプリント配線基板64とスリーブ51とに設けられたリード線68の挿入孔である。そして、コイルボビン70の軸部孔にねじ込まれたネジコア71にドライバ挿入孔74を介してドライバ(図示省略)を挿入し、ネジコア71のドライバ挿入溝75にそのドライバの先端を入れてネジコア71をコイルボビン70の軸方向に沿って螺着させつつ回転移動させてそのトナーセンサーの出力値の設定が行なわれるように構成されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図9に開示されるトナーセンサーは、配線基板64と、差動トランスを構成するコイルブロック67との間にスリーブ51が配置されるため、トナーセンサーの厚み寸法(t)を薄くでき難い、という問題を有する。この問題は、本発明者の検討したところでは、差動トランス79のコイル端子が面実装が可能となるように構成されていないことが一要因であることが分かった。
また、図8の構成では、配線基板64上に実装される電気部品が現像剤等で汚染されるのを防止するためにカバー62を付設する必要があり、トナーセンサーの厚み寸法(t)を小さくすることはさらに困難である。
【0008】
他方、図13に示す通り、従来より、トナーセンサーのヘッド部外径寸法(D)すなわちその検知ヘッド部を構成する差動トランスのコイルの巻線外径が小さくなるとトナーセンサーの感度(V)が単調に低下してしまう、という問題がある。高い検出精度を得るためには、感度(トナー濃度の変化に対する出力電圧の比率)を高くする必要がある。
また、トナーセンサーのケース、差動トランスのコイルボビンは通常PBT等の樹脂で成形されるが、その肉厚寸法は機械的強度、寸法精度を確保する上で最低0.4mm以上にしているのが実情である。
また、差動トランスを構成するコイルボビンにおいては、コイル巻線の仕切部であるつば部と、出力値の設定を行うためのネジ状磁性体(ネジコア)の挿入空間とをそのコイルボビンに形成することが必要である。したがって、従来のトナーセンサーにおいては、実用上、コイルボビンに巻回されるコイルの径寸法を小さくすることが困難であり、トナーセンサーのヘッド部外径寸法(D)を約10mm以上としたものが主流となっている。トナーセンサーにおいては、外径(D)寸法に対応してコイルボビンに巻回されるコイルの巻線部分の軸方向長さ(L)を所定の値に設定する必要がある。
以上の理由から、従来のトナーセンサーでは上記の寸法(w)と(t)とを小さくすることが困難であった。
本発明は、感度ばらつきを抑制し、高感度を維持しながら、小型薄肉化、低コスト化を達成し得るトナーセンサーの組立方法を提供することを目的とする。
【特許文献1】特開平5−35099号公報
【特許文献2】実開平3−75456号公報
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を達成するために、本発明のトナーセンサーの組立方法は、厚み方向の一面が開放されており、かつ底部から立設した突起を有する、樹脂製のトナーセンサーのケースを一体成形し、前記トナーセンサーのケースの開放面を閉じるための配線基板を前記トナーセンサーのケースの開放面側に配設するに際し、前記トナーセンサーのケースの突起の先端を前記配線基板に設けた貫通穴に挿入し、前記配線基板を貫通して突出した突起部分を加熱してリベット状に形成することにより、前記トナーセンサーのケースと前記配線基板とを締結することを特徴とする。本発明によれば、トナーセンサーを薄肉でかつ堅牢に組立ることができる。特に、前記締結部は熱融着によりかしめているので、特別な締結具が不要となりトナーセンサー構造の簡略化とともに低コスト化に有効である。
本発明のトナーセンサーの組立方法において、前記配線基板の実装面がトナーセンサーのケースと対向して配設され、前記配線基板を貫通して突出した突起部分の加熱は加熱棒を接触させて行うことが好ましい。
【0010】
また本発明のトナーセンサーの組立方法は、交流で励磁される1次コイルと前記1次コイルに結合される2次コイルとがボビンに巻回された差動トランスと、配線基板と、前記各部品を収容するケースとを備えたトナーセンサーの組立方法であって、前記ボビンは樹脂製の一体成形品であり、軸方向の端部に突起及び前記コイルの端子を有し、前記ボビンの突起を前記配線基板に設けた穴に嵌着し、前記差動トランスを前記配線基板に面実装することを特徴とする。本発明によれば、前記コイルの巻線がコイルボビンに巻装されて構成される差動トランスの端子を、その差動トランスの台座部から前記配線基板側に向かって形成しているので、前記差動トランスを前記配線基板に容易に面実装することができる。
