説明

トランクルーム内のカバー装置

【課題】トランクルーム内での作業が行い易く、カバー部材を開放状態に保持したままトランクリッドを閉じても、車体に損傷を生じないようにする。
【解決手段】スペアタイヤリッド13は、前端13a側がリヤフロアパネル9の後端にヒンジ部材15を介して回動可能に支持されており、車両のトランクルーム2の下部に形成された収納凹部11を開閉する。トランクルーム2内の上部にトランクルーム2内を照明するトランクルームランプ22を設ける。トランクルームランプ22よりも前方のトランクルーム2内に、スペアタイヤリッド13の後端13bと係合してスペアタイヤリッド13を開放状態に保持にするホルダ23を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トランクルーム内のカバー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トランクルームを備える車両では、一般に、トランクルームの下部に形成された収納凹部にスペアタイヤを収納し、通常は前記収納凹部を板状のカバー部材で塞いでカバー部材をトランクルームの床面の一部として用い、スペアタイヤを取り出すときにカバー部材をその前端を支点にして後端側を上方に回転することによって収納凹部を開放し、スペアタイヤを取り出している。
【0003】
また、収納凹部からスペアタイヤを取り出すときにカバー部材が閉じ方向に戻らないように、保持部材によってカバー部材を開放状態に保持するものも考えられている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【特許文献1】実開平2−21062号公報
【特許文献2】実開平3−45384号公報
【特許文献3】特開平8−2304号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のように、カバー部材を開放状態に保持する保持部材を備えた場合に、誤ってカバー部材を開放状態に保持したままトランクリッドを閉じてしまうと、車体側に損傷を与える虞がある。
【0005】
また、トランクリッドを開いたときにはトランクリッドが外光を遮るためトランクルーム内が薄暗くなり易い上、その状態でカバー部材を起こすとカバー部材が更に光を遮るため、スペアタイヤを取り出す際に作業者の手元が薄暗くなり易く、作業性が悪いとい課題があった。
【0006】
そこで、この発明は、トランクルーム内での作業が行い易く、万一の誤操作にも車体に損傷を与えることがないトランクルーム内のカバー装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るトランクルーム内のカバー装置では、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
請求項1に係る発明は、車両のトランクルーム(例えば、後述する実施例におけるトランクルーム2)の下部に形成された収納凹部(例えば、後述する実施例における収納凹部11)を開閉し前端(例えば、後述する実施例における前端13a)側が前記収納凹部よりも前方で回動可能に支持された板状のカバー部材(例えば、後述する実施例におけるスペアタイヤリッド13)と、前記カバー部材を開放状態に保持可能にする保持部材(例えば、後述する実施例におけるホルダ23)と、を備えるトランクルーム内のカバー装置において、前記トランクルーム内の上部にトランクルーム内を照明する照明部材(例えば、後述する実施例におけるトランクルームランプ22)が設けられ、前記保持部材は前記照明部材よりも前方のトランクルーム内に設けられ前記カバー部材の後端(例えば、後述する実施例における後端13b)側と係合離脱可能であることを特徴とする。
【0008】
このように構成することにより、保持部材によってカバー部材を自立させることができる。
また、カバー部材によって収納凹部を閉じているときに照明部材によってトランクルーム内を照明することができるだけでなく、カバー部材を保持部材によって開放状態に保持したときに前記カバー部材を前記照明部材よりも前方に位置させることができるので、照明部材によって収納凹部内を照明することができる。
また、カバー部材を開放状態に保持したときにカバー部材が照明部材よりも前方に位置するので、万が一、カバー部材を開放状態のまま、トランクルームを開閉するトランクリッドを閉じてしまっても、カバー部材および保持部材が車体と干渉することがない。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の発明において、前記保持部材は、前記カバー部材の後端と係合離脱可能であることを特徴とする。
このように構成することにより、部品点数を減らすことができ、構造が簡単になる。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、保持部材によってカバー部材を自立させることができるので、トランクルーム内の作業性が向上する。
また、照明部材によってトランクルーム内を照明することができるだけでなく、カバー部材を開放状態に保持したときにも、照明部材によって収納凹部内を照明することができるので、トランクルーム内の作業性が向上する。
また、万が一、カバー部材を開放状態のまま、トランクルームを閉じてしまっても、カバー部材および保持部材が車体と干渉することがないので、車体の損傷を回避することができる。