本発明のトナーセンサーの組立方法において、前記ボビンはポリフェニレンサルファイド樹脂製又は液晶ポリマー製であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、下記の効果が得られる。
(1)配線基板がトナーセンサーのカバー(ケース蓋)を兼ねるとともに、配線基板をケースに一体的に固定できるので、部品点数を省略でき、もって低コスト化に極めて有利である。
(2)差動トランスが面実装に最適な構造になっているので面実装が容易であり、かつ高感度を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面により本発明を詳細に説明する。
図1は本発明に係るトナーセンサーを検知面側から見た要部平面図、図2は図1のA−A線断面図である。なお、理解を容易にするために図1において、トナーセンサーのケース24を外した状態で図示するとともに、そのケース24が配線基板7と係合する部分を点線で示している。
両図において、1は差動トランスであり、例えば、ガラスビーズを40重量%含むPPS樹脂で形成したコイルボビン2の外周面に4箇所のつば部3a、3b、3c、3dが形成されており、上記つば部を仕切部として1次コイル23および2次コイルである検知コイル21と基準コイル22とが巻回されている。差動トランス1の先端のつば部3d側が、トナーセンサーのケース24に形成された凹部26に嵌め込まれて、トナーセンサーの検知部(ヘッド部)17が構成されている。
また、1次コイル23の入出力端子8a、8bと、2次コイル21、22の入出力端子9a、9b、10a、10bとがコイルボビン2と一体に樹脂成形された台座部2bの下方部分に各々付設されている。これらの端子をプリント配線基板7に半田付けすることで差動トランス1がプリント配線基板7に面実装されるように構成されている。
図1において、11はIC部品、12はツェナーダイオード、14はコンデンサ、15は抵抗、16はコネクターである(但し、図2ではこれらの部品を省略している)。
【0013】
コイルボビン2の中心軸部には、図2に示すように、出力値を設定するためのネジコア4(例えば、ソフトフェライトで形成されている。)が挿入される空間5が設けられて、ネジコア4がコイルボビン2の軸方向に移動自在に螺着されている。ネジコア4には凹溝6が設けられて、プリント配線基板7に設けられたドライバー挿入孔25を介して挿入されたドライバーの先端部(図示せず)を上記凹溝6に差し込んでネジコア4をその軸方向に回転移動させて出力値の設定が行えるように構成されている。
【0014】
13aおよび2箇所の13bで示す部分はトナーセンサーのケース24(例えば、ガラスビーズを20重量%含むABS樹脂で形成されている。)と一体に樹脂成形されたボスピンであり、これらボスピン13a、13b、13bによって、配線基板7とトナーセンサーのケース24とが強固に結合されている。その結合は、図2に示す通り、ボスピン13の先端部13aが熱融着されてリベット状となることで達成される。すなわち、上記ボスピン13a、13b、13bは、プリント配線基板7に設けられた貫通孔18を貫通してその各先端部分がプリント配線基板7の外側に突出するとともに、その突出部分を形成する樹脂の溶融温度より高い温度(例えば、使用する樹脂の溶融温度より1〜100℃程度高い温度が樹脂の劣化を抑えて効率よく熱融着作業を行う上で好ましい。)に保持された図示しない加熱棒(溶融樹脂の付着防止のため、その表面がテフロン(登録商標)でコートされている。)を接触させて、上記先端部13a、13b、13bを加熱溶融状態としてリベット状に形成した後、冷却凝固することによりケース24とプリント配線基板7が一体的に結合されている。したがって、この構成によれば、特別な締結具を用いる必要がなく、しかも配線基板7がトナーセンサーのケースを兼用しており、トナーセンサーの厚み寸法(t)を小さく薄肉化できるとともに、差動トランス1の組み込まれた空間に現像剤等が侵入して電気的不具合が発生するのが抑制される。
【0015】
トナーセンサーにおいては、高感度を得る上で、検知コイル21と検知面27とのギャップG(すなわちこのギャップGは現像剤と検知コイル21との最短距離に相当する。)が小さい程有利である。本発明では、例えば、上記のPPS樹脂を用い、さらに適当な射出成形条件を選ぶことで、図2に示すつば部3dの厚み(t3d)を0.35mmに形成することができる。一方、従来のトナーセンサーに組み込まれたコイルボビンでは、つば部3dの厚み(t3d)が0.50mmより大なる寸法になっている。したがって、本実施例では、ギャップGが従来に比べて少なくとも0.15mm狭められているので、それだけ感度(V)の増加が可能である。
本発明においては、つば部の厚み寸法(t3d)は0.50mm未満とすることが感度向上の点から好ましいが、より好ましくは0.35mm以下、特に好ましくは0.30〜0.20mmである。なお、つば部の厚み寸法(t3d)を0.20mm未満に形成することは実用性のある通常の成形手段(射出成形等)を採用する以上、コストパーフォーマンスおよびコイルボビンの機械的強度等を勘案して現実的でない。また、検知面27におけるトナーセンサーのケース24の厚み寸法(t24)は、ABS樹脂を用いた場合、0.45mmに形成することができる。さらに、検知面27の平面度はケース24の成形に際して良好(例えば、2/100程度。)に維持する必要があることは勿論である。
【0016】
本発明において、コイルボビンを形成する樹脂としては、例えば、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステル樹脂等の公知の樹脂(好ましくは耐熱性を有する樹脂)を使用することができる。
上記の樹脂の内では、ヤング率(測定法:ASTM D638)が0.5×104Kg/mm2以上(好ましくは10×104Kg/mm2以上)のものがコイルボビンへの巻線時またはトナーセンサーへの組込時に発生する割れ、欠け等を抑制できるので好ましい。
特に、液晶ポリマー(溶融状態で液晶性を示す)の1種である液晶性ポリエステル樹脂(主鎖中に剛直鎖を有するポリエステル)を使用すると好ましい。
【0017】
液晶性ポリエステル樹脂には、(a)パラヒドロキシ安息香酸とポリエチレンテレフタレート樹脂との共重合体、(b)ポリーpーヒドロキシベンゾエートとナフトエ酸との共重合体、等の種々の基本組成を有するものがあるが、ヤング率のより大きな全芳香族の(b)が好ましい。
【0018】
液晶ポリマーでは完全溶融温度より低い液晶状態の温度で、例えば公知の射出成形手段を用いて、本発明に係るコイルボビンの樹脂成形を行うと、流動性が高く、上記の通りの非常に薄肉のコイルボビンが得られるので好ましい。また、PPS樹脂でも同様に非常に薄肉のコイルボビンが得られるので好ましい。
また、特に、ヤング率が16×104Kg/mm2以上の液晶ポリマーを使用すると良い。このような液晶ポリマーの具体例としては、全芳香族のサーモトロピック液晶性ポリエステルであるベクトラA130(18×104(単位はKg/mm2、以下同じ)、C130(16×104)、A230(30×104)、B230(38×104)、A410(21×104)、A422(18×104)、C400(17×104)、A540(16×104)(以上セラニーズ社)、XYDAR RC−210(16.2×104)、G−43C(16.1×104)(以上ダートコ社)などが挙げられる。
【0019】
因みに、ヤング率は、鋼:220×104、アルミニウム:68×104、メタアクリル樹脂:4.2×104、ポリスチレン樹脂:3.2〜3.6×104、ポリフェニレンサルファイド樹脂:10×104(何れも単位はKg/mm2)であるから、一般の熱可塑性樹脂を使用するよりも大きな剛性を得ることができる。また、上記の樹脂において、機械的性質や耐熱性等を向上させるために、ガラス繊維やカーボン繊維、公知のウイスカ、ガラスビーズ、公知のセラミック粒子等の1種または2種以上をフィラーとしてその樹脂重量に対して10〜50重量%添加することができ、より好ましくは20〜40重量%を添加できる。
【0020】
本発明に係るトナーセンサーにおいては、小型薄肉化および実用に耐え得る感度を得る上で、D<7.0mm,L/D=0.5〜3.0を満足するように差動トランスを形成することが好ましい。この理由は、図2のトナーセンサーのヘッド部17の外径寸法がD≧7mmであると、上述した通り、現像装置の小型薄肉化によって、R≦2D(近似的にr≦2Dおよび/またはR’≦2D)という構成となってしまい、トナーセンサー30の感度が大幅に低下してしまうので好ましくない。