請求項2に係る発明によれば、部品点数を減らすことができるとともに、構造が簡単になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明に係るトランクルーム内のカバー装置の実施例を図1から図3の図面を参照して説明する。なお、以下の説明において、前後方向は車体の前後方向に一致する。
【0012】
図2に示すように、セダン型車両の車体1の後部であって後部座席の後方にはトランクルーム2が設けられている。トランクルーム2の開口部3は、ヒンジアーム16を介して車体1に回動可能に取り付けられたトランクリッド4により開閉可能にされており、トランクルーム2の開口部3の開口周縁には、開口部3とトランクリッド4との間をシールするトランクウェザーストリップ(シール材)5が取り付けられている。
【0013】
図1に示すように、トランクリッド4は、トランクリッド4の後壁4aの下部に設けられたロック装置6を、トランクルーム2の後壁を形成するリヤパネル7の上部に設けられたストライカ8に係合することにより、閉じ状態にロックされ、ロック装置6をアンロック操作することによりストライカ8をロック装置6から解除して開放することができる。なお、図1において符号30はリヤバンパを示す。
【0014】
トランクルーム2の床面の一部を構成するリヤフロアパネル9の後方には、内部がスペアタイヤ10を収容するための収納凹部11とされたスペアタイヤパン12が設置されている。スペアタイヤパン12の前端はリヤフロアパネル9の後端に接続され、スペアタイヤパン12の後端はリヤパネル7の下端に接続されている。
【0015】
収納凹部11の上部開口14は、スペアタイヤリッド(カバー部材)13によって開閉可能にされている。スペアタイヤリッド13は板状で剛性を有する部材からなり、上部開口14を完全に塞ぎ得る寸法および形状に形成されている。スペアタイヤリッド13の前端13aはリヤフロアパネル9の後端に例えばヒンジ部材15によって回動可能に支持されており、スペアタイヤリッド13の後端13b側を上方に回転することによって収納凹部11を開放することができる。
【0016】
また、収納凹部11をスペアタイヤリッド13で閉じたときには、スペアタイヤリッド13の周縁部がスペアタイヤパン12の図示しない上壁部に載置されて、図1において二点鎖線で示すようにスペアタイヤリッド13はリヤフロアパネル9とほぼ面一な姿勢に保持され、スペアタイヤリッド13もトランクルームの床面の一部となる。つまり、このときにはリヤフロアパネル9とスペアタイヤリッド13によってトランクルーム2の床面が形成される。
なお、スペアタイヤリッド13の後端13bの近傍の表裏両側には、スペアタイヤリッド13を回動操作するときに便利なように、手掛け用のストラップ17,18が取り付けられている。
【0017】
一方、トランクルーム2の上壁を構成するリヤパーセルシェルフ20の後端には、略矩形閉断面形状をなし車体1の車幅方向に延びるシェルフボックス21が形成されている。シェルフボックス21の内部には、トランクルームランプ(照明部材)22が、シェルフボックス21の底壁21aに形成された透口(図示略)を介してトランクルーム2内を照明することができるように設置されている。なお、トランクルームランプ22は、トランクリッド4の開/閉に連動して点灯/消灯するように制御される。
【0018】
さらに、トランクルームランプ22よりも前方であってシェルフボックス21の底壁21aの前端側外面には、弾性を有する材料(例えば、樹脂やバネ鋼等)で形成されたホルダ23が固定されている。ホルダ23は、図1に示すように、スペアタイヤリッド13の後端13bを上方に回転して収納凹部11を開放したときに、スペアタイヤリッド13の後端13bに係合してスペアタイヤリッド13を自立させるための保持部材である。
【0019】
図3に示すように、ホルダ23は波形断面をなし、シェルフボックス21に固定される固定部24と、固定部24から前方に延び下方に凸の円弧状断面をなす第1湾曲部25と、第1湾曲部25に連なって前方に延び上方に凸の円弧状断面をなす第2湾曲部26と、を有する。
【0020】
ホルダ23にスペアタイヤリッド13が係合していない状態において、第1湾曲部25の最下端25aはスペアタイヤリッド13の後端13bの回動軌跡(図3において一点鎖線で示す)よりも下方に位置するように設定されており、スペアタイヤリッド13をホルダ23に係合するときには、図3において二点鎖線で示すようにスペアタイヤリッド13を第1湾曲部25に突き当てた後、さらにホルダ23の弾性に抗してスペアタイヤリッド13を前方に押し込むと、ホルダ23の弾性により第1湾曲部25と第2湾曲部26が上方に変位し、スペアタイヤリッド13の後端13bは第1湾曲部25を乗り越えることができる。そして、スペアタイヤリッド13の後端13bが第1湾曲部25を乗り越えると、ホルダ23の弾性により第1湾曲部25と第2湾曲部26が下方に変位し、図3において実線で示すように、スペアタイヤリッド13の後端13bは第2湾曲部26に収まるとともに、ホルダ23の弾性によって移動不能に押さえられ、スペアタイヤリッド13は自立する。
なお、スペアタイヤリッド13の後端13bがホルダ23の表面を滑り易くするために、後端13bに面取りを施してもしてもよい。
【0021】
ホルダ23の第2湾曲部26はヒンジ部材15よりも後方に配置されているので、スペアタイヤリッド13は、ホルダ23に係合し自立した状態では、若干後傾姿勢となる。また、ホルダ23の第2湾曲部26はトランクルームランプ22よりも前方に配置されているので、ホルダ23に係合し自立した状態では、スペアタイヤリッド13の全体がトランクルームランプ22よりも前方に位置する。