例えば、上記図2において、コイルボビン2において各コイル20、21、22が同軸に巻回される部分の外径寸法を4.4mmに形成するとともに、各つば部3a、3b、3c、3d部分の外径寸法を5.1mmに形成し、さらに、各コイル巻線20、21、22の外径(φ)を4.6mm、巻線部分の軸方向長さ(L)を4.4mm、検出ヘッド部17の外径(D)を6.0mmとすることにより、L/D=0.73とすることができる。
【0021】
図2のトナーセンサー30において、D<7mmの条件のもとに、(L/D)を変化させた場合の感度(V)の変化を図5に示す。
図5から、感度1(V)基準ではL/D=1〜2.5が好ましく、0.5(V)基準ではL/D=0.5〜3.0が好ましいことがわかる。実用上、トナーセンサーの感度が0.5(V)以上有れば、十分実用に耐えうるので、(L/D)を0.5〜3.0に設定することが極めて重要である。
【0022】
次に、本発明に係るトナーセンサーに組み込まれる差動トランス1において、その差動トランス1に配置された端子側から見た構成の一例を図4(a)に示す。また図4(a)のB−B線断面図を図4(b)に示す。
図4(a)、(b)において、コイルボビン2の下方に位置する台座部2bには略L字形の端子8a、8b、9a、9b、10a、10bが各々その一端をコイルボビン2に埋設させて設けられている。これらの端子8a、8b、9a、9b、10a、10bはコイルボビン2を射出成形する際に、図示されない射出成形用金型内に予め図4の位置になるように配置されて、次いで金型内の成形空間に溶融樹脂が充填されて、その後溶融樹脂が冷却固化されて図4(a)のように台座部2bと一体に成形されて固着される。これらの端子はいずれも台座部2bから下方に伸びており、上記配線基板7上に面実装するのに最適な構造となっている。また、台座部2bの下方端部には突起2c、2cが設けられて、この突起2c、2cがプリント配線基板7に設けられた穴(図示せず)に嵌着されてより面実装され易く構成されている。台座部2bには実装作業を容易に行えるように溝32が設けられている。
【0023】
本発明に係るトナーセンサーは図3に示すような回路構成とすることができる。なお図3において、4はネジコア、29は検知する現像剤を示している。図3に示すように、交流で励振される1次コイル23からの出力波形と、1次コイル23に結合されかつ差動結線された検知コイル21と基準コイル22の差動出力波形とを位相比較回路に入力し、ここで両者の位相差を比較し、次に平滑回路で処理している。また、図3(b)には、図3(a)におけるa,b,c,dの各部における時間tに対する出力データの一例を示している。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係るトナーセンサーの一実施例を示す平面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】本発明に係るトナーセンサーにおける回路構成の一例を示すブロック図(a)と、同センサーの出力特性を示す図(b)である。
【図4】本発明に係るトナーセンサーにおける差動トランスの端子構成の一例を示す平面図(a)と、そのB−B線断面図(b)である。
【図5】本発明に係るトナーセンサーにおける感度と(L/D)との相関図である。
【図6】本発明に係るトナーセンサーの他の例を示す平面図である。
【図7】従来のトナーセンサーを示す平面図である。
【図8】図7のX−Y線断面図である。
【図9】従来のトナーセンサーのヘッド部の断面図である。
【図10】従来の現像装置の断面図である。
【図11】従来の現像装置に取り付けられたトナーセンサーの断面図である。
【図12】従来の現像装置における現像ロールとトナーセンサーとの配置関係を説明する概略図である。
【図13】トナーセンサーの感度とヘッド部の外径寸法との相関を示す図である。
【符号の説明】
【0025】
1 差動トランス、2 コイルボビン、2b 台座部、2c 突起、
3、3a、3b、3c、3d つば部、4 ネジコア、5 孔、6 凹溝、
7 配線基板、8a、8b、9a、9b、10a、10b 端子、
11 IC部品、12 ツェナーダイオード、
13、13a、13b ボスピン、14 コンデンサ、
15 抵抗、16 コネクタ、17 ヘッド部、21 検知コイル、
22 基準コイル、23 1次コイル、24 ケース、25 貫通孔、
26 凹部、27 検知面、30,31 トナーセンサー、32 溝