【0022】
また、ホルダ23によって自立しているスペアタイヤリッド13を後方に倒すときには、スペアタイヤリッド13を後方へ引っ張ると、ホルダ23の弾性により第1湾曲部25と第2湾曲部26が上方に変位し、スペアタイヤリッド13の後端13bが第1湾曲部25を乗り越える。その後、スペアタイヤリッド13は自重によって後方回転する。
【0023】
このように構成されたトランクルーム内のカバー装置においては、ホルダ23によってスペアタイヤリッド13を自立させ、収納凹部11を開放状態に保持することができるので、収納凹部11からスペアタイヤ10を取り出す際のトランクルーム2内での作業性が向上する。
【0024】
また、スペアタイヤリッド13によって収納凹部11を閉じているときには、トランクルームランプ22によってトランクルーム2内を照明することができるので、トランクリッド4を開いたときにトランクルーム2内を明るくすることができる。
【0025】
また、ホルダ23によってスペアタイヤリッド13を自立させ、収納凹部11を開放状態に保持したときには、スペアタイヤリッド13がトランクルームランプ22よりも前方に位置するので、スペアタイヤリッド13がトランクルームランプ22の光を遮ることがなく、トランクルームランプ22によって収納凹部11内を照明することができる。その結果、収納凹部11からスペアタイヤ10を取り出す際に、作業者の手元が明るく照らされ、トランクルーム2内の作業性が向上する。
【0026】
ホルダ23によってスペアタイヤリッド13を自立させ、収納凹部11を開放状態に保持したときに、スペアタイヤリッド13がトランクルームランプ22よりも前方のトランクルーム2内に収納された状態となるので、万が一、スペアタイヤリッド13を自立保持した状態のままトランクリッド4を閉じてしまっても、スペアタイヤリッド13およびホルダ23がトランクリッド4と干渉することがなく、車体の損傷を回避することができる。
また、ホルダ23がスペアタイヤリッド13の後端13bに直接係合離脱可能であるので、部品点数を減らすことができ、構造が簡単になる。
【0027】
〔他の実施例〕
なお、この発明は前述した実施例に限られるものではない。
例えば、前述した実施例では、スペアタイヤリッド13の前端13aをリヤフロアパネル9の後端にヒンジ部材15を介して回動可能に支持したが、リヤフロアパネル9とスペアタイヤリッド13を連結せず、スペアタイヤリッド13の前端13aをリヤフロアパネル9の後端にただ単に回動可能に係止させるだけでもよい。
【0028】
また、前述した実施例では、弾性を有する材料(例えば、樹脂やバネ鋼等)で形成されたホルダ23を車体のシェルフボックス21に固定したが、シェルフボックス21を直接切り起こしてホルダ23をプレス加工して形成してもよい。
さらに、前述した実施例では、スペアタイヤリッド13の後端13bを直接ホルダ23に係合離脱可能に構成したが、カバー部材の後端近傍、すなわちカバー部材の後端側にフックを取り付け、このフックを、トランクルーム内の照明部材よりも前方に設けた保持部材に係止することによって、カバー部材を照明部材より前方で自立可能にしてもよいし、カバー部材の後端近傍、すなわちカバー部材の後端側に係止孔を設けておき、この係止孔を、トランクルーム内の照明部材よりも前方に設けた鈎状の保持部材に係止することによって、カバー部材を照明部材より前方で自立可能にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明に係るトランクルーム内のカバー装置の実施例における断面図である。
【図2】前記実施例のカバー装置を備えたトランクルームの外観斜視図である。
【図3】実施例におけるカバー装置の要部拡大図である。
【符号の説明】
【0030】
2 トランクルーム
10 スペアタイヤ
11 収納凹部
13 スペアタイヤリッド(カバー部材)
13a 前端
13b 後端
22 トランクルームランプ(照明部材)
23 ホルダ(保持部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のトランクルームの下部に形成された収納凹部を開閉し前端側が前記収納凹部よりも前方で回動可能に支持された板状のカバー部材と、前記カバー部材を開放状態に保持可能にする保持部材と、を備えるトランクルーム内のカバー装置において、
前記トランクルーム内の上部にトランクルーム内を照明する照明部材が設けられ、前記保持部材は前記照明部材よりも前方のトランクルーム内に設けられ前記カバー部材の後端側と係合離脱可能であることを特徴とするトランクルーム内のカバー装置。
【請求項2】
前記保持部材は、前記カバー部材の後端と係合離脱可能であることを特徴とする請求項1に記載のトランクルーム内のカバー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−260319(P2008−260319A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−102525(P2007−102525)
【出願日】平成19年4月10日(2007.4.10)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】