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み方向の一面が開放されており、かつ底部から立設した突起を有する、樹脂製のトナーセンサーのケースを一体成形し、
前記トナーセンサーのケースの開放面を閉じるための配線基板を前記トナーセンサーのケースの開放面側に配設するに際し、前記トナーセンサーのケースの突起の先端を前記配線基板に設けた貫通穴に挿入し、前記配線基板を貫通して突出した突起部分を加熱してリベット状に形成することにより、前記トナーセンサーのケースと前記配線基板とを締結することを特徴とするトナーセンサーの組立方法。
【請求項2】
請求項1に記載のトナーセンサーの組立方法において、前記配線基板の実装面がトナーセンサーのケースと対向して配設され、前記配線基板を貫通して突出した突起部分の加熱は加熱棒を接触させて行うことを特徴とするトナーセンサーの組立方法。
【請求項3】
交流で励磁される1次コイルと前記1次コイルに結合される2次コイルとがボビンに巻回された差動トランスと、配線基板と、前記各部品を収容するケースとを備えたトナーセンサーの組立方法であって、
前記ボビンは樹脂製の一体成形品であり、軸方向の端部に突起及び前記コイルの端子を有し、
前記ボビンの突起を前記配線基板に設けた穴に嵌着し、前記差動トランスを前記配線基板に面実装することを特徴とするトナーセンサーの組立方法。
【請求項4】
請求項3に記載のトナーセンサーの組立方法において、前記ボビンはポリフェニレンサルファイド樹脂製又は液晶ポリマー製であることを特徴とするトナーセンサーの組立方法。
【請求項1】
厚み方向の一面が開放されており、かつ底部から立設した突起を有する、樹脂製のトナーセンサーのケースを一体成形し、
前記トナーセンサーのケースの開放面を閉じるための配線基板を前記トナーセンサーのケースの開放面側に配設するに際し、前記トナーセンサーのケースの突起の先端を前記配線基板に設けた貫通穴に挿入し、前記配線基板を貫通して突出した突起部分を加熱してリベット状に形成することにより、前記トナーセンサーのケースと前記配線基板とを締結することを特徴とするトナーセンサーの組立方法。
【請求項2】
請求項1に記載のトナーセンサーの組立方法において、前記配線基板の実装面がトナーセンサーのケースと対向して配設され、前記配線基板を貫通して突出した突起部分の加熱は加熱棒を接触させて行うことを特徴とするトナーセンサーの組立方法。
【請求項3】
交流で励磁される1次コイルと前記1次コイルに結合される2次コイルとがボビンに巻回された差動トランスと、配線基板と、前記各部品を収容するケースとを備えたトナーセンサーの組立方法であって、
前記ボビンは樹脂製の一体成形品であり、軸方向の端部に突起及び前記コイルの端子を有し、
前記ボビンの突起を前記配線基板に設けた穴に嵌着し、前記差動トランスを前記配線基板に面実装することを特徴とするトナーセンサーの組立方法。
【請求項4】
請求項3に記載のトナーセンサーの組立方法において、前記ボビンはポリフェニレンサルファイド樹脂製又は液晶ポリマー製であることを特徴とするトナーセンサーの組立方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−106009(P2006−106009A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−371259(P2005−371259)
【出願日】平成17年12月26日(2005.12.26)
【分割の表示】特願2002−41555(P2002−41555)の分割
【原出願日】平成8年1月23日(1996.1.23)
【出願人】(000183417)株式会社NEOMAX (121)
【出願人】(393027383)NEOMAX機工株式会社 (46)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月26日(2005.12.26)
【分割の表示】特願2002−41555(P2002−41555)の分割
【原出願日】平成8年1月23日(1996.1.23)
【出願人】(000183417)株式会社NEOMAX (121)
【出願人】(393027383)NEOMAX機工株式会社 (46)
【Fターム(参考)】
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